IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 一般財団法人電力中央研究所の特許一覧 ▶ 日立化成株式会社の特許一覧

特許7588495半導体ウエーハの評価装置、及び、半導体ウエーハの製造方法
<>
  • 特許-半導体ウエーハの評価装置、及び、半導体ウエーハの製造方法 図1
  • 特許-半導体ウエーハの評価装置、及び、半導体ウエーハの製造方法 図2
  • 特許-半導体ウエーハの評価装置、及び、半導体ウエーハの製造方法 図3
  • 特許-半導体ウエーハの評価装置、及び、半導体ウエーハの製造方法 図4
  • 特許-半導体ウエーハの評価装置、及び、半導体ウエーハの製造方法 図5
  • 特許-半導体ウエーハの評価装置、及び、半導体ウエーハの製造方法 図6
  • 特許-半導体ウエーハの評価装置、及び、半導体ウエーハの製造方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】半導体ウエーハの評価装置、及び、半導体ウエーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20241115BHJP
   C30B 29/36 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
H01L21/66 N
C30B29/36 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020185713
(22)【出願日】2020-11-06
(65)【公開番号】P2022075127
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-10-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公益社団法人応用物理学会 先進パワー半導体分科会、先進パワー半導体分科会誌 第6回講演会 予稿集 VOL.06 No.01、2019年12月3日 先進パワー半導体分科会 第6回講演会、2019年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】村田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 功穂
(72)【発明者】
【氏名】土田 秀一
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 晶
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-027193(JP,A)
【文献】特開2008-053343(JP,A)
【文献】特開2016-063190(JP,A)
【文献】特公昭54-015751(JP,B2)
【文献】特開2007-318031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
C30B 29/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象である半導体ウエーハに、室温で液体とされる金属(ショットキー電極)が接触する接触子と、
寄生インダクタンス、及び、寄生容量を補償する手段を介して、前記接触子に電圧を印加する電源手段と、
前記電源手段からの電圧の印加状態を間欠的に行う印加制御手段と、
前記印加制御手段により電圧が間欠的に印加された際の半導体ウエーハの静電容量の状況に基づいて、半導体ウエーハの点欠陥の状態を評価する評価手段と
半導体ウエーハの平面方向に対し、直径150mm以上の範囲で、前記接触子を相対的に往復移動させる移動手段とを備え、
前記移動手段は、
平面内で往復移動自在に支持され、前記半導体ウエーハが載置されるテーブルと、
前記接触子を前記テーブルに直交する方向に往復移動させる手段とで構成されている
ことを特徴とする半導体ウエーハの評価装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体ウエーハの評価装置において、
室温で液体とされる金属は、水銀である
ことを特徴とする半導体ウエーハの評価装置。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体ウエーハの評価装置において、
点欠陥は、室温付近で信号がピークとなる欠陥であり、
点欠陥の状態は、点欠陥の種類、密度である
ことを特徴とする半導体ウエーハの評価装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の半導体ウエーハの評価装置において、
前記印加制御手段は、印加電圧を変化させる機能を有し、
前記評価手段は、
印加電圧が高くされた際に、深さ方向に深い場所での点欠陥の状態を評価する
ことを特徴とする半導体ウエーハの評価装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の半導体ウエーハの評価装置において、
半導体ウエーハのバンドギャップ以上の光を照射する光照射手段を備え、
前記評価手段では、
少数キャリア過渡分光により欠陥が評価される
ことを特徴とする半導体ウエーハの評価装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の半導体ウエーハの評価装置において、
前記半導体ウエーハは、SiC単結晶である
ことを特徴とする半導体ウエーハの評価装置。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体ウエーハの評価装置において、
前記SiC単結晶の中の点欠陥は、炭素空孔起因であるZ1/2センターである
ことを特徴とする半導体ウエーハの評価装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の半導体ウエーハの評価装置を用い、得られた点欠陥の情報に基づいて半導体製造手段による成膜の条件を調整・制御することで半導体ウエーハを製造することを特徴とする半導体ウエーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハの面内の結晶欠陥(点欠陥)の状況を的確に評価することができる半導体ウエーハの結晶欠陥の評価装置、及び、半導体ウエーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高耐圧、大電流を制御するパワー半導体素子の高性能化が要求され、従来型のシリコン(Si)単結晶に加えて、新たな材料(例えば、炭化珪素、窒化ガリウム、酸化ガリウム、ダイヤモンド)の適用が検討されている。例えば、半導体素子の結晶欠陥を評価する技術としては、素子への通電による素子特性の評価を行う技術が知られている(特許文献1)。
【0003】
これらパワー半導体素子の性能の保証や、信頼性の担保には、製造した半導体素子が設計通りに機能していることの検査や、原材料である半導体結晶の品質向上、結晶中に存在する結晶欠陥の検出、及び、その特性を適切に把握することが求められる。
【0004】
従来、パワー半導体素子は、単結晶基板上に成長したエピタキシャル層を有する半導体ウエーハを用いて形成されることから、半導体ウェーハ(エピウエーハ)の品質を確認した上で使用することが求められる。半導体ウエーハに存在する結晶欠陥(拡張欠陥)の位置や種類、密度は、光学的手法を用いる評価手法が広く用いられている。
【0005】
半導体ウエーハの特性の一つであるドーピング濃度は、ショットキー接合を形成し、容量-電圧特性から推定することが可能である。また、ショットキー電極を形成するプロセスを省くことが可能な簡便な手法として、水銀電極が使用されることがある。
【0006】
しかし、半導体ウエーハの特性に影響を与える結晶欠陥(点欠陥)については、その欠陥密度が影響を与える特性(キャリア寿命)から間接的に評価されている状況である。点欠陥密度の評価に用いられる既存の手法では、半導体ウエーハから一部の試料を切り出し、ショットキー電極を堆積した後に通電を行って評価を行う必要があり、大口径の半導体ウエーハに適用が困難である。
【0007】
従って、既存の評価の手法では、量産に対しての評価には適さないのが実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2016-100591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、半導体ウエーハの全面の結晶欠陥を容易に評価することができる半導体ウエーハの評価装置、及び、この半導体ウエーハの評価装置を用いた半導体ウエーハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の半導体ウエーハの評価装置は、評価対象である半導体ウエーハに、室温で液体とされる金属(ショットキー電極)が接触する接触子と、寄生インダクタンス、及び、寄生容量を補償する手段を介して、前記接触子に電圧を印加する電源手段と、前記電源手段からの電圧の印加状態を間欠的に行う印加制御手段と、前記印加制御手段により電圧が間欠的に印加された際の半導体ウエーハの静電容量の状況に基づいて、半導体ウエーハの点欠陥の状態を評価する評価手段と、半導体ウエーハの平面方向に対し、直径150mm以上の範囲で、前記接触子を相対的に往復移動させる移動手段とを備え、前記移動手段は、平面内で往復移動自在に支持され、前記半導体ウエーハが載置されるテーブルと、前記接触子を前記テーブルに直交する方向に往復移動させる手段とで構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項1に係る本発明では、接触子(水銀)を半導体ウエーハに接触させて電圧を間欠的に印加し、半導体ウエーハの静電容量の状況により点欠陥の状態(種類、密度)を評価する。室温で液体とされる金属(水銀)をショットキー電極として用いるため、半導体ウエーハを部分的に切り出して金属電極を堆積する必要がなく、全ての半導体ウエーハの点欠陥の評価を直接評価することができ、評価を容易に行うことができる。例えば、寄生インダクタンス、及び、寄生容量を補償する手段としては、測定前の誤差分をゼロに調整するオフセット調整を利用する手段を適用することができる。
そして、直径150mm以上の範囲で、接触子を半導体ウエーハの平面内の任意の位置に移動させ、大型の半導体ウエーハであっても、半導体ウエーハの全面の点欠陥の面内分布を把握することができる。
【0012】
このため、半導体ウエーハの結晶欠陥を容易に評価することが可能になり、例えば、半導体ウエーハのキャリア寿命を間接的に評価することができる。
【0013】
そして、請求項2に係る本発明の半導体ウエーハの評価装置は、請求項1に記載の半導体ウエーハの評価装置において、室温で液体とされる金属は、水銀であることを特徴とする。
【0014】
請求項2に係る本発明では、水銀をショットキー電極として用いることができる。
【0015】
また、請求項3に係る本発明の半導体ウエーハの評価装置は、請求項2に記載の半導体ウエーハの評価装置において、点欠陥は、室温付近で信号がピークとなる欠陥であり、点欠陥の状態は、点欠陥の種類、密度であることを特徴とする。
【0016】
請求項3に係る本発明では、室温付近で信号がピークとなる点欠陥の種類、密度を評価することができる。
【0019】
また、請求項4に係る本発明の半導体ウエーハの評価装置は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の半導体ウエーハの評価装置において、前記印加制御手段は、印加電圧を変化させる機能を有し、前記評価手段は、印加電圧が変化された際に、深さ方向に深い場所での点欠陥の状態を評価することを特徴とする。
【0020】
請求項4に係る本発明では、印加電圧を変化させる(高くする)ことで、半導体ウエーハの深さ方向に深い場所での点欠陥の状態を評価することができる。
【0021】
また、請求項5に係る本発明の半導体ウエーハの評価装置は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の半導体ウエーハの評価装置において、半導体ウエーハのバンドギャップ以上の光を照射する光照射手段を備え、前記評価手段では、少数キャリア過渡分光により欠陥が評価されることを特徴とする。
【0022】
請求項5に係る本発明では、光照射手段でバンドギャップ以上の光を照射することで、少数キャリア過渡分光により欠陥を評価することができる。
【0023】
また、請求項6に係る本発明の半導体ウエーハの評価装置は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の半導体ウエーハの評価装置において、前記半導体ウエーハは、SiC単結晶であることを特徴とする。また、請求項7に係る本発明の半導体ウエーハの評価装置は、請求項6に記載の半導体ウエーハの評価装置において、前記SiC単結晶の中の点欠陥は、炭素空孔起因であるZ1/2センターであることを特徴とする。
【0024】
上記目的を達成するための請求項8に係る本発明の半導体ウエーハの製造方法は、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の半導体ウエーハの評価装置を用い、得られた点欠陥の情報に基づいて半導体製造手段による成膜の条件を調整・制御することで半導体ウエーハを製造することを特徴とする。
【0025】
請求項8に係る本発明では、半導体ウエーハの結晶欠陥の評価を行い、半導体ウエーハの品質を所望の状態に維持して半導体ウエーハを製造することができる。
【0026】
このため、半導体ウエーハの結晶欠陥を容易に評価して半導体ウエーハを製造することが可能になり、例えば、半導体ウエーハのキャリア寿命を評価して半導体ウエーハを製造することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の半導体ウエーハの評価装置は、半導体ウエーハの結晶欠陥を容易に且つ非破壊で評価することが可能になる。
【0028】
本発明の半導体ウエーハの製造方法は、半導体ウエーハの結晶欠陥を容易に且つ非破壊で評価して半導体ウエーハを製造することが可能になる。
非破壊で評価することが可能なため、製品そのものを検査することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施例に係る半導体ウエーハの評価装置の概略構成図である。
図2】静電容量の経時変化を表すグラフである。
図3】点欠陥ピークにおける静電容量の減衰状況を表すグラフである。
図4】点欠陥に起因する信号強度と温度の関係を表すグラフである。
図5】本発明の一実施例に係る半導体ウエーハの評価装置を有する半導体製造システムの概念図である。
図6】本発明の一実施例に係る半導体ウエーハの製造方法の制御動作の一例を説明するフローチャートである。
図7】点欠陥密度の面内分布を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1から図3に基づいて本発明の一実施例に係る半導体ウエーハの評価装置を説明する。
【0031】
図1には本発明の一実施例に係る半導体ウエーハの評価装置である評価装置21の概略構成、図2には静電容量の経時変化を表すグラフ、図3には点欠陥ピーク(例えば、SiC単結晶中のZ1/2センター欠陥)における静電容量の減衰曲線、図4には点欠陥に起因する信号強度と温度の関係である温度掃引スペクトルを表すグラフを示してある。尚、Z1/2センターは炭素空孔起因である。
【0032】
図1に示すように、評価装置21には、評価対象である半導体ウエーハ11が載置され、平面内で往復移動自在に支持されたテーブル22が備えられている。また、テーブル22に載置された半導体ウエーハ11に接触し、平面内でテーブル22に直行する方向に往復移動自在に備えられた接触子としてのプローブ手段23が備えられている。
【0033】
プローブ手段23は、室温で液体とされる水銀(ショットキー電極)を接触子24として半導体ウエーハ11に接触させる構造となっている。プローブ手段23は、テーブル22、及び、自身の往復移動により、半導体ウエーハ11の平面内の任意の位置に移動自在とされている。
【0034】
プローブ手段23は、例えば、直径150mm以上、好ましくは、300mm以上の半導体ウエーハ11の範囲で、接触子を半導体ウエーハの平面内の任意の位置に移動させることができる。このため、大口径の半導体ウエーハ11であっても、半導体ウエーハ11の全面の点欠陥の面内分布を把握することができる。
【0035】
プローブ手段23の接触子24(水銀)に対し、寄生インダクタンス、及び、寄生容量を補償する手段10を介して電圧を印加する電源手段としてのパルス電源25が備えられ、パルス電源25は、電圧の印加状態を間欠的に行う機能を有している(印加制御手段)。評価装置21には容量計26が備えられ、パルス電源25により電圧が間欠的に印加された際の半導体ウエーハ11の静電容量が計測される。
【0036】
図2に基づいて半導体ウエーハ11の静電容量の経時変化を説明する。
【0037】
定常状態の電圧(3)から半導体ウエーハ11に電圧が印加されると(1)、点欠陥のトラップ準位にn型半導体では電子が捕獲され、p型半導体では正孔が捕獲される。即ち、半導体ウエーハ11の静電容量がC1からC2に変化する。電圧の印加を停止すると、捕獲された電子、または、正孔が放出されて正、または、負に帯電し、その電荷をキャンセルするように空乏層が拡張する(2)。最終的に、定常状態の電圧の状態で半導体ウエーハ11の静電容量がC1に変化する(3)。
【0038】
パルス電圧が印加されることにより、時間の経過と共に静電容量がC2(1)から(2)の過程を経てC1(3)に変化する。この時間経過による静電容量の変化(所定時間経過した後の静電容量の値)に基づいて点欠陥のトラップ準位、及び、密度を確認することができる。具体的には、電圧が印加された(1)において、捕獲される電子、または、正孔密度は、点欠陥の密度に相当するため、静電容量の変化は近似的に点欠陥の密度に比例する。
【0039】
このため、上述した評価装置21では、半導体ウエーハ11の結晶欠陥である点欠陥の密度を容易に評価することが可能になる。
【0040】
図3に示すように、炭化珪素半導体ウエーハにおいて、点欠陥(炭素空孔欠陥)ピークの静電容量の減衰状況が確認されている。即ち、点欠陥(炭素空孔欠陥)が大きい場合(実線で示してある)、時間の経過と共に静電容量を検出する信号強度が低下し、点欠陥(炭素空孔欠陥)が小さい場合(破線で示してある)、大きい場合に比べて信号強度の絶対値が低い状態で、時間の経過と共に静電容量を検出する信号強度が低下していることが確認されている(減衰することが確認されている)。
【0041】
図1に戻り、容量計26で計測された静電容量の状況は評価手段27に送られる。評価手段27では、半導体ウエーハ11の静電容量の状況に基づいて、半導体ウエーハ11の点欠陥の状態(種類、密度等)が評価される。実施の一例として、静電容量の減衰曲線を指数関数(ネピア数を底とする)で近似させることで信号強度の変化量を求め、予め決定しておいたドーピング密度の値を用いて、欠陥密度を算出することができる。また、指数関数の指数より時定数を算出し欠陥のバンドギャップ中のエネルギー的な深さが評価される。具体的には、トラップ密度をNt、ドーピング密度をNとすると、Ntは近似的に2N×|C2-C1|÷C1で算出される。尚、空乏層先端の非イオン化領域による誤差を補正するための補正項をNtに乗じても良い。
【0042】
尚、点欠陥は、室温付近で信号がピークとなる欠陥であり、具体的な測定手法として、相関関数(コリレータ)法を利用することで、室温近傍で電気的な信号のピークが得られるように調整できる欠陥に適用することができる。例えば、文献 Y. Tokuda, N. Shimizu, and A. Usami, Jpn. J. Appl. Phys. 18, 309 (1979).に記載の相関関数を利用できる。
【0043】
図4に示すように、例えば、Niショットキー電極を使用した場合、測定条件(相関関数の周期)を調整することで、ピークが室温よりも高い状態(破線の状態)で点欠陥観測されていたものを、室温近傍の状態(実線の状態)で点欠陥を観測できるようにすることが可能になる。室温付近の点欠陥の例として、SiC単結晶中のZ1/2センター欠陥がある。
【0044】
予め相関関数の周期を変化させながら信号強度を評価することで、信号強度の最大値が得られる相関関数の周期を決定する。相関関数の周期の最適値は、欠陥の種類(欠陥のエネルギー的な深さ)に依るため、複数の欠陥の評価を行うためには、各々適切な値を用いて評価する必要がある。
【0045】
尚、室温付近で信号強度がピーク値から少しずれている場合においても、相対値を用いてウエーハ面内の欠陥密度の均一性評価に使用することも可能であるが、欠陥密度を過小評価することになるとともに、欠陥密度が低い領域においては検出下限以下になる可能性がある。
【0046】
一般的に、未知の欠陥を評価することを目的として温度掃引を用いて測定される評価方法に対して、本発明ではウエーハ温度を調節するための重厚な冷却装置や高温加熱装置を備える必要がなく、室温あるいは室温付近の温調を行うヒータを付帯することで十分となり、装置価格を抑えることができる。
【0047】
パルス電源25は印加電圧を変化させる機能を有している。パルス電源25からの印加電圧を高くする(例えば、100Vにする)ことで、評価手段27では、半導体ウエーハ11の深さ方向に深い場所での点欠陥の状態(種類、密度等)が評価される。印加電圧を変化させながら測定することで、欠陥の状態の深さプロファイルを得ることができる。
【0048】
尚、評価装置21の構成として、半導体ウエーハ11のバンドギャップ以上の光を照射する光照射手段29を備えることができる。そして、光照射手段29でバンドギャップ以上の光を照射することで、評価手段27では、少数キャリア過渡分光により欠陥が評価される。
【0049】
光を照射しない場合では、n型半導体では、伝導帯近傍のバンドギャップ中に欠陥準位を形成する欠陥に適用でき、p型半導体では、価電子帯近傍のバンドギャップ中に欠陥準位を形成する欠陥に適用できる。一方で、光を照射した場合には、n型半導体では、価電子帯近傍のバンドギャップ中に欠陥準位を形成する欠陥に適用でき、p型半導体では、伝導帯近傍のバンドギャップ中に欠陥準位を形成する欠陥に適用できる。
【0050】
例えば、n型SiC結晶中のB関連の欠陥の状況を合わせて評価することができる。B欠陥はSiCの結晶成長中に意図せずに導入されるB不純物により形成され、n型SiC結晶のドーピング密度に影響を与える。B関連の欠陥密度を評価することで、ウエーハの品質管理に適用することができる。一例として、B欠陥と炭素空孔の複合欠陥であるDセンターと呼ばれる点欠陥の密度評価に適用できる。尚、B不純物のみならず、意図せずに導入された遷移金属元素に起因する欠陥の密度評価にも適用できる。
【0051】
上記構成の評価装置21は、接触子24(水銀)を半導体ウエーハ11に接触させて電圧を間欠的に印加し、半導体ウエーハ11の静電容量の状況により点欠陥の状況(種類、密度等:例えば、SiC結晶中の炭素空孔密度等)を評価することができる。室温で液体とされる金属(水銀)をショットキー電極として用いることができるため、半導体ウエーハ11を部分的に切り出して、金属電極を堆積して評価する必要がなく、全ての半導体ウエーハの点欠陥の評価を直接評価することが可能になる。
【0052】
接触子24(水銀)を半導体ウエーハ11の面内で相対的に任意の位置に移動させて電圧を間欠的に印加することで、半導体ウエーハ11の面内での点欠陥の分布(例えば、密度等の分布)を評価することができる。
【0053】
図5図6に基づいて半導体製造システムの概略、半導体ウエーハ11のキャリア寿命の評価の具体的な流れの状況(製造方法)を説明する。
【0054】
以下の実施例では、半導体ウエーハ11として、炭化珪素半導体を適用した例を示してあり、この場合、点欠陥として、炭素空孔の密度(炭素空孔密度)を評価することができる。
【0055】
図5には本発明の一実施例に係る半導体ウエーハの評価装置を有する半導体製造システムの概念構成、図6には制御手段12での制御動作の一例を説明するフローチャートを示してある。
【0056】
図5に示すように、半導体製造手段である炭化珪素単結晶製造装置1は、例えば、化学気相成長法により炭化珪素単結晶(SiC単結晶)をエピタキシャル成長させるものである。炭化珪素単結晶製造装置1は、原料ガス供給装置、温度調整手段等を備えた装置である。そして、サセプタに種基板が配置され、原料ガスが供給されることで、種基板にSiC単結晶が成長した半導体ウエーハ11が得られる。
【0057】
炭化珪素単結晶製造装置1は、制御手段12により、製造装置の圧力、原料ガス供給装置から供給される原料ガスの組成(C/Si比、添加物であるN、Al、B等の添加割合等)、ガスの供給量、原料ガスの供給位置(供給角度)等が制御される。また、制御手段12により、サセプタの状態(回転数や回転軸の位置等)が調整される。更に、制御手段12により、温度調整手段が制御されて所定の高温状態に調整される。
【0058】
炭化珪素単結晶製造装置1では、本発明の半導体ウエーハの評価装置である、評価装置21からの情報に応じてSiC単結晶の成長の条件が調整される。評価装置21では、半導体ウエーハ11のエピタキシャル膜の点欠陥の状態(点欠陥の種類、密度)が求められる。そして、制御手段12では、評価装置21における評価結果に応じて、炭化珪素単結晶製造装置1によるSiC単結晶の成長の条件(点欠陥の分布等)を調整・制御する。
【0059】
また、制御手段12は、SiC単結晶の成長の条件を調整・制御しても、万一、所望の性能が得られない(所望の条件にならない)結果となった場合、炭化珪素単結晶製造装置1の不具合を判断することができる。これにより、炭化珪素単結晶製造装置1のメンテナンスの管理等を行うことができ、装置側の不具合を把握して、所望の性能が得られない製品を製造し続けることをなくすことができる。
【0060】
従って、半導体ウエーハ11のエピタキシャル膜の点欠陥の状態(点欠陥の種類、密度)の評価を行って半導体ウエーハ11の品質を所望の状態に維持することが可能になる。
【0061】
制御手段12では、例えば、炭素空孔密度を求め、求められた炭素空孔密度が所望の状態になるように原料ガスの組成等を制御する。これにより、炭素空孔密度を所望の状態に維持するように制御することができる。また、制御手段12では、炭素空孔密度を所望の状態に維持する制御を行っても、炭素空孔密度が所望の状態にならない場合には、炭化珪素単結晶製造装置1に不具合があると判断し、必要な処置を施すことができる。
【0062】
また、制御手段12では、例えば、添加物関連(不純物関連)の点欠陥を求め、求められた点欠陥密度が所望の状態になるように、原料ガス(ドーピングガス)の流量を制御する。これにより、不純物関連の点欠陥の状態を所望の状態に維持することができる。
【0063】
上述したように(段落番号[0047]参照)、パルス電源25からの印加電圧を高くして測定電圧を変更することで、半導体ウエーハ11における深さ方向の深い場所での点欠陥の状態(種類、密度等)が評価されることから、制御手段と連携させることで、エピウエーハの深さ方向の特性を制御することも可能となる。また、プロセスを工夫することで、深さ方向に特性を変化させた多層のエピウエーハを作製することも可能となるとともに、評価装置21において、深さ方向の状態を確認できる。
【0064】
図6に基づいて具体的な制御(製造方法)の一例を説明する。
【0065】
ステップS1で静電容量の変化に基づいたエピタキシャル膜の点欠陥(点欠陥の種類、密度:点欠陥密度A)が読み込まれる。読み込まれた点欠陥密度Aが目標値B(しきい値)以下か否かがステップS2で判断される。ステップS2で点欠陥密度AがB以下であると判断された場合、点欠陥密度が所望の状態であるとされてエンドとなりそのまま半導体ウエーハ11の製造を継続する。
【0066】
ステップS2で点欠陥密度Aが目標値Bを超えると判断された場合、点欠陥密度Aが目標値Bより高い値である値C以下かがステップS3で判断される。ステップS3で点欠陥密度Aが値C以下であると判断された場合、原料ガス供給装置が制御され、ステップS4で、例えば、原料ガス量が変更され、原料ガスのC/Si比が変更され、点欠陥密度Aが所望の状態(しきい値である目標値B以下)になるように制御される。
【0067】
一方、ステップS3で点欠陥密度Aが値Cを超えていると判断された場合、温度調整手段が制御され、ステップS5で、例えば、処理室内の温度が調整され(温度変更)、点欠陥密度Aが所望の状態(しきい値である目標値B以下)になるように制御される。尚、ステップS5で、ガスの供給量、供給角度等を合わせて変更することも可能である。
【0068】
ステップS4で原料ガスの供給状況が変更された後、ステップS6で点欠陥密度Aが目標値B(しきい値)以下であるか否かが判断される。即ち、原料ガスの供給状況が変更されたことで、点欠陥密度Aが所望の状態になったか否かが判断される。
【0069】
ステップS6で点欠陥密度Aが目標値B以下の状態になったと判断された場合、点欠陥密度が所望の状態であるとされてエンドとなりそのまま半導体ウエーハ11の製造を継続する。従って、評価装置21により半導体ウエーハ11の点欠陥密度(例えば、炭素空孔密度)を評価して、制御手段12により点欠陥密度の状態を制御することにより、所望の性能が維持された半導体ウエーハ11を製造することができる。
【0070】
ステップS6で点欠陥密度Aが目標値Bを超えていると判断された場合、原料ガスの供給状況が変更されても、点欠陥密度Aが減少しない(所望の点欠陥密度が得られない)と判断され、ステップS7に移行して炭化珪素単結晶製造装置1に不具合があると判断され、エンドとなる。
【0071】
つまり、原料ガスの供給状況が変更されても、所望の点欠陥密度(所望の欠陥の状態)にならないと判断された場合、点欠陥密度が改善されない原因は条件ではなく炭化珪素単結晶製造装置1自体にあると判断される。ステップS7で炭化珪素単結晶製造装置1に不具合があると判断された場合、装置を止めて半導体ウエーハ11の製造を中断し、炭化珪素単結晶製造装置1のメンテナンス等を実施することができる。ここで、炭化珪素単結晶製造装置1のメンテナンスとしては、炭化珪素単結晶製造装置1を構成する部材の交換、部材の位置調整、炭化珪素単結晶製造装置1のクリーニング等が挙げられる。
【0072】
これにより、制御手段12で、所望の性能が得られるように点欠陥密度を制御しても、万一、所望の性能が得られない結果となった場合、炭化珪素単結晶製造装置1自体の不具合を判断することができ、炭化珪素単結晶製造装置1のメンテナンスの管理等を行うことができる。従って、炭化珪素単結晶製造装置1側の不具合を把握することができ、所望の性能が得られない半導体ウエーハ11(製品)を製造し続けることをなくすことができる。
【0073】
上記構成の半導体ウエーハの製造システムは、半導体ウエーハ11の品質を所望の状態、即ち、所望の点欠陥の状態(所望のキャリア寿命が得られる状態)に維持することが可能になる。そして、所望の点欠陥の状態の半導体ウエーハ11が製造できるように炭化珪素単結晶製造装置1の条件を制御し、安定した状態で半導体ウエーハ11を製造することが可能になる。更に、炭化珪素単結晶製造装置1側の不具合を把握することができ、所望の性能が得られない半導体ウエーハ11(製品)を製造し続けることをなくすことが可能になる。
【0074】
半導体ウエーハの点欠陥の評価として、点欠陥密度の分布を評価することができる。図7には点欠陥密度の面内分布を示してある。
【0075】
半導体ウエーハ11の面内(横方向の面内:図中→で示してある)の密度を確認することで、図7に示すように、一実施例として、半導体ウエーハ11の面内の点欠陥の密度の相対値(%)を評価することができる。即ち、半導体ウエーハ11の面内の点欠陥のバラツキを評価することができる。図7に示した一実施例では、半導体ウエーハ11の面内の点欠陥の密度の相対値(%)は、±S1の範囲に収まっていることが確認できる。
【0076】
欠陥密度のしきい値を設定して絶対量を管理することに加え、半導体ウエーハ11の面内の点欠陥のバラツキを評価して、半導体ウエーハ11の面内の欠陥密度のバラツキの管理を行うことができる。
【0077】
上述した評価装置21では、半導体ウエーハ11の面内の点欠陥密度を評価して炭化珪素単結晶製造装置1の不具合を判断しているが、点欠陥の面内分布を評価して炭化珪素単結晶製造装置1の不具合を判断することも可能である。この場合、半導体ウエーハ11の点欠陥の面内のばらつきが、しきい値の範囲に収まっていない場合に、ガスの供給角度の調整を行なったり、メンテナンスの判断を行ったりして、半導体ウエーハ11の点欠陥の面内のばらつきをしきい値の範囲に収めることができる。
【0078】
上述した本発明の半導体ウエーハの評価装置(評価装置21)は、接触子24(水銀)を半導体ウエーハ11に接触させて電圧を間欠的に印加し、半導体ウエーハ11の静電容量の状況により点欠陥の状態(種類、密度)を評価することで、室温で液体とされる金属(水銀)をショットキー電極として用いることができる。
【0079】
このため、半導体ウエーハ11を部分的に切り出して、金属電極を堆積して評価する必要がなく、全ての半導体ウエーハの点欠陥の評価を直接評価することが可能になる。従って、半導体ウエーハの結晶欠陥を容易に評価して半導体ウエーハを製造することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は半導体ウエーハの評価装置、及び、半導体ウエーハの製造方法の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 炭化珪素単結晶製造装置
10 寄生インダクタンス、及び、寄生容量を補償する手段
11 半導体ウエーハ
12 制御手段
21 評価装置
22 テーブル
23 プローブ手段
24 接触子
25 パルス電源
26 容量計
27 評価手段
29 光照射手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7