(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】ゼオライトの製造方法、ゼオライト、触媒、及び吸着剤
(51)【国際特許分類】
C01B 39/48 20060101AFI20240704BHJP
B01J 21/12 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
C01B39/48
B01J21/12 A
(21)【出願番号】P 2020084083
(22)【出願日】2020-05-12
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】堀田 悠介
(72)【発明者】
【氏名】嶋 寿
(72)【発明者】
【氏名】武脇 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】堤内 出
(72)【発明者】
【氏名】脇原 徹
(72)【発明者】
【氏名】伊與木 健太
(72)【発明者】
【氏名】大久保 達也
(72)【発明者】
【氏名】劉 振東
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 達史
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/092967(WO,A1)
【文献】特開2019-116404(JP,A)
【文献】特開2017-014100(JP,A)
【文献】特開2016-104690(JP,A)
【文献】特表2015-536291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20-39/54
B01J 21/00-38/74
B01J 20/00-20/02
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素8員環を有するゼオライトの製造方法であって、原料のゼオライトを酸処理する工程を有し、前記原料のゼオライトが有機構造規定剤を含有し、酸素8員環を有するゼオライトであり、前記原料のゼオライトに含有される有機構造規定剤の量が、原料の酸素8員環を有するゼオライトに含まれるアルミニウム原子に対するモル比で、0.05以上、0.75以下であることを特徴とする、
有機構造規定剤を含有する酸素8員環を有するゼオライトの製造方法。
【請求項2】
前記酸処理により、原料の酸素8員環を有するゼオライトのSi/Al比が高くなることを特徴とする、請求項
1に記載の
有機構造規定剤を含有する酸素8員環を有するゼオライトの製造方法。
【請求項3】
前記酸が無機酸であることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の有機構造規定剤を含有する酸素8員環
を有するゼオライトの製造方法。
【請求項4】
前記無機酸が塩酸、硝酸及び硫酸の少なくとも何れかであることを特徴とする、請求項
3に記載の
有機構造規定剤を含有する酸素8員環を有するゼオライトの製造方法。
【請求項5】
酸素8員環を有するゼオライトの製造方法であって、原料のゼオライトを酸処理する工程を有し、前記原料のゼオライトが有機構造規定剤を含有し、酸素8員環を有するゼオライトであり、前記原料のゼオライトに含有される有機構造規定剤の量が、原料の酸素8員環を有するゼオライトに含まれるアルミニウム原子に対するモル比で、0.05以上、0.75以下であることを特徴とし、かつ、前記酸処理する工程の後に有機構造規定剤を除去する工程を有する、酸素8員環を有するゼオライトの製造方法。
【請求項6】
前記有機構造規定剤を除去する工程が、焼成する工程を有することを特徴とする、請求項5に記載の酸素8員環を有するゼオライトの製造方法。
【請求項7】
前記酸処理により、原料の酸素8員環を有するゼオライトのSi/Al比が高くなることを特徴とする、請求項5又は6に記載の酸素8員環を有するゼオライトの製造方法。
【請求項8】
前記酸が無機酸であることを特徴とする、請求項5乃至7の何れか一項に記載の酸素8員環を有するゼオライトの製造方法。
【請求項9】
前記無機酸が塩酸、硝酸及び硫酸の少なくとも何れかであることを特徴とする、請求項8に記載の酸素8員環を有するゼオライトの製造方法。
【請求項10】
Si/Al比が
7以上である、MWF型ゼオライト。
【請求項11】
請求項
10に記載のゼオライトを含む触媒。
【請求項12】
請求項
10に記載のゼオライトを含む吸着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素8員環を有するゼオライト(以下、「酸素8員環ゼオライト」と言う場合がある。)を原料として、これよりSi/Al比の高い酸素8員環ゼオライトを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
AEI型やCHA型に代表される酸素8員環ゼオライトは、固体酸触媒や吸着剤などとして有用であり、石油化学工業における触媒や内燃機関の排気ガス浄化用触媒として、世界中で多量に使用されている。
【0003】
酸素8員環ゼオライトは、通常、その構造に適した有機構造規定剤、ケイ素原子原料、アルミニウム原料、アルカリ金属原料等を混合した後に、密閉容器中に封入し、100~2000℃で加熱することにより製造される。得られる酸素8員環ゼオライトのSi/Al比は、合成条件や使用原料などにより異なるため、その用途に合うよう調整される。
とりわけ、ゼオライトを、石油化学工業における触媒や内燃機関の排気ガス浄化用の触媒として用いる場合には、Si/Al比の高いゼオライトが触媒性能の点で好ましいと考えられる。Si/Al比の高いゼオライトを製造する方法としては、例えば、原料ゼオライトを水蒸気処理する方法が知られている。また、ベータゼオライトについて、原料ゼオライトを水蒸気雰囲気下で熱処理後に酸処理する方法などが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、Si/Al比が高い酸素8員環ゼオライトの製造方法については、酸素8員環ゼオライトであるAEI型ゼオライトについて、水蒸気雰囲気下で熱処理を施しても、固体中のSi/Al比については変化しないことが、非特許文献1のFigure.2及び、3により示されていた。また、水蒸気処理後に酸処理を行うとゼオライトの結晶性が低下してしまい、ガス吸着能も低下してしまうことが、非特許文献2のFigure.1及び4により知られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】ACS Catal. 2015,5,6078-6085
【文献】Microporous and Mesoporous Materials 232(2016)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
こうした状況に鑑み、本発明者らは、Si/Al比の高いゼオライトの製造方法について検討した。この結果、原料ゼオライトを水蒸気処理した後に酸処理を行うと、固形分のSi/Al比を上げることができなかったり、ゼオライトの結晶構造が壊れたりしてしまうことが判明した。
【0008】
本発明の課題は、ゼオライトの結晶構造を維持しつつ、Si/Al比を高くさせ、これにより、触媒活性などが高くなる酸素8員環ゼオライトの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上述の課題について、鋭意検討を行った。この結果、有機構造規定剤を含有する酸素8員環を有するゼオライトを酸処理することにより、上述の課題を解決できることを見出した。また、このゼオライトの製造方法により、従来得ることができなかったSi/Al比の高いMWF型ゼオライトやRHO型ゼオライトを得ることができることを見出した。
【0010】
本発明は、以下の[1]~[13]を要旨とする。
[1]酸素8員環を有するゼオライトの製造方法であって、原料のゼオライトを酸処理する工程を有し、前記原料のゼオライトが有機構造規定剤を含有し、酸素8員環を有するゼオライトであり、前記原料のゼオライトに含有される有機構造規定剤の量が、原料の酸素8員環を有するゼオライトに含まれるアルミニウム原子に対するモル比で、0.05以上、0.75以下であることを特徴とする、酸素8員環を有するゼオライトの製造方法。
[2]前記酸処理する工程の後に、焼成する工程を有することを特徴とする、上記[1]に記載の酸素8員環を有するゼオライトの製造方法。
[3]前記酸処理により、原料の酸素8員環を有するゼオライトのSi/Al比が高くなることを特徴とする、上記[1]又は[2]に記載の酸素8員環を有するゼオライトの製造方法。
[4]前記酸が無機酸であることを特徴とする、上記[1]乃至[3]の何れか1項に記載の酸素8員環ゼオライトの製造方法。
[5]前記無機酸が塩酸、硝酸及び硫酸の少なくとも何れかであることを特徴とする、上記[4]に記載の酸素8員環を有するゼオライトの製造方法。
[6]上記[1]乃至[5]の何れか1項に記載の酸素8員環を有するゼオライトの製造方法により得られる、酸素8員環を有するゼオライト。
[7]International Zeolite Association(IZA)が定めるゼオライトの骨格構造を規定するコードで、AEI、AFX、CHA、ERI、KFI、MWF及びRHOの何れかであることを特徴とする、上記[6]に記載の酸素8員環を有するゼオライト。
[8]Si/Al比が25以下であることを特徴とする、上記[6]又は[7]に記載の酸素8員環を有するゼオライト。
[9]Si/Al比が5以上で25ある、MWF型ゼオライト。
[10]Si/Al比が7以上である、RHO型ゼオライト。
[11]上記[6]乃至[10]の何れか1項に記載のゼオライトを含む触媒。
[12]上記[6]乃至[10]の何れか1項に記載のゼオライトを含む吸着剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ゼオライトの結晶構造を維持しつつ、Si/Al比を高くすることができ、これにより、触媒活性などが高くなる酸素8員環ゼオライトを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】AEI型のゼオライト1のXRDパターンを示すチャートである。
【
図2】AEI型のゼオライト2のXRDパターンを示すチャートである。
【
図3】AFX型のゼオライト3のXRDパターンを示すチャートである。
【
図4】AFX型のゼオライト4のXRDパターンを示すチャートである。
【
図5】MWF型のゼオライト5のXRDパターンを示すチャートである。
【
図6】RHO型のゼオライト6のXRDパターンを示すチャートである。
【
図7】AEI型のゼオライト7のXRDパターンを示すチャートである。
【
図8】CHA型のゼオライト8のXRDパターンを示すチャートである。
【
図9】CHA型のゼオライト9のXRDパターンを示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容のみに限定されない。また、本発明の実施態様は、適宜組み合わせることもできる。なお、本明細書において「~」はその前後に記載される数値を含む範囲を意味する。
【0014】
本発明の酸素8員環を有するゼオライトの製造方法(以下、「本発明の製造方法」という場合がある。)は、有機構造規定剤を含有する酸素8員環を有するゼオライト(以下、「原料酸素8員環ゼオライト」と言う場合がある。)を原料として、これを酸処理する工程を有する。
【0015】
[酸素8員環ゼオライト]
酸素8員環を有するゼオライト(酸素8員環ゼオライト)とは、ゼオライトが有する最大細孔が、酸素原子8つからなるゼオライトを意味する。ここで、例えば、12員環と8員環の細孔を有するMOR型は、12員環ゼオライトとなる。
【0016】
[原料酸素8員環ゼオライト]
本発明の製造方法で、原料として用いる酸素8員環ゼオライトは、有機構造規定剤を含有する。原料酸素8員環ゼオライトの合成方法は特に限定されないが、通常、合成時に有機構造規定剤を用いる。ここで、Si/Al比の高いゼオライトの製造に用いる原料には、通常焼成したゼオライトを用いるため、有機構造規定剤は含有されない。しかしながら、本発明においては、通常、未焼成のゼオライトを用いるため、有機構造規定剤は、通常、ゼオライトの細孔内に存在している。本発明の製造方法では、原料として用いるゼオライトの細孔内に存在する有機構造規定剤が、ゼオライト骨格中のアルミニウムと強く結合しているために、酸処理に付す際にゼオライトの結晶構造を維持することができると考えられる。なお、原料ゼオライトとしては、焼成品に後から有機構造規定剤を添加したものを用いてもよいが、原料酸素8員環ゼオライトは、未焼成のゼオライトを用いることが好ましい。
【0017】
原料酸素8員環ゼオライトは、International Zeolite Association(IZA)が定めるゼオライトの骨格構造を規定するコードで、ABW、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATN、ATT、ATV、AWO、AWW、BCT、BIK、BRE、CAS、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、ESV、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、JBW、KFI、LEV、LTA、MER、MON、MTF、MWF、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTE、RTH、RWR、SAS、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG、ZON構造のものが挙げられる。原料酸素8員環ゼオライトは、細孔内に有機構造規定材が存在しやすいことから、AEI、AFX、CHA、DDR、ERI、KFI、LEV、MWF、RHOなどが好ましく、これらの中では、AEI、AFX、MWF及びRHOの何れかがより好ましい。なお、原料ゼオライトとしては、製造されるゼオライトと同じ骨格コードのゼオライトを用いることが好ましい。
【0018】
原料酸素8員環ゼオライトにおけるアルミニウム原子に対するシリカ原子のモル比(単に、「Si/Al比」ということがある)は、原料が入手しやすい点では低いことが好ましい。また、原料酸素8員環ゼオライトのSi/Al比が低いほど、本発明の製造方法により得られる効果が大きいといえる。そこで、原料酸素8員環ゼオライトのSi/Al比は、通常50以下、好ましくは25以下、より好ましくは15以下、特に好ましくは10以下である。
一方で、酸処理により減らすアルミニウム量が少なくても所望のSi/Al比にしやすく、結晶構造が維持されやすい点では、原料酸素8員環ゼオライトのSi/Al比は高いことが好ましい。そこで、通常1.0以上、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上、特に好ましくは3.0以上である。
【0019】
[有機構造規定剤]
有機構造規定剤(「テンプレート」とも呼称される。以下、「SDA」と言う場合がある。)としては、一般的にゼオライトの合成に用いられる有機構造規定剤を用いることができる。
有機構造規定剤としては、4級アンモニウムカチオンなどの窒素含有系有機構造規定剤、リン含有系有機構造規定剤、クラウンエーテルに代表される大環状化合物などを使用できる。これらのうち、焼成時に有害物質の発生などが起こり難い点で、窒素含有系有機構造規定剤、及び大環状化合物が好ましい。
【0020】
例えば、AEI型ゼオライトを製造するための窒素含有系有機構造規定剤としては、N,N-ジエチル-2,6-ジメチルピペリジニウムカチオン、N,N-ジメチル-9-アゾニアビシクロ[3.3.1]ノナンカチオン、N,N-ジメチル-2,6-ジメチルピペリジニウムカチオン、N-エチル-N-メチル-2,6-ジメチルピペリジニウムカチオン、N,N-ジエチル-2-エチルピペリジニウムカチオン、N,N-ジメチル-2-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジニウムカチオン、N,N-ジメチル-2-エチルピペリジニウムカチオン、N,N-ジメチル-3,5-ジメチルピペリジニウムカチオン、N-エチル-N-メチル-2-エチルピペリジニウムカチオン、2,6-ジメチル-1-アゾニウム[5.4]デカンカチオン、N-エチル-N-プロピル-2,6-ジメチルピペリジニウムカチオン等が挙げられる。
これらのうちN,N-ジメチル-3,5-ジメチルピペリジニウムカチオンが好ましく、N,N-ジメチル-3,5-ジメチルピペリジニウムハイドロオキサイドを用いることがより好ましい。
また、AEI型ゼオライトを製造するためのリン含有系有機構造規定剤として、テトラブチルホスホニウム、ジフェニルジメチルホスホニウムのような物質を使用することができる。
【0021】
例えば、AFX型ゼオライトを製造するための窒素含有系有機構造規定剤としては、1,4-ビス(1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)ブタンジアンモニウムカチオン、N,N,N’,N’-テトラエチルビシクロ[2.2.2]オクタ-7-エン-2,3:5,6-ジピロリジニウムカチオン、1,3-ジ(1-アダマンチル)イミダゾリウムカチオン、N,N,N,N’,N’,N’-ヘキサエチルペンタンジアンモニウムカチオンなどを用いてもよい。これらの中では、1,4-ビス(1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)ブタンジアンモニウムカチオン、N,N,N,N’,N’,N’-ヘキサエチルペンタンジアンモニウムカチオンが好ましく、中でも、1,4-ビス(1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)ブタンジアンモニウムジヒドロキシド、N,N,N,N’,N’,N’-ヘキサエチルペンタンジアンモニウムジブロマイドがより好ましい。
また、RHO型ゼオライトを製造するための窒素含有系有機構造規定剤として、polydiallyldimethylammonium chloride(以下、PDADMAC)のような高分子を用いてもよい。
【0022】
窒素含有系有機構造規定剤としては、例えばCHA型ゼオライトを得るためのSDAとして、N,N,N-トリメチル-1-アダマンタンアンモニウムカチオンなどのN,N,N-トリアルキル-1-アダマンタンアンモニウムカチオンが挙げられる。
また、例えば、MWF型ゼオライトなどを製造するためのSDAとしては、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラプロピルアンモニウムカチオンなどのテトラアルキルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。これらの中でも、テトラアルキルアンモニウムブロマイドが好ましく、中でもテトラエチルアンモニウムブロマイドがより好ましい。
【0023】
大環状化合物としては、酸素、窒素、硫黄などのヘテロ原子を有する大環状化合物が好ましく、例えば、RHO型ゼオライトを製造するための大環状化合物としては、12-クラウン-4-エーテル、15-クラウン-5-エーテル、18-クラウン-6-エーテル、24-クラウン-8-エーテル、ジベンゾ-18-クラウン-6-エーテル、クリプタンド[2.2]、クリプタンド[2.2.2]が好ましい。このうち特に好ましくは、18-クラウン-6-エーテルである。
これらの有機構造規定剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率と組み合わせで用いてもよい。
【0024】
原料酸素8員環ゼオライトに含まれる有機構造規定剤の量は、本発明の製造方法により、Si/Al比が高く、かつ結晶構造が崩壊しにくく、結晶性が高いゼオライトを得やすいことから、以下の範囲である。すなわち、原料酸素8員環ゼオライトに含まれるアルミニウム原子に対する、有機構造規定剤のモル比(以下、「SDA/Al比」ともいう)で、0.05以上であり、0.1以上が好ましく、0.15以上がより好ましい。また、SDA/Al比は0.75以下であり、0.70以下が好ましく、0.60以下がより好ましく、0.40以下が更に好ましい。原料酸素8員環ゼオライトに含まれる有機構造規定剤の量は、ケイ素原子原料とアルミニウム原子原料の量の比などにより調整することができる。
【0025】
[アルカリ金属原子]
原料酸素8員環ゼオライトは、アルカリ金属原子を含有してもよい。原料酸素8員環ゼオライトの合成方法は特に限定されないが、原料酸素8員環ゼオライトの合成において、アルカリ金属原子原料を用いる場合、通常、原料酸素8員環ゼオライトにアルカリ金属原子が含有される。アルカリ金属原子は、ゼオライトの細孔内に存在していることが好ましく、カウンターカチオンとして原料酸素8員環ゼオライトに保有されることがより好ましい。
アルカリ金属原子としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群から選ばれる1種、もしくは2種以上を用いるとよい。この中でも、ナトリウム、カリウム、セシウムが好ましい。
中でも、アルカリ金属原子は、ナトリウムを含むことがより好ましく、その場合、ナトリウムは単独で使用されてもよいし、ナトリウムとセシウムの併用など、他のアルカリ金属原子と併用されてもよい。
【0026】
[原料8員環ゼオライトの合成方法]
原料8員環ゼオライトは、公知の方法で合成することができ、例えば、アルミニウム原子原料、ケイ素原子原料、アルカリ金属原子原料、有機構造規定剤、及び水を混合して、反応前混合物を得て、これを水熱合成することにより得ることができる。また、反応前混合物には、さらに種晶が含まれていてもよい。また、反応前混合物は、水熱合成前に適宜熟成させてもよい。
【0027】
アルミニウム原子原料は、特に限定されず、アモルファスの水酸化アルミニウム、ギブサイト構造を有する水酸化アルミニウム、バイヤーライト構造を有する水酸化アルミニウム等の水酸化アルミウム;硝酸アルミニウム;硫酸アルミニウム;酸化アルミニウム;アルミン酸ナトリウム;ベーマイト;擬ベーマイト;アルミニウムアルコキシド等を用いることができる。また、ゼオライトのようにシリカを含む化合物をアルミニウム原子原料として用いることもできる。アルミニウム原子原料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率と組み合わせで用いてもよい。
【0028】
ケイ素原子原料としては、特に限定されず、公知の種々の物質を使用することができる。例えば、ゼオライトを使用してもよく、また、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、無定型シリカ等のシリカ;珪酸ナトリウム;トリメチルエトキシシラン;テトラエチルオルトシリケート;アルミノシリケートゲルなどを用いることができる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率と組み合わせで用いてもよい。
水熱合成に供される反応前混合物において、ケイ素原子原料とアルミニウム原子原料の量は、原料酸素8員環ゼオライトにおけるSi/Al比が上述の好ましい範囲内となるように適宜調整すればよい。種晶を用いる場合は、種晶以外の反応前混合物におけるケイ素原子に対するアルミニウム原子のモル比(Al/Si)が、0.01~1であることが好ましく、0.02~0.4であることがより好ましい。
【0029】
アルカリ金属原子原料に含まれるアルカリ金属原子は、特に限定されないが、原料酸素8員環ゼオライトに含有されるアルカリ金属原子で説明したとおりである。
アルカリ金属原子原料としては、上記のアルカリ金属原子の水酸化物、酸化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、塩化物、臭化物等の無機酸塩;酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩などを用いることができる。アルカリ金属原子原料は、これらの中では、アルカリ金属原子の水酸化物を用いることが好ましい。また、上記のとおり、ケイ素原子原料やアルミニウム原子原料にアルカリ金属原子が含まれてもよく、ケイ素原子原料やアルミニウム原子原料をアルカリ金属原子原料として使用してもよい。アルカリ金属原子原料は、反応前混合物に、1種または2種以上含まれていてもよい。
水熱合成に供される反応前混合物において、種晶を除いた、ケイ素原子に対するアルカリ金属原子のモル比は、0.05~2であることが好ましく、0.1~1.0であることがより好ましい。
【0030】
反応前混合物に含まれる有機構造規定剤は、上記のとおりである。反応前混合物に含まれる有機構造規定剤の含有量は、SDA/Al比が上記範囲内となるように調整すればよいが、種晶を除いた、反応前混合物に含まれるケイ素(Si)に対するモル比で、0.01~2であることが好ましく、0.02~1.0であることがより好ましい。
【0031】
また、上記のとおり、反応前混合物には、通常水が含まれる。反応前混合物に含まれる水の含有量は、種晶を除いた、反応前混合物に含まれるケイ素原子に対して、モル比で、2~100であることが好ましく、5~60であることがより好ましい。
水熱合成前の混合物には、種晶が含まれていてもよい。種晶としては、ゼオライトを使用すればよい。種晶として用いるゼオライトは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
種晶の使用量は、種晶を除いた、反応前混合物に含まれるケイ素(Si)が全てSiO2であるとした時のSiO2に対して、0.1~15質量%であることが好ましく、0.5~10質量%であることがより好ましい。
【0032】
水熱合成は、特に限定されないが、例えば、反応前混合物を、耐圧容器に入れ、自己発生圧力下又は結晶化を阻害しない程度の気体加圧下で、撹拌下又は容器を回転ないしは揺動させながら、或いは静置状態で、所定温度に保持することにより行うことができる。
水熱合成は、例えば90℃以上で行うことが好ましく、100~200℃で行うことがより好ましい。また、反応時間は特に限定されないが、通常2時間以上30日以下であり、好ましくは3時間以上10日以下である。反応温度は、反応中一定でもよいし、段階的又は連続的に変化させてもよい。
【0033】
水熱合成後、生成物であるゼオライトを、水熱合成後の混合物より分離する。得られたゼオライト(原料酸素8員環ゼオライト)は、通常、細孔内にアルカリ金属原子及び有機構造規定剤を含有している。水熱合成後の混合物から原料酸素8員環ゼオライトを分離する方法は、特に限定されないが、濾過、デカンテーション等が挙げられる。また、分離回収された原料酸素8員環ゼオライトは、適宜、水洗などされた後に乾燥などされてもよい。
【0034】
[酸素8員環ゼオライトの製造方法]
本発明の製造方法は、有機構造規定剤を含有する原料酸素8員環ゼオライトを、酸処理する工程を有する。本発明の製造方法では、原料ゼオライトの細孔内に存在する有機構造規定剤が、ゼオライト骨格中のアルミニウムと強く結合しているために、酸処理に付してもゼオライトの結晶構造が維持されると考えられる。
【0035】
[酸処理]
酸処理は、液体の酸にゼオライトを接触させることを言う。ゼオライトは、粉も成形体でもよいが、粉であることが好ましい。そこで、粉状のゼオライトを、酸に浸すことが好ましい。
本発明の製造方法に用いる酸は、原料酸素8員環ゼオライトからアルミニウム原子を脱離させることができれば、有機酸でも無機酸でも構わない。但し、酸性度が高く、脱アルミニウムしやすいことから、無機酸が好ましく、塩酸、硝酸及び硫酸の少なくとも何れかの酸が更に好ましい。
また、酸は、特に限定されないが、アルミニウム原子を脱離させやすい観点から、酸解離定数PKaが1.0以下であることが好ましく、0.5以下がより好ましく、0以下がさらに好ましい。なお、酸解離定数は水を溶媒としたときの値である。
【0036】
酸処理に用いる酸の濃度や量、酸処理条件は、製造されるゼオライトのSi/Al比や結晶性を確認しつつ、適宜調整すればよい。
酸処理に用いる酸の濃度は、用いる酸の種類や量、処理時間等の条件により異なるが、短時間で脱アルミニウム化が進行しやすく、製造される酸素8員環ゼオライトのSi/Al比が高くなりやすい点では、高いことが好ましい。一方、製造される酸素8員環ゼオライトの結晶構造を維持しやすい点では、低いことが好ましい。但し、本発明の製造方法においては、上述のとおり、有機構造規定剤を含んだ酸素8員環ゼオライトを原料として用いているため、高濃度の酸で処理を行っても、ゼオライトの結晶構造の破壊が起こり難い。そこで、具体的には、酸の濃度は、pHで、好ましくは0以上が好ましい。また、一方で、pHが6以下が好ましく、5以下がより好ましく、4以下が更に好ましい。
【0037】
例えば、無機酸として硝酸又は硫酸を用いる場合、酸濃度は、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましい。また、無機酸として硝酸又は硫酸を用いる場合、酸濃度は、70質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましく、30質量%以下が特に好ましい。
【0038】
酸処理するときに用いる酸の量は、使用する酸の種類や濃度、処理時間等の条件により異なるが、効率的に脱アルミニウムしやすいことから、原料酸素8員環ゼオライト1g当たり、1g以上用いることが好ましく、3g以上用いることがより好ましく、5g以上用いることが更に好ましい。また、上限は、通常100gである。
【0039】
酸処理は、常温(約25℃)で行っても加熱下で行ってもよい。加熱下で酸処理を行う場合、短時間で効率的に脱アルミニウムを行いつつ、結晶性が高いゼオライトを製造しやすいことから、30℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましく、また、一方で、160℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、90℃以下がさらに好ましい。また、酸処理は、酸を還流させた状態でゼオライトと接触させてもよい。酸処理の時間は、酸の濃度や量、処理温度等の条件にもよるが、通常1時間以上、30時間以下とする。酸処理する時間は、特に2時間以上とすることが好ましく、また、一方で、24時間以下とすることが好ましく、12時間以下とすることがより好ましい。また、酸処理を行う際は、撹拌することが好ましい。
【0040】
原料酸素8員環ゼオライトは、上記のように、通常は、アルカリ金属原子を含有し、該アルカリ金属原子をカウンターカチオンとして保有するが、酸処理により、アルカリ金属原子は概ね取り除かれ、カウンターカチオンとしてのアルカリ金属原子は、プロトンに置換されることが好ましい。プロトンに置換されることにより、ゼオライトを触媒や吸着材として用いる際に、アルカリ金属原子を除去する必要がなくなるため、製造コストを削減できる。
【0041】
[後処理]
酸処理後に、固液分離を行い、取り出した固形分を水洗した後に乾燥させることにより、酸素8員環ゼオライトを得ることができる。すなわち、本発明の製造方法は、有機構造規定剤を含有する原料の酸素8員環を有するゼオライトを酸処理する工程、得られた組成物を固液分離する工程、得られた固形分を水洗する工程及び水洗後の固形分を乾燥させる工程を有することが好ましい。水洗する場合、その回数に制限はなく、1回でも複数回でもよい。このようにして、原料酸素8員環ゼオライトよりもSi/Al比が高められた酸素8員環ゼオライトが得られる。
【0042】
[有機構造規定剤等の除去]
上述のようにして得られた酸素8員環ゼオライトは、有機構造規定剤等を含んでいる。本発明の製造方法により得られたゼオライトを触媒や吸着材として使用する場合などは、反応や吸着する空間を確保しやすいことから、有機構造規定剤を含まないことが好ましい。そこで、本発明の製造方法は、有機構造規定剤を除去する工程を有することが好ましい。また、本発明の製造方法を行う際にアルカリ金属を用いた場合は、得られた酸素8員環ゼオライトは、アルカリ金属を含んでいることがあるが、有機構造規定材と同様に、ゼオライトの細孔を占有することから、酸素8員環ゼオライトはアルカリ金属を含まないことが好ましい。そこで、本発明の製造方法は、酸処理の後、さらにアルカリ金属を除去する工程を有することが好ましい。
【0043】
酸素8員環ゼオライトに残存する有機構造規定剤の除去は、酸性溶液や有機構造規定剤を分解する成分を含んだ液を用いる液相処理、レジンなどを用いたイオン交換処理、熱分解処理などの処理により行うことができる。これらの処理は、何れかの処理を単独で行っても、複数の処理を任意の組合せと順番で行ってもよい。これらのうち、空気又は酸素を含有する不活性ガス、あるいは不活性ガス雰囲気下で300~1000℃で焼成する、エタノール水溶液などの有機溶剤により抽出する等の方法により、有機構造規定剤を除去するのが簡便で好ましい。
特に、製造性の点では、焼成による有機構造規定剤の除去が好ましい。すなわち、本発明の製造方法は、酸処理する工程の後に、焼成する工程を有することが好ましい。
【0044】
焼成する場合、焼成温度は、短時間で有機構造規定剤を除去しやすい点では、高温が好ましいが、また、一方で、得られる酸素8員環ゼオライトの結晶性に優れる点では低温で処理することが好ましい。そこで、焼成温度は、具体的には、400℃以上が好ましく、450℃以上がさらに好ましく、500℃以上が特に好ましい。また、一方で、900℃以下が好ましく、850℃以下がさらに好ましく、800℃以下が特に好ましい。焼成時の雰囲気は、空気、又は酸素を含有する不活性ガスが好ましい。
また、有機構造規定材を除去した後に、酸素8員環ゼオライトに残存するアルカリ金属を、塩酸、硝酸等の無機酸によるプロトンイオン交換や硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム等のアンモニウム塩水溶液によるアンモニウムイオン交換により、除去することが好ましい。
【0045】
[製造される酸素8員環ゼオライト]
上述の製造方法により、結晶性が高く、Si/Al比が高い酸素8員環ゼオライト(以下、「本発明の酸素8員環ゼオライト」又は「本発明のゼオライト」と言う場合がある。)を得ることができる。
【0046】
得られた酸素8員環ゼオライトにおけるSi/Al比は、本発明のゼオライトを触媒等として用いる場合に耐熱性が高くなりやすいことから、高いことが好ましい。また、一方で、活性点が多くなり、高活性となりやすい点では低いことが好ましい。そこで、具体的には、本発明のゼオライトのSi/Al比は、5以上が好ましく、6以上がより好ましく、7以上が更に好ましく、8以上が特に好ましく、9以上が殊更好ましい。また、一方で、25以下が好ましく、15以下がより好ましく、12以下が特に好ましい。
【0047】
本発明の酸素8員環ゼオライトにおけるSi/Al比は、通常、上記酸処理をすることにより、原料酸素8員環ゼオライトよりも高くなる。本発明の酸素8員環ゼオライトにおけるSi/Al比は、原料酸素8員環ゼオライトから、好ましくは5%以上、更に好ましくは10%以上、特に好ましくは50%以上高くなる。
【0048】
上述の製造方法により、Si/Al比の高い酸素8員環ゼオライトを製造することができる。具体的には、International Zeolite Association(IZA)が定めるゼオライトの骨格構造を規定するコードで、AEI、AFX、CHA、ERI、KFI、MWF及びRHO等のゼオライトを製造することができる。これらの中では、AEI、AFX、MWF及びRHOの何れかが好ましい。
【0049】
上述の製造方法により、従来技術では製造できなかったSi/Al比の高い酸素8員環ゼオライトを製造することができる。具体的には、Si/Al比の高いMWF型ゼオライト、Si/Al比の高いRHO型ゼオライトを製造することができる。
MWF型ゼオライトは、Si/Al比が、5以上が好ましく、6以上が更に好ましく、7以上が特に好ましい。また、RHO型ゼオライトのSi/Al比は、7以上が好ましく、8以上が更に好ましく、9以上が特に好ましい。
【0050】
上述の製造方法により得られる酸素8員環ゼオライトは、高いSi/Al比でありながらも、ゼオライトの結晶構造が維持され、結晶性が高い。ゼオライトの結晶性は、粉末X線回折分析法により確認することができる。
【0051】
[用途]
本発明の製造方法で得られる酸素8員環ゼオライトは、固体酸触媒などの触媒、吸着剤として有望である。
固体酸触媒は、石油化学工業におけるクラッキング触媒や排ガス浄化用触媒などに好適である。クラッキング触媒としては、重質原油、軽質原油、パラフィンなどを接触分解させる触媒であり、特に、ヘキサンなどの長鎖炭化水素のクラッキング触媒として使用することに好適である。排ガス浄化用触媒としては、工場、自動車、船舶等の排ガスに含まれる炭化水素、窒素酸化物、窒素化合物の浄化などに用いられる。
吸着剤としては、ガス中に含まれる有機物質を吸着する用途などに好適であり、より具体的には、ガソリンエンジン及びディーゼルエンジン等の各種内燃機関から発生する炭化水素、窒素酸化物、二酸化炭素、窒素酸化物、希ガス等の回収に好適である。
【0052】
上記触媒は、酸素8員環ゼオライトを含む限りいかなる形態で使用されてもよく、酸素8員環ゼオライト単独で使用されてもよいし、金属などを担持させて使用されてもよい。また、上記触媒は、酸素8員環ゼオライトに加えてバインダーを含有してもよい。同様に、吸着剤も、酸素8員環ゼオライトを含む限りいかなる形態で使用されてもよく、酸素8員環ゼオライト単独で使用されてもよいし、酸素8員環ゼオライトに加えてバインダーを含有してもよい。
触媒又は吸着剤がバインダーを含有する場合、例えば、酸素8員環ゼオライトをバインダーと混合し、造粒して用いることやハニカム状等の所定の形状に成形して用いることができる。具体的には、例えば、上記ゼオライトをシリカ、アルミナ、粘土鉱物等の無機バインダーや、アルミナ繊維、ガラス繊維等の無機繊維と混合した後、造粒するかまたは押出法や圧縮法等によりハニカム状等の所定の形状に成形し、続いて焼成することにより、粒状とし、又は、ハニカムなどの成形品などとしてもよい。
また、上記触媒や吸着剤は、シートやハニカム等の基材に塗布して用いてもよい。具体的には、例えば、酸素8員環ゼオライトと、シリカ、アルミナ、粘土鉱物等の無機バインダーとを混合し、スラリーを作製し、基材の表面に塗布し、焼成する方法などが挙げられる。
【実施例】
【0053】
[分析方法]
実施例及び比較例において得られたゼオライトの分析及び性能評価は、以下の方法により行った。
【0054】
[粉末XRD分析]
<試料の調製>
メノウ乳鉢を用いて粉砕したゼオライト100mgをサンプルホルダーに詰めた。
<装置仕様及び測定条件>
粉末XRD測定装置仕様及び測定条件は、以下の通りである。
【0055】
【0056】
[ICP分析]
ゼオライトを塩酸水溶液とフッ酸水溶液、または水酸化カリウム水溶液によって溶解させた後、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma、装置名:Thermo iCAP6300)発光分光分析により、Si/Al比を求めた。また、Na/Al比、K/Al比、Cs/Al比を求め、これらの比から、(Na+K+Cs)/Al比を求めた。
【0057】
[TG-DTA分析]
熱重量示差熱分析装置(リガク社製、装置名:Rigaku TG-8120)を使用して、ゼオライトをO210体積%/N290体積%の混合ガス流通下で、室温から800℃まで10℃/minで昇温し、重量減少を測定した。200℃から800℃までの重量減少を有機構造規定剤(SDA)の燃焼によるものとして、SDA含有率を求めた。得られたSDA含有率と、ICP分析より求めたAl量よりSDA/Al比を求めた。
【0058】
[原料ゼオライトの合成]
ゼオライト1
7.6gの水と、2.3gの有機構造規定剤(SDA)としてのN,N-ジメチル-3,5-ジメチルピペリジニウムハイドロオキサイド(DMDMPIOH)(35質量%、セイケム社製)と、3.1gのNaOH水溶液(25質量%、キシダ化学製)を混合したものに、アモルファスAl(OH)3(Al2O3:54.3質量%、協和化学社製)0.75gを加えて撹拌し、溶解させて透明溶液とした。これにコロイダルシリカ(シリカ濃度:40質量%、日産化学社製「スノーテックス40」)を7.7g加えた後に、種晶として0.16gの未焼成CHA型ゼオライト(Si/Al比=12)を添加し、反応前混合物を得た。
【0059】
この反応前混合物を耐圧容器に入れ、180℃のオーブン中で回転させながら(15rpm)、1日間水熱合成を行った。この水熱合成反応後、反応液を冷却してから、濾過により生成した結晶を回収し、これを水洗した。回収した結晶を100℃で12時間乾燥した後、得られたゼオライト粉をXRDにより測定したところ、AEI型のゼオライト1を合成することができたことが確認された。このゼオライト1のXRDパターンを
図1に示す。
図1中、縦軸は強度(cps)であり、横軸は回折角度2θ(°)である。ICP分析によるゼオライト1のSi/Al比は4.8であった。TG―DTA分析によるゼオライト1のSDA含有率は8.1質量%、SDA/Al比は0.23であった。
【0060】
ゼオライト2
14.3gの水と、15.4gの有機構造規定剤(SDA)としてのN,N-ジメチル-3,5-ジメチルピペリジニウムハイドロオキサイド(35質量%、セイケム社製)と、2.9gのNaOH(97質量%、キシダ化学製)を混合したものに、Y型ゼオライト (Si/Al比=15、Zeolyst社製、「CBV720」)9.5gを加えて撹拌し、白色溶液とした。これにコロイダルシリカ(シリカ濃度:40質量%、日産化学社製、「スノーテックス40」)を7.5g加えて室温(25℃)で1時間撹拌し混合物を得た。この混合物に、種晶として0.60gの未焼成CHA型ゼオライト(Si/Al比=12)を添加し、室温で1時間撹拌し反応前混合物を得た。
【0061】
この反応前混合物を耐圧容器に入れ、175℃のオーブン中で回転させながら(15rpm)、2日間水熱合成を行った。この水熱合成反応後、反応液を冷却してから、濾過により生成した結晶を回収し、これを水洗した。回収した結晶を100℃で12時間乾燥した後、得られたゼオライト粉をXRDにより測定したところ、AEI型のゼオライト2を合成することができたことが確認された。このゼオライト2のXRDパターンを
図2に示す。
図2中、縦軸は強度(cps)であり、横軸は回折角度2θ(°)である。ICP分析によるゼオライト2のSi/Al比は7.5であった。TG―DTA分析によるゼオライト2のSDA含有率は18.5質量%、SDA/Al比は0.70であった。
【0062】
ゼオライト3
3.7gの水と、9.5gの有機構造規定剤(SDA)としての、1,4-ビス(1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)ブタンジアンモニウムジヒドロキシド(DABCO含有SDA)(17質量%、セイケム社製)と、5.3gのNaOH水溶液(1mol/L、キシダ化学製)を混合したものに、アルミン酸ナトリウム (Al2O3として20質量%、浅田化学工業社製)0.27gを加えて撹拌し、透明溶液とした。これに3号ケイ酸ナトリウム(SiO2として30質量%、キシダ化学社製)を10.9g加えて室温(25℃)で1時間撹拌し混合物を得た。この混合物に、種晶として0.36gのFAU型ゼオライト(Si/Al比=5、東ソー社製)を添加、1時間撹拌し反応前混合物を得た。
【0063】
この反応前混合物を耐圧容器に入れ、170℃のオーブン中で回転させながら(15rpm)、6時間水熱合成を行った。この水熱合成反応後、反応液を冷却してから、濾過により生成した結晶を回収し、これを水洗した。回収した結晶を100℃で12時間乾燥した後、得られたゼオライト粉をXRDにより測定したところ、AFX型のゼオライト3を合成することができたことが確認された。このゼオライト3のXRDパターンを
図3に示す。
図3中、縦軸は強度(cps)であり、横軸は回折角度2θ(°)である。ICP分析によるゼオライト3のSi/Al比は3.8であった。TG―DTA分析によるゼオライト3のSDA含有率は16.2質量%、SDA/Al比は0.17であった。
【0064】
ゼオライト4
155.1gの水と、9.9gの有機構造規定剤(SDA)としてのEt6-diquat-5(N,N,N,N’,N’,N’-ヘキサエチルペンタンジアンモニウムジブロマイド)水溶液と、18.4gのNaOH水溶液(50質量%、富士フイルム和光純薬社製)を混合したものに、硝酸アルミニウム9水和物(富士フイルム和光純薬社製) 2.9gを加えて撹拌し、透明溶液とした。これにヒュームドシリカ(「AEROSIL200」、日本アエロジル社製)を13.8g加えて室温(25℃)で12時間撹拌し、反応前混合物を得た。
【0065】
この反応前混合物を耐圧容器に入れ、150℃のオーブン中で回転させながら(15rpm)、7日間水熱合成を行った。この水熱合成反応後、反応液を冷却してから、濾過により生成した結晶を回収し、これを水洗した。回収した結晶を100℃で12時間乾燥した後、得られたゼオライト粉をXRDにより測定したところ、AFX型のゼオライト4を合成することができたことが確認された。このゼオライト4のXRDパターンを
図4に示す。
図4中、縦軸は強度(cps)であり、横軸は回折角度2θ(°)である。ICP分析によるゼオライト4のSi/Al比は4.1であった。TG―DTA分析によるゼオライト4のSDA含有率は13.1質量%、SDA/Al比は0.16であった。
【0066】
ゼオライト5
12.5gの水に3.0gの有機構造規定剤(SDA)としてのテトラエチルアンモニウムブロマイド(TEABr)(100質量%、TCI社製)と0.4gのNaOH(97質量%、キシダ化学製)を混合したものに、アモルファスAl(OH)3(Al2O354.3質量%、協和化学社製)0.26gを加えて撹拌し、溶解させて透明溶液とした。これにコロイダルシリカ(シリカ濃度:40質量%、Aldrich社製、「LUDOX AS―40」)を1.2g加えて室温(25℃)で2時間撹拌し、反応前混合物を得た。
【0067】
この反応前混合物を耐圧容器に入れ、135℃のオーブン中で回転させながら(15rpm)、7日間水熱合成を行った。この水熱合成反応後、反応液を冷却してから、濾過により生成した結晶を回収し、これを水洗した。回収した結晶を100℃で12時間乾燥した後、得られたゼオライト粉をXRDにより測定したところ、MWF型のゼオライト5を合成することができたことが確認された。このゼオライト5のXRDパターンを
図5に示す。
図5中、縦軸は強度(cps)であり、横軸は回折角度2θ(°)である。ICP分析によるゼオライト5のSi/Al比は3.2であった。TG―DTA分析によるゼオライト5のSDA含有率は5.2質量%、SDA/Al比は0.12であった。
【0068】
ゼオライト6
53.4gの水に8.1gの有機構造規定剤(SDA)としての18-クラウン-6-エーテル(18C6)(98質量%、TCI社製)、4.0gのNaOH(97質量%、キシダ化学製)と6.4gのCsOH・H2O(95質量%、三津和化学薬品社製)を混合したものに、アルミン酸ナトリウム(NaAlO270質量%、キシダ化学社製)14.1gを加えて撹拌し、溶解させて、透明溶液とした。この透明溶液を80℃で3時間加熱した。その後、室温まで冷却し、コロイダルシリカ(シリカ濃度:40質量%、日産化学社製、「スノーテックス40」)を90g加えて室温(25℃)で2時間撹拌し、反応前混合物を得た。
【0069】
この反応前混合物を耐圧容器に入れ、100℃のオーブン中で回転させながら(15rpm)、7日間水熱合成を行った。この水熱合成反応後、反応液を冷却してから、濾過により生成した結晶を回収し、これを水洗した。回収した結晶を100℃で12時間乾燥した後、得られたゼオライト粉をXRDにより測定したところ、RHO型のゼオライト6を合成することができたことが確認された。このゼオライト6のXRDパターンを
図6に示す。
図6中、縦軸は強度(cps)であり、横軸は回折角度2θ(°)である。ICP分析によるゼオライト6のSi/Al比は3.5であった。TG-DTA分析によるゼオライト6のSDA含有率は5.2質量%、SDA/Al比は0.06であった。
【0070】
ゼオライト7
7.9gの水と、12.3gの有機構造規定剤(SDA)としてのN,N-ジメチル-3,5-ジメチルピペリジニウムハイドロオキサイド(35質量%、セイケム社製)と、2.3gのNaOH(97質量%、キシダ化学製)を混合したものに、Y型ゼオライト(Si/Al比=15、Zeolyst社製、「CBV720」)5.1gを加えて撹拌し、白色溶液とした。これにスノーテックス40(シリカ濃度:40質量%、日産化学社製)を12.0g加えて室温(25℃)で1時間撹拌し、混合物を得た。この混合物に、種晶として0.48gの未焼成CHA型ゼオライト(Si/Al比=12)を添加し、室温で1時間撹拌し、反応前混合物を得た。
【0071】
この反応前混合物を耐圧容器に入れ、175℃のオーブン中で回転させながら(15rpm)、2日間水熱合成を行った。この水熱合成反応後、反応液を冷却してから、濾過により生成した結晶を回収し、これを水洗した。回収した結晶を100℃で12時間乾燥した後、得られたゼオライト粉をXRDにより測定したところ、AEI型のゼオライト7を合成することができたことが確認された。このゼオライト7のXRDパターンを
図7に示す。
図7中、縦軸は強度(cps)であり、横軸は回折角度2θ(°)である。ICP分析によるゼオライト7のSi/Al比は9.7であった。TG―DTA分析によるゼオライト7のSDA含有率は16.6質量%、SDA/Al比は0.76であった。
【0072】
ゼオライト8
39.6gの水と2.5gのKOH(85質量%、キシダ化学製)を混合したものに、Y型ゼオライト(Si/Al比=2.75,Na
2O12.5質量%、東ソー社製「320NAA」)5.1gを加えて室温(25℃)で1時間撹拌し、反応前混合物を得た。
この反応前混合物を耐圧容器に入れ、120℃のオーブン中で回転させながら(15rpm)、1日間水熱合成を行った。この水熱合成反応後、反応液を冷却してから、濾過により生成した結晶を回収し、これを水洗した。回収した結晶を100℃で12時間乾燥した後、得られたゼオライト粉をXRDにより測定したところ、CHA型のゼオライト8を合成することができたことが確認された。このゼオライト8のXRDパターンを
図8に示す。
図8中、縦軸は強度(cps)であり、横軸は回折角度2θ(°)である。ICP分析によるゼオライト8のSi/Al比は1.9であった。有機構造規定剤を使用しないため、ゼオライト8のSDA含有率、SDA/Al比はともに0であった。
【0073】
ゼオライト9
6.7gの水と、16.8gの有機構造規定剤(SDA)としてのテトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド(TEAOH)(35質量%、セイケム社製)と、0.76gのNaOH(97質量%、キシダ化学製)を混合したものに、Y型ゼオライト(Si/Al比=3.5、日揮触媒化成社製) 1.7gを加えて撹拌し、白色溶液とした。これにスノーテックス40(シリカ濃度:40質量%、日産化学社製)を11.5g加えて、室温(25℃)で1時間撹拌し、混合物を得た。この混合物に、種晶として0.12gの未焼成CHA型ゼオライト(Si/Al比=12)を添加し、室温で1時間撹拌し、反応前混合物を得た。
【0074】
この反応前混合物を耐圧容器に入れ、160℃のオーブン中で回転させながら(15rpm)、3日間水熱合成を行った。この水熱合成反応後、反応液を冷却してから、濾過により生成した結晶を回収し、これを水洗し、濾過により生成した結晶を回収した。回収した結晶を100℃で12時間乾燥した後、得られたゼオライト粉のXRDを測定したところ、CHA型のゼオライト9を合成することができたことが確認された。このゼオライト9のXRDパターンを
図9に示す。
図9中、縦軸は強度(cps)であり、横軸は回折角度2θ(°)である。ICP分析によるゼオライト9のSi/Al比は10.1であった。TG―DTA分析によるゼオライト9のSDA含有率は15.6質量%、SDA/Al比は0.82であった。
【0075】
[酸濃度調整]
酸処理に用いる無機酸及び有機酸は、表に示す試薬に水を加えることにより、以下の通り、濃度を調整した。
【表3】
【0076】
[実施例1]
30gの10質量%の硫酸(硫酸3.0g)に、有機構造規定剤を含んだままのゼオライト1を3.0g加え、酸性のゼオライトスラリーを調製し、25℃で2時間加熱することにより酸処理を行った。加熱後、スラリーを室温まで冷却し、ろ過することによりゼオライト粉を回収し、100gの水で洗浄した。回収したゼオライト粉を100℃で12時間乾燥した後に、XRD測定したところ、AEI型の結晶構造を維持したゼオライト1Aであることが確認された。ICP分析によるゼオライト1AのSi/Al比は5.5であり、処理前と比べて13%上昇した。
【0077】
[実施例2]
加熱温度を40℃としたこと以外は実施例1と同様の手順で、酸処理等を行い、AEI型の結晶構造を維持したゼオライト1Bを得た。ICP分析によるゼオライト1BのSi/Al比は8.9であり、処理前と比べて84%上昇した。
【0078】
[実施例3]
加熱温度を60℃としたこと以外は実施例1と同様の手順で、酸処理等を行い、AEI型の結晶構造を維持したゼオライト1Cを得た。ICP分析によるゼオライト1CのSi/Al比は10.7であり、処理前と比べて122%上昇した。
【0079】
[実施例4]
30gの1.0mol/Lの塩酸を用い、加熱温度を60℃としたこと以外は、実施例1と同様の手順で、酸処理等を行い、AEI型の結晶構造を維持したゼオライト1Dを得た。ICP分析によるゼオライト1DのSi/Al比は8.4であり、処理前と比べて73%上昇した。
【0080】
[実施例5]
30gの1.0mol/Lの硝酸を用い、加熱温度を60℃としたこと以外は実施例1と同様の手順で、酸処理等を行い、AEI型の結晶構造を維持したゼオライト1Eを得た。ICP分析によるゼオライト1EのSi/Al比は8.5であり、処理前と比べて77%上昇した。
【0081】
[実施例6]
30gの1.0mol/Lの硝酸を用い、100℃で6時間加熱したこと以外は、実施例1と同様の手順で、酸処理等を行い、AEI型の結晶構造を維持したゼオライト1Fを得た。ICP分析によるゼオライト1FのSi/Al比は10.7であり、処理前と比べて121%上昇した。
【0082】
[実施例7]
ゼオライト2に対して30gの5質量%の硫酸を用い、加熱温度を60℃としたこと以外は、実施例1と同様の手順で、酸処理等を行い、AEI型の結晶構造を維持したゼオライト2Aを得た。ICP分析によるゼオライト2AのSI/Al比は8.6であり、処理前と比べて14%上昇した。
【0083】
[実施例8]
ゼオライト3に対して30gの0.5mol/Lの硫酸を用い、加熱条件を80℃で27時間としたこと以外は、実施例1と同様の手順で、酸処理等を行い、AFX型の結晶構造を維持したゼオライト3Aを得た。ICP分析によるゼオライト3AのSi/Al比は6.9であり、処理前と比べて81%上昇した。
【0084】
[実施例9]
ゼオライト4に対して30gの0.5mol/Lの硫酸を用い、加熱条件を80℃で27時間としたこと以外は、実施例1と同様の手順で、酸処理等を行い、AFX型の結晶構造を維持したゼオライト4Aを得た。ICP分析によるゼオライト4AのSi/Al比は7.3であり、処理前と比べて77%上昇した。
【0085】
[実施例10]
ゼオライト5に対して30gの5質量%の硫酸を用い、加熱温度を60℃としたこと以外は、実施例1と同様の手順で、酸処理等を行い、MWF型の結晶構造を維持したゼオライト5Aを得た。ICP分析によるゼオライト5AのSi/Al比は9.9であり、処理前と比べて213%上昇した。
【0086】
[実施例11]
ゼオライト6に対して30gの5質量%の硫酸を用い、加熱温度を60℃としたこと以外は、実施例1と同様の手順で、酸処理等を行い、RHO型の結晶構造を維持したゼオライト6Aを得た。ICP分析によるゼオライト6AのSI/Al比は11.0であり、処理前と比べて219%上昇した。
【0087】
[比較例1]
0.5gのゼオライト1に対して、水蒸気流通下 (10体積%H2O、残り乾燥空気、100ml/min)で700℃で5時間加熱し、水蒸気加熱処理を行った。この水蒸気加熱処理によって、AEI型の結晶構造を維持したゼオライト1Gを得た。ICP分析によるゼオライト1GのSi/Al比は4.8であり、処理前後で変化はなく、脱アルミニウムすることはできなかった。
【0088】
[比較例2]
5gのゼオライト4を、乾燥空気600ml/min流通下で、600℃で6時間加熱することにより、有機構造規定剤を焼成除去した。有機構造規定剤を焼成除去したゼオライト4に対して、実施例9と同様の手順で、酸処理等を行った。AFX型の結晶構造を維持できず、非晶質化したゼオライト4Bを得た。
【0089】
[比較例3]
ゼオライト7に対して、30gの5質量%の硫酸を用い、加熱温度を60℃としたこと以外は、実施例1と同様の手順で、酸処理等を行い、AEI型の結晶構造を維持したゼオライト7Aを得た。ICP分析によるゼオライト7AのSi/Al比は9.6であり、処理前後でゼオライト粉のSi/Al比に変化は確認されなかった。
【0090】
[比較例4]
ゼオライト8に対して、5質量%の硫酸を用い、加熱温度を60℃としたこと以外は、実施例1と同様の手順で、酸処理等を行った結果、CHA型の結晶構造を維持することができなかった。
【0091】
[比較例5]
ゼオライト9に対して、5質量%の硫酸を用い、加熱温度を60℃としたこと以外は、実施例1と同様の手順で、酸処理等を行い、AEI型の結晶構造を維持したゼオライト9Aを得た。ICP分析によるゼオライト9AのSi/Al比は10.4であり、処理前後でゼオライト粉のSi/Al比の変化は3%と極めて小さいことが確認された。
【0092】
表4に、原料酸素8員環ゼオライト、酸処理条件、及び酸処理により得られた酸素8員環ゼオライトの詳細を示す。
【0093】
【0094】
以上の実施例の結果から明らかなように、有機構造規定剤を含有する原料酸素8員環ゼオライトを酸処理することにより、原料の結晶構造を維持しつつ、Si/Al比が高い酸素8員環ゼオライトを得ることができた。
これに対して、比較例1では、原料酸素8員環ゼオライトに対して酸処理以外の処理を行ったが、酸処理を行っていないため、Si/Al比が高い酸素8員環ゼオライトを得ることができなかった。また、比較例2、4では、有機構造規定剤を含有しない酸素8員環ゼオライトを原料としたため、酸処理をすると、原料の結晶構造を維持できなかった。比較例3、5では、原料のゼオライトに含有される有機構造規定剤の量が多いため、有機構造規定剤によりアルミニウムが捕捉されるため、脱アルミニウムし難かったと考えられる。