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特許7572009CHA型ゼオライト材料、及びシクロアルキルアンモニウム化合物とヒドロキシアルキルアンモニウム化合物との組み合わせを使用するその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】CHA型ゼオライト材料、及びシクロアルキルアンモニウム化合物とヒドロキシアルキルアンモニウム化合物との組み合わせを使用するその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/48 20060101AFI20241016BHJP
   B01J 29/76 20060101ALI20241016BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20241016BHJP
   B01D 53/90 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
C01B39/48
B01J29/76 A ZAB
B01D53/86 222
B01D53/90
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021536068
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-14
(86)【国際出願番号】 EP2019085854
(87)【国際公開番号】W WO2020127425
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】18213896.6
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(72)【発明者】
【氏名】シュライアー,ハンナー
(72)【発明者】
【氏名】パルフレスク,アンドレイ-ニコラエ
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,ウルリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ザイデル,カルシュテン
(72)【発明者】
【氏名】大久保 達也
(72)【発明者】
【氏名】脇原 徹
(72)【発明者】
【氏名】伊與木 健太
(72)【発明者】
【氏名】チャイキッチシルプ,ワッチャロップ
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-518251(JP,A)
【文献】SARKER, Mithun et al.,Synthesis of SSZ-13 zeolite in the presence of dimethylethylcyclohexyl ammonium ion and direct conversion of ethylene to propylene with the SSZ-13,Chemical Engineering Journal,2019年,Vol.377,article number 120116, pp.1-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 39/48
B01J
B01D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
YO及びXを含むCHA型骨格構造を有するゼオライト材料の製造方法であって、前記方法が、以下の工程:
(1) 1種以上のYO源と、1種以上のX源と、構造指向剤としての1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物及び1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物とを含む混合物を提供する工程、
(2) CHA型骨格構造を有するゼオライト材料を得るために、前記の工程(1)で得られた混合物を結晶化する工程、を含み、
ここで、Yは四価の元素であり、Xは三価の元素であり、
、R、R、R、R及びRは、互いに独立してアルキルを表し、
は、C2nOH(n=1~6である)を表し、そして
は、シクロアルキルを表す、製造方法。
【請求項2】
、R、R、R、R、及びRが互いに独立して、場合により分岐を有している(C~C)アルキルを表す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物が、1種以上のN,N,N-トリ(C~C)アルキル-(C~C)シクロアルキルアンモニウム化合物を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物が、(C~C)ヒドロキシアルキル-トリ(C~C)アルキルアンモニウム化合物からなる群から選択される1種以上の化合物を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
Yが、Si、Sn、Ti、Zr、Ge、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から選択される、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
Xが、Al、B、In、Ga、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から選択される、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程(1)による前記混合物が、1種以上の溶媒をさらに含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程(1)により提供される前記混合物中における、1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンRの前記1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンRに対するモル比(すなわち、R:R)が、0.01~5の範囲である、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程(2)における結晶化が前記混合物の加熱を伴う、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程(2)における結晶化をソルボサーマル条件下で行う、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
以下の工程、
(3) 好ましくは濾過及び/又は遠心分離によって、前記ゼオライト材料を分離する工程、
及び/又は
(4) 前記ゼオライト材料を洗浄する工程、
及び/又は
(5) 前記ゼオライト材料を乾燥及び/又はか焼する工程、
及び/又は
(6) 前記ゼオライト材料をイオン交換処理に供する工程、
のうちの1以上をさらに含み、
前記の工程(3)及び/又は(4)及び/又は(5)及び/又は(6)を、任意の順序で行うことができる、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
工程(1)で提供される前記混合物が種結晶をさらに含む、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
工程(2)における結晶化のために工程(1)において提供される前記混合物が、CHA型骨格構造を有するゼオライト材料を含まない、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
モレキュラーシーブとしての、吸着剤としての、イオン交換のための、又は触媒としての、及び/又は触媒担体としての、YO 及びX を含むCHA型骨格構造を有するゼオライト材料の製造方法によって得られるCHA型骨格構造を有する合成ゼオライト材料の使用方法であって、
前記製造方法が、以下の工程:
(1) 1種以上のYO 源と、1種以上のX 源と、構造指向剤としての1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR -含有化合物及び1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR -含有化合物とを含む混合物を提供する工程、
(2) CHA型骨格構造を有するゼオライト材料を得るために、前記の工程(1)で得られた混合物を結晶化する工程、を含み、
ここで、Yは四価の元素であり、Xは三価の元素であり、
、R 、R 、R 、R 及びR は、互いに独立してアルキルを表し、
は、C 2n OH(n=1~6である)を表し、そして
は、シクロアルキルを表す、
を含む、CHA型骨格構造を有する合成ゼオライト材料の使用方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CHA型骨格構造を有するゼオライト材料の製造方法に関するものであり、該方法は、1種以上のシクロアルキル含有テトラアルキルアンモニウム化合物、及び1種以上のC2nOH(n=1~6である)含有テトラアルキルアンモニウム化合物を構造指向剤として用いる。さらに、本発明は、本発明の方法により得ることができる及び/又は得られるCHA型骨格構造を有する合成ゼオライト材料、及び本発明のゼオライト材料の、特に触媒としての使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モレキュラーシーブは、ゼオライトの命名法に関するIUPAC委員会の規則に従って、国際ゼオライト協会の構造委員会によって分類される。この分類によると、構造が確立されている、骨格型ゼオライト及び他の結晶微小孔モレキュラーシーブは、3文字コードが割り当てられ、Atlas of Zeolite Framework Types,第5版、Elsevier、ロンドン、イギリス(2001年)に記載されている。
【0003】
前記ゼオライト材料の中で、チャバザイト(Chabazite)は、よく研究された例であり、CHA骨格構造を有するゼオライト材料のクラスの標準的な代表である。チャバザイトのようなアルミノシリケートの他に、CHA骨格構造を有するゼオライト材料のクラスは、さらに骨格構造中にリンを含み、そのためケイ素アルミノリン酸塩(silicoaluminophosphate)(SAPO)と称される多数の化合物を含むことが知られている。前記化合物に加えて、さらに、その骨格中にアルミニウム及びリンを含有するが、シリカはほとんど又は全く含有せず、そのためアルミノリン酸塩(aluminophosphate)(APO)と称されるCHA構造型のモレキュラーシーブが知られている。CHA型骨格構造を有するモレキュラーシーブのクラスに属するゼオライト材料は、さまざまな用途に使用され、特に、最も重要な用途を2例ほど挙げると、メタノールからオレフィンへの触媒作用及び窒素酸化物NOの選択的触媒還元のような広範囲の反応における不均一触媒としての機能を果たす。CHA骨格型のゼオライト材料は、二重6員環(D6R)及びケージを含有する三次元8員環(8MR)細孔/チャンネル(channel)系によって特徴付けられる。
【0004】
CHA型骨格構造を有するゼオライト材料、及び特に包含された銅イオンを有するチャバザイト(Cu-CHA)は、自動車の排気におけるNO画分の選択的触媒還元(SCR)のための不均一触媒として広く使用されている。CHAケージにおける微小細孔開口及び銅イオンの配列に基づいて、これらの触媒系は、HOの存在下で700℃より高い温度に耐える、特有の熱安定性を有する。
【0005】
CHAの工業的な製造のために、他の高価な有機テンプレートの中でコストの大きい1-アダマンチルトリメチルアンモニウムヒドロキシドが、それらの調製のための合成手段における構造指向剤として典型的に使用されている。例えばUS4,544,538は、構造指向剤として、1N-アルキル-3-キヌクリジノール、N,N,N-テトラアルキル-1-アダマントアンモニウム、又はN,N,N-トリアルキル-エキソ-アミノノルボルナンを用いるSSZ-13の製造に関し、SSZ-13ゼオライト材料はCHA型骨格構造を有する。
【0006】
一方、WO-A-2008/083048は、種結晶の存在下で、特定のN,N,N-トリメチルベンジル第4級アンモニウムカチオンを用いるSSZ-13の製造方法に関する。同様に、WO-A-2008/039742は、SSZ-13の製造方法に関し、有機テンプレートとしてN,N,N-トリメチルベンジル第4級アンモニウムカチオン及びN,N,N-テトラメチル-1-アダマントアンモニウムの混合物を使用して、費用対効果を向上するため、SSZ-13の合成において通常使用される、コストの大きいN,N,N-テトラメチル-1-アダマントアンモニウムの量の削減を試みている。
【0007】
WO-A-2008/033229は、有機テンプレート剤としてジシクロアルキルアンモニウム化合物を用いる微小孔材料の製造方法に関する。
【0008】
WO2009/141324A1は、CHA骨格構造を有するCu含有ゼオライトを直接合成する方法に関するものであり、前記文献は、CHA骨格構造を有するゼオライト材料を得るための可能な構造指向剤として、複数の化合物の中からN,N,N-トリメチルシクロヘキシルアンモニウム化合物を挙げている。さらに、前記文献には、1-アダマンチルトリメチルアンモニウム化合物と、テトラメチルアンモニウム化合物であってよいさらなるアンモニウム化合物とを組み合わせて使用することが教示されている。
【0009】
一方で、WO2011/064186A1及びEP2325143A2はそれぞれ、CHA骨格構造を有するゼオライトの製造方法に関するものであり、少なくとも1つの有機構造指向剤に加えてテトラメチルアンモニウムヒドロキシドが使用される。この効果のために使用され得る構造指向剤のうち、前記文献は、CHA骨格構造を有するゼオライト材料を得るための可能な構造指向剤として、複数の化合物の中からN,N,N-トリメチルシクロヘキシルアンモニウム化合物を挙げている。しかしながら前記文献において、N,N,N-トリメチル-1-アダマンチルトリメチルアンモニウム化合物は、前記材料を得るために好ましく且つ効果的と教示されている。
【0010】
US4,610,854 は、CHA型以外の骨格構造を示すゼオライト材料である、SSZ-15の製造のためのトリメチルシクロヘキシルアンモニウムの使用を開示している。一方、US-A-2007/0043249は、CHA骨格構造を有するゼオライト材料の製造のための有機テンプレートとして、トリメチルシクロヘキシルアンモニウムを含むテトラアルキルアンモニウム化合物の群の使用方法に関する。しかしながら前記材料は、それらの各骨格構造中に、Pを必然的に含むアルミノ-又はケイ素アルミノリン酸塩に制限されている。
【0011】
Zonesら、「A Study of Guest/Host Energetics for the Synthesis of Cage Structures NON and CHA」、Studies in Surface Science and Catalysis、第84巻、第29~36頁、Elsevier Science B.V.(1994年)は、トリメチルシクロヘキシルアンモニウムカチオンを含む様々な有機テンプレートを用いるSSZ-13の合成を記載しており、後者はアダマンチルトリメチルアンモニウムカチオンの使用と比較して、特に非常に低い結晶化速度を示すであろう。
【0012】
WO2013/182974A1は、当技術分野で使用されている高価なアダマンチルアンモニウム化合物の代わりに、CHA構造型のゼオライト材料を合成するための有機テンプレートとしてシクロアルキルアンモニウム化合物を使用することを開示している。さらに、WO2013/182974A1の方法では、48時間以上の結晶化時間を伴う。US2017/0113210A1もCHA構造型の特定のゼオライト材料を合成するためのアダマンチルアンモニウム化合物に代わる有機テンプレートの使用に関するものであり、有機テンプレートとしてコリンカチオンが採用されている。しかし、WO2013/182974A1について、US2017/0113210A1では、結晶化時間が4日から6日に延長されている。
【0013】
Mithunら、「Synthesis of SSZ-13 zeolite in the presence of dimethylethylcyclohexyl ammonium ion and direct conversion of ethylene to propylene with the SSZ-13」、Chemical Engineering Journal、2018年、第1~14頁では、有機構造指向剤としてのジメチルエチルシクロヘキシルアンモニウム又はコリンカチオンのいずれかと、シリカ及びアルミナの源としての高いSARを有するゼオライトYとを用いる、SSZ-13ゼオライトの合成を開示している。Ruinianら、「Template Design and Economical Strategy for the Synthesis of SSZ-13(CHA-Type)Zeolite as an Excellent Catalyst for the Selective Catalytic Reduction of NOx by Ammonia」、CHEMCATCHEM,第7巻,no.23,2015年、第3842~3847頁には、シリカ源、アルミナ源、SSZ-13種、及びコリンカチオンを用いるSSZ-13の合成が開示されている。WO2017/211237A1では、トリメチルシクロヘキシルアンモニウムカチオン及びテトラメチルアンモニウムカチオン、シリカ源、アルミナ源、及びSSZ-13種結晶を用いるSSZ-13ゼオライトの合成が開示されている。
【0014】
先行技術の不都合を克服するため、WO2015/185625A1は、より短い合成期間を提供するのに、有機テンプレートとして用いられるシクロアルキルアンモニウム化合物に加え、1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンを使用することを教示しており、よって、先行技術と比較して非常にコスト効率の高い合成方法を提供している。しかし、テトラアルキルアンモニウムカチオンは毒性が強く、その使用により安全性及び環境面での問題が生じるという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】US4,544,538
【文献】WO-A-2008/083048
【文献】WO-A-2008/039742
【文献】WO-A-2008/033229
【文献】WO2009/141324A1
【文献】WO2011/064186A1
【文献】EP2325143A2
【文献】US4,610,854
【文献】US-A-2007/0043249
【文献】WO2013/182974A1
【文献】US2017/0113210A1
【文献】WO2017/211237A1
【文献】WO2015/185625A1
【非特許文献】
【0016】
【文献】Zonesら、「A Study of Guest/Host Energetics for the Synthesis of Cage Structures NON and CHA」、Studies in Surface Science and Catalysis、第84巻、第29~36頁、Elsevier Science B.V.(1994年)
【文献】Mithunら、「Synthesis of SSZ-13 zeolite in the presence of dimethylethylcyclohexyl ammonium ion and direct conversion of ethylene to propylene with the SSZ-13」、Chemical Engineering Journal、2018年、第1~14頁
【文献】Ruinianら、「Template Design and Economical Strategy for the Synthesis of SSZ-13(CHA-Type)Zeolite as an Excellent Catalyst for the Selective Catalytic Reduction of NOx by Ammonia」、CHEMCATCHEM,第7巻,no.23,2015年、第3842~3847頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
このように、費用対効果の高い有機テンプレートとしてシクロアルキルアンモニウム化合物を使用し、CHA構造型を有するゼオライト材料を短時間で合成することができるようになったが、特に、合成期間を短縮するために用いられるテトラアルキルアンモニウムなどの化合物の毒性に関連して、これらの方法をさらに改善する必要が残っている。
【0018】
従って本発明の目的は、CHA型骨格構造を有するゼオライト材料を製造するための、特にプロセスの性能の観点及び費用対効果の観点で改善された方法を提供することであった。よって驚くべきことに、有機テンプレートとして、1種以上のシクロアルキルアンモニウム化合物に加えて、1種以上のコリン含有化合物を用いることにより、改善された方法が得られることが見出された。特に、驚くべきことに、このような組み合わせを使用することで、特にその毒性が原因で特別な安全対策が必要とされる添加剤を使用することなく、その結果、操作のコストを大幅に増加させることなく、CHA型骨格構造を有するゼオライト材料を短時間で合成できることが見出された。さらに、それとは独立して、驚くべきことに、1種以上のシクロアルキルアンモニウム化合物に加えた1種以上のコリン含有化合物の組み合わせを用いると、特に、例えばNO排出物を処理するためのSCR触媒用途における触媒又は触媒担体としてのその使用に関して、独特の物理的及び化学的特性を有するCHA型ゼオライトが得られることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0019】
従って本発明は、YO及びXを含むCHA型骨格構造を有するゼオライト材料の製造方法に関するものであり、前記方法は、以下の工程:
(1) 1種以上のYO源と、1種以上のX源と、構造指向剤としての1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物及び1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物とを含む混合物を提供する工程、
(2) CHA型骨格構造を有するゼオライト材料を得るために、工程(1)で得られた混合物を結晶化する工程、を含み、
ここで、Yは四価の元素であり、Xは三価の元素であり、
、R、R、R、R及びRは、互いに独立してアルキルを表し、
は、C2nOH(n=1~6である)を表し、そして
は、シクロアルキルを表す。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施例1及び実施例3からそれぞれ得られたゼオライト材料について、それぞれ銅を担持し成形した後に行ったSCR試験の結果を示す。
図2図2は、実施例1及び実施例3からそれぞれ得られたゼオライト材料について、それぞれ銅を担持し成形した後に行ったSCR試験中のNO生成率の結果を示す
図3図3は、実施例3により得られたゼオライト材料のSEM画像を示す。
図4図4は、実施例1及び実施例3からそれぞれ得られたゼオライト材料について、それぞれ銅を担持し成形した後に行ったSCR試験の結果を示す。
図5図5は、実施例1及び実施例3からそれぞれ得られたゼオライト材料について、それぞれ銅を担持し成形した後に行ったSCR試験中のNO生成率の結果を示す
【発明を実施するための形態】
【0021】
工程(1)で提供される混合物に含有されるさらなる成分に関して、特に制限はなく、任意の好適なさらなる化合物がそこに含有されてよいが、CHA型骨格構造を有するゼオライト材料が工程(2)で結晶化されることが条件である。しかしながら、本発明によれば、工程(1)で提供される混合物が、実質的な量のZ源を含有しないことが好ましく、ZはPであり、好ましくはP及びAsであり、より好ましくは、Zは、工程(2)で結晶化させるCHA型骨格構造におけるZ源である任意の五価の元素である。本発明によれば、工程(1)のZ源の量に対する「実質的な」という用語は、好ましくは、酸化物として計算される1種以上のYO源100質量%に基づいて、元素として計算されるZの1質量%以下の量を指し、より好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下、より好ましくは0.0005質量%以下、及びより好ましくは0.0001質量%以下を指す。さらに、それとは独立して、工程(1)で提供される混合物は、テトラメチルアンモニウム含有化合物及び/又はトリメチルベンジルアンモニウム含有化合物の如何なる実質的な量も含有しないことが好ましく、より好ましくは、テトラメチルアンモニウム化合物及び/又はトリアルキルベンジルアンモニウム化合物の如何なる実質的な量も含有せず、より好ましくは、工程(1)で提供される混合物は、構造指向剤として1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物及び1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物以外の有機テンプレートの如何なる実質的な量も含有せず、より好ましくは、工程(1)で提供される混合物は、1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物、1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物以外の構造指向剤の如何なる実質的な量も含有せず、そしてなおより好ましくは、工程(1)で提供される混合物は、工程(2)におけるCHA型骨格構造を有するゼオライト材料の結晶化のための構造指向剤として、1種以上のN,N,N-トリメチル-シクロヘキシルアンモニウム化合物及び1種以上の(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム化合物、及び好ましくはN,N,N-トリメチル-シクロヘキシルアンモニウムヒドロキシド及び(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシドのみを含有する。有機テンプレートの量に関する、及び特にテトラメチルアンモニウム及び/又はトリアルキルベンジルアンモニウム化合物の量に関する「実質的な」という用語に関して、前記用語は、好ましくは、有機テンプレート、及び/又は塩の形態で提供される場合の有機テンプレート化合物の量が、酸化物として計算される1種以上のYO源100wt%に基づいて、1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下、より好ましくは0.0005質量%以下、及びより好ましくは0.0001質量%以下の量であることを指す。
【0022】
さらに、それとは独立して、本発明によれば、工程(1)で提供される混合物がCHA型骨格構造を有するゼオライト材料を含まないことが好ましく、より好ましくは、工程(1)で提供される混合物はゼオライト材料を含まない。
【0023】
アルキル基R、R、R、R、R、及びRに関して、本発明によれば、これらが互いに独立して、場合により分岐を有している(C~C)アルキル、好ましくは(C~C)アルキル、より好ましくは(C~C)アルキル、より好ましくは(C~C)アルキル、及びなおより好ましくはメチル又はエチルを表すことが好ましく、なおより好ましくは、R、R、R、R、R、及びRはメチルを表す。
【0024】
に関しては、本発明によれば、これがC2nOHを表すことが好ましく(n=1~5、より好ましくはn=1~4、より好ましくはn=1~3、より好ましくはn=1又は2である)、より好ましくは、RはCOHを表し、より好ましくは2-ヒドロキシエチルを表す。
【0025】
一方で、Rに関しては、本発明によれば、これが場合により5~8員のシクロアルキル、より好ましくは5~7員のシクロアルキル、より好ましくは5又は6員のシクロアルキルを表すことが好ましく、なおより好ましくは、Rは場合により複素環の6員のシクロアルキル、好ましくはシクロヘキシルを表す。
【0026】
本発明によれば、構造指向剤として工程(1)の混合物に含有される1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物に関して、特に制限は適用されないが、工程(2)でCHA型骨格構造を有するゼオライト材料が結晶化することが条件である。しかし、本発明によれば、1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物が、1種以上のN,N,N-トリ(C~C)アルキル-(C~C)シクロアルキルアンモニウム化合物、より好ましくは、1種以上のN,N,N-トリ(C~C)アルキル-(C~C)シクロアルキルアンモニウム化合物、より好ましくは1種以上のN,N,N-トリ(C~C)アルキル-(C~C)シクロアルキルアンモニウム化合物、より好ましくは1種以上のN,N,N-トリ(C~C)アルキル-シクロペンチルアンモニウム化合物及び/又は1種以上のN,N,N-トリ(C~C)アルキル-シクロヘキシルアンモニウム化合物、より好ましくは、N,N,N-トリエチル-シクロヘキシルアンモニウム、N,N-ジエチル-N-メチル-シクロヘキシルアンモニウム、N,N-ジメチル-N-エチル-シクロヘキシルアンモニウム、N,N,N-トリメチル-シクロヘキシルアンモニウム化合物、及びこれらの2種以上の混合物から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましく、より好ましくは、1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物は、1種以上のN,N,N-トリメチル-シクロヘキシルアンモニウム化合物を含み、そしてより好ましくは、1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物は、1種以上のN,N,N-トリメチル-シクロヘキシルアンモニウム化合物からなる。
【0027】
それとは独立して、1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物に関しても、特に制限は適用されないが、工程(2)でCHA型骨格構造を有するゼオライト材料が結晶化することが条件である。しかし、本発明によれば、1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物が、(C~C)ヒドロキシアルキル-トリ(C~C)アルキルアンモニウム化合物、より好ましくは(C~C)ヒドロキシアルキル-トリ(C~C)アルキルアンモニウム化合物、より好ましくは(C~C)ヒドロキシアルキル-トリ(C~C)アルキルアンモニウム化合物、及びより好ましくは(C~C)ヒドロキシアルキル-トリ(C~C)アルキルアンモニウム化合物からなる群から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましく、ここで、アルキル置換基は、互いに独立して場合により分岐を有しており、そしてより好ましくは、1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物は、場合により分岐を有しているヒドロキシプロピル-トリプロピルアンモニウム化合物、ヒドロキシプロピル-トリエチルアンモニウム化合物、ヒドロキシプロピル-トリメチルアンモニウム化合物、ヒドロキシエチル-トリプロピルアンモニウム化合物、ヒドロキシエチル-トリエチルアンモニウム化合物、ヒドロキシエチル-トリメチルアンモニウム化合物、ヒドロキシメチル-トリプロピルアンモニウム化合物、ヒドロキシメチル-トリエチルアンモニウム化合物、ヒドロキシメチル-トリメチルアンモニウム化合物、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から、好ましくは、場合により分岐を有しているヒドロキシエチル-トリエチルアンモニウム化合物、ヒドロキシエチル-トリメチルアンモニウム化合物、ヒドロキシメチル-トリエチルアンモニウム化合物、ヒドロキシメチル-トリメチルアンモニウム化合物、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から、好ましくはヒドロキシエチル-トリメチルアンモニウム化合物からなる群から、より好ましくは(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム化合物からなる群から選択され、ここでより好ましくは、1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物が1種以上の(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム化合物を含み、そしてより好ましくは、1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物が1種以上の(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム化合物からなる。
【0028】
1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物及び/又は1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物が工程(1)で混合物に提供される形態に関して、特に制限は適用されないが、本発明によれば、1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物及び/又は1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物が互いに独立して塩であり、好ましくは、ハロゲン化物、好ましくは塩化物及び/又は臭化物、より好ましくは塩化物、水酸化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、酢酸塩、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から、より好ましくは塩化物、水酸化物、硫酸塩、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から選択される1種以上の塩であることが好ましく、より好ましくは1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物及び/又は1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物が、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド及び/又はクロリドであり、なおより好ましくはテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドである。
【0029】
1種以上のYO源に含有される四価の元素Yについて、特に制限は適用されないが、工程(2)でYO及びXを含むCHA型骨格構造を有するゼオライト材料が結晶化することが条件である。しかし、本発明によれば、Yが、Si、Sn、Ti、Zr、Ge、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から選択されることが好ましく、Yは好ましくはSiである。
【0030】
工程(1)で混合物に提供される1種以上のYO源に関して、本発明によれば、これがヒュームドシリカ、シリカヒドロゾル、反応性アモルファス固体シリカ、シリカゲル、ケイ酸、水ガラス、メタケイ酸ナトリウム水和物、セスキシリケート、ジシリケート、コロイダルシリカ、ケイ酸エステル、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から、より好ましくはヒュームドシリカ、シリカヒドロゾル、反応性アモルファス固体シリカ、シリカゲル、ケイ酸、コロイダルシリカ、ケイ酸エステル、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から、より好ましくはヒュームドシリカ、シリカヒドロゾル、反応性アモルファス固体シリカ、シリカゲル、コロイダルシリカ、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から選択される、1種以上の化合物を含むことが好ましく、なおより好ましくは、1種以上のYO源がヒュームドシリカ及び/又はコロイダルシリカ、好ましくはコロイダルシリカを含む。
【0031】
1種以上のX源に含有される三価の元素Xについて、特に制限は適用されないが、工程(2)でYO及びXを含むCHA型骨格構造を有するゼオライト材料が結晶化することが条件である。しかし、本発明によれば、Xが、Al、B、In、Ga、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から選択されることが好ましく、Xは、好ましくはAl及び/又はBであり、より好ましくはAlである。
工程(1)で混合物に提供される1種以上のX源に関して、本発明によれば、これがアルミナ、アルミネート、アルミニウム塩、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から、より好ましくは、アルミナ、アルミニウム塩、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から、より好ましくは、アルミナ、アルミニウムトリ(C~C)アルコキシド、AlO(OH)、Al(OH)、ハロゲン化アルミニウム、好ましくはフッ化アルミニウム及び/又は塩化アルミニウム及び/又は臭化アルミニウム、より好ましくはフッ化アルミニウム及び/又は塩化アルミニウム、及びなおより好ましくは塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、フルオロケイ酸アルミニウム、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から、より好ましくはアルミニウムトリ(C~C)アルコキシド、AlO(OH)、Al(OH)、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から、より好ましくはアルミニウムトリプロポキシド、AlO(OH)、硫酸アルミニウム、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましく、より好ましくは、1種以上のX源がアルミニウムトリイソプロポキシドを含み、なおより好ましくは、1種以上のX源がアルミニウムトリイソプロポキシドからなる。
【0032】
本発明によれば、工程(1)で提供される混合物に含有される化合物は制限されず、ここには任意の好適なさらなる化合物が含有されていてよい。よって工程(1)で提供される混合物が、1種以上の溶媒をさらに含むことが好ましく、前記1種以上の溶媒は、好ましくは、水、好ましくは蒸留水を含み、より好ましくは、工程(1)による混合物中の1種以上の溶媒として、水、好ましくは蒸留水が含有される。さらに、それとは独立して、本発明によれば、工程(1)で提供される混合物が種結晶、より好ましくはCHA型骨格構造を有するゼオライト材料を含む種結晶をさらに含むことが好ましく、本発明によれば、種結晶のゼオライト材料は、本出願に記載の本発明による方法の特定の好ましい実施態様のいずれか1つにより得ることができる及び/又は得られることが好ましい。
【0033】
本発明によれば、工程(1)で提供される混合物中の化合物の量に関して、特に制限は適用されないが、工程(2)でCHA型骨格構造を有するゼオライト材料が結晶化することが条件である。よって工程(1)で提供される混合物中に好ましくは含有される種結晶に関して、工程(1)による混合物中のその量が、少なくとも1種のYO源中のYO100質量%に基づいて、0.1~25質量%の範囲、YO100質量%に基づいて、好ましくは0.5~22質量%、より好ましくは1~19質量%、より好ましくは1.5~17質量%、より好ましくは3~15質量%、より好ましくは5~13質量%、より好ましくは7~12質量%、及びなおより好ましくは9~11質量%の範囲であることが好ましい。しかし、本発明によれば、工程(1)で提供される混合物が、如何なる種結晶も含まないことが代替的に好ましい。
【0034】
さらに、それとは独立して、本発明によれば、工程(1)により提供される混合物中の1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR:YOのモル比が、0.005~0.5の範囲、より好ましくは0.01~0.25、より好ましくは0.03~0.2、より好ましくは0.05~0.15、より好ましくは0.07~0.13、より好ましくは0.09~0.12、及びなおより好ましくは0.1~0.11の範囲であることが好ましい。さらに、それとは独立して、本発明によれば、工程(1)により提供される混合物中の1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR:YOのモル比が、0.001~2.0の範囲、より好ましくは0.005~1.0、より好ましくは0.01~0.5、より好ましくは0.03~0.3、より好ましくは0.05~0.25、より好ましくは0.08~0.23、より好ましくは0.11~0.21、より好ましくは0.13~0.19、及びなおより好ましくは0.15~0.16の範囲であることが好ましい。さらに、そしてやはりそれとは独立して、本発明によれば、工程(1)により提供される混合物中の、1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンRの1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンRに対するモル比、R:Rが、0.01~5の範囲、好ましくは0.05~2、より好ましくは0.1~1.5、より好ましくは0.2~1.2、より好ましくは0.3~1.1、より好ましくは0.4~0.1、より好ましくは0.45~0.65、及びなおより好ましくは0.5~0.9の範囲であることが好ましい。
【0035】
工程(2)の結晶化に関して、結晶化を行う条件について特に制限は適用されないが、前記工程でCHA型骨格構造を有するゼオライト材料が得られることが条件である。よって、原則として、結晶化は任意の好適な温度で行ってよく、本発明によれば、工程(2)の結晶化は混合物の加熱を伴い、好ましくは90~250℃、より好ましくは100~220℃、より好ましくは130~200℃、より好ましくは150~190℃、より好ましくは160~180℃、及びなおより好ましくは165~175℃の範囲の温度であることが好ましい。工程(2)の結晶化が加熱を伴う、本発明の前記好ましい実施態様によれば、結晶化の際の圧力に関して特に制限は適用されないが、前記工程でCHA型骨格構造を有するゼオライト材料が得られることがやはり条件である。しかし、本発明によれば、工程(2)の結晶化は、ソルボサーマル条件、好ましくは水熱条件下で行うことが好ましい。工程(2)の結晶化の期間に関しても同様であり、原則として、任意の好適な結晶化の期間を選択してよく、工程(2)の結晶化が混合物の加熱を伴う場合には、前記加熱を3~120時間、好ましくは5~72時間、より好ましくは8~48時間、より好ましくは12~36時間、より好ましくは15~30時間、より好ましくは18~24時間の範囲の期間行うことが好ましい。
【0036】
工程(2)の結晶化を行うさらなる条件に関して、前記結晶化では原則として、混合物の攪拌及び/又は他の好適な種類のかき混ぜを行っても行わなくてもよく、本発明によれば、工程(2)の結晶化は、好ましくは攪拌による、混合物のかき混ぜを伴うことが好ましい。
【0037】
原則として、本発明によれば、実行される工程の数について又はその任意の繰り返しに関して、制限はない。よって工程(1)及び(2)に追加されるさらなる工程に関して、本発明によれば、本発明の方法が、以下の工程、
(3) 好ましくは濾過及び/又は遠心分離によって、ゼオライト材料を分離する工程、
及び/又は
(4) ゼオライト材料を洗浄する工程、
及び/又は
(5) ゼオライト材料を乾燥及び/又はか焼する工程、
及び/又は
(6) ゼオライト材料をイオン交換処理に供する工程、
のうちの1つ以上をさらに含むことが好ましく、
工程(3)及び/又は(4)及び/又は(5)及び/又は(6)は、任意の順序で行うことができ、そして前記工程の1つ以上を、好ましくは1回以上繰り返す。
【0038】
ゼオライト材料をイオン交換処理に供する好ましい追加工程に関して、CHA型骨格構造を有するゼオライト材料中にイオン交換されるイオンの種類にも数にも、制限は適用されない。しかし、本発明によれば、少なくとも1つの工程(6)において、ゼオライト骨格に含有される1種以上のイオン性非骨格元素がイオン交換されることが好ましく、イオン交換は好ましくは1種以上のカチオン及び/又はカチオン性元素に対するものであり、1種以上のカチオン及び/又はカチオン性元素は、好ましくは、H、NH 、Sr、Zr、Cr、Mg、Mo、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ru、Rh、Pd、Ag、Os、Ir、Pt、Au、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から、より好ましくは、H、NH 、Sr、Cr、Mo、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ag、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から、より好ましくは、H、NH 、Cr、Mg、Mo、Fe、Ni、Cu、Zn、Ag、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から、より好ましくは、Mg、Mo、Fe、Ni、Cu、Zn、Ag、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、より好ましくは、1種以上のカチオン及び/又はカチオン性元素は、Cu及び/又はFe、好ましくはCuを含み、なおより好ましくは、1種以上のカチオン及び/又はカチオン性元素は、Cu及び/又はFeからなり、好ましくはCuからなり、そして
1種以上のイオン性非骨格要素は、好ましくは、H及び/又はアルカリ金属を含み、アルカリ金属は、好ましくは、Li、Na、K、Cs、及びこれらの2種以上の組み合わせからなる群から、より好ましくは、Li、Na、K、及びこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、アルカリ金属は、Na及び/又はKであり、なおより好ましくは、Naである。
【0039】
本出願に記載の本発明による方法に加え、本発明は、本発明による方法によって、特に本出願に記載のその特定の好ましい実施態様のいずれか1つにより得ることができる及び/又は得られる、CHA型骨格構造を有する合成ゼオライト材料に関するものである。好ましくは、ゼオライト材料は、DIN66131に従って決定したBET比表面積が、少なくとも450m/g、好ましくは500~800m/gの範囲、より好ましくは550~750m/gの範囲、より好ましくは550~740m/gの範囲、より好ましくは650~730m/gの範囲、より好ましくは680~730m/gの範囲、より好ましくは690~720m/gの範囲、より好ましくは700~710m/gの範囲である。好ましくは、ゼオライト材料は、XRDで決定した結晶化度が80~100%の範囲、好ましくは85~95%の範囲、より好ましくは87~93%の範囲である。好ましくは、ゼオライト材料の骨格の少なくとも95質量%、好ましくは少なくとも98質量%、より好ましくは少なくとも99質量%が、Si、Al、O、及びHからなる。
【0040】
さらに、本発明は、本発明の特定の好ましい実施態様のいずれか1つによる合成ゼオライト材料の、モレキュラーシーブとしての、吸着剤としての、イオン交換のための、又は触媒としての、及び/又は触媒担体としての、好ましくは窒素酸化物NOの選択的触媒還元(SCR)のための触媒としての、NHの酸化のための、特にディーゼルシステムにおけるNHスリップの酸化のための、NOの分解のための、流動接触分解(FCC)プロセスにおける添加剤としての、及び/又は有機転化反応における、好ましくはアルコールのオレフィンへの転化における、及びより好ましくはメタノールからオレフィンへの(MTO)触媒作用における触媒としての、使用方法にも関する。
【0041】
本発明を、以下の実施態様、及び各従属関係及び後方参照によって示される実施態様の組合せによって、さらに説明する。特に、実施態様の範囲が、例えば「実施態様1から4のいずれか1項に記載の」などの用語の文脈において述べられる各場合において、この範囲のあらゆる実施態様は、当業者に明示的に開示されることが意図され、すなわち、この用語の語法は、「実施態様1、2、3、及び4のいずれか1項に記載の」と同義であるとして当業者に理解されることに留意されたい。
【0042】
1. YO及びXを含むCHA型骨格構造を有するゼオライト材料の製造方法であって、前記方法が、以下の工程:
(1) 1種以上のYO源と、1種以上のX源と、構造指向剤としての1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物及び1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物とを含む混合物を提供する工程、
(2) CHA型骨格構造を有するゼオライト材料を得るために、工程(1)で得られた混合物を結晶化する工程、を含み、
ここで、Yは四価の元素であり、Xは三価の元素であり、
、R、R、R、R及びRは、互いに独立してアルキルを表し、
は、C2nOH(n=1~6である)を表し、そして
は、シクロアルキルを表す、製造方法。
【0043】
2. 工程(1)で提供される混合物が、実質的な量のZ源を含有せず、ZがPであり、好ましくはP及びAsであり、より好ましくは、Zが、工程(2)で結晶化させるCHA型骨格構造におけるZ源である任意の五価の元素である、実施態様1に記載の方法。
【0044】
3. R、R、R、R、R、及びRが互いに独立して、場合により分岐を有している(C~C)アルキル、好ましくは(C~C)アルキル、より好ましくは(C~C)アルキル、より好ましくは(C~C)アルキル、及びなおより好ましくはメチル又はエチルを表し、なおより好ましくは、R、R、R、R、R、及びRがメチルを表す、実施態様1又は2に記載の方法。
【0045】
4. RがC2nOHを表し(n=1~5、より好ましくはn=1~4、より好ましくはn=1~3、より好ましくはn=1又は2である)、より好ましくは、RがCOH、より好ましくは2-ヒドロキシエチルを表す、実施態様1から3のいずれか1項に記載の方法。
【0046】
5. Rが、場合により5~8員のシクロアルキル、好ましくは5~7員のシクロアルキル、より好ましくは5又は6員のシクロアルキルを表し、なおより好ましくは、Rが場合により複素環の6員のシクロアルキル、好ましくはシクロヘキシルを表す、実施態様1から4のいずれか1項に記載の方法。
【0047】
6. 1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物が、1種以上のN,N,N-トリ(C~C)アルキル-(C~C)シクロアルキルアンモニウム化合物、好ましくは、1種以上のN,N,N-トリ(C~C)アルキル-(C~C)シクロアルキルアンモニウム化合物、より好ましくは1種以上のN,N,N-トリ(C~C)アルキル-(C~C)シクロアルキルアンモニウム化合物、より好ましくは1種以上のN,N,N-トリ(C~C)アルキル-シクロペンチルアンモニウム化合物及び/又は1種以上のN,N,N-トリ(C~C)アルキル-シクロヘキシルアンモニウム化合物、より好ましくは、N,N,N-トリエチル-シクロヘキシルアンモニウム、N,N-ジエチル-N-メチル-シクロヘキシルアンモニウム、N,N-ジメチル-N-エチル-シクロヘキシルアンモニウム、N,N,N-トリメチル-シクロヘキシルアンモニウム化合物、及びこれらの2種以上の混合物から選択される1種以上の化合物を含み、より好ましくは、1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物が、1種以上のN,N,N-トリメチル-シクロヘキシルアンモニウム化合物を含み、そしてより好ましくは、1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物が、1種以上のN,N,N-トリメチル-シクロヘキシルアンモニウム化合物からなる、実施態様1から5のいずれか1項に記載の方法。
【0048】
7. 1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物が、(C~C)ヒドロキシアルキル-トリ(C~C)アルキルアンモニウム化合物、好ましくは(C~C)ヒドロキシアルキル-トリ(C~C)アルキルアンモニウム化合物、より好ましくは(C~C)ヒドロキシアルキル-トリ(C~C)アルキルアンモニウム化合物、及びより好ましくは(C~C)ヒドロキシアルキル-トリ(C~C)アルキルアンモニウム化合物からなる群から選択される1種以上の化合物を含み、ここで、アルキル置換基が、互いに独立して場合により分岐を有しており、そしてより好ましくは、1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物は、場合により分岐を有しているヒドロキシプロピル-トリプロピルアンモニウム化合物、ヒドロキシプロピル-トリエチルアンモニウム化合物、ヒドロキシプロピル-トリメチルアンモニウム化合物、ヒドロキシエチル-トリプロピルアンモニウム化合物、ヒドロキシエチル-トリエチルアンモニウム化合物、ヒドロキシエチル-トリメチルアンモニウム化合物、ヒドロキシメチル-トリプロピルアンモニウム化合物、ヒドロキシメチル-トリエチルアンモニウム化合物、ヒドロキシメチル-トリメチルアンモニウム化合物、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から、好ましくは、場合により分岐を有しているヒドロキシエチル-トリエチルアンモニウム化合物、ヒドロキシエチル-トリメチルアンモニウム化合物、ヒドロキシメチル-トリエチルアンモニウム化合物、ヒドロキシメチル-トリメチルアンモニウム化合物、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から、好ましくはヒドロキシエチル-トリメチルアンモニウム化合物からなる群から、より好ましくは(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム化合物からなる群から選択され、ここでより好ましくは、1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物が1種以上の(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム化合物を含み、そしてより好ましくは、1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物が1種以上の(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム化合物からなる、実施態様1から6のいずれか1項に記載の方法。
【0049】
8. 1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物及び/又は1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物が塩であり、好ましくは、ハロゲン化物、好ましくは塩化物及び/又は臭化物、より好ましくは塩化物、水酸化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、酢酸塩、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から、より好ましくは塩化物、水酸化物、硫酸塩、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から選択される1種以上の塩であり、より好ましくは1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物及び/又は1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物が、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド及び/又はクロリドであり、なおより好ましくはテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドである、実施態様1から7のいずれか1項に記載の方法。
【0050】
9.Yが、Si、Sn、Ti、Zr、Ge、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、Yが好ましくはSiである、実施態様1から8のいずれか1項に記載の方法。
【0051】
10. 1種以上のYO源が、ヒュームドシリカ、シリカヒドロゾル、反応性アモルファス固体シリカ、シリカゲル、ケイ酸、水ガラス、メタケイ酸ナトリウム水和物、セスキシリケート、ジシリケート、コロイダルシリカ、ケイ酸エステル、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から、好ましくはヒュームドシリカ、シリカヒドロゾル、反応性アモルファス固体シリカ、シリカゲル、ケイ酸、コロイダルシリカ、ケイ酸エステル、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から、より好ましくはヒュームドシリカ、シリカヒドロゾル、反応性アモルファス固体シリカ、シリカゲル、コロイダルシリカ、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から選択される、1種以上の化合物を含み、なおより好ましくは、1種以上のYO源がヒュームドシリカ及び/又はコロイダルシリカ、好ましくはコロイダルシリカを含む、実施態様1から9のいずれか1項に記載の方法。
【0052】
11. Xが、Al、B、In、Ga、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、好ましくはXが、Al及び/又はB、より好ましくはAlである、実施態様1から10のいずれか1項に記載の方法。
【0053】
12. 1種以上のX源が、アルミナ、アルミネート、アルミニウム塩、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から、好ましくは、アルミナ、アルミニウム塩、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から、より好ましくは、アルミナ、アルミニウムトリ(C~C)アルコキシド、AlO(OH)、Al(OH)、ハロゲン化アルミニウム、好ましくはフッ化アルミニウム及び/又は塩化アルミニウム及び/又は臭化アルミニウム、より好ましくはフッ化アルミニウム及び/又は塩化アルミニウム、及びなおより好ましくは塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、フルオロケイ酸アルミニウム、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から、より好ましくはアルミニウムトリ(C~C)アルコキシド、AlO(OH)、Al(OH)、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から、より好ましくはアルミニウムトリプロポキシド、AlO(OH)、硫酸アルミニウム、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から選択される1種以上の化合物を含み、より好ましくは、1種以上のX源がアルミニウムトリイソプロポキシドを含み、なおより好ましくは、1種以上のX源がアルミニウムトリイソプロポキシドからなる、実施態様1から11のいずれか1項に記載の方法。
【0054】
13. 工程(1)による混合物が、1種以上の溶媒をさらに含み、前記1種以上の溶媒が、好ましくは、水、好ましくは蒸留水を含み、より好ましくは、工程(1)による混合物中の1種以上の溶媒として、水、好ましくは蒸留水が含有される、実施態様1から12のいずれか1項に記載の方法。
【0055】
14. 工程(1)により提供される混合物中の1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR:YOのモル比が、0.005~0.5の範囲、好ましくは0.01~0.25、より好ましくは0.03~0.2、より好ましくは0.05~0.15、より好ましくは0.07~0.13、より好ましくは0.09~0.12、及びなおより好ましくは0.1~0.11の範囲である、実施態様1から13のいずれか1項に記載の方法。
【0056】
15. 工程(1)により提供される混合物中の1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR:YOのモル比が、0.001~2.0の範囲、好ましくは0.005~1.0、より好ましくは0.01~0.5、より好ましくは0.03~0.3、より好ましくは0.05~0.25、より好ましくは0.08~0.23、より好ましくは0.11~0.21、より好ましくは0.13~0.19、及びなおより好ましくは0.15~0.16の範囲である、実施態様1から14のいずれか1項に記載の方法。
【0057】
16. 工程(1)により提供される混合物中の、1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンRの1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンRに対するモル比(すなわち、R:R)が、0.01~5の範囲、好ましくは0.05~2、より好ましくは0.1~1.5、より好ましくは0.2~1.2、より好ましくは0.3~1.1、より好ましくは0.4~0.1、より好ましくは0.45~0.65、及びなおより好ましくは0.5~0.9の範囲である、実施態様1から15のいずれか1項に記載の方法。
【0058】
17. 工程(2)における結晶化が、好ましくは90~250℃、より好ましくは100~220℃、より好ましくは130~200℃、より好ましくは150~190℃、より好ましくは160~180℃、及びなおより好ましくは165~175℃の範囲の温度での混合物の加熱を伴う、実施態様1から16のいずれか1項に記載の方法。
【0059】
18. 工程(2)における結晶化が、ソルボサーマル条件下、好ましくは水熱条件下で行われる、実施態様1から17のいずれか1項に記載の方法。
【0060】
19. 工程(2)における結晶化が、3~120時間、好ましくは5~72時間、より好ましくは8~48時間、より好ましくは12~36時間、より好ましくは15~30時間、及びなおより好ましくは18~24時間の範囲の期間の混合物の加熱を伴う、実施態様1から18のいずれか1項に記載の方法。
【0061】
20. 工程(2)における結晶化が、好ましくは攪拌による、混合物のかき混ぜを伴う、実施態様1から19のいずれか1項に記載の方法。
【0062】
21. 以下の工程、
(3) 好ましくは濾過及び/又は遠心分離によって、ゼオライト材料を分離する工程、
及び/又は
(4) ゼオライト材料を洗浄する工程、
及び/又は
(5) ゼオライト材料を乾燥及び/又はか焼する工程、
及び/又は
(6) ゼオライト材料をイオン交換処理に供する工程、
のうちの1つ以上をさらに含み、
工程(3)及び/又は(4)及び/又は(5)及び/又は(6)を、任意の順序で行うことができ、そして
前記工程の1つ以上を、好ましくは1回以上繰り返す、実施態様1から20のいずれか1項に記載の方法。
【0063】
22. 少なくとも1つの工程(6)において、ゼオライト骨格に含有される1種以上のイオン性非骨格元素が、好ましくは1種以上のカチオン及び/又はカチオン性元素に対して、イオン交換され、1種以上のカチオン及び/又はカチオン性元素は、好ましくは、H、NH 、Sr、Zr、Cr、Mg、Mo、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ru、Rh、Pd、Ag、Os、Ir、Pt、Au、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から、より好ましくは、H、NH 、Sr、Cr、Mo、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ag、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から、より好ましくは、H、NH 、Cr、Mg、Mo、Fe、Ni、Cu、Zn、Ag、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から、より好ましくは、Mg、Mo、Fe、Ni、Cu、Zn、Ag、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、より好ましくは、1種以上のカチオン及び/又はカチオン性元素は、Cu及び/又はFe、好ましくはCuを含み、なおより好ましくは、1種以上のカチオン及び/又はカチオン性元素は、Cu及び/又はFe、好ましくはCuからなり、そして
1種以上のイオン性非骨格要素は、好ましくは、H及び/又はアルカリ金属を含み、アルカリ金属は、好ましくは、Li、Na、K、Cs、及びこれらの2種以上の組み合わせからなる群から、より好ましくは、Li、Na、K、及びこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、アルカリ金属は、Na及び/又はKであり、なおより好ましくは、Naである、実施態様21に記載の方法。
【0064】
23. 工程(1)で提供される混合物が、テトラメチルアンモニウム含有化合物及び/又はトリメチルベンジルアンモニウム含有化合物の如何なる実質的な量も含有せず、好ましくは、テトラメチルアンモニウム化合物及び/又はトリアルキルベンジルアンモニウム化合物の如何なる実質的な量も含有せず、好ましくは、工程(1)で提供される混合物が、構造指向剤として1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物及び1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物以外の有機テンプレートの如何なる実質的な量も含有せず、より好ましくは、工程(1)で提供される混合物が、1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物、1種以上のテトラアルキルアンモニウムカチオンR-含有化合物以外の構造指向剤の如何なる実質的な量も含有せず、そしてなおより好ましくは、工程(1)で提供される混合物は、工程(2)におけるCHA型骨格構造を有するゼオライト材料の結晶化のための構造指向剤として、1種以上のN,N,N-トリメチル-シクロヘキシルアンモニウム化合物及び1種以上の(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム化合物、及び好ましくはN,N,N-トリメチル-シクロヘキシルアンモニウムヒドロキシド及び(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシドのみを含有する、実施態様1から22のいずれか1項に記載の方法。
【0065】
24. 工程(1)で提供される混合物が種結晶、好ましくはCHA型骨格構造を有するゼオライト材料を含む種結晶をさらに含み、種結晶のゼオライト材料が、好ましくは、実施態様1から23のいずれか1項により得ることができる及び/又は得られる、実施態様1から23のいずれか1項に記載の方法。
【0066】
25. 工程(1)による混合物中の種結晶の量が、少なくとも1種のYO源中のYO100質量%に基づいて、0.1~25質量%の範囲、YO100質量%に基づいて、好ましくは0.5~22質量%、より好ましくは1~19質量%、より好ましくは1.5~17質量%、より好ましくは3~15質量%、より好ましくは5~13質量%、より好ましくは7~12質量%、及びなおより好ましくは9~11質量%の範囲である、実施態様24に記載の方法。
【0067】
26. 工程(2)における結晶化のために工程(1)において提供される混合物が、CHA型骨格構造を有するゼオライト材料を含まず、好ましくはゼオライト材料を含まず、そしてより好ましくは如何なる種結晶も含まない、実施態様1から23のいずれか1項に記載の方法。
【0068】
27. 実施態様1から26のいずれか1項に記載の方法により得ることができる及び/又は得られる、CHA型骨格構造を有する合成ゼオライト材料。
【0069】
28. DIN66131に従って決定したBET比表面積が、少なくとも450m/g、好ましくは500~800m/gの範囲、より好ましくは550~750m/gの範囲、より好ましくは550~740m/gの範囲、より好ましくは650~730m/gの範囲、より好ましくは680~730m/gの範囲、より好ましくは690~720m/gの範囲、より好ましくは700~710m/gの範囲である、実施態様27に記載の合成ゼオライト材料。
【0070】
29. XRDで決定した結晶化度が80~100%の範囲、好ましくは85~95%の範囲、より好ましくは87~93%の範囲である、実施態様27又は28に記載の合成ゼオライト材料。
【0071】
30. ゼオライト材料の骨格の少なくとも95質量%、好ましくは少なくとも98質量%、より好ましくは少なくとも99質量%が、Si、Al、O、及びHからなる、実施態様27から29のいずれか1項に記載の合成ゼオライト材料。
【0072】
31. モレキュラーシーブとしての、吸着剤としての、イオン交換のための、又は触媒としての、及び/又は触媒担体としての、好ましくは窒素酸化物NOの選択的触媒還元(SCR)のための触媒としての、NHの酸化のための、特にディーゼルシステムにおけるNHスリップの酸化のための、NOの分解のための、流動接触分解(FCC)プロセスにおける添加剤としての、及び/又は有機転化反応における、好ましくはアルコールのオレフィンへの転化における、及びより好ましくはメタノールからオレフィンへの(MTO)触媒作用における触媒としての、実施態様27から29に記載のCHA型骨格構造を有する合成ゼオライト材料の使用方法。
【0073】
図面の説明
図1及び図4は、実施例1及び実施例3からそれぞれ得られたゼオライト材料について、それぞれ銅を担持し成形した後に行ったSCR試験の結果を示す。図中、横軸にSCR試験を行った温度を、そして縦軸にNO転化率(%)を示す。新しい触媒の試験値を「●」で、650℃で50時間エージングさせた材料の試験値を「◆」で、820℃で16時間エージングさせた材料の試験値を「▼」で示す。
【0074】
図2及び図5は、実施例1及び実施例3からそれぞれ得られたゼオライト材料について、それぞれ銅を担持し成形した後に行ったSCR試験中のNO生成率の結果を示す。図中、横軸にSCR試験を行った温度を、そして縦軸にNO生成率(%)を示す。新しい触媒の試験値を「●」で、650℃で50時間エージングさせた材料の試験値を「◆」で、820℃で16時間エージングさせた材料の試験値を「▲」で示す。
【0075】
図3は、実施例3により得られたゼオライト材料のSEM画像であり、画像の右下隅に500nmのスケールを示す。
【実施例
【0076】
X線回折パターンの測定
実施例1及び2について、40kV及び40mAで動作する銅陽極X線管で操作されるLYNXEYE検出器を備えた回折計(D8 Advance Series II、Bruker AXS GmbH社)を使用して、粉末X線回折(PXRD)データを収集した。形状はブラッグーブレンターノにより、空気散乱は空気散乱シールドを使用して低減した。結晶化度は、DIFFRAC.EVAソフトウェア(DIF-FRAC.EVAユーザーマニュアル、Bruker AXS GmbH社、Karlsruhe)を用いて決定した。
【0077】
実施例3について、40kV及び40mAで、Cu Kα単色放射線で動作するD/Tex Ultra検出器を備えた回折計(Rigaku Ultima IV)を使用して、粉末X線回折(XRD)パターンを収集した。スキャンステップは0.02°、スキャン速度は20°/分であった。結晶化度は、20°~35°の2θ領域のピークの積分ピーク面積を用いて算出した。
【0078】
SEM画像の測定
SEM画像は、トポグラフィー画像を提供するために5kVの二次電子で測定した。試料は、Leit-C Plastを用いて測定用にマウントし、約8nmのPtでコーティングした。SEM測定は、Zeiss社の装置、Model Ultra55で行った。
【0079】
実施例1:トリメチルシクロヘキシルアンモニウム及び(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム(コリン)を用いたCHA型骨格構造を有するゼオライト材料の調製
125.9gのシクロヘキシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(CHTMAOH、20%水溶液)をビーカーに入れた。次いで14.7gのアルミニウムトリイソプロピレートを撹拌しながら加え、約1.5時間の間に溶液中に溶解させた。次に29.8gのコリンヒドロキシド(46%水溶液)を加え、混合物をさらに0.5時間撹拌した。次に、150.2gのコロイダルシリカ(Ludox AS40)を加え、得られた混合物をさらに0.5時間撹拌した。反応混合物は、SiO2:0.036 Al2O3:0.158 CHTMAOH:0.113 コリンヒドロキシドのモル比を示し、次いで2つのオートクレーブに分け、170℃に加熱して、この温度で72時間保持した。
【0080】
次いで、結晶化した混合物を一体化し、固体生成物をろ過して蒸留水で洗浄した。その後、固体生成物を1時間の間に120℃に加熱し、この温度で2時間保持した後、190分かけて500℃にさらに加熱し、その温度で5時間保持することで、CHA型骨格構造を有するゼオライト材料70.0gを得た。XRDにより決定したゼオライト材料の結晶化度は84%であり、100%のCHA相からなっていた。
【0081】
生成物の元素分析の結果、Cが0.1質量%、Alが3.0質量%、Naが0.12質量%、そしてSiが40質量%であった。材料のBET表面積は455.5439m/gと決定された。
【0082】
実施例2:トリメチルシクロヘキシルアンモニウム及び(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム(コリン)を用いたCHA型骨格構造を有するゼオライト材料の調製
実施例1の手順を繰り返したが、異なる点として、オートクレーブでの結晶化の際、実施例1ではオートクレーブを撹拌しなかったが、ここでは反応混合物を20rpmの速度で撹拌した。洗浄、乾燥及びか焼後に、結晶化プロセスから69.1gの固体生成物が得られ、XRDにより決定したゼオライト材料の結晶化度は81%であり、100%のCHA相からなっていた。
【0083】
BET表面積は、473.7261m/gと決定された。
【0084】
実施例3:トリメチルシクロヘキシルアンモニウム及び(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム(コリン)を用いたCHA型骨格構造を有するゼオライト材料の調製
2.51gのシクロヘキシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(CHTMAOH、20%水溶液)及び0.598gのコリンヒドロキシド(水中40質量%)を最初に混合した。0.112gのアルミニウムヒドロキシドを撹拌しながらゆっくりと加えた。アルミニウムヒドロキシドを室温で30分間分散させた後、3.00gのLudox AS40を加え、モル比SiO:0.036 Al:0.158 CHTMAOH:0.113 コリン:11.5 HOを有する混合物を得た。混合物をさらに撹拌した後、CHA種結晶0.120gを10分で加えた。その後、混合物を23mlのテフロンライニングされたオートクレーブに入れた。密閉したオートクレーブを200℃に予熱したオーブンに入れた。水熱処理は、200℃で1~5日間20rpmのタンブリングを用いて行った。14000rpmの遠心分離を用いて試料を回収し、pHが約7~8になるまで水で洗浄した。固体生成物を80℃で乾燥させた。
【0085】
XRDから得られた試料の反応時間による結晶性を下表に示す。それぞれの生成物は100%のCHA相からなっていた。
【0086】
【表1】
【0087】
反応時間1日後、試料を採取し、上述のように洗浄、乾燥した。その後、この試料を600℃で5時間か焼したところ、以下の特性を有することが分かった:
生成物の元素分析から、Cが0.1質量%未満、Alが2.7質量%、Naが0.08質量%、及びSiが39質量%であった。
【0088】
材料のBET表面積は、701.6513m/gであった。
【0089】
図3は、結晶生成物のSEM画像である。
【0090】
実施例4:SCR触媒試験
実施例1及び3のゼオライト材料に、硝酸銅水溶液を湿式含浸させた(インシピエントウェットネス含浸)。その後材料を乾燥させ、450℃で5時間か焼したところ、CuOとして計算して3.43質量%(実施例1)及び2.75質量%(実施例3)の銅を担持したゼオライト材料を得た。
【0091】
銅を担持してあるゼオライト材料は、バインダー材料前駆体として酢酸ジルコニウムを加えた水性スラリー(ゼオライト材料に基づいて5質量%)を調製して成形した。次に、スラリーをそれぞれタブレット型に成形し、攪拌しながら乾燥させた後、550℃で1時間か焼した。次いで得られたタブレットを粉砕し、250~500マイクロメートルの範囲の粒径になるようにふるい分けた。次に触媒を、10%の蒸気/空気中650℃で50時間、及び10%の蒸気/空気中820℃で16時間エージングさせた。触媒材料を、ガス時空間速度80,000h-1のガス流(500ppmのNO、500ppmのNH、5%のHO、10%のO、残部N)に、ガス流の温度200℃、400℃、575℃(最初の運転はデグリーン(degreening)用);及び175℃、200℃、225℃、250℃、300℃、450℃、550℃、575℃の条件に供することにより、標準的なSCR条件を適用した。触媒材料の量は反応器あたり120mgに調整した。材料はコランダムで約1mlの容量に希釈した。空間速度は、コーティングされた触媒の1mlをシミュレートした。
【0092】
NO転化に関するSCR試験の結果は、200℃及び575℃での試験それぞれについて、下の表に示す。
【0093】
【表2】
【0094】
SCR試験のさらなる結果を図に示す。図1(実施例1のゼオライト)及び図4(実施例3のゼオライト)は、触媒試験の温度に応じた結果であり、新しいゼオライト材料(●)、650℃で50時間エージングさせた材料(◆)、及び820℃で16時間エージングさせた材料(▼)を示す。一方、図2(実施例1のゼオライト)及び図5(実施例3のゼオライト)は、SCRの際のNO生成率であり、ここで結果はやはり触媒試験の温度に応じて、新しいゼオライト材料(●)、650℃で50時間エージングさせた材料(◆)、及び820℃で16時間エージングさせた材料(▲)を示す。
【0095】
このように、SCR試験の結果から分かるように、本発明の方法によって得られた材料は、新しい状態及びエージングさせた状態の両方で、高いNO転化率及び低いNO生成率の両方に関して、SCRにおいて優れた性能を示す。
【0096】
引用した先行技術のリスト
- WO-A-2008/083048
- WO-A-2008/033229
- WO2009/141324A1
- WO2011/064186A1
- EP2325143A2
- US4,610,854
- US-A-2007/0043249
- Zonesら、「A Study of Guest/Host Energetics for the Synthesis of Cage Structures NON and CHA」、Studies in Surface Science and Catalysis、第84巻、第29~36頁、Elsevier Science B.V.(1994年)
- WO2013/182974A1
- WO2013/182974A1
- US2017/0113210A1
- WO2015/185625A1
- Mithunら、「Synthesis of SSZ-13 zeolite in the presence of dimethylethylcyclohexyl ammonium ion and direct conversion of ethylene to propylene with the SSZ-13」、Chemical Engineering Journal、2018年、第1~14頁
- Ruinianら、「Template Design and Economical Strategy for the Synthesis of SSZ-13(CHA-Type)Zeolite as an Excellent Catalyst for the Selective Catalytic Reduction of NOx by Ammonia」、CHEMCATCHEM,第7巻,no.23,2015年、第3842~3847頁
- WO2017/211237A1
図1
図2
図3
図4
図5