(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】導電性オリゴマー、導電性組成物、導電助剤、前記導電性組成物を用いて形成された、コンデンサ用電極、透明電極、電池用電極、又はキャパシタ用電極
(51)【国際特許分類】
H01G 11/48 20130101AFI20241107BHJP
C08G 61/12 20060101ALI20241107BHJP
C07D 495/04 20060101ALI20241107BHJP
H01B 1/12 20060101ALN20241107BHJP
【FI】
H01G11/48
C08G61/12
C07D495/04 101
H01B1/12 F
(21)【出願番号】P 2021527680
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(86)【国際出願番号】 JP2020024757
(87)【国際公開番号】W WO2020262443
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-02-06
(31)【優先権主張番号】P 2019122396
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清野 美勝
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩昭
(72)【発明者】
【氏名】森 初果
(72)【発明者】
【氏名】藤野 智子
(72)【発明者】
【氏名】出倉 駿
(72)【発明者】
【氏名】亀山 亮平
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-077549(JP,A)
【文献】特表2009-537061(JP,A)
【文献】特開2014-070066(JP,A)
【文献】J. Am. Chem. Soc.,2000年,122,6746-6753
【文献】J. Am. Chem. Soc.,2011年,133,11339-11350
【文献】New Journal of Chemistry,2015年,vol.39, no.3,1678-1684
【文献】Advanced Functional Materials,2018年,28,1703135(1-6),Supporting Information
【文献】J. Org. Chem.,2003年,68,5357-5360
【文献】Macromolecules,2005年,38,6806-6812
【文献】J. Org. Chem.,2017年,82,7245-7253
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1
)で表される導電性オリゴマーを含む導電性組成物であって、前記導電性オリゴマーに、ドーパントが導入された導電性組成物。
【化1】
[一般式(1
)中、R
1及びR
6は、それぞれ独立して、炭素数1~5のアルキル
基である。
nは、2~30の整数である。
R
2、R
3、R
4及びR
5は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~12のアルキル基である。
複数のR
4は同一であってもよく、異なっていてもよい。
複数のR
5は同一であってもよく、異なっていてもよい。
mは、1である。
Xは、S(硫黄原子)、Se(セレン原子)又はО(酸素原子)である。
複数のXは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
Yは、S(硫黄原子)、Se(セレン原子)、又はО(酸素原子)である。
複数のYは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい
。]
【請求項2】
前記ドーパントが、BF
4
-、ClО
4
-、PF
6
-、HSО
4
-、及びTCNQ又はFxTCNQ(xは2又は4である。)の1価のアニオン種からなる群から選択される1種又は2種以上である、請求項1記載の導電性組成物。
【請求項3】
前記一般式(1
)において、nが、2~30のいずれか単一の整数である請求項1又は2に記載の導電性組成物。
【請求項4】
導電性オリゴマーを7mol%(オリゴマー単位計算)以上含む請求項1~3のいずれかに記載の導電性組成物。
【請求項5】
導電率が1×10
-5S/cm以上である請求項1~4のいずれかに記載の導電性組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の導電性組成物を含む導電助剤。
【請求項7】
請求項1~5のいずれかに記載の導電性組成物及び請求項6に記載の導電助剤の少なくとも一方を用いて形成された、コンデンサ用電極、透明電極、電池用電極、又はキャパシタ用電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性オリゴマー、導電性組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クルマのHV化、EV化及びそれに伴う省エネ化の進展により、車載電子デバイスの高耐熱化の要求が高まっている。特に、エンジン回りやインバータ周りの冷却系の負荷の低減を実現するために、駆動系電装品の高耐熱性が要求されている。これらの駆動系電装品には、多くの蓄電デバイスが使用されているため、これらに使用される電極材料等にも高い耐熱性が求められる。したがって、かかる近年の要求に応えることができる、耐熱性及び高導電性をそなえ、かつ、効率よく生産可能な電極材料の提供が期待されている。
【0003】
従来、高い導電性、耐熱性、及び安定性を有するものとして、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOTともいう。)に、ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸(PSSともいう。)がドープされた「PEDOT/PSS」が、コンデンサ用電極等に幅広く用いられている。特許文献1には、水を主成分とし、導電性共役系高分子、界面活性剤及び/又はアルコールを含んでなる導電性高分子ゲルを含む燃料電池用電極が開示されており、導電性共役系高分子として、PEDOT/PSSが用いられている。
【0004】
しかし、PEDOT/PSSにおいては、PSSが用いられているため溶解性に劣ることがあり、生産効率等の点で依然として課題がある。近年の技術の進展に伴い、優れた耐熱性、導電性を有するとともに、効率よく生産可能な電極材等の提供が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、新規な導電性オリゴマーの提供、特に、溶解性に優れるためハンドリング性や生産性に優れ、導電性にも優れる導電性組成物等を効率的に作製可能な導電性オリゴマーの提供、これを用い、効率的に生産され導電性にも優れる導電性組成物及び導電助剤の提供、及び、前記導電性組成物を用いて形成され、導電性に優れるコンデンサ用電極、透明電極、電池用電極、及びキャパシタ用電極を提供することを目的とする。
【0007】
本発明によれば、以下の導電性オリゴマー等が提供される。
1.下記一般式(1)又は(1A)で表される導電性オリゴマー。
【化1】
[一般式(1)及び(1A)中、R
1及びR
6は、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基又はアリール基である。
nは、2~30の整数である。
R
2、R
3、R
4及びR
5は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~12のアルキル基である。
複数のR
4は同一であってもよく、異なっていてもよい。
複数のR
5は同一であってもよく、異なっていてもよい。
mは、1又は2である。
Xは、S(硫黄原子)、Se(セレン原子)又はО(酸素原子)である。
複数のXは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
Yは、S(硫黄原子)、Se(セレン原子)、О(酸素原子)又はCR
7R
8であり、但し、YがCR
7R
8である場合、R
1及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~12のアルキル基である。
複数のYは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
R
7及びR
8は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~12のアルキル基又はアリール基である。
Zは、H(水素原子)、F(フッ素原子)、Cl(塩素原子)、Br(臭素原子)、又はI(ヨウ素原子)である。
複数のZは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。]
2.1記載の導電性オリゴマーを含む導電性組成物であって、前記導電性オリゴマーに、ドーパントが導入された導電性組成物。
3.前記ドーパントが、BF
4
-、ClО
4
-、PF
6
-、HSО
4
-、及びTCNQ又はFxTCNQ(xは2又は4である。)の1価のアニオン種からなる群から選択される1種又は2種以上である、2記載の導電性組成物。
4.前記一般式(1)及び(1A)において、nが、2~30のいずれか単一の整数である2又は3に記載の導電性組成物。
5.導電性オリゴマーを7mol%(オリゴマー単位計算)以上含む2~4のいずれかに記載の導電性組成物。
6.導電率が1×10
-5S/cm以上である2~5のいずれかに記載の導電性組成物。
7.2~6のいずれかに記載の導電性組成物を含む導電助剤。
8.2~6のいずれかに記載の導電性組成物及び7に記載の導電助剤の少なくとも一方を用いて形成された、コンデンサ用電極、透明電極、電池用電極、又はキャパシタ用電極。
【0008】
本発明によれば、溶解性に優れるためハンドリング性や生産性に優れ、導電性にも優れる導電性組成物等を効率的に作製可能な導電性オリゴマー、これを用い、効率的に生産され導電性にも優れる導電性組成物、及び、導電助剤、及び、前記導電性組成物を用いて形成され、導電性に優れるコンデンサ用電極、透明電極、電池用電極、及びキャパシタ用電極が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の導電性オリゴマーについて説明する。本明細書において、「オリゴマー」は、同種の分子の数が2以上30程度以下からなり、比較的に分子量の低い重合体をいう。
[導電性オリゴマー]
本発明の一態様において、導電性オリゴマーは、下記一般式(1)又は(1A)で表される。
【0010】
【0011】
一般式(1)及び(1A)中、R1及びR6は、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基又はアリール基である。
nは、2~30の整数である。
R2、R3、R4及びR5は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~12のアルキル基である。
複数のR4は同一であってもよく、異なっていてもよい。
複数のR5は同一であってもよく、異なっていてもよい。
mは、1又は2である。
Xは、S(硫黄原子)、Se(セレン原子)、又はО(酸素原子)である。本発明の一態様においては、安定性の観点から、XはS(硫黄原子)であることが好ましい。
複数のXは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
Yは、S(硫黄原子)、Se(セレン原子)、О(酸素原子)又はCR7R8であり、但し、YがCR7R8である場合、R1及びR6は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~12のアルキル基である。
複数のYは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
R7及びR8は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~12のアルキル基又はアリール基である。
Zは、H(水素原子)、F(フッ素原子)、Cl(塩素原子)、Br(臭素原子)、又はI(ヨウ素原子)である。
複数のZは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0012】
一般式(1)及び(1A)において、R1、R6、R7及びR8がアルキル基の場合、例えば、炭素数1~12のアルキル基が挙げられる。これらの中でも、溶解性及び導電性の観点から、炭素数1~10のアルキル基が好ましい。アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよいが、導電性の観点からは、直鎖状が好ましく、溶解性の観点からは分枝状が好ましい。また、耐熱性の観点からは、炭素数1~5のアルキル基が挙げられる。これらの中でも、特に耐熱性に優れる点で、炭素数1~3のアルキル基が好ましい。また一般式(1)及び(1A)において、R1、R6、R7及びR8がアルキル基の場合には、アルキル基がハロゲンで置換されたハロゲン化アルキル基であってもよい。
【0013】
一般式(1)及び(1A)において、R1、R6、R7及びR8がアリール基の場合、例えば、炭素数6~22のアリール基が挙げられる。これらの中でも、溶解性、導電性が良好で、特に耐熱性に優れる観点から、炭素数6~14のアリール基が好ましい。一般式(1)及び(1A)においては、R1、R6、R7及びR8が同じであるのが、分子の熱安定性の観点からは好ましい。本発明の一態様において、R1及びR6が共にメチル基(Me)であるのが好ましい。
【0014】
本発明の一態様における導電性オリゴマーは、一般式(1)で表されるように、末端にYR1及びYR6を有する構造をとるため、熱安定性が高く、導電性にも優れるものである。
【0015】
一般式(1)及び(1A)において、R2、R3、R4及びR5がアルキル基の場合、例えば、炭素数1~12のアルキル基が挙げられる。これらの中でも、導電性が良好となる観点から、炭素数1~10のアルキル基が好ましい。アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよいが、導電性が良好となる観点からは、直鎖状が好ましく、溶解性が良好となる観点からは分枝状が好ましい。本発明の一態様において、R2、R3、R4及びR5がすべて水素原子であるのが好ましい。
【0016】
一般式(1)及び(1A)において、R1~R8は、各々が、更に置換基を有するものであってもよい。この場合、より嵩高な導電性オリゴマーの形成が可能となるため、溶解性の点で有利である。
【0017】
一般式(1)及び(1A)において、nは、例えば、2~30であり、導電性が良好となるとの観点から、2~12が好ましく、例えば、2~10、2~8、2~6、2~4であり得る。nは、単一の整数であるのが好ましい。すなわち、本発明の一態様において、導電性オリゴマーを構成するモノマー重合度に分布がなく、分子量の揃ったオリゴマーであるのが非常に好ましい。このように、導電性オリゴマーを構成するモノマーの重合度に分布を持たず、分子量の揃った導電性オリゴマーであれば、秩序を持った配列が容易となるため、導電性に優れた導電性組成物を効率良く設計可能となる。
【0018】
一般式(1)及び(1A)において、mは、1又は2である。mが1の場合には、導電性の点で好ましい。mが2の場合には、比較的嵩高の導電性オリゴマーを設計可能となるため、溶解性の点で好ましい。
一般式(1)及び(1A)において、Xは、S(硫黄原子)、Se(セレン原子)、又はО(酸素原子)である。XがS(硫黄原子)の場合には、溶解性の観点で好ましい。XがО(酸素原子)の場合には、導電性の観点で好ましい。2つのXは、同一化合物内において同種の原子であるのが好ましい。
一般式(1)において、Yは、S(硫黄原子)、Se(セレン原子)、О(酸素原子)又はCR7R8であり、但し、YがCR7R8である場合、R1及びR6は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~12のアルキル基である。2つのYは、同一化合物内において同じであるのが好ましい。
【0019】
一般式(1)で表される、本発明における導電性オリゴマーの一態様として、例えば、下記式(2)~(5)で表される化合物1~4が好適に挙げられる。
【0020】
【0021】
式(2)において、Meはメチル基を表す。nとしては、2~30であり、nは、2~30の単一の整数であるのが好ましい。
本発明の一態様において、化合物1の骨格を有する導電性オリゴマーを用いると、導電性の点で有利である。
【0022】
【0023】
式(3)において、Meはメチル基を表す。nとしては、2~30であり、nは、2~30の単一の整数であるのが好ましい。
本発明の一態様において、(3)で表される骨格を有する導電性オリゴマーを用いると、導電性の点で有利である。
【0024】
化合物3
【化5】
式(4)において、nとしては、2~30であり、nは、2~30の単一の整数であるのが好ましい。
本発明の一態様において、(4)で表される骨格を有する導電性オリゴマーを用いると、導電性の点で有利である。
【0025】
【0026】
式(5)において、nとしては、2~30であり、nは、2~30の単一の整数であるのが好ましい。
本発明の一態様において、式(5)で表される骨格を有する導電性オリゴマーを用いると、溶解性の点で有利である。
【0027】
本発明の一態様において、一般式(1)及び(1A)の骨格を有する導電性オリゴマーは、低分子化合物である。その置換基や構造を変えることによって、分子間距離を変化させることができ、溶媒分子を分子間に入り込み易くできる。つまり、効率的に、溶媒和しやすい設計とすることが可能である。このため、溶解性に優れる。ここで、導電性オリゴマーの「溶解性」の評価方法の一例としては、実施例に記載の評価が挙げられる。また、吸光度の測定によっても評価が可能である。
【0028】
(製造方法)
本発明の一態様である導電性オリゴマーは、一例として、実施例に記載の方法により効率的に製造される。
【0029】
(用途)
本発明の一態様である導電性オリゴマーは新規な化合物であり、前述したように、導電性、耐熱性に優れ、更には溶解性にも優れるため生産効率も良いことから、高導電性及び耐熱性の要求される各種の用途、例えば、コンデンサ用電極、透明電極、電池用電極、キャパシタ用電極等の電極として、また電極等の導電助剤として、非常に有用である。特に、導電性オリゴマーに、後述するように、適切なドーパントを導入することにより、非常に優れた導電性を有する導電性組成物を提供可能である。
【0030】
本発明の導電性組成物について説明する。
[導電性組成物]
本発明の一態様において、導電性組成物は、本発明の一態様として前述した導電性オリゴマーに、ドーパントが導入された導電性組成物である。導電性オリゴマーにドーパントを導入すると、導電性オリゴマー分子のスタッキング状態を変えることができる。この結果、導電性オリゴマーの導電性を変えることができる。従って、導入するドーパントの種類、ドーパントの含有量、その他、ドーパントを導入する際の諸条件を調整することによって、所望の導電性を有する導電性組成物を得ることが可能となる。特に、前述したような、分子量の揃った導電性オリゴマーにドーパントを導入する場合には、優れた導電性を持つ導電性組成物を効率よく得ることができる。
【0031】
本発明の導電性組成物において使用できる導電性オリゴマーは、前述した通りである。
本発明の導電性組成物において使用できるドーパントとしては、前述の本発明の一態様である導電性オリゴマーに導入可能であれば特に制限はなく、公知のドーパントがいずれも用いられる。
例えば、TCNQ又はFxTCNQ(xは2又は4である。)の1価のアニオン種、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン;三ヨウ化物イオン等のポリハロゲン化物イオン;過塩素酸イオン;テトラフルオロ硼酸イオン;六フッ化ヒ酸イオン;硫酸イオン;硝酸イオン;チオシアン酸イオン;六フッ化ケイ酸イオン;六フッ化燐イオン、燐酸イオン、フェニル燐酸イオン、六フッ化燐酸イオン等の燐酸系イオン;トリフルオロ酢酸イオン;トシレートイオン、エチルベンゼンスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン等のアルキルベンゼンスルホン酸イオン;メチルスルホン酸イオン、エチルスルホン酸イオン、ジイソオクチルスルホコハク酸イオン等のアルキルスルホン酸イオン;ポリアクリル酸イオン、ポリビニルスルホン酸イオン、ポリスチレンスルホン酸イオン、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)イオン等の高分子イオン等が好ましく挙げられる。これらは単独でも用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
より具体的には、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、LiCl、LiBr、LiB(C2H5)4、LiCH3SO3、LiC4F9SO3、Li(CF3SO2)2N、及びLi[(CO2)2]2B、等が挙げられる。これらの中でも、BF4-、ClО4
-、HSО4
-、及びTCNQ又はFxTCNQ(xは2又は4である。)の1価のアニオン種を持つものが、導電性の点で好ましい。これらは、1種単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。尚、本明細書において、「TCNQ」は、テトラシアノキノジメタンを意味する。
【0033】
導電性オリゴマー中のドーパント濃度は、導電性オリゴマーを構成するモノマーユニットに対するドーパント(カウンターアニオン)の濃度を意味する。例えば、導電性オリゴマーがチオフェン環を有し、カウンターアニオンがスルホン酸を有していれば、チオフェン環:スルホン酸が1:1(モル比)のとき、ドーパント濃度は100%と定義される。導電性オリゴマーは、少なくとも1つのチオフェン環を構成単位として含むことから、導電性オリゴマーとドーパントの含有比(ドーパント濃度)は、「ドーパント/チオフェン単位(モル/モル)×100(%)」で好適に表される。ドーパント濃度は、導電性の観点で、6~120%が好ましく、10~100%がより好ましい。
【0034】
導電性オリゴマーの、導電性組成物における含有量としては、特に制限はなく、また導電性組成物の用途にもよるが、導電性組成物の導電性向上の観点から、導電性組成物において、オリゴマー単位で計算して、例えば、7mol%以上であり、30mol%以上含むのが好ましく、30~200mol%含むのがより好ましい。
【0035】
導電性組成物においては、導電性オリゴマー及びドーパント以外で、目的や用途に応じて各種の成分を含有させてもよい。
【0036】
導電性組成物の導電性としては、用途にもよるが、1×10-5S/cm以上が好ましく、2×10-5S/cm~1×103S/cmがより好ましい。
【0037】
(製造方法)
導電性組成物の製造方法としては、導電性オリゴマーにドーパントを添加する工程を含み、必要に応じてその他の工程を含む。本発明の一態様である導電性組成物は、一例として、実施例に記載の方法により効率的に製造される。
【0038】
(用途)
本発明の一態様において、導電性組成物は、前述したように、生産効率が良く、また導電性、耐熱性に優れることから、高導電性及び耐熱性の要求される各種の用途、例えば、コンデンサ用電極、透明電極、電池用電極、キャパシタ用電極等の電極として、非常に有用である。例えば、以下のようにして電極上に前述の導電性組成物をコートし硬化膜を作製することにより、好適に、優れた導電性、耐熱性を有する電極を得ることができる。また導電助剤として電極形成の際に配合して用いることにより、高い導電率の電極を得ることもできる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例の開示により本発明を更に詳細にするが、本発明は、下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0040】
以下の実施例において実施した測定方法を概説する。
フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーは、シリカゲル60N(球状且つ中性ゲル、40~50μm、関東化学)を用いて実施した(Still,W.C.;Kahn,M.;Mitra,A.、J. Org. Chem.、1978、43、2923-2925)。
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)は、高速分取GPCカラム(ポリスチレンカラム、20mmφ×(600+600)mm)(JAIGEL-1HR,-2HR、日本分析工業製)を装備した分取HPLC(LC-908、日本分析工業製)を用いて実施した。
プロトン(1H)及びカーボン(13C)核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、JEOL JNM-AL300(1H:300MHz;13C:75MHz)分光計を用いて測定した。CDCl3中で測定した1H NMRスペクトル及び13C NMRスペクトルを、溶媒の吸収に対して補正した。
質量分析は、JEOL JMS-AX500(FDプローブ、ポジティブモード)質量分析計を用いて測定した。
【0041】
(実施例1)
導電性オリゴマー(2MeS-2EDOT)の合成
容積100mLのシュレンク型フラスコ(反応容器)に撹拌子を入れ、玉栓をして真空ポンプで減圧しつつヒートガンで1分程度壁面を加熱し、水分を除去した。室温まで放冷した後、アルゴンラインへの接続と真空ポンプでの減圧を2回繰り返し最後にもう1度アルゴンラインにつないで、反応容器内をアルゴン雰囲気に置換した。以降の全ての操作は、反応容器周りをアルミホイルで包む等により光を遮断して行われた。アルゴンフローしながら玉栓を開け、シュレンク型フラスコ(反応容器)にビス(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(bisEDOT)を341mg加え、セプタムで栓をした。80mLのテトラヒドロフラン(THF)(Wako製、超脱水、安定剤含有)をシリンジで反応容器に加え、マグネチックスターラーで撹拌しつつ-80℃まで冷却した。2.3mLのn-ブチルリチウム(n-BuLi)(n-ヘキサン中1.6M)(関東化学株式会社製)をシリンジで反応溶液中へ少しずつ滴下した。-80℃で2時間撹拌を続け、-20℃まで昇温してさらに15分間撹拌した。その後、再び-80℃まで冷却し、次にジメチルジスルフィド(Wako製、和光一級)0.66mLを反応容器へ滴下した。その後室温まで昇温し、15時間撹拌を続けた。ロータリーエバポレーターで反応溶液を濃縮し、得られた褐色固体をジエチルエーテル(Wako製、試薬特級)に溶解し、有機層に1M NH4Cl(水溶液)を加えて分液した。
【0042】
洗浄した有機層(上層)に純水を加えもう一度分液を行なった。有機層(上層)にNa2SO4を加え、10分程度撹拌して水分を除去した後、固体をろ別して得られた溶液をロータリーエバポレーターで濃縮して粗生成物を得た。粗生成物はフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(4.0cmφ×1810cm、展開溶媒n-ヘキサン:CH2CH2=1:1)によって精製し、白色粉末290mg(収率64%)として、次式で表される導電性オリゴマー(2MeS-2EDOT)を得た。物性値:1H NMR(CDCl3,300MHz)δ2.38(s,6H),4.29-4.35(m,8H);13C NMR(CDCl3,75MHz)δ21.4,64.8,65.0,107.0,111.7,136.8,142.7;MS(FD)calcd for C14H14O4S4[M+]374.0,found 374.0.
【0043】
【0044】
(溶解性の評価)
得られた導電性オリゴマー(2MeS-2EDOT)を、表1に記載の各溶媒中に1重量%濃度となるよう添加し、室温で1時間撹拌した。その後、不溶物の有無を下記評価基準により、目視にて判断することにより溶解性を評価した。結果を表1に示す。
【0045】
評価基準
◎:目視観察の結果、不溶物が全く確認されない。
〇:目視観察の結果、不溶物が観察されない。
△:目視観察の結果、不溶物がある程度観察される。
×:目視観察の結果、多くの不溶物が観察される。
【0046】
(実施例2)
導電性オリゴマー(2MeS-2EDTT)の合成
容積100mLの二口ナス型フラスコ(反応容器)に撹拌子を入れ、セプタムをして真空ポンプで減圧しつつヒートガンで1分程度壁面を加熱し、水分を除去した。室温まで放冷した後、アルゴンラインへの接続と真空ポンプでの減圧を2回繰り返し最後にもう1度アルゴンラインにつないで、反応容器内をアルゴン雰囲気に置換した。以降の全ての操作は、反応容器周りをアルミホイルで包む等により光を遮断して行った。アルゴンフローしながらセプタムを開け、シュレンク型フラスコ(反応容器)に2,5-ジブロモ-3,4-エチレンジチオチオフェンを645mg加え、セプタムで栓をした。10mLのTHF(Wako製、超脱水、安定剤含有)をシリンジで反応容器に加え、マグネチックスターラーで撹拌しつつ、-78℃まで冷却した。1.34mLのn-BuLi(n-ヘキサン中1.6M)(関東化学株式会社製)をシリンジで反応溶液中へ5分かけて少しずつ滴下した。-78℃で2時間撹拌を続け、次にジメチルジスルフィド(Wako製、和光一級)1.21mLを反応容器へ滴下した。その後、-78℃で30分間撹拌を続け、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10mL)を加えた。撹拌しながら室温まで昇温し、有機物をジクロロメタン(Wako製、試薬特級)20mLを用い3回抽出した。混合した有機層を硫酸マグネシウムを加え、1分間撹拌して水分を除去した後、固体をろ別して得られた溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、粗生成物(459mg)を得た。この粗生成物はこれ以上精製せず、続く反応にそのまま用いた。
【0047】
容積100mLの二口ナス型フラスコ(反応容器)に撹拌子を入れ、セプタムをして真空ポンプで減圧しつつヒートガンで1分程度壁面を加熱し、水分を除去した。室温まで放冷した後、アルゴンラインへの接続と真空ポンプでの減圧を2回繰り返し最後にもう1度アルゴンラインにつないで、反応容器内をアルゴン雰囲気に置換した。アルゴンフローしながらセプタムを開け、シュレンク型フラスコ(反応容器)に先に得られた粗生成物(459mg)を加え、セプタムで栓をした。10mLのTHF(Wako製、超脱水、安定剤含有)をシリンジで反応容器に加え、マグネチックスターラーで撹拌しつつ-78℃まで冷却した。1.15mLのn-BuLi(n-ヘキサン中1.6M)(関東化学株式会社製)をシリンジで反応溶液中へ5分かけて少しずつ滴下した。-78℃で2時間撹拌を続け、次にアルゴンフローしながらセプタムを開け、無水塩化銅(II)(Wako製、和光一級)247mgを反応容器へ加えた。その後、-78℃で2時間半撹拌を続け、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)を加えた。撹拌しながら室温まで昇温し、有機物をジクロロメタン(Wako製、試薬特級)100mLを用いて5回抽出した。混合した有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液(250mL)で洗浄した後、硫酸マグネシウムを加え、1分間撹拌して水分を除去した後、固体をろ別して得られた溶液をロータリーエバポレーターで濃縮して粗生成物を得た。
【0048】
粗生成物はフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(4.0cmφ×20cm、展開溶媒 n-ヘキサン:酢酸エチル=1:1)によって精製し、混合物155mgを得た。このうち112mgをクロロホルム(Wako、試薬特級)50mLに溶解し、50mLの飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した後、50mLのチオ硫酸ナトリウム水溶液(0.2M)で洗浄した。硫酸マグネシウムを加え、1分間撹拌して水分を除去した後、固体をろ別して得られた溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、粗生成物(104mg)を得た。GPC(溶出液:クロロホルム(Wako、試薬特級))によって精製し、次式で表される導電性オリゴマー(2MeS-2EDTT)を原料である2,5-ジブロモ-3,4-エチレンジチオチオフェンからの4段階の総収率4.9%として得た。物性値:1H NMR(CDCl3,300MHz)δ2.44(s,6H),3.18(dd,J=2.7,5.1Hz,2H),3.20(dd,J=2.7,4.5Hz,2H),3.27(dd,J=2.7,4.5Hz,2H),3.30(dd,J=2.7,5.1Hz,2H);13C NMR(CDCl3,75MHz)δ20.1,27.6,27.7,126.7,126.7,128.0,130.7;MS(FD)calcd for C14H14S8[M+]437.9,found 437.9.
【0049】
【0050】
実施例3
導電性オリゴマー(2Br-2EDTT)の合成
容積100mLの二口ナス型フラスコ(反応容器)に撹拌子を入れ、セプタムをして真空ポンプで減圧しつつヒートガンで1分程度壁面を加熱し、水分を除去した。室温まで放冷した後、アルゴンラインへの接続と真空ポンプでの減圧を2回繰り返し最後にもう1度アルゴンラインにつないで、反応容器内をアルゴン雰囲気に置換した。以降の全ての操作は、反応容器周りをアルミホイルで包む等により光を遮断して行った。アルゴンフローしながらセプタムを開け、シュレンク型フラスコ(反応容器)に3,4-エチレンジチオチオフェンを574mg加え、セプタムで栓をした。20mLのTHF(Wako製、超脱水、安定剤含有)をシリンジで反応容器に加え、マグネチックスターラーで撹拌しつつ、0℃まで冷却した。アルゴンフローしながらセプタムを開け、N-ブロモスクシンイミド(NBS)を586mg加えた。セプタムで栓をして0℃で2時間撹拌した後、セプタムを開けて炭酸水素ナトリウム水溶液を120mL加え、有機物をジエチルエーテル100mLで3回抽出した。不溶物もジクロロメタン50mLで溶解させて混合し、これに硫酸マグネシウムを加え、1分間撹拌して水分を除去した後、固体をろ別して得られた溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、粗生成物(776mg)を得た。この粗生成物は、その1H NMR解析から、原料である3,4-エチレンジチオチオフェン:2-ブロモ-3,4-エチレンジチオチオフェン:2,5-ジブロモ-3,4-エチレンジチオチオフェン=1:5:5の比率の混合物であることを確認した。
【0051】
この粗生成物のうち、333mgを、再び上記と同様に乾燥した容積100mLの二口ナス型フラスコ(反応容器、撹拌子を含む)に対してアルゴンフローしながらセプタムを開けて加え、セプタムで栓をした。8mLのTHF(Wako製、超脱水、安定剤含有)をシリンジで反応容器に加え、マグネチックスターラーで撹拌しつつ、0℃まで冷却した。アルゴンフローしながらNBSを502mg加えた。セプタムで栓をして0℃で1時間撹拌した。この溶液を50mLの炭酸水素ナトリウム水溶液に加え、析出した濃緑色の固体をメンブレンフィルター(Omnipore、5.0μm PTFE membrane)でろ別した。この固体を20mLの水、20mLのメタノール、20mLのジクロロメタン、20mLのクロロホルムで洗浄した後、20mLのチオ硫酸ナトリウム水溶液(0.2M)、5mLのメタノール、及び20mLのクロロホルムを加えて混合した。
【0052】
この混合物を室温下、激しく30分間撹拌した後、有機物をジクロロメタン20mLで3回抽出した。抽出した有機層を混合し、50mLの飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した後、硫酸マグネシウムを加え、1分間撹拌して水分を除去した後、固体をろ別して得られた溶液をロータリーエバポレーターで濃縮して粗生成物(2.9mg)を得た。この粗生成物は、自動精製システム付き中圧カラムクロマトグラフィー(Biotage社製、Isorela One)を用いて、クロマトグラフィーカートリッジとしてBiotage(登録商標) KP-Sil 25g、展開溶媒としてメタノール:ジクロロメタン=0:10~1:9の条件によって精製し、次式で表される導電性オリゴマー(2Br-2EDOT)のオレンジ色粉末1.7mgを、原料である3,4-エチレンジオキシチオフェンを基準として収率0.24%で得た。物性値:1H NMR(CDCl3)δ3.15-3.24(m,4H),3.25-3.34(m,4H);13C NMR(CDCl3)27.6,27.6,107.0,124.2,127.0,127.0;FD MS(positive mode)calcd for C12H8Br2S6 calcd[M+]501.7,found 501.7.
【0053】
【0054】
(実施例4)
導電性オリゴマー(2MeS-3EDOT)の合成
容積6mLのスクリューキャップ付きバイアル(反応容器)に撹拌子を入れ、5-(メチルチオ)-(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(MeS-EDOT-H)を61mg、2,5-ジブロモ-(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(2Br-EDOT)を69mg、酢酸パラジウム(Pd(OAc)2)を6mg、炭酸カリウム(K2CO3)を380mg加え、窒素置換されたグローブボックス中に収容した。グローブボックス内でスクリューキャップ付きバイアル(反応容器)にピバル酸16mgを加えたのち、3mLのジメチルホルムアミド(DMF)(Wako製、超脱水)を反応容器に加え、スクリューキャップの蓋を閉めた。反応容器はマグネチックスターラーで撹拌しつつ90℃までステージ式ホットプレートで加熱し、その温度で2時間撹拌を続けた。その後、室温まで冷却し、反応溶液を50mLのジクロロメタン(Wako製、試薬特級)で希釈し、この有機層に対して水50mLを用いて合計3回分液を行なった。
【0055】
分液により洗浄した有機層(下層)にNa2SO4を加え、10分程度撹拌して水分を除去した後、固体をろ別して得られた溶液をロータリーエバポレーターで濃縮して粗生成物を得た。粗生成物は、自動精製システム付き中圧カラムクロマトグラフィー(Biotage社製、Isorela One)を用いて、クロマトグラフィーカートリッジとしてBiotage(登録商標) SNAP Ultra 50g、展開溶媒としてn-ヘキサン:CH2CH2=1:1~0:10の条件によって精製し、次式で表される導電性オリゴマー(2MeS-3EDOT)の黄色粉末21mgを、原料である2,5-ジブロモ-(3,4-エチレンジオキシチオフェン)を基準として収率26%で得た。物性値:1H NMR(CDCl3,300MHz)δ2.38(s,6H),4.29-4.52(m,12H);MS(FD)calcd for C20H18O6S5[M+]514.0,found 514.0.
【0056】
【0057】
(実施例5)
導電性組成物の調製(化学酸化法)
以下のようにして、拡散法により導電性組成物を調製した。液-液拡散用H型セルの一方側に、導電性オリゴマーとして2MeS-2EDOTを3.97mg、他方側にドーパント供給源としてF2TCNQ(東京化成工業株式会社製)を2.54mg加え、CHCl3(Wako製、試薬特級)10mLを壁面に伝わせながらゆっくり加えた。これらを混合後、48時間静置し、その後ろ過によって、析出した光沢のあるロッド状の黒色結晶を溶液から分離することにより、導電性組成物(組成物1)を得た。
以上の方法と同様にして表2に示す溶媒を使用し、表2に示す導電性オリゴマー及びドーパント(ドーパント供給源)を用いて、導電性組成物(組成物2~3、9)を調製した。
【0058】
(実施例6)
導電性組成物の調製(電解酸化法)
電解酸化用H型セルの酸化側に、導電性オリゴマーとして2MeS-2EDOTを3.7mg、両側にドーパント供給源としてn-Bu4NBF4(東京化成工業株式会社製)を10mg加え、アセトン(Wako製、試薬特級)10mLを壁面に伝わせながらゆっくり加えた。25℃の恒温槽内で、白金電極に0.3μAの電流をかけ、3日間静置し、その後ろ過によって、析出した光沢のあるロッド状の黒色結晶を溶液から分離することにより、導電性組成物(組成物4)を得た。
以上の方法と同様にして表2に示す溶媒を使用し、表2に示す導電性オリゴマー及びドーパントを用いて、導電性組成物(組成物5~8、10、11)を調製した。
【0059】
(導電性の評価)
得られた導電性組成物について、以下のようにして導電率を測定し導電性を評価した。結果を表2に示す。
得られた導電性組成物に対して、15μmφの金線を導電性のカーボンペースト(XC-12、DOTITE製)で接着し、二端子法又は四端子法で室温にて電気抵抗測定を行なうことにより導電率を測定した。接着時の単結晶への歪みを緩和するために、AuワイヤーはAgペースト(DOTITE(D-500)、鎌倉化成株式会社製)を使って架橋し、基盤に結線した。カーボンペースト、Agペーストは少量の酢酸ブチルグリコール(東京化成工業株式会社製)を加えて混ぜることにより、適度な粘性として使用した。
【0060】
(比較例1)
導電性ポリマー(PEDOT/PSS)の調製
アルドリッチ製の水溶液を乾燥することにより、導電性ポリマー(PEDOT/PSS)を得た。
【0061】
(溶解性の評価)
得られた導電性ポリマー(PEDOT/PSS)について、実施例1と同様にして溶解性を評価した。結果を表1に示す。
【0062】
導電性組成物の作製
得られた導電性ポリマー(PEDOT/PSS)を水溶媒に分散させた水溶液を凍結乾燥することによって水分を除去し、固体粉末を得た(組成物12)。
【0063】
(導電性の評価)
得られた導電性組成物について、実施例4及び5における導電性の評価と同様にして、導電率を測定し導電性を評価した。結果を表2に示す。尚、表2中、オリゴマー濃度及びドーパント濃度は、本明細書中において既に説明した定義による。
【0064】
【0065】
【0066】
実施例1の導電性オリゴマーは、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、塩化メチレンのいずれの溶媒にも溶解し、不溶物は確認されなかった。一方、比較例1のPEDOT/PSSは、いずれの溶媒においても溶解性が充分ではなく、多くの不溶物が観察された。
【0067】
特定の導電性オリゴマーと特定のドーパントとを組み合わせて得られた導電性組成物1~11は、実用上、すぐれた導電率を示した。組成物12(PEDOT/PSS)は、導電率は高いものの、溶解性が充分ではなかったため、溶解性と導電性を両立するものではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の一態様における、新規な導電性オリゴマーは、特に、溶解性に優れるためハンドリング性や生産性に優れており、導電性にも優れる導電性組成物等を効率的に作製可能である。本発明の一態様である導電性オリゴマーを用いて、効率的に生産され導電性にも優れる導電性組成物及び導電助剤を提供することができ、また、前記導電性組成物を用いて形成され、導電性に優れるコンデンサ用電極、透明電極、電池用電極、及びキャパシタ用電極を提供することができる。
【0069】
上記に本発明の実施形態及び/又は実施例を幾つか詳細に説明したが、当業者は、本発明の新規な教示及び効果から実質的に離れることなく、これら例示である実施形態及び/又は実施例に多くの変更を加えることが容易である。従って、これらの多くの変更は本発明の範囲に含まれる。
この明細書に記載の文献、及び本願のパリ条約による優先権の基礎となる出願の内容を全て援用する。