(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】LAMPプライマーセット及びプライマー対
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6876 20180101AFI20240515BHJP
C12Q 1/6827 20180101ALN20240515BHJP
C12N 15/29 20060101ALN20240515BHJP
【FI】
C12Q1/6876 Z ZNA
C12Q1/6827 Z
C12N15/29
(21)【出願番号】P 2020056441
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2023-03-02
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成31年度、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センター、イノベーション創出強化研究推進事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】501186173
【氏名又は名称】国立研究開発法人森林研究・整備機構
(73)【特許権者】
【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504261077
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人自然科学研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100192603
【氏名又は名称】網盛 俊
(72)【発明者】
【氏名】上野真義
(72)【発明者】
【氏名】長谷川陽一
(72)【発明者】
【氏名】魏甫錦
(72)【発明者】
【氏名】松本麻子
(72)【発明者】
【氏名】伊原徳子
(72)【発明者】
【氏名】内山憲太郎
(72)【発明者】
【氏名】森口喜成
(72)【発明者】
【氏名】笠原雅弘
(72)【発明者】
【氏名】藤野健
(72)【発明者】
【氏名】重信秀治
(72)【発明者】
【氏名】山口勝司
(72)【発明者】
【氏名】尾納隆大
【審査官】藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-125496(JP,A)
【文献】特開平10-248418(JP,A)
【文献】特開平7-170986(JP,A)
【文献】Saneyoshi, UENO et al.,Breeding Science,2019年,Vol. 69, No. 1,pp. 19-29
【文献】Yoshinari, MORIGUCHI et al.,Tree Genetics & Genomes,2016年,12: 57,pp. 1-12
【文献】Yoichi, HASEGAWA et al.,PLOS ONE,2018年,13(11), e0206695,pp. 1-11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00- 3/00
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
PubMed
Google/Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄性不稔遺伝子ms1-1を検出するためのLAMPプライマーセットであって、
前記LAMPプライマーセットは、5´末端側からF1c配列のポリヌクレオチドとF2配列のポリヌクレオチドが連結してなるFIP
ms1-1プライマーと、5´末端側からB1c配列のポリヌクレオチドとB2配列のポリヌクレオチドが連結してなるBIP
ms1-1プライマーと、F3配列のポリヌクレオチドからなるF3
ms1-1プライマーと、B3配列のポリヌクレオチドからなるB3
ms1-1プライマーと、を有しており、
前記F1c配列のポリヌクレオチドは、配列表の配列番号1に示す塩基配列の第202番目から第223番目までのF1領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドであり、
前記F2配列のポリヌクレオチドは、配列表の配列番号1に示す塩基配列の第159番目から第178番目までのF2領域に対して相補なF2c領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドであり、
前記B1c配列のポリヌクレオチドは、配列表の配列番号1に示す塩基配列の第252番目から第273番目までのB1c領域に対して相補なB1領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドであり、
前記B2配列のポリヌクレオチドは、配列表の配列番号1に示す塩基配列の第311番目から第326番目までのB2c領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドであり、
前記F3配列のポリヌクレオチドは、配列表の配列番号1に示す塩基配列の第122番目から第139番目までのF3領域に対して相補なFc3領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドであり、
前記B3配列のポリヌクレオチドは、配列表の配列番号1に示す塩基配列の第340番目から第359番目までのB3c領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドである、
ことを特徴とするLAMPプライマーセット。
【請求項2】
前記BIP
ms1-1プライマーが、配列表の配列番号2~6に示す塩基配列のいずれか一つの塩基配列のポリヌクレオチドからなることを特徴とする請求項1に記載のLAMPプライマーセット。
【請求項3】
前記BIP
ms1-1プライマーが、配列表の配列番号5に示す塩基配列のポリヌクレオチドからなることを特徴とする請求項2に記載のLAMPプライマーセット。
【請求項4】
前記FIP
ms1-1プライマーが、配列表の配列番号7に示す塩基配列のポリヌクレオチドからなることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のLAMPプライマーセット。
【請求項5】
前記F3
ms1-1プライマーが、配列表の配列番号8に示す塩基配列のポリヌクレオチドからなることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載のLAMPプライマーセット。
【請求項6】
前記B3
ms1-1プライマーが、配列表の配列番号9に示す塩基配列のポリヌクレオチドからなることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載のLAMPプライマーセット。
【請求項7】
雄性不稔遺伝子ms1-1を検出するためのプライマー対であって、
少なくとも配列表の配列番号1に示す塩基配列の第290番目から第379番目までの領域を増幅可能なF
ms1-1プライマーとR
ms1-1プライマーにより構成されることを特徴とするプライマー対。
【請求項8】
前記F
ms1-1プライマーは、F
p1配列のポリヌクレオチドを有しており、
前記R
ms1-1プライマーは、R
p1配列のポリヌクレオチドを有しており、
前記F
p1配列のポリヌクレオチドは、配列表の配列番号1に示す塩基配列の第290番目から第313番目までのF
p1領域に対して相補なF
p1c領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドであり、
前記R
p1配列のポリヌクレオチドは、配列表の配列番号1に示す塩基配列の第365番目から第392番目までのR
p1c領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドである、
ことを特徴とする請求項7に記載のプライマー対。
【請求項9】
前記F
p1配列のポリヌクレオチドが、配列表の配列番号10に示す塩基配列のポリヌクレオチドであることを特徴とする請求項8に記載のプライマー対。
【請求項10】
前記R
p1配列のポリヌクレオチドが、配列表の配列番号11に示す塩基配列のポリヌクレオチドであることを特徴とする請求項8又は9に記載のプライマー対。
【請求項11】
前記F
ms1-1プライマーは、F
p2配列のポリヌクレオチドを有しており、
前記R
ms1-1プライマーは、R
p2配列のポリヌクレオチドを有しており、
前記F
p2配列のポリヌクレオチドは、配列表の配列番号1に示す塩基配列の第234番目から第256番目までのF
p2領域に対して相補なF
p2c領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドであり、
前記R
p2配列のポリヌクレオチドは、配列表の配列番号1に示す塩基配列の第357番目から第379番目までのR
p2c領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドである、
ことを特徴とする請求項7に記載のプライマー対。
【請求項12】
前記F
p2配列のポリヌクレオチドが、配列表の配列番号12に示す塩基配列のポリヌクレオチドであることを特徴とする請求項11に記載のプライマー対。
【請求項13】
前記R
p2配列のポリヌクレオチドが、配列表の配列番号13に示す塩基配列のポリヌクレオチドであることを特徴とする請求項11又は12に記載のプライマー対。
【請求項14】
雄性不稔遺伝子ms1-2を検出するためのLAMPプライマーセットであって、
前記LAMPプライマーセットは、5’末端側からF’1c配列のポリヌクレオチドとF’2配列のポリヌクレオチドが連結してなるFIP
ms1-2プライマーと、5’末端側からB’1c配列のポリヌクレオチドとB’2配列のポリヌクレオチドが連結してなるBIP
ms1-2プライマーと、F’3配列のポリヌクレオチドからなるF3
ms1-2プライマーと、B’3配列のポリヌクレオチドからなるB3
ms1-2プライマーと、を有しており、
前記F’1c配列のポリヌクレオチドは、配列表の配列番号14に示す塩基配列の第2023番目から第2044番目までのF’1領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドであり、
前記F’2配列のポリヌクレオチドは、配列表の配列番号14に示す塩基配列の第1983番目から第2000番目までのF’2領域に対して相補なF’2c領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドであり、
前記B’1c配列のポリヌクレオチドは、配列表の配列番号14に示す塩基配列の第2046番目から第2069番目までのB’1c領域に対して相補なB’1領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドであり、
前記B’2配列のポリヌクレオチドは、配列表の配列番号14に示す塩基配列の第2105番目から第2129番目までのB’2c領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドであり、
前記F’3配列のポリヌクレオチドは、配列表の配列番号14に示す塩基配列の第1964番目から第1982番目までのF’3領域に対して相補なF’c3領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドであり、
前記B’3配列のポリヌクレオチドは、配列表の配列番号14に示す塩基配列の第2130番目から第2149番目までのB’3c領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドである、
ことを特徴とするLAMPプライマーセット。
【請求項15】
前記BIP
ms1-2プライマーが、配列表の配列番号15に示す塩基配列のポリヌクレオチドからなることを特徴とする請求項14に記載のLAMPプライマーセット。
【請求項16】
前記FIP
ms1-2プライマーが、配列表の配列番号16に示す塩基配列のポリヌクレオチドからなることを特徴とする請求項14又は15に記載のLAMPプライマーセット。
【請求項17】
前記F3
ms1-2プライマーが、配列表の配列番号17に示す塩基配列のポリヌクレオチドからなることを特徴とする請求項14から16のいずれか一つに記載のLAMPプライマーセット。
【請求項18】
前記B3
ms1-2プライマーが、配列表の配列番号18に示す塩基配列のポリヌクレオチドからなることを特徴とする請求項14から17のいずれか一つに記載のLAMPプライマーセット。
【請求項19】
雄性不稔遺伝子ms1-2を検出するためのプライマー対であって、
少なくとも配列表の配列番号14に示す塩基配列の第1966番目から第2067番目までの領域を増幅可能なF
ms1-2プライマーとR
ms1-2プライマーにより構成されることを特徴とするプライマー対。
【請求項20】
前記F
ms1-2プライマーは、F’
p1配列のポリヌクレオチドを有しており、
前記R
ms1-2プライマーは、R’
p1配列のポリヌクレオチドを有しており、
前記F’
p1配列のポリヌクレオチドは、配列表の配列番号14に示す塩基配列の第2045番目から第2067番目までのF’
p1c領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドであり、
前記R’
p1配列のポリヌクレオチドは、配列表の配列番号14に示す塩基配列の第1966番目から第1988番目までのR’
p1領域に相補なR’
p1c領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドである、
ことを特徴とする請求項19に記載のプライマー対。
【請求項21】
前記F’
p1配列のポリヌクレオチドが、配列表の配列番号19に示す塩基配列のポリヌクレオチドであることを特徴とする請求項20に記載のプライマー対。
【請求項22】
前記R’
p1配列のポリヌクレオチドが、配列表の配列番号20に示す塩基配列のポリヌクレオチドであることを特徴とする請求項20又は21に記載のプライマー対。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雄性不稔遺伝子ms1を検出するためのLAMPプライマーセット及びプライマー対に関する。
【背景技術】
【0002】
スギ花粉症は、1964年、日光市の住民に初めて報告され、その後、花粉症の発症率は全国的に増加している。現在では、日本の人口の25%以上の人が花粉症であると言われている。なお、花粉症とは、花粉が鼻や目などの粘膜に接触することによって引き起こされるアレルギー性鼻炎のことであり、枯草熱(こそうねつ)とも言われる。花粉症の中でも、スギ花粉に由来する花粉症をスギ花粉症という。花粉症の具体的な症状としては、例えば、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみ等が挙げられる。
【0003】
このような状況に鑑み、スギ花粉症の発生を抑制するための様々な検討が行われている。例えば、特許文献1では、スギ黒点病菌(Leptosphaerulina japonica)の菌糸体を含む菌糸体懸濁液をスギ未熟雄花に接種して、スギ花粉の飛散を防止することが検討されている。また、林業分野では、花粉の生成しない無花粉スギ(以下、「雄性不稔スギ」ともいう)へ品種を転換し、スギ花粉の飛散を防止することも検討されている。
【0004】
雄性不稔スギは、全国各地でさまざまな系統が選抜されている。そして、これらの系統についての調査が進められ、スギ花粉を生成しない形質(以下、「雄性不稔形質」ともいう)が単一の遺伝子座により支配され、メンデル遺伝を示すことが明らかにされている。非特許文献1には、雄性不稔形質を支配する遺伝子座として、第9連鎖群に存在する遺伝子座MS1と、第5連鎖群に存在する遺伝子座MS2と、第1連鎖群に存在する遺伝子座MS3と、第4連鎖群に存在する遺伝子座MS4が報告されている(非特許文献1)。しかしながら、これらの遺伝子座に存在する、雄性不稔形質の原因となるアレル(以下、「雄性不稔遺伝子」という)および野生型のアレル(以下、「雄性可稔遺伝子」という)を特定するには至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Tree Genetics & Genomes,「A high-density linkage map with 2560 markers and its application for the localization of the male-sterile genes ms3and ms4 in Cryptomeria japonica D. Don」,Volume 12, Issue 3, Article 57,2016年6月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、雄性不稔遺伝子ms1を検出するためのLAMPプライマーセット及びプライマー対を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)雄性不稔遺伝子ms1-1を検出するためのLAMPプライマーセットであって、前記LAMPプライマーセットは、5´末端側からF1c配列のポリヌクレオチドとF2配列のポリヌクレオチドが連結してなるFIPms1-1プライマーと、5´末端側からB1c配列のポリヌクレオチドとB2配列のポリヌクレオチドが連結してなるBIPms1-1プライマーと、F3配列のポリヌクレオチドからなるF3ms1-1プライマーと、B3配列のポリヌクレオチドからなるB3ms1-1プライマーと、を有しており、前記F1c配列のポリヌクレオチドは、配列表の配列番号1に示す塩基配列の第202番目から第223番目までのF1領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドであり、前記F2配列のポリヌクレオチドは、配列表の配列番号1に示す塩基配列の第159番目から第178番目までのF2領域に対して相補なF2c領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドであり、前記B1c配列のポリヌクレオチドは、配列表の配列番号1に示す塩基配列の第252番目から第273番目までのB1c領域に対して相補なB1領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドであり、前記B2配列のポリヌクレオチドは、配列表の配列番号1に示す塩基配列の第311番目から第326番目までのB2c領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドであり、前記F3配列のポリヌクレオチドは、配列表の配列番号1に示す塩基配列の第122番目から第139番目までのF3領域に対して相補なFc3領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドであり、前記B3配列のポリヌクレオチドは、配列表の配列番号1に示す塩基配列の第340番目から第359番目までのB3c領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドである、ことを特徴とするLAMPプライマーセット。
(2)前記BIPms1-1プライマーが、配列表の配列番号2~6に示す塩基配列のいずれか一つの塩基配列のポリヌクレオチドからなることを特徴とする(1)に記載のLAMPプライマーセット。
(3)前記BIPms1-1プライマーが、配列表の配列番号5に示す塩基配列のポリヌクレオチドからなることを特徴とする(2)に記載のLAMPプライマーセット。
(4)前記FIPms1-1プライマーが、配列表の配列番号7に示す塩基配列のポリヌクレオチドからなることを特徴とする(1)から(3)のいずれか一つに記載のLAMPプライマーセット。
(5)前記F3ms1-1プライマーが、配列表の配列番号8に示す塩基配列のポリヌクレオチドからなることを特徴とする(1)から(4)のいずれか一つに記載のLAMPプライマーセット。
(6)前記B3ms1-1プライマーが、配列表の配列番号9に示す塩基配列のポリヌクレオチドからなることを特徴とする(1)から(5)のいずれか一つに記載のLAMPプライマーセット。
【0009】
(7)雄性不稔遺伝子ms1-1を検出するためのプライマー対であって、少なくとも配列表の配列番号1に示す塩基配列の第290番目から第379番目までの領域を増幅可能なFms1-1プライマーとRms1-1プライマーにより構成されることを特徴とするプライマー対。
(8)前記Fms1-1プライマーは、Fp1配列のポリヌクレオチドを有しており、前記Rms1-1プライマーは、Rp1配列のポリヌクレオチドを有しており、前記Fp1配列のポリヌクレオチドは、配列表の配列番号1に示す塩基配列の第290番目から第313番目までのFp1領域に対して相補なFp1c領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドであり、前記Rp1配列のポリヌクレオチドは、配列表の配列番号1に示す塩基配列の第365番目から第392番目までのRp1c領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドである、ことを特徴とする(7)に記載のプライマー対。
(9)前記Fp1配列のポリヌクレオチドが、配列表の配列番号10に示す塩基配列のポリヌクレオチドであることを特徴とする(8)に記載のプライマー対。
(10)前記Rp1配列のポリヌクレオチドが、配列表の配列番号11に示す塩基配列のポリヌクレオチドであることを特徴とする(8)又は(9)に記載のプライマー対。
(11)前記Fms1-1プライマーは、Fp2配列のポリヌクレオチドを有しており、前記Rms1-1プライマーは、Rp2配列のポリヌクレオチドを有しており、前記Fp2配列のポリヌクレオチドは、配列表の配列番号1に示す塩基配列の第234番目から第256番目までのFp2領域に対して相補なFp2c領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドであり、前記Rp2配列のポリヌクレオチドは、配列表の配列番号1に示す塩基配列の第357番目から第377番目までのRp2c領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドである、ことを特徴とする(7)に記載のプライマー対。
(12)前記Fp2配列のポリヌクレオチドが、配列表の配列番号12に示す塩基配列のポリヌクレオチドであることを特徴とする(11)に記載のプライマー対。
(13)前記Rp2配列のポリヌクレオチドが、配列表の配列番号13に示す塩基配列のポリヌクレオチドであることを特徴とする(11)又は(12)に記載のプライマー対。
【0010】
(14)雄性不稔遺伝子ms1-2を検出するためのLAMPプライマーセットであって、前記LAMPプライマーセットは、5’末端側からF’1c配列のポリヌクレオチドとF’2配列のポリヌクレオチドが連結してなるFIPms1-2プライマーと、5’末端側からB’1c配列のポリヌクレオチドとB’2配列のポリヌクレオチドが連結してなるBIPms1-2プライマーと、F’3配列のポリヌクレオチドからなるF3ms1-2プライマーと、B’3配列のポリヌクレオチドからなるB3ms1-2プライマーと、を有しており、前記F’1c配列のポリヌクレオチドは、配列表の配列番号14に示す塩基配列の第2023番目から第2044番目までのF’1領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドであり、前記F’2配列のポリヌクレオチドは、配列表の配列番号14に示す塩基配列の第1983番目から第2000番目までのF’2領域に対して相補なF’2c領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドであり、前記B’1c配列のポリヌクレオチドは、配列表の配列番号14に示す塩基配列の第2046番目から第2069番目までのB’1c領域に対して相補なB’1領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドであり、前記B’2配列のポリヌクレオチドは、配列表の配列番号14に示す塩基配列の第2105番目から第2129番目までのB’2c領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドであり、前記F’3配列のポリヌクレオチドは、配列表の配列番号14に示す塩基配列の第1964番目から第1982番目までのF’3領域に対して相補なF’c3領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドであり、前記B’3配列のポリヌクレオチドは、配列表の配列番号14に示す塩基配列の第2130番目から第2149番目までのB’3c領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドである、ことを特徴とするLAMPプライマーセット。
(15)前記BIPms1-2プライマーが、配列表の配列番号15に示す塩基配列のポリヌクレオチドからなることを特徴とする(14)に記載のLAMPプライマーセット。
(16)前記FIPms1-2プライマーが、配列表の配列番号16に示す塩基配列のポリヌクレオチドからなることを特徴とする(14)又は(15)に記載のLAMPプライマーセット。
(17)前記F3ms1-2プライマーが、配列表の配列番号17に示す塩基配列のポリヌクレオチドからなることを特徴とする(14)から(16)のいずれか一つに記載のLAMPプライマーセット。
(18)前記B3ms1-2プライマーが、配列表の配列番号18に示す塩基配列のポリヌクレオチドからなることを特徴とする(14)から(17)のいずれか一つに記載のLAMPプライマーセット。
【0011】
(19)雄性不稔遺伝子ms1-2を検出するためのプライマー対であって、少なくとも配列表の配列番号14に示す塩基配列の第1966番目から第2067番目までの領域を増幅可能なFms1-2プライマーとRms1-2プライマーにより構成されることを特徴とするプライマー対。
(20)前記Fms1-2プライマーは、F’p1配列のポリヌクレオチドを有しており、前記Rms1-2プライマーは、R’p1配列のポリヌクレオチドを有しており、前記F’p1配列のポリヌクレオチドは、配列表の配列番号14に示す塩基配列の第2045番目から第2067番目までのF’p1c領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドであり、前記R’p1配列のポリヌクレオチドは、配列表の配列番号14に示す塩基配列の第1966番目から第1988番目までのR’p1領域に相補なR’p1c領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドである、ことを特徴とする(19)に記載のプライマー対。
(21)前記F’p1配列のポリヌクレオチドが、配列表の配列番号19に示す塩基配列のポリヌクレオチドであることを特徴とする(20)に記載のプライマー対。
(22)前記R’p1配列のポリヌクレオチドが、配列表の配列番号20に示す塩基配列のポリヌクレオチドであることを特徴とする(20)又は(21)に記載のプライマー対。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、雄性不稔遺伝子ms1を検出するためのLAMPプライマーセット及びプライマー対を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】雄性可稔遺伝子Ms1の塩基配列(配列番号21)を示す図である。
【
図2】雄性不稔遺伝子ms1-1の塩基配列(配列番号1)を示す図である。
【
図3】雄性不稔遺伝子ms1-2の塩基配列(配列番号14)を示す図である。
【
図4】雄性可稔遺伝子Ms1の塩基配列(配列番号22)を示す図である。
【
図5】第1実施形態のLAMPプライマーセットを構成する各プライマーの塩基配列と、その塩基配列のポリヌクレオチドがハイブリダイズする雄性不稔遺伝子ms1-1の領域の関係を説明する図である。
【
図6】雄性不稔遺伝子ms1-1の塩基配列(配列番号1)を示す図である。
【
図7】第2実施形態のプライマー対を構成する各プライマーの塩基配列と、その塩基配列のポリヌクレオチドがハイブリダイズする雄性不稔遺伝子ms1-1の領域の関係を説明する図である。
【
図8】第3実施形態のLAMPプライマーセットを構成する各プライマーの塩基配列と、その塩基配列のポリヌクレオチドがハイブリダイズする雄性不稔遺伝子ms1-2の領域の関係を説明する図である。
【
図9】雄性不稔遺伝子ms1-2の塩基配列(配列番号14)を示す図である。
【
図10】第4実施形態のプライマー対を構成する各プライマーの塩基配列と、その塩基配列のポリヌクレオチドがハイブリダイズする雄性不稔遺伝子ms1-2の塩基配列の関係を説明する図である。
【
図11】リード配列のアラインメントの結果を示す図である(参考例1)。
【
図12】核酸増幅処理後の増幅反応液の写真である(実施例1-1)。
【
図13】増幅反応液の濁度を示すグラフである(実施例1-2)。
【
図14】増幅産物の電気泳動写真である(実施例2-1)。
【
図15】増幅産物の長さを示すエレクトロフェログラムである(実施例2-2)。
【
図16】核酸増幅処理後の増幅反応液の写真である(実施例3)
【
図17】増幅産物の電気泳動写真である(実施例4-1)。
【
図18】増幅産物の長さを示すエレクトロフェログラムである(実施例4-2)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、本発明を完成するに至った経緯を説明する。
【0015】
遺伝子座MS1~MS4は、それぞれ独立してスギの雄性不稔形質を支配する。このため、本発明者等は、遺伝子座MS1~MS4のうち、少なくとも一つの遺伝子座について、雄性不稔形質の原因となるアレル(以下、「雄性不稔遺伝子」という)を特定し、それを検出できるようにすれば、雄性不稔スギの効率的な育種と雄性不稔スギの種苗の安定供給が期待できると考えた。そこで、第9連鎖群に存在する遺伝子座MS1に着目し、遺伝子座MS1に存在する雄性不稔遺伝子(以下、「雄性不稔遺伝子ms1」ともいう)を特定するため鋭意検討した。
【0016】
本発明者等は、後述する参考例に記載するように、雄性不稔遺伝子ms1を特定するため、雄性不稔遺伝子ms1を保有する交配家系を用いて、雄花や花粉組織で発現する遺伝子の塩基配列を網羅的に収集した。そして、収集した遺伝子の塩基配列を、花粉を生成する可稔スギ(以下、「雄性可稔スギ」ともいう)の遺伝子の塩基配列と比較したところ、アミノ酸配列に異常を来す2つのタイプの突然変異が雄性不稔スギに存在することを見出した。
【0017】
本発明者等は、雄性不稔遺伝子ms1のうち、第1突然変異によって変異が生じた変異型アレルを雄性不稔遺伝子ms1-1と名付け、第2突然変異によって変異が生じた変異型アレルを雄性不稔遺伝子ms1-2と名付けた。これらの変異型アレルをホモ接合型(ms1-1/ms1-1や、ms1-2/ms1-2や,ms1-1/ms1-2)で保有する個体は、100%の確率で雄性不稔スギとなる。
【0018】
そして、本発明者等は、上述した雄性不稔遺伝子ms1-1及び雄性不稔遺伝子ms1-2の塩基配列を解読し、解読した塩基配列に基づいて本発明を完成するに至った。
【0019】
なお、本明細書において、雄性不稔遺伝子ms1とは、遺伝子座MS1に存在し、雄性不稔形質の原因となるアレルを指す。雄性不稔遺伝子ms1は、当該遺伝子をホモ接合型(ms1-1/ms1-1や、ms1-2/ms1-2や,ms1-1/ms1-2)で保有することで雄性不稔形質を発現する。雄性不稔遺伝子ms1は、第1突然変異によって生じた雄性不稔遺伝子ms1-1と、第2突然変異によって生じた雄性不稔遺伝子ms1-2の2種類の遺伝子の総称である。
【0020】
また、以下の説明では、遺伝子座MS1に存在し、スギ花粉を生成する形質(以下、「雄性可稔形質」ともいう)の原因となるアレルを雄性可稔遺伝子Ms1という。雄性可稔遺伝子Ms1は、当該遺伝子をホモ接合型(Ms1/Ms1)又はヘテロ接合型(Ms1/ms1-1やMs1/ms1-2)で保有することで雄性可稔形質を発現する。
【0021】
雄性可稔遺伝子Ms1は、一例として、
図1や配列表の配列番号21に示す塩基配列を有している。
【0022】
雄性可稔遺伝子Ms1は、3つエクソンを有し、脂質転移タンパク質に関連する遺伝子であると考えられる。第1エクソンは、シグナルペプチドに翻訳され、第2エクソンは、Bifunctional inhibitor/plant lipid transfer protein/seed storage helical domain superfamily (IPR036312)(LTPドメイン)に翻訳され、第3エクソンは、膜貫通ドメインに翻訳されると考えられる。
【0023】
配列番号21に示す雄性可稔遺伝子Ms1において、第1エクソンは、第1番目から第449番目までの領域であり、第2エクソンは、第604番目から第645番目までの領域であり、第3エクソンは、第1851番目から第2264番目までの領域である。
【0024】
本発明者等が特定した雄性不稔遺伝子ms1-1は、上述した第1エクソンの中の連続する4塩基が欠失している点において、雄性可稔遺伝子Ms1と異なっている。本発明者等が見出した上述の第1突然変異は、第1エクソンにおけるこの4塩基の欠失である。
【0025】
雄性不稔遺伝子ms1-1は、一例として、
図2や配列表の配列番号1に示す塩基配列を有している。配列番号1に示す雄性不稔遺伝子ms1-1は、
図1に示すように、配列番号21に示す雄性可稔遺伝子Ms1の第312番目から第315番目までの4塩基が欠失している点において、当該雄性可稔遺伝子Ms1と異なっている。
【0026】
一方、本発明者等が特定した雄性不稔遺伝子ms1-2は、第3エクソンにおいて連続する30塩基が欠失している点において、雄性可稔遺伝子Ms1と異なっている。本発明者等が見出した上述の第2突然変異は、第3エクソンにおけるこの30塩基の欠失である。
【0027】
雄性不稔遺伝子ms1-2は、一例として、
図3や配列表の配列番号14に示す塩基配列を有している。配列番号14に示す雄性不稔遺伝子ms1-2は、
図1に示すように、配列表の配列番号21に示す雄性可稔遺伝子Ms1の第2044番目から第2073番目までの30塩基が欠失している点において、当該雄性可稔遺伝子Ms1と異なっている。
【0028】
なお、雄性可稔遺伝子Ms1は、
図1や配列表の配列番号21に示す塩基配列に限定されず、当該塩基配列にコードされるポリペプチドと相同な機能を発揮するポリペプチドをコードする塩基配列であってもよい。例えば、雄性可稔遺伝子Ms1は、
図4や配列表の配列番号22に示す塩基配列を有するものであってもよい。配列番号22に示す雄性可稔遺伝子Ms1では、第1エクソンは、第1番目から第449番目までの領域であり、第2エクソンは、第604番目から第645番目までの領域であり、第3エクソンは、第1904番目から第2317番目までの領域である。
【0029】
また、雄性不稔遺伝子ms1-1についても、
図2や配列表の配列番号1に示す塩基配列に限定されず、当該塩基配列にコードされるポリペプチドと相同な機能を発揮するポリペプチドをコードする塩基配列であってもよい。同様に、雄性不稔遺伝子ms1-2も、
図3や配列表の配列番号14に示す塩基配列に限定されず、当該塩基配列にコードされるポリペプチドと相同な機能を発揮するポリペプチドをコードする塩基配列であってもよい。
【0030】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態について説明する。
【0031】
本実施形態は、雄性不稔遺伝子ms1を検出することができるLAMPプライマーセットに関する。本実施形態のLAMPプライマーセットによれば、雄性不稔遺伝子ms1のうち、雄性不稔遺伝子ms1-1を検出することができる。
【0032】
本明細書において、LAMPプライマーセットとは、LAMP法(Loop-Mediated Isothermal Amplification法)による核酸増幅に用いられる少なくとも4種のプライマーを意味する。なお、LAMP法は、栄研化学社(東京)によって開発された核酸増幅の手法であり、例えば、国際公開第00/28082号に記載されている。
【0033】
また、本明細書において、雄性不稔遺伝子を検出できるとは、検体に当該雄性不稔遺伝子(アレル)が含まれているか否かを同定することを指す。言い換えれば、遺伝子を検出できるとは、検体のDNAに当該遺伝子が含まれていると同定すること、及び/又は、検体のDNAに当該遺伝子が含まれていないと同定することを指す。
【0034】
本実施形態のLAMPプライマーセットは、Forward Inner Primer(以下、「FIPms1-1」ともいう。)と、Backward Inner Primer(以下、「BIPms1-1」ともいう。)と、F3ms1-1プライマーと、B3ms1-1プライマーの4種のプライマーを有している。
【0035】
本実施形態のLAMPプライマーセットに含まれる4種のプライマーは、雄性不稔遺伝子ms1-1における異なる6つの領域(5’末端側から順に、F3領域,F2領域,F1領域,B1c領域,B2c領域,B3c領域)及びこれに相補的な領域(5’末端側から順に、B3領域,B2領域,B1領域,F1c領域,F2c領域,F3c領域)を考慮して設計されている。
【0036】
本実施形態において、F3領域は、
図2や
図5に示すように、配列表の配列番号1に示す雄性不稔遺伝子ms1-1の第122番目から第139番目までの領域であり、F3c領域は、F3領域に相補な領域である。F2領域は、
図2や
図5に示すように、配列表の配列番号1に示す雄性不稔遺伝子ms1-1の第159番目から第178番目までの領域であり、F2c領域は、F2領域に相補な領域である。F1領域は、
図2や
図5に示すように、配列表の配列番号1に示す雄性不稔遺伝子ms1-1の第202番目から第223番目までの領域であり、F1c領域は、F1領域に相補な領域である。
【0037】
一方、B1c領域は、
図2や
図5に示すように、配列表の配列番号1に示す雄性不稔遺伝子ms1-1の第252番目から第273番目までの領域であり、B1領域は、B1c領域に相補な領域である。B2c領域は、
図2や
図5に示すように、配列表の配列番号1に示す雄性不稔遺伝子ms1-1の第311番目から第326番目までの領域であり、B2領域は、B2c領域に相補な領域である。B3c領域は、
図2や
図5に示すように、配列表の配列番号1に示す雄性不稔遺伝子ms1-1の第340番目から第359番目までの領域であり、B3領域は、B3c領域に相補な領域である。
【0038】
本実施形態のLAMPプライマーセットにおいて、FIP
ms1-1プライマーは、
図5に示すように、5´末端側からF1c配列のポリヌクレオチドとF2配列のポリヌクレオチドが連結してなるプライマーである。F1c配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-1のF1領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドであり、F2配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-1のF2c領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドである。
【0039】
F1c配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-1のF1領域にハイブリダイズ可能であればよく、塩基の配列順序について特に限定されるものではない。例えば、F1c配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-1のF1c領域と同一の塩基配列とすることもでき、F1c領域と異なる塩基配列とすることもできる。同様に、F2配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-1のF2c領域にハイブリダイズ可能であればよく、塩基の配列順序について特に限定されるものではない。例えば、F2配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-1のF2領域と同一の塩基配列とすることもでき、F2領域と異なる塩基配列とすることもできる。
【0040】
具体的なFIPms1-1プライマーとしては、下記表1に示すように、配列表の配列番号7に示す塩基配列のポリヌクレオチドからなるプライマーを挙げることができる。配列番号7に示す塩基配列のFIPms1-1プライマーでは、F1c配列のポリヌクレオチドが雄性不稔遺伝子ms1-1のF1c領域と同一の塩基配列を有しており、F2配列のポリヌクレオチドが雄性不稔遺伝子ms1-1のF2領域と同一の塩基配列を有している。なお、下記表1に示すFIPms1-1は、42個の塩基からなり、5’末端から1番目~22番目までの塩基がF1c配列のポリヌクレオチドであり、5’末端から23番目~42番目までの塩基がF2配列のポリヌクレオチドである。
【0041】
【0042】
ここで、本明細書において、特定領域にハイブリダイズ可能とは、核酸増幅処理におけるアニーリングの工程(例えば、55℃~66℃で増幅反応液をインキュベートする工程)において、鋳型DNAの特定領域のみと二本鎖を形成することができ、鋳型DNAの特定領域以外の領域とは二本鎖を形成しないことを指す。また、本明細書において、プライマーのTm値は、特に限定されるものではないが、例えば、50℃以上とすることができ、55℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましい。
【0043】
本実施形態のLAMPプライマーセットにおいて、BIP
ms1-1プライマーは、
図5に示すように、5’末端側からB1c配列のポリヌクレオチドとB2配列のポリヌクレオチドが連結してなるプライマーである。B1c配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-1のB1領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドであり、B2配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-1のB2c領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドである。ここで、B2配列のポリヌクレオチドがハイブリダイズする雄性不稔遺伝子ms1-1のB2c領域には、第1突然変異(4塩基欠失)が生じた箇所が含まれる。
【0044】
B1c配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-1のB1領域にハイブリダイズ可能であればよく、塩基の配列順序について特に限定されるものではない。例えば、B1c配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-1のB1c領域と同一の塩基配列とすることもでき、B1c領域と異なる塩基配列とすることもできる。同様に、B2配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-1のB2c領域にハイブリダイズ可能であればよく、塩基の配列順序について特に限定されるものではない。例えば、B2配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-1のB2領域と同一の塩基配列とすることもでき、B2領域と異なる塩基配列とすることもできる。
【0045】
具体的なBIPms1-1プライマーとしては、下記表2に示すように、配列表の配列番号2~6に示す塩基配列のポリヌクレオチドからなるプライマーを挙げることができる。配列番号2に示す塩基配列のBIPms1-1では、B1c配列のポリヌクレオチドが雄性不稔遺伝子ms1-1のB1c領域と同一の塩基配列を有しており、B2配列のポリヌクレオチドが雄性不稔遺伝子ms1-1のB2領域と同一の塩基配列を有している。一方、配列番号3~4に示す塩基配列のBIPms1-1では、配列番号2に示すBIPms1-1の3’末端から2番目の塩基が、チミン(T)以外の他の塩基(アデニン(A)やシトシン(C))に変更されている。また、配列番号5~6で表される塩基配列のBIPms1-1では、配列番号2で表されるBIPms1-1の3’末端から3番目の塩基が、グアニン(G)以外の他の塩基(アデニン(A)やシトシン(C))に変更されている。なお、下記表2に示すBIPms1-1は、38個の塩基からなり、5’末端から1番目から22番目までの塩基がB1c配列のポリヌクレオチドであり、5’末端から23番目から38番目までの塩基がB2配列のポリヌクレオチドである。
【0046】
【0047】
本実施形態のLAMPプライマーセットにおいて、表2に示すBIPms1-1プライマーの中でも、配列番号5に示す塩基配列のBIPms1-1プライマーを用いることが好ましい。配列番号5に示す塩基配列のBIPms1-1プライマーを用いたLAMPプライマーセットは、表2に示す他のBIPms1-1プライマーを用いたLAMPプライマーセットと比較し、雄性不稔遺伝子ms1-1に対する特異性がより高く、また、雄性不稔遺伝子ms1-1の核酸の増幅効率がより向上する。
【0048】
本実施形態のLAMPプライマーセットにおいて、F3
ms1-1プライマーは、
図5に示すように、F3配列のポリヌクレオチドからなるプライマーである。F3配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-1のF3c領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドである。F3配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-1のF3c領域にハイブリダイズ可能であればよく、塩基の配列順序について特に限定されるものではない。例えば、F3配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-1のF3領域と同一の塩基配列であってもよく、F3領域と異なる塩基配列であってもよい。
【0049】
具体的なF3ms1-1プライマーとしては、下記表3に示すように、配列表の配列番号8に示す塩基配列のポリヌクレオチドからなるプライマーを挙げることができる。配列番号8に示す塩基配列のF3ms1-1プライマーでは、F3配列のポリヌクレオチドが雄性不稔遺伝子ms1-1のF3領域と同一の塩基配列を有している。なお、下記表3に示すF3ms1-1プライマーにおいて、F3配列のポリヌクレオチドは、20個の塩基からなる。
【0050】
【0051】
本実施形態のLAMPプライマーセットにおいて、B3
ms1-1プライマーは、
図5に示すように、B3配列のポリヌクレオチドからなるプライマーである。B3配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-1のB3c領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドである。B3配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-1のB3c領域にハイブリダイズ可能であればよく、塩基の配列順序について特に限定されるものではない。例えば、B3配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-1のB3領域と同一の塩基配列であってもよく、B3領域と異なる塩基配列であってもよい。
【0052】
具体的なB3ms1-1プライマーとしては、下記表4に示すように、配列表の配列番号9に示す塩基配列のポリヌクレオチドからなるプライマーを挙げることができる。配列番号9で表される塩基配列のB3ms1-1プライマーでは、B3配列のポリヌクレオチドが雄性不稔遺伝子ms1-1のB3領域と同一の塩基配列を有している。なお、下記表4に示すB3ms1-1プライマーにおいて、B3配列のポリヌクレオチドは、20個の塩基からなる。
【0053】
【0054】
ここで、本実施形態のLAMPプライマーセットは、上述したFIPms1-1プライマー、BIPms1-1プライマー、F3ms1-1プライマー及びB3ms1-1プライマーを1つずつ有するプライマーセットであり、その組み合わせについては特に限定されない。一方で、核酸の増幅効率が向上する観点からは、本実施形態のLAMPプライマーセットは、下記表5に示す4種のプライマーを有していることが好ましい。
【0055】
【0056】
以上説明した本実施形態のLAMPプライマーセットにおいて、BIPms1-1プライマーのB2配列のポリヌクレオチドは、第1突然変異(4塩基欠失)が生じている雄性不稔遺伝子ms1-1のB2c領域にハイブリダイズする。このため、雄性不稔遺伝子ms1-1を保有する検体の核酸増幅を試みると、雄性不稔遺伝子ms1-1のB2c領域にBIPms1-1プライマー(B2配列のポリヌクレオチド)がハイブリダイズし、BIPms1-1プライマーを介した核酸増幅が進行する。一方で、雄性不稔遺伝子ms1-1を保有していない検体(例えば、雄性可稔遺伝子Ms1を保有する検体や雄性不稔遺伝子ms1-2を保有する検体)の核酸増幅を試みると、BIPms1-1プライマーのB2配列のポリヌクレオチドがハイブリダイズするB2c領域が存在しないため、BIPms1-1プライマーを介した核酸増幅が進行しない。従って、検体が雄性不稔遺伝子ms1-1を保有している場合には、雄性不稔遺伝子ms1-1の一部の領域(具体的には、B2領域とF2領域を含む、これらに挟まれる領域。)の核酸が増幅されるが、検体が雄性不稔遺伝子ms1-1を保有していない場合には、核酸が増幅されない。従って、実施形態のLAMPプライマーセットによれば、この核酸増幅の可否に基づき、雄性不稔遺伝子ms1-1を検出することができる。
【0057】
次に、本実施形態のLAMPプライマーセットを用いて、雄性不稔遺伝子ms1-1を検出する方法について具体的に説明する。
【0058】
雄性不稔遺伝子ms1-1の検出方法は、(1)LAMP法による核酸増幅処理と(2)増幅産物の検出処理を含んでいる。
【0059】
(1)LAMP法による核酸増幅処理は、本実施形態のLAMPプライマーセットを用いて、LAMP法により検体の核酸を増幅する処理である。LAMP法による核酸の増幅は、公知の条件(例えば、栄研化学社から市販されているLoopamp(登録商標、以下同じ) DNA増幅試薬キットの取扱説明書に記載される条件)を用いることができ、特に限定されるものではない。LAMP法による核酸増幅の一例を、以下に記載する。
【0060】
まず、反応試薬(例えば、Bst DNAポリメラーゼ、デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dATP、 dGTP、 dCTP、 dTTP)、反応用バッファー(例えば、reaction mix)、LAMPプライマーセット、蒸留水)を混合し、増幅反応液を調製する。LAMPプライマーセットを除く反応試薬には、例えば栄研化学社から市販されているLoopamp(登録商標、以下同じ) DNA増幅試薬キットを用いてもよい。Loopamp DNA増幅試薬キットは、以下の成分により構成されている。
【0061】
Loopamp DNA増幅試薬キット:2倍濃度反応用バッファー(2×Reaction mix)、40mM Tris-HCl(pH8.8)、20mM KCl、16mM MgSO4、20mM(NH4)2SO4、0.2% Tween20、1.6M Betaine、各終濃度2.8mMのdATP、dCTP、dGTP、dTTP; BstDNAポリメラーゼ 8units/μl。
【0062】
次に、増幅反応液に検体(つまり、スギ)のDNAを加え、例えば、57℃~66℃にてインキュベートする。この処理により、LAMPプライマーセットの各プライマーがDNAにアニーリングし、検体の核酸が増幅される。インキュベートの温度は、核酸を増幅しやすくなる観点から60℃~66℃であることが好ましい。なお、スギからDNAを抽出する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法(例えば、Murray MG, Thompson WF (1980) Rapid isolation of high molecular weight plant DNA. Nucleic Acids Res Vol 8: Pages 4321-4326に記載されている方法)を用いることができる。
【0063】
ここで、LAMP法による核酸増幅は、例えば、次の(a)~(i)の過程で進行する。
(a)鋳型DNA(F2c領域)にFIPms1-1のF2配列のポリヌクレオチドがアニーリングする。
(b)Bst DNAポリメラーゼの働きにより、F2配列のポリヌクレオチド(FIPms1-1プライマー)の3’末端を起点として鋳型DNAと相補的なDNA鎖が合成される。
(c)鋳型DNAにアニーリングしているFIPms1-1プライマー(F2配列のポリヌクレオチド)の外側において、F3ms1-1プライマーのF3配列のポリヌクレオチドが鋳型DNA(F3c領域)にさらにアニーリングし、F3配列のポリヌクレオチドの3’末端を起点として、Bst DNAポリメラーゼの働きにより、鋳型DNAと相補的なDNA鎖が合成される。F3ms1-1プライマーによるDNA鎖の合成は、FIPms1-1プライマーによって先に合成されたDNA鎖を剥がしながら進行する。
(d)F3ms1-1プライマーにより合成されたDNA鎖と鋳型DNAが2本鎖となる。
(e)一方、F3ms1-1プライマーによるDNA鎖合成の際に剥がされたDNA鎖(FIPms1-1プライマーにより合成されたDNA鎖)は、1本鎖DNAとなる。当該1本鎖DNA鎖は、5’末端側に相補的なF1c領域及びF1領域を持ち、自己アニールを起こしてループを形成する。
(f)上述の(e)においてループが形成された1本鎖DNA鎖(B2c領域)に対し、BIPms1-1プライマーのB2配列のポリヌクレオチドがアニーリングする。そして、B2配列のポリヌクレオチド(BIPms1-1プライマー)の3’末端を起点として相補的なDNAの合成が行われ、(e)で形成されたループは剥がされて伸びる。DNAにアニーリングしているBIPms1-1(B2配列のポリヌクレオチド)の外側において、B3ms1-1プライマーのB3配列のポリヌクレオチドが1本鎖DNA鎖(B3c領域)にさらにアニーリングする(なお、BIPms1-1プライマーによるDNA合成が完了している場合には、1本鎖DNAは2本鎖DNAになっている。)。B3配列のポリヌクレオチドの3’末端を起点として、BstDNAポリメラーゼの働きにより、1本鎖DNA鎖に相補的なDNA鎖が合成される。B3ms1-1プライマーによるDNA鎖の合成は、BIPms1-1プライマーにより先に合成されたDNA鎖を剥がしながら進行する。
(g)B3ms1-1プライマーにより合成されたDNA鎖と1本鎖DNAが2本鎖となる。
(h)一方、B3ms1-1プライマーによるDNA鎖合成の際に剥がされたDNA鎖(BIPms1-1により合成されるDNA鎖)は、両端に相補的な配列を持つため、自己アニールしてループを形成してダンベル様の構造となる。
(i)上述の(h)で形成されたダンベル様構造のDNA鎖を起点として、FIPms1-1プライマー(F2配列のヌクレオチド)およびそれに続くBIPms1-1プライマー(B2配列のヌクレオチド)のアニーニングを介したDNA増幅サイクルが進行する。
【0064】
増幅処理におけるインキュベート時間は、例えば60分とすることができる。LAMP法におけるアニーリング反応およびDNA鎖合成により、当該インキュベートの間にDNA(核酸)を、例えば、109~1010倍に増幅させることが可能である。
【0065】
(2)増幅産物の検出処理は、上記(1)LAMP法による核酸増幅処理で得られる増幅産物を検出する処理である。当該検出処理により増幅産物が検出できれば、検体が雄性不稔遺伝子ms1-1を保有していたと判断することができる。一方、当該検出処理により増幅産物が検出できなければ、検体が雄性不稔遺伝子ms1-1を保有していなかったと判断することができる
【0066】
(2)増幅産物の検出処理には、公知の方法を用いることができるが、例えば、蛍光目視検出を用いることができる。蛍光目視検出は、蛍光目視試薬を添加して増幅産物と反応させ、目視にて反応液の色を確認する方法である。具体的には反応液が蛍光を発していれば陽性、すなわち増幅産物が検出できており、蛍光を発していなければ陰性、すなわち増幅産物が検出できていないと判断することができる。
【0067】
蛍光目視試薬としては、例えば、栄研化学社から市販されているLoopamp 蛍光・目視検出試薬を用いることができる。反応液の蛍光は、紫外線照射装置により、より明確に陽性と陰性の違いを判断することができる。
【0068】
なお、(2)増幅産物の検出処理は、蛍光目視検出に限定されるものではない。例えば、増幅の副産物として生じるピロリン酸マグネシウムの影響により増幅反応液は白濁するが、このときの増幅反応液の濁度を測定することによって核酸増幅の有無を検出するようにしてもよい。また、上述した(2)増幅産物の検出処理では、上述した(1)LAMP法による核酸増幅処理が完了した後に蛍光目視試薬を増幅反応液に添加しているが、反応産物による汚染を抑制するには、(1)LAMP法による核酸増幅処理の過程で反応液に添加することが好ましい。
【0069】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0070】
本実施形態は、雄性不稔遺伝子ms1を検出することができるプライマー対に関し、雄性不稔遺伝子ms1のうち、雄性不稔遺伝子ms1-1を検出することができるプライマー対に関する。
【0071】
本実施形態において、プライマー対とは、二本鎖DNAの一方の一本鎖DNAにハイブリダイズするForward Primer(以下、「Fms1-1プライマー」という)と、二本鎖DNAの他方の一本鎖DNAにハイブリダイズするReverse Primer(以下、「Rms1-1プライマー」という)の2つのプライマーから構成される一対のプライマーを指す。プライマー対は、PCR法(polymerase chain reaction法)による核酸増幅に用いられる。
【0072】
なお、本実施形態において、PCR法による核酸増幅は、少なくとも一対のプライマー(つまり、一つのプライマー対)を用いて行われればよく、一対のプライマーに加えて、当該プライマーとは異なる別のプライマー(例えば、後述する蛍光用プライマーや、後述するSSRプライマー)が用いられてもよい。
【0073】
本実施形態のプライマー対は、配列表の配列番号1に示す雄性不稔遺伝子ms1-1の塩基配列のうち、少なくとも第290番目から第379番目までの領域(以下、「領域290-379」ともいう)を増幅可能な一対のプライマーである。
図6に、領域290-379を示す。
図6に示すように、領域290-379には、第1突然変異が生じた箇所が含まれる。なお、
図6に示す塩基配列は、
図2に示す塩基配列と同様に、配列表の配列番号1に示す雄性不稔遺伝子ms1-1の塩基配列である。
【0074】
本実施形態のプライマー対を構成するFms1-1プライマーとRms1-1プライマーは、少なくとも領域290-379を増幅可能なものであればよく、塩基の配列順序や塩基配列の長さやアニーリングする位置などについて特に限定されるものではない。
【0075】
一例として、本実施形態のプライマー対は、
図6や
図7(a)に示すように、雄性不稔遺伝子ms1-1における異なる2つの領域(5’末端側から順に、F
p1領域,R
p1c領域)及びこれに相補的な領域(5’末端側から順に、R
p1領域,F
p1c領域)を考慮して設計することができる。ここで、F
p1領域は、
図6や
図7(a)に示すように、配列表の配列番号1に示す雄性不稔遺伝子ms1-1の第290番目から第313番目までの領域であり、F
p1c領域は、F
p1領域に相補な領域である。一方、R
p1c領域は、
図6や
図7(a)に示すように、配列表の配列番号1に示す雄性不稔遺伝子ms1-1の第365番目から第392番目までの領域であり、R
p1領域は、R
p1c領域に相補な領域である。
【0076】
F
p1領域(F
p1c領域)やR
p1領域(R
p1c領域)を考慮して本実施形態のプライマー対を設計する場合、F
ms1-1プライマーは、
図7(a)に示すように、F
p1配列のポリヌクレオチドで構成することができる。F
p1配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-1のF
p1c領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドである。F
p1配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-1のF
p1c領域にハイブリダイズ可能であればよく、雄性不稔遺伝子ms1-1のF
p1領域と同一の塩基配列とすることもでき、F
p1領域と異なる塩基配列とすることもできる。
【0077】
雄性不稔遺伝子ms1-1に対する特異性を向上する観点から、F
ms1-1プライマーは、下記表6に示すように、配列表の配列番号10に示すF
p1配列のポリヌクレオチドで構成されるプライマーが好ましい。配列番号10に示すF
p1配列のポリヌクレオチドで構成されるF
ms1-1プライマーは、
図6から理解できるように、雄性不稔遺伝子ms1-1のF
p1領域の3’末端から3番目の塩基が、シトシン(C)からアデニン(A)に変更されていること以外、雄性不稔遺伝子ms1-1のF
p1領域と同一の塩基配列を有している。なお、配列番号10に示すF
p1配列のポリヌクレオチドは、24個の塩基からなる。
【表6】
【0078】
一方、F
p1領域(F
p1c領域)やR
p1領域(R
p1c領域)を考慮して本実施形態のプライマー対を設計する場合、Rプライマー
ms1-1は、
図7(a)に示すように、R
p1配列のポリヌクレオチドから構成することができる。R
p1配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-1のR
p1c領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドである。R
p1配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-1のR
p1c領域にハイブリダイズ可能であればよく、雄性不稔遺伝子ms1-1のR
p1領域と同一の塩基配列とすることもでき、R
p1領域と異なる塩基配列とすることもできる。
【0079】
具体的なRms1-1プライマーとしては、例えば、下記表7に示すように、配列表の配列番号11に示すRp1配列のポリヌクレオチドで構成されるプライマーを挙げることができる。配列番号11に示すRp1配列のポリヌクレオチドで構成されるRms1-1プライマーは、雄性不稔遺伝子ms1-1のRp1領域と同一の塩基配列を有している。なお、配列番号11に示すRp1配列のポリヌクレオチドは、28個の塩基からなる。
【0080】
【0081】
表6に示すFms1-1プライマーと表7に示すRms1-1プライマーから構成されるプライマー対を用いて、PCR法による核酸増幅を行うと、Fp1領域(Fp1c領域)とRp1領域(Rp1c領域)を含むこれらに挟まれた領域が増幅される。そして増幅される領域には、領域290-379が含まれる。
【0082】
本実施形態のプライマー対は、少なくとも領域290-379を増幅可能なものであればよく、上述した例に限定されない。
【0083】
他の例として、本実施形態のプライマー対は、
図6や
図7(b)に示すように、雄性不稔遺伝子ms1-1における異なる2つの領域(5’末端側から順に、F
p2領域,R
p2c領域)及びこれに相補的な領域(5’末端側から順に、R
p2領域,F
p2c領域)を考慮して設計することができる。ここで、F
p2領域は、
図6や
図7(b)に示すように、配列表の配列番号1に示す雄性不稔遺伝子ms1-1の第234番目から第256番目までの領域であり、F
p2c領域は、F
p2領域に相補な領域である。一方、R
p2c領域は、
図6や
図7に示すように、配列表の配列番号1に示す雄性不稔遺伝子ms1-1の第357番目から第379番目までの領域であり、R
p2領域は、R
p2c領域に相補な領域である。
【0084】
F
p2領域(F
p2c領域)やR
p2領域(R
p2c領域)を考慮して本実施形態のプライマー対を設計する場合、F
ms1-1プライマーは、
図7(b)に示すように、F
p2配列のポリヌクレオチドからなるプライマーから構成することができる。F
p2配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-1のF
p2c領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドである。F
p2配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-1のF
p2c領域にハイブリダイズ可能であればよく、雄性不稔遺伝子ms1-1のF
p2領域と同一の塩基配列とすることもでき、F
p2領域と異なる塩基配列とすることもできる。
【0085】
具体的なF
ms1-1プライマーとしては、例えば、下記表8に示すように、配列表の配列番号12に示すF
p2配列のポリヌクレオチドで構成されるプライマーを挙げることができる。配列番号12に示すF
p2配列のポリヌクレオチドで構成されるF
ms1-1プライマーは、雄性不稔遺伝子ms1-1のF
p2領域と同一の塩基配列を有している。なお、配列番号12に示すF
p2配列のポリヌクレオチドは、23個の塩基からなる。
【表8】
【0086】
一方、F
p2領域(F
p2c領域)やR
p2領域(R
p2c領域)を考慮して本実施形態のプライマー対を設計する場合、R
ms1-1プライマーは、
図7(b)に示すように、R
p2配列のポリヌクレオチドから構成することができる。R
p2配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-1のR
p2c領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドである。R
p2配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-1のR
p2c領域にハイブリダイズ可能であればよく、雄性不稔遺伝子ms1-1のR
p2領域と同一の塩基配列であってもよく、R
p2領域と異なる塩基配列であってもよい。
【0087】
具体的なRms1-1プライマーとしては、例えば、下記表9に示すように、配列表の配列番号13に示すRp2配列のポリヌクレオチドで構成することができる。配列番号13に示すRp2配列のポリヌクレオチドで構成されるRms1-1プライマーは、雄性不稔遺伝子ms1-1のRp2領域と同一の塩基配列を有している。なお、配列番号13に示すRp2配列のポリヌクレオチドは、23個の塩基からなる。
【0088】
【0089】
表8に示すFms1-1プライマーと表9に示すRms1-1プライマーから構成されるプライマー対を用いて、PCR法による核酸増幅を行うと、Fp2領域(Fp2c領域)とRp2領域(Rp2c領域)を含むこれらに挟まれた領域が増幅される。そして増幅される領域には、領域290-379が含まれる。
【0090】
ここで、表6~9に示すFms1-1プライマーやRms1-1プライマーは、雄性不稔遺伝子ms1-1の特定領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドのみより構成されている。しかしながら、Fms1-1プライマーやRms1-1プライマーは、雄性不稔遺伝子ms1-1の特定領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドのみにより構成される必要はなく、当該ポリヌクレオチドの5’末端側に、Molecular Ecology Resources (2012) 12, 456-463(以下、「非特許文献2」という)に記載されるtail配列(tail sequence)のポリヌクレオチドが連結されたものであってもよい。Fms1-1プライマーとRms1-1プライマーのいずれか一方に、前述したtail配列のポリヌクレオチドが含まれている場合、非特許文献2記載される方法に基づいて、PCR法による核酸増幅を行うことで、蛍光標識された増幅産物を得ることができる。蛍光標識された増幅産物が得られれば、その検出が容易になる。
【0091】
非特許文献2に基づいて蛍光標識された増幅産物を得るには、本実施形態のプライマー対(Rms1-1プライマー又はFms1-1プライマーには、tail配列のポリヌクレオチドが含まれている)に加えて、tail配列のポリヌクレオチドの5’末端に蛍光標識(例えば、FAM(6-Carboxyfluorescein))が付加された蛍光用プライマーが用いられる。蛍光標識された増幅産物を取得するための具体的なプライマーとしては、例えば、下記表10に示す3つのプライマーを挙げることができる。下記表10に示すプライマーのうち、Fms1-1プライマーとRms1-1プライマーが本実施形態のプライマー対である。
【0092】
【0093】
上記表10に示すFms1-1プライマーは、上記表8に示すFms1-1プライマーと同じプライマーであり、Fp2配列のポリヌクレオチドで構成されている。このため、上記表10に示すFms1-1プライマーは、雄性不稔遺伝子ms1-1のFp2c領域にハイブリダイズする。一方、上記表10に示すRms1-1プライマーは、上記表9に示すRp2配列のポリヌクレオチドの5’末端にtail配列のポリヌクレオチドが連結されていること以外、上記表9に示すFms1-1プライマーと同じプライマーである。このため、上記表10に示すRms1-1プライマーは、tail配列を除く領域(つまり、Rp2配列のポリヌクレオチド)が、雄性不稔遺伝子ms1-1のRp2c領域にハイブリダイズする。これらの上記表10に示すFms1-1プライマーとRms1-1プライマー(本実施形態のプライマー対)を用いてPCR法による核酸増幅を行うと、Fp2領域(Fp2c領域)とRp2領域(Rp2c領域)を含むこれらに挟まれた領域に加えてtail配列も増幅される。そして、tail配列を含む増幅産物が、蛍光用プライマーでさらに増幅されていくことで、蛍光標識された増幅産物が得られる。
【0094】
以上説明した本実施形態のプライマー対によれば、少なくとも、領域290-379の核酸が増幅できる。領域290-379には、上述したように、第1突然変異が生じた箇所が含まれるため、雄性不稔遺伝子ms1-1を鋳型として増幅される増幅産物(以下、「増幅産物ms1-1」ともいう)の塩基配列は、雄性可稔遺伝子Ms1を鋳型として増幅される増幅産物(以下、「増幅産物Ms1」ともいう)や雄性不稔遺伝子ms1-2を鋳型として増幅される増幅産物(以下、「増幅産物ms1-2」ともいう)の塩基配列よりも4塩基分短くなる。従って、検体の増幅産物の長さを、増幅産物ms1-1の塩基配列の長さや、増幅産物Ms1の塩基配列の長さや、増幅産物ms1-2の長さと比較することで、雄性不稔遺伝子ms1-1を検出することができる。
【0095】
なお、本実施形態のプライマー対は、第1突然変異(4塩基の欠失)が生じている箇所が含まれる領域(以下、「4塩基欠失領域」ともいう)にハイブリダイズするプライマーを含むものであってもよい。4塩基欠失領域にハイブリダイズするプライマーは、雄性不稔遺伝子ms1-1の核酸を増幅することができるが、4塩基欠失領域を含まない雄性可稔遺伝子Ms1や雄性不稔遺伝子ms1-2には、ハイブリダイズすることができない。つまり、4塩基欠失領域にハイブリダイズするプライマーを含む本実施形態のプライマー対は、雄性不稔遺伝子ms1-1を鋳型として核酸を増幅できるが、雄性可稔遺伝子Ms1や雄性不稔遺伝子ms1-2を鋳型として核酸を増幅することができない(又は、核酸を増幅できてもその増幅量が少ない)。従って、本実施形態のプライマー対が、4塩基欠失領域にハイブリダイズするプライマーを含んでいる場合には、増幅産物の有無(又は増幅量の違い)に基づき、雄性不稔遺伝子ms1-1を検出することもできる。
【0096】
次に、本実施形態のプライマー対を用いて、雄性不稔遺伝子ms1-1を検出する方法を具体的に説明する。
【0097】
雄性不稔遺伝子ms1-1の検出方法は、(1)PCR法による核酸増幅処理と(2)増幅産物の検出処理を含んでいる。
【0098】
(1)PCR法による核酸増幅処理は、本実施形態のプライマー対を用いて、PCR法により検体の核酸を増幅する処理である。PCR法により検体の核酸を増幅する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法(例えば、QIAGEN社から市販されているQIAGEN(登録商標、以下同じ) Multiplex PCR Kit Handbookに記載される条件)を用いることができる。一例としては、以下の方法を用いることができる。
【0099】
まず、反応試薬(例えば、DNAポリメラーゼ、デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dATP、 dGTP、 dCTP、 dTTP)、反応用バッファー(reaction mix)、プライマー対、蒸留水)を混合し、増幅反応液を調製する。プライマー対を除く反応試薬には、2x QIAGEN Multiplex PCR Master Mix(QIAGEN社製)等のPCR試薬キットを用いてもよい。 2x QIAGEN Multiplex PCR Master Mixは、以下の成分により構成されている。
【0100】
2x QIAGEN Multiplex PCR Master Mix:HotStarTaq(DNAポリメラーゼ)、デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dATP、 dGTP、 dCTP、 dTTP)、MgCl2等。
【0101】
次に、当該増幅反応液に検体(つまり、スギ)のDNAを加え、インキュベートする。なお、スギからDNAを抽出する方法は、第1実施形態で説明した方法と同様である。
【0102】
ここで、PCR法による核酸増幅は、例えば、次の(j)~(m)の過程で進行する。
(j)DNAを変性させて、2本鎖DNAを1本鎖DNAに解離する。
(k)解離した1本鎖DNAのそれぞれに本実施形態に係る各プライマーがアニーリングする。
(l)DNAポリメラーゼの働きにより、各プライマーの3’末端を起点として、1本鎖DNAに相補なDNA鎖が合成される。
(m)上述の(j)~(l)の過程を所定サイクル繰り返すことで、プライマーがアニーリングした領域間(プライマーがアニーリングした領域を含む、これらに挟まれた領域)の核酸が増幅される。
【0103】
インキュベートの条件は、従来公知の条件を用いることができ、特に限定されるものではない。例えば、上記(j)の過程では、インキュベートの温度は、94℃~95℃とすることができ、インキュベートの時間は、15秒から30秒とすることができる。また、例えば、上記(k)の過程では、インキュベートの温度は、55℃~63℃とすることができ、インキュベートの時間は、30秒から90秒とすることができる。また、例えば、上記(l)の過程では、インキュベートの温度は、65℃~72℃とすることができ、インキュベートの時間は、15秒から90秒とすることができる。
【0104】
以上の方法により、(1)PCR法による核酸増幅処理を行うことができる。なお、上記(1)PCR法による核酸増幅処理では、後述する(2)増幅産物の検出処理を容易にするため、蛍光標識された増幅産物を取得してもよい。蛍光標識された増幅産物の取得方法は、特に限定されるものではなく、例えば、非特許文献2記載される方法に基づき、PCR法による核酸増幅を行い、蛍光標識された増幅産物を取得してもよい。
【0105】
非特許文献2の記載される方法に基づいて蛍光標識された増幅産物を得るには、上記(1)PCR法による核酸増幅処理において、本実施形態のプライマー対(Rms1-1プライマー又はFms1-1プライマーの5’末端側にtail配列が含まれているプライマー対)と、tail配列の5’末端側に蛍光標識が付加された蛍光用プライマーの3つのプライマーを用いて核酸増幅を行う。蛍光標識された増幅産物を得るための3つのプライマーの一例は、表10に記載している。
【0106】
蛍光標識された増幅産物を得るためのPCRの条件は、蛍光用プライマーをさらに増幅反応液に添加すること以外、上述したPCR法と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0107】
(2)増幅産物の検出処理は、上記(1)PCR法による核酸増幅処理で得られる増幅産物(以下、「検体の増幅産物」ともいう)を検出する処理である。当該検出処理により検出される増幅産物の長さを、増幅産物ms1-1や増幅産物Ms1や増幅産物ms1-2の長さと比較することで、雄性不稔遺伝子ms1-1を検出することができる。
【0108】
ここで、検体の増幅産物の塩基配列の長さが、増幅産物ms1-1の長さと同等であれば、検体が雄性不稔遺伝子ms1-1を保有していると判断することができ、一方で、検体の増幅産物の塩基配列の長さが、増幅産物ms1-1の長さよりも長ければ、検体が雄性不稔遺伝子ms1-1を保有していないと判断することができる。また、検体の増幅産物の塩基配列の長さが、増幅産物Ms1や増幅産物ms1-2の長さと同等であれば、検体が雄性不稔遺伝子ms1-1を保有していないと判断することができ、一方で、検体の増幅産物の塩基配列の長さが、増幅産物Ms1や増幅産物ms1-2の長さよりも短ければ、検体が雄性不稔遺伝子ms1-1を保有していると判断することができる。
【0109】
増幅産物を検出し、検出された増幅産物の塩基配列の長さを比較するには、例えば、キャピラリー電気泳動システム(例えば、Applied Biosystems 3130)を用いることができる。キャピラリー電気泳動システムによれば、増幅産物の長さを示すエレクトロフェログラムが得られるため、増幅産物の長さの比較が容易になる。キャピラリー電気泳動システムを用いる場合、上記(1)PCR法による核酸増幅処理において蛍光標識された増幅産物を取得し、この蛍光標識された増幅産物を用いることが好ましい。
【0110】
キャピラリー電気泳動システムを用いる場合には、例えば、次の方法を用いることができる。まず、Thermo Fisher Scientific社から市販されているGeneScan(登録商標、以下同じ) 600 LIZ dye Size Standard v2.0の0.2μlとHiDi ホルムアミドの9μlとを混合してローディングバッファーとする。次いで希釈したPCR増幅産物の1μlをローディングバッファー9μlに加えサンプルを混合し、95℃で変性する。そしてApplied Biosystems(登録商標、以下同じ) 3130ジェネティックアナライザーにロードする。そして、標準的なフラグメント解析条件を使用することで、増幅産物の長さを示すエレクトロフェログラムが得られる。
【0111】
なお、上述した方法では、上記(2)増幅産物の検出処理において、検体の増幅産物の長さに基づいて雄性不稔遺伝子ms1-1を検出していたが、この方法に限定されるものではない。
【0112】
上述したように、本実施形態のプライマー対を構成する各プライマーは、第1突然変異が生じている箇所を含む4塩基欠失領域にハイブリダイズすることもできる。4塩基欠失領域にハイブリダイズするプライマーを含む本実施形態のプライマー対は、4塩基欠失領域を含む雄性不稔遺伝子ms1-1の核酸を増幅することができるが、4塩基欠失領域を含まない雄性可稔遺伝子Ms1や雄性不稔遺伝子ms1-2の核酸を増幅することができない。このため、4塩基欠失領域にハイブリダイズするプライマーを含む本実施形態のプライマー対を用いる場合には、増幅産物の有無(又は増幅量の違い)に基づき、雄性不稔遺伝子ms1-1を検出することもできる。
【0113】
増幅産物の有無(又は増幅量の違い)を確認するには、例えば、泳動用ゲルを用いて電気泳動を行い、電気泳動後に泳動物(増幅産物)を可視化する方法を用いることができる。この方法によれば、可視化処理により泳動物(増幅産物)が可視化されれば、その検体は雄性不稔遺伝子ms1-1を保有していると判断することができ、可視化処理により泳動物が可視化されなければ、その検体は雄性不稔遺伝子ms1-1を保有していないと判断することができる。
【0114】
電気泳動に用いられる泳動用ゲルは、特に制限されず、公知のゲルを使用することができ、例えば、アガロースゲルを用いることができる。アガロースの濃度は、例えば、ゲル100質量%に対して、1.0~3.0質量%とすることができる。
【0115】
泳動用ゲル中のDNAを可視化する方法は、特に限定されず、例えば、DNAを染色する染色試薬を用いることができる。例えば、染色試薬としてGelRed(登録商標)(Biotium社製)を用いた場合には、紫外線を照射することで蛍光を発する。
【0116】
泳動物(増幅産物)の確認は、バンドを目視で確認することで行ってもよく、バンドを画像化して確認することで行ってもよい。
【0117】
電気泳動を用いる具体的な方法としては、例えば、増幅産物と染色試薬を混合した混合液を用いて、アガロースゲルによる電気泳動を行い、UVランプ下で可視化されたDNAのバンドを観察する方法が挙げられる。電気泳動の電圧は、例えば、50~100Vとすることができ、試験の簡便性の観点から100Vとすることが好ましい。電気泳動を行う時間は、例えば、20~120分とすることができる。
【0118】
ここで、本実施形態のプライマー対が4塩基欠失領域にハイブリダイズするプライマーを含む場合、雄性不稔遺伝子ms1-1を保有していない検体の核酸を増幅することができないため、上記(2)増幅産物の検出処理において泳動物(増幅産物)が確認できない。しかしながら、このような場合には、上記(1)PCR法による核酸増幅処理が適切に行われていないことを理由に、泳動物(増幅産物)が確認できなかった可能性も考えられる。
【0119】
このため、本実施形態のプライマー対が4塩基欠失領域にハイブリダイズするプライマーを含む場合には、上記(1)PCR法による核酸増幅処理が適切に行われた否かを判断するため、本実施形態のプライマー対(4塩基欠失領域にハイブリダイズするプライマーを含む)に加え、雄性不稔遺伝子ms1の有無に関わらずスギが普遍的に有している塩基配列を増幅可能なプライマー対を用いて、マルチプレックスPCR法による核酸増幅を行うことが好ましい。なお、マルチプレックスPCR法とは、一つのPCR反応系において3個以上のプライマーを使用し、DNAの異なる複数の領域を同時に増幅する方法である。
【0120】
本実施形態のプライマー対とともに用いられる上述したプライマー対としては、例えば、スギのDNA中に広く散在する単純反復配列(simple sequence repeat; SSR)を増幅可能なプライマー対(以下、「SSRプライマー対」ともいう)や、スギの葉緑体DNAに含まれる配列を増幅可能なプライマー対(以下、「葉緑体プライマー対」ともいう)を挙げることができる。
【0121】
SSRプライマー対や葉緑体プライマー対による核酸増幅は、検体が雄性不稔遺伝子ms1-1を保有しているか否かに関わらず進行する。このため、本実施形態のプライマー対とともに、これらのプライマー対(SSRプライマー対や葉緑体プライマー対)を用いてマルチプレックスPCR法による核酸増幅を行う場合には、これらのプライマー対によって得られる増幅産物の有無を、上記(1)PCR法による核酸増幅処理が適切に行われたかを判断するための指標とすることができ、一方で、本実施形態のプライマー対によって得られる増幅産物の有無を、雄性不稔遺伝子ms1-1を保有しているか否かの指標とすることができる。
【0122】
好ましいSSRプライマー対としては、例えば、下記表11に示すように、配列表の配列番号25に示すFSSRプライマーと配列番号26に示すRSSRプライマーを挙げることができる。
【0123】
【0124】
なお、SSRプライマーを用いてマルチプレックスPCR法により核酸増幅する方法は、増幅反応液にさらにSSRプライマーをさらに添加すること以外、上述したPCR法と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0125】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
【0126】
本実施形態は、雄性不稔遺伝子ms1を検出することができるLAMPプライマーセットに関する。本実施形態のLAMPプライマーセットによれば、雄性不稔遺伝子ms1のうち、雄性不稔遺伝子ms1-2を検出することができる。
【0127】
本実施形態のLAMPプライマーセットは、Forward Inner Primer(以下、「FIPms1-2」ともいう。)と、Backward Inner Primer(以下、「BIPms1-2」ともいう。)と、F3ms1-2プライマーと、B3ms1-2プライマーの4種のプライマーを有している。
【0128】
本実施形態のLAMPプライマーセットに含まれる4種のプライマーは、雄性不稔遺伝子ms1-2における異なる6つの領域(5’末端側から順に、F’3領域,F’2領域,F’1領域,B’1c領域,B’2c領域,B’3c領域)及びこれに相補的な領域(5’末端側から順に、B’3領域,B’2領域,B’1領域,F’1c領域,F’2c領域,F’3c領域)を考慮して設計されている。
【0129】
本実施形態において、F’3領域は、
図3や
図8に示すように、配列表の配列番号14に示す雄性不稔遺伝子ms1-2の第1964番目から第1982番目までの領域であり、F’3c領域は、F’3領域に相補な領域である。F’2領域は、
図3や
図8に示すように、配列表の配列番号14に示す雄性不稔遺伝子ms1-2の第1983番目から第2000番目までの領域であり、F’2c領域は、F’2領域に相補な領域である。F’1領域は、
図3や
図8に示すように、配列表の配列番号14に示す雄性不稔遺伝子ms1-2の第2023番目から第2044番目までの領域であり、F’1c領域は、F’1領域に相補な領域である。
【0130】
一方、B’1c領域は、
図3や
図8に示すように、配列表の配列番号14に示す雄性不稔遺伝子ms1-2の第2046番目から第2069番目までの領域であり、B’1領域は、B’1c領域に相補な領域である。B’2c領域は、
図3や
図8に示すように、配列表の配列番号14に示す雄性不稔遺伝子ms1-2の第2105番目から第2129番目までの領域であり、B’2領域は、B’2c領域に相補な領域である。B’3c領域は、
図3や
図8に示すように、配列表の配列番号14に示す雄性不稔遺伝子ms1-2の第2130番目から第2149番目までの領域であり、B’3領域は、B’3c領域に相補な領域である。
【0131】
本実施形態のLAMPプライマーセットにおいて、FIP
ms1-2プライマーは、
図8に示すように、5´末端側からF’1c配列のポリヌクレオチドとF’2配列のポリヌクレオチドが連結してなるプライマーである。F’1c配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-2のF’1領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドであり、F’2配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-2のF’2c領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドである。ここで、F’1c配列のポリヌクレオチドがハイブリダイズする雄性不稔遺伝子ms1-2のF’1領域には、第2突然変異(30塩基欠失)が生じた箇所が含まれる。
【0132】
F’1c配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-2のF’1領域にハイブリダイズ可能であればよく、塩基の配列順序について特に限定されるものではない。例えば、F’1c配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-2のF’1c領域と同一の塩基配列であってもよく、F’1c領域と異なる塩基配列であってもよい。同様に、F’2配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-2のF’2c領域にハイブリダイズ可能であればよく、塩基の配列順序について特に限定されるものではない。例えば、F’2配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-2のF’2領域と同一の塩基配列であってもよく、F’2領域と異なる塩基配列であってもよい。
【0133】
具体的なFIPms1-2プライマーとしては、下記表12に示すように、配列表の配列番号16に示す塩基配列のポリヌクレオチドからなるプライマーを挙げることができる。配列番号16に示す塩基配列のFIPms1-2プライマーでは、F’1c配列のポリヌクレオチドが雄性不稔遺伝子ms1-2のF’1c領域と同一の塩基配列を有しており、F’2配列のポリヌクレオチドが雄性不稔遺伝子ms1-2のF’2領域と同一の塩基配列を有している。なお、配列番号16に示すFIPms1-2プライマーは、40個の塩基で構成されており、5’末端側から1番目から22番目までの塩基がF’1c配列のポリヌクレオチドであり、5’末端側から23番目から40番目までの塩基がF’2配列のポリヌクレオチドである。
【0134】
【0135】
本実施形態のLAMPプライマーセットにおいて、BIP
ms1-2プライマーは、
図8に示すように、5’末端側からB’1c配列のポリヌクレオチドとB’2配列のポリヌクレオチドが連結してなるプライマーである。B’1c配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-2のB’1領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドであり、B’2配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-2のB’2c領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドである。
【0136】
B’1c配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-2のB’1領域にハイブリダイズ可能であればよく、塩基の配列順序について特に限定されるものではない。例えば、B’1c配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-2のB’1c領域と同一の塩基配列であってもよく、B’1c領域と異なる塩基配列であってもよい。同様に、B’2配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-2のB’2c領域にハイブリダイズ可能であればよく、塩基の配列順序について特に限定されるものではない。例えば、B’2配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-2のB’2領域と同一の塩基配列であってもよく、B’2領域と異なる塩基配列であってもよい。
【0137】
具体的なBIPms1-2プライマーとしては、下記表13に示すように、配列表の配列番号15に示す塩基配列のポリヌクレオチドからなるプライマーを挙げることができる。配列番号15に示す塩基配列のBIPms1-2プライマーでは、B’1c配列のポリヌクレオチドが雄性不稔遺伝子ms1-2のB’1c領域と同一の塩基配列を有しており、B’2配列のポリヌクレオチドが雄性不稔遺伝子ms1-2のB’2領域と同一の塩基配列を有している。なお、配列番号15に示すBIPms1-2プライマーは、49個の塩基から構成されており、5’末端から1番目から24番目までの塩基がB’1c配列のポリヌクレオチドであり、5’末端から25番目から49番目までの塩基がB’2配列のポリヌクレオチドである。
【0138】
【0139】
本実施形態のLAMPプライマーセットにおいて、F3
ms1-2プライマーは、
図8に示すように、F’3配列のポリヌクレオチドからなるプライマーである。F’3配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-2のF’3c領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドである。F’3配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-2のF’3c領域にハイブリダイズ可能であればよく、塩基の配列順序について特に限定されるものではない。例えば、F’3配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-2のF’3領域と同一の塩基配列であってもよく、F’3領域と異なる塩基配列であってもよい。
【0140】
具体的なF3ms1-2プライマーとしては、下記表14に示すように、配列表の配列番号17に示す塩基配列のポリヌクレオチドからなるプライマーを挙げることができる。配列番号17に示す塩基配列のF3ms1-2プライマーでは、F’3配列のポリヌクレオチドが雄性不稔遺伝子ms1-2のF’3領域と同一の塩基配列を有している。なお、配列番号17に示すF3ms1-2プライマーにおいて、F’3配列のポリヌクレオチドは、19個の塩基からなる。
【0141】
【0142】
本実施形態のLAMPプライマーセットにおいて、B3
ms1-2プライマーは、
図8に示すように、B’3配列のポリヌクレオチドからなるプライマーである。B’3配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-2のB’3c領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドである。B’3配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-2のB’3c領域にハイブリダイズ可能であればよく、その塩基配列や配列の長さについて特に限定されるものではない。例えば、B’3配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-2のB’3領域と同一の塩基配列であってもよく、B’3領域と異なる塩基配列であってもよい。
【0143】
具体的なB3ms1-2プライマーとしては、下記表15に示すように、配列表の配列番号18に示す塩基配列のポリヌクレオチドからなるプライマーを挙げることができる。配列番号18に示す塩基配列のB3ms1-2プライマーでは、B’3配列のポリヌクレオチドが雄性不稔遺伝子ms1-2のB’3領域と同一の塩基配列を有している。なお、下記表12に示すB3ms1-2プライマーにおいて、B’3配列のポリヌクレオチドは、20個の塩基からなる。
【0144】
【0145】
本実施形態のLAMPプライマーセットは、上述したFIPms1-2、BIPms1-2、F3ms1-2プライマー及びB3ms1-2プライマーを1つずつ有するプライマーセットであり、その組み合わせについては特に限定されない。一方、核酸の増幅効率が向上する観点からは、本実施形態のLAMPプライマーセットは、下記表16に示す4種のプライマーを有することが好ましい。
【0146】
【0147】
以上説明した本実施形態のLAMPプライマーセットにおいて、FIPms1-2のF’1c配列のポリヌクレオチドは、第2突然変異(30塩基欠失)が生じている雄性不稔遺伝子ms1-2のF’1領域にハイブリダイズする。このため、雄性不稔遺伝子ms1-2を保有する検体の核酸増幅を試みると、雄性不稔遺伝子ms1-2のF’1領域にFIP(F’1c配列のポリヌクレオチド)がハイブリダイズし、FIPms1-2を介した核酸増幅が進行する。一方で、雄性不稔遺伝子ms1-2を保有していない検体(雄性可稔遺伝子Ms1や雄性不稔遺伝子ms1-1を保有する検体)の核酸増幅を試みると、FIPms1-2のF’1c配列のポリヌクレオチドがハイブリダイズするF’1領域が存在しないため、FIPms1-2を介した核酸増幅が進行しない。このため、検体が雄性不稔遺伝子ms1-2を保有している場合には、雄性不稔遺伝子ms1-2の一部の領域(具体的には、B2領域とF2領域を含む、これらに挟まれる領域。)の核酸が増幅されるが、検体が雄性不稔遺伝子ms1-2を保有していない場合には、核酸が増幅されない。従って、実施形態のLAMPプライマーセットによれば、この核酸増幅の可否に基づき、雄性不稔遺伝子ms1-2を検出することができる。
【0148】
本実施形態のLAMPプライマーセットを用いて、雄性不稔遺伝子ms1-2を検出する方法は、第1実施形態のLAMPプライマーセットを用いて、雄性不稔遺伝子ms1-1を検出する方法と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0149】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
【0150】
本実施形態は、雄性不稔遺伝子ms1を検出することができるプライマー対に関する。本実施形態のプライマー対によれば、雄性不稔遺伝子ms1のうち、雄性不稔遺伝子ms1-2を検出することができる。
【0151】
本実施形態において、プライマー対とは、二本鎖DNAの一方の一本鎖DNAにハイブリダイズするForward Primer(以下、「Fms1-2プライマー」という)と、二本鎖DNAの他方の一本鎖DNAにハイブリダイズするReverse Primer(以下、「Rms1-2プライマー」という)の2つのプライマーから構成される一対のプライマーを指す。プライマー対は、PCR法(polymerase chain reaction法)による核酸増幅に用いられる。
【0152】
本実施形態のプライマー対は、少なくとも配列表の配列番号14に示す雄性不稔遺伝子ms1-2の塩基配列の第1966番目から第2067番目までの領域(以下、「領域1966-2067」ともいう)を増幅可能な一対のプライマーである。
図9に、領域1966-2067を示す。
図9に示すように、領域1966-2067には、第2突然変異が生じた箇所が含まれる。なお、
図9に示す塩基配列は、
図3に示す塩基配列と同様に、配列表の配列番号14に示す雄性不稔遺伝子ms1-2の塩基配列である。
【0153】
本実施形態のプライマー対を構成するFms1-2プライマーやRms1-2プライマーは、少なくとも領域1966-2067を増幅可能なものであればよく、塩基の配列順序や塩基配列の長さやアニーリングする位置などについて特に限定されるものではない。
【0154】
一例として、本実施形態のプライマー対は、
図9や
図10に示すように、雄性不稔遺伝子ms1-2における異なる2つの領域(5’末端側から順に、R’
p1領域,F’
p1c領域)及びこれに相補的な領域(5’末端側から順に、F’
p1領域,R’
p1c領域)を考慮して設計することができる。ここで、F’
p1c領域は、
図9や
図10に示すように、配列表の配列番号14に示す雄性不稔遺伝子ms1-2の第2045番目から第2067番目までの領域であり、F’
p1領域は、F’
p1c領域に相補な領域である。一方、R’
p1領域は、
図9や
図10に示すように、配列表の配列番号14に示す雄性不稔遺伝子ms1-2の第1966番目から第1988番目までの領域であり、R’
p1c領域は、R’
p1領域に相補な領域である。
【0155】
F’
p1領域(F’
p1c領域)やR’
p1領域(R’
p1c領域)を考慮して本実施形態のプライマー対を設計する場合、F
ms1-2プライマーは、
図10に示すように、F’
p1配列のポリヌクレオチドで構成することができる。F’
p1配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-2のF’
p1c領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドである。F’
p1配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-2のF’
p1c領域にハイブリダイズ可能であればよく、雄性不稔遺伝子ms1-2のF’
p1領域と同一の塩基配列とすることもでき、F’
p1領域と異なる塩基配列とすることもできる。
【0156】
F’
p1領域(F’
p1c領域)やR’
p1領域(R’
p1c領域)を考慮して設計される具体的なF
ms1-2プライマーは、例えば、下記表17に示すように、配列表の配列番号19に示すF’
p1配列のポリヌクレオチドで構成することができる。配列番号19に示すF’
p1配列のポリヌクレオチドで構成されるF
ms1-2プライマーは、雄性不稔遺伝子ms1-2のF’
p1領域と同一の塩基配列を有している。なお、配列番号19に示すF’
p1配列のポリヌクレオチドは、23個の塩基からなる。
【表17】
【0157】
一方、F’
p1領域(F’
p1c領域)やR’
p1領域(R’
p1c領域)を考慮して本実施形態のプライマー対を設計する場合、R
ms1-2プライマーは、
図10に示すように、R’
p1配列のポリヌクレオチドから構成することができる。R’
p1配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-2のR’
p1c領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドである。R’
p1配列のポリヌクレオチドは、雄性不稔遺伝子ms1-2のR’
p1c領域にハイブリダイズ可能であればよく、雄性不稔遺伝子ms1-2のR’
p1領域と同一の塩基配列とすることもでき、R’
p1領域と異なる塩基配列とすることもできる。
【0158】
F’p1領域(F’p1c領域)やR’p1領域(R’p1c領域)を考慮して設計される具体的なRms1-2プライマーとしては、例えば、下記表18に示すように、配列表の配列番号20に示すR’p1配列のポリヌクレオチドで構成することができる。配列番号20に示すR’p1配列のポリヌクレオチドで構成されるRms1-2プライマーは、雄性不稔遺伝子ms1-2のR’p1領域と同一の塩基配列を有している。なお、配列番号20に示すR’p1配列のポリヌクレオチドは、23個の塩基からなる。
【0159】
【0160】
表17に示すFms1-2プライマーと表18に示すRms1-2プライマーから構成されるプライマー対を用いて、PCR法による核酸増幅を行うと、F’p1領域(F’p1c領域)とR’p1領域(R’p1c領域)を含むこれらに挟まれた領域が増幅される。そして増幅される領域には、領域1966-2067が含まれる。
【0161】
本実施形態のプライマー対は、少なくとも領域1966-2067を増幅可能なものであればよく、上述した例に限定されない。
【0162】
ここで、表17~表18に示すFms1-2プライマーやRms1-2プライマーは、雄性不稔遺伝子ms1-2の特定領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドのみより構成されていた。しかしながら、Fms1-2プライマーやRms1-2プライマーは、雄性不稔遺伝子ms1-2の特定領域にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドのみにより構成される必要はなく、当該ポリヌクレオチドの5’末端側に、上述したtail配列のポリヌクレオチドが連結されたものであってもよい。Fms1-2プライマーとRms1-2プライマーのいずれか一方にtail配列のポリヌクレオチドが含まれている場合、第2実施形態のプライマー対と同様に、非特許文献2の記載される方法に基づき、蛍光標識された増幅産物を得ることができる。
【0163】
非特許文献2に基づいて蛍光標識された増幅産物を得るための具体的なプライマーとしては、例えば、下記表19に示す3つのプライマーを挙げることができる。下記表19に示すプライマーのうち、Fms1-2プライマーとRms1-2プライマーが本実施形態のプライマー対である。
【0164】
【0165】
上記表19に示すFms1-2プライマーは、5’末端にtail配列を有していること以外、上記表17に示すFms1-2プライマーと同じプライマーである。このため、上記表19に示すFms1-2プライマーは、F’p1配列のポリヌクレオチドが、雄性不稔遺伝子ms1-2のF’p1c領域にハイブリダイズする。一方、上記表19に示すRms1-2プライマーは、上記表18に示すRms1-2プライマーと同じプライマーであり、R’p1配列のポリヌクレオチドで構成されている。このため、上記表19に示すRms1-2プライマーは、雄性不稔遺伝子ms1-2のR’p1c領域にハイブリダイズする。これらのFms1-2プライマーとRms1-2プライマー(本実施形態によればプライマー対)を用いてPCR法による核酸増幅を行うと、F’p1領域(F’p1c領域)とR’p1領域(R’p1c領域)を含むこれらに挟まれた領域に加えてtail配列も増幅される。そして、tail配列を含む増幅産物が、蛍光用プライマーでさらに増幅されていくことで、蛍光標識された増幅産物が得られる。
【0166】
以上説明した本実施形態のプライマー対によれば、少なくとも、領域1966-2067の核酸が増幅できる。領域1966-2067には、上述したように、第2突然変異が生じた箇所が含まれるため、雄性不稔遺伝子ms1-2を鋳型として増幅される増幅産物(以下、「増幅産物ms’1-2」ともいう)の塩基配列の長さは、雄性可稔遺伝子Ms1を鋳型として増幅される増幅産物(以下、「増幅産物Ms’1」ともいう)の塩基配列の長さや、雄性不稔遺伝子ms1-1を鋳型として増幅される増幅産物(以下、「増幅産物ms’1-1」ともいう)の塩基配列の長さよりも30塩基分短くなる。従って、検体の増幅産物の長さを、増幅産物ms’1-2の塩基配列の長さや、増幅産物Ms’1の塩基配列の長さや、増幅産物ms’1-1と比較することで、雄性不稔遺伝子ms1-2を検出することができる。
【0167】
なお、本実施形態のプライマー対は、第2突然変異(30塩基の欠失)が生じている箇所を含む領域(以下、「30塩基欠失領域」ともいう)にハイブリダイズするプライマーを含むものであってもよい。30塩基欠失領域にハイブリダイズするプライマーは、雄性不稔遺伝子ms1-2に含まれる30塩基欠失領域にハイブリダイズすることができるが30塩基欠失領域を含まない雄性可稔遺伝子Ms1や雄性不稔遺伝子ms1-1には、ハイブリダイズすることができない。つまり、30塩基欠失領域にハイブリダイズするプライマーを含む本実施形態のプライマー対は、雄性不稔遺伝子ms1-2を鋳型として核酸を増幅できるが、雄性可稔遺伝子Ms1や雄性不稔遺伝子ms1-1を鋳型として核酸を増幅することができない(又は、核酸を増幅できてもその増幅量が少ない)。従って、本実施形態のプライマー対が、30塩基欠失領域にハイブリダイズするプライマーを含んでいる場合には、増幅産物の有無(又は増幅量の違い)に基づき、雄性不稔遺伝子ms1-2を検出することもできる。
【0168】
本実施形態のプライマー対を用いて、雄性不稔遺伝子ms1-2を検出する方法は、第2実施形態のプライマー対を用いて、雄性不稔遺伝子ms1-1を検出する方法と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0169】
なお、検体の増幅産物の長さを増幅産物ms1-2の長さと比較する場合、検体の増幅産物の塩基配列の長さが、増幅産物ms1-2の長さと同等であれば、検体が雄性不稔遺伝子ms1-2を保有していると判断することができ、一方で、検体の増幅産物の塩基配列の長さが、増幅産物ms1-2の長さよりも長ければ、検体が雄性不稔遺伝子ms1-2を保有していないと判断することができる。また、検体の増幅産物の長さを増幅産物Ms1や増幅産物ms1-1の長さと比較する場合、検体の増幅産物の塩基配列の長さが、増幅産物Ms1や増幅産物ms1-1の長さと同等であれば、検体が雄性不稔遺伝子ms1-2を保有していないと判断することができ、一方で、検体の増幅産物の塩基配列の長さが、増幅産物Ms1や増幅産物ms1-1の長さよりも短ければ、検体が雄性不稔遺伝子ms1-2を保有していると判断することができる。
【0170】
また、検体の増幅産物の長さを、増幅産物ms1-2の長さや増幅産物Ms1や増幅産物ms1-1の長さと比較する方法は、キャピラリー電気泳動システムを用いる上述した方法に限定されない。例えば、検体の増幅産物を、増幅産物ms1-2や増幅産物Ms1や増幅産物ms1-1とともに電気泳動し、泳動物(増幅産物)を可視化して、泳動距離から増幅産物の長さの比較を行ってもよい。なお、電気泳動の方法や泳動物(増幅産物)の可視化方法は、第2実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0171】
以上説明した実施形態1~4において、LAMPプライマーセットやプライマー対を構成する各プライマーは、公知の方法で製造することができる。例えば、各プライマーは、公知の核酸合成法により化学的に合成して製造してもよく、また、DNA合成装置で合成して製造してもよい。核酸合成法には、例えば、固相合成法(ホスホロアミダイト法)を用いることができる。固相合成法(ホスホロアミダイト法)は、例えば、Beaucage, S. L. and Caruthers, M. H., Deoxynucleoside phosphoramidites-A new class of key intermediates for deoxypolynucleotide synthesis, Tetrahedron Letters, Vol 22, Pages 1859-1862, 1981年、に記載されている
【実施例】
【0172】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0173】
[参考例1:雄性不稔遺伝子ms1の候補遺伝子の選定]
以下に示す方法により雄性不稔遺伝子ms1の候補遺伝子を特定した。
【0174】
<試験材料>
(a)雄性可稔スギAの雄花
(b)雄性可稔スギBの雄花
(c)雄性不稔スギCと雄性可稔スギBとの交配家系から「雄性可稔スギ」約50個体程度の雄花
(d)雄性不稔スギCと雄性可稔スギBとの交配家系から「雄性不稔スギ」約50個体程度の雄花
(e)雄性不稔スギDと雄性可稔スギBとの交配家系から「雄性可稔スギ」約50個体程度の雄花
(f)雄性不稔スギDと雄性可稔スギBとの交配家系から「雄性不稔スギ」約50個体程度の雄花
【0175】
上記(a)の雄性可稔スギは、雄性可稔遺伝子Ms1をホモ接合型で保有していることが知られており、日本国新潟県村上市鵜渡路で生育されている。上記(b)の雄性可稔スギは、雄性不稔遺伝子ms1をヘテロ接合型で保有していることが知られており、日本国新潟県村上市鵜渡路で生育されている。上記(c)の雄性可稔スギは、雄性不稔遺伝子ms1をヘテロ接合型で保有していることが知られており、日本国茨城県かすみがうら市上志筑で生育されている。上記(d)の雄性不稔スギは、雄性不稔遺伝子ms1をホモ接合型で保有していることが知られており、日本国茨城県かすみがうら市上志筑で生育されている。上記(e)の雄性可稔スギは、雄性不稔遺伝子ms1をヘテロ接合型で保有していることが知られており、日本国茨城県かすみがうら市上志筑で生育されている。上記(f)の雄性不稔スギは、雄性不稔遺伝子ms1をホモ接合型で保有していることが知られており、日本国茨城県かすみがうら市上志筑で生育されている。試験材料は、例えば、非特許文献3:Moriguchi Y, Ueno S, Saito M, Higuchi Y, Miyajima D, Itoo S, Tsumura Y (2014) A simple allele-specific PCR marker for identifying male-sterile trees: Towards DNA marker-assisted selection in the Cryptomeria japonica breeding program. Tree Genetics & Genomes 10: 1069-1077においても言及されている。
【0176】
<RNA抽出>
液体窒素内にて凍結させた上記試験材料(a)~(f)を、ホモジナイザー(製品名:TissueLyser II、キアゲン社製)にて粉砕した。次いで、粉砕された各試験材料から、トータルRNAの抽出をCTAB抽出バッファー(le Provost G, Herrera R, Paiva JA, Chaumeil P, Salin F, et al. (2007) A micromethod for high throughput RNA extraction in forest trees. Biol Res, Vol 40: 291-297)により行い、クロロホルム・イソアミルアルコール(容量比 24:1)を加え、上層を他の容器に移した。この容器に、1/4量の塩化リチウム溶液(10mol/l)を加えてRNAを沈澱させた。さらにその沈殿物を精製用キット(製品名:SV total RNA purification system、プロメガ社製)を用いて、当該キットの推奨プロトコルに従い、トータルRNAを得た。
【0177】
<RNAシークエンス>
上述した方法で調製したトータルRNA2μgと、TruSeq RNA Sample Prep Kit(イルミナ社製)とを用いて、当該キットの推奨プロトコルに従い、cDNAライブラリーを作製した。その結果、平均約262塩基長のcDNAライブラリーが作製された。作製したcDNAライブラリーについて、シークエンサーMiSeqおよびHiSeq2500(イルミナ社製)を用いてシークエンス解析を行い、それぞれリード長250bpおよび101bpの配列情報を取得した。取得した配列を、以下の説明では、リード配列という。
【0178】
<シークエンス情報の解析>
cutadapt(Martin M (2011) Cutadapt removes adapter sequences from high-throughput sequencing reads. EMBnet journal; Vol 17, No 1: Next Generation Sequencing Data Analysis)を用いて、リード配列から品質の低い部分を除去し、高品質(HQ)なリード配列を以降の解析で使用した。HQリード配列をOases(Schulz MH, Zerbino DR, Vingron M, Birney E (2012) Oases: robust de novo RNA-seq assembly across the dynamic range of expression levels. Bioinformatics 28: 1086-1092)およびTrinity(Grabherr MG, Haas BJ, Yassour M, Levin JZ, Thompson DA, et al. (2011) Full-length transcriptome assembly from RNA-Seq data without a reference genome. Nat Biotechnol 29: 644-652)でアセンブリーを行いコンティグ配列を作成した。得られたコンティグ配列はEvidentialGene(Gilbert DG (2019) Longest protein, longest transcript or most expression, for accurate gene reconstruction of transcriptomes? bioRxiv: 829184)で取りまとめ、さらにBLAST(Altschul SF, Gish W, Miller W, Myers EW, Lipman DJ (1990) Basic local alignment search tool. J Mol Biol 215: 403-410)によるホモロジー探索の結果を考慮して手動で統合した。このようにしてスギの参照配列の49795本を得た。以下の説明ではこれらの49795本をCJ3006NREと呼ぶ。Burrows-Wheeler Aligner(BWA)version 0.5.9(Bioinformatics. 2009; Fast and accurate short read alignment with Burrows-Wheeler transform, vol 25: page,1754-1760)を用いて、取得したリード配列を、スギの参照配列上にマッピングして整列させた。スギの参照配列には、CJ3006NREを用いた。
【0179】
そして、以下の仮説(i)~(ii)に基づき、リード配列の中から雄性不稔遺伝子ms1の候補遺伝子を選択した。
(i)雄性不稔遺伝子ms1の候補遺伝子は、雄性可稔スギの雄花で発現し、雄性不稔スギの雄花や雄花以外の組織では、その発現量が雄性可稔スギよりも少ない。
(ii)スギの参照配列の各遺伝子に対して整列したリードの本数、つまり、Transcripts Per Million(以下、「TPM」ともいう)が、リードが整列する遺伝子の発現量に比例する。
【0180】
具体的には、本参考例とは別に予め評価しておいた内樹皮と針葉のサンプルでTPMが10未満、かつ雄性可稔スギの雄花に由来するサンプルのTPMが雄性不稔スギの雄花に由来するサンプルのTPMの2倍より大きいことを条件として、雄性不稔遺伝子ms1の候補遺伝子を選択した。その結果、88個の候補遺伝子が得られた。
【0181】
これらの候補遺伝子について、RNAシークエンスのリード配列のアラインメントから突然変異を探索したところ、
図11に示すように、(b)「雄性可稔スギB(Ms1/ms1)」の雄花サンプル、(c)「雄性不稔スギCと雄性可稔スギBとの交配家系」から雄性可稔スギ(Ms1/ms1)約50個体程度の雄花サンプル、(d)「雄性不稔スギCと雄性可稔スギBとの交配家系」から雄性不稔スギ(ms1/ms1)約50個体程度の雄花サンプル、(e)「雄性不稔スギDと雄性可稔スギBとの交配家系」から雄性可稔スギ(Ms1/ms1)約50個体程度の雄花サンプル、および(f)「雄性不稔スギDと雄性可稔スギBとの交配家系」から雄性不稔スギ(ms1/ms1)約50個体程度の雄花サンプルから、遺伝子CJt020762にアミノ酸配列を大きく変える4塩基の欠失(第1突然変異)の存在が予想された。この遺伝子CJt020762を雄性不稔遺伝子ms1の候補遺伝子(以下、「候補遺伝子CJt020762」という)として選定した。
【0182】
[参考例2:候補遺伝子CJt020762(雄性不稔遺伝子ms1-1)の配列特定]
サンガー方法によって、候補遺伝子CJt020762の全長の塩基配列を特定した。具体的な方法を以下に示す。
【0183】
<試験材料>
(a)雄性不稔スギEの針葉。
(b)雄性可稔スギFの針葉。
【0184】
上記(a)の雄性不稔スギEは、雄性不稔遺伝子ms1をホモ接合で保有していることが知られており(斎藤真己 (2010) スギ花粉症対策品種の開発. 日本森林学会誌 92: 316-323)、日本国新潟県村上市鵜渡路2249-5で育成されている。上記(b)の雄性可稔スギFは、雄性不稔遺伝子ms1をヘテロ接合型で保有していることが知られており、日本国静岡県浜松市浜北区で生育されている(静岡県農林技術研究所森林・林業研究センター, 静岡県農林技術研究所 森林・林業研究センター 60周年記念誌 2017, 静岡県森林・林業研究センター振興協議会)。
【0185】
<第1のプライマー対の設計>
参考例1で特定した候補遺伝子CJt020762を増幅するため、候補遺伝子CJt020762のトランスクリプト配列(つまり、mRNAの配列)を特定した。候補遺伝子CJt020762のトランスクリプト配列は、CJ3006NRE配列データから抽出した。
【0186】
候補遺伝子CJt020762のトランスクリプト配列に基づき、候補遺伝子CJt020762の全長を増幅するためのプライマー対(以下、「プライマー対α」ともいう)を設計し、プライマー対αを合成した。プライマー対αの合成は、固相合成法(ホスホロアミダイト法)でDNA合成装置により行った。合成したプライマー対αの塩基配列を、下記表20及び配列表の配列番号28及び29に示す。
【0187】
【0188】
<DNAの抽出>
上記試験材料(a)~(b)から、DNAを抽出した。DNAの抽出には、改変したCTAB法(Murray MG, Thompson WF (1980) Rapid isolation of high molecular weight plant DNA. Nucleic Acids Res 8: 4321-4325)を用いた。
【0189】
具体的には、針葉組織(約0.1g)を液体窒素で凍結したのち、Tissue Lyser II(キアゲン社製)にて破砕し、それを0.9mlの抽出バッファー1(50mM Tris pH8、5mM EDTA、350mM ソルビトール、10%PVP、0.1%BSA、0.2%メルカプトエタノール)に添加して撹拌した後、沈殿を回収した。沈殿に0.3mlの洗浄バッファー(50mM Tris pH8、25mM EDTA、350mM ソルビトール、0.1%メルカプトエタノール)を加えて撹拌し、10%N-ラウロイルサルコシンナトリウムを0.03ml加え撹拌した後、15分間静置した。等量(0.3ml)の2xCTAB抽出液を添加して60度で10分放置してゲノムDNAを抽出した。CTAB抽出液に等量(0.6ml)のクロロホルム・イソアミルアルコール(容量比 24:1)を加え、上層を他の容器に移した。この容器に、2/3容量のイソプロパノールを加えてDNAを沈澱させて、これを分取することによりDNAを抽出した。なお、1xCTAB抽出液には、1%のCTABと、50mMのTris-HCl(pH 8.0)と、0.7MのNaClと、10mMのEDTA(ethylenediaminetetraacetic acid)が含まれていた。
【0190】
<PCR法による核酸増幅>
合成したプライマー対αを用いて、試験材料(a)~(b)から抽出したそれぞれのDNAを鋳型としてPCR法による核酸増幅を行った。具体的には、下記表21(a)に示す各成分を混合して増幅反応液を作成し、増幅反応液が充填されたマイクロチューブを、GeneAmp(登録商標、以下同様) PCR System 9700サーマルサイクラー(Thermofisher Scientific(株))に設置し、下記表21(b)に示す条件でインキュベートした。
【0191】
【表21(a)】
なお、表21(a)において、「2×Multiplex」は、2倍濃度反応用バッファー(QIAGEN Multiplex PCR Kitの2x QIAGEN Multiplex PCR Master Mix)を指す。
【0192】
【0193】
得られた増幅産物を電気泳動し、長さが2.5kb程度の増幅産物が得られたことを確認した。
【0194】
<シークエンシング解析>
CJt020762のトランスクリプト配列(evgc57800_g1_i2)に基づき、増幅産物の塩基配列を解析するためのシーケンシングプライマーセット1(以下、「シーケンシングプライマーセット1」ともいう)を設計し、シーケンシングプライマーセット1の各プライマーを合成した。シーケンシングプライマーセット1の各プライマー合成は、固相合成法(ホスホロアミダイト法)でDNA合成装置により行った。合成したシーケンシングプライマーセット1の各プライマーの塩基配列を、下記表22及び配列表の配列番号30~33に示す。
【0195】
【0196】
得られた増幅産物を精製し、合成したシーケンシングプライマーセット1を用いてサンガー法(Sanger, F., S. Nicklen, and A.R. Coulson, DNA sequencing with chain-terminating inhibitors. Proc Natl Acad Sci U S A, 1977. 74(12): p. 5463-7.)により反応を行った。具体的には、BigDye(登録商標、以下同じ) Direct Cycle Sequencing Kit(Thermofisher Scientific(株))によりキット付属のプロトコルに従い反応を行った。
【0197】
サンガー法による反応で得られた産物を、キャピラリー式電気泳動装置(製品名:3130 Genetic Analyzer、Applied Biosystems社製)で泳動して増幅産物の塩基配列を解読した。具体的には、Applied Biosystems 3130/3130xlジェネティックアナライザー操作ガイドRev.1.1に従い、36cmキャピラリーアレイ、POP7ポリマー、RapidSeq36_POP7ランモジュールを使用した。その後、得られた配列について、CodonCode Aligner (CodonCode社)を用いて、配列アセンブルを行った。
【0198】
<第2~第4のプライマー対の設計>
候補遺伝子CJt020762の全長の塩基配列をさらに正確に把握するため、アセンブルされた配列に基づき、候補遺伝子CJt020762の全長を増幅するためのプライマー対(以下、「プライマー対β~δ」ともいう)を設計し、プライマー対β~δを合成した。プライマー対β~δの各プライマーの合成は、固相合成法(ホスホロアミダイト法)でDNA合成装置により行った。合成したプライマー対β~δの各プライマーの塩基配列を、下記表23(a)~(c)及び配列表の配列番号34~39に示す。
【0199】
【表23(a)】
【表23(b)】
【表23(c)】
【0200】
<PCR法による核酸増幅>
プライマー対αにかえてプライマー対β~δを用いたこと以外は、上記表21(a)に示す成分と同じ成分を混合して、増幅反応液を作成した。温度条件の66℃を63℃に変更したこと以外は、上記表21(b)に示す条件と同様の条件で、それぞれの増幅反応液をインキュベートし、PCR法による核酸増幅を行った。得られた増幅産物をそれぞれ電気泳動し、増幅産物の長さが期待されるサイズであることを確認した。
【0201】
<シークエンシング解析>
前述した配列アセンブルの結果に基づき、増幅産物の塩基配列を解析するためのシーケンシングプライマーセット2(以下、「シーケンシングプライマーセット2」ともいう)を設計し、プライマーセット2を合成した。シーケンシングプライマーセット2の各プライマーの合成は、固相合成法(ホスホロアミダイト法)でDNA合成装置により行った。合成したシーケンシングプライマーセット2の各プライマーの塩基配列を、下記表24及び配列表の配列番号40~44に示す。
【0202】
【0203】
得られた増幅産物を精製し、合成したシーケンシングプライマーセット2を用いてサンガー法により反応を行った。なお、サンガー法は、シーケンシングプライマーセットを変更したこと以外は上述した方法と同様の方法で行った。
【0204】
サンガー法による反応で得られた産物を、それぞれキャピラリー式電気泳動装置(製品名:3130 Genetic Analyzer、Applied Biosystems社製)で泳動して増幅産物の塩基配列を解読した。なお、キャピラリー式電気泳動装置による塩基配列の解読は、上述した方法と同様の方法で行った。その後、得られた配列について、CodonCode Aligner(CodonCode社)を用いて、配列アセンブルを行った。
【0205】
アセンブルの結果から、(a)雄性不稔スギEの候補遺伝子CJt020762の配列を完成させた。この増幅産物の配列を、CJ3006NREのCJt020762と比較したところ、4塩基の欠失が確認された。(a)雄性不稔スギEが保有する候補遺伝子CJt020762の塩基配列は、
図2や配列表の配列番号1に示す通りであり、本発明者等は、これを雄性不稔遺伝子ms1-1と名付けた。
【0206】
また、(a)雄性不稔スギEから特定した雄性不稔遺伝子ms1-1の4塩基の欠失箇所に、シーケンシングにより特定した4塩基を挿入し、これを雄性可稔遺伝子Ms1と仮定した。この仮定した雄性可稔遺伝子Ms1(以下、「仮定雄性可稔遺伝子Ms1」ともいう)の配列に、BWAを用いて、上述した方法で特定した候補遺伝子CJt020762のトランスクリプト配列をマッピングし、第1~第3のエクソンを特定した。
【0207】
一方、(b)雄性可稔スギFについては、たんぱく質をコードしているCDS(Coding Sequence)に30塩基の欠失(第2突然変異)が含まれることが明らかになったが、30塩基の欠失を含むことに加えて、30塩基の欠失を含む雄性不稔遺伝子ms1をヘテロ型で保有している個体であったため、候補遺伝子CJt020762に対応する遺伝子の塩基配列を完成させることはできなかった。本発明者等は、CDS(Coding Sequence)において30塩基欠失している遺伝子を、雄性不稔遺伝子ms1-2と名付けた。
【0208】
[参考例3:雄性不稔遺伝子ms1-2と雄性可稔遺伝子Ms1の配列決定]
アンプリコンシークエンス法により、雄性不稔遺伝子ms1-2と雄性可稔遺伝子Ms1の塩基配列を決定した。具体的な方法を以下に示す。
【0209】
<試験材料>
(a)雄性不稔スギ「E」の針葉。
(b)雄性不稔スギ「G」の針葉。
(c)雄性不稔スギ「D」の針葉。
(d)雄性不稔スギ「H」の針葉。
(e)雄性不稔スギ「I」の針葉。
(f)雄性不稔スギ「J」の針葉。
(g)雄性不稔スギ「K」の針葉。
(h)雄性可稔スギ「L」の針葉。
(i)雄性可稔スギ「F」の針葉。
(j)天然スギ(雄性可稔スギ)74個体の針葉。
【0210】
上記(a)の雄性不稔スギEは、参考例2で用いた(a)の雄性不稔スギEと同じスギであり、上記(i)の雄性可稔スギFは、参考例2で用いた(b)の雄性可稔スギFと同じスギである。
【0211】
上記(b)の雄性不稔スギGは、雄性不稔遺伝子ms1をホモ接合型で保有していることが知られており(斎藤真己 (2010) スギ花粉症対策品種の開発. 日本森林学会誌 92: 316-323)、日本国新潟県村上市で生育されている。上記(c)の雄性不稔スギDは、雄性不稔遺伝子ms1をホモ接合型で保有していることが知られており、日本国新潟県新潟市で生育されている。上記(d)の雄性不稔スギHは、雄性不稔遺伝子ms1をホモ接合型で保有していることが知られており、日本国新潟県新潟市で生育されている。上記(e)の雄性不稔スギIは、雄性不稔遺伝子ms1をホモ接合型で保有していることが知られており、日本国新潟県新潟市で生育されている。上記(f)の雄性不稔スギJは、雄性不稔遺伝子ms1をホモ接合型で保有していることが知られており、日本国神奈川県厚木市で生育されている。上記(g)の雄性不稔スギKは、雄性不稔遺伝子ms1をホモ接合型で保有していることが知られており、日本国新潟県新潟市で生育されている。上記(h)の雄性可稔スギLは、雄性不稔遺伝子ms1をヘテロ接合型で保有していることが知られており、日本国神奈川県厚木市で生育されている。上記(j)の天然スギは、日本国内のスギ天然林(18箇所)に由来する74個体で日本国茨城県つくば市で生育されている。
【0212】
<プライマー対ε~λのプライマー対の設計>
雄性不稔遺伝子ms1-2と雄性可稔遺伝子Ms1の塩基配列を決定するため、下記表25(a)~(g)に示すプライマー対(以下、「プライマー対ε~λ」ともいう)を設計し、プライマー対ε~λの各プライマーを合成した。なお、プライマー対ε~λは、参考例2で特定した候補遺伝子CJt020762の塩基配列に基づき、ソフトウェアPCR suite(Marijke J. van Baren and Peter Heutink, Bioinformatics, The PCR Suite Volume 20, Issue 4, 1 March 2004, Pages 591-593)を用いて設計した。また、プライマー対ε~λの各プライマーの合成は、固相合成法(ホスホロアミダイト法)でDNA合成装置により行った。合成したプライマー対ε~λの各プライマーの塩基配列を、下記表25(a)~(g)及び配列表の配列番号45~58に示す。
【0213】
【表25(a)】
【表25(b)】
【表25(c)】
【表25(d)】
【表25(e)】
【表25(f)】
【表25(g)】
【0214】
<DNAの抽出>
参考例2と同様の方法で、上記試験材料(a)~(j)から、DNAをそれぞれ抽出した。DNAの抽出は、参考例2と同様の方法で行った。
【0215】
<PCR法による核酸増幅>
プライマー対ε~λを用いて、試験材料(a)~(j)から抽出したそれぞれのDNAを鋳型としてPCRを行った。PCRは、参考例2におけるプライマー対β~δを用いたPCRと同様の方法で行った。
【0216】
<アンプリコンシークエンス法による解析>
PCRで得られた増幅産物にバーコード配列を付与した。バーコード配列は、Fluidigm社の提供するアダプター(Access Array(商標) Barcode Library for Illumina Sequencers-384, Single Direction)を使用して、そのユーザーガイドに従って付与した。
【0217】
バーコード配列が付与された増幅産物の塩基配列を、MiSeqシーケンサー(イルミナ社製)を用いて解読した。
【0218】
得られたリード配列を、バーコード配列をもとに個体別に振り分けた後、参考例2で得られた仮定雄性可稔遺伝子Ms1の配列にマップし、各個体の配列決定を行った。この過程では、ソフトウェアBWAを用いた。さらに、ソフトウェアPHASE(version 2.1)を使用して、非特許文献4(Stephens M, Donnelly P (2003) A comparison of bayesian methods for haplotype reconstruction from population genotype data. Am J Hum Genet 73: 1162-1169.,Stephens M, Smith NJ, Donnelly P (2001) A new statistical method for haplotype reconstruction from population data. Am J Hum Genet 68: 978-989.)に記載される方法に従い、雄性不稔遺伝子ms1及び雄性可稔遺伝子Ms1に係る49種類のハプロタイプを得た。
【0219】
そして、取得した49種類のハプロタイプのうち、CDSにおいて30塩基欠失しているハプロタイプを、雄性不稔遺伝子ms1-2として特定した。特定した雄性不稔遺伝子ms1-2は、(i)雄性可稔スギFが保有するものであり、その塩基配列は、
図3や配列表の配列番号14に示している。
【0220】
そして、取得した49種類のハプロタイプのうち、CDSにおいて4塩基の欠失や30塩基欠失の欠失が見つからないハプロタイプを、雄性可稔遺伝子Ms1として特定した。代表的な雄性可稔遺伝子Ms1の塩基配列は、
図1や配列表の配列番号21と、
図4や配列表の配列番号22に示している。
【0221】
なお、本参考例から、30塩基の欠失が確認される雄性不稔遺伝子ms1-2は、上述した試験材料のうち、(i)の雄性可稔スギ「F」および(j)の天然スギ74個体のうちの3個体に見つかり、4塩基の欠失が確認される雄性不稔遺伝子ms1-1は、上述した試験材料のうち、(a)~(h)の雄性不稔スギ及び雄性可稔スギで見つかった。(i)の雄性可稔スギ「F」は、花粉を生成する雄性可稔個体であることから、雄性可稔遺伝子Ms1と雄性不稔遺伝子ms1-2をヘテロ接合型で保有する個体(以下、「Ms1/ms1-2」ともいう)であることが明らかとなった。また、(a)~(g)の雄性不稔スギ「E」「G」「D」「H」「I」「J」及び「K」は、花粉を生成しない雄性不稔個体であることから、雄性不稔遺伝子ms1-1をホモ接合型で保有している個体(以下、「ms1-1/ms1-1」ともいう)であることが明らかとなった。また、(h)の雄性可稔スギ「L」は、花粉を生成する雄性可稔個体であることから、雄性可稔遺伝子Ms1と雄性不稔遺伝子ms1-1をヘテロ接合型で保有する個体(以下、「Ms1/ms1-1」ともいう)であることが明らかとなった。
【0222】
[実施例1-1:LAMPプライマーセットによる雄性不稔遺伝子ms1-1の検出]
第1実施形態のLAMPプライマーセットを用いて、雄性不稔遺伝子ms1-1の検出を行った。具体的な方法を以下に示す。
【0223】
<試験材料>
(a)雄性不稔スギ「D:ms1-1/ms1-1」の針葉。
(b)雄性可稔スギ「F:Ms1/ms1-2」の針葉。
【0224】
上記(a)の雄性不稔スギ「D」は、参考例3で用いた(c)の雄性不稔スギDと同じスギであり、上記(b)の雄性可稔スギ「F」は、参考例3で用いた(i)の雄性可稔スギFと同じスギである。
【0225】
<LAMPプライマーセットの用意>
下記表26に示すLAMPプライマーセットを用意した。各プライマーの合成は、固相合成法(ホスホロアミダイト法)でDNA合成装置により行った。
【0226】
【0227】
<DNAの抽出>
参考例2と同様の方法で、上記試験材料(a)~(b)から、DNAをそれぞれ抽出した。
【0228】
<LAMP法による核酸増幅>
用意したLAMPプライマーセットを用いて、試験材料(a)~(b)から抽出したそれぞれのDNAを鋳型としてLAMP法による核酸増幅を行った。
【0229】
具体的には、0.2mlマイクロチューブに、LAMPプライマーセット、試験材料から抽出したDNA、LoopampDNA増幅試薬キット(栄研化学(株))の各試薬、およびLoopamp蛍光・目視検出試薬(栄研化学(株))を下記表27に示す分量で分注し、増幅反応液を作成した。
【0230】
【表27】
なお、表27において、「2×RM」は、2倍濃度反応用バッファー(2×Reaction mix)を指し、「FD」は、Loopamp蛍光・目視検出試薬を指す。
【0231】
次に、増幅反応液が充填されたマイクロチューブを、GeneAmp PCR System 9700サーマルサイクラー(Thermofisher Scientific(株))に設置し、下記表28に示す温度及び時間でインキュベートした。
【0232】
【0233】
増幅反応液が4℃になった後の増幅反応液の写真を
図12に示す。
図12に示すように、雄性不稔遺伝子ms1-1を保有する雄性不稔スギ「D」のDNAを添加した増幅反応液は、ポジティブコントロール(PC)と同様に、緑色の蛍光を発しており、核酸が増幅されていることが確認できた。一方、雄性不稔遺伝子ms1-1を保有しない雄性可稔スギ「F」のDNAを添加した増幅反応液は、ネガティブコントロール(NC)と同様に、緑色の蛍光を発しておらず、核酸の増幅が確認できなかった。この結果から、表26に示すLAMPプライマーセットセットによれば、雄性不稔遺伝子ms1-1を検出できたことが理解できた。
【0234】
なお、本実施例において、ネガティブコントロールには、蒸留水を用いた。
【0235】
[実施例1-2:LAMPプライマーセットによる雄性不稔遺伝子ms1-1の検出]
第1実施形態のLAMPプライマーセットを用いて、雄性不稔遺伝子ms1-1の検出を行った。具体的な方法を以下に示す。なお、試験材料と、試験材料からDNAを抽出する方法は、実施例1-1と同じであるため、説明を省略する。
【0236】
<試験材料>
(a)雄性不稔スギ「D:ms1-1/ms1-1」の針葉。
【0237】
上記(a)の雄性不稔スギ「D」は、参考例3で用いた(c)の雄性不稔スギDと同じスギである。
【0238】
<LAMPプライマーセットの用意>
下記表29(a)~(b)に示すLAMPプライマーセットA~Eを用意した。各プライマーの合成は、固相合成法(ホスホロアミダイト法)でDNA合成装置により行った。
【0239】
【0240】
<LAMP法による核酸増幅>
用意したLAMPプライマーセットA~Eを用いて、試験材料(a)から抽出したDNAを鋳型としてLAMP法による核酸増幅を行った。
【0241】
具体的にはまず、0.2mlマイクロチューブに、LAMPプライマーセット、試験材料から抽出したDNA、LoopampDNA増幅試薬キット(栄研化学(株))の各試薬を下記表30に示す分量で分注し、増幅反応液を作成した。
【0242】
【表30】
なお、表30において、「2×RM」は、2倍濃度反応用バッファー(2×Reaction mix)を指す。
【0243】
次に、増幅反応液が充填されたマイクロチューブを、リアルタイム濁度測定装置LoopampEXIA(栄研化学(株))に設置し、下記表31に示す温度及び時間でインキュベートした。
【0244】
【0245】
63℃でインキュベート中の増幅反応液の濁度変化を、
図13に示す。なお、濁度は、リアルタイム濁度測定装置LoopampEXIA(栄研化学(株))により測定した。
図13に示すように、LAMPプライマーセットA~Fいずれを用いた場合であっても、雄性不稔遺伝子ms1-1を保有する雄性不稔スギ「D」のDNAを添加した増幅反応液では、ネガティブコントロール(NC)よりも濁度が高く、核酸が増幅されていることが確認できた。
【0246】
また、
図13から理解できるように、LAMPプライマーセットA~Eの中でも、配列番号4に示すBIP
ms1-1を用いたLAMPプライマーセットCや、配列番号5に示すBIP
ms1-1を用いたLAMPプライマーセットDで核酸を増幅したときの方が、他のLAMPプライマーセットで核酸増幅したときと比べて、濁度がより高かった。濁度が高いことは、核酸の増幅がより進んでいることを指す。従って、本実施例の結果から、LAMPプライマーセットCやLAMPプライマーセットDで核酸を増幅したときの方が、他のLAMPプライマーセットで核酸増幅したときと比べて、核酸増幅の効率が高いことが明らかとなった。
【0247】
なお、雄性可稔スギ「F:Ms1/ms1-2」の針葉を試験材料として核酸増幅を行ったところ、ほぼ全てのLAMPプライマーセットを用いた増幅反応液において、濁度がネガティブコントロール(NC)と同等程度であった。しかしながら、核酸増幅処理の条件によっては、LAMPプライマーセットAやCを用いた増幅反応液は、これら以外のLAMPプライマーセット(LAMPプライマーセットB、D、E)を用いた増幅反応液と比較して、濁度が高くなることがあった。つまり、LAMPプライマーセットB、D、Eは、LAMPプライマーセットAやCと比較して、雄性不稔遺伝子ms1-1に対する特異性が高いことが明らかになった。
【0248】
以上の結果から、LAMPプライマーセットA~Eの中でも、LAMPプライマーセットDが、雄性不稔遺伝子ms1-1の核酸増幅効率がより向上するとともに、雄性不稔遺伝子ms1-1に対する特異性がより高いことから、最も好ましいことが明らかとなった。
【0249】
[実施例2-1:プライマー対による雄性不稔遺伝子ms1-1の検出]
第2実施形態のプライマー対を用いて、雄性不稔遺伝子ms1-1の検出を行った。この実施例では、増幅産物の有無に基づき、雄性不稔遺伝子ms1-1を検出した。具体的な方法を以下に示す。
【0250】
<試験材料>
(a)雄性不稔スギ「E:ms1-1/ms1-1」の針葉。
(b)雄性可稔スギ「G492」の針葉。
(c)雄性可稔スギ「F:Ms1/ms1-2」の針葉。
【0251】
なお、上記(a)の雄性不稔スギ「E」は、参考例3で用いた(a)の雄性不稔スギEと同じスギであり、上記(c)の雄性可稔スギ「F」は、参考例3で用いた(i)の雄性可稔スギFと同じスギである。また、上記(b)の雄性可稔スギは、上記(a)の雄性不稔スギ「E」と上記(c)の雄性可稔スギ「F」の交配家系であり、可稔スギであることから、雄性可稔遺伝子Ms1と雄性不稔遺伝子ms1-1をヘテロ型で保有している個体(以下、「Ms1/ms1-1」ともいう)であると判断できる。上記(b)の雄性可稔スギ「G492」は、日本国静岡県浜松市浜北区で生育されている。
【0252】
<プライマー対の用意>
下記表32に示すプライマー対を用意した。各プライマーの合成は、固相合成法(ホスホロアミダイト法)でDNA合成装置により行った。
【0253】
【0254】
<SSRプライマー対の用意>
核酸増幅処理が適切に行われたか否かを確認するため、下記表33に示すSSRプライマー対(Tani N, Takahashi T, Ujino-Ihara T, Iwata H, Yoshimura K, Tsumura Y (2004) Development and characteristics of microsatellite markers for sugi (Cryptomeria japonica D. Don) derived from microsatellite-enriched libraries. Annals of Forest Science 61:569--575)を用意した。各プライマーの合成は、固相合成法(ホスホロアミダイト法)でDNA合成装置により行った。
【0255】
【0256】
<DNAの抽出>
参考例2と同様の方法で、上記試験材料から、DNAをそれぞれ抽出した。
【0257】
<PCR法による核酸増幅>
用意したプライマー対及びSSRプライマー対を用いて、試験材料(a)~(c)から抽出したそれぞれのDNAを鋳型としてPCR法による核酸増幅を行った。
【0258】
具体的にはまず、0.2mlマイクロチューブに、プライマー対、SSRプライマー対、試験材料から抽出したDNA、Multiplex PCR Kit(Qiagen社製)の試薬を下記表34に示す分量で分注し、増幅反応液を作成した。
【0259】
【表34】
なお、表34において、「2×Multiplex」は、2倍濃度反応用バッファー(2x QIAGEN Multiplex PCR Master Mix)を指す。
を指す。
【0260】
次に、増幅反応液が充填されたマイクロチューブを、PCR System 9700サーマルサイクラー(Thermofisher Scientific(株))に設置し、下記表35に示す温度及び時間でインキュベートした。
【0261】
【0262】
増幅反応液の温度を4℃にした後、各増幅反応液をアガロースゲルのウェルに注入して電気泳動を行い、電気泳動後にエチジウムブロマイド液で染色した。そして、これらについて、UV照射により増幅産物の有無を確認することによって、雄性不稔遺伝子ms1-1の検出を行った。電気泳動写真を
図14に示す。
【0263】
図14に示すように、雄性不稔遺伝子ms1-1を保有する「E」及び「G492」は、2本のバンドが確認できた。一方、雄性不稔遺伝子ms1-1を保有しない「F」は、1本のバンドしか確認できなかった。2本のバンドが確認できることは、SSRプライマー対によって増幅された増幅産物に加えて、本実施形態のプライマー対によって増幅された増幅産物が得られたことを意味する。一方、1本のバンドしか確認できないことは、SSRプライマー対によって増幅された増幅産物しか得られなかったことを意味する。従って、
図14に示す結果から、表32に示す本実施形態のプライマー対により、雄性不稔遺伝子ms1-1を検出できたことが理解できた。
【0264】
[実施例2-2:プライマー対による雄性不稔遺伝子ms1-1の検出]
第2実施形態のプライマー対を用いて、雄性不稔遺伝子ms1-1の検出を行った。具体的な方法を以下に示す。この実施例では、蛍光標識された増幅産物を取得し、増幅産物の長さに基づき、雄性不稔遺伝子ms1-1を検出した。なお、試験材料からDNAを抽出する方法は、実施例2-1と同じであるため、説明を省略する。
【0265】
<試験材料>
(a)雄性不稔スギ「E:ms1-1/ms1-1」の針葉。
(b)雄性可稔スギ「F:Ms1/ms1-2」の針葉。
【0266】
なお、上記(a)の雄性不稔スギ「E」は、参考例3で用いた(a)の雄性不稔スギEと同じスギであり、上記(b)の雄性可稔スギ「F」は、参考例3で用いた(i)の雄性可稔スギFと同じスギである。
【0267】
<プライマー対の用意>
下記表36に示すプライマー対と、蛍光用プライマーを用意した。プライマー対を構成する各プライマーの合成は、固相合成法(ホスホロアミダイト法)でDNA合成装置により行った。蛍光用プライマーの合成は、固相合成法(ホスホロアミダイト法)でDNA合成装置により行った。
【0268】
【0269】
<核酸増幅>
表36に示す各プライマーを用いて、試験材料(a)~(b)から抽出したそれぞれのDNAを鋳型としてPCR法による核酸増幅を行った。
【0270】
具体的にはまず、0.2mlマイクロチューブに、試験材料から抽出したDNA、Multiplex PCR Kit(Qiagen社製)の試薬、上記表16に示す各プライマーを下記表37に示す分量で分注し、増幅反応液を作成した。
【0271】
【表37】
なお、表37において、「2×Multiplex」は、2倍濃度反応用バッファー(2x QIAGEN Multiplex PCR Master Mix)を指す。
【0272】
次に、増幅反応液が充填されたマイクロチューブを、PCR System 9700サーマルサイクラー(Thermofisher Scientific(株))に設置し、下記表38に示す温度及び時間でインキュベートした。
【0273】
【0274】
増幅反応液の温度を4℃にした後、キャピラリー電気泳動システム(Applied Biosystems 3130)を用いてエレクトロフェログラムを取得した。具体的には、まず、Thermo Fisher Scientific社から市販されているGeneScan 600 LIZ dye Size Standard v2.0の0.2μlとHiDi ホルムアミドの9μlとを混合してローディングバッファーとした。次いで、希釈したPCR増幅産物の1μlをローディングバッファー9μlに加えサンプルを混合し、95℃で変性した。そしてApplied Biosystems 3130ジェネティックアナライザーにロードし、標準的なフラグメント解析条件を使用することで、増幅産物の長さを示すエレクトロフェログラムを得た。
【0275】
取得したエレクトロフェログラムを
図15に示す。
図15に示すように、雄性不稔遺伝子ms1-1を保有する「E」を鋳型として増幅された増幅産物は、雄性不稔遺伝子ms1-1を保有しない「F」を鋳型として増幅された増幅産物よりも4塩基短くなっていることが確認できた。この結果から、表36に示す本実施形態のプライマー対により、雄性不稔遺伝子ms1-1を検出できたことが理解できた。
【0276】
[実施例3:LAMPプライマーセットによる雄性不稔遺伝子ms1-2の検出]
第3実施形態のLAMPプライマーセットを用いて、雄性不稔遺伝子ms1-2の検出を行った。具体的な方法を以下に示す。
【0277】
<試験材料>
(a)雄性不稔スギ「D:ms1-1/ms1-1」の針葉。
(b)雄性可稔スギ「F:Ms1/ms1-2」の針葉。
【0278】
なお、上記(a)の雄性不稔スギ「D」は、参考例3で用いた(c)の雄性不稔スギDと同じスギであり、上記(b)の雄性可稔スギ「F」は、参考例3で用いた(i)の雄性可稔スギFと同じスギである。
【0279】
<LAMPプライマーセットの用意>
下記表39に示すLAMPプライマーセットを用意した。各プライマーの合成は、固相合成法(ホスホロアミダイト法)でDNA合成装置により行った。
【0280】
【0281】
<DNAの抽出>
参考例2と同様の方法で、上記試験材料(a)~(b)から、DNAをそれぞれ抽出した。
【0282】
<LAMP法による核酸増幅>
用意したLAMPプライマーセットを用いて、試験材料(a)~(b)から抽出したそれぞれのDNAを鋳型としてLAMP法による核酸増幅を行った。
【0283】
具体的にはまず、0.2mlマイクロチューブに、LAMPプライマーセット、試験材料から抽出したDNA、LoopampDNA増幅試薬キット(栄研化学(株))の各試薬、およびLoopamp蛍光・目視検出試薬(栄研化学(株))を下記表40に示す分量で分注し、増幅反応液を作成した。
【0284】
【表40】
なお、表40において、「2×RM」は、2倍濃度反応用バッファー(2×Reaction mix)を指し、「FD」は、Loopamp蛍光・目視検出試薬を指す。
【0285】
次に、増幅反応液が充填されたマイクロチューブを、PCR System 9700サーマルサイクラー(Thermofisher Scientific(株))に設置し、下記表41に示す温度及び時間でインキュベートした。
【0286】
【0287】
増幅反応液の温度を4℃にした後の増幅反応液の写真を
図16に示す。
図16に示すように、雄性不稔遺伝子ms1-2を保有する「F」のDNAを添加した増幅反応液は、ポジティブコントロール(PC)と同様に、緑色の蛍光を発しており、核酸が増幅されていることが確認できた。一方、雄性不稔遺伝子ms1-2を保有しない「D」のDNAを添加した増幅反応液は、ネガティブコントロール(NC)と同様に、緑色の蛍光を発しておらず、核酸の増幅が確認できなかった。この結果から、表39に示すLAMPプライマーセットによれば、雄性不稔遺伝子ms1-2を検出できたことが理解できた。
【0288】
なお、本実施例において、ネガティブコントロールには、蒸留水を用いた。
【0289】
[実施例4-1:プライマー対による雄性不稔遺伝子ms1-2の検出]
第4実施形態のプライマー対を用いて、雄性不稔遺伝子ms1-2の検出を行った。この実施例では、増幅産物の泳動距離に基づき、雄性不稔遺伝子ms1-2を検出した。具体的な方法を以下に示す。
【0290】
<試験材料>
(a)雄性不稔スギ「D:ms1-1/ms1-1」の針葉。
(b)雄性可稔スギ「L:Ms1/ms1-1」の針葉。
(c)雄性可稔スギ「F:Ms1/ms1-2」の針葉。
【0291】
なお、上記(a)の雄性不稔スギ「D」は、参考例3で用いた(c)の雄性不稔スギと同じスギであり、上記(b)の雄性可稔スギ「L」は、参考例3で用いた(h)の雄性可稔スギと同じスギであり、上記(c)の雄性可稔スギ「F」は、参考例3で用いた(i)の雄性可稔スギと同じスギである。
【0292】
<プライマー対の用意>
下記表42に示すプライマー対を用意した。プライマー対を構成する各プライマーの合成は、固相合成法(ホスホロアミダイト法)でDNA合成装置により行った。
【0293】
【0294】
<DNAの抽出>
参考例2と同様の方法で、試験材料(a)~(c)から、DNAをそれぞれ抽出した。
【0295】
<PCR法による核酸増幅>
用意したプライマー対を用いて、試験材料(a)~(c)から抽出したそれぞれのDNAを鋳型としてPCR法による核酸増幅を行った。
【0296】
具体的にはまず、0.2mlマイクロチューブに、抽出したDNA、プライマー対、Multiplex PCR Kit(Qiagen社製)の試薬を下記表43に示す分量で分注し、増幅反応液を作成した。
【0297】
【表43】
なお、表43において、「2×Multiplex」は、2倍濃度反応用バッファー(2x QIAGEN Multiplex PCR Master Mix)を指す。
【0298】
次に、増幅反応液が充填されたマイクロチューブを、PCR System 9700サーマルサイクラー(Thermofisher Scientific(株))に設置し、下記表44に示す温度及び時間でインキュベートした。
【0299】
【0300】
増幅反応液を4℃にした後、各増幅反応液をアガロースゲルのウェルに注入して電気泳動を行い、電気泳動後にエチジウムブロマイド液で染色した。そして、泳動物の移動距離により、雄性不稔遺伝子ms1-2が検出できたか否かを判断した。電気泳動写真を
図17に示す。
【0301】
図17に示すように、雄性不稔遺伝子ms1-2を保有しない雄性不稔スギ「D」と雄性可稔スギ「L」では、同等の泳動距離となる位置に明瞭な1本のバンドが確認できた。一方、雄性不稔遺伝子ms1-2を保有する雄性可稔スギ「F」では、雄性不稔スギ「D」及び雄性可稔スギ「L」で確認されたバンドよりも泳動距離が短い位置から長い位置にかけてブロードなバンドが確認できた。雄性可稔スギ「F」では、雄性不稔スギ「D」及び雄性可稔スギ「L」で確認されたバンドよりも泳動距離が長い位置にもバンドが確認できたことから、これらよりも短い増幅産物が得られていることが理解できる。従って、表42に示すプライマー対から、雄性不稔遺伝子ms1-2を検出できたことが理解できた。
【0302】
なお、雄性可稔スギ「F」で確認されたバンドが泳動方向に延びている理由は、雄性可稔スギ「F」が保有する雄性不稔遺伝子ms1-2に由来する増幅産物の一部と、雄性可稔スギ「F」が保有する雄性可稔遺伝子Ms1に由来する増幅産物の一部がヘテロ二本鎖(Heteroduplex)を形成したためと考えられた。
【0303】
[実施例4-2:プライマー対による雄性不稔遺伝子ms1-2の検出]
第4実施形態のプライマー対を用いて、雄性不稔遺伝子ms1-2の検出を行った。この実施例では、測定した増幅産物の長さに基づき、雄性不稔遺伝子ms1-2を検出した。具体的な方法を以下に示す。なお、試験材料は、実施例4-1と同じであり、DNAの抽出方法も同じであるため、これらについての詳細な説明は省略する。
【0304】
<プライマー対の用意>
下記表45に示すプライマー対を用意した。各プライマーの合成は、固相合成法(ホスホロアミダイト法)でDNA合成装置により行った。
【0305】
【0306】
<核酸増幅>
表45に示すプライマーを用いて、試験材料(a)~(c)から抽出したそれぞれのDNAを鋳型としてPCR法による核酸増幅を行った。
【0307】
具体的にはまず、0.2mlマイクロチューブに、抽出したDNA、Multiplex PCR Kit(Qiagen社製)の試薬、表45に示す各プライマーを、下記表46に示す分量で分注し、増幅反応液を作成した。
【0308】
【表46】
なお、表46において、「2×Multiplex」は、2倍濃度反応用バッファー(2x QIAGEN Multiplex PCR Master Mix)を指す。
【0309】
次に、増幅反応液が充填されたマイクロチューブを、PCR System 9700サーマルサイクラー(Thermofisher Scientific(株))に設置し、下記表47に示す温度及び時間でインキュベートした。
【0310】
【0311】
増幅反応液を4℃にした後、キャピラリー電気泳動システム(Applied Biosystems 3130ジェネティックアナライザー)を用いてエレクトロフェログラムを取得した。なお、エレクトロフェログラムは、実施例2-2と同様の方法で取得した。
【0312】
エレクトロフェログラムを
図18に示す。
図18に示すように、雄性不稔遺伝子ms1-2を保有する雄性可稔スギ「F」を鋳型として増幅された増幅産物には、雄性不稔遺伝子ms1-2を保有しない雄性不稔スギ「D」や雄性可稔スギ「L」を鋳型として増幅された増幅産物よりも、30塩基短い増幅産物が含まれていることが確認できた。この結果から、表45に示す本実施形態のプライマー対により、雄性不稔遺伝子ms1-2を検出できたことが理解できた。
【配列表】