IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人 東京大学の特許一覧 ▶ 三菱レイヨン株式会社の特許一覧

特許7527585共役高分子の製造方法、共役高分子、該共役高分子を含有する有機半導体デバイス用膜形成用インク、および有機半導体デバイス
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】共役高分子の製造方法、共役高分子、該共役高分子を含有する有機半導体デバイス用膜形成用インク、および有機半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/12 20060101AFI20240729BHJP
【FI】
C08G61/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020130678
(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公開番号】P2022026960
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 栄一
(72)【発明者】
【氏名】道場 貴大
(72)【発明者】
【氏名】尚 睿
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 済
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/065855(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/175665(WO,A1)
【文献】特開2009-158921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 61/00- 61/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ヘテロ環を含むモノマーを少なくとも1種以上用いて、カップリング反応により重合させる工程、を含む共役高分子の製造方法であって、
前記重合は、1種以上の二価または三価の鉄化合物、分子内に3つのリン原子を有する配位子である三価のリン化合物、及びトリアルキルアルミニウムの共存下、前記モノマーのカップリング反応を行う、共役高分子の製造方法。
【請求項2】
前記共役高分子が式(II)及び(IV)から選択される構造単位を有する、請求項1に記載の共役高分子の製造方法。
【化1】

(一般式(II)、(IV)中、AおよびBは、それぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香族ヘテロ環基を示し、Aは、置換基を有していてもよい芳香族環基、芳香族ヘテロ環基、アルケニル基、及びアルキニル基から選択され、y及びoは2以上の整数を示す。)
【請求項3】
前記カップリング反応において、-O-を有する溶媒、及び-C(=O)を有する溶媒、から選択される溶媒を用いる、請求項1又は2に記載の共役高分子の製造方法。
【請求項4】
前記溶媒が、THF、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、2-メチルテトラヒドロフラン(MTHF)、メチル-tert-ブチルエーテル(MTBE)、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、及びシクロヘキサノンから選択される、請求項3に記載の共役高分子の製造方法。
【請求項5】
前記溶媒が、ジケトン化合物を含有する、請求項3に記載の共役高分子の製造方法。
【請求項6】
前記三価のリン化合物は、下記式(V)の化合物を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の共役高分子の製造方法。
【化2】

(式(V)中、R、R、Rは、それぞれ独立に置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基を示し、A、B、C、Dはそれぞれ独立に有機基を示し、AとB、及びCとDはそれぞれ独立に連結基を介して環を形成してもよい。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄触媒を用いた共役高分子の製造方法に関し、さらに該共役高分子を含有する有機半導体デバイス用膜形成用インク、および有機半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
PLED、OLED、OFET、OPV、PSC、QD-LED、CMOSなどデバイ
スの有機半導体材料として、共役高分子が利用されており、中でも、共役高分子はp型高分子半導体として、フレキシブルデバイスやセンサーへの応用が注目されている。
【0003】
共役高分子の合成方法として、パラジウム触媒を用いてモノマーをカップリングさせるStilleカップリングが広く使われている。例えば、イミドチオフェン骨格とジチエノシクロペンタジエン骨格を有するコポリマーを、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)又はテトラキス(トリオルトトリルホスフィン)パラジウム(0)触媒を用いたクロスカップリング法によって得る方法が開示されている(特許文献1、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3参照)。また、1,4-ビス(2-チアゾリル)ベンゼン (BTB)をモノマーとし、パラジウム触媒によるC-H /C-Hカップリング反応により、共役高分子化を行う方法が開示されている(非特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2011/063534号
【非特許文献】
【0005】
【文献】Journal of the American Chemical Society(2011)、133(12)、4250-4253
【文献】Journal of the American Chemical Society(2011)、133(26)、10062-10065
【文献】Journal of Materials Chemistry(2011)、21(11)、3895-3902
【文献】ChemSusChem (2016)、9、2765-2768
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カップリング反応で用いるパラジウム金属触媒やカップリング前駆体に由来するスズは系中に残りやすく、得られる共役高分子に取り込まれる。これらの元素は、デバイスの性能および安全性に悪影響を及ぼす。しかしながら、上記記載の従来技術では、これらの元素の除去は難しく、かつ、貴金属を用いない触媒系で共役高分子を得る方法は知られていなかった。
【0007】
本発明の課題は、デバイスの性能および安全性に悪影響を及ぼし得る上記元素を用いることなく共役高分子を得る、新たな製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために、鋭意検討を行った結果、二価または三価の鉄化合物、三価のリン化合物、及びトリアルキルアルミニウムの共存下、芳香族ヘテロ環を有するモノマーのカップリング反応を行うことで、含有金属残存量を抑えたp型共役高分
子が得られることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は以下を要旨とする。
[1]芳香族ヘテロ環を含むモノマーを少なくとも1種以上用いて、カップリング反応により重合させる工程、を含む共役高分子の製造方法であって、
前記重合は、1種以上の二価または三価の鉄化合物、三価のリン化合物、及びトリアルキルアルミニウムの共存下、前記モノマーのカップリング反応を行う、共役高分子の製造方法。
[2]前記共役高分子が式(II)及び(IV)から選択される構造単位を有する、[1]に記載の共役高分子の製造方法。
【化1】
(一般式(II)、(IV)中、AおよびBは、それぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香族ヘテロ環基を示し、Aは、置換基を有していてもよい芳香族環基、芳香族ヘテロ環基、アルケニル基、及びアルキニル基から選択され、y及びoは2以上の整数を示す。)
[3]前記カップリング反応において、-O-を有する溶媒、及び-C(=O)を有する溶媒、から選択される溶媒を用いる、[1]又は[2]に記載の共役高分子の製造方法。[4]前記溶媒が、THF、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、2-メチルテトラヒドロフラン(MTHF)、メチル-tert-ブチルエーテル(MTBE)、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、及びシクロヘキサノンから選択される、[3]に記載の共役高分子の製造方法。
[5]前記溶媒が、ジケトン化合物を含有する、[3]に記載の共役高分子の製造方法。[6]前記三価のリン化合物は、下記式(V)の化合物を含む、[1]から[5]のいずれかに記載の共役高分子の製造方法。
【化2】
(式(V)中、R、R、Rは、それぞれ独立に置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基を示し、A、B、C、Dはそれぞれ独立に有機基を示し、AとB、及びCとDはそれぞれ独立に連結基を介して環を形成してもよい。)
[7]芳香族ヘテロ環を含むモノマーを構造単位とする共役高分子であって、該共役高分子中に含有される金属量が、100ppm以下である、共役高分子。
[8]式(VI)又は(VI’)を含む構造単位を、構造単位として有するp型共役高分子と、該p型共役高分子を溶解又は分散する溶剤と、を含有する、有機半導体デバイス用膜形成用インク。
【化3】
(式(VI)中、Xは、ジアルキル基を有する炭素、ジアルキル基を有するケイ素、ジアルキル基を有するゲルマニウム、または、モノアルキル基を有する窒素を示し、芳香族環の水素は任意の置換基で置換されていてもよいし、連結基を介して更に環を形成していてもよい。)
[9]前記式(VI)は式(VII)であり、前記式(VI’)は式(VII’)である、[8]に記載の有機半導体デバイス用膜形成用インク。
【化4】
(式(VII)中、Xは、式(VI)中のXと同様である。)
[10]前記p型共役高分子の重量平均分子量が、3.0×10~2.0×10であり、且つPDIが、2.0以下である、[8]又は[9]に記載の有機半導体デバイス用膜形成用インク。
[11]式(VI)又は(VI’)を含む構造単位を、構造単位として有するp型共役高分子を含む有機半導体デバイス膜、を備える有機半導体デバイス。
【化5】
(式(VI)中、Xは、ジアルキル基を有する炭素、ジアルキル基を有するケイ素、ジアルキル基を有するゲルマニウム、または、モノアルキル基を有する窒素を示し、芳香族環の水素は任意の置換基で置換されていてもよいし、連結基を介して更に環を形成していてもよい。)
[12]フォトディテクタである、[11]に記載の有機半導体デバイス。
[13]波長700~1200nmの光を検知するために用いる、[12]に記載のフォトディテクタ。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、貴金属触媒を用いることなく鉄触媒により共役高分子を得ることができる、新たな共役高分子の製造方法を提供できる。また、パラジウムのような共役高分子から除きにくい金属と異なり、鉄は後処理で容易に除去できることから、生成する共役高分子に含まれる残存金属量を抑えることが可能となり、太陽電池や近赤外センサー及びそれらのモジュール、即ち有機半導体デバイス用途に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。以下の記載は、本発明の実施形態の代表例であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に限定されない。
【0012】
本発明の一形態は、芳香族ヘテロ環を含むモノマーを少なくとも1種以上用いて、カップリング反応により重合させる工程、を含む共役高分子の製造方法である。そして、前記重合は、1種以上の二価または三価の鉄化合物、三価のリン化合物、及びトリアルキルアルミニウムの共存下、前記モノマーのカップリング反応を行う。
【0013】
<カップリング反応及びその触媒>
(1種以上の二価または三価の鉄化合物)
二価または三価の鉄化合物としては、反応中共存させる三価のリン化合物と活性錯体を形成できるものであれば特に限定されず、好ましくは混合しただけで、反応中共存させる三価のリン化合物と活性錯体を形成できるものである。
【0014】
例えば、ヨウ化鉄(II)、臭化鉄(II)、臭化鉄(II)水和物、臭化鉄(II)ジメトキシエタン付加体、臭化鉄(II)テトラヒドロフラン付加体、炭酸鉄(II)、2-エチルヘキサン酸鉄(III)、臭化鉄(III)、塩化鉄(II)、塩化鉄(II)四水和物、塩化鉄(III)、塩化鉄(III)六水和物、酢酸鉄(II)、アセチルアセトン鉄(III)、硝酸鉄(III)九水和物、シュウ酸鉄(II)ニ水和物、シュウ酸鉄(III)六水和物、過塩素酸鉄(III)水和物、リン酸鉄(III)水和物、イソプロポキシ鉄(III)、硫酸鉄(II)七水和物、シュウ酸鉄(III)水和物、
スルファミン酸鉄(II)、テトラフルオロホウ酸鉄(II)、トリス(2,4-ペンタンジオナト)鉄(III)、トリフルオロメタンスルホン酸鉄(II)、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト)鉄(III)などがあげられる。
【0015】
これらのうち好ましい鉄化合物は、基質依存性がないことから、ハロゲン化鉄である。
反応における鉄化合物の使用量は、芳香族ヘテロ環を含むモノマー1mоlに対し通常3mmоl以上であり、好ましくは5mmоl以上であり、また通常15mmоl以下であり、好ましくは10mmоl以下である。
【0016】
(三価のリン化合物)
三価のリン化合物は、上記鉄化合物との間で活性錯体を形成できるものであれば特段限定されないが、分子内に3つのリン原子を有する配位子であることが好ましく、下記式(V)で表されるものがより好ましい。
【化6】
【0017】
式(V)中、R、R、Rは、それぞれ独立に置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基を示し、A、B、C、Dはそれぞれ独立に有機基を示し、AとB、CとDはそれぞれ独立に連結基を介して環を形成してもよい。
【0018】
上記R、R、Rの脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、2-メチルプロピル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、ネオペンチル基、2-エチルブチル基、イソプロピル基、2-ブチル基、シクロヘキシル基、3-ペンチル基、tert-ブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、2-エチルヘキシル基、2-ブチルオクチル基等の直鎖状、分岐鎖状のアルキル基;2-プロペニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2,4-ペンタジエニル基等のアルケニル基;エチニル基等のアルキニル基が挙げられる。橋かけ環状脂肪族炭化水素として、例えば、有機化合物命名の手引き(化学同人刊、1990年)15頁~16頁に記載のものがあげられる。
【0019】
上記R、R、Rの芳香族炭化水素基としては、例えば、有機化合物命名の手引き(化学同人刊、1990年)7頁~14頁及び20頁~22頁に記載の芳香族炭化水素基があげられ、ヘテロ環芳香族炭化水素としては、例えば、有機化合物命名の手引き(化学同人刊、1990年)27頁~39頁に記載のヘテロ環芳香族炭化水素基が挙げられる。橋かけ芳香族炭化水素として、例えば、有機化合物命名の手引き(化学同人刊、1990年)17頁に記載のものがあげられる。
スピロ型脂肪族炭化水素またはスピロ型芳香族炭化水素として、例えば、有機化合物命名の手引き(化学同人刊、1990年)18頁~20頁に記載のものがあげられる。
【0020】
炭化水素基が有してもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アミノ基、アシル基、アミノアシル基、ウレイド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、イミド
基及びシリル基などが挙げられる。
【0021】
、R、Rは、具体的にはメチル基、エチル基などの炭素数1~15程度のアルキル基;
エチニル基、プロピレニル基などの炭素数2~10程度のアルケニル基;
アセチレニル基など炭素数2~10程度のアルキニル基;
フェニル基、ナフチル基などの炭素数6~20程度の芳香族炭化水素基;
チエニル基、フリル基、ピリジル基などの炭素数3~20程度の芳香族ヘテロ環炭化水素基;
メトキシ基,エトキシ基、プロポキシ基などの炭素数1~15程度のアルコキシ基;
フェノキシ基、ナフトキシ基などの炭素数6~20程度のアリールオキシ基;
ピリジルオキシ基、チエニルオキシ基などのなどの炭素数3~20程度のヘテロアリールオキシ基;
メチルチオ基、エチルチオ基などの炭素数1~15程度のアルキルチオ基;
フェニルチオ基、ナフチルチオ基などの炭素数6~20程度の芳香族炭化水チオ基;
ピリジルチオ基、チエニルチオ基などのなどの炭素数3~20程度の芳香族ヘテロ環炭化水素チオ基;
ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などの炭素数1~20程度の置換基を有していてもよいアミノ基;
アセチル基、ピバロイル基などの炭素数2~20程度のアシル基;
アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基などの炭素数2~20程度のアシルアミノ基;3-メチルウレイド基などの炭素数2~20程度のウレイド基;
メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基などの炭素数1~20程度のスルホンアミド基;
ジメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基などの炭素数1~20程度のカルバモイル基;
エチルスルファモイル基などの炭素数1~20程度のスルファモイル基;
ジメチルスルファモイルアミノ基などの炭素数1~20程度のスルファモイルアミノ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭素数2~6程度のアルコキシカルボニル基;
フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基などの炭素数7~20程度の芳香族炭化水素オキシカルボニル基;
ピリジルオキシカルボニル基などの炭素数6~20程度の芳香族ヘテロ環炭化水素オキシカルボニル基;
メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基などの炭素数1~6程度のアルキルスルホニル基;
ベンゼンスルホニル基、モノフルオロベンゼンスルホニル基などの炭素数6~20程度のアリールスルホニル基;
チエニルスルホニル基などの炭素数3~20程度のヘテロアリールオキシスルホニル基;フタルイミドなどの炭素数4~20程度のイミド基;又は、
アルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる置換基で3置換されているシリル基などが挙げられる。
【0022】
これらのうち好ましくは、Rは、ヘテロ原子を含む芳香族炭化水素基およびアルキニル基が好ましく、縮合環からなる芳香族ヘテロ環炭化水素基;ベンゾチエニル基、ベンゾフリル基、インドリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、単環芳香族または分岐鎖アルキル基を有するアルキニル基;フェニルエチニル基、メシチルエチニル基、t-ブチルエチニル基、1-アマダンチルエチニル基などが特に好ましい。
、Rは、単環からなる芳香族炭化水素基が好ましい。具体的には、フェニル基、
o-トリル基が好ましい。
A、B、C、Dは、リン化合物の安定性から、それぞれ独立に、AとBおよびCとDが互いに環を形成していることが好ましく、単環の芳香族環を形成していることがより好ましく、フェニル基を形成していることが特に好ましい。
【0023】
3価のリン化合物の分子量は特に限定されないが、通常500以上、好ましくは600以上であり、また通常1200以下、好ましくは1100以下である。
反応における3価のリン化合物の使用量は、鉄化合物1mоlに対し通常1.2倍等量以上であり、好ましくは1.5倍等量以上であり、また,鉄化合物に対し過剰量加えてもよいが,精製の効率性、反応溶液に撹拌効率の面から、通常2.0倍等量以下であり、好ましくは1.7倍等量以下である。
【0024】
3価リン化合物としては、以下の化合物が例示される。
【化7】
【0025】
【化8】
【0026】
(トリアルキルアルミニウム)
本実施形態ではトリアルキルアルミニウムの存在下、カップリング反応を行う。トリアルキルアルミニウムは、発火性が高いため、溶媒で希釈した試薬を用いることが取り扱いの観点から好ましい。具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウムなどがあげられ、特に好ましくは、取り扱いが容易なトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムである。
カップリング反応において用いるトリアルキルアルミニウムの量は適宜設定されるが、基質モノマーに対して、通常3.0モル等量以上であり、5.0モル等量以上であることが好ましく、また通常10.0モル等量以下であり、7.0モル等量以下であることが好ましい。
【0027】
(反応溶媒)
本実施形態で用いる反応溶媒は、少なくとも二種類以上の混合溶媒(主溶媒と補助溶媒)で行うことが好ましい。主溶媒としては、具体的には、トルエン、クロロベンゼン、キシレン、ODCBなどの芳香族系溶媒;ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンなどのハロゲン系溶媒;DMF、DMAなど、アミド系溶媒;などから選択できる。これらのうち、特に、溶解性の観点から、芳香族系溶媒が好ましい。これらの溶媒は単独でも2種以上を混合してもよく、例えば、基質等の溶解度が低い溶媒を用いる場合には、ハロゲン系溶媒やアミド系溶媒を組み合わせると反応収率が向上する。
【0028】
補助溶媒としては、少なくとも一種類の-O-を有する溶媒及び/又は-C(=O)を有する溶媒が選ばれることが好ましい。これらの溶媒は、カップリング反応を加速することから好ましい。具体的にはテトラヒドロフラン(THF)、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、メチル-tert-ブチルエーテル(MTBE)、ジオキサンの群より選ばれるエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンの群より選ばれるケトン系溶媒;があげられる。これらのうち、特に、リン化合物との相互作用の観点からTHFが好ましく、高沸点の観点からはMTBEが好ましい。
【0029】
(酸化剤)
本実施形態のカップリング反応は、炭素-水素結合活性化を経る酸化的カップリング反応であり、酸化剤を用いることが好ましい。酸化剤としては、二価の-C(=O)-C(=O)-を有するジケトン化合物が好ましく、具体的には、2,3-ブタンジオン、ピルビン酸、オキサミド、オキサミン酸、2,3-ペンタンジオン、2-オキソ酪酸、ピルビン酸メチル、1,2-シクロヘキサンジオン、3-メチル-1,2-シクロペンタンジオン、パラバン酸、3,4-ヘキサンジオン、2-オキソ酪酸メチル、ピルビン酸エチル、2-オキソ吉草酸、オキサミン酸エチル、N,N-ジメチルオキサミン酸、しゅう酸ジメチル、3,4-ジメチル-1,2-シクロペンタンジオン、2,3-ヘプタンジオン、5-メチル-2,3-ヘキサンジオン、4-メチル-2-オキソ吉草酸、3-メチル-2-オキソ吉草酸、3,3-ジメチル-2-オキソ酪酸、2-オキソ吉草酸メチル、オキサル酢酸、1-エチル-2,3-ジオキソピペラジン、オキサミン酸ブチル、2-オキソグルタル酸、しゅう酸ジエチル、1,2-インダンジオン、イサチン、1-フェニル-1,2-プロパンジオン、ベンゾイルぎ酸、トリフルオロピルビン酸メチル、2,4-ジオキソ吉草酸エチル、1,2-ナフトキノン、1-メチルイサチン、ベンゾイルぎ酸メチル、フェニルピルビン酸、2,3-ボルナンジオン、トリキノイル水和物、トリフルオロピルビン酸エチル、メソしゅう酸ジエチル、2-オキソグルタル酸ジメチル、ジメチルオキサロイルグリシン、N,N’-ジメトキシ-N,N‘-ジメチルオキサミド、ベンゾイルぎ酸エチル、4-ヒドロキシフェニルピルビン酸、オキサル酢酸ジエチル、フリル、1,1’-オキサリルジイミダゾール、メチルオキサル酢酸ジエチル、しゅう酸ジブチル、9,10-フェナントレンキノン、1,10-フェナントロリン-5,6-ジオン、ベンジル、3,5-ジ-tert-ブチル-1,2-ベンゾキノン、クロロオキサル酢酸ジエチル、1,3-ジフェニルプロパントリオン、しゅう酸ジフェニル、o-クロラニル、1,4-ビスベンジル、しゅう酸ビス(2,4-ジニトロフェニル)、しゅう酸ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)、などから選ばれる。
【0030】
これらの酸化剤のうち、適した酸化電位を有する観点からシュウ酸ジアルキルであることが好ましい。
カップリング反応において用いる酸化剤の量は適宜設定されるが、通常基質モノマーに対して、1.0モル等量以上であり、2.0モル等量以上であることが好ましく、また通常10.0モル等量以下であり、5.0モル等量以下であることが好ましい。
【0031】
(反応温度)
反応温度は,通常-5℃以上、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上で行われ、特に好ましくは25℃以上で行われ、反応の進行速度に応じて用いる溶媒の還流温度までの範囲で任意に設定可能である。反応が遅いときは、反応溶液中の超音波、オートクレーブ、マイクロ波を併用することも好ましい。反応時間は、通常30分以上36時間以下であるが用いる溶媒の種類や、その他の反応条件にも依存するので、任意に設定すればよい。また、反応の進行度合いは、分析GPCやHPLCを用いて確認することができる。反応終了後は、公知の単離・精製方法を用いて、目的とする共役高分子を得ることができる。反応後、鉄化合物を除去するために、希塩酸水溶液で抽出することが好ましい。
【0032】
(芳香族ヘテロ環を含むモノマー)
本実施形態の反応で用いるモノマーは、芳香族ヘテロ環を含むモノマーである。芳香族ヘテロ環としては、単環であってもよく、縮合環であってもよいが、少なくともモノマーにおいてカップリング反応を行う部位に水素原子を有する。
芳香族ヘテロ環を含むモノマーは、例えば以下の形態(式(I)-1~4)が挙げられる。なおAは芳香族ヘテロ環を表し、Bは芳香族環を表す。
・・・(I)-1
-B-A ・・・(I)-2
-B-B-A ・・・(I)-3
-A ・・・(I)-4
【0033】
式(I)-1から(I)-4中、芳香族ヘテロ環は、ピロール、フラン、チオフェン、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、イソオキサゾール、イソティアゾール、ピラゾール、1,3,4-チアジアゾール、1,2,3-チアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-トリアゾール、イソインドール、イソベンゾフラン、イソベンゾチオフェン、シロール、ゲルモール、などからなる5員環の芳香族ヘテロ環;ピリジン、ピリミジン、ピラジン、プリン、などからなる6員環の芳香族ヘテロ環があげられる。芳香族ヘテロ環は任意の置換基を有していてもよいが、カップリング反応を進行させる箇所には置換基は有さない。置換基は三価のリン化合物の説明の項目で挙げた置換基があげられる。
【0034】
式(I)-1から(I)-4中、芳香族環は、単環でも縮合環であってもよく、多環芳香族化合物を用いてもよい。例えば、シクロヘキサジエン、1,4-ジヒドロペンタレン、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フェナレン、テトラセン、クリセン、トリフェニレン、ピレン、ペンタセン、ベンゾ[a]ピレン、アヌレン、アズレン、シクロペンタジエニルアニオン、シクロヘプタトリエチルカチオン、トロポン、メタロセン、アセプレイアジレンなどがあげられる。芳香族環は任意の置換基を有していてもよく、置換基は三価のリン化合物の説明の項目で挙げた置換基があげられる。
【0035】
上記(I)-1から(I)-4の芳香族環は、単環または縮合環の脂肪族芳香族環、単環または縮合環の芳香族ヘテロ環、エチレン基などのアルケニル基、アセチレン基などのアルキニル基などで代替してもよい。
単環または縮合環の脂肪族芳香族環は、例えば、シクロヘキサジエン、1,4-ジヒドロペンタレン、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フェナレン、テトラセン、クリセン、トリフェニレン、ピレン、ペンタセン、ベンゾ[a]ピレン、アヌレン、アズレン、シクロペンタジエニルアニオン、シクロヘプタトリエチルカチオン、トロポン、メタロセン、アセプレイアジレンなどがあげられる。
【0036】
単環または縮合環の芳香族ヘテロ環は、ピロール、フラン、チオフェン、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、イソオキサゾール、イソティアゾール、ピラゾール、1,3,4-チアジアゾール、1,2,3-チアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-トリアゾール、イソインドール、イソベンゾフラン、イソベンゾチオフェン、シロール、ゲルモール、カルバゾール、3H-インドール、ベンゾフラン、ベンゾ[b]チオフェン、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1,2,3-ベンゾチアジアゾール、1,2,3-ベンゾオキサジアゾール、などからなる5員環のへテロ芳香族環;ピリジン、ピリミジン、ピラジン、プリン、4H-キノリジン、イソキノリン、キノリン、アクリジン、フェノチアジン、フェノオキサジン、フラタジン、キナゾリン、シンノリン、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、フェナジン、キノキサリン、フルオレン、5H-ジベンゾシロール,5H-ジベンゾゲルモール、などからなる6員環のへテロ芳香族環があげられる。また、上記(I)-1から(I)-4の芳香族環は、ビニレンあるいはエチニジルそれ自体で直接芳香族ヘテロ環と結合していてもよい。以下、上記(I)-1から(I)-4の芳香族ヘテロ環、及び芳香族環の例を示す。
【0037】
【化9】
【0038】
【化10】
【0039】
【化11】
【0040】
【化12】
【0041】
【化14】
【0042】
【化15】
【0043】
【化16】
【0044】
【化17】
【0045】
【化18】
【0046】
【化19】
【0047】
【化20】
【0048】
本実施形態の共役高分子の製造方法によって得られうる、共役高分子は、以下の式(II)及び(IV)から選択される構造単位を有する。
【化21】
【0049】
一般式(II)、(IV)中、AおよびBは、それぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香族ヘテロ環基を示し、Aは、置換基を有していてもよい芳香族環基、芳香族ヘテロ環基、アルケニル基、及びアルキニル基から選択され、y及びoは2以上の整数を示す。
【0050】
好ましい共役高分子の具体例を以下に示す。以下に示す共役高分子は、対応するモノマーを用いて、上述した方法により合成することができる。下式の共役高分子のうち、繰り返し単位を複数含むものについては、それぞれの繰り返し単位の数の比率は特に限定されない。
【0051】
【化22】
【0052】
【化23】
【0053】
【化24】
【0054】
【化25】
【0055】
<共役高分子>
以下、本実施形態に係る共役高分子の製造方法により得られる共役高分子について説明する。共役高分子はp型半導体として機能し、有機デバイス用の材料として好適である。
共役高分子の重量平均分子量(Mw)は、通常1×10以上、さらに好ましくは3×10以上、よりさらに好ましくは5.0×10以上、特に好ましくは7.0×10以上である。一方、好ましくは5.0×10以下、より好ましくは3.0×10以下、さらにより好ましくは2.0×10以下、さらに好ましくは1.5×10以下である。光吸収波長の長波長化や高吸光度化の点でこの範囲が好ましい。また、光電変換素子の材料に用いた際に変換効率が向上する点でこの範囲が好ましい。
【0056】
共役高分子の数平均分子量(Mn)は、通常1.0×10以上、好ましくは2.0×10以上、よりさらに好ましくは3.0×10以上、殊更に好ましくは4.0×10以上である。一方、好ましくは3.0×10以下、より好ましくは2.0×10以下、さらに好ましくは1.5×10以下である。光吸収波長を長波長化するという観点、及び高い吸光度を実現するという観点から、数平均分子量がこの範囲にあることが好ましい。また、光電変換素子の材料に用いた際に変換効率が向上する点でこの範囲が好ましい。
【0057】
共役高分子の分子量分布(PDI、(重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)))は、通常1.0以上、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.3以上である。一方、好ましくは、5.0以下、より好ましくは4.0以下、さらに好ましくは3.0以下であり、特に好ましくは、2.0以下である。共役高分子の溶解度が塗布に適した範囲になりうるという点で、分子量分布がこの範囲にあることが好
ましい。
【0058】
共役高分子の重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により求めるものとする。具体的には、カラムとして、Shim-pac GPC-803、GPC-804(島津製作所製、内径8.0mm、長さ30cm)をそれぞれ1本ずつ直列に繋げて用い、ポンプとしてLC-10AT、オーブンとしてCTO-10A、検出器として示差屈折率検出器(島津製作所製:RID-10A)、及びUV-vis検出器(島津製作所製:SPD-10A)を用いることにより測定できる。測定対象の共役高分子をクロロホルムに溶解させ、得られた溶液5μLをカラムに注入する。移動相としてクロロホルムを用い、1.0mL/minの流速で測定を行なう。解析にはLC-Solution(島津製作所)を用いる。
【0059】
共役高分子の光吸収極大波長(λmax)は、通常470nm以上、好ましくは480nm以上にあり、一方、通常1200nm以下、好ましくは1000nm以下、より好ましくは900nm以下にある。また、半値幅は通常10nm以上、好ましくは20nm以上であり、一方、通常300nm以下である。共役高分子を太陽電池用途に用いる場合、共役高分子の吸収波長領域は太陽光の吸収波長領域に近いほど望ましい。
【0060】
共役高分子の溶解度は、特に限定は無いが、好ましくは25℃におけるクロロベンゼンに対する溶解度が通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上であり、一方、通常30重量%以下、好ましくは20重量%である。溶解性が高いことは、十分な厚さの膜を製膜することができるため好ましい。
【0061】
共役高分子中の不純物は極力少ないほうが好ましい。特に、パラジウム、ニッケル、銅、鉄などの遷移金属触媒が残存すると、遷移金属の重原子効果による励起子トラップが生じるために電荷移動を阻害され、結果として光電変換素子に用いた際の光電変換効率を低下させるおそれがある。遷移金属触媒の濃度は、共役高分子1gあたり、通常1000ppm以下、好ましくは500pm以下、より好ましくは100ppm以下であり、残存金属が0ppm、すなわち検出限界以下であることが好ましい。一方で金属を含有する場合、通常0ppm以上であり、0ppmより大きくてよく、好ましくは1ppm以上、より好ましくは3ppm以上である。
特に、鉄含有量が100ppm以下であることが好ましい。共役高分子中の鉄などの金属含有量は、反応を行って得られた共役高分子を、希塩酸水溶液で抽出することで、低減させることができる。
【0062】
ICP質量分析法は、公知文献(「プラズマイオン源質量分析」(学会出版センター))に記載されている方法により実施できる。具体的には、パラジウム、ニッケル、銅、鉄などについては、試料を湿式分解後、分解液中のPd,SnをICP質量分析装置(Agilent Technologies社製 ICP質量分析装置 7500ce型)を用いて検量線法により定量することができる。
【0063】
<反応条件>
本実施形態におけるカップリング反応の反応条件は特に限定されず、既知の反応条件を用いることができる。好ましい反応温度は、共溶媒であるケトン系溶媒の沸点温度が好ましく、さらに温度を上げる場合は、オートクレーブ中で150℃以下の反応温度で行うこともできる.反応時間は1時間以上24時間以下であることが好ましい。反応時間は、反応中に分子量分布を測定しながら、分子量分布が好ましい範囲になった時に、反応終点とすればよい。
【0064】
<有機半導体デバイス用膜形成インク>
本発明の別の実施形態は、上記共役高分子(p型共役高分子とも称する)と、該p型共役高分子を溶解又は分散する溶剤と、を含有する、有機半導体デバイス用膜形成用インクである。本実施形態のインクを、常法により基板等に塗布することで、有機半導体デバイスに用いることが可能なp型半導体膜を形成することができる。
【0065】
p型共役高分子は、以下の式(VI)又は(VI’)を含む構造単位を、構造単位として有するp型共役高分子であることが好ましい。
【化26】
【0066】
式(VI)中、Xは、ジアルキル基を有する炭素、ジアルキル基を有するケイ素、ジアルキル基を有するゲルマニウム、または、モノアルキル基を有する窒素を示し、芳香族環の水素は任意の置換基で置換されていてもよいし、置換によって連結基を介して更に環を形成していてもよい。
【0067】
上記式(VI)は式(VII)であり、前記式(VI’)は式(VII’)であることが好ましい。
【化27】
なお、式(VII)中、Xは、式(VI)中のXと同様である。
【0068】
有機半導体デバイス用膜形成インクに用いられるp型共役高分子は、重量平均分子量(Mw)が、3.0×10~2.0×10であり、且つPDIが、2.0以下であることが好ましい。重量平均分子量(Mw)は、5.0×10~1.5×10であることがより好ましい。
【0069】
<デバイス>
本発明の別の実施形態は、上記共役半導体を含む有機半導体デバイス膜を備える有機半
導体デバイスである。
有機半導体デバイスの種類は特に制限されず、PLED、OLED、OFET、OPV、PSC、QD-LED、CMOSなどが挙げられる。
有機半導体デバイスがOLED、OPV、CMOSなどに用いられる光電変換素子の場合、光電変換素子の構造は、例えば特開2007-324587号公報の記載などを参照することができ、特段限定されず、例えば、透明基板上に、透明電極、電子輸送層、活性層(光電変換層)、正孔輸送層、及び金属電極の順に積層された構造であってよく、透明基板上に、透明電極、正孔輸送層、活性層(光電変換層)、電子輸送層、及び金属電極の順に積層された構造であってもよい。
【0070】
透明電極は、450nm以上の可視光において、平均透過率が80%以上である材料からなる電極である。透明電極を形成する材料としては、透明電極を形成できれば特段の制限はないが、スズをドープしたインジウム酸化物(ITO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO),亜鉛をドープしたインジウム酸化物(IZO)、タングステンをドープしたインジウム酸化物(IWO)、亜鉛とアルミニウムとの酸化物(AZO)、酸化インジウム(In)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO),酸化スズ(SnO),等があげられる。
【0071】
金属電極は、上記透明電極と対をなす電極である。金属電極を構成する材料としては特段限定されず、金、白金、銀、アルミニウム、ニッケル、チタン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウム、クロム、銅、コバルトの等の金属又はその合金が挙げられる。
金属電極が透明電極である形態、すなわち一対の電極が透明電極であることが好ましい。この場合、金属電極は、上記透明電極を形成する材料で形成され、一対の電極が同じ材料から形成されていてもよく、異なっていてもよい。
金属電極の膜厚は、特に限定されず、透明性を出したい場合には通常10nm程度であればよい。一方、透明性を求めないのであれば、耐久性等を考慮して40nm以上、さらに好ましくは、100nm以上にしてもよい。
【0072】
電子輸送層及び正孔輸送層の構成部材及びその製造方法について特段の制限はなく、周知技術を用いることができる。例えば、国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012-191194号公報等の公知文献に記載の部材及びその製造方法を使用することができる。
本実施形態のp型半導体と併せて用いn型半導体も特段限定されず、既知のn型半導体を用いることができる。
【0073】
有機半導体デバイスが光電変換素子である場合、光電変換素子は、フォトディテクタとしてPLED、OPV、光センサー、撮像素子に備えられ、使用される。その場合の光センサー及び撮像素子の構成は、既知のものを適用すればよい。
【0074】
本実施形態に係る有機半導体デバイスは、p型有機半導体に適切なn型有機半導体と組み合わせて活性層を形成することで、700~1200nmにおける外部量子効率(EQE)を少なくともその一部の波長で50%以上とすることができ、より好ましくは波長940nmにおけるEQEが50%以上、さらに好ましくは700~1200nmの全ての波長でEQEを50%以上とすることができる。
このような活性層を有する有機半導体デバイス(光電変換素子)を用いることで、波長700~1200nmの光を検知するために用いるフォトディテクタを得ることができる。
【実施例
【0075】
以下に、実施例により本発明の実施態様を説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらに限定されるものではない。なお、本実施例に記載の項目は以下の方法によって測定した。モノマーは,Lumtec社品を用いた。
【0076】
[重量平均分子量(Mw)、及び分子量分布(PDI)測定]
コポリマーの重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(PDI)は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により求めた。具体的には、カラムとして、Shim-pac GPC-803、GPC-804(島津製作所製,内径8.0mm,長さ30cm)をそれぞれ1本ずつ直列に繋げて用い、ポンプとしてLC-10AT、オーブンとしてCTO-10A、検出器として示差屈折率検出器(島津製作所製:RID-10A)、及びUV-vis検出器(島津製作所製:SPD-10A)を用いた。測定のために、測定対象の共役高分子をクロロホルムに溶解させ、得られた溶液5μLをカラムに注入した。移動相としてクロロホルムを用い、1.0mL/minの流速で測定を行った。解析にはLC-Solution(島津製作所)を用いた。
マススペクトルは、島津製作所製LCMS-IT-TOFのAPCI法(大気圧化学イオン化法)により同定した。
【0077】
<実施例1>
【化28】
シュレンク管にDTC-monomer(114mg,0.20mmol)とリン配位子L1(10mg,0.015mmol)をくわえ、シュレンク管を真空引きし、アルゴン置換した。これに、塩化鉄(III)六水和物THF溶液(0.033mol/L,0.30mL,0.010mmol)とAlMeトルエン溶液(2.0mol/L,0.30mL,0.60mmol)を加えた。続けて、シュウ酸ジエチル(54μL,0.40mmol)を加え、反応溶液を凍結脱気した後、再度アルゴン置換した。反応溶液を、500rpm回転下、24時間70℃で加熱した後、反応用液にTHF1mLを加え希釈した。さらにHCl(4mol/L,0.50mL)ジオキサン溶液を加え、1h撹拌した。反応溶液を遠心分離管に移し、THFを5mLと水10mLを加えると沈殿が生成した。これを4000rpm、10分で遠心分離し溶液を除き、THF/水(1:1,15mL)を再度加え、4000rpm、10分で遠心分離し溶液を除いた。さらにメタノール10mL加え、4000rpm、10分で遠心分離し溶液を除いた。得られた固体を真空下、120℃で12時間加熱した。得られたDTC-polymerの重量平均分子量Mwは2.5×10であり、PDIは1.69で、収率は94%であった。また、高分子中の鉄の含有量は13ppmであった。
【0078】
<実施例2>
【化29】
DTC-monomerの代わりに、F8T2-monomerを用いた他は、実施例
1と同様に反応を行った。得られたF8T2-polymerの重量平均分子量Mwは3.2×10であり、PDIは1.97で、収率は96%であった。また、高分子中の鉄の含有量は19ppmであった。
【0079】
<実施例3>
【化30】
DTC-monomerの代わりに、BTD-monomerを用いた他は、実施例1と同様に反応を行った。得られたF8T2-polymerの重量平均分子量Mwは2.5×10であり、PDIは1.88で、収率は92%であった。また、高分子中の鉄の含有量は17ppmであった。
【0080】
<実施例4>
【化31】

L1の代わりに、L2を用いた他は、実施例1と同様に反応を行った。得られたDTC-polymerの重量平均分子量Mwは2.1×10であり、PDIは1.76で、収率は88%であった。また、高分子中の鉄の含有量は15ppmであった。
【0081】
<実施例5>
【化32】
L1の代わりに、L3を用いた他は、実施例1と同様に反応を行った。得られた二量体は、収率96%であった。
【0082】
<実施例6>
【化33】
DTC-monomerの代わりに、BTB-monomerを用いた他は、実施例1と同様に反応を行った。得られたTPD-polymerの重量平均分子量Mwは3.1×10であり、PDIは1.76で、収率は94%であった。また、高分子中の鉄の含有量は20ppmであった。
【0083】
<比較例1>
【化34】
BTB-monomer(0.50g,0.20mmol)、塩化パラジウム(3.5mg,0.020mmol,10mol%)、炭酸セシウム(32.5mg,0.10mmol,0.50equiv)、ピバル酸(4.1mg,0.040mmol,0.20equiv)、無水ジメチルアセトアミド(1.0mL)、無水DMSO(0.10mL)をシュレンク管に入れ、酸素置換した。反応溶液を室温で10分撹拌したのち、115℃で48時間加熱撹拌した。室温まで冷却し、水50mLを加え、クロロホルム(50mL)で抽出した。有機層を減圧下、濃縮させた。得られた粗生成物を再度、少量のクロロホルムに溶かし、100mLのメタノールに注ぎ、生成した沈殿を濾過した。ソックスレイ法により低分子量体をメタノール、続いて、ヘキサンで除去した後、得られた固体をクロロホルムに溶かし、メタノールに注ぎ、得られた沈殿をろ取し、減圧下60℃で12時間乾燥した。得られたTPD-polymerの重量平均分子量Mwは1.1×10であり、PDIは1.50で、収率は88%であった。また、高分子中のパラジウムの含有量は1340ppmであった。
【0084】
<比較例2>
【化35】
L1の代わりにR1を用いた他は、実施例1と同様に反応を行った。しかし反応は未反応であった。
【0085】
<比較例3>
【化36】
L1の代わりにR2を用いた他は、実施例1と同様に反応を行った。しかし反応は未反応であった。
【0086】
<比較例4>
【化37】
L1の代わりにR3を用いた他は、実施例1と同様に反応を行った。しかし反応は未反応であった。
【0087】
(まとめ)
比較例1に示すように、公知のパラジウム触媒を用いたCH/CHカップリング反応で得られた共役高分子の重量平均分子量Mwは1.1×10にとどまった。さらに,得られた高分子中へのパラジウム金属の残存は、1340ppmと高い値を示した。
また、比較例2から4は鉄触媒を用い、反応条件は実施例と同じとし、リン化合物のみ代表的なリン配位子に変えた場合を示した。比較例2から4では反応が全く進まず、原料回収の結果を与えた。
【0088】
実施例1から4及び6に示すように、3価リン化合物のうち、3つのうち2つはトリフェニルホスフィンを有し、かつ、もう1つはヘテロ芳香族置換基、あるいは置換アセチレン基を有する3価リン化合物が、鉄触媒の配位子として、CH/CHカップリングによる高分子化が進行することがわかる。前出のホスフィン四座配位子で反応が進行しない理由は、鉄の配座を四つも埋めてしまい、残りが二つしかなく、基質が鉄中心に近づくことができないからだと考えられるのに対し、特定のリン化合物が選ばれる理由としては、ヘテロ環やアルキンにより、配位子のオルトC-H活性化が抑えられ、かつ、立体障害が小さいことにより、高分子化が進み、最適な新規鉄触媒系が構築できているものと考えられる。
【0089】
さらに、共役高分子の重量平均分子量Mwは新規鉄触媒系で、2.0×10以上であり、鉄触媒による高分子化の有用性をしめしている。また、高分子中の鉄の残存は20ppm以下と非常に押さえられ、例示化合物1のパラジウム金属は、高分子中に870ppm残存に比べ、鉄触媒の除去が容易であることも示している。このことから、通常残存金属により多層薄膜デバイス中で、正孔、電子がトラップされるのを抑える効果も期待できる。