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特許7537690光アイソレータ、紫外線レーザ装置及び電子デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】光アイソレータ、紫外線レーザ装置及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/28 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
G02B27/28 A
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2023506707
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2021011550
(87)【国際公開番号】W WO2022195895
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2024-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504261077
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人自然科学研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】田丸 裕基
(72)【発明者】
【氏名】三浦 泰祐
(72)【発明者】
【氏名】安原 亮
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/049039(WO,A1)
【文献】特開2015-200645(JP,A)
【文献】特開昭61-141189(JP,A)
【文献】特開2011-225400(JP,A)
【文献】特開2004-302412(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0218795(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/28
H01S 3/23
G02F 1/09-1/095
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線波長の直線偏光の入射光に対する規格化透過率が0.9以上の透過軸となるように配置される第1の偏光子と、
前記第1の偏光子を透過した光の偏光方向を磁場によって回転させるファラデー材料を含むファラデー回転子と、
前記ファラデー回転子を透過した前記入射光に対する規格化透過率が0.9以上の透過軸となるように配置される第2の偏光子とを備えた光アイソレータであって、
前記ファラデー材料はフッ化カルシウム結晶であり、
前記フッ化カルシウム結晶の結晶軸である[001]の方向をa軸、[100]の方向をb軸、[010]の方向をc軸とするとき、前記a軸、前記b軸及び前記c軸の3軸が、前記c軸を中心に第1の角度回転し、前記第1の角度回転した前記b軸を中心に第2の角度回転した軸をそれぞれx軸、y軸及びz軸とする場合に、
前記第1の角度は40度以上50度以下であり、
前記第2の角度は45度以上75度以下であり、
前記z軸は、前記第1の偏光子から前記フッ化カルシウム結晶に入射する光の伝搬方向と平行であり、
前記第1の偏光子の透過軸と前記x軸との角度差が0度以上45度以下の範囲になるように、前記フッ化カルシウム結晶が配置される、
光アイソレータ。
【請求項2】
請求項1に記載の光アイソレータであって、
第2の角度は、54度以上66度以下である、
光アイソレータ。
【請求項3】
請求項1に記載の光アイソレータであって、
第2の角度は、58度以上62度以下である、
光アイソレータ。
【請求項4】
請求項1に記載の光アイソレータであって、
前記第1の偏光子から前記ファラデー材料に入射して前記ファラデー材料の媒質中を伝搬する光の偏光方向がファラデー効果により、前記ファラデー材料の媒質内で前記x軸と平行になるように、前記フッ化カルシウム結晶が配置される、
光アイソレータ。
【請求項5】
請求項1に記載の光アイソレータであって、
前記入射光の偏光方向と、前記第1の偏光子の透過軸との角度差は、17.5度以内であり、
前記ファラデー回転子を透過した前記入射光の偏光方向と、前記第2の偏光子の透過軸との角度差は、17.5度以内である、
光アイソレータ。
【請求項6】
請求項1に記載の光アイソレータであって、
前記第2の偏光子から前記ファラデー回転子を透過して前記第1の偏光子に入射する戻り光の偏光方向は、前記第1の偏光子の透過軸と90度±17.5度以内の角度で交差しており、前記戻り光は前記第1の偏光子によって反射される、
光アイソレータ。
【請求項7】
請求項1に光アイソレータであって、
前記入射光の波長がArFエキシマレーザの発振波長又はKrFエキシマレーザの発振波長である、
光アイソレータ。
【請求項8】
請求項1に記載の光アイソレータであって、
前記ファラデー回転子に印加される磁場の磁束密度は、0.5T以上3.0T以下である、
光アイソレータ。
【請求項9】
請求項8に記載の光アイソレータであって、
前記入射光の波長がArFエキシマレーザの発振波長である場合に、前記ファラデー材料の光軸方向の厚さは、6mm以上40mm以下である、
光アイソレータ。
【請求項10】
請求項8に記載の光アイソレータであって、
前記入射光の波長がKrFエキシマレーザの発振波長である場合に、前記ファラデー材料の光軸方向の厚さは、13mm以上83mm以下である、
光アイソレータ。
【請求項11】
請求項1に記載の光アイソレータであって、
前記ファラデー材料は、複数に分割されて構成される、
光アイソレータ。
【請求項12】
請求項1に記載の光アイソレータであって、
前記ファラデー回転子は、ヒータと、温度センサとを備え、前記ファラデー材料の温度が許容温度範囲に保たれるように制御される、
光アイソレータ。
【請求項13】
請求項1に記載の光アイソレータであって、
前記ファラデー回転子を前記y軸の回りに回転させる回転ステージを備える、
光アイソレータ。
【請求項14】
紫外線レーザ装置であって、
紫外線波長の直線偏光のパルスレーザ光を出力する発振段レーザと、
前記パルスレーザ光を増幅して出力する増幅器と、
前記発振段レーザと前記増幅器との間の光路上に配置される光アイソレータと、を備え、
前記光アイソレータは、
紫外線波長の直線偏光の入射光に対する規格化透過率が0.9以上の透過軸となるように配置される第1の偏光子と、
前記第1の偏光子を透過した光の偏光方向を磁場によって回転させるファラデー材料を含むファラデー回転子と、
前記ファラデー回転子を透過した前記入射光に対する規格化透過率が0.9以上の透過軸となるように配置される第2の偏光子とを備え、
前記ファラデー材料はフッ化カルシウム結晶であり、
前記フッ化カルシウム結晶の結晶軸である[001]の方向をa軸、[100]の方向をb軸、[010]の方向をc軸とするとき、前記a軸、前記b軸及び前記c軸の3軸が、前記c軸を中心に第1の角度回転し、前記第1の角度回転した前記b軸を中心に第2の角度回転した軸をそれぞれx軸、y軸及びz軸とする場合に、
前記第1の角度は40度以上50度以下であり、
前記第2の角度は45度以上75度以下であり、
前記z軸は、前記第1の偏光子から前記フッ化カルシウム結晶に入射する光の伝搬方向と平行であり、
前記第1の偏光子の透過軸と前記x軸との角度差が0度以上45度以下の範囲になるように、前記フッ化カルシウム結晶が配置される、
紫外線レーザ装置。
【請求項15】
請求項14に記載の紫外線レーザ装置であって、
前記ファラデー回転子に配置されたヒータと、
前記ファラデー回転子の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサからの情報に基づき、前記ファラデー材料の温度変化を抑制するように、前記ヒータを制御するプロセッサと、を備える、
紫外線レーザ装置。
【請求項16】
請求項14に記載の紫外線レーザ装置であって、
前記ファラデー回転子を前記y軸の回りに回転させる回転ステージを備える、
紫外線レーザ装置。
【請求項17】
請求項14に記載の紫外線レーザ装置であって、
前記第2の偏光子と前記増幅器との間に、少なくとも2軸の調整機構を含む光軸調整機構を備える、
紫外線レーザ装置。
【請求項18】
請求項14に記載の紫外線レーザ装置であって、
前記発振段レーザと前記増幅器とのそれぞれは、レーザガスが充填されるチャンバを備える、
紫外線レーザ装置。
【請求項19】
請求項14に記載の紫外線レーザ装置であって、
前記発振段レーザは紫外線固体レーザである、
紫外線レーザ装置。
【請求項20】
電子デバイスの製造方法であって、
紫外線波長の直線偏光のパルスレーザ光を出力する発振段レーザと、
前記パルスレーザ光を増幅して出力する増幅器と、
前記発振段レーザと前記増幅器との間の光路上に配置される光アイソレータと、を備え、
前記光アイソレータは、
紫外線波長の直線偏光の入射光に対する規格化透過率が0.9以上の透過軸となるように配置される第1の偏光子と、
前記第1の偏光子を透過した光の偏光方向を磁場によって回転させるファラデー材料を含むファラデー回転子と、
前記ファラデー回転子を透過した前記入射光に対する規格化透過率が0.9以上の透過軸となるように配置される第2の偏光子とを備え、
前記ファラデー材料はフッ化カルシウム結晶であり、
前記フッ化カルシウム結晶の結晶軸である[001]の方向をa軸、[100]の方向をb軸、[010]の方向をc軸とするとき、前記a軸、前記b軸及び前記c軸の3軸が、前記c軸を中心に第1の角度回転し、前記第1の角度回転した前記b軸を中心に第2の角度回転した軸をそれぞれx軸、y軸及びz軸とする場合に、
前記第1の角度は40度以上50度以下であり、
前記第2の角度は45度以上75度以下であり、
前記z軸は、前記第1の偏光子から前記フッ化カルシウム結晶に入射する光の伝搬方向と平行であり、
前記第1の偏光子の透過軸と前記x軸との角度差が0度以上45度以下の範囲になるように、前記フッ化カルシウム結晶が配置される紫外線レーザ装置を用いて前記増幅器により増幅されたレーザ光を生成し、前記増幅されたレーザ光を露光装置に出力し、
電子デバイスを製造するために、前記露光装置内で感光基板上に前記レーザ光を露光すること
を含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光アイソレータ、紫外線レーザ装置及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体露光装置においては、半導体集積回路の微細化及び高集積化につれて、解像力の向上が要請されている。このため、露光用光源から放出される光の短波長化が進められている。例えば、露光用のガスレーザ装置としては、波長約248nmのレーザ光を出力するKrFエキシマレーザ装置、ならびに波長約193nmのレーザ光を出力するArFエキシマレーザ装置が用いられる。
【0003】
KrFエキシマレーザ装置及びArFエキシマレーザ装置の自然発振光のスペクトル線幅は、350~400pmと広い。そのため、KrF及びArFレーザ光のような紫外線を透過する材料で投影レンズを構成すると、色収差が発生してしまう場合がある。その結果、解像力が低下し得る。そこで、ガスレーザ装置から出力されるレーザ光のスペクトル線幅を、色収差が無視できる程度となるまで狭帯域化する必要がある。そのため、ガスレーザ装置のレーザ共振器内には、スペクトル線幅を狭帯域化するために、狭帯域化素子(エタロンやグレーティング等)を含む狭帯域化モジュール(Line Narrow Module:LNM)が備えられる場合がある。以下では、スペクトル線幅が狭帯域化されるガスレーザ装置を狭帯域化ガスレーザ装置という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-73921号公報
【文献】特開昭61-141189号公報
【文献】特開2011-225400号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Vyatkin, Anton & Snetkov, Ilya & Palashov, Oleg & Khazanov, Efim. “Specificity of Thermally Induced Depolarization in CaF2.”2013 Conference on Lasers and Electro-Optics, CLEO 2013. 10.1364/CLEO_SI.2013.CTu1O.5.
【概要】
【0006】
本開示の一観点に係る光アイソレータは、紫外線波長の直線偏光の入射光に対する規格化透過率が0.9以上の透過軸となるように配置される第1の偏光子と、第1の偏光子を透過した光の偏光方向を磁場によって回転させるファラデー材料を含むファラデー回転子と、ファラデー回転子を透過した入射光に対する規格化透過率が0.9以上の透過軸となるように配置される第2の偏光子とを備えた光アイソレータであって、ファラデー材料はフッ化カルシウム結晶であり、フッ化カルシウム結晶の結晶軸である[001]の方向をa軸、[100]の方向をb軸、[010]の方向をc軸とするとき、a軸、b軸及びc軸の3軸が、c軸を中心に第1の角度回転し、第1の角度回転したb軸を中心に第2の角度回転した軸をそれぞれx軸、y軸及びz軸とする場合に、第1の角度は40度以上50度以下であり、第2の角度は45度以上75度以下であり、z軸は、第1の偏光子からフッ化カルシウム結晶に入射する光の伝搬方向と平行であり、第1の偏光子の透過軸とx軸との角度差が0度以上45度以下の範囲になるように、フッ化カルシウム結晶が配置される。
【0007】
本開示の他の一観点に係る紫外線レーザ装置は、紫外線波長の直線偏光のパルスレーザ光を出力する発振段レーザと、パルスレーザ光を増幅して出力する増幅器と、発振段レーザと増幅器との間の光路上に配置される光アイソレータと、を備え、光アイソレータは、紫外線波長の直線偏光の入射光に対する規格化透過率が0.9以上の透過軸となるように配置される第1の偏光子と、第1の偏光子を透過した光の偏光方向を磁場によって回転させるファラデー材料を含むファラデー回転子と、ファラデー回転子を透過した入射光に対する規格化透過率が0.9以上の透過軸となるように配置される第2の偏光子とを備え、ファラデー材料はフッ化カルシウム結晶であり、フッ化カルシウム結晶の結晶軸である[001]の方向をa軸、[100]の方向をb軸、[010]の方向をc軸とするとき、a軸、b軸及びc軸の3軸が、c軸を中心に第1の角度回転し、第1の角度回転したb軸を中心に第2の角度回転した軸をそれぞれx軸、y軸及びz軸とする場合に、第1の角度は40度以上50度以下であり、第2の角度は45度以上75度以下であり、z軸は、第1の偏光子からフッ化カルシウム結晶に入射する光の伝搬方向と平行であり、第1の偏光子の透過軸とx軸との角度差が0度以上45度以下の範囲になるように、フッ化カルシウム結晶が配置される。
【0008】
本開示の他の一観点に係る電子デバイスの製造方法は、紫外線波長の直線偏光のパルスレーザ光を出力する発振段レーザと、パルスレーザ光を増幅して出力する増幅器と、発振段レーザと増幅器との間の光路上に配置される光アイソレータと、を備え、光アイソレータは、紫外線波長の直線偏光の入射光に対する規格化透過率が0.9以上の透過軸となるように配置される第1の偏光子と、第1の偏光子を透過した光の偏光方向を磁場によって回転させるファラデー材料を含むファラデー回転子と、ファラデー回転子を透過した入射光に対する規格化透過率が0.9以上の透過軸となるように配置される第2の偏光子とを備え、ファラデー材料はフッ化カルシウム結晶であり、フッ化カルシウム結晶の結晶軸である[001]の方向をa軸、[100]の方向をb軸、[010]の方向をc軸とするとき、a軸、b軸及びc軸の3軸が、c軸を中心に第1の角度回転し、第1の角度回転したb軸を中心に第2の角度回転した軸をそれぞれx軸、y軸及びz軸とする場合に、第1の角度は40度以上50度以下であり、第2の角度は45度以上75度以下であり、z軸は、第1の偏光子からフッ化カルシウム結晶に入射する光の伝搬方向と平行であり、第1の偏光子の透過軸とx軸との角度差が0度以上45度以下の範囲になるように、フッ化カルシウム結晶が配置される紫外線レーザ装置を用いて増幅器により増幅されたレーザ光を生成し、増幅されたレーザ光を露光装置に出力し、電子デバイスを製造するために、露光装置内で感光基板上にレーザ光を露光することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
図1図1は、比較例に係る紫外線レーザ装置の構成を概略的に示す側面図である。
図2図2は、比較例に係る紫外線レーザ装置の課題を示す図である。
図3図3は、戻り光を抑制する比較例に係る光アイソレータの構成を概略的に示す。
図4図4は、実施形態1に係る光アイソレータの構成を概略的に示す。
図5図5は、結晶軸を回転させたx軸、y軸及びz軸の定義と回転角α及び回転角βの説明図である。
図6図6は、ファラデー材料の好ましい配置条件の例を示す斜視図である。
図7図7は、第1の偏光子の透過軸とファラデー材料の結晶軸との関係を示す模式図である。
図8図8は、図7において入射光の伝搬する方向に見た場合の第1の偏光子の透過軸とファラデー材料のx軸及びy軸との関係を示す。
図9図9は、非特許文献1から転記したグラフであり、CaF結晶に入射した光の全入射パワーに対する透過光の、入射光の偏光方向に直交する偏光成分の割合である偏光解消度γと回転角βとの関係を示すグラフである。
図10図10は、入射光の波長が193nmである場合の偏光解消度γと回転角βとの関係を推定したグラフである。
図11図11は、ファラデー回転子に印加される磁場とファラデー材料の厚さの好ましい範囲を示す図表である。
図12図12は、偏光子の透過軸とパルスレーザ光の偏光方向との角度差と消光比との関係を示すグラフ及び消光比を規格化透過率に換算したグラフである。
図13図13は、実施形態2に係る光アイソレータの構成を概略的に示す。
図14図14は、実施形態2に適用されるファラデー回転子の正面図である。
図15図15は、図14の15-15線における断面図である。
図16図16は、実施形態3に係る光アイソレータの構成を概略的に示す。
図17図17は、実施形態4に係る紫外線レーザ装置の構成を概略的に示す。
図18図18は、実施形態5に係る紫外線レーザ装置の構成を概略的に示す。
図19図19は、実施形態6に係る紫外線レーザ装置の構成を概略的に示す。
図20図20は、実施形態7に係る紫外線レーザ装置の構成を概略的に示す。
図21図21は、実施形態7に適用される増幅段レーザの構成を概略的に示す上面図である。
図22図22は、露光装置の構成例を概略的に示す。
【実施形態】
【0010】
-目次-
1.用語の説明
2.比較例に係る紫外線レーザ装置の概要
2.1 構成
2.2 動作
3.課題
4.実施形態1
4.1 構成
4.2 第1の偏光子の透過軸とファラデー材料の結晶軸との関係
4.3 回転角α及び回転角βについて
4.4 磁場及びファラデー材料の厚さの好ましい範囲
4.5 偏光子の透過軸とレーザ光の偏光方向との許容角度差
4.6 動作
4.7 作用・効果
4.8 結晶軸の検証方法
4.9 変形例
5.実施形態2
5.1 構成
5.2 動作
5.3 作用・効果
6.実施形態3
6.1 構成
6.2 動作
6.3 作用・効果
7.実施形態4
7.1 構成
7.2 動作
7.3 作用・効果
7.4 変形例
8.実施形態5
8.1 構成
8.2 動作
8.3 作用・効果
9.実施形態6
9.1 構成
9.2 動作
9.3 作用・効果
10.実施形態7
10.1 構成
10.2 動作
10.3 作用・効果
11.電子デバイスの製造方法について
12.光アイソレータの他の応用例
13.その他
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0011】
1.用語の説明
「偏光子」とは、特定の偏光方向(透過軸方向)の光とそれと偏光方向が直交する光を分離する光学素子をいう。
【0012】
本明細書において「平行」という用語は、文脈から明らかな場合を除き、明記がない限り、厳密に平行である場合に限らず、技術的意義が失われることのない実用上許容される角度差の範囲を含む略平行の概念が含まれる。また、本明細書における「直交」又は「垂直」という用語についても、文脈から明らかな場合を除き、明記がない限り、厳密に直交又は垂直である場合に限らず、技術的意義が失われることのない実用上許容される角度差の範囲を含む略直交又は略垂直の概念が含まれる。
【0013】
2.比較例に係る紫外線レーザ装置の概要
2.1 構成
図1は、比較例に係る紫外線レーザ装置20の構成を概略的に示す側面図である。本開示の比較例とは、出願人のみによって知られていると出願人が認識している形態であって、出願人が自認している公知例ではない。
【0014】
紫外線レーザ装置20は、マスターオシレータ(MO)22と、MOビームステアリングユニット24と、パワーオシレータ(PO)26とを含むエキシマレーザ装置である。MO22は、狭帯域化モジュール(LNM)30と、チャンバ32と、出力結合ミラー34とを含む。
【0015】
LNM30は、スペクトル幅を狭帯域化するためのプリズムエキスパンダ36と、グレーティング38とを含む。プリズムエキスパンダ36とグレーティング38とは入射角度と回折角度とが一致するリトロー配置とされる。出力結合ミラー34は、反射率が40%~60%の部分反射ミラーである。出力結合ミラー34は、LNM30と共に光共振器を構成するように配置される。
【0016】
チャンバ32は、光共振器の光路上に配置される。チャンバ32は、一対の放電電極40a,40bと、レーザ光が透過する2枚のウインドウ42,44とを含む。チャンバ32内には、レーザガスが充填される。レーザガスは、レアガスと、ハロゲンガスと、バッファガスとを含む。レアガスは、例えばアルゴン(Ar)又はクリプトン(Kr)ガスであってよい。ハロゲンガスは、例えばフッ素(F)ガスであってよい。バッファガスは、例えばネオン(Ne)ガスであってよい。放電電極40a,40b間には図示しない電源によって電圧が印加される。電源は、スイッチと充電コンデンサとを含むパルスパワーモジュール(PPM)であってよい。
【0017】
MOビームステアリングユニット24は、高反射ミラー50と高反射ミラー52とを含み、MO22から出力されたレーザ光がPO26に入射するように配置される。
【0018】
高反射ミラー50と高反射ミラー52との間に、MOパルスエネルギモニタ54が配置される。MOパルスエネルギモニタ54は、ビームスプリッタ(BS)55と、光センサ56とを含む。BS55は、MO22から出力されるパルスレーザ光の光路上に配置され、BS55の反射光は光センサ56に入射するように配置される。
【0019】
PO26は、リアミラー60と、チャンバ62と、出力結合ミラー64とを含む増幅段レーザである。リアミラー60と出力結合ミラー64とは光共振器を構成し、この光共振器の光路上にチャンバ62が配置される。
【0020】
チャンバ62の構成は、チャンバ32と同様であってもよい。チャンバ62は、一対の放電電極70a,70bと、2枚のウインドウ72,74とを含む。チャンバ62内には、レーザガスが充填される。リアミラー60は、例えば、反射率50%~90%の部分反射ミラーであってよい。出力結合ミラー64は、反射率10%~30%の部分反射ミラーであってよい。
【0021】
2.2 動作
図示しない電源より高電圧パルスがチャンバ32内の放電電極40a,40b間に印加される。チャンバ32内の放電電極40a,40b間で放電が発生すると、レーザガスが励起され、出力結合ミラー34とLNM30とで構成される光共振器によって狭帯域化された、波長が150nmから380nmの紫外線波長のパルスレーザ光が出力結合ミラー34から出力される。
【0022】
出力結合ミラー34から出力されたパルスレーザ光のエネルギは、MOパルスエネルギモニタ54で計測される。また、このパルスレーザ光はMOビームステアリングユニット24によってPO26のリアミラー60にシード光として入射する。
【0023】
リアミラー60を透過したシード光がチャンバ62に入射するタイミングで、図示しない電源より高電圧パルスがチャンバ62内の放電電極70a,70b間に印加される。チャンバ62内の放電電極70a,70b間で放電が発生すると、レーザガスが励起され、出力結合ミラー64とリアミラー60とで構成されるファブリーペロー型の光共振器によって、シード光が増幅され、増幅されたパルスレーザ光が出力結合ミラー64から出力レーザ光として出力される。
【0024】
3.課題
図2は、比較例に係る紫外線レーザ装置20の課題を示す図である。PO26からの戻り光がMO22まで戻るとレーザ性能が悪化する。ここでいう「戻り光」とは、MO戻り光と、PO抜け光との2種類の光の和を指す。MO22より出射された光は、PO26へと入射されるが、PO26内のリアミラー60は部分反射ミラー(反射率50%~90%)であるため、リアミラー60に入射する光の一部はPO26内部へ向かわずにそのままMO22側へ戻ってしまう。PO26のチャンバ62内に進むことなく、リアミラー60によって反射されてMO22側へと戻る光を「MO戻り光」という。
【0025】
一方、MO22よりPO26へ入射され、リアミラー60を透過した光は、PO26内で共振・増幅されて出力される。前述のとおり、PO26内のリアミラー60は部分反射ミラーであるため、PO26のチャンバ62に入射して増幅された光の一部はMO22へ戻ってしまう。PO26で増幅された光のうちリアミラー60を透過してMO22へと戻る光を「PO抜け光」という。
【0026】
戻り光は、LNM30などの熱負荷となり、線幅の安定性や、パルスエネルギの安定性等が悪化する原因となり得る。MO22に進入する戻り光を抑制するために、MO22とPO26との間に光アイソレータを配置する方法がある。
【0027】
図3は、戻り光を抑制する比較例に係る光アイソレータ80の構成例を示す。図3の上段には、MO22からPO26へと向かって進むパルスレーザ光(MO注入光:行きの光)に対する光アイソレータ80の動作を示す。図3の下段には、PO26からMO22へと向かって進むレーザ光(戻りの光)に対する光アイソレータ80の動作を示す。
【0028】
光アイソレータ80は、MO22の側から、第1の偏光子83と、ファラデー回転子84と、第2の偏光子88とがこの順に配置される。ファラデー回転子84は、ファラデー材料85と磁石86とを含む。なお、図3において、ファラデー回転子84中に示す右向きの矢印は、磁石86による磁場の方向を表している。図中の破線円内に示す両向き矢印は、パルスレーザ光が進む方向に視線を合わせたときのパルスレーザ光の偏光面の方向、すなわち偏光方向を表している。
【0029】
図3の上段に示すように、MO22から水平方向に偏光した直線偏光のパルスレーザ光が出力される。MO22から出力されたパルスレーザ光は、1/2波長板81によって偏光方向が反時計回り方向に45度回転する。第1の偏光子83は、その透過軸が1/2波長板81から出力されたパルスレーザ光の偏光方向と平行に配置されており、1/2波長板81から出力されたパルスレーザ光は、第1の偏光子83を透過する。
【0030】
第1の偏光子83を透過したパルスレーザ光は、磁場が印加されたファラデー回転子84により偏光方向が時計回り方向に45度回転する。これにより、ファラデー回転子84から出力されたパルスレーザ光は水平偏光となる。第2の偏光子88は、その透過軸がファラデー回転子84から出力されたパルスレーザ光の偏光方向と平行に配置されており、ファラデー回転子84から出力されたパルスレーザ光は、第2の偏光子88を透過した後、PO26に入射する。
【0031】
1/2波長板81は、MO22から出力されたパルスレーザ光の偏光方向とPO26に入射するパルスレーザ光の偏光方向とが同じになるように、MO22からのパルスレーザ光の偏光方向を調整する。これにより、偏光方向に依存する他のモジュールを変更しないで済む。
【0032】
一方、PO26からの戻り光は、図3の下段に示すように、PO26への入射光と同じ偏光方向で第2の偏光子88を透過し、磁場が印加されたファラデー回転子84により偏光方向が時計回り方向に45度回転する。ファラデー回転子84を通過した戻り光の偏光方向は第1の偏光子83の透過軸と直交しており、戻り光は第1の偏光子83で反射されてMO22に入射しない。
【0033】
ここで、波長約193nmのエキシマレーザのような、波長の短い光の戻り光を抑制する場合、ファラデー回転子84のファラデー材料85としてフッ化カルシウム(CaF)結晶が用いられる。
【0034】
CaF結晶に高出力のレーザ光、例えば10W以上のレーザ光が入射した場合、熱複屈折の影響が無視できなくなり、偏光純度が悪化する。この偏光純度の悪化により、第1の偏光子83で反射される戻りの光の割合が低下し、光アイソレータ80のアイソレーション比が劣化する。
【0035】
4.実施形態1
4.1 構成
図4は、実施形態1に係る光アイソレータ120の構成を概略的に示す。図4に示す構成について、図3と異なる点を説明する。光アイソレータ120は、図3のファラデー回転子84に代えて、ファラデー材料135を含むファラデー回転子112を備える。ファラデー材料135は、CaF結晶であり、実施形態1では、ファラデー材料135の透過前後でレーザ光の偏光純度の悪化が少なくなるようにファラデー回転子112が配置される点で、図3の構成と異なる。
【0036】
具体的には、ファラデー材料135の結晶軸と、入射する光の伝搬方向が以下の関係になるようにファラデー回転子112が配置される。すなわち、ファラデー材料135がCaF結晶である場合、図5に示すように、結晶軸である[001]の方向をa軸、[100]の方向をb軸、[010]の方向をc軸としたとき、a軸、b軸及びc軸の3軸が、c軸を中心にα回転し、α回転したb軸を中心にβ回転した軸をそれぞれx軸、y軸及びz軸とする。回転角αと回転角βとについては後述する。
【0037】
そして、図6に示すように、ファラデー材料135のz軸がレーザ光の伝搬方向と平行で、かつファラデー材料135の媒質長の概ね中心でレーザ光の偏光方向がx軸と平行になるように、ファラデー材料135を配置する。他の構成は、図3と同様であってよい。
【0038】
4.2 第1の偏光子の透過軸とファラデー材料の結晶軸との関係
図7は、第1の偏光子83の透過軸TA1とファラデー材料135のx軸及びy軸との関係を概略的に示す側面図である。図8は、入射する光が伝搬する方向(z軸)に見た場合の第1の偏光子83の透過軸TA1とファラデー材料135のx軸及びy軸との関係を示す。第1の偏光子83を透過してファラデー回転子112に入射する光の偏光方向はx軸と平行である。また、入射光の偏光方向がファラデー回転子112によって回転する方向は、図8において時計回り方向である。第1の偏光子83の透過軸TA1と、入射光の偏光方向との角度差θの好ましい範囲は、入射光の偏光方向がファラデー回転子112によって回転する方向に、0度以上45度以下である。
【0039】
4.3 回転角α及び回転角βについて
図9は、非特許文献1に記載されているFig.1を転記したグラフである。図9には、CaF結晶に入射した光の全入射パワーに対する透過光の、入射光の偏光方向に対して直交した偏光成分の割合である偏光解消度γの回転角βの依存性が示されている。図9において回転角αは45度である。図9中の実線で示すグラフから、βが50度から60度のときが、偏光方向の変化する割合が小さく、偏光純度の悪化が小さい。
【0040】
この図9は、入射光の波長が1074nmである場合のグラフであるため、入射光の波長が193nmである場合についてのγの値と回転角βとの関係を推定すると、図10に示すようになる。図10の縦軸は、βが0度のときのγの値を「1」として規格化した。
【0041】
図10によれば、βの好ましい範囲は、45度~75度、さらに好ましい範囲は、54度~66度、最も好まし範囲は58度~62度である。図10のグラフから、好ましい回転角は、αが45度のとき、βが45度~75度と推定される。また、αの許容範囲は45度±5度である。なお、「45度~75度」等の数値範囲を示す表記は、「~」の前後に示す数値を含む範囲を示しており、例えば「45度~75度」の表記は「45度以上75度以下」を意味する。回転角αは本開示における「第1の角度」の一例であり、回転角βは本開示における「第2の角度」の一例である。
【0042】
図10は、入射光の波長が193nmである場合のグラフであるが、入射光の波長が248nmなど他の紫外線波長の場合も、図10のグラフから僅かなズレはあるものの、概ね図10のグラフと同様のグラフとなり得る。よって、図10から把握される回転角α、βについての上述の好ましい範囲は、248nmなど他の紫外線波長の入射光についても適用される。
【0043】
4.4 磁場及びファラデー材料の厚さの好ましい範囲
ファラデー材料135がCaF結晶であるときの磁場及びファラデー材料135の厚さの好ましい範囲を、入射光の波長が193nmの場合と248nmの場合とについて図11に示す。ArFエキシマレーザの発振波長には波長193nmが含まれる。KrFエキシマレーザの発振波長には波長248nmが含まれる。
【0044】
好ましい範囲は、磁場の実現しやすさを基に選定した。最も好ましい範囲の磁場は、磁力の強いネオジム磁石等を使用した場合の磁束密度である。ファラデー材料135の厚さは、選択した材料及び磁場の磁束密度と、ヴェルデ定数とを基に、ファラデー効果による偏光面の回転が45度となる厚さを算出した値である。
【0045】
ファラデー材料135がCaF結晶であって、入射光の波長がArFエキシマレーザの発振波長である193nmである場合、ファラデー回転子112に印加する磁場とファラデー材料135の光軸方向の厚さの選択可能範囲は、図11に示すように、0.5T~3.0Tと6mm~40mmとである。さらに好ましくは、0.75T~2.9Tと10mm~30mmとであり、最も好ましくは、0.8T~1.5Tと15mm~25mmとである。
【0046】
また、入射光の波長がKrFエキシマレーザの発振波長である248nmである場合、ファラデー回転子112に印加する磁場とファラデー材料135の光軸方向の厚さの選択可能範囲は、0.5T~3.0Tと13mm~83mmとである。さらに好ましくは、0.75T~2.9Tと20mm~55mmとであり、最も好ましくは、0.8T~1.5Tと30mm~50mmとである。
【0047】
ファラデー回転子112は、ファラデー回転子112に組み込むCaF結晶を加工する段階で、結晶軸の方向や光軸方向の厚さなど、定められたパラメータに基づいて、作製される。
【0048】
なお、ファラデー材料135は、複数個に分割して、これらの合計で上記の厚さを満たしてもよい。分割される個数は、例えば、2個や3個や4個などでもよい。
【0049】
4.5 偏光子の透過軸とレーザ光の偏光方向との許容角度差
第1の偏光子83及び第2の偏光子88のそれぞれの透過軸と、各偏光子に入射させるパルスレーザ光の偏光方向とは平行であることが最も好ましいが、厳密に平行である場合に限らず、実用上目的の機能を果たすことができる範囲で、両者の角度差が許容される。
【0050】
図12は、偏光子の透過軸とパルスレーザ光の偏光方向との角度差と消光比(dB)との関係を示すグラフ及び消光比を規格化透過率に換算したグラフを示す。図12の左側の縦軸は消光比を表し、右側の縦軸は規格化透過率を表す。規格化透過率は、角度差が0度のときの透過率が1.0になるように規格化した値である。
【0051】
MO22から出力されたパルスレーザ光を透過する第1の偏光子83と、ファラデー回転子112から出力されたパルスレーザ光を透過する第2の偏光子88のそれぞれにおいて、入射するパルスレーザ光に対する規格化透過率が0.9以上であれば、実用的に十分有効に機能し得る。したがって、図12によれば、第1の偏光子83又は第2の偏光子88の透過軸とパルスレーザ光の偏光方向との角度差の好ましい許容範囲は、規格化透過率が0.9以上になる±17.5度の範囲である。
【0052】
4.6 動作
MO22から出力され第1の偏光子83を透過した直線偏光のパルスレーザ光は、磁場が印加されたファラデー回転子112により、ファラデー回転子112の透過の前後で偏光方向が時計回り方向に45度回転する。第2の偏光子88は、その透過軸がファラデー回転子112から出力されたパルスレーザ光の偏光方向と平行に配置されており、ファラデー回転子112から出力されたパルスレーザ光は、第2の偏光子88を透過した後、PO26に入射する。
【0053】
一方、PO26からの戻り光は、第2の偏光子88を透過し、磁場が印加されたファラデー回転子112により偏光方向が時計回り方向に45度回転する。ファラデー回転子112を透過した戻り光の偏光方向は第1の偏光子83の透過軸と直交しており、戻り光は第1の偏光子83で反射される。こうして、PO26からの戻りの光は、ファラデー回転子112を透過後に第1の偏光子83によって反射され、MO22への入射が抑制される。
【0054】
図6を用いて説明した「ファラデー材料135の中心でレーザ光の偏光方向がx軸と平行になる」という条件は、好ましい条件の1つである。厳密にファラデー材料135の媒質長における中心の位置で偏光方向がx軸と平行になるようにファラデー回転子112を配置することまでは要求されない。ファラデー材料135に入射した光は、ファラデー効果により偏光面が回転するため、ファラデー材料135の媒質中を進む光の光路の途中で(ファラデー材料135の媒質中のどこかで)偏光方向がx軸と平行になれば、偏光純度の悪化の抑制効果が高くなる。ファラデー材料135の厚みの中心付近で偏光方向がx軸と平行になるように、ファラデー回転子112を配置することにより、偏光純度の悪化抑制の効果がアベレージングされる点で特に好ましい。
【0055】
4.7 作用・効果
実施形態1に係る光アイソレータ120によれば、高出力のレーザ光がファラデー回転子112に入射しても、熱複屈折の影響による偏光純度の悪化が抑制され、高いアイソレーション比を維持することができる。
【0056】
ファラデー回転子112を上述の条件を満たして配置にすることにより、光弾性効果によるひずみも小さくなり、同じ入熱量でも熱複屈折の影響を抑えることが可能になる。
【0057】
4.8 結晶軸の検証方法
実施形態1で説明した条件を満たす光アイソレータの構成であるか否かを検証する方法として、例えば、次のような方法がある。
【0058】
[手順1]ファラデー回転子112に入っているファラデー材料(CaF結晶)135について、背面反射ラウエ法や透過ラウエ法により結晶方位解析を行い、ファラデー材料135の結晶軸を特定する。
【0059】
[手順2]第1の偏光子83の透過軸を、第1の偏光子83に刻印されているマークから特定する。または、直線偏光のレーザ光を用いて透過軸の方向を測定する。
【0060】
上記の手順1、2により、ファラデー材料135の結晶軸と、入射光の伝搬方向との関係がわかる。また、ファラデー材料135の結晶軸と第1の偏光子83の透過軸との関係がわかる。
【0061】
4.9 変形例
実施形態1では、第1の偏光子83を透過してファラデー回転子112に入射する行きの光の偏光方向がファラデー回転子112の透過の前後で維持され、第2の偏光子88を透過してファラデー回転子112に入射する戻り光の偏光方向がファラデー回転子112の透過の前後で90度回転する例を説明したが、この例に限らず、実用上目的の機能を果たすことができる範囲で、ファラデー回転子112の透過の前後における偏光方向の角度差が許容される。図12によれば、第1の偏光子83を透過してファラデー回転子112に入射する行きの光の偏光方向は、ファラデー回転子112の透過の前後で17.5度以内の角度差に維持され、第2の偏光子88を透過してファラデー回転子112に入射する戻り光の偏光方向は、ファラデー回転子112の透過の前後で90度±17.5度以内の角度回転するように構成されてよい。第1の偏光子83に入射する行きの光の偏光方向と、PO26から戻る戻り光がファラデー回転子112を透過して第1の偏光子83に入射するときの偏光方向とが90度±17.5度以内の角度で交差する構成により、戻り光は第1の偏光子83で反射され、MO22への入射が抑制される。
【0062】
5.実施形態2
5.1 構成
図13は、実施形態2に係る光アイソレータ122の構成を概略的に示す。図13に示す構成について、図3及び図4と異なる点を説明する。実施形態2に係る光アイソレータ122は、実施形態1におけるファラデー回転子112に代えて、温度調整が可能なファラデー回転子113が用いられ、ファラデー回転子113を一定の温度に温度制御する構成を備えている点で実施形態1の構成と異なる。
【0063】
図14は、ファラデー回転子113の構成を概略的に示す正面図であり、図15は、図14の15-15線における断面図である。ファラデー材料135はホルダ137に保持され、中空構造の磁石136の内部に配置される。ファラデー回転子113は、ヒータ138a,138bと、温度センサ139とを含む。ヒータ138a,138b及び温度センサ139は、ホルダ137に取り付けられている。ヒータ138a,138bは、ファラデー材料135を挟んで対称的な位置に、光軸方向と平行に延在するように配置される構成が好ましい。温度センサ139は、ファラデー回転子113の温度を検出する。
【0064】
光アイソレータ122は、ヒータ電源142と、ファラデー回転子113の温度を制御するプロセッサ144とを備える(図13参照)。ヒータ電源142は、ヒータ138a,138bに電力を供給する。
【0065】
プロセッサ144は、温度センサ139から得られる情報を基に、ファラデー回転子113の温度を一定に保つようにヒータ電源142を制御する。なお、「一定に保つ」という記載には、許容される範囲内に保つことが含まれる。プロセッサ144は、ファラデー材料135の温度変化を抑制するように、ヒータ電源142を介してヒータ138a,138bを制御する。プロセッサ144は、制御プログラムが記憶された記憶装置と、制御プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)とを含む処理装置である。
【0066】
他の構成は、実施形態1と同様であってよい。ファラデー回転子113は、図5図11で説明した条件等を満たして配置される。
【0067】
5.2 動作
プロセッサ144は、ヒータ電源142を介してヒータ138a,138bを駆動し、ファラデー回転子113の温度センサ139によって温度を監視し、所定の温度に保つようにファラデー回転子113を温調する。所定の温度は、例えば、100℃以下で室温が好ましい。また、好ましい温度の制御範囲は±1℃である。他の動作は実施形態2と同様である。
【0068】
5.3 作用・効果
図10に示す好ましいβの角度は温度依存性があるので、実施形態2に係る光アイソレータ122によれば、温度を一定に制御することにより、好ましいβが変化することによる偏光純度の悪化を抑制することができ、高いアイソレーション比を維持することができる。
【0069】
また、実施形態2の構成によれば、温度を一定に制御することにより、温度変化による光路長の変化が抑制され、偏光の回転角を一定に保つことができ、アイソレーション比の悪化を抑制することができる。
【0070】
6.実施形態3
6.1 構成
図16は、実施形態3に係る光アイソレータ123におけるファラデー回転子112の部分の構成を概略的に示す。なお、光アイソレータ123は、図4の光アイソレータ120と同様に、図16には示されていない、第1の偏光子83及び第2の偏光子88を含む。図16に示す構成について、図4と異なる点を説明する。
【0071】
実施形態3に係る光アイソレータ123は、ファラデー回転子112をy軸の回りに回転させる回転ステージ150を有する。他の構成は、図4と同様であってよい。
【0072】
6.2 動作
回転ステージ150を動かすことにより、ファラデー回転子112はy軸の回りに回転する。b軸がc軸を中心にα回転したy軸を中心にファラデー回転子112を回転させることにより、αの回転角を維持しつつ、βの回転角を調整できる。
【0073】
6.3 作用・効果
実施形態3に係る光アイソレータ123によれば、βの回転角を、ファラデー回転子112の透過前後で偏光純度の悪化が少ない角度に調整することができる。その結果、アイソレーション比を高くすることができる。
【0074】
7.実施形態4
7.1 構成
図17は、実施形態4に係る紫外線レーザ装置100の構成例を概略的に示す。図17に示す構成について、図1と異なる点を説明する。紫外線レーザ装置100は、MO22とPO26との間の光路上に1/2波長板81と光アイソレータ120とが配置される点で図1の構成と異なる。光アイソレータ120の構成は、実施形態1で説明した構成と同様であり、第1の偏光子83と、ファラデー回転子112と、第2の偏光子88とを含み、ファラデー回転子112は、実施形態1で説明したように、CaF結晶の結晶軸を特定の条件を満たすように配置した構成となっている。
【0075】
光アイソレータ120は、さらに戻り光終端用のダンパー116を含む。ダンパー116は、第1の偏光子83によって反射された戻り光がダンパー116に入射するように配置される。他の構成は、図1及び図4と同様であってよい。
【0076】
図17においては、MO22とPO26との間の光路上のa点、b点、c点及びd点で示す各箇所におけるパルスレーザ光の偏光方向も示す。図17には、MO22からPO26の方向に伝搬するパルスレーザ光についてのa点~d点の各箇所での偏光方向と、PO26からMO22の方向に進む戻り光についてのd点及びc点の各箇所での偏光方向を示す。
【0077】
7.2 動作
1/2波長板81及び光アイソレータ120の動作は、図3及び実施形態1と同様である。MO22から出力され、特定の方向に偏光したパルスレーザ光(a点)は1/2波長板81によって偏光方向が反時計回り方向に45度回転する(b点)。
【0078】
第1の偏光子83は、その透過軸が1/2波長板81から出力されたパルスレーザ光の偏光方向と平行になるように配置されているため、1/2波長板81により偏光方向が回転したパルスレーザ光は第1の偏光子83を透過する(c点)。
【0079】
第1の偏光子83を透過したパルスレーザ光はファラデー回転子112に入射し、ファラデー回転子112により偏光方向が時計回り方向に45度回転する(d点)。第2の偏光子88は、その透過軸がファラデー回転子112により偏光方向が回転したパルスレーザ光の偏光方向と平行になるように配置されているため、ファラデー回転子112により偏光方向が回転したパルスレーザ光は第2の偏光子88を透過する。MO22からPO26に進むパルスレーザ光のa点の偏光方向とe点の偏光方向とは同じである。
【0080】
図17中のe点において、MO22からPO26の方向に伝搬するパルスレーザ光の偏光方向と、PO26からMO22の方向に戻るパルスレーザ光(戻り光)の偏光方向とは同じである。このため、PO26からMO22の方向に進む戻り光は、第2の偏光子88を透過する。
【0081】
第2の偏光子88を透過した戻り光は、次に、ファラデー回転子112により偏光方向が時計回りに45度回転する(c点)。c点において、MO22からPO26の方向に伝搬するパルスレーザ光の偏光方向と、PO26からMO22の方向に戻るパルスレーザ光の偏光方向とは直交する。このため、PO26からMO22の方向に戻るパルスレーザ光は、第1の偏光子83により反射されて、ダンパー116に入射する。ダンパー116は、第1の偏光子83で反射された光を吸収し遮断する。
【0082】
7.3 作用・効果
実施形態4に係る紫外線レーザ装置100によれば、高出力のレーザ光がファラデー回転子112に入射しても、熱複屈折の影響による偏光純度の悪化が抑制され、高いアイソレーション比を維持することができる。
【0083】
また、実施形態4の構成によれば、MO22の方向に戻るパルスレーザ光は、第1の偏光子83によって反射され、MO22への入射が抑制されるため、MO22への熱負荷が軽減され、エネルギ安定性や線幅安定性などが比較例の構成(図1)よりも向上する。
【0084】
7.4 変形例
MOパルスエネルギモニタ54の配置については、光アイソレータ120の上流側又は下流側のいずれにも配置することが可能であるが、図17のように、光アイソレータ120の上流側に配置する構成が好ましい。
【0085】
8.実施形態5
8.1 構成
図18は、実施形態5に係る紫外線レーザ装置105の構成を概略的に示す。図18に示す構成について、図17と異なる点を説明する。図18に示す紫外線レーザ装置105は、第2の偏光子88とPO26との間の光路上に、2軸調整可能な平行平面基板202と、2軸調整可能な高反射ミラー52とが配置される点で、図17に示す構成と異なる。平行平面基板202は、直交する2軸のそれぞれを回転軸として角度の調整が可能な2軸角度調整ホルダ204に保持される。
【0086】
平行平面基板202は、第2の偏光子88と高反射ミラー52との間の光路上に配置される。平行平面基板202はフッ化カルシウムの基板であってよい。2軸角度調整ホルダ204は、例えば、図18の紙面に垂直な軸と、平行平面基板202の基板面及び図18の紙面に平行な軸とのそれぞれを回転軸として角度調整が可能なホルダであってよい。
【0087】
高反射ミラー52は、直交する2軸のそれぞれを回転軸として角度の調整が可能な2軸角度調整ホルダ208に保持される。2軸角度調整ホルダ208は、例えば、図18の紙面に垂直な軸と、高反射ミラー52の反射面及び図18の紙面に平行な軸とのそれぞれを回転軸として角度調整が可能なホルダであってよい。
【0088】
8.2 動作
光軸の調整は、2軸調整可能な平行平面基板202と、2軸調整可能な高反射ミラー52とを調整することにより、MO22からのパルスレーザ光がPO26に最も効率的に入射されるように行われる。
【0089】
2軸調整可能な平行平面基板202は、MO22からのパルスレーザ光を進行方向と平行にシフトすることにより、PO26に最も効率的にパルスレーザ光が入射されるように調整される。
【0090】
2軸調整可能な高反射ミラー52は、MO22からのパルスレーザ光がPO26に入射される角度を変更することにより、PO26に最も効率的にパルスレーザ光が入射されるように調整される。
【0091】
2軸角度調整ホルダ204及び2軸角度調整ホルダ208のそれぞれは本開示における「光軸調整機構」の一例である。2軸調整可能な平行平面基板202と、2軸調整可能な高反射ミラー52とを両方備える構成は好ましい形態であるが、これらのうち1つのみを備える構成も可能である。
【0092】
8.3 作用・効果
実施形態5に係る紫外線レーザ装置105によれば、実施形態4と同様の効果が得られる。さらに、実施形態5の構成によれば、PO26に入射させる注入光の光軸調整が実施形態4の構成に比べて容易になる。
【0093】
9.実施形態6
9.1 構成
図19は、実施形態6に係る紫外線レーザ装置106の構成を概略的に示す。図19に示す構成について、図17と異なる点を説明する。図19に示す紫外線レーザ装置106は、図17におけるMO22の代わりに、発振段レーザとして紫外線固体レーザ装置232を備え、PO26の代わりに、エキシマ増幅器236を備える。他の構成は、図17に示す構成と同様であってよい。
【0094】
紫外線固体レーザ装置232は、例えば、近赤外帯(波長780nm~波長2500nm)を基本波とする固体レーザの第4倍波、第5倍波又は第6倍波(波長150nm~波長380nmの範囲)を出力する。例えば、紫外線固体レーザ装置232は、約193nmの波長のシード光を出力し、シード光がエキシマ増幅器236に入射するように配置される。
【0095】
一例として、紫外線固体レーザ装置232は、半導体レーザシステムと、チタンサファイヤ増幅器と、波長変換システムとを含む構成であってもよい。半導体レーザシステムは、波長約773.6nmのCWレーザ光を出力する分布帰還型(Distributed Feedback:DFB)の半導体レーザと、CWレーザ光をパルス化する半導体光増幅器(Semiconductor Optical Amplifier:SOA)とを含む構成であってよい。波長変換システムは、複数の非線形光学結晶を含み、入射したパルスレーザ光を波長変換して4倍高調波のパルスレーザ光を出力する。波長変換システムは、例えば、LBO結晶と、KBBF結晶とを含む。LBO結晶は化学式LiBで表される非線形光学結晶である。KBBF結晶は、化学式KBeBOで表される非線形光学結晶である。
【0096】
エキシマ増幅器236は、チャンバ242と、凸面シリンドリカルミラー244と、凹面シリンドリカルミラー246とを含む。
【0097】
チャンバ242は、1対の放電電極250a,250bと、レーザ光が透過する2枚のウインドウ252,254とを含む。放電電極250a,250bは放電空間256を挟んで対向して配置される。放電電極250a,250bの間の空間が放電空間256となる。放電電極250a,250bが放電空間256を挟んで対向する方向が放電方向に相当する。チャンバ242には、図1で説明したレーザガスと同様のレーザガスが充填される。
【0098】
凸面シリンドリカルミラー244の凸曲面及び凹面シリンドリカルミラー246の凹曲面にはそれぞれ波長約193nmに対する高反射膜がコートされている。
【0099】
凸面シリンドリカルミラー244と凹面シリンドリカルミラー246とは、紫外線固体レーザ装置232からのシード光が、エキシマ増幅器236の放電空間256を3回通過することによって、放電方向にビーム拡大され、増幅されるように配置される。
【0100】
9.2 動作
紫外線固体レーザ装置232から出力されたシード光は、光アイソレータ120を透過して、エキシマ増幅器236に入射する。エキシマ増幅器236に入射した波長約193nmのシード光は、凸面シリンドリカルミラー244及び凹面シリンドリカルミラー246で反射することにより、放電電極250a,250bの間の放電空間256を3回通過する。これにより、シード光のビームが拡大されて増幅される。エキシマ増幅器236は本開示における「マルチパス増幅器」の一例である。3パスのエキシマ増幅器236に限らず、各種のマルチパス増幅器を適用可能である。
【0101】
光アイソレータ120の動作は、実施形態1と同様である。光アイソレータ120は、エキシマ増幅器236で発生した自然放射増幅光(Amplified Spontaneous Emission:ASE)等が紫外線固体レーザ装置232に入射するのを抑制する。
【0102】
9.3 作用・効果
実施形態6に係る紫外線レーザ装置106によれば、エキシマ増幅器236から紫外線固体レーザ装置232の方向に戻る光は紫外線固体レーザ装置232に入射しないため、紫外線固体レーザ装置232への熱負荷が軽減され、エネルギ安定性や線幅安定性などが比較例の構成よりも向上する。
【0103】
10.実施形態7
10.1 構成
図20は、実施形態7に係る紫外線レーザ装置107の構成を概略的に示す。図20に示す構成について、図17と異なる点を説明する。実施形態7に係る紫外線レーザ装置107は、実施形態4の構成に対して、増幅段レーザの構成及びMO22からのレーザ光を増幅段レーザに導入する高反射ミラーの構成が異なる。
【0104】
図17に示す実施形態4の増幅段レーザは、リアミラー60と出力結合ミラー64とで構成されるファブリーペロー型の光共振器を有するPO26であるのに対し、図20に示す実施形態7の増幅段レーザは、リング共振器270を有するPO266である点が異なる。
【0105】
図21は、実施形態7に適用されるPO266の構成を概略的に示す上面図である。リング共振器270は、高反射ミラー284、高反射ミラー285、高反射ミラー286及び部分反射ミラー290を含んで構成される。
【0106】
紫外線レーザ装置107は、MO22から出力され高反射ミラー50と高反射ミラー52とにより反射されたレーザ光をリング共振器270に導入するため、高反射ミラー283が配置される。高反射ミラー283は、高反射ミラー52で反射されたレーザ光を部分反射ミラー290に入射させるように、高反射ミラー52と部分反射ミラー290との間の光路上に配置される。
【0107】
10.2 動作
MO22から出力されたレーザ光は、高反射ミラー50、高反射ミラー52及び高反射ミラー283で順次反射された後、部分反射ミラー290からリング共振器270に入射する。
【0108】
部分反射ミラー290を透過したレーザ光は、高反射ミラー284で反射された後にチャンバ62に入射して増幅され、その後、高反射ミラー285及び高反射ミラー286で反射され、再び、チャンバ62に入射して増幅される。そして、チャンバ62から出力されたレーザ光は部分反射ミラー290によって一部は透過し、他の一部は反射されてリング共振器270で再び増幅される。
【0109】
部分反射ミラー290を透過した増幅パルスレーザ光は、紫外線レーザ装置107から出力される。
【0110】
光アイソレータ120は、PO266からの戻り光がMO22に入射するのを抑制する。1/2波長板81及び光アイソレータ120の動作は、図3及び図17で説明した実施形態4と同様である。
【0111】
10.3 作用・効果
実施形態7に係る紫外線レーザ装置107によれば、実施形態4と同様の効果が得られる。
【0112】
11.電子デバイスの製造方法について
図22は、露光装置300の構成例を概略的に示す。露光装置300は、照明光学系304と投影光学系306とを含む。照明光学系304は、紫外線レーザ装置100から入射したレーザ光によって、レチクルステージRT上に配置された図示しないレチクルのレチクルパターンを照明する。投影光学系306は、レチクルを透過したレーザ光を、縮小投影してワークピーステーブルWT上に配置された図示しないワークピースに結像させる。ワークピースはフォトレジストが塗布された半導体ウエハ等の感光基板である。
【0113】
露光装置300は、レチクルステージRTとワークピーステーブルWTとを同期して平行移動させることにより、レチクルパターンを反映したレーザ光をワークピースに露光する。以上のような露光工程によって半導体ウエハにレチクルパターンを転写後、複数の工程を経ることで半導体デバイスを製造できる。半導体デバイスは本開示における「電子デバイス」の一例である。紫外線レーザ装置100に代えて、実施形態5~7で説明した紫外線レーザ装置105、106又は107を用いてレーザ光を生成してもよい。
【0114】
12.光アイソレータの他の応用例
実施形態1~7において例示した光アイソレータ120、122及び123は、紫外線レーザ装置に限らず、様々な用途に適用可能である。例えば、光アイソレータ120への入射光は、パルスレーザ光に限らず、CWレーザ光であってもよいし、放射光であってもよい。例えば、光アイソレータ120は、加速器における放射光の出口に配置されてもよい。また、光アイソレータ120は、重水素ランプを用いた分光器における紫外域の波長の迷光を抑制するために配置されてもよい。光アイソレータ122及び123についても同様である。
【0115】
13.その他
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図している。従って、特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかである。また、本開示の実施形態を組み合わせて使用することも当業者には明らかである。
【0116】
本明細書及び特許請求の範囲全体で使用される用語は、明記が無い限り「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」、「有する」、「備える」、「具備する」などの用語は、「記載されたもの以外の構成要素の存在を除外しない」と解釈されるべきである。また、修飾語「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。また、「A、B及びCの少なくとも1つ」という用語は、「A」「B」「C」「A+B」「A+C」「B+C」又は「A+B+C」と解釈されるべきである。さらに、それらと「A」「B」「C」以外のものとの組み合わせも含むと解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22