(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】尿素誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 273/18 20060101AFI20240723BHJP
C07C 275/24 20060101ALI20240723BHJP
C07D 233/34 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
C07C273/18
C07C275/24
C07D233/34
(21)【出願番号】P 2020098490
(22)【出願日】2020-06-05
【審査請求日】2023-05-23
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「NEDO先導研究プログラム/未踏チャレンジ2050/排気ガス由来低濃度CO2の有用化製品への直接変換」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】松本 和弘
(72)【発明者】
【氏名】深谷 訓久
(72)【発明者】
【氏名】小泉 博基
(72)【発明者】
【氏名】崔 準哲
(72)【発明者】
【氏名】内田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】松本 清児
(72)【発明者】
【氏名】羽村 敏
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-137255(JP,A)
【文献】特開昭62-039560(JP,A)
【文献】特表2019-500356(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0099886(US,A1)
【文献】国際公開第2015/133247(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 273/
C07C 275/
C07D 233/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒の存在下、カルバミン酸塩を加熱することで、下記式(b)で表される構造を有する尿素誘導体を生成する反応工程を含み、
前記触媒が
ジブチルスズオキシド(Bu
2
SnO)、酢酸亜鉛、亜鉛(II)-1,10-フェナントロリン(phen)錯体、酢酸ニッケル、Ti(OMe)
4
、Ti(Cp)
2
Cl
2
、Ti(Cp)
2
(OTf)
2
、トリフルオロメタンスルホン酸ハフニウム(IV)(Hf(OTf)
4
)、アルカリ金属炭酸塩、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、及び1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エンからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、尿素誘導体の製造方法。
【化1】
(式(b)中、R
1はそれぞれ独立して水素原子または無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表し、R
2はそれぞれ独立して無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表す。ただし、2つのR
2が互いに連結して環を形成してもよい。)
【請求項2】
前記カルバミン酸塩が式(A-1)で表されるカルバミン酸塩であり、前記式(b)で表される構造を有する尿素誘導体が式(B-1)で表される尿素誘導体である、請求項1に記載の尿素誘導体の製造方法。
【化2】
(式(A-1)、(B-1)中、R
11はそれぞれ独立して水素原子または無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表し、R
21はそれぞれ独立して無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表す。)
【請求項3】
前記カルバミン酸塩が式(A-2)で表されるカルバミン酸塩であり、前記式(b)で表される構造を有する尿素誘導体が式(B-2)で表される尿素誘導体である、請求項1に記載の尿素誘導体の製造方法。
【化3】
(式(A-2)、(B-2)中、R
12は水素原子または無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表し、R
22は無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表し、R
32は水素原子または無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表す。)
【請求項4】
前記反応工程が非プロトン性極性溶媒の存在下で行われる、請求項1~
3のいずれか1項に記載の尿素誘導体の製造方法。
【請求項5】
溶媒中で、アミノ基含有有機化合物を二酸化炭素含有混合ガスと接触させることにより、前記カルバミン酸塩を生成するカルバミン酸塩生成工程を更に含み、前記二酸化炭素含有混合ガス中の二酸化炭素の体積が0.01%以上である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の尿素誘導体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿素誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
尿素誘導体は、医薬、農薬、各種ファインケミカルズ、およびこれらの合成原料として広範な用途を有する有用な化合物である。例えば、非プロトン性極性溶媒である、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンやN,N’-ジメチルプロピレンウレア等は、発がん性のあるHMPA(ヘキサメチルリン酸トリアミド)の代替溶媒として用いることができる。また、エチレンウレアは織物仕上材、塗料などに使用されている。また、医薬品の基本骨格としては、例えば、抗HIV薬の以下の構造の尿素誘導体が報告されている。
【化1】
【0003】
従来、工業的には、尿素誘導体はアミンと尿素又はホスゲンとの反応によって製造されている。しかしながら、尿素を使用した場合はアンモニウム塩が副生する。また、ハンドリングの観点から、ホスゲンを用いる合成法の代替が求められている。一方、尿素誘導体の合成方法として、カルボニル源としてのアミンとCO2との反応からin situ合成され
たカルバミン酸アンモニウム、当量のトリフェニルホスフィン、当量のトリクロロイソシアヌル酸(TCCA)を用いる多成分合成が検討されている(非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】S. S. E. Ghodsinia, B. Akhlaghinia, Phosphorus Sulfur Silicon Relat. Elem., 2016, vol.191, p.1-7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に報告されている方法はカルバミン酸塩を原料とするが、高価な試薬も使用し、化学量論反応を用いるものである。すなわち、当量の犠牲試薬が必要となる上、副生成物が大量に発生するなどの問題がある。
本発明は、カルバミン酸塩を原料として、犠牲試薬を必要としない触媒反応で尿素誘導体を製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、金属含有触媒または有機塩基触媒の存在下、カルバミン酸塩を加熱することで尿素誘導体が生成することを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下の具体的態様等を提供する。
[1] 触媒の存在下、カルバミン酸塩を加熱することで、下記式(b)で表される構造を有する尿素誘導体を生成する反応工程を含み、前記触媒が金属含有触媒または有機塩基触媒であることを特徴とする、尿素誘導体の製造方法。
【化2】
(式(b)中、R
1はそれぞれ独立して水素原子または無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表し、R
2はそれぞれ独立して無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表す。ただし、2つのR
2が互いに連結して環を形成してもよい。)
[2]前記カルバミン酸塩が式(A-1)で表されるカルバミン酸塩であり、前記式(b)で表される構造を有する尿素誘導体が式(B-1)で表される尿素誘導体である、[1]に記載の尿素誘導体の製造方法。
【化3】
(式(A-1)、(B-1)中、R
11はそれぞれ独立して水素原子または無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表し、R
21はそれぞれ独立して無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表す。)
[3]前記カルバミン酸塩が式(A-2)で表されるカルバミン酸塩であり、前記式(b)で表される構造を有する尿素誘導体が式(B-2)で表される尿素誘導体である、[1]に記載の尿素誘導体の製造方法。
【化4】
(式(A-2)、(B-2)中、R
12は水素原子または無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表し、R
22は無置換もしくは置換基を有する2価の炭化水素基を表し、R
32は水素原子または無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表す。)
[4]前記触媒が、チタン系触媒、スズ系触媒、ハフニウム系触媒、アルカリ金属系触媒、亜鉛系触媒、ニッケル系触媒、及び有機塩基からなる群より選択される少なくとも1種
である、[1]~[3]のいずれかに記載の尿素誘導体の製造方法。
[5]前記反応工程が非プロトン性極性溶媒の存在下で行われる、[1]~[4]のいずれかに記載の尿素誘導体の製造方法。
[6]溶媒中で、アミノ基含有有機化合物を二酸化炭素含有混合ガスと接触させることにより、前記カルバミン酸塩を生成するカルバミン酸塩生成工程を更に含み、前記二酸化炭素含有混合ガス中の二酸化炭素の体積が0.01%以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の尿素誘導体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、尿素誘導体を、カルバミン酸塩を原料として触媒反応により製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の詳細を説明するに当たり、具体例を挙げて説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り以下の内容に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。
【0009】
1.尿素誘導体の製造方法
本発明の一実施形態に係る尿素誘導体の製造方法は、触媒の存在下、カルバミン酸塩を加熱することで、下記式(b)で表される構造を有する尿素誘導体を生成する反応工程(以下、「反応工程」と略す場合がある。)を含み、前記触媒が金属含有触媒または有機塩基触媒であることを特徴とする。
【化5】
(式(b)中、R
1はそれぞれ独立して水素原子または無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表し、R
2はそれぞれ独立して無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表す。ただし、2つのR
2が互いに連結して環を形成してもよい。)
【0010】
カルバミン酸塩を加熱することで、下記式(b)で表される構造を有する尿素誘導体を生成する反応としては、具体的には、例えば、以下に示す反応が挙げられる。
【化6】
本発明の尿素誘導体の製造方法の反応機構は、例えば、反応基質としてN-(2-アンモニオエチル)カルバメートを用い、触媒として金属含有触媒を用いた場合、N-(2-アンモニオエチル)カルバメートは金属含有触媒の配位を受けることでカルボニル炭素の求電子性が増大し、そのカルボニル炭素へのアミン部位の求核攻撃が起こった後、脱水を経てエチレンウレアが生成すると考えられる(下記反応スキーム参照)。
【化7】
反応基質としてN-(2-アンモニオエチル)カルバメートを用い、触媒として有機塩基触媒を用いた場合、有機塩基触媒がN-(2-アンモニオエチル)カルバメートのアンモニウム部位を脱プロトン化させることで求核性が増大し、カルボニル炭素への求核攻撃が起こった後、脱水を経てエチレンウレアが生成すると考えられる(下記式反応スキーム参照)。
【化8】
【0011】
本実施形態に係る製造方法は、ホスゲンを用いる合成法の代替となり得る。また、後述するように、1級または2級のアミノ基を1つ以上有するアミノ基含有有機化合物と二酸化炭素とを反応させて得られるカルバミン酸塩を原料とすることで、二酸化炭素の有効利用にもつながり、温室効果ガスの排出削減に寄与できる。このようなカルバミン酸塩としては、具体的には、式(A-1)又は(A-2)で表されるカルバミン酸塩が挙げられる。
すなわち、本実施形態においては、前記カルバミン酸塩が式(A-1)又は(A-2)で表されるカルバミン酸塩であり、前記式(b)で表される構造を有する尿素誘導体が式(B-1)又は(B-2)で表される尿素誘導体であることが好ましい。
【化9】
式(A-1)、(B-1)中、R
11はそれぞれ独立して水素原子または無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表し、R
21はそれぞれ独立して無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表す。
【化10】
式(A-2)、(B-2)中、R
12は水素原子または無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表し、R
22は無置換もしくは置換基を有する2価の炭化水素基を表し、R
32は水素原子または無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表す。
【0012】
以下、「式(b)で表される構造を有する尿素誘導体」、「カルバミン酸塩」、「触媒」等について詳細に説明する。
【0013】
(式(b)で表される構造を有する尿素誘導体)
本発明の一実施形態に係る製造方法により、式(b)で表される構造を有する尿素誘導体が得られる。
【化11】
式(b)中、R
1はそれぞれ独立して水素原子または無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表し、R
2はそれぞれ独立して無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表す。ただし、2つのR
2が互いに連結して環を形成してもよい。
【0014】
(R1)
R1はそれぞれ独立して水素原子または無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表す。
本明細書において、「炭化水素基」とは、直鎖状の飽和炭化水素基に限られず、炭素-炭素不飽和結合、分岐構造、環状構造のそれぞれを有していてもよい。
R1の炭素数は特に限定されないが、通常1以上であり、また、通常30以下、好ましくは24以下、より好ましくは20以下である。
R1で表される無置換の炭化水素基としては、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-ドコシル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、4-フェナントリル基、9-フェナントリル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、4-ピレニル基、1-トリフェニレニル基、2-トリフェニレニル基等の芳香族炭化水素基;等が挙げられる。
R1で表される炭化水素基が置換基を有する場合、前記置換基としては、重水素原子;メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基等の炭素数3~4のシクロアルキル基;フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等の炭素数6~10の芳香族炭化水素基;フラニル基等の含酸素複素環基、チエニル基等の含硫黄複素環基、ピロリル基、ピリジル基等の含窒素複素環等の複素環基;水酸基;アルコキシ基等が挙げられる。したがって、R1で表される炭化水素基が置換基を有する場合、R1としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基等のアラルキル基;シクロヘキシルメチル基等のシクロアルキルアルキル基;フルフリル基等の含酸素複素環を有する炭化水素基;チエニルメチル基等の含硫黄複素環を有する炭化水素基;ピリジルメチル基等の含窒素複素環を有する炭化水素基等を好ましく挙げることができ、特に好ましくは、ベンジル基である。
なお、炭化水素基が置換基を有する場合、前記炭素数は、置換基の炭素数と炭化水素基の炭素数との合計の炭素数を意味する。
R1としては、尿素誘導体化合物の有用性の点から、水素が特に好ましい。
【0015】
(R2)
R2はそれぞれ独立して無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表す。ただし、2つのR2が互いに連結して環を形成してもよい。
R2の炭素数は特に限定されないが、通常1以上であり、また、通常30以下、好ましくは24以下、より好ましくは20以下である。
R2で表される無置換の炭化水素基としては、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-ドコシル基等のアル
キル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、4-フェナントリル基、9-フェナントリル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、4-ピレニル基、1-トリフェニレニル基、2-トリフェニレニル基等の芳香族炭化水素基;等が挙げられる。
R2で表される炭化水素基が置換基を有する場合、前記置換基としては、重水素原子;メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基等の炭素数3~4のシクロアルキル基;フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等の炭素数6~10の芳香族炭化水素基;フラニル基等の含酸素複素環基、チエニル基等の含硫黄複素環基、ピロリル基、ピリジル基等の含窒素複素環等の複素環基等が挙げられる。したがって、R2で表される炭化水素基が置換基を有する場合、R2としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基等のアラルキル基;シクロヘキシルメチル基等のシクロアルキルアルキル基;フルフリル基等の含酸素複素環を有する炭化水素基;チエニルメチル基等の含硫黄複素環を有する炭化水素基;ピリジルメチル基等の含窒素複素環を有する炭化水素基等を好ましく挙げることができ、特に好ましくは、ベンジル基である。
なお、炭化水素基が置換基を有する場合、前記炭素数は、置換基の炭素数と炭化水素基の炭素数との合計の炭素数を意味する。また、2つのR2が連結して環を形成していてもよいが、その環の炭素数は20以下となるものとする。環の炭素数は、好ましくは2以上であり、また、好ましくは10以下であり、より好ましくは7以下である。
R2としては、原料の入手の容易さの点から、ベンジル基が特に好ましい。また、R2が連結して環を形成している場合、尿素誘導体化合物の有用性の点から、エチレン基であることが好ましい。
【0016】
式(b)で表される構造を有する尿素誘導体としては、式(B-1)で表される化合物、式(B-2)で表される化合物が好ましい。
【化12】
式(B-1)中、R
11はそれぞれ独立して水素原子または無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表し、R
21はそれぞれ独立して無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表す。
式(B-2)中、R
12は水素原子または無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表し、R
22は無置換もしくは置換基を有する2価の炭化水素基を表し、R
32は水素原子または無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表す。
【0017】
(R11、R12、R32)
R11、R12、R32はそれぞれ独立して水素原子または無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表す。
R11、R12、R32の詳細は、上述のR1の説明が適用される。
【0018】
(R21)
R21はそれぞれ独立して無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表す。
R21の詳細は、上述のR2の説明が適用される。
【0019】
(R22)
R22は無置換もしくは置換基を有する2価の炭化水素基を表す。
2価の炭化水素基としては、メチレン基;エチレン基;炭素数3以上の直鎖状、分岐状若しくは環式のアルキレン基;又は炭素数6以上のアリーレン基等が挙げられる。
2価の炭化水素基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは2以上であり、また、好ましくは20以下であり、より好ましくは10以下である。また、2価の炭化水素基は不飽和結合を有していてもよい。なお、2価の炭化水素基が置換基を有する場合、2価の炭化水素基の炭素数は、置換基の炭素数も含めた炭素数を意味する。置換基としては、項目(R1)の説明で例示したものが挙げられる。
R22としては、具体的には、メチレン基、エチレン基、テトラメチルエチレン基、n-プロピレン基(トリメチレン基)、1-メチルプロピレン基、1,1-ジメチルプロピレン基、2-メチルプロピレン基、1,2-ジメチルプロピレン基、2,2-ジメチルプロピレン基、1,1,2-トリメチルプロピレン基、1,1,3-トリメチルプロピレン基、n-ブチレン基(テトラメチレン基)、2-メチル-1,4-ブチレン基、3-メチル-1,4-ブチレン基、2,2-ジメチル-1,4-ブチレン基、2,3-ジメチル-1,4-ブチレン、2,2,3-トリメチル-1,4-ブチレン基、n-ペンチレン基(ペンタメチレン基)、n-ヘキサニレン基(ヘキサメチレン基)等の鎖状炭化水素基;1,4-シクロへキシレン基等の脂環式炭化水素基、ベンゼン環から水素原子を2つ除いた1,4-フェニレン基、1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基;キシレンのベンゼン環から水素原子を2つ除いたジメチルフェニレン基(キシリル基)、トルエンのベンゼン環から水素原子を2つ除いたメチルフェニレン基(トリレン基)、ナフタレンから水素原子を2つ除いたナフタニレン基などの芳香族炭化水素基、1,4-フェニレンビス(メチレン)基、1,4-フェニレンビス(エチレン)基、ビフェニルの2つのベンゼン環から水素原子を1つずつ除いた基、ジフェニルメタンの2つのベンゼン環から水素原子を1つずつ除いた基等の脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基からなる二価の基が挙げられる。
【0020】
式(B-1)で表される化合物としては、具体的には、N,N’-ジエチル尿素、N,N’-ジ-n-プロピル尿素、N,N’-ジ-n-ブチル尿素、N,N’-ジ-t-ブチル尿素、N,N’-ジ-n-ペンチル尿素、N,N’-ジ-n-ヘキシル尿素、N,N’-ジ-n-オクチル尿素、N,N’-ジ-i-プロピル尿素、N,N’-ビス-(2-エチルヘキシル)尿素、N,N’-ジシクロヘキシル尿素、N,N’-ビス-(2-ヒドロキシエチル)尿素、N,N’-ビス-(3-ヒドロキシ-n-プロピル)尿素、N,N’-ビス-(2-ヒドロキシ-n-プロピル)尿素、N,N’-ビス-(2,3-ジヒドロキシ-n-プロピル)尿素、N,N’-ビス-(2-メトキシエチル)尿素、N,N’-ビス-(2-エトキシエチル)尿素、N,N’-ビス-(2-アミノエチル)尿素、N,N’-ジフェニル尿素、N,N’-ジベンジル尿素、N,N’-ビス-(2-フェニルエチル)尿素が挙げられる。本実施形態の製造方法は、特に、N,N’-ジ-t-ブチル尿素、N,N’-ジシクロヘキシル尿素、N,N’-ジベンジル尿素の製造に好適である。
また、式(B-2)で表される化合物としては、具体的には、エチレンウレア、N,N’-ジメチルプロピレンウレア、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等が挙げられる。本実施形態の製造方法は、特に、エチレンウレアの製造に好適である。
【0021】
(カルバミン酸塩)
反応工程におけるカルバミン酸塩の具体的種類は、特に限定されず、目的とする尿素誘導体に応じて適宜選択されるべきであるが、式(A-1)で表されるカルバミン酸塩および式(A-2)で表されるカルバミン酸塩が好ましく挙げられる。
【化13】
式(A-1)中、R
11はそれぞれ独立して水素原子または無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表し、R
21はそれぞれ独立して無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表す。
式(A-2)中、R
12は水素原子または無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表し、R
22は無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表し、R
32は水素原子または無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表す。
R
11、R
12、R
32の詳細は、「式(b)で表される構造を有する尿素誘導体」の項におけるR
11、R
12、R
32の説明が適用される。
R
21の詳細は、「式(b)で表される構造を有する尿素誘導体」の項におけるR
21の説明が適用される。
R
22の詳細は、「式(b)で表される構造を有する尿素誘導体」の項におけるR
22の説明が適用される。
【0022】
カルバミン酸塩の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、1級または2級のアミノ基を1つ以上有するアミノ基含有有機化合物、より具体的には、ベンジルアミン、ヘキシルアミン等の脂肪族モノアミン、エチレンジアミン等の脂肪族ジアミンと二酸化炭素との反応によって製造したものを用いることができる。また、反応に用いる二酸化炭素としては、純粋な二酸化炭素ガスを用いることができるが、分圧1気圧以下で二酸化炭素を含む混合ガス、例えば二酸化炭素含有率が体積比で0.01%以上の混合ガスを用いることもできる。
本発明の一実施形態においては、溶媒中で、アミノ基含有有機化合物を二酸化炭素含有混合ガスと接触させることにより、カルバミン酸塩を生成するカルバミン酸塩生成工程を更に含むことが好ましい。二酸化炭素含有混合ガス中の二酸化炭素の体積は、通常0.01%以上、好ましくは1%以上、より好ましくは15%以上であり、好ましくは50%以下である。カルバミン酸塩生成工程に用いられる溶媒としては特に限定されないが、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒を好ましく用いることができる。反応時間は、二酸化炭素含有混合ガス中の二酸化炭素分圧、反応スケールに応じて適宜調整すればよい。例えば、二酸化炭素含有混合ガス中の二酸化炭素の体積が15%の場合、アミノ基含有有機化合物1mmolを原料として、5分以上10分以内で反応させることで、収率80%以上でカルバミン酸塩を合成することができる。また、アミノ基含有有機化合物40mmolを用いる場合、180分程度の反応時間で90分以上の収率を達成可能である。生成したカルバミン酸塩は、ろ過によって容易に単離可能である。
【0023】
カルバミン酸塩生成工程として、具体的には、例えば以下のスキームで示す反応により、例えば99%以上という高収率でカルバミン酸塩を生成できることが確認できた。また、後述の実施例で示すように、低分圧二酸化炭素の混合ガスを用いた合成においても、単離収率93%という高収率でカルバミン酸塩が得られることがわかった。
【化14】
【0024】
これまでに、アミンと二酸化炭素を原料とした尿素誘導体の製造方法が報告されているが、高圧の二酸化炭素を用いる製造方法である(例えば、C. Wu, H. Cheng, R. Liu, Q. Wang, Y. Hao, Y. Yu, F. Zhao, Green Chem. 2010, 12, 1811-1816.)。また、常圧の二酸化炭素を利用して尿素誘導体を製造方法する方法も提案されている(例えば、M. J. Fuchter, C. J. Smith, M. W. S. Tsang, A. Boyer, S. Saubern, J. H. Ryan, A. B. Holmes, Chem. Commun.2008, 2152-2154.、M. T. Zoeckler, R. M. Laine, J. Org. Chem. 1983, 48, 2539-2543.、M. Xu, Andrew R. Jupp, D. W. Stephan, Angew. Chem. Int. Ed. 2017, 56, 14277-14281.)。
一方、本実施形態の製造方法では、二酸化炭素が低分圧の混合ガスも用いることができる。火力発電所の排気ガスは、通常約15%の二酸化炭素を含んでおり、このような二酸化炭素含有混合ガスを用いてカルバミン酸塩を製造し、尿素誘導体を製造する方法は、温室効果ガスの排出削減にも有効である。
【0025】
(触媒)
反応工程における触媒としては、金属含有触媒または有機塩基触媒が用いられる。
金属含有触媒としては、好ましくは、チタン系触媒、スズ系触媒、ジルコニウム系触媒、ハフニウム系触媒、パラジウム系触媒、アルミニウム系触媒、アルカリ金属系触媒および亜鉛系触媒が挙げられ、より好ましくは、チタン系触媒、スズ系触媒、ハフニウム系触媒、アルカリ金属系触媒が挙げられる。スズ系触媒としては、好ましくは、ジブチルスズオキシド(Bu2SnO)、ジブチルスズジアセテート(Bu2Sn(OAc)2)、ジブチルスズジラウレート(Bu2Sn(OOC(CH2)10CH3)2)、ジブチルスズジメトキシド(Bu2Sn(OMe)2)等の有機スズ化合物が挙げられる。チタン系触媒としては、好ましくは、Ti(OMe)4、Ti(Cp)2Cl2、Ti(Cp)2(OTf)2等のチタン錯体が挙げられる。ジルコニウム系触媒としては、例えば、Zr(Cp)2Cl2、Ti(Cp)2(OTf)2等のジルコニウム錯体が挙げられる。ハフニウム系触媒としては、好ましくは、ハフニウム(IV)エトキシド、ハフニウム(IV)イソプロポキシド、トリフルオロメタンスルホン酸ハフニウム(IV)(Hf(OTf)4)等の有機ハフニウム化合物;アセチルアセトナトハフニウム(IV)、ハフノセンジクロリド等のハフニウム錯体が挙げられる。パラジウム系触媒としては、テトラキス(アセトニトリル)パラジウム(II)ビス(テトラフルオロほう酸塩)([Pd(MeCN)4](BF4)2)、テトラキス(ペンゾニトリル)パラジウム(II)ビス(テトラフルオロほう酸塩)([Pd(PhCN)4](BF4)2)等のパラジウム錯体が挙げられる。アルミニウム系触媒としては、AlCl3、Al(OTf)3等が挙げられる。アルカリ金属系触媒としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム(K2CO3)、炭酸セシウム等のアルカリ金属炭酸塩が挙げられる。亜鉛系触媒としては、酢酸亜鉛等の有機亜鉛化合物;亜鉛(II)-1,10-フェナントロリン錯体等の亜鉛錯体が挙げられる。金属含有触媒は、例えば、2種以上の化合物から生成させて用いてもよい。例えば、酢酸亜鉛と1,10-フェナントロリンとを反応容器に投入し、亜鉛(II)-1,10-フェナントロリン(phen)錯体を形成して触媒として用いてもよい。金属含有触媒の中でも、特に好ましくは、Bu2SnO、Ti(OMe)4、Ti(Cp)2Cl2、Ti(Cp)2(OTf)2、Hf(OTf)4、K2CO3が挙げられる。
有機塩基触媒としては、好ましくは、アミン系触媒およびホスフィン系触媒が挙げられ、より好ましくは、アミン系触媒である。アミン系触媒としては、例えば、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1,5-
ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレンが挙げられる。ホスフィン系触媒としては、例えば、t-ブチルイミノ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホラン、フォスファゼン塩基P1-tBu-トリス(テトラメチレン)、フォスファゼン塩基P2-Et(P2-Et)、2,8,9-トリイソブチル-2
,5,8,9-テトラアザ-1-ホスファビシクロ[3.3.3]ウンデカン等が挙げられる
。
反応工程における触媒の使用量(仕込量)は、特に限定されず、目的とする尿素誘導体に応じて適宜選択されるべきであるが、カルバミン酸塩の物質量に対して、好ましくは10mol%以上、70mol%以下、より好ましくは50mol%以下である。また、触媒は1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0026】
(反応溶媒)
反応工程は、反応溶媒を使用してもよいし、使用しなくてもよいが、反応溶媒を使用することが好ましい。反応溶媒の種類は特に限定されないが、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルプロピレンウレア、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒;が好ましい。この中でも非プロトン性極性溶媒がより好ましく、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチル-2-ピロリドンがさらに好ましい。上記の反応溶媒を用いると、より効率良く尿素誘導体を製造することができる。また、溶媒の沸点と生成物の沸点は差が大きい場合には、容易に精製でき、溶媒の再利用も可能である。反応溶媒は1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
反応溶媒の使用量は、特に限定されず、目的とする尿素誘導体に応じて適宜選択することができる。
【0027】
(反応温度)
本実施形態はカルバミン酸塩を加熱することで、尿素誘導体を生成させる。反応工程の温度(「反応温度」と表記することがある。)は、通常140℃以上、好ましくは160℃以上、より好ましくは180℃以上であり、通常250℃以下、好ましくは200℃以下である。
【0028】
(反応時間)
反応時間は特に限定されず、反応温度、反応スケール等によって適宜調整すればよい。通常、30分以上、好ましくは1時間以上であり、また、通常48時間以下、好ましくは24時間以下、より好ましくは20時間以下である。
【0029】
(反応雰囲気)
反応工程の雰囲気は、空気雰囲気であってもよいし、或いは窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であってもよい。また、反応工程は加圧下および減圧下のいずれの条件下で行われてもよく、通常0.01atm以上、好ましくは0.05atm以上、より好ましくは0.1atm以上であり、通常10atm以下、好ましくは5atm以下、より好ましくは2atm以下である。
【0030】
(反応容器)
反応容器は、特に限定されず、連続プロセス若しくはバッチプロセスに応じて適宜選択されるべきである。本発明の一実施形態においては、連続プロセスとしてもよいし、バッチプロセスとしてもよい。バッチプロセスの場合、好ましくは密閉型の反応容器(密閉反応容器)を用い、より好ましくはカルバミン酸塩、触媒、反応溶媒の混合物と体積を等しくする密閉型の反応容器を用いる。
【0031】
(その他工程)
本実施形態に係る尿素誘導体の製造方法においては、上記反応工程の他、任意の工程を含んでいてもよい。任意の工程としては、(カルバミン酸塩)の項で説明したカルバミン酸塩生成工程や、尿素誘導体の純度を高めるための精製工程が挙げられる。精製工程にお
いては、ろ過、吸着、カラムクロマトグラフィー、蒸留等の有機合成分野で通常行われる精製方法を採用することができる。
【実施例】
【0032】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。化合物の確認は各種分光学的分析の解析により行った。具体的には、プロトン、炭素13核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR、13C-NMR)の解析により行った。核磁気共鳴スペクトルには、メシチレンを内部標準として用いた。
【0033】
<合成例1:N-ベンジルカルバミン酸ベンジルアンモニウムの合成>
【化15】
反応容器にベンジルアミン(40g,2.0mmol)、ヘキサン(1L)を加え、二酸化炭素/窒素混合ガス(v:v=15:85)を0.5L/minの流速で3時間通気させた。反応終了後、発生した白色沈殿をろ別し、ヘキサンで洗浄した後、真空乾燥することで、N-ベンジルカルバミン酸ベンジルアンモニウムを収率93%で得た。
【0034】
<合成例2:N-(2-アンモニオエチル)カルバメートの合成>
【化16】
反応容器にエチレンジアミン(3.0g,49.9mmol)、エタノール(30mL)を加え、二酸化炭素ガスを0.3L/minの流速で5分間通気させた。反応終了後、発生した白色沈殿をろ別し、エタノールで洗浄した後、真空乾燥することで、収率93%でN-(2-アンモニオエチル)カルバメートを得た。
【0035】
<実施例1>
【化17】
容積5mLの密閉反応容器に合成例1で得たN-ベンジルカルバミン酸ベンジルアンモニウム(608mg,2.34mmol)、ジブチルスズオキシド(100mg,0.4mmol)、アセトニトリル(4.3mL)を加え、180℃で1時間反応させた。反応終了後、エバポレーターで溶媒を除去し、シリカゲルカラムにてジクロロメタン/メタノール混合溶媒(v:v=98/2)を用いて精製した。エバポレーターで溶媒を除去し、ジクロロメタンとヘキサンを用いて再結晶を行うことで、収率47%でN,N’-ジベンジルウレアを得た。なお、表に示すように、精製前のN,N’-ジベンジルウレアの収率
は54%であった。収率はメシレン(50mg)を内部標準として用いた
1H NMRによって決定した。
【0036】
<実施例2、3>
反応時間を表1の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、N,N’-ジベンジルウレアを得た。収率を表1に示す。
【0037】
<実施例4>
ジブチルスズオキシドの使用量を表1の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、N,N’-ジベンジルウレアを得た。収率を表1に示す。
【0038】
<実施例5>
溶媒を表1の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、N,N’-ジベンジルウレアを得た。収率を表1に示す。
【0039】
<実施例6>
溶媒を使用しなかった以外は実施例1と同様にして、N,N’-ジベンジルウレアを得た。収率を表1に示す。
【0040】
<実施例7>
溶媒を表1の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、N,N’-ジベンジルウレアを得た。収率を表1に示す。
【0041】
<実施例8>
容積5mLの密閉反応容器に合成例1で得たN-ベンジルカルバミン酸ベンジルアンモニウム(517mg,2.00mmol)、ジブチルスズオキシド(50mg,0.20mmol)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI(登録商標))(4.5mL)を加え、170℃で15時間反応させた。反応終了後、N,N’-ジベンジルウレアの収率は59%であった。収率はメシレン(50mg)を内部標準として用いた1H NMRによって決定した。
【0042】
<実施例9~14>
触媒を表1の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、N,N’-ジベンジルウレアを得た。収率を表1に示す。
【0043】
<実施例15>
触媒を表1の通りに変更した以外は実施例8と同様にして、N,N’-ジベンジルウレアを得た。収率を表1に示す。
【0044】
【表1】
*単離収率(シリカゲルカラムクロマトグラフィー+再結晶)、phen = 1,10-フェナントロリン
【0045】
以上の結果から、スズ系触媒及びチタン系触媒は、尿素誘導体を特に高収率で与えることがわかった。また、アセトニトリル及び1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンを反応溶媒として用いた場合に、尿素誘導体を特に高収率で得られたことがわかった。
【0046】
<実施例16>
【化18】
容積5mLの密閉反応容器に合成例2で得たN-(2-アンモニオエチル)カルバメート(208mg,2.00mmol)、ジブチルスズオキシド(50mg,0.20mmol)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(4.5mL)を加え、170℃で15時間反応させた。反応終了後、エチレンウレアの収率は99%であった。収率はメシレン(50mg)を内部標準として用いた
1H NMRによって決定した。不溶沈殿をろ過で取り除いた後、溶媒を減圧留去し、得られた固体をヘキサン(50 mL)で洗浄することでエチレンウレアを無色固体として収率88%で得た。
【0047】
<実施例17>
溶媒を表2の通りに変更した以外は実施例16と同様にして、エチレンウレアを得た。収率を表2に示す。
【0048】
<実施例18>
反応時間を表2の通りに変更した以外は実施例16と同様にして、エチレンウレアを得
た。収率を表2に示す。
【0049】
<実施例19>
仕込み量を表2の通りに変更した以外は実施例16と同様にして、エチレンウレアを得た。収率を表2に示す。
【0050】
<実施例20>
触媒、反応時間を表2の通りに変更した以外は実施例16と同様にして、エチレンウレアを得た。収率を表2に示す。
【0051】
<実施例21>
触媒、溶媒、反応時間を表2の通りに変更した以外は実施例16と同様にして、エチレンウレアを得た。収率を表2に示す。
【0052】
<実施例22>
仕込み量、触媒、反応時間を表2の通りに変更した以外は実施例16と同様にして、エチレンウレアを得た。収率を表2に示す。
【0053】
<実施例23>
触媒、反応時間を表2の通りに変更した以外は実施例16と同様にして、エチレンウレアを得た。収率を表2に示す。
【0054】
<実施例24>
触媒、反応時間を表2の通りに変更した以外は実施例16と同様にして、エチレンウレアを得た。収率を表2に示す。なお、DBU(登録商標)は1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセンである。
【0055】
【表2】
**単離収率(溶媒留去後、ヘキサン洗浄)
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、カルバミン酸塩を原料として触媒反応で尿素誘導体を製造することができる。また、本発明は二酸化炭素を原料としてカルバミン酸塩を製造し、尿素誘導体を製造することも可能であり、二酸化炭素の有効活用を可能とする反応である。本発明によると、医薬品、工業的化成品などの各種用途に用いられ得る尿素誘導体が提供される。