(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】研磨装置および研磨方法
(51)【国際特許分類】
B24B 49/12 20060101AFI20240911BHJP
B24B 37/013 20120101ALI20240911BHJP
【FI】
B24B49/12
B24B37/013
(21)【出願番号】P 2020189518
(22)【出願日】2020-11-13
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】松尾 尚典
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 恵友
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-240846(JP,A)
【文献】特開2002-289563(JP,A)
【文献】特開2011-211093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 49/12
B24B 37/013
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨パッドを支持する研磨テーブルと、
パターンが形成されたワークピースを前記研磨パッドに対して押し付けて該ワークピースの表面を研磨する研磨ヘッドと、
前記研磨テーブル内に配置され、参照パターンが形成された格子と、
前記研磨テーブル内に配置され、前記ワークピースの前記パターンおよび前記参照パターンを含む画像を生成する撮像装置と、
前記ワークピースの前記パターンと前記参照パターンとの重なりに起因して前記画像に現れるモアレ模様に基づいて前記ワークピースの研磨終点を決定する画像解析システムを備えている、研磨装置。
【請求項2】
前記画像解析システムは、前記画像上の前記モアレ模様の鮮明度に基づいて、前記ワークピースの研磨終点を決定するように構成されている、請求項1に記載の研磨装置。
【請求項3】
前記画像解析システムは、前記モアレ模様の鮮明度が変化しなくなった時点である前記ワークピースの研磨終点を決定するように構成されている、請求項2に記載の研磨装置。
【請求項4】
前記画像解析システムは、前記モアレ模様の鮮明度を示す指標数値を算定し、前記指標数値の変化率を算定し、前記変化率が第1のしきい値よりも大きくなった時点を検出し、その後前記変化率が第2のしきい値よりも小さくなった時点である研磨終点を決定するように構成されている、請求項3に記載の研磨装置。
【請求項5】
前記指標数値は、変調伝達関数で表される数値である、請求項4に記載の研磨装置。
【請求項6】
参照パターンが形成された格子と、研磨テーブルとを研磨パッドとともに回転させ、
パターンが形成されたワークピースを前記研磨パッドに対して押し付けて該ワークピースの表面を研磨し、
前記研磨テーブル内に配置された撮像装置により、互いに重なり合う前記ワークピースの前記パターンと前記参照パターンの画像を生成し、
前記画像に現れるモアレ模様に基づいて前記ワークピースの研磨終点を決定する、研磨方法。
【請求項7】
前記画像に現れるモアレ模様に基づいて前記ワークピースの研磨終点を決定する工程は、前記画像上の前記モアレ模様の鮮明度に基づいて、前記ワークピースの研磨終点を決定する工程である、請求項6に記載の研磨方法。
【請求項8】
前記画像上の前記モアレ模様の鮮明度に基づいて、前記ワークピースの研磨終点を決定する工程は、前記モアレ模様の鮮明度が変化しなくなった時点である前記ワークピースの研磨終点を決定する工程である、請求項7に記載の研磨方法。
【請求項9】
前記モアレ模様の鮮明度が変化しなくなった時点である前記ワークピースの研磨終点を決定する工程は、前記モアレ模様の鮮明度を示す指標数値を算定し、前記指標数値の変化率を算定し、前記変化率が第1のしきい値よりも大きくなった時点を検出し、その後前記変化率が第2のしきい値よりも小さくなった時点である研磨終点を決定する工程である、請求項8に記載の研磨方法。
【請求項10】
前記指標数値は、変調伝達関数で表される数値である、請求項9に記載の研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターンが形成されたウェーハなどのワークピースを研磨パッド上で研磨する研磨装置および研磨方法に関し、特に、ワークピースの研磨終点を決定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーハの研磨は、一般に、化学機械研磨装置(CMP装置)を用いて行われる。このCMP装置は、研磨テーブル上に貼り付けられた研磨パッドにスラリーを供給しながら、ウェーハを研磨パッドに摺接させることによりウェーハの表面を研磨するように構成される。CMP装置で研磨されるウェーハは、一般に、配線構造を構成するパターンを有している。ウェーハの研磨中は、パターンが形成されているウェーハ面が研磨パッドに押し付けられ、ウェーハ面を構成する膜(絶縁膜、金属膜など)が研磨される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウェーハの研磨中にウェーハ面を監視する技術としては、光学式の研磨監視システムが挙げられる。このシステムは、ウェーハ面に光を照射し、ウェーハ面からの反射光のスペクトルに基づいて測定箇所での膜厚を推定したり、ウェーハの研磨終点を検出する。しかしながら、ウェーハには複雑且つ微細なパターンが形成されているため、パターンによる光の干渉などが発生し、膜厚の正確な推定を困難としている。
【0005】
また、ダマシン法などの配線形成工程においては、ウェーハ面を構成する余剰膜の除去が完了し、パターンが明確に顕れた時点が研磨終点とされる。したがって、パターンの顕現を直接的に観察し、研磨終点を検出することが望ましい。パターンの顕現を直接的に観察するには、一般に超高倍率の観察が可能な顕微システムが必要であるが、このようなシステムは複雑で精密な光学系から成るため、そのような顕微システムを動的な環境での観察が必要なCMP装置に組み込むのは現実的でない。
【0006】
そこで、本発明は、高倍率で精緻な顕微システムを用いることなく、ウェーハなどのワークピースのパターンの顕現を直接的に監視し、正確な研磨終点を検出することができる研磨装置および研磨方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、研磨パッドを支持する研磨テーブルと、パターンが形成されたワークピースを前記研磨パッドに対して押し付けて該ワークピースの表面を研磨する研磨ヘッドと、前記研磨テーブル内に配置され、参照パターンが形成された格子と、前記研磨テーブル内に配置され、前記ワークピースの前記パターンおよび前記参照パターンを含む画像を生成する撮像装置と、前記ワークピースの前記パターンと前記参照パターンとの重なりに起因して前記画像に現れるモアレ模様に基づいて前記ワークピースの研磨終点を決定する画像解析システムを備えている、研磨装置が提供される。
【0008】
一態様では、前記画像解析システムは、前記画像上の前記モアレ模様の鮮明度に基づいて、前記ワークピースの研磨終点を決定するように構成されている。
一態様では、前記画像解析システムは、前記モアレ模様の鮮明度が変化しなくなった時点である前記ワークピースの研磨終点を決定するように構成されている。
一態様では、前記画像解析システムは、前記モアレ模様の鮮明度を示す指標数値を算定し、前記指標数値の変化率を算定し、前記変化率が第1のしきい値よりも大きくなった時点を検出し、その後前記変化率が第2のしきい値よりも小さくなった時点である研磨終点を決定するように構成されている。
一態様では、前記指標数値は、変調伝達関数で表される数値である。
【0009】
一態様では、参照パターンが形成された格子と、研磨テーブルとを研磨パッドとともに回転させ、パターンが形成されたワークピースを前記研磨パッドに対して押し付けて該ワークピースの表面を研磨し、前記研磨テーブル内に配置された撮像装置により、互いに重なり合う前記ワークピースの前記パターンと前記参照パターンの画像を生成し、前記画像に現れるモアレ模様に基づいて前記ワークピースの研磨終点を決定する、研磨方法が提供される。
【0010】
一態様では、前記画像に現れるモアレ模様に基づいて前記ワークピースの研磨終点を決定する工程は、前記画像上の前記モアレ模様の鮮明度に基づいて、前記ワークピースの研磨終点を決定する工程である。
一態様では、前記画像上の前記モアレ模様の鮮明度に基づいて、前記ワークピースの研磨終点を決定する工程は、前記モアレ模様の鮮明度が変化しなくなった時点である前記ワークピースの研磨終点を決定する工程である。
一態様では、前記モアレ模様の鮮明度が変化しなくなった時点である前記ワークピースの研磨終点を決定する工程は、前記モアレ模様の鮮明度を示す指標数値を算定し、前記指標数値の変化率を算定し、前記変化率が第1のしきい値よりも大きくなった時点を検出し、その後前記変化率が第2のしきい値よりも小さくなった時点である研磨終点を決定する工程である。
一態様では、前記指標数値は、変調伝達関数で表される数値である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、画像上のモアレ模様の発現に基づいてワークピースの研磨終点を正確に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】ワークピースの一例であるウェーハを研磨する研磨装置の一実施形態を示す模式図である。
【
図3】格子の参照パターンの他の例を示す図である。
【
図4】画像上のウェーハのパターンおよび格子の参照パターンの一例を示す模式図である。
【
図5】画像上のウェーハのパターンおよび格子の参照パターンの他の例を示す模式図である。
【
図6】
図6(a)および
図6(b)は、ウェーハの断面構造の一例を示す模式図である。
【
図7】
図6(a)に示すウェーハを研磨しているときの画像上のモアレ模様の鮮明度を示す指標数値の変化を示す図である。
【
図9】研磨装置の他の実施形態を示す模式図である。
【
図10】研磨装置のさらに他の実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
以下に説明する実施形態では、研磨対象であるワークピースは、パターンが予め形成されたウェーハであるが、本発明は以下の実施形態に限らず、ワークピースは、パターンが予め形成されたパネル、角基板、ガラス基板などであってもよい。
【0014】
図1は、ワークピースの一例であるウェーハを研磨する研磨装置の一実施形態を示す模式図である。
図1に示すように、研磨装置は、研磨パッド2を支持する研磨テーブル3と、ワークピースの一例であるウェーハWを研磨パッド2に押し付ける研磨ヘッド1と、研磨テーブル3を研磨パッド2とともに回転させるテーブルモータ6と、研磨パッド2上にスラリーを供給するためのスラリー供給ノズル5を備えている。
【0015】
研磨ヘッド1はヘッドシャフト10に連結されており、ヘッドシャフト10とともに研磨ヘッド1は回転可能である。ヘッドシャフト10は、ベルト等の連結手段17を介して研磨ヘッドモータ18に連結されて回転されるようになっている。このヘッドシャフト10の回転により、研磨ヘッド1が矢印で示す方向に回転する。研磨テーブル3のテーブルシャフト3aはテーブルモータ6に連結されており、テーブルモータ6は研磨テーブル3および研磨パッド2を矢印で示す方向に回転させるように構成されている。
【0016】
ウェーハWは次のようにして研磨される。研磨テーブル3および研磨ヘッド1を
図1の矢印で示す方向に回転させながら、スラリー供給ノズル5からスラリーが研磨テーブル3上の研磨パッド2の研磨面2aに供給される。研磨パッド2は研磨テーブル3とともに回転される。回転する研磨パッド2上にスラリーが存在した状態で、ウェーハWは研磨パッド2の研磨面2aに研磨ヘッド1によって押し付けられる。ウェーハWの表面は、スラリーの化学的作用と、スラリーに含まれる砥粒および研磨パッド2の機械的作用により研磨される。
【0017】
研磨装置は、研磨テーブル3内に配置された撮像装置20と、研磨ヘッド1と撮像装置20との間に配置されたパターン拡大装置としての格子24を備えている。撮像装置20は、ウェーハWの被研磨面(パターン面)を向いて配置されており、ウェーハWに形成されているパターンを少なくとも含む画像を生成するように構成されている。研磨装置は、撮像装置20によって生成された画像に基づいてウェーハWの研磨終点を決定する画像解析システム30と、ウェーハWの研磨終点を示す信号を画像解析システム30から受けてウェーハWの研磨を終了させる動作制御部40をさらに備えている。
【0018】
撮像装置20は、CCDセンサまたはCMOSセンサなどのイメージセンサを備えたカメラである。撮像装置20は、上方を向いて、すなわち研磨パッド2上のウェーハWの被研磨面(パターン面)を向いて配置されている。撮像装置20は、ウェーハWの被研磨面(パターン面)を照明するための照明器を備えてもよい。
【0019】
画像解析システム30は、後述するように、画像に現れるモアレ模様に基づいてウェーハWの研磨終点を決定するためのプログラムが格納された記憶装置30aと、プログラムに含まれる命令に従って演算を実行する処理装置30bを備えている。記憶装置30aは、RAMなどの主記憶装置と、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)などの補助記憶装置を備えている。処理装置30bの例としては、CPU(中央処理装置)、GPU(グラフィックプロセッシングユニット)が挙げられる。ただし、画像解析システム30の具体的構成はこれらの例に限定されない。
【0020】
画像解析システム30は、少なくとも1台のコンピュータから構成されている。前記少なくとも1台のコンピュータは、1台のサーバまたは複数台のサーバであってもよい。画像解析システム30は、撮像装置20に通信線で接続されたエッジサーバであってもよいし、インターネットまたはローカルエリアネットワークなどの通信ネットワークによって撮像装置20に接続されたクラウドサーバであってもよいし、あるいは撮像装置20に接続されたネットワーク内に設置されたフォグコンピューティングデバイス(ゲートウェイ、フォグサーバ、ルーターなど)であってもよい。
【0021】
格子24には、予め定められた形状および寸法を有する参照パターンが形成されている。一実施形態では、格子24は、透明板と、この透明板上に形成されたパターン層を有する。透明板は、ガラスまたは透明な樹脂などの光を透過させる材料から構成されているのに対して、パターン層は、光を遮る材料から構成されている。参照パターンはパターン層に形成されている。
【0022】
格子24は、研磨テーブル3内に配置されている。より具体的には、格子24は、撮像装置20の直上に配置されており、撮像装置20は格子24を向いて配置されている。格子24は、研磨パッド2の研磨面2aと平行(すなわち、研磨パッド2上のウェーハWの被研磨面と平行)である。研磨パッド2には通孔2bが形成されている。この通孔2bは、格子24および撮像装置20と一直線上に並んでいる。したがって、撮像装置20は、ウェーハWの研磨中に、通孔2bおよび格子24を通じて研磨パッド2上のウェーハWのパターンの画像を生成することができる。格子24の一部は、研磨パッド2の通孔2b内に位置してもよい。
【0023】
一実施形態では、撮像装置20は、ウェーハWの研磨前に、通孔2bおよび格子24を通じて研磨パッド2上のウェーハWのパターンの画像を生成してもよい。具体的には、研磨テーブル2および研磨ヘッド1が回転していない状態で、研磨ヘッド1によりウェーハWの被研磨面(パターン面)を研磨パッド2の研磨面2aに対して押し付け、通孔2bをウェーハWで覆う。撮像装置20は、通孔2bおよび格子24を通じて研磨パッド2上のウェーハWのパターンの画像を生成する。
【0024】
図2は、格子24の参照パターンの一例を示す図である。
図2に示す参照パターンP2は、同心円状のパターンである。同心円の円間隔は一定であり、その円間隔は予め定められている。
図3は、格子24の参照パターンの他の例を示す図である。
図3に示す例では、参照パターンP2は、放射状に延びるパターンである。各ライン間の角度は一定であり、その角度は予め定められている。
【0025】
ウェーハWの研磨中、研磨ヘッド1とウェーハWは一体に回転し、研磨パッド2と研磨テーブル3は一体に回転する。格子24および撮像装置20も、研磨テーブル3と一体に回転する。撮像装置20は、研磨ヘッド1およびウェーハWが格子24の上方にあるときに、画像を生成する。より具体的には、撮像装置20は、ウェーハWのパターンと、格子24の参照パターンP2が重なったときに、ウェーハWのパターンと、格子24の参照パターンP2の両方を含む画像を撮像する。画像には、互いに重なり合ったウェーハWのパターンおよび参照パターンP2が現れる。
【0026】
図4および
図5は、撮像装置20によって生成された画像上のウェーハWのパターンP1および格子24の参照パターンP2を示す模式図である。
図4に示す例では、参照パターンP2は
図2に示す同心円状パターンであり、
図5に示す例では、参照パターンP2は
図3に示す放射状のパターンである。
図4および
図5の両方の例において、ウェーハWのパターンP1は、直線ラインが等間隔で配列されたラインアンドスペースパターンである。
【0027】
図4および
図5から分かるように、画像には、ウェーハWのパターンP1と格子24の参照パターンP2との重なりに起因してモアレ模様が現れる。モアレ模様は、規則的なパターンを重ね合わせたときに現れる模様であり、干渉縞とも呼ばれる。
【0028】
図4および
図5に示すようなモアレ模様は、ウェーハWのパターンP1がウェーハWの表面上に現れたときに発生する。言い換えれば、ウェーハWのパターンP1が膜によって覆われているときは、画像にモアレ模様は現れない。
【0029】
図6(a)および
図6(b)は、ウェーハWの断面構造の一例を示す模式図である。
図6(a)に示すように、ダマシン法などの配線形成工程においては、配線溝から形成されたパターンP1の上に膜70(例えば銅などの金属膜)が形成される。そして、
図1に示す研磨装置で膜70が研磨されると、
図6(b)に示すように、パターンP1がウェーハWの表面上に現れる。ウェーハWの研磨終点は、膜70の余剰部分が研磨によって除去され、パターンP1が明確に現れた時点である。
【0030】
図6(a)から分かるように、パターンP1が膜70で覆われているときは、撮像装置20によって生成された画像上ではウェーハWのパターンP1と格子24の参照パターンP2は重ならない。したがって、モアレ模様は画像上に現れない。これに対し、
図6(b)に示すように、膜70の余剰部分が除去されると、ウェーハWのパターンP1は画像上に現れる。その結果、ウェーハWのパターンP1と格子24の参照パターンP2が重なり、モアレ模様が画像上に現れる。
【0031】
画像解析システム30は、ウェーハWのパターンP1と格子24の参照パターンP2との重なりに起因して画像に現れるモアレ模様に基づいてウェーハWの研磨終点を決定するように構成されている。本実施形態では、画像解析システム30は、画像上のモアレ模様の鮮明度に基づいてウェーハWの研磨終点を決定する。より具体的には、画像解析システム30は、モアレ模様の鮮明度が変化しなくなった時点である研磨終点を決定する。
【0032】
モアレ模様の鮮明度は、指標数値で表すことができる。一実施形態では、モアレ模様の鮮明度は、変調伝達関数で表される指標数値である。変調伝達関数で表される指標数値は、MTF値とも呼ばれる。モアレ模様が明瞭に現れるにつれて、MTF値は上昇する。ウェーハWの研磨中、撮像装置20は、ウェーハWの表面(被研磨面)と格子24の参照パターンP2の画像を連続的に生成し、画像解析システム30は、画像を撮像装置20から取得し、画像上のモアレ模様の鮮明度を示す指標数値を算定するように構成される。
【0033】
図7は、
図6(a)に示すウェーハWを研磨しているときの画像上のモアレ模様の鮮明度を示す指標数値の変化を示す図である。
図7において、縦軸は指標数値(例えばMTF値)を表し、横軸は研磨時間を表している。
図7に示すように、研磨初期段階では、ウェーハWのパターンP1は膜70で覆われているため(
図6(a)参照)、モアレ模様は画像には現れない(時間t1)。ウェーハWの研磨が進行するにつれて、膜70が徐々に除去され、ウェーハWのパターンP1が現れ始める(時間t2)。このとき、モアレ模様も、不明瞭ではあるが、画像上に徐々に現れ始める。
【0034】
そして、膜70の余剰部分が完全に除去されると(
図6(b)参照)、ウェーハWのパターンP1が明瞭に現れる。(時間t3)。結果として、ウェーハWのパターンP1と格子24の参照パターンP2との重なりに起因してモアレ模様が画像に明瞭に現れる。この時間t3は、ウェーハWの研磨終点である。その後は、画像上のモアレ模様の鮮明度はほとんど変わらないので、指標数値もほぼ一定である。
【0035】
このように、ウェーハWの研磨中、指標数値は特徴的に変化するので、画像解析システム30は、指標数値の変化に基づいてウェーハWの研磨終点を決定することができる。より具体的には、画像解析システム30は、指標数値が上昇し、その後指標数値が実質的に一定になった時点である研磨終点を決定する。本実施形態では、以下に説明するように、指標数値の変化率に基づいて研磨終点を決定する。
【0036】
図8は、指標数値の変化率を示すグラフである。
図8において、縦軸は指標数値の変化率(絶対値)を表し、横軸は研磨時間を表す。指標数値の変化率は、単位時間当たりの指標数値の変化量であり、
図7に示す指標数値のグラフの傾きを表している。単位時間は、例えば、研磨テーブル3がN回転するのに要する時間である(Nは自然数であり、例えばN=1)。
図8に示すように、指標数値の変化率は、一旦上昇して極大値となり、その後低下し、やがて実質的に一定となる。画像解析システム30は、ウェーハWの研磨中に指標数値の変化率を算定し、変化率が第1のしきい値よりも大きくなった時点を検出し、その後変化率が第2のしきい値よりも小さくなった時点である研磨終点を決定するように構成されている。第1のしきい値は、第2のしきい値と同じであってもよく、または異なってもよい。
【0037】
一実施形態では、画像解析システム30は、指標数値の変化率(絶対値)の移動平均値を算定し、移動平均値が第1のしきい値よりも大きくなった時点を検出し、その後移動平均値が第2のしきい値よりも小さくなった時点である研磨終点を決定するように構成されてもよい。
【0038】
図1に示すように、画像解析システム30は、動作制御部40に接続されている。画像解析システム30によって決定されたウェーハWの研磨終点を示す信号は、動作制御部40に送られる。動作制御部40は、画像解析システム30から送られた信号を受け取ると、ウェーハWの研磨を終了する。
【0039】
図7のグラフから分かるように、画像上のモアレ模様の鮮明度を示す指標数値は、膜70(
図6(a)参照)の厚さに対応する。したがって、撮像装置20は、研磨テーブル3が一回転するたびに、ウェーハW上の複数の測定点において、重なり合ったウェーハWのパターンおよび参照パターンP2の複数の画像を取得し、画像解析システム30は、これら複数の画像を撮像装置20から取得し、複数の画像上のモアレ模様の鮮明度を示す複数の指標数値を算出し、複数の指標数値からウェーハWの膜厚プロファイルを作成してもよい。この膜厚プロファイルは、ウェーハWの研磨条件の最適化に使用することができる。例えば、動作制御部40は、ウェーハWの膜厚プロファイルに基づいて、研磨ヘッド1がウェーハWに加える研磨荷重を最適化する。
【0040】
一実施形態では、格子24は、重なり合う複数の参照パターンを有してもよい。重なり合う複数の参照パターンを用いると、画像上のモアレ模様は大きくなり、画像解析システム30は、モアレ模様の鮮明度を示す指標数値を算定しやすくなることがある。
【0041】
図9は、研磨装置の他の実施形態を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、
図1に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。研磨装置は、光源50と、第1プリズム51と、第2プリズム52をさらに備えている。光源50、第1プリズム51、第2プリズム52、格子24、および撮像装置20は、研磨テーブル3内に配置されており、研磨テーブル3と一体に回転する。光源50、第1プリズム51、第2プリズム52、格子24、および撮像装置20の相対位置は固定である。
【0042】
第1プリズム51および第2プリズム52は、格子24に関して対称的に配置され、格子24の下に位置している。光源50は第1プリズム51を向いて配置され、撮像装置20は第2プリズム52を向いて配置されている。光源50には、白色光源が使用されている。より具合的には、白色光を発する発光ダイオードが光源50として使用される。光源50と第1プリズム51との間に、収束レンズを配置してもよい。同様に、撮像装置20と第2プリズム52との間に、収束レンズを配置してもよい。
【0043】
光源50から発せられた白色光は、第1プリズム51を通過するとき、屈折率の違いにより、格子24を通過してウェーハWの表面に向かう第1の光(例えば赤色の光)と、格子24で反射する第2の光(例えば、青色の光)に分解される。第1の光は、格子24を通過した後、ウェーハWの表面(パターン面)で反射し、格子24を再び透過した後、第2プリズム52を通過し、そして撮像装置20に入射する。第2の光は、格子24で反射し、第2プリズム52を通過した後、撮像装置20に入射する。第2プリズム52を通過した第1の光および第2の光は、互いに重畳し、撮像装置20に入射する。撮像装置20は第1の光および第2の光から画像を生成する。この画像上にはモアレ模様が現れる。画像解析システム30は、先に説明した実施形態と同様に、画像上のモアレ模様に基づいてウェーハWの研磨終点を決定することができる。
【0044】
図10は、研磨装置のさらに他の実施形態を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、
図1に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。研磨装置は、光源54およびビームスプリッタ55をさらに備えている。光源54およびビームスプリッタ55は研磨テーブル3内に配置されており、研磨テーブル3と一体に回転する。ビームスプリッタ55にはハーフミラーを使用することができる。光源54、ビームスプリッタ55、格子24、および撮像装置20の相対位置は固定である。
【0045】
格子24は、通孔2bと撮像装置20と一直線上に配置されていなく、格子24と光源54は、通孔2bと撮像装置20とを結ぶ直線に関して対称的に配置されている。ビームスプリッタ55は、通孔2bと撮像装置20との間に配置され、かつ通孔2bと撮像装置20とを結ぶ直線に対して斜めに配置されている。光源54と格子24は、ビームスプリッタ55に関して対称的に配置されている。光源54は、ビームスプリッタ55の一面を向いており、光源54の光軸上に格子24が配置されている。格子24は、反射体24aとパターン層24bを有している。パターン層24bは反射体24aの前面に固定されており、参照パターンはパターン層24bに形成されている。
【0046】
光源54から発せられた光は、ビームスプリッタ55で反射する第1の光と、ビームスプリッタ55を通過する第2の光に分解される。第1の光は、通孔2bを通過してウェーハWの表面(パターン面)に入射する。第1の光はウェーハWの表面で反射し、ビームスプリッタ55を通過して撮像装置20に入射する。第2の光は、ビームスプリッタ55を通過し、格子24に入射する。第2の光は、格子24で反射し、さらにビームスプリッタ55で反射した後、撮像装置20に入射する。
【0047】
ウェーハWで反射した第1の光および格子24で反射した第2の光は、互いに重畳し、撮像装置20に入射する。撮像装置20は第1の光および第2の光から画像を生成する。この画像上にはモアレ模様が現れる。画像解析システム30は、先に説明した実施形態と同様に、画像上のモアレ模様に基づいてウェーハWの研磨終点を決定することができる。
【0048】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0049】
1 研磨ヘッド
2 研磨パッド
2b 通孔
3 研磨テーブル
3a テーブルシャフト
5 スラリー供給ノズル
6 テーブルモータ
10 ヘッドシャフト
17 連結手段
18 研磨ヘッドモータ
20 撮像装置
24 格子
30 画像解析システム
30a 記憶装置
30b 処理装置
50 光源
51 第1プリズム
52 第2プリズム
54 光源
55 ビームスプリッタ
70 膜