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特許7541642温度勾配反転手段を備える半導体基板の製造装置及び半導体基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】温度勾配反転手段を備える半導体基板の製造装置及び半導体基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/36 20060101AFI20240822BHJP
   C30B 33/12 20060101ALI20240822BHJP
   C30B 23/06 20060101ALI20240822BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20240822BHJP
   H01L 21/302 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
C30B29/36 A
C30B33/12
C30B23/06
H01L21/205
H01L21/302 201A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021511518
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2020013202
(87)【国際公開番号】W WO2020203516
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-01-06
(31)【優先権主張番号】P 2019069278
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503092180
【氏名又は名称】学校法人関西学院
(73)【特許権者】
【識別番号】000241485
【氏名又は名称】豊田通商株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】金子 忠昭
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-158858(JP,A)
【文献】国際公開第2017/188381(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/079983(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/199615(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/174105(WO,A1)
【文献】特開2013-075789(JP,A)
【文献】特開2017-066019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00-35/00
H01L 21/205
H01L 21/302
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiC半導体基板を、多結晶SiCを含む材料で構成される本体容器であって、前記SiC半導体基板と原子を輸送し合う送受体として機能する前記本体容器に収容する工程と、
前記本体容器内の熱処理空間を、前記SiC半導体基板と前記送受体との間に温度勾配が形成されるよう加熱する第1加熱工程と、
前記温度勾配の高低を反転させ加熱する第2加熱工程と、を含
前記第1加熱工程は、前記SiC半導体基板を成長させる工程、又はエッチングする工程であり、
前記第2加熱工程は、
前記第1加熱工程が前記SiC半導体基板を成長させる工程である場合には、前記SiC半導体基板をエッチングする工程であり、
前記第1加熱工程が前記SiC半導体基板をエッチングする工程である場合には、前記SiC半導体基板を成長させる工程であり、
前記第1加熱工程及び第2加熱工程は、1400℃以上2300℃以下の温度範囲で加熱することを含む、半導体基板の製造方法。
【請求項2】
前記第1加熱工程及び第2加熱工程を、準閉鎖空間で行う、請求項1に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項3】
前記第1加熱工程及び第2加熱工程を、前記SiC半導体基板を構成する原子種を含む雰囲気下で行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項4】
SiC半導体基板を収容する多結晶SiCを含む材料で構成される本体容器であって、前記SiC半導体基板と原子を輸送し合う送受体として機能する前記本体容器と、
前記本体容器を収容する加熱室と、前記SiC半導体基板と前記送受体との間に温度勾配を形成するよう加熱する加熱手段とを有する加熱炉と、
前記温度勾配の高低を反転させる温度勾配反転手段と、を備
前記温度勾配反転手段は、前記SiC半導体基板と前記送受体との間に生じる温度勾配の高低により、前記SiC半導体基板の成長とエッチングを切り替え可能である、半導体基板の製造装置。
【請求項5】
前記温度勾配反転手段が、前記加熱手段における前記本体容器内の温度を制御する温度制御手段である、請求項4に記載の半導体基板の製造装置。
【請求項6】
前記温度制御手段として、加熱手段の発熱量を制御する手段を含む、請求項5に記載の半導体基板の製造装置。
【請求項7】
前記温度制御手段として、加熱手段の位置又は向きを制御する手段を含む、請求項5又は6に記載の半導体基板の製造装置。
【請求項8】
前記温度勾配反転手段が、前記本体容器の位置又は向きを制御する本体容器制御手段である、請求項4に記載の半導体基板の製造装置。
【請求項9】
前記温度勾配反転手段が、前記加熱室内の熱を加熱室外に放出する放熱手段である、請求項4に記載の半導体基板の製造装置。
【請求項10】
前記温度勾配反転手段として、前記加熱手段における前記本体容器内の温度を制御する温度制御手段、前記本体容器の位置又は向きを制御する本体容器制御手段、及び前記加熱室内の熱を加熱室外に放出する放熱手段から選ばれる2種以上の温度勾配反転手段を備える、請求項4に記載の半導体基板の製造装置。
【請求項11】
さらに、前記本体容器を収容する高融点容器を備える、請求項4~10の何れか一項に記載の製造装置。
【請求項12】
SiC半導体基板を収容する多結晶SiCを含む材料で構成される本体容器であって、前記SiC半導体基板と原子を輸送し合う送受体として機能する前記本体容器と、
前記本体容器を収容する加熱室と、前記SiC半導体基板と前記送受体との間に温度勾配を形成するよう加熱する加熱手段とを有する加熱炉と、を備え、前記加熱室として、少なくとも第1加熱室及び第2加熱室を有し、
前記第2加熱室の温度勾配の高低が、前記第1加熱室の温度勾配の高低と反対となるよう構成されてな
前記第1加熱室における温度勾配は、前記SiC半導体基板が成長する温度勾配、又は前記SiC半導体基板がエッチングする温度勾配であり、
前記第2加熱室における温度勾配は、
前記第1加熱室における温度勾配が、前記SiC半導体基板が成長する温度勾配である場合には、前記SiC半導体基板がエッチングする温度勾配であり、
前記第1加熱室における温度勾配が、前記SiC半導体基板がエッチングする温度勾配である場合には、前記SiC半導体基板が成長する温度勾配である、
半導体基板の製造装置。
【請求項13】
前記第1加熱室及び第2加熱室は、加熱手段を介して隣接する、請求項12に記載の半導体基板の製造装置。
【請求項14】
前記第1加熱室及び第2加熱室は、それぞれ独立した加熱手段を備える、請求項12に記載の半導体基板の製造装置。
【請求項15】
前記第1加熱室及び前記第2加熱室内に、それぞれ厚さが異なる断熱材を備える、請求項12~14の何れか一項に記載の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板の製造方法、及び半導体基板の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体基板の損傷を除去する目的で、半導体基板をエッチングする方法が知られている。
例えば、特許文献1には、内部空間側にタンタルカーバイド層、及びタンタルシリサイド層が設けられた収容容器内にSiC基板を収容し、Siの蒸気圧下で加熱するSiC基板のエッチング方法が記載されている。
【0003】
このようなエッチング工程を経た半導体基板を、エピタキシャル成長に供することで、欠陥が少ない、質の高い半導体単結晶を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/079983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、通常エッチング、及び成長は、異なる環境下で、異なる装置を用いて行われており、コストが掛かる。
近年の半導体材料の需要増加に伴い、同一の装置系で半導体基板のエッチング及び成長を行う方法、並びにそのための装置が求められている。
【0006】
したがって、本発明は、同一の装置系で半導体基板のエッチング、及び成長を行う方法、並びにそのための装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明は、
半導体基板、及び前記半導体基板と原子を輸送し合う送受体を収容した熱処理空間を、前記半導体基板と送受体との間に温度勾配が形成されるよう加熱する第1加熱工程と、
前記温度勾配の高低を反転させ加熱する第2加熱工程と、を含む、半導体基板の製造方法である。
【0008】
このように、半導体基板と送受体との間に温度勾配が形成されるよう加熱することで、温度勾配を駆動力とした半導体基板のエッチング、又は成長が起こる。
本発明の半導体基板の製造方法によれば、この半導体基板と送受体との間の温度勾配の高低を反転させることで、成長とエッチングを同一装置系でスイッチすることができる。
【0009】
本発明の好ましい形態では、前記加熱工程を、準閉鎖空間で行う。
準閉鎖空間で加熱することで、半導体基板、及び送受体の意図しない反応を抑制することができる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記加熱工程を、前記半導体基板を構成する原子種を含む雰囲気下で行う。
【0011】
また、前記課題を解決する本発明は、
半導体基板を収容する本体容器と、
前記本体容器を収容する加熱室と、前記半導体基板と送受体との間に温度勾配を形成するよう加熱する加熱手段とを有する加熱炉と、を備え、
前記温度勾配の高低を反転させる温度勾配反転手段を有する、半導体基板の製造装置である。
本発明の製造装置によれば、半導体基板のエッチング及び成長を、同一装置系で行うことができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記温度勾配反転手段が、前記加熱手段における前記本体容器内の温度を制御する温度制御手段である。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記温度制御手段として、加熱手段の発熱量を制御する手段を含む。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記温度制御手段として、加熱手段の位置又は向きを制御する手段を含む。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記温度勾配反転手段が、前記本体容器の位置又は向きを制御する本体容器制御手段である。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記温度勾配反転手段が、前記加熱室内の熱を加熱室外に放出する放熱手段である。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記温度勾配反転手段として、前記加熱手段における前記本体容器内の温度を制御する温度制御手段、前記本体容器の位置又は向きを制御する本体容器制御手段、及び前記加熱室内の熱を加熱室外に放出する放熱手段から選ばれる2種以上の温度勾配反転手段を備える。
【0018】
前記本体容器が、前記半導体基板を構成する原子種を含む材料で構成される。このように、本体容器が半導体基板を構成する原子種を含む材料で構成されることにより、加熱炉によって本体容器自体を送受体として用いることができる。
【0019】
本発明の好ましい形態では、さらに、前記本体容器を収容する高融点容器を備える。
このような高融点容器を備えることで、半導体基板、及び本体容器の意図しない反応を抑制することができる。
【0020】
また、前記課題を解決する本発明は、
半導体基板、及び前記半導体基板と原子を輸送し合う送受体を収容する本体容器と、
前記本体容器を収容する加熱室と、前記半導体基板と前記送受体との間に温度勾配を形成するよう加熱する加熱手段とを有する加熱炉と、を備え、
前記加熱室として、少なくとも第1加熱室及び第2加熱室を有し、
前記第2加熱室の温度勾配の高低が、前記第1加熱室の温度勾配の高低と反対となるよう構成されてなる、半導体基板の製造装置である。
本発明の製造装置によれば、半導体基板のエッチング及び成長を、同一装置系で行うことができる。
【0021】
本発明の好ましい形態では、前記第1加熱室及び第2加熱室は、加熱手段を介して隣接する。
このような形態とすることで、第1加熱室の温度勾配と第2加熱室の温度勾配の高低を反対にさせることができる。
【0022】
本発明の好ましい形態では、前記第1加熱室及び第2加熱室は、それぞれ独立した加熱手段を備える。
このような形態とすることで、第1加熱室の温度勾配と第2加熱室の温度勾配の高低を反対にさせることができる。
【0023】
本発明の好ましい形態では、前記第1加熱室及び前記第2加熱室内に、それぞれ厚さが異なる断熱材を備える。
【発明の効果】
【0024】
開示した技術によれば、半導体基板のエッチング、及び成長を同一装置内で行うことができ、半導体基板の製造コストが低減し、製造効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の半導体基板の製造方法を示す概念図である。
図2】本実施形態に係る半導体基板の成長機構を示す概念図である。
図3】本実施形態に係る半導体基板のエッチング機構を示す概念図である。
図4】実施例1に係る温度制御手段を備える製造装置を示す図面である。
図5】実施例1に係る温度制御手段を備える製造装置を示す図面である。
図6】実施例2に係る本体容器制御手段を備える製造装置を示す図面である。
図7】実施例3に係る放熱手段を備える製造装置を示す図面である。
図8】実施例4に係る温度制御手段及び本体容器制御手段を両方備える製造装置を示す図面である。
図9】実施例5に係る複数の本加熱室を備える製造装置を示す図面である。
図10】それぞれ断熱材の厚さが異なる複数の本加熱室を備える製造装置を示す図面である。
図11】複数の本加熱室に、それぞれ独立した加熱手段を備える製造装置の別実施形態を示す図面である。」
【発明を実施するための形態】
【0026】
[半導体基板の製造方法]
本発明の半導体基板の製造方法(以下、単に製造方法という)は、半導体基板と、半導体基板と原子を輸送し合う送受体とを、熱処理を行う空間(熱処理空間)に収容する。そして、半導体基板と送受体との間に温度勾配が形成されるよう加熱する第1加熱工程を備える。
本明細書中において、送受体とは、半導体基板を構成する原子種を含む材料であって、熱処理空間を加熱することで、半導体基板に原子を送る、又は原子を受け取る材料の総称を意味する。
【0027】
次いで、前記温度勾配の高低を反転させ、再度加熱する第2加熱工程を備える。
具体的には、第1加熱工程において、半導体基板を相対的に低温で加熱し、送受体を相対的に高温で加熱した場合に、第2加熱工程では、半導体基板を相対的に高温で加熱し、送受体を相対的に低温で加熱する。
【0028】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る製造方法を詳細に説明する。本発明の技術的範囲は、添付図面に示した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、適宜変更が可能である。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態に係る製造方法の概念を示す概念図である。
本実施形態の製造方法は、主面11を備える半導体基板10を、本体容器20内の熱処理空間S20に収容する。
なお、本明細書中において主面とは、半導体基板10の成長、又はエッチングが行われる面をいう。
主面としては、(0001)面や(000-1)面から0.4~8°のオフ角を設けた表面を例示できる。
【0030】
本体容器20は、互いに嵌合可能な上容器22及び下容器23を備える、嵌合容器である。上容器22と下容器23の嵌合部には、微小な間隙24が形成されており、この間隙24から本体容器20内の排気(真空引き)が可能となるよう構成されている。
【0031】
本実施形態において、半導体基板10はSiC基板である。
また、本実施形態において、本体容器20は、多結晶SiCを含む材料で構成され、半導体基板10の主面11と相対する本体容器20の一部が、送受体21としての役割を備える。
【0032】
前記熱処理空間S20に、半導体基板10と、送受体21との間に温度勾配が形成されるよう加熱することで、この温度差を駆動力とした半導体基板を構成する原子種の輸送が行われる。
【0033】
図2は、本実施形態に係る製造方法の成長機構の概要を示す説明図である。
熱処理空間S20を、1400℃以上2300℃以下の温度範囲で加熱し、半導体基板10を温度勾配の低温側に配置し、送受体21を温度勾配の高温側に配置することで、以下1)~5)の反応が進行し、主面11上に成長層12が形成される。
【0034】
1) Poly-SiC(s)→Si(v)+C(s)
2) 2C(s)+Si(v)→SiC(v)
3) C(s)+2Si(v)→SiC(v)
4) Si(v)+SiC(v)→2SiC(s)
5) SiC(v)→Si(v)+SiC(s)
【0035】
1)の説明:本体容器20(Poly-SiC(s))が加熱されることで、熱分解によってSiCからSi原子(Si(v))が脱離する。
2)及び3)の説明:Si原子(Si(v))が脱離することで主面11に残存したC(C(s))は、本体容器20内のSi蒸気(Si(v))と反応することで、SiC又はSiC等となって本体容器20内に昇華する。
4)及び5)の説明:昇華したSiC又はSiC等が、温度勾配によって主面11のテラスに到達・拡散し、ステップに到達することで送受体21の多形を引き継いで成長層12が成長する(ステップフロー成長)。
【0036】
すなわち、本実施形態に係る半導体基板10の成長は、本体容器20内からSi原子を熱昇華させるSi原子昇華工程と、主面11に残存したC原子を本体容器20内のSi原子と結合させることで昇華させる原子昇華工程を有する。
【0037】
図3は、本実施形態に係る製造方法のエッチング機構の概要を示す説明図である。
【0038】
熱処理空間S20を、1400℃以上2300℃以下の温度範囲で加熱し、半導体基板10を温度勾配の高温側に配置し、送受体21を温度勾配の低温側に配置することで、以下1)~5)の反応が進行し、結果として半導体基板10のエッチングが進行する。
【0039】
1) SiC(s)→Si(v)+C(s)
2) 2C(s)+Si(v)→SiC(v)
3) C(s)+2Si(v)→SiC(v)
4) Si(v)+SiC(v)→2SiC(s)
5) SiC(v)→Si(v)+SiC(s)
【0040】
1)の説明:半導体基板10(SiC(s))が加熱されることで、熱分解によって主面11からSi原子(Si(v))が脱離する(Si原子昇華工程)。
2)及び3)の説明:Si原子(Si(v))が脱離することで主面11に残存したC(C(s))は、本体容器20内のSi蒸気(Si(v))と反応することで、SiC又はSiC等となって本体容器20内に昇華する(C原子昇華工程)。
4)及び5)の説明:昇華したSiC又はSiC等が、温度勾配によって本体容器20(多結晶SiC)に到達し成長する。
【0041】
すなわち、本実施形態に係るエッチング工程は、半導体基板10の表面からSi原子を熱昇華させるSi原子昇華工程と、主面11に残存したC原子を本体容器20内のSi原子と結合させることで昇華させるC原子昇華工程と、を有する。
【0042】
本発明の半導体基板の製造方法は、半導体基板と送受体との間に生じる温度勾配の高低により、半導体基板の成長とエッチングを切り替えできることを利用する。
すなわち、第1加熱工程により、半導体基板の成長、又はエッチングを行い、温度勾配を反転させた第2加熱工程により、第1加熱工程で起きた反応とは逆の反応を起こす。
このように、本発明の製造方法によれば、温度勾配の高低により半導体基板の挙動を制御することが可能であり、成長とエッチングを同一装置系で行うことができる。
【0043】
本実施形態においては、半導体基板としてSiC基板を使用する形態について例示したが、本発明はこれに限定されず、あらゆる半導体基板を採用することが可能である。
半導体基板として、好ましくは気相法による成長が可能な半導体基板を用いる。
【0044】
本実施形態においては、本体容器が送受体となる形態について例示したが、送受体は、半導体基板を構成する原子種を含む材料であれば特に限定されない。
例えば、本体容器の内部に、本体容器とは別に半導体基板を構成する原子種を含む材料を収容する形態であってもよい。すなわち、加熱工程は、半導体基板を構成する原子種を含む雰囲気下で行えばよい。なお、半導体基板を構成する原子種を含む雰囲気下とは、加熱により、半導体基板を構成する原子種が発生する雰囲気下も含まれる。
【0045】
本体容器を送受体として用いる場合には、半導体基板を構成する原子種を含む材料で構成される本体容器を用いることができる。
【0046】
また、本発明の製造方法においては、本体容器を用いることを要せず、半導体基板及び送受体を、熱処理空間内に収容すればよい。
熱処理空間は、準閉鎖空間であることが好ましい。準閉鎖空間は、例えば本体容器20内に半導体基板10と送受体21を収容することで形成できる。
なお、本明細書における準閉鎖空間とは、容器内の真空引きは可能であるが、容器内に発生した上記の少なくとも一部を閉じ込め可能な空間のことをいう。
準閉鎖空間とすることで、半導体基板、及び送受体の意図しない反応を抑制することができる。
【0047】
本手法における成長温度及び、エッチング温度は、好ましくは800~2500℃の範囲で設定される。
【0048】
本手法における成長速度及びエッチング速度は、上記温度領域によって制御することができ、0.001~2μm/minの範囲で選択することが可能である。
【0049】
本手法における成長時間及びエッチング時間は、所望の成長量及びエッチング量となるよう任意の時間に設定することができる。例えば、成長速度(エッチング速度)が1μm/minの時に、成長量(エッチング量)を1μmとしたい場合には、成長量(エッチング時間)は1分間となる。
【0050】
本手法における温度勾配は、半導体基板と、送受体との間において、0.1~5℃/mmの範囲で設定される。
【0051】
本手法においては、ドーパントガス(N等)を供給することができ、本加熱室41に10-5~10000Paの範囲で導入することができる。
成長工程において、本体容器20内にドーパントガスを供給することにより、成長層12のドーピング濃度を調整することができる。
すなわち、ドーパントガスを供給しない場合には、本体容器20のドーピング濃度を引きついで成長層12が形成される。一方で、ドーパントガスを供給することで成長層12中のドーピング濃度を高めることができ、これにより、所望のドーピング濃度を有する成長層12を形成することができる。
【0052】
本発明の製造方法における、温度勾配を反転する手段として、半導体基板10自体を反転する方法が例示できる。
【0053】
例えば、治具を用いて、半導体基板10を本体容器20の底面から離間するよう配置する。
そして、本体容器の主面11が送受体21と相対するよう配置した場合において、本体容器の底面が低温側、本体容器の天面(送受体21)を高温側となるように加熱すると、上述の通り、主面11が低温側、送受体21が高温側の温度勾配が形成し、主面11上には成長層12が成長する。
次いで、半導体基板10を反転させ、主面11(成長層12)を本体容器20の底面と相対するよう配置し、同様に本体容器の底面が低温側、本体容器の天面(送受体21)を高温側となるように加熱すると、本体容器の底面側が低温側、主面11(成長層12)が高温側の温度勾配が形成され、主面11のエッチングが進行する。
【0054】
この形態においては、加熱室内の温度勾配自体を変化させなくとも、主面11と相対する送受体21(本体容器20内の天面、又は底面)との相対的な温度勾配を反転させることができる。
【0055】
また、本発明の製造方法における、温度勾配を反転する手段は、特に限定されないが、以下詳述する半導体基板の製造装置が備える、温度勾配反転手段が例示できる。
【0056】
[半導体基板の製造装置]
以下、上述した半導体基板の製造方法と共通する事項について説明を省略しつつ、本発明の半導体基板の製造装置(以下、単に製造装置という)について説明を加える。
【0057】
本発明の製造装置は、
半導体基板と送受体を収容する本体容器と、
前記本体容器を収容する加熱室と、半導体基板と送受体との間に温度勾配を形成するよう加熱する加熱手段とを有する加熱炉とを備え、
前記温度勾配の高低を反転させる温度勾配反転手段を有する。
【0058】
また、本発明の製造装置は、
半導体基板、及び前記半導体基板と原子を輸送し合う送受体を収容する本体容器と、
前記本体容器を収容する加熱室と、半導体基板と送受体との間に温度勾配を形成するよう加熱する加熱手段とを有する加熱炉と、を備え、
前記加熱室として、少なくとも第1加熱室及び第2加熱室を有し、
前記第2加熱室の温度勾配の高低が、前記第1加熱室の温度勾配の高低と反対となるよう構成されてなる。
具体的には、第2加熱室は、加熱手段により、第1加熱室に収容される半導体基板と送受体との間に形成される温度勾配に対して、温度勾配の高低が反対となるよう構成されてなる。
【0059】
以下、図4~11を参照して、本実施形態に係る製造装置について詳述する。
図4には、温度勾配反転手段として温度制御手段を備える実施例1に係る製造装置を示す。
【0060】
<実施例1>温度制御手段を備える製造装置
実施例1に係る製造装置100は、半導体基板10を収容可能であって、半導体基板10を構成する原子種を含む材料を含む本体容器20を備える。実施例1において、本体容器20の一部は、送受体21となる。
また、製造装置100は、本体容器20を収容する高融点容器30と、高融点容器30を収容する本加熱室41、及び半導体基板10と送受体21との間に温度勾配を形成する加熱手段44を有する加熱炉40を備える。
【0061】
高融点容器30は、高融点材料を含んで構成されている。高融点材料としては、汎用耐熱部材であるC、高融点金属であるW,Re,Os,Ta,Mo、炭化物であるTa,HfC,TaC,NbC,ZrC,TaC,TiC,WC,MoC、窒化物であるHfN,TaN,BN,TaN,ZrN,TiN、ホウ化物であるHfB,TaB,ZrB,NB,TiB,多結晶SiC等を例示することができる。
【0062】
本実施形態に係る本加熱室41内の半導体材料を構成する原子種を含む雰囲気は、本体容器20内に半導体基板10を構成する原子種を含む気相種の蒸気圧を供給可能な蒸気供給源34を有している(図5参照)。蒸気供給源34は、加熱処理時に上述した気相種の蒸気圧を高融点容器30内に発生させる構成であれば良い。例えば、半導体基板10がSiC基板である場合、固体のSi(単結晶Si片やSi粉末等のSiペレット)やSi化合物を例示することができる。
【0063】
この高融点容器30は、本体容器20と同様に、互いに嵌合可能な上容器31と下容器32とを備える嵌合容器であり、本体容器20を収容可能に構成されている。上容器31と下容器32の嵌合部には、微小な間隙33が形成されており、この間隙33から、高融点容器30内の排気(真空引き)が可能なよう構成されている。
このような高融点容器30を備えることで、半導体基板、及び本体容器の意図しない炭化を抑制することができる。
【0064】
本加熱室41は、被処理物(半導体基板10等)を800℃以上2500℃以下の温度に加熱することが可能である。また、加熱炉40は、被処理物を500℃以上の温度に予備加熱可能な予備加熱室42を備える。また、被処理物を予備加熱室42から本加熱室41に移動可能な移動手段43(移動台)を備える。
【0065】
本実施形態の予備加熱室42には、本加熱室41の加熱手段44の余熱により昇温可能なよう構成されている。例えば、本加熱室41を2000℃まで昇温した場合には、予備加熱室42は1000℃程度まで昇温され、被処理物(半導体基板10や本体容器20、高融点容器30等)の脱ガス処理を行うことができる。
【0066】
移動手段43は、高融点容器30を載置して、本加熱室41と予備加熱室42を移動可能に構成されている。この移動手段43による本加熱室41と予備加熱室42間の搬送は、最短1分程で完了するため、1~1000℃/minでの昇温・降温を実現することができる。
このように急速昇温及び急速降温が行えるため、従来の装置では困難であった、昇温中及び降温中の低温成長履歴を持たない表面形状を観察することが可能である。
また、図1においては、本加熱室41の下方に予備加熱室42を配置しているが、これに限られず、何れの方向に配置しても良い。
【0067】
本加熱室41には、本加熱室41内の排気を行う真空形成用バルブ45と、本加熱室41内に不活性ガスを導入する不活性ガス注入用バルブ46と、本加熱室内の真空度を測定する真空計47と、が接続されている。
【0068】
真空形成用バルブ45は、本加熱室41内を排気して真空引きする真空引ポンプと接続されている(図示せず)。この真空形成用バルブ45及び真空引きポンプにより、本加熱室41内の真空度を、例えば10Pa以下、より好ましくは1Pa以下、さらに好ましくは10-3Pa以下に調整することができる。真空引きポンプとしては、ターボ分子ポンプを例示することができる。
【0069】
不活性ガス注入用バルブ46は、不活性ガス供給源と接続されている(図示せず)。この不活性ガス注入用バルブ46及び不活性ガス供給源により、本加熱室41内に不活性ガスを10-5~10000Paの範囲で導入することができる。この不活性ガスとしては、ArやHe、N等を選択することができる。
また、不活性ガス注入用バルブ46は、本体容器20内にドーパントガスを供給可能なドーパントガス供給手段である。すなわち、不活性ガスにドーパントガス(例えば、N等)を選択することにより、成長層12にドーパントをドープしてドーピング濃度を高めることができる。
【0070】
加熱炉40は、加熱手段44として、上部加熱手段44a及び下部加熱手段44bを備える。
実施例1においては、上部加熱手段44a及び下部加熱手段44bの発熱量をそれぞれ個別に調節することができる。そのため、上部加熱手段44a及び下部加熱手段44bの発熱量に差異を設けることで、本加熱室41内に温度勾配を形成することができる。
【0071】
なお、本実施形態においては、移動手段43(移動台)と高融点容器30の接触部から、微小な熱が逃げる構成となっている。そのため、仮に上部加熱手段44a及び下部加熱手段44bの発熱量を同一に調節したとしても、移動手段43からの熱の放出によって、半導体基板10と送受体21との間に温度勾配が形成されることとなる。
【0072】
こうして形成された温度勾配は、上部加熱手段44a及び下部加熱手段44bの発熱量を調節することで反転させることができる。すなわち、上部加熱手段44a及び下部加熱手段44bの発熱量の高低を逆転させることによって、半導体基板10と送受体との間に形成された温度勾配の高低を反転させることができる。
【0073】
別の実施形態として、本加熱室41内の天面側に、及び底面側にそれぞれ加熱手段を配設し、天面側の加熱手段と底面側の加熱手段とで、それぞれ発熱量に差異を設けることで、温度勾配を形成し、各加熱手段の発熱量の高低を逆転させることで、温度勾配を反転させる構成が例示できる。
【0074】
実施例1の温度勾配反転手段は、加熱手段の発熱量を調節することによって実現されるものである。しかし、本発明はこれに限定されず、加熱手段の発熱量は変更せずに、加熱手段の上下方向の位置関係を逆転することで温度勾配を反転させる形態としてもよい。
【0075】
例えば、上部と下部にそれぞれ異なる数の加熱手段を設けたり、上部から下部にかけて(若しくは下部から上部にかけて)幅が大きくなるよう加熱手段(ヒーター)を並設したりすることで、温度勾配を形成する形態を考える。
この場合には、当該加熱手段の上下方向の位置関係を反転することにより、温度勾配を反転させることができる。
このような加熱手段の反転機構を備える形態においては、それぞれの加熱手段の発熱量を変更することを要せず、半導体基板10と送受体21との間に形成された温度勾配の高低を反転させることができる。
【0076】
加熱手段は、特に限定されないが、抵抗加熱式のヒーターが好ましく例示できる。
【0077】
また、別の実施形態として、本加熱室41の側面に、加熱手段を配設し、当該加熱手段が、本加熱室41に対して上下方向に移動することが可能に構成された形態が例示できる。この場合、加熱手段が、本加熱室41に対して相対的に下側、又は上側に位置させることで、半導体基板10と送受体21との間に温度勾配を形成し、当該加熱手段を上側、又は下側に移動させることで、半導体基板と送受体21との間の温度勾配の高低を反転させることができる。
【0078】
<実施例2>本体容器制御手段を備える製造装置
実施例1との共通事項については省略しつつ、実施例2の製造装置について説明を加える。
図6には、実施例2に係る本体容器制御手段を備える製造装置101を示す。
【0079】
製造装置101は、本加熱室41の高さ方向に渡って、高融点容器30を取り囲むように加熱手段44が配設されている。
加熱手段44がこのように配設されている場合、本加熱室41内の温度勾配は、本加熱室の高さ方向における中心付近の温度が最も高く、中心付近から上方向、又は下方向に向かうにつれて温度が低くなる。
【0080】
実施例2においては、移動手段43bが、本加熱室41内において高さ方向に移動可能であり、これにより半導体基板10と送受体21との間の温度勾配の高低を反転することができる。
【0081】
具体的には、送受体21を本加熱室41の中心付近に位置するよう移動させることで、送受体21が高温側、半導体基板10が低温側となる温度勾配を形成することができ、半導体基板10の成長を行うことができる(図6参照)。
一方で、半導体基板10を本加熱室41の中心付近に位置するよう移動させることで、半導体基板10が高温側、送受体21が低温側となる温度勾配を形成することができ、半導体基板10のエッチングを行うことができる。
【0082】
実施例2においては、移動手段43bが本加熱室内の高さ方向において移動可能である形態について例示したが、本発明の製造装置は、本体容器20の位置又は向きを制御する本体容器制御手段を採用することができる。
【0083】
例えば、本体容器20、又は本体容器20を収容する高融点容器30を回転させる回転機構を備えることで、半導体基板10と送受体21との高さ方向における位置関係を反転させる形態であってもよい。また、半導体基板10自体を反転させる回転機構を備えることで、半導体基板10の相対的な温度勾配を反転させる形態も、本体容器制御手段を備える製造装置の一実施形態として含まれる。この場合には、「半導体基板の製造方法」で説明した通り、治具等を用いて半導体基板10を本体容器20の底面から離間させる態様とする。
【0084】
なお、実施例2の製造装置の移動手段43bは、実施例1の製造装置と同様に、本加熱室41と予備加熱室42とを移動可能である。本加熱室41内を移動する機構と、本加熱室41と予備加熱室42とを移動する機構とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0085】
<実施例3>放熱手段を備える製造装置
実施例1及び2との共通事項については省略しつつ、実施例3の製造装置について説明を加える。
図7には、実施例3に係る放熱手段を備える製造装置102を示す。
【0086】
製造装置102の本加熱室41の上面には、開閉部48が備えられている。また、製造装置102は、開閉部48を介して、本加熱室41と連設される吸熱体49を備える。
開閉部48が開いた状態では、本加熱室41内の熱が、吸熱体に放出される。
この、開閉部48の開閉状態を制御することによって、本加熱室41内の温度勾配を制御することが可能となり、ひいては半導体基板10と送受体21との温度勾配の高低を制御することができる。
【0087】
吸熱体としては、高融点であって、熱伝導率が高い材料を含む放熱シートが例示できる。このような材料としては、上述した高融点材料が例示できる。
【0088】
本実施形態において、開閉部48及び吸熱体49が、本加熱室41の上部に備えられた形態について例示したが、開閉部48及び吸熱体49は、本加熱室41と連設されていれば、何れの場所に備えられていてもよい。
【0089】
また、本発明の製造装置においては、開閉部48及び吸熱体49を備える形態に限定されず、本加熱室41内の熱を本加熱室41外に放出可能な放熱手段を採用することができる。例えば、高融点材料に囲まれた、放熱空間を放熱手段として備える形態であってもよい。
【0090】
<実施例4>温度制御手段及び本体容器制御手段を両方備える製造装置
実施例1~3で説明した事項については省略しつつ、実施例4の製造装置について説明を加える。
図8に、温度制御手段及び本体容器制御手段を備える製造装置103を示す。
【0091】
製造装置103は、本加熱室41、移動手段43、側面加熱手段44c、底面加熱手段44dを備える。本加熱室41には、側面加熱手段44c、底面加熱手段44を囲むように、断熱材50が配設されている。
【0092】
(a)は、側面加熱手段44c、及び底面加熱手段44dが何れも稼働し、半導体基板10が、側面加熱手段44cの上下方向の長さに対して中心に位置する状態を表わしている。
この状態では、底面加熱手段44dより底面側からも加熱されていること、及び半導体基板10が側面加熱手段の上下方向の長さに対して中心に位置することで、半導体基板10が高温側、送受体21が低温側の温度勾配が形成される。
【0093】
(b)は、側面加熱手段44cが稼働し、底面加熱手段44dが稼働せず、送受体21が、側面加熱手段44cの上下方向に対して中心に位置する。
この状態では、側面加熱手段の上下方向の長さに対して中心に位置する送受体21が高温側、半導体基板10が低温側の温度勾配となり、図5(a)の状態に対して半導体基板10と送受体21との間に形成する温度勾配の高低が反転する。
【0094】
このように、温度制御手段と、本体容器制御手段とを組み合わせることで、温度勾配の高低を反転させる構成とすることもできる。
【0095】
<実施例5>複数の本加熱室を備える製造装置
実施例1~4で説明した事項については省略しつつ、実施例5の製造装置について説明を加える。
図9に、複数の本加熱室を備える製造装置104を示す。
製造装置104は、本加熱室として、第1加熱室41a-1と、第2加熱室41b-1を備え、第1加熱室41a-1と第2加熱室41b-1との間には、加熱手段44が備えられている。すなわち、第1加熱室41a-1及び第2加熱室41b-1は、加熱手段44を介して隣接している。
【0096】
製造装置104は、加熱手段44を稼働することで、第1加熱室41a-1内においては、加熱手段44の近傍が高温側、第1加熱室41a-1の天面が低温側の温度勾配が生じる。したがって、第1加熱室41a-1内に収容された半導体基板10と送受体21との間の温度勾配は、半導体基板10が高温側、送受体21が低温側となる。
【0097】
一方で、第2加熱室41b-1内においては、加熱手段44の近傍が高温側、第2加熱室41b-1内の底面が低温側の温度勾配が生じるため、第2加熱室41b-1内に収容された半導体基板10と送受体21との間の温度勾配は、半導体基板10が低温側、送受体21が低温側となる。
【0098】
したがって、第1加熱室41a-1及び第2加熱室41b-1の何れか一方において半導体基板10の加熱処理を行い、その後、半導体基板10を取り出して、他方の加熱室で加熱処理を行うことで、半導体基板10と送受体21の間に形成される温度勾配の高低を反転させて加熱することができる。
【0099】
このように、前記第2加熱室41b-1は、前記加熱手段44により、前記第1加熱室41a-1に収容される前記半導体基板10と前記送受体21との間に形成される温度勾配に対して温度勾配の高低が反対となるよう構成されてなることで、温度勾配の高低を反転させた加熱処理を行うことができる。
【0100】
なお、第1加熱室、及び第2加熱室との名称は、説明の便宜上付した名称に過ぎず、半導体基板10の加熱処理を行う順番を特定したものではない。
【0101】
本実施形態において、第1加熱室41a-1の天面側の断熱材50と、第2加熱室41b-1の底面側の断熱材50とで、断熱材50の厚さに差を設けるよう構成してもよい。
図10に、断熱材の厚さが異なる第1加熱室及び第2加熱室を備える製造装置105を示す。
【0102】
断熱材50の厚さが薄いと、熱が逃げやすくなり、加熱手段が配設される面と、対向する面との温度勾配の差が相対的に大きくなる。一方で、断熱材50の厚さが厚いと、熱が逃げにくいため、加熱手段が配設される面と、対向する面との温度勾配の差が相対的に小さくなる。したがって、第1加熱室41a-2の天面側の断熱材50と、第2加熱室41b-2の底面側の断熱材50とで、断熱材50の厚さに差を設けることで、温度勾配の高低のみならず、半導体基板10と送受体20との間に形成される温度勾配の温度差を制御することも可能となる。
【0103】
図11には、複数の本加熱室を備える製造装置として、別の実施形態である製造装置106を示す。
図11の第1加熱室41a-3及び第2加熱室41b-3は、それぞれ独立した加熱手段44c及び44dを備える。
加熱手段44cは、第1加熱室41a-3の天面側に配設され、加熱手段44dは、第2加熱室41b-3の底面側に配設される。このように、第1加熱室41a-2における加熱手段44cの配設位置に対して、第2加熱室41b-3においては、加熱手段44cと対向する位置に加熱手段44dを配設することで、それぞれの本加熱室で前記半導体基板10と前記送受体21との間に形成される温度勾配の高低に対して温度勾配の高低が反転するよう構成することができる。
【0104】
上述してきた半導体基板の製造装置には、半導体基板と送受体との温度勾配の方向を回転軸として、被加熱物を回転させる機構を備えることが好ましい。被加熱物を回転させることで、半導体基板の成長量、エッチング量が均一となり、半導体基板面内の膜厚が均一になりやすい。
【符号の説明】
【0105】
10 半導体基板
11 主面
20 本体容器
21 送受体
22 上容器
23 下容器
24 間隙
30 高融点容器
31 上容器
32 下容器
33 間隙
34 蒸気供給源
40 加熱炉
41 本加熱室
42 予備加熱室
43 移動手段
44 加熱手段
45 真空形成用バルブ
46 不活性ガス注入用バルブ
47 真空計
48 開閉部
49 吸熱体
50 断熱材
100~106 半導体基板の製造装置

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11