(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】光ファイバ撚り周期算出システム、光ファイバ撚り周期算出方法、光ファイバ撚り周期算出装置及び光ファイバ撚り周期算出プログラム
(51)【国際特許分類】
G01M 11/00 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
G01M11/00 G
(21)【出願番号】P 2021118723
(22)【出願日】2021-07-19
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】飯田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】脇坂 佳史
(72)【発明者】
【氏名】小田 友和
(72)【発明者】
【氏名】中村 篤志
(72)【発明者】
【氏名】岡本 達也
(72)【発明者】
【氏名】古敷谷 優介
(72)【発明者】
【氏名】本田 奈月
(72)【発明者】
【氏名】村山 英晶
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-102690(JP,A)
【文献】特開昭61-104237(JP,A)
【文献】特開2016-102691(JP,A)
【文献】特開2008-124573(JP,A)
【文献】特開2019-152630(JP,A)
【文献】特開平6-94570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00 - G01M 11/02
G02B 6/00 - G02B 6/54
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシングルモード光ファイバが格納される光ファイバケーブルのうちの、1本以上の前記シングルモード光ファイバについて、入射光の周波数と反射光の周波数との間のブリルアン周波数シフトの長手方向分布を測定する周波数シフト測定部と、
前記光ファイバケーブルの一部が曲げられている状態において、1本以上の前記シングルモード光ファイバについて、前記光ファイバケーブルの曲げ前後間の前記ブリルアン周波数シフトの長手方向分布の変化量を算出するシフト変化量算出部と、
前記光ファイバケーブルの一部が曲げられている状態において、1本以上の前記シングルモード光ファイバについて、前記ブリルアン周波数シフトの長手方向分布の変化量の周期に基づいて、前記光ファイバケーブルの撚り周期を算出する撚り周期算出部と、
を備えることを特徴とする光ファイバ撚り周期算出システム。
【請求項2】
前記シフト変化量算出部は、前記光ファイバケーブルの曲げられている一部が捩じられていない状態において、前記ブリルアン周波数シフトの長手方向分布の変化量を算出し、
前記撚り周期算出部は、前記光ファイバケーブルの曲げられている一部が捩じられていない状態において、前記光ファイバケーブルの撚り周期を算出する
ことを特徴とする、請求項1に記載の光ファイバ撚り周期算出システム。
【請求項3】
前記周波数シフト測定部は、前記光ファイバケーブルのうちの最外層の前記シングルモード光ファイバについて、前記ブリルアン周波数シフトの長手方向分布を測定する
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の光ファイバ撚り周期算出システム。
【請求項4】
前記光ファイバケーブルの長手方向での前記周波数シフト測定部の距離分解能が、前記光ファイバケーブルの撚り周期と比べて短い状態において、かつ、前記光ファイバケーブルの撚り周期が、前記光ファイバケーブルの曲げ領域と比べて短い状態において、前記撚り周期算出部は、前記光ファイバケーブルの撚り周期を算出する
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の光ファイバ撚り周期算出システム。
【請求項5】
複数のシングルモード光ファイバが格納される光ファイバケーブルのうちの、1本以上の前記シングルモード光ファイバについて、入射光の周波数と反射光の周波数との間のブリルアン周波数シフトの長手方向分布を測定する周波数シフト測定ステップと、
前記光ファイバケーブルの一部が曲げられている状態において、1本以上の前記シングルモード光ファイバについて、前記光ファイバケーブルの曲げ前後間の前記ブリルアン周波数シフトの長手方向分布の変化量を算出するシフト変化量算出ステップと、
前記光ファイバケーブルの一部が曲げられている状態において、1本以上の前記シングルモード光ファイバについて、前記ブリルアン周波数シフトの長手方向分布の変化量の周期に基づいて、前記光ファイバケーブルの撚り周期を算出する撚り周期算出ステップと、
を順に備えることを特徴とする光ファイバ撚り周期算出方法。
【請求項6】
複数のシングルモード光ファイバが格納される光ファイバケーブルのうちの、1本以上の前記シングルモード光ファイバについて、入射光の周波数と反射光の周波数との間のブリルアン周波数シフトの長手方向分布の測定結果を取得する周波数シフト取得部と、
前記光ファイバケーブルの一部が曲げられている状態において、1本以上の前記シングルモード光ファイバについて、前記光ファイバケーブルの曲げ前後間の前記ブリルアン周波数シフトの長手方向分布の変化量を算出するシフト変化量算出部と、
前記光ファイバケーブルの一部が曲げられている状態において、1本以上の前記シングルモード光ファイバについて、前記ブリルアン周波数シフトの長手方向分布の変化量の周期に基づいて、前記光ファイバケーブルの撚り周期を算出する撚り周期算出部と、
を備えることを特徴とする光ファイバ撚り周期算出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の光ファイバ撚り周期算出装置が備える前記周波数シフト取得部、前記シフト変化量算出部及び前記撚り周期算出部が行なう各処理ステップを、順にコンピュータに実行させるための光ファイバ撚り周期算出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ファイバケーブルの撚り周期を算出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバケーブルの曲げ方向を算出する技術が、非特許文献1、2等に開示されている。非特許文献1では、光ファイバケーブルの3次元空間の曲線軌跡は、解析的にはフレネ・セレの公式において、曲率κ及び捩率τに基づいて、算出することができる。ここで、曲率κは、光ファイバケーブルが、どのような方向にどのくらい曲がっているかを示す。そして、捩率τは、光ファイバケーブルの曲げ方向の基準となる初期座標(地球天地を基準とする絶対座標)が、どのくらい回転しているかを示す。
【0003】
光ファイバケーブルの曲線軌跡ベクトルr(s)は、数式1で表わされる。
【数1】
ここで、sは、光ファイバケーブルの曲線軌跡上の距離を示し、r
0は、光ファイバケーブルの曲線軌跡上の端点を示し、T(s)は、数式2で表わされる位置ベクトルである。
【数2】
ここで、Tは、光ファイバケーブルの曲線軌跡の単位接ベクトルを示し、Nは、光ファイバケーブルの曲線軌跡の単位主法線ベクトルを示し、Bは、光ファイバケーブルの曲線軌跡の単位従法線ベクトルを示し、d/dsは、光ファイバケーブルの曲線軌跡の単位弧長当たりの変化量(空間分解能)を示し、κ及びτは、上述の曲率及び捩率を示す。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Jason P.Moore and Matthew D.Rogge,“Shape sensing using multi-core fiber optic cable and parametric curve solution”,Optics Express,Vol.20,No.3,pp.2967-2973.
【文献】M.J.Gander,W.N.MacPherson,R.McBride,J.D.C.Jones,L.Zhang,I.Bennion,P.M.Blanchard,J.G.Burnett and A.H.Greenaway,“Bend measurement using Bragg gratings in multicore fiber”,Electronics letters,Vol.36,No.2,pp.120-121.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献2では、光ファイバケーブルが曲がるとブラッグ反射波長が変わる、FBG(Fiber Bragg Grating)が付与されたマルチコア光ファイバを用いる。そして、OFDR(Optical Frequency Domain Reflectometry)を用いて、各コアの歪みの長手方向分布を測定する。さらに、同一地点での各コアの歪みから得られる、その地点での断面方向の歪み分布に基づいて、その地点での曲率κ及び捩率τを算出する。すると、数式1及び数式2に基づいて、光ファイバケーブルの曲線軌跡ベクトルr(s)を算出することができる。
【0006】
しかし、FBGが付与されたマルチコア光ファイバを用いるため、長尺の光ファイバケーブルを作製することが困難である。そして、光ファイバケーブルの機械的強度及び伝送特性担保の観点を考慮すれば、歪みに対する感度を向上させるためにコア同士の間隔を大きくすることが困難である。さらに、OFDRを用いるため、測定距離が短い。
【0007】
そこで、光ファイバケーブルの曲線軌跡ベクトルr(s)を算出するために、シングルモード光ファイバを用いることが考えられる。しかし、光ファイバケーブルの構造パラメータとして光ファイバケーブルの撚り周期を考慮する必要があり、光ファイバケーブルの撚り周期を光ファイバケーブルの作製後に非破壊で測定する手段がない。
【0008】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、長尺の光ファイバケーブルを容易に作製するとともに、歪みに対する感度を向上させるためにコア同士の間隔を容易に大きくしながら、光ファイバケーブルの撚り周期を作製後に非破壊で算出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、1本以上のシングルモード光ファイバについて、光ファイバケーブルの曲げ前後間のブリルアン周波数シフトの長手方向分布の変化量の周期を算出する。そして、これに基づいて、光ファイバケーブルの撚り周期を算出する。
【0010】
具体的には、本開示は、複数のシングルモード光ファイバが格納される光ファイバケーブルのうちの、1本以上の前記シングルモード光ファイバについて、入射光の周波数と反射光の周波数との間のブリルアン周波数シフトの長手方向分布を測定する周波数シフト測定部と、前記光ファイバケーブルの一部が曲げられている状態において、1本以上の前記シングルモード光ファイバについて、前記光ファイバケーブルの曲げ前後間の前記ブリルアン周波数シフトの長手方向分布の変化量を算出するシフト変化量算出部と、前記光ファイバケーブルの一部が曲げられている状態において、1本以上の前記シングルモード光ファイバについて、前記ブリルアン周波数シフトの長手方向分布の変化量の周期に基づいて、前記光ファイバケーブルの撚り周期を算出する撚り周期算出部と、を備えることを特徴とする光ファイバ撚り周期算出システムである。
【0011】
また、本開示は、複数のシングルモード光ファイバが格納される光ファイバケーブルのうちの、1本以上の前記シングルモード光ファイバについて、入射光の周波数と反射光の周波数との間のブリルアン周波数シフトの長手方向分布を測定する周波数シフト測定ステップと、前記光ファイバケーブルの一部が曲げられている状態において、1本以上の前記シングルモード光ファイバについて、前記光ファイバケーブルの曲げ前後間の前記ブリルアン周波数シフトの長手方向分布の変化量を算出するシフト変化量算出ステップと、前記光ファイバケーブルの一部が曲げられている状態において、1本以上の前記シングルモード光ファイバについて、前記ブリルアン周波数シフトの長手方向分布の変化量の周期に基づいて、前記光ファイバケーブルの撚り周期を算出する撚り周期算出ステップと、を順に備えることを特徴とする光ファイバ撚り周期算出方法である。
【0012】
また、本開示は、複数のシングルモード光ファイバが格納される光ファイバケーブルのうちの、1本以上の前記シングルモード光ファイバについて、入射光の周波数と反射光の周波数との間のブリルアン周波数シフトの長手方向分布の測定結果を取得する周波数シフト取得部と、前記光ファイバケーブルの一部が曲げられている状態において、1本以上の前記シングルモード光ファイバについて、前記光ファイバケーブルの曲げ前後間の前記ブリルアン周波数シフトの長手方向分布の変化量を算出するシフト変化量算出部と、前記光ファイバケーブルの一部が曲げられている状態において、1本以上の前記シングルモード光ファイバについて、前記ブリルアン周波数シフトの長手方向分布の変化量の周期に基づいて、前記光ファイバケーブルの撚り周期を算出する撚り周期算出部と、を備えることを特徴とする光ファイバ撚り周期算出装置である。
【0013】
また、本開示は、以上に記載の光ファイバ撚り周期算出装置が備える前記周波数シフト取得部、前記シフト変化量算出部及び前記撚り周期算出部が行なう各処理ステップを、順にコンピュータに実行させるための光ファイバ撚り周期算出プログラムである。
【0014】
これらの構成によれば、シングルモード光ファイバを用いるため、長尺の光ファイバケーブルを作製することが容易である。そして、光ファイバケーブルの機械的強度及び伝送特性担保の観点を考慮しても、歪みに対する感度を向上させるためにコア同士の間隔を大きくすることが容易である。さらに、ブリルアン周波数シフトの変化量を歪みに変換することなく、光ファイバケーブルの撚り周期を作製後に非破壊で算出することができる。
【0015】
また、本開示は、前記シフト変化量算出部は、前記光ファイバケーブルの曲げられている一部が捩じられていない状態において、前記ブリルアン周波数シフトの長手方向分布の変化量を算出し、前記撚り周期算出部は、前記光ファイバケーブルの曲げられている一部が捩じられていない状態において、前記光ファイバケーブルの撚り周期を算出することを特徴とする光ファイバ撚り周期算出システムである。
【0016】
この構成によれば、光ファイバケーブルの捩れ方向に応じて、光ファイバケーブルの撚り周期が、実際と比べて長く又は短く算出されることを防止することができる。
【0017】
また、本開示は、前記周波数シフト測定部は、前記光ファイバケーブルのうちの最外層の前記シングルモード光ファイバについて、前記ブリルアン周波数シフトの長手方向分布を測定することを特徴とする光ファイバ撚り周期算出システムである。
【0018】
この構成によれば、ブリルアン周波数シフトの変化量が、光ファイバケーブルの撚り周期に渡って、距離方向に大きな振幅で変化する様子をモニタすることができる。
【0019】
また、本開示は、前記光ファイバケーブルの長手方向での前記周波数シフト測定部の距離分解能が、前記光ファイバケーブルの撚り周期と比べて短い状態において、かつ、前記光ファイバケーブルの撚り周期が、前記光ファイバケーブルの曲げ領域と比べて短い状態において、前記撚り周期算出部は、前記光ファイバケーブルの撚り周期を算出することを特徴とする光ファイバ撚り周期算出システムである。
【0020】
この構成によれば、ブリルアン周波数シフトの変化量が、光ファイバケーブルの撚り周期に渡って、距離方向に変化する様子をモニタすることができる。そして、光ファイバケーブルの撚り周期が、光ファイバケーブルの曲げ領域に渡って、複数回分含まれる。
【発明の効果】
【0021】
このように、本開示は、長尺の光ファイバケーブルを容易に作製するとともに、歪みに対する感度を向上させるためにコア同士の間隔を容易に大きくしながら、光ファイバケーブルの撚り周期を作製後に非破壊で算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本開示の光ファイバ撚り周期算出システムの構成を示す図である。
【
図2】本開示の光ファイバ撚り周期算出方法の手順を示す図である。
【
図3】本開示の撚りがある光ファイバケーブルの構成を示す図である。
【
図4】本開示の光ファイバの撚り周期を算出する具体例を示す図である。
【
図5】本開示の光ファイバの撚り周期を算出する具体例を示す図である。
【
図6】本開示の光ファイバの撚り周期を算出する具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0024】
(本開示の光ファイバ撚り周期算出システムの概要)
本開示の光ファイバ撚り周期算出システムの構成を
図1に示す。本開示の光ファイバ撚り周期算出方法の手順を
図2に示す。光ファイバ撚り周期算出システムFは、周波数シフト測定装置1及び光ファイバ撚り周期算出装置2を備える。光ファイバ撚り周期算出装置2は、シフト変化量算出部21及び撚り周期算出部22を備え、コンピュータ及び
図2に示した光ファイバ撚り周期算出プログラムによっても実現することができる(そのうえで、数式1、2に基づいて、光ファイバケーブルCの曲率κ、捩率τ及び曲線軌跡ベクトルr(s)を算出することができる)。
図2に示した光ファイバ撚り周期算出プログラムは、記録媒体に記録することもでき、ネットワークを通して提供することもできる。
【0025】
光ファイバケーブルCは、複数のシングルモード光ファイバを格納する。周波数シフト測定装置1は、1本以上のシングルモード光ファイバについて、入射光の周波数と反射光の周波数との間のブリルアン周波数シフトの長手方向分布を測定する。周波数シフト測定装置1は、OFDRを用いるならば、測定距離を長くすることができないが、OTDR(Optical Time Domain Reflectometry)を用いるならば、測定距離を長くすることができる。光ファイバ撚り周期算出装置2は、
図3から
図6までに示すように、光ファイバケーブルCの撚り周期を算出することができる。
【0026】
(本開示の光ファイバの撚り周期を算出する具体例)
本開示の撚りがある光ファイバケーブルの構成を
図3に示す。本開示の光ファイバの撚り周期を算出する具体例を
図4から
図6までに示す(そのうえで、数式1、2に基づいて、光ファイバケーブルCの曲率κ、捩率τ及び曲線軌跡ベクトルr(s)を算出することができる)。
図3では、光ファイバケーブルCは、4心のテープ光ファイバを5層に積層した光ファイバスロットSが8本分束ねられたうえで、撚りが施されているものである。
【0027】
シフト変化量算出部21は、1本以上のシングルモード光ファイバについて、入射光の周波数と反射光の周波数との間のブリルアン周波数シフトの長手方向分布の測定結果を取得する(ステップS1)。
図3では、シフト変化量算出部21は、1本の光ファイバスロットSのうちの、最外層のテープ光ファイバの最外層光ファイバFOについて、ブリルアン周波数シフトの長手方向分布の測定結果を取得している。すると、ブリルアン周波数シフトの変化量が、光ファイバケーブルCの撚り周期に渡って、距離方向に大きな振幅で変化する様子をモニタすることができる(
図6を参照)。ただし、シフト変化量算出部21は、光ファイバケーブルCのうちの、任意の1本以上のシングルモード光ファイバについて、ブリルアン周波数シフトの長手方向分布の測定結果を取得してもよい。
【0028】
シフト変化量算出部21は、光ファイバケーブルCの一部が曲げられているが捩じられていない状態において、1本以上のシングルモード光ファイバ(
図3から
図6まででは、最外層光ファイバFO)について、光ファイバケーブルCの曲げ前後間のブリルアン周波数シフトの長手方向分布の変化量を算出する(ステップS2)。
【0029】
図4の上段では、光ファイバケーブルCの全体が、直線状で曲げられていない状態を示す。
図4の中段では、
図4の上段と比べて、光ファイバケーブルCの全体が、直線状で捩じられてもいない状態を示す。
図4の下段では、
図4の中段と比べて、光ファイバケーブルCの一部が、円形状で曲げられているが捩じられていない状態を示す。すると、光ファイバケーブルCの捩れ方向に応じて、光ファイバケーブルCの撚り周期が、実際と比べて長く又は短く算出されることを防止することができる(
図6を参照)。
【0030】
図5でも、光ファイバケーブルCの一部が、円形状で曲げられているが捩じられていない状態を示す。光ファイバケーブルCは、光ファイバケーブルCの軌跡上の距離z
1から距離z
5へと移るにつれて、円形状で曲げられているが捩じられていない。光ファイバケーブルCの軌跡上の距離z
1/z
2/z
3/z
4/z
5近傍において、最外層光ファイバFOは、光ファイバケーブルCの曲げ領域の内側/外側/内側/外側/内側に位置する。
【0031】
図6の上段では、光ファイバケーブルCの全体が、直線状で曲げられておらず捩じられていない状態を示す。光ファイバケーブルCの軌跡上の距離z
1~z
5において、最外層光ファイバFOでのブリルアン周波数シフトは、ほぼ一定の値となりほぼ同様な値となる。
【0032】
図6の下段では、光ファイバケーブルCの一部が、円形状で曲げられているが捩じられていない状態を示す。光ファイバケーブルCの軌跡上の距離z
1/z
2/z
3/z
4/z
5近傍において、最外層光ファイバFOでのブリルアン周波数シフトは、
図6の上段と比べて
図6の下段では、負方向/正方向/負方向/正方向/負方向に変化する。
【0033】
ここで、最外層光ファイバFOでの歪みは、内層の光ファイバでの歪みと比べて、圧縮時にも引っ張り時にも大きい。よって、ブリルアン周波数シフトの変化量が、光ファイバケーブルCの撚り周期に渡って、距離方向に大きな振幅で変化する様子をモニタすることができる。そして、光ファイバケーブルCの一部は、円形状で曲げられているが、捩じられていない。よって、光ファイバケーブルCの捩れ方向に応じて、光ファイバケーブルCの撚り周期が、実際と比べて長く又は短く算出されることを防止することができる。
【0034】
撚り周期算出部22は、光ファイバケーブルCの一部が曲げられているが捩じられていない状態において、1本以上のシングルモード光ファイバ(
図3から
図6まででは、最外層光ファイバFO)について、ブリルアン周波数シフトの長手方向分布の変化量の周期に基づいて、光ファイバケーブルCの撚り周期を算出する(ステップS3)。
【0035】
具体的には、撚り周期算出部22は、
図6に示した最外層光ファイバFOでの周波数に関する情報と、
図5に示した最外層光ファイバFOの外内に関する情報と、を取得したうえで、光ファイバケーブルCが、距離z
1から距離z
5へと移るにつれて、約2回の撚り周期で撚られていること(撚り周期は、距離z
1~z
3又は距離z
3~z
5)を算出する。
【0036】
ここで、光ファイバケーブルCの長手方向での周波数シフト測定装置1の距離分解能が、光ファイバケーブルCの撚り周期と比べて短い状態において、かつ、光ファイバケーブルCの撚り周期が、光ファイバケーブルCの曲げ領域と比べて短い状態において、撚り周期算出部22は、光ファイバケーブルCの撚り周期を算出することが望ましい。すると、ブリルアン周波数シフトの変化量が、光ファイバケーブルCの撚り周期に渡って、距離方向に変化する様子をモニタすることができる。そして、光ファイバケーブルCの撚り周期が、光ファイバケーブルCの曲げ領域に渡って、複数回分含まれる。
【0037】
ただし、光ファイバケーブルCの撚り周期は、算出前では未知数である。そこで、周波数シフト測定装置1の距離分解能は、測定初期段階では最良分解能であることが望ましい。そして、光ファイバケーブルCの曲げ領域の半径は、測定初期段階では大きな半径であることが望ましい。しかし、光ファイバケーブルCの曲げ領域の半径が、大きな半径であれば、ブリルアン周波数シフトの変化量は、小さい変化量となる。そこで、光ファイバケーブルCの曲げ領域の半径は、測定感度に応じて小さな半径に変更してもよい。
【0038】
(本開示の光ファイバ撚り周期算出システムの効果)
このように、シングルモード光ファイバを用いるため、長尺の光ファイバケーブルCを作製することが容易である。そして、光ファイバケーブルCの機械的強度及び伝送特性担保の観点を考慮しても、歪みに対する感度を向上させるためにコア同士の間隔を大きくすることが容易である。さらに、ブリルアン周波数シフトの変化量を歪みに変換することなく、光ファイバケーブルCの撚り周期を作製後に非破壊で算出することができる。
【0039】
そのうえで、数式1、2に基づいて、光ファイバケーブルCの曲率κ、捩率τ及び曲線軌跡ベクトルr(s)を算出することができる。本実施形態では、ブリルアン周波数シフトの変化量を歪み(曲げの半径に反比例)に変換することなく、ブリルアン周波数シフトの変化量の周期に基づいて、光ファイバケーブルCの撚り周期を算出している。変形例として、ブリルアン周波数シフトの変化量を歪み(曲げの半径に反比例)に変換したうえで、歪みの周期に基づいて、光ファイバケーブルCの撚り周期を算出してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本開示の光ファイバ撚り周期算出システム、光ファイバ撚り周期算出方法、光ファイバ撚り周期算出装置及び光ファイバ撚り周期算出プログラムは、光ファイバ通信で使用され市街地に配線される光ファイバケーブルのみならず、構造物歪みセンサで使用され構造物に設置される光ファイバケーブルについても、撚り周期を算出することができる。
【符号の説明】
【0041】
F:光ファイバ撚り周期算出システム
C:光ファイバケーブル
S:光ファイバスロット
FO:最外層光ファイバ
1:周波数シフト測定装置
2:光ファイバ撚り周期算出装置
21:シフト変化量算出部
22:撚り周期算出部