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特許7541306相分離構造形成用樹脂組成物、相分離構造を含む構造体の製造方法、及びブロックコポリマー
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  • 特許-相分離構造形成用樹脂組成物、相分離構造を含む構造体の製造方法、及びブロックコポリマー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】相分離構造形成用樹脂組成物、相分離構造を含む構造体の製造方法、及びブロックコポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08L 53/00 20060101AFI20240821BHJP
   C08F 8/02 20060101ALI20240821BHJP
   C08J 7/00 20060101ALI20240821BHJP
   C08F 297/00 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
C08L53/00
C08F8/02
C08J7/00 301
C08J7/00 CET
C08J7/00 CEY
C08F297/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020010090
(22)【出願日】2020-01-24
(65)【公開番号】P2021116343
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】宮城 賢
(72)【発明者】
【氏名】太宰 尚宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敏文
(72)【発明者】
【氏名】磯野 拓也
(72)【発明者】
【氏名】田中 舜馬
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-218525(JP,A)
【文献】国際公開第2007/132901(WO,A1)
【文献】特表2017-505709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 -101/14
C08F 6/00 -246/00
C08J 7/00
H01L21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部が下記一般式(c1)で表される構成単位で置換されたスチレン単位の繰り返し構造からなるブロック(b1)と、メタクリル酸メチル単位の繰り返し構造を含むブロック(b2)とを有するブロックコポリマーを含有する、相分離構造形成用樹脂組成物。
【化1】
[式中、Rは、水素原子又はメチル基である。Rc0は、置換基を有してもよい多環式の脂環式炭化水素基である。]
【請求項2】
前記ブロックコポリマーの数平均分子量が25000以上40000以下である、請求項1に記載の相分離構造形成用樹脂組成物。
【請求項3】
前記ブロックコポリマー中の前記一般式(c1)で表される構成単位の割合は、前記ブロックコポリマーを構成する全構成単位100モル%に対して、1~25モル%である、請求項2に記載の相分離構造形成用樹脂組成物。
【請求項4】
支持体上に、請求項1~3のいずれか一項に記載の相分離構造形成用樹脂組成物を塗布して、ブロックコポリマーを含む層を形成する工程と、
前記のブロックコポリマーを含む層を相分離させる工程と、
を有する、相分離構造を含む構造体の製造方法。
【請求項5】
一部が下記一般式(c1)で表される構成単位で置換さ
れたスチレン単位の繰り返し構造からなるブロック(b1)と、メタクリル酸メチル単位の繰り返し構造を含むブロック(b2)とを有する、ブロックコポリマー。
【化2】
[式中、Rは、水素原子又はメチル基である。Rc0は、置換基を有してもよい多環式の脂環式炭化水素基である。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相分離構造形成用樹脂組成物、相分離構造を含む構造体の製造方法、及びブロックコポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)のさらなる微細化に伴い、より繊細な構造体を加工する技術が求められている。
このような要望に対し、互いに非相溶性のブロック同士が結合したブロックコポリマーの自己組織化により形成される相分離構造を利用して、より微細なパターンを形成する技術の開発が行われている(例えば、特許文献1参照)。
ブロックコポリマーの相分離構造を利用するためには、ミクロ相分離により形成される自己組織化ナノ構造を、特定の領域のみに形成し、かつ、所望の方向へ配列させることが必須とされる。これらの位置制御及び配向制御を実現するために、ガイドパターンによって相分離パターンを制御するグラフォエピタキシーや、基板の化学状態の違いによって相分離パターンを制御するケミカルエピタキシー等のプロセスが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
ブロックコポリマーは、相分離により規則的な周期構造の構造体を形成する。
「構造体の周期」とは、相分離構造の構造体が形成された際に観察される相構造の周期を意味し、互いに非相溶である各相の長さの和をいう。相分離構造が基板表面に対して垂直なラメラ構造を形成する場合、構造体の周期(L0)は、隣接する2つの相の長さの和となる。
【0004】
構造体の周期(L0)は、重合度N、及び、フローリー-ハギンズ(Flory-Huggins)の相互作用パラメータχなどの固有重合特性によって決まることが知られている。すなわち、χとNとの積「χ・N」が大きくなるほど、ブロックコポリマーにおける異なるブロック間の相互反発は大きくなる。このため、χ・N>10(以下「強度分離限界点」という)のときには、ブロックコポリマーにおける異種類のブロック間の反発が大きく、相分離が起こる傾向が強くなる。そして、強度分離限界点においては、構造体の周期はおよそN2/3・χ1/6となり、下式(1)の関係が成り立つ。つまり、構造体の周期は、分子量と、異なるブロック間の分子量比と、に相関する重合度Nに比例する。
【0005】
L0 ∝ a・N2/3・χ1/6 ・・・(1)
[式中、L0は、構造体の周期を表す。aは、モノマーの大きさを示すパラメータである。Nは、重合度を表す。χは、相互作用パラメータであり、この値が大きいほど、相分離性能が高いことを意味する。]
【0006】
したがって、ブロックコポリマーの組成及び総分子量を調整することによって、構造体の周期(L0)を調節することができる。
ブロックコポリマーが形成する周期構造は、ポリマー成分の体積比等に伴ってシリンダー(柱状)、ラメラ(板状)、スフィア(球状)と変化し、その周期は分子量に依存することが知られている。このため、ブロックコポリマーの自己組織化により形成される相分離構造を利用して、比較的大きい周期(L0)の構造体を形成するためには、ブロックコポリマーの分子量を大きくする方法が考えられる。
【0007】
また、汎用のブロックコポリマーである、スチレンのブロックとメタクリル酸メチルのブロックとを有するブロックコポリマーよりも大きな相互作用パラメータ(χ)をもつブロックコポリマーを用いる方法が考えられる。例えば特許文献2には、ポリ(スチレン-b-イソプレン)ブロック共重合体のポリイソプレンブロックの約50%から90%がエポキシ官能基によって修飾されているブロック共重合体を含有する組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2008-36491号公報
【文献】特表2014-521790号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】プロシーディングスオブエスピーアイイー(Proceedings of SPIE),第7637巻,第76370G-1(2010年).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、現状、汎用のブロックコポリマーである、スチレンのブロックとメタクリル酸メチルのブロックとを有するブロックコポリマーの自己組織化により形成される相分離構造を利用して構造体を形成するに際し、相分離性能の更なる向上を図ることが困難であった。
特許文献2に記載された組成物においては、ブロック共重合体を製造する際、新たなモノマー(イソプレン)を要する。この新たなモノマーの採用に伴い、ブロック共重合体の狭分散化を図るのに、新たな反応条件の設定が必要になる。
【0011】
また、より微細なパターンを形成するために、分子量の小さいブロックコポリマーを使用することが考えられる。しかしながら、この場合、上式(1)におけるN(重合度)が下がり、相分離が起こらないという問題がある。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、新たなモノマーを必要とせずに相分離性能をより高められる相分離構造形成用樹脂組成物、相分離構造を含む構造体の製造方法、及び前記相分離構造形成用樹脂組成物の製造に用いるブロックコポリマーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、汎用のブロックコポリマーである、スチレンのブロックとメタクリル酸メチルのブロックとを有するブロックコポリマー(PS-b-PMMA)を用い、スチレン及びメタクリル酸メチル以外の新たなモノマーを必要とせずに、相分離構造における疎水性ブロック部と親水性ブロック部との親疎水差を、より大きくする方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の第1の態様は、一部が下記一般式(c1)で表される構成単位で置換されたスチレン単位の繰り返し構造からなるブロック(b1)と、メタクリル酸メチル単位の繰り返し構造を含むブロック(b2)とを有するブロックコポリマーを含有する、相分離構造形成用樹脂組成物。
【0015】
【化1】
[式中、Rは、水素原子又はメチル基である。Rc0は、疎水性官能基である。]
【0016】
本発明の第2の態様は、支持体上に、前記第1の態様の相分離構造形成用樹脂組成物を塗布して、ブロックコポリマーを含む層を形成する工程と、前記のブロックコポリマーを含む層を相分離させる工程と、を有することを特徴とする、相分離構造を含む構造体の製造方法である。
【0017】
本発明の第3の態様は、一部が下記一般式(c1)で表される構成単位で置換されたスチレン単位の繰り返し構造からなるブロック(b1)と、メタクリル酸メチル単位の繰り返し構造を含むブロック(b2)とを有する、ブロックコポリマーである。
【0018】
【化2】
[式中、Rは、水素原子又はメチル基である。Rc0は、疎水性官能基である。]
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、新たなモノマーを必要とせずに相分離性能をより高められる相分離構造形成用樹脂組成物、相分離構造を含む構造体の製造方法、及び前記相分離構造形成用樹脂組成物の製造に用いるブロックコポリマーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】相分離構造を含む構造体の製造方法の一実施形態例を説明する概略工程図である。
図2】任意工程の一実施形態例を説明する図である。
図3】ブロックコポリマー(B1)のH NMRスペクトルを示す図である。
図4】ブロックコポリマー(B4)のH NMRスペクトルを示す図である。
図5】ブロックコポリマー(B4)の13C NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書及び本特許請求の範囲において、「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、化合物等を意味するものと定義する。
「アルキル基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の1価の飽和炭化水素基を包含するものとする。アルコキシ基中のアルキル基も同様である。
「アルキレン基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の2価の飽和炭化水素基を包含するものとする。
「ハロゲン原子」は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
「構成単位」とは、高分子化合物(樹脂、重合体、共重合体)を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
「置換基を有してもよい」と記載する場合、水素原子(-H)を1価の基で置換する場合と、メチレン基(-CH-)を2価の基で置換する場合との両方を含む。
「露光」は、放射線の照射全般を含む概念とする。
「α位(α位の炭素原子)」とは、特に断りがない限り、ブロックコポリマーの側鎖が結合している炭素原子を意味する。メタクリル酸メチル単位の「α位の炭素原子」は、メタクリル酸のカルボニル基が結合している炭素原子を意味する。スチレン単位の「α位の炭素原子」は、ベンゼン環が結合している炭素原子のことを意味する。
「数平均分子量」(Mn)は、特に断りがない限り、サイズ排除クロマトグラフィーにより測定される標準ポリスチレン換算の数平均分子量である。
「重量平均分子量」(Mw)は、特に断りがない限り、サイズ排除クロマトグラフィーにより測定される標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。Mn又はMwの値に、単位(gmol-1)を付したものはモル質量を表す。
本明細書及び本特許請求の範囲において、化学式で表される構造によっては不斉炭素が存在し、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在し得るものがあるが、その場合は一つの式でそれら異性体を代表して表す。それらの異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0022】
(相分離構造形成用樹脂組成物)
本実施形態の相分離構造形成用樹脂組成物は、一部が一般式(c1)で表される構成単位で置換されたスチレン単位の繰り返し構造からなるブロック(b1)と、メタクリル酸メチル単位の繰り返し構造を含むブロック(b2)とを有するブロックコポリマーを含有する。
【0023】
<ブロックコポリマー>
本実施形態におけるブロックコポリマー(以下、「(BCP)成分」ともいう)は、一部が一般式(c1)で表される構成単位で置換されたスチレン単位の繰り返し構造からなるブロック(b1)と、メタクリル酸メチル単位の繰り返し構造を含むブロック(b2)とを有する。
(BCP)成分は、ブロック(b1)及びブロック(b2)以外のブロックを有してもよい。
【0024】
(BCP)成分において、スチレン単位と、メタクリル酸メチル単位と、のモル比は、20:80~80:20であることが好ましく、40:60~60:40であることがよ
り好ましい。
(BCP)成分の数平均分子量(Mn)(サイズ排除クロマトグラフィーによるポリスチレン換算基準)は、特に限定されるものではないが、20000~60000が好ましく、25000~40000がより好ましく、25000~30000がさらに好ましい。
(BCP)成分の分子量分散度(Mw/Mn)は、1.0~1.5が好ましく、1.0~1.2がより好ましく、1.0~1.1がさらに好ましい。
(BCP)成分のスチレン単位と、メタクリル酸メチル単位とのモル比、及び(BCP)成分の数平均分子量(Mn)が上記の範囲内であれば、よりラメラ構造の構造体が形成されやすい。
【0025】
(BCP)成分の周期(ブロックコポリマーの分子2つ分の長さ)は、10~40nmが好ましく、12~30nmがより好ましく、15~25nmがさらに好ましく、15~21nmが特に好ましい。(BCP)成分の周期は、(BCP)成分を含有する相分離構造形成用樹脂組成物を用いて相分離構造を形成させた後、前記相分離構造をX線小角散乱(SAXS)法により解析することで測定することができる。
【0026】
≪ブロック(b1)≫
ブロック(b1)は、スチレン単位の繰り返し構造からなり、一部が下記一般式(c1)で表される構成単位で置換されたスチレン単位の繰り返し構造からなる。
以下、スチレン単位を「構成単位(b11)」、一般式(c1)で表される構成単位を「構成単位(b12)」ともいう。
【0027】
【化3】
[式中、Rは、水素原子又はメチル基である。Rc0は、疎水性官能基である。]
【0028】
式(c1)中、Rc0は、疎水性官能基である。Rc0における疎水性官能基としては、スチレンの疎水性に比べて、構成単位(b12)を誘導するモノマーの疎水性を高くする官能基であればよい。
該疎水性官能基としては、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭化水素基が挙げられる。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子が好ましい。該炭化水素基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、又は環状の炭化水素基が挙げられる。
【0029】
該直鎖状のアルキル基は、炭素数が1~30であることが好ましく、炭素数が1~25がより好ましく、炭素数1~10がさらに好ましい。
具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。
【0030】
該分岐鎖状のアルキル基は、炭素数が3~30であることが好ましく、炭素数3~25がより好ましく、炭素数3~10がさらに好ましい。
具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、2,2-ジメチルブチル基等が挙げられる。
【0031】
該環状の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基(脂環式炭化水素基)でも芳香族炭化水素基でもよく、また、多環式基でも単環式基でもよい。
単環式基である脂肪族炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素数3~12のものが好ましい。
多環式基である脂肪族炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素数7~12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。その中でも、該ポリシクロアルカンとしては、アダマンタンが好ましい。
【0032】
該芳香族炭化水素基は、芳香環を少なくとも1つ有する炭化水素基である。
この芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環の炭素数は5~30であることが好ましく、炭素数5~20がより好ましく、炭素数6~15がさらに好ましく、炭素数6~12が特に好ましい。
芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基またはヘテロアリール基);2以上の芳香環を含む芳香族化合物(例えばビフェニル、フルオレン等)から水素原子を1つ除いた基;前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基など)等が挙げられる。前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環に結合するアルキレン基の炭素数は、1~4であることが好ましく、炭素数1~2であることがより好ましく、炭素数1であることが特に好ましい。
【0033】
c0における上記炭化水素基は、置換基を有してもよい。この置換基としては、例えば、ハロゲン原子、-RP1、-RP2-O-RP1、-RP2-CO-RP1、-RP2-CO-ORP1、-RP2-O-CO-RP1等が挙げられる。
ここで、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子が好ましい。
【0034】
P1は、炭素数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基、炭素数3~20の1価の脂肪族環状飽和炭化水素基又は炭素数6~30の1価の芳香族炭化水素基である。また、RP2は、単結合、炭素数1~10の2価の鎖状飽和炭化水素基、炭素数3~20の2価の脂肪族環状飽和炭化水素基又は炭素数6~30の2価の芳香族炭化水素基である。但し、RP1及びRP2の鎖状飽和炭化水素基、脂肪族環状飽和炭化水素基及び芳香族炭化水素基の有する水素原子の一部又は全部はフッ素原子で置換されていてもよい。上記脂肪族環状炭化水素基は、上記置換基を1種単独で1つ以上有していてもよいし、上記置換基のうち複数種を各1つ以上有していてもよい。
炭素数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基等が挙げられる。
炭素数3~20の1価の脂肪族環状飽和炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基等の単環式脂肪族飽和炭化水素基;ビシクロ[2.2.2]オクタニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカニル基、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカニル基、アダマンチル基等の多環式脂肪族飽和炭化水素基が挙げられる。
炭素数6~30の1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン、ビフェニル、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環から水素原子1個を除いた基が挙げられる。
【0035】
上記の中でも、該炭化水素基における置換基としては、ハロゲン原子又は-RP1が好ましく、-RP1がより好ましく、炭素数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基がさらに好ましく、メチル基、エチル基が特に好ましい。
【0036】
式(c1)中、Rc0は、上記の中でも、置換基を有してもよい環状の炭化水素基であることが好ましく、置換基を有してもよい多環式の脂環式炭化水素基がより好ましく、置換基を有する多環式の脂環式炭化水素基がさらに好ましい。
【0037】
式(c1)中のRc0についての好適な具体例を以下に示す。*は、式(c1)中のフェニレン基の炭素原子に結合する結合手を示す。
【0038】
【化4】
【0039】
式(c1)中のRc0としては、上記の中でも式(Rc0-1-3)で表される基であることが好ましい。
【0040】
前記(BCP)成分中の構成単位(b12)の割合は、前記(BCP)成分を構成する全構成単位(100モル%)に対して、1~25モル%であることが好ましく、3~20モル%であることがより好ましく、5~10モル%であることがさらに好ましい。
構成単位(b12)の割合が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、相分離性能をより高められる。一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、ブロック(b1)の体積分率が高くなりすぎず、後述する親水性のブロック(b2)と疎水性のブロック(b1)との比率から想定される相分離構造が安定して形成されやすくなる。
【0041】
前記(BCP)成分中の構成単位(b12)の割合は、(BCP)成分を構成する各ブロックの数平均分子量(Mn)(サイズ排除クロマトグラフィーによるポリスチレン換算基準)が25000以上40000以下である場合に特に好ましい割合である。
【0042】
ブロック(b1)中の構成単位(b12)の割合は、前記ブロック(b1)を構成する全構成単位(100モル%)に対して、2モル%以上であることが好ましく、6~40モル%であることがより好ましく、10~20モル%であることがさらに好ましい。
構成単位(b12)の割合が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、相分離性能をより高められる。一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、ブロック(b1)の疎水性が適度な高さに抑えられる。
ブロック(b1)中の構成単位(b12)の割合は、後述の工程(p2)におけるブロックコポリマー、及び疎水性官能基(Rc0)を有する化合物の仕込み量、反応時間等によって制御できる。
【0043】
(BCP)成分を構成するブロック(b1)の数平均分子量(Mn)(サイズ排除クロマトグラフィーによるポリスチレン換算基準)は、特に限定されるものではないが、10000~30000が好ましく、12500~20000がより好ましく、12500~15000がさらに好ましい。
【0044】
≪ブロック(b2)≫
ブロック(b2)は、メタクリル酸メチル単位の繰り返し構造を含むブロックである。
ブロック(b2)は、メタクリル酸メチルの繰り返し構造からなるでもよいし、一部が下記一般式(h1)で表される構成単位で置換されたメタクリル酸メチル単位の繰り返し構造からなるものでもよい。
以下、メタクリル酸メチル単位を「構成単位(b21)」、一般式(h1)で表される構成単位を「構成単位(b22)」ともいう。
【0045】
【化5】
[式中、Rh0は、親水性官能基である。]
【0046】
前記式(h1)中、Rh0は、親水性官能基である。
h0における親水性官能基としては、メタクリル酸メチルの親水性に比べて、構成単位(b22)を誘導するモノマーの親水性を高くする官能基であればよく、特に、アミン由来の親水性官能基が好ましい。
【0047】
h0における、アミン由来の親水性官能基としては、例えば下記の一般式(Rh0-1)で表される官能基が挙げられる。
【0048】
【化6】
[式中、R01は、置換基として少なくとも-OHを有する脂肪族炭化水素基である。R02は、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基、又は水素原子である。*は、式(h1)中のカルボニル基の炭素原子に結合する結合手である。]
【0049】
前記式(Rh0-1)中、R01は、置換基として少なくとも-OHを有する脂肪族炭化水素基である。
01における脂肪族炭化水素基は、鎖状であっても環状であってもよく、鎖状であることが好ましい。また、R01における脂肪族炭化水素基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。
01における脂肪族炭化水素基(置換基を有しない状態)としては、炭素数1~8のアルキル基が好ましく、炭素数1~5のアルキル基がより好ましく、炭素数1~3のアルキル基がさらに好ましい。
01における脂肪族炭化水素基に結合した水素原子を置換する置換基としては、ヒドロキシ基の他、アルコキシ基等が挙げられる。
【0050】
前記式(Rh0-1)中、R02は、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基、又は水素原子である。
02における脂肪族炭化水素基は、前記のR01における脂肪族炭化水素基(置換基を有しない状態)と同様のものが挙げられる。
02における脂肪族炭化水素基に結合した水素原子を置換する置換基としては、ヒドロキシ基、アルコキシ基等が挙げられる。
【0051】
以下にRh0(親水性官能基)の具体例を示す。
【0052】
【化7】
【0053】
前記(BCP)成分中の構成単位(b22)の割合は、前記(BCP)成分を構成する全構成単位(100モル%)に対して、0.5~5モル%であることが好ましく、より好ましくは0.5~2.5モル%、さらに好ましくは0.5~1.5モル%である。
構成単位(b22)の割合が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、相分離性能をより高められる。一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、ブロック(b2)の親水性が高くなりすぎず、疎水性のブロック(b1)と親水性のブロック(b2)との相分離構造が安定に形成されやすくなる。
【0054】
ブロック(b2)中の構成単位(b22)の割合は、前記ブロック(b2)を構成する全構成単位(100モル%)に対して、1モル%以上であることが好ましく、より好ましくは1~5モル%、さらに好ましくは1~3モル%である。
構成単位(b22)の割合が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、相分離性能をより高められる。一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、ブロック(b2)の親水性が適度な高さに抑えられる。
ブロック(b2)中の構成単位(b22)の割合は、後述の工程(p3)等におけるブロックコポリマーと、親水性官能基(Rh0)を有する化合物との反応時間や各成分の仕込み量によって制御することができる。
【0055】
(BCP)成分を構成するブロック(b2)の数平均分子量(Mn)(サイズ排除クロマトグラフィーによるポリスチレン換算基準)は、特に限定されるものではないが、10000~30000が好ましく、12500~20000がより好ましく、12500~15000がさらに好ましい。
【0056】
本実施形態における(BCP)成分は、主鎖末端に、下記一般式(e1)で表される構造(e1)を有してもよい。(BCP)成分が構造(e1)を有する場合、構造(e1)は、前記ブロックコポリマーの末端部に配置される前記ブロック(b2)の主鎖末端に結合している。
【0057】
【化8】
[式中、Re0は、ヘテロ原子を含む炭化水素基を表し、Re1は、水素原子又はハロゲン原子を表す。*は、隣接するメタクリル酸メチル単位のα位の炭素原子に結合する結合手を表す。]
【0058】
≪構造(e1)≫
(BCP)成分は、少なくとも一方の主鎖末端に、前記一般式(e1)で表される構造(e1)を有してもよい。構造(e1)は、末端ブロック(b2)の主鎖末端に結合している。(BCP)成分が、末端ブロック(b2)を両末端部に有する場合、構造(e1)は、両方の末端ブロック(b2)の主鎖末端に結合していてもよく、一方の末端ブロック(b2)の主鎖末端のみに結合していてもよい。ここで、ブロック(b2)の「主鎖」とは、ブロック(b2)においてメタクリル酸モノマーの重合により形成される炭素鎖を意味する。ブロック(b2)の「主鎖」は、ブロック(b2)を構成する炭素鎖のうち、最も長い炭素鎖であるともいえる。
【0059】
前記一般式(e1)中、Re1は、水素原子又はハロゲン原子を表す。
e1におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。中でも、塩素原子が好ましい。
【0060】
前記一般式(e1)中、*は、隣接するメタクリル酸メチル単位のα位の炭素原子に結合する結合手を表す。
【0061】
前記一般式(e1)中、Re0は、ヘテロ原子を含む炭化水素基である。
e0における炭化水素基は、ヘテロ原子を含む脂肪族炭化水素基であってもよく、ヘテロ原子を含む芳香族炭化水素基であってもよい。
【0062】
・ヘテロ原子を含む脂肪族炭化水素基
ヘテロ原子を含む脂肪族炭化水素基における脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基であってもよく、不飽和脂肪族炭化水素基であってもよい。該脂肪族炭化水素基として、より具体的には、直鎖状もしくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、又は、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0063】
直鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が1~30であることが好ましく、3~20がより好ましく、4~15がさらに好ましい。分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素数3~30であることが好ましく、3~20がより好ましく、4~15がさらに好ましい。
直鎖状もしくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基などの直鎖状アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、2,2-ジメチルブチル基などの分岐鎖状アルキル基;ビニル基、プロペニル基(アリル基)、2-ブテニル基などの直鎖状アルケニル基:1-メチルビニル基、2-メチルビニル基、1-メチルプロペニル基、2-メチルプロペニル基などの分岐鎖状アルケニル基;エチニル基、プロパルギル基、3-ペンチニル基などの直鎖状アルキニル基;1-メチルプロパルギル基などの分岐鎖状アルキニル基が挙げられる。
【0064】
e0における直鎖状もしくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、ヘテロ原子を含む。前記ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0065】
e0における直鎖状もしくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が含むヘテロ原子は、直鎖状もしくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の水素原子を置換する置換基に含まれていてもよい。該置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基(ヒドロキシメチル基など)、カルボキシ基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アジド基、アミノ基、アルキルアミノ基(メチルアミノ基など)、ジアルキルアミノ基(ジメチルアミノ基など)等が挙げられる。該置換基としては、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、又はアジド基が好ましい。前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子又は塩素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。前記置換基におけるアルキル基としては、炭素数1~5のものが好ましく、炭素数1~3がより好ましく、炭素数1又は2がより好ましい。
【0066】
e0における直鎖状もしくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が含むヘテロ原子は、脂肪族炭化水素鎖を構成するメチレン基の一部を置換するものであってもよい。前記ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等が挙げられる。中でも、ヘテロ原子としては、酸素原子又は窒素原子が好ましく、酸素原子がより好ましい。
メチレン基の一部が置換された直鎖状もしくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチレン基(-CH-)の一部が酸素原子(-O-)で置換された基が挙げられる。そのような脂肪族炭化水素基の例としては、例えば、オキシアルキレン構造(-(CHO-)(tは1~5の整数)を有する基が挙げられ、オキシエチレン構造(-CHCHO-)を有する基が好ましい。かかるRe0の具体例としては、-(CHCHO)-CHが挙げられる。前記式中のkは、1以上の整数であり、4以上が好ましく、20以上がより好ましく、40以上がさらに好ましく、80以上が特に好ましい。kの上限は特に限定されないが、例えば、300以下、200以下、150以下等が例示される。kの範囲としては、4~300が好ましく、30~200がより好ましく、40~150がさらに好ましい。
【0067】
e0における構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子1個を除いた基)、脂肪族炭化水素環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基等が挙げられる。前記アルキレン基の炭素数は、1~10であることが好ましい。前記脂肪族炭化水素環は、炭素数が3~10であることが好ましく、3~6であることがより好ましい。
【0068】
前記脂肪族炭化水素環は、多環であってもよく、単環であってもよい。
単環の脂肪族炭化水素環としては、炭素数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
多環の脂肪族炭化水素環としては、炭素数7~10のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン等の架橋環系の多環式骨格を有するポリシクロアルカン等が挙げられる。
【0069】
e0における環状の脂肪族炭化水素基は、ヘテロ原子を含む。前記ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0070】
e0における環状の脂肪族炭化水素基が含むヘテロ原子は、環を構成する炭素原子の一部を置換するものであってもよく、Re0は、脂肪族複素環であってもよい。前記ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子等が挙げられる。脂肪族複素環の具体例としては、ピロリジン、ピペリジン、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロチオピラン等が挙げられる。
e0における環状の脂肪族炭化水素基が脂肪族複素環を含む場合、該脂肪族複素環は置換基を有してもよい。該置換基としては、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基(ヒドロキシメチル基など)、カルボキシ基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アジド基、アミノ基、アルキルアミノ基(メチルアミノ基など)、ジアルキルアミノ基(ジメチルアミノ基など)、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。前記置換基におけるヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基におけるアルキル基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基としては、炭素数1~5のものが好ましく、炭素数1~3がより好ましく、炭素数1又は2がより好ましい。
【0071】
e0における環状の脂肪族炭化水素基が含むヘテロ原子は、環状の脂肪族炭化水素基の水素原子を置換する置換基に含まれていてもよい。該置換基としては、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基(ヒドロキシメチル基など)、カルボキシ基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アジド基、アミノ基、アルキルアミノ基(メチルアミノ基など)、ジアルキルアミノ基(ジメチルアミノ基など)等が挙げられる。前記置換基におけるヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基におけるアルキル基としては、炭素数1~5のものが好ましく、炭素数1~3がより好ましく、炭素数1又は2がより好ましい。
e0における環状の脂肪族炭化水素基は、上記のヘテロ原子を含む置換基に加えて、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等の置換基を有してもよい。前記置換基におけるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基としては、炭素数1~5のものが好ましく、炭素数1~3がより好ましく、炭素数1又は2がより好ましい。
【0072】
中でも、Re0におけるヘテロ原子を含む脂肪族炭化水素基は、ヘテロ原子を含む直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、ヘテロ原子を含む直鎖状の脂肪族炭化水素基がより好ましい。
【0073】
・ヘテロ原子を含む芳香族炭化水素基
e0におけるヘテロ原子を含む炭化水素基がヘテロ原子を含む芳香族炭化水素基となる場合、該芳香族炭化水素基は、芳香環を少なくとも1つ有する炭化水素基である。この芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環の炭素数は5~20であることが好ましく、5~18がより好ましく、6~16がさらに好ましい。
芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピロリジン環、ピリジン環、チオフェン環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環等が挙げられる。
e0における芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基またはヘテロアリール基);2以上の芳香環を含む芳香族化合物(たとえばビフェニル、フルオレン等)から水素原子を1つ除いた基;前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(たとえば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基など)等が挙げられる。前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環に結合するアルキレン基の炭素数は、1~15であることが好ましく、2~10であることがより好ましい。
【0074】
e0における芳香族炭化水素基は、ヘテロ原子を含む。前記ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0075】
e0における芳香族炭化水素基が含むヘテロ原子は、芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部を置換するものであってもよく、Re0は芳香族複素環を含む基であってもよい。該芳香族複素環としては、前記で例示したものが挙げられる。
e0が芳香族複素環を含む場合、該芳香族複素環は置換基を有してもよい。該置換基としては、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基(ヒドロキシメチル基など)、カルボキシ基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アジド基、アミノ基、アルキルアミノ基(メチルアミノ基など)、ジアルキルアミノ基(ジメチルアミノ基など)、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。前記置換基におけるヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基におけるアルキル基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基としては、炭素数1~5のものが好ましく、炭素数1~3がより好ましく、炭素数1又は2がより好ましい。
【0076】
e0における芳香族炭化水素基が含むヘテロ原子は、芳香族炭化水素基の水素原子を置換する置換基に含まれていてもよい。該置換基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アジド基、ヒドロキシアルキル基(ヒドロキシメチル基など)、アミノ基、アルキルアミノ基(メチルアミノ基など)、ジアルキルアミノ基(ジメチルアミノ基など)等が挙げられる。前記置換基におけるアルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基におけるアルキル基としては、炭素数1~5のものが好ましく、炭素数1~3がより好ましく、炭素数1又は2がより好ましい。
e0における芳香族炭化水素基は、上記のヘテロ原子を含む置換基に加えて、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等の置換基を有してもよい。前記置換基におけるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基としては、炭素数1~5のものが好ましく、炭素数1~3がより好ましく、炭素数1又は2がより好ましい。
【0077】
中でも、Re0におけるヘテロ原子を含む芳香族炭化水素基としては、芳香族複素環を含むものが好ましく、芳香族複素環の水素原子の1つがアルキレン基に置換された基がより好ましい。
【0078】
e0の好ましい例としては、例えば、ヘテロ原子を含む置換基を有する直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基;脂肪族炭化水素鎖を構成するメチレン基の一部がヘテロ原子で置換された直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基;ヘテロ原子を含む置換基を有する、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基;脂肪族複素環を含む脂肪族炭化水素基;ヘテロ原子を含む置換基を有する芳香族炭化水素基;芳香族複素環を含む炭化水素基等が挙げられる。中でも、χが高くなりやすく、相分離性能がより向上することから、ヘテロ原子を含む置換基を有する直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、脂肪族炭化水素鎖を構成するメチレン基の一部がヘテロ原子で置換された直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基;芳香族複素環を含む炭化水素基等が好ましい。
より具体的には、水素原子の一部がハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)で置換された直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基;水素原子の一部がアミノ基、アルキルアミノ基若しくはジアルキルアミノ基で置換された脂肪族炭化水素基;水素原子の一部がアジド基で置換された直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基;窒素原子を含む芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基;窒素原子を含む芳香族複素環の水素原子の1つがアルキレン基に置換された基;及びオキシアルキレン構造(-(CHO-)(tは1~5の整数)を有する基(好ましくはオキシエチレン構造(-CHCHO-)を有する基)等が挙げられる。前記例示した基における脂肪族炭化水素基は、直鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0079】
e0の具体例を以下に示す。下記式中、*は、一般式(e1)中の酸素原子に結合する結合手を表す。kは、1以上の整数であり、4以上の整数が好ましく、10以上の整数がより好ましい。
【0080】
【化9】
【0081】
上記の中でも、Re0は、式(Re0-2)、(Re0-5)、(Re0-6)及び(Re0-9)のいずれかで表される基が好ましい。
【0082】
前記構造(e1)の好ましい例としては、下記一般式(e1-1)で表される構造が挙げられる。
【0083】
【化10】
[式中、Re01は、ヘテロ原子を含む炭化水素基を表し、Re11は、水素原子又はハロゲン原子を表し、Ye01は、置換基を有してもよいアルキレン基を表す。*は、隣接するメタクリル酸メチル単位のα位の炭素原子に結合する結合手を表す]
【0084】
前記一般式(e1-1)中、Re11は、水素原子又はハロゲン原子を表す。
e11におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。中でも、塩素原子が好ましい。
【0085】
前記一般式(e1-1)中、*は、隣接するメタクリル酸メチル単位のα位の炭素原子に結合する結合手を表す。
【0086】
一般式(e1-1)中、Ye01は、置換基を有してもよいアルキレン基を表す。
e01におけるアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよいが、直鎖状であることが好ましい。Ye01におけるアルキレン基は、炭素数1~20が好ましく、炭素数1~15がより好ましく、炭素数1~10がさらに好ましく、炭素数1~6が特に好ましい。
e01におけるアルキレン基は、置換基を有してもよい。該置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基(ヒドロキシメチル基など)、カルボニル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アジド基、アミノ基、アルキルアミノ基(メチルアミノ基など)、ジアルキルアミノ基(ジメチルアミノ基など)等が挙げられる。
e01は、置換基を有しないアルキレン基が好ましい。
【0087】
前記一般式(e1-1)中、Re01は、ヘテロ原子を含む炭化水素基を表す。
e01におけるヘテロ原子を含む炭化水素基としては、前記一般式(e1)中のRe0における炭化水素基として挙げたものと同様のものが例示される。ヘテロ原子を含む炭化水素基としては、例えば、ヘテロ原子を含む置換基を有する直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基;脂肪族炭化水素鎖を構成するメチレン基の一部がヘテロ原子で置換された直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基;ヘテロ原子を含む置換基を有する、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基;脂肪族複素環を含む脂肪族炭化水素基;ヘテロ原子を含む置換基を有する芳香族炭化水素基;芳香族複素環を含む炭化水素基等が挙げられる。中でも、χが高くなりやすく、相分離性能がより向上することから、ヘテロ原子を含む置換基を有する直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、脂肪族炭化水素鎖を構成するメチレン基の一部がヘテロ原子で置換された直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基;芳香族複素環を含む炭化水素基等が好ましい。
より具体的には、水素原子の一部がハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)で置換された直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基;水素原子の一部がアミノ基、アルキルアミノ基若しくはジアルキルアミノ基で置換された脂肪族炭化水素基;水素原子の一部がアジド基で置換された直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基;窒素原子を含む芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基;及びオキシアルキレン構造(-(CHO-)(tは1~5の整数)を有する基(好ましくはオキシエチレン構造(-CHCHO-)を有する基)等が挙げられる。前記例示した基における脂肪族炭化水素基は、直鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0088】
e01の具体例を下記に示す。下記式中、*は、Ye01に結合する結合手である。k1は、0以上の整数を表す。k1は、1~10の整数が好ましく、1~5の整数がより好ましく、1~4の整数がさらに好ましい。k2は、1以上の整数を表し、4以上の整数が好ましい。
【0089】
【化11】
【0090】
構造(e1)の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。式中、*は、隣接するメタクリル酸メチル単位のα位の炭素原子に結合する結合手を表す。kは、1以上の整数であり、4以上の整数が好ましく、10以上の整数がより好ましい。
【0091】
【化12】
【0092】
【化13】
【0093】
上記の中でも、構造(e1)は、式(e1-2)、(e1-5)、(e1-6)、(e1-8)のいずれかで表される構造が好ましい。
【0094】
前記の構造(e1)が主鎖末端に結合した末端ブロック(b2)の構造は、下記一般式(b2e-1)により表すことができる。(BCP)成分は、下記一般式(b2e-1)で表される構造を1個又は2個有し、1個有することが好ましい。
【0095】
【化14】
[式中、Re0及びRe1は、前記一般式(e1)中のRe0及びRe1とそれぞれ同様である。mは、1以上の整数である。*は、隣接する構成単位のα位の炭素原子に結合する結合手を表す。]
【0096】
前記一般式(b2e-1)中、Re0及びRe1は、上記一般式(e1)中のRe0及びRe1とそれぞれ同様であり、好ましい例もそれぞれ同様のものが挙げられる。
前記一般式(b2e-1)中、mは、1以上の整数である。mの上限は特に限定されない。mは、例えば、40~480とすることができる。
【0097】
構造(e1)が、前記一般式(e1-1)で表される構造である場合、構造(e1)が主鎖末端に結合した末端ブロック(b2)の構造は、下記一般式(b2e-1-1)により表すことができる。
【0098】
【化15】
[式中、Re01、Re11、及びYe01は、前記一般式(e1-1)中のRe01、Re11、及びYe01とそれぞれ同様である。mは1以上の整数を表す。*は、隣接する構成単位のα位の炭素原子に結合する結合手を表す。]
【0099】
前記一般式(b2e-1-1)中、Re01、Re11、及びYe01は、上記一般式(e1-1)中のRe01、Re11、及びYe01とそれぞれ同様であり、好ましい例もそれぞれ同様のものが挙げられる。前記一般式(b2e-1-1)中、mは、1以上の整数であり、前記一般式(b2e-1)中のmと同様である。
【0100】
<有機溶剤成分>
本実施形態の相分離構造形成用樹脂組成物は、上記(BCP)成分を有機溶剤成分に溶解することにより調製できる。
有機溶剤成分としては、使用する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来、樹脂を主成分とする膜組成物の溶剤として公知のものの中から任意のものを用いることができる。
【0101】
有機溶剤成分としては、例えば、γ-ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル-n-ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2-ヘプタノンなどのケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、またはジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物;前記多価アルコール類または前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテルまたはモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体[これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい];ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤などが挙げられる。
有機溶剤成分は、単独で用いてもよいし、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、シクロヘキサノン、ELが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)がより好ましい。
【0102】
また、PGMEAと極性溶剤とを混合した混合溶剤も好ましい。その配合比(質量比)は、PGMEAと極性溶剤との相溶性等を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは1:9~9:1、より好ましくは2:8~8:2の範囲内とすることが好ましい。
例えば、極性溶剤としてELを配合する場合は、PGMEA:ELの質量比は、好ましくは1:9~9:1、より好ましくは2:8~8:2である。また、極性溶剤としてPGMEを配合する場合は、PGMEA:PGMEの質量比は、好ましくは1:9~9:1、より好ましくは2:8~8:2、さらに好ましくは3:7~7:3である。また、極性溶剤としてPGMEおよびシクロヘキサノンを配合する場合は、PGMEA:(PGME+シクロヘキサノン)の質量比は、好ましくは1:9~9:1、より好ましくは2:8~8:2、さらに好ましくは3:7~7:3である。
【0103】
また、相分離構造形成用樹脂組成物中の有機溶剤成分として、その他には、PGMEAもしくはEL、又は前記PGMEAと極性溶剤との混合溶剤と、γ-ブチロラクトンと、の混合溶剤も好ましい。この場合、混合割合としては、前者と後者との質量比が好ましくは70:30~95:5とされる。
相分離構造形成用樹脂組成物に含まれる有機溶剤成分は、特に限定されるものではなく、塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定され、一般的には固形分濃度が0.2~70質量%、好ましくは0.2~50質量%の範囲内となるように用いられる。
【0104】
<任意成分>
相分離構造形成用樹脂組成物には、上記の(BCP)成分及び有機溶剤成分以外に、さらに、所望により、混和性のある添加剤、例えば層の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料、増感剤、塩基増殖剤、塩基性化合物等を適宜、含有させることができる。
【0105】
以上説明した本実施形態の相分離構造形成用樹脂組成物は、ブロック(b1)とブロック(b2)とを有する。ブロックコポリマーがブロック(b1)とブロック(b2)とを有していることで、相分離構造における疎水性ブロック部(ブロック(b1))と親水性ブロック部(ブロック(b2))との親疎水差が、スチレン単位のブロックとメタクリル酸メチル単位のブロックとの親疎水差に比べて、より大きくされている。これにより、ブロック(b1)とブロック(b2)との反発が高まること、すなわち、相互作用パラメータ(χ)の値が大きくなることで、相分離性能がより高められる。
【0106】
また、実施形態における(BCP)成分は、例えばリビングアニオン重合等により、すでに狭分散状態で合成された、スチレン単位のブロックとメタクリル酸メチル単位のブロックとを有するブロックコポリマー(PS-b-PMMA)を用い、このスチレン単位の一部を置換して疎水化を図ることができる。このため、狭分散の状態を維持し、親疎水差が高められたブロックコポリマーを用いることができる。これにより、相分離性能をより高められる。
【0107】
(相分離構造を含む構造体の製造方法)
本実施形態の相分離構造を含む構造体の製造方法は、支持体上に、上述した実施形態の相分離構造形成用樹脂組成物を塗布して、ブロックコポリマーを含む層を形成する工程(以下「工程(i)」という。)と、前記のブロックコポリマーを含む層を相分離させる工程(以下「工程(ii)」という。)と、を有する。
以下、かかる相分離構造を含む構造体の製造方法について、図1を参照しながら具体的に説明する。但し、本発明はこれに限定されるものではない。
【0108】
図1は、相分離構造を含む構造体の製造方法の一実施形態例を示す。
図1に示す実施形態では、まず、支持体1上に下地剤を塗布して、下地剤層2を形成する(図1(I))。
次に、下地剤層2上に、上述した実施形態の相分離構造形成用樹脂組成物を塗布して、上記(BCP)成分を含む層(BCP層)3を形成する(図1(II);以上、工程(i))。
次に、加熱してアニール処理を行い、BCP層3を、相3aと相3bとに相分離させる(図1(III);工程(ii))。
かかる実施形態の製造方法、すなわち、工程(i)及び工程(ii)を有する製造方法によれば、下地剤層2が形成された支持体1上に、相分離構造を含む構造体3’が製造される。
【0109】
[工程(i)]
工程(i)では、支持体1上に、相分離構造形成用樹脂組成物を塗布して、BCP層3を形成する。
図1に示す実施形態においては、まず、支持体1上に、下地剤を塗布して、下地剤層2が形成されている。
支持体1上に下地剤層2を設けることによって、支持体1表面と、ブロックコポリマーを含む層(BCP層)3と、の親水疎水バランスが図れる。
すなわち、下地剤層2が、上記ブロック(b1)を構成する構成単位を有する樹脂成分を含有する場合、BCP層3のうちブロック(b1)からなる相と支持体1との密着性が高まる。下地剤層2が、上記ブロック(b2)を構成する構成単位を有する樹脂成分を含有する場合、BCP層3のうちブロック(b2)からなる相と支持体1との密着性が高まる。
これに伴い、BCP層3の相分離によって、支持体1表面に対して垂直方向に配向されたラメラ構造が形成されやすくなる。
【0110】
下地剤:
下地剤としては、樹脂組成物を用いることができる。
下地剤用の樹脂組成物は、(BCP)成分を構成するブロックの種類に応じて、薄膜形成に用いられる従来公知の樹脂組成物の中から適宜選択することができる。
下地剤用の樹脂組成物は、例えば熱重合性樹脂組成物であってもよく、ポジ型レジスト組成物やネガ型レジスト組成物等の感光性樹脂組成物であってもよい。その他、化合物を表面処理剤とし、該化合物を塗布して形成された非重合性膜を下地剤層としてもよい。たとえば、フェネチルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン等を表面処理剤として形成されたシロキサン系有機単分子膜も、下地剤層として好適に用いることができる。
【0111】
このような樹脂組成物としては、例えば、ブロック(b1)及びブロック(b2)をそれぞれ構成する構成単位をいずれも有する樹脂を含有する樹脂組成物や、(BCP)成分を構成する各ブロックと親和性の高い構成単位をいずれも有する樹脂を含有する樹脂組成物等が挙げられる。
下地剤用の樹脂組成物としては、たとえば、スチレンとメタクリル酸メチルとの両方を構成単位として有する樹脂を含有する組成物や、芳香環等のスチレンと親和性の高い部位と、メタクリル酸メチルと親和性の高い部位(極性の高い官能基等)と、の両方を含む化合物又は組成物を用いることが好ましい。
スチレンとメタクリル酸メチルとの両方を構成単位として有する樹脂としては、スチレンとメタクリル酸メチルとのランダムコポリマー、スチレンとメタクリル酸メチルとの交互ポリマー(各モノマーが交互に共重合しているもの)等が挙げられる。
また、スチレンと親和性の高い部位と、メタクリル酸メチルと親和性の高い部位と、の両方を含む組成物としては、例えば、モノマーとして、少なくとも、芳香環を有するモノマーと、極性の高い官能基を有するモノマーと、を重合させて得られる樹脂を含有する組成物が挙げられる。芳香環を有するモノマーとしては、フェニル基、ビフェニル(biphenyl)基、フルオレニル(fluorenyl)基、ナフチル基、アントリル(anthryl)基、フェナントリル基等の、芳香族炭化水素の環から水素原子を1つ除いたアリール基、又は、これらの基の環を構成する炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子で置換されたヘテロアリール基等を有するモノマーが挙げられる。また、極性の高い官能基を有するモノマーとしては、トリメトキシシリル基、トリクロロシリル基、エポキシ基、グリシジル基、カルボキシ基、水酸基、シアノ基、アルキル基の水素原子の一部がヒドロキシ基で置換されたヒドロキシアルキル基等を有するモノマーが挙げられる。
その他、スチレンと親和性の高い部位と、メタクリル酸メチルと親和性の高い部位と、の両方を含む化合物としては、フェネチルトリクロロシラン等のアリール基と極性の高い官能基との両方を含む化合物や、アルキルシラン化合物等のアルキル基と極性の高い官能基との両方を含む化合物等が挙げられる。
【0112】
下地剤用の樹脂組成物は、前述の樹脂を溶媒に溶解させて製造することができる。
かかる溶媒としては、使用する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、たとえば、上述した実施形態の相分離構造形成用樹脂組成物についての説明の中で例示した有機溶剤成分と同様のものが挙げられる。
【0113】
支持体1は、その表面上に樹脂組成物を塗布し得るものであれば、その種類は特に限定されない。例えば、金属(シリコン、銅、クロム、鉄、アルミニウム等)、ガラス、酸化チタン、シリカ、マイカなどの無機物からなる基板;SiO等酸化物からなる基板;SiN等窒化物からなる基板;SiON等の酸化窒化物からなる基板;アクリル、ポリスチレン、セルロース、セルロースアセテート、フェノール樹脂などの有機物からなる基板が挙げられる。これらの中でも、金属の基板が好適であり、例えばシリコン基板(Si基板)又は銅基板(Cu基板)において、ラメラ構造の構造体が形成されやすい。中でも、Si基板が特に好適である。
支持体1の大きさや形状は、特に限定されるものではない。支持体1は、必ずしも平滑な表面を有する必要はなく、様々な形状の基板を適宜選択できる。例えば、曲面を有する基板、表面が凹凸形状の平板、薄片状などの形状の基板が挙げられる。
【0114】
支持体1の表面には、無機系及び/又は有機系の膜が設けられていてもよい。
無機系の膜としては、無機反射防止膜(無機BARC)が挙げられる。有機系の膜としては、有機反射防止膜(有機BARC)が挙げられる。
無機系の膜は、例えば、シリコン系材料などの無機系の反射防止膜組成物を、支持体上に塗工し、焼成等することにより形成できる。
有機系の膜は、例えば、該膜を構成する樹脂成分等を有機溶剤に溶解した有機膜形成用材料を、基板上にスピンナー等で塗布し、好ましくは200~300℃、好ましくは30~300秒間、より好ましくは60~180秒間の加熱条件でベーク処理することにより形成できる。この有機膜形成用材料は、レジスト膜のような、光や電子線に対する感受性を必ずしも必要とするものではなく、感受性を有するものであってもよく、有しないものであってもよい。具体的には、半導体素子や液晶表示素子の製造において一般的に用いられているレジストや樹脂を用いることができる。
また、BCP層3を加工して形成される、ブロックコポリマーからなるパターン、を用いて有機系の膜をエッチングすることにより、該パターンを有機系の膜へ転写し、有機系の膜パターンを形成できるように、有機膜形成用材料は、エッチング、特にドライエッチング可能な有機系の膜を形成できる材料であることが好ましい。中でも、酸素プラズマエッチング等のエッチングが可能な有機系の膜を形成できる材料であることが好ましい。このような有機膜形成用材料としては、従来、有機BARCなどの有機膜を形成するために用いられている材料であってよい。例えば、日産化学工業株式会社製のARCシリーズ、ロームアンドハース社製のARシリーズ、東京応化工業株式会社製のSWKシリーズなどが挙げられる。
【0115】
下地剤を支持体1上に塗布して下地剤層2を形成する方法としては、特に限定されず、従来公知の方法により形成できる。
たとえば、下地剤を、スピンコート又はスピンナーを用いる等の従来公知の方法により支持体1上に塗布して塗膜を形成し、乾燥させることにより、下地剤層2を形成できる。
塗膜の乾燥方法としては、下地剤に含まれる溶媒を揮発させることができればよく、たとえばベークする方法等が挙げられる。この際、ベーク温度は、80~300℃が好ましく、180~270℃がより好ましく、220~250℃がさらに好ましい。ベーク時間は、30~500秒間が好ましく、60~400秒間がより好ましい。
塗膜の乾燥後における下地剤層2の厚さは、10~100nm程度が好ましく、40~90nm程度がより好ましい。
【0116】
支持体1に下地剤層2を形成する前に、支持体1の表面は、予め洗浄されていてもよい。支持体1表面を洗浄することにより、下地剤の塗布性が向上する。
洗浄処理方法としては、従来公知の方法を利用でき、例えば酸素プラズマ処理、オゾン酸化処理、酸アルカリ処理、化学修飾処理等が挙げられる。
【0117】
下地剤層2を形成した後、必要に応じて、溶剤等のリンス液を用いて下地剤層2をリンスしてもよい。該リンスにより、下地剤層2中の未架橋部分等が除去されるため、ブロックコポリマーを構成する少なくとも1つのブロックとの親和性が向上し、支持体1表面に対して垂直方向に配向されたラメラ構造からなる相分離構造が形成されやすくなる。
尚、リンス液は、未架橋部分を溶解し得るものであればよく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、乳酸エチル(EL)等の溶剤、又は市販のシンナー液等を用いることができる。
また、該洗浄後は、リンス液を揮発させるため、ポストベークを行ってもよい。このポストベークの温度条件は、80~300℃が好ましく、100~270℃がより好ましく、120~250℃がさらに好ましい。ベーク時間は、30~500秒間が好ましく、60~240秒間がより好ましい。かかるポストベーク後における下地剤層2の厚さは、1~10nm程度が好ましく、2~7nm程度がより好ましい。
【0118】
次いで、下地剤層2の上に、(BCP)成分を含む層(BCP層)3を形成する。
下地剤層2の上にBCP層3を形成する方法としては、特に限定されるものではなく、例えばスピンコート又はスピンナーを用いる等の従来公知の方法により、下地剤層2上に、上述した実施形態の相分離構造形成用樹脂組成物を塗布して塗膜を形成し、乾燥させる方法が挙げられる。
【0119】
BCP層3の厚さは、相分離が起こるために充分な厚さであればよく、支持体1の種類、又は、形成される相分離構造の構造周期サイズもしくはナノ構造体の均一性等を考慮すると、20~100nmが好ましく、30~80nmがより好ましい。
例えば、支持体1がSi基板の場合、BCP層3の厚さは、好ましくは10~100nm、より好ましくは30~80nmに調整される。
【0120】
[工程(ii)]
工程(ii)では、支持体1上に形成されたBCP層3を相分離させる。
工程(i)後の支持体1を加熱してアニール処理を行うことで、ブロックコポリマーの選択除去によって、支持体1表面の少なくとも一部が露出するような相分離構造が形成する。すなわち、支持体1上に、相3aと相3bとに相分離した相分離構造を含む構造体3’が製造される。
アニール処理の温度条件は、用いられている(BCP)成分のガラス転移温度以上であり、かつ、熱分解温度未満で行うことが好ましく、例えばブロックコポリマーがポリスチレン-ポリメチルメタクリレート(PS-PMMA)ブロックコポリマー(重量平均分子量5000~100000)の場合には、180~270℃が好ましく、200~270℃がより好ましく、220~260℃がさらに好ましい。
加熱時間は、30~3600秒間が好ましく、30~1000秒間がより好ましく、30~500秒間がさらに好ましく、30~100秒間が特に好ましい。
また、アニール処理は、窒素等の反応性の低いガス中で行われることが好ましい。
【0121】
以上説明した実施形態の相分離構造を含む構造体の製造方法によれば、上述した実施形態の相分離構造形成用樹脂組成物が用いられているため、より相分離性能が高められた構造体を得ることができる。
【0122】
加えて、本実施形態の相分離構造を含む構造体によれば、支持体表面に、位置及び配向性がより自在にデザインされたナノ構造体を備える支持体を製造し得る。
例えば、本実施形態の相分離構造を含む構造体の製造方法によれば、形成される構造体は、ラメラ構造からなる相分離構造をとりやすい。
【0123】
[任意工程]
相分離構造を含む構造体の製造方法は、上述した実施形態に限定されず、工程(i)及び(ii)以外の工程(任意工程)を有してもよい。
【0124】
かかる任意工程としては、BCP層3のうち、前記(BCP)成分を構成するブロック(b1)及びブロック(b2)のうちの少なくとも一種類のブロックからなる相を選択的に除去する工程(以下「工程(iii)」という。)、ガイドパターン形成工程等が挙げられる。
【0125】
・工程(iii)について
工程(iii)では、下地剤層2の上に形成された、BCP層のうち、前記(BCP)成分を構成するブロック(b1)及びブロック(b2)のうちの少なくとも一種類のブロックからなる相を選択的に除去する。これにより、微細なパターン(高分子ナノ構造体)が形成される。
【0126】
ブロックからなる相を選択的に除去する方法としては、BCP層に対して酸素プラズマ処理を行う方法、水素プラズマ処理を行う方法等が挙げられる。
例えば、前記(BCP)成分を含むBCP層を相分離した後、該BCP層に対して酸素プラズマ処理や水素プラズマ処理等を行うことにより、ブロック(b1)からなる相は選択的に除去されず。ブロック(b2)からなる相が選択的に除去される。
【0127】
図2は、工程(iii)の一実施形態例を示す。
図2に示す実施形態においては、工程(ii)で支持体1上に製造された構造体3’に、酸素プラズマ処理を行うことによって、相3aが選択的に除去され、離間した相3bからなるパターン(高分子ナノ構造体)が形成されている。この場合、相3bがブロック(b1)からなる相であり、相3aがブロック(b2)からなる相である。
【0128】
上記のようにして前記(BCP)成分からなるBCP層3の相分離によってパターンが形成された支持体1は、そのまま使用することもできるが、さらに加熱することにより、支持体1上のパターン(高分子ナノ構造体)の形状を変更することもできる。
加熱の温度条件は、用いるブロックコポリマーのガラス転移温度以上であり、かつ、熱分解温度未満が好ましい。また、加熱は、窒素等の反応性の低いガス中で行われることが好ましい。
【0129】
・ガイドパターン形成工程について
相分離構造を含む構造体の製造方法においては、上述した工程(i)と工程(ii)との間に、下地剤層上にガイドパターンを設ける工程(ガイドパターン形成工程)を有してもよい。これにより、相分離構造の配列構造制御が可能となる。
例えば、ガイドパターンを設けない場合に、ランダムな指紋状の相分離構造が形成されるブロックコポリマーであっても、下地剤層表面にレジスト膜の溝構造を設けることにより、その溝に沿って配向した相分離構造が得られる。このような原理で、下地剤層2上にガイドパターンを設けてもよい。また、ガイドパターンの表面が、上記(BCP)成分を構成するいずれかのブロックと親和性を有することにより、支持体表面に対して垂直方向に配向されたラメラ構造からなる相分離構造が形成しやすくなる。
【0130】
ガイドパターンは、例えばレジスト組成物を用いて形成できる。
ガイドパターンを形成するレジスト組成物は、一般的にレジストパターンの形成に用いられるレジスト組成物やその改変物の中から、上記(BCP)成分を構成するいずれかのブロックと親和性を有するものを適宜選択して用いることができる。該レジスト組成物としては、レジスト膜露光部が溶解除去されるポジ型パターンを形成するポジ型レジスト組成物、レジスト膜未露光部が溶解除去されるネガ型パターンを形成するネガ型レジスト組成物のいずれであってもよいが、ネガ型レジスト組成物であることが好ましい。ネガ型レジスト組成物としては、例えば、酸発生剤と、酸の作用により有機溶剤を含有する現像液への溶解性が酸の作用により減少する基材成分とを含有し、該基材成分が、酸の作用により分解して極性が増大する構成単位を有する樹脂成分、を含有するレジスト組成物が好ましい。
ガイドパターンが形成された下地剤層上にBCP組成物が流し込まれた後、相分離を起こすためにアニール処理が行われる。このため、ガイドパターンを形成するレジスト組成物としては、耐溶剤性と耐熱性とに優れたレジスト膜を形成し得るものであることが好ましい。
【0131】
(ブロックコポリマー)
本実施形態のブロックコポリマーは、一部が下記一般式(c1)で表される構成単位で置換されたスチレン単位の繰り返し構造からなるブロック(b1)と、メタクリル酸メチル単位の繰り返し構造を含むブロック(b2)とを有する。
【0132】
【化16】
[式中、Rは、水素原子又はメチル基である。Rc0は、疎水性官能基である。]
【0133】
本実施形態のブロックコポリマーは、上述した(BCP)成分と同一のブロックコポリマーである。
該ブロックコポリマーとしては、一部が下記一般式(c1)で表される構成単位で置換されたスチレン単位の繰り返し構造からなるブロック(b1)と、メタクリル酸メチル単位の繰り返し構造からなるブロック(b2)とを有するブロックコポリマーが挙げられる。
【0134】
(ブロックコポリマーの製造方法)
本実施形態におけるブロックコポリマーは、例えば以下に示す工程を有する製造方法(第1の製造方法~第3の製造方法)により製造することができる。
【0135】
・第1の製造方法
第1の製造方法は、以下に示す工程を有する製造方法である。
工程(p1):スチレンとメタクリル酸メチルとを重合して、ブロックコポリマー(PS-b-PMMA)を得る工程
工程(p2):得られたブロックコポリマーと、疎水性官能基(Rc0)を有する化合物と、を反応させる工程
【0136】
工程(p1):
スチレンとメタクリル酸メチルとの重合は、ブロックコポリマー(PS-b-PMMA)を容易に得られることから、リビング重合が好ましい。好ましいリビング重合の方法としては、リビングアニオン重合、リビングラジカル重合が挙げられ、狭分散化がより図れることから、リビングアニオン重合が特に好ましい。
【0137】
工程(p2):
疎水性官能基(Rc0)を有する化合物としては、スチレン単位に疎水性官能基(Rc0)を導入可能な化合物であればよく、例えば、疎水性官能基を有するアルコールが挙げられる。
【0138】
該疎水性官能基を有するアルコールとして、具体的には、1-アダマンタノール、2-メチル-2-アダマンタノール、3,5-ジメチル-1-アダマンタノール等が挙げられる。
【0139】
工程(p2)として、具体的には、酸性触媒の存在下で、ブロックコポリマー(PS-b-PMMA)と、疎水性官能基(Rc0)を有するアルコールとを反応させることによって、(BCP)成分を得る方法が挙げられる(フリーデルクラフツアルキル化反応)。
【0140】
該酸性触媒としては塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸;メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機酸;三フッ化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛等のルイス酸などが挙げられる。
【0141】
工程(p2)において、ブロックコポリマーと、疎水性官能基(Rc0)を有する化合物との反応温度は、好ましくは1~100℃、より好ましくは10~80℃である。
工程(p2)において、ブロックコポリマーと、疎水性官能基(Rc0)を有する化合物との反応時間は、好ましくは30分から18時間、より好ましくは30分から5時間である。
【0142】
・第2の製造方法
第2の製造方法は、以下に示す工程を有する製造方法である。
工程(p1):スチレンとメタクリル酸メチルとを重合して、ブロックコポリマー(PS-b-PMMA)を得る工程
工程(p2):得られたブロックコポリマーと、疎水性官能基(Rc0)を有する化合物と、を反応させる工程
工程(p3):得られたブロックコポリマーと、親水性官能基(Rh0)を有する化合物と、を反応させる工程
【0143】
工程(p1)及び(p2)は、上述した第1の製造方法における工程(p1)及び(p2)と同様である。
【0144】
工程(p3):
親水性官能基(Rh0)を有する化合物としては、メタクリル酸メチル単位の「-OCH」部位に親水性官能基(Rh0)を導入可能な化合物であればよく、例えば、モノエタノールアミン、エチレングリコール等が挙げられる。
【0145】
工程(p3)において、ブロックコポリマーと、疎水性官能基(Rc0)を有する化合物との反応温度は、好ましくは50~150℃、より好ましくは80~120℃である。
工程(p3)において、ブロックコポリマーと、疎水性官能基(Rc0)を有する化合物との反応時間は、好ましくは1~18時間、より好ましくは6~12時間である。
【0146】
・第3の製造方法
第3の製造方法は、以下に示す工程を有する製造方法である。
工程(p1’):スチレン単位の繰り返し構造からなるブロック(b1)と、メタクリル酸メチル単位の繰り返し構造を含むブロック(b2)と、を有し、且つ少なくとも一方の末端部にブロック(b2)が配置されたブロックコポリマー(以下、「ブロックコポリマー前駆体」という)を得る工程
工程(p2):得られたブロックコポリマー前駆体と、疎水性官能基(Rc0)を有する化合物と、を反応させる工程
工程(p4):工程(p2)により得られたブロックコポリマーと、ヒドロキシ基を有する化合物又はヒドロキシ基を有する化合物のチタンアルコキシドと、を反応させて、ブロックコポリマーを得る工程
【0147】
工程(p1’):
ブロックコポリマー前駆体は、例えば、スチレン単位の繰り返し構造を誘導するモノマー(例えば、スチレン)の重合反応を行った後、当該重合反応液中にメタクリル酸メチル単位の繰り返し構造を誘導するモノマー(メタクリル酸メチル)を添加してさらに重合反応を行うことにより、得ることができる。あるいは、メタクリル酸メチルの重合反応を行った後、当該重合反応液中にスチレン単位の繰り返し構造を誘導するモノマー(例えば、スチレン)を添加してさらに重合反応を行うことにより、得ることができる。重合反応は、狭分散で合成しやすいことから、リビング重合が好ましい。好ましいリビング重合の方法としては、リビングアニオン重合、リビングラジカル重合が挙げられ、狭分散化がより図れることから、リビングアニオン重合が特に好ましい。
【0148】
工程(p2)は、上述した第1の製造方法における工程(p2)と同様である。
【0149】
工程(p4):
ヒドロキシ基を有する化合物としては、メタクリル酸メチル単位の「-OCH」部位とエステル交換可能な化合物であればよく、特に限定されない。ヒドロキシ基を有する化合物は、Re0-OHで表すことができる。前記式中のRe0は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を表し、上述の一般式(e1)中のRe0と同様である。以下、ヒドロキシ基を有する化合物を、Re0-OHとも記載する。
【0150】
ブロックコポリマー前駆体とRe0-OHとの反応は、Re0-OHのチタンアルコキシド(Ti(ORe0)存在下、有機溶媒中で行うことができる。前記有機溶媒としては、トルエンが例示される。前記反応は、例えば、80℃~120℃、好ましくは90~110℃で、15~30時間、好ましくは20~25時間とすることができる。前記反応後、少量の水を添加し、さらに、室温で20~40分程度反応させてもよい。
【0151】
【化17】
[式中、Re0、Re1及びmは、前記一般式(b2e-1)中のRe0、Re1及びmとそれぞれ同様である。*は、隣接するブロック(b1)のスチレン単位のα位の炭素原子に結合する結合手を表す。]
【0152】
また、ブロックコポリマー前駆体とTi(ORe0)との反応は、有機溶媒中で、上記と同様の温度条件及び反応時間で行うことができる。前記有機溶媒としては、トルエンが例示される。
【0153】
【化18】
[式中、Re0、Re1及びmは、前記一般式(b2e-1)中のRe0、Re1及びmとそれぞれ同様である。*は、隣接する構成単位のα位の炭素原子に結合する結合手を表す。]
【0154】
上記反応後は、テトラヒドロフラン等の有機溶媒で希釈した後、濾過、濃縮、透析等を行うことにより、ブロックコポリマーを得ることができる。
【0155】
Ti(ORe0は、例えば、オルトチタン酸テトライソプロピル(Ti(OiPr))とRe0-OHとを、有機溶媒中で反応させることにより得ることができる。前記有機溶媒としては、トルエンが例示される。前記反応は、アルゴン雰囲気下で行うことができ、反応温度は、60~100℃、好ましくは70~90℃とすることができる。反応時間は、30~90分、より好ましくは40~80分とすることができる。反応後は、減圧濾過等により有機溶媒を除去することにより、Ti(ORe0を得ることができる。
【0156】
【化19】
【0157】
本実施形態におけるブロックコポリマーは、前記工程(p2)により得られたブロックコポリマーに対して、さらなる化合物を反応させる工程を有していてもよい。例えば、Re0-OHにおけるRe0が、反応性官能基を有する場合、当該反応性官能基に対して、さらなる化合物を反応させることができる。前記反応性官能基としては、例えば、アジド基(-N)、水酸基(-OH)、アミノ基(-NH)、エチニル基(-C≡CH)等が挙げられるが、これらに限定されない。
前記反応性官能基に対するさらなる化合物の反応は、反応性官能基の種類に応じて、常法に従い行うことができる。例えば、Re0がアジド基を有する場合、さらなる化合物としてエチニル基を有する化合物を反応させることができる。また、Re0がエチニル基を有する場合、さらなる化合物としてアジド基を有する化合物を反応させることができる。また、Re0が水酸基又はアミノ基を有する場合、さらなる化合物としてカルボキシ基を有する化合物等を反応させることができる。
【0158】
上記の製造方法(第1の製造方法~第3の製造方法)によれば、狭分散化が図られ、かつ、ブロックコポリマー内の疎水性ブロック部と親水性ブロック部との親疎水差がより大きくされたブロックコポリマーを簡便に得ることができる。
例えば、分子量分散度(Mw/Mn)が、好ましくは1.01~1.10、より好ましくは1.01~1.05、さらに好ましくは1.01~1.02であるブロックコポリマーが容易に得られる。
【実施例
【0159】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0160】
<ブロックコポリマー(B1)の合成例>
グローブボックス中で、Ar雰囲気下、スチレンのブロック、及びメタクリル酸メチルのブロックを有するブロックコポリマー(1)(PS-b-PMMA(1))[Mn:PS10000,PMMA10000,合計20000;PS/PMMA組成比(質量比)50/50;分子量分散度(Mw/Mn)1.02]207mg(1.00mmol(スチレンユニット相当分))と、1-アダマンタノール45.7mg(0.30mmol)をナス型フラスコの中に入れ、ジクロロメタン10mL中に溶解させた。
別のフラスコに、ジクロロメタン10mLと、トリフルオロメタンスルホン酸39.8μL(0.45mmol)とを混ぜ合わせ、酸性溶液を調製した。該酸性溶液を前記ナス型フラスコに加え、室温(27℃)で1時間撹拌し、反応混合物を得た。その後、該反応混合物をメタノール中に沈殿させることで精製し、ろ過、真空乾燥、及び分取GPCによる精製を経て、白色粉末状のブロックコポリマー(B1)を得た[Mn:20170、分子量分散度(Mw/Mn)1.03]。
【0161】
【化20】
【0162】
得られたブロックコポリマー(B1)についてNMR測定を行い、以下の分析結果からその構造を同定した。
図3は、ブロックコポリマー(B1)のH NMRスペクトルを示す。図3の右側のH NMRスペクトルは、化学シフト2.2~1.2(ppm)の範囲を拡大したものである。
【0163】
H NMR(400MHz,CDCl):δ (ppm) 7.40-6.20 (br, aromatic), 3.82-3.38 (br, -OCH3, PMMA), 2.13-2.00 (s, 3H, C(b)H), 1.99-0.73 (br, main chain -CH2C-, α-CH3, -CH2CH-, -CH2CH-, PMMA, PS), 1.89-1.84 (br, 6H, C(a)H2), 1.77-1.76 (br, 6H, C(c)H2).
【0164】
<ブロックコポリマーの合成例(B2)、(B3)>
ブロックコポリマー(1)(PS-b-PMMA(1))をブロックコポリマー(2)(PS-b-PMMA(2))[Mn:PS14000,PMMA14000,合計28000;PS/PMMA組成比(質量比)50/50;分子量分散度(Mw/Mn)1.02]に変更したこと、及び1-アダマンタノール及びトリフルオロメタンスルホン酸の仕込み量を変更し、疎水性官能基で置換されたスチレン単位の割合を変更したこと以外は、上記ブロックコポリマーの合成例(B1)と同様の方法で、ブロックコポリマー(B2)及び(B3)を製造した。
【0165】
<ブロックコポリマー(B4)の合成例>
グローブボックス中で、Ar雰囲気下、スチレンのブロック、及びメタクリル酸メチルのブロックを有するブロックコポリマー(PS-b-PMMA(1))[Mn:PS10000,PMMA10000,合計20000;PS/PMMA組成比(質量比)50/50;分子量分散度(Mw/Mn)1.02]207mg(1.00mmol(スチレンユニット相当分))と、3,5-ジメチル-1-アダマンタノール54.1mg(0.30mmol)をナス型フラスコの中に入れ、ジクロロメタン10mL中に溶解させた。
別のフラスコに、ジクロロメタン10mLと、トリフルオロメタンスルホン酸39.8μL(0.45mmol)とを混ぜ合わせ、酸性溶液を調製した。該酸性溶液を前記ナス型フラスコに加え、室温(27℃)で1時間撹拌し、反応混合物を得た。その後、該反応混合物をメタノール中に沈殿させることで精製し、ろ過と真空乾燥を経て白色粉末状のブロックコポリマー(B4)を得た[Mn:20610、分子量分散度(Mw/Mn)1.02]。
【0166】
【化21】
【0167】
得られたブロックコポリマー(B4)についてNMR測定を行い、以下の分析結果からその構造を同定した。
図4は、ブロックコポリマー(B4)のH NMRスペクトルを示す。
図5は、ブロックコポリマー(B4)の13C NMRスペクトルを示す。
図5の下段の13C NMRスペクトルは、化学シフト60~25(ppm)の範囲を拡大したものである。
【0168】
H NMR(400MHz,CDCl):δ (ppm) 7.40-6.20 (br, aromatic), 3.82-3.38 (br, -OCH3, PMMA), 2.16 (C(g)H), 1.99-0.73 (br, C(b)H2, C(d)H2, C(f)H2, C(h)H2, C(i)H2, C(j)H2, C(k)H3, C(l)H3, main chain -CH2C-, α-CH3, -CH2CH-, -CH2CH-, PMMA, PS).
13C NMR(100MHz,CDCl):δ (ppm) 178.1, 177.8, 177.0 (side chain, C=O, PMMA), 145.2, 128.0, 125.7, 124.5 (aromatic side chain, PS), 54.7-54.1 (main chain -CH2C-, PMMA) , 51.8 (side chain, OCH3, PMMA), 51.0 (Cd), 49.8 (Cb, Ci), 45.0 (main chain -CH2CH-, PS), 44.7 (main chain -CH2C-, PMMA), 43.1 (Cf, Cj), 41.9 (Cb), 40.5 (main chain -CH2CH-, PS), 37.7 (Ca), 31.6 (Cc, Ce), 31.0 (Ck, Cl), 30.0 (Cg), 18.9, 16.7 (α-CH3, PMMA).
【0169】
<ブロックコポリマー(B5)、(B6)の合成例>
3,5-ジメチル-1-アダマンタノール及びトリフルオロメタンスルホン酸の仕込み量を変更し、疎水性官能基で置換されたスチレン単位の割合を変更したこと以外は、上記ブロックコポリマーの合成例(B4)と同様の方法で、ブロックコポリマー(B5)、(B6)を製造した。
【0170】
<ブロックコポリマー(B7)の合成例>
ブロックコポリマー(1)(PS-b-PMMA(1))をブロックコポリマー(2)(PS-b-PMMA(2))[Mn:PS14000,PMMA14000,合計28000;PS/PMMA組成比(質量比)50/50;分子量分散度(Mw/Mn)1.02]に変更したこと、及び3,5-ジメチル-1-アダマンタノール及びトリフルオロメタンスルホン酸の仕込み量を変更し、疎水性官能基で置換されたスチレン単位の割合を変更したこと以外は、上記ブロックコポリマーの合成例(B4)と同様の方法で、ブロックコポリマー(B7)を製造した。
【0171】
ブロックコポリマー(B1)~(B7)について、該ブロックコポリマーを製造するために使用したアルコール及びトリフルオロメタンスルホン酸の仕込み量(スチレンユニットに対するモル比)、得られたブロックコポリマー(B1)~(B7)のGPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)、並びに分子量分散度(Mw/Mn)を表1に示した。
【0172】
【表1】
【0173】
<樹脂組成物の調製>
(実施例1~7、比較例1及び2)
表2に示す各成分を混合して溶解し、樹脂組成物(固形分濃度0.8質量%)をそれぞれ調製した。
【0174】
【表2】
【0175】
表2中、各略号はそれぞれ以下の意味を有する。[ ]内の数値は配合量(質量部)である。
BCP-1:前記ブロックコポリマー(B1)。
BCP-2:前記ブロックコポリマー(B2)。
BCP-3:前記ブロックコポリマー(B3)。
BCP-4:前記ブロックコポリマー(B4)。
BCP-5:前記ブロックコポリマー(B5)。
BCP-6:前記ブロックコポリマー(B6)。
BCP-7:前記ブロックコポリマー(B7)。
BCP-8:PS-b-PMMA(1)[Mn:PS10000,PMMA10000,合計20000;PS/PMMA組成比(質量比)50/50;分子量分散度(Mw/Mn)1.02]。
BCP-9:PS-b-PMMA(2)[Mn:PS14000,PMMA14000,合計28000;PS/PMMA組成比(質量比)50/50;分子量分散度(Mw/Mn)1.02]。
(S)-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)。
【0176】
<相分離構造を含む構造体の製造>
上記の樹脂組成物(1)~(9)を用い、以下に示す工程(i)及び工程(ii)を有する製造方法によって、相分離構造を含む構造体を得た。また工程(iii)により、パターンを形成した。
【0177】
工程(i):
有機膜を製膜したSi基板上に、各例の樹脂組成物を、膜厚が24nmになるようにスピンコートし、樹脂組成物層(ブロックコポリマーを含む層)を形成した。
【0178】
工程(ii):
Si基板上に形成された樹脂組成物層を、240℃で60秒間ベークし、ブロック(b1)からなる相及びブロック(b2)からなる相(相分離構造)を形成した。
【0179】
工程(iii):
相分離構造が形成されたSi基板に対し、TCA-3822(東京応化工業株式会社製)を用いて、酸素プラズマ処理(200mL/分、40Pa、40℃、200W、20秒間)を行い、ブロック(b2)からなる相を選択的に除去した。
【0180】
[相分離状態の評価]
得られた基板の表面(相分離状態)を、走査型電子顕微鏡SEM(SU8000、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で観察した。
かかる観察の結果、下記評価基準に基づき、相分離状態を評価した。その結果を「相分離状態」として表3に示した。
◎:ラメラの相分離が発現されたもの
〇:ラメラ以外の相分離が発現されたもの
×:相分離が発現しなかったもの
【0181】
[構造体の周期(nm)の評価]
ブロックコポリマー(B1)~(B7)について、X線小角散乱(SAXS)法による測定を行い、SAXSパターン曲線の1次散乱ピークから、各ブロックコポリマーにより得られる構造体の周期(nm)を算出した。その結果を表3に示した。
【0182】
【表3】
【0183】
表3に示すように、特定の疎水性官能基で修飾していないスチレンのブロック、及びメタクリル酸メチルのブロックを有するブロックコポリマーを用いた比較例1及び2では、該ブロックコポリマーのMnが20000及び28000の場合、相分離が発現しなかった。
一方で、比較例1の樹脂組成物(8)のブロックコポリマーをPS-b-PMMA(3)[Mn:PS21000,PMMA21000,合計42000;PS/PMMA組成比(質量比)50/50;分子量分散度(Mw/Mn)1.02]に変更した場合は、相分離は発現した(構造体の周期23.7nm)。相分離状態は、ラメラであった。
【0184】
スチレン単位を特定の疎水性官能基で修飾したPS-b-PMMAを用いた実施例1~7では、ブロックコポリマーのMnが小さくても、相分離が発現することが確認できる。また、より短い周期の相分離構造体が形成されていることが確認できる。
【0185】
実施例2、3及び7は、ブロックコポリマーのMnを小さくしても、特定の疎水性官能基で修飾していないPS-b-PMMA(3)の相分離周期構造(ラメラ)を維持していた。
【0186】
以上より、実施例1~7の樹脂組成物を用いた場合、新たなモノマーを必要とせずに相分離性能をより高められることが確認できる。
【符号の説明】
【0187】
1…支持体
2…下地剤層
3…BCP層
3’…構造体
3a…相
3b…相
図1
図2
図3
図4
図5