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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】ペプチド及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/06 20060101AFI20240829BHJP
   C07K 1/10 20060101ALN20240829BHJP
   C07C 237/22 20060101ALN20240829BHJP
   C07C 231/02 20060101ALN20240829BHJP
   C07C 237/12 20060101ALN20240829BHJP
【FI】
C07K1/06
C07K1/10
C07C237/22
C07C231/02
C07C237/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021529174
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(86)【国際出願番号】 JP2020025912
(87)【国際公開番号】W WO2021002408
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2023-02-20
(31)【優先権主張番号】P 2019124016
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019209908
(32)【優先日】2019-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡添 隆
(72)【発明者】
【氏名】石橋 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】山東 信介
(72)【発明者】
【氏名】森本 淳平
(72)【発明者】
【氏名】相川 光介
(72)【発明者】
【氏名】三上 峻輝
(72)【発明者】
【氏名】小野 高広
【審査官】鳥居 敬司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/014176(WO,A1)
【文献】特開平05-140199(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0099845(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0259020(US,A1)
【文献】国際公開第2013/137302(WO,A1)
【文献】J. Am. Chem. Com.,2006年,Vol.128,pp.15556-15557, Supporting Information
【文献】Biochemistry,2004年,Vol.43,pp.16277-16284
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-1/36
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(4)
【化1】
(式中、Rfは、少なくとも2個のフッ素原子で置換された、フッ素原子以外のハロゲン原子でさらに置換されていてもよいC1-30アルキル基(当該C1-30アルキル基がC2-30アルキル基である場合には、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)であり、
は、アミノ基の保護基であり、Rは、カルボキシル基の保護基である)
で表される化合物を還元反応に付した後、前記Rを脱保護することにより、下記一般式(6-2)
【化2】
(式中、Rf及びRは、前記と同じである)
で表される化合物を合成し、さらに前記一般式(6-2)で表される化合物を、カルボキシル基が保護された含フッ素アミノ酸、カルボキシル基が保護されたアミノ酸、C末端が保護された含フッ素ペプチド、又はC末端が保護されたペプチドと縮合させる、フルオロアルキル基含有ペプチドの製造方法。
【請求項2】
下記一般式(4)
【化3】
(式中、Rfは、少なくとも2個のフッ素原子で置換された、フッ素原子以外のハロゲン原子でさらに置換されていてもよいC 1-30 アルキル基(当該C 1-30 アルキル基がC 2-30 アルキル基である場合には、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)であり、
は、アミノ基の保護基であり、R は、カルボキシル基の保護基である)
で表される化合物を還元反応に付した後、前記R を脱保護することにより、下記一般式(6-2)
【化4】
(式中、Rf及びR は、前記と同じである)
で表される化合物を合成し、
前記一般式(6-2)で表される化合物を、前記Rを脱保護することにより、下記一般式(7)
【化5】
(Rfは、前記と同じである)
で表される化合物を合成し、さらに前記一般式(7)で表される化合物を、
アミノ基を保護基で保護した後、カルボキシル基が保護された含フッ素アミノ酸、カルボキシル基が保護されたアミノ酸、C末端が保護された含フッ素ペプチド、又はC末端が保護されたペプチドと縮合させる、又は、
カルボキシ基を保護基で保護した後、アミノ基が保護された含フッ素アミノ酸、アミノ基が保護されたアミノ酸、N末端が保護された含フッ素ペプチド、又はN末端が保護されたペプチドと縮合させるフルオロアルキル基含有ペプチドの製造方法。
【請求項3】
下記一般式(4)
【化6】
(式中、Rfは、少なくとも2個のフッ素原子で置換された、フッ素原子以外のハロゲン原子でさらに置換されていてもよいC1-30アルキル基(当該C1-30アルキル基がC2-30アルキル基である場合には、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)であり、
は、アミノ基の保護基であり、Rは、カルボキシル基の保護基である)
で表される化合物を還元反応に付した後、前記Rを脱保護することにより、下記一般式(6-4)
【化7】
(式中、アスタリスクは、アスタリスクを付した不斉炭素原子の絶対配置がS又はRであることを表し、
Rf及びRは、前記と同じである)
で表される化合物を合成し、さらに前記一般式(6-4)で表される化合物を、カルボキシル基が保護された含フッ素アミノ酸、カルボキシル基が保護されたアミノ酸、C末端が保護された含フッ素ペプチド、又はC末端が保護されたペプチドと縮合させる、フルオロアルキル基含有ペプチドの製造方法。
【請求項4】
下記一般式(4)
【化8】
(式中、Rfは、少なくとも2個のフッ素原子で置換された、フッ素原子以外のハロゲン原子でさらに置換されていてもよいC 1-30 アルキル基(当該C 1-30 アルキル基がC 2-30 アルキル基である場合には、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)であり、
は、アミノ基の保護基であり、R は、カルボキシル基の保護基である)
で表される化合物を還元反応に付した後、前記R を脱保護することにより、下記一般式(6-4)
【化9】
(式中、アスタリスクは、アスタリスクを付した不斉炭素原子の絶対配置がS又はRであることを表し、
Rf及びR は、前記と同じである)
で表される化合物を合成し、
前記一般式(6-4)で表される化合物を、前記Rを脱保護することにより、下記一般式(7-1)
【化10】
(式中、アスタリスクは、アスタリスクを付した不斉炭素原子の絶対配置がS又はRであることを表し、
Rfは、前記と同じである)
で表される化合物を合成し、さらに前記一般式(7-1)で表される化合物を、
アミノ基を保護基で保護した後、カルボキシル基が保護された含フッ素アミノ酸、カルボキシル基が保護されたアミノ酸、C末端が保護された含フッ素ペプチド、又はC末端が保護されたペプチドと縮合させる、又は、
カルボキシ基を保護基で保護した後、アミノ基が保護された含フッ素アミノ酸、アミノ基が保護されたアミノ酸、N末端が保護された含フッ素ペプチド、又はN末端が保護されたペプチドと縮合させるフルオロアルキル基含有ペプチドの製造方法。
【請求項5】
さらに、製造されたフルオロアルキル基含有ペプチドのアミノ基又はカルボキシル基の保護基を脱保護する、請求項1~4のいずれか一項に記載のフルオロアルキル基含有ペプチドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロアルキル基が側鎖に導入されたアミノ酸残基を含むペプチド及びその製造方法に関する。
本願は、2019年7月2日に日本に出願された特願2019-124016号、及び2019年11月20日に日本に出願された特願2019-209908号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
抗体医薬、ペプチド医薬、核酸医薬等は、標的分子に対する特異性が高く、副作用が少ないという優れた点がある。しかし、いずれも細胞内に存在する標的分子に到達させることが困難であるという問題がある。当該問題を解決するために、様々な手法が検討されている。なかでも、細胞膜透過性ペプチド(Cell Penetrating Peptides:CPP)が有望視されている。CPPとしては、HIVウイルスのTATタンパク質に由来するペプチド(特許文献1)や、ポリArg配列のペプチド(特許文献2)が代表的なものとして挙げられる。これを薬効ペプチドと結合させて薬効ペプチドを細胞内に輸送できる(たとえば、特許文献3、非特許文献1)。
【0003】
一方、含フッ素アミノ酸は特異な生理活性を示すことが報告され、注目を集めている。例えば、3,3,3-トリフルオロアラニン及びその誘導体は、ピリドキサール酵素の自殺型阻害剤(suicide inhibitor)として作用することが報告されている(非特許文献2)。また、グラム陰性菌Salmonella typhimurium及びグラム陽性菌Bacillus stearothermophilusのアラニンラセマーゼが、3,3,3-トリフルオロアラニンで不活性化されることが報告されている(非特許文献3)。含フッ素アミノ酸及びそれを含有するペプチドは、生理活性物質として、医薬分野での利用が期待される。
【0004】
ポリフルオロ構造を有する化合物は、生体内で安定かつ毒性が低く、細胞内への取り込みとエンドソームからの脱出に優れていることが知られている(非特許文献4)。この性質を利用して、構成アミノ酸として側鎖のアミノ基をペルフルオロアシル化したリシンを用いたペプチドデンドリマーを遺伝子のデリバリーに用いることができることが報告されている(非特許文献5)。しかし、デンドリマーであるため、CPPのように薬効活性ペプチドや核酸や抗体医薬となるタンパク質と結合させたハイブリッドを形成することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第6,316,003号明細書
【文献】米国特許第6,306,993号明細書
【文献】国際公開第2008/089491号
【非特許文献】
【0006】
【文献】Miyaji et. al., Drug Metabolism and Disposition, 2011, vol.39, p.1946-1953.
【文献】Sakai et al., Tetrahedron, 1996, vol.52(1), p.233-244.
【文献】Faraci and Walsh, Biochemistry, 1989, vol.28(2), p.431-437.
【文献】Zhang et al., MRS Communications, 2018, vol.8, p.303-313.
【文献】Cai et al., ACS Applied Materials and Interfaces, 2016, vol.8, p.5821-5832.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1等に記載されているCPPは、細胞内への輸送効率や、生体内でのペプチダーゼによる分解など様々な問題がある。
本発明は、フルオロアルキル基が側鎖に導入されたアミノ酸残基を含むペプチド及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、フルオロアルキル基が側鎖に導入されたアミノ酸残基を含むペプチドを製造したところ、当該ペプチドが細胞膜透過性に優れていることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] 下記一般式(6-2)又は(6-4)
【化1】
(式中、アスタリスクは、アスタリスクを付した不斉炭素原子の絶対配置がS又はRであることを表し、
Rfは、少なくとも2個のフッ素原子で置換された、フッ素原子以外のハロゲン原子でさらに置換されていてもよいC1-30アルキル基(当該C1-30アルキル基がC2-30アルキル基である場合には、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)であり、
は、アミノ基の保護基である)
で表される化合物を、カルボキシ基が保護された含フッ素アミノ酸、カルボキシ基が保護されたアミノ酸、C末端が保護された含フッ素ペプチド、又はC末端が保護されたペプチドと縮合させる、フルオロアルキル基含有ペプチドの製造方法。
【0010】
[2] 下記一般式(6-1)又は(6-3)
【化2】
(式中、アスタリスクは、アスタリスクを付した不斉炭素原子の絶対配置がS又はRであることを表し、
Rfは、少なくとも2個のフッ素原子で置換された、フッ素原子以外のハロゲン原子でさらに置換されていてもよいC1-30アルキル基(当該C1-30アルキル基がC2-30アルキル基である場合には、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)であり、
は、下記一般式(p-1)
【化3】
(式中、Rは、置換されていてもよいC6-14アリール基であり、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は置換されていてもよいC6-14アリール基であり、黒丸は結合手を意味する)
で表される基、2-(9,10-ジオキソ)アントリルメチル基、ベンジルオキシメチル基、及びフェナシル基から選ばれる保護基である)
で表される化合物を、アミノ基が保護された含フッ素アミノ酸、アミノ基が保護されたアミノ酸、N末端が保護された含フッ素ペプチド、又はN末端が保護されたペプチドと縮合させる、フルオロアルキル基含有ペプチドの製造方法。
【0011】
[3] 下記一般式(7)又は(7-1)
【化4】
(式中、アスタリスクは、アスタリスクを付した不斉炭素原子の絶対配置がS又はRであることを表し、
Rfは、少なくとも2個のフッ素原子で置換された、フッ素原子以外のハロゲン原子でさらに置換されていてもよいC1-30アルキル基(当該C1-30アルキル基がC2-30アルキル基である場合には、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)である)
で表される化合物を、
アミノ基を保護基で保護した後、カルボキシ基が保護された含フッ素アミノ酸、カルボキシ基が保護されたアミノ酸、C末端が保護された含フッ素ペプチド、又はC末端が保護されたペプチドと縮合させる、又は、
カルボキシ基を保護基で保護した後、アミノ基が保護された含フッ素アミノ酸、アミノ基が保護されたアミノ酸、N末端が保護された含フッ素ペプチド、又はN末端が保護されたペプチドと縮合させる、
フルオロアルキル基含有ペプチドの製造方法。
[4] さらに、製造されたフルオロアルキル基含有ペプチドのアミノ基又はカルボキシ基の保護基を脱保護する、前記[1]~[3]のいずれかのフルオロアルキル基含有ペプチドの製造方法。
【0012】
[5] 2個以上のアミノ酸がペプチド結合したペプチドであって、
当該ペプチドを構成するアミノ酸残基の少なくとも1個が、側鎖に、少なくとも2個のフッ素原子で置換されたC1-30アルキル基(当該C1-30アルキル基がC2-30アルキル基である場合には、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)を有している、ペプチド。
[6] 前記少なくとも2個のフッ素原子で置換されたC1-30アルキル基が、フッ素原子以外のハロゲン原子でさらに置換されていてもよい、前記[5]のペプチド。
【0013】
[7] 前記少なくとも2個のフッ素原子で置換されたC1-30アルキル基を有する側鎖が、下記一般式(f-1)又は(f-2)
【化5】
(式中、Rfは、少なくとも2個以上のフッ素原子を含む完全ハロゲン化C1-10アルキル基(当該C1-10アルキル基は炭素原子が2以上の場合に、炭素原子間にエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)を表し、n1は、0~10の整数であり、n2は、0~9の整数であり、黒丸は結合手を意味する)
で表される基である、前記[5]又は[6]のペプチド。
[8] C末端又はN末端が保護基で保護されていてもよい、前記[5]~[7]のいずれかのペプチド。
【0014】
[9] 下記一般式(101)又は(102)
【化6】
(式中、Rfは、少なくとも2個以上のフッ素原子を含む完全ハロゲン化C1-10アルキル基(当該C1-10アルキル基は炭素原子が2以上の場合に、炭素原子間にエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)を表し、n1は、0~10の整数であり、n2は、0~9の整数であり、R11及びR12は、それぞれ独立して、C1-6アルキル基又はベンジル基であり、Xは、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基又はtert-ブトキシカルボニル基であり、Zは、C1-6アルコキシ基である)
で表されるトリペプチドである、前記[5]~[8]のいずれかのペプチド。
[10] 細胞膜透過性である、前記[5]~[9]のいずれかのペプチド。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る製造方法によれば、フルオロアルキル基が側鎖に導入されたペプチドを製造できる。
また、本発明に係るペプチドは、フルオロアルキル基が側鎖に導入されているため、細胞膜透過性に優れている。このため、当該ペプチドは、生理活性物質として、医薬分野での利用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】試験例1において、ペプチド蛍光コンジュゲート1(Alexa-Ala-RFAA-Phe-OMe)、ペプチド蛍光コンジュゲート3(Alexa-Ala-Nle-Phe-OMe)又はペプチド蛍光コンジュゲート4(Alexa-Ala-Ala-Phe-OMe)で処理したHeLa細胞のフローサイトメトリーの結果を示した図である。
図2】試験例2において、ペプチド蛍光コンジュゲート1(Alexa-Ala-RFAA-Phe-OMe)、ペプチド蛍光コンジュゲート2(Alexa-Ala-RFAA(C8)-Phe-OMe)、ペプチド蛍光コンジュゲート3(Alexa-Ala-Nle-Phe-OMe)又はペプチド蛍光コンジュゲート4(Alexa-Ala-Ala-Phe-OMe)で処理したHeLa細胞のフローサイトメトリーの結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明及び本願明細書において、「含フッ素アミノ酸」とは、側鎖に少なくとも2個のフッ素原子を含有するアミノ酸を意味する。「含フッ素ペプチド」とは、側鎖に少なくとも2個のフッ素原子を含有するアミノ酸を含有するペプチドを意味する。
【0018】
本発明及び本願明細書において、「Cp1-p2」(p1及びp2は、p1<p2を満たす正の整数である)は、炭素数がp1~p2の基であることを意味する。
【0019】
本発明及び本願明細書において、「C1-10アルキル基」は、炭素数1~10のアルキル基であり、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。「C2-10アルキル基」は、炭素数2~10のアルキル基であり、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。C1-10アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
【0020】
本発明及び本願明細書において、「C1-30アルキル基」は、炭素数1~30のアルキル基であり、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。「C2-30アルキル基」は、炭素数2~30のアルキル基であり、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。C1-30アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基等が挙げられる。
【0021】
本発明及び本願明細書において、「C1-6アルキル基」は、炭素数1~6のアルキル基であり、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。C1-6アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
【0022】
本発明及び本願明細書において、「C6-14アリール基」は、炭素数6~14の芳香族炭化水素基であり、C6-12アリール基が特に好ましい。C6-14アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、9-フルオレニル基等が挙げられ、フェニル基が特に好ましい。
【0023】
本発明及び本願明細書において、「置換されていてもよいC6-14アリール基」は、C6-14アリール基の炭素原子に結合している水素原子の1又は複数個、好ましくは1~3個が、他の官能基に置換されている基である。2個以上の置換基を有する場合、置換基同士は互いに同種であってもよく、異種であってよい。当該置換基としては、ニトロ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子)、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、及びメチレンジオキシ基(-O-CH-O-)等が挙げられる。「置換されていてもよいC6-14アリール基」の例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、4-ニトロフェニル基、4-メトキシフェニル基、2,4-ジメトキシフェニル基、3,4-ジメトキシフェニル基、4-メチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、3-クロロフェニル基、1,3-ベンゾジオキソール-5-イル基等が挙げられる。
【0024】
本発明及び本願明細書において、「C6-14アリール-C1-6アルキル基」は、C1-6アルキル基の炭素原子に結合している1個の水素原子がC6-14アリール基に置換された基である。C6-14アリール-C1-6アルキル基におけるC6-14アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、9-フルオレニル基等を例示でき、フェニル基又は9-フルオレニル基が特に好ましい。C6-14アリール-C1-6アルキル基におけるC1-6アルキル基としては、C1-4アルキル基が好ましい。C6-14アリール-C1-6アルキル基の例としては、ベンジル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、2-フェニルエチル基、9-アントリルメチル基、9-フルオレニルメチル基等が挙げられる。
【0025】
本発明及び本願明細書において、「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子をいう。「フッ素原子以外のハロゲン原子」とは、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子をいう。「フッ素原子以外のハロゲン原子」の例としては、塩素原子又は臭素原子が好ましく、塩素原子が特に好ましい。
【0026】
本発明及び本願明細書において、「C1-6アルコキシ基」とは、炭素数1~6のC1-6アルキル基の結合末端に酸素原子が結合した基をいう。C1-6アルコキシ基は直鎖であっても分岐鎖であってもよい。C1-6アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0027】
本発明及び本願明細書において、「エーテル結合性の酸素原子」とは、炭素原子間を連結する酸素原子であり、酸素原子同士が直列に連結された酸素原子は含まれない。炭素数Nc(Ncは2以上の整数)のアルキル基が有し得るエーテル結合性の酸素原子は、最大Nc-1個である。
【0028】
また、以降において、「化合物n」は式(n)で表される化合物を意味する。
【0029】
<フルオロアルキル基含有アミノ酸の合成反応>
フルオロアルキル基が側鎖に導入されたアミノ酸であるフルオロアルキル基含有アミノ酸は、例えば、下記の合成反応により製造できる。
【0030】
【化7】
【0031】
Rfは、C1-30アルキル基のうち、炭素原子に結合している水素原子の少なくとも2個がフッ素原子で置換された基であり、炭素原子に結合している1個以上の水素原子が、フッ素原子以外のハロゲン原子でさらに置換されていてもよい。ここで、RfのC1-30アルキル基としては、C1-20アルキル基が好ましく、C1-10アルキル基がより好ましく、C2-10アルキル基がさらに好ましく、C2-8アルキル基がよりさらに好ましい。当該C1-30アルキル基がC2-30アルキル基である場合には、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい。Rfにおいて、フッ素原子に置換されている水素原子の数は、2個以上であれば特に限定されるものではなく、例えば、3個以上が好ましく、6個以上がより好ましく、7個以上がさらに好ましい。
【0032】
Rfの例としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基、ペルフルオロヘプチル基、ペルフルオロオクチル基、ペルフルオロノニル基、ペルフルオロデシル基、ジフルオロメチル基、1,1-ジフルオロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロプロピル基、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル基、1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロヘキシル基、1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロオクチル基、1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロデシル基、1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロオクタデシル基、1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロヘキサコシル基等が挙げられる。
【0033】
Rfが炭素数2の基である場合、化合物2におけるRfとしては、1,1,1-トリフルオロエチル基(CF-CH-)よりも、ペンタフルオロエチル基のように、炭素原子に結合している水素原子の少なくとも4個以上がフッ素原子に置換されている基が好ましい。また、Rfが炭素数3の基である場合、化合物2におけるRfとしては、直鎖状の基が好ましく、分岐鎖状の基の場合には、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2-イル基((CF-CH-)のようにトリフルオロメチル基を2個有する基よりも、トリフルオロメチル基は0又は1個である基の方が好ましい。Rfが炭素数4の基である場合、化合物2におけるRfとしては、直鎖状の基が好ましく、分岐鎖状の基の場合には、アルキレン基部分を構成する炭素原子に結合する水素原子がフッ素原子に置換された基、又は完全フッ素化された基であることが好ましい。
【0034】
Rfとしては、具体的には、後記の一般式(f-1)又は(f-2)で表される基が好ましい。
【0035】
は、カルボキシ基の保護基であり、具体的には、下記一般式(p-1)で表される基、2-(9,10-ジオキソ)アントリルメチル基、ベンジルオキシメチル基、及びフェナシル基から選ばれる保護基である。一般式(p-1)中、Rは、置換されていてもよいC6-14アリール基であり、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は置換されていてもよいC6-14アリール基である。また、黒丸は結合手を意味する。
【化8】
【0036】
で表されるカルボキシ基の保護基としては、ベンジル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、4-ニトロベンジル基、4-メトキシベンジル基、2,4-ジメトキシベンジル基、3,4-ジメトキシベンジル基、4-メチルベンジル基、2,6-ジメチルベンジル基、3-クロロベンジル基、9-アントリルメチル基、ピペロニル基、2-(9,10-ジオキソ)アントリルメチル基、ベンジルオキシメチル基、フェナシル基等が挙げられる。穏やかな条件で脱保護できる点で、Rは、好ましくはベンジル基、トリフェニルメチル基であり、より好ましくはベンジル基である。
【0037】
当該製造方法は、カルボキシ基の保護基Rとして、ベンジル基、トリフェニルメチル基等のアラルキル保護基を使用することにより、穏やかな条件でRを脱保護でき、アミノ酸の官能基を分解することなく、含フッ素アミノ酸の合成や含フッ素ペプチドの合成を行うことができる点で有利である。
【0038】
は、シリル保護基である。Rとしては、トリメチルシリル(TMS)基、トリエチルシリル(TES)基、トリイソプロピルシリル(TIPS)基、tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)基、tert-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)基等が挙げられる。好ましくは、Rは、トリメチルシリル(TMS)基である。
【0039】
は、アミノ基の保護基である。Rとしては、ペプチド合成で使用されるアミノ基の保護基であれば、特に限定されない。アミノ基の保護基としては、tert-ブトキシカルボニル(Boc)基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)基、アリルオキシカルボニル(Alloc)基、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル(Troc)基等のカルバメート系保護基が挙げられる。穏やかな条件で脱保護できる点で、Rは、好ましくは、tert-ブトキシカルボニル(Boc)基又は9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基である。
【0040】
[工程1]
化合物2と化合物8を、金属フッ化物の存在下で反応させることにより、化合物2-2を得ることができる。一般式(8)であるRf-Rで表される化合物8は、入手容易なRf-I(フルオロアルキルヨージド)から1工程で合成できるため、導入できるRf基の範囲が広い。
【0041】
金属フッ化物としては、フッ化セシウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム等のアルカリ金属フッ化物を使用することができ、フッ化セシウムが好ましい。
反応は、反応に不活性な溶媒中で行うことができる。溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン(DCM)、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、1,4-ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の不活性溶媒が挙げられ、テトラヒドロフランが好ましい。
【0042】
化合物8の量は、1モルの化合物2に対して、0.5~10モルが好ましい。金属フッ化物の量は、1モルの化合物2に対して、0.01~2モルが好ましい。工程1の反応は、10℃以下の温度で行うことが好ましい。10℃以下の温度で反応を行うことにより、高収率で化合物2-2を製造できる。反応温度は、好ましくは-78℃~10℃、より好ましくは-50℃~-10℃、特に好ましくは-40℃~-20℃である。反応時間は、好ましくは1~48時間、より好ましくは6~36時間である。
【0043】
化合物2は、シュウ酸を公知の方法でジエステル化することにより製造することができ、又は市販品を使用してもよい。
【0044】
[工程1-1]
工程1の反応において、化合物2-1(ヒドロキシ基の一方がRで保護された化合物)、又は化合物2-2と化合物2-1の混合物が得られることがある。その場合、化合物2-1のシリル保護基Rを脱保護することにより、化合物2-2を得ることができる。
工程1-1の反応は、工程1と同様の方法で行うことができる。
【0045】
[工程1-2]
化合物2-1のシリル保護基Rを脱保護することにより、化合物2-2を得ることができる。
脱保護は、フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)、フッ化セシウム、フッ化水素酸塩等のフッ化物塩、又は塩酸、酢酸、パラトルエンスルホン酸等の酸の存在下で行うことができる。
【0046】
反応は、反応に不活性な溶媒中で行うことができる。溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、1,4-ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の不活性溶媒が挙げられ、テトラヒドロフランが好ましい。酢酸を添加して行うことが好ましい。
【0047】
フッ化物塩の量は、1モルの化合物2-1(化合物2-2と化合物2-1の混合物の場合は、混合物1モル)に対して、0.1~10モルが好ましい。酸の量は、1モルの化合物2-1(化合物2-2と化合物2-1の混合物の場合は、混合物1モル)に対して、0.1~10モルが好ましい。工程1-2の反応は、50℃以下の温度で行うことが好ましい。50℃以下の温度で反応を行うことにより、高収率で化合物2-2を製造できる。反応温度は、好ましくは-80℃~50℃、より好ましくは-40℃~30℃、特に好ましくは-20℃~30℃である。反応時間は、好ましくは1~48時間、より好ましくは6~36時間である。
【0048】
[工程2]
化合物2-2を脱水反応に付すことにより、化合物3を得ることができる。
脱水反応は、五酸化二リン、濃硫酸、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、モレキュラーシーブ(合成ゼオライト)、シリカゲル等の脱水剤の存在下で、行うことができる。脱水剤としては、五酸化二リンが好ましい。脱水剤の量は、化合物2-2の100重量%に対して、10~100重量%が好ましい。脱水反応は、化合物2-2を、脱水剤の存在下で蒸留することにより行うことができる。蒸留は、30℃~150℃の温度で行うことが好ましい。蒸留温度が高すぎると、化合物3が分解する可能性がある。蒸留温度が低すぎると、化合物3を凝縮できず、回収率が低下する可能性がある。蒸留は、減圧、常圧、加圧のいずれの圧力でも実施でき、化合物3の沸点が上記の好ましい温度の範囲に入るように適宜決定できる。圧力は、好ましくは0.1mmHgから5気圧(3800mmHg)である。
【0049】
[工程3]
化合物3を、化合物9又は化合物10と反応させることにより、化合物4を得ることができる。
【0050】
一般式(9)中、Rは、前記の通り、アミノ基の保護基である。R、R及びRは、それぞれ独立して、C6-14アリール基である。R、R又はRで表されるC6-14アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。好ましくは、R、R及びRは、それぞれフェニル基である。
【0051】
反応は、反応に不活性な溶媒中で行うことができる。溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン、1,4-ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の不活性溶媒が挙げられ、ジエチルエーテルが好ましい。
【0052】
化合物9又は化合物10の量は、1モルの化合物3に対して、0.5~10モルが好ましい。反応温度は、好ましくは-78℃~100℃、より好ましくは0℃~40℃である。反応時間は、好ましくは1分間~24時間、より好ましくは10分間~4時間である。
【0053】
好適な態様において、アミノ基の保護基Rとして、tert-ブトキシカルボニル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基等のカルバメート系保護基を使用することにより、穏やかな条件でRを脱保護でき、化合物の分解やラセミ化を抑制しながら含フッ素アミノ酸の合成を行うことができる。
【0054】
[工程4]
化合物4を還元反応に付すことにより、化合物5を得ることができる。
還元反応は、還元剤を使用する方法、又は金属触媒の存在下で還元する方法で行うことができる。
【0055】
(1)還元剤を使用する方法
還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素亜鉛、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素リチウム、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム等の水素化ホウ素試薬を使用できる。還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム又は水素化ホウ素亜鉛が好ましく、水素化ホウ素ナトリウムがより好ましい。還元剤の量は、1モルの化合物4に対して、0.5~10モルが好ましい。
【0056】
反応は、反応に不活性な溶媒中で行うことができる。溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)(例、アサヒクリン(登録商標)AK-225(3,3-ジクロロ-1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパンと1,3-ジクロロ-1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパンの混合物、AGC株式会社))、ジクロロメタン、アセトニトリル、1,4-ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の不活性溶媒が挙げられ、ジエチルエーテルが好ましい。
反応温度は、好ましくは-78℃~100℃、より好ましくは-10℃~40℃である。反応時間は、好ましくは1~48時間、より好ましくは6~36時間である。
【0057】
(2)金属触媒の存在下で還元する方法
金属触媒としては、パラジウム触媒(例、パラジウム炭素、水酸化パラジウム、パールマン触媒、リンドラー触媒、シリカゲル担持パラジウム触媒、アルミナ担持パラジウム触媒、酸化パラジウム)、ニッケル触媒(例、ラネーニッケル)、白金触媒(例、白金炭素、酸化白金、シリカゲル担持白金触媒、アルミナ担持白金触媒)、ロジウム触媒(例、ロジウム炭素、アルミナ担持ロジウム触媒、酸化ロジウム)、ルテニウム触媒(例、ルテニウム炭素、アルミナ担持ルテニウム触媒、酸化ルテニウム)、コバルト触媒(例、ラネーコバルト)等が挙げられ、パラジウム触媒が好ましい。金属触媒の量は、1モルの化合物4に対して、0.0001~0.1モルが好ましく、0.0005~0.02モルがより好ましい。
【0058】
反応は、反応に不活性な溶媒中で行うことができる。溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、ジクロロメタン、アセトニトリル、1,4-ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の不活性溶媒が挙げられる。
【0059】
還元反応は、水素ガスの存在下で行われる。還元反応は常圧で行っても、加圧下で行ってもよい。水素ガスの圧力は、好ましくは0.5気圧~10気圧である。反応温度は、好ましくは0℃~100℃、より好ましくは10℃~50℃である。反応時間は、好ましくは1~48時間、より好ましくは6~36時間である。
【0060】
[工程5-1]
化合物5の保護基Rを脱保護することにより、化合物6-1を得ることができる。
脱保護は、保護基Rの種類に応じて行うことができる。
がBoc基の場合、酸性条件下で脱保護できる。使用する酸としては、トリフルオロ酢酸(TFA)、塩酸等が挙げられる。酸の量は、1モルの化合物5に対して、1~1000モルが好ましい。
【0061】
反応は、反応に不活性な溶媒中で行うことができる。溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン、1,4-ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の不活性溶媒が挙げられ、ジクロロメタン、N,N-ジメチルホルムアミドが好ましい。酸を溶媒として使用することもできる。溶媒としては、塩酸、酢酸、トリフルオロ酢酸等の無機酸、有機酸が挙げられ、トリフルオロ酢酸が好ましい。反応温度は、好ましくは-78℃~50℃、より好ましくは0℃~40℃である。反応時間は、好ましくは1~48時間、より好ましくは6~36時間である。
【0062】
がFmoc基の場合、塩基性条件下で脱保護できる。使用する塩基としては、ピペリジン、モルホリン、ピロリジン等の二級アミンが挙げられる。塩基の量は、1モルの化合物5に対して、1~100モルが好ましい。
反応は、反応に不活性な溶媒中で行うことができる。溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン、1,4-ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の不活性溶媒が挙げられる。反応温度は、好ましくは-20℃~80℃、より好ましくは0℃~40℃である。反応時間は、好ましくは1分間~24時間、より好ましくは5分間~2時間である。
【0063】
[工程6-1]
化合物6-1の保護基Rを脱保護することにより、化合物7を得ることができる。
脱保護は、保護基Rの種類に応じて行うことができる。Rがベンジル基、トリフェニルメチル基、9-アントリルメチル基、ピペロニル基、2-(9,10-ジオキソ)アントリルメチル基、ベンジルオキシメチル基、フェナシル基の場合、金属触媒の存在下で還元する方法により、脱保護できる。還元反応は、工程4の金属触媒の存在下で還元する方法と同様の方法で行うことができる。
【0064】
[工程5-2]
化合物5の保護基Rを脱保護することにより、化合物6-2を得ることができる。脱保護は、工程6-1と同様の方法で行うことができる。
【0065】
[工程6-2]
化合物6-2の保護基Rを脱保護することにより、化合物7を得ることができる。脱保護は、工程5-1と同様の方法で行うことができる。
【0066】
一般式(4)で表されるイミン(化合物4)の不斉還元を行うことにより、光学活性な含フッ素アミノ酸(フルオロアルキル基含有化合物)を合成できる。下記反応式中、アスタリスク(*)は、アスタリスクを付した不斉炭素原子の絶対配置がS又はRであることを表す。また、Rf、R、及びRは、前記で定義した通りである。
【0067】
【化9】
【0068】
当該製造方法においては、カルボキシ基の保護基Rとして、ベンジル基、トリフェニルメチル基等のアラルキル保護基を使用することにより、穏やかな条件でRを脱保護でき、光学活性を保持したまま含フッ素アミノ酸の合成や含フッ素ペプチドの合成を行うことができる点で有利である。
【0069】
[工程7]
化合物4を不斉還元反応に付すことにより、化合物5-1を得ることができる。
不斉還元反応は、化合物4を不斉還元触媒の存在下で還元することにより、行うことができる。
【0070】
不斉還元触媒としては、遷移金属に不斉配位子が配位した遷移金属錯体を使用できる。遷移金属としては、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、ニッケル、コバルト、白金、鉄等が挙げられる。遷移金属錯体としては、パラジウム錯体、ロジウム錯体、ルテニウム錯体、イリジウム錯体、ニッケル錯体等が挙げられる。
【0071】
不斉配位子としては、dpen(1,2-ジフェニルエチレンジアミン)、daipen(1,1-ジ(4-アニシル)-2-イソプロピル-1,2-エチレンジアミン)、光学活性なホスフィン配位子が挙げられる。光学活性なホスフィン配位子としては、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル(BINAP)、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-5,5’,6,6’,7,7’,8,8’-オクタヒドロ-1,1’-ビナフチル(H-BINAP)、2,2’-ビス(ジ-p-トリルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル(Tol-BINAP)、2,2’-ビス[ビス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィノ]-1,1’-ビナフチル(Xyl-BINAP)、2,2’-ビス[ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェニル)ホスフィノ]-1,1’-ビナフチル(DTBM-BINAP)、1,2-ビス(アニシルホスフィノ)エタン(DIPAMP)、2,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(CHIRAPHOS)、1-シクロヘキシル-1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(CYCPHOS)、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(PROPHOS)、2,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)-5-ノルボルネン(NORPHOS)、2,3-O-イソプロピリデン-2,3-ジヒドロキシ-1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(DIOP)、1-[1’,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルアミン(BPPFA)、1-[1’,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルアルコール(BPPFOH)、2,4-ビス-(ジフェニルホスフィノ)ペンタン(SKEWPHOS)、1,2-ビス(置換ホスホラノ)ベンゼン(DuPHOS)、5,5’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-4,4’-ビ-1,3-ベンゾジオキソール(SEGPHOS)、5,5’-ビス[ジ(3,5-キシリル)ホスフィノ]-4,4’-ビ-1,3-ベンゾジオキソール(DM-SEGPHOS)、5,5’-ビス[ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェニル)ホスフィノ]-4,4’-ビ-1,3-ベンゾジオキソール(DTBM-SEGPHOS)、1-[2-(2置換ホスフィノ)フェロセニル]エチル-2置換ホスフィン(Josiphos)、1-[2-(2’-2置換ホスフィノフェニル)フェロセニル]エチル-2置換ホスフィン(Walphos)等が挙げられる。
【0072】
不斉還元触媒の量は、1モルの化合物4に対して、0.0001~0.1モルが好ましく、0.0005~0.02モルがより好ましい。
反応は、反応に不活性な溶媒中で行うことができる。溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、ジクロロメタン、アセトニトリル、1,4-ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の不活性溶媒が挙げられる。
還元反応は、水素ガスの存在下で行われる。還元反応は常圧で行ってもよく、加圧下で行ってもよい。水素ガスの圧力は、好ましくは0.5気圧~10気圧である。反応温度は、好ましくは0℃~100℃、より好ましくは10℃~50℃である。反応時間は、好ましくは1~48時間、より好ましくは6~36時間である。
【0073】
[工程8-1]
化合物5-1の保護基Rを脱保護することにより、化合物6-3を得ることができる。脱保護は、工程5-1と同様の方法で行うことができる。
【0074】
[工程9-1]
化合物6-3の保護基Rを脱保護することにより、化合物7-1を得ることができる。脱保護は、工程6-1と同様の方法で行うことができる。
【0075】
[工程8-2]
化合物5-1の保護基Rを脱保護することにより、化合物6-4を得ることができる。脱保護は、工程6-1と同様の方法で行うことができる。
【0076】
[工程9-2]
化合物6-4の保護基Rを脱保護することにより、化合物7-1を得ることができる。脱保護は、工程5-1と同様の方法で行うことができる。
【0077】
光学活性な含フッ素アミノ酸(フルオロアルキル基含有化合物)の合成は、下記反応によっても行うことができる。下記反応式中、アスタリスクは、アスタリスクを付した不斉炭素原子の絶対配置がS又はRであることを表す。また、Rf、R、及びRは、前記で定義した通りである。
【0078】
【化10】
【0079】
[工程10-1]
化合物6-1を光学分割することにより、化合物6-3を得ることができる。
光学分割は、公知の手法で行うことができる。例えば、キラルカラムを使用する方法、結晶化による方法、ジアステレオマー法等で行うことができる。
【0080】
(1)キラルカラムを使用する方法
キラルカラムを使用する液体クロマトグラフィー、超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)により、ラセミ体を光学活性体に分割できる。キラルカラムは、CHIRALPAK(登録商標)(株式会社ダイセル)、CHIRALCEL(登録商標)(株式会社ダイセル)等を使用できる。
【0081】
(2)結晶化による方法
ラセミ体と光学活性なアミン又は光学活性な酸との塩を形成させ、結晶性のジアステレマー塩に誘導して分別結晶する。再結晶を繰り返すことにより、単一のジアステレマー塩を得ることができる。必要に応じて、ジアステレオマー塩を中和して、遊離体の光学活性体を得る。光学活性なアミンとしては、ブルシン、シンコニジン、シンコニン、1-フェネチルアミン等が挙げられる。光学活性な酸としては、カンファースルホン酸、酒石酸、マンデル酸等が挙げられる。
【0082】
(3)ジアステレオマー法
ラセミ体に光学活性な試薬を反応させて、ジアステオマーの混合物を得て、これを分別結晶、クロマトグラフィーにより、単一のジアステオマーを分離する。得られた単一のジアステレオマーから光学活性な試薬部分を除去して、目的の光学異性体を得る。
【0083】
[工程11-1]
化合物6-3の保護基Rを脱保護することにより、化合物7-1を得ることができる。脱保護は、工程6-1と同様の方法で行うことができる。
【0084】
[工程10-2]
化合物6-2を光学分割することにより、化合物6-4を得ることができる。光学分割は、工程10-1と同様の方法で行うことができる。
【0085】
[工程11-2]
化合物6-4の保護基Rを脱保護することにより、化合物7-1を得ることができる。脱保護は、工程5-1と同様の方法で行うことができる。
【0086】
[工程12]
化合物7を光学分割することにより、化合物7-1を得ることができる。光学分割は、工程10-1と同様の方法で行うことができる。
【0087】
<フルオロアルキル基含有ペプチドの製造方法>
フルオロアルキル基含有ペプチドは、側鎖にフルオロアルキル基が導入されたアミノ酸を原料として製造できる。例えば、化合物6-1、化合物6-2、化合物6-3、又は化合物6-4を原料とすることにより、フルオロアルキル基含有ペプチドを製造できる。
【0088】
例えば、化合物6-2又は6-4を、カルボキシ基が保護された含フッ素アミノ酸、カルボキシ基が保護されたアミノ酸、C末端が保護された含フッ素ペプチド、又はC末端が保護されたペプチドと縮合させることにより、フルオロアルキル基含有ペプチドを製造できる。また、化合物6-1又は化合物6-3を、アミノ基が保護された含フッ素アミノ酸、アミノ基が保護されたアミノ酸、N末端が保護された含フッ素ペプチド、又はN末端が保護されたペプチドと縮合させることにより、フルオロアルキル基含有ペプチドを製造できる。
【0089】
また、化合物7又は化合物7-1を、そのアミノ基又はカルボキシ基を保護した後、同様にしてフルオロアルキル基含有ペプチドを製造できる。具体的には、アミノ基を保護基で保護した後、カルボキシ基が保護された含フッ素アミノ酸、カルボキシ基が保護されたアミノ酸、C末端が保護された含フッ素ペプチド、又はC末端が保護されたペプチドと縮合させる。また、カルボキシ基を保護基で保護した後、アミノ基が保護された含フッ素アミノ酸、アミノ基が保護されたアミノ酸、N末端が保護された含フッ素ペプチド、又はN末端が保護されたペプチドと縮合させることもできる。
【0090】
ペプチドの製造は、一般的なペプチド合成法により行うことができる。例えば、ペプチド固相合成法により行うことができる。フルオロアルキル基含有ペプチドは、側鎖にフルオロアルキル基が導入されたアミノ酸を原料として、ペプチド自動合成機を用いて容易に合成できる。
【0091】
C末端を固相に結合したアミノ酸に、アミノ基を保護したアミノ酸を順次縮合させ、ペプチドを固相から脱離させることにより、ペプチドを製造できる。アミノ酸原料は、アミノ基がBoc基又はFmoc基で保護されたものを使用することが好ましい。アミノ酸原料の側鎖官能基は、保護基で保護されているものを使用することが好ましい。側鎖官能基の保護基としては、Boc基、トリフェニルメチル基、ベンジル基、2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル(Pmc)基等が挙げられる。
【0092】
ペプチド結合を形成する縮合剤としては、例えば、N,N-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-エチル-3-(3’-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(WSC)、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリスジメチルアミノホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩(BOP)、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリスピロリジノホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩(pyBOP)、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HBTU)、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート等が挙げられる。また、N-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)と上記縮合剤を好ましい割合で混合して用いることもできる。
【0093】
ペプチド結合の形成にはカルボキシ末端を活性化する方法を用いてもよく、その活性化剤としては、例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド、p-ニトロフェニルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル等が挙げられる。ペプチド結合を形成する際に用いる塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)等が挙げられる。ペプチド結合形成反応に用いる溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0094】
ペプチド又はアミノ酸のアミノ末端アミノ基の保護基であるBoc基及びFmoc基は、それぞれトリフルオロ酢酸又はピペリジンにより除去できる。ペプチドのアミノ酸残基の側鎖官能基の保護基は、例えば、トリフルオロ酢酸、フッ化水素(HF)、トリフルオロメタンスルホン酸等により除去できる。
【0095】
また、ペプチド固相合成法において、ペプチド又はアミノ酸残基の側鎖官能基に保護基が付いているペプチドをペプチド固相合成樹脂より脱離させる方法としては、例えば、TFAを用いることができる。ペプチド固相樹脂からのペプチドの脱離と、アミノ酸残基の側鎖官能基の保護基の脱離は、それぞれ同一反応系内で同時に行うこともできる。あるいは、それぞれ独立に行うこともできる。ペプチド固相合成用のペプチド固相合成樹脂としては、例えば、4-ヒドロキシメチル-3-メトキシフェノキシ酪酸-ベンズヒドリルアミン-ポリスチレン樹脂、p-ベンジルオキシベンジルアルコール-ポリスチレン樹脂、オキシム樹脂等の通常市販されているものを用いることができる。
【0096】
目的のペプチド又はその中間体は、例えば、イオンクロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、順相クロマトグラフィー、再結晶、抽出、分別結晶化等、種々の方法により単離、精製を行うことができる。また、こうして得られたペプチドは、常法によってそれぞれの塩に変換できる。
【0097】
製造されたフルオロアルキル基含有ペプチドのアミノ基又はカルボキシ基の保護基は、必要に応じて脱保護することもできる。脱保護は、保護基の種類に応じて常法により行うことができる。
【0098】
<フルオロアルキル基含有ペプチド>
本発明に係るフルオロアルキル基含有ペプチドは、2個以上のアミノ酸からなるペプチドであって、当該ペプチドを構成するアミノ酸残基の少なくとも1個が、側鎖に、少なくとも2個のフッ素原子で置換されたC1-30アルキル基を有している。少なくとも2個のフッ素原子で置換されたC1-30アルキル基は、フッ素原子以外のハロゲン原子でさらに置換されていてもよい。また、当該C1-30アルキル基がC2-30アルキル基の場合、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい。
【0099】
本発明に係るフルオロアルキル基含有ペプチドとしては、側鎖が前記Rfであるアミノ酸残基であるペプチドが挙げられる。当該ペプチドを構成するアミノ酸残基のうち、少なくとも1個の側鎖がRfであればよく、全てのアミノ酸残基の側鎖がRfであってもよい。一分子のペプチドに側鎖がRfであるアミノ酸残基が2個以上ある場合、これ等の複数のRfは、互いに同種であってもよく、異種であってもよい。また、ペプチドのうち、側鎖がRfであるアミノ酸残基は、N末端にあってもよく、C末端にあってもよく、末端以外にあってもよい。
【0100】
Rfとしては、下記一般式(f-1)又は(f-2)で表される基が好ましい。ここで、Rfは、少なくとも2個以上のフッ素原子を含む完全ハロゲン化C1-10アルキル基を表す。Rfは、C1-10アルキル基の水素原子の全てがハロゲン原子に置換されており、これらのハロゲン原子のうち少なくとも2個以上がフッ素原子である基である。Rfが炭素数2以上の場合、すなわち、完全ハロゲン化C2-10アルキル基の場合、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい。一般式(f-2)において、2個のRfは、互いに同種の基であってもよく、異種の基であってもよい。
【0101】
下記一般式(f-1)又は(f-2)において、n1は、0~10の整数であり、n2は、0~9の整数である。n1及びn2が0の場合、いずれも単結合を表す。すなわち、n1が0の場合、一般式(f-1)で表される基は、Rf-であり、n2が0の場合、一般式(f-2)で表される基は、(Rf-CH-である。
【化11】
【0102】
Rfが一般式(f-1)で表される基である場合、Rfは、Rfが、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基、ペルフルオロヘプチル基、ペルフルオロオクチル基、ペルフルオロノニル基、又はペルフルオロデシル基であり、n1が0~4の整数である基が好ましく、Rfが、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基、ペルフルオロヘプチル基、ペルフルオロオクチル基、ペルフルオロノニル基、又はペルフルオロデシル基であり、n1が0~2の整数である基がより好ましく、Rfが、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、ペルフルオロペンチル基、又はペルフルオロヘキシル基であり、n1が0~2の整数である基(ただし、n1が1であり、Rfがトリフルオロメチル基である基を除く)がさらに好ましい。
【0103】
Rfが一般式(f-2)で表される基である場合、Rfは、Rfが、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基、ペルフルオロヘプチル基、ペルフルオロオクチル基、ペルフルオロノニル基、又はペルフルオロデシル基であり、n2が0~4の整数である基が好ましく、Rfが、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基、ペルフルオロヘプチル基、ペルフルオロオクチル基、ペルフルオロノニル基、又はペルフルオロデシル基であり、n2が0~2の整数である基がより好ましく、Rfが、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、ペルフルオロペンチル基、又はペルフルオロヘキシル基であり、n2が0~2の整数である基(ただし、n2が0又は1であり、Rfがトリフルオロメチル基である基を除く)がさらに好ましい。
【0104】
Rfの例としては、ジフルオロメチル基、1,1-ジフルオロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロプロピル基、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル基等であってもよい。
【0105】
2個以上のアミノ酸からなるペプチドとしては、3個以上のアミノ酸からなるペプチドが好ましい。好ましくは、2~40個のアミノ酸からなるペプチドであり、より好ましくは、3~20個のアミン酸からなるペプチドである。
【0106】
本発明に係るフルオロアルキル基含有ペプチドのC末端は、Rで表される保護基で保護されていてもよい。Rは、好ましくは、ベンジル基である。また、本発明に係るフルオロアルキル基含有ペプチドのN末端は、Rで表されるアミノ基の保護基で保護されていてもよい。Rは、好ましくは、Boc基又はFmoc基である。
【0107】
本発明に係るフルオロアルキル基含有ペプチドとしては、例えば、下記一般式(101)又は(102)で表されるトリペプチドが挙げられる。一般式(101)及び(102)中、R11及びR12は、それぞれ独立して、C1-6アルキル基又はベンジル基であり、それぞれ独立してメチル基又はベンジル基であることが好ましく、R11がメチル基であり、R12がベンジル基であることが特に好ましい。Xは、Fmoc又はBocである。Zは、C1-6アルコキシ基であり、メトキシ基が特に好ましい。
【化12】
【0108】
一般式(101)及び(102)中、Rf、n1、及びn2は、一般式(f-1)及び(f-2)と同様である。前記一般式(101)又は(102)で表される基としては、Rfが完全フッ素化C1-10アルキル基であり、n1又はn2が0~4の整数であることが好ましく、Rfがトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基、ペルフルオロヘプチル基、又はペルフルオロオクチル基であり、n1又はn2が0~2の整数であることがより好ましく、Rfがノナフルオロブチル基、ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基、ペルフルオロヘプチル基、又はペルフルオロオクチル基であり、n1又はn2が0~2の整数であることがさらに好ましい。
【0109】
フルオロアルキル基は、細胞膜への親和性が高い。このため、本発明に係るフルオロアルキル基含有ペプチドは、細胞膜透過性に優れている。また、天然ペプチドと構造が大幅に異なるため、ペプチターゼにより分解されにくい。これらの性質を利用して、本発明に係るフルオロアルキル基含有ペプチドは、生理活性物質として、医薬分野での利用が期待される。例えば、本発明に係るフルオロアルキル基含有ペプチドは、薬効成分を標的細胞へ運ぶDDSキャリアとしての利用が期待できる。例えば、生体内の標的細胞内に取り込まれることにより何等かの生理活性を示す機能性ペプチドに、その機能を損なわないように本発明に係るフルオロアルキル基含有ペプチドを付加することにより、当該機能性ペプチドの標的細胞への取り込み効率を改善できる。また、生理活性を示す機能性ペプチドの疎水性アミノ酸残基のうちの一部の側鎖を、当該機能性ペプチドの機能を損なわない範囲で、Rf、好ましくは前記一般式(101)又は(102)で表される基に置換することにより、当該機能性ペプチドの細胞膜透過性や細胞内での滞留時間を改善できる。
【実施例
【0110】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0111】
実施例、比較例の分析に使用したNMR装置は日本電子製JNM-ECZ400S(400MHz)であり、H NMRではテトラメチルシランを0PPM、19F NMRではCを-162PPMの基準値とした。
【0112】
本願明細書において、以下の略号を使用する。
Bn:ベンジル
Boc:t-ブトキシカルボニル
All:アリル
EtO:ジエチルエーテル
Fmoc:9-フルオレニルメチルオキシカルボニル
THF:テトラヒドロフラン
TMS:トリメチルシリル
:1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブチル
17:1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-ヘプタデカフルオロオクチル
【0113】
[製造例1]
トリメチル(ノナフルオロブチル)シランとシュウ酸ジベンジルから、2-((t-ブトキシカルボニル)アミノ)-3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキサン酸を合成した。
【0114】
[工程1]
【化13】
オーブンで乾燥した100mL容の二口フラスコに撹拌子を入れ、窒素雰囲気下、シュウ酸ジベンジル(5.41g,20.0mmol)、フッ化セシウム(255mg,1.68mmol)、及びTHF(54mL)を加えて撹拌し、-30℃に冷却してからトリメチル(ノナフルオロブチル)シラン(4.50mL,20.2mmol)を加えて-30℃で24時間撹拌を続けた。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液(30mL)を加えて、酢酸エチル(3×50mL)で抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾別し、濾液を減圧留去して2-(ベンジロキシ)-3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロ-2-((トリメチルシリル)オキシ)ヘキサン酸ベンジルと3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロ-2,2-ジヒドロキシヘキサン酸ベンジルの混合粗体を得た。得られた粗体は精製することなく次工程に用いた。
【0115】
[工程1-2]
【化14】
オーブンで乾燥した100mL容の二口フラスコに撹拌子を入れ、窒素雰囲気下、工程1で得られた粗体全量とフッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)1mol/L THF溶液(10.5mL,10.5mmol)、酢酸(1mL)、及びTHF(50mL)を加えて0℃で撹拌した。その後、室温に昇温して24時間撹拌後に飽和重曹水(30mL)を加えてクエンチし、酢酸エチル(3×50mL)で抽出した。合わせた有機相を水(50mL)及び飽和食塩水(50mL)で洗浄後に硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾別し、濾液を減圧留去して3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロ-2,2-ジヒドロキシヘキサン酸ベンジルの粗体を得た。得られた粗体は精製することなく次工程に用いた。
【0116】
H NMR(400MHz,CDCl) δ7.39(brs,5H),5.37(s,2H).
19F NMR(376MHz,CDCl) δ-80.79(brs,3F),-121.09(brs,2F),-121.24-121.26(m,2F),-126.12-126.21(m,2F).
【0117】
[工程2]
【化15】
オーブンで乾燥した20mL容のフラスコに撹拌子を入れ、窒素雰囲気下、工程2で得られた粗体全量と五酸化リン(粗体の22重量%)を加え、減圧蒸留を行った。2mmHg、77℃で得られた留分を集め、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロ-2-オキソヘキサン酸ベンジルを無色の液体として得た(工程1から工程3まで通して収率73%)。
【0118】
H NMR(400MHz,CDCl) δ7.41(brs,5H),5.40(s,2H).
19F NMR(376MHz,CDCl) δ-80.79(brs,3F),-117.78-117.850(t,2F,JF-F=13Hz),-122.01(brs,2F),-125.58(brs,2F).
【0119】
工程1の温度を0℃に変更した以外は、工程1~工程2と同様にして、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロ-2-オキソヘキサン酸ベンジルを無色の液体として得た。工程1から工程2まで通しての収率は69%であった。
【0120】
[工程3]
【化16】
オーブンで乾燥した30mL容のシュレンクフラスコに撹拌子を入れ、窒素雰囲気下、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロ-2-オキソヘキサン酸ベンジル(1g,2.6mmol)、t-ブチル(トリフェニルホスファネイリデン)カルバメート(2.6mmol)、及びEtO(10mL)を加えた。反応液を室温で1時間撹拌後に濾過し、ろ物をEtO(2×2mL)で洗浄した。合わせた有機相を減圧留去して2-((t-ブトキシカルボニル)イミノ)-3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキサン酸ベンジルの粗体を得た。得られた粗体をシリカゲルクロマトグラフィー(EtO/ヘキサン=1/4)で精製し、2-((t-ブトキシカルボニル)イミノ)-3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキサン酸ベンジルを無色液体として得た(収率87%)。
【0121】
H NMR(400MHz,CDCl) δ7.410-7.352(m,5H),5.350(s,2H),1.504(s,9H).
19F NMR(376MHz,CDCl) δ-80.76-80.78(t,3F,JF-F=9Hz),-112.37(brs,2F),-121.0(brs,2F),-125.36(brs,2F).
【0122】
[工程4]
【化17】
オーブンで乾燥した30mL容のシュレンクフラスコに撹拌子を入れ、窒素雰囲気下、2-((t-ブトキシカルボニル)イミノ)-3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキサン酸ベンジル(0.2g,0.42mmol)をEtO(15mL)に溶解して0℃で撹拌した。水素化ホウ素ナトリウム(0.46mmol)を3回に分けて0℃で加え、その後、室温に昇温して24時間撹拌した。氷水を加えてクエンチし、1mol/Lの塩酸を加えてpHを7未満にした。水相をEtO(2×10mL)で抽出し、合わせた有機相を減圧留去して2-((t-ブトキシカルボニル)アミノ)-3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキサン酸ベンジルの粗体を得た。得られた粗体をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/4)で精製し、2-((t-ブトキシカルボニル)アミノ)-3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキサン酸ベンジルを無色液体として得た(収率61%)。
【0123】
H NMR(400MHz,CDCl) δ7.40-7.33(m,5H),5.41-5.39(d,2H,JH-H=10Hz),5.28-5.20(m,3H),1.45(s,9H).
19F NMR(376MHz,CDCl) δ-80.86-80.89(t,3F,JF-F=9Hz),-115.36-118.55(m,2F),-121.50-123.17(m,2F),-125.00-126.77(m,2F).
【0124】
EtO及び水素化ホウ素ナトリウムの代わりに、表1に記載の溶媒及び還元剤(当量)を使用して、前記工程4と同様の反応を行った。収率を表1に示す。表中、「AK225」は、「アサヒクリン(登録商標)AK-225」(3,3-ジクロロ-1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパンと1,3-ジクロロ-1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパンの混合物、AGC株式会社)である。
【0125】
【表1】
【0126】
[工程5-2]
【化18】
オーブンで乾燥した25mL容の二口フラスコに撹拌子を入れ、2-((t-ブトキシカルボニル)アミノ)-3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキサン酸ベンジル(73.6mg,0.15mmol)、パラジウム/炭素(Pd5%、約55%水湿潤品、20mg)、酢酸エチル(1mL)、及びエタノール(7mL)を加え、常圧の水素雰囲気下、室温で撹拌した。室温で24時間撹拌後にセライト濾過を行い、ろ物をエタノール(3×5mL)で洗浄し、合わせた有機相を減圧留去して2-((t-ブトキシカルボニル)アミノ)-3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキサン酸の粗体を得た。得られた粗体をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/1)で精製し、2-((t-ブトキシカルボニル)アミノ)-3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキサン酸を無色液体として得た(収率86%)。
【0127】
H NMR(400MHz,CDCl) δ7.72(br,1H),5.49-5.47(d,2H,JH-H=10Hz),5.24-5.15(m,1H),1.45(s,9H).
19F NMR(376MHz,CDCl) δ-80.30(brs,3F),-114.64-118.03(m,2F),-120.70-122.40(m,2F),-124.52-126.22(m,2F).
【0128】
[工程5-1]
【化19】
オーブンで乾燥した25mL容の二口フラスコに撹拌子を入れ、Boc-RFAA-OBn(376mg,0.78mmol)、4M HCl、1,4-ジオキサン溶液(3mL)を0℃で加えた。室温で18時間撹拌後に飽和炭酸ナトリウム水溶液を加えてpHを7より大きくなるように調整し、酢酸エチルで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄して硫酸ナトリウムで乾燥した。有機相を濾過し、濾液を減圧留去してH-RFAA-OBnの塩酸塩を白色固体として得た(収率78%)。
【0129】
H NMR(400MHz,DO) δ7.31(brs,2H),6.81‐6.77(m,5H),5.27(m,1H),3.71‐3.67(m、2H).
19F NMR(376MHz,DO) δ-80.38(t,3F),-118.29-121.00(m,2F),-121.00-123.80(m,2F),-126.12-128.12(m,2F).
【0130】
以降において、アミノ酸は、三文字表記で表記することがある。例えば、「Phe」はフェニルアラニン、「Gly」はグリシンである。また、ペプチドは、(N側保護基)-アミノ酸三文字表記-(C側保護基)と表記する。「H-AA-OMe」は、N末端側が未保護であり、C末端側はメチルエステルであることを意味する。C末端側が未保護の場合は、「OMe」にかえて「OH」と表す。
【0131】
[実施例1]
ノナフルオロブチル基を有するジペプチドを合成した。
【化20】
オーブンで乾燥した25mL容の二口フラスコに撹拌子を入れ、2-((t-ブトキシカルボニル)アミノ)-3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキサン酸(33.4mg,0.085mmol)、DIPEA(0.13mmol)、DCM(3mL)、L-フェニルアラニンメチルエステル(0.13mmol)、及びベンゾトリアゾール-1-オール・一水和物(0.085mmol)を室温で加え、0℃に冷却後にBOP(0.085mmol)を加えた。室温で24時間撹拌後に溶媒を減圧留去し、酢酸エチルで希釈し、有機相を飽和クエン酸水溶液、飽和炭酸ナトリウム水溶液、及び飽和食塩水で洗浄して硫酸ナトリウムで乾燥した。有機相を濾過し、濾液を減圧留去してBoc-RFAA-Phe-OMeの粗体を得た。得られた粗体をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/4)で精製し、2種類のBoc-RFAA-Phe-OMeジアステレオマーをそれぞれ無色液体として得た(2種類のジアステレオマーを合わせて収率22%)。
【0132】
ジアステレオマーA
H NMR(400MHz,CDCl) δ7.31-7.25(m,5H),6.41-6.40(d,N-H,JH-H=7Hz),5.48-5.46(d,1H,JH-H=9Hz),4.99-4.91(m,1H),4.91-4.86(m,1H),3.75(s,3H),3.23-3.10(m,2H),1.47(s,9H).
19F NMR(376MHz,CDCl) δ-80.98(t,3F,JF-F=7Hz),-114.56-119.80(m,2F),-121.40-123.22(m,2F),-125.03-127.15(m,2F).
【0133】
ジアステレオマーB
1H NMR(400MHz,CDCl) δ7.30-7.07(m,5H),6.42-6.40(d,N-H,JH-H=9Hz),5.51-5.48(d,1H,JH-H=8Hz),5.00-4.95(m,1H),4.93-4.88(m,1H),3.74(s,3H),3.15-3.13(m,2H),1.44(s,9H).
19F NMR(376MHz,CDCl) δ-80.77(t,3F,JF-F=9Hz),-113.74-119.30(m,2F),-121.22-122.94(m,2F),-124.82-127.05(m,2F).
【0134】
L-フェニルアラニンメチルエステルの代わりに、表2に記載のアミノ酸メチルエステルを使用して、同様の反応を行った。収率を表2に示す。表中、「DCM」はジクロロメタン、「BOP」はベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリスジメチルアミノホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩、「EDC」は1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩を表す。
【0135】
【表2】
【0136】
[実施例2]
実施例1で合成したペプチドのN末端側の保護基を脱保護した。
【化21】
オーブンで乾燥した25mL容の二口フラスコに撹拌子を入れ、Boc-RFAA-Gly-OMe(21.2mg,0.05mmol)、DCM(1.5mL)、及びTFA(0.4mL)を加えた。室温で24時間撹拌後に飽和炭酸ナトリウム水溶液を加えてpHを7より大きくなるように調整し、DCMで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄して、硫酸ナトリウムで乾燥した。有機相を濾過し、濾液を減圧留去してH-RFAA-Gly-OMeの粗体を得た(収率66%)。
【0137】
H NMR(400MHz,CDCl) δ7.08(brs,1H),4.15-4.07(m,2H),3.79(s,3H).
19F NMR(376MHz,CDCl) δ-80.71(t,3F,JF-F=7Hz),-115.13-119.94(m,2F),-119.94-121.93(m,2F),-125.02-126.82(m,2F).
【0138】
[実施例3]
ノナフルオロブチル基を有するトリペプチドを合成した。
【化22】
【0139】
オーブンで乾燥したNMR試験管に、H-RFAA-Gly-OMe(10.9mg,0.03mmol)、DCM(0.5mL)、DIPEA(0.13mmol)、Fmoc-Gly-OH(0.03mmol)、及びベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリスジメチルアミノホスホニウム塩(0.085mmol)を室温で加えた。室温で24時間静置後に溶媒を減圧留去し、酢酸エチルで希釈し、有機相を飽和クエン酸水溶液、飽和炭酸ナトリウム水溶液、及び飽和食塩水で洗浄して硫酸ナトリウムで乾燥した。有機相を濾過し、濾液を減圧留去してFmoc-Gly-RFAA-Gly-OMeの粗体を得た。
【0140】
H NMR(400MHz,CDCl) δ7.78-7.27(m,8H),δ7.30(brs,1H),7.13(brs,1H),5.63-5.61(d,1H,JH-H=7Hz),5.64-5.54(m,1H),4.42-4.41(d,2H,JH-H=7Hz),4.24-4.20(m,1H),4.08-3.98(m,4H),3.74(s,3H).
19F NMR(376MHz,CDCl) δ-80.78(t,3F,JF-F=10Hz),-114.61-118.74(m,2F),-121.22-123.09(m,2F),-124.89-126.90(m,2F).
【0141】
[実施例4]
ノナフルオロブチル基を有するトリペプチド(Boc-Ala-RFAA-Phe-OMe)を合成した。
【化23】
【0142】
25mL容の二口フラスコに撹拌子を入れ、一方にBoc-RFAA-Phe-OMeジアステレオマーA(DR>95,0.11mmol)とDCM(5mL)を加えた。この反応混合物を0℃に冷却した後、TFA(1.25mL)を添加し、室温まで温めた。4時間攪拌した後、炭酸水素ナトリウム水溶液を添加して反応を終了させた。水相をDCMで抽出し、合わせた有機相を減圧留去して、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル:トリエチルアミン=2:1:1%)により精製して、H-RFAA-Phe-OMeを得た(33.9mg、収率70.0%)。
【0143】
H NMR(400MHz,CDCl) δ=1.77(br s,2H),3.10-3.14(m,2H),3.74(s,3H),3.93-3.99(dd,1H),4.90-4.95(dd,1H),6.81-6.83(d,NH),7.27(m,5H)
19F NMR(376MHz,CDCl) δ=-126.2-125.7(m,2F),-121.2-119.7(m,2F),-120.5-114.4(m,2F),-80.7(t,3F)
【0144】
【化24】
【0145】
25mL容の二口フラスコに撹拌子を入れ、一方に、3mLのDCMに、Boc-Ala-OH(1.1等量)と1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt、1.1等量)、DIPEA(1.3等量)、1-[Bis(dimethylamino)methylene]-1H-1,2,3-triazolo〔4,5-b〕pyridinium 3-Oxide Hexafluorophosphate(HATU、1.1等量)、及びジペプチド(H-RFAA-Phe-OMe、dr>95:5,38μmol)を添加し、0℃とした。この混合物を室温まで温めた後、1.5時間攪拌した。その後、HCl(1N)を添加して反応を終了させた。反応液を、HCl(1N)とDCMで分液し、合わせた有機相を減圧留去して、次いで酢酸エチル希釈した。有機相を、HCl(1N)、飽和NaHCO水溶液、及びブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、蒸発させて白色固体を得た。粗混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で精製して、トリペプチドを得た(dr>95:5、18.2mg、収率75.1%)。
【0146】
H NMR(400MHz,Acetone d6) δ=1.30(d,3H),1.38(s,9H),3.04-3.16(m,2H),3.66(s,3H),4.26-4.29(m,1H),4.68-4.77(m,1H),5.53-5.61(m,1H),6.23(d,N-H),7.19-7.29(m,5H),7.82(d,N-H),8.30(d,N-H).
19F NMR(376MHz,Acetone d6) δ=-126.9-126.3(m,2F),-123.1-121.9(m,2F),-120.1-115.0(m,2F),-81.5(t,3F)
【0147】
[実施例5]
ノナフルオロブチル基を有するトリペプチド(H-Ala-RFAA-Phe-OMe)を合成した。
【化25】
【0148】
25mL容の二口フラスコに撹拌子を入れ、一方にBoc-RFAA-Phe-OMeジアステレオマーA(DR>95,29μmol)とDCM(2mL)を加えた。この反応混合物を0℃に冷却した後、TFA(0.4mL)を添加し、室温まで温めた。4時間攪拌した後、炭酸水素ナトリウム水溶液を添加して反応を終了させた。水相をDCMで抽出し、合わせた有機相を減圧留去して、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl:MeOH=10:1)により精製して、H-Ala-RFAA-Phe-OMeを得た(dr>95、13.8mg、収率90.6%)。
【0149】
H NMR(400MHz,Acetone d6) δ=1.16(d,3H),2.81(br s,2H),3.00-3.14(m,2H),3.67(s,3H),3.94-3.99(m,1H),4.68-4.74(m,1H),5.49-5.56(m,1H),7.19-7.27(m,5H),8.16(d,N-H),8.33(d,N-H).
19F NMR(376MHz,Acetone d6) δ=-126.9-125.6(m,2F),-123.1-122.1(m,2F),-120.0-115.3(m,2F),-81.7(t,3F)
【0150】
[実施例6]
実施例5で合成したノナフルオロブチル基を有するトリペプチド(H-Ala-RFAA-Phe-OMe)のN末端に、蛍光物質Alexa Fluor 647を融合させた。
【0151】
1.5mL容の黒色チューブに、乾燥DMSO(15μL)に溶解させたAlexa Fluor 647(250μg)、乾燥DMSO(15μL)に溶解させたH-Ala-RFAA-Phe-OMe(1.5当量)、及びDIPEA(1.5当量)を加えた。混合物を室温で一晩撹拌し続けた。当該混合物を逆相クロマトグラフィー(アセトニトリル/水/TFA=30:70:0.1~95:5:0.1)で精製し、凍結乾燥して蛍光コンジュゲート1を青色固体として得た(蛍光計で計算して収率32.3%)。なお、蛍光は、Nano Drop(登録商標)分光光度計ND-1000を用い、発光波長=650nmで測定した。
【0152】
MALDI-TOF MS
[M]:m/z calcd.for C556317 1364.2964,found 1364.7252
【0153】
[実施例7]
ヘプタデカフルオロオクチル基を有するトリペプチド(H-Ala-RFAA(C8)-Phe-OMe)を合成した。
【化26】
【0154】
ペルフルオロアルキル化反応は、既報(Journal of Fluorine Chemistry,1984, vol.26, p.341-358)に従って実施した。
得られた粗生成物を昇華(72℃、0.5mmHg)により精製した。得られた白色固体を100mL容の三口丸底フラスコに直接移し、EtO(10mL)で溶解し、tert-ブチル(トリフェニルホスファニリデン)カルバメート(5.5mmol)と室温で1時間反応させた。粗生成物を濾過し、濾液を蒸発させた。得られた白色固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1w/ 0.4% NEt)で精製し、α-イミノエステル(311mg、3工程収率:8.2%)を得た。
【0155】
H NMR(400MHz、CDCl) δ=1.50(s,9H),5.36(s,2H),7.36-7.38(m,5H)
19F NMR(376MHz,CDCl) δ=-126.3(m,2F),-122.8(m,2F),-121.8-122.0(m,4F),-121.2(m,2F),-120.2(m,2F),-112.6(m,2F),-81.0(t,3F)
【0156】
【化27】
25mL容の二口丸底フラスコに撹拌子を入れ、α-イミノエステル(311mg、0.47mmol)及びTHF(5mL)を加えた。この反応混合物にナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(0.59mmol)を0℃で加え、次いで室温で24時間攪拌した。反応混合物を直接蒸発させ、水とDCMの間で分配した。合わせた有機相を減圧留去して粗混合物を得た。粗混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1:10)により精製して、白色固体(Boc-RFAA(C8)-OBn)を得た(収率49.6%)。
【0157】
H NMR(400MHz CDCl) δ=1.28(s,9H),5.07(s,2H),5.137(m,1H),7.18(m,5H)
19F NMR(376MHz CDCl) δ=-126.3(m,2F),-122.9(m,2F),-121.5-122.1(m,8F),-115.3-118.8(m,2F),-81.0(t,3F)
【0158】
トリペプチドに対する手順は上記と同じであった。HPLCにより精製した0.23mmolのBoc-RFAA(C8)-OBnから、製造例1の工程5-2と同様にしてBoc-RFAA(C8)-OHを得、次いで実施例1と同様にしてBoc-RFAA(C8)-OHからBoc-RFAA(C8)-Pne-OMeを得、さらに実施例4と同様にしてBoc-RFAA(C8)-Pne-OMeから46mgのトリペプチド(H-Ala-RFAA(C8)-Phe-OMe)を得た(総収率27.8%)。
ESI-MS
[M+H]:m/z calcd.for 726.13,found 726.52
【0159】
[実施例8]
実施例7で合成したヘプタデカフルオロオクチル基を有するトリペプチド(H-Ala-RFAA(C8)-Phe-OMe)のN末端に、蛍光物質Alexa Fluor 647(Thermo Fisher Scientific社製)を融合させた。
【0160】
1.5mL容の黒色チューブに、乾燥DMSO(15μL)に溶解させたAlexa Fluor 647(125μg)、乾燥DMSO(15μL)に溶解させたH-Ala-RFAA(C8)-Phe-OMe(1.5当量)、及びDIPEA(1.5当量)を加えた。混合物を室温で一晩撹拌し続けた。当該混合物を逆相クロマトグラフィー(アセトニトリル/水/TFA=5:95:0.1~10:95:0.1)で精製し、凍結乾燥して蛍光コンジュゲート2を青色固体として得た(蛍光計で計算して収率5.7%、発光波長=650nm)。
MALDI-TOF MS
[M]:m/z calcd.for C557217 1564.2836,found 1564.5701
【0161】
[比較例1]
ブチル基を有するジペプチド(H-Nle-Phe-OMe)を合成した。
【化28】
既報(Chemical and Pharmaceutical Bulletin, 1987, vol.35, p.468)に従って、Boc-Nle-Phe-Omeを合成した(収量556mg、収率40.2%)。
【0162】
【化29】
25mL容の二口フラスコに撹拌子を入れ、一方にBoc-Nle-Phe-OMe(1.42mmol)とDCM(10mL)を加えた。この反応混合物を0℃に冷却した後、TFA(2mL)を添加し、室温まで温めた。4時間攪拌した後、炭酸水素ナトリウム水溶液を添加して反応を終了させた。水相をDCMで抽出し、合わせた有機相を減圧留去して、化学量論量のH-Nle-Phe-OMeを得た。生成物は、それ以上精製せずに使用した。
【0163】
H NMR(400MHz,ACETONE-D6)
Rotamer A
Δ8.09-7.88(m,1H),7.42-7.04(m,5H),4.67(dd,J=11.0,4.6Hz,1H),4.59(t,J=7.5Hz,1H),3.69(s,3H),3.22(dd,J=13.7,4.6Hz,1H),3.00(dd,J=14.0,10.7Hz,1H),2.00-1.80(m,2H),1.48-1.18(m,2H),0.83-0.73(m,3H)
Rotamer B
7.60(t,J=7.8Hz,1H),7.42-7.04(m,5H),4.75(t,J=6.9Hz,1H),4.25(t,J=6.4Hz,1H),3.64(s,3H),3.10(t,J=7.3Hz,2H),2.00-1.80(m,2H),1.48-1.18(m,2H),0.86(t,J=7.3Hz,3H)
【0164】
[比較例2]
ブチル基を有するトリペプチド(H-Ala-Nle-Phe-OMe)を合成した。
【化30】
【0165】
50mL容の二口丸底フラスコに、Fmoc-Ala-OH(1.1当量)、HOAt(1.1当量)、及びDIPEA(1.3当量)を加えた。20mLのDCMに溶解させたHATU(1.1当量)及びジペプチド(H-N1-Phe-OMe、1.42mmol)を0℃で混合物に添加した。当該混合物を室温まで温め、次いで1.5時間撹拌した後、HCl(1N)を加えて反応を停止させた。 当該混合物をHCl(1N)とDCMとの間で分配した。合わせた有機相を減圧留去させ、次いで酢酸エチルで希釈した。有機相をHCl(1N)、飽和NaHCO水溶液、及びブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、蒸発させて白色固体を得た。粗混合物に、25mLの20%ピペリジンDMF溶液を加え、室温で1時間撹拌した。 溶媒を真空乾燥により除去して白色固体を得、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtO:DCM=1:3)により精製して、H-Ala-Nle-Phe-OMeを得た(dr>95、116mg、収率23.0%)。
【0166】
MALDI-TOF MS
[M+H]:m/z calcd.for 364.22,found 364.07
[M+H]:m/z calcd.for 386.21,found 386.06
【0167】
[比較例3]
比較例2で合成したブチル基を有するトリペプチド(H-Ala-Nle-Phe-OMe)のN末端に、蛍光物質Alexa Fluor 647を融合させた。
【0168】
1.5mL容の黒色チューブに、乾燥DMSO(15μL)に溶解させたAlexa Fluor 647(250μg)、乾燥DMSO(15μL)に溶解させたH-Ala-Nle-Phe-OMe(1.5当量)、及びDIPEA(1.5当量)を加えた。混合物を室温で一晩撹拌し続けた。当該混合物を逆相クロマトグラフィー(アセトニトリル/水/TFA=30:70:0.1~95:5:0.1)で精製し、凍結乾燥して蛍光コンジュゲート3を青色固体として得た(蛍光計で計算して収率74.5%、発光波長=650nm)。
MALDI-TOF MS
[M]:m/z calcd.for C557217 1202.3812,found 1202.1449
【0169】
[試験例1]
実施例6で合成したペプチド蛍光コンジュゲート1(Alexa-Ala-RFAA-Phe-OMe)と比較例3で合成したペプチド蛍光コンジュゲート3(Alexa-Ala-Nle-Phe-OMe)を培養細胞に接触させ、細胞内への取り込み効率を調べた。さらに、比較対象として、ブチル基を有さないトリペプチド(H-Ala-Ala-Phe-OMe)のN末端に、蛍光物質Alexa Fluoro 647を融合させたペプチド蛍光コンジュゲート4(Alexa-Ala-Ala-Phe-OMe)も用いた。
【0170】
HeLa細胞は、ペプチド処理の24時間前にカバーガラスチャンバーに播種した(0.5×10細胞/ウェル)。
細胞取り込みアッセイは、培地(10%FBS及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン溶液を含有させたDMEM低グルコース培地)に、最終濃度が3.3μMとなるようにペプチド蛍光コンジュゲート1又は2を添加した0.4%DMSO培地(添加剤なし)で培地交換することによって行った。培地交換後の細胞を37℃で1時間インキュベートし、細胞培養培地及びPBS(リン酸生理食塩水)で洗浄した。
【0171】
細胞をTrypLETM Express(Gibco社製)で処理した後に回収し、次いでフローサイトメトリー(guava easyCyte(商標)8)により分析した。赤色2蛍光(661/19nm)を測定した。結果を図1に示す。縦軸が細胞数(count)、横軸が各細胞の蛍光強度である。図1に示すように、ペプチド蛍光コンジュゲート1(Alexa-Ala-RFAA-Phe-OMe)は、ペプチド蛍光コンジュゲート3よりも、Alexa Fluor 647の蛍光を発する細胞の割合がおよそ2倍以上も多かった。この結果から、フルオロアルキル基を有するペプチドであるAlexa-Ala-RFAA-Phe-OMeは、フルオロアルキル基を有さないペプチドよりも、細胞内への取り込み効率が高く、細胞膜透過性に優れることが示唆された。
【0172】
[試験例2]
実施例8で合成したペプチド蛍光コンジュゲート2(Alexa-Ala-RFAA(C8)-Phe-OMe)の細胞内への取り込み効率を調べた。比較対象として、ペプチド蛍光コンジュゲート1(Alexa-Ala-RFAA-Phe-OMe)、ペプチド蛍光コンジュゲート3(Alexa-Ala-Nle-Phe-OMe)、及びペプチド蛍光コンジュゲート4(Alexa-Ala-Ala-Phe-OMe)も用いた。
【0173】
HeLa細胞は、ペプチド処理の24時間前に12ウェルカバーガラスチャンバーに播種した(1.0×10細胞/ウェル)。
細胞取り込みアッセイは、培地に、ペプチド蛍光コンジュゲート1、2、3、又は4を、最終濃度が1.5μMとなるように添加した以外は、試験例1と同様にして行った。次いで、試験例1と同様にして、細胞を回収してフローサイトメトリーにより分析した。
【0174】
結果を図2に示す。縦軸が細胞数(count)、横軸が各細胞の蛍光強度である。図2に示すように、ペプチド蛍光コンジュゲート2(Alexa-Ala-RFAA(C8)-Phe-OMe)は、ペプチド蛍光コンジュゲート3及び4よりも、Alexa Fluor 647の蛍光を発する細胞の割合がおよそ16倍以上も多かった。また、ペプチド蛍光コンジュゲート2は、ペプチド蛍光コンジュゲート1よりも、Alexa Fluor 647の蛍光を発する細胞の割合がおよそ6倍以上も多かった。この結果から、フルオロアルキル基を有するペプチドであるAlexa-Ala-RFAA-Phe-OMeは、フルオロアルキル基を有さないペプチドよりも、細胞内への取り込み効率が高く、細胞膜透過性に優れることが示唆された。
【0175】
[実施例9]
トリデカフルオロヘキシル基を有するトリペプチド(H-Ala-RFAA-Phe-OMe)を合成した。
【化31】
【0176】
THF(1mL)に溶解させた化合物1(200mg)をLDA(2.2当量)に添加し、アルゴン下で30分間、乾燥THF(1mL)中で-78℃に保った。次いで、RFCHCHI(1.1当量)を混合物に添加して、3時間撹拌した。その後、混合物をゆっくりと-30℃にし、一晩撹拌した後、0℃で当該混合物に水(5mL)を加えて反応を停止させた。次いで、当該混合物をCHCl(200mL×3)で抽出した。生成物をアルミナ上で、カラムによって白色の固体を得た(収率54.1%)。
【0177】
H NMR(400MHz CDCl) δ=1.45(s,9H),2.78-2.66(m,2H),3.23-3.27(m,2H),4.03(t,1H),7.2-7.7(m,10H)
19F NMR(376MHz CDCl) δ=-126.2(m,2F),-123.4(m,2F),-122.9(m,2F),-121.9(m,2F),114.9(m,1F),114.2(m,1F),-80.8(t,3F)
【0178】
HCl(6M、50mL)及び1,4-ジオキサン(200mL)に溶解した化合物2(50.8mmol)の溶液を、80℃で24時間加熱した。当該溶液を濾過し、沈殿物をアセトンで数回洗浄した。得られた白色固体は、さらに精製することなく次の工程で使用するのに十分な純度であった(収率50.2%)。
【0179】
H NMR(400MHz MeOH-d4) δ=2.11(m,2H),2.35(m,1H),2.52(m,1H),3.68(m,1H)
19F NMR(376MHz MeOH-d4) δ=-127.2(m,2F),-124.4(m,2F),-123.8(m,2F),-122.8(m,2F),-115.7(m,2F),-82.3(t,3F)
【0180】
【化32】
【0181】
50mL容の二口丸底フラスコに撹拌子を添加し、化合物3(100mg、0.22mmol)及びDCM(10mL)を加えた。Fmoc-OSn(0.24mmol)及びDIPEA(1.3当量)を室温で加え、次いで反応混合物を室温で20時間撹拌した。反応混合物を直接蒸発させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(MeOH/CHCl=1/9)により白色固体として精製した(64.2%収率)。
【0182】
【化33】
【0183】
25mL容の二口丸底フラスコに、Fmoc-RFAA-OH(90.4mg、0.14mmol)、HOAt(1.2当量)、及びDIPEA(1.3当量)を加えた。当該混合物に、DCM(5mL)に溶解させたHATU(1.2当量)及びH-Phe-OMe(HCl塩、1.2当量)を0℃で添加し、当該混合物を室温まで温め、次いで4時間撹拌した。次いで、HCl(1N)を加えて反応を停止させた後、混合物をHCl(1N)とDCMとの間で分配した。合わせた有機相を蒸発させ、次いで酢酸エチルで希釈した。有機相をHCl(1N)、飽和NaHCO水溶液、及びブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、蒸発させて白色固体を得た。 粗混合物に、20%ピペリジンDMF溶液(25mL)を加え、室温で1時間撹拌した。溶媒を真空乾燥により除去して白色固体を得、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl:MeOH=10:1)により精製してH-RFAA-Phe-OMe(41.4mg、収率64.8%)を得た。
【0184】
H NMR(400MHz Acetone-d6) δ=1.96(m,2H),2.32(m,2H),2.81(br s,NH2),2.99-3.15(m,2H),3.15(s,3H),4.05(t,1H),4.71(m,1H)7.2-7.7(m,5H)
19F NMR(376MHz Acetone-d6) δ=-126.7(m,2F),-123.8(m,2F),-123.4(m,2F),-122.4(m,2F),-114.6(m,2F),-81.4(t,3F)
【0185】
【化34】
【0186】
25mL容の二口丸底フラスコに、Fmoc-RFAA-OH(44.8μmol)、HOAt(1.2当量)、及びDIPEA(1.3当量)を加えた。DCM(5mL)に溶解させたHATU(1.2当量)、及びFmoc-AlaOH(1.2当量)を0℃で混合物に添加した後、混合物を室温まで温め、次いで4時間撹拌した。HCl(1N)を加えて反応を停止させた後、当該混合物をHCl(1N)とDCMとの間で分配した。合わせた有機相を蒸発させ、次いで酢酸エチルで希釈した。有機相をHCl(1N)、飽和NaHCO水溶液、及びブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、蒸発させて白色固体を得た。 粗混合物に5mLの20%ピペリジンDMF溶液を加え、室温で1時間撹拌した。溶媒を減圧留去して白色固体を得て、それをHPLCにより精製した。
ESI-MS
[M+H]:m/z calcd.for 754.16,found 654.52
【0187】
[比較例4]
オクチル基を有するトリペプチド(Boc-nOctyl-Phe-OMe)を合成した。
【化35】
【0188】
Boc-nOctyl-Phe-OMeは、既報(Liebigs Annalen der Chemie,1990, 12p, p. 1175-1183)に記載の方法で製造した。当該ジペプチドのBoc脱保護は、上記と同じ標準的手順で行った(歩留まり100%)。また、トリペプチドの合成は、前述の手順に従って行った。
ESI-MS
[M+H]:m/z calcd.for 420.29,found 420.72
【0189】
[実施例10]
ヘプタデカフルオロオクチル基を有するジペプチド(Boc-RFAA(C8)-Gly-OMe)を合成した。
【化36】
【0190】
シュウ酸ジベンジルの代わりにシュウ酸ジアリル(3.4g)を用いた以外は実施例7と同様にして、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘキサデカフルオロ-2,2-ジヒドロデカン酸アリルの粗生成物を、収率80.9%で得た。得られた生成物は、精製することなく、次工程に用いた。
【0191】
H NMR(400MHz Acetone-d6) δ=6.25-5.71(m,1H),5.65-5.03(m,2H),4.97-4.52(m,2H)
19F NMR(400MHz Acetone-d6) δ=81.72(m,3F),-120.30(s,4F),-122.24(s,6F),-123.26(s,2F),-126.79(d,J=54.5Hz,2F)
【0192】
【化37】
得られた粗生成物を、64℃、2.2mmHgで昇華精製した以外は実施例7と同様にして、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘキサデカフルオロ-2-オキソデカン酸アリルを、収率60.3%で得た。
【0193】
H NMR(400MHz,CDCl) δ=6.08-5.79(m,1H),5.59-5.13(m,2H),4.89-4.80(m,2H)
19F NMR(400MHz,CDCl) δ=-81.03(t,J=10.0Hz,3F),-117.88(t,J=12.9Hz,2F),-121.25(m,4F),-121.96(m4F),-122.85(s,2F),-126.31(d,J=5.7Hz,2F)
【0194】
【化38】
次に、シリカゲルクロマトグラフィーにおいてヘキサン:酢酸エチル=9:1に対して1%のトリエチルアミンを加えたものを溶離液とした以外は実施例7と同様にして、α-イミノエステルを、収率95.1%で得た。
【0195】
H NMR(400MHz,CDCl) δ=6.01-5.82(m,1H),5.49-5.30(m,2H),4.81(d,J=5.9Hz,2H),1.63-1.49(m,9H)
19F NMR(400MHz,CDCl) δ=-79.98~-82.00(m,3F),-112.58(m,2F),-120.10(s,2F),-121.11(s,2F),-121.80(m,4F),-122.71(s,2F),-126.38(m,2F)
【0196】
【化39】
得られたイミノエステル(2.0g,3.2mmol)の乾燥ジエチルエーテル(30mL)溶液に、攪拌しながら、2-ピコリンボラン(1当量)を0℃で加えた。反応混合物を室温で1.5時間攪拌した後、HCl(1N)(20mL)で希釈した。有機相をHCl(1N)で2回洗浄し、減圧濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=9:1)で精製して、α-ブトキシカルボニルアミノエステルを黄色固体として得た(収率54%)。
【0197】
H NMR(400MHz,CDCl) δ6.01-5.79(m,1H),5.51-4.97(m,4H),4.84-4.62(m,2H),1.57-1.35(m,9H)
19F NMR(400MHz,CDCl) δ-80.96(t,J=10.0Hz,3F),-115.81(d,J=280Hz,1F),-118.10(d,J=281Hz,1F),-120.88~-123.39(m,10F),-126.23(m,2F)
【0198】
【化40】
得られたα-ブトキシカルボニルアミノエステル(1.2g、1.9mmol)のTHF(18mL)溶液に、フェニルシラン(2当量)とテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(5mol%)を0℃で加えて、室温で2時間攪拌した。反応混合物をHCl(1N)(10mL)で希釈し、DCMで2回抽出した。有機相を減圧濃縮し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=6:1/1%酢酸)で精製して、2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカフルオロドデカン酸を淡黄色液体として得た(収率74%)。
【0199】
H NMR(400MHz,CDCl) δ=5.03(m,J=8.4Hz,1H),1.38(s,9H)
19F NMR(400MHz,CDCl) δ=-80.87(t,J=10.0Hz,3F),-115.78(d,J=281.1Hz,1F),-118.12(d,J=281.1Hz,1F),-120.16~-123.43(m,10F),-126.19(s,2F)
【0200】
【化41】
【0201】
乾燥させた25mL容の二つ口なすフラスコ中で、2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカフルオロドデカン酸(15.4mg、26.0μmol)、DCM(2mL)、DIPEA(57μmol)、グリシン メチルエステル塩酸塩(29μmol)、及び(ヒドロキシイミノ)シアノ酢酸エチル(oxyma)(CAS RN:3849-21-6)(29μmol)を、混合して攪拌した。反応混合物を0℃に冷却し、(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノモルフォリノカルベニウムヘキサフルオロホスファート(COMU)(CAS RN:1075198-30-9)(29μmol)を加え、室温にして1.5時間攪拌した。その後、反応混合物をHCl(1N)でクエンチし、DCMで3回抽出した。合わせた有機相を減圧濃縮した後、酢酸エチルで希釈し、HCl(1N)、飽和重曹水、及び飽和食塩水で洗浄した。洗浄後の有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した後、減圧濃縮してBoc-RFAA(C8)-Gly-OMeの粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/3)で精製して、Boc-RFAA(C8)-Gly-OMeを得た。(収率92%)
【0202】
H NMR(400MHz,Acetone-d6) δ=8.25(t,J=5.3Hz,1H),6.66(d,J=9.6Hz,1H),5.44-5.19(m,1H),4.07(d,J=5.5Hz,2H),3.68(s,3H),1.42(s,9H)
19F NMR(400MHz,Acetone-d6) δ=-81.53(s,3F),-115.31(d,J=281.1Hz,1F),-119.15~-120.92(m,1F),-120.92~-124.38(10F),-125.54~-127.82(m,2F)
【0203】
[実施例11]
ヘプタデカフルオロオクチル基を有するジペプチド(Boc-RFAA(C8)-Ala-OMe)を合成した。
【化42】
【0204】
グリシン メチルエステル塩酸塩に代えてアラニン メチルエステル塩酸塩を用いた以外は実施例10と同様にして、2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカフルオロドデカン酸(15μmol)からBoc-RFAA(C8)-Ala-OMe(ジアステレオマーの47:53混合物)を得た(収率74%)。
【0205】
H NMR(400MHz,Acetone-d6) δ=8.22-8.27(d,J=7.1Hz,1H),6.82-6.43(m,1H),5.44-5.19(m,1H),4.64-4.40(m,1H),3.68(s,3H),1.42(s,9H),1.38-1.40(d,3H)
19F NMR(400MHz,Acetone-d6) δ=-80.91(t,J=10.0Hz,3F),-113.87~-115.77(m,1F),-119.22~-119.98(m,1F),-120.67~-121.35(m,2F),-121.48(m,6F),-122.03~-122.81(m,2F),-126.00(m,2F)
【0206】
[実施例12]
ヘプタデカフルオロオクチル基を有するジペプチド(Boc-RFAA(C8)-Leu-OMe)を合成した。
【化43】
【0207】
グリシン メチルエステル塩酸塩に代えてロイシン メチルエステル塩酸塩を用い、かつシリカゲルクロマトグラフィーを行わなかった以外は実施例10と同様にして、2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカフルオロドデカン酸(15μmol)からBoc-RFAA(C8)-Leu-OMe(ジアステレオマーの49:51混合物)を得た(収率83%)。
【0208】
H NMR(400MHz,Acetone-d6) δ=8.19(d,J=7.5Hz,1H),6.64(d,J=10.1Hz,1H),5.45-5.13(m,1H),4.68-4.47(m,1H),3.68(s,3H),1.81-1.66(m,1H),1.42(s,9H),0.96-0.88(m,6H)
19F NMR(400MHz,Acetone-d6) δ=-81.56(t,J=10.0Hz,3F),-115.49(m,J=272.51F),-119.40~-120.88(m,1F),-121.33~-123.04(m,10F),-126.63(m,2F)
【0209】
[実施例13]
ヘプタデカフルオロオクチル基を有するジペプチド(Boc-RFAA(C8)-Lys(Boc)-OMe)を合成した。
【化44】
【0210】
グリシン メチルエステル塩酸塩に代えてリジン(Boc)メチルエステル塩酸塩を用いた以外は実施例10と同様にして、Boc-RFAA(C8)-Lys(Boc)-OMeを得た(収率69%)。
【0211】
H NMR(400MHz,CDCl)δ 7.71(d,J=3.7Hz,1H),7.51-7.54(m,1H),6.94(d,J=8.2Hz,1H),5.67(d,J=10.1Hz,1H),5.13(s,1H),4.57-4.62(m,2H),3.75(s,3H),1.45(s,18H),1.10-1.90(m,6H)
19F NMR(400MHz,CDCl)δ -80.63(s,3F),-114.56(d,J=281.1Hz,1F),-119.10(d,J=284.0Hz,1F),-122.61―-120.86(m,10F),-126.02(s,2F)
【0212】
LRMS(ESI-TOF)
[M+Na]:calcd.for C273417NaO 858.20,found 858.03
【0213】
[比較例5]
Ac-L-Ala-L-Ala-NHBnを合成した。
【化45】
【0214】
化合物220(61mg、0.32mmol)及び化合物222(68mg)を3mLのメタノールに溶解させ、当該溶液にDMTMM(4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド)・3.2HO(135mg)を加えた。当該反応混合物を室温で12時間撹拌し、真空で蒸発させた。当該反応混合物にDCMを加え、当該溶液を1M NaCO水溶液、水、1M HCl水溶液、水、及びブラインで洗浄した。有機相をNaSOで乾燥させ、真空で蒸発させて、化合物240(92mg、収率83%)を得た。
【0215】
化合物240(92mg、0.26mmol)をDCM 4mLとTHF 1mLに溶解させた。当該溶液に1.25mLのTFAを0℃で加え、当該混合物を15分間撹拌した。次に、反応混合物を室温まで温め、3時間撹拌した。当該反応混合物に1M NaHCO水溶液を加え、得られた溶液を2時間撹拌した。この混合物をDCMで4回抽出した。有機相をNaSOで乾燥させ、真空で蒸発させて化合物241を得た。
【0216】
3mL DCM中の化合物241(73mg、0.29mmol)に、無水酢酸(33μL)を加えた。当該反応混合物を室温で24時間撹拌し、次いで真空で蒸発させた。残渣を10mLの40% アセトニトリル水溶液に溶解させ、HPLCの逆相カラムを用いて精製し、化合物242(9mg、収率11%)を得た。
【0217】
H NMR(CDOD,400MHz):δ7.33-7.20(m,5H),4.42-4.33(m,3H),4.29(q,J=6.9Hz,1H),1.96(s,3H),1.38(d,J=6.87Hz,3H),1.33(d,J=7.3Hz,3H).
MS(MALDI-TOF MS.m/z)
[M+Na]:calcd.for C1521Na 314.15,found 313.88.
【0218】
[実施例14]
Ac-D,L-Ala(F)-L-Ala-NHBnを合成した。
【化46】
【0219】
D,L-トリフルオロアラニン塩酸塩(化合物243)(52mg、0.28mmol)を3mLのアセトニトリルに溶解した。当該溶液に、DIPEA(57μL)と二炭酸ジ-tert-ブチル(77μL)を0℃で加えた。当該反応混合物を21時間かけて室温まで温めた。当該溶液を真空で蒸発させ、水を残渣に加えた。当該溶液をジエチルエーテルで3回抽出した。水相に1M HCl水溶液を加え、当該溶液をジエチルエーテルで3回抽出した。合わせた有機相をNaSOで乾燥させ、真空中で蒸発させて、化合物244を白色の固体として得た(62mg、収率91%)。
【0220】
化合物244(40mg、0.16mmol)及び化合物222(29mg)を1.5mLのメタノールに溶解させ、当該溶液にDMTMM・3.2HO(62mg)を加えた。反応混合物を室温で11.5時間撹拌し、真空で蒸発させた。当該反応混合物にDCMを加え、得られた溶液を1M NaCO水溶液、水、1M HCl水溶液、水、及びブラインで洗浄した。有機相をNaSOで乾燥させ、真空で蒸発させて、化合物245(45mg、収率68%)を得た。
【0221】
化合物245(45mg、0.11mmol)をDCM 4mLとTHF 1mLに溶解させた。当該溶液に1.25 mLのTFAを0℃で加え、混合物を15分間撹拌した。次に、反応混合物を室温まで温め、3時間撹拌した。当該反応混合物に1M NaHCO水溶液を加え、得られた溶液を2時間撹拌した。この混合物をDCMで4回抽出した。有機相をNaSOで乾燥させ、真空で蒸発させて、化合物246(41mg、定量的収率)を得た。
【0222】
3mL DCM中の化合物246(41mg、0.14mmol)に、無水酢酸(67μL)を加えた。当該反応混合物を室温で24時間撹拌し、次いで真空で蒸発させた。残渣を10mLの46% アセトニトリル水溶液に溶解させ、HPLCの逆相カラムを用いて精製し、化合物247を白色の固体(0.3mg、収率1%)として得た。当該分子は、ジアステレオ混合物として得られ、そのまま透過性アッセイに使用した。
【0223】
H NMR(CDOD,400MHz):δ7.33-7.22(m,5H),5.37-5.29(m,1H),4.45-4.38(m,3H),2.66(s,3H),1.40-1.38(m,3H).
MS(MALDI-TOF MS.m/z)
[M+Na]:calcd.for C1518Na 368.12,found 367.92.
【0224】
[比較例6]
Ac-L-Ala-L-Phe-iBuを合成した。
【化47】
【0225】
化合物201(700mg、2.34mmol)及びイソブチルアミン(181μL)を23mLのメタノールに溶解させ、当該溶液にDMTMM・1.3HO(838mg)を加えた。当該反応混合物を室温で5時間撹拌し、真空で蒸発させた。当該反応混合物にDCMを加え、得られた溶液を1M NaCO水溶液、水、1M HCl水溶液、水、及びブラインで洗浄した。有機相をNaSOで乾燥させ、真空で蒸発させた。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=4:6)で精製し、化合物248(523mg、収率65%)を得た。
【0226】
回収フラスコに化合物248(523mg、1.48mmol)、パラジウム炭素10%(55mg)及び7.4mL メタノールを加えた。当該フラスコにHを導入し、当該混合物を室温で15時間撹拌した。当該反応混合物をセライトで濾過した。溶媒を減圧下で除去して、化合物249(319mg、収率98%)を得た。
【0227】
化合物205(45mg、0.2mmol)及び化合物249(53mg)を2mLのメタノールに溶解させ、当該溶液を室温で撹拌した。当該溶液にDMTMM・1.3HO(74mg)を加えた。当該反応混合物を室温で23時間撹拌し、真空で蒸発させた。当該反応混合物にDCMを加え、得られた溶液を1M NaCO水溶液、水、1M HCl水溶液、水、及びブラインで洗浄した。有機相をNaSOで乾燥させ、真空で蒸発させた。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(DCM/メタノール=19:1)で精製し、化合物250(9.1mg、収率11%)を得た。
【0228】
回収フラスコに、化合物250(9.1mg、21μmol)、10% パラジウム炭素(2.8mg)、2mLのメタノールを加えた。当該フラスコにHを導入し、混合物を室温で22時間撹拌した。当該反応混合物をセライトで濾過した。溶媒を減圧下で除去して、化合物251(7.4mg、定量的収率)を得た。
【0229】
1mL DCM及び0.2mL NMP(N-メチルピロリドン)中の化合物251(4mg、14μmol)に、無水酢酸(23μL)を加えた。当該反応混合物を室温で1.5時間撹拌し、次いで真空で蒸発させた。残渣を3.5mLの14% アセトニトリル水溶液に溶解させ、HPLCの逆相カラムを用いて精製し、化合物252(2.0mg、収率43%)を得た。
【0230】
H NMR(CDCl,400MHz):δ7.32-7.19(m,10H),6.62(d,J=7.7Hz,1H),5.90-5.86(m,2H),4.57(q,J=7.7Hz,1H),4.39(dq,J=6.9,7.1Hz,1H),3.14(dd,J=6.4,13.9Hz,1H),3.06-2.98(m,3H),1.94(s,3H),1.70-1.62(m,1H),1.33(d,J=7.1Hz,3H),0.79(t,J=6.3Hz,6H).
MS(MALDI-TOF MS.m/z)
[M+Na]:calcd.for C1827Na 356.20,found 356.23.
【0231】
[実施例15]
Ac-D,L-Ala(F)-L-Phe-iBuを合成した。
【化48】
【0232】
化合物244(41mg、0.17mmol)及び化合物249(45mg)を1mLのメタノールと0.7mLのDCMに溶解させ、当該溶液にDMTMM・1.3HO(59mg)を加えた。当該反応混合物を室温で一晩撹拌し、真空で蒸発させた。当該反応混合物にDCMを加え、得られた溶液を1M NaHCO水溶液、飽和NHCl水溶液、及びブラインで洗浄した。有機相をNaSOで乾燥させ、真空で蒸発させた。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(DCM/メタノール=19:1)で精製し、化合物253(47mg、収率63%)を得た。
【0233】
酢酸エチル3mL中の化合物253(47mg、0.11mmol)に、酢酸エチル中の4M HCl(3mL)を加え、次いで当該溶液を室温で20分間撹拌した。当該溶液を真空で蒸発させて、化合物254(45mg、定量的収率)を得た。
【0234】
2mL DCM中の化合物254(30mg、79μmol)に、無水酢酸(45μL)を加えた。当該反応混合物を室温で3時間撹拌し、次いで真空で蒸発させた。残渣をアセトニトリル/HO/MeOH(=2.4mL:3.6mL:2mL)に溶解させ、HPLCの逆相カラムを用いて精製し、化合物255(9.4mg、収率30%)を得た。当該分子は、ジアステレオ混合物として得られ、そのまま透過性アッセイに使用した。
【0235】
H NMR(CDCl,400MHz):δ7.34-7.21(m,5H),6.82-6.76(m,1H),6.41(d,J=6.4Hz,1H),5.3(s,1H),5.17(q,J=7.3Hz,1H),4.59-4.53(m,1H),3.21-3.12(m,1H),3.01-2.92(m,3H),1.42(dd,J=6.9,12.4Hz,1H),0.76(dd,J=6.4,10.5Hz,6H).
MS(MALDI-TOF MS.m/z)
[M+Na]:calcd.for C1824Na 410.17,found 410.19.
【0236】
[比較例7]
Ac-L-Val-L-Ala-NMeを合成した。
【化49】
【0237】
N-カルボベンゾキシ-L-バリン(化合物256)(60mg、0.24mmol)及び化合物213(33mg)を2.2mLのメタノールに溶解させ、当該溶液にDMTMM・1.3HO(91mg)を加えた。当該反応混合物を室温で一晩撹拌し、真空で蒸発させた。当該反応混合物にDCMを加え、得られた溶液を1M NaCO水溶液、水、1M HCl水溶液、水、及びブラインで洗浄した。有機相をNaSOで乾燥させ、真空で蒸発させて化合物257(75mg、収率89%)を得た。
【0238】
回収フラスコに、化合物257(773mg、3.10mmol)、パラジウム炭素10%(7.5mg)、及び2.1mLのメタノールを加えた。当該フラスコにHを導入し、当該混合物を室温で18時間撹拌した。当該反応混合物をセライトで濾過した。溶媒を減圧下で除去して、化合物258(35mg、収率76%)を得た。
【0239】
0.8mL DCM中の化合物258(35mg、0.16mmol)に、無水酢酸(18μL)を加えた。当該反応混合物を室温で20時間撹拌し、次いで真空で蒸発させた。残渣を4mLの10% アセトニトリル水溶液に溶解させ、HPLCの逆相カラムを用いて精製し、化合物259を白色固体(27mg、収率65%)として得た。
【0240】
H NMR(CDCl,400MHz):δ7.10(d,J=7.3Hz,1H),6.41(d,J=8.7Hz,1H),4.87(quin,J=6.9,1H),4.37(dd,J=6.1,2.6Hz,1H),3.09(s,3H),2.99(s,3H),2.10-2.02(m,4H),1.34(d,J=6.9Hz,3H),0.94(d,J=6.0Hz,3H),0.92(d,J=5.5Hz,3H).
MS(MALDI-TOF MS.m/z)
[M+Na]:calcd.for C1223Na 280.16,found 280.05.
【0241】
[実施例16]
Ac-D,L-Val(F)-L-Ala-NMeを合成した。
【化50】
【0242】
D,L-ヘキサフルオロバリン(化合物260)(50mg、0.22mmol)を2.5mLのアセトニトリルに溶解させた。この溶液に、ジ-tert-ブチルジカーボネート(49μL)を0℃で加えた。当該反応混合物を11.5時間かけて室温まで温めた。当該溶液にDIPEA(38μL)を加え、当該反応混合物を室温で6.5時間攪拌した。当該溶液を真空で蒸発させ、水を残渣に加えた。当該溶液をジエチルエーテルで抽出した。 水相に1M HCl水溶液を加え、得られた溶液をジエチルエーテルで3回抽出した。合わせた有機相をNaSOで乾燥させ、真空で蒸発させて、化合物261(63mg、収率87%)を得た。
【0243】
化合物261(50mg、0.15mmol)及び化合物213(21mg)を0.7mLのメタノールに溶解させ、当該溶液にDMTMM・1.3HO(56mg)を加えた。当該反応混合物を室温で17時間撹拌し、真空で蒸発させた。当該反応混合物にDCMを加え、得られた溶液を1M NaCO水溶液、水、1M HCl水溶液、水、及びブラインで洗浄した。有機相をNaSOで乾燥させ、真空で蒸発させて、化合物262(50mg、収率77%)を得た。
【0244】
化合物262(50mg、0.12mmol)に、酢酸エチル中の4M HCl(2.5mL)を加えた後、当該溶液を室温で2時間撹拌した。当該反応混合物に酢酸エチルを加え、得られた溶液を1 M HCl水溶液で2回抽出した。水相に1 M NaOH水溶液をpHが11になるまで加えた。当該溶液をDCMで3回抽出し、有機相をNaSOで乾燥した。溶媒を減圧下で除去して、化合物263(38mg、定量的収率)を得た。
【0245】
DCM(1.2mL)中の化合物263(38mg、0.12mmol)に、無水酢酸(13μL)を加えた。当該反応混合物を室温で13時間撹拌し、次いで真空で蒸発させた。残渣を8mLの30% アセトニトリル水溶液に溶解させ、HPLCの逆相カラムを用いて精製し、化合物264を白色固体(27mg、収率63%)として得た。当該分子は、ジアステレオ混合物として得られ、そのまま透過性アッセイに使用した。
【0246】
H NMR(CDCl,400MHz):δ7.57(d,J=6.4Hz,0.5H),7.39(d,J=6.9Hz,0.5H),6.22(d,J=9.6Hz,0.5H),6.08(d,J=9.6Hz,0.5H),5.41(t,J=9.2Hz,1H),4.86-4.75(m,1H),4.35-4.22(m,1H),3.07(d,J=5.0Hz,3H),2.98(d,J=3.2Hz,3H),2.14(d,J=2.14Hz,3H),1.32(t,J=7.3Hz,3H).
【0247】
MS(MALDI-TOF MS.m/z)
[M+Na]:calcd.for C1217Na 388.11,found 388.18.
【0248】
[比較例8]
Ac-L-Val-L-Phe-iBuを合成した。
【化51】
【0249】
化合物256(52mg、0.2mmol)及び化合物249(53mg)を2mLのメタノールに溶解し、溶液を室温で撹拌した。 当該溶液にDMTMM・1.3HO(72mg)を加えた。当該反応混合物を室温で23時間撹拌し、真空で蒸発させた。当該反応混合物にDCMを加え、得られた溶液を1M NaCO水溶液、水、1M HCl水溶液、水、及びブラインで洗浄した。有機相をNaSOで乾燥させ、真空で蒸発させた。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(DCM/メタノール=19:1)で精製し、化合物265(60mg、収率67%)を得た。
【0250】
回収フラスコに、化合物265(60mg、0.13mmol)、パラジウム炭素10%(6mg)、及び1.3mLのメタノールを加えた。当該フラスコにHを導入し、混合物を室温で22時間撹拌した。当該反応混合物をセライトで濾過した。溶媒を減圧下で除去して、化合物266(39mg、収率92%)を得た。
【0251】
化合物266(15mg、47μmol)を1mL DCM、0.4mL NMP及び0.2mL THFに溶解させた。当該溶液に無水酢酸(23μL)を加えた。当該反応混合物を室温で1.5時間撹拌し、次いで真空で蒸発させた。残渣をアセトニトリル/HO/MeOH(=1.8mL:2.9mL:1.5mL)に溶解させ、HPLCの逆相カラムを用いて精製し、化合物267(7.2mg、収率43%)を得た。
【0252】
H NMR(CDCl,400MHz):δ7.30-7.18(m,5H),6.51(d,J=7.3Hz,1H),5.92(d,J=7.8Hz,1H),5.75(s,1H),4.58(dt,J=6.0,8.2Hz,1H),4.20(dd,J=6.0,8.2Hz,1H),3.11(dd,J=6.0,13.7Hz,1H),3.02-2.92(m,3H),2.10-2.03(m,1H),1.97(s,3H),1.66-1.59(m,1H),0.88(dd,J=6.9,11.5Hz,6H),0.76(t,J=7.3Hz,6H).
【0253】
MS(MALDI-TOF MS.m/z)
[M+Na]:calcd.for C2031Na 384.23,found 384.13.
【0254】
[実施例17]
Ac-D,L-Val(F)-L-Phe-iBuを合成した。
【化52】
【0255】
化合物261(70mg、0.22mmol)及び化合物249(57mg)を1.2mLのメタノールに溶解し、当該溶液にDMTMM・1.3HO(83mg)を加えた。当該反応混合物を室温で5時間撹拌し、真空で蒸発させた。当該反応混合物にDCMを加え、得られた溶液を飽和NaHCO水溶液、1M HCl水溶液、及びブラインで洗浄した。有機相をNaSOで乾燥させ、真空で蒸発させた。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(DCM/メタノール=19:1)で精製し、化合物268(79mg、収率69%)を得た。
【0256】
3mLの酢酸エチル中の化合物268に、酢酸エチル中の4M HCl(3mL)を加えた。当該溶液を室温で1.5時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去して、化合物269(53mg、収率76%)を得た。
【0257】
2mL DCM中の化合物269(40mg、86μmol)に、DIPEA(16μL)及び無水酢酸(45μL)を加えた。当該反応混合物を室温で8.5時間撹拌し、次いで真空で蒸発させた。残渣をアセトニトリル/HO/MeOH(=3mL:3mL:8mL)に溶解させ、HPLCの逆相カラムを用いて精製し、化合物270を白色固体として得た(5.7mg、収率13%)。当該分子は、ジアステレオ混合物として得られ、そのまま透過性アッセイに使用した。
【0258】
H NMR(CDOD,400MHz):δ7.29-7.17(m,5H),5.29(dq,J=7.8,23.8Hz,1H),4.63-4.58(m,1H),3.15-3.05(m,1H),3.01-2.86(m,3H),2.01(d,J=4.6hz,3H),1.72-1.62(m,1H),0.82-0.78(m,6H).
【0259】
MS(MALDI-TOF MS.m/z)
[M+Na]:calcd.for C2025Na 492.17,found 491.97.
【0260】
[試験例3]
実施例15~17及び比較例6~8で合成したペプチドについて、PAMPAアッセイを行った。また、実施例14、15、17及び比較例5、6、8で合成したペプチドについて、MDCK-IIアッセイを行った。MDCK-IIアッセイでは、ポジティブコントロール(「PC」)としてPropranolol(CAS No:318-98-9)を、ネガティブコントロール(「NC」)としてNorfloxacin(CAS No:70458-96-7)をそれぞれ用いた。
【0261】
<PAMPA(パラレル人工膜透過性アッセイ)アッセイ>
ペプチドの透過性は、PAMPAによって測定した。PAMPAアッセイでは、300μLの5% DMSO含有PBSをアクセプタープレート(MultiScreen 96ウェルトランスポートレシーバープレート、Merck社製)の各ウェルに加えた。次いで、5% DMSO/PBSに溶解した150μLのペプチド溶液(20μM)をドナープレート(MultiScreen-IPフィルタープレート、0.45μm、Merck社製)の各ウェルに加えた。1% レシチン(大豆由来)のドデカン液を使用前に30分間超音波処理し、5μLの当該溶液をドナープレートの各ウェルの膜支持体(PVDF)に塗布した。ドナープレートをアクセプタープレート上に置き、当該プレートをインキュベーター内で、25℃で18時間放置した。ペプチドの濃度は、LC/MSを用いて決定した 。実験は3回繰り返して実施した。透過率値(P)は、次の式を使用して計算された。
【0262】
【数1】
A:フィルター面積(0.3cm
VD:ドナーウェルの体積(0.15cm
VA:アクセプターウェルの体積(0.3cm
t:インキュベーション時間(s)(18時間= 64800s)
CD(t):時間tでのドナーウェルの化合物濃度
CA(t):時間tにおけるアクセプターウェルの化合物濃度
【0263】
<MDCK-IIアッセイ>
細胞培養インサート(Falcon社製)にMDCK-II細胞を5.04×10細胞/mLで播種してから5日後に、細胞単層アッセイ(MDCK-IIアッセイ)を実施した。ペプチドのストック溶液は、DMSO溶液中に2mMで調製し、20mM HEPES、pH7.5を含むHBSSによって希釈して、ドナー溶液として、0.1%DMSO/HBSS(+)を溶媒とした2μM ペプチド溶液を調製した。アクセプター溶液は、20mM HEPES、pH 7.5を含むHBSS(+)を溶媒とした0.1% DMSO溶液とした。見かけの透過性(Papp)は、37℃、5% COで2時間、ペプチド溶液で、頂端から側底へのインキュベーションにおいて決定された。ペプチド濃度は、LC/MSで分析した。実験は3回繰り返して実施した。透過率値(Papp)は、次の式を用いて算出された。
【0264】
【数2】
A:フィルター面積(0.3cm
VB:側底ウェル容積(0.75cm
t:インキュベーション時間(s)(2時間=7200s)
C0:頂端チャンバーの初期濃度(2μM)
CB(t):時間tでの側底の化合物濃度
【0265】
PAMPAアッセイの結果を表3に、MDCK-IIアッセイの結果を表4に、それぞれ示す。この結果、比較例5~8のペプチドよりも、それらの側鎖のフッ素原子を導入した実施例14~17の含フッ素ペプチドのほうが、細胞膜透過性が向上していた。
【0266】
【表3】
【0267】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0268】
本発明は、フルオロアルキル基を側鎖に備えるアミノ酸残基を有するペプチド及びその製造方法を提供する。本発明に係るペプチドは、細胞膜透過性に優れているため、例えば、薬効成分を標的細胞へ導入するためのキャリア等、生理活性物質として、医薬分野での利用が期待される。
図1
図2