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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 29/04 20060101AFI20240619BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20240619BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240619BHJP
   C08L 101/08 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
C08L29/04
C08K3/34
C08K3/36
C08L101/08
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021516036
(86)(22)【出願日】2020-04-15
(86)【国際出願番号】 JP2020016597
(87)【国際公開番号】W WO2020218119
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2019083916
(32)【優先日】2019-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000104814
【氏名又は名称】クニミネ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】後藤 雄作
(72)【発明者】
【氏名】宇佐見 祐章
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 道也
(72)【発明者】
【氏名】蛯名 武雄
(72)【発明者】
【氏名】石井 亮
(72)【発明者】
【氏名】相澤 崇史
(72)【発明者】
【氏名】窪田 宗弘
(72)【発明者】
【氏名】大谷 洋之
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-001242(JP,A)
【文献】特開2004-315781(JP,A)
【文献】特開2013-133360(JP,A)
【文献】国際公開第2018/168947(WO,A1)
【文献】特開2013-133236(JP,A)
【文献】特開2010-095440(JP,A)
【文献】特開2002-210376(JP,A)
【文献】特開2016-011392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2八面体型スメクタイトと、シリカと、ポリビニルアルコールと、を含有し、
前記2八面体型スメクタイトが、層間イオンとして、アンモニウムイオン、リチウムイオン、及び水素イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する2八面体型スメクタイトであり、
前記シリカの含有量が、前記2八面体型スメクタイト及び前記シリカの合計量に対して4~25質量%である、樹脂組成物。
【請求項2】
溶剤を更に含有し、
前記溶剤がアルコールを含有し、前記アルコールの含有量が、前記溶剤全量に対して20~80質量%である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記2八面体型スメクタイトがモンモリロナイトである、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記2八面体型スメクタイトのナトリウムイオン当量が、10meq/100g未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記2八面体型スメクタイトのアンモニウムイオン当量、リチウムイオン当量、及び水素イオン当量の合計が、50~120meq/100gである、請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
ポリカルボン酸を更に含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリビニルアルコールの水酸基価が、800~1500である、請求項1~6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
食品等の包装に用いられる包装材料には、内容物の保護、耐レトルト性、耐熱性、透明性、加工性等の機能が要求される。内容物の品質保持のためには、特にガスバリア性が重要となる。最近では、包装材料だけでなく、太陽電池、半導体等の電子材料に用いられる材料についても、高いガスバリア性が要求されるようになっている。
【0003】
特許文献1には、水酸基を有する樹脂及びイソシアネート化合物を、粘土鉱物等の板状無機化合物及び光遮断剤と組み合わせることで、ガスバリア性等の特性が向上することが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には変性粘土を主要構成成分とする材料が記載されており、変性粘土を用い、必要に応じて添加剤を用い、変性粘土結晶を配向させ、緻密に積層させることにより、自立膜として利用可能な機械的強度、ガスバリア性、耐水性、熱安定性及びフレキシビリティーを備えた膜材が得られるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2013/027609号
【文献】特開2007-277078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コーティング剤、接着剤、ガスバリア材等の用途に用いられる樹脂組成物は、高いガスバリア性を有するとともに、塗工に適したチクソトロピーインデックス(TI値)を有していることが望ましい。TI値が良好であるほど、塗工工程において、塗りやすく垂れにくい塗料となり、塗工面の均一性が優れたものとなる。
【0007】
本発明の目的は、良好なチクソトロピーインデックスを有するとともに、酸素バリア性及び水蒸気バリア性に優れる樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、層間イオンとしてアンモニウムイオン、リチウムイオン、及び水素イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する2八面体型スメクタイトと、所定量のシリカと、水酸基を有するビニル樹脂とを組み合わせることによって、良好なチクソトロピーインデックスと、優れた酸素バリア性及び水蒸気バリア性とが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、一側面において、2八面体型スメクタイトと、シリカと、水酸基を有するビニル樹脂と、を含有し、2八面体型スメクタイトが、層間イオンとしてアンモニウムイオン、リチウムイオン、及び水素イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する2八面体型スメクタイトであり、シリカの含有量が、2八面体型スメクタイト及びシリカの合計量に対して4~25質量%である、樹脂組成物を提供する。
【0010】
樹脂組成物は、溶剤を更に含有していてよい。樹脂組成物において、溶剤はアルコールを含有していてよく、アルコールの含有量は、溶剤全量に対して、20~80質量%であってよい。
【0011】
2八面体型スメクタイトは、モンモリロナイトであってよい。2八面体型スメクタイトのナトリウムイオン当量は、10meq/100g未満であってよい。2八面体型スメクタイトのアンモニウムイオン当量、リチウムイオン当量、及び水素イオン当量の合計は、50~120meq/100gであってよい。
【0012】
樹脂組成物は、ポリカルボン酸を更に含有していてよい。水酸基を有するビニル樹脂の水酸基価は、800~1500であってよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、良好なチクソトロピーインデックスを有するとともに、酸素バリア性及び水蒸気バリア性に優れる樹脂組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。本明細書において、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。
【0015】
一実施形態の樹脂組成物は、2八面体型スメクタイトと、シリカと、水酸基を有するビニル樹脂と、を含有し、2八面体型スメクタイトが、層間イオンとして、アンモニウムイオン、リチウムイオン、及び水素イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する2八面体型スメクタイトであって、シリカの含有量が、2八面体型スメクタイト及びシリカの合計量に対して4~25質量%である。
【0016】
<2八面体型スメクタイト>
粘土鉱物の基本構造は、Si-Oの四面体シートとAl-O等の八面体シートから構成され、八面体シートに入る陽イオンがAl3+など三価のイオンの場合に2八面体と呼ばれる。2八面体型スメクタイトの陽イオン交換容量は、通常60~150meq/100gである。2八面体型スメクタイトの具体的な構造としては、モンモリロナイト、バイデライトが知られている。
【0017】
実施形態における2八面体型スメクタイトは、層間イオンとして、アンモニウムイオン、リチウムイオン、及び水素イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する2八面体型スメクタイトである。
【0018】
2八面体型スメクタイトのナトリウムイオン当量は、10meq/100g未満であってよい。2八面体型スメクタイトのナトリウムイオン当量は、例えば、5meq/100g以下、又は2meq/100g以下であってよい。2八面体型スメクタイトのナトリウムイオン当量は、1Nの酢酸アンモニウム溶液に溶出してくる陽イオン量をイオンクロマトグラフィーにより測定することができる。
【0019】
2八面体型スメクタイトのアンモニウムイオン当量、リチウムイオン当量、及び水素イオン当量の合計が、50~120meq/100gであってよい。2八面体型スメクタイトのアンモニウムイオン当量、リチウムイオン当量、及び水素イオン当量の合計は、50meq/100g以上、80meq/100g以上、又は100meq/100g以上であってよく、120meq/100g以下、又は110meq/100g以下であってよい。2八面体型スメクタイトのアンモニウムイオン当量は、1Nの塩化カリウム溶液に溶出してくる陽イオン量、リチウムイオン当量は、1Nの酢酸アンモニウム溶液に溶出してくる陽イオン量、をそれぞれイオンクロマトグラフィーにより測定することで求めることができる。また、水素イオン当量は、イオン交換前の陽イオン量とイオン交換後の陽イオン量の差から求めることができる。例えば、層間イオンがナトリウムであるモンモリトナイトを用いた場合は、イオン交換操作前後のモンモリロナイトから1Nの酢酸アンモニウム溶液に溶出してくるナトリウムイオン量をイオンクロマトグラフィー測定し、その差分から水素イオン当量を求めることができる。
【0020】
2八面体型スメクタイトの層間イオン(陽イオン)をアンモニウムイオン、リチウムイオン、及び水素イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種に交換する方法は、通常のイオン交換方法であってよく、例えば、2八面体型スメクタイトの水分散体を、水素イオン、アンモニウムイオン、又はリチウムイオンを予め保持させた陽イオン交換樹脂で処理する方法であってよい。当該方法は、イオン交換樹脂を充填したカラムへ上記水分散体を通液する方法であってよく、イオン交換樹脂と上記水分散体とを混合してバッチ攪拌する方法であってもよい。
【0021】
より具体的な例を挙げて説明すると、例えば、層間陽イオンをリチウムイオンに交換する場合、アンバーライトIR120B-Hを予め水酸化リチウムで処理して、イオン交換樹脂にリチウムイオンを保持させる。このリチウムイオンを保持したイオン交換樹脂が充填されたカラムに、2八面体型スメクタイトの濃度が2%の水分散体を1mL/分の速度で通液する。通液後の水分散体を110℃のオーブンで終夜乾燥することで、層間イオンがリチウムイオンである2八面体型スメクタイトを得ることができる。
【0022】
2八面体型スメクタイトの含有量は、樹脂組成物中の不揮発分全量に対して、例えば、水蒸気バリア性及び酸素バリア性(例えば高湿度下での酸素バリア性)により一層優れる等の観点から、5質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、又は40質量%以上であってよく、例えば、樹脂組成物の成形性がより一層優れたものとなり、かつ、基材への密着性が向上する等の観点から、70質量%以下、又は60質量%以下であってよい。2八面体型スメクタイトの含有量は、樹脂組成物中の不揮発分全量に対して、例えば、5~70質量%、20~60質量%、又は40~60質量%であってよい。不揮発分とは、樹脂組成物中の溶剤以外の成分を意味する。
【0023】
<水酸基を有するビニル樹脂>
樹脂組成物は、水酸基を有するビニル樹脂を含有する。水酸基を有するビニル樹脂は、例えば、重合性二重結合を有するアルコールのエステル化物を重合した後、けん化処理をすることによって得ることができる。
【0024】
重合性二重結合を有するアルコールのエステル化物は、例えば、ビニルエステルであってよい。ビニルエステルとしては、例えば、ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルメトキシアセテート、安息香酸ビニル等が挙げられる。
【0025】
また、水酸基を有するビニル樹脂は、例えば、水酸基を有するビニルモノマーの重合若しくは共重合、又は水酸基を有するビニルモノマーと、水酸基を有しないビニルモノマーとの共重合によって得ることができる。水酸基を有するビニルモノマーは、重合性二重結合を有する基(例えば、ビニル基、(メタ)アリル基、又は(メタ)アクリロイル基)及び水酸基をそれぞれ少なくとも一つ有するモノマーである。水酸基を有しないビニルモノマーは、重合性二重結合を有する基(例えば、ビニル基、(メタ)アリル基、又は(メタ)アクリロイル基)を少なくとも一つ有し、かつ、水酸基を有しないモノマーである。(メタ)アリル基とは、アリル基又はメタリル基を意味する。(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。
【0026】
水酸基を有するビニルモノマー(水酸基含有ビニルモノマー)としては、例えば、(メタ)アリルアルコール、ビニルアルコール、;1-ブテン-3-オール等の炭素数4~12のアルケンモノオール又はアルケンジオール;2-ヒドロキシエチルプロペニルエーテル等の末端に重合性二重結合を有するアルケニルエーテル;ヒドロキシスチレン;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル;ε-カプロラクトンを開環重合した化合物と(メタ)アクリル酸のモノエステル化物;等の水酸基含有ビニルモノマーが挙げられる。
【0027】
水酸基を有しないビニルモノマー(水酸基非含有ビニルモノマー)としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン;ジクロロエチレン、塩化ビニル、等のハロゲン化オレフィン;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸エステル;ビニルエステル;マレイン酸ジエステル;フマル酸ジエステル;イタコン酸ジエステル;(メタ)アクリルアミド;スチレン及びその誘導体;ビニルエーテル;ビニルケトン;マレイミド;アリル化合物;(メタ)アクリロニトリル;ビニルピリジン、N-ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、N-ビニルイミダゾール、ビニルカプロラクトン等のビニル基が置換した複素環式基を有する化合物;N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド等のビニルアミドなどが挙げられる。
【0028】
(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸t-オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸アセトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-(2-メトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-2-クロロエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸-3,4-エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸ビニル、(メタ)アクリル酸-2-フェニルビニル、(メタ)アクリル酸-1-プロペニル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸-2-アリロキシエチル、(メタ)アクリル酸プロパルギル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸β-フェノキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸トリフロロエチル、(メタ)アクリル酸オクタフロロペンチル、(メタ)アクリル酸パーフロロオクチルエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸-γ-ブチロラクトン等が挙げられる。
【0029】
ビニルエステルの例としては、上記例示したモノマーが挙げられる。
【0030】
マレイン酸ジエステルの例としては、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、及びマレイン酸ジブチル等が挙げられる。
【0031】
フマル酸ジエステルの例としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル等が挙げられる。
【0032】
イタコン酸ジエステルの例としては、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル等が挙げられる。
【0033】
(メタ)アクリルアミドの例としては、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチルアクリル(メタ)アミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-(2-メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-フェニル(メタ)アクリルアミド、N-ニトロフェニルアクリルアミド、N-エチル-N-フェニルアクリルアミド、N-ベンジル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジアセトンアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、ビニル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアリル(メタ)アクリルアミド、N-アリル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0034】
スチレン誘導体の例としては、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヒドロキシスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレン、α-メチルスチレン等が挙げられる。
【0035】
ビニルエーテルの例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等が挙げられる。
【0036】
ビニルケトンの例としては、メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等が挙げられる。
【0037】
マレイミドの例としては、マレイミド、ブチルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミドなどが挙げられる。
【0038】
アリル化合物の例としては、酢酸アリル、アリルアルコール、アリルアミン、N-アリルアニリン、塩化アリル、臭化アリル等が挙げられる。
【0039】
水酸基を有するビニル樹脂は、水酸基価(単位:mgKOH/g)が例えば800~1500の範囲になるように、水酸基を含んでいてよい。水酸基を有するビニル樹脂の水酸基価は、例えば、800以上、900以上、950以上、又は1000以上であってよく、1500以下、1400以下、又は1300以下であってもよい。水酸基を有するビニル樹脂の水酸基価は、例えば、800~1500、900~1400、950~1300、又は1000~1300であってよい。水酸基価は、JIS-K0070に記載の水酸基価測定方法により測定することができる。また、ビニル樹脂を合成して用いる場合には、使用するモノマー組成から水酸基価を算出することも可能である。
【0040】
水酸基を有するビニル樹脂が、重合性二重結合を有するアルコールのエステル化物の重合体をけん化処理して得られる樹脂である場合、水酸基を有するビニル樹脂の重量平均分子量は、けん化処理前のビニル樹脂の重量平均分子量から換算することができる。けん化処理前のビニル樹脂(アセトキシ基(CHC(=O)O-)を有するビニル樹脂)のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の重量平均分子量は、特に限定されないが、300以上であってよく、4000以下であってよい。
【0041】
水酸基を有するビニル樹脂は、下記式(1)で表される構造単位A(部分構造Aともいう。)を有するビニル樹脂(以下、「ビニル樹脂A」ともいう。)であることが好ましい。この場合、ビニル樹脂Aが水酸基を有することから、水酸基間の相互作用によってビニル樹脂の凝集力が向上するだけでなく、2八面体型スメクタイトとの親和性が高くなり、それゆえより一層高いガスバリア性を発揮することとなる。また、ビニル樹脂Aは構造単位(A)を有することにより、アルコールへの溶解性が向上するだけでなく、樹脂組成物に耐水性を付与できることから、水蒸気バリア性、及び高湿度下での酸素バリア性の更なる向上が期待できる。
【化1】
【0042】
式(1)中、mは、0又は1を表し、*は、結合手を表す。mは、好ましくは0である。
【0043】
水酸基を有するビニル樹脂が構造単位Aを含む場合、構造単位Aの含有量は、水酸基を有するビニル樹脂中の水酸基全体のモル量に対し、好ましくは85モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、好ましくは99モル%以下である。構造単位Aの含有量は、水酸基を有するビニル樹脂中の水酸基全体のモル量に対し、好ましくは85モル%以上99モル%以下、より好ましくは90モル%以上99モル%以下である。mが0である構造単位Aの含有量が上記の範囲であることが好ましい。
【0044】
水酸基を有するビニル樹脂は、構造単位A以外の構造単位(他の構造単位)を含んでいてもよい。他の構造単位は、例えば、下記式(2)で表される構造単位B(部分構造Bともいう。)であってよい。水酸基を有するビニル樹脂は、構造単位Aを含み、更に、構造単位Bを含むことが好ましい。一実施形態において、水酸基を有するビニル樹脂は、構造単位A及び構造単位Bのみからなっていてもよい。水酸基を有するビニル樹脂が構造単位Bを含有することで、成形体としたときの成膜性、膜強度、及び樹脂組成物の接着性がより一層向上する。
【化2】
【0045】
式(2)中、Rは、水素原子、炭素数1~2のアルキル基を表し、nは、0又は1を表し、*は、結合手を表す。Rは、具体的には、水素原子、メチル基又はエチル基であり、nは、好ましくは0である。Rは、水素原子、又はアセチル基である。ここで、RとRが同時に水素原子とならない。
【0046】
構造単位Bの含有量は、耐水性に優れる観点から、水酸基を有するビニル樹脂中の水酸基全体のモル量に対し、1モル%以上である。構造単位Bの含有量は、成形体としたときの成膜性、膜強度、組成物の接着性等に優れる観点から、水酸基を有するビニル樹脂中の水酸基全体のモル量に対し、好ましくは30モル%以下、より好ましくは15モル%以下、更に好ましくは10モル%以下である。構造単位Bの含有量は、水酸基を有するビニル樹脂中の水酸基全体のモル量に対し、好ましくは1モル%以上30モル%以下、より好ましくは1モル%以上15モル%以下であり、更に好ましくは1モル%以上10モル%以下である。Rが水素原子で、Rがアセチル基であり、nが0である構造単位Bの含有量が上記の範囲になることが好ましい。
【0047】
水酸基を有するビニル樹脂が構造単位A及びBを含む場合、構造単位Aと構造単位Bの含有量の合計に対する構造単位Aの含有量のモル%(A/(A+B)×100)は、ガスバリア性がより一層向上する観点から、85モル%以上、又は99モル%以下であることが好ましい。
【0048】
構造単位A及び/又は構造単位Bを有するビニル樹脂の製造方法としては特に限定されず、公知慣用の方法で製造することができる。例えば、構造単位A又はBに対応する水酸基含有ビニルモノマーのエステル化物を重合した後、けん化処理をすることにより、水酸基を有するビニル樹脂を製造することができる。
【0049】
構造単位Aに対応する水酸基含有ビニルモノマーとしては、ビニルアルコール、アリルアルコール、クロチルアルコール等が挙げられる。構造単位Bに対応する水酸基含有ビニルモノマーのエステル化物におけるエステルとは、上記例示したとおりのエステルであってよい。構造単位Bに対応する水酸基含有ビニルモノマーのエステル化物の中でも好ましくは、酢酸エステルである酢酸ビニル、酢酸アリル、又は酢酸クロチルである。これらは1種類を使用してもよいし、2種以上を併用してもかまわない。
【0050】
構造単位Bに対応する水酸基含有ビニルモノマーとしては、イソプロペニルアルコール、メタリルアルコール、イソブテニルアルコール等が挙げられる。構造単位Aに対応する水酸基含有ビニルモノマーのエステル化物におけるエステルとは、酢酸エステル、プロパン酸エステル、ブタン酸エステル、2-メチルプロパン酸エステル、ペンタン酸エステル、3-メチルブタン酸エステル、2,2-ジメチルプロパン酸エステル、ヘキサン酸エステル、シクロヘキシルカルボン酸エステル、安息香酸エステル等が挙げられる。構造単位Aに対応する水酸基含有ビニルモノマーのエステル化物の中でも好ましくは、酢酸エステルである酢酸イソプロペニル、酢酸メタリル、又は酢酸イソブテニルである。これらは1種類単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもかまわない。
【0051】
水酸基を有するビニル樹脂は、単一のモノマーを重合させて得られるホモポリマーであってもよく、複数種のモノマーを共重合させて得られるコポリマーであっても構わない。このとき、ビニルモノマーとして、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基のそれぞれを有するモノマーを組み合わせて用いても構わない。
【0052】
水酸基を有するビニル樹脂は、ビニルモノマーをラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等により重合することによって得られる。重合の際には重合開始剤を用いてもよい。重合開始剤としては、熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤及びカチオン重合開始剤が挙げられる。
【0053】
熱ラジカル重合開始剤としては、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルパーオキシド、クメンパーヒドロキシド、アセチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等の過酸化物;アゾビスイソブチルニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等のアゾ化合物などが挙げられる。
【0054】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0055】
アニオン重合開始剤としては、メチルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム等の有機アルカリ金属;メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド等の有機アルカリ土類金属;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属などが挙げられる。
【0056】
カチオン重合開始剤としては、塩酸、硫酸、過塩素酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、クロロスルホン酸、フルオロスルホン酸等のプロトン酸;三フッ化ホウ素、塩化アルミニウム、四塩化チタン、塩化第二スズ、塩化第二鉄等のルイス酸などが挙げられる。
【0057】
実施形態では、1種のビニル樹脂を単独で用いてよく、複数のビニル樹脂を組み合わせて用いてもよい。ビニル樹脂は、直鎖型ポリマーであってよく、分岐型ポリマーであってもよい。ビニル樹脂が分岐型ポリマーである場合、くし型であってよく、星型であってもよい。
【0058】
水酸基を有するビニル樹脂の含有量は、樹脂組成物中の不揮発分全量に対し、水蒸気バリア性及び酸素バリア性がより一層優れたものとなる観点から、30質量%以上、又は40質量%以上であってよく、樹脂組成物の成形性がより一層優れたものとなる観点から、95質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、又は60質量%以下であってよい。
【0059】
<シリカ>
樹脂組成物は、シリカを更に含有する。本明細書において、「シリカ」とは、二酸化ケイ素(SiO)を意味する。シリカは、結晶性シリカであってもよく、非晶質シリカであってもよい。また、シリカは、天然鉱物中に含まれているものであってもよく、2八面体型スメクタイトに後添加してもよい。結晶性シリカとは、結晶構造(結晶を構成する原子、イオン又は分子が三次元の周期性をもって配列し空間格子を形成しているもの)を持つ固体物質をいう。非晶質シリカとは、原子(または分子)が規則正しい空間的配置を持つ結晶をつくらずに集合した固体状態の物質をいう。
【0060】
シリカの含有量は、2八面体型スメクタイト及びシリカの合計量に対して、4~25質量%である。シリカの含有量は、チクソトロピーインデックスがより良好になる観点から、2八面体型スメクタイト及びシリカの合計量に対して、4質量%以上、10質量%以上、又は15質量%以上であってよく、酸素バリア性及び水蒸気バリア性により一層優れる観点から、2八面体型スメクタイト及びシリカの合計量に対して、25質量%以下、又は20質量%以下であってよい。
【0061】
2八面体型スメクタイト及びシリカの合計含有量は、樹脂組成物の不揮発分全量を基準として、例えば、5質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、又は40質量%以上であってよく、70質量%以下、又は60質量%以下であってよい。
【0062】
<溶剤>
樹脂組成物は、使用用途に応じて溶剤を更に含有してもよい。溶剤としては有機溶剤が挙げられる。溶剤としては、例えば、アルコール、水、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。溶剤の種類及び使用量は使用用途によって適宜選択すればよい。
【0063】
溶剤は、塗膜の乾燥性により一層優れる観点から、アルコールを含有することが好ましい。溶剤は、アルコールのみを含有するものであってよい。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、メトキシプロパノール(1-メトキシー2-プロパノール等)が挙げられる。アルコールは、1種を単独で含んでいてもよく、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0064】
樹脂組成物が溶剤としてアルコールを含有する場合、アルコールの含有量は、溶剤全量に対して、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、又は45質量%以上であってよく、溶剤全量に対して、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、又は50質量%以下であってよい。樹脂組成物が溶剤としてアルコールを含有する場合、アルコールの含有量は、溶剤全量に対して、20~80質量%、25~70質量%、30~60質量%、又は40~50質量%であってよい。
【0065】
アルコールは、乾燥性(ブロッキング性)により一層優れる観点から、エタノールを含有していてよい。アルコールは、エタノールのみを含有していてよく、エタノール及びエタノール以外のアルコールを含有していてよい。エタノール以外のアルコールは、例えば、メタノール、1-プロパノール、2-プロパノール及びメトキシプロパノールからなる群より選択される少なくとも1種であってよい。アルコール中のエタノールの含有量は、アルコール全量に対して、50質量%以上、80質量%以上、又は95質量%以上であってよく、100質量%であってもよい。
【0066】
樹脂組成物中の不揮発分の含有量は、樹脂組成物全量を基準として、1~10質量%であってよく、好ましくは2~8質量%であり、より好ましくは4~7質量%である。
【0067】
<ポリカルボン酸>
樹脂組成物は、ポリカルボン酸を更に含有してもよい。本明細書において、ポリカルボン酸とは、カルボキシル基を2個以上有する化合物を意味する。ポリカルボン酸としては、カルボキシル基を2個以上有する樹脂(但し、水酸基及びカルボキシル基を有するビニル樹脂を除く。)を用いることができる。ポリカルボン酸としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリアスパラギン酸、又はポリアクリル酸とポリマレイン酸の共重合体が挙げられる。
【0068】
ポリカルボン酸の含有量は、水酸基を有するビニル樹脂及びポリカルボン酸の合計含有量を基準として、5質量%以上、10質量%以上、又は15質量%以上であってよく、30質量%以下、25質量%以下、又は20質量%以下であってよい。樹脂組成物が水酸基を有するビニル樹脂及びポリカルボン酸以外の樹脂(他の樹脂)を含有する場合、ポリカルボン酸の含有量は、水酸基を有するビニル樹脂、ポリカルボン酸及び他の樹脂の合計含有量に対して、上記範囲内であってよい。
【0069】
<他の成分>
樹脂組成物は、更に修飾剤を含有してもよい。修飾剤としては、カップリング剤、シラン化合物、酸無水物等が挙げられる。樹脂組成物がこれらの修飾剤を含有する場合、2八面体型スメクタイトの濡れ性が向上し、樹脂組成物への分散性がより一層向上する。修飾剤は、1種を単独で用いてよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
カップリング剤としては、例えばシランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、アルミカップリング剤等が挙げられる。
【0071】
シランカップリング剤としては、例えばエポキシ基含有シランカップリング剤、アミノ基含有シランカップリング剤、(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、イソシアネート基含有シランカップリング剤等が挙げられる。エポキシ基含有シランカップリング剤としては、例えば3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。アミノ基含有シランカップリング剤としては、例えば3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤としては、例えば3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。イソシアネート基含有シランカップリング剤としては、例えば3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0072】
チタンカップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられる。
【0073】
ジルコニウムカップリング剤としては、例えば、酢酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、フッ化ジルコニウム等が挙げられる。
【0074】
アルミカップリング剤としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムジイソプロポキシモノエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0075】
シラン化合物としては、アルコキシシラン、シラザン、シロキサン等が挙げられる。アルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。シラザンとしてはヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。シロキサンとしては加水分解性基含有シロキサン等が挙げられる。
【0076】
酸無水物としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸アルケニル無水コハク酸等が挙げられる。
【0077】
修飾剤の含有量は、2八面体型スメクタイト全量に対し、0.1~30質量%であることが好ましい。修飾剤の含有量が0.1質量%以上であれば、2八面体型スメクタイトの樹脂組成物への分散性がより良好なものとなる。また、修飾剤の含有量が30質量%以下であれば、樹脂組成物に対する修飾剤の機械物性への影響をより抑えることができる。修飾剤の含有量は、好ましくは0.3~20質量%であり、より好ましくは0.5~15質量%である。
【0078】
樹脂組成物は、各種の添加剤(水酸基を有するビニル樹脂、2八面体型スメクタイト、シリカ、修飾剤及び溶剤に該当する化合物は除く。)を含有してもよい。添加剤としては、例えば、有機フィラー、無機フィラー、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等)、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、着色剤、結晶核剤、酸素捕捉剤(酸素捕捉機能を有する化合物)、粘着付与剤等が例示できる。これらの各種添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用される。
【0079】
添加剤のうち、無機フィラーとしては、金属、金属酸化物、樹脂、鉱物等の無機物及びこれらの複合物が挙げられる。無機フィラーの具体例としては、アルミナ、チタン、ジルコニア、銅、鉄、銀、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレーク、粘土鉱物等が挙げられる。これらの中でも、ガスバリア性を向上させる目的で、粘土鉱物を併用してもよい。
【0080】
酸素捕捉機能を有する化合物としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、ビタミンC、ビタミンE、有機燐化合物、没食子酸、ピロガロール等の酸素と反応する低分子有機化合物や、コバルト、マンガン、ニッケル、鉄、銅等の遷移金属化合物等が挙げられる。
【0081】
粘着付与剤としては、キシレン樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂等が挙げられる。粘着付与剤を添加することで塗布直後の各種フィルム材料に対する粘着性を向上させることができる。粘着性付与剤の添加量は樹脂組成物全量100質量部に対して0.01~5質量部であることが好ましい。
【0082】
<成形体>
実施形態の成形体は、上述した樹脂組成物を成形して得ることができる。成形体は、樹脂組成物からなっていてよく、樹脂組成物の硬化物からなっていてもよい。成形方法は任意であり、用途によって適時選択すればよい。成形体の形状に制限はなく、板状、シート状、又はフィルム状であってもよく、立体形状を有していてもよく、基材に塗布されたものであってもよく、基材と基材の間に存在する形で成形されたものであってもよい。
【0083】
板状、シート状の成形体を製造する場合、例えば押し出し成形法、平面プレス、異形押し出し成形法、ブロー成形法、圧縮成形法、真空成形法、射出成形法等を用いて樹脂組成物を成形する方法が挙げられる。また、フィルム状の成形体を製造する場合、例えば溶融押出法、溶液キャスト法、インフレーションフィルム成形、キャスト成形、押出ラミネーション成形、カレンダー成形、シート成形、繊維成形、ブロー成形、射出成形、回転成形、被覆成形が挙げられる。熱又は活性エネルギー線で硬化する樹脂組成物である場合、熱又は活性エネルギー線を用いた各種硬化方法を用いて樹脂組成物を成形してもよい。
【0084】
樹脂組成物が液状である場合、塗工により成形してもよい。塗工方法としては、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、ドクターブレード法、カーテンコート法、スリットコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法、ディスペンス法等が挙げられる。
【0085】
<積層体>
実施形態の積層体は、基材と、基材上に上述した成形体とを備えるものである。積層体は2層構造であってもよく、3層構造以上であってもよい。
【0086】
基材の材質は特に限定はなく、用途に応じて適宜選択すればよく、例えば木材、金属、プラスチック、紙、シリコン又は変性シリコン等が挙げられ、異なる素材を接合して得られた基材であってもよい。基材の形状は特に制限はなく、平板、シート状、又は3次元形状全面に、若しくは一部に、曲率を有するもの等目的に応じた任意の形状であってよい。また、基材の硬度、厚さ等にも制限はない。
【0087】
積層体は、基材上に上述した成形体を積層することで得ることができる。基材上に積層する成形体は、基材に対し直接塗工又は直接成形により形成してもよく、樹脂組成物の成形体を積層してもよい。直接塗工する場合、塗工方法としては特に限定はなく、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、ドクターブレード法、カーテンコート法、スリットコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法等が挙げられる。直接成形する場合は、インモールド成形、インサート成形、真空成形、押出ラミネート成形、プレス成形等が挙げられる。樹脂組成物の硬化物からなる成形体を積層する場合、未硬化又は半硬化の樹脂組成物層を基材上に積層してから硬化させてもよく、樹脂組成物を完全硬化した硬化物層を基材上に積層してもよい。
【0088】
また、積層体は、樹脂組成物の硬化物に対して基材の前駆体を塗工して硬化させることで得てもよく、基材の前駆体又は樹脂組成物が未硬化若しくは半硬化の状態で接着させた後に硬化させることで得てもよい。基材の前駆体としては特に限定はなく、各種硬化性樹脂組成物等が挙げられる。また、実施形態の樹脂組成物を接着剤として用いることで積層体を作成してもよい。
【0089】
<ガスバリア材>
樹脂組成物は、水蒸気バリア性及び酸素バリア性が優れているため、ガスバリア材として好適に用いることができる。ガスバリア材は、上述した樹脂組成物を含むものであればよい。
【0090】
<コーティング剤>
樹脂組成物は、コーティング剤として好適に用いることができる。コーティング剤は、上述した樹脂組成物を含むものであればよい。コーティング剤のコーティング方法は特に限定されない。具体的な方法としては、ロールコート、グラビアコート等の各種コーティング方法を例示することができる。また、コーティング装置についても特に限定されない。樹脂組成物は、高いガスバリア性を有することから、ガスバリア用コーティング剤として好適に利用可能である。
【0091】
<接着剤>
樹脂組成物は、接着性に優れるため、接着剤として好適に用いることができる。接着剤の形態には特に限定はなく、液状又はペースト状の接着剤としてもよく、固形状の接着剤としてもよい。樹脂組成物は、高いガスバリア性を有することから、この接着剤はガスバリア用接着剤として好適に利用可能である。
【0092】
液状又はペースト状の接着剤の場合は、使用方法としては特に限定はないが、接着面に塗布後又は接着面の界面に注入後、接着し、硬化させてよい。
【0093】
固形状の接着剤の場合は、粉末状、チップ状、又はシート状に成形した接着剤を、接着面の界面に設置し、熱溶解させることで接着し、硬化させてよい。
【実施例
【0094】
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0095】
<樹脂組成物の調製>
(樹脂溶液の作製)
ビニル樹脂として、以下のビニル樹脂1~2を準備した。
・ビニル樹脂1(ポリビニルアルコール、水酸基価:1250、日本酢ビ・ポバール株式会社製、JF-03)
・ビニル樹脂2(ポリビニルアルコール、水酸基価:1000、日本酢ビ・ポバール株式会社製、JP-05)
【0096】
イオン交換水65質量部と、1-プロパノール25質量部を混合し、そこにビニル樹脂1を8.1質量部、及びポリアクリル酸(東亞合成株式会社製、製品名:ジュリマー(登録商標)AC-10L)を1.9質量部加えて、85℃で5時間加熱し、樹脂溶液1を得た。各成分の配合を表1に示す配合(単位:質量部)としたこと以外は、樹脂溶液1と同様にして、樹脂溶液2~5を作製した。
【0097】
【表1】
【0098】
(粘土分散液の作製)
イオン交換水43質量部とエタノール53質量部とを混ぜて攪拌し、そこにアンモニウム型ベントナイト(クニミネ工業株式会社製)4質量部を加えて30分間攪拌保持して粘土分散液1を得た。該ベントナイトには82質量%のアンモニウム型モンモリロナイト(NH-MMT)と18質量%のシリカが含まれている。粘土分散液1と同様にして、表2に示す配合(単位:質量部)にて粘土分散液2~9を作製した。
【0099】
粘土分散液4ではアンモニウム型ベントナイトを精製することにより、95質量%のアンモニウム型モンモリロナイトと5質量%のシリカを含むこととした以外は粘土分散液1と同様の方法にて作製した。
【0100】
粘土分散液5ではアンモニウム型ベントナイトの前駆体であるナトリウム型ベントナイトのナトリウムイオンをリチウムイオンに交換することにより得られたリチウム型ベントナイト(Li-MMT)を使用したこと以外は粘土分散液1と同様の方法にて作製した。該リチウム型ベントナイトには、82質量%のリチウム型モンモリロナイトと18質量%のシリカが含まれている。
【0101】
粘土分散液6ではアンモニウム型ベントナイトの前駆体であるナトリウム型ベントナイト(Na-MMT)を使用したこと以外は粘土分散液1と同様の方法にて作製した。該ナトリウム型ベントナイトには、82質量%のナトリウム型モンモリロナイトと18質量%のシリカが含まれている。
【0102】
粘土分散液8ではナトリウム型ベントナイト(ビックケミー・ジャパン株式会社CLOISITE-Na+)のナトリウムイオンをアンモニウムイオンに交換することにより得られたアンモニウム型ベントナイトを使用したこと以外は粘土分散液1と同様の方法にて作製した。該アンモニウム型ベントナイトには、99質量%のアンモニウム型モンモリロナイトと1質量%のシリカが含まれている。
【0103】
2八面体型スメクタイトのアンモニウムイオン当量、リチウムイオン当量、及び水素イオン当量の合計は、アンモニウム型モンモリロナイトでは72meq/100g、リチウム型モンモリロナイトでは72meq/100g、ナトリウム型モンモリロナイトでは72meq/100gであった。
【0104】
アンモニウム型モンモリロナイト及びリチウム型モンモリロナイトのナトリウムイオン当量は、10meq/100g未満であった。
【0105】
【表2】
【0106】
(実施例1)
10質量部の樹脂溶液1に対して、20質量部の粘土分散液1を加えて30分間攪拌し、実施例1の樹脂組成物1を調製した。得られた樹脂組成物1を、コロナ処理された12μmのPETフィルム(商品名:E-5100、東洋紡株式会社製)のコロナ処理面に、バーコーターを用いて、乾燥後の塗工量が0.5g/mになるように塗工した。塗工後のPETフィルムを、塗工後直ぐに80℃の乾燥機中で1分間加熱処理し、酸素透過率、水蒸気透過率測定用の積層フィルムを得た。
【0107】
(実施例2~10、比較例1~2)
樹脂溶液10質量部に対して粘土分散液20質量部を、表3~4に示すような組み合わせにて混合して樹脂組成物を調製し、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
【0108】
実施例1~7及び10並びに比較例において、樹脂組成物中のポリカルボン酸の含有量(ポリアクリル酸の含有量)は、水酸基を有するビニル樹脂及びポリカルボン酸の合計含有量を基準として、19質量%であった。実施例及び比較例において、樹脂組成物中の2八面体型スメクタイト及びシリカの合計含有量は、不揮発分(溶剤以外の成分)全量に対して、44質量%であった。2八面体型スメクタイト及びシリカの合計量に対して、シリカの含有量は、実施例1~6及び8~10並びに比較例1では、18質量%、実施例7では、5質量%、比較例2では、1質量%であった。溶剤全量に対するアルコールの含有量及びアルコール全量に対するエタノールの含有量は、表3~4に示すとおりであった。実施例及び比較例において、樹脂組成物中の不揮発分(溶剤以外の成分)の含有量は、6質量%であった。
【0109】
<評価>
実施例及び比較例における樹脂組成物のチクソトロピーインデックスと、得られた積層フィルムの酸素透過率及び水蒸気透過率を以下の方法で評価した。評価結果を表3~4に示す。
【0110】
(酸素透過率)
酸素透過率の測定は、JIS-K7126(等圧法)に準じ、モコン社製酸素透過率測定装置OX-TRAN1/50を用いて、温度23℃、湿度75%RHの雰囲気下で実施した。なおRHとは、湿度を表す。
【0111】
(水蒸気透過率)
水蒸気透過率の測定は、「防湿包装材料の透過湿度試験方法」JIS Z 0208 に準じ、透湿カップを用いて40℃90%RHの雰囲気下で行った。
【0112】
(チクソトロピーインデックス)
樹脂組成物の粘性をチクソトロピーインデックス(TI)から評価した。TIはB型粘度計を用いて回転数6rpmおよび60rpmにおける粘度値の比(6rpmにおける粘度/60rpmにおける粘度)から算出した。評価は次の3段階評価とした。
A:TIが2未満
B:TIが2以上3未満
C:TIが3以上
【0113】
【表3】
【0114】
【表4】