IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ DIC株式会社の特許一覧 ▶ 独立行政法人産業技術総合研究所の特許一覧

特許75377163-ヒドロキシ酪酸からなるコポリエステル及びその製造方法
<>
  • 特許-3-ヒドロキシ酪酸からなるコポリエステル及びその製造方法 図1
  • 特許-3-ヒドロキシ酪酸からなるコポリエステル及びその製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】3-ヒドロキシ酪酸からなるコポリエステル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/60 20060101AFI20240814BHJP
   C08G 63/78 20060101ALI20240814BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20240814BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20240814BHJP
【FI】
C08G63/60 ZBP
C08G63/78
C08L67/02
C08L101/16
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023567920
(86)(22)【出願日】2023-07-31
(86)【国際出願番号】 JP2023027959
(87)【国際公開番号】W WO2024029492
(87)【国際公開日】2024-02-08
【審査請求日】2023-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2022122988
(32)【優先日】2022-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100215935
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 茂輝
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 翔
(72)【発明者】
【氏名】高野 啓
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 英知
(72)【発明者】
【氏名】中山 敦好
(72)【発明者】
【氏名】川崎 典起
(72)【発明者】
【氏名】山野 尚子
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112708246(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111205603(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101045810(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0089862(US,A1)
【文献】特開2018-016720(JP,A)
【文献】国際公開第2020/242874(WO,A1)
【文献】特開2017-025138(JP,A)
【文献】特開2006-274252(JP,A)
【文献】特開2018-109103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/60-63/91
C08L 67/00-67/08
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コポリエステルが、3-ヒドロキシ酪酸(3HB)由来の構成単位(3HB-U)と、ジカルボン酸(DA)由来の構成単位(DA-U)と、ジオール(DO)由来の構成単位(DO-U)と、を有し、
前記ジカルボン酸(DA)が 1-16 アルカンジ-カルボン酸を含み、
前記ジオール(DO)が 2-10 アルカンジオールを含み、
前記ジカルボン酸(DA)と前記ジオール(DO)がエステル結合を形成し、
前記コポリエステルの全構成単位100モルに対して、前記3-ヒドロキシ酪酸(3HB)由来の構成単位(3HB-U)の含有率が、1~65モル%であり、
前記コポリエステルにおける前記3-ヒドロキシ酪酸(3HB)由来の構成単位(3HB-U)の平均連鎖長が2~80であり、
前記コポリエステルの酸価が5以下であることを特徴とするコポリエステル。
【請求項2】
前記3-ヒドロキシ酪酸(3HB)同士のポリエステルであるポリ(3-ヒドロキシ酪酸)(PHB)と、前記ジカルボン酸(DA)及び前記ジオール(DO)のポリエステル(PAO)との反応物である、請求項1に記載のコポリエステル。
【請求項3】
前記ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)(PHB)の数平均分子量が、1,000~500,000である、請求項2に記載のコポリエステル。
【請求項4】
前記ポリエステル(PAO)の数平均分子量が、5,000~500,000である、請求項2に記載のコポリエステル。
【請求項5】
前記ポリエステル(PAO)の酸価が、5以下である請求項2に記載のコポリエステル。
【請求項6】
前記ジカルボン酸(DA)が脂肪族ジカルボン酸である、請求項1に記載のコポリエステル。
【請求項7】
前記ジオール(DO)が脂肪族ジオールである、請求項1に記載のコポリエステル。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載のコポリエステルを製造する方法であって、
前記3-ヒドロキシ酪酸(3HB)同士のポリエステルであるポリ(3-ヒドロキシ酪酸)(PHB)と、
前記ジカルボン酸(DA)と前記ジオール(DO)とのポリエステル(PAO)と、を反応させる工程、を有するコポリエステルの製造方法。
【請求項9】
請求項1~7の何れか1項に記載のコポリエステルを含む樹脂組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の樹脂組成物からなる、シート又はフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3-ヒドロキシ酪酸からなるコポリエステル及びその製造方法に関する。
本願は、2022年8月1日に、日本に出願された特願2022-122988号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックの大量廃棄による地球環境悪化の社会課題に対し、あらゆる状況下(海水、淡水、土壌、コンポスト)で生分解性を有する樹脂を材料とした、サステナブルな製品群(包装材料、フィルム)の需要が高まっている。
上述する全ての環境下で生分解性を示す樹脂として、細菌によって産生されるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)が挙げられる。しかしながらPHAの構造制御には、細菌の遺伝子操作が必要であり、所望の物性に対応した樹脂開発には多大な時間と労力を要する。
PHAを対応するモノマーから化学重合によってポリマーを合成する場合、樹脂構造の自由度は高くなるものの、PHAの主要構成単位である3-ヒドロキシ酪酸モノマーが熱分解を受けやすいためカルボン酸系の分解物が発生し、不快な臭気の発生や、加水分解を受けやすくなる課題がある。そのため、分解物量を抑制したPHA系合成樹脂が必要である。
特許文献1には、3-ヒドロキシ酪酸と、脂肪族ジカルボン酸と、脂肪族ジオールとの反応により得られるコポリエステルであって、前記コポリエステルが、3-ヒドロキシ酪酸単位を全構成単位に対して1~20モル%の含有率で含む生分解性コポリエステルが開示されている。
また、非特許文献1には、3-ヒドロキシ酪酸、1,4-ブタンジオール、コハク酸またはアジピン酸からなるコポリエステルであって、3-ヒドロキシ酪酸単位を全構成単位に対する含有率が8.8-49%であり、3-ヒドロキシ酪酸の平均連鎖長が1.2-19である生分解性コポリエステルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-25138号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】Thibaud Debuissy, Eric Pollet, Luc Averous, Ohkita, “Titanium-catalyzed transesterification as a route to the synthesis of fully biobased poly(3-hydroxybutyurate-co-butylenedicarboxylate) copolyesters, from their homopolyesters”, European Polymer Journal,90(2017)92-104.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1と非特許文献1には、3-ヒドロキシ酪酸単位を全構成単位に対する含有率(以後、「3HB含有率」ともいうことがある)や3-ヒドロキシ酪酸の平均連鎖長(以後、「3HB連鎖長」ともいうことがある)が生分解性に及ぼす影響が明らかでなく、また、3-ヒドロキシ酪酸の分解物に由来して酸価が高いため、不快な臭気や加水分解しやすい点に問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、特定の3HB比率、3HB連鎖長で高い生分解性が発現しながら、分解物に由来する酸価を一定値以下に制御することで、加水分解性、臭気を抑制することができる3-ヒドロキシ酪酸からなるコポリエステル(以後、「3HBコポリエステル」ともいうことがある)及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の内容は、以下の実施態様[1]~[10]を含む。
[1] 3-ヒドロキシ酪酸(3HB)と、ジカルボン酸(DA)と、ジオール(DO)とのコポリエステルであって、
前記コポリエステルが、前記3-ヒドロキシ酪酸(3HB)由来の構成単位(3HB-U)と、前記ジカルボン酸(DA)由来の構成単位(DA-U)と、前記ジオール(DO)由来の構成単位(DO-U)と、を有し、
前記ジカルボン酸(DA)が脂肪族ジカルボン酸を含み、
前記ジオール(DO)が脂肪族ジオールを含み、
前記コポリエステルの全構成単位100モルに対して、前記3-ヒドロキシ酪酸(3HB)由来の構成単位(3HB-U)の含有率が、1~65モル%であり、
前記コポリエステルにおける前記3-ヒドロキシ酪酸(3HB)由来の構成単位(3HB-U)の平均連鎖長が2~80であり、
前記コポリエステルの酸価が5以下であることを特徴とするコポリエステル。
[2] 前記ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)(PHB)と、前記ジカルボン酸(DA)と前記ジオール(DO)とのポリエステル(PAO)との反応物である、[1]に記載のコポリエステル。
[3] 前記ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)(PHB)の数平均分子量が、1,000~500,000である、[2]に記載のコポリエステル。
[4] 前記ポリエステル(PAO)の数平均分子量が、5,000~500,000である、[2]又は[3]に記載のコポリエステル。
[5] 前記ポリエステル(PAO)の酸価が、5以下である[2]~[4]の何れかに記載のコポリエステル。
[6] 前記ジカルボン酸(DA)が脂肪族ジカルボン酸である、[1]~[5]の何れかに記載のコポリエステル。
[7] 前記ジオール(DO)が脂肪族ジオールである、[1]~[6]の何れかに記載のコポリエステル。
[8] [1]~[7]の何れかに記載のコポリエステルを製造する方法であって、
前記3-ヒドロキシ酪酸(3HB)同士のポリエステルであるポリ(3-ヒドロキシ酪酸)(PHB)と、
前記ジカルボン酸(DA)と前記ジオール(DO)とのポリエステル(PAO)と、を反応させる工程、を有するコポリエステルの製造方法。
[9] [1]~[7]の何れかに記載のコポリエステルを含む樹脂組成物。
[10] [9]に記載の樹脂組成物からなる、シート又はフィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高い生分解性が発現しながら、分解物に由来する酸価を一定値以下に制御することで、加水分解性、臭気を抑制することができる3-ヒドロキシ酪酸からなるコポリエステル及びその製造方法を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例1のコポリエステルのH-NMRスペクトルである。
図2】本発明の実施例1のコポリエステルの13C-NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態のみに限定されるものではない。
【0011】
「~」は「~」という記載の前の値以上、「~」という記載の後の値以下を意味する。
【0012】
(コポリエステル)
本発明の一実施形態のコポリエステル(本実施形態のコポリエステル)は、3-ヒドロキシ酪酸(3HB)と、ジカルボン酸(DA)と、ジオール(DO)とのコポリエステル(HB-DA-DOコポリエステルということがある)である。本実施形態のコポリエステルが、前記3-ヒドロキシ酪酸(3HB)由来の構成単位(3HB-U)と、前記ジカルボン酸(DA)由来の構成単位(DA-U)と、前記ジオール(DO)由来の構成単位(DO-U)と、を有する。前記ジカルボン酸(DA)が脂肪族ジカルボン酸を含み、前記ジオール(DO)が脂肪族ジオールを含む。前記コポリエステルの全構成単位100モルに対して、前記3-ヒドロキシ酪酸(3HB)由来の構成単位(3HB-U)の含有率が、1~65モル%である。本実施形態のコポリエステルにおける前記3-ヒドロキシ酪酸由来の構成単位(3HB-U)の平均連鎖長が2~80である。本実施形態のコポリエステルの酸価が5以下である。
【0013】
3-ヒドロキシ酪酸(3HB)由来の構成単位(3HB-U)とは、コポリマー中における3-ヒドロキシ酪酸の1残基を意味し、具体的には3-ヒドロキシ酪酸のヒドロキシ基中の水素原子とカルボキシル基中のヒドロキシ残基を除いた構造を意味する。
ジカルボン酸(DA)由来の構成単位(DA-U)とは、コポリマー中におけるジカルボン酸(DA)の1残基を意味し、具体的にはジカルボン酸(DA)のカルボキシル基中のヒドロキシ残基を除いた構造を意味する。
ジオール(DO)由来の構成単位(DO-U)とは、コポリマー中におけるジオール(DO)の1残基を意味し、具体的にはジオール(DO)のヒドロキシ基中の水素原子を除いた構造を意味する。
【0014】
コポリエステルの全構成単位とは、コポリエステルを構成する全てのモノマー由来の構成単位のモル数の総和を意味する。また、本実施形態のコポリエステルが、前記3-ヒドロキシ酪酸(3HB)由来の構成単位(3HB-U)と、前記ジカルボン酸(DA)由来の構成単位(DA-U)と、前記ジオール(DO)由来の構成単位(DO-U)と、を有し、かつ、それら以外の構成単位を含まない場合、コポリエステルの全構成単位が、前記3-ヒドロキシ酪酸(3HB)由来の構成単位(3HB-U)と、前記ジカルボン酸(DA)由来の構成単位(DA-U)と、前記ジオール(DO)由来の構成単位(DO-U)とのモル数の総和である。
3-ヒドロキシ酪酸(3HB)由来の構成単位(3HB-U)の含有率(モル%)とは、コポリエステルを構成する全てのモノマー由来の構成単位のモル数の総和に対する、3-ヒドロキシ酪酸(3HB)由来の構成単位(3HB-U)のモル数の百分率である。その評価方法は、後述の実施例で説明する。
【0015】
3-ヒドロキシ酪酸由来の構成単位(3HB-U)の連鎖構造とは、3-ヒドロキシ酪酸の1残基が連続してエステル結合した構造を意味し、具体的には3-ヒドロキシ酪酸のヒドロキシ基中の水素原子とカルボキシル基中のヒドロキシ残基を除いた構造が、連続してエステル結合した構造を意味する。
3-ヒドロキシ酪酸由来の構成単位(3HB-U)の平均連鎖長とは、3-ヒドロキシ酪酸由来の構成単位が、ポリエステル1分子の並びのなかで連続して現れる数の平均値である。その評価方法は、後述の実施例で説明する。
コポリエステルの酸価とは、コポリエステル1グラム中に存在する遊離酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数である。その評価方法は、後述の実施例で説明する。
【0016】
本実施形態のコポリエステルは、前記ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)(PHB)と、前記ジカルボン酸(DA)及び前記ジオール(DO)のポリエステル(PAO)との反応物であることが好ましい。
3-ヒドロキシ酪酸(3HB)のポリエステルであるポリ(3-ヒドロキシ酪酸)(PHB)とは、3-ヒドロキシ酪酸由来の構成単位が連続してエステル結合したポリエステルであり、具体的には3-ヒドロキシ酪酸のヒドロキシ基中の水素原子とカルボキシル基中のヒドロキシ残基を除いた構造が、連続してエステル結合したポリエステルである。
ジカルボン酸(DA)と前記ジオール(DO)とのポリエステル(PAO)とは、ジカルボン酸(DA)由来の構成単位とジオール(DO)由来の構成単位(DO-U)とが、連続してエステル結合したポリエステルである。
【0017】
特に制限されないが、本実施形態のコポリエステルの好適な一例としては、例えば下記式(1)~式(3)等が挙げられる。
【0018】
【化1】
(式(1)中、o、p及びqは、それぞれ独立して正の整数を表す)
【0019】
【化2】
(式(2)中、o、p、q、及びrは、それぞれ独立して正の整数を表す)
【0020】
【化3】
(式(3)中、o、p、q及びrは、それぞれ独立して正の整数を表す)
【0021】
<3-ヒドロキシ酪酸(3HB)、及び3HB由来の構成単位(3HB-U)>
本実施形態のコポリエステルの全構成単位100モルに対して、本実施形態にかかる3-ヒドロキシ酪酸(3HB)由来の構成単位(3HB-U)の含有率が1~65モル%であり、2~60モル%であることが好ましく、3~50モル%であることがより好ましく、5~30モル%であることが更に好ましい。構成単位(3HB-U)が1モル%未満である場合、コポリエステルの生分解性が低下する。構成単位(3HB-U)が65モル%を超える場合、3-ヒドロキシ酪酸の酸性分解物が発生しやすく、不快な臭気が発生する、加水分解しやすくなるなどの問題がある。
【0022】
本実施形態のコポリエステルにおける前記3-ヒドロキシ酪酸由来の構成単位(3HB-U)の平均連鎖長が2~80であり、3~70であることが好ましく、4~50であることがより好ましく、6~30であることが更に好ましい。構成単位(3HB-U)の平均連鎖長が2未満である場合、コポリエステルの生分解性だけでなく、機械物性や融点が低下する。構成単位(3HB-U)の平均連鎖長が80を超える場合、コポリエステルの生分解性が低下する。
【0023】
本実施形態のコポリエステルの全構成単位100モルに対して、本実施形態にかかる3-ヒドロキシ酪酸(3HB)由来の構成単位(3HB-U)の含有率が5~30モル%であり、かつ、本実施形態のコポリエステルにおける前記3-ヒドロキシ酪酸由来の構成単位(3HB-U)の平均連鎖長が6~30である場合、高い生分解性、機械物性及び融点の発現と3-ヒドロキシ酪酸の分解抑制を兼備できるため、特に好ましい。
【0024】
本実施形態にかかる3-ヒドロキシ酪酸(3HB)由来の構成単位(3HB-U)の含有率は、本実施形態のコポリエステルのH-NMRスペクトルによって測定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。構成単位(3HB-U)の含有率は、後述の本実施形態のコポリエステルの製造方法において、コポリエステルを製造する原料(あるいは中間生成物の原料)における3-ヒドロキシ酪酸(3HB)の仕込み量で調製することができる。
【0025】
本実施形態のコポリエステルにおける前記3-ヒドロキシ酪酸由来の構成単位(3HB-U)の平均連鎖長は、本実施形態のコポリエステルのH-NMR、13C-NMRスペクトルによって測定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。構成単位(3HB-U)の平均連鎖長は、後述の本実施形態のコポリエステルの製造方法において、例えば、3-ヒドロキシ酪酸同士のエステル化反応、3-ヒドロキシ酪酸とジオールとのエステル化反応、ジカルボン酸(DA)とジオールとのエステル化反応などを制御(例えば、ブロック重合化など)することによって、調整することができる。例えば、各原料の仕込む順などを制御する方法や、各反応の速さを調整する方法等が挙げられる。例えば、先に3-ヒドロキシ酪酸(3HB)のオリゴマーもしくはポリエステル(PHB)を得てから、ジカルボン酸(DA)とジオール(DO)とを反応させる方法;先に3-ヒドロキシ酪酸(3HB)のオリゴマー若しくはポリエステル(PHB)を得て、更にジカルボン酸(DA)とジオール(DO)とのポリエステル(PAO)を得てから、得たポリエステル(PHB)とポリエステル(PAO)とを反応させる方法などが挙げられる。
本発明の3-ヒドロキシ酪酸は、ラセミ体、(R)体、(S)体のいずれをも用いることができる。高い生分解性、機械物性及び融点の発現を兼備できるため、(R)体を用いることが特に好ましい。
【0026】
<ジカルボン酸(DA)、及びDA由来の構成単位(DA-U)>
本実施形態にかかるジカルボン酸(DA)が脂肪族ジカルボン酸を含む。本実施形態のコポリエステルに含まれているジカルボン酸(DA)由来の構造(DA―U)の全100モル数において、脂肪族ジカルボン酸由来の構造の含有率が20モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることが更に好ましい。脂肪族ジカルボン酸由来の構造の含有率が70モル%以上である場合、耐熱性や機械的特性、光学特性等と生分解性を両立することができる。脂肪族ジカルボン酸由来の構造の含有率が20モル%以下である場合、生分解性が著しく低下する。本実施形態にかかるジカルボン酸(DA)が脂肪族ジカルボン酸であることが好ましい。すなわち、本実施形態にかかるジカルボン酸(DA)由来の構成単位(DA-U)が脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位であることが好ましい。
【0027】
本実施形態にかかるジカルボン酸(DA)は、脂肪族ジカルボン酸以外に、例えば、脂環族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸などを含んでもよい。本実施形態にかかるジカルボン酸由来の構成単位(DA-U)は、脂肪族ジカルボン酸以外に、例えば、脂環族ジカルボン酸由来の構成単位、芳香族ジカルボン酸由来の構成単位などを含んでもよい。
本実施形態にかかるジカルボン酸(DA)は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0028】
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アルカンジカルボン酸(例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸などのC1-16アルカンジ-カルボン酸など)、不飽和脂肪族ジカルボン酸(例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのC2-10アルケン-ジカルボン酸など)などが挙げられる。
【0029】
脂環族ジカルボン酸としては、例えば、シクロアルカンジカルボン酸(例えば、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などのC5-10シクロアルカン-ジカルボン酸など)、ジ又はトリシクロアルカンジカルボン酸(例えば、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸など)、シクロアルケンジカルボン酸(例えば、シクロヘキセンジカルボン酸などのC5-10シクロアルケン-ジカルボン酸)、トリシクロアルケンジカルボン酸(例えば、ノルボルネンジカルボン酸など)、不飽和脂環族ジカルボン酸(例えば、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロメチル無水フタル酸)などが挙げられる。
【0030】
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、単環式芳香族ジカルボン酸[例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、アルキルイソフタル酸(例えば、4-メチルイソフタル酸などのC1-4アルキルイソフタル酸など)などのC6-10アレーン-ジカルボン酸など]、多環式芳香族ジカルボン酸[例えば、縮合多環式芳香族ジカルボン酸[例えば、ナフタレンジカルボン酸(例えば、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、1,7-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などの異なる環に2つのカルボキシル基を有するナフタレンジカルボン酸;1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸などの同一の環に2つのカルボキシル基を有するナフタレンジカルボン酸)、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、などの縮合多環式C10-24アレーン-ジカルボン酸、好ましくは縮合多環式C10-16アレーン-ジカルボン酸、さらに好ましくは縮合多環式C10-14アレーン-ジカルボン酸など]、アリールアレーンジカルボン酸[例えば、ビフェニルジカルボン酸(例えば、2,2’-ビフェニルジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸など)などのC6-10アリール-C6-10アレーン-ジカルボン酸など]、ジアリールアルカンジカルボン酸[例えば、ジフェニルアルカンジカルボン酸(例えば、4,4’-ジフェニルメタンジカルボン酸など)などのジC6-10アリールC1-6アルカン-ジカルボン酸など]、ジアリールケトンジカルボン酸[例えば、ジフェニルケトンジカルボン酸(例えば、4.4’-ジフェニルケトンジカルボン酸など)などのジC6-10アリールケトン-ジカルボン酸)など]、フルオレン骨格を有するジカルボン酸など]などが挙げられる。
【0031】
さらに、前記フルオレン骨格を有するジカルボン酸としては、例えば、ジカルボキシフルオレン(例えば、2,7-ジカルボキシフルオレンなど);9,9-ビス(カルボキシアルキル)フルオレン[例えば、9,9-ビス(2-カルボキシエチル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシプロピル)フルオレンなどの9,9-ビス(カルボキシC2-6アルキル)フルオレンなど];9-(カルボキシ-カルボキシアルキル)フルオレン[例えば、9-(1-カルボキシ-2-カルボキシエチル)フルオレン、9-(2-カルボキシ-3-カルボキシプロピル)フルオレンなどの9-(カルボキシ-カルボキシC2-6アルキル)フルオレンなど];9,9-ビス(カルボキシアリール)フルオレン[例えば、9,9-ビス(3-カルボキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-カルボキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(5-カルボキシ-1-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(6-カルボキシ-2-ナフチル)フルオレンなどの9,9-ビス(カルボキシC6-12アリール)フルオレンなど];9,9-ビス(カルボキシアルキル-アリール)フルオレン[例えば、9,9-ビス(4-(カルボキシメチル)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-カルボキシエチル)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(3-(カルボキシメチル)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(5-(カルボキシメチル)-1-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(6-(カルボキシメチル)-2-ナフチル)フルオレンなどの9,9-ビス(カルボキシC1-6アルキル-C6-12アリール)フルオレンなど]などが挙げられる。
【0032】
これらのジカルボン酸(DA)のなかでも、生分解性の観点から、脂肪族ジカルボン酸が好ましく、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸が更に好ましく、コハク酸、及びアジピン酸が特に好ましい。
本実施形態にかかるDA由来の構成単位(DA-U)は、ジカルボン酸(DA)以外に、DAの酸無水物、DAのハロゲン化物、DAのエステル化物(メチルエステル、エチルエステル、モノエチレングリコールエステル等)を用いて導入することもできる。
【0033】
<ジオール(DO)、及びDO由来の構成単位(DO-U)>
本実施形態にかかるジオール(DO)が脂肪族ジオールを含む。本実施形態のコポリエステルに含まれているジオール(DO)由来の構造(DO―U)の全100モル数において、脂肪族ジオール由来の構造の含有率が20モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることが更に好ましい。脂肪族ジオール由来の構造の含有率が70モル%以上である場合、耐熱性や機械的特性、光学特性等と生分解性を両立することができる。脂肪族ジオール由来の構造の含有率が20モル%以下である場合、生分解性が著しく低下する。本実施形態にかかるジオール(DO)が脂肪族ジオールであることが好ましい。すなわち、本実施形態にかかるジオール(DO)由来の構造(DO―U)が脂肪族ジオール由来の構成単位であることが好ましい。
【0034】
本実施形態にかかるジオール(DO)は、脂肪族ジオール以外に、例えば、脂環族ジオール、芳香族ジオールなどを含んでもよい。本実施形態にかかるジオール(DO)由来の構成単位(DA-U)は、脂肪族ジオール以外に、例えば、脂環族ジオール酸由来の構成単位、芳香族ジオール酸由来の構成単位などを含んでもよい。
本実施形態にかかるジオール(DO)は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0035】
脂肪族ジオールとしては、例えば、アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2―メチル―1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオールなどのC2-10アルカンジオールなど)、ポリアルカンジオール(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコールなどのジ又はトリC2-4アルカンジオールなど)などが挙げられる。
【0036】
脂環族ジオールとしては、例えば、シクロアルカンジオール(例えば、シクロヘキサンジオールなどのC5-8シクロアルカンジオール)、ジ(ヒドロキシアルキル)シクロアルカン(例えば、1,3-ビス(2-ヒドロキシプロピル)シクロペンタン、1,3-ビス(2-ヒドロキシブチル)シクロペンタン、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(2-ヒドロキシプロピル)シクロヘキサン、1,4-ビス(2-ヒドロキシブチル)シクロヘキサンなどのジ(ヒドロキシC1-4アルキル)C5-8シクロアルカンなど)、イソソルビドなどが挙げられる。
【0037】
芳香族ジオールとしては、例えば、ジヒドロキシアレーン(例えば、ヒドロキノン、レゾルシノールなど)、ジ(ヒドロキシアルキル)アレーン(例えば、1,3-ベンゼンジメタノール、1,4-ベンゼンジメタノール、1,4-ベンゼンジエタノールなどのジ(ヒドロキシC1-4アルキル)C6-10アレーンなど)、ビスフェノール類(例えば、ビフェノール、ビスフェノールAなどのビス(ヒドロキシフェニル)C1-10アルカンなど)、ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加体、フルオレン骨格を有するジオール、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどが挙げられる。
【0038】
これらのジオール(DO)のなかでも、生分解性の観点から、脂肪族ジオールが好ましく、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールが更に好ましく、1,4-ブタンジオールが特に好ましい。
【0039】
<他のヒドロキシカルボン酸単位>
本実施形態のコポリエステルにおいて、上記の3HB由来の構成単位(3HB-U)、DA由来の構成単位(DA-U)、DO由来の構成単位(DO-U)以外に、他の構成単位として、3-ヒドロキシ酪酸以外のヒドロキシカルボン酸(HA)由来の単位(HA-U)が含まれてもよい。
本実施形態のコポリエステルが、3HB由来の構成単位(3HB-U)、DA由来の構成単位(DA-U)、DO由来の構成単位(DO-U)以外に、他の構成単位を含む場合、本実施形態のコポリエステルの全構成単位100モルに対して、他の構成単位のモル含有率が、60モル%以下であることが好ましく、40モル%以下であることがより好ましく、20モル%以下であることがさらに好ましい。また、本実施形態のコポリエステルの全構成単位100モルに対して、他の構成単位のモル含有率が、1モル%以上であってもよい。
他のヒドロキシカルボン酸単位としては、例えば、ヒドロキシアルカン酸、ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸(ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸など)、ヒドロキシ安息香酸(ヒドロキシアレーンカルボン酸など)などの単位が挙げられる。これらのヒドロキシカルボン酸単位は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのヒドロキシカルボン酸単位のうち、生分解性に優れる点から、ヒドロキシアルカン酸単位が好ましい。
【0040】
ヒドロキシアルカン酸単位としては、例えば、グリコール酸、2-ヒドロキシプロパン酸(乳酸)、3-ヒドロキシプロパン酸、2-ヒドロキシブタン酸(2-ヒドロキシ酪酸)、4-ヒドロキシブタン酸、3-ヒドロキシ-3-メチル-ブタン酸、2-ヒドロキシペンタン酸(2-ヒドロキシ吉草酸)、3-ヒドロキシペンタン酸、5-ヒドロキシペンタン酸、2-ヒドロキシ-2-メチル-ペンタン酸、3-ヒドロキシヘキサン酸、6-ヒドロキシヘキサン酸、6-ヒドロキシヘプタン酸、3-ヒドロキシヘプタン酸、7-ヒドロキシヘプタン酸、3-ヒドロキシオクタン酸、8-ヒドロキシオクタン酸、3-ヒドロキシノナン酸、9-ヒドロキシノナン酸、3-ヒドロキシデカン酸、10-ヒドロキシデカン酸などのC1-6アルキル基を有していてもよいヒドロキシC2-15アルカン酸、12-ヒドキシステアリン酸、リシノール酸などの単位が挙げられる。
【0041】
なお、ヒドロキシアルカン酸単位は、対応するラクトン単位であってもよい。ラクトン単位としては、例えば、β-プロピオラクトン、β-ジメチルプロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-ジメチルブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトンなどのジC1-12アルキル基を有していてもよいC3-15ラクトンなどの単位が挙げられる。
【0042】
これらのヒドロキシアルカン酸単位及びラクトン単位は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのヒドロキシアルカン酸単位のうち、生分解性の点から、3-ヒドロキシプロパン酸、4-ヒドロキシブタン酸、3-ヒドロキシ吉草酸、3-ヒドロキシヘキサン酸、3-ヒドロキシヘプタン酸、3-ヒドロキシオクタン酸、3-ヒドロキシノナン酸、3-ヒドロキシデカン酸、6-ヒドロキシヘキサン酸、10-ヒドロキシデカン酸などのヒドロキシC3-10アルカン酸単位(3-ヒドロキシ酪酸以外のヒドロキシC3-10アルカン酸単位)又は対応するラクトン単位が好ましい。
【0043】
他のヒドロキシカルボン酸単位の導入方法としては、予め3-ヒドロキシ酪酸(3HB)のポリエステル(PHB)と反応させておく方法、予めジカルボン酸(DA)と前記ジオール(DO)とのポリエステル(PAO)と反応させておく方法、3-ヒドロキシ酪酸(3HB)のポリエステル(PHB)とジカルボン酸(DA)と前記ジオール(DO)とのポリエステル(PAO)との反応時に添加する方法などがあげられる。
【0044】
前記ヒドロキシカルボンの形態としては、ヒドロキシカルボン酸のモノマー、ヒドロキシカルボン酸のラクトン、ヒドロキシカルボン酸がエステル結合したポリマー、ヒドロキシカルボン酸のエステル化物(メチルエステル、エチルエステル、モノエチレングリコールエステル等)、ヒドロキシカルボン酸の酸ハライド、ヒドロキシカルボン酸の酸無水物などがあげられる。
【0045】
<コポリエステルの構造と物性>
本実施形態のコポリエステルは、3-ヒドロキシ酪酸(3HB)と、ジカルボン酸(DA)と、ジオール(DO)とのコポリエステルであって、前記ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)(PHB)と、前記ジカルボン酸(DA)と前記ジオール(DO)とのポリエステル(PAO)との反応物であることが好ましい。
本実施形態のコポリエステルにおいて、前記コポリエステルの全構成単位100モルに対して、前記3-ヒドロキシ酪酸(3HB)由来の構成単位(HB-U)の含有率が、2~60モル%であり、前記コポリエステルにおける前記3-ヒドロキシ酪酸単位の平均連鎖長が2~80であり、かつ、前記コポリエステルの酸価が5以下であることが好ましい。また、前記コポリエステルの全構成単位100モルに対して、前記3-ヒドロキシ酪酸(3HB)由来の構成単位(HB-U)の含有率が、3~50モル%であり、前記コポリエステルにおける前記3-ヒドロキシ酪酸単位の平均連鎖長が3~70であり、かつ、前記コポリエステルの酸価が3以下であることがより好ましい。また、前記コポリエステルの全構成単位100モルに対して、前記3-ヒドロキシ酪酸(3HB)由来の構成単位(HB-U)の含有率が、5~30モル%であり、前記コポリエステルにおける前記3-ヒドロキシ酪酸単位の平均連鎖長が6~30であり、かつ、前記コポリエステルの酸価が2以下であることが更に好ましい。
【0046】
本実施形態のコポリエステルの酸価(単位:mgKOH/g)が、5以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましく、2以下であることが更に好ましい。本実施形態のコポリエステルの酸価が、0.1以上であってもよい。本実施形態のコポリエステルの酸価が、2以下である場合、加水分解、臭気を抑制することができる。
コポリエステルの酸価を評価する方法は、後述の実施例で詳細に説明する。
【0047】
本実施形態のコポリエステルの数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)で測定したとき、ポリスチレン換算で、下限は5,000以上でもよく、6,000以上でもよく、7,000以上でもよく、8,000以上でもよく、10,000以上でもよく、上限は1,000,000以下でもよく、500,000以下でもよく、100,000以下でもよく、50,000以下でもよく、30,000以下でもよい。これらの上限と下限はいずれの組み合わせでも用いられる。コポリエステルの数平均分子量(Mn)が、1,000,000以下である場合、成型加工が容易になる。また、コポリエステルの数平均分子量(Mn)が、5,000以上である場合、十分な機械物性などを示す。
【0048】
本実施形態のコポリエステルは、上記の構造になることで、生分解性を向上できるため、生分解性と機械的特性とを高度に両立できる。また、本実施形態のコポリエステルは、用途などに応じて、上記好ましい構造範囲を適宜で選択することができる。例えば、3-ヒドロキシ酪酸由来の構成単位の含有率を調整することにより、生分解度を容易に調整できる。
【0049】
<ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)(PHB)>
本実施形態に係るポリ(3-ヒドロキシ酪酸)(PHB)は、3-ヒドロキシ酪酸(3HB)同士を、エステル化反応させて得られるポリ(3-ヒドロキシ酪酸)であることが好ましい。本実施形態に係るポリ(3-ヒドロキシ酪酸)(PHB)は、3-ヒドロキシ酪酸(3HB)同士をエステル化反応させて得られるポリ(3-ヒドロキシ酪酸)構造を含む。
【0050】
ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)の製造方法は、特に限定されず、例えば、以下の非特許文献に記載されているポリ乳酸の製造方法と同様な方法が挙げられる。
[非特許文献A]Shinji Yamada, Aknori Takasu, Sadatsugu Takayama, Kazuhiko Kawamura, Microwave-assisted solution polycondensation of L-lactic acid using a Dean-Stark apparatus for a non-thermal microwave polymerization effect induced by the electric field, Polym. Chem., 5(2014)5283-5288.
その具体例としては、例えば、3-ヒドロキシ酪酸に、p-トルエンスルホン酸などの酸触媒を添加し、トルエンなどの溶媒中に、80~150℃の温度で脱水エステル化反応をさせ、トルエンなどの溶媒を留去してからジクロロベンゼンなどの溶媒を加え、メタノールなどのアルコール溶媒を加えて固体を析出させる方法が挙げられる。
【0051】
反応は、無触媒で行われてもよいし、触媒存在下で行われてもよい。反応に用いられる触媒としては、例えば、金属触媒、塩基触媒、ホスフィン触媒、酸触媒などが挙げられる。
前記金属触媒としては、例えば、アルカリ金属(ナトリウムなど)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、バリウムなど)、遷移金属(マンガン、亜鉛、カドミウム、鉛、コバルト、チタンなど)、周期表第13族金属(アルミニウムなど)、周期表第14族金属(ゲルマニウム、スズなど)、周期表第15族金属(アンチモンなど)などを含む金属化合物などが挙げられる。
前記塩基触媒としては、例えば、第三級アミン類(トリメチルアミン、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン類、第4級アンモニウム塩(塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウムなどのテトラアルキルアンモニウムハライド、塩化ベンジルトリメチルアンモニウムなどのベンジルトリアルキルアンモニウムハライドなど)などが挙げられる。
前記ホスフィン触媒としては、例えば、トリアルキルホスフィン(トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ-n-ブチルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィンなど)、トリアリールホスフィン(トリフェニルホスフィン、トリ(o-トリル)ホスフィンなど)などが挙げられる。
前記酸触媒としては、例えば、無機酸(例えば、硫酸、塩化水素(又は塩酸)、硝酸、リン酸など)、有機酸(例えば、スルホン酸(メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのアルカンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などのアレーンスルホン酸)など)などが挙げられる。
前記金属化合物としては、例えば、有機酸塩(酢酸塩、プロピオン酸塩など)、無機酸塩(ホウ酸塩、炭酸塩など)、金属酸化物(酸化ゲルマニウムなど)、金属塩化物(塩化スズなど)、金属アルコキシド(チタンテトラアルコキシド、チタンテトラt-ブトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、亜鉛t-ブトキシド、カリウムt-ブトキシドなど)、アルキル金属(トリアルキルアルミニウムなど)などがあげられる。これらの触媒は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0052】
エステル化反応の活性を高くできる点で、酸触媒を用いることが好ましく、取り扱い上の安定性と触媒としての活性との点からは、p-トルエンスルホン酸などのアレーンスルホン酸が好ましい。
触媒の使用量は、3-ヒドロキシ酪酸(3HB)の質量に対して通常0.001~5.0質量%の範囲である。
【0053】
反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行ってもよい。溶媒としては、例えば、炭化水素類(ヘキサン、オクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレンメシチレン、テトラリン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素類)、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタンなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテルなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、セロソルブアセテート類(エチルセロソルブアセテートなどのC1-4アルキルセロソルブアセテートなど)などが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0054】
反応雰囲気は、大気であってもよく、不活性ガス(窒素、ヘリウムなど)雰囲気中で行ってもよく、反応圧力は、常圧下又は減圧下で行ってもよい。またエステル化反応で生成する水などを反応系外に留出しつつ、行うことで反応が進行しやすくなる。
【0055】
ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)(PHB)の数平均分子量(Mn)の下限は1,000以上でもよく、2,000以上でもよく、4,000以上でもよく、8,000以上でもよく、10,000以上でもよく、上限は1,000,000以下でもよく、500,000以下でもよく、100,000以下でもよく、50,000以下でもよく、10,000以下でもよい。これらの上限と下限はいずれの組み合わせでも用いられる。コポリエステルの数平均分子量(Mn)が、1,000,000以上である場合、前記ジカルボン酸(DA)と前記ジオール(DO)とのポリエステル(PAO)との反応が著しく困難となる。また、コポリエステルの数平均分子量(Mn)が、1,000以下である場合、前記ジカルボン酸(DA)と前記ジオール(DO)とのポリエステル(PAO)との反応において、連鎖長の制御が困難となる。
【0056】
<ジカルボン酸(DA)と前記ジオール(DO)とのポリエステル(PAO)>
本実施形態に係るポリエステル(PAO)は、前記ジカルボン酸(DA)と前記ジオール(DO)とを含む反応原料を、エステル化反応させて得られる反応物である。
本実施形態に係るポリエステル(PAO)における、前記ジカルボン酸(DA)100モルに対する、前記ジオール(DO)の存在量は、100~110モルであることが好ましく、100.1~105モルであることがより好ましく、100.2~101モルであることが更に好ましい。前記ジオール(DO)の存在量は、110モル以上である場合、ポリエステル(PAO)の分子量が低くなり、耐熱性や機械的特性、光学特性等が発現しなくなるためである。前記ジオール(DO)の存在量は、100モル未満である場合、ヒドロキシ基に対して過剰に存在するカルボキシル基によって、本実施形態のコポリエステルの原料として用いた際に酸価が高くなりやすくなるためである。
【0057】
前記ジカルボン酸(DA)と前記ジオール(DO)とのポリエステル(PAO)を製造方法としては、特に限定されなく、下記の非特許文献に記載した方法などが挙げられる。 [非特許文献B]Shuangbao Peng, Zhiyang Bu, Linbo Wu, Bo-Geng Li, Philippe Dubois, High molecular weight poly(butylene succinate-co-furandicarboxylate) with 10 mol% of BF unit: Synthesis, crystallization-melting behavior and mechanical properties, European Polymer Journal 96 (2017) 248―255。
例えば、ジカルボン酸(DA)がコハク酸などの脂肪族ジカルボン酸であり、前記ジオール(DO)が、1,4-ブタンジオールなどの脂肪族ジオールである場合、それらのポリエステルの製造方法としては、例えば、1,4-ブタンジオールとコハク酸と含む混合物を、100~250℃の温度で反応させ、チタニウムテトライソプロポキシドなどの触媒を添加し、更に100~250℃で反応させてポリエステルを製造する方法が挙げられる。
【0058】
反応は、無触媒で行われてもよいし、触媒存在下で行われてもよい。反応に用いられる触媒としては、例えば、酸触媒が挙げられる。酸触媒としては、例えば、モノブチル酸化錫、ジブチル酸化錫等の錫系触媒、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニルアセチルアセトナート等のチタン系触媒、テトラ-ブチル-ジルコネート等のジルコニア系触媒などが挙げられる。エステル交換反応及びエステル化反応の活性を高くできる点で、チタン系触媒を用いることが好ましい。チタン系触媒としては、チタニウムテトラメトキシド、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラn-プロポキシド、チタニウムテトラn-ブトキシド、テトラキス(2-エチルヘキシルオキシ)チタン、テトラステアリルオキシチタン等が挙げられるが、取り扱い上の安定性と触媒としての活性との点からは、チタニウムテトライソプロポキシドが好ましい。
触媒の使用量は、ジカルボン酸(DA)とジオール(DO)の合計質量に対して通常0.001~5.0質量%の範囲である。
【0059】
反応雰囲気は、大気であってもよく、不活性ガス(窒素、ヘリウムなど)雰囲気中で行ってもよく、反応圧力は、常圧下又は減圧下で行ってもよい。またエステル化反応で生成する水やジオール(DO)などを反応系外に留出しつつ、行うことで反応が進行しやすくなる。
【0060】
反応時間は、通常1~48時間であるが、反応は、原料であるジカルボン酸(DA)とジオール(DO)が反応系内に残存しなくなるまで行うことが好ましい。反応の進行は、例えば、ジカルボン酸(DA)の減少を酸価測定によって追跡することで行うことができる。
【0061】
本実施形態に係る、ジカルボン酸(DA)と前記ジオール(DO)とのポリエステル(PAO)の酸価(単位:mgKOH/g)が、5以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましく、2以下であることが更に好ましい。ポリエステル(PAO)の酸価が5を超える場合、本実施形態のコポリエステルの酸価が高くなりやすいためである。また、ポリエステル(PAO)の酸価が5以下である場合、本実施形態のコポリエステルの酸価を低くすることができ、加水分解性、臭気を抑制することができる。
【0062】
(コポリエステルの製造方法)
本実施形態の、コポリエステルの製造方法(単に、本実施形態の製造方法ということがある)は、前述の本実施形態のコポリエステルを製造する方法である。
本実施形態の製造方法は、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)(PHB)と、前記ジカルボン酸(DA)と前記ジオール(DO)のポリエステル(PAO)とを反応させる工程を含む。
本実施形態の製造方法は、以下の第1工程~第3工程を含むことが好ましい。
第1工程:前記3-ヒドロキシ酪酸同士を反応させ、前記ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)(PHB)を得る工程;
第2工程:前記ジカルボン酸(DA)と前記ジオール(DO)との反応により、前記ジカルボン酸(DA)と前記ジオール(DO)のポリエステル(PAO)を得る工程;
第3工程:前記工程1で得たポリ(3-ヒドロキシ酪酸)(PHB)と、前記工程2で得たポリエステル(PAO)と、を反応させる工程。
【0063】
本実施形態の製造方法としては、例えば、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)(PHB)と、前記ジカルボン酸(DA)と前記ジオール(DO)のポリエステル(PAO)とを含む混合液に対して、エステル交換反応をさせて、本実施形態のコポリエステルを得る方法が挙げられる。エステル交換反応としては、非特許文献1に記載の方法などが挙げられる。
例えば、ジカルボン酸(DA)がコハク酸などの脂肪族ジカルボン酸であり、前記ジオール(DO)が、1,4-ブタンジオールなどの脂肪族ジオールである場合、本実施形態のコポリエステルの製造方法としては、例えば、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)(PHB)と、コハク酸などの脂肪族ジカルボン酸と1,4-ブタンジオールなどの脂肪族ジオールのポリエステル(PAO)とを含む混合液に対して、エステル交換反応をさせて、本実施形態のコポリエステルを得る方法が挙げられる。エステル交換反応の温度は、例えば、100~250℃であることが好ましい。
【0064】
本実施形態の製造方法が、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)(PHB)と、前記ジカルボン酸(DA)と前記ジオール(DO)のポリエステル(PAO)とのエステル交換反応を用いる場合、ポリエステル(PHB)とポリエステル(PAO)との仕込みモル比は、製造した本実施形態のコポリエステルにおける3-ヒドロキシ酪酸(3HB)の構成単位(3HB-U)の含有率、3-ヒドロキシ酪酸(3HB)の構成単位の平均連鎖長、本実施形態のコポリエステルの酸価は、前述の範囲に入れば、特に限定されない。例えば、ポリエステル(PHB)とポリエステル(PAO)との仕込みモル比は、通常、1~65モル%であり、2~60モル%であることが好ましく、3~50モル%であることがより好ましく、5~30モル%であることが更に好ましい。ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)(PHB)とポリエステル(PAO)との仕込みモル比が65モル%を超える場合、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)(PHB)の分解が起きやすく、本実施形態のコポリエステルの酸価が高くなる。ポリエステル(PHB)とポリエステル(PAO)との仕込みモル比が1モル%未満である場合、3-ヒドロキシ酪酸(3HB)の構成単位の平均連鎖長が極端に短くなる。
【0065】
エステル交換反応に用いられる触媒としては、チタン系触媒を用いることが好ましい。チタン系触媒としては、チタニウムテトラメトキシド、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラn-プロポキシド、チタニウムテトラn-ブトキシド、テトラキス(2-エチルヘキシルオキシ)チタン、テトラステアリルオキシチタン等が挙げられるが、取り扱い上の安定性と触媒としての活性との点からは、チタニウムテトライソプロポキシドが好ましい。
触媒の使用量は、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)(PHB)と、前記ジカルボン酸(DA)と前記ジオール(DO)のポリエステル(PAO)の合計質量に対して通常0.001~5.0質量%の範囲である。
【0066】
反応雰囲気は、大気であってもよく、不活性ガス(窒素、ヘリウムなど)雰囲気中で行ってもよく、反応圧力は、常圧下又は減圧下で行ってもよい。
【0067】
反応は、3-ヒドロキシ酪酸(3HB)由来の構成単位(3HB-U)の平均連鎖長が2~80となるまで行う。反応温度は、通常80~250℃であり、100~200℃であることが好ましく、110~160℃であることがより好ましく、125~150℃であることが更に好ましい。反応時間は、通常1分~48時間であり、5分~24時間であることが好ましく、10分~12時間であることがより好ましく、15分~8時間であることが更に好ましい。
【0068】
本実施形態の製造方法において、エステル交換反応とエステル化反応とを同時に行うことができる。エステル交換反応とエステル化反応を同時に行うことで、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)(PHB)の末端カルボキシル基またはポリエステル(PAO)の末端カルボキシル基と、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)(PHB)の末端ヒドロキシ基またはポリエステル(PAO)末端ヒドロキシ基とのエステル化反応が進行し、本実施形態のコポリエステルの構造式中の両末端基をヒドロキシ基とすることができる。カルボキシル基が減少するため本実施形態のコポリエステルの酸価を低減することができる。
【0069】
(ポリウレタン)
本実施形態のコポリエステルの応用例として、例えば、本実施形態のコポリエステルを用いて得られる、本実施形態のコポリエステル由来のポリウレタン(「本実施形態に係るポリウレタン」ということがある。)が挙げられる。
本実施形態に係るポリウレタンは、例えば、本実施形態のコポリエステルとポリイソシアネートを反応させて得られる。必要に応じて、本実施形態のコポリエステル以外のポリオールや鎖伸長剤、鎖停止剤、架橋剤を併用してもよい。前記ポリウレタンを得るための本実施形態のコポリエステルは、ポリエステルポリオールであることが好ましい。
具体的には、本実施形態に係るポリウレタンは、ポリオールとポリイソシアネートを反応することにより得られ、ポリオールとして、少なくとも本実施形態のコポリエステルが用いられる。従って、ポリウレタンは、ポリオールとポリイソシアネートの反応により得られる反応生成物であり、ポリウレタンは、ポリオール由来の構成単位及びポリイソシアネート由来の構成単位を有し、少なくとも本実施形態のコポリエステル由来の構成単位を有する。
本実施形態のコポリエステルは、ポリエステルポリオールであることが好ましい。
【0070】
前記鎖伸長剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ポリオール化合物;ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等の芳香族ポリオール化合物;水;エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2-メチルピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、ヒドラジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のアミン化合物を用いることができる。これらの鎖伸長剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。なかでも、脂肪族ポリオール化合物が好ましく、ネオペンチルグリコールがより好ましい。
【0071】
前記ポリウレタン合成に用いる全ポリオール100質量%中の本実施形態のコポリエステルの含有量は、好ましくは10~100質量%、より好ましくは50~100質量%である。
【0072】
ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-及び1,4-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,6-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,5-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,6-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-3,5-フェニレンジイソシアネート、1-エチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1-イソプロピル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-ジメチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-ジメチル-4,6-フェニレンジイソシアネート、1,4-ジメチル-2,5-フェニレンジイソシアネート、ジエチルベンゼンジイソシアネート、ジイソプロピルベンゼンジイソシアネート、1-メチル-3,5-ジエチルベンゼンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ジエチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、1,3,5-トリエチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、ナフタレン-1,4-ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、1-メチル-ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、ナフタレン-2,6-ジイソシアネート、ナフタレン-2,7-ジイソシアネート、1,1-ジナフチル-2,2’-ジイソシアネート、ビフェニル-2,4’-ジイソシアネート、ビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3-3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4-ジイソシアネート、トルエンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;1,3-シクロペンチレンジイソシアネート、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなどを使用することができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネートがより好ましい。
【0073】
得られるポリウレタンの分子量を制御する目的で、必要に応じて1個の活性水素基を持つ鎖停止剤を使用することもできる。これらの鎖停止剤としては、水酸基を有するメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール及びヘキサノール等の脂肪族モノヒドロキシ化合物、並びにアミノ基を有するモルホリン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン及びジエタノールアミン等の脂肪族モノアミンが例示される。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0074】
得られるポリウレタンの耐熱性や強度を上げる目的で、必要に応じて3個以上の活性水素基やイソシアネート基を持つ架橋剤を使用することができる。
【0075】
本実施形態に係るポリウレタンは、公知のポリウレタンの製造方法により得ることができる。具体的には、例えば、ポリオールとポリイソシアネートと前記鎖伸長剤とを仕込み、反応させることによって製造する方法が挙げられる。これらの反応は、例えば、50~100℃の温度で、3~10時間行うことが好ましい。また、反応は、有機溶剤中で行ってもよい。
【0076】
有機溶剤としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソブチル、酢酸第2ブチル等のエステル溶剤;などを用いることができる。これらの有機溶剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0077】
本実施形態に係るポリウレタン100質量%中の本実施形態のコポリエステル由来の構成単位の含有量は、好ましくは10~98質量%、より好ましくは20~98質量%である。
これにより、効果がより好適に得られる傾向がある。
本明細書において、ポリウレタン中の各構成単位の含有量は、NMRにより測定される。
【0078】
本実施形態に係るポリウレタンの数平均分子量(Mn)は、下限は5,000以上でもよく、6,000以上でもよく、7,000以上でもよく、8,000以上でもよく、10,000以上でもよく、上限は1,000,000以下でもよく、500,000以下でもよく、100,000以下でもよく、500,000以下でもよく、15,000以下でもよい。これらの上限と下限はいずれの組み合わせでも用いられる。
ポリウレタンの数平均分子量(Mn)は、5,000~1,000,000でもよく、6,000~500,000でもよく、7,000~100,000でもよく、8,000~500,000でもよく、10,000~15,000でもよい。
上記範囲であれば、効果がより好適に得られる傾向がある。なお、本明細書において、ポリウレタンの数平均分子量(Mn)はGPCにより測定される値である。
【0079】
(樹脂組成物)
本実施形態の樹脂組成物として、前述の本実施形態のコポリエステル、ポリウレタンを含む熱可塑性樹脂組成物、または、熱硬化性樹脂組成物などが挙げられる。
【0080】
<熱可塑性樹脂組成物>
本実施形態の樹脂組成物が、熱可塑性樹脂組成物である場合、例えば、必要に応じて、更に、他の樹脂、結晶化核剤、熱安定剤、加水分解防止剤、その他の添加剤などを含んでも良い。
【0081】
[結晶化核剤]
本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物に用いられる結晶化核剤は、ポリ乳酸やポリブチレンサクシネート等のバイオマス資源由来の熱可塑性樹脂に用いられる結晶化核剤であれば、どのようなものでもよい。例えば、タルク系核剤、フェニル基を持つ金属塩系材料からなる核剤、ベンゾイル化合物系からなる核剤などが好ましく用いられる。その他公知の結晶化核剤、例えば乳酸塩、安息香酸塩、シリカ、リン酸エステル塩系などを用いてもよい。
【0082】
[熱安定剤及び加水分解防止剤]
本実施形態の熱可塑性ポリエステル組成物は、樹脂組成物の熱安定剤として、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤を含み、加水分解防止剤としてカルボジイミド化合物系加水分解防止剤、例えば、ポリカルボジイミド樹脂(商品名:カルボジライト、日清紡ケミカル株式会社製)などを含んでいることが好ましい。添加する熱安定剤及び加水分解防止剤は、上記3種の添加剤のうちから選択される一つでもよいが、上記2種の熱安定剤及び加水分解防止剤は、それぞれ機能が異なっており、それぞれの添加剤がともに加えられたものが好ましい。熱安定剤及び加水分解防止剤の添加量は、種類により異なるが、一般的には、それぞれ熱可塑性ポリエステル組成物100質量部に対し、0.1質量部から5質量部程度が好ましい。
【0083】
[その他の添加剤]
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物には、更にシリコーン系難燃剤、有機金属塩系難燃剤、有機リン系難燃剤、金属酸化物系難燃剤、金属水酸化物系難燃剤等を添加することが好ましい。これにより、難燃性が向上して延焼が抑制できるとともに、生分解性樹脂組成物の流動性が向上するため、より優れた成形性を確保することができる。
【0084】
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物には、充填剤を添加することができる。充填剤としては、タルク、マイカ、モンモリロナイト、カオリン等を挙げることができる。これらの充填剤が結晶核となることにより、コポリエステルの結晶化が促進され、成形体の衝撃強度および耐熱性が向上する。また、成形体の剛性も大きくできる。
【0085】
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物には、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、着色剤、難燃剤、離型剤、防曇剤、表面ぬれ改善剤、焼却補助剤、滑剤、分散助剤や各種界面活性剤、可塑剤、相溶化剤、耐候性改良剤、紫外線吸収剤、加工助剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤、離型剤等の各種添加剤を適宜配合することもできる。可塑剤としては、一般にポリマーの可塑剤として用いられる公知のものを特に制限なく用いることができ、例えばポリエステル可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤およびエポキシ系可塑剤などを挙げることができる。相溶化剤は、共重合体Aと共重合体Bの相溶化剤として機能するものであれば特に制限はない。相溶化剤としては、無機充填剤、グリシジル化合物、酸無水物をグラフト若しくは共重合した高分子化合物、及び有機金属化合物が挙げられ、これらの一種または二種以上を用いてもよい。これらの混練により、耐熱性、曲げ強度、衝撃強度、難燃性等も改善されるため、更にノートパソコン、携帯電話等を代表とする電子機器用筐体等の成形体への適用が促進される。
【0086】
また、充填剤として、従来公知の各種フィラーを配合することも出来る。機能性添加剤としては、化成肥料、土壌改良剤、植物活性剤なども添加することができる。そのフィラーは、無機系フィラーと有機系フィラーとに大別される。これらは一種又は二種以上の混合物として用いる事もできる。
【0087】
無機系フィラーとしては、無水シリカ、雲母、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、ケイ藻土、アロフェン、ベントナイト、チタン酸カリウム、ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、カオリン、カオリナイト、ガラス、石灰石、カーボン、ワラステナイト、焼成パーライト、珪酸カルシウム、珪酸ナトリウム等の珪酸塩、酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、炭酸第二鉄、酸化亜鉛、酸化鉄、リン酸アルミニウム、硫酸バリウム等の塩類等が挙げられる。無機系フィラーの含有量は、全組成物中、通常1~80重量%であり、好ましくは3~70重量%、より好ましくは5~60重量%である。
有機系フィラーとしては、生澱粉、加工澱粉、パルプ、キチン・キトサン質、椰子殻粉末、木材粉末、竹粉末、樹皮粉末、ケナフや藁等の粉末などが挙げられる。これらは一種または二種以上の混合物として使用することも出来る。有機系フィラーの添加量は、全組成物中、通常、0.01~70重量%である。
【0088】
組成物の調製は、従来公知の混合/混練技術は全て適用できる。混合機としては、水平円筒型、V字型、二重円錐型混合機やリボンブレンダー、スーパーミキサーのようなブレンダー、また各種連続式混合機等を使用できる。また混錬機としては、ロールやインターナルミキサーのようなバッチ式混錬機、一段型、二段型連続式混錬機、二軸スクリュー押し出し機、単軸スクリュー押し出し機等を使用できる。混練の方法としては、加熱溶融させたところに各種添加剤、フィラー、熱可塑性樹脂を添加して配合する方法などが挙げられる。また、前記の各種添加剤を均一に分散させる目的でブレンド用オイル等を使用することも出来る。
【0089】
<熱硬化性樹脂組成物>
本実施形態の樹脂組成物は、熱硬化性樹脂組成物である場合、例えば、他の樹脂、水酸基、カルボキシル基等の反応性基を有する本実施形態のコポリエステルを熱硬化性樹脂主剤として含み、更に、前記反応性基と熱反応しうるイソシアネート硬化剤やポリアミン硬化剤等の硬化剤を含む。
【0090】
本実施形態にかかる硬化剤の例としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の分子構造内に芳香族構造を持つポリイソシアネート、これらのポリイソシアネートのイソシアネート基の一部をカルボジイミドで変性した化合物;これらのポリイソシアネートに由来するアロファネート化合物;イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3-(イソシアナートメチル)シクロヘキサン等の分子構造内に脂環式構造を持つポリイソシアネート;1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の直鎖状脂肪族ポリイソシアネート、及びこのアロファネート化合物;これらのポリイソシアネートのイソシアヌレート体;これらのポリイソシアネートに由来するアロファネート体;これらのポリイソシアネートに由来するビゥレット体;トリメチロールプロパン変性したアダクト体;前記した各種のポリイソシアネートとポリオール成分との反応生成物であるポリイソシアネート等の多官能イソシアネートや、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ヘプタエチレンオクタミン、オクタエチレンノナミン、ノナエチレンデカミン、ピペラジンあるいは、炭素原子数が2~6のアルキル鎖を有するN-アミノアルキルピペラジン等のポリエチレンポリアミンや、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン、もしくはIPDA)等のアミン化合物が挙げられる。
【0091】
<樹脂組成物の硬化物>
本実施形態の樹脂組成物の硬化物は、前述の熱可塑性樹脂組成物としての樹脂組成物、又は前述の熱硬化性樹脂組成物としてのポリエステル組成物の硬化物である。
【0092】
本実施形態のコポリエステルは、様々な用途に使用できる。具体的には、人工皮革、合成皮革、靴、熱可塑性樹脂、発泡樹脂、熱硬化性樹脂、塗料、ラミネート接着剤、弾性繊維、ウレタン原料、自動車部品、スポーツ用品など、広範囲な用途に使用できる。生分解性に優れた本実施形態のコポリエステルを用いるので、前記用途の製品は、優れた生分解性を有する。
【0093】
本実施形態のポリウレタンは、様々な用途に使用できる。具体的には、人工皮革、合成皮革、靴、熱可塑性樹脂、発泡樹脂、熱硬化性樹脂、塗料、ラミネート接着剤、防振材、制振材、自動車部品、スポーツ用品、繊維処理剤、バインダーなど、広範囲な用途に使用できる。生分解性に優れた本実施形態のコポリエステルを用いるので前記用途の製品は、優れた生分解性を有する。
【0094】
本実施形態の樹脂組成物は、様々な用途に使用できる。具体的には、人工皮革、合成皮革、靴、熱可塑性樹脂、発泡樹脂、熱硬化性樹脂、塗料、ラミネート接着剤、防振材、制振材、自動車部品、スポーツ用品、繊維処理剤、バインダーなど、広範囲な用途に使用できる。生分解性に優れた本実施形態のコポリエステルを用いるので、前記用途の製品は、優れた生分解性を有する。
【0095】
(コーティング剤)
コーティング剤は、本実施形態のコポリエステルを含有し、更に必要に応じて、その他の樹脂、水、有機溶剤などのその他の成分を含有する。
【0096】
コーティング剤は、種々の基材上に適用できる。コーティング剤の用途の一例について説明する。
コーティング剤は、例えば、食品包装容器の基材の表面コートに用いられる。基材としては、例えば、スチレン系樹脂フィルム、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、ナイロン系樹脂フィルム等のプラスチックフィルム、またはこれらの積層体などが挙げられる。基材としては、例えば、紙、金属蒸着フィルム、アルミニウム箔等が挙げられる。コーティング剤は、生分解性の基材に対して好適に用いられる。生分解性の基材とは、例えば、紙、ポリエステル系のフィルム、ポリオレフィン系のフィルム、デンプン系フィルム等が挙げられる。
コーティング剤は、インキ、または接着剤等として用いることができる。
【0097】
(インキ)
インキは、本実施形態のコポリエステルと、着色剤とを含有し、更に必要に応じて、顔料分散剤、水、有機溶剤などのその他の成分を含有する。
インキは、例えば、印刷インキである。
インキは、例えば、水性インキであってもよいし、水を含有しないインキ(溶剤系インキ)であってもよい。
【0098】
(接着剤)
接着剤は、本実施形態のコポリエステルを含有し、更に必要に応じて、その他の樹脂、硬化剤、有機溶剤などのその他の成分を含有する。
接着剤は、上記の各種基材にラミネートして、主として食品、医薬品、洗剤等の包装材料に使用する複合フィルムを製造する際に用いるラミネート用接着剤組成物としても使用可能である。
そのような接着剤は、例えば、本実施形態のコポリエステルと、ポリエステルポリオールと、ポリイソシアネートとを含有する2液硬化型接着剤や、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体からなる1液型接着剤が使用できる。これらの接着剤は溶剤型、無溶剤型、水性型、アルコール型接着剤を必要に応じて使用できる。
【0099】
(シート)
シートは、前述本実施形態の樹脂組成物を用いてなる。樹脂組成物は、本実施形態のコポリエステルの他に、他の樹脂、各種添加剤を含有していてもよい。各種添加剤としては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、アンチブロッキング剤、熱安定化剤などが挙げられる。
シートとしては、例えば、無延伸シート、二軸延伸シート、発泡シートなどが挙げられる。
シートの用途としては、特に限定されないが、例えば、食品包装用容器、建設材料、家庭電化製品、雑貨など幅広く用いることができる。
【0100】
(フィルム)
フィルムは、前述本実施形態の樹脂組成物を用いてなる。樹脂組成物は、本実施形態のコポリエステルの他に、他の樹脂、各種添加剤を含有していてもよい。各種添加剤としては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、アンチブロッキング剤、熱安定化剤などが挙げられる。
フィルムとしては、例えば、無延伸フィルム、二軸延伸フィルム、一軸延伸フィルムなどが挙げられ、例えば、フィルム原材料のペレットを押出機で溶融後、T-ダイやインフレーション法により成膜することで作製できる。T-ダイ法の場合、ロールの速度差で縦延伸を、テンターを用いて横延伸を行うことにより二軸延伸フィルムが得られる。
【0101】
(積層体)
積層体は、本実施形態のシート及びフィルムから選ばれる少なくとも1種を有し、更に必要に応じて印刷層、樹脂フィルムなどのその他の構成を有する。
積層体は、例えば、本実施形態のシート及びフィルムから選ばれる少なくとも1種の片面又は両面に、機械強度や耐薬性の向上付与などのためにフィルムやシートを貼り合わせて得られる。具体的には、シートやフィルムの表面側及び裏面側の少なくともいずれかにポリスチレン系インフレーションフィルムを熱ラミネーションしたり、オレフィン系フィルム(CPP)を、接着剤を用いて貼り合わせたりして得られる。
使用される接着剤としては、特に限定されないが、例えば、本実施形態の接着剤であってもよいし、公知の接着剤であってもよい。
【0102】
(成形体)
成形体は、本実施形態のシート、フィルム及び積層体から選ばれる少なくとも1種を成形して得られる。
成形体は、例えば、本実施形態のシート、フィルム及び積層体を熱成形して得られる。熱成形方法としては、例えば、熱板接触加熱成形法、真空成形法、真空圧空成形法、プラグアシスト成形法等が挙げられ、特に熱源に赤外線ヒーターを用いた間接加熱成形を好ましく用いることができる。
【実施例
【0103】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0104】
<数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)の測定>
実施例及び比較例において樹脂の分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用い、下記の条件により測定した値である。
測定装置:
システムコントローラー Waters 600 Controller
送液ポンプ Waters Model Code 60F
RI(示差屈折計)検出器 Waters 2414
オートサンプラー Waters 717plus Autosampler
データ処理:Waters Empower3
測定条件:
カラム温度 40℃
溶離液 クロロホルム(CHCl
流速 1.0ml/分
標準:ポリスチレン
カラム:
Shodex GPC LF-G 1本
Shodex GPC LF-804 4本
試料:樹脂固形分換算で0.4質量%のクロロホルム溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0105】
H-NMRスペクトルの測定>
測定装置:JEOL RESONANCE製「JNM-ECM400S」
磁場強度:400MHz
溶媒:重水素化クロロホルム
試料濃度:100mg/1.0mL
【0106】
13C-NMRスペクトル>
測定装置:JEOL RESONANCE製「JNM-ECM400S」
磁場強度:100MHz
溶媒:重水素化クロロホルム
試料濃度:100mg/1.0mL
【0107】
<3-ヒドロキシ酪酸の含有率の算出>
上記方法でH-NMRスペクトルを測定した。図1は、実施例1のコポリエステルのH-NMRスペクトルである。
H-NMRスペクトル上のピークに対し、下記に示す式に基づき、3HB含有率を算出した。
3HB含有率=(5.2ppmの積分値)/{(4.1ppmの積分値―3.6ppmの積分値)/4+5.2ppmの積分値+2.6ppmの積分値/4}
【0108】
<平均連鎖長の評価>
上記方法で13C-NMRスペクトルを測定した。図2は、実施例1のコポリエステルの13C-NMRスペクトルである。
【0109】
[ピークの帰属]
非特許文献1を参考に、13C-NMRスペクトル上のトライアド(モノマー3連鎖の組み合わせ)ピークの帰属を行った。
【0110】
[平均連鎖長の算出]
下記に示す式に基づき、平均連鎖長を算出した。
【0111】
【数1】
【0112】
式(4)~(5)中、S、B、H、LBS、L3HB、IX-Y-Z、χはそれぞれ以下を表す。
S:コハク酸由来の構成単位
B:1,4-ブタンジオール由来の構成単位
H:3-ヒドロキシ酪酸由来の構成単位
X-Y-Z:構成単位X、Y及びZのトライアドに由来するピーク積分値(ただしX、Y及びZはS、B、Hのいずれかである)
BS:1,4-ブタンジオール由来の構成単位とコハク酸由来の構成単位のダイアッド(モノマー2連鎖の組み合わせ)の平均連鎖長
3HB:3-ヒドロキシ酪酸由来の構成単位の平均連鎖長
χ:コポリエステルのランダム性を表す指標であり、0~2の値をとる
【0113】
<生分解性評価法>
生分解性評価法は、下記の非特許文献Aの「2.3. Biodegradation with seawater by BOD method」に記載の方法を参考にして、評価を実施した。なお、非特許文献Aの評価方法はJIS K6950の植種源を、活性汚泥から海水に置き換えて試験したものである。
【0114】
[非特許文献C] Atsuyoshi Nakayama*, Naoko Yamano, Norioki Kawasaki, Biodegradation in seawater of aliphatic polyesters, Polymer Degradation and Stability 166 (2019) 290-299.
【0115】
[植種源]
大阪府南港(緯度:34.634905 経度:135.418919)で採取した海水を採取植種源とした。
【0116】
[試験条件]
生分解度測定方法:試験瓶にソーダライム(二酸化炭素吸収剤)および圧力センサー(WTW社製、OxiTop-IDS(登録商標))を取付け、下記の条件下でBOD(生物化学的酸素要求量)を測定し、生分解度を算出した。
培養温度:27℃、暗所
培養期間:28日間
【0117】
[生分解度の算出]
試験材料の生分解度は以下の式に基づき算出した。
生分解度(%)=(BOD-BOD)/ThOD×100
BOD:試験材料の生物化学的酸素要求量(測定値:mg)
BOD:空試験の平均生物化学的酸素要求量(測定値:mg)
ThOD:試験材料が完全に酸化された場合に必要とされる理論的酸素要求量(計算値:mg)
【0118】
<酸価の測定>
JIS K 0070:1992に記載の方法で測定を行った。具体的には、三角フラスコ中に試料約1gを量り採り、クロロホルム20mLを加えて溶解し、フェノールフタレイン試液を指示薬として加えた。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定し、下記式により酸価を求めた。
酸価(mgKOH/g)=(5.611×a×F)/S
S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(mL)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液のファクター
【0119】
<加水分解に対する安定性の評価>
試験材料1gをガラス瓶に入れ、水を2質量%添加して密栓した後、50℃に設定した恒温槽で1週間静置した。加熱前後の試験材料について、それぞれGPC法による重量平均分子量(Mw)を測定し、下記の式を用いて分子量保持率(%)を算出した。
分子量保持率={(加熱前のMw)-(加熱後のMw)}/(加熱前のMw)×100分子量保持率をもとに、加水分解に対する安定性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
評価基準:
〇:分子量保持率が80~100%
×:分子量保持率が80%未満
【0120】
<臭気の評価>
試験材料をガラス瓶入れ、臭気を官能評価した。評価基準は以下のとおりである。
評価基準:
無:無臭
有:臭気あり
【0121】
(合成例1)
「ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)の合成」
窒素導入管、温度計、撹拌子、dean-starkトラップ備えた100mL三口フラスコに、3HB21.3g(0.205mol)、p-トルエンスルホン酸一水和物0.380g(0.00200mol)、トルエン40mLを加え、内温95℃で19時間加熱を行った。トルエンを留去し、o-ジクロロベンゼン60mLを加えた。減圧することで還流状態に調整し、更に95℃で18時間加熱還流を行った。反応液を室温まで冷却し、メタノール100mLを加えて固体を析出させ、ろ過を行うことでポリ(3-ヒドロキシ酪酸)12.7gを得た。
上記記載の平均分子量の測定方法を用いて、平均分子量を測定した。数平均分子量Mnが3,400であり、重量平均分子量Mwが7,300であった。
上記記載のH-NMRの測定方法を用いて、H-NMRスペクトルを測定した。その結果は、以下である。
H-NMR δ(CDCl):1.25(m,3H),2.55(m,2H),4.15(m,tr),5.23(m,1H),5.75(d,痕跡量),6.95(m, 痕跡量)
【0122】
(合成例2)
「コハク酸と1,4-ブタンジオールのポリエステル(ポリ(ブチレンサクシネート):PBS)の合成」
窒素導入管、温度計、冷却管、メカニカルスターラーを備えたセパラブルフラスコに1,4-ブタンジオール478g(5.30mol)、コハク酸559g(4.73mol)(コハク酸100molに対する1,4-ブタンジオールのモル数=112mol)を加え、1時間かけて160℃に昇温した。さらに1時間かけて200℃まで昇温した。水の留出が落ち着いたら冷却管を外し、チタニウムテトライソプロポキシド0.01質量%を添加してさらに200℃で保持した。酸価が1以下になった時点で放冷し、取り出すことでPBSを得た。PBSにおけるコハク酸由来の構造100molに対する1,4-ブタンジオール由来構造のモル比が、101.7molであった。
【0123】
上記記載の平均分子量の測定方法を用いて、平均分子量を測定した。数平均分子量Mnが10,200であり、重量平均分子量Mwが38,000であった。
【0124】
上記記載の酸価の測定方法を用いて、酸価を測定した。その結果、酸価0.44mg-KOH/gであった。
【0125】
上記記載のH-NMRの測定方法を用いて、H-NMRスペクトルを測定した。その結果は、以下である。
H-NMR δ(CDCl):1.70(t,2H),2.62(s,4H),3.23(m,tr,末端CH2OH),4.12(t,2H))
【0126】
(合成例3)
1,4-ブタンジオール270g(3.00mol)、コハク酸338g(2.86mol)(コハク酸100molに対する1,4-ブタンジオールのモル数=104.7mol)を用いる以外は、合成例2と同様な方法で、PBSを得た。PBSにおけるコハク酸由来の構造100molに対する1,4-ブタンジオール由来構造のモル比が、100.9molであった。
上記記載の平均分子量の測定方法を用いて、平均分子量を測定した。数平均分子量Mnが19,800であり、重量平均分子量Mwが42,000であった。
上記記載の酸価の測定方法を用いて、酸価を測定した。その結果、酸価0.52mg-KOH/gであった。
【0127】
(実施例1)
攪拌機、窒素ガス導入管を備えた試験管に、合成例1で得たポリ(3-ヒドロキシ酪酸)0.41g(4.8mmol),合成例3で得たPBS5.70g(66.2mmol)、チタニウムテトライソプロポキシド0.01質量%を仕込み、減圧下でエステル化反応によって生成する水分を除去しつつ、温度140℃で15分間、エステル交換反応を進行させた。本実施形態のコポリエステルとして、3-ヒドロキシ酪酸―コハク酸―1,4-ブタンジオールのコポリエステルを得た。PHBとPBSの仕込み質量比が6.7/93.3であった。上記記載の平均分子量の測定方法を用いて、平均分子量を測定した。数平均分子量Mnが7,100であり、重量平均分子量Mwが17,400であった。
【0128】
上記<3-ヒドロキシ酪酸の含有率の算出>記載の方法により3-ヒドロキシ酪酸由来の構造の含有率を測定した。その結果を表1に示す。
上記<平均連鎖長の評価>記載の方法により3-ヒドロキシ酪酸由来の構造の平均連鎖長を測定した。その結果を表1に示す。
上記<生分解性評価>記載の方法により生分解性を評価した。その結果を表1に示す。
上記<酸価の測定>による酸価を評価した。その結果を表1に示す。
【0129】
(実施例2)
温度130℃で15分間、合成例1で得たポリ(3-ヒドロキシ酪酸)と合成例3で得たPBSとの仕込み質量比が、表1に示すものである以外は、実施例1と同様な方法で、本実施形態のコポリエステルとして、3-ヒドロキシ酪酸―コハク酸―1,4-ブタンジオールのコポリエステルを得た。上記記載の平均分子量の測定方法を用いて、平均分子量を測定した。数平均分子量Mnが7,600であり、重量平均分子量Mwが20,100であった。実施例1と同様な方法で3-ヒドロキシ酪酸の含有率、平均連鎖長、酸価、生分解性を評価した。その結果を表1に示す。
【0130】
(実施例3)
温度150℃で2時間、合成例1で得たポリ(3-ヒドロキシ酪酸)と合成例3で得たPBSとの仕込み質量比が、表1に示すものである以外は、実施例1と同様な方法で、本実施形態のコポリエステルとして、3-ヒドロキシ酪酸―コハク酸―1,4-ブタンジオールのコポリエステルを得た。上記記載の平均分子量の測定方法を用いて、平均分子量を測定した。数平均分子量Mnが10,400であり、重量平均分子量Mwが17,800であった。実施例1と同様な方法で3-ヒドロキシ酪酸の含有率、平均連鎖長、酸価、生分解性を評価した。その結果を表1に示す。
【0131】
(実施例4)
温度150℃で15分、合成例1で得たポリ(3-ヒドロキシ酪酸)と合成例3で得たPBSとの仕込み質量比が、表1に示すものである以外は、実施例1と同様な方法で、本実施形態のコポリエステルとして、3-ヒドロキシ酪酸―コハク酸―1,4-ブタンジオールのコポリエステルを得た。上記記載の平均分子量の測定方法を用いて、平均分子量を測定した。数平均分子量Mnが7,600であり、重量平均分子量Mwが16,100であった。実施例1と同様な方法で3-ヒドロキシ酪酸の含有率、平均連鎖長、酸価、生分解性を評価した。その結果を表1に示す。
【0132】
(実施例5)
温度150℃で2時間、合成例1で得たポリ(3-ヒドロキシ酪酸)と合成例2で得たPBSとの仕込み質量比が、表1に示すものである以外は、実施例1と同様な方法で、本実施形態のコポリエステルとして、3-ヒドロキシ酪酸―コハク酸―1,4-ブタンジオールのコポリエステルを得た。上記記載の平均分子量の測定方法を用いて、平均分子量を測定した。数平均分子量Mnが7,500であり、重量平均分子量Mwが19,200であった。実施例1と同様な方法で3-ヒドロキシ酪酸の含有率、平均連鎖長、酸価、生分解性を評価した。その結果を表1に示す。
【0133】
(比較例1)
温度175℃で2時間、合成例1で得たポリ(3-ヒドロキシ酪酸)と合成例3で得たPBSとの仕込み質量比が、表1に示すもの以外は、実施例1と同様な方法で、3-ヒドロキシ酪酸―コハク酸―1,4-ブタンジオールのコポリエステルを得た。上記記載の平均分子量の測定方法を用いて、平均分子量を測定した。数平均分子量Mnが13,000であり、重量平均分子量Mwが25,600であった。
実施例1と同様な方法で3-ヒドロキシ酪酸の含有率、平均連鎖長、酸価、生分解性を評価した。その結果を表1に示す。
【0134】
(比較例2)
温度175℃で2時間、合成例1で得たポリ(3-ヒドロキシ酪酸)と合成例3で得たPBSとの仕込み質量比が、表1に示すもの以外は、実施例1と同様な方法で、3-ヒドロキシ酪酸―コハク酸―1,4-ブタンジオールのコポリエステルを得た。上記記載の平均分子量の測定方法を用いて、平均分子量を測定した。数平均分子量Mnが8,200であり、重量平均分子量Mwが15,200であった。
実施例1と同様な方法で3-ヒドロキシ酪酸の含有率、平均連鎖長、酸価、生分解性を評価した。その結果を表1に示す。
【0135】
(比較例3)
特許文献1の実施例1記載の方法で、3-ヒドロキシ酪酸―コハク酸―1,4-ブタンジオールのコポリエステルを得た。
本願実施例1と同様な方法で、3-ヒドロキシ酪酸の含有率、平均連鎖長、酸価、生分解性を評価した。その結果を表1に示す。
【0136】
(比較例4)
非特許文献1に記載の方法で、非特許文献1の表3の「Copo-BS-12」に示す、3-ヒドロキシ酪酸―コハク酸―1,4-ブタンジオールのコポリエステルを得た。
本願実施例1と同様な方法で、3-ヒドロキシ酪酸の含有率、平均連鎖長、酸価、生分解性を評価した。その結果を表1に示す。
【0137】
(比較例5)
非特許文献1に記載の方法で、非特許文献1の表3の「Copo-BS-6」に示す、3-ヒドロキシ酪酸―コハク酸―1,4-ブタンジオールのコポリエステルを得た。
本願実施例1と同様な方法で、3-ヒドロキシ酪酸の含有率、平均連鎖長、酸価、生分解性を評価した。その結果を表1に示す。
【0138】
【表1】
【0139】
(考察)
生分解性が高い3-ヒドロキシ酪酸由来の構造を特定の平均連鎖長でコポリエステル中に配列すると、環境中の微生物が分泌する酵素により3-ヒドロキシ酪酸由来の構成単位の切断が進行することで、コポリエステルが微生物による代謝が可能なオリゴマーになり、コポリエステル全体が生分解する。
また、更に酸価を一定値以下に制御することで、加水分解性、臭気を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本実施形態のコポリエステルは、3-ヒドロキシ酪酸由来の構造を有し、生分解性が発現しながら、分解物に由来する酸価を一定値以下に制御することで、加水分解性、臭気を抑制することができるため、本実施形態のコポリエステルを含む樹脂組成物は、サステナブルな製品群(包装材料、フィルム)などの種々の用途に使用することが期待される。
図1
図2