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特許7592608フッ素化剤及びフッ素含有化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】フッ素化剤及びフッ素含有化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 311/51 20060101AFI20241125BHJP
   C07C 45/00 20060101ALI20241125BHJP
   C07C 49/427 20060101ALI20241125BHJP
   C07C 49/213 20060101ALI20241125BHJP
   C07C 49/215 20060101ALI20241125BHJP
   C07D 213/81 20060101ALI20241125BHJP
   C07D 311/22 20060101ALI20241125BHJP
   C07D 335/06 20060101ALI20241125BHJP
   C07F 7/18 20060101ALN20241125BHJP
【FI】
C07C311/51 CSP
C07C45/00
C07C49/427
C07C49/213
C07C49/215
C07D213/81
C07D311/22
C07D335/06
C07F7/18 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021548930
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(86)【国際出願番号】 JP2020035800
(87)【国際公開番号】W WO2021060276
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-02-20
(31)【優先権主張番号】P 2019173543
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020128667
(32)【優先日】2020-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡添 隆
(72)【発明者】
【氏名】石橋 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】野崎 京子
(72)【発明者】
【氏名】相川 光介
(72)【発明者】
【氏名】足立 晶哉
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-040952(JP,A)
【文献】特開昭63-017856(JP,A)
【文献】特表平08-512286(JP,A)
【文献】国際公開第2009/015059(WO,A1)
【文献】ZHAO, Yi-Xiao et al.,A novel C-N migration rearrangement based on N-F compounds for the synthesis of N-alkyl diaryl ureas,Eur. J. Org. Chem.,2019年12月10日,Vol.2020, No.4,pp.437-445,DOI:10.1002/ejoc.201901602
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07F
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(A1)で表される、化合物。
【化1】
ただし、式中の基は下記を意味する。
は、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、ハロゲン原子、及びトリハロメチル基からなる群より選択される1~3個の置換基を有していてもよいC6-14アリール基であり、
は、1~3個のC6-14アリール基を置換基として有していてもよいC1-30アルキル基(炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)、又は、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、トリフルオロメチル基、及びハロゲン原子からなる群より選択される1~3個の置換基を有していてもよい芳香族基である。
【請求項2】
が、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、ハロゲン原子、及びトリハロメチル基からなる群より選択される1~3個の置換基を有していてもよいフェニル基であり、
が、1~3個のC6-14アリール基を置換基として有していてもよいC1-10アルキル基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、トリフルオロメチル基、及びハロゲン原子からなる群より選択される1~3個の置換基を有していてもよいC6-14アリール基、又は、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、トリフルオロメチル基、及びハロゲン原子からなる群より選択される1~3個の置換基を有していてもよい含窒素ヘテロアリール基である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、ハロゲン原子、及びトリハロメチル基からなる群より選択される1~3個の置換基を有していてもよいフェニル基であり、
が、1~3個のC6-14アリール基を置換基として有していてもよいC1-6アルキル基又は、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、トリフルオロメチル基、及びハロゲン原子からなる群より選択される1~3個の置換基を有していてもよいC6-14アリール基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物を有効成分とする、フッ素化剤。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物を有効成分とするフッ素化剤を用いて、下記一般式(A2)で表される基質化合物に、1個のフッ素原子を導入し、下記一般式(A3)又は(A4)で表されるフッ素含有化合物を製造する、フッ素含有化合物の製造方法。
【化2】
ただし、各式中の基は下記を意味する。
21、R22、及びR23は、それぞれ独立して、C1-4アルキル基であり;R24は、水素原子、置換基を有していてもよいC1-30脂肪族炭化水素基(炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)、置換基を有していてもよいC1-30アルコキシ基、又は置換基を有していてもよい芳香族基であり;R25は、水素原子、置換基を有していてもよいC1-30脂肪族炭化水素基(炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)、又は置換基を有していてもよい芳香族基であり;前記置換基を有していてもよいC1-30脂肪族炭化水素基は、ハロゲン原子及びC6-14アリール基からなる群より選択される1~3個の置換基を有していてもよいC1-30脂肪族炭化水素基(炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)であり;前記置換基を有していてもよいC1-30アルコキシ基は、ハロゲン原子及びC6-14アリール基からなる群より選択される1~3個の置換基を有していてもよいC1-30アルコキシ基であり;前記置換基を有していてもよい芳香族基は、ハロゲン原子及びC6-14アリール基からなる群より選択される1~3個の置換基を有していてもよい芳香族基であり;R24及びR25は、互いに連結して環を構成していてもよい。
【請求項6】
24及びR25が、互いに連結して置換基を有していてもよい環を形成し、当該環が、インデン環、インダン環、ジヒドロナフタレン環、ジヒドロベンゾアンヌレン環、クロマン環、クロメン環、及びイソクロメン環からなる群から選ばれる一種である、請求項5に記載のフッ素含有化合物の製造方法。
【請求項7】
24及びR25が、それぞれ独立して、ハロゲン原子及びC6-14アリール基からなる群より選択される1~3個の置換基を有していてもよいC1-30アルキル基、ハロゲン原子及びC6-14アリール基からなる群より選択される1~3個の置換基を有していてもよいC6-14アリール基、及び、ハロゲン原子及びC6-14アリール基からなる群より選択される1~3個の置換基を有していてもよい含窒素ヘテロアリール基からなる群から選ばれる一種である、請求項5に記載のフッ素含有化合物の製造方法。
【請求項8】
24が、ハロゲン原子及びC6-14アリール基からなる群より選択される1~3個の置換基を有していてもよいC1-30アルコキシ基である、請求項5に記載のフッ素含有化合物の製造方法。
【請求項9】
前記基質化合物に、100℃以下の温度でフッ素原子を導入する、請求項5~8のいずれか1項に記載のフッ素含有化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物にフッ素原子を導入するフッ素化剤、及び当該フッ素化剤を用いて得られたフッ素含有化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素原子は、電気陰性度が高く、かつ水素原子と同様に小さい。この特徴により、フッ素原子は多くの原子と安定して結合することができ、フッ素が導入された有機化合物は、導入前よりも耐熱性、耐薬品性、耐光性、耐水性等が向上する傾向にある。特に、炭素-フッ素結合は、結合距離が短く、剛直であり、分極率も低い。この炭素-フッ素結合の特徴のため、炭素-フッ素結合が導入された有機化合物は、反応性が低下し、化合物としての安定性が向上する。有機化合物をフッ素化することで、有用な有機化合物を合成することができるため、様々なフッ素化剤が開発されている。
【0003】
フッ素化剤としては、例えば、N-フルオロベンゼンスルホンイミド(NFSI)がある。NFSIは、カルボニル基に隣接する炭素原子にフッ素原子を導入できることが報告されている(非特許文献1及び2)。NFSIを用いた場合には、カルボニル基に隣接する炭素原子に導入されるフッ素原子が1個であるモノフッ素化体だけではなく、フッ素原子が2個導入されたジフッ素化体も合成されてしまい、モノフッ素化体の選択性は不十分である。
【0004】
その他、シリルエノールエーテル化合物のC=C結合を構成する炭素原子のうち、シリルエーテル基が結合した炭素原子とは別の炭素原子にフッ素原子を導入するフッ素化剤としては、N-フルオロ-o-ベンゼンジスルホンイミド(NFOBS)(非特許文献3)及びヨードトルエンジフルオリド(ITDF)(非特許文献4)が報告されている。しかし、NFOBSは、原料が入手困難であり、また、原料合成の際に特定フロンであるCFClを溶媒として使用する必要があり、溶媒をCFClではなくCHClを使用した場合にはCFClが生成してしまう、という問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Vaithiyanathan, et al., Chemistry A European Journal, 2017, vol.23, p.1268-1272.
【文献】Stavber, et al., Advanced synthesis & catalysis, 2010, vol.352, p.2838-2846.
【文献】Davis, et al., Journal of Organic Chemistry, 1995, vol.60, p.4730-4737.
【文献】Sato, et al., Synthesis, 2005, vol.15, p.2602-2605.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、シリルエノールエーテル化合物に対して、C=C結合を構成する炭素原子のうち、シリルエーテル基が結合した炭素原子とは別の炭素原子にフッ素原子を導入するフッ素化反応において、モノフッ素化体をジフッ素化体よりも優先的に合成してモノフッ素化体を選択的に製造することができるフッ素化剤、及び当該フッ素化剤を使用するフッ素含有化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、カルボニル基又はオキシカルボニル基と、アリールスルホニル基と、で保護したフッ化アミン化合物をフッ素化剤として用いた場合には、シリルエノールエーテル化合物のC=C結合を構成する一方の炭素原子に1個のフッ素原子のみが導入されたモノフッ素化体が、当該炭素原子に2個のフッ素原子が導入されたジフッ素化体よりも選択的に製造されることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] 下記一般式(A1)で表される、化合物。
【化1】
【0009】
ただし、式中の基は下記を意味する。
は、置換基を有していてもよいC6-14アリール基であり、
は、置換基を有していてもよいC1-30アルキル基(炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)、又は置換基を有していてもよい芳香族基である。
【0010】
[2] Rが、1~3個の置換基を有していてもよいフェニル基であり、
が、置換基を有していてもよいC1-10アルキル基、置換基を有していてもよいC6-14アリール基、又は置換基を有していてもよい含窒素ヘテロアリール基である、前記[1]の化合物。
[3] Rが、C1-6アルキル基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、ハロゲン原子、及びトリハロメチル基からなる群より選択される1~3個の置換基を有していてもよいフェニル基であり、
が置換基を有していてもよいC1-6アルキル基、置換基を有していてもよいC1-10アルコキシ基、又は置換基を有していてもよいC6-14アリール基である、前記[1]の化合物。
[4] 前記[1]~[3]のいずれかの化合物を有効成分とする、フッ素化剤。
【0011】
[5] 前記[1]~[3]のいずれかの化合物を有効成分とするフッ素化剤を用いて、下記一般式(A2)で表される基質化合物に、1個のフッ素原子を導入し、下記一般式(A3)又は(A4)で表されるフッ素含有化合物を製造する、フッ素含有化合物の製造方法。
【化2】
【0012】
ただし、各式中の基は下記を意味する。
21、R22、及びR23は、それぞれ独立して、C1-4アルキル基であり;R24は、水素原子、置換基を有していてもよいC1-30脂肪族炭化水素基(炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)、置換基を有していてもよいC1-30アルコキシ基、又は置換基を有していてもよい芳香族基であり;R25は、水素原子、置換基を有していてもよいC1-30脂肪族炭化水素基(炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)、又は置換基を有していてもよい芳香族基であり;R24及びR25は、互いに連結して環を構成していてもよい。
【化3】
[6] R24及びR25が、互いに連結して置換基を有していてもよい環を形成し、当該環が、インデン環、インダン環、ジヒドロナフタレン環、ジヒドロベンゾアンヌレン環、クロマン環、クロメン環、イソクロメン環、ジヒドロチオフェン環、ベンゾチオフェン環、ジヒドロベンゾチオフェン環、チオピラン環、ジヒドロチオピラン環、ベンゾチオピラン環、及びジヒドロベンゾチオピラン環からなる群から選ばれる一種である、前記[5]に記載のフッ素含有化合物の製造方法。
[7] R24及びR25が、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいC1-30アルキル基、置換基を有していてもよいC6-14アリール基、及び置換基を有していてもよい含窒素ヘテロアリール基からなる群から選ばれる一種である、前記[5]に記載のフッ素含有化合物の製造方法。
[8] R24が置換基を有していてもよいC1-30アルコキシ基である、前記[5]に記載のフッ素含有化合物の製造方法。
[9] 前記基質化合物に、100℃以下の温度でフッ素原子を導入する、前記[5]~[8]のいずれかのフッ素含有化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る化合物は、NFSIと同様に、不飽和結合を有する幅広い基質に対して、フッ素原子を導入することができる。当該化合物は、特に、シリルエノールエーテル化合物のフッ素化反応において、モノフッ素化体をジフッ素化体よりも優先的に合成してモノフッ素化体を選択的に製造することができる。このため、当該化合物は、モノフッ素化化合物を合成するためのフッ素化剤として非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明及び本願明細書において、「Cp1-p2」(p1及びp2は、p1<p2を満たす正の整数である)は、炭素数がp1~p2の基であることを意味する。
【0015】
本発明及び本願明細書において、「エーテル結合性の酸素原子」とは、炭素原子間を連結する酸素原子であり、酸素原子同士が直列に連結された酸素原子は含まれない。炭素数Nc(Ncは2以上の整数)のアルキル基が有し得るエーテル結合性の酸素原子は、最大Nc-1個である。
【0016】
本発明及び本願明細書において、「C6-14アリール基」は、炭素数6~14の芳香族炭化水素基であり、C6-12アリール基が特に好ましい。C6-14アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、9-フルオレニル基等が挙げられ、フェニル基が特に好ましい。
【0017】
本発明及び本願明細書において、「置換基を有しているC6-14アリール基」は、C6-14アリール基の炭素原子に結合している水素原子の1又は複数個、好ましくは1~3個が、他の官能基に置換されている基である。2個以上の置換基を有する場合、置換基同士は互いに同種であってもよく、異種であってよい。当該置換基としては、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、メチレンジオキシ基(-O-CH-O-)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子)、トリハロメチル基、シアノ基、及びニトロ基等が挙げられる。「置換基を有していてもよいC6-14アリール基」の例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、2-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2-トリフルオロメチルフェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル基、2,6-ジ(トリフルオロメチル)フェニル基、2,4-ジ(トリフルオロメチル)フェニル基、2-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、2,4-ジメトキシフェニル基、3,5-ジメトキシフェニル基、3-クロロフェニル基、4-シアノフェニル基、4-ニトロフェニル基、1,3-ベンゾジオキソール-5-イル基等が挙げられる。
【0018】
本発明及び本願明細書において、「ヘテロアリール基」は、芳香族性を備える環式基であり、当該環が炭素原子と炭素原子以外の原子によって構成されている基である。ヘテロアリール基としては、窒素原子を含む基(含窒素ヘテロアリール基)であってもよく、酸素原子を含む基(含酸素ヘテロアリール基)であってもよく、硫黄原子を含む基(含硫ヘテロアリール基)であってもよい。また、芳香環を構成する炭素原子以外の原子が2種以上であってもよい。ヘテロアリール基としては、例えば、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、フラニル基、ピラニル基、チエニル基等が挙げられる。
【0019】
本発明及び本願明細書において、「置換基を有しているヘテロアリール基」は、ヘテロアリール基の芳香環を構成する原子に結合している水素原子の1又は複数個、好ましくは1~3個が、他の官能基に置換されている基である。2個以上の置換基を有する場合、置換基同士は互いに同種であってもよく、異種であってよい。当該置換基としては、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、メチレンジオキシ基(-O-CH-O-)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子)、トリハロメチル基、シアノ基、及びニトロ基等が挙げられる。
【0020】
本発明及び本願明細書において、「芳香族基」は、置換基を有していてもよいアリール基(芳香族炭化水素基)と、置換基を有していてもよいヘテロアリール基(複素環式基)の両方を含む。
【0021】
本発明及び本願明細書において、「C1-30アルキル基」は、炭素数1~30のアルキル基であり、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。「C2-30アルキル基」は、炭素数2~30のアルキル基であり、直鎖であってもよく、分岐鎖であってもよい。C1-30アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基等が挙げられる。
【0022】
本発明及び本願明細書において、「C1-10アルキル基」は、炭素数1~10のアルキル基であり、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。「C2-10アルキル基」は、炭素数2~10のアルキル基であり、直鎖であってもよく、分岐鎖であってもよい。C1-10アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
【0023】
本発明及び本願明細書において、「C1-6アルキル基」は、炭素数1~6のアルキル基であり、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。C1-6アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
【0024】
本発明及び本願明細書において、「C1-4アルキル基」は、炭素数1~4のアルキル基であり、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。C1-4アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。
【0025】
本発明及び本願明細書において、「C1-3アルキル基」は、炭素数1~3のアルキル基であり、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。C1-3アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。
【0026】
本発明及び本願明細書において、「置換基を有しているCp1-p2アルキル基」は、Cp1-p2アルキル基の炭素原子に結合している水素原子の1又は複数個、好ましくは1~3個が、他の官能基に置換されている基である。2個以上の置換基を有する場合、置換基同士は互いに同種であってもよく、異種であってよい。当該置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子)、置換基を有していてもよいC6-14アリール基、シアノ基、及びニトロ基等が挙げられる。
【0027】
「置換基を有しているCp1-p2アルキル基」の例としては、例えば、C6-14アリール-C1-6アルキル基が挙げられる。「C6-14アリール-C1-6アルキル基」は、C1-6アルキル基の炭素原子に結合している1個の水素原子がC6-14アリール基に置換された基である。C6-14アリール-C1-6アルキル基におけるC6-14アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、9-フルオレニル基等を例示でき、フェニル基及び9-フルオレニル基が特に好ましい。C6-14アリール-C1-6アルキル基におけるC1-6アルキル基としては、C1-4アルキル基が好ましい。C6-14アリール-C1-6アルキル基の例としては、ベンジル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、2-フェニルエチル基、9-アントリルメチル基、9-フルオレニルメチル基等が挙げられる。
【0028】
本発明及び本願明細書において、「C1-30脂肪族炭化水素基」は、置換基を有していてもよいC1-30アルキル基、置換基を有していてもよいC2-30アルケニル基、置換基を有していてもよいC2-30アルキニル基、の全てを含む。「C1-30脂肪族炭化水素基」は、直鎖であってもよく、分岐鎖であってもよく、環式基であってもよい。C2-30アルケニル基の例としては、C2-30アルキル基で挙げられた基のうち少なくとも1個の炭素原子間の単結合を二重結合とした基が挙げられる。C2-30アルキニル基の例としては、C2-30アルキル基で挙げられた基のうち少なくとも1個の炭素原子間の単結合を三重結合とした基が挙げられる。より具体的には、C2-30アルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、2-プロペニル基、ブテニル基、1-メチルプロペニル基、2-メチルプロペニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。C2-30アルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、1-メチルプロピニル基、ペンチニル基、2-メチルブチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基等が挙げられる。
【0029】
本発明及び本願明細書において、「置換基を有しているCp1-p2脂肪族炭化水素基」は、Cp1-p2脂肪族炭化水素基の炭素原子に結合している水素原子の1又は複数個、好ましくは1~3個が、他の官能基に置換基を有している基である。2個以上の置換基を有する場合、置換基同士は互いに同種であってもよく、異種であってよい。当該置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子)、置換基を有していてもよいC6-14アリール基、シアノ基、及びニトロ基等が挙げられる。
【0030】
本発明及び本願明細書において、「C1-30アルコキシ基」とは、炭素数1~30の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基の結合末端に酸素原子が結合した基をいう。C1-30アルコキシ基における炭素数1~30の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、前記C1-30アルキル基と同様のものが挙げられる。
【0031】
本発明及び本願明細書において、「C1-10アルコキシ基」とは、炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基の結合末端に酸素原子が結合した基をいう。C1-10アルコキシ基における炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、前記C1-10アルキル基と同様のものが挙げられる。
【0032】
本発明及び本願明細書において、「C1-6アルコキシ基」とは、炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基の結合末端に酸素原子が結合した基をいう。C1-6アルコキシ基における炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、前記C1-6アルキル基と同様のものが挙げられる。C1-6アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0033】
本発明及び本願明細書において、「置換基を有しているCp1-p2アルコキシ基」は、Cp1-p2アルコキシ基の炭素原子に結合している水素原子の1又は複数個、好ましくは1~3個が、他の官能基に置換されている基である。2個以上の置換基を有する場合、置換基同士は互いに同種であってもよく、異種であってよい。当該置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子)、置換基を有していてもよいC6-14アリール基、シアノ基、及びニトロ基等が挙げられる。
【0034】
また、以降において、「化合物(n)」は式(n)で表される化合物を意味する。
【0035】
以降の化学反応は、反応に不活性な溶媒中で行うことができる。溶媒としては、メタノール、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の不活性溶媒が挙げられる。
【0036】
[フッ素化剤]
本発明に係る化合物は、下記一般式(A1)で表される化合物である。
【0037】
【化4】
【0038】
一般式(A1)中、Rは、置換基を有していてもよいC6-14アリール基である。化合物(A1)としては、Rにおける当該置換基を有していてもよいC6-14アリール基が、1~3個の置換基を有していてもよいフェニル基が好ましく、C1-6アルキル基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、ハロゲン原子、及びトリハロメチル基からなる群より選択される1~3個の置換基を有していてもよいフェニル基がより好ましく、フェニル基、4-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、4-トリフルオロメチル基、3-トリフルオロメチル基、2,6-ジ(トリフルオロメチル)フェニル基、3,4-ジ(トリフルオロメチル)フェニル基、4-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、2,4-ジメトキシフェニル基、3,4-ジメトキシフェニル基、3-クロロフェニル基、4-クロロフェニル基、2,6-ジクロロフェニル基、3,4-ジクロロフェニル基、4-ニトロフェニル基がさらに好ましく、フェニル基が特に好ましい。
【0039】
一般式(A1)中、Rは、置換基を有していてもよいC1-30アルキル基(炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)、又は置換基を有していてもよい芳香族基である。
【0040】
前記Rが置換基を有していてもよいC1-30アルキル基である場合、当該アルキル基は、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい。化合物(A1)としては、前記Rが、置換基を有していてもよいC1-10アルキル基が好ましく、置換基を有していてもよいC1-6アルキル基がより好ましく、置換基を有していていないC1-6アルキル基、及びC6-14アリール-C1-6アルキル基がさらに好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、2-フェニルエチル基、9-アントリルメチル基、及び9-フルオレニルメチル基であることがよりさらに好ましく、tert-ブチル基、ベンジル基、及び2-フェニルエチル基であることが特に好ましい。
【0041】
前記Rが置換基を有していてもよい芳香族基である場合、当該芳香族基は、アリール基であってもよく、ヘテロアリール基であってもよい。化合物(A1)としては、前記Rが、置換基を有していてもよいC6-14アリール基、及び置換基を有していてもよい含窒素ヘテロアリール基が好ましく、置換基を有していてもよいC6-14アリール基がより好ましく、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、シアノ基、及びニトロ基からなる群より選択される1~3個の置換基を有していてもよいフェニル基がさらに好ましく、フェニル基、2-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2-トリフルオロメチルフェニル基、3-トリフルオロメチルフェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル基、2,6-ジ(トリフルオロメチル)フェニル基、2,4-ジ(トリフルオロメチル)フェニル基、2-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、2,4-ジメトキシフェニル基、3,5-ジメトキシフェニル基、2,6-ジメトキシフェニル基、2-クロロフェニル基、3-クロロフェニル基、4-クロロフェニル基、2,4-ジクロロフェニル基、3,5-ジクロロフェニル基、2,6-ジクロロフェニル基、2-フルオロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基、2,4-ジフルオロフェニル基、3,5-ジフルオロフェニル基、2,6-ジフルオロフェニル基、4-シアノフェニル基、4-ニトロフェニル基がよりさらに好ましく、フェニル基、2-トリフルオロメチルフェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル基、2,6-ジ(トリフルオロメチル)フェニル基、2,4-ジ(トリフルオロメチル)フェニル基、2-クロロフェニル基、4-クロロフェニル基、3,5-ジクロロフェニル基、2,6-ジクロロフェニル基、2,4-ジクロロフェニル基、2-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基、3,5-ジフルオロフェニル基、2,6-ジフルオロフェニル基、2,4-ジフルオロフェニル基、及び4-シアノフェニル基が特に好ましい。
【0042】
化合物(A1)としては、RがC1-6アルキル基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、ハロゲン原子、及びトリハロメチル基からなる群より選択される1~3個の置換基を有していてもよいフェニル基であり、Rが置換基を有していてもよいC1-6アルキル基、置換基を有していてもよいC1-10アルコキシ基、及び置換基を有していてもよいC6-14アリール基である化合物が好ましく、Rがフェニル基、4-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、4-トリフルオロメチル基、3-トリフルオロメチル基、2,6-ジ(トリフルオロメチル)フェニル基、3,4-ジ(トリフルオロメチル)フェニル基、4-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、2,4-ジメトキシフェニル基、3,4-ジメトキシフェニル基、3-クロロフェニル基、4-クロロフェニル基、2,6-ジクロロフェニル基、3,4-ジクロロフェニル基、及び4-ニトロフェニル基であり、Rが置換基を有していていないC1-6アルキル基、C6-14アリール-C1-6アルキル基、並びに、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、シアノ基、及びニトロ基からなる群より選択される1~3個の置換基を有していてもよいフェニル基である化合物がより好ましく、Rがフェニル基であり、Rがtert-ブチル基、ベンジル基、2-フェニルエチル基、フェニル基、2-トリフルオロメチルフェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル基、2,6-ジ(トリフルオロメチル)フェニル基、2,4-ジ(トリフルオロメチル)フェニル基、2-クロロフェニル基、4-クロロフェニル基、3,5-ジクロロフェニル基、2,6-ジクロロフェニル基、2,4-ジクロロフェニル基、2-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基、3,5-ジフルオロフェニル基、2,6-ジフルオロフェニル基、2,4-ジフルオロフェニル基、及び4-シアノフェニル基である化合物がさらに好ましい。
【0043】
化合物(A1)は、例えば、脂肪酸や安息香酸誘導体等のカルボン酸とスルホンアミドとの縮合反応により、スルホニルカルバミン酸エステルを合成し、このアミノ基の窒素原子と結合する水素原子をリチウム原子に置換し、さらにこのリチウム原子をフッ素原子に置換することにより合成できる。下記式中、R及びRは一般式(A1)のR及びRと同じである。
【0044】
【化5】
【0045】
[フッ素含有化合物の製造方法]
化合物(A1)は、各種反応におけるフッ素化剤の有効成分とすることができる。化合物(A1)は、NFSIと同様に様々な有機化合物中の炭素原子をフッ素化することができる。基質となる有機化合物としては、例えば、アルケン、アリル化合物、アルキン、芳香族化合物等の不飽和結合を有する化合物が挙げられる。当該不飽和結合は、炭素原子間に形成される結合であってもよく、炭素原子と炭素原子以外の原子との間の結合であってもよい。
【0046】
化合物(A1)は、特に、シリルエノールエーテル化合物のフッ素化剤として好適である。例えば、化合物(A1)をフッ素化剤として用いることにより、一般式(A2)で表される基質化合物(シリルエノールエーテル化合物)に、1個のフッ素原子を導入し、一般式(A3)又は(A4)で表されるフッ素含有化合物を製造することができる。
【0047】
【化6】
【0048】
化合物(A3)と化合物(A4)は、容易に相互変換することができると考えられる。
【0049】
【化7】
【0050】
例えば、化合物(A3)から化合物(A4)へは、脱シリル剤の添加により変換できる。脱シリル剤は、例えば、「Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis 第5版」の201ページ Silyl Ethersの項に記載の化合物が使用できる。具体的には、例えば、塩酸や硫酸のような無機酸、ギ酸や酢酸のような有機酸、フッ化セシウムのような無機フッ化物塩、テトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)のような有機フッ化物塩、水酸化ナトリウムのような無機水酸化化合物、ナトリウムメトキシドのようなアルコキシドが挙げられる。脱シリル剤としては、無機酸、有機酸、及び有機フッ化物塩が好ましく、テトラブチルアンモニウムフルオリドが特に好ましい。
【0051】
化合物(A4)から化合物(A3)へは、シリル化剤(R212223SiX:R21、R22、及びR23は、一般式(A3)と同じであり、Xはハロゲン原子である)と塩基の添加により変換できる。シリル化剤と塩基は、例えば、「Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis 第5版」の201ページ Silyl Ethersの項に記載の化合物が使用できる。シリル化剤としては、例えば、MeSiCl、EtSiCl、iPrSiCl、t-BuMeSiClのような塩化シランが挙げられる。塩基としては、トリエチルアミンやピリジン、イミダゾールのような有機塩基が挙げられる。化合物(A4)から化合物(A3)への変換に用いられるシリル化剤としては、MeSiClが好ましく、塩基としてはイミダゾールが好ましい。
【0052】
一般式(A2)中、R21、R22、及びR23は、それぞれ独立して、C1-4アルキル基である。化合物(A2)としては、モノフッ素化化合物への選択率が高いことから、R21、R22、及びR23が、それぞれ独立して、メチル基及びエチル基である化合物が好ましく、R21、R22、及びR23が、いずれもメチル基及びエチル基である化合物がより好ましく、R21、R22、及びR23が、いずれもメチル基である化合物が特に好ましい。
【0053】
一般式(A2)中、R24は、水素原子、置換基を有していてもよいC1-30脂肪族炭化水素基(炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)、置換基を有していてもよいC1-30アルコキシ基、又は置換基を有していてもよい芳香族基である。また、一般式(A2)中、R25は、水素原子、置換基を有していてもよいC1-30脂肪族炭化水素基(炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)、又は置換基を有していてもよい芳香族基である。
【0054】
前記R24又はR25が置換基を有していてもよいC1-30脂肪族炭化水素基である場合、当該脂肪族炭化水素基は、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい。当該C1-30脂肪族炭化水素基としては、置換基を有していてもよいC1-30アルキル基が好ましく、置換基を有していてもよいC1-10アルキル基がより好ましく、置換基を有していてもよいC1-6アルキル基がさらに好ましく、置換基を有していないC1-6アルキル基が特に好ましい。
【0055】
前記R24又はR25が置換基を有していてもよい芳香族基である場合、当該芳香族基は、アリール基であってもよく、ヘテロアリール基であってもよい。当該芳香族基としては、置換基を有していてもよいC6-14アリール基、又は置換基を有していてもよい含窒素ヘテロアリール基が好ましく、置換基を有していてもよいC6-14アリール基がより好ましく、置換基を有していてもよいフェニル基がさらに好ましく、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、シアノ基、及びニトロ基からなる群より選択される1~3個の置換基を有していてもよいフェニル基がよりさらに好ましい。C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、シアノ基、及びニトロ基からなる群より選択される1~3個の置換基を有していてもよいフェニル基としては、例えば、前記Rで挙げられた基と同様のものが挙げられる。
【0056】
前記R24が置換基を有していてもよいC1-30アルコキシ基である場合、当該アルコキシ基は、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい。化合物(A2)としては、前記R24が、置換基を有していてもよいC1-10アルコキシ基が好ましく、置換基を有していてもよいC1-6アルコキシ基がより好ましく、置換基を有していていないC1-6アルコキシ基がさらに好ましく、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基がよりさらに好ましい。
【0057】
前記R24及びR25は、互いに連結して環を構成していてもよい。R24及びR25により構成される環としては、5員環、6員環、及び7員環が好ましく、芳香環や飽和環が縮合している環であってもよい。また、炭化水素環であってもよく、複素環であってもよい。当該環としては、例えば、インデン環、インダン環、ジヒドロナフタレン環、ジヒドロベンゾアンヌレン環、クロマン環、クロメン環、イソクロメン環、ジヒドロチオフェン環、ベンゾチオフェン環、ジヒドロベンゾチオフェン環、チオピラン環、ジヒドロチオピラン環、ベンゾチオピラン環、ジヒドロベンゾチオピラン環等が挙げられる。
【0058】
前記R24及びR25が構成する環は、置換基を有していてもよい。2個以上の置換基を有する場合、置換基同士は互いに同種であってもよく、異種であってよい。当該置換基としては、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子)、トリハロメチル基、置換基を有していてもよいC6-14アリール基、シアノ基、及びニトロ基等が挙げられる。
【0059】
化合物(A1)による化合物(A2)のフッ素化反応は、脱シリル化剤の存在下、100℃以下の温度でフッ素ガスとインキュベートすることにより進行させることができる。脱シリル化剤としては、フッ化ナトリウム等のフッ化物を用いることができる。化合物(A2)1モルに対して、化合物(A1)は0.5~100モルが好ましく、0.5~50モルがより好ましく、0.5~10モルがさらに好ましい。
【実施例
【0060】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0061】
実施例、比較例の分析に使用したNMR装置は、日本電子製JNM-ECS400(400MHz)である。H NMRではテトラメチルシランを0PPMの基準値とし、19F NMRではCを-162PPMの基準値とした。HPLC(高速液体クロマトグラフ)は、島津製作所製LC-20を使用した。実施例中に記載する収率(%)の単位は、モル%である。
【0062】
[実施例1]
一般式(A1)中のRがフェニル基、Rが2個のトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基である化合物を合成した。
【0063】
【化8】
【0064】
窒素雰囲気下、安息香酸誘導体である化合物(1)(1.29g)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(1.15g)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(0.73g)、及びスルホンアミド(化合物(2):0.86g)を0.2M 塩化メチレンに溶解させた溶液を、室温で12時間攪拌した。その後、1Mの塩酸でクエンチし、分液し、水相を酢酸エチルで2回抽出し、全ての有機相を合わせて硫酸ナトリウムで乾燥させた。引き続いて、減圧下で溶媒留去を行い、ヘキサン/酢酸エチル混合溶媒系でシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行い、白色固体である目的の化合物(3-H)(1.21g)を得た。
【0065】
H NMR(d-アセトン):δ=11.48(s,1H),8.55(s,2H),8.32(s,1H),8.13-8.16(d,2H),7.74-7.78(t,1H),7.64-7.68(t,2H)19F NMR(d-アセトン):δ=-63.40(s,6F).
【0066】
化合物(3-H)のリチウム塩を調製した。具体的には、化合物(3-H)(0.79g)と水酸化リチウム一水和物(0.08g)のアセトン/水混合溶液を、室温で12時間攪拌した。引き続き、減圧下での溶媒留去により、リチウム塩(3-Li)(0.79g)を直接得た。
【0067】
【化9】
【0068】
H NMR(d-アセトン):δ=8.61(s,2H),8.12(s,1H),7.99-8.01(d,2H),7.47-7.56(m,3H)19F NMR(d-アセトン):δ=-63.20(s,6F).
【0069】
さらに、化合物(3-H)及びリチウム塩である化合物(3-Li)をフッ素化した。
【0070】
【化10】
【0071】
まず、化合物(3-H)(1.29g)、及びフッ化ナトリウム(0.42g)のアセトニトリル(120g)溶液を、氷浴を用いて0℃にまで氷冷した。体積比で2%のフッ素/窒素混合ガスをマスフローコントローラーで100mL/分に調節し、40分間かけてフッ素ガス1当量を反応容器内に導入した。次いで、沈殿を濾過し、減圧下での溶媒留去を行った後、ヘキサン/酢酸エチル混合溶媒系を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、目的生成物(4)(0.63gを得た)。
【0072】
上記化合物(3-H)の代わりにそのリチウム塩である化合物(3-Li)を使用した。具体的には、化合物(3-Li)(0.86g)及びフッ化ナトリウム(0.09g)のアセトニトリル(30g)溶液で、2%フッ素/窒素混合ガスを25分間流した場合においては化合物(4)を0.30g得た。
【0073】
H NMR(d-アセトン):δ=8.51(s,3H),7.95-8.01(m,3H),7.79-7.83(t,2H)19F NMR(d-アセトン):δ=-52.35(s,1F),-63.39(s,6F).
【0074】
[実施例2]
化合物(4)をフッ素化剤とし、シリルエノールエーテル化合物(9)のフッ素化を行った。
【0075】
【化11】
【0076】
窒素雰囲気下、化合物(4)(37mg)を0.1Mの塩化メチレンに溶解させた溶液中に、シリルエノールエーテル化合物(9)(16mg)を滴下した。その後、25℃で24時間攪拌した後、粗液を19F NMRで定量したところ、化合物(10m)が収率83%で生成していることを確認した。この際、化合物(10d)が収率2%で生成していることも確認された。
【0077】
化合物(10m)の19F NMR(CDCl):δ=-191.16(d,1F).化合物(10d)の19F NMR(CDCl):δ=-112.09(t,2F).
【0078】
[比較例1]
NFSIをフッ素化剤とし、シリルエノールエーテル化合物(9)のフッ素化を行った。
【0079】
【化12】
【0080】
実施例2と同様の条件で、フッ素化剤として化合物(4)に代えてNFSI(28mg)を用いて行った。その結果、化合物(10m)は7%、化合物(10d)は36%生成しており、また化合物(11m)が8%生成していることが確認された。これらの結果から、化合物(A1)をフッ素化剤とすることにより、モノフルオロ化合物よりもジフルオロ化合物をより選択的に合成できることがわかった。
【0081】
化合物(11m)の19F NMR(CDCl):δ=-129.08(s,1F).
【0082】
[実施例3]
一般式(A1)中のRがフェニル基、Rがヘテロアリール基である化合物(13)を合成した。
【0083】
【化13】
【0084】
化合物(12-H)(0.56g)及びフッ化ナトリウム(0.27g)をアセトニトリル(30g)に溶解させた溶液を、氷浴を用いて0℃にまで氷冷した。体積比で2%のフッ素/窒素混合ガスをマスフローコントローラーで100mL/分に調節し、25分間かけてフッ素ガス1等量を反応容器内に導入した。反応終了後、粗液を19F NMRで定量したところ、化合物(13)が収率35%で生成していることを確認した。
【0085】
19F NMR(neat):δ=-47.67(s,1F).
【0086】
[実施例4]
一般式(A1)中のRがフェニル基、Rが2個の塩素原子で置換されたヘテロアリール基である化合物(15)を合成した。
【0087】
【化14】
【0088】
化合物(14-H)(0.40g)及びフッ化ナトリウム(0.16g)をアセトニトリル(30g)に溶解させた溶液を、氷浴を用いて0℃にまで氷冷した。体積比で2%のフッ素/窒素混合ガスをマスフローコントローラーで100mL/分に調節し、14分間かけてフッ素ガス1等量を反応容器内に導入した。反応終了後、粗液を19F NMRで定量したところ、化合物(15)が収率34%で生成していることを確認した。
【0089】
19F NMR(neat):δ=-51.34(s,1F).
【0090】
[実施例5]
化合物(4)をフッ素化剤とし、シリルエノールエーテルのフッ素化を行った。シリルエノールエーテルは、((6,7-ジヒドロ-5H-ベンゾ[7]アンヌレン-9-イル)オキシ)トリメチルシラン、(E)-トリメチル((1-フェニルプロプ-1-エン-1-イル)オキシ)シラン、(E)-((1,2-ジフェニルビニル)オキシ)トリメチルシラン、((2H-クロメン-4-イル)オキシ)トリメチルシラン、(E)-トリメチル((1-フェニルブト-1-エン-1-イル)オキシ)シラン、(E)-((1-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)プロップ-1-エン-1-イル)オキシ)トリメチルシランを用いた。反応条件は、(E)-((1,2-ジフェニルビニル)オキシ)トリメチルシランの合成反応を50時間とした以外は、実施例2と同じ条件とした。
【0091】
【化15】
【0092】
【化16】
【0093】
この結果、((6,7-ジヒドロ-5H-ベンゾ[7]アンヌレン-9-イル)オキシ)トリメチルシランからは、6-フルオロ-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ベンゾ [7]アンヌレン-5-オンが収率90%で生成していることを確認した。また、モノフッ素化体(6-フルオロ-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ベンゾ [7]アンヌレン-5-オン)とジフッ素化体(6,6-ジフルオロ-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ベンゾ [7]アンヌレン-5-オン)の合成比率は、モノフッ素化体:ジフッ素化体=98:2であった。
(E)-トリメチル((1-フェニルプロプ-1-エン-1-イル)オキシ)シランからは、2-フルオロ-1-フェニルプロパン-1-オンが収率87%で生成していることを確認した。また、モノフッ素化体(2-フルオロ-1-フェニルプロパン-1-オン)とジフッ素化体(2,2-ジフルオロ-1-フェニルプロパン-1-オン)の合成比率は、モノフッ素化体:ジフッ素化体=98:2であった。
(E)-((1,2-ジフェニルビニル)オキシ)トリメチルシランからは、2-フルオロ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンが収率71%で生成していることを確認した。また、モノフッ素化体(2-フルオロ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン)とジフッ素化体(2,2-ジフルオロ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン)の合成比率は、モノフッ素化体:ジフッ素化体=99:1であった。
((2H-クロメン-4-イル)オキシ)トリメチルシランからは、3-フルオロクロマン-4-オンが収率57%で生成していることを確認した。また、モノフッ素化体(3-フルオロクロマン-4-オン)とジフッ素化体(3,3-ジフルオロクロマン-4-オン)の合成比率は、モノフッ素化体:ジフッ素化体=98:2であった。
(E)-トリメチル((1-フェニルブト-1-エン-1-イル)オキシ)シランからは、2-フルオロ-1-フェニルブタン-1-オンが収率83%で生成していることを確認した。また、モノフッ素化体(2-フルオロ-1-フェニルブタン-1-オン)とジフッ素化体(2,2-ジフルオロ-1-フェニルブタン-1-オン)の合成比率は、モノフッ素化体:ジフッ素化体=99:1であった。
(E)-((1-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)プロップ-1-エン-1-イル)オキシ)トリメチルシランからは、1-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-フルオロプロパン-1-オンが収率96%で生成していることを確認した。また、モノフッ素化体(1-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-フルオロプロパン-1-オン)とジフッ素化体(1-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2,2-ジフルオロプロパン-1-オン)の合成比率は、モノフッ素化体:ジフッ素化体=99:1であった。
【0094】
[実施例6]
化合物(4)をフッ素化剤とし、シリルエノールエーテル化合物(16)のフッ素化を行った。
【0095】
【化17】
【0096】
窒素雰囲気下、化合物(4)(49.8mg:0.12mmol)を0.1Mの塩化メチレン(1mL)に溶解させた溶液中に、シリルエノールエーテル化合物(16)(22.2mg:0.10mmol)を滴下した。その後、25℃で42時間攪拌した後、粗液を19F NMRで定量したところ、化合物(17)が収率45%で生成していることを確認した。この際、ジフルオロ体は検出されなかった。
【0097】
[実施例7]
化合物(4)をフッ素化剤とし、シリルエノールエーテル化合物(9-2)のフッ素化を行った。
【0098】
【化18】
【0099】
窒素雰囲気下、化合物(4)(45.3mg:0.11mmol)を0.1Mの塩化メチレンに溶解させた溶液中に、シリルエノールエーテル化合物(9-2)(24mg:0.091mmol)を滴下した。その後、25℃で24時間攪拌した後、粗液を19F NMRで定量したところ、化合物(10m)が収率54%で生成していることを確認した。この際、化合物(10d)が収率3%で生成していることも確認された。
【0100】
[実施例8]
化合物(4)をフッ素化剤とし、実施例7と同じ条件で、シリルエノールエーテルのフッ素化を行った。合成されたモノフッ素化体とジフッ素化体を19F NMRで分析した。19F NMRは、2,3,5,6-テトラフルオロ-p-キシレンを-147PPMの基準値とした。合成されたモノフッ素化体とジフッ素化体の19F NMRの分析値と合成比率を、反応式と共に示す。これらの結果から、化合物(4)をフッ素化剤とすることにより、様々な基質から、モノフルオロ化合物よりもジフルオロ化合物をより選択的に合成できることがわかった。
【0101】
【化19】
【0102】
【化20】
【0103】
【化21】
【0104】
[実施例9]
化合物(4)をフッ素化剤とし、実施例2と同様にして、シリルエノールエーテル化合物(18)のフッ素化を行った。合成されたモノフッ素化体とジフッ素化体の合成比率を、反応式と共に示す。
【0105】
【化22】
【0106】
[実施例10]
化合物(3-Li)から化合物(4)の合成において、化合物(3-Li)の代わりにリチウム塩である化合物(19)を使用し、実施例1と同様にして、フッ素化剤である化合物(20)をフッ素化収率87%、カラムクロマトグラフィーによる単離収率51%で得た。同様にして、リチウム塩を変更し、対応するフッ素化剤(化合物(21)~化合物(23))を得た。得られたフッ素化剤のフッ素化収率(括弧外の数値)とカラムクロマトグラフィーによる単離収率(括弧内の数値)を反応式と共に示す。また、これらのフッ素化剤をNMRで分析した。19F NMRは、実施例8と同様にして行った。
【0107】
【化23】
【0108】
化合物(20)のNMR分析値
H NMR(CDCl):7.98-8.00(d,2H),7.85-7.87(d,2H),7.77-7.82(m,3H),7.61-7.65(t,2H)19F NMR(CDCl):-49.35(s,1F),-63.26(s,3F)
【0109】
化合物(21)のNMR分析値
H NMR(d-アセトン):8.04(d,2H),7.91(t,1H),7.76(t,2H),1.05(s,9H)19F NMR(d-アセトン):-51.19(s,1F)
【0110】
化合物(22)のNMR分析値
H NMR(d-アセトン):7.96-8.01(m,3H),7.79-7.83(t,2H),7.50-7.59(m,3H)19F NMR(d-アセトン):-51.85(s,1F),-108.98(s,2F)
【0111】
化合物(23)のNMR分析値
H NMR(d-アセトン):7.95-8.02(m,4H),7.90-7.91(m,2H),7.82-7.87(t,2H)19F NMR(d-アセトン):-52.11(s,1F)
【0112】
[実施例11]
化合物(20)~化合物(23)をフッ素化剤とし、実施例2と同様にして、シリルエノールエーテル化合物(9)のフッ素化を行った。合成されたモノフッ素化体とジフッ素化体の合成比率を、反応式と共に示す。これらの結果から、化合物(20)~化合物(23)をフッ素化剤とすることにより、モノフルオロ化合物よりもジフルオロ化合物をより選択的に合成できることがわかった。
【0113】
【化24】
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、シリルエノールエーテル化合物に対して、C=C結合を構成する炭素原子のうち、シリルエーテル基が結合した炭素原子とは別の炭素原子に1個のフッ素原子が導入されたモノフッ素化化合物を選択的に合成することができるフッ素化剤、及び当該フッ素化剤を使用してモノフッ素化化合物を製造する方法を提供する。本発明に係るフッ素化剤は、2個のフッ素原子が導入されたジフッ素化化合物よりもモノフッ素化化合物を優先的に合成することができるため、特にモノフッ素化化合物の選択的な製造に有用である。
【0115】
なお、2019年9月24日に出願された日本特許出願2019-173543号、および2020年7月29日に出願された日本特許出願2020-128667号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。