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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】トランジスタ型センサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/414 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
G01N27/414 301K
G01N27/414 301P
G01N27/414 301V
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022503330
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(86)【国際出願番号】 JP2021006343
(87)【国際公開番号】W WO2021172197
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-08-28
(31)【優先権主張番号】P 2020030081
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149799
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】南 豪
(72)【発明者】
【氏名】中原 勝正
(72)【発明者】
【氏名】小池 俊弘
【審査官】櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2020-0005789(KR,A)
【文献】特開平03-087644(JP,A)
【文献】特開2015-187594(JP,A)
【文献】特表2004-521949(JP,A)
【文献】特開2012-026839(JP,A)
【文献】特表2007-500185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/414
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ基を有する化合物を捕捉することより検出するための検出電極と、
前記検出電極に接続されたゲート電極を有するトランジスタと、
を備え、
前記検出電極は、表面に固定化されたククルビットウリル構造含有化合物を有し、
前記ククルビットウリル構造含有化合物は、式(1)で表される化合物であり、
式(1)で表される化合物は、前記検出電極の前記表面に同じ配向で固定化される、トランジスタ型センサ
【化1】

(式中、nは5から20の整数であり、mは1から10の整数である。X及びYは独立に酸素、硫黄及びセレンからなる群から選ばれるカルコゲン原子を表し、Rは、SH、COOH、Si(OR 、PO(OH) 、SS-R からなる群から選ばれる置換基を表し、R は炭素数1~5のアルキル基を表し、R は有機基を表す。)
【請求項2】
前記アミノ基を有する化合物が、10,000以下の分子量を有する、請求項1に記載のトランジスタ型センサ。
【請求項3】
前記アミノ基を有する化合物が、ポリアミン、アミノ酸、及びペプチド結合を含む化合物からなる群から選択される、請求項1に記載のトランジスタ型センサ。
【請求項4】
前記アミノ基を有する化合物が、イミダゾールジペプチドである、請求項1に記載のトランジスタ型センサ。
【請求項5】
前記トランジスタの閾値電圧値又はドレイン電流値は、前記アミノ基を有する化合物の捕捉により変化する、請求項1に記載のトランジスタ型センサ。
【請求項6】
前記ククルビットウリル構造含有化合物は、前記検出電極の表面と相互作用し、自己組織化単分子膜を形成している、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のトランジスタ型センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化学物質、具体的にはアミノ基を有する化合物を検出するトランジスタ型センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活の健康志向に伴い、化学物質を簡便にモニタリングする需要が増えてきている。食品に含まれる栄養分や、環境負荷物質を分析する為にはこれまで大型で高価な質量分析などの分析機器や、高価な分析試薬が必要であった。しかし、今後は迅速で簡便な分析手法が求められ、これにより、人類の暮らしはより快適になると予想される。
【0003】
そうした背景の中、金属などの無機物に自己組織化単分子膜(SAM)を形成させてレセプターとし、目的検知対象物質と相互作用させて電気、光といった外部信号として取り出す研究開発が進んできている。用いる相互作用としては共有結合などの化学反応、抗体-抗原反応、ホスト-ゲストによる超分子認識が知られている。
【0004】
これまでに報告された例としては、レセプターが特定の化学物質に特異的に結合することにより信号を取り出していたが、この手法では多品種の化合物に対して対応するレセプターを多品種で製造する必要があり、工業的には現実的ではないと考えられる。それに対して、ある程度の反応サイトの余裕を持ち、多品種の化学物質に対して応答はするが、応答強度が異なるレセプターを少品種だけ製造することの方が、開発速度が高まり、工業的にも理想的である。
【0005】
そういった要望の中でククルビット[n]ウリルは親水性及び疎水性を示す空隙の存在により多様な化合物に対して捕集能力を有している事が知られている(特許文献1、特許文献2、非特許文献1)。ククルビット[n]ウリルは、空隙入り口にカルボニル基を有している為、電荷-極性相互作用、極性-極性相互作用、または水素結合によって多様なイオン性化合物、及び極性の大きい化合物を捕集できる点で、他の大環状化合物と異なる。したがってククルビット[n]ウリルはアミノ酸、核酸、金属イオン、有機金属イオン、違法薬物等に対して多様な捕集能力を持ち、さらには、捕集様態も捕集する化合物やククルビット[n]ウリルの環構造の大きさによって異なるため、非常に興味深い化合物である。
ククルビット[n]ウリルを用いた応答は主に溶液中での光学的な応答、核磁気共鳴に対する応答、等温滴定カロリメトリーに対する応答等が知られているが、これらの分析ではやはり比較的大きな分析機器が必要であった。今後簡便な分析の為には超分子的相互作用を有する化合物を金属などの無機物に担持させてチップ状にし、持ち歩けるような状態にするのが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2007-500763号公報
【文献】特表2007-521487号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Chemical-Reviews,2015年,115巻,12320頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、様々な用途に用いられるアミノ基を有する化合物を検出するためのセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、ククルビットウリル構造含有化合物を表面に固定化させた検出電極を備えるトランジスタ型センサは、イミダゾールを検出できることを突き止め、本発明を完成させることに至った。
すなわち、本発明は下記の通りである。
【0010】
[1] アミノ基を有する化合物を捕捉することにより検出するための検出電極と、
前記検出電極に接続されたゲート電極を有するトランジスタと、
を備え、
前記検出電極は、表面に固定化されたククルビットウリル構造含有化合物を有する、トランジスタ型センサ。
[2] 前記アミノ基を有する化合物が、10,000以下の分子量を有する、[1]に記載のトランジスタ型センサ。
[3] 前記アミノ基を有する化合物が、ポリアミン、アミノ酸、及びペプチド結合を含む化合物からなる群から選択される、[1]に記載のトランジスタ型センサ。
[4] 前記アミノ基を有する化合物が、イミダゾールジペプチドである、[1]に記載のトランジスタ型センサ。
[5] 前記トランジスタの閾値電圧値又はドレイン電流値は、前記アミノ基を有する化合物の捕捉により変化する、[1]乃至[4]のいずれかに記載のトランジスタ型センサ。
[6] 前記ククルビットウリル構造含有化合物は、前記検出電極の表面と相互作用し、自己組織化単分子膜を形成している、[1]乃至[5]のいずれかに記載のトランジスタ型センサ。
[7] 前記ククルビットウリル含有化合物は、式(1)で表される化合物である、[1]乃至[6]のいずれかに記載のトランジスタ型センサ:
【化1】
(式中、nは5から20の整数であり、mは1から10の整数である。X及びYは独立に酸素、硫黄及びセレンからなる群から選ばれるカルコゲン原子を表し、Rは、SH、COOH、Si(OR、PO(OH)、SS-Rからなる群から選ばれる置換基を表し、Rは炭素数1~5のアルキル基を表し、Rは有機基を表す。)。
【発明の効果】
【0011】
本発明のトランジスタ型センサは、簡便な構造でありながら、様々な用途に用いられるアミノ基を有する化合物を検出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施例1のトランジスタ型センサの模式図を示す。
図2図2は、電極表面にククルビットウリル構造含有化合物が固定化されている模式図である。
図3図3は、実施例1のトランジスタ型センサの製造手順である。
図4図4は、実施例1のカルノシン溶液に対する伝達特性の変化を示す図である。
図5図5は、実施例1のトランジスタ型センサを用いたときの閾値電圧シフト率の変化を示す図である。
図6図6は、検出電極をCB[6]で処理した検出電極を用いた場合と、未処理の検出電極を用い場合の閾値でシフト量を比較した図である。
図7図7は、実施例で用いたタンパク質を構成するアミノ酸20種を示す。
図8図8は、中性条件下、アスパラギン酸、グルタミン酸、メチオニン、アルギニン、アスパラギンの濃度と閾値電圧シフト率の変化を示す図である。
図9図9は、中性条件下、トレオニン、リシン、システイン、プロリン、バリンの濃度と閾値電圧シフト率の変化を示す図である。
図10図10は、中性条件下、グリシン、アラニン、ヒスチジン、セリン、ロイシンの濃度と閾値電圧シフト率の変化を示す図である。
図11図11は、中性条件下、イソロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、グルタミン、チロシンの濃度と閾値電圧シフト率の変化を示す図である。
図12図12は、酸性条件下、アスパラギン酸、グルタミン酸、メチオニン、アルギニン、アスパラギンの濃度と閾値電圧シフト率の変化を示す図である。
図13図13は、酸性条件下、トレオニン、リシン、システイン、プロリン、バリンの濃度と閾値電圧シフト率の変化を示す図である。
図14図14は、酸性条件下、グリシン、アラニン、ヒスチジン、セリン、ロイシンの濃度と閾値電圧シフト率の変化を示す図である。
図15図15は、酸性条件下、イソロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、グルタミン、チロシンの濃度と閾値電圧シフト率の変化を示す図である。
図16図16は、中性条件及び酸性条件下のそれぞれにおけるグリシン、アラニン、プロニン、グルタミンの閾値電圧シフト率の変化を示す図である。
図17図17は、実施例1のセンサを用いたときのイノシン、グアニル酸、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの濃度と閾値電圧シフト率の変化を示す図である。
図18図18は、実施例2のセンサを用いたときのイノシン、グアニル酸、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの濃度と閾値電圧シフト率の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について具体的に説明する。本発明のトランジスタ型センサは、アミノ基を有する化合物を捕捉することにより検出するための検出電極と、前記検出電極に接続されたゲート電極を有するトランジスタと、を備え、前記検出電極は、表面に固定化されたククルビットウリル構造含有化合物を有する、トランジスタ型センサである。
【0014】
[トランジスタ型センサについて]
(検出電極)
本発明のトランジスタ型センサは、アミノ基を有する化合物を検出すための検出電極を備える。検出電極は、トランジスタの延長ゲート電極である。
【0015】
検出電極は、電極本体の表面にククルビットウリル構造含有化合物が固定化されている。本発明において、ククルビットウリル構造含有化合物とは、下記構造(以下、ククルビットウリル構造と称す。)を含有する化合物である。
【化2】
【0016】
上記式において、nは5から20の整数であり、X及びYは独立に酸素、硫黄及びセレンからなる群から選ばれるカルコゲン原子を表す。また、Aは、水素原子又は水素原子と置換できる原子又は有機基である。
【0017】
本発明において、ククルビットウリル構造含有化合物は、ククルビットウリル構造を含むものであれば、特に限定されるものではないが、中でも式(1)で表されるククルビットウリル構造含有化合物であることが好ましい。
【化3】
【0018】
式(1)中、nは5から20の整数であり、mは1から10の整数である。X及びYは独立に酸素、硫黄及びセレンからなる群から選ばれるカルコゲン原子を表し、Rは、SH、COOH、Si(OR、PO(OH)、SS-Rからなる群から選ばれる置換基を表し、Rは炭素数1~5のアルキル基を表し、Rは有機基を表す。以下、具体的に説明する。
【0019】
式(1)で表される化合物は、ククルビットウリル構造(環状構造)を含む化合物である。nは、当該化合物を構成するグリコールウリル単位の数を表し、5~20の整数を表す。検査対象物との相互作用の強さや、入手容易性の観点から、nは5~12の整数が好ましく、5~10の整数がさらに好ましい。
【0020】
式(1)中、mはメチレン基単位の数を表し、mが大きければ、メチレンスペーサーの長さが長くなるものであり、1から20の整数を表す。検査対象物との相互作用の強さや、固定化のしやすさ、扱いやすさの観点から、mは2から18の整数が好ましく、3から15がさらに好ましい。なお、メチルスペーサーとは、ククルビットウリル部分(ククルビットウリル構造)と、金属等の無機物とを結ぶ連続したメチレン基のことを言う。
【0021】
式(1)中、X及びYは、独立に酸素、硫黄及びセレンからなる群から選ばれるカルコゲン原子を表す。式(1)中、複数のXが存在するが、すべてのXが同一のカルコゲン原子である必要はなく、互いに異なっていてもよい。なお、合成しやすさの観点から、Xとしては、硫黄原子及び酸素原子が好ましく、酸素原子が最も好ましい。
また、YはXと同一でも異なっていてもよく、好ましいYは、硫黄原子及び酸素原子であり、酸素原子が最も好ましい。
【0022】
Rはメチレンスペーサーの末端官能基である。RはSH、COOH、Si(OR、PO(OH)、SS-Rからなる群から選ばれる置換基であることが好ましい。Rに含まれるS原子、O原子、Si原子又はP原子が、無機物の表面と結合することにより、式(1)の化合物は、同じ配向性を有しながら、無機物の表面に固定化することができる。
【0023】
上記のうち、Si(ORのRは、アルコキシ基のアルキル基部分であり、炭素数1~5であることが好ましく、1~2であることがより好ましい。
【0024】
また、SS-RのRは、有機基であれば特に限定されるものではない。Rの具体例としては、アルキル、アルケニル、ククルビットウリルとすることができる。RがSS-Rの場合は、無機物の表面に固定する場合、SとSが切断され、ククルビットウリル構造を含む化合物の硫黄原子が、無機物の表面に固定する。なお、切断された-S-Rを含む化合物も無機物の表面に固定することもでき、この点から考えると、Rは、ククルビットウリル構造を含むことが好ましい。
【0025】
式(1)の化合物は、好ましくは、以下の式(2)乃至(6)で表される化合物とすることができる。
【0026】
【化4】
【0027】
【化5】
【0028】
【化6】
【0029】
【化7】
【0030】
【化8】
【0031】
式(2)~(6)において、n及びmは式(1)と同様である。また、式(6)のRは炭素数1~5のアルキル基を表す。各式中に、mやRが複数ある場合は、mやRはそれぞれ互いに同じであっても異なっていてもよい。
式(1)の化合物の特徴の一つとして、金属等の無機物と相互作用し、自己組織化単分子膜を形成することができる。ククルビットウリル構造は、ホスト分子として機能することが期待できるため、無機物とメチルスペーサーにより隔てたククルビットウリル部分が新しい機能を発揮できると考えられる。
【0032】
固定化は、図2のように、式(1)の化合物が、電極表面上に、配置されるものであり、例えば、電極本体表面に式(1)の化合物を用いて、自己組織化単分子膜処理(SAM処理)を施すことにより、電極金属表面に式(1)の化合物を固定させた状態とすることができる。
【0033】
(トランジスタ)
本発明のセンサは、トランジスタを備える。トランジスタは、有機トランジスタ、無機トランジスタを使用することができるが、小型で簡易的に用いることができる点で、電界効果トランジスタ(特に、薄膜トランジスタ)が好ましい。
本発明において、電界効果トランジスタは、通常の構成の電界効果トランジスタを用いることができ、一例を図1に示す。図1の電界効果トランジスタTは、典型的な電界効果トランジスタであり、基板1、ゲート電極2、ゲート絶縁膜3、ソース電極4、ドレイン電極5、バンク6、有機半導体(OSC)7、封止膜8から構成されている。
電界効果トランジスタTを構成する材料も特に限定されるものではない。例えば、基板1は、ガラス、セラミックス、金属等の無機材料の他、樹脂、紙等の有機材料等を適用することができる。ゲート電極2としては、アルミニウム、銀、金、銅、チタン、酸化インジウム錫(ITO)、poly(3,4-ethylenedioxythiophene)、polystyrene sulfonate等を用いることができる。ソース電極4、ドレイン電極5の材料としては、金、銀、銅、白金、アルミニウム、PEDOT:PSS等の導電性高分子が挙げられる。ゲート絶縁膜3の構成材料としては、例えば、シリカ(酸化珪素)、アルミナ(酸化アルミニウム)、自己組織化単分子膜、ポリスチレン、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリジメチルシロキサン、ポリシルセスキオキサン、イオン液体、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。バンク6の構成材料としては、ポリテトラフルオロエチレンが挙げられ、封止膜8の構成材料としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリパラキシリレン等が挙げられる。
【0034】
有機半導体7は、その機能が発揮できれば材料は特に限定されるものではないが、P型の場合は、ペンタセン、ジナフトチエノチオフェン、ベンゾチエノベンゾチオフェン(Cn-BTBT)、TIPSペンタセン、TES-ADT、ルブレン、P3HT、PBTTT等を用いることができ、N型の場合は、フラーレン等を用いることができる。中でも、下記化合物などが好適に用いられ、本明細書に記載の実施例の半導体材料としても用いた。
【化9】
【0035】
なお、図1において、検出電極Dは、導線9、検出電極基板10、検出電極本体11、は参照電極12、自己組織化単分子膜14である。検出電極本体11は、トランジスタTのゲート電極2に導線9で電気的に接続されている。実験上、液体を検出しやすくするために、検出電極Dはチューブの中に組み込むことが好ましい。
【0036】
検出電極基板10の材料は、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。検出電極本体(延長ゲート電極本体)11は、検出電極基板10の表面に配置させる。検出電極本体11の材料は、ゲート電極2と同様に、アルミニウム、銀、金、銅、チタン、酸化インジウム錫(ITO)、poly(3,4-ethylenedioxythiophene)、polystyrene sulfonate等を用いることができる。参照電極12は一般的に用い得られる参照電極を用いればよく、Ag/AgClなどが挙げられる。
そして、検出電極本体11の上には、自己組織化単分子膜14が形成されている。自己組織化単分子膜14はククルビットウリル構造含有化合物から構成される。ただし、ククルビットウリル構造含有化合物が、延長ゲート電極本体11の上に何らかの状態で配置されていれば、検出機能は発揮することができると思われるが、自己組織化単分子膜の状態になっている方が好ましい。
【0037】
本発明のトランジスタ型センサは、検出電極に固定化されたククルビットウリル構造含有化合物に、アミノ基を有する化合物が結合して生じる閾値電圧又はドレイン電流値の変化を計測することにより、アミノ基を有する化合物を検出するのに用いることができる。すなわち、本発明に係るトランジスタ型センサは、トランジスタの延長ゲート上に固定化させたククルビットウリル構造含有化合物とアミノ基を有する化合物との結合に基づいて、検出を行うデバイスである。このようなセンサによれば、トランジスタの特性変化によって安定的かつ簡便に検出対象物質(アミノ基を有する化合物)のモニタリングを行うことができる。
【0038】
[トランジスタ型センサの製造方法について]
(検出電極の作製)
検出電極の作製は、金属等の無機物の表面にククルビットウリル構造含有化合物を固定化させる工程を含む。ククルビットウリル構造含有化合物の固定化方法は、特に限定されるものではく、スピンコート法、ディップコート法など、様々な方法を用いることができる。
簡便な手法として、ククルビットウリル構造含有化合物を溶媒に混合した混合液を、電極となる金などの無機物に終夜浸漬し、必要により乾燥させることにより、得ることができる。混合溶液のククルビットウリル構造含有化合物の濃度は特に限定されるものでないが、例えば、0.01mM~1Mとすることができる。図3では、参照電極12を用いた例を示したが、用いても用いなくてもよい。
【0039】
(トランジスタの作製)
トランジスタの作製は、特に限定されるものではないが、蒸着法、スパッタリング法等のドライプロセスでも、スピンコート、バーコート、スプレーコート等による塗布、スクリーン印刷、グラビアオフセット印刷、凸版反転印刷、インクジェット印刷等の各種印刷機による印刷でもよい。印刷によれば、より効率的に低コストで製造することができる。
【0040】
図1に示すトランジスタTの製造方法の一例を、図3を用いて説明する。まず、基板1(材料はガラス)を用意し(a)、その上に表面に30nmの厚さのゲート電極2(材料はアルミニウム)を形成する(b)。そして、RIE処理(反応性イオンエッチング処理により酸化アルミニウム膜を形成)を15分行い、HFPAで処理することによりゲート絶縁膜3を形成する(c)。さらに、ソース・ドレイン電極4、5(材料はいずれも金)をパターニング形成する(d)。その後、バンク6(材料はポリテトラフルオロエチレン)を形成し(e)、有機半導体7の層を形成する(f)。最後に、封止膜8(材料はポリテトラフルオロエチレン)をスピンコート法等により形成し(g)、トランジスタTを作製する。
【0041】
ゲート電極2と、上記検出電極Dを接続させて、トランジスタ型センサの製造することができる。
【0042】
[検出方法及び検出対象物質]
アミノ基を有する化合物を含む溶液又は気体を、検出電極上に接触させることにより、閾値電圧のシフト量が大きくなるため、シフト量を計測することにより、検出を実施する。
【0043】
検出時における温度は特に限定されるものではないが、常温で行うことができる。また、検出時における圧力も特に限定されるものでないが、大気中で行うことができる。したがって、簡便でかつ持ち運びができるセンサとして使用することが期待できる。
検出時におけるpHは、特に限定されるものではなく、酸性、中性、塩基性のいずれでも検出可能である。検出対象物質によっては、pHが異なることで、検知強度が変化する場合がある。このような特性を有する場合は、異なるpHでの測定を実施することにより、検知対象物質を同定しやすくなる場合がある。
【0044】
検出対象物質は、アミノ基を有する化合物である。アミノ基を有する化合物とは、化合物の中にアミノ基を有していればよく、アミン化合物、ポリアミン、アミノ酸、たんぱく質など特に限定されるものではない。アミノ基を有する化合物と、ククルビットウリル構造含有化合物とのなんらかの相互作用により、検出できるものと考えられる。
【0045】
アミノ基を有する化合物の例としては、例えば、10,000以下の分子量のアミノ基を有する化合物、5,000以下の分子量のアミノ基を有する化合物、2,000以下の分子量のアミノ基を有する化合物、1,000以下の分子量のアミノ基を有する化合物が挙げられる。1,0000以下の分子量であれば、十分に検出できる程度のシグナルが得られる場合があるため、好ましい・
【0046】
本発明のトランジスタ型センサの検出対象物質として、極性を有し、水に可溶な化合物を検出することができる。例えば、水に対する溶解度が、水100gに対して、10mg以上である化合物が挙げられる。水に対する溶解度は、好ましくは、50mgもしくは100mg以上である。
【0047】
化合物に含まれるアミノ基の数は、例えば、1以上、2以上、3以上、4以上などが挙げられる。
【0048】
アミン化合物としては、脂肪族アミン、芳香族アミン、アミノアルコール、イミダゾール、ベンゾトリアゾール、グアニジン、ヒドラジド、アミノ酸等が挙げられ、さらにこれらの誘導体なども挙げられる。また、ポリアミン、たんぱく質なども挙げられる。
【0049】
脂肪族アミンとしては、例えば、ジメチルアミン、エチルアミン、1-アミノプロパン、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、アリルアミン、n-ブチルアミン、ジエチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、N,N-ジメチルエチルアミン、イソブチルアミン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。
【0050】
芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、N-メチルアニリン、ジフェニルアミン、N-イソプロピルアニリン、p-イソプロピルアニリン等が挙げられる。
アミノアルコールとしては、例えば、2-アミノエタノール、2-(エチルアミノ)エタノール、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-N-シクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタキス(2-ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミン等が挙げられる。
【0051】
イミダゾールとしては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’&#8212;メチルイミダゾリル-(1’)]&#8212;エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’&#8212;ウンデシルイミダゾリル-(1’)]&#8212;エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’&#8212;エチル-4’&#8212;メチルイミダゾリル-(1’)]&#8212;エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’&#8212;メチルイミダゾリル-(1’)]&#8212;エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン、2,4-ジアミノ-6-ビニル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-ビニル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-s-トリアジン、エポキシ&#8212;イミダゾールアダクト、2-メチルベンゾイミダゾール、2-オクチルベンゾイミダゾール、2-ペンチルベンゾイミダゾール、2-(1-エチルペンチル)ベンゾイミダゾール、2-ノニルベンゾイミダゾール、2-(4-チアゾリル)ベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾール等が挙げられる。
【0052】
さらには、イミダゾールジペプチドも挙げられ、カルノシン、アンセリン、バレニンおよびホモカルノシンが挙げられる。
【0053】
また、イミダゾールには、イミダゾールの炭素を使った環状構造をさらに有する化合物も含まれる。そのような化合物としては、例えばアデニンを含む化合物が含まれる。
アデニンを含む化合物は、その構造にアデニンを含むものを意味する。アデニンを含む化合物には、ヌクレオチド構造を有する化合物が包含され、ヌクレオチド構造を有する化合物としては、イノシン酸、グアニル酸、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)などが挙げられる。
【0054】
ベンゾトリアゾールとしては、例えば、2-(2’&#8212;ヒドロキシ-5’&#8212;メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’&#8212;ヒドロキシ-3’&#8212;tert-ブチル-5’&#8212;メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’&#8212;ヒドロキシ-3’,5’&#8212;ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’&#8212;ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’&#8212;メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール]、6-(2-ベンゾトリアゾリル)-4-tert-オクチル-6’-tert-ブチル-4’-メチル-2,2’-メチレンビスフェノール、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾール、2,2’&#8212;[[(メチル-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル]イミノ]ビスエタノール、1,2,3-ベンゾトリアゾールナトリウム塩水溶液、1-(1’,2’&#8212;ジカルボキシエチル)ベンゾトリアゾール、1-(2,3-ジカルボキシプロピル)ベンゾトリアゾール、1-[(2-エチルヘキシルアミノ)メチル]ベンゾトリアゾール、2,6-ビス[(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル]-4-メチルフェノール、5-メチルベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0055】
グアニジンとしては、例えば、カルボジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、1,3-ビス(ヒドラジノカルボノエチル)-5-イソプロピルヒダントイン、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、7,11-オクタデカジエン-1,18-ジカルボヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等が挙げられる。ヒドラジドとしては、例えば、ジシアンジアミド、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン等が挙げられる。
【0056】
アミノ酸としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン塩酸塩、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン一塩酸塩、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、β-アラニン、γ-アミノ酪酸、δ-アミノ吉草酸、ε-アミノヘキサン酸、ε-カプロラクタム、7-アミノヘプタン酸等が挙げられる。
【0057】
ポリアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、ジアミノヘプタン、ジアミノオクタン、ジアミノデカン、ジアミノドデカン等のジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の3価以上のアミンが挙げられ、さらには、プトレシン、カダベリン、スペルミジン、スペルミンなども挙げることができる。
【0058】
アミノ酸のポリマー、すなわち、タンパク質も本発明のトランジスタ型センサの検出対象物質である。タンパク質としては、例えば、コラーゲン、ケラチン、アルブミン、アポリポタンパク質、フェリチン、ヘモシデリン、アクチン、ミオシン、グロブリンが挙げられる。
【実施例
【0059】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0060】
合成例1
ククルビット[6]ウリル(以下CB[6]と称す。)二量体の合成
(第1工程)ビスイミダゾリニウム塩内包CB[6]-モノヒドロキシ体の合成
【化10】
【0061】
当該合成は、参考文献:Zhao,N.;Lloyd,G.O.;Scherman,O.A.Chem.Commun.2012,48(25),3070-3072.に則り、以下のように合成した。
【0062】
大気下、100mLの二口ナスフラスコに還流冷却器を取り付け、CB[6](0.5g,0.5mmol)、3,3’-(オクタン-1,8-ジイル)ビス(1-エチル-イミダゾリニウム)ブロミド(232mg,0.5mmol)、水(50mL)を入れ、85℃へ昇温し、1時間攪拌した。ある程度溶解したのを確認した後、ここに(NH(114mg,0.5mmoL)を加えた。12時間攪拌した後、室温に戻し、ロータリーエバポレーターにより水を留去した。得られた固体を水を展開溶媒として逆相カラムクロマトグラフィー(樹脂:三菱ケミカル製、CHP 20P)を用いて分離した。10mLずつ分画し、LC/MSにより目的物が存在するフラクションを選択し、ロータリーエバポレーターにより溶媒を除去して目的物である白色固体(収量:320mg,収率:43%)を得た。
【0063】
(第2工程)6,6’-ジスルファンジイルビス(ヘキサン-1-オル)の合成
【0064】
【化11】
【0065】
100mLの三口ナスフラスコに還流冷却器と滴下漏斗を取り付け、乾燥エタノール(25mL)、チオ尿素(1.25g,16.5mmol)、6-ブロモヘキサン-1-オル(2.71g,16.5mmol)を加え、70℃に昇温、30時間攪拌した。その後、50℃に降温し、水酸化ナトリウム(6g,150mmol)水溶液(18mL)を滴下し、大気解放して更に1日攪拌した。室温に戻した後、得られた褐色溶液をクロロホルム(45mL)、水(45mL)で分液操作を行い、水層をクロロホルムで抽出した。合わせた有機層を水(45mL)で3回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させて濾過し、濾液の有機溶媒をロータリーエバポレーターで除いて目的物として褐色オイル(収量:1.11g,収率28%)で得た。
H NMR (400 MHz, CDCl): δ 1.24&#8211;1.71 (m, 16H, (CH) 2.68 (t, J = 5.0 Hz, 4H, CH), 3.65 (t, J = 9.3 Hz, 4H, CH).
【0066】
(第3工程)1,2’-ビス(6-ブロモへキシル)ジスルファンの合成
【化12】
【0067】
50mLの三口フラスコに還流冷却器と滴下漏斗を取り付け、四臭化炭素(3.01g,9.08mmol)のテトラヒドロフラン溶液(6mL)に6,6’-ジスルファンジイルビス(ヘキサン-1-オル)(1.10g,4.13mmol)のテトラヒドロフラン溶液(6mL)を加えた。10分間攪拌した後、トリフェニルホスフィン(2.81g,10.73mmol)のテトラヒドロフラン溶液(10mL)を滴下して加え、40℃へ昇温した。この際、溶液の色が橙色から暗緑色へ変色するのが確認され、最後に懸濁液となった。2日間攪拌した後、懸濁液をクロロホルム(30mL)と水(30mL)を加えて分液操作を行い、水層をクロロホルム(20mL)で2回抽出して、有機層を水(20mL)で2回洗浄して硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥剤を濾別した後に、有機溶媒をロータリーエバポレーターにより除去して得られた粗生成物(5.21g)をクロロホルム:ヘキサン=1:4を展開溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。用いたシリカゲルは40gであった。溶媒を除去して目的化合物である淡黄色オイル(収量:862mg,収率:53%)を得た。
= 0.39. H NMR (400 MHz, CDCl): δ 1.25&#8211;1.44 (m, 8H, (CH) 1.69 (quint, J = 8.0 Hz, 4H, CH) 1.88 (quint, J = 5.8 Hz, 4H, CH), 2.69 (t, J = 5.8 Hz, 4H, CH&shy;), 3.41 (t, J = 5.8 Hz, 4H, CH).
【0068】
(第4工程)CB[6]二量体の合成
【化13】
【0069】
30mLの二口フラスコに窒素雰囲気下で、第1工程で得られたビスイミダゾリニウム塩内包CB[6]-モノヒドロキシ体(100mg,0.07mmol)を、ジメチルスルホキシド(7mL)に溶解させ、10分間攪拌した後、水素化ナトリウム(5.42mg,0.14mmol,オイル中含量60%)を加え、0℃へ冷却した。15分間攪拌した後、1,2’-ビス(6-ブロモへキシル)ジスルファン(53.11mg,0.14mmol)を加え、室温に戻した。1日攪拌した後、得られた白橙色懸濁液を1日静置すると沈殿が析出してきたのでこれを濾過して白色固体の目的物(収量:39mg,収率:25%)を得た。
【0070】
電極作製例1
自己組織化単分子膜電極(SAM処理済電極)の作製
ポリエチレンナフタレート基板をマスクで覆って金を100nm蒸着し、適当なサイズに切断、UV-オゾン処理を10分間行った。これを合成例1で合成したCB[6]二量体のメタノール溶液(0.3mM)に終夜浸漬して、自己組織化単分子膜電極(SAM処理済電極)を得た。CB[6]二量体のメタノール溶液で処理していないものを未処理電極とした。
【0071】
実施例1
SAM処理済電極を用いたトランジスタ型センサの製造
電極作製例1で得られたSAM処理済電極の検出電極を、図3に示した製造方法で得られたトランジスタのゲート電極に接続させることにより、本発明のトランジスタ型センサを製造した。なお、本実施例のトランジスタ型センサは、半導体パラメータアナライザのゲート端子(図示しない)を参照電極(Ag/AgCl)に接続させた。
【0072】
(カルノシン検出実験)
実施例1のトランジスタ型センサに備わる検出電極は、ガラスチューブの下部に配置し、そのチューブに緩衝液として10mMのHEPES、及び100mMのNaCl100mM水溶液を900μL入り、トランジスタを5回動作させてトランジスタ型センサを安定化させた後、同条件の測定を3回行った。
検知対象物質の所定量を徐々に滴下し、10分待機して測定を開始し、評価した。測定は、ソース-ドレイン電圧(VDS)を-1Vとし、ゲート電圧(V)を0.5~3Vとした。なお、緩衝液のpHは、7.4であった。
【0073】
安定化させたトランジスタ型センサの検出電極を備えたガラスチューブに、0μM~200μMの範囲で濃度を変更させたカルノシン溶液を滴下した。結果を図4図5に示す。図4では、濃度を増加させることにより、VGSが負の方向に移動することが分かった。また、図5から、カルノシンが比較的低濃度でも、カルノシンを含まない溶液に対して、閾値電圧シフト率が変化することがわかった。
【0074】
(アンセリン検出実験)
カルノシン検出実験と同様の実験装置を用いた。検知物質については、アンセリン溶液(1mM)をHEPES(10mM)とNaCl(100mM)緩衝溶液へ80μMとなるように加えて、3回実験を行った。ここで、Vth0とは、検知物質が入っていない時の閾値電圧であり、Vth80は、検知物質が80μMのときの閾値電圧である。結果を図6に示す。SAM処理済電極を用いた場合は、閾値電圧シフト量が大きく、検知物質が入っていない場合との差が明らかである。なお、バレニンについても、閾値電圧シフト率が変化しことを確認した。なお、緩衝液のpHは、7.4であった。
【0075】
(アミノ酸検出実験:中性条件下)
中性条件下で、アミノ基を有する検知対象化合物として図7に示す様なタンパク質を構成するアミノ酸20種類(アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン)の検出実験を行った。
実験装置はカルノシン検出実験と同様の実験装置を用いた。検知物質であるアミノ酸の溶液(1mM)をpH=7.4のHEPES(10mM)とNaCl(100mM)緩衝溶液900μLへ0.9、1.8、1.8、1.8、2.7、4.5、4.5、9、9、9、9μLと徐々に加えた。これにより検知濃度は1、3、5、7、10、15、20、30、40、50、60μMとなり、滴定プロットが描けるようになる。ここで、Vth0とは、検知物質が入っていない時の閾値電圧であり、Vthxは、検知物質濃度がxμMのときの閾値電圧である。結果を図8~11に示す。横軸は検知濃度、縦軸は閾値電圧のシフト率であり、いずれの実験でも各アミノ酸を検知できることを確認した。加えてアミノ酸の種類によってシフト率((Vthx-Vth0)/Vth0)の違い、すなわち検知強度の違いが現れている事を確認した。
【0076】
(アミノ酸検出実験:酸性条件下)
酸性条件下で、アミノ基を有する検知対象化合物として図7に示す様なタンパク質を構成するアミノ酸20種類(アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン)の検出実験を行った。
実験装置はカルノシン検出実験と同様の実験装置を用いた。検知物質であるアミノ酸の溶液(1mM)をpH=3の希塩酸900μLへ0.9、1.8、1.8、1.8、2.7、4.5、4.5、9、9、9、9μLと徐々に加えた。これにより検知濃度は1、3、5、7、10、15、20、30、40、50、60μMとなり、滴定プロットが描けるようになる。ここで、Vth0とは、検知物質が入っていない時の閾値電圧であり、Vthxは、検知物質濃度がxμMのときの閾値電圧である。結果を図12~15に示す。
図16に示す様にアミノ酸の種類によってはプロリンの様に中性条件下に比べて、酸性条件下ではシフト率、すなわち検知強度が上昇(中性条件下:(Vthx-Vth0)/Vth0=0.6、酸性条件下:(Vthx-Vth0)/Vth0=1.4)するもの、逆にアラニンの様に降下(中性条件下:(Vthx-Vth0)/Vth0=1.0、酸性条件下:(Vthx-Vth0)/Vth0=0.5)するものが見られた。この様な測定環境に応じたアミノ酸個々の検知強度の違いを交差的に利用する事により化学種の判別が今後は可能になる事が期待される。
【0077】
合成例2
ククルビット[7]ウリル(以下CB[7]と称す。)二量体の合成
合成例1におけるCB[6]の代わりにCB[7]を用いる以外は、合成例1の工程1乃至工程4に沿って同様の方法により、CB[7]二量体を得た。
【0078】
電極作製例2
自己組織化単分子膜電極(SAM処理済電極)の作製
電極作製例1において、CB[6]の代わりにCB[7]を用いた以外は、電極作製例1と同様の方法で、自己組織単分子膜電極(SAM処理済電極)を得た。
【0079】
実施例2
SAM処理済電極を用いたトランジスタ型センサの製造
電極作製例2で得られたSAM処理済電極の検出電極を、実施例1と同様の製造方法により、本発明のトランジスタ型センサを製造した。なお、本実施例のトランジスタ型センサは、半導体パラメータアナライザのゲート端子を参照電極(Ag/AgCl)に接続させた。
【0080】
(イノシン酸、グアニル酸、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)の検出実験)
イノシン酸、グアニル酸、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを、カルノシン検出実験と同様の実験装置を用いて検出実験を行った。実施例1のセンサ及び実施例2のセンサを用いて実施した。検知物質については、イノシン酸、グアニル酸、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドのそれぞれの溶液(1mM)をHEPES(10mM)とNaCl(100mM)緩衝溶液へ80μMとなるように加えて、それぞれ3回実験を行った。ここで、Vth0とは、検知物質が入っていない時の閾値電圧であり、Vth80は、検知物質が80μMのときの閾値電圧である。結果を図17、18に示す。実施例1のセンサ(図17)及び実施例2のセンサ(図18)のいずれも、閾値電圧シフト率が変化しことを確認した。なお、緩衝液のpHは、実施例1の装置の場合でも、実施例2の装置の場合でも7.4であった。
イノシン酸、グアニル酸、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドイノシン酸は、いずれも旨味成分であり、食品中の旨味成分の定性、定量が可能であることを示唆している。
【産業上利用可能性】
【0081】
本発明のトランジスタ型センサは、アミノ基を有する化合物を検出することができ、また、装置として非常に簡易であり、産業上利用可能性を有するものである。
【符号の説明】
【0082】
T 電界効果トランジスタ
D 検出電極
1 基板
2 ゲート電極
3 ゲート絶縁膜
4 ソース電極
5 ドレイン電極
6 バンク
7 有機半導体
8 封止膜
9 導線
10 検出電極基板
11 検出電極(延長ゲート)
12 参照電極
13 チューブ
14 自己組織化単分子膜

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18