IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】アミノ化剤及びアミノ化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 307/00 20060101AFI20241114BHJP
   C07D 333/36 20060101ALI20241114BHJP
   C07D 307/66 20060101ALI20241114BHJP
   C07D 333/66 20060101ALI20241114BHJP
   C07C 303/34 20060101ALI20241114BHJP
   C07C 255/42 20060101ALI20241114BHJP
   C07C 253/30 20060101ALI20241114BHJP
   C07D 263/26 20060101ALI20241114BHJP
   C07D 307/33 20060101ALI20241114BHJP
   C07D 307/30 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C07C307/00
C07D333/36
C07D307/66
C07D333/66
C07C303/34
C07C255/42
C07C253/30
C07D263/26
C07D307/33 200
C07D307/30
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021548931
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(86)【国際出願番号】 JP2020035804
(87)【国際公開番号】W WO2021060277
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-02-20
(31)【優先権主張番号】P 2019173542
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡添 隆
(72)【発明者】
【氏名】石橋 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】野崎 京子
(72)【発明者】
【氏名】相川 光介
(72)【発明者】
【氏名】橋本 卓也
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第09/015059(WO,A1)
【文献】国際公開第16/125845(WO,A1)
【文献】KAWAKAMI, T. et al.,Catalytic C-H imidation of aromatic cores of functional molecules : ligand-accelerated Cu catalysis,J. Am. Chem. Soc,2015年,Vol.137,pp.2460-2463,DOI:10.1021/ja5130012
【文献】ZHANG, H. et al.,Copper-catalyzed intermolecular aminocyanation and diamination of alkenes,Angew. Chem. Int. Ed.,2013年,Vol.52,pp.2529-2533,DOI:10.1002/anie.201209142
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(A1)で表される、化合物。
【化1】
(式中、Rは、置換基を有していていないC1-6アルキル基、C6-14アリール-C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基を置換基として有するC1-6アルキル基、又は、C1-6アルキル基及びC1-6アルコキシ基からなる群より選択される1~3個の置換基を有していてもよいC6-14アリール基である)
【請求項2】
前記Rが、置換基を有していていないC1-6アルキル基、C6-14アリール-C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基を置換基として有するC1-6アルキル基、又は、C1-6アルキル基及びC1-6アルコキシ基からなる群より選択される1~3個の置換基を有していてもよいフェニル基である、請求項1に記載の化合物
【請求項3】
請求項1又は2に記載の化合物を有効成分とする、アミノ化剤。
【請求項4】
請求項3に記載のアミノ化剤を用いて、少なくとも1個の不飽和結合を有する基質化合物中の炭素原子間に有る少なくとも1個の不飽和結合を構成する一方の炭素原子に、下記一般式(A1’)で表される基を導入することを含むアミノ基含有化合物の製造方法であり
前記不飽和結合は、炭素原子間の二重結合又は炭素原子間の三重結合ある、アミノ基含有化合物の製造方法。
【化2】
(式中、黒丸は結合手を意味する。)
【請求項5】
前記基質化合物がアルケンであり、前記アルケン中の不飽和結合を構成する2個の炭素原子の少なくとも一方の炭素原子に前記一般式(A1’)で表される基を導入する、請求項4に記載のアミノ基含有化合物の製造方法。
【請求項6】
前記基質化合物が、不飽和結合を構成する炭素原子に結合した水素原子を有するアルケン、不飽和結合を構成する炭素原子に結合した水素原子を有するアルキン、又は、芳香環の不飽和結合を構成する炭素原子に結合した水素原子を有する芳香族化合物であり、前記炭素原子に結合した水素原子を前記一般式(A1’)で表される基に置換する、請求項4に記載のアミノ基含有化合物の製造方法。
【請求項7】
前記基質化合物が、不飽和結合を構成する炭素原子に隣接する炭素原子に結合した水素原子を有するアルケン、不飽和結合を構成する炭素原子に隣接する炭素原子に結合した水素原子を有するアルキン、又は、芳香環の不飽和結合を構成する炭素原子に隣接する環外炭素原子に結合した水素原子を有するベンジル化合物であり、前記炭素原子に結合した水素原子を前記一般式(A1’)で表される基に置換する、請求項4に記載のアミノ基含有化合物の製造方法。
【請求項8】
前記一般式(A1’)で表される基を導入した後、カルボニル基に対する求核付加反応を利用した反応により、前記一般式(A1’)で表される基を1級アミノ基にする、請求項4~7のいずれか一項に記載のアミノ基含有化合物の製造方法。
【請求項9】
請求項3に記載のアミノ化剤を用いて、少なくとも1個の不飽和結合を有する基質化合物中の炭素原子間に有る少なくとも1個の不飽和結合を、下記式(A2’)で表される環構造に変えることを含むアミノ基含有化合物の製造方法であり
前記不飽和結合は、炭素原子間の二重結合又は炭素原子間の三重結合ある、アミノ基含有化合物の製造方法。
【化3】
(式中、黒丸が付された2個の炭素原子は、不飽和結合を構成していた炭素原子である。)
【請求項10】
前記基質化合物がアルケンである、請求項9に記載のアミノ基含有化合物の製造方法。
【請求項11】
前記式(A2’)で表される環構造に変えた後、カルボニル基に対する求核付加反応を利用した反応により、前記不飽和結合を構成していた2個の炭素原子の一方に1級アミノ基が導入されたアミノ基含有化合物を製造する、請求項9又は10に記載のアミノ基含有化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護基で保護されたアミノ基を導入するアミノ化剤、及び当該アミノ化剤を用いたアミノ化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アミノ基は、反応性が高く、様々な有機化合物の活性に重要な役割を果たす官能基である。特に1級アミノ基(-NH)は、極性があり、分子間や他の分子と水素結合を形成することで、立体構造の保持や分子間の相互作用等に重要な役割を果たす。有機化合物をアミノ化することで、有用な有機化合物を合成することができるため、様々なアミノ化剤が開発されている。
【0003】
保護基で保護されたイミドやスルホンイミドをアミノ化剤として、カップリング反応により基質中の不飽和結合を構成する原子に直接窒素原子を導入することができる。アミノ化剤として用いられるスルホンイミドとしては、例えば、N-フルオロベンゼンスルホンイミド(NFSI)がある。NFSIは、芳香族化合物中の不飽和結合を構成する炭素原子をアミノ化するC-Hアミノ化反応(非特許文献1、非特許文献4、非特許文献5、特許文献1、特許文献2)、アルケンのC=C結合の一方の炭素原子をアミノ化し、他方の炭素原子にシアノ基を導入するアミノシアノ化反応(非特許文献2)、アルケンの一方の炭素原子をアミノ化するとともにC=C結合の位置を異性化させるアリル位異性化アミノ化反応(非特許文献3)、アルケンのC=C結合の2つの炭素原子をアミノ化するジアミノ化反応(非特許文献6)、アルケンのC=C結合の一方の炭素原子をアミノ化し、他方の炭素原子にフッ素原子を導入するアミノフッ素化反応(非特許文献7)等の様々な反応でアミノ化剤として使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/125845号
【文献】国際公開第2015/031725号
【非特許文献】
【0005】
【文献】Kawakami et al., Journal of the American Chemical Society, 2015, vol.137, p.2460-2463.
【文献】Zhang et al., Angewandte Chemie International Edition, 2013, vol.52, p.2529-2533.
【文献】Trenner et al., Angewandte Chemie International Edition, 2013, vol.52, p.8952-8956.
【文献】Boursalian et al., Journal of the American Chemical Society, 2013, vol.135, p.13278-13281.
【文献】Miao et al., Chemical Communications, 2019, vol.55, p.7331-7334.
【文献】Zhang and Studer, Organic Letters, 2014, vol.16, p.1790-1793.
【文献】Zhang, et al. Angewandte Chemie International Edition, 2014, vol.53, p.11079-11083.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、比較的穏やかな条件で脱保護可能な保護基で保護されたアミノ基を幅広い基質に対して導入できるアミノ化剤、及び当該アミノ化剤を使用する、アミノ基含有化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、アルキルオキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基と、フルオロスルホニル基と、で保護したフッ化アミン化合物をアミノ化剤として用いることにより、比較的穏やかな条件で脱保護可能な保護基で保護されたアミノ基を幅広い基質に対して導入できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] 下記一般式(A1)で表される、化合物。
【化1】
(式中、Rは、置換基を有していてもよいC1-30アルキル基(炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)、又は、置換基を有していてもよいC6-14アリール基である)
[2] 前記Rが、置換基を有していてもよいC1-6アルキル基、又は、置換基を有していてもよいフェニル基である、[1]の化合物。
[3] 前記[1]又は[2]の化合物を有効成分とする、アミノ化剤。
【0009】
[4] 前記[3]のアミノ化剤を用いて、少なくとも1個の不飽和結合を有する基質化合物中の炭素原子間に形成される少なくとも1個の不飽和結合を構成する一方の炭素原子に、下記一般式(A1’)で表される基を導入する、アミノ基含有化合物の製造方法。
【化2】
(式中、黒丸は結合手を意味する。)
[5] 前記基質化合物がアルケンであり、前記アルケン中の不飽和結合を構成する2個の炭素原子の少なくとも一方の炭素原子に前記一般式(A1’)で表される基を導入する、[4]のアミノ基含有化合物の製造方法。
[6] 前記基質化合物が、不飽和結合を構成する炭素原子に結合した水素原子を有するアルケン、不飽和結合を構成する炭素原子に結合した水素原子を有するアルキン、又は、芳香環の不飽和結合を構成する炭素原子に結合した水素原子を有する芳香族化合物であり、前記炭素原子に結合した水素原子を前記一般式(A1’)で表される基に置換する、[4]のアミノ基含有化合物の製造方法。
[7] 前記基質化合物が、不飽和結合を構成する炭素原子に隣接する炭素原子に結合した水素原子を有するアルケン、不飽和結合を構成する炭素原子に隣接する炭素原子に結合した水素原子を有するアルキン、又は、芳香環の不飽和結合を構成する炭素原子に隣接する環外炭素原子に結合した水素原子を有するベンジル化合物であり、前記炭素原子に結合した水素原子を前記一般式(A1’)で表される基に置換する、[4]のアミノ基含有化合物の製造方法。
[8] 前記一般式(A1’)で表される基を導入した後、カルボニル基に対する求核付加反応を利用した反応により、前記一般式(A1’)で表される基を1級アミノ基にする、[4]~[7]のいずれかのアミノ基含有化合物の製造方法。
【0010】
[9] 前記[3]のアミノ化剤を用いて、少なくとも1個の不飽和結合を有する基質化合物中の炭素原子間に形成される少なくとも1個の不飽和結合を、下記式(A2’) で表される環構造に変える、アミノ基含有化合物の製造方法。
【化3】
(式中、黒丸が付された2個の炭素原子は、不飽和結合を構成していた炭素原子である。)
[10] 前記基質化合物がアルケンである、[9]のアミノ基含有化合物の製造方法。
[11] 前記式(A2’)で表される環構造に変えた後、カルボニル基に対する求核付加反応を利用した反応により、前記不飽和結合を構成していた2個の炭素原子の一方に1級アミノ基が導入されたアミノ基含有化合物を製造する、[9]又は[10]のアミノ基含有化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る化合物は、NFSIと同様の各種反応に、不飽和結合を有する幅広い基質に対して、アルキルオキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基と、フルオロスルホニル基とで保護されたアミノ基を導入することができる。アルキルオキシカルボニル基等とフルオロスルホニル基とで保護されたアミノ基は、NFSIよりも穏やかな条件で脱保護を行うことができるため、当該化合物は、アミノ化剤として非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明及び本願明細書において、「Cp1-p2」(p1及びp2は、p1<p2を満たす正の整数である)は、炭素数がp1~p2の基であることを意味する。
【0013】
本発明及び本願明細書において、「C1-10アルキル基」は、炭素数1~10のアルキル基であり、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。「C2-10アルキル基」は、炭素数2~10のアルキル基であり、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。C1-10アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ネオヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
【0014】
本発明及び本願明細書において、「C1-30アルキル基」は、炭素数1~30のアルキル基であり、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。「C2-30アルキル基」は、炭素数2~30のアルキル基であり、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。C1-30アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ネオヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基等が挙げられる。
【0015】
本発明及び本願明細書において、「C1-6アルキル基」は、炭素数1~6のアルキル基であり、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。C1-6アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ネオヘキシル基等が挙げられる。
【0016】
本発明及び本願明細書において、「C6-14アリール基」は、炭素数6~14の芳香族炭化水素基であり、C6-12アリール基が特に好ましい。C6-14アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、9-フルオレニル基等が挙げられ、フェニル基が特に好ましい。
【0017】
本発明及び本願明細書において、「置換されていてもよいC6-14アリール基」は、C6-14アリール基の炭素原子に結合している水素原子の1又は複数個、好ましくは1~3個が、他の官能基に置換されている基である。2個以上の置換基を有する場合、置換基同士は互いに同種であってもよく、異種であってよい。当該置換基としては、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、メチレンジオキシ基(-O-CH-O-)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子)、及びニトロ基等が挙げられる。「置換されていてもよいC6-14アリール基」の例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、4-メチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、4-メトキシフェニル基、2,4-ジメトキシフェニル基、3,4-ジメトキシフェニル基、3-クロロフェニル基、4-ニトロフェニル基、1,3-ベンゾジオキソール-5-イル基等が挙げられる。
【0018】
本発明及び本願明細書において、「C6-14アリール-C1-6アルキル基」は、C1-6アルキル基の炭素原子に結合している1個の水素原子がC6-14アリール基に置換された基である。C6-14アリール-C1-6アルキル基におけるC6-14アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、9-フルオレニル基等を例示でき、フェニル基及び9-フルオレニル基が特に好ましい。C6-14アリール-C1-6アルキル基におけるC1-6アルキル基としては、C1-4アルキル基が好ましい。C6-14アリール-C1-6アルキル基の例としては、ベンジル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、2-フェニルエチル基、9-アントリルメチル基、9-フルオレニルメチル基等が挙げられる。
【0019】
本発明及び本願明細書において、「C1-6アルコキシ基」とは、炭素数1~6のC1-6アルキル基の結合末端に酸素原子が結合した基をいう。C1-6アルコキシ基は直鎖であっても分岐鎖であってもよい。C1-6アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0020】
本発明及び本願明細書において、「エーテル結合性の酸素原子」とは、炭素原子間を連結する酸素原子であり、酸素原子同士が直列に連結された酸素原子は含まれない。炭素数Nc(Ncは2以上の整数)のアルキル基が有し得るエーテル結合性の酸素原子は、最大Nc-1個である。
【0021】
また、以降において、「化合物(n)」は式(n)で表される化合物を意味する。
【0022】
以降の化学反応は、反応に不活性な溶媒中で行うことができる。溶媒としては、メタノール、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の不活性溶媒が挙げられる。
【0023】
[アミノ化剤]
本発明に係る化合物は、下記一般式(A1)で表される化合物である。一般式(A1)中、Rは、置換基を有していてもよいC1-30アルキル基、又は置換基を有していてもよいC6-14アリール基である。
【0024】
【化4】
【0025】
前記Rが置換基を有していてもよいC1-30アルキル基である場合、当該アルキル基は、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい。前記Rとしては、置換基を有していてもよいC1-6アルキル基が好ましく、置換基を有していていないC1-6アルキル基、C6-14アリール-C1-6アルキル基、及びC1-6アルコキシ基を置換基として有するC1-6アルキル基がより好ましく、置換基を有していていないC1-6アルキル基及びC6-14アリール-C1-6アルキル基がさらに好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ネオヘキシル基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、2-フェニルエチル基、9-アントリルメチル基、及び9-フルオレニルメチル基がよりさらに好ましく、ネオペンチル基、ベンジル基、及び2-フェニルエチル基が特に好ましい。
【0026】
前記Rが置換基を有していてもよいC6-14アリール基である場合、当該アリール基としては、置換基を有していてもよいフェニル基が好ましく、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、ハロゲン原子、及びニトロ基からなる群より選択される1~3個の置換基を有していてもよいフェニル基がより好ましく、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、4-メチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、4-メトキシフェニル基、2,4-ジメトキシフェニル基、3,4-ジメトキシフェニル基、及び3-クロロフェニル基がさらに好ましく、フェニル基、4-メチルフェニル基、及び2,6-ジメチルフェニル基がよりさらに好ましい。
【0027】
化合物(A1)としては、前記Rが、置換基を有していていないC1-6アルキル基、C6-14アリール-C1-6アルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基である化合物が好ましく、前記Rが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ネオヘキシル基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、2-フェニルエチル基、フェニル基、4-メチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、4-メトキシフェニル基、2,4-ジメトキシフェニル基、又は3,4-ジメトキシフェニル基である化合物がより好ましく、ネオペンチル基、ベンジル基、2-フェニルエチル基、フェニル基、4-メチルフェニル基、又は2,6-ジメチルフェニル基である化合物がさらに好ましい。
【0028】
化合物(A1)は、例えば、下記反応により、フルオロスルホニルカルバミン酸エステルを合成し、このアミノ基の窒素原子と結合する水素原子をリチウム原子に置換し、さらにこのリチウム原子をフッ素原子に置換することにより合成できる。下記式中、Rは一般式(A1)のRと同じである。
【0029】
【化5】
【0030】
なお、上記反応では、リチウム原子を用いた例を記載しているが、リチウム原子がナトリウム原子、カリウム原子等の他のアルカリ金属原子であっても同様の反応が可能である。また、上記反応において、水素原子をリチウム原子に置換せず、直接水素原子をフッ素原子に置換することも可能である。
【0031】
前記フルオロスルホニルカルバミン酸エステルは、例えば、下記反応により、フルオロスルホニルイソシアネートをアルコールでエステル化することによっても合成できる。
【0032】
【化6】
【0033】
[アミノ基含有化合物の製造方法]
化合物(A1)は、各種反応におけるアミノ化剤の有効成分とすることができる。化合物(A1)は、NFSIと同様に様々な有機化合物中の炭素原子をアミノ化することができる。基質となる有機化合物としては、例えば、アルケン、アリル化合物、アルキン、芳香族化合物等の不飽和結合を有する化合物が挙げられる。当該不飽和結合は、炭素原子間に形成される結合であってもよく、炭素原子と炭素原子以外の原子との間の結合であってもよい。また、化合物(A1)は、トリシクロ環を含む有機化合物も基質とすることができる。
【0034】
例えば、化合物(A1)を用いて、基質化合物中の少なくとも1個の不飽和結合を構成する一方の炭素原子、又は当該不飽和結合の後述するアリル位、プロパルギル位、若しくはベンジル位の炭素原子に、下記一般式(A1’)で表される基を導入することができる。一般式(A1’)中、Rは一般式(A1)のRと同じ基である。また、以降の化学式において、一般式(A1’)で表される基を、「-[N]」と表すことがある。
【0035】
【化7】
【0036】
<1,2-アミノ官能基化反応>
アルケンを基質化合物とする場合、アルケン中の不飽和結合を構成する2個の炭素原子の少なくとも一方の炭素原子に前記一般式(A1’)で表される基を導入することができる。例えば、下記の1,2-アミノ官能基化反応により、アルケン中のC=C結合を構成する2個の炭素原子のうち、一方の炭素原子に一般式(A1’)で表される基を導入してアミノ化し、他方の炭素原子にYを導入することができる。Yは、一般式(A1’)で表される基、又は、一般式(A1’)で表される基以外の基を表す。
【0037】
【化8】
【0038】
上記の1,2-アミノ官能基化反応の反応式中、基質化合物におけるR101、R102、R103、及びR104は、それぞれ独立して、水素原子、脂肪族炭化水素基又は芳香族基である。当該脂肪族炭化水素基を構成する炭素原子数は、特に限定されるものではなく、例えば、C1-30脂肪族炭化水素基とすることができる。当該芳香族基は、芳香族炭化水素基であってもよく、複素環式基であってもよい。また、当該脂肪族炭化水素基及び芳香族基は、置換基を有していてもよい。当該置換基としては、化合物(A1)によるC=C結合に対する1,2-アミノ官能基化反応を阻害しないものであれば特に限定されるものではない。R101、R102、R103、及びR104の任意の2つが脂肪族炭化水素基である場合、これらの脂肪族炭化水素基は互いに連結して環を構成してもよい。
【0039】
一般式(A1’)で表される基以外の基であるYとしては、例えば、水素原子、アジ基(-N)、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、モノフルオロメチル基、シアノ基(-CN)、ヒドロキシ基(-OH)、C1-6アルコキシ基、アシル基、カルバメート基(-O-CO-NH-R)、アミド基(-N(R’)-C(=O)-R)、イミド基(-C(=O)-N(R’)-C(=O)-R)、チオール基(-SR)、脂肪族炭化水素基、芳香族基等が挙げられる。なお、これらの式中、R及びR’はそれぞれ独立して脂肪族炭化水素基又は芳香族基である。脂肪族炭化水素基及び芳香族基は、それぞれ、R101と同様のものを用いることができる。
【0040】
Yが一般式(A1’)で表される基である化合物は、Cu触媒等の触媒、光又は熱の存在下で、基質となるアルケンと化合物(A1)とを用いて1,2-アミノ官能基化反応を行うことにより得られる。また、Yが一般式(A1’)で表される基以外である化合物は、1,2-アミノ官能基化反応は、触媒の存在下で、基質となるアルケンと化合物(A1)とY含有化合物とを反応させることにより行われる。1,2-アミノ官能基化反応の反応条件は、後記実施例3や、非特許文献2、非特許文献6等に記載のNFSIによる1,2-アミノ官能基化反応と同様の反応条件や、これらを適宜改変した条件で行うことができる。
【0041】
<C-Hアミノ化反応>
基質化合物が、不飽和結合を構成する炭素原子に結合した水素原子を有するアルケン、不飽和結合を構成する炭素原子に結合した水素原子を有するアルキン、又は、芳香環の不飽和結合を構成する炭素原子に結合した水素原子を有する芳香族化合物である場合、上記炭素原子に結合した水素原子を一般式(A1’)で表される基に置換してアミノ化することができる。
アルケンを基質化合物とする場合、例えば、下記のC-Hアミノ化反応により、アルケン中のC=C結合を構成する2個の炭素原子のうちの一方の炭素原子と結合している水素原子を、一般式(A1’)で表される基に置換してアミノ化することができる。下記C-Hアミノ化反応の反応式中、R101、R102、及びR103は、前記1,2-アミノ官能基化反応におけるR101、R102、及びR103と同じである。R101、R102、及びR103の任意の2つが脂肪族炭化水素基である場合、これらの脂肪族炭化水素基は互いに連結して環を構成してもよい。
【0042】
【化9】
【0043】
アルキンを基質化合物とし、下記のC-Hアミノ化反応により、アルキンの末端の水素原子を一般式(A1’)で表される基に置換することによっても、アミノ化することができる。下記C-Hアミノ化反応の反応式中、Rは脂肪族炭化水素基又は芳香族基である。脂肪族炭化水素基及び芳香族基は、それぞれ、R101と同様のものを用いることができる。
【0044】
【化10】
【0045】
また、芳香族化合物を基質化合物とする場合、例えば、下記のC-Hアミノ化反応により、芳香族化合物中の芳香環の不飽和結合を構成している炭素原子と結合している水素原子を、一方の炭素原子に一般式(A1’)で表される基に置換してアミノ化することができる。当該芳香族化合物(Ar-H)は、芳香族炭化水素であってもよく、複素環式化合物であってもよい。式中、Arは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい複素環式基である。
【0046】
【化11】
【0047】
一般式(A1’)で表される基を導入する炭素原子は、C=C結合を構成する炭素原子であってもよく、炭素原子と炭素原子以外の原子とによる不飽和結合を構成する炭素原子であってもよい。炭素原子と炭素原子以外の原子とによる不飽和結合としては、C=O結合、C=N結合等が挙げられる。
【0048】
C-Hアミノ化反応は、触媒、光又は熱の存在下で、基質となるアルケン、アルキン、又は芳香族化合物と化合物(A1)とを反応させることにより行われる。C-Hアミノ化反応の反応条件は、後記実施例5や、非特許文献1、非特許文献4、非特許文献5等に記載のNFSIによるC-Hアミノ化反応と同様の反応条件や、これらを適宜改変した条件で行うことができる。
【0049】
<アリル位、プロパルギル位、又はベンジル位のC-Hアミノ化反応>
基質化合物が、不飽和結合を構成する炭素原子に隣接する炭素原子に結合した水素原子を有するアルケン、不飽和結合を構成する炭素原子に隣接する炭素原子に結合した水素原子を有するアルキン、又は、芳香環の不飽和結合を構成する炭素原子に隣接する環外炭素原子に結合した水素原子を有するベンジル化合物である場合、上記炭素原子に結合した水素原子を一般式(A1’)で表される基に置換してアミノ化することができる。
以下、アルケンの不飽和結合を構成する炭素原子に隣接する炭素原子に結合した水素原子をアリル位の水素原子といい、アルキンの不飽和結合を構成する炭素原子に隣接する炭素原子に結合した水素原子をプロパルギル位の水素原子といい、ベンジル化合物の芳香環の不飽和結合を構成する炭素原子に隣接する環外炭素原子に結合した水素原子をベンジル位の水素原子という。
【0050】
例えば、下記のC-Hアミノ化反応により、基質化合物中の不飽和結合に対してアリル位、プロパルギル位、又はベンジル位の水素原子を、一般式(A1’)で表される基に置換してアミノ化することができる。
下記C-Hアミノ化反応の反応式中、R101、R102、及びR103は、前記1,2-アミノ官能基化反応の反応式におけるR101、R102、及びR103と同じである。
下記反応式中、R及びArは、それぞれ、前記C-Hアミノ化反応の反応式中のR及びArと同じである。
下記反応式中、R105及びR106は、それぞれ独立して、水素原子、脂肪族炭化水素基又は芳香族基である。脂肪族炭化水素基及び芳香族基は、それぞれ、R101と同様のものを用いることができる。
下記反応式中、R107及びR108は、それぞれ独立して、水素原子、脂肪族炭化水素基又は芳香族基である。脂肪族炭化水素基及び芳香族基は、それぞれ、R101と同様のものを用いることができる。
101、R102、R103、R105、及びR106の任意の2つが脂肪族炭化水素基である場合、これらの脂肪族炭化水素基は互いに連結して環を構成してもよい。
【0051】
【化12】
【0052】
アリル位、プロパルギル位、又はベンジル位のC-Hアミノ化反応は、触媒、光又は熱の存在下で、基質となるアルケン、アルキン、又は芳香族化合物と化合物(A1)とを反応させることにより行われる。当該C-Hアミノ化反応の反応条件は、NFSIによるアリル位、プロパルギル位、又はベンジル位のC-Hアミノ化反応と同様の反応条件や、これらを適宜改変した条件で行うことができる。
【0053】
<アミノオキシ化反応>
C=C結合を有する有機化合物を基質とし、例えばアミノオキシ化反応により、基質化合物中の少なくとも1個の2個の炭素原子間の不飽和結合を、下記式(A2’)で表される環構造に変えることができる。下記式(A2’)中、黒丸が付された2個の炭素原子は、不飽和結合を構成していた炭素原子である。
【0054】
【化13】
【0055】
アルケンを基質化合物とする場合、例えば、下記のアミノオキシ化反応により、アルケン中のC=C結合を構成する2個の結合のうちの一方を開裂し、化合物(A1)で環化させてアミノ化することができる。下記アミノオキシ化反応の反応式中、R101、R102、R103、及びR104は、前記1,2-アミノ官能基化反応におけるR101、R102、R103、及びR104と同じである。また、Rは一般式(A1)のRと同じ基である。
101、R102、R103、及びR104の任意の2つが脂肪族炭化水素基である場合、これらの脂肪族炭化水素基は互いに連結して環を構成してもよい。
【0056】
【化14】
【0057】
アミノオキシ化反応は、I触媒等の触媒、光又は熱の存在下で、基質となるアルケンと化合物(A1)とを反応させることにより行われる。当該アミノオキシ化反応の反応条件は、後記実施例8と同様の反応条件や、これらを適宜改変した条件で行うことができる。
【0058】
<アルケンのアリル位異性化アミノ化反応>
アルケンを基質化合物とする場合、例えば、下記のアリル位異性化アミノ化反応により、アルケン中のC=C結合を構成する2個の結合のうちの一方の炭素原子に化合物(A1’)で表される基を導入してアミノ化するとともに、アリル位の異性化をすることができる。下記アリル位異性化アミノ化反応の反応式中、R101、R102、R103、R105、及びR106は、前記アリル位、プロパルギル位、又はベンジル位のC-Hアミノ化反応におけるR101、R102、R103、R105、及びR106と同じである。 R101、R102、R103、R105、及びR106の任意の2つが脂肪族炭化水素基である場合、これらの脂肪族炭化水素基は互いに連結して環を構成してもよい。
【0059】
【化15】
【0060】
アルケンのアリル位異性化アミノ化反応は、Se触媒等の触媒、光又は熱の存在下で、基質となるアルケンと化合物(A1)とを反応させることにより行われる。当該アリル位異性化アミノ化反応の反応条件は、後記実施例10や、非特許文献3等に記載の同様の反応条件や、これらを適宜改変した条件で行うことができる。
【0061】
<シクロプロパンの1,3-アミノ官能基化反応>
シクロプロパンを有する有機化合物を基質とし、例えば下記の1,3-アミノ官能基化反応により、シクロプロパン環を構成する3個の炭素原子のうち、1個の炭素原子に一般式(A1’)で表される基を導入してアミノ化し、別の1個の炭素原子に他の官能基を導入することができる。
【0062】
下記の1,3-アミノ官能基化反応の反応式中、基質化合物におけるR109、R110、R111、R112、R113、及びR114は、それぞれ独立して、水素原子、脂肪族炭化水素基又は芳香族基である。脂肪族炭化水素基及び芳香族基は、それぞれ、R101と同様のものを用いることができる。また、下記の1,3-アミノ官能基化反応の反応式中、Yは、上記の1,2-アミノ官能基化反応におけるYと同じである。
109、R110、R111、R112、R113、及びR114の任意の2つが脂肪族炭化水素基である場合、これらの脂肪族炭化水素基は互いに連結して環を構成してもよい。
【0063】
【化16】
【0064】
Yが一般式(A1’)で表される基である化合物は、触媒、光又は熱の存在下で、基質となるアルケンと化合物(A1)とを用いて1,3-アミノ官能基化反応を行うことにより得られる。また、Yが一般式(A1’)で表される基以外である化合物は、1,3-アミノ官能基化反応は、触媒の存在下で、基質となるアルケンと化合物(A1)とY含有化合物とを反応させることにより行われる。1,3-アミノ官能基化反応の反応条件は、後記実施例3や、非特許文献2、非特許文献6等に記載のNFSIによる1,2-アミノ官能基化反応と同様の反応条件や、これらを適宜改変した条件で行うことができる。
【0065】
<脱炭酸アミノ化反応>
カルボン酸を基質化合物とし、例えば下記の脱炭酸アミノ化反応により、カルボン酸基を一般式(A1’)で表される基に置換することによってアミノ化することができる。下記脱炭酸アミノ化反応の反応式中、Rは、脂肪族炭化水素基又は芳香族基である。脂肪族炭化水素基及び芳香族基は、それぞれ、R101と同様のものを用いることができる。
【0066】
【化17】
【0067】
脱炭酸アミノ化反応は、触媒、光又は熱の存在下で、基質となるカルボン酸と化合物(A1)とを反応させることにより行われる。当該脱炭酸アミノ化反応の反応条件は、NFSIによるカルボン酸の脱炭酸アミノ化反応と同様の反応条件や、これらを適宜改変した条件で行うことができる。
【0068】
<カルボニル基のα-アミノ化反応>
カルボニル基含有化合物を基質とし、例えば下記のα-アミノ化反応により、カルボン酸基のα位の炭素原子に結合していた水素原子を、一般式(A1’)で表される基に置換することによってアミノ化することができる。下記α-アミノ化反応の反応式中、Rは、脂肪族炭化水素基又は芳香族基である。脂肪族炭化水素基及び芳香族基は、それぞれ、R101と同様のものを用いることができる。
【0069】
【化18】
【0070】
基質とするカルボニル基含有化合物としては、カルボニル基のα位の炭素原子に少なくも1個の水素原子が結合している化合物であれば特に限定されるものではない。当該カルボニル基含有化合物としては、例えば、アルデヒド(Zが、水素原子)、ケトン(Zが、R101又はAr)、エステル(Zが、-OR)、チオエステル(Zが、-SR)、アミド(Zが、-N-R(R’))、イミド((Zが、-C(=O)-N(R’)-C(=O)-R)が挙げられる。これらの式中、R及びR’はそれぞれ独立して脂肪族炭化水素基又は芳香族基である。脂肪族炭化水素基及び芳香族基は、それぞれ、R101と同様のものを用いることができる。
【0071】
カルボニル基のα-アミノ化反応は、触媒、光又は熱の存在下で、基質となるカルボニル基含有化合物と化合物(A1)とを反応させることにより行われる。当該α-アミノ化反応の反応条件は、NFSIによるカルボニル基のα-アミノ化反応と同様の反応条件や、これらを適宜改変した条件で行うことができる。
【0072】
[アミノ基の脱保護反応]
前記一般式(A1’)で表される基が導入された化合物は、カルボニル基に対する求核付加反応を利用した脱保護反応により、当該一般式(A1’)で表される基を1級アミノ基にすることができる。同様に、前記式(A2’)の構造を有する化合物は、カルボニル基に対する求核付加反応を利用した脱保護反応により開環させ、前記式(A2’)の構造中の窒素原子を1級アミノ基とする。これにより、化合物(A1)によってアミノ化された不飽和結合を構成していた2個の炭素原子の一方に、1級アミノ基が導入されたアミノ基含有化合物を製造することができる。
【0073】
NFSIによってアミノ化された化合物は、マグネシウムのような金属単体や、トリフルオロメタンスルホン酸(TfOH)や硫酸等の強酸を用いる必要があるなど、非常に厳しい反応条件を必要とする。これに対して、化合物(A1)によってアミノ化された化合物の脱保護反応は、まず、一般式(A1’)で表される基及び前記式(A2’)の構造中のカルボニル基に対する求核付加反応を行う。これにより、金属単体や強酸を必要としない、比較的穏やかな条件で脱保護反応を行うことができる。
【0074】
一般式(A1’)で表される基及び前記式(A2’)の構造中のカルボニル基に対する求核付加反応は、還元剤の存在下、100℃以下の温度でインキュベートすることにより進行させることができる。当該求核付加反応では、必要に応じて、還元剤と共にブレンステッド酸又はルイス酸等の添加剤を用いることができる。
【0075】
還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素亜鉛、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素リチウム、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化アミノホウ素リチウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム等の水素化ホウ素試薬、及び、水素化アルミニウムリチウム等の金属水素化物試薬を使用できる。還元剤としては、水素化ホウ素試薬が好ましく、水素化ホウ素ナトリウム及び水素化ホウ素亜鉛がより好ましく、水素化ホウ素ナトリウムがさらに好ましい。還元剤の量は、化合物(A1)によってアミノ化された化合物1モルに対して、0.5~10モルが好ましい。
【0076】
一般式(A1’)で表される基及び前記式(A2’)の構造中のカルボニル基に対する求核付加反応は、塩基性条件下、100℃以下の温度でインキュベートすることにより進行させることができる。塩基性条件とするために使用される塩基としては、炭酸ナトリウムが挙げられる。塩基の量は、化合物(A1)によってアミノ化された化合物1モルに対して、1~100モルが好ましく、1~50モルがより好ましく、1~10モルがさらに好ましい。
【0077】
一般式(A1’)で表される基及び前記式(A2’)の構造中のカルボニル基に対する求核付加反応により、一般式(A1’)で表される基等はスルホニルアミノ基に変換される。このスルホニルアミノ基を含む化合物を、酸性条件下、100℃以下の温度でインキュベートすることにより、スルホニルアミノ基を脱保護し、1級アミノ基を得ることができる。酸性条件とするために使用される酸としては、塩酸、トリフルオロ酢酸等が挙げられる。酸の量は、スルホニルアミノ基を含む化合物1モルに対して、1~1000モルが好ましく、1~500モルがより好ましく、1~100モルがさらに好ましい。
【0078】
化合物(A1)によってアミノ化された化合物は、1段階の脱保護反応で、一般式(A1’)で表される基及び前記式(A2’)の構造中の窒素原子を1級アミノ基にしてもよい。例えば、アルミニウムリチウムのような比較的強い還元剤を使用したり、高濃度の酸性条件下で反応させる。
【0079】
なお、一般式(A1’)で表される基及び前記式(A2’)の構造中のカルボニル基に対する求核付加反応と、SOF基のフッ素原子に対する求核置換反応により、-NH-SO-Nu(Nuは求核剤の残基)構造を有する誘導体を合成することができる。
【実施例
【0080】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0081】
実施例、比較例の分析に使用したNMR装置は、日本電子製JNM-ECS400(400MHz)である。H NMRではテトラメチルシランを0PPMの基準値とし、19F NMRではCを-162PPMの基準値とした。HPLC(高速液体クロマトグラフ)は、島津製作所製LC-20を使用した。実施例中に記載する収率(%)の単位は、モル%である。
【0082】
[実施例1]
一般式(A1)中のRがネオペンチル基である化合物を合成した。
【0083】
【化19】
【0084】
アルゴン雰囲気下、クロロスルホニルイソシアナート(7.94g、55.0mmol)をアセトニトリル(25mL)に加え、0℃に冷却した。これにネオペンチルアルコール(4.41g、50.0mmol)をゆっくり加え、室温で2時間攪拌した後、二フッ化水素カリウム(4.69g、60.0mmol)を室温で加え、さらに1時間攪拌し、水(75mL)でクエンチした。得られた反応液を分液した後、水相をヘキサンと酢酸エチルの1:1混合溶媒(40mL)で5回抽出し、全ての有機相を合わせて飽和食塩水(20mL)で洗浄した。洗浄後の有機相を硫酸ナトリウムで乾燥した後に、溶媒を減圧下で留去した。得られた粗生成物ネオペンチル N-(フルオロスルホニル)カルバミン酸エステルを、メタノール(50mL)に溶かし、炭酸リチウム(4.11g、55.0mmol)をゆっくり加え、室温で15分間攪拌した。この粗生成物から溶媒を減圧下で留去し、酢酸エチル(100mL)を加え、懸濁液を得た。当該懸濁液をセライトで濾過し、酢酸エチル(50mL)で洗浄し、濾液を減圧下で濃縮した。濃縮物にジクロロメタン(100mL)を加えて室温で1時間撹拌した後、固体を濾過して回収することで、化合物(5)を75%収率で得た。
【0085】
H NMR(重ジメチルスルホキシド):δ3.50(s,2H),0.86(s,9H).
【0086】
【化20】
【0087】
空気下、上記実施例で得られた化合物(5)(2.19g、10.0mmol)を酢酸エチル(20mL)に溶かし、1規定 塩酸(20mL)で分液した。有機層を飽和食塩水(20mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後に、溶媒を減圧下で留去した。ネオペンチル N-(フルオロスルホニル)カルバミン酸エステルを定量的に得た。
【0088】
H NMR(重クロロホルム):δ7.93(s,1H),3.99(s,2H),0.99(s,9H).
【0089】
【化21】
【0090】
化合物(5)(3.2g)のアセトニトリル(120g)溶液を、氷浴にて0℃へ氷冷した。体積比で2%のフッ素/窒素混合ガスをマスフローコントローラーで100mL/分に調節し、173分間かけてフッ素ガス1当量を反応容器内に導入した。次いで、反応液中の沈殿を濾過し、減圧下での溶媒留去を行った後、塩化メチレンを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより目的生成物である化合物(6)を1.96g得た。
【0091】
H-NMR(CDCl):δ4.15(s,2H),0.99(s,9H)
19F-NMR(CDCl):δ45.4(s,1F),-45.0(s,1F).
【0092】
[実施例2]
一般式(A1)中のRがベンジル基である化合物を合成した。
【0093】
【化22】
【0094】
化合物(1)(0.40g)及びフッ化ナトリウム(0.22g)のアセトニトリル(30g)溶液を、氷浴にて0℃へ氷冷した。体積比で2%のフッ素/窒素混合ガスをマスフローコントローラーで100mL/分に調節し、20分間かけてフッ素ガス1当量を反応容器内に導入した。次いで、反応液中の沈殿を濾過し、減圧下での溶媒留去を行った後、ヘキサン/酢酸エチル混合溶媒系を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより目的生成物である化合物(3)を0.13g得た。
【0095】
一方で、リチウム塩(2)(3.39g)のアセトニトリル(120g)溶液を、2%フッ素/窒素混合ガスをマスフローコントローラーで100mL/分に調節し、168分間かけてフッ素ガス1当量を反応容器内に導入した以外は、上記と同様にして、目的生成物である化合物(3)を1.24g得た。
【0096】
H-NMR(CDCl):δ7.43(s,5H),5.47(s,2H)
19F-NMR(CDCl):δ45.8(s,1F),-44.1(s,1F).
【0097】
[実施例3]
化合物(6)をアミノ化剤として用い、スチレンをシアノアミノ化反応によりアミノ化した。
【0098】
【化23】
【0099】
アルゴン雰囲気下、シアン化銅(0.9mg、0.010mmol)、フェナントロリン一水和物(2.0mg、0.010mmol)、アセトニトリル(0.50mL)を加え、室温で10分間攪拌した。スチレン(10.4mg、0.100mmol)、ネオペンチル N-フルオロ-N-(フルオロスルホニル)カルバミン酸エステル(32.4mg、0.140mmol)、トリメチルシリルシアニド(13.9mg、0.140mmol)を加え、70℃に加熱し、2時間攪拌した。ジクロロメタン(5mL)に溶かし、シリカゲル(2g)で濾過し、ジクロロメタン(10mL)で洗浄し、濾液を減圧下で留去した。得られた生成粗体をNMRで分析したところ、化合物(7)の収率は70%であった。
【0100】
H NMR(重クロロホルム):δ7.46-7.38(m,5H),4.40-4.32(m,2H),4.15-4.09(m,1H),4.04(d,1H),4.00(d,1H),0.99(s,9H).
【0101】
[実施例4]
化合物(7)中のアミノ基を脱保護した。
【0102】
【化24】
【0103】
アルゴン雰囲気下、化合物(7)(17.1mg、0.050mmol)及び塩化亜鉛(20.4mg、0.150mmol)にメタノール(0.25mL)を加え、0℃に冷却した。この反応液に、水素化ホウ素ナトリウム(5.7mg、0.150mmol)を加え、室温で15時間攪拌した。次いで、当該反応液を飽和塩化アンモニウム水溶液でクエンチし、分液した後、水相を酢酸エチル(10mL)で2回抽出し、全ての有機相を合わせて飽和食塩水(10mL)で洗浄した。洗浄後の有機相を硫酸ナトリウムで乾燥した後に、溶媒を減圧下で留去した。得られた生成粗体をNMRで分析したところ、化合物(8)の収率は42%であった。
【0104】
H NMR(重クロロホルム):δ7.46-7.37(5H),5.20(t,1H),4.22(dd,1H),3.87(s,3H),3.60-3.48(m,2H).
【0105】
【化25】
【0106】
空気下、化合物(8)(12.2mg、0.051mmol)にアセトニトリル(0.20mL)と4規定 塩酸(0.10mL)を加え、60℃で19時間加熱した。この反応液に、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液でクエンチし、分液した後、水相をジクロロメタン(10mL)で10回抽出した。全ての有機相を合わせて硫酸ナトリウムで乾燥した後に、溶媒を減圧下で留去した。得られた生成粗体をNMRで分析したところ、化合物(9)の収率は66%であった。
【0107】
H NMR(重クロロホルム):δ7.33-7.44(m,5H),3.89(t,1H),3.12-3.21(m,2H).
【0108】
[実施例5]
化合物(6)をアミノ化剤として用い、2-フェニルチオフェンを芳香族C-Hアミノ化反応によりアミノ化した。
【0109】
【化26】
【0110】
アルゴン雰囲気下、塩化銅(1.0mg、0.010mmol)、bathocuproine(4.3mg、0.012mmol)、及び炭酸カルシウム(10.0mg、0.10mmol)をアセトニトリル(0.50mL)に加え、室温で10分間攪拌した。この溶液に、2-フェニルチオフェン(16.0mg、0.100mmol)、ネオペンチル N-フルオロ-N-(フルオロスルホニル)カルバミン酸エステル(30.1mg、0.130mmol)を加え、40℃に加熱し、23時間攪拌した。得られた反応物を酢酸エチル(5mL)に溶かし、シリカゲル(2g)で濾過し、酢酸エチル(10mL)で洗浄し、濾液を減圧下で留去した。得られた生成粗体をNMRで分析したところ、化合物(10)の収率は70%であった。
【0111】
H NMR(重クロロホルム):δ7.55-7.57(m,2H),7.38-7.42(m,2H),7.32-7.36(m,1H),7.17(d,1H),7.09(d,1H),3.99(s,2H),0.90(s,9H).
【0112】
[実施例6]
化合物(10)中のアミノ基を脱保護した。
【0113】
【化27】
【0114】
アルゴン雰囲気下、リチウム水素化アルミニウム(5.7mg、0.15mmol)にテトラヒドロフラン(0.20mL)を加え、0℃に冷却した。この溶液に、化合物(10)(18.6mg、0.050mmol)を加え、室温に昇温し、0.5時間攪拌した。次いで、この反応液に飽和ロッシェル塩水溶液(5mL)をゆっくり加えてクエンチし、分液した後、水相を酢酸エチル(15mL)で3回抽出した。全ての有機相を合わせて飽和食塩水(5mL)で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥し、その後に溶媒を減圧下で留去した。得られた生成粗体をNMRで分析したところ、化合物(11)の収率は35%であった。
【0115】
H NMR(重クロロホルム):δ7.46-7.48(m,2H),7.31-7.34(m,2H),7.17-7.21(m,1H),6.94(d,1H),6.17(d,1H),3.72(s,2H).
【0116】
[実施例7]
化合物(10)中のアミノ基を脱保護した。
【0117】
【化28】
【0118】
空気下、化合物(10)(0.50mmol)に、ジオキサン(0.20mL)と2M水酸化リチウム(0.050mL、0.10mmol)を加えた後、60℃に加熱して1時間攪拌した後、4規定 塩酸(0.30mL)を加え、60℃で0.5時間攪拌した。その後、当該反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10mL)をゆっくり加えてクエンチし、分液した後、水相を酢酸エチル(15mL)で3回抽出した。全ての有機相を合わせて飽和食塩水(5mL)で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥し、その後に溶媒を減圧下で留去した。得られた生成粗体をNMRで分析したところ、化合物(11)の収率は52%であった。
【0119】
H NMR(重クロロホルム):δ7.46-7.48(m,2H),7.31-7.34(m,2H),7.17-7.21(m,1H),6.94(d,1H),6.17(d,1H),3.72(s,2H).
【0120】
[実施例8]
化合物(3)をアミノ化剤として用い、スチレンをアミノオキシ化反応によりアミノ化した。
【0121】
【化29】
【0122】
アルゴン雰囲気下、モレキュラーシーブ4Å(12.5mg)に、4-メチルヨードベンゼン、ジクロロメタン(0.50mL)を加えた。この溶液に、スチレン(5.2mg、0.050mmol)、ベンジル N-フルオロ-N-(フルオロスルホニル)カルバミン酸エステル(15.1mg、0.060mmol)を加え、40℃に加熱し、3日間攪拌した。反応液をNMR及びHPLCで分析したところ、化合物(12)の収率は20%であった。
【0123】
H NMR(重クロロホルム):δ7.44-7.52(m,3H),7.37-7.43(m,2H),5.40(ddd,1H),4.86(dd,1H),4.44(dd,1H).19F NMR(重クロロホルム):δ55.42(s,1F).
【0124】
[実施例9]
化合物(12)中のアミノ基を脱保護した。
【0125】
【化30】
【0126】
空気下、化合物(12)(24.3mg、0.10mmol)にメタノール(0.20mL)と2規定 塩酸(0.80mL)を加えた。当該溶液を60℃に加熱し、2日間攪拌した後、室温に冷却し、2M 炭酸ナトリウム(0.80mL)とジ-tert-ブチルジカルボナート(65.5mg、0.30mmol)を加えた。当該反応液を室温で3時間攪拌した後、水(3mL)を加えて分液した後、水相を酢酸エチル(15mL)で3回抽出した。全ての有機相を合わせて飽和食塩水(5mL)で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下で留去した。得られた生成粗体をNMRで分析したところ、化合物(13)(N-Boc-フェニルグリシノール)の収率は定量的であった。
【0127】
[実施例10]
化合物(3)をアミノ化剤として用い、メチル (E)-5-フェニル-3-ペンテン酸エステルをアリル異性化アミノ化反応によりアミノ化した。
【0128】
【化31】
【0129】
アルゴン雰囲気下、モレキュラーシーブ4Å(50mg)とジフェニルジセレニド(1.6mg、0.005mmol)にジクロロメタン(0.50mL)とメチル (E)-5-フェニル-3-ペンテン酸エステル(9.5mg、0.050mmol)とベンジル N-フルオロ-N-(フルオロスルホニル)カルバミン酸エステル(12.6mg、0.050mmol)を加えた。この反応液を室温で20時間攪拌した後、モレキュラーシーブ4Åを濾別し、溶媒を減圧下で留去した。得られた生成粗体をNMRで分析したところ、化合物(14)の収率は63%であった。また化合物(14)の位置異性体の収率は17%であった。
【0130】
H NMR(重クロロホルム):δ7.04-7.39(m,11H),5.98(dd,1H),5.23-5.32(m,3H),3.75(s,3H),3.31(dd,1H),3.16(dd,1H).
【0131】
[実施例11]
化合物(14)中のアミノ基を脱保護した。
【0132】
【化32】
【0133】
アルゴン雰囲気下、化合物(14)(13.5mg、0.032mmol)にメタノール(0.4mL)と塩化亜鉛(8.2mg、0.060mmol)を加え、0℃に冷却した。この反応液に、水素化ホウ素ナトリウム(2.3mg、0.060mmol)を加え、60℃に昇温し、3時間攪拌した。当該反応液に、飽和塩化アンモニウム水溶液(5mL)をゆっくり加えてクエンチし、分液した後、水相を酢酸エチル(5mL)で3回抽出した。全ての有機相を合わせて飽和食塩水(5mL)で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥し、その後に溶媒を減圧下で留去した。得られた生成粗体をNMRで分析したところ、化合物(15)の収率は89%であった。
【0134】
H NMR(重クロロホルム):δ7.46-7.26(3H),7.22-7.15(2H),6.89(dd,1H),5.99(d,1H),4.81(d,1H),4.29-4.36(m,1H),3.74(s,3H),3.53(s,3H),3.00(dd,1H),2.88(q,1H).
【0135】
【化33】
【0136】
空気下、化合物(15)(8.7mg、0.029mmol)にアセトニトリル(0.20mL)と4規定 塩酸(0.20mL)を加え、60℃に昇温し、12時間攪拌した。その後、当該反応液に2M 炭酸ナトリウム(0.80mL)とジ-tert-ブチルジカルボナート(21.8mg、0.10mmol)を加え、室温で4時間攪拌した。次いで、当該反応液に1規定塩酸(4mL)を加えて分液した後、水相を酢酸エチル(5mL)で3回抽出した。全ての有機相を合わせて飽和食塩水(5mL)で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥し、その後に溶媒を減圧下で留去した。得られた生成粗体をNMRで分析したところ、化合物(16)の収率は55%であった。
【0137】
H NMR(重クロロホルム):δ7.21-7.38(m,3H),7.15-7.17(m,2H),6.97-7.02(m,1H),5.92-5.76(d,1H),4.39-4.64(m,2H),2.89(d,2H),1.38(s,9H).
【0138】
[実施例12]
化合物(6)をアミノ化剤として用い、1-クロロ4-ビニルベンゼンを1,2-アミノ官能基化反応によりアミノフッ素化した。
【0139】
【化34】
【0140】
臭化銅(I)(1.4mg、0.01mmol、10mol%)、bathocuproine(1.8mg、0.005mmol、5mol%)、ビス(ピナコラート)ジボロン(BPin、2.5mg、0.01mmol、10mol%)、及びフッ化銀(2.9mg、0.02mmol、20mol%)をジクロロエタン(1.0mL)に溶解した混合物に対し、化合物(6)(32.4mg、0.14mmol、1.4eq.)と1-クロロ-4-ビニルベンゼン(13.9mg、0.1mmol)を室温で加えた。次いで、当該反応液を、アルゴン雰囲気下、70℃で2時間撹拌した後、室温でベンゾトリフルオリドを加えた。得られた生成粗体を、ベンゾトリフルオリドを内部標準とする19F NMRで分析したところ、目的の化合物(18)の収率は30%であった。
【0141】
19F-NMR(CDCl):δ-185.5(m,1F).
【0142】
[実施例13]
【化35】
アルゴン雰囲気下、塩化銅(2.1mg、0.020mmol)、6,6’-dimethyl-2,2’-bipyridyl(3.8mg、0.020mmol)、及び炭酸カルシウム(20.0mg、0.200mmol)を1,2-ジクロロエタン(1.0mL)に加え、室温で10分間攪拌した。この溶液に、2-フェニルフラン(28.8mg、0.200mmol)、ネオペンチル N-フルオロ-N-(フルオロスルホニル)カルバミン酸エステル(64.7mg、0.280mmol)を加え、70℃に加熱し、5時間攪拌した。得られた反応物を酢酸エチル(5mL)に溶かし、シリカゲル(2g)で濾過し、酢酸エチル(10mL)で洗浄し、濾液を減圧下で留去した。得られた生成粗体をNMRで分析したところ、化合物(19)の収率は61%であった。
1H NMR(重クロロホルム):δ 7.68-7.65 (m, 2H), 7.43-7.38 (m, 2H), 7.35-7.30 (m, 1H), 6.72-6.70 (m, 1H), 6.58 (t,1H), 4.01 (s, 2H), 0.90 (s, 9H).
【0143】
[実施例14]
【化36】
アルゴン雰囲気下、MeMgI(3Mエーテル溶液,83μL,0.25mmol)にTHF(0.50mL)を加え、0℃に冷却した。化合物(19)(17.8mg,0.0500mmol)を加え、室温に昇温し、15時間攪拌した。当該反応液に、飽和塩化アンモニウム水溶液(5mL)をゆっくり加えてクエンチし、分液した後、水相を酢酸エチル(5mL)で3回抽出した。全ての有機相を合わせて飽和食塩水(5mL)で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥し、その後に溶媒を減圧下で留去した。得られた生成粗体をNMRで分析したところ、化合物(20)の収率は80%であった。
1H NMR(重クロロホルム):δ 7.62-7.60 (m, 2H), 7.41-7.37 (m, 2H), 7.31-7.27 (m, 1H), 6.64-6.62 (m, 1H), 6.58 (s, 1H), 6.37-6.34 (m, 1H), 3.16 (s, 3H).
【0144】
[実施例15]
【化37】
アルゴン雰囲気下、ベンジルアミン(26.0mg,0.240mmol)にTHF(1.0mL)を加え、0℃に冷却した。この反応液にブチルリチウム(2.80Mヘキサン溶液、78.6μL,0.220mmol)と化合物(19)(35.5mg,0.100mmol)を加え、60℃に昇温し、1時間攪拌した。当該反応液に、1Mクエン酸水溶液(5mL)をゆっくり加えてクエンチし、分液した後、水相を酢酸エチル(5mL)で3回抽出した。全ての有機相を合わせて飽和食塩水(5mL)で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥し、その後に溶媒を減圧下で留去した。得られた生成粗体をNMRで分析したところ、化合物(21)の収率は80%であった。
1H NMR(重クロロホルム):δ 7.60-7.57 (m, 2H), 7.40-7.28 (m, 8H), 6.62 (d, 1H), 6.43 (s, 1H), 6.30 (dd, 1.1 Hz, 1H), 4.69 (t, 1H), 4.38 (d, 2H).
【0145】
[実施例16]
【化38】
アルゴン雰囲気下、BuMgBr(1.5Mエーテル溶液,660μL,1.00mmol)を、-78℃に冷却した。化合物(19)(35.5mg,0.100mmol)を加え、-78℃で3時間攪拌した。当該反応液に、1M塩酸水溶液(5mL)をゆっくり加えてクエンチし、分液した後、水相を酢酸エチル(5mL)で3回抽出した。全ての有機相を合わせて飽和食塩水(5mL)で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥し、その後に溶媒を減圧下で留去した。得られた生成粗体をNMRで分析したところ、化合物(22)の収率は37%であった。
1H NMR(重クロロホルム):δ 7.64-7.60 (m, 2H), 7.40-7.37 (m, 2H), 7.31-7.27 (m, 1H), 6.70 (d, 1H), 6.49 (d, 1H), 3.91 (s, 2H), 3.71-3.67 (m, 2H), 2.01-1.93 (m, 2H), 1.56-1.48 (m, 2H), 1.00 (t, 3H), 0.83 (s, 9H).
【0146】
[実施例17]
【化39】
アルゴン雰囲気下、塩化銅(2.1mg、0.020mmol)、6,6’-dimethyl-2,2’-bipyridyl(3.8mg、0.020mmol)、及び炭酸カルシウム(20.0mg、0.200mmol)を1,2-ジクロロエタン(1.0mL)に加え、室温で10分間攪拌した。この溶液に、3-ブロモベンゾチオフェン(28.8mg、0.200mmol)、ネオペンチル 化合物(6)(64.7mg、0.280mmol)を加え、70℃に加熱し、5時間攪拌した。得られた反応物を酢酸エチル(5mL)に溶かし、シリカゲル(2g)で濾過し、酢酸エチル(10mL)で洗浄し、濾液を減圧下で留去した。得られた生成粗体をNMRで分析したところ、化合物(23)の収率は63%であった。
1H NMR(重クロロホルム):δ 7.90-7.84 (m, 1H), 7.84-7.79 (m, 1H), 7.54-7.50 (m, 2H), 4.03 (s, 2H), 0.88 (s, 9H).
【0147】
[実施例18]
【化40】
アルゴン雰囲気下、塩化亜鉛(34.1mg,0.250mmol)にPhMgBr(0.37Mテトラヒドロフラン溶液,680μL,0.25mmol)を加え、0℃に冷却した。化合物(23)(21.2mg,0.0500mmol)を加え、60℃に昇温し、16時間攪拌した。当該反応液に、1MHCl水溶液(5mL)をゆっくり加えてクエンチし、分液した後、水相を酢酸エチル(5mL)で3回抽出した。全ての有機相を合わせて飽和食塩水(5mL)で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥し、その後に溶媒を減圧下で留去した。得られた生成粗体をNMRで分析したところ、化合物(24)の収率は76%であった。
1H NMR(重クロロホルム):δ 7.82-7.92 (2H), 7.66-7.73 (1H), 7.51-7.61 (2H), 7.42-7.51 (2H), 7.30-7.42 (2H), 6.97-7.13 (1H).
【0148】
[実施例19]
【化41】
アルゴン雰囲気下、テトラキス(アセトニトリル)銅(I)テトラフルオロホウ酸(1.6mg、0.0050mmol)、フェナントロリン一水和物(1.0mg、0.0050mmol)をアセトニトリル(0.25mL)に加え、室温で10分間攪拌した。この溶液に、スチレン(5.2mg、0.050mmol)、化合物(6)(13.9mg、0.0600mmol)を加え、70℃に加熱し、2時間攪拌した。得られた反応物をジクロロメタン(5mL)に溶かし、シリカゲル(2g)で濾過し、ジクロロメタン(10mL)で洗浄し、濾液を減圧下で留去した。得られた生成粗体をNMRで分析したところ、化合物(25)の収率は28%であった。
1H NMR(重クロロホルム):δ 7.28-7.46 (5H), 6.54 (dd, 1H), 6.05 (d, 1H), 3.97 (s, 2H), 0.96 (s, 9H).
【0149】
[実施例20]
【化42】
アルゴン雰囲気下、シアン化銅(1.8mg、0.020mmol)、フェナントロリン一水和物(4.0mg、0.020mmol)、アセトニトリル(1.0mL)を加え、室温で10分間攪拌した。メチレンシクロヘキサン(19.2mg、0.200mmol)、化合物(6)(64.7mg、0.280mmol)、トリメチルシリルシアニド(27.8mg、0.280mmol)を加え、70℃に加熱し、2時間攪拌した。ジクロロメタン(5mL)に溶かし、シリカゲル(2g)で濾過し、ジクロロメタン(10mL)で洗浄し、濾液を減圧下で留去した。得られた生成粗体をNMRで分析したところ、化合物(26)の収率は43%であった。化合物(27)の収率は33%であった。
化合物(26)
1H NMR(重クロロホルム):δ 4.06 (s, 2H), 4.05 (d, 2H), 2.01 (d, 2H), 1.82-1.78 (m, 3H), 1.71-1.60 (m, 2H), 1.36 (m, 2H), 1.25-1.13 (m, 1H), 1.01 (s, 9H).
化合物(27)
1H NMR(重クロロホルム):δ 5.71-5.68 (m, 1H), 4.34 (s, 2H), 3.99 (s, 2H), 2.07-2.01 (m, 2H), 1.94 (m, 2H), 1.68-1.62 (m, 2H), 1.60-1.54 (m, 2H), 0.99 (s, 9H).
【0150】
[実施例21]
【化43】
アルゴン雰囲気下、シアン化銅(1.8mg、0.020mmol)、フェナントロリン一水和物(4.0mg、0.020mmol)、アセトニトリル(1.0mL)を加え、室温で10分間攪拌した。1-メチル-1-シクロヘキセン(19.2mg、0.200mmol)、化合物(6)(64.7mg、0.280mmol)、トリメチルシリルシアニド(27.8mg、0.280mmol)を加え、70℃に加熱し、2時間攪拌した。ジクロロメタン(5mL)に溶かし、シリカゲル(2g)で濾過し、ジクロロメタン(10mL)で洗浄し、濾液を減圧下で留去した。得られた生成粗体をNMRで分析したところ、化合物(28)の収率は31%であった。
1H NMR(重クロロホルム):δ 5.67-5.64 (m, 1H), 4.98-4.91 (m, 1H), 4.01 (d, 1H), 3.97 (d, 1H), 2.38-2.21 (m, 2H), 1.86-1.69 (m, 4H), 0.98 (s, 9H).
【0151】
[実施例22]
【化44】
アルゴン雰囲気下、塩化銅(2.1mg、0.020mmol)、6,6’-dimethyl-2,2’-bipyridyl(3.8mg、0.020mmol)、及び炭酸カルシウム(20.0mg、0.200mmol)を1,2-ジクロロエタン(1.0mL)に加え、室温で10分間攪拌した。この溶液に、2-フェニルフラン(28.8mg、0.200mmol)、化合物(6)(64.7mg、0.280mmol)を加え、70℃に加熱し、5時間攪拌した。得られた反応物を酢酸エチル(5mL)に溶かし、シリカゲル(2g)で濾過し、酢酸エチル(10mL)で洗浄し、濾液を減圧下で留去した。得られた生成粗体をNMRで分析したところ、化合物(29)の収率は61%であった。
1H NMR(重クロロホルム):δ 6.97 (s, 2H), 6.96 (s, 1H), 4.95 (d, 2H), 4.00 (s, 2H), 2.31 (s, 6H), 0.96 (s, 9H).
【0152】
[実施例23]
【化45】
アルゴン雰囲気下、シアン化銅(0.9mg、0.010mmol)、フェナントロリン一水和物(2.0mg、0.010mmol)、アセトニトリル(0.5mL)を加え、室温で10分間攪拌した。4-ペンテン酸(10.0mg、0.100mmol)、化合物(6)(32.4mg、0.140mmol)、トリメチルシリルシアニド(13.9mg、0.140mmol)を加え、70℃に加熱し、2時間攪拌した。ジクロロメタン(5mL)に溶かし、シリカゲル(2g)で濾過し、ジクロロメタン(10mL)で洗浄し、濾液を減圧下で留去した。得られた生成粗体をNMRで分析したところ、化合物(30)の収率は46%であった。化合物(31)の収率は14%であった。
化合物(30)
1H NMR(重クロロホルム):δ 4.23-4.17 (m, 1H), 4.07 (d, 1H), 4.04 (d, 1H), 4.01-3.95 (m, 1H), 3.33-3.25 (m, 1H), 2.72-2.57 (m, 2H), 2.06-1.88 (m, 2H), 1.00 (s, 9H).
化合物(31)
1H NMR(重クロロホルム):δ 4.84-4.77 (m, 1H), 4.19-4.12 (m, 1H), 4.03 (s, 2H), 4.01-3.96 (m, 1H), 2.67-2.53 (m, 2H), 2.46-2.36 (m, 1H), 2.01-1.91 (m, 1H), 1.00 (s, 9H).
【0153】
[実施例24]
【化46】
アルゴン雰囲気下、テトラキス(アセトニトリル)銅(I)テトラフルオロホウ酸(1.6mg、0.005mmol)、1,10-phenanthroline-5,6-dione(1.1mg、0.005mmol)、アセトニトリル(0.25mL)を加え、室温で10分間攪拌した。1-オクテン(5.6mg、0.050mmol)、化合物(6)(16.2mg、0.070mmol)、トリメチルシリルシアニド(14.9mg、0.150mmol)を加え、70℃に加熱し、2時間攪拌した。ジクロロメタン(5mL)に溶かし、シリカゲル(2g)で濾過し、ジクロロメタン(10mL)で洗浄し、濾液を減圧下で留去した。得られた生成粗体をNMRで分析したところ、化合物(32)の収率は63%であった。化合物(32’)の収率は8%であった。
化合物(32)
4.18 (m, 1H), 4.07 (d, 1H), 4.03 (d, 1H), 3.91 (m, 1H), 3.14-3.06 (m, 1H), 1.68-1.25 (m, 10H), 1.01 (s, 9H), 0.89 (t, 3H).
【0154】
[実施例25]
【化47】
アルゴン雰囲気下、塩化銅(2.1mg、0.020mmol)、6,6’-dimethyl-2,2’-bipyridyl(3.8mg、0.020mmol)、及び炭酸カルシウム(20.0mg、0.200mmol)を1,2-ジクロロエタン(1.0mL)に加え、室温で10分間攪拌した。この溶液に、ベンゼン(156mg、2.00mmol)、化合物(6)(46.2mg、0.200mmol)を加え、70℃に加熱し、5時間攪拌した。得られた反応物を酢酸エチル(5mL)に溶かし、シリカゲル(2g)で濾過し、酢酸エチル(10mL)で洗浄し、濾液を減圧下で留去した。得られた生成粗体をNMRで分析したところ、化合物(33)の収率は22%であった。
1H NMR(重クロロホルム):δ 7.51-7.47 (m, 3H), 7.38-7.33 (m, 2H), 3.95 (s, 2H), 0.85 (s, 9H).
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明は、不飽和結合を有する基質に対して、NFSIよりも穏やかな条件で脱保護を行うことができるアミノ化剤、及び当該アミノ化剤を使用したアミノ化反応を提供する。本発明に係るアミノ化剤により、アルケン、アリル化合物、芳香族化合物等の幅広い基質に対して、アミノ基を容易に導入することができる。
なお、2019年09月24日に出願された日本特許出願2019-173542号の明細書、特許請求の範囲および要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。