IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 独立行政法人産業技術総合研究所の特許一覧 ▶ 東ソー株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】有機カーボネートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 68/04 20060101AFI20241001BHJP
   C07C 69/96 20060101ALI20241001BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20241001BHJP
【FI】
C07C68/04 A
C07C69/96 Z
C07B61/00 300
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020088900
(22)【出願日】2020-05-21
(65)【公開番号】P2021183566
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深谷 訓久
(72)【発明者】
【氏名】プトロ サトプリヨ ワヒュー
(72)【発明者】
【氏名】崔 準哲
(72)【発明者】
【氏名】竹内 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】重安 真治
(72)【発明者】
【氏名】松本 清児
(72)【発明者】
【氏名】羽村 敏
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-280502(JP,A)
【文献】国際公開第2003/055840(WO,A1)
【文献】特開2006-083065(JP,A)
【文献】特開2001-247519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C、C07B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコキシシラン類と二酸化炭素とを反応させる反応工程を含み、
前記アルコキシシラン類が式(A1)で表される化合物及び式(A2)で表される化合物から選ばれる1種以上であり、
前記反応が、ジルコニウムアルコキシド、チタンアルコキシド、ハフニウムアルコキシド、及びスズアルコキシドからなる群より選ばれる1種以上の金属触媒の存在下で行われる、有機カーボネートの製造方法。
【化1】

式(A1)、(A2)中、R はそれぞれ独立して無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表し、R はそれぞれ独立して無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表す。n1は3又は4である。R は無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表し、該炭化水素基の任意の炭素原子はSi原子で置き換えられていてもよい。n2は1~3の整数であり、mは2~20の整数である。ただし、2つのR が互いに連結して環を形成していてもよいし、R とR が連結して環を形成していてもよい。
【請求項2】
前記アルコキシシラン類が前記式(A1)で表される化合物である、請求項1に記載の有機カーボネートの製造方法。
【請求項3】
前記アルコキシシラン類が前記式(A2)で表される化合物である、請求項1に記載の有
機カーボネートの製造方法。
【請求項4】
反応溶媒を使用することなく、前記反応が行われる、請求項1~3のいずれか1項に記載の有機カーボネートの製造方法。
【請求項5】
前記反応が、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル及び2-シアノピリジンからなる群より選ばれる1種以上の反応溶媒中で行われる、請求項1~3のいずれか1項に記載の有機カーボネートの製造方法。
【請求項6】
アルコキシシラン類と二酸化炭素とを120℃以上200℃以下の温度で反応させる、請求項1~のいずれか1項に記載の有機カーボネートの製造方法。
【請求項7】
アルコキシシラン類と二酸化炭素とを二酸化炭素の初期圧力(25℃)が0.1MPa以上10MPa以下の反応器内で反応させる、請求項1~のいずれか1項に記載の有機カーボネートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機カーボネートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機カーボネートは、ポリカーボネートやポリウレタンなどの有用化合物の合成原料や、リチウムイオン電池の電解液など、幅広い用途を有している化合物である。従来、有機カーボネートは、ホスゲンとアルコールを用いて工業的に製造されている。近年、安価で豊富な二酸化炭素を有機化合物のカルボニル源として用いることが検討されている。二酸化炭素をカルボニル源として用いることができれば低環境負荷な有機カーボネートの合成が可能となる。しかしながら、二酸化炭素は非常に安定な化合物であるため、一般的に、二酸化炭素を原料として高効率で有機化合物を合成することは困難である。例えば、二酸化炭素とアルコールからの有機カーボネートの直接合成が検討されているが、副生する水による逆反応や、副生した水による触媒の失活が起こるため反応収率が低くなる。
また、生成した有機カーボネートには副生した水が混合しているため、有機カーボネートを単離するためには、水を反応系中から取り除く必要がある。しかし、工業的に水を取り除くプロセスは、多くのエネルギーが必要であるため、二酸化炭素とアルコールから有機カーボネートを合成するプロセスの実用化に、水の副生は大きな障害となっている。
非特許文献1では、メタノールと二酸化炭素を原料とし、BuSn(OCHとBuSnOをトルエン中で還流して[Bu(CHO)Sn]Oを生成させ、ジメチルカーボネートを生成する反応メカニズムについて、水の被毒と関連してテトラメトキシシランの促進効果が検討されている。そして、[Bu(CHO)Sn]Oは、二量体構造で、COと反応し[Bu(CHO)Sn]O[Sn(OC(O)OCH)Bu](下図A、Bの二種の構造が推定され、このうちAが有力)を生成することが報告されている。
【化1】
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Tkatchenko, T. Jerphagnon, R. Ligabue, L. Plasseraud, D. Poinsot, Appl. Catal.,A 2003, 255, 93.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、二酸化炭素を原料とし、水を副生せずに、有機カーボネートを製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、二酸化炭素とアルコキ
シシラン類との反応により、水の副生なしで有機カーボネートを製造できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下の具体的態様等を提供する。
[1]アルコキシシラン類と二酸化炭素とを反応させることを特徴とする、有機カーボネートの製造方法。
[2]アルコキシシラン類と二酸化炭素とを、少なくとも1種の金属触媒の存在下で反応させる、[1]に記載の有機カーボネートの製造方法。
[3]前記金属触媒が、第4族金属元素及び第14族金属元素からなる群から選ばれる1種以上の金属元素を含む、[2]に記載の有機カーボネートの製造方法。
[4]前記金属触媒が、金属アルコキシドである、[2]又は[3]に記載の有機カーボネートの製造方法。
[5]前記金属アルコキシドが、ジルコニウムアルコキシド、チタンアルコキシドおよびスズアルコキシドからなる群より選ばれる1種以上である、[4]に記載の有機カーボネートの製造方法。
[6]前記アルコキシシラン類が式(A1)で表される化合物及び式(A2)で表される化合物から選ばれる1種以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の有機カーボネートの製造方法。
【化2】
式(A1)、(A2)中、Rはそれぞれ独立して無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表し、Rはそれぞれ独立して無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表す。n1は1~4の整数である。Rは無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表し、該炭化水素基の任意の炭素原子はSi原子で置き換えられていてもよい。n2は1~3の整数であり、mは2~20の整数である。ただし、2つのRが互いに連結して環を形成していてもよいし、RとRが連結して環を形成していてもよい。
[7]アルコキシシラン類と二酸化炭素とを120℃以上200℃以下の温度で反応させる、[1]~[6]のいずれかに記載の有機カーボネートの製造方法。
[8]アルコキシシラン類と二酸化炭素とを二酸化炭素の初期圧力(25℃)が0.1MPa以上10MPa以下の反応器内で反応させる、[1]~[7]のいずれかに記載の有機カーボネートの製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、二酸化炭素を原料とし、水を副生せずに、有機カーボネートを製造する方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の詳細を説明するに当たり、具体例を挙げて説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り以下の内容に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。
【0008】
1.有機カーボネートの製造方法
本発明の一実施形態に係る有機カーボネートの製造方法は、アルコキシシラン類と二酸化炭素とを反応させることを特徴とする。
アルコキシシラン類と二酸化炭素との反応(以下、「本反応」とも表記する。)は、例えば、以下の反応式で表される。
【0009】
【化3】
上記式中、Rはそれぞれ独立して無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表し;R’はそれぞれ独立して無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表し;nは1~4の整数である。
具体的には、例えば、以下に示すように、二酸化炭素にテトラエトキシシランを反応させて、ジエチルカーボネートとヘキサエトキシジシロキサンを生成する反応が挙げられる。
【0010】
【化4】
【0011】
本発明者らは、二酸化炭素とアルコールからの有機カーボネートの直接合成について、副生する水を系外に除去する等、収率を向上させる手段を検討していたところ、アルコールを原料とするのではなく、アルコキシシラン類を原料とすることで、水の副生なしで高効率に有機カーボネートを製造できることを見出した。本実施形態に係る製造方法は、二酸化炭素を有効活用でき、また、ホスゲンを用いる合成法の代替となり得る、低環境負荷の有機カーボネートの製造方法である。
以下、「有機カーボネート」、「アルコキシシラン類」、反応条件等について詳細に説明する。
【0012】
(有機カーボネート)
本実施形態において、「有機カーボネート」はカーボネート基(-O-(C=O)-O-)を有する有機化合物であれば特に限定されないが、好ましくは、下記式(B)で表される化合物が挙げられる。
【化5】
【0013】
式(B)中、Rはそれぞれ独立して、無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表す。
本明細書において、「炭化水素基」とは、直鎖状の飽和炭化水素基に限られず、炭素-炭素不飽和結合、分岐構造、環状構造のそれぞれを有していてもよい。
の炭素数は特に限定されないが、通常1以上であり、また、通常30以下、好ましくは24以下、より好ましくは20以下である。
で表される無置換の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-ドコシル
基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、4-フェナントリル基、9-フェナントリル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、4-ピレニル基、1-トリフェニレニル基、2-トリフェニレニル基等の芳香族炭化水素基;等が挙げられる。
で表される炭化水素基が置換基を有する場合、前記置換基としては、重水素原子;メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基等の炭素数3~4のシクロアルキル基;フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等の炭素数6~10の芳香族炭化水素基;フラニル基等の含酸素複素環基、チエニル基等の含硫黄複素環基、ピロリル基、ピリジル基等の含窒素複素環等の複素環基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;イソシアネート基;シアノ基;アミノ基;アミド基;ニトロ基;等が挙げられる。したがって、Rで表される炭化水素基が置換基を有する場合、Rとしては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基等のアラルキル基;シクロヘキシルメチル基等のシクロアルキルアルキル基;フルフリル基等の含酸素複素環を有する炭化水素基;チエニルメチル基等の含硫黄複素環を有する炭化水素基;ピリジルメチル基等の含窒素複素環を有する炭化水素基;等を好ましく挙げることができ、特に好ましくは、ベンジル基、フェネチル基である。
なお、炭化水素基が置換基を有する場合、前記炭素数は、置換基の炭素数と炭化水素基の炭素数との合計の炭素数を意味する。
としては、対応するアルコキシシランと二酸化炭素との反応効率の点から、メチル基、エチル基が特に好ましい。
有機カーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等が挙げられる。
【0014】
(アルコキシシラン類)
本実施形態において、「アルコキシシラン類」とは、アルコキシシラン及びその誘導体を意味する。アルコキシシラン類の具体的種類は特に限定されず、目的とする有機カーボネートに応じて適宜選択されるべきであるが、式(A1)で表されるアルコキシシラン類及び式(A2)で表されるアルコキシシラン類が好ましく挙げられる。
【化6】
式(A1)、(A2)中、Rはそれぞれ独立して無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表し、Rはそれぞれ独立して無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表す。n1は1~4の整数である。Rは無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表し、該炭化水素基の任意の炭素原子はSi原子で置き換えられていてもよい。n2は1~3の整数であり、mは2~20の整数である。ただし、2つのRが互いに連結して環を形成していてもよいし、RとRが連結して環を形成していてもよい。
【0015】
式(A1)中、Rはそれぞれ独立して、無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表す。
の炭素数は特に限定されないが、通常1以上であり、また、通常30以下、好ましくは24以下、より好ましくは20以下である。
で表される無置換の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、
iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-ドコシル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、4-フェナントリル基、9-フェナントリル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、4-ピレニル基、1-トリフェニレニル基、2-トリフェニレニル基等の芳香族炭化水素基;等が挙げられる。
で表される炭化水素基が置換基を有する場合、前記置換基としては、重水素原子;メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基等の炭素数3~4のシクロアルキル基;フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等の炭素数6~10の芳香族炭化水素基;フラニル基等の含酸素複素環基、チエニル基等の含硫黄複素環基、ピロリル基、ピリジル基等の含窒素複素環等の複素環基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;イソシアネート基;シアノ基;アミノ基;アミド基;ニトロ基;等が挙げられる。したがって、Rで表される炭化水素基が置換基を有する場合、Rとしては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基等のアラルキル基;シクロヘキシルメチル基等のシクロアルキルアルキル基;フルフリル基等の含酸素複素環を有する炭化水素基;チエニルメチル基等の含硫黄複素環を有する炭化水素基;ピリジルメチル基等の含窒素複素環を有する炭化水素基;等を好ましく挙げることができ、特に好ましくは、ベンジル基、フェネチル基である。
なお、炭化水素基が置換基を有する場合、前記炭素数は、置換基の炭素数と炭化水素基の炭素数との合計の炭素数を意味する。
としては、アルコキシシランと二酸化炭素との反応効率の点から、メチル基、エチル基が特に好ましい。
【0016】
式(A1)中、Rはそれぞれ独立して、無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表す。
の炭素数は特に限定されないが、通常1以上であり、また、通常30以下、好ましくは24以下、より好ましくは20以下である。
で表される無置換の炭化水素基としては、Rで例示したものが挙げられる。入手容易性、安定性の観点から、好ましくは、メチル基、エチル基、ビニル基、アリル基、フェニル基が挙げられる。
また、Rで表される炭化水素基が置換基を有する場合の置換基としては、Rで例示したものが挙げられる。中でも、好ましくは、イソシアネート基またはシアノ基である。
式(A1)中、n1は1~4の整数であり、反応効率、有機カーボネート化合物の安定性の観点から、好ましくは2以上であり、より好ましくは3又は4である。
【0017】
式(A1)で表されるアルコキシシラン類としては、具体的には、メトキシトリメチルシラン、メトキシトリエチルシラン、メトキシトリプロピルシラン、メトキシトリイソブチルシラン、メトキシトリオクチルシラン、メトキシトリヘキサデシルシラン、メトキシトリビニルシラン、メトキシトリフェニルシラン、フェニルメトキシジメチルシラン、フェニルメトキシジエチルシラン、エトキシトリメチルシラン、エトキシトリエチルシラン、エトキシトリプロピルシラン、エトキシトリイソブチルシラン、エトキシトリオクチルシラン、エトキシトリフェニルシラン、エトキシトリビニルシラン、エトキシトリアリルシラン、エトキシジエチルフェニルシラン、フェニルエトキシジプロピルシラン、プロポ
キシトリメチルシラン、プロポキシトリエチルシラン、プロポキシトリプロピルシラン、フェニルプロポキシジメチルシラン、フェニルプロポキシジエチルシラン、フェニルプロポキシジプロピルシラン等のモノアルコキシシラン;ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジエチルシラン、ジメトキシジプロピルシラン、フェニルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジエトキシジエチルシラン、ジエトキシジプロピルシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、ジエトキシエチルフェニルシラン、ジエトキシフェニルプロピルシラン、ジプロポキシジメチルシラン、ジプロポキシジエチルシラン、ジプロポキシジプロピルシラン、フェニルジプロポキシメチルシラン、フェニルジプロポキシエチルシラン、フェニルジプロポキシプロピルシラン、ジブトキシジメチルシラン、ジブトキシジエチルシラン、フェニルジメトキシエチルシラン等のジアルコキシシラン;トリメトキシメチルシラン、トリメトキシエチルシラン、トリメトキシプロピルシラン、トリメトキシイソブチルシラン、トリメトキシオクチルシラン、トリメトキシヘキサデシルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリエトキシエチルシラン、トリエトキシプロピルシラン、トリエトキシイソブチルシラン、トリエトキシオクチルシラン、トリメトキシビニルシラン、トリメトキシフェニルシラン、トリエトキシフェニルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリエトキシアリルシラン、トリプロポキシメチルシラン、トリプロポキシエチルシラン、トリプロポキシプロピルシラン、トリプロポキシフェニルシラン、2-シアノエチルトリエトキシシラン、3-(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート等のトリアルコキシシラン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラキス(2-エチルヘキシルオキシ)シラン等のテトラアルコキシシランが挙げられる。
【0018】
式(A2)中、Rはそれぞれ独立して、無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表す。Rの炭素数は特に限定されないが、通常1以上であり、また、通常30以下、好ましくは24以下、より好ましくは20以下である。Rで表される無置換もしくは置換基を有する炭化水素基には、上記式(A1)のRの説明が適用できる。
式(A2)中、Rはそれぞれ独立して、無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表す。Rの炭素数は特に限定されないが、通常1以上であり、また、通常30以下、好ましくは24以下、より好ましくは20以下である。Rで表される無置換もしくは置換基を有する炭化水素基には、上記式(A1)のRの説明が適用できる。
式(A2)中、Rは無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表し、該炭化水素基の任意の炭素原子はSi原子で置き換えられていてもよい。Rの炭素原子数は、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは12以下である。Rで表される炭化水素基が置換基を有する場合の置換基としては、Rで例示したものやアルコキシ基が挙げられ、好ましくは、アルコキシ基、イソシアネート基またはシアノ基である。また、Rで表される炭化水素基の炭素原子がSi原子で置き換えられている場合、該Si原子が置換基を有していてもよい。また、複数の炭素原子がSi原子で置き換えられていてもよい。
式(A2)中、(-SiR (3-n2)(ORn2)で表されるアルコキシシラン部位は炭化水素基Rを構成する炭素原子の内、同じ原子に結合していてもよいし、異なる炭素原子に結合していてもよい。
式(A2)中、n2は1~3の整数であり、mは2~20の整数である。反応効率、有機カーボネート化合物の安定性の観点から、n2は好ましくは2以上、より好ましくは3である。原料化合物の入手容易性の観点から、mは2以上、10以下である。
式(A2)で表されるアルコキシシラン類は、m=2の場合は、例えば式(A-22)で表されるアルコキシシラン類が挙げられる。また、m=3の場合は、例えば、式(A-23)で表されるアルコキシシラン類が挙げられる。
【化7】
としては、具体的には、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ヘキサン等のアルカンからm個の水素を引き抜いた基;シクロヘキサン、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、ナフタレン、又はアントラセンを構成する炭素原子からm個の水素を引き抜いた基;等が挙げられる。
【0019】
式(A2)で表されるアルコキシシラン、すなわち分子内にアルコキシシラン部位を複数個有するアルコキシシランとしては、具体的には、ビス(トリエトキシシリル)メタン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリフェノキシシリル)エタン、1,3-ビス(トリメトキシシリル
)プロパン、1,3-ビス(トリエトキシシリル)プロパン、1,4-ビス(トリエトキシシリル)ブタン、1,5-ビス(トリエトキシシリル)ペンタン、1,6-ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、1,8-ビス(トリエトキシシリル)オクタン1,1,2-トリス
(トリエトキシシリル)エタン等の脂肪族炭化水素基を構成する炭素に複数のアルコキシシリル基が結合している多価アルコキシシラン;1,2-ビス(トリエトキシシリル)ベ
ンゼン、1,3-ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,2,3-トリス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,2,4-トリス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,3,5-トリス(トリエトキシシリル)ベンゼン、4,4’-ビス(トリエトキシシリル)ビフェニル等の芳香族炭化水素基に複数のアルコキ
シシリル基が結合している多価アルコキシシラン;1,1,1,3,3,5,5,5-オクタエ
トキシ-1,3,5-トリシラペンタン等の炭化水素基の炭素原子がSi原子で置換され、該Si原子がアルコキシ基を有する多価アルコキシシラン;トリス(トリエトキシシリルエチル)メチルシラン等の炭化水素基の炭素原子がSi原子で置換されている多価アルコキシシランが挙げられる。
【0020】
アルコキシシラン類としては、入手容易性、高い反応性の観点から、好ましくは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジエトキシジメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリエトキシアリルシラン、2-シアノエチルトリエトキシシラン、3-(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エ
タン、1,6-ビス(トリエトキシシリル)ヘキサンである。
アルコキシシラン類は、市販品を使用してもよいし、合成して使用してもよい。
【0021】
(二酸化炭素)
本反応は、有機カーボネートの原料として二酸化炭素(ガス)を用いる。二酸化炭素は、反応時の圧力が、好ましくは1MPa以上、より好ましくは、2MPa以上、好ましくは20MPa以下、好ましくは15MPa以下であることが好ましい。したがって、二酸化炭素は、反応器に初期圧力(25℃)が、通常0.1MPa以上、好ましくは1MPa以上、通常10MPa以下、好ましくは5MPa以下に充填する。本反応で用いる二酸化炭素は、工業ガスとして調製されたものだけでなく、工場や発電所等からの排出ガスから分離回収したものも用いることができる。なお、反応系においては、本発明の効果を著し
く損なわない範囲で、二酸化炭素以外のガス、例えば、N、Ar等の不活性ガスが含まれていてもよい。
【0022】
(触媒)
本発明の一実施形態においては、アルコキシシラン類と二酸化炭素とを、少なくとも1種の金属触媒の存在下で反応させることが好ましい。
本発明の一実施形態においては、金属触媒が、第4族金属元素及び第14族金属元素からなる群より選ばれる1種以上の金属元素を含むことが好ましい。第4族金属元素としては、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)が挙げられる。また、第14族金属元素としては、スズ(Sn)、鉛(Pb)が挙げられる。
また、本発明の一実施形態においては、金属触媒が、金属アルコキシドであることが好ましい。
【0023】
金属アルコキシドとしては特に限定されないが、好ましくは、下記式で表される4価の金属アルコキシドが挙げられる。
【化8】
【0024】
上記式中、Rはそれぞれ独立して、無置換もしくは置換基を有する炭化水素基を表し;Mは金属原子を表し;pは1~4の整数を表す。
の炭素数は特に限定されないが、通常1以上であり、また、通常20以下、好ましくは12以下、より好ましくは8以下である。
で表される無置換の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、4-フェナントリル基、9-フェナントリル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、4-ピレニル基、1-トリフェニレニル基、2-トリフェニレニル基等の芳香族炭化水素基;等が挙げられる。
で表される炭化水素基が置換基を有する場合、前記置換基としては、重水素原子;メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基等の炭素数3~4のシクロアルキル基;フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等の炭素数6~10の芳香族炭化水素基;フラニル基等の含酸素複素環基、チエニル基等の含硫黄複素環基、ピロリル基、ピリジル基等の含窒素複素環等の複素環基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;イソシアネート基;シアノ基;アミノ基;アミド基;ニトロ基;等が挙げられる。
Mは金属原子を表し、例えば、ジルコニウム、スズ、チタン、アルミニウム、ニオブ、バナジウム又はタンタルが挙げられ、好ましくは、スズ、チタン、又はジルコニウムである。
pは1~4の整数を表し、好ましくは2~4である。
【0025】
4価の金属アルコキシドとしては、例えば、以下が挙げられる。
ジルコニウムアルコキシドとしては、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラアリルオキシジルコニウム、テトラ-n-プロポキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラ-n-ブトキシジルコニウム、テトライソブ
トキシジルコニウム、テトラ-sec-ブトキシジルコニウム、テトラ-t-ブトキシジルコニウム、テトラ-n-ペンチルオキシジルコニウム、テトラシクロペンチルオキシジルコニウム、テトラヘキシルオキシジルコニウム、テトラシクロヘキシルオキシジルコニウム、テトラベンジルオキシジルコニウム、テトラオクチルオキシジルコニウム、テトラキス(2-エチルヘキシルオキシ)ジルコニウム、テトラデシルオキシジルコニウム、テトラドデシルオキシジルコニウム、テトラステアリルオキシジルコニウム、テトラキス(8-ヒドロキシオクチルオキシ)ジルコニウム、ジイソプロポキシビス(2-エチル-1,3-ヘキサンジオラト)ジルコニウム、ビス(2-エチルヘキシルオキシ)ビス(2-エチル-1,3-ヘキサンジオラト)ジルコニウム、テトラキス(2-クロロエトキシ)ジルコニウム、テトラキス(2-ブロモエトキシ)ジルコニウム、テトラキス(2-メトキシエトキシ)ジルコニウム、テトラキス(2-エトキシエトキシ)ジルコニウム、ブトキシトリメトキシジルコニウム、ジブトキシジメトキシジルコニウム、ブトキシトリエトキシジルコニウム、ジブトキシジエトキシジルコニウム、ブトキシトリイソプロポキシジルコニウム、ジブトキシジイソプロポキシジルコニウム、テトラフェノキシジルコニウム、テトラキス(o-クロロフェノキシ)ジルコニウム、テトラキス(m-ニトロフェノキシ)ジルコニウム、テトラキス(p-メチルフェノキシ)ジルコニウム等が挙げられる。
スズアルコキシドとしては、ジブチルジメトキシスズ、ジブチルジエトキシスズ、ジブチルジプロポキシスズ等が挙げられる。
チタンアルコキシドとしては、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラアリルオキシチタン、テトラ-n-プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ-n-ブトキシチタン、テトライソブトキシチタン、テトラ-sec-ブトキシチタン、テトラ-t-ブトキシチタン、テトラ-n-ペンチルオキシチタン、テトラシクロペンチルオキシチタン、テトラヘキシルオキシチタン、テトラシクロヘキシルオキシチタン、テトラベンジルオキシチタン、テトラオクチルオキシチタン、テトラキス(2-エチルヘキシルオキシ)チタン、テトラデシルオキシチタン、テトラドデシルオキシチタン、テトラステアリルオキシチタン、テトラキス(8-ヒドロキシオクチルオキシ)チタン、ジイソプロポキシビス(2-エチル-1,3-ヘキサンジオラト)チタン、ビス(2-エチルヘキシルオキシ)ビス(2-エチル-1,3-ヘキサンジオラト)チタン、テトラキス(2-クロロエトキシ)チタン、テトラキス(2-ブロモエトキシ)チタン、テトラキス(2-メトキシエトキシ)チタン、テトラキス(2-エトキシエトキシ)チタン、ブトキシトリメトキシチタン、ジブトキシジメトキシチタン、ブトキシトリエトキシチタン、ジブトキシジエトキシチタン、ブトキシトリイソプロポキシチタン、ジブトキシジイソプロポキシチタン、テトラフェノキシチタン、テトラキス(o-クロロフェノキシ)チタン、テトラキス(m-ニトロフェノキシ)チタン、テトラキス(p-メチルフェノキシ)チタン、テトラキス(トリメチルシリルオキシ)チタン等が挙げられる。
ハフニウムアルコキシドとしては、テトラメトキシハフニウム、テトラエトキシハフニウム、テトラアリルオキシハフニウム、テトラ-n-プロポキシハフニウム、テトライソプロポキシハフニウム、テトラ-n-ブトキシハフニウム、テトライソブトキシハフニウム、テトラ-sec-ブトキシハフニウム、テトラ-t-ブトキシハフニウム、テトラ-n-ペンチルオキシハフニウム、テトラシクロペンチルオキシハフニウム、テトラヘキシルオキシハフニウム、テトラシクロヘキシルオキシハフニウム、テトラベンジルオキシハフニウム、テトラオクチルオキシハフニウム、テトラキス(2-エチルヘキシルオキシ)ハフニウム、テトラデシルオキシハフニウム、テトラドデシルオキシハフニウム、テトラステアリルオキシハフニウム、テトラキス(8-ヒドロキシオクチルオキシ)ハフニウム、ジイソプロポキシビス(2-エチル-1,3-ヘキサンジオラト)ハフニウム、ビス(2-エチルヘキシルオキシ)ビス(2-エチル-1,3-ヘキサンジオラト)ハフニウム、テトラキス(2-クロロエトキシ)ハフニウム、テトラキス(2-ブロモエトキシ)ハフニウム、テトラキス(2-メトキシエトキシ)ハフニウム、テトラキス(2-エトキシエトキシ)ハフニウム、ブトキシトリメトキシハフニウム、ジブトキシジメトキシハフニウム、ブトキシトリエトキシハフニウム、ジブトキシジエトキシハフニウム、ブトキシト
リイソプロポキシハフニウム、ジブトキシジイソプロポキシハフニウム、テトラフェノキシハフニウム、テトラキス(o-クロロフェノキシ)ハフニウム、テトラキス(m-ニトロフェノキシ)ハフニウム、テトラキス(p-メチルフェノキシ)ハフニウム等が挙げられる。
【0026】
本実施形態においては、反応系に金属アルコキシド化合物を投入してもよいし、反応系で金属アルコキシドを発生させて触媒として用いてもよい。反応系で金属アルコキシドを発生させる方法としては、例えば、ジブチルスズオキシド(BuSnO)をテトラエトキシシランと反応させ、ジブチルジエトキシスズ(BuSn(OEt))を発生させる方法が挙げられる。また、4価の金属アルコキシド以外の金属アルコキシドを用いて、4価の金属アルコキシドを発生させることもできる。4価の金属アルコキシド以外の金属アルコキシドとしては、ナトリウムメトキシド、ナトリウム tert-ブトキシド等が挙げられる。4価の金属アルコキシド以外の金属アルコキシドを用いる場合、例えば、四塩化ジルコニウム(ZrCl)とナトリウムエトキシドを反応させ、テトラエトキシジルコニウムを発生させる方法が挙げられる。また、ジルコノセンジクロリド(CpZrCl)とナトリウムエトキシドを反応させ、ジルコノセンジエトキシドを発生させる方法が挙げられる。ジブチルジクロロスズ(BuSnCl)とナトリウムエトキシドとを反応させ、触媒種であるジブチルジエトキシスズを発生させる方法が挙げられる。また、ハフノセンジクロロリド(CpHfCl)とナトリウムエトキシドとを反応させ、触媒種であるハフノセンジエトキシドを発生させる方法が挙げられる。
本反応においては、金属アルコキシドが、ジルコニウムアルコキシド、スズアルコキシド及びチタンアルコキシドからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。
本反応において、金属アルコキシド触媒は1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
本反応においては、金属アルコキシド触媒の使用量(仕込量)は特に限定されないが、アルコキシシラン類に対し、モル比で、通常0.0001以上、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.002以上、通常0.25以下、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.15以下、さらに好ましくは0.11以下である。触媒を2種以上用いる場合は、金属アルコキシド触媒の合計量を上記範囲とすることが好ましい。
金属アルコキシドを触媒として用いる場合、本反応は以下のような機構で進行すると推定される。触媒となる金属アルコキシドは、二酸化炭素と反応して金属とアルコキシ基の結合に二酸化炭素が挿入した化合物[M-O-(C=O)-OR)]を生成することで、二酸化炭素分子が活性化される。この分子の[O-(C=O)-OR]部位が、金属上のもう一つのアルコキシ基とともに脱離することによって、目的物である有機カーボネートを生成する。アルコキシシランは目的物脱離後の触媒分子に対してアルコキシ基を供与することによってジシロキサンに変換さると同時に、触媒活性を有する金属アルコキシドが再生され、触媒サイクルが進行する。この触媒作用により二酸化炭素とアルコキシシランの反応による有機カーボネート製造が高効率に実現される。
【0027】
(反応溶媒)
本反応では、反応溶媒を使用してもよいし、使用しなくてもよいが、反応溶媒を使用することが好ましい。反応溶媒を使用することで、反応混合物中への二酸化炭素の溶解量が増加して、反応系中の二酸化炭素の濃度が高くなり、反応が進行しやすくなって有機カーボネートの収率が向上すると考えられる。
反応溶媒の種類は特に限定されないが、ブタン、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ピリジン等の複素環式芳香族化合物類;酢酸エチル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチルピロリドン(NMP)等の非プロトン性極性溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン
等のエーテル類;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル、2-シアノピリジン等のニトリル類;アセトン、イソプロピルケトン等のケトン類;等を挙げることができる。この中でも、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、トルエン、ピリジン、2-シアノピリジン、及びベンゾニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。上記の反応溶媒を用いると、より効率良く有機カーボネートを製造することができる。また、反応溶媒は1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
反応溶媒の使用量は、特に限定されないが、例えば、アルコキシシラン類に対して、通常10重量%以上、好ましくは20重量%以上であり、通常200重量%以下、好ましくは100重量%以下で用いることができる。
【0028】
(反応温度)
反応温度は特に限定されないが、通常120℃以上、好ましくは140℃以上、より好ましくは160℃以上であり、通常250℃以下、好ましくは200℃以下である。反応温度がこの範囲であると、有機カーボネートが効率良く製造できる。
【0029】
(反応時間)
反応時間は特に限定されず、反応温度、触媒量、反応スケール等によって適宜調整すればよい。通常、30分以上、好ましくは1時間以上、より好ましくは5時間以上であり、また、通常100時間以下、好ましくは65時間以下、より好ましくは40時間以下、好ましくは24時間以下である。本明細書において、「反応時間」は、反応器内の温度が所定の反応温度に到達してから、当該所定の反応温度で維持する時間とする。
【0030】
(反応器)
反応器は、アルコキシシラン類、金属アルコキシドに対して安定な材質から形成されていれば特に限定されないが、好ましくは耐圧性容器であり、より好ましくはステンレス製のオートクレーブである。
【0031】
(操作手順)
まず、原料のアルコキシシラン類を反応器に加える。この際、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。反応器にアルコキシシラン類を加えた後、反応器内を原料の二酸化炭素で満たし、二酸化炭素雰囲気とする。触媒や溶媒を用いる場合は、二酸化炭素を反応器に導入する前に、反応器に加えればよく、アルコキシシラン類と同時に反応器に加えてもよい。反応中、反応器内には本発明の効果を著しく損なわない範囲において、窒素、アルゴン等の不活性ガス等が含まれていてもよい。また、反応中、攪拌することが好ましく、例えば、磁気撹拌子を用いることができる。反応後は、冷却し、残存するガスを排出してから、反応生成物を回収する。
【0032】
(その他)
本実施形態に係る有機カーボネートの製造方法においては、上記反応工程の他、任意の工程を含んでいてもよい。任意の工程としては、有機カーボネートの純度を高めるための精製工程が挙げられる。精製工程においては、ろ過、吸着、カラムクロマトグラフィー、蒸留等の有機合成分野で通常行われる精製方法を採用することができる。また、本発明の一実施形態においては、反応効率の観点から、アルコキシシラン類としてテトラメトキシシランを用いる場合、テトラメトキシシランと二酸化炭素とをメタノール及び/又はトルエンの非存在下で反応させることが好ましい。
【実施例
【0033】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的
に解釈されるべきものではない。化合物の確認は各種分光学的分析の解析により行った。
【0034】
<実施例1>
磁気撹拌子を入れた10mL容積のSUS製オートクレーブ(耐圧硝子工業株式会社製)に、窒素雰囲気下でアルコキシシランとしてテトラエトキシシラン3.3g(15.8mmol)、触媒としてテトラエトキシジルコニウムを0.3g加え、25℃の温度下でボンベから二酸化炭素ガスを、圧力計(スウェージロックFST社 PGI-50M-MG10)が示す圧力でオートクレーブ内を充填圧力5.0MPaになるよう充填して10分間撹拌しながら保持し、密封した。その後、オートクレーブ内を1200rpmに攪拌しつつ、反応温度が160℃となるよう加熱し、24時間反応させた。反応温度に到達した時のオートクレーブ内の圧力は、8.0MPaであった。冷却後、残存するガスを放出し、反応生成混合物をメシチレンを内部標準物質としてガスクロマトグラフィー(島津製作所 GC-2014ATF/SPL)により分析した。原料であるアルコキシシランを基準とするジエチルカーボネートの収率は51%であった。結果を表1に示す。なお、表中、反応温度に到達した時のオートクレーブ内の圧力を「反応圧力」とする。
【0035】
<実施例2>
実施例1の反応条件に対し、反応時間を15時間とした以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。結果を表1に示す。
【0036】
<実施例3>
実施例1の反応条件に対し、反応時間を6時間とした以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。結果を表1に示す。
【0037】
<実施例4>
実施例1の反応条件に対し、反応温度を120℃、反応時間を15時間とした以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。結果を表1に示す。
【0038】
<実施例5>
実施例1の反応条件に対し、反応温度を140℃、反応時間を15時間とした以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。結果を表1に示す。
【0039】
<実施例6>
実施例1の反応条件に対し、反応温度を180℃、反応時間を15時間とした以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。結果を表1に示す。
【0040】
<実施例7>
実施例1の反応条件に対し、反応温度を200℃、反応時間を15時間とした以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。結果を表1に示す。
【0041】
<実施例8>
実施例1の反応条件に対し、反応温度を180℃、反応時間を15時間、充填圧力を1.0MPa、反応圧力を2.2MPaとした以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。結果を表1に示す。
【0042】
<実施例9>
実施例1の反応条件に対し、反応温度を180℃、反応時間を15時間、充填圧力を2.0MPa、反応圧力を4.0MPaとした以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。結果を表1に示す。
【0043】
<実施例10>
実施例1の反応条件に対し、反応温度を180℃、反応時間を15時間、充填圧力を3.0MPa、反応圧力を5.2MPaとした以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。結果を表1に示す。
【0044】
<実施例11>
実施例1の反応条件に対し、反応温度を180℃、反応時間を15時間、充填圧力を4.0MPa、反応圧力を7.8MPaとした以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。結果を表1に示す。
【0045】
<実施例12>
実施例1の反応条件に対し、反応温度を180℃、反応時間を15時間、触媒量を0.5gとした以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。結果を表1に示す。
【0046】
<実施例13>
実施例1の反応条件に対し、反応温度を180℃、反応時間を15時間、触媒量を0.4gとした以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。結果を表1に示す。
【0047】
<実施例14>
実施例1の反応条件に対し、反応温度を180℃、反応時間を15時間、触媒量を0.2gとした以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。結果を表1に示す。
【0048】
<実施例15>
実施例1の反応条件に対し、反応温度を180℃、反応時間を15時間、触媒量を0.1gとした以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。結果を表1に示す。
【0049】
<実施例16>
実施例1の反応条件に対し、反応温度を180℃、反応時間を63時間、触媒量を0.01gとした以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。結果を表1に示す。また、触媒回転数(TON)は43.0であった。
【0050】
<実施例17>
実施例1の反応条件に対し、反応温度を180℃、反応時間を6時間とし、反応溶媒としてアセトニトリル1.5mLを加えた以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。結果を表2に示す。
【0051】
<実施例18>
実施例1の反応条件に対し、反応温度を180℃、反応時間を6時間とし、反応溶媒としてジメチルホルムアミド1.5mLを加えた以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。結果を表2に示す。
【0052】
<実施例19>
実施例1の反応条件に対し、反応温度を180℃、反応時間を6時間とし、反応溶媒としてテトラヒドロフラン1.5mLを加えた以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。結果を表2に示す。
【0053】
<実施例20>
実施例1の反応条件に対し、反応温度を180℃、反応時間を6時間とし、反応溶媒としてトルエン1.5mLを加えた以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。結果を表2に示す。
【0054】
<実施例21>
実施例1の反応条件に対し、反応温度を180℃、反応時間を6時間とし、反応溶媒として2-シアノピリジン1.04gを加えた以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。結果を表2に示す。
【0055】
<実施例22>
実施例1の反応条件に対し、反応温度を180℃、反応時間を6時間とし、反応溶媒としてピリジン1.5mLを加えた以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。結果を表2に示す。
【0056】
<実施例23>
実施例1の反応条件に対し、反応温度を180℃、反応時間を6時間とし、反応溶媒としてベンゾニトリル1.5mLを加えた以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。結果を表2に示す。
【0057】
<実施例24>
実施例1の反応条件に対し、触媒としてテトラエトキシジルコニウムの代わりにテトラエトキシチタン0.3gを加え、反応時間を15時間とした以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。結果を表3に示す。
【0058】
<実施例25>
実施例1の反応条件に対し、触媒としてテトラエトキシジルコニウムの代わりにテトラエトキシハフニウム0.3gを加え、反応時間を15時間とした以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。結果を表3に示す。
【0059】
<実施例26>
実施例1の反応条件に対し、触媒としてテトラエトキシジルコニウムの代わりにジブチルスズオキシド0.3gを加え、反応時間を15時間とした以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。本反応では、ジブチルスズオキシドはテトラエトキシシランと反応し、触媒種であるジブチルジエトキシスズが反応系中に発生した。結果を表3に示す。
【0060】
<実施例27>
実施例1の反応条件に対し、触媒としてテトラエトキシジルコニウムの代わりに四塩化ジルコニウム0.26gとナトリウムエトキシド0.3gを加え、反応温度を180℃、反応時間を6時間とした以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。本反応では、四塩化ジルコニウムとナトリウムエトキシドとが反応し、触媒種であるテトラエトキシジルコニウムが反応系中に発生した。結果を表3に示す。
【0061】
<実施例28>
実施例1の反応条件に対し、触媒としてテトラエトキシジルコニウムの代わりにジルコノセンジクロリド0.32gとナトリウムエトキシド0.15gを加え、反応温度を180℃、反応時間を6時間とした以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。本反応では、ジルコノセンジクロリドとナトリウムエトキシドとが反応し、触媒種であるジルコノセンジエトキシドが反応系中に発生した。結果を表3に示す
【0062】
<実施例29>
実施例1の反応条件に対し、触媒としてテトラエトキシジルコニウムの代わりにジブチルジクロロスズ0.33gとナトリウムエトキシド0.15gを加え、反応温度を180℃、反応時間を6時間とした以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。本反応では、ジブチルジクロロスズとナトリウムエトキシドとが反応し、触媒種であるジブチルジエトキシスズが反応系中に発生した。結果を表3に示す。
【0063】
<実施例30>
実施例1の反応条件に対し、触媒としてテトラエトキシジルコニウムの代わりにハフノセンジクロロリド0.42gとナトリウムエトキシド0.15gを加え、反応温度を180℃、反応時間を6時間とした以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。本反応では、ハフノセンジクロロリドとナトリウムエトキシドとが反応し、触媒種であるハフノセンジエトキシドが反応系中に発生した。結果を表3に示す。
【0064】
<実施例31>
実施例1の反応条件に対し、アルコキシシランとしてテトラエトキシシランの代わりにトリエトキシメチルシラン2.8gを加え、反応温度を180℃とした以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。結果を表3に示す。
【化9】
【0065】
<実施例32>
実施例1の反応条件に対し、アルコキシシランとしてテトラエトキシシランの代わりにジエトキシジメチルシラン2.3gを加え、反応温度を180℃とした以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。結果を表3に示す。
【化10】
【0066】
<実施例33>
実施例1の反応条件に対し、アルコキシシランとしてテトラエトキシシランの代わりにエトキシトリメチルシラン1.85gを加え、反応温度を180℃とした以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。結果を表3に示す。
【化11】
【0067】
<実施例34>
実施例1の反応条件に対し、アルコキシシランとしてテトラエトキシシランの代わりにトリエトキシフェニルシラン3.78gを加え、反応温度を180℃とした以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。結果を表3に示す。
【化12】
【0068】
<実施例35>
実施例1の反応条件に対し、アルコキシシランとしてテトラエトキシシランの代わりにトリエトキシビニルシラン3.21gを加え、反応温度を180℃、反応時間を15時間とした以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。結果を表3に示す。
【化13】
【0069】
<実施例36>
実施例1の反応条件に対し、アルコキシシランとしてテトラエトキシシランの代わりにトリエトキシアリルシラン3.2gを加え、反応温度を180℃、反応時間を15時間とした以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。結果を表3に示す。
【化14】
【0070】
<実施例37>
実施例1の反応条件に対し、アルコキシシランとしてテトラエトキシシランの代わりに2-シアノエチルトリエトキシシラン3.6gを加え、反応温度を180℃、反応時間を15時間とした以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。結果を表3に示す。
【化15】
【0071】
<実施例38>
実施例1の反応条件に対し、アルコキシシランとしてテトラエトキシシランの代わりに3-(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート4.1gを加え、反応温度を180℃、反応時間を6時間とした以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネート
の製造を行った。結果を表3に示す。
【0072】
<実施例39>
実施例1の反応条件に対し、アルコキシシランとしてテトラエトキシシランの代わりに1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン3.4gを加え、触媒としてテトラエトキシ
ジルコニウムを0.18g、反応温度を180℃、反応時間を15時間とした以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。結果を表3に示す。
【0073】
<実施例40>
実施例1の反応条件に対し、アルコキシシランとしてテトラエトキシシランの代わりに1,6-ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン3.4gを加え、触媒としてテトラエトキ
シジルコニウムを0.18g、反応温度を180℃、反応時間を15時間とした以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。結果を表3に示す。
【0074】
<実施例41>
実施例1の反応条件に対し、アルコキシシランとしてテトラエトキシシランの代わりにテトラメトキシシラン2.48gを加え、触媒としてテトラエトキシジルコニウムの代わりにジルコノセンジクロリド0.32gとナトリウムメトキシド0.11gを加え、反応温度を180℃、反応時間を6時間とした以外は、実施例1と同様の操作によりジメチルカーボネートの製造を行った。結果を表3に示す。
【0075】
<比較例1>
実施例1の反応条件に対し、アルコキシシランの代わりに原料としてエタノール0.72g(15.7mmol)を加えた以外は、実施例1と同様の操作によりジエチルカーボネートの製造を行った。原料であるエタノールを基準とするジエチルカーボネートの収率は0.4%であった。結果を表3に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
実施例1~3から、反応時間を長くすることにより、有機カーボネートの収率が高くなることがわかる。
実施例4~7と実施例2との比較から、120℃~180℃の温度範囲おいて、反応温度が高くなるにつれ、有機カーボネートの収率が高くなる傾向がわかる。また、180℃での有機カーボネートの収率が200℃での収率より高いことから、反応温度が高過ぎると、収率が下がる可能性があることが示唆される。
実施例8~11と実施例6との比較から、二酸化炭素の充填圧力が高い程、有機カーボネートの収率が高くなることがわかる。
実施例6、12~15から、アルコキシシラン類に対して、モル比で0.023~0.12という触媒量で有機カーボネートを40%以上という高い収率で得られたことがわかる。また、実施例16から、アルコキシシラン類に対して、モル比で0.0023いう少ない触媒量で、反応温度、反応時間により、有機カーボネートを20%という収率で得られたことがわかる。
実施例17~23から、2-シアノピリジン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ピリジン、トルエン、テトラヒドロフラン等の溶媒を用いて、6時間の反応時間で効率良く有機カーボネートが得られたことがわかる。
実施例24~30から、様々な金属アルコキシドを触媒として、アルコキシシラン類と二酸化炭素から有機カーボネートが得られたことがわかる。
実施例31~39から、モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシランを原料として用いても、アルコキシシラン類と二酸化炭素から有機カーボネートが得られたことが示された。
実施例1と比較例1との比較から、テトラアルコキシシラン類を二酸化炭素と反応させることにより、原料としてアルコキシシラン類を用いずにアルコールであるエタノールを二酸化炭素と反応させた場合よりも、100倍以上の有機カーボネートを得られたことがわかる。本反応により、アルコールと二酸化炭素から有機カーボネートを製造するより、高収率で有機カーボネートを得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明によれば、二酸化炭素とアルコキシシラン類を原料として有機カーボネートを製造することができる。本発明によると、二酸化炭素の有効活用を可能とする反応により、ポリカーボネートやポリウレタンなどの有用化合物の合成原料やリチウムイオン電池の電解液など幅広い用途に用いられ得る有機カーボネートが提供される。