(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】光学特性測定方法および光学特性測定装置
(51)【国際特許分類】
G01M 11/00 20060101AFI20240813BHJP
G01M 11/02 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
G01M11/00 G
G01M11/00 Q
G01M11/02 H
G01M11/02 K
G01M11/02 N
(21)【出願番号】P 2021069600
(22)【出願日】2021-04-16
【審査請求日】2023-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】中村 篤志
(72)【発明者】
【氏名】古敷谷 優介
(72)【発明者】
【氏名】本田 奈月
(72)【発明者】
【氏名】大橋 正治
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-053517(JP,A)
【文献】特開2011-038907(JP,A)
【文献】特開2015-230263(JP,A)
【文献】特開2019-105530(JP,A)
【文献】米国特許第04838690(US,A)
【文献】特開平10-160636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00 - G01M 11/02
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
純石英シングルコアファイバの光学特性を測定する光学特性測定方法であって、
互いのモードフィールド径、コア径、比屈折率差、実効断面積及びカットオフ波長が異なり、かつ、前記モードフィールド径、前記コア径、前記比屈折率差、前記実効断面積及び前記カットオフ波長が既知である第1の純石英シングルコアファイバと第2の純石英シングルコアファイバとを直列に接続し、前記第2の純石英シングルコアファイバの未接続の端に一又は複数の純石英シングルコアファイバを直列に接続し、光ファイバ伝送路を形成すること、
前記光ファイバ伝送路の一端から第1の試験光パルスを入力すること、
前記一端からの距離に関して、前記第1の試験光パルスによる後方散乱光強度の分布を測定すること、
前記光ファイバ伝送路の他端から第2の試験光パルスを入力すること、
前記一端からの距離に関して、前記第2の試験光パルスによる後方散乱光強度の分布を測定すること、
前記第1の純石英シングルコアファイバの任意の1点、前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点及び前記一又は複数の純石英シングルコアファイバの所望の1点のそれぞれについて、対数スケールで表示した前記第1の試験光パルスによる後方散乱光強度及び前記第2の試験光パルスによる後方散乱光強度の相加平均強度を算出すること、
3つの前記相加平均強度と、前記第1の純石英シングルコアファイバ及び前記第2の純石英シングルコアファイバのそれぞれのモードフィールド径、コア径、比屈折率差、実効断面積又はカットオフ波長とから、前記一又は複数の純石英シングルコアファイバのモードフィールド径、コア径、比屈折率差、実効断面積、カットオフ波長及び波長分散の少なくとも1つを算出すること、
を行う光学特性測定方法。
【請求項2】
数C1を用いて前記一又は複数の純石英シングルコアファイバのモードフィールド径を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の光学特性測定方法。
【数C1】
ただし、zは前記一端から前記所望の1点までの距離、z
0は前記一端から前記第1の純石英シングルコアファイバの任意の1点までの距離、z
1は前記一端から前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点までの距離であり、
λは波長であり、
I
n(λ、z)は前記所望の1点に関しての規格化後相加平均強度、I
n(λ、z
1)は前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点に関しての規格化後相加平均強度であり、
w(λ、z)は前記所望の1点に関してのモードフィールド径、w(λ、z
0)は前記第1の純石英シングルコアファイバの任意の1点に関してのモードフィールド径、w(λ、z
1)は前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点に関してのモードフィールド径である。
【請求項3】
数C2を用いて前記一又は複数の純石英シングルコアファイバの比屈折率差を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の光学特性測定方法。
【数C2】
ただし、zは前記一端から前記所望の1点までの距離、z
0は前記一端から前記第1の純石英シングルコアファイバの任意の1点までの距離、z
1は前記一端から前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点までの距離であり、
λは波長であり、
I
n(λ、z)は前記所望の1点に関しての規格化後相加平均強度、I
n(λ、z
1)は前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点に関しての規格化後相加平均強度であり、
Δ(λ、z)は前記所望の1点に関しての比屈折率差、Δ(λ、z
0)は前記第1の純石英シングルコアファイバの任意の1点に関しての比屈折率差、Δ(λ、z
1)は前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点に関しての比屈折率差である。
【請求項4】
数C3を用いて前記一又は複数の純石英シングルコアファイバの実効断面積を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の光学特性測定方法。
【数C3】
ただし、zは前記一端から前記所望の1点までの距離、z
0は前記一端から前記第1の純石英シングルコアファイバの任意の1点までの距離、z
1は前記一端から前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点までの距離であり、
λは波長であり、
I
n(λ、z)は前記所望の1点に関しての規格化後相加平均強度、I
n(λ、z
1)は前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点に関しての規格化後相加平均強度であり、
A
eff(λ、z)は前記所望の1点に関しての実効断面積、A
eff(λ、z
0)は前記第1の純石英シングルコアファイバの任意の1点に関しての実効断面積、A
eff(λ、z
1)は前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点に関しての実効断面積である。
【請求項5】
数C4を用いて前記一又は複数の純石英シングルコアファイバのコア半径を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の光学特性測定方法。
【数C4】
ただし、zは前記一端から前記所望の1点までの距離、z
0は前記一端から前記第1の純石英シングルコアファイバの任意の1点までの距離、z
1は前記一端から前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点までの距離であり、
λは波長であり、
I
n(λ、z)は前記所望の1点に関しての規格化後相加平均強度、I
n(λ、z
1)は前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点に関しての規格化後相加平均強度であり、
a(z)は前記所望の1点に関してのコア半径、a(z
0)は前記第1の純石英シングルコアファイバの任意の1点に関してのコア半径、a(z
1)は前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点に関してのコア半径である。
【請求項6】
数C5を用いて前記一又は複数の純石英シングルコアファイバのカットオフ波長を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の光学特性測定方法。
【数C5】
ただし、zは前記一端から前記所望の1点までの距離、z
0は前記一端から前記第1の純石英シングルコアファイバの任意の1点までの距離、z
1は前記一端から前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点までの距離であり、
λは波長であり、
I
n(λ、z)は前記所望の1点に関しての規格化後相加平均強度、I
n(λ、z
1)は前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点に関しての規格化後相加平均強度であり、
λ
c(z)は前記所望の1点に関してのカットオフ波長、λ
c(z
0)は前記第1の純石英シングルコアファイバの任意の1点に関してのカットオフ波長、λ
c(z
1)は前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点に関してのカットオフ波長である。
【請求項7】
前記一又は複数の純石英シングルコアファイバの波長分散を算出する際に、
数C6を用いて前記純石英シングルコアファイバのモードフィールド径を算出すること、
数C7を用いて前記純石英シングルコアファイバの材料分散を算出すること、
複数の波長λに関して取得した前記純石英シングルコアファイバのモードフィールド径から前記純石英シングルコアファイバのモードフィールド径の波長依存性を算出すること、
前記波長依存性から導波路分散を算出すること、
前記材料分散と前記導波路分散とを足して前記波長分散を算出すること、
を行うことを特徴とする請求項1に記載の光学特性測定方法。
【数C6】
【数C7】
ただし、zは前記一端から前記所望の1点までの距離、z
0は前記一端から前記第1の純石英シングルコアファイバの任意の1点までの距離、z
1は前記一端から前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点までの距離であり、
λは波長であり、
I
n(λ、z)は前記所望の1点に関しての規格化後相加平均強度、I
n(λ、z
1)は前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点に関しての規格化後相加平均強度であり、
w(λ、z)は前記所望の1点に関してのモードフィールド径、w(λ、z
0)は前記第1の純石英シングルコアファイバの任意の1点に関してのモードフィールド径、w(λ、z1)は前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点に関してのモードフィールド径であり、
D
m(λ)は前記材料分散である。
【請求項8】
試験光パルスを生成する試験光パルス生成器と、
互いにモードフィールド径、コア径、比屈折率差、実効断面積及びカットオフ波長が異なり、かつ、前記モードフィールド径、前記コア径、前記比屈折率差、前記実効断面積及び前記カットオフ波長が既知であって、直列に接続された第1の純石英シングルコアファイバ及び第2の純石英シングルコアファイバと、前記第2の純石英シングルコアファイバに直列に接続された一又は複数の純石英シングルコアファイバと、で構成される光ファイバ伝送路の一端に第1の試験光パルスを入力するとともに前記第1の試験光パルスによる後方散乱光を出力し、前記光ファイバ伝送路の他端に第2の試験光パルスを入力するとともに前記第2の試験光パルスによる後方散乱光を出力する入出力器と、
前記入出力器が出力した前記第1の試験光パルスによる後方散乱光の強度及び前記第2の試験光パルスによる後方散乱光の強度について、前記一端からの距離に関する分布を測定する測定器と、
前記第1の純石英シングルコアファイバの任意の1点、前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点及び前記一又は複数の純石英シングルコアファイバの所望の1点のそれぞれについて、対数スケールで表示した前記第1の試験光パルスによる後方散乱光の強度及び前記第2の試験光パルスによる後方散乱光の強度の相加平均強度を算出し、3つの前記相加平均強度と、前記第1の純石英シングルコアファイバ及び前記第2の純石英シングルコアファイバのそれぞれのモードフィールド径、コア径、比屈折率差、実効断面積又はカットオフ波長とから、前記一又は複数の純石英シングルコアファイバのモードフィールド径、コア径、比屈折率差、実効断面積、カットオフ波長及び波長分散の少なくとも1つを算出する演算器と、
を備える光学特性測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信等に用いられる純石英シングルコアファイバの特性評価方法に関し、モードフィールド径、コア径、比屈折率差、実効断面積、カットオフ波長及び波長分散を測定するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多種多様なインターネットサービスの普及により、光ファイバ1本を流れるトラフィック量が年々急速に増加している。一方、光ファイバで伝搬可能な伝送容量は有限であり、現在広く使われている単一モードファイバ(SMF:Single-Mode Fiber)では将来のトラフィック増大に対応できなくなることが予測されている。この状況を打破するために、1本の光ファイバに複数のコアを有する光ファイバ(以下、マルチコアファイバと称する)を用いた空間多重伝送システムが検討されている。
【0003】
純石英コアファイバは、低損失および非線形定数が小さいので、長距離・超大容量伝送において魅力的なファイバである。マルチコアファイバに純石英コアを用いる場合、汎用的なゲルマドープコアファイバと同様に、モードフィールド径、カットオフ波長、比屈折率差、波長分散は重要な光学特性である。
【0004】
純石英コアからなる上記のファイバ技術の実用化のためには、これらのファイバの光学特性を簡単に評価する技術が必要である。したがって、純石英シングルコアファイバの光学特性を簡単に評価する技術を確立することにより、純石英コアからなる種々のファイバ(マルチコアファイバ、ヒューモードファイバ)の光学特性評価に反映できる。
【0005】
非特許文献1から3では、GeO2ドープコアファイバにおけるMFD、比屈折差、カットオフ波長および波長分散の測定法として、双方向OTDRに基づく測定法が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】A. Rossaro et al., “Spatially resolved chromatic dispersion measurement by a bidirectional OTDR technique,” Journal of Lightwave Technology, vol. 7, no. 3, pp. 475-483, 2001.
【文献】M. Ohashi, “Novel OTDR technique for measuring the relative-index differences of fiber links,” IEEE Photon. Lett., Vol. 18, No. 24, pp. 2584-2586, 2006.
【文献】K.W. Kowaliuk and J. Ferner, “A Technique to Estimate the Cutoff Wavelength Profile in Single Mode Fibers Using a Switchable Dual Wavelength OTDR,” Proc. Symposium on Optical Fiber Measurements, pp. 123-126 , 1988.
【文献】K. Tsujikawa, M. Ohashi, K. Shiraki, and M. Tateda, “Scattering property of F and GeO2 codoped silica glasses,” Electron. Lett., vol. 30, no. 4, pp. 351-352, 1994.
【文献】M. Ohashi, T. Kawasaki, H. Kubota, Y. Miyoshi, A. Nakamura, and D. Iida, “Expression to predict the chromatic dispersion of a high-order mode in few-mode fibers,” IEICE Commun. Express, accepted for publication. Article ID: 2020XBL0151, Doi/10.1587/comex.2020XBL0151
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1および2の手法を適用できる対象は、コアがGeO2添加のファイバからなる伝送路の場合に限定される。このため、非特許文献1の手法、すなわち、GeO2添加コアファイバと同じ処理(数式)では、純石英コアからなるファイバの光学特性を求める(算出する)ことはできない、という問題がある。
【0008】
また、非特許文献3の手法は、カットオフ波長を測定するために数式を解く必要があり、精度が悪く、測定時間が長い、という点において問題がある。
【0009】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、双方向OTDRにより、純石英シングルコアファイバのモードフィールド径、コア径、比屈折率差、実効断面積、カットオフ波長および波長分散を簡単に測定するための光学特性測定方法および測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本開示の光学特性測定方法および光学特性測定装置は、互いの光学特性が異なり、かつ、光学特性が既知である2本の純石英シングルコアファイバと、光学特性が未知の純石英シングルコアファイバとが直列に接続された光ファイバ伝送路を使用する。光ファイバ伝送路の一端及び他端のそれぞれで取得した後方散乱光強度の分布と既知の光学特性とを用いて、純石英シングルコアファイバの未知の光学特性を算出する。
【0011】
具体的には、本開示に係る光学特性測定方法は、
純石英シングルコアファイバの光学特性を測定する光学特性測定方法であって、
互いのモードフィールド径、コア径、比屈折率差、実効断面積及びカットオフ波長が異なり、かつ、前記モードフィールド径、前記コア径、前記比屈折率差、前記実効断面積及び前記カットオフ波長が既知である第1の純石英シングルコアファイバと第2の純石英シングルコアファイバとを直列に接続し、前記第2の純石英シングルコアファイバの未接続の端に一又は複数の純石英シングルコアファイバを直列に接続し、光ファイバ伝送路を形成すること、
前記光ファイバ伝送路の一端から第1の試験光パルスを入力すること、
前記一端からの距離に関して、前記第1の試験光パルスによる後方散乱光強度の分布を測定すること、
前記光ファイバ伝送路の他端から第2の試験光パルスを入力すること、
前記一端からの距離に関して、前記第2の試験光パルスによる後方散乱光強度の分布を測定すること、
前記第1の純石英シングルコアファイバの任意の1点、前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点及び前記一又は複数の純石英シングルコアファイバの所望の1点のそれぞれについて、対数スケールで表示した前記第1の試験光パルスによる後方散乱光強度及び前記第2の試験光パルスによる後方散乱光強度の相加平均強度を算出すること、
3つの前記相加平均強度と、前記第1の純石英シングルコアファイバ及び前記第2の純石英シングルコアファイバのそれぞれのモードフィールド径、コア径、比屈折率差、実効断面積又はカットオフ波長とから、前記一又は複数の純石英シングルコアファイバのモードフィールド径、コア径、比屈折率差、実効断面積、カットオフ波長及び波長分散の少なくとも1つを算出すること、
を行う。
【0012】
具体的には、本開示に係る光学特性測定装置は、
試験光パルスを生成する試験光パルス生成器と、
互いにモードフィールド径、コア径、比屈折率差、実効断面積及びカットオフ波長が異なり、かつ、前記モードフィールド径、前記コア径、前記比屈折率差、前記実効断面積及び前記カットオフ波長が既知であって、直列に接続された第1の純石英シングルコアファイバ及び第2の純石英シングルコアファイバと、前記第2の純石英シングルコアファイバに直列に接続された一又は複数の純石英シングルコアファイバと、で構成される光ファイバ伝送路の一端に第1の試験光パルスを入力するとともに前記第1の試験光パルスによる後方散乱光を出力し、前記光ファイバ伝送路の他端に第2の試験光パルスを入力するとともに前記第2の試験光パルスによる後方散乱光を出力する入出力器と、
前記入出力器が出力した前記第1の試験光パルスによる後方散乱光の強度及び前記第2の試験光パルスによる後方散乱光の強度について、前記一端からの距離に関する分布を測定する測定器と、
前記第1の純石英シングルコアファイバの任意の1点、前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点及び前記一又は複数の純石英シングルコアファイバの所望の1点のそれぞれについて、対数スケールで表示した前記第1の試験光パルスによる後方散乱光の強度及び前記第2の試験光パルスによる後方散乱光の強度の相加平均強度を算出し、3つの前記相加平均強度と、前記第1の純石英シングルコアファイバ及び前記第2の純石英シングルコアファイバのそれぞれのモードフィールド径、コア径、比屈折率差、実効断面積又はカットオフ波長とから、前記一又は複数の純石英シングルコアファイバのモードフィールド径、コア径、比屈折率差、実効断面積、カットオフ波長及び波長分散の少なくとも1つを算出する演算器と、を備える。
【0013】
例えば、本開示に係る光学特性測定方法は、
数C1を用いて前記一又は複数の純石英シングルコアファイバのモードフィールド径を算出する。
【数C1】
ただし、zは前記一端から前記所望の1点までの距離、z
0は前記一端から前記第1の純石英シングルコアファイバの任意の1点までの距離、z
1は前記一端から前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点までの距離であり、
λは波長であり、
I
n(λ、z)は前記所望の1点に関しての規格化後相加平均強度、I
n(λ、z
1)は前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点に関しての規格化後相加平均強度であり、
w(λ、z)は前記所望の1点に関してのモードフィールド径、w(λ、z
0)は前記第1の純石英シングルコアファイバの任意の1点に関してのモードフィールド径、w(λ、z
1)は前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点に関してのモードフィールド径である。
【0014】
例えば、本開示に係る光学特性測定方法は、
数C2を用いて前記一又は複数の純石英シングルコアファイバの比屈折率差を算出する。
【数C2】
ただし、zは前記一端から前記所望の1点までの距離、z
0は前記一端から前記第1の純石英シングルコアファイバの任意の1点までの距離、z
1は前記一端から前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点までの距離であり、
λは波長であり、
I
n(λ、z)は前記所望の1点に関しての規格化後相加平均強度、I
n(λ、z
1)は前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点に関しての規格化後相加平均強度であり、
Δ(λ、z)は前記所望の1点に関しての比屈折率差、Δ(λ、z
0)は前記第1の純石英シングルコアファイバの任意の1点に関しての比屈折率差、Δ(λ、z
1)は前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点に関しての比屈折率差である。
【0015】
例えば、本開示に係る光学特性測定方法は、
数C3を用いて前記一又は複数の純石英シングルコアファイバの実効断面積を算出する。
【数C3】
ただし、zは前記一端から前記所望の1点までの距離、z
0は前記一端から前記第1の純石英シングルコアファイバの任意の1点までの距離、z
1は前記一端から前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点までの距離であり、
λは波長であり、
I
n(λ、z)は前記所望の1点に関しての規格化後相加平均強度、I
n(λ、z
1)は前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点に関しての規格化後相加平均強度であり、
A
eff(λ、z)は前記所望の1点に関しての実効断面積、A
eff(λ、z
0)は前記第1の純石英シングルコアファイバの任意の1点に関しての実効断面積、A
eff(λ、z
1)は前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点に関しての実効断面積である。
【0016】
例えば、本開示に係る光学特性測定方法は、
数C4を用いて前記一又は複数の純石英シングルコアファイバのコア半径を算出する。
【数C4】
ただし、zは前記一端から前記所望の1点までの距離、z
0は前記一端から前記第1の純石英シングルコアファイバの任意の1点までの距離、z
1は前記一端から前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点までの距離であり、
λは波長であり、
I
n(λ、z)は前記所望の1点に関しての規格化後相加平均強度、I
n(λ、z
1)は前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点に関しての規格化後相加平均強度であり、
a(z)は前記所望の1点に関してのコア半径、a(z
0)は前記第1の純石英シングルコアファイバの任意の1点に関してのコア半径、a(z
1)は前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点に関してのコア半径である。
【0017】
例えば、本開示に係る光学特性測定方法は、
数C5を用いて前記一又は複数の純石英シングルコアファイバのカットオフ波長を算出する。
【数C5】
ただし、zは前記一端から前記所望の1点までの距離、z
0は前記一端から前記第1の純石英シングルコアファイバの任意の1点までの距離、z
1は前記一端から前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点までの距離であり、
λは波長であり、
I
n(λ、z)は前記所望の1点に関しての規格化後相加平均強度、I
n(λ、z
1)は前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点に関しての規格化後相加平均強度であり、
λ
c(z)は前記所望の1点に関してのカットオフ波長、λ
c(z
0)は前記第1の純石英シングルコアファイバの任意の1点に関してのカットオフ波長、λ
c(z
1)は前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点に関してのカットオフ波長である。
【0018】
例えば、本開示に係る光学特性測定方法は、
前記一又は複数の純石英シングルコアファイバの波長分散を算出する際に、
数C6を用いて前記純石英シングルコアファイバのモードフィールド径を算出すること、
数C7を用いて前記純石英シングルコアファイバの材料分散を算出すること、
複数の波長λに関して取得した前記純石英シングルコアファイバのモードフィールド径から前記純石英シングルコアファイバのモードフィールド径の波長依存性を算出すること、
前記波長依存性から導波路分散を算出すること、
前記材料分散と前記導波路分散とを足して前記波長分散を算出すること、を行う。
【数C6】
【数C7】
ただし、zは前記一端から前記所望の1点までの距離、z
0は前記一端から前記第1の純石英シングルコアファイバの任意の1点までの距離、z
1は前記一端から前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点までの距離であり、
λは波長であり、
I
n(λ、z)は前記所望の1点に関しての規格化後相加平均強度、I
n(λ、z
1)は前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点に関しての規格化後相加平均強度であり、
w(λ、z)は前記所望の1点に関してのモードフィールド径、w(λ、z
0)は前記第1の純石英シングルコアファイバの任意の1点に関してのモードフィールド径、w(λ、z1)は前記第2の純石英シングルコアファイバの任意の1点に関してのモードフィールド径であり、
D
m(λ)は前記材料分散である。
【0019】
本開示の光学特性測定方法および光学特性測定装置は、互いの光学特性が異なり、かつ、光学特性が既知である2本の純石英シングルコアファイバと、光学特性が未知の純石英シングルコアファイバとが直列に接続された光ファイバ伝送路の一端及び他端のそれぞれで取得した後方散乱光強度の分布と既知の光学特性とを用いることで、双方向OTDRにより、純石英シングルコアファイバのモードフィールド径、コア径、比屈折率差、実効断面積、カットオフ波長及び波長分散を簡単に測定することができる。
【0020】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、双方向OTDRにより、純石英シングルコアファイバのモードフィールド径、コア径、比屈折率差、実効断面積、カットオフ波長および波長分散を簡単に測定するための光学特性測定方法および光学特性測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る光学特性測定装置の概略構成の一例を示す。
【
図2】本発明に係る光学特性測定装置の概略構成の一例を示す。
【
図3】本発明に係る光学特性測定装置の概略構成の一例を示す。
【
図4】本発明に係る光学特性測定装置の概略構成の一例を示す。
【
図5】本発明に係る光学特性測定方法の手順の一例を示す。
【
図6】本発明に係る光学特性測定方法の手順の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本開示は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0024】
1.実施形態
本実施形態に係る光学特性測定装置の概略構成の一例を
図1及び2に示す。
本開示に係る光学特性測定装置101は、
試験光パルスを生成する試験光パルス生成器11と、
互いにモードフィールド径、コア径、比屈折率差、実効断面積及びカットオフ波長が異なり、かつ、モードフィールド径、コア径、比屈折率差、実効断面積及びカットオフ波長が既知であって、直列に接続された第1の純石英シングルコアファイバ10-1及び第2の純石英シングルコアファイバ10-2と、第2の純石英シングルコアファイバ10-2に直列に接続された一又は複数の純石英シングルコアファイバ20と、で構成される光ファイバ伝送路10の一端Aに第1の試験光パルスを入力するとともに第1の試験光パルスによる後方散乱光を出力し、光ファイバ伝送路10の他端Bに第2の試験光パルスを入力するとともに第2の試験光パルスによる後方散乱光を出力する入出力器12と、
入出力器12が出力した第1の試験光パルスによる後方散乱光の強度及び第2の試験光パルスによる後方散乱光の強度について、一端Aからの距離に関する分布を測定する測定器13と、
第1の純石英シングルコアファイバ10-1の任意の1点、第2の純石英シングルコアファイバ10-2の任意の1点及び純石英シングルコアファイバ20の所望の1点のそれぞれについて、対数スケールで表示した第1の試験光パルスによる後方散乱光の強度及び第2の試験光パルスによる後方散乱光の強度の相加平均強度を算出し、3つの相加平均強度と、第1の純石英シングルコアファイバ10-1及び第2の純石英シングルコアファイバ10-2のそれぞれのモードフィールド径、コア径、比屈折率差、実効断面積又はカットオフ波長とから、純石英シングルコアファイバ20のモードフィールド径、コア径、比屈折率差、実効断面積、カットオフ波長及び波長分散の少なくとも1つを算出する演算器14と、を備える。なお、
図1では、純石英シングルコアファイバ10-1、純石英シングルコアファイバ10-2、純石英シングルコアファイバ20の順で直列に接続したが、これに限定されず、任意の順番でもよい。
【0025】
本実施形態に係る光学特性測定装置の構成の一例について
図3および
図4を用いて具体的に説明する。
【0026】
試験光パルス生成器11の一例を
図3に示す。試験光パルス生成器11は、光源11-1と、光強度変調器11-2と、パルス発生器11-3とを備える。
【0027】
光源11-1は、試験光として使用する波長の連続光を出力する。
【0028】
パルス発生器11-3は、パルス信号を光強度変調器11-2に送る。また、パルス発生器11-3は、測定器13に対して、後方散乱光強度分布の測定を開始するタイミングを決めるためのトリガ信号を出力しても良い。
【0029】
光強度変調器11-2は、光源11-1より出力される連続光をパルス発生器11-3の信号に従ってパルス化して、試験光パルスにする。光強度変調器11-2は、例えば、音響光学素子をパルス駆動するようにした音響光学スイッチを備える音響光学変調器でもよい。
【0030】
入出力器12は、例えば、光サーキュレータを備える。光サーキュレータは、光の伝搬方向を制御する。
【0031】
測定器13の一例を
図4に示す。測定器13は、受光器13-1と、A/D(アナログ/デジタル)変換器13-2と、信号処理部13-3とを備える。
【0032】
受光器13-1は、入出力器12と単一コアファイバで接続しており、光伝送路10内で発生した後方散乱光を、入出力器12を介して受光する。
【0033】
A/D変換器13-2は、受光器13-1からの電気信号をデジタルデータに変換する。A/D変換器13-2は、デジタルデータを信号処理部13-3に入力する。
【0034】
信号処理部13-3は、入力されたデジタルデータから後方散乱光の強度分布を取得する。
【0035】
演算器14は、信号処理部13-3で取得した後方散乱光強度の分布からモードフィールド径、コア径、比屈折率差、実効断面積、カットオフ波長及び波長分散の少なくとも1つを算出する演算処理を行う。本演算処理の詳細については後述するステップS07で説明する。
【0036】
なお、信号処理部13-3および演算器14はコンピュータとプログラムによっても実現でき、プログラムを記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0037】
本実施形態に係る光学特性測定方法の手順の一例を
図5及び
図6に示す。
本実施形態に係る光学特性測定方法は、
純石英シングルコアファイバ20の光学特性を測定する光学特性測定方法であって、
互いのモードフィールド径、コア径、比屈折率差、実効断面積及びカットオフ波長が異なり、かつ、モードフィールド径、コア径、比屈折率差、実効断面積及びカットオフ波長が既知である第1の純石英シングルコアファイバ10-1と第2の純石英シングルコアファイバ10-2とを直列に接続し、第2の純石英シングルコアファイバ10-2の未接続の端に一又は複数の純石英シングルコアファイバ20を直列に接続し、光ファイバ伝送路10を形成すること(ステップS00)、
光ファイバ伝送路10の一端Aから第1の試験光パルスを入力すること(ステップS01)、
一端Aからの距離に関して、第1の試験光パルスによる後方散乱光強度の分布を測定すること(ステップS02及びS03)、
光ファイバ伝送路10の他端Bから第2の試験光パルスを入力すること(ステップS04)、
一端Aからの距離に関して、第2の試験光パルスによる後方散乱光強度の分布を測定すること(ステップS05及びS06)、
第1の純石英シングルコアファイバ10-1の任意の1点、第2の純石英シングルコアファイバ10-2の任意の1点及び純石英シングルコアファイバ20の所望の1点のそれぞれについて、対数スケールで表示した第1の試験光パルスによる後方散乱光強度及び第2の試験光パルスによる後方散乱光強度の相加平均強度を算出すること(サブステップS07-1)、
3つの相加平均強度と、第1の純石英シングルコアファイバ10-1及び第2の純石英シングルコアファイバ10-2のそれぞれのモードフィールド径、コア径、比屈折率差、実効断面積又はカットオフ波長とから、純石英シングルコアファイバ20のモードフィールド径、コア径、比屈折率差、実効断面積、カットオフ波長及び波長分散の少なくとも1つを算出すること(サブステップS07-2からS07-10)、を行う。
以下、ステップS00からステップS07まで詳細に説明する。
【0038】
(ステップS00)
図1に示すように、互いのモードフィールド径、コア径、比屈折率差、実効断面積及びカットオフ波長が異なり、かつ、モードフィールド径、コア径、比屈折率差、実効断面積及びカットオフ波長が既知である第1の純石英シングルコアファイバ10-1と第2の純石英シングルコアファイバ10-2とを直列に接続し、第2の純石英シングルコアファイバ10-2の未接続の端に一又は複数の純石英シングルコアファイバ20を直列に接続し、光ファイバ伝送路10を形成する。
【0039】
(ステップS01)
試験光パルス生成器11は、前述したように、光源11-1から出力された連続光を試験光パルスに変え、入出力器12を介して第1の試験光パルスを光ファイバ伝送路10の一端Aから入力する。
【0040】
(ステップS02)
測定器13は、ステップS01で入力した第1の試験光パルスにより光ファイバ伝送路10内で発生した後方散乱光を、前述したように、一端Aに接続された入出力器12を介して受光する。
【0041】
(ステップS03)
測定器13は、ステップS02で受光した第1の試験光パルスによる後方散乱光の強度について、光ファイバ伝送路10の一端Aからの距離に関する分布を測定する。
【0042】
(ステップS04)
試験光パルス生成器11は、前述したように、光源11-1から出力された連続光を試験光パルスに変え、入出力器12を介して第2の試験光パルスを光ファイバ伝送路10の他端Bから入力する。
【0043】
(ステップS05)
測定器13は、ステップS04で入力した第2の試験光パルスにより光ファイバ伝送路10内で発生した後方散乱光を、前述したように、他端Bに接続された入出力器12を介して受光する。
【0044】
(ステップS06)
測定器13は、ステップS05で受光した第2の試験光パルスによる後方散乱光の強度について、光ファイバ伝送路10の一端Aからの距離に関する分布を測定する。
【0045】
なお、ステップS04からS06までを先に行い、第2の試験光パルスによる後方散乱光強度の分布を測定した後に、ステップS01からS03までを行い、第1の試験光パルスによる後方散乱光強度の分布を測定してもよい。
【0046】
(ステップS07)
演算器14は、ステップS03およびステップS06において、信号処理部13-3で測定した第1の試験光パルスによる後方散乱光強度の分布及び第2の試験光パルスによる後方散乱光強度の分布を用いて、純石英シングルコアファイバ20のモードフィールド径、コア径、比屈折率差、実効断面積、カットオフ波長及び波長分散を算出する。本ステップは、
図6に示すサブステップS07-1からサブステップS07-10をさらに備えてもよい。以下、サブステップS07-1からS07-10について説明する。
【0047】
(サブステップS07-1)
演算器14は、ステップS03およびステップS06において、信号処理部13-3で測定した第1の試験光パルスによる後方散乱光強度の分布及び第2の試験光パルスによる後方散乱光強度の分布から、純石英シングルコアファイバ20の所望の1点における第1の試験光パルスによる後方散乱光強度及び第2の試験光パルスによる後方散乱光強度を抽出し、対数スケールで表示する。対数スケールで表示した第1の試験光パルスによる後方散乱光強度及び第2の試験光パルスによる後方散乱光強度を足して2で割ることで、相加平均強度を求める。同様に、第1の純石英シングルコアファイバ10-1の任意の1点及び第2の純石英シングルコアファイバ10-2の任意の1点のそれぞれについても相加平均強度を求める。
【0048】
なお、測定した後方散乱光強度から直接算出する相加平均強度は、後方散乱光強度の分布の数式がわかれば、数式を用いて表現することができる。ここでは、光ファイバ伝送路10の一端Aからの距離をzで表す。
【0049】
ステップS01で光ファイバ伝送路10の一端Aから入力する第1の試験光パルスの強度をP0とする。ステップS04で光ファイバ伝送路10の他端Bから入力する第2の試験光パルスの強度をP1とする。
【0050】
上記設定において、ステップS03で得られるコア1の第1の試験光パルスによる後方散乱光強度の分布は、数1で表すことができる。
【数1】
なお、P
bs1(λ、z)は光ファイバ伝送路10の一端Aから第1の試験光パルスを入力した際の後方散乱光の強度分布を表す。v
0は純石英シングルコアファイバ中の光速、Bは後方散乱の捕獲率、α
sはレイリー散乱係数、αは純石英シングルコアファイバの損失係数、ΔTは試験光パルスのパルス幅、λは波長を表す。
【0051】
ステップS06で得られるコア1の第2の試験光パルスによる後方散乱光強度分布は、数2で表すことができる。
【数2】
なお、P
bs2(λ、z)は光ファイバ伝送路10の他端Bから第2の試験光パルスによる試験光パルスを入力した際の後方散乱光の強度分布を表す。Lは光ファイバ伝送路10の長さを表す。数1および数2では、損失係数αが距離zによらないとしている。
【0052】
相加平均強度I(z)は数1および数2を用いて、数3で表すことができる。
【数3】
また、後方散乱の捕獲率Bは、数4で表すことができる。
【数4】
ここで、wはモードフィールド半径、aはコア半径、νは正規化周波数、NAは開口数、n
1はコアの屈折率、λは波長、k
e(λ)は波長λにおける補正係数、A
effは実効断面積、kは比例定数、ν
cは光ファイバのカットオフ周波数、λ
cは光ファイバのカットオフ波長、Δは比屈折率差を表す。
【0053】
(サブステップS07-2)
サブステップS07-1で取得した3つの相加平均強度と、第1の純石英シングルコアファイバ10-1のモードフィールド径と、第2の純石英シングルコアファイバ10-2のモードフィールド径とを、数5に用いて純石英シングルコアファイバ20のモードフィールド径を算出する。
【数5】
ここで、zは一端Aから純石英シングルコアファイバ20の所望の1点までの距離、z
0は一端Aから第1の純石英シングルコアファイバ10-1の任意の1点までの距離、z
1は一端Aから第2の純石英シングルコアファイバ10-2の任意の1点までの距離であり、
λは波長であり、
I
n(λ、z)は純石英シングルコアファイバ20の所望の1点に関しての規格化後相加平均強度、I
n(λ、z
1)は第2の純石英シングルコアファイバ10-2の任意の1点に関しての規格化後相加平均強度であり、
w(λ、z)は純石英シングルコアファイバ20の所望の1点に関してのモードフィールド径、w(λ、z
0)は第1の純石英シングルコアファイバ10-1の任意の1点に関してのモードフィールド径、w(λ、z
1)は第2の純石英シングルコアファイバ10-2の任意の1点に関してのモードフィールド径である。数5は、付記の式(110)に対応する。
規格化後相加平均強度I
n(λ、z)は、数6に示すように、純石英シングルコアファイバ20の所望の1点に関しての相加平均強度I(λ、z)から第1の純石英シングルコアファイバ10-1の任意の1点に関しての相加平均強度I(λ、z
0)を引いたものである。
【数6】
数6は、付記の式(108)に対応する。
規格化後相加平均強度I
n(λ、z
1)は、数7に示すように、第2の純石英シングルコアファイバ10-2の任意の1点に関しての相加平均強度I(λ、z
1)から相加平均強度I(λ、z
0)を引いたものである。
【数7】
数7は、付記の式(109)に対応する。
なお、数5は、数6及び数7を用いて導出することができる。
【0054】
(サブステップS07-3)
サブステップS07-1で取得した3つの相加平均強度と、第1の純石英シングルコアファイバ10-1の比屈折率差と、第2の純石英シングルコアファイバ10-2の比屈折率差とを、数8に用いて純石英シングルコアファイバ20の比屈折率差を算出する。
【数8】
ここで、Δ(λ、z)は純石英シングルコアファイバ20の所望の1点に関しての比屈折率差、Δ(λ、z
0)は第1の純石英シングルコアファイバ10-1の任意の1点に関しての比屈折率差、Δ(λ、z
1)は第2の純石英シングルコアファイバ10-2の任意の1点に関しての比屈折率差である。
なお、数8は、数9及び数10を用いて数11を導出した上で、レイリー散乱係数α
sが比屈折率差Δに比例して増加すること(非特許文献4)を数11に用いることで導出することができる。
【数9】
【数10】
【数11】
数8は付記の式(116)に、数9は付記の式(112)に、数10は付記の式(113)に、数11は付記の式(115)に、対応する。
【0055】
(サブステップS07-4)
サブステップS07-1で取得した3つの相加平均強度と、第1の純石英シングルコアファイバ10-1の実効断面積と、第2の純石英シングルコアファイバ10-2の実効断面積とを、数12に用いて純石英シングルコアファイバ20の実効断面積を算出する。
【数12】
ここで、A
eff(λ、z)は純石英シングルコアファイバ20の所望の1点に関しての実効断面積、A
eff(λ、z
0)は第1の純石英シングルコアファイバ10-1の任意の1点に関しての実効断面積、A
eff(λ、z
1)は第2の純石英シングルコアファイバ10-2の任意の1点に関しての実効断面積である。数12は、付記の式(122)に対応する。
なお、数12は、数13及び数14を用いて導出することができる。
【数13】
【数14】
数13は付記の式(120)に、数14は付記の式(121)に、対応する。
【0056】
(サブステップS07-5)
サブステップS07-1で取得した3つの相加平均強度と、第1の純石英シングルコアファイバ10-1のコア半径と、第2の純石英シングルコアファイバ10-2のコア半径とを、数15に用いて純石英シングルコアファイバ20のコア半径を算出する。
【数15】
ここで、a(z)は純石英シングルコアファイバ20の所望の1点に関してのコア半径、a(z
0)は第1の純石英シングルコアファイバ10-1の任意の1点に関してのコア半径、a(z
1)は第2の純石英シングルコアファイバ10-2の任意の1点に関してのコア半径である。数15は、付記の式(128)に対応する。
【0057】
(サブステップS07-6)
サブステップS07-1で取得した3つの相加平均強度と、第1の純石英シングルコアファイバ10-1のカットオフ波長と、第2の純石英シングルコアファイバ10-2のカットオフ波長とを、数16に用いて純石英シングルコアファイバ20のカットオフ波長を算出する。
【数16】
ここで、λ
c(z)は純石英シングルコアファイバ20の所望の1点に関してのカットオフ波長、λ
c(z
0)は第1の純石英シングルコアファイバ10-1の任意の1点に関してのカットオフ波長、λ
c(z
1)は第2の純石英シングルコアファイバ10-2の任意の1点に関してのカットオフ波長である。数16は、付記の式(134)に対応する。
なお、サブステップS07-2からサブステップS07-6は、任意の順番で行ってもよい。
【0058】
(サブステップS07-7)
試験光パルスの波長を変えてステップS01からステップ06を複数回行い、複数の波長についての後方散乱光強度の分布を測定し、サブステップS07-1及びサブステップS07-2により、複数波長についての純石英シングルコアファイバ20のモードフィールド径を算出する。
【0059】
複数波長における純石英シングルコアファイバ20のモードフィールド径と、モードフィールド半径の波長依存性を表す近似式である数17又は18と、を用いて純石英シングルコアファイバ20のモードフィールド径の波長依存性を算出する。
【数17】
【数18】
数17の係数g
0及びg
1は、2波長以上のモードフィールド径の測定結果から、数18のg
0、g
1及びg
2は、3波長以上のモードフィールド径の測定結果から決定することが望ましい。数17は付記の式(140)に、数18は付記の式(141)に、対応する。
【0060】
(サブステップS07-8)
サブステップS07-7で算出した純石英シングルコアファイバ20のモードフィールド径の波長依存性を導波路分散の近似式である数19に用いて導波路分散を算出する。
【数19】
なお、D
wは導波路分散を、cは光速を、nはコアの屈折率を表す。数17のw(λ)を数19のwに代入することにより、導波路分散D
wは数20で表すこともでき、数18のw(λ)を数19のwに代入することにより、導波路分散D
wは数21で表すこともできる。数19は付記の式(138)に対応する。
【数20】
【数21】
なお、数17および数20を用いるより、数18および数21を用いた方が、より高い精度で結果を得ることができるというメリットがある。但し、数18および数21を用いるためには、3波長以上での測定が必要になるため、安価な装置を使用して少ない波長で測定する場合には、数17および数20を用いることが好ましい。数20は付記の式(142)に、数21は付記の式(143)に、対応する。
【0061】
(サブステップS07-9)
純石英コアの場合の材料分散は、数22に示す純石英ガラスの材料分散で決まる。数22を用いて純石英シングルコアファイバ20の材料分散D
mを求める。cは光速を表す。
【数22】
なお、本サブステップは、ステップS07のサブステップのうち、サブステップS07-10以外の他のサブステップと前後して行ってもよい。数22は、付記の式(139)に対応する。
【0062】
(サブステップS07-10)
数23に示すように、サブステップS07-9で算出した材料分散Dmと、サブステップS07-8で算出した導波路分散D
wとを足して波長分散を算出する。
【数23】
【0063】
以上説明したように、本開示の光学特性測定方法および光学特性測定装置は、互いの光学特性が異なり、かつ、光学特性が既知である2本のシングルコアファイバと、光学特性が未知の純石英シングルコアファイバとが直列に接続された光ファイバ伝送路の一端及び他端のそれぞれで取得した後方散乱光強度の分布と既知の光学特性とを用いることで、双方向OTDRにより、純石英シングルコアファイバのモードフィールド径、コア径、比屈折率差、実効断面積、カットオフ波長および波長分散を簡単に測定することができる。
【0064】
[付記]
2.測定原理
2.1 構造パラメータの測定法
(a) モードフィールド径の測定法
測定系を
図7に示す。
参照ファイバは、純石英コアファイバであり、被測定ファイバも純石英コアファイバである。また、参照ファイバのモードフィールド径(MFD)、比屈折率差Δ、コア径(2a)および実効断面積Aeffは既知であるとする。ファイバの全長をLとする。このとき、OTDR測定をA
1から行った際の距離zからの後方散乱光は、式(101)で記述できる。
【数101】
ここで、P
0は入射パワー、Bは後方散乱の捕獲率、α
Sはレーリー散乱係数、αは光ファイバ損失を表す。
また、単一モード光ファイバの後方散乱光の捕獲率Bは、式(102)で記述できる。
【数102】
ここで、λは波長、n
1はコアの屈折率、2wはモードフィールド径、νは正規化周波数、NAは開口数を表す。
式(101)の両辺の常用対数をとると
【数103】
一方、A
2からOTDR測定した際の距離zからの後方散乱光は、式(104)で記述できる。
【数104】
次に、式(103)および(104)を用いて、式(105)のように構造不整損失成分I(λ,z)を求める(非特許文献1)。
【数105】
したがって、式(102)を式(105)に代入すると次式のように書き直せる。
【数106】
ここで、I
0は式(107)で定義した。
【数107】
また、式(108)のように、構造不整損失成分を参照ファイバの位置z
0(z
0は参照ファイバ#1における任意の地点)の構造不整損失成分で規格化する。ここで、レーリー散乱係数は、ファイバ長手方向で均一と仮定する。
【数108】
式(108)は参照ファイバのz
1(z
1は参照ファイバ#2における任意の地点)でも成り立つので式(109)が得られる。
【数109】
式(108)および式(109)から、被測定ファイバのMFDは式(110)のように記述できる(非特許文献1)。
【数110】
また、純石英コアファイバの場合には、式(108)より、z=z
0の参照ファイバ1本で被測定ファイバのMFDを評価できる。
【数111】
なお、純石英コアファイバの場合であっても、式(108)を用いることでより精度よく測定できるという利点がある。
(b) 比屈折率差の測定
式(106)を用いると、zおよびz
1における規格化構造不整損失寄与I
nは式(112)及び式(113)で表すことができる。
【数112】
【数113】
式(112)と式(113)よりα
s(λ,z)を求める。導出過程を式(114)に示す。
【数114】
したがって、レーリー散乱係数は、式(115)のように求まる。
【数115】
レーリー散乱係数α
sは比屈折率差Δに比例して増加するので(非特許文献4)、式(115)は、式(116)のように書き直せる。
【数116】
式(116)は、GeO2添加コアファイバの場合においても適用できる。
(c) 実効断面積の評価法
実効断面積は、式(117)で定義されている。
【数117】
ここで、φ(x,y)は、電界分布を表し、Aは断面積を表す。k
e(λ)は、波長λにおける補正係数である。
式(117)と式(102)より後方散乱光の捕獲率Bは、式(118)で記述できる。
【数118】
式(118)を式(105)に代入して整理すると構造不整損失寄与I(λ,z)は式(119)で表すことができる。
【数119】
次に、z=zおよびz
1におけるz
0の値で規格化した規格化構造不整損失Inを計算すると式(120)のようになる。
【数120】
上記の式の導出では、レーリー散乱係数、屈折率および補正係数は長手方向で均一と仮定した。
【数121】
式(120)と式(121)より、実効断面積A
effは式(122)で求められる。導出過程は、式(114)と同様な方法である。
【数122】
(d) コア半径の評価法
モードフィールド径は、コア半径aに比例するので、式(123)のようにおく。
【数123】
ここで、k(λ,z)は比例定数である。
式(123)を式(102)に代入すると後方散乱光の捕獲率Bは、式(124)で記述できる。
【数124】
式(124)を式(105)に代入して整理すると構造不整損失寄与I(λ,z)は式(125)のように表すことができる。
【数125】
次に、z=zおよびz
1におけるz
0の値で規格化した規格化構造不整損失I
n(λ,z)を計算すると式(126)のように表すことができる。
【数126】
上記の式の導出では、レーリー散乱係数、屈折率および補正係数は式(126a)に示すように、長手方向で均一と仮定した。
【数126a】
したがって、規格化構造不整損失I
n(λ,z)は、式(127)のようになる。
【数127】
式(126)と式(127)より、コア半径a(z)は式(128)で記述できる。
【数128】
(d) カットオフ波長の評価法
光ファイバのカットオフ波長をλ
c、カットオフ周波数をv
cとし、コア半径a、比屈折率差をΔとすると、規格化周波数をvは、式(129)で定義できる。
【数129】
ここで、n
1およびn
2はコアおよびクラッドの屈折率である。ここで、対象としている純石英コアファイバの場合には、屈折率分布は近似的にステップ型である。
式(129)と式(102)より後方散乱光の捕獲率Bは、式(130)で記述できる。
【数130】
式(130)を式(105)に代入して整理すると構造不整損失寄与I(λ,z)は、式(131)で記述できる。
【数131】
次に、z
0の値で規格化した規格化構造不整損失I
n(λ,z)を計算すると式(132)のように表すことができる。
【数132】
ここでは、レーリー散乱係数は、長手方向で均一と仮定した。
したがって、z=z
1における規格化構造不整損失I
n(λ,z
0)は式(133)で記述できる。
【数133】
式(132)と(133)よりカットオフ波長分布を評価することができる。式(133a)に導出過程を示す。
【数133a】
したがって、カットオフ波長は、式(134)で評価できる。
【数134】
2.2 波長分散の測定法
波長分散Dは、導波路分散D
wと材料分散D
mの和として近似的に求めることができる。導波路分散D
wは、LP
lmモードに対して式(137)で評価できる(非特許文献5)。
【数137】
基本モードの電界分布であるガウシアン分布を式(137)に代入して導波路分散を計算すると式(138)が得られる。
【数138】
また、材料分散としては、コアが純石英であるので、材料分散D
mは、式(139)で近似できる。
【数139】
また、MFDの波長依存性は、2波長あるいは3波長以上のMFDの値を用いて式(140)又は式(141)で近似することにより求めることができる。
【数140】
【数141】
したがって、式(140)を式(138)に代入すると導波路分散は式(142)となり、式(141)を式(138)に代入すると導波路分散は式(143)となる。
【数142】
【数143】
なお、式(140)および式(142)を用いるより、式(141)および式(143)を用いた方が、より高い精度で結果を得ることができるというメリットがある。但し、式(141)および式(143)を用いるためには、3波長以上での測定が必要になるため、少ない波長で測定する場合には、式(140)および式(142)を用いるとよい(これにより装置が安価で済む)。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本開示に係る光学特性測定方法および光学特性測定装置は、情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
10:光ファイバ伝送路
10-1:第1の純石英シングルコアファイバ
10-2:第2の純石英シングルコアファイバ
11:試験光パルス生成器
11-1:光源
11-2:光強度変調器
11-3:パルス発生器
12:入出力器
13:測定器
13-1:受光器
13-2:A/D変換機
13-3:信号処理部
14:演算器
20:純石英シングルコアファイバ
101:光学特性測定装置