(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】統合発酵乾燥システムおよび発酵乾燥制御方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/60 20220101AFI20240527BHJP
C02F 11/02 20060101ALI20240527BHJP
F26B 3/32 20060101ALI20240527BHJP
F26B 25/00 20060101ALI20240527BHJP
C05F 17/90 20200101ALN20240527BHJP
【FI】
B09B3/60 ZAB
C02F11/02
F26B3/32
F26B25/00 A
C05F17/90
(21)【出願番号】P 2020094144
(22)【出願日】2020-05-29
【審査請求日】2023-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597150795
【氏名又は名称】中部エコテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】藤井 健史
(72)【発明者】
【氏名】宮下 裕之
(72)【発明者】
【氏名】本 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 達宏
(72)【発明者】
【氏名】荒川 友子
(72)【発明者】
【氏名】竹内 和敏
(72)【発明者】
【氏名】中久保 亮
(72)【発明者】
【氏名】小島 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】石田 三佳
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-269646(JP,A)
【文献】特開2007-038153(JP,A)
【文献】特開平10-076243(JP,A)
【文献】特開2002-001279(JP,A)
【文献】特開2013-115117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発酵乾燥システムと、前記複数の発酵乾燥システムを制御する統合制御部と、を有する統合発酵乾燥システムであって、
前記複数の発酵乾燥システムのそれぞれは、
発酵原料について発酵乾燥処理を行う密閉型の発酵槽を含む、発酵乾燥設備と、
前記発酵乾燥設備における発酵乾燥処理を制御する設備制御部と、
を有し、
前記統合制御部は、前記複数の発酵乾燥システムのそれぞれの前記設備制御部に対して、処理に係る運転管理信号を送信することで、前記発酵乾燥システムの動作を制御し、
前記運転管理信号は、発酵指標を指定する情報を含み、
前記設備制御部は、
前記統合制御部からの前記運転管理信号に基づいて、前記発酵乾燥設備における発酵熱量、蒸発水分量、二酸化炭素発生量、発酵槽内容物質量変化、および、
前記発酵乾燥設備より排出される排気温度を算出し、
前記発酵乾燥設備における発酵熱量、蒸発水分量、二酸化炭素発生量、発酵槽内容物質量変化、および、前記発酵乾燥設備より排出される排気温度の中から少なくとも1つの情報を
前記発酵指標として選定して前記発酵乾燥設備に係る運転パラメータを算出し、
算出した
前記運転パラメータに基づいて、前記発酵槽への送気量、前記発酵槽からの排気量、前記発酵槽へ供給する前記発酵原料の配合比および供給量、発酵乾燥後の発酵乾燥物の前記発酵槽からの排出量、ならびに、前記発酵槽の撹拌翼回転パターンの少なくとも1つを制御する、統合発酵乾燥システム。
【請求項2】
前記運転管理信号は、前記発酵指標から前記運転パラメータを設定する際の計算方法および計算パラメータを指定する情報を含む、請求項1に記載の統合発酵乾燥システム。
【請求項3】
複数の前記発酵乾燥システムが、互いに独立した施設として設けられ、
前記統合制御部は、前記複数の発酵乾燥システムそれぞれを並行して制御する、請求項1
または2に記載の統合発酵乾燥システム。
【請求項4】
前記発酵乾燥システムは、前記発酵原料を供給する複数の原料供給源に対して個別に設けられる、請求項1
~3のいずれか一項に記載の統合発酵乾燥システム。
【請求項5】
複数の発酵乾燥システムと、前記複数の発酵乾燥システムを制御する統合制御部と、を有する統合発酵乾燥システムによる発酵乾燥制御方法であって、
前記複数の発酵乾燥システムのそれぞれは、
発酵原料について発酵乾燥処理を行う密閉型の発酵槽を含む、発酵乾燥設備と、
前記発酵乾燥設備における発酵乾燥処理を制御する設備制御部と、
を有し、
前記統合制御部が、前記複数の発酵乾燥システムのそれぞれの前記設備制御部に対して、処理に係る運転管理信号
であって、発酵指標を指定する情報を含む前記運転管理信号を送信することで、前記発酵乾燥システムの動作を制御することと、
前記設備制御部が、前記統合制御部からの前記運転管理信号に基づいて、前記発酵乾燥設備における発酵熱量、蒸発水分量、二酸化炭素発生量、発酵槽内容物質量変化、および、
前記発酵乾燥設備より排出される排気温度を算出し、
前記発酵乾燥設備における発酵熱量、蒸発水分量、二酸化炭素発生量、発酵槽内容物質量変化、および、前記発酵乾燥設備より排出される排気温度の中から少なくとも1つの情報を
前記発酵指標として選定して前記発酵乾燥設備に係る運転パラメータを算出することと、
前記設備制御部が、算出した
前記運転パラメータに基づいて、前記発酵槽への送気量、前記発酵槽からの排気量、前記発酵槽へ供給する前記発酵原料の配合比および供給量、発酵乾燥後の発酵乾燥物の前記発酵槽からの排出量、ならびに、前記発酵槽の撹拌翼回転パターンの少なくとも1つを制御することと、
を含む、統合発酵乾燥システムによる発酵乾燥制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、統合発酵乾燥システムおよび発酵乾燥制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、有機性廃棄物の堆肥化を行う縦型の容器を含む廃棄物処理装置において、処理機に対して種々のセンサを取り付けて、発酵の状況を監視することが記載されている。また、特許文献2には、密閉型の堆肥化装置において、発酵熱を発酵指標として、発酵槽への送気量を設定する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-85296号公報
【文献】特開2018-172272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2に記載の処理装置では、容器内の発酵乾燥が安定して行われるように運転しようとすると、熟練運転管理者の経験知に基づく発酵状況の適切な評価やそれに基づく適切な運転操作や制御パラメータの設定が必要となる。いったん発酵乾燥の調子が崩れると、処理装置内への有機性廃棄物の投入量を減らしたり、処理装置を止めて発酵槽内の内容物を全量取り出したりしなければならず、連続運転に支障を起こす場合がある。そのため、特許文献1,2に記載の処理装置の機能を有効に活用し安定発酵を維持するためには、熟練運転管理者が、常時、処理装置の運転状況を監視し、発酵状況を適切に把握し、発酵状況の変化を早期に把握し、適切な運転操作を、適切なタイミングで実施する必要がある。しかしながら、上記に対応できる熟練運転管理者は限定的で、発酵乾燥設備ごとに熟練運転管理者を養成し運転中に常時管理する体制を構築するのは困難な場合が多い。
【0005】
本開示は上記を鑑みてなされたものであり、発酵乾燥設備の安定した運転を実現することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の一形態に係る統合発酵乾燥システムは、複数の発酵乾燥システムと、前記複数の発酵乾燥システムを制御する統合制御部と、を有する統合発酵乾燥システムであって、前記複数の発酵乾燥システムのそれぞれは、発酵原料について発酵乾燥処理を行う密閉型の発酵槽を含む、発酵乾燥設備と、前記発酵乾燥設備における発酵乾燥処理を制御する設備制御部と、を有し、前記統合制御部は、前記複数の発酵乾燥システムのそれぞれの前記設備制御部に対して、処理に係る運転管理信号を送信することで、前記発酵乾燥システムの動作を制御し、前記設備制御部は、前記統合制御部からの前記運転管理信号に基づいて、前記発酵乾燥設備における発酵熱量、蒸発水分量、二酸化炭素発生量、発酵槽内容物質量変化、および、発酵乾燥設備より排出される排気温度を算出し、少なくとも1つの情報を発酵指標として選定して前記発酵乾燥設備に係る運転パラメータを算出し、算出した運転パラメータに基づいて、前記発酵槽への送気量、前記発酵槽からの排気量、前記発酵槽へ供給する前記発酵原料の配合比および供給量、発酵乾燥後の発酵乾燥物の前記発酵槽からの排出量、ならびに、前記発酵槽の撹拌翼回転パターンの少なくとも1つを制御する。
【0007】
また、本開示の一形態に係る発酵乾燥制御方法は、複数の発酵乾燥システムと、前記複数の発酵乾燥システムを制御する統合制御部と、を有する統合発酵乾燥システムによる発酵乾燥制御方法であって、前記複数の発酵乾燥システムのそれぞれは、発酵原料について発酵乾燥処理を行う密閉型の発酵槽を含む、発酵乾燥設備と、前記発酵乾燥設備における発酵乾燥処理を制御する設備制御部と、を有し、前記統合制御部が、前記複数の発酵乾燥システムのそれぞれの前記設備制御部に対して、処理に係る運転管理信号を送信することで、前記発酵乾燥システムの動作を制御することと、前記設備制御部が、前記統合制御部からの前記運転管理信号に基づいて、前記発酵乾燥設備における発酵熱量、蒸発水分量、二酸化炭素発生量、発酵槽内容物質量変化、および、発酵乾燥設備より排出される排気温度を算出し、少なくとも1つの情報を発酵指標として選定して前記発酵乾燥設備に係る運転パラメータを算出することと、前記設備制御部が、算出した運転パラメータに基づいて、前記発酵槽への送気量、前記発酵槽からの排気量、前記発酵槽へ供給する前記発酵原料の配合比および供給量、発酵乾燥後の発酵乾燥物の前記発酵槽からの排出量、ならびに、前記発酵槽の撹拌翼回転パターンの少なくとも1つを制御することと、を含む。
【0008】
上記の統合発酵乾燥システムおよびこの統合発酵乾燥システムによる発酵制御方法によれば、統合制御部から複数の発酵乾燥システムのそれぞれの設備制御部に対して、運転管理信号を送信することで、発酵乾燥システムの動作が制御される。また、各発酵乾燥システムでは、設備制御部が、統合制御部からの運転管理信号に基づいて、発酵乾燥設備における発酵熱量、蒸発水分量、二酸化炭素発生量、発酵槽内容物質量変化、および、発酵乾燥設備より排出される排気温度を算出し、少なくとも1つの情報を発酵指標として選定して前記発酵乾燥設備に係る運転パラメータを算出する。そして、算出した運転パラメータに基づいて、発酵槽への送気量、発酵槽からの排気量、発酵槽へ供給する発酵原料の配合比および供給量、発酵乾燥後の発酵乾燥物の発酵槽からの排出量、ならびに、発酵槽の撹拌翼回転パターンの少なくとも1つを制御する。そのため、統合発酵乾燥システムでは、統合制御部が複数の発酵乾燥システムのそれぞれの運転状況をリアルタイムに把握し必要に応じて制御方法等の変更および改善を指示(運転管理指示)することができる。また、各発酵乾燥システムでは、統合制御部からの指示に基づいて、運転パラメータを算出し、適切な運転制御を行うことができる。したがって、発酵乾燥設備の安定した運転を実現することが可能となる。
【0009】
複数の前記発酵乾燥システムが、互いに独立した施設として設けられ、前記統合制御部は、前記複数の発酵乾燥システムそれぞれを並行して制御する態様としてもよい。
【0010】
上記のように、互いに独立した施設として設けられる複数の発酵乾燥システムを、統合制御部において並行して制御する構成とすることで、複数の発酵乾燥システムを統合制御部において一括して制御することが可能となる。
【0011】
前記発酵乾燥システムは、前記発酵原料を供給する複数の原料供給源に対して個別に設けられる態様としてもよい。
【0012】
上記のように、発酵原料を供給する複数の原料供給源に対して個別に発酵乾燥システムを設けることで、原料供給源から供給される発酵原料の特徴等に応じて各発酵乾燥システムにおいて制御内容を個別に変更することができるため、発酵乾燥設備における発酵乾燥をより安定して行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、発酵乾燥設備の安定した運転を実現することが可能な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、一形態に係る統合発酵乾燥システムの概略構成図である。
【
図2】
図2は、統合発酵乾燥システムに含まれる発酵乾燥システムの概略構成図である。
【
図4】
図4は、設備制御部の機能を説明するブロック図である。
【
図5】
図5は、発酵槽への気体の出入りについて説明する図である。
【
図6】
図6は、統合制御部の機能を説明するブロック図である。
【
図7】
図7は、統合制御部および設備制御部のハードウェア構成を説明する図である。
【
図8】
図8は、統合制御部の動作を説明するフローチャートである。
【
図9】
図9は、設備制御部の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本開示を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
[統合発酵乾燥システム]
図1は、本開示の一形態に係る統合発酵乾燥システムの概略構成図である。
図1に示すように、統合発酵乾燥システム1は、複数の発酵乾燥システム2と、統合制御部3と、を含んで構成される。発酵乾燥システム2は、発酵乾燥設備4と設備制御部5と、を含む。
【0017】
統合発酵乾燥システム1は、複数の発酵乾燥システム2を包括的に管理するためのシステムであり、統合制御部3において発酵乾燥システム2を運転管理する。発酵乾燥システム2は、発酵原料を投入し、好気性発酵熱による発酵乾燥処理によって発酵乾燥物を生成するシステムである。発酵乾燥システム2による発酵乾燥処理の対象は、例えば、畜産廃棄物、食品廃棄物、下水汚泥等であり、好気性発酵により乾燥、減容化または堆肥化することが可能な物質であれば特に限定されない。また、発酵乾燥処理の目的とは、処理対象の原料の水分を除去することによって、投入原料を減量および減容するととともに、処理後の発酵乾燥物のハンドリング性(流動性、臭気、保存性など)を改善し、燃料としての品質、および堆肥としての品質を高めることである。なお、複数の発酵乾燥システム2における発酵乾燥処理の対象の種類は、同一のものであってもよいし、互いに異なるものであってもよい。
【0018】
発酵乾燥システム2は、上記の発酵乾燥処理の対象となる原料が供給される場所の近くに設けられ得る。
図1では、複数の発酵乾燥システム2として3つの発酵乾燥システム2A,2B,2Cを示している。発酵乾燥システム2Aは、第1原料供給源90Aの近隣(例えば、同一の敷地であってもよい)に設けられ、第1原料供給源90Aから供給される原料についての発酵処理を行う。また、発酵乾燥システム2Bは、第2原料供給源90Bの近隣に設けられ、第2原料供給源90Bから供給される原料について発酵処理を行う。また、発酵乾燥システム2Cは、第3原料供給源90Cおよび第4原料供給源90Dから供給される原料について発酵処理を行う。発酵乾燥システム2Bの設置場所は、第3原料供給源90Cの近隣(例えば、同一の敷地であってもよい)、第4原料供給源90Dの近隣(例えば、同一の敷地であってもよい)、または、両原料が集荷しやすい場所とすることができる。
【0019】
なお、原料供給源とは原料が生産され得る施設(建物、場所等)であり、例えば、発酵乾燥処理の対象が畜産廃棄物である場合には、原料供給源としては農場を挙げることができる。また、発酵乾燥処理の対象が食品廃棄物である場合には、原料供給源は食品加工場を挙げることができる。また、発酵乾燥処理の対象が下水汚泥である場合には、原料供給源は下水処理場および汚泥処理センターを挙げることができる。ただし、これらは原料供給源の一例であり、これらに限定されるものではない。
【0020】
図1に示すように、発酵乾燥システム2は、発酵乾燥システム2A,2Bのように1つの原料供給源に対して個別に設けられてもよいし、発酵乾燥システム2Cのように複数の原料供給源に対して1つ設けられてもよい。いずれの場合であっても、原料供給源から供給される原料は水分含有率が高くハンドリング性が悪いため、原料供給源からの原料の移動が少なくなるように発酵乾燥システム2が設けられることが想定される。そのため、複数の発酵乾燥システム2は、互いに離れた位置に、互いに独立した施設として設けられることが想定される。これに対して、統合発酵乾燥システム1は、互いに離れた位置に設けられた発酵乾燥システム2A~2Cを統合制御部3において一括管理することを実現するシステムである。また、発酵乾燥システム2は、それぞれ独自に制御可能となるように、各システムにおいて発酵乾燥設備4に対して設備制御部5が設けられていて、発酵乾燥システム2それぞれ個別に制御されている。
【0021】
各発酵乾燥システムと統合制御部とは有線又は無線で接続し、インターネット等の高速データ通信および大容量データ共有化機能を利用してもよい。
【0022】
統合発酵乾燥システム1において実際に制御する機能は、特に後述の短期的発酵指標を適用する場合、各発酵乾燥設備(発酵乾燥システム2)の設備制御部5内にある。統合制御部3は各設備制御部5が適正に制御しているかどうかをモニタリングし、適時、制御ベースとなる計算式や条件等の上位管理指標を改善する機能をもつ。全ての発酵乾燥設備の制御を統合制御部3に集中させているわけではない。仮に、全ての発酵乾燥設備の制御を統合制御部に集中させると、通信障害等によるダメージリスクが大きくなり、システム全体の信頼性に問題が出てくる可能性がある。このように、統合発酵乾燥システム1では、各発酵乾燥設備に含まれる発酵槽等の各部の制御を行う構成(後述のパラメータ算出部53等を含む)を個別に分散させ、パラメータ算出の条件変更等の運転管理(上位の管理指標の設定)を統合制御部3で行う構成としている。
【0023】
なお、詳細は後述するが、設備制御部5は、統合制御部3からの運転管理信号に基づいて、発酵乾燥システム2における発酵熱量、蒸発水分量、二酸化炭素発生量、発酵槽内容物質量変化、および、発酵乾燥設備より排出される排気温度を算出し、少なくとも1つの情報を発酵指標として選定して発酵乾燥設備に係る運転パラメータを算出する。また、設備制御部5は、算出した運転パラメータに基づいて、発酵槽への送気量、発酵槽からの排気量、発酵槽へ供給する発酵原料の配合比および供給量、発酵乾燥後の発酵乾燥物の前記発酵槽からの排出量、ならびに、発酵槽の撹拌翼回転パターンの少なくとも1つを制御する。
【0024】
発酵指標は、短期的発酵指標と長期的発酵指標に分類される。短期的発酵指標は、数分~数時間スパンの評価に適する指標であり、発酵熱量、蒸発水分量、二酸化炭素発生量、装置内温度、排気温度が想定される。短期的発酵指標を適用する場合、設備制御部5のパラメータ算出部53(
図4参照)において発酵指標の算出と送気量等の運転パラメータの算出を行い、算出された運転パラメータに基づく制御信号が設備制御信号出力部55(
図4参照)から各部に対して送信される。また、発酵乾燥設備4は、設備制御部5から送信された信号に基づいて動作する。それぞれの発酵乾燥設備の制御は、各発酵乾燥設備内で完結し、統合制御部は、発酵指標の選定とパラメータ算出部内で行われる各種計算のパラメータを指示する機能を持つ。一方、長期的発酵指標は、数時間~数日スパンの評価に適する指標であり、発酵槽内容物質量変化が想定される。長期的発酵指標を適用する場合、パラメータ算出部53(
図4参照)では、発酵指標の計算を実施し、統合制御部において運転パラメータの設定を行う。このように、短期的発酵指標と長期的発酵指標では、それぞれの発酵乾燥設備の設備制御部と統合制御部の機能分担が異なる。
【0025】
発酵指標と運転パラメータの標準的な対応を表1に示す。なお、この対応関係は一例であって、表1に示される関係に限定されるものではない。
【0026】
【0027】
以下、発酵乾燥システム2の構成を説明した後に、これらを包括する統合制御部3について説明する。
【0028】
[発酵乾燥システム]
図2は、発酵乾燥システム2の標準的な概略構成図である。
図2に示すように、発酵乾燥システム2は、発酵乾燥設備4と、設備制御部5と、を含んで構成される。発酵乾燥設備4は、発酵槽41、原料供給部42、乾燥物排出部43、送気ブロア44、送気ヒータ45、除塵塔46、排気ファン47、および洗浄脱臭塔48を含んで構成される。発酵乾燥システム2において製造されるのは、発酵原料を発酵すると共に乾燥させた発酵乾燥物(乾燥汚泥)である。また、発酵原料の発酵に伴って発生する排気ガスについては所定の処理が行われる。
【0029】
なお、以下の実施形態では、一例として、発酵乾燥の対象となる主原料が下水汚泥である場合について説明する。主原料が下水汚泥とは異なるものであっても、
図2に示す発酵乾燥システム2と同様の構成を用いることができるが、システム構成は適宜変更され得る。
【0030】
発酵槽41は、発酵原料を投入して発酵処理を行う機能を有する。発酵槽41では、好気性微生物による好気処理が行われる。発酵槽41へは、主原料のほか、発酵に寄与する副原料等がラインL1を介して投入される。
【0031】
発酵槽41への原料の供給量・配合比等の調整は、例えば、原料供給部42によって行われる。発酵槽41からは発酵後の発酵乾燥物がラインL2を介して排出される。発酵乾燥物の排出量の調整等は、例えば、乾燥物排出部43によって行われる。また、発酵槽41へは、ラインL3を介して空気が供給される。また、発酵槽41における発酵に伴って発生したガスや水蒸気(以下排気)は、ラインL4を介して排出される。
【0032】
原料供給部42は、発酵槽41へ供給する発酵原料の供給量・配合比等を調整する機能を有する。発酵原料についての詳細は後述するが、発酵槽41へは発酵乾燥の対象となる主原料のほか副原料等の複数種類の原料が供給され得る。発酵原料の供給量および配合比等は発酵槽41内での発酵乾燥の状況に影響し得る。したがって、原料供給部42において発酵原料の供給量および配合比等を調整することで、発酵槽41内での発酵乾燥を制御する。
【0033】
乾燥物排出部43は、発酵乾燥物の排出量を調整する機能を有する。
図2では、乾燥物排出部43はラインL2に設けられているように模式的に示しているが、乾燥物排出部43は、例えば、それぞれの発酵乾燥システムの運転員が現場で排出量および発酵乾燥物の品質を確認しながら、後述の発酵槽41の排出口の開閉を行うのが一般的である。また、排出口の開閉を発酵槽重量変化より、後述の発酵槽41の排出口の開閉を制御する機構等であってもよい。
【0034】
送気ブロア44は、ラインL3へ気体を供給する機能を有する。送気ブロア44にはモータM1が接続されていて、モータM1の動作による送気ブロア44によって、外部からの空気がラインL3へ導入される。
【0035】
送気ヒータ45は、ラインL3へ導入された気体を加熱する機能を有する。発酵槽41へ投入される空気の温度は、例えば、50℃~80℃程度とされる。送気ヒータ45は、ラインL3を流れる気体が所定の温度範囲となるように気体を加熱する機能を有する。送気ヒータ45の上流に、例えばラインL4の排気の熱を利用して送気ファンから容器内に導入される外気を加温する熱交換手段(図示せず)を設けてもよい。熱交換手段の形態は特に限定されず、熱交換によって、ラインL4からの排気ガスは冷却される。一方、加熱された空気は、ラインL3を経て発酵槽41へ投入される。
【0036】
除塵塔46、排気ファン47、および洗浄脱臭塔48は、発酵槽41からの排気ガスを排出するラインL4上に設けられる。除塵塔46および洗浄脱臭塔48は、排気ガスに対する脱臭処理を行う湿式脱臭装置として機能する。
【0037】
除塵塔46は、ラインL4を流れる排気ガスを導入し、排気ガスに含まれる塵埃を除去する機能を有する。除塵塔としては、スクラバ等の設備が用いられる。塵埃が除去されたガスは、排気ファン47を経て洗浄脱臭塔48へ送られる。
【0038】
排気ファン47は、ラインL1において排気ガスを移動させる機能を有する。排気ファン47にはモータM2が接続されていて、モータM2の動作による排気ファン47の駆動によって、排気ガスが下流側へ移動される。ファンとしてはファン回転数をインバータ周波数で制御できるものを用いることができる。
【0039】
洗浄脱臭塔48は、発酵槽からの排気に含まれるアンモニアおよび硫化水素等の微量臭気成分を除去する機能を有する。一例として、洗浄脱臭塔は、湿式の洗浄塔であり、硫酸を使用する酸洗浄脱臭塔とすることができる。なお、洗浄脱臭塔48は、酸洗浄脱臭塔に限定されず、アルカリ洗浄脱臭、アルカリ・次亜塩洗浄脱臭等の洗浄脱臭を行い、除去する構成であれば種々の構成を採用することができる。洗浄脱臭等は処理対象のガスに応じて適宜選択でき、例えば、酸洗浄塔は、アンモニアを脱臭の対象とする場合に用いられる。また、排気に含まれるガスの種類や数、および処理後の許容成分濃度によっては直列して複数の洗浄脱臭塔を接続することができる。硫化水素が発生する可能性がある場合は、さらに水酸化ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウムを組み合わせたアルカリ・次亜塩洗浄脱臭塔を設けてもよい。
【0040】
なお、湿式脱臭装置は上記の構成には限定されない。例えば、活性炭を充填し、上記液の作用では十分に除去しきれない臭気成分を活性炭による吸着作用で除去する、吸着塔が含まれていてもよい。吸着塔は複数の処理装置の最後段に設置すればよい。
【0041】
発酵乾燥設備4では、各所に複数のセンサが設けられていてもよい。
図2では、発酵乾燥システム2に設けられ得る複数のセンサ49a~49gを例示している。例えば、センサ49aは、発酵槽41の重量を計測する重量計である。また、センサ49bは、発酵槽41内(より正しくは、後述の容器内)の圧力(気圧)を測定する圧力計である。センサ49cは、発酵槽41内の温度を計測する温度計である。また、センサ49dは、ラインL3に供給された気体の量を計測する流量計である。また、センサ49dと同じ場所に、気体の温度を測定する温度計、気体の圧力を測定する圧力計等が設けられていてもよい。センサ49eは、送気ヒータ45で加温された気体の温度を測定する温度計である。また、センサ49fは、発酵槽41からの排気ガスの温度を測定する温度計であり、センサ49gは、排気ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度計である。このように、発酵乾燥設備4ではその動作を確認するための種々のセンサを設けることができる。
【0042】
設備制御部5は、発酵乾燥設備4の各部を制御する機能を有する。設備制御部5は、発酵乾燥システム2の各所に設けられた複数のセンサ等および上記の各部からの出力信号を受信する。設備制御部5ではこれらの出力信号に基づいて、設備の制御内容を変更し得る。設備制御部5についての詳細は後述する。
【0043】
[発酵槽]
次に、発酵槽41について説明する。
図3は、発酵槽41の概略構成図である。発酵槽41は密閉型の縦型発酵槽である。発酵槽41は、設置面に対して鉛直方向(図示A方向)に延びた容器61を有している。容器61の上方には、主原料および副原料等を投入する投入口62が設けられる。投入口62の上流には原料供給部42がラインL1を介して接続される。また、容器61の下方には、容器61内での処理後の発酵乾燥物を排出するための排出口63が設けられる。排出口63にはラインL2を介して乾燥物排出部43が接続される。
【0044】
投入口62および排出口63は、どちらも蓋などの開閉可能又は脱着可能な蓋状部材(図示せず)が設けられる。この蓋状部材を投入口62および排出口63に装着することによって、発酵槽41における容器61を密閉可能に構成されている。このように、発酵槽41は密閉系での好気発酵を可能としている。好気発酵熱による内容物の乾燥効率をより向上させる観点から、発酵槽41は、例えば容器61の外周面に断熱材を配する等の方法によって、断熱構造を有していてもよい。
【0045】
発酵槽41は、発酵槽内の原材料を混合するための攪拌設備64を備える。一例として、攪拌設備64は、例えば容器61内に設けられた攪拌翼64aと、攪拌翼64aに接続された回転軸64bと、容器61外に設けられた回転駆動装置(図示せず)とを備えている。攪拌翼64aは、回転軸64bを介して容器61外に設けられた回転駆動装置に接続されており、油圧シリンダを駆動源として一定方向に回転するようになっている。攪拌翼64aは回転軸64bの下部から上部にかけて所定間隔で離間して多段に設けられていてもよい。攪拌設備64を更に備えることによって、内容物の過度の圧密状態を抑制することができ、好気発酵効率を向上させることができる。
【0046】
また、発酵槽41は、空気などの酸素含有気体を発酵槽41内に供給するための送気手段65と、容器61内の気体を容器61外へ排気可能な排気手段66とを備える。酸素含有気体Fは、例えば、空気とすることができる。一例として、酸素含有気体Fは、容器61外に設けられた送気手段65から、中空の回転軸64bを経由し、攪拌翼64aの通気孔を介して、攪拌翼64aの鉛直方向下方側に供給できるようになっていてもよい。送気手段65は、ラインL3に接続されていて、ラインL3を流れる気体が酸素含有気体として供給される。
図3に示す例では、最下方に設けられた攪拌翼64aの鉛直方向下方側に、酸素含有気体Fを流通可能な気体流通孔が複数設けられている。この場合、攪拌翼64aによる内容物の攪拌を行いながら、酸素含有気体Fを容器61に満遍なく供給することができる。容器61内に存在する酸素含有気体Fと、好気発酵によって生じたガスとは、容器61の上方に設けられた排気手段66を介して排気ガスとしてラインL4(
図2参照)へ排気される。
【0047】
酸素含有気体と内容物の接触効率を高めて、容器61内での発酵対象物の好気発酵効率を高める観点から、酸素含有気体Fは容器61の鉛直方向下方側から供給され、且つ、酸素含有気体Fを含む排気ガスは、容器61の鉛直方向上方側から排気する構成とすることができる。
【0048】
発酵原料は、投入口62から連続的又は間欠的に発酵槽41における容器61内に投入する。発酵原料は、発酵槽41内で好気発酵させた後、発酵乾燥物として排出口63から排出される。
【0049】
上述の発酵槽41では、投入口62から発酵原料を容器61の内部に投入し、処理物を容器内で発酵後に発酵乾燥物を容器61下部の排出口63から取り出す。発酵槽41では、送気手段65により最下段の攪拌翼64aの通気孔から所定の入気量で外気を導入し、且つ、排気手段66から排気する。この状態で各攪拌翼64aを低速で回転させて、発酵原料を通気攪拌し、好気発酵させることにより、発酵が行われる。また、発酵による発酵熱により同時に内容物は乾燥される。排気手段66より排出される空気は、通気孔から容器内に導入されて処理物中を通過しながら上方へ流れてきた気体に対して、発酵の過程で生じた二酸化炭素、アンモニア等のガスや水蒸気を含むものである。
【0050】
発酵槽41の運転手順の一例は以下のとおりである。まず、発酵槽41に、容器61の内容積に対して10~30%の空間を残して、主原料および副原料等の原料を投入口62から投入する。上記の程度の空間を残して原料を投入することにより、原料の攪拌と通気が十分かつ均一になされる。そのため、容器61内での発酵および乾燥が効率よく行われ得る。一例として、原料の投入は毎日行われる。すなわち、原料は、所定の間隔で(一定期間毎に)複数回投入され得る。また、発酵槽41内で所定の滞留期間(3日~20日程度)、原料の発酵および乾燥を継続し、一定期間(例えば毎日)毎に所定量の発酵乾燥物を排出口63から取り出す。原料の投入は発酵乾燥物を排出口63から取り出した後に行う。このように、一定時間サイクルで原料の一部投入と発酵物の一部取り出しを繰り返しながら、連続的に発酵処理を行う。上記の手順で得られる発酵乾燥物は、粉状又は粒状の固形物であり、部分的には塊状物となっている。
【0051】
設備制御部5は、発酵槽41およびその周辺の各装置を制御することにより、発酵槽41内の発酵速度を高レベルに維持することができる。一例として、設備制御部5は、発酵槽41の容器61への送気手段65による送気量の調整と、発酵槽41内の気体の排気に使用される排気ファン47のモータM2により排気量の調整と、を行うことができる。
【0052】
[発酵原料]
発酵槽41での発酵乾燥物の製造に用いられる原料には、発酵乾燥処理の対象となる成分である主原料と、主原料の発酵乾燥処理を補助する副原料等が用いられる。以下、各原料の詳細についておよびその混合比等について説明する。
【0053】
(主原料)
主原料としては、下水の活性汚泥処理の過程で生じる余剰汚泥をフィルタープレス等の脱水機で脱水した下水汚泥、畜産設備等で発生する畜糞尿またはこれを活性汚泥処理して得られる畜糞尿浄化汚泥、食品廃棄物等の活性汚泥処理によって得られる汚泥等が上げられる。これらの主原料は、有機物、無機物および水を含むスラッジ状又はペースト状の物質である。例えば、主原料が下水汚泥の場合、下水汚泥をそのまま用いてもよく、或いは、消化汚泥などの下水汚泥の自己発酵処理物を用いてもよい。
【0054】
主原料の水分含有量は、特に限定されないが、例えば、50%~90%程度、好ましくは50%~85%とされる。なお、主原料に使用する汚泥については、その含水率、消化の有無、および脱水処理方法の少なくとも一つに基づいて選別してもよい。
【0055】
(副原料)
発酵原料は副原料を含んでいてもよい。副原料は、主原料とともに含有させることによって、発酵原料を発酵に供する際に、主原料の安定的な好気発酵を促すための材料である。具体的には、副原料は、主原料の含水率を低減させたり、主原料と副原料とを含む発酵原料の通気性を高めたり、好気発酵に寄与する微生物の栄養源となる易分解性有機分を供給したり、好気発酵を効率良く進行させるための好気性微生物群を供給したりするために用いられる。
【0056】
用いられる副原料の形状は特に制限はなく、例えば、固形状、粒状、粉状、ペースト状等の形状としてもよい。副原料の総含有量は、用いられる副原料の物性や目的に応じて適宜調整できるが、主原料100重量部に対する副原料の総重量部として、好ましくは5重量部以上100重量部以下、より好ましくは5重量部以上50重量部以下、更に好ましくは5重量部以上40重量部以下とすることができる。このとき、基準となる主原料の質量は、含水状態での質量とする。
【0057】
副原料の一例として用いられ得る通気助材および栄養助材について説明する。
【0058】
(通気助材)
副原料として、含水率の低減や通気性の向上を目的として通気助材を含んでいてもよい。通気助材としては、例えば、稲わら、もみがら、おがくず、バーク、草木又はこれらの乾燥物若しくは破砕物などの有機系通気助材や、パーライト、ゼオライト、珪藻土、石炭灰などの無機系通気助材等が用いられる。通気助材を含むことによって、過度の圧密状態となることを抑制しつつ通気性を確保することができ、主原料の好気性発酵を安定的かつ効果的に進行させることができる点で有利である。
【0059】
通気助材の形状は特に制限はなく、例えば、固形状、粒状、粉状、ペースト状、流動状、液状等の形状としてもよい。通気助材の含有量は、用いられる副原料の物性や目的に応じて適宜調整できるが、主原料100重量部に対する通気助材の総重量部を、好ましくは5重量部以上80重量部以下、更に好ましくは5重量部以上50重量部以下とすることができる。このとき、基準となる主原料の重量は、含水状態での重量とする。
【0060】
上述した通気助材のうち、一例としてフライアッシュを含む構成とすることができる。フライアッシュは、石炭の燃焼によって生成した石炭灰の一種であり、例えば、石炭火力発電所にて微粉石炭を燃焼した際に生成する石炭灰であって、電気集塵機等で回収されるものが挙げられる。フライアッシュは、その嵩密度が好ましくは0.2g/cm3以上1.5g/cm3以下、ブレーン比表面積が好ましくは1000cm2/g以上20000cm2/g以下のものであり、シリカ、アルミナ、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム等を含む。
【0061】
フライアッシュを発酵乾燥処理における副原料として用いることによって、初期の時点から好気発酵を安定的に進行させることができる。この理由は明らかではないが、フライアッシュ自体が比較的微細な粒子であることに起因して分散性が高いことが考えられる。また、フライアッシュに含まれるCaO成分によって主原料の粒子が凝集しフロックを形成しやすくなり、容器61内での発酵原料の密度を低下しやすくするため、と考えられる。
【0062】
(栄養助材)
発酵原料の好気発酵を促進させる観点から、副原料として栄養助材を更に含んでいてもよい。栄養助材は、好気発酵に寄与する微生物の栄養源となる易分解性有機分を供給するために用いられ得る副原料である。栄養助材としては、例えば、食品汚泥、酒粕および焼酎粕等の食品加工残渣、廃白土、製紙スラッジ、廃食油、廃棄物固形燃料(RDF)、肉骨粉、生ごみ、し尿、畜糞、堆肥、活性汚泥、スカム等が挙げられる。これらは単独で又は組み合わせて用いることができる。
【0063】
上述した栄養助材のうち、好気発酵をより一層促進させて、発酵の温度上昇効果を大きくさせるという理由から、肉骨粉が採用され得る。肉骨粉は、例えば、牛・豚・鶏から食肉を除いた後に、内蔵や屑肉等とともに加熱処理されたものであり、例えば、粉末状に粉砕された乾燥粉砕物である。肉骨粉の粉末は、下水汚泥等の他の発酵原料との混合効率が高められ得る。栄養助材の含有量は、主原料100重量部に対して、好ましくは5重量部以上100重量部以下、更に好ましくは5重量部以上50重量部以下である。このとき、基準となる主原料の重量は、含水状態での重量とする。
【0064】
[発酵原料の混合および含水率について]
発酵原料は、例えば、主原料と副原料とを混合した混合物とすることができる。一例として、発酵槽41等の発酵のための装置へ供給する前に、主原料と副原料とを予め混合して発酵原料の混合物を調整してもよい。また、屋内若しくは屋外で、主原料および副原料のうち一方の上に他方を堆積させた堆積物として発酵原料を作成してもよい。さらに、下水汚泥および副原料のうち一方を発酵用の容器に供給し、次いで他方を容器内に供給して、容器内で各原材料を交互に堆積させた堆積物としてもよい。この場合、堆積物の状態から発酵を開始してもよいし、堆積物を容器内で混合して混合物した後に発酵を開始してもよい。
【0065】
発酵初期の時点から好気発酵を安定的に進行させるために十分な水分量を確保する観点から、発酵原料の含水率は、30%以上70%以下とすることができる。さらに、含水率が40%以上60%以下であると、好気発酵がより安定的に進行し得る。含水率は、例えば市販の赤外線水分計又はハロゲン水分計を用いて、100℃~120℃の加熱温度で乾燥したときの乾燥前後の重量の差に基づいて測定することができる。またこれに代えて、JIS A 1203「土の含水比試験方法」に準じて測定することができる。発酵原料の含水率は、例えば、所望の含水率となるように原材料を選択したり、原材料又は発酵原料に対して、水を添加したりすることによって適宜調整することができる。
【0066】
上述の発酵原料は、上述のように堆積物又は混合物の状態で発酵槽41の容器61へ供給することで、好気発酵処理に供することができる。
【0067】
[発酵乾燥物の使用]
発酵原料の発酵の進行に伴い、発酵原料が含有する水分は徐々に減少していく。その結果、発酵乾燥物の状態では、含水率が10%~40%、好ましくは15%~35%程度となる。発酵原料(主原料)が下水汚泥である場合、発酵乾燥物は、例えば、セメントクリンカー原料、熱エネルギー源等のセメントの製造用途に用いることができる。また、発酵原料(主原料)が食品廃棄物、畜産廃棄物等である場合、発酵乾燥物は、例えば、堆肥の製造用途に用いることができる。堆肥を製造する場合、発酵乾燥システムでの乾燥時間をより長くなるように調整してもよい。さらに、熱エネルギー源として、例えば、種々のプラントに使用してもよく、一例としては発電所等熱源が必要とされる各種プラント等が挙げられる。
【0068】
[設備制御部]
図4を参照しながら、設備制御部5について説明する。設備制御部5は、運転管理信号取得部51と、センサ信号取得部52と、パラメータ算出部53と、運転状況出力部54と、設備制御信号出力部55と、パラメータ算出情報保持部56と、を含んで構成される。
【0069】
運転管理信号取得部51は、統合制御部3からの処理に係る運転管理信号を取得する機能を有する。統合制御部3からの運転管理信号は、発酵指標の選定、発酵指標から運転パラメータを設定する際の計算方法および計算パラメータの設定、次回原料投入時の原料配合比および投入量の設定、次回発酵乾燥物排出時の排出量の設定、発酵槽内圧制御方法の設定、発酵槽撹拌翼の回転パターンの設定に関する信号である。より具体的には、運転管理信号は、例えば、発酵乾燥設備4の動作の開始/終了、次回原料投入時の発酵原料の配合比と投入量を指定する情報、次回製品排出時の発酵乾燥物の生産量(発酵乾燥物をどの程度排出したいか)を指定する情報、発酵乾燥設備4での動作内容として、発酵指標を選定する情報、運転パラメータを選定する情報、発酵指標および運転パラメータの計算方法および計算パラメータを設定する情報、発酵槽内圧制御方法を設定する情報、発酵槽撹拌翼の回転パターンを設定する情報である。ここで、発酵指標を選定する情報とは、発酵熱量、蒸発水分量、二酸化炭素発生量、発酵槽内容物質量変化、装置内温度、および、発酵乾燥設備の排気温度の中から、少なくとも1つを発酵指標として選定することである。運転パラメータおよび計算方法を設定する情報については、詳細は後述するが、例えば、運転パラメータとして送気量を選択し、発酵指標の変化に対して送気量を設定する際の計算式および計算パラメータを指定する情報などである。
【0070】
センサ信号取得部52は、発酵乾燥設備4の各所に設けられたセンサ49a~49gからの信号を取得する機能を有する。また、センサ49a~49gからの情報に加えて、例えば、例えば、送気ブロア44のモータM1の駆動状況やインバータ周波数、排気ファン47のモータM2のインバータ周波数や駆動状況に係る情報等、発酵槽撹拌翼の回転パターン(連続回転、間欠回転、間欠回転時の停止および駆動間隔)や駆動状況に関わる情報(回転トルク、油圧システムの温度)等、発酵乾燥設備4を構成する各部の動作状況に係る情報も取得してもよい。また、発酵原料の配合・投入および発酵乾燥物の取り出しを、それぞれの発酵乾燥システムの運転員が現場操作で行う場合、設備制御部5にマンマシーンインターフェイス52a(
図4参照)を組み込んで、それぞれの発酵乾燥システムの運転員が、発酵原料の実績配合比、実績投入量、発酵乾燥物の実績排出量および水分を入力する方式が好ましい。
【0071】
センサ信号取得部52が取得し得る発酵乾燥設備4の運転情報は、より詳細には、原料の実績投入量および実績配合比、発酵乾燥物の実績抜出量および実績水分、発酵槽重量、発酵槽内温度、発酵槽内圧力、発酵槽排気温度、発酵槽送気温度、発酵槽送気流量(流量測定点の温度および圧力含む)、発酵槽排気流量(流量測定点の温度および圧力含む)、送気ブロア運転データ(インバータ周波数等)、排気ファン運転データ(インバータ周波数等)、発酵槽撹拌翼運転データ(回転パターン、トルク、油圧システム油温)、発酵槽送気圧力、発酵槽排気の酸素濃度が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0072】
パラメータ算出部53は、運転管理信号取得部51において取得された処理に係る運転管理信号と、センサ信号取得部52において取得された信号とに基づいて、発酵乾燥設備4の動作を制御するために必要な発酵評価指標および運転パラメータを算出する。詳細については後述するが、各種センサ等から取得する信号は、発酵乾燥設備4の発酵槽41における発酵状況に関連する情報である。したがって、これらの情報に基づいて、パラメータ算出部53では、発酵乾燥設備4において発酵乾燥処理が適切に行われるように各部の動作のパラメータ(運転パラメータ)を算出する。
【0073】
運転状況出力部54は、センサ信号取得部52において取得された情報を統合制御部3に対して送信する機能を有する。統合制御部3では、設備制御部5から送信される情報を発酵乾燥設備4が適切に動作しているかを監視し発酵乾燥設備4を良好な状態に導くための(すなわち運転管理のための)情報として利用する。
【0074】
設備制御信号出力部55は、パラメータ算出部53において算出された運転パラメータに対応する発酵乾燥設備4の各部の動作信号を出力する機能を有する。
【0075】
パラメータ算出情報保持部56は、パラメータ算出部53がパラメータを算出する際に利用する情報等を保持する機能を有する。また、パラメータ算出部53において算出した結果を保持する機能を有していてもよい。
【0076】
[発酵指標、運転パラメータおよび運転管理信号の関係について]
発酵指標および運転パラメータと運転管理信号の標準的な対応を表2に示す。発酵指標と運転パラメータとの関係は、表1に示したものと同じである。なお、この対応関係は一例であって、表2に示される関係に限定されるものではない。
【0077】
【0078】
[設備制御部におけるパラメータの算出について]
センサ信号取得部52が取得情報と、パラメータ算出部53において算出されて設備制御信号出力部55から出力される情報との関係の一例について説明する。
【0079】
[パラメータ算出部動作事例1]
発酵指標として発酵熱量を、運転パラメータとして発酵槽送気量を選定した場合の(統合制御部で決定され運転管理情報取得部にて取得される情報)、パラメータ算出部内の動作について説明する。
【0080】
(発酵熱量)
発酵熱量は、発酵槽41の容器61内に導入される外気(酸素含有気体)の熱量(エンタルピー)、および、容器61内から排気される内気の熱量(エンタルピー)から算出され得る。発酵熱は、堆肥化過程における好機微生物による有機物分解過程において発生するため、発酵熱量は酸素消費量や二酸化炭素生成量と同様に、発酵速度を直接的かつ定量的に評価可能である。
【0081】
発酵熱量は、発酵槽41から排出される排気の熱量と発酵槽41への送気の熱量との差分から求められる。すなわち、発酵熱量は以下の数式(1)に示す関係を満たす。
発酵熱量(kJ/min)=排気熱量(kJ/min)-送気熱量(kJ/min) …(1)
【0082】
図5は、発酵槽41の容器61における送排気の収支を示したものである。上述のように、発酵槽41(容器61)では送気および排気を行ないながら発酵処理が行われる。このとき、容器21への送気について、乾き気体量V0(Nm
3/分)、水蒸気量S0(kg/分)、および、送気温度T0(℃)という条件であるとする。また、容器61内では、送気を受けた発酵原料において発酵が進むことにより、発酵原料(発酵乾燥物)から容器61内へ気体が排出される。発酵原料から排出される排気を排気1とすると、排気1については、乾き気体量V1(Nm
3/分)、水蒸気量S1(kg/分)、および、排気温度T1(℃)であるとする。さらに、容器61からラインL4を経て外部へ気体が排出される。容器61から排出される排気(ラインL4から排出される気体)を排気2とすると、排気2については、乾き気体量V2(Nm
3/分)、水蒸気量S2(kg/分)、および、排気温度T2(℃)であるとする。
【0083】
ここで、上述のとおり、発酵熱量の算出は上記の数式(1)に基づいて算出することができる。数式(1)にも示した通り、発酵熱量は、排気熱量と送気熱量との差分から求められるが、より正確には、発酵熱量の算出に用いられる排気熱量は容器61での排気1の熱量を指し、送気熱量は容器61での送気1の熱量を指す。
【0084】
ここで、送気1の熱量は、例えば、以下の方法で算出される:
1)大気の相対湿度(実測値がない場合は、75%に固定してもよい。)と外気温度およびその時の飽和水蒸気圧(日本機械学会・蒸気表等による)より、送気ガスの乾き気体と水蒸気のモル比(-)を算出する。
2)ラインL3上の気体の流量、温度、圧力の実測値より、湿り気体量(Nm3/分)を計算する。
3)湿り気体量は、乾き気体量V0(Nm3/分)と水蒸気量(Nm3/分)の合計であるので、上記1の送気ガスの乾き気体および水蒸気のモル比(-)と、2の湿り気体量(Nm3/分)より、乾き気体量V0(Nm3/分)と水蒸気量S0(kg/分)を計算する。
4)容器61に供給される直前の気体の温度の実測値における空気および水蒸気のエンタルピー(日本機械学会・蒸気表等による)を使用して、上記3の乾き気体量V0(Nm3/分)と水蒸気量S0(kg/分)より、送気熱量を計算する。
【0085】
次に、排気1の熱量は、例えば、以下の方法で算出される:
5)排気1は相対湿度100%と仮定する。(密閉縦型発酵槽の構造より妥当な仮定)(仮定A)
6)排気1は容器61内の発酵原料充填部から容器61上部の空間部内へ排出されるため、排気熱の算出に必要な排気1の乾き気体量V1(Nm3/分)と水蒸気量S1(kg/分)とT1を直接測定することは(正確に把握することは)困難である。
7)そこで、排気1と排気2は全く同じと仮定し、V1=V2,S1=S2,T1=T2とする。(仮定B)
8)さらに、送気ガスが発酵槽を通過する際の乾き気体量は変化しないと仮定して(好気性発酵の反応式より妥当な仮定である)V1=V2=V0する。(仮定C)
9)容器61内の圧力およびラインL4を流れる気体の温度の実測値と、仮定Aと、より、排気2の飽和水蒸気圧と乾き気体の分圧とを設定し、V2(=V1=V0)より、S2を計算する。
10)ラインL4を流れる気体の温度の実測値における空気および水蒸気のエンタルピーを使用して、上記の乾き気体量V2(=V0)(Nm3/分)と水蒸気量S2(kg/分)より、排気熱量を計算する。
11)上記8の代わりにV2を実測することも可能である。ラインL4に流量計、温度計、圧力計を設置する。測定点における相対湿度を100%と仮定し、湿り気体流量(流量計実測値)と飽和水蒸気圧より、乾き気体流量V2(Nm3/分)を計算してもよい。
【0086】
上記より、数式(1)は、下記の数式(3)として表すこともできる。
発酵熱量=排気熱量(V1,S1,T1)-送気熱量(V0,S0,T0)…(1)
=排気熱量(V2,S2,T2)-送気熱量(V0,S0,T0)…(2)
=排気熱量(V0,S2,T2)-送気熱量(V0,S0,T0) …(3)
上記数式(1)に含まれるV1,S1,T1は測定値又は測定値からの算定が困難であるが、数式(3)に含まれるV0,S0,S2,T0,T2については、実測値又は実測値からの算定値を利用することができる。したがって、上記数式(3)を利用して発酵熱量を算出することができる。
【0087】
上記数式(1)に含まれるV1,S1,T1は測定又は測定値からの算定が困難であるが、数式(3)に含まれるV0,S0,S2,T0,T2については、センサ信号取得部52における取得情報(実測値)又は実測値からの算定値を利用することができる。したがって、上記数式(3)を利用して発酵熱量を算出することができる。
【0088】
最初に、発酵熱量の絶対値を使用した送気量の制御方法(パラメータ算出部動作事例1-1)について説明する。設備制御部5のパラメータ算出部53において、センサ信号取得部で取得した情報より上記(3)式を使って発酵熱量を数分~数時間間隔(発酵指標算出間隔:Δ時間)で算出する。発酵熱量の絶対値が所定の値(たとえば設計値)になるように、あらかじめ入力された発熱量・送気量関係式により送気量を計算し、設備制御信号出力部55より前述送気量に対応する送気ブロア44のモータM1のインバータ周波数(設備制御信号)を出力することで、発酵乾燥設備4の動作を制御することができる。ここで、発熱量の絶対値を指標とすること、発酵熱の目標値、発熱量・送気量関係式、および発酵指標算出間隔(計算頻度)は、統合制御部3にて指定され、運転管理信号取得部51にて取得される。
【0089】
続いて、発酵熱量の増減を使用した送気量の制御方法(パラメータ算出部動作事例1-2)について説明する。(設備制御部5のパラメータ算出部53において、センサ信号取得部で取得した情報より上記(3)式を使って発酵熱量を数分~数時間間隔(発酵指標算出間隔:Δ時間)で算出し、Δ時間での発酵熱量の増減ΔQを指標として送気量を調整する。Qが増加、すなわちΔQがプラスであれば送気量を所定刻みで増加するように、また、Qが減少、すなわちΔQがマイナスであれば送気量を所定刻みで減少するように、設備制御信号出力部55より送気ブロア44のモータM1のインバータ周波数(設備制御信号)を出力することで、発酵乾燥設備4の動作を制御することができる。(3)式における、V1,S1,T1,V0,S0,S2,T0,T2は、Δ時間又はΔ時間以下の所定時間の平均値を使用するのが望ましい。ここで、ΔQを指標とすること、送気量の増減幅(刻み)、発熱量の計算頻度(発酵指標算出間隔:Δ時間)、上記平均値を計算する際の所定時間は、統合制御部3にて指定され、運転管理信号取得部51にて取得される。
【0090】
また、上記で説明した手順(パラメータ算出部動作事例1-2)の代替として、発酵指標算出間隔Δ時間での発酵熱量増減ΔQと排気温度T2増減ΔT2を組合せたものを指標として、送気量を調整してもよい。(パラメータ算出部動作事例1-3)設備制御部5のパラメータ算出部53において、Δ時間間隔でΔQを算出し、例えば、Δ時間でQとT2が共に増加する場合は、送気ブロア44のモータM1の周波数を所定幅ΔHZ1で増加させ、Δ時間でQとT2のどちらか一方増加する場合は、送気ブロア44のモータM1の周波数を所定幅ΔHZ2で増加させ、Δ時間でQとT2のどちらか一方減少する場合は、送気ブロア44のモータM1の周波数を所定幅ΔHZ2で減少させ、Δ時間でQとT2が共に減少する場合は、送気ブロア44の周波数を所定幅ΔHZ1で減少させるような、設備制御信号を設備制御信号出力部55から出力することで、発酵乾燥設備4の動作を制御することも考えられる。ここで、発酵熱量増減ΔQと排気温度T2増減ΔT2を組合せたものを指標とすること、計算頻度(発酵指標算出間隔:Δ時間)、および送気ブロア周波数増減幅ΔHZ1、ΔHZ2は、運転管理信号取得部51において指定される情報に含まれ、統合制御部3で設定される。
【0091】
発酵指標を、発酵熱量Qとするか、Δ時間の発酵熱増減ΔQにするか、Δ時間の発酵熱増減ΔQと発酵槽排気温度T3の組合せにするかは、運転管理信号取得部51において指定される情報に含まれ、統合制御部3で設定される。
【0092】
なお、発酵熱量を算出するための上記の計算方法等については、パラメータ算出情報保持部56に予め保持されていてもよい。
【0093】
発酵熱を上述の数式(3)を使って算出する場合、上述の仮定A、B、Cが成立する必要がある。しかしながら、発酵槽圧力が極度に負圧になると、発酵槽原料投入部分より外気が侵入し、上記仮定A、B、Cが成立しなくなり、発酵熱の計算精度が悪化し、結果として送気量制御が適切に機能しなくなる。これを防止するために、パラメータ算出部において、発酵槽内圧が極度に負圧にならないように、発酵槽送気量の変動に応じて排気ファンの排気量を制御する、すなわち排気ファンのモータ回転数(インバータ周波数)を制御する機能(通常のPID制御機能)を持たせるのが好ましい。ここで、上記圧力制御の作動可否、作動時におけるPID制御の設定値である発酵槽圧力、非作動時における排気ファンのモータ回転数(インバータ周波数)は、統合制御部3にて指定され、運転管理信号取得部51にて取得される。
【0094】
[パラメータ算出部動作事例2]
発酵指標として蒸発水分量を、運転パラメータとして発酵槽送気量を選定した場合(統合制御部3で決定され運転管理信号取得部51にて取得される情報)の、パラメータ算出部53内の動作について説明する。
【0095】
(蒸発水分量)
蒸発水分量は、蒸発水分量(kg/min)=排気の水蒸気量S1(kg/min)-入気の水蒸気量S0(kg/min)で求められる。パラメータ算出部動作事例1と同様にS2=S1とすれば、蒸発水分量(kg/min)=排気の水蒸気量S2(kg/min)-入気の水蒸気量S0(kg/min)で算出される。S0およびS2は、上述した方法と同様の方法で計算することができる。
【0096】
まず、蒸発水分量Sの絶対値を使用した送気量の制御方法(パラメータ算出部動作事例2-1)について説明する。設備制御部5のパラメータ算出部53において、センサ信号取得部で取得した情報より、蒸発水分量を数分~数時間間隔(発酵指標算出間隔:Δ時間)で算出する。蒸発水分量の絶対値が所定の値(たとえば設計値)になるように、あらかじめ入力された蒸発水分量・送気量関係式により送気量を設定し、設備制御信号出力部55より前述送気量に対応する送気ブロア44のモータM1の周波数(設備制御信号)を出力することで、発酵乾燥設備4の動作を制御することができる。ここで、蒸発水分量の絶対値を指標とすること、蒸発水分量目標値(たとえば設計値)の設定、蒸発水分量・送気量関係式、および計算頻度(発酵指標算出間隔:Δ時間)は、統合制御部3にて指定され、運転管理信号取得部51にて取得される。
【0097】
続いて、蒸発水分量の増減を使用した送気量の制御方法(パラメータ算出部動作事例2-2)について説明する。設備制御部5のパラメータ算出部53において、センサ信号取得部で取得した情報より、蒸発水分量を数分~数時間間隔(発酵指標算出間隔:Δ時間)で算出し、Δ時間での蒸発水分量の増減ΔSを発酵指標として送気量を調整する。Sが増加すれば送気量を所定刻みで増加するように、また、Sが減少すれば送気量を所定刻みで減少するように、設備制御信号出力部55より送気ブロア44のモータM1の周波数を出力することで、発酵乾燥設備4の動作を制御することができる。ここで、蒸発水分量の増減を指標とすること、送気量増減幅(刻み)、蒸発水分量の計算頻度(発酵指標算出間隔:Δ時間)は、統合制御部3にて指定され、運転管理信号取得部51にて取得される。
【0098】
発酵指標を、蒸発水分量Sとするか、Δ時間のΔSにするかは、運転管理情報として統合制御部3で設定される。
【0099】
なお、蒸発水分量を算出するための上記の計算方法等については、パラメータ算出情報保持部56に予め保持されていてもよい。
【0100】
[パラメータ算出部動作事例3]
発酵指標として二酸化炭素発生量を、運転パラメータとして発酵槽送気量を選定した場合(統合制御部3で決定され運転管理信号取得部51にて取得される情報)の、パラメータ算出部内の動作について説明する。
【0101】
(二酸化炭素発生量)
発酵槽41における発酵状況を把握するための指標として、二酸化炭素(CO2)の発生速度を用いてもよい。
【0102】
発酵槽41における好気性発酵は、概略以下の式(A)に示す反応が行われていると考えることができる。
【0103】
易分解性有機物+O2→CO2+H2O+発酵熱 …(A)
【0104】
具体的には、酸素を必要とする微生物等の作用により、発酵原料に含まれる易分解性有機物を水および二酸化炭素に分解する。この有機物の分解の際に生じる発酵熱が槽内の水分を低減させる。発酵槽41内で上記の式(A)に示す反応が進んでいるかを把握する際の指標として二酸化炭素の発生速度を用いることができる。
【0105】
発酵槽41内での二酸化炭素の発生速度を把握するためには、発酵槽41内の二酸化炭素の濃度の変化を把握する必要がある。また、発酵槽41では、発酵槽41に対して出入りする気体の量が変化し得るので、移動する気体の流量を考慮することが求められる。
【0106】
また、発酵槽41からの排気ガスに含まれる二酸化炭素の濃度に係る情報は、例えば、排気ラインとなるラインL4上に二酸化炭素濃度を測定する二酸化炭素濃度計を設けることが考えられる。ただし、二酸化炭素を直接測定することに代えて、酸素の濃度の測定結果を利用して二酸化炭素の発生速度を算出する構成としてもよい。すなわち、酸素濃度を測定する濃度計を使用して酸素濃度を測定し酸素濃度の対空気減少量に基づいて、反応式(A)より、二酸化炭素濃度を推定してもよい。一般的に、酸素濃度計は、二酸化炭素濃度計と比較して不純物に対する劣化が起こりにくいので、排気ガスに係る測定を行う本実施形態での使用に適していると考えられる。
【0107】
一例として、酸素の濃度の測定結果を利用して二酸化炭素の発生速度を算出する際には、以下の数式(4)に基づいて算出することが考えられる。
【0108】
【0109】
ここで、Fは排気量(常温常圧の乾きガス流量)(単位Nm3/min(常温・常圧))であり、O2は排気ライン(ラインL4)を流れる気体に含まれる酸素濃度の実測値で、一般的には常温常圧の乾きガス基準の酸素濃度である。したがって、排気量と酸素濃度とが分かれば、単位時間当たりの二酸化炭素の発生量(発生速度)を求めることができる。排気量については、流量計等を用いてラインL4を流れる気体の量を測定することも考えられるが、排気ガスにはダストや飽和状態の水蒸気が含まれている。そのため、排気流量を流量計で正確に測定することが難しい場合が多い。排気ファン47のモータM2の回転数を調整し発酵槽の圧力を微負圧に維持することにより、発酵槽でのリーク空気量が送気量に対して無視できるようにすれば、前述の仮定A、B,Cより、送気乾きガス流量=排気乾きガス流量となるため、送気ブロア44のモータM1の回転数、または、ラインL3に設けられる流量計、温度計、および圧力計の出力および外気の相対湿度により、送気乾きガス流量を計算し、これを排気乾きガス流量としてもよい。
【0110】
上記の情報が得られた場合、パラメータ算出部53では、二酸化炭素の発生速度を算出することが可能となる。パラメータ算出部53では、二酸化炭素の発生量の算出結果に基づいて、発酵槽41の容器61への送気量の制御内容を変更する構成としてもよい。二酸化炭素の発生速度を発酵指標とする送気量の制御方法の一例を以下に説明する。例えば、送気量を増加することによって、発酵槽41内での二酸化炭素の発生速度(単位時間当たりの発生量)が増加した場合は、送気量を更に増加して、発酵を更に活発化するような制御としてもよい。例えば、送気量を増加することによって、発酵槽41内での二酸化炭素の発生速度(単位時間当たりの発生量)が減少した場合は、送気量を下げて、発酵の低調化を改善するような制御としてもよい。例えば、送気量を減少することによって、発酵槽41内での二酸化炭素の発生速度(単位時間当たりの発生量)が減少した場合は、送気量を増加して、発酵の低調化を改善するような制御としてもよい。例えば、送気量を減少することによって、発酵槽41内での二酸化炭素の発生速度(単位時間当たりの発生量)が増加した場合は、送気量を更に下げて、発酵を更に活発化するような制御としてもよい。また、あらかじめ入力された二酸化炭素生成量と送気量の関係式より送気量を決定してもよい。このように、パラメータ算出部53では、上記のような送気量設定ロジックにより送気量の変更を指示し、設備制御信号出力部55において送気ブロア44のモータM1の周波数(設備制御信号)を出力することで、発酵乾燥設備4の動作を制御することができる。ここで、送気量設定ロジックの選択、二酸化炭素生成量と送気量の関係式、送気量増減幅(刻み)、二酸化炭素発生量の計算頻度(発酵指標算出間隔:Δ時間)は、統合制御部にて指定され、運転管理信号取得部にて取得される。
【0111】
なお、二酸化炭素の発生速度を算出するための上記の計算方法等については、パラメータ算出情報保持部56に予め保持されていてもよい。
【0112】
[パラメータ算出部動作事例4]
発酵指標として発酵槽排気温度T3を、運転パラメータとして発酵槽送気量を選定した場合(統合制御部3で決定され運転管理信号取得部51にて取得される情報)の、パラメータ算出部内の動作について説明する。
【0113】
(排気温度)
まず、排気温度T3の絶対値を使用した送気量の制御方法(パラメータ算出部動作事例4-1)について説明する。設備制御部5のパラメータ算出部53において、センサ信号取得部で取得した排気温度T3情報より、数分~数時間間隔(発酵指標算出間隔:Δ時間)で平均値を算出する。排気温度T3の平均値より、あらかじめ入力された排気温度・送気量関係式を使って送気量を設定し、設備制御信号出力部55より前述送気量に対応する送気ブロア44のモータM1の周波数(設備制御信号)を出力することで、発酵乾燥設備4の動作を制御することができる。ここで、排気温度T3の絶対値を指標とすること、排気温度・送気量関係式、および計算頻度(発酵指標算出間隔:Δ時間)は、統合制御部3にて指定され、運転管理信号取得部51にて取得される。
【0114】
続いて、排気温度T3の増減を使用した送気量の制御方法(パラメータ算出部動作事例4-2)について説明する。設備制御部5のパラメータ算出部53において、センサ信号取得部で取得した排気温度T3情報より平均値を数分~数時間間隔(発酵指標算出間隔:Δ時間)で算出し、Δ時間でのT3の増減ΔT3を発酵指標として送気量を調整する。T3が増加すれば送気量を所定刻みで増加するように、また、T3が減少すれば送気量を所定刻みで減少するように、設備制御信号出力部55より送気ブロア44のモータM1の周波数(設備制御信号)を出力することで、発酵乾燥設備4の動作を制御することができる。ここで、排気温度T3の増減を指標とすること、送気量増減幅(刻み)およびT3平均値の計算頻度(発酵指標算出間隔:Δ時間)は、統合制御部3にて指定され、運転管理信号取得部51にて取得される。
【0115】
[パラメータ算出部動作事例5]
発酵指標として発酵槽内容物質量変化を、運転パラメータとして発酵原料の配合比・投入量、および、発酵乾燥物の排出量を選定した場合(統合制御部3で決定され運転管理信号取得部51にて取得される情報)の、パラメータ算出部内の動作について説明する。
【0116】
(発酵槽内容物質量変化)
発酵槽41の容器61内では、発酵の進行に伴って有機物が分解しおよび発酵熱により水分が蒸発する。この結果、容器61の内容物の重量が減少する。したがって、内容物の重量変化を発酵指標として用いることは有効であると考えられる。
【0117】
発酵槽内容物の重量は、発酵槽41をロードセル等の重量センサに乗せて計測される。内容物を含む発酵設備の内容物込みの重量は数十トン~2百トンであるので、重量センサの精度より、一般的には、数十kg以下の重量変化を正確に把握することは難しい。一方、発酵槽内容物の重量変化は、水の蒸発や発酵原料の分解により起こる。水の蒸発速度や発酵原料の分解速度を考慮すると、数分単位の発酵槽内容物の重量変化は、重量センサの測定精度より小さく、正確に重量変化を評価することは難しい。よって、重量変化の評価スパンを数時間~1日とすることが好ましい。この点より、内容物の重量変化(ΔW/Δt)は長期的発酵指標と位置付けられる。
【0118】
発酵槽内容物の重量は、発酵槽41の重量センサによって計測される。センサ信号取得部52は、発酵原料の重量(計測値)を任意の取得間隔(1分間隔)で繰り返し取得し、パラメータ算出部53において、原料投入及び発酵乾燥物取り出しに伴う重量変化の補正、及び、撹拌翼駆動に伴う重力センサ出力ノイズの除去等を行い、減少重量速度ΔW/Δtを算出する。
【0119】
上記ΔW/Δtの算出における、算出スパンΔtの設定について説明する。ΔW/Δtを長期的な発酵指標として用いることから、算出スパンは、1時間~24時間程度、更に1週間程度でもよいし、特に、6時間、12時間、24時間がより好ましい。ΔW/Δtの単位は、例えばkg/6時間、kg/12時間、kg/1日となる。発酵乾燥設備4では、発酵原料の投入や発酵乾燥物の排出が1日1回定まった時間に行なわれている。上記の算出スパン内に、発酵原料の投入、または、発酵乾燥物の取り出しを行った場合は、ΔWの算出に当たっては、その際の重量増減を補正する必要があり、パラメータ算出部53にて行われる。このようにパラメータ算出部53では、数種類のΔW/Δtを算出し、統合制御部3に送信する。
【0120】
発酵槽内容物質量変化データは、統合制御部3において、前述のように長期的な発酵指標として取り扱われる。統合制御部では、それぞれの発酵乾燥設備より提供されたΔW/Δtのデータより、あらかじめ入力された発酵原料投入量・配合比とΔW/Δtの関係式、および、発酵乾燥物取り出し量とΔW/Δtの関係式を使用して、発酵原料配合比、発酵原料投入量、発酵乾燥物取り出し量を決定して、運転管理情報として、それぞれの設備制御部5に送信する。
【0121】
それぞれの設備制御部5における運転管理信号取得部51は、上記の発酵原料配合比、発酵原料投入量、発酵乾燥物取り出し量の関する指示情報を取得し、制御信号出力部を経由して、実行される。それぞれの発酵乾燥設備の運転員が、発酵原料の配合、投入、発酵乾燥物の排出作業をマニュアルで行う場合は(大半のケース)、上記指示情報を運転管理信号取得部に表示してもよい。
【0122】
また、発酵槽重量変化を発酵指標として、撹拌翼運転パターンを変更してもよい。撹拌翼は連続回転と間欠回転があり、間欠回転の場合は停止時間と回転時間の設定が必要である。発酵槽重量変化が大きい場合は、連続回転もしくは間欠回転の場合は停止時間/回転時間比が小さい方が望ましい。また、発酵槽重量変化が小さい場合は、槽内を過度に撹拌することは好ましくないので、間欠運転で停止時間/回転時間比をできるだけ大きくすることが望ましい。それぞれのパラメータ算出部で計算された発酵槽重量変化より、統合制御部3にて撹拌翼運転パターンを決定し、制御信号出力部を経由して、それぞれの発酵乾燥設備4で実行される。それぞれの発酵乾燥設備4の運転員が、撹拌翼運転パターンの変更を手動で行う場合は、指示情報を運転管理信号取得部51で表示してもよい。
【0123】
(短期的発酵指標による制御と長期的発酵指標による制御)
以上のように、発酵熱量、蒸発水分量、二酸化炭素発生量、装置内温度、排気温度は、パラメータ算出部53において、短期発酵指標として算出され、パラメータ算出部53において発酵槽送気量等の運転パラメータに変換され、これに基づく制御信号が設備制御信号出力部55から各部に対して送信される。発酵乾燥設備4は、設備制御部5から送信された信号に基づいて動作する。このように、短期的発酵指標による制御は、それぞれの発酵乾燥設備内で完結し、統合制御部は発酵指標の選定とパラメータ算出部内で行われる各種計算のパラメータを指示する機能のみを持つ。一方、発酵槽内容物質量変化は、パラメータ算出部53において長期的発酵指標と算出される。パラメータ算出部53では発酵指標の算出のみを行い、統合制御部において運転パラメータの設定を行う。このように、短期的発酵指標による制御と長期的発酵指標による制御では、それぞれの発酵乾燥設備の設備制御部と統合制御部の機能分担が異なる。
【0124】
なお、統合制御部3で実施される発酵指標や運転パラメータの算出に関係する各種関係式やパラメータの設定においては、予め算出するための数式情報等を保持しておいて、センサ等から得られた情報を数式情報に当てはめることで所望のパラメータを算出してもよいが、これらの手法に代えて、機械学習等の手法を用いてもよい。例えば、各センサの情報と、当該状態において発酵乾燥設備4を好適に運転するための各部の設定(パラメータ)に係る情報と、当該状況で発酵槽41に投入される発酵原料および得られる発酵乾燥物の情報と、の組み合わせからなるデータセットを教師データとして準備して、機械学習を行うこととしてもよい。この場合、センサの情報を入力することで、パラメータを算出することが可能となる。また、統合制御部3にて、発酵乾燥システムA、発酵乾燥システムB、発酵乾燥システムCにおいてそれぞれ個別に構築された各種関係式やパラメータのデータの集約管理・機械学習を行うとともに、発酵乾燥システムDに活用することも想定される。
【0125】
[統合制御部]
図6を参照しながら、統合制御部3について説明する。統合制御部3は、統合発酵乾燥システム1の管理者等がユーザ(運転管理者)とする端末装置(マンマシーンインターフェイス)として実現されてもよい。統合制御部3は、発酵乾燥システム2の設備制御部5との間で無線または有線での通信が可能とされる。特に、広域分散した複数の発酵乾燥システムを一つの統合制御部で運転管理する場合は、インターネットの高速データ通信機能およびクラウド等の大容量データ共有化機能を活用するのが好ましい。統合制御部3は、運転状況信号取得部31と、運転管理信号出力部32と、運転状況表示部33と、運転管理指示取得部34と、運転状況情報保持部35と、運転情報解析部36と、を含んで構成される。
【0126】
運転状況信号取得部31は、複数の発酵乾燥システム2それぞれの設備制御部5から送信される運転状況(制御状況を含む)に係る信号(運転管理者)を取得する機能を有する。運転状況信号取得部31は、特定のタイミングで運転状況信号を取得してもよいし、例えば、複数の発酵乾燥システム2それぞれからリアルタイムで常時運転状況信号を受信する構成であってもよい。
【0127】
運転管理信号出力部32は、統合制御部3のユーザ(運転管理者)の指示に基づいた運転管理信号を設備制御部5に対して送信する。運転管理信号は、統合発酵乾燥システム1に含まれる発酵乾燥システム2全てに対して一度に送信する必要は無く、一部の発酵乾燥システム2に対して運転管理信号を送信してもよいし、各発酵乾燥システム2に対して個別に送信する構成としてもよい。ユーザ(運転管理者)による指示内容に基づいて、運転管理信号に含まれる内容および送信の仕方は変更される。
【0128】
運転状況表示部33は、運転状況信号取得部31が取得した信号に基づいて、各発酵乾燥システム2(発酵乾燥設備)の運転状況および各種制御の動作状況をモニタ等に表示する機能を有する。表示の仕方等については特に限定されないが、発酵乾燥システム2毎に、統合制御部3から各発酵乾燥システム2に対して送信している運転管理信号の内容、設備制御部5による発酵乾燥設備4の制御内容、各センサから取得された運転情報等を表示する構成とすることができる。
【0129】
運転管理指示取得部34は、ユーザ(運転管理者)による各発酵乾燥システム2への運転管理指示を取得する機能を有するマンマシーンインターフェイスである。運転管理指示は、例えば、ユーザ(運転管理者)がマンマシーンインターフェイスを操作することで入力されてもよい。運転管理指示取得部34が取得した運転管理指示に基づいて、運転管理信号出力部32が各発酵乾燥システム2の設備制御部5に対して運転管理信号を作成して送信する。
【0130】
運転状況情報保持部35は、複数の発酵乾燥システム2それぞれの設備制御部5から送信される運転状況および各種制御状況に係る信号に含まれる情報を保持する機能を有する。また、運転状況情報保持部35は、統合制御部3から各発酵乾燥システム2に対して送信した運転管理信号に係る情報を保持していてもよい。さらに運転状況情報保持部35は、複数の発酵乾燥システム2それぞれにおける設備制御部5による発酵乾燥設備4の制御内容、各センサから取得された運転情報、発酵乾燥設備4の機器の作動状況や性能情報を保持していてもよい。
【0131】
運転情報解析部36は、運転状況信号取得部31が取得した運転情報に基づいて、各発酵乾燥システム2(発酵乾燥設備)の発酵状況を解析する機能を有する。ここで、発酵状況の解析とは、たとえば、発酵指標の経時変化や運転パラメータの感度分析等である。さらに、複数の発酵乾燥システムの運転情報を集約管理し、機械学習機能により発酵指標と運転パラメータの関係式を最適化する機能や、発酵状況悪化の予兆を早期に判断しユーザ(運転管理者)に警告する機能を含んでいてもよい。
【0132】
[統合制御部、設備制御部のハードウェア]
統合制御部3および設備制御部5のハードウェアは、それぞれ、例えば一つまたは複数の制御用のコンピュータにより構成される。例えば統合制御部3および設備制御部5は、
図7に示す回路100を有する。回路100は、一つまたは複数のプロセッサ101と、メモリ102と、ストレージ103と、入出力ポート104と、タイマー105とを有する。ストレージ103は、例えばハードディスク等、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を有する。記憶媒体は、後述の制御に係る手順を統合制御部3または設備制御部5に実行させるためのプログラムを記憶している。記憶媒体は、不揮発性の半導体メモリ、磁気ディスクおよび光ディスク等の取り出し可能な媒体であってもよい。メモリ102は、ストレージ103の記憶媒体からロードしたプログラムおよびプロセッサ101による演算結果を一時的に記憶する。プロセッサ101は、メモリ102と協働して上記プログラムを実行することで、上述した各統合制御部3または設備制御部5の各部の機能を発揮する。入出力ポート104は、プロセッサ101からの指令に従って、他の装置との間で電気信号の入出力を行う。タイマー105は、例えば一定周期の基準パルスをカウントすることで経過時間を計測する。
【0133】
統合制御部3および設備制御部5は、上記の構成により、統合発酵乾燥システム1に含まれる各部等を制御する。なお、上記の統合制御部3および設備制御部5に係るハードウェア構成は一例であって、上記に限定されるものではない。
【0134】
[統合制御部による発酵乾燥システムの運転管理方法]
図8を参照しながら、統合発酵乾燥システム1の発酵乾燥制御方法のうち統合制御部3で行われる処理について説明する。
図8では、統合発酵乾燥システム1に含まれる1の発酵乾燥システム2に対する制御について説明する。統合発酵乾燥システム1が複数の発酵乾燥システム2を含んで構成される場合、
図8に示す処理は、発酵乾燥システム2毎に個別に行われ得る。
【0135】
ここでは、発酵乾燥システム2が既に動作開始しているとする。ここで、統合制御部3の運転状況信号取得部31は、発酵乾燥システム2の設備制御部5から、発酵乾燥システム内のセンサ取得情報や各機器(制御機器を含む)の動作状況に関わる信号(以下運転状況信号)を取得する(S01)。運転状況信号取得部31において制御状況信号を取得した場合、運転状況表示部33が発酵乾燥システム2の発酵乾燥設備4のセンサ取得情報や各機器(制御機器を含む)の動作状況を表示する(S03)。これにより、統合制御部3のユーザ(運転管理者)は、発酵乾燥システム2の発酵乾燥設備4の運転状況を把握することができる。また、運転状況信号取得後に、運転情報解析部36において、運転状況に関わる各種データを解析する(S02)処理を組み込んでもよい。たとえば、発酵乾燥システムA、発酵乾燥システムB、発酵乾燥システムCにおいて、それぞれ個別に構築された各種関係式やパラメータのデータの集約管理及び機械学習による最適化を行うとともに、これらの結果を発酵乾燥システムDに活用することも想定される。なお、運転状況に関わる各種データの解析(S02)は省略してもよい。
【0136】
ここで、ユーザ(運転管理者)が発酵乾燥システム2の発酵乾燥設備4に対する運転管理指示を行ったとする。運転管理指示の内容としては、動作の開始/停止、発酵指標および運転パラメータの設定・変更、発酵指標および運転パラメータ算出式の設定・変更、同算出式に含まれるパラメータの設定・変更、発酵原料配合比および投入量の設定・変更、発酵乾燥物の取り出し量の設定変更等が含まれ得る。統合制御部3では、運転管理指示取得部34がユーザ(運転管理者)からの運転管理指示を取得する(S04)。この場合、運転管理信号出力部32は、運転管理指示に基づいた運転管理信号を作成し、対象となる発酵乾燥システム2の設備制御部5に対して出力する(S05)。この一連の動作は、統合制御部3の動作を終了するまで(S06-YESとなるまで)継続される。
【0137】
なお、発酵乾燥システム2から運転状況信号の取得(S01)のタイミングは、例えば、数分~数時間おきというように予め決められていてもよい。また、統合制御部3から運転状況信号の送信指示を設備制御部5に対して送信することによる設備制御部5からの応答信号として、運転状況信号を取得してもよい。また、ユーザ(運転管理者)からの運転管理指示の取得(S03)のタイミングは、運転状況信号の取得(S01)および表示(S03)とは関係なく発生し得る。すなわち、運転状況信号の取得(S01)および表示(S03)と、ユーザ(運転管理者)からの運転管理指示の取得(S04)および運転管理信号の出力(S05)と、は独立して行われてもよい。
【0138】
[設備制御部による発酵乾燥制御方法]
図9を参照しながら、統合発酵乾燥システム1の発酵乾燥制御方法のうち設備制御部5による発酵乾燥設備4の制御方法について説明する。
【0139】
ここでは、発酵乾燥システム2が既に動作開始しているとする。ここで、設備制御部5の運転管理信号取得部51は、統合制御部3から送信される運転管理信号を取得する(S11)。また、設備制御部5のセンサ信号取得部52は、発酵乾燥設備4の各部に取り付けられたセンサからのセンサ信号を取得する(S12)。運転管理信号の取得(S11)と、センサ信号の取得(S12)とは、同時に行われるとは限らず、どちらか一方のみが行われてもよい。発酵原料の配合・投入および発酵乾燥物の取り出しを、それぞれの発酵乾燥システムの運転員が現場の手動操作で行う場合、設備制御部にマンマシーンインターフェイスを設置して、それぞれの発酵乾燥システムの運転員が、発酵原料の実績配合比、実績投入量、発酵乾燥物の実績排出量および水分を入力することによって運転情報を取得(S21)してもよい。
【0140】
運転管理信号の取得(S11)、センサ信号の取得(S12)およびマンマシーンインターフェイスからの運転情報の取得(S21)の少なくとも一方を契機として、パラメータ算出部53において、発酵指標および運転パラメータの算出が行われる(S13)。パラメータの算出方法は、上述したとおりであり、取得したセンサの情報に基づいて行われ得る。
【0141】
設備制御信号出力部55は、パラメータ算出部53において算出した運転パラメータを制御信号として発酵乾燥設備4の各部へ送信することによって、設備制御部5が発酵乾燥設備4を制御する(S14)。発酵乾燥設備4は、設備制御部5からの制御信号に基づいて、必要に応じて発酵乾燥システム内の回転機器や制御機器の運転条件を切り替える等の動作を行う。
【0142】
また、設備制御部5の運転状況出力部54は、運転状況を統合制御部3に対して出力する(S15)。この処理は、設備制御部5による発酵乾燥設備4の制御(S14)の後に行われる必要はなく、例えば、統合制御部3からの指示に基づいて一連の処理(S11~S14)とは独立したタイミングで行われてもよい。
【0143】
上記の一連の動作は、設備制御部5の動作を終了するまで(S06-YESとなるまで)、すなわち、発酵乾燥設備4の動作を終了するまで継続される。
【0144】
[作用]
上記の統合発酵乾燥システム1およびこの統合発酵乾燥システム1による発酵制御方法によれば、複数の発酵乾燥システム2のそれぞれの設備制御部5に対して、統合制御部3から運転管理信号を送信することで、発酵乾燥システム2の動作が制御される。また、各発酵乾燥システム2では、設備制御部5が、統合制御部3からの運転管理信号に基づいて、発酵乾燥設備4における発酵熱量、蒸発水分量、二酸化炭素発生量、発酵槽内容物質量変化、および、発酵乾燥設備より排出される排気温度に関わる情報を取得し、少なくとも1つを発酵指標選定して、それに対応する発酵乾燥設備4に係る運転パラメータを算出し、その後、算出した運転パラメータに基づいて、発酵槽41への送気量、発酵槽の撹拌翼の回転パターン、発酵槽内圧、発酵槽からの排気量、発酵槽へ供給する発酵原料の配合比および供給量、ならびに、発酵乾燥後の発酵乾燥物の排出量の少なくとも1つを制御する。そのため、統合発酵乾燥システム1では、統合制御部3が複数の発酵乾燥システム2をそれぞれ制御することができ、さらに、各発酵乾燥システム2では、統合制御部3からの指示に基づいて、運転パラメータを算出し、適切な運転制御を行うことができる。したがって、発酵乾燥設備4の安定した運転を実現することが可能となる。
【0145】
従来から、発酵乾燥システム2における発酵乾燥処理を適切に行うための種々の検討として、発酵槽における送気量の調整等についての検討が行われていた。しかしながら、例えば、複数の発酵乾燥システム2が存在する場合に、各発酵乾燥システム2における発酵乾燥条件が適切になるように、発酵乾燥システム2それぞれについて細かく制御するためには、それぞれの発酵乾燥システムに熟練した運転管理者を配置する必要があるが、これを実現することは困難である場合が多く、結果として、発酵乾燥設備の導入が進まない状況があった。
【0146】
これに対して、上記の統合発酵乾燥システム1では、発酵乾燥システム2の設備制御部5において、統合制御部3からの運転管理信号に基づいて運転パラメータを算出し、これに基づいて、発酵乾燥システム2の発酵乾燥設備4が制御される。一方、統合制御部3では、発酵乾燥システムの熟練運転管理者が、それぞれの発酵乾燥システムの運転状況を監視し、必要に応じて、処理条件等の処理に係る運転管理信号を発酵乾燥システム2に対して送信することによって、複数の発酵乾燥システム2を少数の熟練運転管理者によって適切に管理することができる。そのため、上記の統合発酵乾燥システム1は、特に複数の発酵乾燥システム2を一括管理したいという場合に有用である。
【0147】
また、複数の発酵乾燥システム2が、互いに独立した施設として設けられ、統合制御部3は、複数の発酵乾燥システム2それぞれを並行して制御する態様としてもよい。この場合、複数の発酵乾燥システム2を統合制御部3において一括して制御することが可能となる。
【0148】
また、発酵乾燥システム2は、発酵原料を供給する複数の原料供給源に対して個別に設けられる態様としてもよい。発酵原料を供給する複数の原料供給源に対して個別に発酵乾燥システムを設けることで、原料供給源から供給される発酵原料の特徴等に応じて各発酵乾燥システムにおいて制御内容を個別に変更することができるため、発酵乾燥設備4における発酵乾燥をより安定して行うことができる。
【0149】
原料供給源が互いに異なる場合、当該供給源から供給される発酵原料の特性も互いに異なることが想定される。例えば、原料供給源90A~90D(
図1参照)から、互いに異なる含水率や嵩密度や有機物組成の発酵原料が供給される場合がある。発酵原料の含水率や発酵に寄与する有機物(易分解性有機物)含有量や通気性が互いに異なると、発酵槽41における好適な発酵乾燥条件が互いに異なると考えられる。また、このような場合、発酵槽41内での発酵の経過も互いに異なると考えられる。これに対して、発酵乾燥システム2毎に発酵乾燥の状況を管理して制御する構成とすることで、各発酵乾燥システム2における発酵乾燥状況をそれぞれ適切に管理することができるため、生成される発酵乾燥物についても、想定されている用途に適したものが得られると考えられる。
【0150】
[変形例]
以上、本開示の実施形態について説明してきたが、本開示は上記の実施形態に限定されず、種々の変更を行うことができる。
【0151】
例えば、上記で説明した統合発酵乾燥システム1、発酵乾燥システム2、統合制御部3、発酵乾燥設備4、設備制御部5等の構成は一例であって、適宜変更することができる。
【0152】
また、上記実施形態では、統合発酵乾燥システム1において、1つの統合制御部3が設けられている場合について説明したが、統合制御部3が複数設けられていてもよい。例えば、複数のユーザ(運転管理者)が互いに異なる位置に設けられた統合制御部3から、統合発酵乾燥システム1に含まれる発酵乾燥システム2を制御する構成を実現することができる。複数の統合制御部3が設けられている場合、運転管理指示が競合する場合に優先する統合制御部3を予め指定してもよいし、各統合制御部3が制御可能な範囲を予めそれぞれ決めておいてもよい。
【符号の説明】
【0153】
1…統合発酵乾燥システム、2,2A~2C…発酵乾燥システム、3…統合制御部、4…発酵乾燥設備、5…設備制御部、41…発酵槽、90A~90D…原料供給源。