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特許7549764温度分布評価方法、温度分布評価装置、及び、均熱範囲の評価方法
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  • 特許-温度分布評価方法、温度分布評価装置、及び、均熱範囲の評価方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】温度分布評価方法、温度分布評価装置、及び、均熱範囲の評価方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
H01L21/66 T
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2021516245
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2020017644
(87)【国際公開番号】W WO2020218484
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2019086715
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503092180
【氏名又は名称】学校法人関西学院
(73)【特許権者】
【識別番号】000241485
【氏名又は名称】豊田通商株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】金子 忠昭
(72)【発明者】
【氏名】堂島 大地
(72)【発明者】
【氏名】芦田 晃嗣
(72)【発明者】
【氏名】井原 知也
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-203850(JP,A)
【文献】特開2002-261140(JP,A)
【文献】特開2008-066643(JP,A)
【文献】特開2009-111295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G01K 3/14
G01K 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱装置が備える加熱領域の温度分布を評価する温度分布評価方法であって、
半導体基板とこの半導体基板と原料を輸送し合う送受体とを前記加熱領域で加熱し、前記半導体基板の基板厚変化量に基づいて前記加熱領域の温度分布を評価し、
前記半導体基板と前記送受体は、互いに分離されて構成されている、温度分布評価方法。
【請求項2】
前記半導体基板と前記送受体とを相対させて配置し、前記半導体基板と前記送受体との間に温度勾配が形成されるように加熱する、請求項1に記載の温度分布評価方法。
【請求項3】
前記基板厚変化量は、前記加熱領域内に形成される温度勾配を駆動力として変化した量である、請求項1又は請求項2に記載の温度分布評価方法。
【請求項4】
前記加熱領域内に複数の測定点を設定する測定点設定工程と、
前記測定点に対応する位置に前記半導体基板及び前記送受体を配置する基板配置工程と、
前記測定点に対応する前記半導体基板の前記基板厚変化量を測定する変化量測定工程と、
複数の前記基板厚変化量を比較する変化量比較工程と、を含む、請求項1~3の何れかに記載の温度分布評価方法。
【請求項5】
前記測定点設定工程は、前記測定点を前記加熱領域の水平方向に複数設定する、請求項4に記載の温度分布評価方法。
【請求項6】
前記測定点設定工程は、前記測定点を前記加熱領域の高さ方向に複数設定する、請求項4又は請求項5に記載の温度分布評価方法。
【請求項7】
前記基板配置工程は、前記測定点に沿って複数の前記半導体基板を配置する、請求項4~6の何れかに記載の温度分布評価方法。
【請求項8】
前記基板厚変化量は、エッチング量又は成長量である、請求項1~7の何れかに記載の温度分布評価方法。
【請求項9】
前記半導体基板及び前記送受体は、SiC、GaN及びAlNの何れかの材料から選択される、請求項1~8の何れかに記載の温度分布評価方法。
【請求項10】
加熱装置の加熱領域に配置される温度分布評価ユニットを備え、
前記温度分布評価ユニットは、半導体基板と、
前記半導体基板と相対させて加熱することにより原料を輸送しあう送受体と、を有し、
前記半導体基板と前記送受体は、互いに分離されて構成されている、温度分布評価装置。
【請求項11】
前記温度分布評価ユニットは、前記半導体基板と前記送受体とを相対させて設置する設置具を有する、請求項10に記載の温度分布評価装置。
【請求項12】
前記設置具は、前記半導体基板が当接される第1当接面と、前記送受体が当接される第2当接面と、が設けられている、請求項11に記載の温度分布評価装置。
【請求項13】
前記設置具は、前記半導体基板及び/又は前記送受体を位置決めする位置決め手段を有する、請求項11又は請求項12に記載の温度分布評価装置。
【請求項14】
前記位置決め手段は、前記半導体基板及び/又は前記送受体の縁に沿って設けられる枠部である、請求項13に記載の温度分布評価装置。
【請求項15】
前記温度分布評価ユニットを複数備える、請求項10~14の何れかに記載の温度分布評価装置。
【請求項16】
前記温度分布評価ユニットを収容する収容容器をさらに備え、
前記収容容器は、加熱時に前記半導体基板を構成する元素を含む雰囲気を容器内に形成する、請求項10~15の何れかに記載の温度分布評価装置。
【請求項17】
前記半導体基板を収容する収容容器をさら備え、
前記収容容器の一部が前記送受体で構成されている、請求項10~16の何れかに記載の温度分布評価装置。
【請求項18】
前記半導体基板及び送受体は、SiC、GaN及びAlNの何れかの材料から選択される、請求項10~17の何れかに記載の温度分布評価装置。
【請求項19】
加熱装置の加熱領域において、半導体基板とこの半導体基板と原料を輸送し合う送受体とを前記加熱領域の複数の測定点で加熱し、前記半導体基板の基板厚変化量に基づいて前記加熱領域の均熱範囲を評価し、
前記半導体基板と前記送受体は、互いに分離されて構成されている、均熱範囲の評価方法。
【請求項20】
前記半導体基板と前記送受体とを相対させて配置し、前記半導体基板と前記送受体との間に温度勾配が形成されるように加熱する、請求項19に記載の均熱範囲の評価方法。
【請求項21】
前記加熱領域内に複数の測定点を設定する測定点設定工程と、
前記測定点に対応する位置に前記半導体基板及び前記送受体を配置する基板配置工程と、
前記加熱領域で前記半導体基板及び前記送受体を加熱することで前記半導体基板の基板厚さを変化させる加熱工程と、
前記測定点に対応する前記半導体基板の基板厚変化量を測定する変化量測定工程と、
複数の前記測定点での基板厚変化量を比較する変化量比較工程と、を含む、請求項19又は請求項20に記載の均熱範囲の評価方法。
【請求項22】
前記半導体基板及び前記送受体の加熱温度は、1600℃以上である、請求項19~21の何れかに記載の均熱範囲の評価方法。
【請求項23】
前記半導体基板及び前記送受体の加熱温度は、1800℃以上である、請求項19~22の何れかに記載の均熱範囲の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度分布評価方法、温度分布評価装置、及び、均熱範囲の評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造の歩留まり改善は、半導体プロセスにおいて加熱環境中の温度管理により実現される。温度管理は、例として、結晶成長プロセス、不純物導入プロセス、アニーリングプロセス、エッチングプロセス等において重要となる。
【0003】
例えば、SiC(炭化ケイ素)材料は、Si(ケイ素)材料等と比べて高い絶縁破壊電界強度と熱伝導率とを有する好適なパワーデバイス材料として有望視されている。しかしながら、SiC材料はその熱的安定性に起因して、Si材料等と比べて高い温度領域での加熱が要される。SiC材料に限らず、Si材料と比べて高融点を有する半導体材料は、従来のSi半導体プロセスと比べて温度管理が困難となる場合がある。
【0004】
特許文献1では、SiC基板に凹部を形成し、この凹部に熱電対を配置して耐熱接着部材を有する充填部材を用いて固定することで、1600℃~1800℃の温度を測定可能な加熱炉温度評価治具を提供することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-8821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の加熱炉温度評価冶具を用いる場合には、熱電対素線を加熱領域外から配線する必要があった。そのため、配線箇所から温度が逃げてしまうため、加熱領域の温度分布を評価することが難しいという問題があった。また、熱電対の材料限界に起因して、1600~2200℃等の高い温度領域での温度分布の評価が困難であった。
【0007】
本発明は、新規な温度分布評価方法、温度分布評価装置、及び、均熱範囲の評価方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明は、加熱装置が備える加熱領域の温度分布を評価する温度分布評価方法であって、半導体基板とこの半導体基板と原料を輸送し合う送受体とを前記加熱領域で加熱し、前記半導体基板の基板厚変化量に基づいて前記加熱領域の温度分布を評価する、温度分布評価方法である。
【0009】
このように、半導体基板の基板厚変化量に基づいて、加熱領域の温度分布を評価することにより、配線することなく熱電対よりも高い温度領域で温度分布評価を行うことができる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記半導体基板と前記送受体とを相対させて配置し、前記半導体基板と前記送受体との間に温度勾配が形成されるように加熱する。
また、本発明の好ましい形態では、前記基板厚変化量は、前記加熱領域内に形成される温度勾配を駆動力として変化した量である。
このように、温度勾配を基板厚変化量の駆動力とすることにより、加熱領域の温度分布を精度良く評価することができる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記加熱領域内に複数の測定点を設定する測定点設定工程と、前記測定点に対応する位置に前記半導体基板及び前記送受体を配置する基板配置工程と、前記測定点に対応する前記半導体基板の前記基板厚変化量を測定する変化量測定工程と、複数の前記基板厚変化量を比較する変化量比較工程と、を含む。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記測定点設定工程は、前記測定点を前記加熱領域の水平方向に複数設定する。
このような方向に測定点を設定することで、加熱領域の水平方向の温度分布を測定することができる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記測定点設定工程は、前記測定点を前記加熱領域の高さ方向に複数設定する。
このような方向に測定点を設定することで、加熱領域の高さ方向の温度分布を測定することができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記基板配置工程は、前記測定点に沿って複数の前記半導体基板を配置する。
このように、測定点に沿って複数の半導体基板を配置することにより、温度分布測定に必要な箇所に半導体基板を配置することができる。すなわち、加熱領域全域をカバーするような面積の半導体基板を用いる必要がない。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記基板厚変化量は、エッチング量又は成長量である。
このように、エッチング量及び成長量に基づいて、温度分布評価を行うことができる。そのため、測定が容易な変化量を適宜選択して、温度分布を評価することができる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記半導体基板及び前記送受体は、SiC、GaN及びAlNの何れかの材料から選択される。
このような材料の半導体基板及び送受体を選択することで、熱電対では困難な温度領域の温度分布を測定することができる。また、測定したい温度領域に応じて、最適な半導体材料を選択することで、より精度よく温度分布を評価することができる。
【0017】
本発明は、加熱装置が有する加熱領域に配置される温度分布評価ユニットを備え、前記温度分布評価ユニットは、半導体基板と、前記半導体基板と相対させて加熱することにより原料を輸送しあう送受体と、を有する、温度分布評価装置にも関する。
このような温度分布評価装置を用いることにより、配線することなく熱電対よりも高い温度領域で温度分布評価を行うことができる。
【0018】
本発明の好ましい形態では、前記温度分布評価ユニットは、前記半導体基板と前記送受体とを相対させて設置する設置具を有する。
このように、半導体基板と送受体とを相対させて設置する設置具を有することにより、半導体基板と送受体との距離等を精度良く調整することができる。
【0019】
本発明の好ましい形態では、前記温度分布評価ユニットを複数備える。
このように、温度分布評価ユニットを複数備えることにより、加熱領域全域をカバーするような面積の半導体基板を用いる必要がない。
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記設置具は、前記半導体基板が当接される第1当接面と、前記送受体が当接される第2当接面と、が設けられている。
このように、半導体基板及び送受体が当接される当接面を有していることにより、半導体基板と送受体との間に準閉鎖空間を形成することができ、より精度よく温度分布評価を行うことができる。
【0021】
本発明の好ましい形態では、前記半導体基板及び/又は前記送受体を位置決めする位置決め手段を有する。
このように、半導体基板の位置決め手段を設けることにより、意図しない半導体基板や送受体のズレを抑制することができる。
【0022】
本発明の好ましい形態では、前記位置決め手段は、前記半導体基板及び/又は前記送受体の縁に沿って設けられる枠部である。
このように、枠部を設けることにより、容易に位置決めを行うことができる。
【0023】
本発明の好ましい形態では、前記温度分布評価ユニットを収容する収容容器をさらに備え、前記収容容器は、加熱時に前記半導体基板を構成する元素を含む雰囲気を容器内に形成する。
このように、温度分布評価ユニットを収容する収容容器を備えることにより、準閉鎖空間から原料が排気されることを抑制することができる。
【0024】
本発明の好ましい形態では、前記半導体基板を収容する収容容器をさら備え、前記収容容器の一部が前記送受体で構成されている。
このように、収容容器の一部を送受体で構成することにより、準閉鎖空間を形成しつつ、半導体基板と原子の受け渡しを行うことができる。
【0025】
本発明の好ましい形態では、前記半導体基板及び前記送受体は、SiC、GaN及びAlNの何れかの材料から選択される。
【0026】
また、本発明は、均熱範囲の評価方法にも関する。すなわち、本発明の一態様の均熱範囲の評価方法は、加熱装置の加熱領域において、半導体基板とこの半導体基板と原料を輸送し合う送受体とを前記加熱領域の複数の測定点で加熱し、前記半導体基板の基板厚変化量に基づいて前記加熱領域の均熱範囲を評価する。
【0027】
本発明の好ましい形態では、前記半導体基板と前記送受体とを相対させて配置し、前記半導体基板と前記送受体との間に温度勾配が形成されるように加熱する。
【0028】
本発明の好ましい形態では、前記加熱領域内に複数の測定点を設定する測定点設定工程と、
前記測定点に対応する位置に前記半導体基板及び前記送受体を配置する基板配置工程と、
前記加熱領域で前記半導体基板及び前記送受体を加熱することで前記半導体基板の基板厚さを変化させる加熱工程と、
前記測定点に対応する前記半導体基板の基板厚変化量を測定する変化量測定工程と、
複数の前記測定点での基板厚変化量を比較する変化量比較工程と、を含む。
【0029】
本発明の好ましい形態では、前記半導体基板及び前記送受体の加熱温度は、1600℃以上である。
【0030】
本発明の好ましい形態では、前記半導体基板及び前記送受体の加熱温度は、1800℃以上である。
【発明の効果】
【0031】
開示した技術によれば、新規な温度分布評価方法、温度分布評価装置、及び、均熱範囲の評価方法を提供することができる。
【0032】
他の課題、特徴及び利点は、図面及び特許請求の範囲とともに取り上げられる際に、以下に記載される発明を実施するための形態を読むことにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明に係る温度分布評価方法の温度分布評価工程を説明する概略図である。
図2】本発明に係る温度分布評価方法の測定点設定工程を説明する概略図である。
図3】本発明に係る温度分布評価方法の基板配置工程から変化量比較工程までを説明する概略図である。
図4】実施形態1に係る温度分布測定装置の説明図である。
図5】実施形態1に係る温度分布測定装置の説明図である。
図6】実施形態1に係る温度分布測定装置の説明図である。
図7】実施形態2に係る温度分布測定装置の説明図である。
図8】参考例における基板厚変化速度における輸送元及び輸送先の距離依存性を示すグラフ図等である。
図9】実施例における基板厚変化速度の位置依存性を示すグラフ図等である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を図面に示した好ましい実施形態について、図を用いて詳細に説明する。
本発明の技術的範囲は、添付図面に示した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、適宜変更が可能である。
【0035】
《温度分布評価方法》
本発明は、加熱装置40が備える加熱領域40Aの温度分布を評価する温度分布評価方法であって、半導体基板10と、この半導体基板10と原料を輸送し合う送受体20と、を加熱領域40Aで加熱し、半導体基板10の基板厚変化量Aに基づいて加熱領域40Aの温度分布を評価する温度分布評価工程S1を有する。
【0036】
具体的には、温度分布評価工程S1は、図1に示すように、加熱領域40A内に複数の測定点Pを設定する測定点設定工程S10と、測定点Pに対応する位置に半導体基板10及び送受体20を配置する基板配置工程S20と、加熱領域40Aで半導体基板10及び送受体20を加熱することで基板厚さTを変化させる加熱工程S30と、測定点Pに対応する半導体基板10の基板厚変化量Aを測定する変化量測定工程S40と、複数の測定点Pでの基板厚変化量Aを比較する変化量比較工程S50と、を含む。
以下、温度分布評価工程S1の詳細について、図2及び図3を参照して詳細に説明する。
【0037】
〈測定点設定工程S10〉
測定点設定工程S10は、加熱領域40A内に複数の測定点Pを設定する工程である。
まずは、本発明の温度分布の測定対象である加熱装置40について説明する。
【0038】
図2は、本発明に係る温度分布評価方法の測定対象である加熱装置40の一例である。なお、熱処理対象を加熱する目的の加熱領域40Aを有する装置であれば、本発明の測定対象となり得る。
【0039】
加熱装置40は、熱処理対象を加熱する加熱領域40Aが形成される加熱室41と、熱処理対象を加熱領域40A内に設置可能なステージ42と、加熱領域40Aを形成する加熱ヒータ43と、加熱室41内の排気を行う真空形成バルブ44と、加熱室41内に不活性ガスを導入する不活性ガス注入用バルブ45と、を有している。
【0040】
この加熱装置40は、熱処理対象を1000℃~2300℃の温度領域で加熱することができるよう構成されている。また、好ましくは1600℃以上、さらに好ましくは1800℃以上で、さらに好ましくは2000℃以上の温度領域で、熱処理対象を加熱可能に構成されている。
【0041】
熱処理時の加熱室41内(加熱領域40A)には、温度勾配が形成されている。この温度勾配は、例えば、ステージ42と加熱室41の接触部から微小な熱が逃げることにより形成される。この場合、加熱室41の上方向から下方向に向かって温度が下がるよう温度勾配を設けて熱処理対象を加熱することができる。
【0042】
また、加熱ヒータ43により温度勾配を形成する構成を採用してもよい、例えば、加熱ヒータ43は、上側に多くのヒータが配置されるよう構成してもよい。また、加熱ヒータ43は、上側に向かうにつれて幅が大きくなるように構成してもよい。あるいは、加熱ヒータ43は、上側に向かうにつれて供給される電力を大きくすることが可能なよう構成してもよい。
さらに、下方向から上方向に向かって温度が下がるよう温度勾配を設けてもよい。
【0043】
測定点Pは、加熱領域40A内の任意の位置に設定することができる。
図2(a)は、測定点Pを加熱領域40Aの水平方向に複数設定した場合の側面図を示している。図2(b)は、測定点Pを加熱領域40Aの水平方向に複数設定した場合の平面図を示している。
また、測定点Pを加熱領域40Aの高さ方向に複数点設定することも当然に可能である。
【0044】
〈基板配置工程S20〉
基板配置工程S20は、測定点設定工程S10で設定した複数の測定点Pに沿って、半導体基板10及び送受体20を配置する工程である。
図3は、図2の測定点P1及び測定点P2に沿って、半導体基板10及び送受体20を配置した様子を示している。具体的には、半導体基板10及び送受体20は、複数の測定点Pが配列した方向に沿って配列するよう配置されており、複数の測定点Pと、半導体基板10の基板厚が変化する表面とが略平行となるよう配置されていればよい。そのため、半導体基板10の表面上に測定点Pがあってもよいし、半導体基板10の表面から一定距離離れた箇所に測定点Pがあってもよい。
【0045】
半導体基板10は、昇華法等で作製したインゴットから円盤状にスライスすることで形成された半導体ウェハや、単結晶を薄板状に加工した単結晶基板を用いることができる。なお、単結晶の結晶多形としては、何れのポリタイプのものも採用することができる。
また、半導体基板10の材料としては、SiC基板や、GaN基板及びAlN基板を例示することができる。
【0046】
送受体20は、加熱時に半導体基板10と原料を輸送し合う材料で構成されており、好ましくは半導体基板10と同じ材料で構成されている。例えば、半導体基板10が単結晶SiCで構成されている場合には、送受体20は単結晶SiC又は多結晶SiCで構成されている。すなわち、送受体20として半導体基板10を採用してもよい。
【0047】
図3においては、加熱装置40が形成する温度勾配に対して、低温側に半導体基板10を、高温側に送受体20を配置して、半導体基板10を成長させる形態を示したが、反対に配置してもよい。すなわち、加熱装置40が形成する温度勾配に対して、高温側に半導体基板10を、低温側に送受体20を配置して、半導体基板10をエッチングする形態を採用してもよい。
【0048】
また、半導体基板10と送受体20は、準閉鎖空間を形成する収容容器30内に配置されていることが好ましい。なお、本明細書における「準閉鎖空間」とは、容器内の真空引きは可能であるが、容器内に発生した蒸気の少なくとも一部を閉じ込め可能な空間のことをいう。
このような準閉鎖空間で原料(原子)の受け取り又は受け渡しを行うことにより、原料が排気されることを抑制して、より正確に基板厚変化量Aを測定することができる。すなわち、収容容器30は、加熱時に半導体基板10を構成する元素を含む雰囲気を容器内に形成することが好ましい。
【0049】
収容容器30は、半導体基板10の材料の融点と同等若しくはそれ以上の融点を有する、高融点材料で構成されることが好ましい。具体的には、汎用耐熱部材であるC、高融点金属であるW,Re,Os,Ta,Mo、炭化物であるTa,HfC,TaC,NbC,ZrC,TaC,TiC,WC,MoC、窒化物であるHfN,TaN,BN,TaN,ZrN,TiN、ホウ化物であるHfB,TaB,ZrB,NB,TiB、若しくは、半導体基板10と同様の材料であるSiC、GaN、AlN等を例示することができる。
【0050】
収容容器30が半導体基板10と同様の材料で構成されている場合には、加熱時に容器内が半導体基板10を構成する元素の雰囲気を形成することができる。また、収容容器30内に、半導体基板10と同様の元素の蒸気を供給する蒸気源を配置してもよい。
【0051】
また、収容容器30は、加熱装置40の構成によって、用いるか否かを選択することができる。すなわち、加熱装置40の加熱領域40Aが準閉鎖空間を形成可能な構成である場合には、収容容器30を用いずに、半導体基板10及び送受体20を配置すればよい。一方で、加熱装置40の加熱領域40Aが開放系である場合には、収容容器30を用いることが好ましい。
【0052】
〈加熱工程S30〉
加熱工程S30は、図3に示すように、基板配置工程S20で配置した半導体基板10及び送受体20の間に、温度勾配が形成されるように加熱する工程である。このように、半導体基板10と送受体20との間に温度勾配を設けて加熱することで、温度勾配を駆動力として原子の輸送を行い、半導体基板10のエッチング若しくは成長を行う。
【0053】
この時、測定点Pによって温度が異なる場合には、各測定点Pの温度を反映するように、半導体基板10が成長若しくはエッチングする。すなわち、加熱領域40A内の高温部分であれば、半導体基板10及び送受体20のエッチング量E及び成長量Gが大きくなり、加熱領域40Aの低温部分では、エッチング量E及び成長量Gが小さくなる。
【0054】
図3においては、高温部分である測定点P1のエッチング量E1及び成長量G1が大きく、低温部分である測定点P2のエッチング量E2及び成長量G2が小さくなっている。
【0055】
〈変化量測定工程S40〉
変化量測定工程S40は、加熱工程S30で変化した半導体基板10の基板厚変化量Aを測定する工程である。この基板厚変化量Aは、加熱工程S30前の基板厚と加熱工程S30後の基板厚から求めることができる。なお、この基板厚変化量Aは、エッチング量E及び成長量Gを含む。
【0056】
測定手段としては、電子顕微鏡、レーザー顕微鏡及びプローブ顕微鏡等を含む測定手法を、特に制限なく採用することができる。例えば、加熱工程S30後の半導体基板10の測定点Pで破断し、この破断面を電子顕微鏡で観察することにより、測定点Pにおける成長量Gを測定することができる。
また、あらかじめ半導体基板10上に、電子顕微鏡像においてコントラストが異なる成長層を形成しておき、加熱工程S30後に観察される成長層の量に基づいて、エッチング量E及び成長量Gを測定することができる。
【0057】
〈変化量比較工程S50〉
変化量比較工程S50は、変化量測定工程S40で測定された、各測定点Pでの基板厚変化量Aを測定点Pごとに比較する工程である。例えば、図3における、測定点P1と測定点P2における基板厚変化量A(成長量G)を比較した場合、測定点P1の成長量G1は、測定点P2の成長量G2よりも大きい。また、送受体20に半導体基板10を用いて基板厚変化量A(エッチング量E)を比較した場合、測定点P1のエッチング量E1は、測定点P2のエッチング量E2よりも小さい。
【0058】
以上より、加熱領域40Aにおける測定点P1と測定点P2とでは、温度が異なっていることがわかる。また、測定点P2は、測定点P1よりも温度が低くなっていることがわかる。
一方、測定点Pによって、基板厚変化量A(エッチング量E及び/又は成長量G)が同程度であれば、それらの測定点Pにおいては同様の加熱環境であることがわかる。
【0059】
すなわち、本発明に係る温度分布測定方法によれば、加熱装置40の加熱領域40Aに対し、測定点Pにおける基板厚変化量Aを測定することで、1600℃以上若しくは1800℃以上の高温環境下における加熱領域40Aの均熱範囲を把握することができる。これにより、半導体製造プロセスおける温度管理に寄与し、半導体デバイス製造の歩留まり改善に貢献することができる。
【0060】
《温度分布評価装置》
次に、上記温度分布評価を行う温度評価装置の形態について、実施形態1及び実施形態2を参照して詳細に説明する。
【0061】
〈実施形態1〉
以下、本発明の実施形態1に係る温度分布評価装置について詳細に説明する。なお、この実施形態において、先の温度分布評価方法に示した構成と基本的に同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明を簡略化する。
【0062】
実施形態1に係る温度分布評価装置は、加熱装置40の加熱領域40Aに配置される温度分布評価ユニットUを備える。この温度分布評価ユニットUは、図4に示すように、半導体基板10と、この半導体基板10と相対させて加熱することにより原料を輸送しあう送受体20と、半導体基板10と送受体20とを相対させて設置する設置具50と、を有する。
また、加熱装置40の加熱領域40Aが準閉鎖空間でない場合には、温度分布評価ユニットUを収容する収容容器30をさらに備える。
【0063】
収容容器30は、互いに嵌合可能な上容器31と、下容器32と、を備える嵌合容器である。上容器31と下容器32の嵌合部には、収容容器30内の排気(真空引き)が可能なように微小な間隙33が形成されている。これにより、収容容器30内に準閉鎖空間を形成可能に構成されている。
【0064】
また、収容容器30は、加熱時にSi蒸気を含む雰囲気を形成可能な材料環境を形成可能に構成されている。例えば、高融点材料であるTaC製の上容器31および下容器32を採用し、この容器の内側にタンタルシリサイド層を形成した構成を採用する。このように構成することで、加熱時にタンタルシリサイド層からSi蒸気が発生し、収容容器30内をSi蒸気圧空間とすることができる。また、加熱時にSi蒸気とC蒸気を供給する多結晶SiC製の収容容器30を採用してもよい。
【0065】
本実施形態においては、半導体基板10及び送受体20に単結晶SiC基板を採用して詳細に説明するが、測定したい温度領域に応じて、AlN基板やGaN基板を採用してもよい。
【0066】
半導体基板10及び送受体20としては、昇華法等で作製したインゴットから円盤状にスライスしたSiCウェハや、SiC単結晶を薄板状に加工したSiC基板を例示することができる。なお、SiC単結晶の結晶多形としては、何れのポリタイプのものも採用することができる。
また、単結晶基板又は多結晶基板を例示することができる。また、当該単結晶基板はエピタキシャル成長層をその表面に有してよい。また、当該エピタキシャル成長層は、単結晶基板の材料と異なる材料であってよい。
【0067】
設置具50は、半導体基板10と送受体20の間に間隙H51を形成する支持部51と、半導体基板10が当接される第1当接面52と、送受体20が当接される第2当接面53と、半導体基板10及び送受体20の縁に沿って設けられる枠部54(位置決め手段)と、を有している。
【0068】
支持部51が形成する間隙H51は、好ましくは、好ましくは100mm以下、より好ましくは50mm以下、より好ましくは20mm以下、より好ましくは10mm以下、さらに好ましくは、7mm以下、さらに好ましくは5mm以下、さらに好ましくは3.5mm以下、さらに好ましくは3mm以下、さらに好ましくは2.7mm以下である。設置具隙間H201は、好ましくは0.7mm以上、より好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.2mm以上、さらに好ましくは1.5mm、さらに好ましくは1.7mm以上である。この間隙H51は、基板間距離であり、後述する原料輸送に係る輸送元及び輸送先の間の距離である。
【0069】
第1当接面52及び第2当接面53は、半導体基板10及び送受体20の外縁部と当接可能なよう形成されており、間隙H51に準閉鎖空間が形成される大きさに設定されている。そのため、この第1当接面52及び第2当接面53は、内側に貫通孔が設けられた構成となっている。
【0070】
枠部54は、半導体基板10及び/又は送受体20の縁(外形)に沿って設けられており、半導体基板10や送受体20が、第1当接面及び第2当接面からズレてしまうことを抑制する位置決め手段である。図4においては、設置具50の全周部に枠部54を設けた例を示したが、一部に凸部を設けるなどして、位置決め手段を形成してもよい。また、設置具50の片面に位置決め手段を形成する形態を採用してもよい。
【0071】
また、枠部54の高さ54Hは、好ましくは、半導体基板10や送受体20の厚み以下であることが好ましい。このように、高さ54Hを半導体基板10や送受体20の厚み以下とすることにより、設置具50下に配置される半導体基板10又は送受体20と密接させることができる。
なお、設置具50の長さは4.0mmを、幅は8.0mmを例示できる。また、設置具50における貫通孔の幅は、例として、2.0mmである。
【0072】
設置具50の材料は、好ましくは、半導体基板10及び送受体20と同様の構成元素を有する。
【0073】
次に、実施形態1に係る温度分布測定装置を用いて温度分布を測定する工程について、図5および図6を参照して詳細に説明する。
【0074】
実施形態1における温度分布評価方法は、加熱領域40Aに複数の測定点Pを設定する測定点設定工程S10(図示せず)と、2つの半導体基板10と半導体基板10を相対させて設置する設置具50とからなる温度分布評価ユニットUを測定点Pに対応する位置に配置する基板配置工程S20と、基板配置工程S20に次いで温度分布評価ユニットUを加熱する加熱工程S30と、加熱工程S30に次いで半導体基板10の基板厚変化量A(エッチング量E及び/又は成長量G)を測定する変化量測定工程S40と、複数の測定点Pにおける基板厚変化量Aを比較する変化量比較工程S50と、を含む。
【0075】
実施形態1に係る測定点設定工程S10は、図6に示すように複数の測定点Pを加熱領域40Aの水平方向D1に設定している。また、この測定点Pは、加熱領域40Aにおける垂直方向D2に配列するよう設定してもよいし、水平方向D1及び/又は垂直方向D2に配列するよう設定してもよい。
【0076】
実施形態1に係る加熱工程S30は、一方の半導体基板10から他方の半導体基板10へ原料を輸送する原料輸送工程を含む、と把握することができる。
図5に示すように、実施形態1において温度分布評価ユニットUが加熱される際、半導体基板10から原料輸送空間Yへ昇華ガスが輸送される。なお、本明細書中における昇華ガスと、原料と、は同義である。
【0077】
昇華ガスの発生及び輸送は、以下に示す1)~5)の持続によって進行する、と把握することができる。
【0078】
1) SiC(s)→Si(v)+C(s)
2) 2C(s)+Si(v)→SiC(v)
3) C(s)+2Si(v)→SiC(v)
4) Si(v)+SiC(v)→2SiC(s)
5) SiC(v)→Si(v)+SiC(s)
【0079】
1)の説明:一方の半導体基板10(SiC(s))の加熱により、Si原子(Si(v))が優先的に脱離する(Si原子昇華工程)。
2)及び3)の説明:Si原子(Si(v))が脱離することで半導体基板10表面に残存したC(C(s))は、原料輸送空間Y内のSi蒸気(Si(v))と反応することで、SiC又はSiC等となって原料輸送空間Y内に昇華する(C原子昇華工程)。
4)及び5)の説明:昇華したSiC又はSiC等が、温度勾配によって他方の半導体基板10表面のテラスに到達・拡散し、ステップに到達することで半導体基板10の表面の多形を引き継いで成長層が成長・形成される(ステップフロー成長)。
【0080】
加熱工程は、半導体基板10からSi原子を熱昇華させるSi原子昇華工程と、半導体基板10に残存したC原子を原料輸送空間Y内のSi原子と結合させることで昇華させるC原子昇華工程と、を含む。
【0081】
加熱工程は、原料の輸送元としての半導体基板表面を、Si原子昇華工程及びC原子昇華工程に基づきエッチングするエッチング工程を含む。
また、原料輸送工程は、原料の輸送先としての半導体基板表面において、上記ステップフロー成長に基づくエピタキシャル成長層形成を行うエピタキシャル成長層形成工程を含む。
【0082】
加熱工程は、原料輸送空間Y中を拡散したSiC又はSiC等が輸送先において過飽和となり凝結する、と把握することができる。実施形態1における成長層の形成は物理気相輸送(Physical Vapor Transport)に基づく、と把握することができる。
【0083】
実施形態1における原料輸送の駆動力は、例として、温度分布評価ユニットU内で形成された温度勾配に起因する半導体基板10間の温度差である、と把握することができる。
【0084】
相対する2つの半導体基板表面の結晶構造に起因する化学ポテンシャル差も、原料輸送の駆動力である、と把握することができる。例えば、相対する単結晶基板表面及び多結晶基板表面を含む温度分布評価ユニットUにおいては、基板表面の結晶構造に起因する蒸気圧差が原料輸送の駆動力となり得る、と把握することができる。
【0085】
変化量測定工程S40は、半導体基板10の基板厚変化量A(エッチング量E及び/又は成長量G)を測定する。このとき、基板厚変化量Aは、断面観察や表面観察による凹凸形状の取得等により、測定される。同一の半導体基板10の表面における異なる点のそれぞれと対応してよい。特に、本実施形態においては、半導体基板10と設置具50とが当接している箇所の基板厚変化が抑制されるため、レーザー顕微鏡等を用いて容易に基板厚変化量Aを測定することができる。
【0086】
実施形態1における変化量比較工程S50は、変化量測定工程S40により得られた基板厚変化量Aに基づき、加熱領域40Aにおける温度分布を評価する。
実施形態1における評価工程は、例として、基板厚変化量Aと、半導体基板10の表面と対応する分圧差、面密度、脱離係数と、昇華ガスの分子量及び気体定数と、に基づき、加熱領域40Aにおける温度分布を評価する。当該分圧差は、半導体基板10の表面のそれぞれと対応する蒸気圧と、温度差と、に基づき決定される。
【0087】
本実施形態に係る温度分布評価装置によれば、設置具50を用いて半導体基板10と送受体20とを相対させることにより、容易にエッチング量E及び成長量Gを測定することができる。すなわち、半導体基板10(若しくは送受体20)と設置具50とが当接される第1当接面52(若しくは第2当接面53)においては、エッチングや成長が抑制される。そのため、加熱工程S30後の表面には、成長量Gやエッチング量Eに対応する段差が形成されている。この段差の高さを図ることにより、容易に基板厚変化量Aを得ることができる。
【0088】
また、本実施形態に係る温度分布評価装置によれば、加熱領域40A内に複数の温度分布評価ユニットUを配置する事により、少ない半導体基板10の面積で、加熱領域40Aに設定された測定点Pの基板厚変化量Aを得ることができる。
【0089】
〈実施形態2〉
以下、本発明の実施形態2に係る温度分布評価装置について詳細に説明する。なお、この実施形態において、先の温度分布評価方法及び実施形態1に示した構成と基本的に同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明を簡略化する。
【0090】
実施形態2に係る温度分布評価装置は、半導体基板10と、この半導体基板10を収容する収容容器30と、を備える。この収容容器30は、容器の少なくとも一部が送受体20で構成されている。
【0091】
半導体基板10は、加熱領域40Aに設定された複数の測定点Pを跨ぐ面積に設定されている。例えば、2インチ以上、4インチ以上、6インチ以上、8インチ以上のウェハを例示することができる。
【0092】
収容容器30は、例えば、多結晶SiCで構成されている。このように収容容器30自体を、半導体基板10と原料を輸送し合う送受体20で構成することができる。
【0093】
また、実施形態1と同様に設置具50を用いて、半導体基板10同士を対峙させる構成を採用する場合には、収容容器30の材料は上述した高融点材料を採用することができる。
また、図示はしていないが、収容容器30の外側にさらに容器を配置してもよい。
【0094】
実施形態2に係る温度分布評価装置によれば、複数の測定点Pを跨ぐ面積の半導体基板10を採用することにより、加熱領域40Aの温度分布をより広範囲にわたって評価することができる。特に、加熱領域40Aにおける均熱範囲の閾値を把握することができるため、半導体製造プロセスおける温度管理に寄与し、半導体デバイス製造の歩留まり改善に貢献することができる。
【0095】
《参考例》
図8に示すように、基板厚変化速度R1は輸送元及び輸送先の距離依存性を有する。
図8における原料輸送は、輸送元及び輸送先のそれぞれが半導体基板10及び収容容器30のそれぞれとなる。収容容器30の材料は、SiC多結晶である。このとき、半導体基板10の一端にスペーサーを挿入することで傾斜を付与し、輸送元及び輸送先の距離依存性を把握している。輸送元及び輸送先の距離が1.7~2.7mmの範囲であるとき、基板厚変化速度R1は増加する、と把握することができる。
【0096】
《実施例》
以下の方法で温度分布評価(実施例)を試みた。なお、以下に実施例の条件を説明する。
【0097】
〈測定点設定工程S10〉
測定点設定工程S10では、直径15cmの加熱領域40Aに対し、測定点P1~測定点P7を設定した。具体的には、測定点P1は加熱領域40Aの略中心から-7.5cm、測定点P2は加熱領域40Aの略中心から-5.0cm、測定点P4は加熱領域40Aの略中心から-2.5cm、測定点P4は加熱領域40Aの略中心から0.0cm、測定点P5は加熱領域40Aの略中心から2.5cm、測定点P6は加熱領域40Aの略中心から5.0cm、測定点P7は加熱領域40Aの略中心から7.5cm、の位置に設定されている。
なお、この測定点P1~測定点P7は、一直線に配列されている。
【0098】
〈基板配置工程S20〉
基板配置工程S20では、以下の半導体基板10を、設置具50により相対させた温度分布評価ユニットUを測定点P1~測定点P7に対応する位置に配置した。なお、温度分布評価ユニットUは収容容器30に収容した。
【0099】
[半導体基板10]
基板材料:4H-SiC単結晶
基板サイズ:12mm(横幅)、4mm(縦幅)、0.3mm(厚み)
オフ方向及びオフ角:<11-20>方向4°オフ
【0100】
[設置具50]
部材材料:SiC多結晶
部材サイズ:0.3mm(設置具隙間)、0.2mm(設置具枠幅)、8mm×3mm(設置具枠長)
【0101】
[収容容器30]
容器材料:TaC
タンタルシリサイド層:
容器サイズ:160mm(直径)、60mm(高さ)
【0102】
〈加熱工程S30〉
上記基板配置工程S20の条件で配置した半導体基板10を以下の加熱条件で加熱した。
[加熱条件]
加熱温度:1800℃
温度勾配:1℃/mm
加熱時間:1h
【0103】
〈変化量測定工程S40〉
図9に、測定点P1~測定点P7における基板厚変化量Aを測定し、基板厚変化速度R1に変換した説明図を示す。この基板厚変化量Aは、レーザー顕微鏡により測定した。なお、高温側に配置された半導体基板10のエッチング量Eと、低温側に配置された半導体基板10の成長量Gとは、同程度の値であった。
【0104】
〈変化量比較工程S50〉
図9に示すように、加熱後の温度評価器1において測定された基板厚変化速度R1は、加熱領域40Aの略中央部からの距離に依存する。また、図9からわかるように、加熱領域40Aにおいて、測定点P3~測定点P5の範囲は均熱領域であると評価でき得る。また、測定点P2~測定点P6の範囲においても、半導体製造プロセスに悪影響を与えない温度領域であると評価出来得る。
【0105】
なお、本実施例における基板厚変化速度R1の位置依存性は、例えば、収容容器30を支持する支柱と、収容容器30との接触点を介した熱流の発生に起因する、加熱領域40Aの略端部における温度低下である、と把握することができる。
【0106】
本発明によれば、収容容器内の準閉鎖空間を保持しながら、加熱領域における温度分布を好適に評価することができる。これにより、赤外線等を透過しない材料で密閉された領域における温度分布評価を実現することができる。
【0107】
また、本発明によれば、基板表面間の分圧差を駆動力とする原料輸送を半導体基板間距離が一様な空間で行う。これにより、エッチング速度及びエピタキシャル成長層の成長速度の面内ばらつきを抑え、基板厚変化量に基づく温度分布評価を好適に行うことができる。
【符号の説明】
【0108】
10 半導体基板
20 送受体
30 収容容器
40 加熱装置
40A 加熱領域
50 設置具
D1 水平方向
D2 垂直方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9