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特許7612162環状イミド化合物の製造方法、組成物、化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】環状イミド化合物の製造方法、組成物、化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/22 20060101AFI20250106BHJP
   C07D 471/04 20060101ALI20250106BHJP
   C07D 471/16 20060101ALI20250106BHJP
【FI】
C07D471/22 CSP
C07D471/04 111
C07D471/16
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021546599
(86)(22)【出願日】2020-09-04
(86)【国際出願番号】 JP2020033541
(87)【国際公開番号】W WO2021054144
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-03-11
(31)【優先権主張番号】P 2019171333
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 寛記
(72)【発明者】
【氏名】谷 征夫
(72)【発明者】
【氏名】松下 哲也
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 哲也
(72)【発明者】
【氏名】岡本 敏宏
【審査官】神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/146368(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/022735(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/003701(WO,A1)
【文献】YU,C.P. et al.,Air-Stable Benzo[c]thiophene Diimide n-Type π-Electron Core,Organic Letters,2019年06月05日,Vol.21, No.12,pp.4448-4453,DOI 10.1021/acs.orglett.9b01239
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物と少なくとも1種のアミン化合物とを反応させて、下記式(2)で表される化合物を得る、環状イミド化合物の製造方法。
【化1】

式(1)中、A11~A18は、各々独立に、-N=、又は-C(R15)=を表す。R15は、水素原子、又は置換基を表す。但し、A11~A18のうち少なくとも1個は、-N=を表す。R11~R14は、各々独立に、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基、又は電子求引性基を有していてもよいフェニル基を表す。但し、R11とR14のうち、一方は、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基を表し、他方は、電子求引性基を有していてもよいフェニル基を表す。また、R12とR13のうち、一方は、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基を表し、他方は、電子求引性基を有していてもよいフェニル基を表す。前記電子求引性基は、ハロゲン原子、アシル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルキルオキシ基、アミノカルボニル基、アルカンスルホニル基、アリールスルホニル基、シアノ基、ニトロ基、又はホルミル基を表す。
式(2)中、A11~A18は、式(1)中のA11~A18と同義である。R31及びR51は、各々独立に、置換基を表す。
【請求項2】
前記式(1)で表される化合物と、下記式(3)で表される第一のアミン化合物とを反応させて、下記式(4)で表される化合物を得る工程Y1と、
前記式(4)で表される化合物と、下記式(5)で表される第二のアミン化合物とを反応させて、下記式(6)で表される化合物を得る工程Y2と、
前記式(6)で表される化合物から保護基であるP31を除去して、下記式(7)で表される化合物を得る工程Y3と、
前記式(7)で表される化合物から前記式(2)で表される化合物を得る工程Y4と、を含む、請求項1に記載の環状イミド化合物の製造方法。
【化2】

式(3)中、R31は、式(2)中のR31と同義である。P31は、保護基を表す。
式(4)中、A11~A18は、各々、式(1)中のA11~A18と同義である。R12~R14は、各々、式(1)中のR12~R14と同義である。但し、R14は、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基を表す。R31は、式(3)中のR31と同義である。P31は、式(3)中のP31と同義である。
式(5)中、R51は、式(2)中のR51と同義である。
式(6)中、A11~A18は、各々、式(1)中のA11~A18と同義である。R14は、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基を表す。R31は、式(3)中のR31と同義である。P31は、式(3)中のP31と同義である。R51は、式(5)中のR51と同義である。
式(7)中、A11~A18は、各々、式(1)中のA11~A18と同義である。R14は、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基を表す。R31は、式(3)中のR31と同義である。R51は、式(5)中のR51と同義である。
【請求項3】
前記式(1)で表される化合物が下記式(8)で表される化合物を表し、前記式(2)で表される化合物が下記式(9)で表される化合物を表す、請求項1又は2に記載の環状イミド化合物の製造方法。
【化3】

式(8)中、R11~R14は、各々、式(1)中のR11~R14と同義である。但し、R14は、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基を表す。R81~R86は、各々独立に、水素原子、又は置換基を表す。
式(9)中、R31及びR51は、各々、式(2)中のR31及びR51と同義である。R81~R86は、各々、式(8)中のR81~R86と同義である。
【請求項4】
前記式(8)で表される化合物が下記式(10)で表される化合物を表す、請求項3に記載の環状イミド化合物の製造方法。
【化4】

式(10)中、X101及びX102は、各々独立に、電子求引性基を表す。n1及びn2は、各々独立に、1~5の整数を表す。R12及びR14は、各々独立に、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基を表す。R81~R86は、各々、式(8)中のR81~R86と同義である。前記電子求引性基は、ハロゲン原子、アシル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルキルオキシ基、アミノカルボニル基、アルカンスルホニル基、アリールスルホニル基、シアノ基、ニトロ基、又はホルミル基を表す。
【請求項5】
前記式(10)で表される化合物が下記式(10’)で表される化合物を表す、請求項4に記載の環状イミド化合物の製造方法。
【化5】

式(10’)中、X111~X116は、各々独立に、ハロゲン原子を表す。R12及びR14は、各々独立に、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基を表す。R81~R86は、各々、式(8)中のR81~R86と同義である。
【請求項6】
111~X116が、塩素原子を表す、請求項5に記載の環状イミド化合物の製造方法。
【請求項7】
下記式(X1)で表される化合物と下記式(X2)で表される化合物とを反応させて、下記式(11A)で表される化合物及び下記式(11B)で表される化合物を含む組成物を得た後、前記組成物に対してカラム精製することなく、前記組成物と、下記式(12)で表される第一のアミン化合物とを反応させて、下記式(13)で表される化合物を得る工程Y1’と、
前記式(13)で表される化合物と、下記式(14)で表される第二のアミン化合物とを反応させて、下記式(15)で表される化合物を得る工程Y2’と、
前記式(15)で表される化合物から保護基であるP31を除去して、下記式(16)で表される化合物を得る工程Y3’と、
前記式(16)で表される化合物から前記式(9)で表される化合物を得る工程Y4’と、を含む、請求項3に記載の環状イミド化合物の製造方法。
【化6】


式(X1)中、X1~X4は、各々、ハロゲン原子、又は-CO-O-R101を表す。R101は、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基、又は電子求引性基を有していてもよいフェニル基を表す。但し、X1とX4のうち、一方は、ハロゲン原子を表し、他方は、-CO-O-R101を表す。また、X2とX3のうち、一方は、ハロゲン原子を表し、他方は、-CO-O-R101を表す。R81~R86は、各々、式(8)中のR81~R86と同義である。
式(X2)中、R101は、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基、又は電子求引性基を有していてもよいフェニル基を表す。
式(11A)中、X5~X8は、各々独立に、-CO-O-R101を表す。R101は、各々独立に、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基、又は電子求引性基を有していてもよいフェニル基を表す。但し、X5中のR101と、X8中のR101とは異なり、一方は、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基を表し、他方は、電子求引性基を有していてもよいフェニル基を表す。また、X6中のR101とX7中のR101とは異なり、一方は、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基を表し、他方は、電子求引性基を有していてもよいフェニル基を表す。R81~R86は、各々、式(8)中のR81~R86と同義である。
101で表される前記フェニル基が有していてもよい前記電子求引性基は、ハロゲン原子、アシル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルキルオキシ基、アミノカルボニル基、アルカンスルホニル基、アリールスルホニル基、シアノ基、ニトロ基、又はホルミル基を表す。
式(11B)中、X9及びX10のうち一方は、水素原子を表し、他方は、-CO-O-R101を表す。R101は、式(X1)中のR101と同義である。X6及びX7は、各々、式(11A)中のX6及びX7と同義である。R81~R86は、各々、式(8)中のR81~R86と同義である。
式(12)中、R31は、置換基を表す。P31は、保護基を表す。
式(13)中、X11及びX12は、一方は、-CO-O-R101を表し、他方は、-CO-N(R31)(P31)を表す。R101は、式(X1)中のR101と同義である。R31及びP31は、各々、式(12)中のR31及びP31と同義である。X6及びX7は、各々、式(11A)中のX6及びX7と同義である。R81~R86は、各々、式(8)中のR81~R86と同義である。
式(14)中、R51は、置換基を表す。
式(15)中、X11及びX12は、各々、式(13)中のX11及びX12と同義である。R51は、式(14)中のR51と同義である。R81~R86は、各々、式(8)中のR81~R86と同義である。
式(16)中、X13及びX14は、一方は、-CO-O-R101を表し、他方は、-CO-N(R31)(H)を表す。R101は、式(X1)中のR101と同義である。R51は、式(14)中のR51と同義である。R81~R86は、各々、式(8)中のR81~R86と同義である。
【請求項8】
下記式(X1)で表される化合物と下記式(X2)で表される化合物とを反応させて、下記式(11A)で表される化合物及び下記式(11B)で表される化合物を含む組成物を得た後、前記組成物に対してカラム精製することなく、前記組成物と、下記式(14)で表されるアミン化合物とを反応させて、下記式(9’)で表される化合物を得る工程を含む、請求項1に記載の環状イミド化合物の製造方法。
【化7】


式(X1)中、X1~X4は、各々独立に、ハロゲン原子、又は-CO-O-R101を表す。R101は、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基、又は電子求引性基を有していてもよいフェニル基を表す。但し、X1とX4のうち、一方は、ハロゲン原子を表し、他方は、-CO-O-R101を表す。また、X2とX3のうち、一方は、ハロゲン原子を表し、他方は、-CO-O-R101を表す。R81~R86は、各々独立に、水素原子、又は置換基を表す。
式(X2)中、R101は、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基、又は電子求引性基を有していてもよいフェニル基を表す。
式(11A)中、X5~X8は、各々独立に、-CO-O-R101を表す。R101は、各々独立に、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基、又は電子求引性基を有していてもよいフェニル基を表す。但し、X5中のR101と、X8中のR101とは異なり、一方は、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基を表し、他方は、電子求引性基を有していてもよいフェニル基を表す。また、X6中のR101とX7中のR101とは異なり、一方は、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基を表し、他方は、電子求引性基を有していてもよいフェニル基を表す。R81~R86は、各々、式(X1)中のR81~R86と同義である。
101で表される前記フェニル基が有していてもよい前記電子求引性基は、ハロゲン原子、アシル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルキルオキシ基、アミノカルボニル基、アルカンスルホニル基、アリールスルホニル基、シアノ基、ニトロ基、又はホルミル基を表す。
式(11B)中、X9及びX10のうち一方は、水素原子を表し、他方は、-CO-O-R101を表す。R101は、式(X1)中のR101と同義である。X6及びX7は、各々、式(11A)中のX6及びX7と同義である。R81~R86は、各々、式(X1)中のR81~R86と同義である。
式(14)中、R51は、置換基を表す。
式(9’)中、R51は、置換基を表す。
【請求項9】
前記式(X1)で表される化合物と前記式(X2)で表される化合物とを反応させる前に、更に、前記式(X2)で表される化合物を精製する工程Y0’を含む、請求項7又は8に記載の環状イミド化合物の製造方法。
【請求項10】
下記式(9)で表される化合物を合成するために使用される組成物であって、
下記式(8)で表される化合物を少なくとも含み、
前記組成物中、下記式(17)で表される化合物及び下記式(18)で表される化合物の合計含有量が、組成物の全固形分に対して、3.0質量%以下である組成物。
【化8】

式(9)中、R31及びR51は、各々独立に、置換基を表す。R81~R86は、各々独立に、水素原子又は置換基を表す。
式(8)中、R11~R14は、各々独立に、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基、又は電子求引性基を有していてもよいフェニル基を表す。但し、R11とR14のうち、一方は、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基を表し、他方は、電子求引性基を有していてもよいフェニル基を表す。また、R12とR13のうち、一方は、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基を表し、他方は、電子求引性基を有していてもよいフェニル基を表す。R81~R86は、各々、式(9)で表されるR81~R86と同義である。式(8)中のR11~R14で表される前記フェニル基が有していてもよい前記電子求引性基は、ハロゲン原子、アシル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルキルオキシ基、アミノカルボニル基、アルカンスルホニル基、アリールスルホニル基、シアノ基、ニトロ基、又はホルミル基を表す。
式(17)中、R12~R14は、各々独立に、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基、又は電子求引性基を有していてもよいフェニル基を表す。但し、R12とR13のうち、一方は、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基を表し、他方は、電子求引性基を有していてもよいフェニル基を表す。R81~R86は、各々、式(9)で表されるR81~R86と同義である。式(17)中のR12~R14で表される前記フェニル基が有していてもよい前記電子求引性基は、ハロゲン原子、アシル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルキルオキシ基、アミノカルボニル基、アルカンスルホニル基、アリールスルホニル基、シアノ基、ニトロ基、又はホルミル基を表す。
式(18)中、R11~R13は、各々独立に、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基、又は電子求引性基を有していてもよいフェニル基を表す。但し、R12とR13のうち、一方は、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基を表し、他方は、電子求引性基を有していてもよいフェニル基を表す。R81~R86は、各々、式(9)で表されるR81~R86と同義である。式(18)中のR11~R13で表される前記フェニル基が有していてもよい前記電子求引性基は、ハロゲン原子、アシル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルキルオキシ基、アミノカルボニル基、アルカンスルホニル基、アリールスルホニル基、シアノ基、ニトロ基、又はホルミル基を表す。
【請求項11】
下記式(4)で表される化合物。
【化9】

式(4)中、A11~A18は、各々独立に、-N=、又は-C(R15)=を表す。R15は、水素原子、又は置換基を表す。但し、A11~A18のうち少なくとも1個は、-N=を表す。R12~R13は、各々独立に、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基、又は電子求引性基を有していてもよいフェニル基を表す。但し、R12とR13のうち、一方は、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基を表し、他方は、電子求引性基を有していてもよいフェニル基を表す。R14は、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基を表す。R31は、置換基を表す。P31は、ベンジル基、ナフチルメチル基、2-メトキシベンジル基、p-メトキシベンジル基、2,4-ジメトキシベンジル基、3,4,5-トリメトキシベンジル基、3,4-ジメトキシベンジル基、2-チエニルメチル基、2-フリルメチル基、ニトロベンゼンスルホニル基、ジニトロベンゼンスルホニル基、tert-ブトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基、9-フルオレニルメトキシカルボニル基、トリメチルシリルエトキシカルボニル基、又は(2-トリメチルシリル)エタンスルホニル基を表す。前記電子求引性基は、ハロゲン原子、アシル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルキルオキシ基、アミノカルボニル基、アルカンスルホニル基、アリールスルホニル基、シアノ基、ニトロ基、又はホルミル基を表す。
【請求項12】
下記式(6)で表される化合物。
【化10】

式(6)中、A11~A18は、各々独立に、-N=、又は-C(R15)=を表す。R15は、水素原子、又は置換基を表す。但し、A11~A18のうち少なくとも1個は、-N=を表す。R14は、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基を表す。R31及びR51は、各々独立に、置換基を表す。P31は、ベンジル基、ナフチルメチル基、2-メトキシベンジル基、p-メトキシベンジル基、2,4-ジメトキシベンジル基、3,4,5-トリメトキシベンジル基、3,4-ジメトキシベンジル基、2-チエニルメチル基、2-フリルメチル基、ニトロベンゼンスルホニル基、ジニトロベンゼンスルホニル基、tert-ブトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基、9-フルオレニルメトキシカルボニル基、トリメチルシリルエトキシカルボニル基、又は(2-トリメチルシリル)エタンスルホニル基を表す
【請求項13】
下記式(7)で表される化合物。
【化11】

式(7)中、A11~A18は、各々独立に、-N=、又は-C(R15)=を表す。R15は、水素原子、又は置換基を表す。但し、A11~A18のうち少なくとも1個は、-N=を表す。R14は、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基を表す。R31及びR51は、各々独立に、置換基を表す
【請求項14】
下記式(11A’’)で表される化合物。
【化12】

式(11A’’)中、X5~X8は、各々独立に、-CO-O-R101を表す。R101は、各々独立に、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基、又は電子求引性基を有していてもよいフェニル基を表す。
但し、X5中のR101と、X8中のR101とは異なり、一方は、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基を表し、他方は、電子求引性基を有していてもよいフェニル基を表す。また、X6中のR101とX7中のR101とは異なり、一方は、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基を表し、他方は、電子求引性基を有していてもよいフェニル基を表す。また、R101のアルキル基が炭素数1のアルキル基の場合、R101のフェニル基は、無置換又は1個若しくは2個の電子求引性基で置換されたフェニル基を示す。
83~R86は、各々独立に、水素原子又は置換基を示す。
前記電子求引性基は、ハロゲン原子、アシル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルキルオキシ基、アミノカルボニル基、アルカンスルホニル基、アリールスルホニル基、シアノ基、ニトロ基、又はホルミル基を表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状イミド化合物の製造方法、組成物、及び化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
軽量化、低コスト化、及び柔軟化が可能であることから、液晶ディスプレイ、及び有機EL(Electric Luminescence)ディスプレイに用いられるFET(電界効果トランジスタ)、RFID(radio frequency identifier:RFタグ)、及びメモリを含む論理回路を用いる装置等に、有機半導体膜(有機半導体層)を有する有機薄膜トランジスタ(有機TFT:Thin Film Transistor)を用いることが検討されている。
このような有機半導体膜を形成するための有機半導体化合物として、特許文献1には、アザペリレン骨格を含む環状イミド化合物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-6745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、特許文献1に記載されたアザペリレン骨格を含む環状イミド化合物の製造方法について検討したところ、収率及び純度について更に改善の余地があることを知見した。
【0005】
そこで、本発明は、収率及び純度に優れる環状イミド化合物の製造方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、収率及び純度に優れる環状イミド化合物の製造方法に使用できる組成物を提供することも課題とする。
また、本発明は、収率及び純度に優れる環状イミド化合物の製造方法に使用できる中間体化合物を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、所定の製造方法によれば上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0007】
〔1〕後述する式(1)で表される化合物と少なくとも1種のアミン化合物とを反応させて、後述する式(2)で表される化合物を得る、環状イミド化合物の製造方法。
〔2〕上記式(1)で表される化合物と、後述する式(3)で表される第一のアミン化合物とを反応させて、後述する式(4)で表される化合物を得る工程Y1と、
上記式(4)で表される化合物と、後述する式(5)で表される第二のアミン化合物とを反応させて、後述する式(6)で表される化合物を得る工程Y2と、
上記式(6)で表される化合物から保護基であるP31を除去して、後述する式(7)で表される化合物を得る工程Y3と、
上記式(7)で表される化合物から上記式(2)で表される化合物を得る工程Y4と、を含む、〔1〕に記載の環状イミド化合物の製造方法。
〔3〕上記式(1)で表される化合物が後述する式(8)で表される化合物を表し、上記式(2)で表される化合物が後述する式(9)で表される化合物を表す、〔1〕又は〔2〕に記載の環状イミド化合物の製造方法。
〔4〕上記式(8)で表される化合物が後述する式(10)で表される化合物を表す、〔3〕に記載の環状イミド化合物の製造方法。
〔5〕上記式(10)で表される化合物が後述する式(10’)で表される化合物を表す、〔4〕に記載の環状イミド化合物の製造方法。
〔6〕X111~X116が、塩素原子を表す、〔5〕に記載の環状イミド化合物の製造方法。
〔7〕後述する式(X1)で表される化合物と後述する式(X2)で表される化合物とを反応させて、後述する式(11A)で表される化合物及び後述する式(11B)で表される化合物を含む組成物を得た後、上記組成物に対してカラム精製することなく、上記組成物と、後述する式(12)で表される第一のアミン化合物とを反応させて、後述する式(13)で表される化合物を得る工程Y1’と、
上記式(13)で表される化合物と、後述する式(14)で表される第二のアミン化合物とを反応させて、後述する式(15)で表される化合物を得る工程Y2’と、
上記式(15)で表される化合物から保護基であるP31を除去して、後述する式(16)で表される化合物を得る工程Y3’と、
上記式(16)で表される化合物から上記式(9)で表される化合物を得る工程Y4’と、を含む、〔3〕に記載の環状イミド化合物の製造方法。
〔8〕後述する式(X1)で表される化合物と後述する式(X2)で表される化合物とを反応させて、後述する式(11A)で表される化合物及び後述する式(11B)で表される化合物を含む組成物を得た後、上記組成物に対してカラム精製することなく、上記組成物と、後述する式(14)で表されるアミン化合物とを反応させて、後述する式(9’)で表される化合物を得る工程を含む、〔1〕に記載の環状イミドの製造方法。
〔9〕上記式(X1)で表される化合物と上記式(X2)で表される化合物とを反応させる前に、更に、上記式(X2)で表される化合物を精製する工程Y0’を含む、〔7〕又は〔8〕に記載の環状イミド化合物の製造方法。
〔10〕後述する式(9)で表される化合物を合成するために使用される組成物であって、
後述する式(8)で表される化合物を少なくとも含み、
上記組成物中、後述する式(17)で表される化合物及び後述する式(18)で表される化合物の合計含有量が、組成物の全固形分に対して、3.0質量%以下である組成物。
〔11〕後述する式(4)で表される化合物。
〔12〕後述する式(6)で表される化合物。
〔13〕後述する式(7)で表される化合物。
〔14〕後述する式(11A’)で表される化合物。
〔15〕後述する式(11A’’)で表される化合物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、収率及び純度に優れる環状イミド化合物の製造方法を提供できる。
また、本発明によれば、収率及び純度に優れる環状イミド化合物の製造方法に使用できる組成物を提供できる。
また、本発明によれば、収率及び純度に優れる環状イミド化合物の製造方法に使用できる中間体化合物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】有機薄膜トランジスタの一例であるボトムゲート-ボトムコンタクト型の有機薄膜トランジスタの構造を示す断面模式図である。
図2】有機薄膜トランジスタの他の例であるボトムゲート-トップコンタクト型の有機薄膜トランジスタの構造を示す断面模式図である。
図3】有機薄膜トランジスタの有機半導体膜を形成する方法の一例を示す概略図である。
図4】有機薄膜トランジスタの有機半導体膜を形成する方法の他の例を示す概略図である。
図5】有機薄膜トランジスタの有機半導体膜を形成する方法の他の例を示す概略図である。
図6】有機薄膜トランジスタの有機半導体膜を形成する方法に用いられる基板及び部材の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の環状イミド化合物の製造方法、組成物、及び化合物について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に制限されるものではない。
【0011】
本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
本明細書において、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル又はメタクリロイルを意図する。
【0013】
本明細書において、化合物の表示については、化合物そのものの他、その塩、そのイオンを含む
【0014】
本明細書おいて、特定の符号で表示された置換基等が複数あるとき、又は複数の置換基等を同時に規定するときには、特段の断りがない限り、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよい。このことは、置換基等の数の規定についても同様である。また、複数の置換基等が近接(特に隣接)するとき、特段の断りがない限り、それらが互いに連結して環を形成してもよい。
【0015】
本明細書において、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
【0016】
本発明において、基が非環状骨格及び環状骨格を形成しうる場合、特段の断りがない限り、この基は、非環状骨格の基と環状骨格の基を含む。
例えば、脂肪族炭化水素基、アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基は、特に断りの無い限り、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれの構造を有する基も含む。
より具体的な例としては、アルキル基は、直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基、及び環状(シクロ)アルキル基を含む。
基が環状骨格を形成しうる場合、環状骨格を形成する基の原子数の下限は、この基について具体的に記載した原子数の下限にかかわらず、3以上であり、5以上が好ましい。上記シクロアルキル基は、ビシクロアルキル基又はトリシクロアルキル基等を含む。
【0017】
[環状イミド化合物の製造方法]
本発明の環状イミド化合物の製造方法(以下「本発明の製造方法」ともいう。)は、後述する式(1)で表される化合物と少なくとも1種のアミン化合物とを反応させて、後述する式(2)で表される化合物を得る製造方法である。
【0018】
本発明者らは、一般式(2)で表される化合物に代表されるようなアザペリレン骨格を含む環状イミド化合物の製造方法について検討したところ、従来技術の製造方法において収率及び純度が所望の水準を満たさない要因が、酸無水物中間体を経由して目的物である環状イミド化合物を形成している点にあることを知見した。具体的には、アザペリレン骨格を含む酸無水物は、溶媒への溶解性が著しく低いため取扱い性や品質管理に劣り、この結果として、アザペリレン骨格を含む酸無水物中間体を環状イミド構造へ改変して目的物である環状イミド化合物を合成する際に、収率及び純度が低くなると考えられた。
これに対して、今般、本発明者らは、酸無水物中間体を経ずに環状イミド化合物が得られる新規な製造方法を見い出した。本発明の製造方法によれば、一般式(2)で表される化合物に代表されるようなアザペリレン骨格を含む環状イミド化合物を高収率及び高純度で製造できる。以下において、本発明の製造方法について詳述する。
【0019】
本発明の製造方法は、下記式(1)で表される化合物と少なくとも1種のアミン化合物とを反応させて、下記式(2)で表される化合物を得る工程を含む。
まず、原料である式(1)で表される化合物、目的物である式(2)で表される化合物、及びアミン化合物について、各々説明する。
〔式(1)で表される化合物〕
【0020】
【化1】
【0021】
式(1)中、A11~A18は、各々独立に、-N=、又は-C(R15)=を表す。
但し、A11~A18のうち少なくとも1個は、-N=を表す。なかでも、A11~A18のうち1~4個が-N=を表すことが好ましく、1~3個が-N=を表すことがより好ましく、1個又は2個が-N=を表すことが更に好ましく、2個が-N=を表すことが特に好ましい。
なお、A11~A18として採りうる-N=は、その窒素原子が置換基を有していてもよい。例えば、N-オキシド基(N→O基)、及び対アニオンを有する塩等が挙げられる。
【0022】
15は、水素原子、又は置換基を表す。
15で表される置換基としては特に制限されず、例えば、下記置換基群Zから選択される基が挙げられる。
【0023】
<置換基群Z>
置換基群Zは、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シリル基、アルコキシ基、アミノ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、カルバモイル基、カルバモイルオキシ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、アリールアゾ基、ヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、メルカプト基、スルホ基、カルボキシ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ボロン酸基(-B(OH))、ホスファト基(-OPO(OH))、ホスホノ基(-PO(OH))、及びスルファト基(-OSOH)を含む。
上記の置換基群Zから選択される基は、更に置換基を有してもよい。
【0024】
置換基群Zに含まれるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子、又は塩素原子が好ましい。
【0025】
置換基群Zに含まれるアルキル基は、特に制限されないが、炭素数1(3)~30のアルキル基が好ましく、炭素数1(3)~20のアルキル基がより好ましい。なお、括弧内の数字はシクロアルキル基の場合の炭素数を表す。
置換基群Zに含まれる置換基を有してもよいアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、2-メチルプロピル基、ブチル基、アミル基、ペンチル基、1-メチルペンチル基、2,2-ジメチルプロピル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、3,7-ジメチルオクチル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、2,6-ジメチルオクチル基、イコシル基、2-デシルテトラデシル基、2-ヘキシルドデシル基、2-エチルオクチル基、2-デシルテトラデシル基、2-ブチルデシル基、1-オクチルノニル基、2-エチルオクチル基、2-オクチルデシル基、2-オクチルドデシル基、7-ヘキシルペンタデシル基、2-オクチルテトラデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ベンジル基、2-シクロヘキシルエチル基、p-クロロベンジル基、2-フェニルエチル基、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル基、C11-、C13-、3-アミノプロピル基、4-アミノブチル基、5-エトキシペンチル基、(メタ)アクリロイルオキシプロピル基、(メタ)アクリロイルオキシペンチル基、4-ヒドロキシブチル基、4-スルホブチル基、10-ホスホノデシル基、2-ヒドロキシエトキシメチル基、2-イミダゾリルエトキシメチル基、4-(N,N-ジメチルアミノ)ブチル基、及び5-ノルボルネンメチル基が挙げられる。
【0026】
置換基群Zに含まれるアルケニル基は、特に制限されないが、炭素数2~20のアルケニル基が好ましく、炭素数2~12のアルケニル基がより好ましく、炭素数2~8のアルケニル基が更に好ましい。
置換基群Zに含まれる置換基を有してもよいアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、2-ブテニル基、1-ペンテニル基、4-ペンテニル基、2-(2-チアゾリル)ビニル基、2-(5-チアゾリル)ビニル基、スチリル基、及び2-(2-チエニル)ビニル基が挙げられる。
【0027】
置換基群Zに含まれるアルキニル基は、特に制限されないが、炭素数2~20のアルキニル基が好ましく、炭素数2~12のアルキニル基がより好ましく、炭素数2~8のアルキニル基が更に好ましい。
置換基群Zに含まれる置換基を有してもよいアルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロパルギル基、1-ペンチニル基、トリメチルシリルエチニル基、トリエチルシリルエチニル基、トリ-i-プロピルシリルエチニル基、p-プロピルフェニルエチニル基、2-チエニルエチニル基、2-チアゾリルエチニル基、5-チアゾリルエチニル基、及びフェニルエチニル基が挙げられる。
【0028】
置換基群Zに含まれるアリール基は、特に制限されないが、炭素数6~20のアリール基が好ましく、炭素数6~12のアリール基がより好ましい。
置換基群Zに含まれる置換基を有してもよいアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、p-(t-ブチル)フェニル基、4-メチル-2,6-ジプロピルフェニル基、4-フルオロフェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、p-ペンチルフェニル基、3,4-ジペンチルフェニル基、p-ヘプトキシフェニル基、及び3,4-ジヘプトキシフェニル基が挙げられる。
【0029】
置換基群Zに含まれる複素環基としては、例えば、環を構成する原子数が3個以上であり、環を構成する原子として、少なくとも1個以上のヘテロ原子と、1~30個の炭素原子とを含む複素環基が挙げられる。また、複素環基は、芳香族複素環基(ヘテロアリール基)、及び脂肪族複素環基を含む。
環を構成するヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子が挙げられ、その数は、特に制限されないが、例えば、1~2個である。環を構成する炭素原子の数は、3~20個が好ましく、5~12個がより好ましい。
複素環基としては、5員環、若しくは6員環、又はこれらの縮合環の基が好ましい。
置換基群Zに含まれる複素環基としては、例えば、チエニル基、チアゾリル基、イミダゾリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、キノリル基、フラニル基、セレノフェニル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、2-ヘキシルフラニル基、及びピラニル基が挙げられる。
【0030】
置換基群Zに含まれる置換基を有してもよいシリル基は、特に制限されないが、置換基としてアルキル基及びアリール基から選択される基を有し、炭素数が3~40(より好ましくは3~30、更に好ましくは3~24)であるシリル基が好ましい。
置換基群Zに含まれる置換基を有してもよいシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリイソプロピルシリル基、及びジメチルフェニルシリル基が挙げられる。
【0031】
置換基群Zに含まれるアルコキシ基としては、特に制限されないが、炭素数1~20のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~12のアルコキシ基がより好ましく、炭素数1~8のアルコキシ基が更に好ましい。
置換基群Zに含まれるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、及びブトキシ基が挙げられる。
【0032】
置換基群Zに含まれる置換基を有してもよいアミノ基としては、特に制限されないが、アミノ基、又は置換基としてアルキル基及びアリール基から選択される基を有し、炭素数が1~20(より好ましくは1~10、更に好ましくは1~6)であるアミノ基が好ましい。
置換基群Zに含まれる置換基を有してもよいアミノ基としては、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、及びアニリノ基が挙げられる。
【0033】
置換基群Zに含まれるアリールオキシ基は、特に制限されないが、炭素数6~20のアリールオキシ基が好ましく、炭素数6~16のアリールオキシ基がより好ましく、炭素数6~12のアリールオキシ基が更に好ましい。
置換基群Zに含まれるアリールオキシ基としては、例えば、フェニルオキシ基、及び2-ナフチルオキシが挙げられる。
【0034】
置換基群Zに含まれるアシル基は、特に制限されないが、炭素数1~20のアシル基が好ましく、炭素数1~16のアシル基がより好ましく、炭素数1~12のアシル基が更に好ましい。
置換基群Zに含まれる置換基を有してもよいアシル基としては、例えば、アセチル基、ヘキサノイル基、ベンゾイル基、ホルミル基、及びピバロイル基が挙げられる。
【0035】
置換基群Zに含まれるアルコキシカルボニル基は、特に制限されないが、炭素数2~20のアルコキシカルボニル基が好ましく、炭素数2~16のアルコキシカルボニル基がより好ましく、炭素数2~12のアルコキシカルボニル基が更に好ましく、メトキシカルボニル基、又はエトキシカルボニル基が特に好ましい。
置換基群Zに含まれるアリールオキシカルボニル基は、特に制限されないが、炭素数7~20のアリールオキシカルボニル基が好ましく、炭素数7~16のアリールオキシカルボニル基がより好ましく、炭素数7~10のアリールオキシカルボニル基が更に好ましく、フェニルオキシカルボニル基が特に好ましい。
【0036】
置換基群Zに含まれるアシルオキシ基は、特に制限されないが、炭素数2~20のアシルオキシ基が好ましく、炭素数2~16のアシルオキシ基がより好ましく、炭素数2~10のアシルオキシ基が更に好ましい。
置換基群Zに含まれる置換基を有してもよいアシルオキシ基としては、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基、及び(メタ)アクリロイルオキシ基が挙げられる。
【0037】
置換基群Zに含まれるアシルアミノ基は、特に制限されないが、炭素数2~20のアシルアミノ基が好ましく、炭素数2~16のアシルアミノ基がより好ましく、炭素数2~10のアシルアミノ基が更に好ましい。
置換基群Zに含まれるアシルアミノ基としては、例えば、アセチルアミノ基、及びベンゾイルアミノ基が挙げられる。
【0038】
置換基群Zに含まれるアミノカルボニルアミノ基は、特に制限されないが、炭素数2~20のアミノカルボニルアミノ基が好ましく、炭素数2~16のアミノカルボニルアミノ基がより好ましく、炭素数2~12のアミノカルボニルアミノ基が更に好ましく、ウレイド基が特に好ましい。
【0039】
置換基群Zに含まれるアルコキシカルボニルアミノ基は、特に制限されないが、炭素数2~20のアルコキシカルボニルアミノ基が好ましく、炭素数2~16のアルコキシカルボニルアミノ基がより好ましく、炭素数2~12のアルコキシカルボニルアミノ基が更に好ましく、メトキシカルボニルアミノ基、tert-ブトキシカルボニルアミノ基、アリルオキシカルボニルアミノ基、2,2,2-トクロロエトキシカルボニルアミノ基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニルアミノ基、2-トリメチルシルエチルオキシカルボニルアミノ基、又はベンジルオキシカルボニルアミノ基が特に好ましい。
置換基群Zに含まれるアリールオキシカルボニルアミノ基は、特に制限されないが、炭素数7~20のアリールオキシカルボニルアミノ基が好ましく、炭素数7~16のアリールオキシカルボニルアミノ基がより好ましく、炭素数7~12のアリールオキシカルボニルアミノ基が更に好ましく、フェニルオキシカルボニルアミノ基が特に好ましい。
【0040】
置換基群Zに含まれるアルキルチオ基は、特に制限されないが、炭素数1~20のアルキルチオ基が好ましく、炭素数1~16のアルキルチオ基がより好ましく、炭素数1~12のアルキルチオ基が更に好ましい。置換基群Zに含まれるアルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、及びオクチルチオ基が挙げられる。
置換基群Zに含まれるアリールチオ基は、特に制限されないが、炭素数6~20のアリールチオ基が好ましく、炭素数6~16のアリールチオ基がより好ましく、炭素数6~12のアリールチオ基が更に好ましく、フェニルチオ基が特に好ましい。
【0041】
上述の、置換基群Zから選択される基は、更に置換基を有していてもよい。このような置換基としては、置換基群Zから選択される基が挙げられる。
更に置換基を有する基(組み合わせてなる基ともいう)において、更に有していてもよい置換基数は、特に制限されないが、例えば、1~6個が好ましく、1~3個がより好ましい。
組み合わせてなる基としては、特に制限されず、例えば、上記の、置換基群Zから選択される基として好ましい上記各基を、置換基群Zから選択される他の基で置換した基が挙げられる。具体的には、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基(ヘテロアリール基)、アルコキシ基(ヒドロキシアルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、ヘテロアリールアルコキシ基を含む)、アミノ基、アシルオキシ基、ヒドロキシ基、スルファト基、シリル基、及びホスホノ基からなる群より選択される基を置換基として有するアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基、ハロゲン化アリール基若しくは(フッ化)アルキルアリール基を置換基として有するアルキニル基等が挙げられる。更には、式(1)で表される化合物から水素原子を1つ除去した基も挙げられる。
組み合わせてなる基としては、上記のなかでも、ハロゲン原子を置換基として有するアルキル基(ハロゲン化アルキル基)、アリール基を置換基として有するアルキル基、複素環基を置換基として有するアルキル基、アリール基を置換基として有するアルケニル基、複素環基を置換基として有するアルケニル基、アリール基を置換基として有するアルキニル基、複素環基を置換基として有するアルキニル基、アルコキシ基を置換基として有するアルキル基、又はシリル基を置換基として有するアルキニル基が好ましい。
【0042】
また、R15で表される置換基は、環を形成していてもよい。この置換基が環を形成する態様としては、置換基同士が互いに結合して環を形成する態様と、複数の置換基が1つの原子を共有することにより、環を形成する態様とを含む。
置換基同士が互いに結合して環を形成する態様としては、例えば、2つのビニル基が互いに結合して、R15が結合する炭素原子とともに、ベンゼン環を形成する態様が挙げられる。また、複数の置換基が1つの原子を共有することにより、環を形成する態様としては、例えば、2つの置換基が一体となって硫黄原子(-S-基)となる態様が挙げられる。
【0043】
15としては、なかでも、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アルケニル基(無置換のアルケニル基、シリル基、アリール基、又は複素環基を置換基として有するアルケニル基等)、アルキニル基(無置換のアルキニル基、シリル基、アリール基、又は複素環基を置換基として有するアルキニル基等)、アリール基、複素環基、ニトロ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、又はカルボキシ基が好ましく、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルケニル基(無置換のアルケニル基、シリル基、アリール基、又は複素環基を置換基として有するアルケニル基等)、アルキニル基(無置換のアルキニル基、シリル基、アリール基、又は複素環基を置換基として有するアルキニル基等)、アリール基、又は、複素環基がより好ましい。
【0044】
11~R14は、各々独立に、脂肪族炭化水素基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。但し、R11とR14のうち、一方は、脂肪族炭化水素基を表し、他方は、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。また、R12とR13のうち、一方は、脂肪族炭化水素基を表し、他方は、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。R12とR14が脂肪族炭化水素基を表し、R11とR13がアリール基、又はヘテロアリール基を表すことが好ましい。
【0045】
11~R14で表される脂肪族炭化水素基としては、特に制限されず、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。また、飽和であっても不飽和であってもよい。酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子等のヘテロ原子が含まれていてもよく、ハロゲン化されていてもよい。
11~R14で表される脂肪族炭化水素基としては、なかでも、炭素数1~20(炭素数1~10が好ましい。)の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基、炭素数2~20(炭素数2~10が好ましい。)の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルケニル基、又は炭素数2~20(炭素数2~10が好ましい。)の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキニル基が好ましい。
11~R14で表される脂肪族炭化水素基が炭素数2以上である場合、式(1)で表される化合物の溶解性がより向上して、反応溶媒量を削減できる及び反応を低温できる等の合成上の利点がある。また、収率がより優れる場合がある。R11~R14で表される脂肪族炭化水素基としては、なかでも、炭素数2~20(炭素数2~10が好ましい。)の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基がより好ましい。
【0046】
11~R14で表されるアリール基中の炭素数は特に制限されないが、6~20が好ましく、6~12がより好ましい。アリール基は、単環構造であっても、2つ以上の環が縮環した縮環構造(縮合環構造)であってもよい。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、又はアントリル基が好ましく、フェニル基、又はナフチル基がより好ましく、フェニル基が更に好ましい。
【0047】
11~R14で表されるヘテロアリール基中の炭素数は特に制限されないが、3~30が好ましく、3~18がより好ましい。
ヘテロアリール基は、炭素原子及び水素原子以外にヘテロ原子を有する。ヘテロ原子としては、例えば、硫黄原子、酸素原子、窒素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ケイ素原子、及びホウ素原子が挙げられ、硫黄原子、酸素原子、又は窒素原子が好ましい。
ヘテロアリール基が有するヘテロ原子の数は特に制限されないが、1~10が好ましく、1~4がより好ましく、1~2が更に好ましい。
ヘテロアリール基の環員数は特に制限されないが、3~8が好ましく、5~7がより好ましく、5~6が更に好ましい。なお、ヘテロアリール基は、単環構造であっても、2個以上の環が縮環した縮環構造であってもよい。縮環構造の場合、ヘテロ原子を有さない芳香族炭化水素環(例えば、ベンゼン環)が含まれていてもよい。
ヘテロアリール基としては、例えば、フリル基、チエニル基、チアゾリル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、又はカルバゾリル基が好ましい。
【0048】
11~R14で表される脂肪族炭化水素基、アリール基、及びヘテロアリール基は、更に置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、上述した置換基群Zから選択される基が挙げられる。具体的には、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、チオアルキル基、アシル基、-C(=O)NR1X2X、-NR3XC(=O)R4X、-S(=O)2NR5X6X、-NR7XS(=O)28X、シリル基、ニトロ基、シアノ基、又はハロゲン原子が好ましい。
なお、R1X~R8Xは、水素原子、脂肪族炭化水素基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
1X~R8Xで表される脂肪族炭化水素基、アリール基、及びヘテロアリールとしては、R11~R14で表される脂肪族炭化水素基、アリール基、及びヘテロアリールと各々同義であり、好適形態も同じである。
【0049】
式(1)で表される化合物は、なかでも、下記式(8)で表される化合物が好ましく、式(10)で表される化合物がより好ましく、式(10’)で表される化合物が更に好ましい。
【0050】
【化2】
【0051】
式(8)中、R11~R14は、各々、式(1)中のR11~R14と同義であり、好適形態も同じである。式(8)中、R12及びR14が脂肪族炭化水素基を表し、R11及びR13がアリール基又はヘテロアリール基を表すことが好ましい。R81~R86は、各々独立に、水素原子又は置換基を表す。なお、R81~R86で表される置換基としては、上述したR15で表される置換基と同義であり、好適態様も同じである。
【0052】
【化3】
【0053】
式(10)中、X101及びX102は、各々独立に、電子求引性基を表す。
ここで「電子求引性基」とは、ハメット置換基定数が正の基を表す。電子求引性基としては、具体的には、Chem. Rev. 1BBl. 97, 165-195を参考にできる。
101及びX102で表される電子求引性基としては、ハロゲン原子、アシル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルキルオキシ基、アミノカルボニル基、アルカンスルホニル基、アリールスルホニル基、シアノ基、ニトロ基、及びホルミル基等が挙げられ、なかでも、ハロゲン原子が好ましく、フッ素原子、又は塩素原子がより好ましく、塩素原子が更に好ましい。
n1及びn2は、各々独立に、1~5の整数を表す。n1及びn2としては、より収率が向上する点で、3以下が好ましい。
12及びR14は、各々独立に、脂肪族炭化水素基を表す。R12及びR14で表される脂肪族炭化水素基としては、式(1)中のR12及びR14で表される脂肪族炭化水素基と同義であり、好適形態も同じである。R81~R86は、各々、式(8)中のR81~R86と同義である。
【0054】
【化4】
【0055】
式(10’)中、X111~X116は、各々独立に、ハロゲン原子を表す。X111~X116で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。R81~R86は、各々、式(8)中のR81~R86と同義であり、好適態様も同じである。
12及びR14は、各々独立に、脂肪族炭化水素基を表す。R12及びR14で表される脂肪族炭化水素基としては、式(1)中のR12及びR14で表される脂肪族炭化水素基と同義であり、好適形態も同じである。
【0056】
以下において、式(1)で表される化合物を例示するが、式(1)で表される化合物はこれに制限されない。
なお、下記表中の(1)-1~(1)-52は、以下に示す各基本骨格中に示されるR11、R12、R13、及びR14の組み合わせを表す。つまり、下記基本骨格を例に挙げて説明すると、下記基本骨格中のR11、R12、R13、及びR14の組み合わせは、下記表中の(1)-1~(1)-52のいずれであってもよいことを意図する。
【0057】
【化5】
【0058】
また、以下に示す各基本骨格中のR81及びR82は、各々独立に、水素原子、シアノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、トリクロロメチル基、トリクロロメトキシ基、フェニル基、2-チアゾリル基、5-チアゾリル基、2-チエニル基、3-チエニル基、スチリル基、2-チアゾリルビニル基、5-チアゾリルビニル基、2-チエニルビニル基、3-チエニルビニル基、フェニルエチニル基、2-チアゾリルエチニル基、5-チアゾリルエチニル基、2-チエニルエチニル基、3-チエニルエチニル基、トリメチルシリルエチニル基、トリエチルシリルエチニル基、トリイソプロピルエチニル基、及び1-オクチニル基からなる群より選ばれる置換基を表す。但し、R81及びR82のうち少なくとも一方は水素以外の置換基である。
【0059】
なお、下記表中、「Me」はメチル基を表し、「Et」はエチル基を表す。
【0060】
【化6】
【0061】
【化7】
【0062】
【化8】
【0063】
【表1】
【0064】
〔式(2)で表される化合物〕
【化9】
【0065】
式(2)中、A11~A18は、式(1)中のA11~A18と同義であり、好適形態も同じである。
【0066】
31及びR51は、各々独立に、置換基を表す。
31及びR51で表される置換基としては、特に制限されないが、上記置換基群Zから選択される基が好ましい。具体的には、アルキル基(炭素数1~30が好ましく、炭素数4~20がより好ましい。直鎖状、鎖状、及び環状のいずれであってもよい。)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基(炭素数6~20が好ましい。)、又は複素環基(環構成原子として少なくとも1個以上の上記ヘテロ原子を含む。好ましくは5員環、6員環又はこれらの縮合環の基である。好ましくは環構成炭素原子数が3~20である。)が好ましく、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基がより好ましく、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基が更に好ましく、アルキル基が特に好ましい。
なお、上述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、及びヘテロアリール基は更に置換基を有していてもよい。更に置換基を有する場合、上記置換基としては置換基群Zから選択される基が挙げられる。
【0067】
なかでも、R31及びR51で表される置換基としては、無置換のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基を置換基として有するアルキル基、複素環(ヘテロアリール基が好ましい。)を置換基として有するアルキル基、無置換のアリール基、アルキル基で置換されたアリール基、無置換の複素環基、アルキル基で置換された複素環基、シリル基で置換されたアルキル基、又は、1つ以上のアルコキシ基で置換されたアルキル基が好ましい。なお、アリール基を置換基として有するアルキル基、及び複素環を置換基として有するアルキル基中において、アリール基及び複素環は、更に置換基を有していてもよい。更に置換基を有する場合、上記置換基としては置換基群Zから選択される基が挙げられ、ハロゲン原子が好ましい。
【0068】
式(2)で表される化合物は、なかでも、下記式(9)で表される化合物が好ましい。
【0069】
【化10】
【0070】
式(9)中、R31及びR51は、各々、式(2)中のR31及びR51と同義であり、好適形態も同じである。R81~R86は、各々、式(8)中のR81~R86と同義であり、好適形態も同じである。
【0071】
以下において、式(2)で表される化合物の一例を示すが、式(2)で表される化合物はこれに制限されない。
【0072】
【化11】
【0073】
【化12】
【0074】
【化13】
【0075】
【化14】
【0076】
【化15】
【0077】
【化16】
【0078】
【化17】
【0079】
【化18】
【0080】
【化19】
【0081】
【化20】
【0082】
【化21】
【0083】
【化22】
【0084】
【化23】
【0085】
【化24】
【0086】
【化25】
【0087】
【化26】
【0088】
【化27】
【0089】
【化28】
【0090】
【化29】
【0091】
【化30】
【0092】
〔アミン化合物〕
本発明の製造方法において、上述した式(1)で表される化合物と反応させるアミン化合物としては特に制限されないが、第一級アミン、又は保護された第一級アミンが好ましい。
第一級アミンとしては、特に制限されないが、例えば、下記式(Y1)で表されるアミン化合物が挙げられる。
式(Y1) RY1-NH2
【0093】
式(Y1)中、RY1は、置換基を表す。
Y1で表される置換基としては、特に制限されないが、上記置換基群Zから選択される基が好ましい。具体的には、アルキル基(炭素数1~20が好ましい。有機半導体化合物として使用される場合のキャリア移動度の観点からは、炭素数の下限値としては、4以上がより好ましい。炭素数の上限値としては、15以下がより好ましく、8以下が更に好ましい。直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基(炭素数6~20が好ましい。)、又は複素環基(環構成原子として少なくとも1個以上の上記ヘテロ原子を含む。好ましくは5員環、6員環又はこれらの縮合環の基である。好ましくは環構成炭素原子数が3~20である。)が好ましく、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基がより好ましく、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基が更に好ましく、アルキル基が特に好ましい。
なお、上述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、及びヘテロアリール基は更に置換基を有していてもよい。更に置換基を有する場合、上記置換基としては置換基群Zから選択される基が挙げられる。
【0094】
なかでも、RY1で表される置換基としては、無置換のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基を置換基として有するアルキル基、複素環(ヘテロアリール基が好ましい。)を置換基として有するアルキル基、無置換のアリール基、アルキル基で置換されたアリール基、無置換の複素環基、アルキル基で置換された複素環基、シリル基で置換されたアルキル基、又は、1つ以上のアルコキシ基で置換されたアルキル基がより好ましい。なお、アリール基を置換基として有するアルキル基、及び複素環を置換基として有するアルキル基中において、アリール基及び複素環は、更に置換基を有していてもよい。更に置換基を有する場合、上記置換基としては置換基群Zから選択される基が挙げられ、ハロゲン原子が好ましい。
【0095】
上記式(Y1)で表されるアミン化合物としては、具体的には、メチルアミン、エチルアミン、2-トリメチルシルエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、シクロプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、tert-ブチルアミン、sec-ブチルアミン、シクロプチルアミン、3-メチルブチルアミン、ペンチルアミン、ネオペンチルアミン、2-メチルブチルアミン、シクロペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、1-メチルペンチルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、1-メチルオクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ベンジルアミン、フェニルエチルアミン、フェニルプロピルアミン、フェニルブチルアミン、シクロヘキシルエチルアミン、2-チエニルエチルアミン、2-チアゾリルエチルアミン、5-チアゾリルエチルアミン、2-(トリメチルシリル)エチルアミン、ブトキシプロピルアミン、メトキシブチルアミン、メチルペンチルアミン、アニリン、p-オクチルアニリン、p-オクチルフェニルエチルアミン、p-エチルフェニルエチルアミン、p-ヘキシルフェニルエチルアミン、p-デシルフェニルエチルアミン、3,7-ジメチルオクチルアミン、パーフルオロフェニルエチルアミン、2-チエニルエチルアミン、2-チアゾリルエチルアミン、5-チアゾリルエチルアミン、2-ヘキシルデシルアミン、2-オクチルドデシルアミン、1H,1H-ヘプタフルオロブチルアミン、1H,1H-ウンデカフルオロブチルアミン、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチルアミン、p-フルオロフェニルアミン、2-(4-ピリジル)エチルアミン、2,4-ジメトキシメチルアミン、2-(3-ピリジル)エチルアミン、トルイジン、ブトキシプロピルアミン、及び3,6,9,12-テトラオキサデカンアミン等が挙げられる。
【0096】
保護された第一級アミンとは、上記式(Y1)中の窒素原子に結合した水素原子の一つが保護基で保護された構造の化合物を意図する。保護された第一級アミンとしては、具体的には、後述する第二の実施形態の製造方法において用いられ得る式(3)で表される第一のアミン化合物が該当する。
保護された第一級アミンについては、後段の第二の実施形態の製造方法において説明する。
【0097】
〔環状イミド化合物の製造方法〕
本発明の製造方法は、上述した式(1)で表される化合物と少なくとも1種のアミン化合物とを反応させて、上述した式(2)で表される化合物を得る工程を含む。
以下においては、式(2)中のR31及びR51で表される置換基が同一である場合を第一の実施形態として説明し、式(2)中のR31及びR51で表される置換基が同一でない場合を第二の実施形態として説明する。
【0098】
<第一の実施形態の製造方法>
第一の実施形態の製造方法は、下記工程Xを含む。
工程X:式(1)で表される化合物と少なくとも1種のアミン化合物とを含む組成物を加熱して、式(2)で表される化合物を得る工程。
なお、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、及びアミン化合物については既述のとおりである。
【0099】
上記工程Xにより、式(1)で表される化合物中の隣接し合う2つのエステル基とアミン化合物とのアミド化/イミド化反応(具体的には、-COOR11と-COOR14とアミン化合物とのアミド化/イミド化反応、及び-COOR12と-COOR13とアミン化合物とのアミド化/イミド化反応)が各々生じ、式(2)で表される環状イミド化合物が形成される。
【0100】
上記アミン化合物としては、第一級アミン及び保護された第一級アミンのいずれであってもよいが、目的物である式(2)で表される環状イミド化合物を得るための脱保護工程が不要という観点から、第一級アミンが好ましい。
上記アミン化合物の使用量は、式(1)で表される化合物1モル当量に対して、2.0~10モル当量が好ましく、2.0~6.0モル当量がより好ましい。
【0101】
上記組成物は、溶媒を含んでいてもよい。
溶媒は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
溶媒としては、特に制限されないが、例えば、炭化水素溶媒、エーテル溶媒、アミド溶媒、アルコール溶媒、ニトリル系溶媒、及びスルホキシド溶媒等が挙げられる。
炭化水素溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、ジエチルベンゼン、フルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、メシチレン、アミルベンゼン、デカリン、1-メチルナフタレン、1-エチルナフタレン、1-クロロナフタレン、1-フルオロナフタレン、1,6-ジメチルナフタレン、ニトロベンゼン及びテトラリン等が挙げられる。
エーテル溶媒としては、アニソール、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、及びテトラヒドロフラン等が挙げられる。
アミド溶媒としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、及びN,N-ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
アルコール溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アミルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、及びグリセリン等が挙げられる。
ニトリル系溶媒としては、アセトニトリル及びベンゾニトリル等が挙げられる。
スルホキシド溶媒としては、ジメチルスルホキシド、及びスルホラン等が挙げられる。
【0102】
上記溶媒としては、なかでも、沸点が70℃以上である溶媒が好ましく、沸点が90℃以上である溶媒がより好ましい。
沸点が90℃以上である溶媒としては、例えば、ヘプタン、オクタン、デカン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、ジエチルベンゼン、フルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、メシチレン、アミルベンゼン、デカリン、1-メチルナフタレン、1-エチルナフタレン、1-クロロナフタレン、1-フルオロナフタレン、1,6-ジメチルナフタレン、ニトロベンゼン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、ベンゾニトリル、テトラリン、アニソール、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジオキサン、ジエトキシエタン、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルアセトアミド、1-プロパノール、1-ブタノール、イソブチルアルコール、2-ブタノール、アミルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジメチルスルホキシド、及びスルホラン等が挙げられる。
【0103】
上記組成物が溶媒を含む場合、溶媒の含有量は、組成物の全質量に対して、75.0~99.9質量%が好ましく、80.0~98.0質量%がより好ましい。
【0104】
反応温度としては、特に制限されないが、20~250℃が好ましく、50~200℃がより好ましい。
反応時間としては、使用する溶媒、及び反応温度を含む反応条件によって異なるが、通常1~24時間であり、1~20時間が好ましい。
加熱反応の終了後、必要に応じて、得られた式(2)で表される化合物を、洗浄、抽出、乾燥、ろ過、濃縮、再結晶、再沈殿、晶析、遠心分離、吸着、カラム精製、及び/又は昇華精製を含む分離精製手段により精製してもよく、昇華精製を含む分離精製手段により精製することが好ましい。
【0105】
上述した通り、式(1)で表される化合物は式(8)で表される化合物であることが好ましく、式(2)で表される化合物は式(9)で表される化合物であることが好ましい。
以下においては、式(8)で表される化合物(後段の式(11A)が式(8)に該当する)から式(9)で表される化合物(後段の式(9’)は、式(9)においてR31とR51とが同一の置換基を表す化合物に該当する)を製造する製造方法の好適形態(以下、「第一の実施形態-1」ともいう。)について述べる。
【0106】
(式(9)で表される化合物の製造方法の好適形態(第一の実施形態-1))
第一の実施形態-1の製造方法は、下記工程X’を含む。
工程X’:下記式(X1)で表される化合物と下記式(X2)で表される化合物とを反応させて、式(11A)で表される化合物及び下記式(11B)で表される化合物を含む組成物を得た後、上記組成物に対してカラム精製することなく、上記組成物と、下記式(14)で表される第一のアミン化合物とを反応させて、下記式(9’)で表される化合物を得る工程。
なお、下記式(9’)で表される化合物は、上述した式(9)で表される化合物に包含される化合物である。具体的には、下記式(9’)で表される化合物は、上述した式(9)で表される化合物中のR31で表される置換基とR51で表される置換基とが同一である形態に該当する。また、上記式(11A)で表される化合物は、上述した式(8)で表される化合物に該当する。
【0107】
上記第一の実施形態-1の製造方法は、更に下記工程Y0’を含んでいることが好ましい。
工程Y0’:上記式(X1)で表される化合物と上記式(X2)で表される化合物とを反応させる前に、更に、上記式(X2)で表される化合物を精製する工程
【0108】
工程X’における式(X1)、式(X2)、式(11A)、及び式(11B)で表される各化合物は、後述する工程Y1’における式(X1)、式(X2)、式(11A)、及び式(11B)で表される各化合物と各々同義であり、好適態様も同じである。
なお、式(X1)、式(X2)、式(11A)、及び式(11B)で表される各化合物については、後段の第二の実施形態の製造方法において説明する。
【0109】
工程X’における式(14)で表される第一のアミン化合物は、後述する工程Y1’における式(14)で表される第二のアミン化合物と同義であり、好適態様も同じである。
なお、式(14)で表される第一のアミン化合物については、後段の第二の実施形態の製造方法において説明する。
【0110】
工程X’において、式(X1)で表される化合物と式(X2)で表される化合物とを反応させて、式(11A)で表される化合物及び式(11B)で表される化合物を含む組成物を得る手順については、後述する工程Y1’と同様であり、好適態様も同じである。
なお、上記手順については、後段の第二の実施形態の製造方法において説明する。
【0111】
工程X’において、式(11B)で表される化合物は、式(X1)で表される化合物と式(X2)で表される化合物とを反応させて、式(11A)で表される化合物を得る合成反応における副生成物である。式(11B)で表される化合物が副生成物として生成するのは、式(X2)で表される化合物(式(X2)で表される化合物としては、例えば、ギ酸2,4,6-トリクロロフェニル等)中に不純物として含まれ得るギ酸が原因であると推測される。工程X’において、式(X1)で表される化合物と式(X2)で表される化合物とを反応させる前に、上記式(X2)で表される化合物を精製する工程(工程Y0’)を実施することで、式(11B)で表される化合物の副生成を抑制できる。
なお、第一の実施形態-1の製造方法が有していてもよい工程Y0’は、後述する第二の実施形態-1の製造方法が有していてもよい工程Y0’と同義であり、好適態様も同じである。
なお、上記工程Y0’の手順については、後段の第二の実施形態の製造方法において説明する。
【0112】
工程X’では、式(X1)で表される化合物と式(X2)で表される化合物とのカップリング反応により得られた組成物に対してカラム精製することなく、上記組成物と式(14)で表される第一のアミン化合物とを反応させる工程を実施する。目的物である式(9’)の純度がより向上する点で、上記組成物は、式(11A)で表される化合物を少なくとも含み、且つ、式(11B)で表される化合物の含有量が、組成物の全固形分に対して、3.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましい。工程Y0’を実施すれば、工程X’の上記組成物において、式(11B)で表される化合物の含有量が、組成物の全固形分に対して、3.0質量%以下に調整され得る。
また、式(11B)で表される化合物の含有量の下限値としては、組成物の全固形分に対して、0質量%以上の場合が多く、0.01質量%以上の場合が多い。
なお、「固形分」とは、組成物中の溶媒を除いた成分を意図する。組成物中の溶媒以外の成分の性状が液体状であっても、固形分とみなす。
【0113】
なお、上記組成物に対しては、必要に応じて、カップリング反応の終了後にカラム精製以外の分離精製手段(洗浄、抽出、乾燥、ろ過、濃縮、再結晶、再沈殿、晶析、吸着、及び遠心分離等)により精製を実施してもよい。
【0114】
上記組成物と式(14)で表される第一のアミン化合物とを反応させる工程としては、具体的には、上記組成物に式(14)で表される第一のアミン化合物を加えて加熱することにより、式(9’)で表される化合物を得る工程であることが好ましい。
具体的な手順は、上述した第一の実施形態の製造方法の工程Xと同様であり、好適態様も同じである。
【0115】
<第二の実施形態>
第二の実施形態の製造方法は、下記工程Y1~下記工程Y4を含む。
工程Y1:上述した式(1)で表される化合物と、下記式(3)で表される第一のアミン化合物とを反応させて、下記式(4)で表される化合物を得る工程
工程Y2:上記式(4)で表される化合物と、下記式(5)で表される第二のアミン化合物とを反応させて、下記式(6)で表される化合物を得る工程
工程Y3:上記式(6)で表される化合物から保護基であるP31を除去して、下記式(7)で表される化合物を得る工程
工程Y4:上記式(7)で表される化合物から上記式(2)で表される化合物を得る工程。
【0116】
第二の実施形態の製造方法によって、R31及びR51で表される置換基が各々互いに異なる化合物(2)を純度よく製造できる。
以下においては、まず式(3)~式(7)で表される各化合物について説明した後、各工程Y1~Y4の手順について説明する。
(式(3)~式(7)で表される化合物)
【0117】
【化31】
【0118】
式(3)中、R31は、置換基を表す。P31は、保護基を表す。
式(3)中、R31で表される置換基としては、上述した式(2)中のR31及びR51で表される置換基と同義である。
式(3)で表される第一のアミン化合物のR31で表される置換基としては、上述した(Y1)で表されるアミン化合物のRY1で表される置換基と同様のものが例示でき、好適態様も同じである。
【0119】
31で表される保護基としては、特に制限されず、例えば、(ヘテロ)アリールメチル基((ヘテロ)アリールメチル基とは、アリールメチル基及びヘテロアリールメチル基を表し、具体的には、ベンジル基、ナフチルメチル基、2-メトキシベンジル基、p-メトキシベンジル基、2,4-ジメトキシベンジル基、3,4,5-トリメトキシベンジル基、3,4-ジメトキシベンジル基、2-チエニルメチル基、及び2-フリルメチル基等が挙げられる。)、ニトロベンゼンスルホニル基、ジニトロベンゼンスルホニル基、tert-ブトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基、9-フルオレニルメトキシカルボニル基、トリメチルシリルエトキシカルボニル基、及び(2-トリメチルシリル)エタンスルホニル基等が挙げられ、(ヘテロ)アリールメチル基が好ましい。
【0120】
なお、式(3)で表される第一のアミン化合物は、上述した保護された第一級アミンに該当する。
【0121】
式(4)中、A11~A18、及びR12~R14は、各々、式(1)中のA11~A18、及びR12~R14と同義であり、好適形態も同じである。また、R31及びP31は、各々、式(3)中のR31及びP31と同義であり、好適形態も同じである。
【0122】
式(5)中、R51で表される置換基としては、上述した式(2)中のR51で表される置換基と同義であり、好適形態も同じである。
なお、式(5)で表される第二のアミン化合物は、上述した式(Y1)で表される第一級アミンと同義であり、好適態様も同じである。
【0123】
式(6)中、A11~A18、及びR14は、各々、式(1)中のA11~A18、及びR14と同義であり、好適形態も同じである。また、R31及びP31は、各々、式(3)中のR31及びP31と同義であり、好適形態も同じである。また、R51は、式(5)中のR51と同義であり、好適形態も同じである。
【0124】
式(7)中、A11~A18、及びR14は、各々、式(1)中のA11~A18、及びR14と同義であり、好適形態も同じである。また、R31は、式(3)中のR31と同義であり、好適形態も同じである。また、R51は、式(5)中のR51と同義であり、好適形態も同じである。
【0125】
以下において、式(4)で表される化合物、式(6)で表される化合物、及び式(7)で表される化合物を各々例示する。
【0126】
≪式(4)≫
以下において、式(4)で表される化合物の一例を示すが、式(4)で表される化合物はこれに制限されない。
なお、下記表中の(4)-1~(4)-71は、以下に示す各基本骨格中に示されるR11、R12、R13、R14、R31、及びP31の各組み合わせを表す。下記表中、「Me」はメチル基を表し、「Et」はエチル基を表す。
また、下記基本骨格に示されるR81及びR82は、各々独立に、水素原子、シアノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、トリクロロメチル基、トリクロロメトキシ基、2-チアゾリル基、5-チアゾリル基、2-チエニル基、3-チエニル基、スチリル基、2-チアゾリルビニル基、5-チアゾリルビニル基、2-チエニルビニル基、3-チエニルビニル基、フェニルエチニル基、2-チアゾリルエチニル基、5-チアゾリルエチニル基、2-チエニルエチニル基、3-チエニルエチニル基、トリメチルシリルエチニル基、トリエチルシリルエチニル基、トリイソプロピルエチニル基、及び1-オクチニル基からなる群より選ばれる置換基を表す。但し、R81及びR82のうち少なくとも一方は水素以外の置換基である。
【0127】
【化32】
【0128】
【化33】
【0129】
【化34】
【0130】
【表2】
【0131】
≪式(6)≫
以下において、式(6)で表される化合物の一例を示すが、式(6)で表される化合物はこれに制限されない。
なお、下記表中の(6)-1~(6)-59は、以下に示す各基本骨格中に示されるR11、R14、R31、R51、及びP31の各組み合わせを表す。下記表中、「Me」はメチル基を表し、「Et」はエチル基を表す。
また、下記基本骨格に示されるR81及びR82は、各々独立に、水素原子、シアノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、トリクロロメチル基、トリクロロメトキシ基、2-チアゾリル基、5-チアゾリル基、2-チエニル基、3-チエニル基、スチリル基、2-チアゾリルビニル基、5-チアゾリルビニル基、2-チエニルビニル基、3-チエニルビニル基、フェニルエチニル基、2-チアゾリルエチニル基、5-チアゾリルエチニル基、2-チエニルエチニル基、3-チエニルエチニル基、トリメチルシリルエチニル基、トリエチルシリルエチニル基、トリイソプロピルエチニル基、及び1-オクチニル基からなる群より選ばれる置換基を表す。但し、R81及びR82のうち少なくとも一方は水素以外の置換基である。
【0132】
【化35】
【0133】
【化36】
【0134】
【化37】
【0135】
【表3】
【0136】
≪式(7)≫
以下において、式(7)で表される化合物の一例を示すが、式(7)で表される化合物はこれに制限されない。なお、下記表中の(7)-1~(7)-54は、以下に示す各基本骨格中に示されるR11、R14、R31、及びR51の各組み合わせを表す。下記表中、「Me」はメチル基を表し、「Et」はエチル基を表す。
また、下記基本骨格に示されるR81及びR82は、各々独立に、水素原子、シアノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、トリクロロメチル基、トリクロロメトキシ基、2-チアゾリル基、5-チアゾリル基、2-チエニル基、3-チエニル基、スチリル基、2-チアゾリルビニル基、5-チアゾリルビニル基、2-チエニルビニル基、3-チエニルビニル基、フェニルエチニル基、2-チアゾリルエチニル基、5-チアゾリルエチニル基、2-チエニルエチニル基、3-チエニルエチニル基、トリメチルシリルエチニル基、トリエチルシリルエチニル基、トリイソプロピルエチニル基、及び1-オクチニル基からなる群より選ばれる置換基を表す。但し、R81及びR82のうち少なくとも一方は水素以外の置換基である。
【0137】
【化38】
【0138】
【化39】
【0139】
【化40】
【0140】
【表4】
【0141】
(工程Y1)
工程Y1は、式(1)で表される化合物と式(3)で表される第一のアミン化合物とを反応させて、式(4)で表される化合物を得る工程である。工程Y1は、具体的には、式(1)で表される化合物と式(3)で表される第一のアミン化合物とを含む組成物を加熱して、式(4)で表される化合物を得る工程であることが好ましい。
【0142】
上記工程Y1により、式(1)で表される化合物中の-COOR11、-COOR12、-COOR13、及び/又は-COOR14と第一のアミン化合物とのアミド化反応が生じ得る。必要に応じて、得られた粗生成物を、洗浄、抽出、乾燥、ろ過、濃縮、再結晶、再沈殿、晶析、遠心分離、吸着、及び/又はカラム精製を含む分離精製手段により精製することで、式(4)で表される化合物が得られる。
【0143】
式(3)で表される第一のアミン化合物の使用量は、式(1)で表される化合物1モル当量に対して、1.0~10モル当量が好ましく、1.0~5.0モル当量がより好ましい。
【0144】
上記組成物は、溶媒を含んでいてもよい。
溶媒は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
溶媒としては、特に制限されないが、例えば、炭化水素溶媒、エーテル溶媒、アミド溶媒、アルコール溶媒、ニトリル系溶媒、及びスルホキシド溶媒等が挙げられる。
炭化水素溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、ジエチルベンゼン、フルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、クロロベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、メシチレン、アミルベンゼン、デカリン、1-メチルナフタレン、1-エチルナフタレン、1-クロロナフタレン、1-フルオロナフタレン、1,6-ジメチルナフタレン、ベンゾニトリル、ニトロベンゼン、及びテトラリン等が挙げられる。
エーテル溶媒としては、アニソール、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、及びテトラヒドロフラン等が挙げられる。
アミド溶媒としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、及びN,N-ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
アルコール溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アミルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、及びグリセリン等が挙げられる。
ニトリル系溶媒としては、アセトニトリル、プロピロニトリル、及びベンゾニトリル等が挙げられる。
スルホキシド溶媒としては、ジメチルスルホキシド、及びスルホラン等が挙げられる。
【0145】
上記溶媒としては、なかでも、沸点が70℃以上である溶媒が好ましく、沸点が90℃以上である溶媒がより好ましい。
沸点が90℃以上である溶媒としては、例えば、ヘプタン、オクタン、デカン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、ジエチルベンゼン、フルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、メシチレン、アミルベンゼン、デカリン、1-メチルナフタレン、1-エチルナフタレン、1-クロロナフタレン、1-フルオロナフタレン、1,6-ジメチルナフタレン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、ニトロベンゼン、ベンゾニトリル、テトラリン、アニソール、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジオキサン、ジエトキシエタン、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルアセトアミド、1-プロパノール、1-ブタノール、イソブチルアルコール、2-ブタノール、アミルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジメチルスルホキシド、及びスルホラン等が挙げられる。
【0146】
上記組成物が溶媒を含む場合、溶媒の含有量は、組成物の全質量に対して、75.0~99.9質量%が好ましく、80.0~98.0質量%がより好ましい。
【0147】
反応温度としては、特に制限されないが、20~250℃が好ましく、50~200℃がより好ましい。
反応時間としては、使用する溶媒、及び反応温度を含む反応条件によって異なるが、通常1~24時間であり、1~20時間が好ましい。
【0148】
(工程Y2)
工程Y2は、式(4)で表される化合物と式(5)で表される第二のアミン化合物とを反応させて、式(6)で表される化合物を得る工程である。工程Y2は、具体的には、式(4)で表される化合物と式(5)で表される第二のアミン化合物とを含む組成物を加熱して、式(6)で表される化合物を得る工程であることが好ましい。
【0149】
工程Y2により、式(4)で表される化合物中の隣接し合う2つのエステル基(-COOR12と-COOR13)と第二のアミン化合物とのアミド化/イミド化反応が生じ、イミド結合が形成される。
【0150】
式(5)で表される第二のアミン化合物の使用量は、式(4)で表される化合物1モル当量に対して、1.0~10.0モル当量が好ましく、1.0~5.0モル当量がより好ましい。
【0151】
上記組成物は、溶媒を含んでいてもよい。
溶媒は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
溶媒としては特に制限されず、例えば、工程Y1で挙げた溶媒が挙げられ、好適形態も同じである。
【0152】
上記組成物が溶媒を含む場合、溶媒の含有量は、組成物の全質量に対して、75.0~99.9質量%が好ましく、80.0~98.0質量%がより好ましい。
【0153】
反応温度としては、特に制限されないが、20~250℃が好ましく、50~200℃がより好ましい。
反応時間としては、使用する溶媒、及び反応温度を含む反応条件によって異なるが、通常1~24時間であり、1~20時間が好ましい。
反応終了後、必要に応じて、得られた式(6)で表される化合物を、洗浄、抽出、乾燥、ろ過、濃縮、再結晶、再沈殿、晶析、遠心分離、カラム精製、吸着、及び/又は昇華精製を含む分離精製手段により精製してもよい。
【0154】
(工程Y3)
工程Y3は、式(6)で表される化合物から保護基であるP31を除去(脱保護)して、式(7)で表される化合物を得る工程である。
脱保護方法としては、酸性又は塩基性条件下で脱保護試薬を用いて実施する方法、酸化剤を用いる方法、ルイス酸を用いて実施する方法、求核剤を用いて実施する方法、金属触媒存在下で還元的脱保護反応(加水素分解)を実施する方法、及び酸性条件下にて亜鉛を用いる方法が挙げられる。
酸性条件における脱保護試薬としては、塩酸、臭化水素/酢酸、硫酸、ギ酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、及びトリフルオロ酢酸等の酸類等が挙げられる。なかでも、P31で表される保護基がメトキシベンジル基等の(ヘテロ)アリールメチル基類である場合、硫酸、メタンスルホン酸、又はp-トルエンスルホン酸等のスルホン酸類が好ましい。
塩基性条件における脱保護試薬としては、無機塩基、及び有機塩基のいずれでもよい。上記無機塩基としては、例えば、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物、並びに、炭酸塩及び炭酸水素塩等が挙げられる。上記有機塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピぺリジン、N-メチルモルホリン、ジメチルアミノピリジン、DBU(1,8-ジアザビシクロ〔5.4.0〕-7-ウンデセン)、及びDBN(1,5-ジアザビシクロ〔4.3.0〕ノン-5-エン)等のアミン類、ピリジン、並びにイミダゾール等が挙げられる。
酸化剤としては、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノンが挙げられる。
ルイス酸としては、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル、ヨードトリメチルシラン、三塩化ホウ素、及び塩化スズ(IV)等が挙げられる。
求核剤としては、チオール化合物(ベンゼンチオール等)、フッ化セシウム、及び、フッ化テトラアルキルアンモニウム等のフッ化物イオンが挙げられる。
脱保護試薬として用いる金属触媒としては、パラジウム触媒(例えば、パラジウム炭素、水酸化パラジウム炭素、及び酸化パラジウム等)、白金触媒(例えば、白金炭素、及び酸化白金等)、ロジウム触媒(例えば、ロジウム炭素)、及びルテニウム触媒(例えば、ルテニウム炭素)等が挙げられる。
【0155】
脱保護反応は、溶媒存在下で行われることが好ましい。
溶媒は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
溶媒としては特に制限されず、例えば、工程Y1で挙げた溶媒が挙げられる。また、エステル系溶媒(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、及び酢酸イソブチル等)やケトン系溶媒(アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、及びアセトフェノン等)を使用してもよい。酸及び塩基を用いる場合は、水単独又は水と溶媒を混合して用いてもよい。
なお、工程Y3と、後述する工程Y4とを同時に実施してもよい。具体的には、例えば、脱保護試薬、式(6)で表される化合物、及び溶媒を含む組成物を加熱する方法等が挙げられる。
【0156】
(工程Y4)
工程Y4は、式(7)で表される化合物から式(2)で表される化合物を得る工程である。工程Y4は、具体的には、式(7)で表される化合物を含む組成物を加熱して、式(2)で表される化合物を得る工程であることが好ましい。
【0157】
上記工程Y4により、式(7)で表される化合物中の-COOR14とアミド基とのイミド化反応が生じ、式(2)で表される化合物が得られる。
【0158】
上記組成物は、溶媒を含んでいてもよい。
溶媒は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
溶媒としては特に制限されず、例えば、工程Y1で挙げた溶媒が挙げられ、好適形態も同じである。
【0159】
上記組成物が溶媒を含む場合、溶媒の含有量は、組成物の全質量に対して、75.0~99.9質量%が好ましく、80.0~98.0質量%がより好ましい。
【0160】
反応温度としては、特に制限されないが、20~250℃が好ましく、50~200℃がより好ましい。
反応時間としては、使用する溶媒、及び反応温度を含む反応条件によって異なるが、通常1~24時間であり、1~20時間が好ましい。
反応終了後、必要に応じて、得られた式(7)で表される化合物を、洗浄、抽出、乾燥、ろ過、濃縮、再結晶、再沈殿、晶析、遠心分離、カラム精製、吸着、及び/又は昇華精製を含む分離精製手段により精製してもよく、昇華精製を含む分離精製手段により精製することが好ましい。
【0161】
上述した通り、式(1)で表される化合物は式(8)で表される化合物であることが好ましく、式(2)で表される化合物は式(9)で表される化合物であることが好ましい。
以下においては、式(8)で表される化合物(後段の式(11A)が式(8)に該当する)から式(9)で表される化合物を製造する製造方法の好適形態(以下、「第二の実施形態-1」ともいう。)について述べる。
【0162】
(式(9)で表される化合物の製造方法の好適形態(第二の実施形態-1))
第二の実施形態-1の製造方法は、下記工程Y1’~下記工程Y4’を含む。
工程Y1’:下記式(X1)で表される化合物と下記式(X2)で表される化合物とを反応させて、式(11A)で表される化合物及び下記式(11B)で表される化合物を含む組成物を得た後、上記組成物に対してカラム精製することなく、上記組成物と、下記式(12)で表される第一のアミン化合物とを反応させて、下記式(13)で表される化合物を得る工程
工程Y2’:上記式(13)で表される化合物と、下記式(14)で表される第二のアミン化合物とを反応させて、下記式(15)で表される化合物を得る工程
工程Y3’:上記式(15)で表される化合物から保護基であるP31を除去して、下記式(16)で表される化合物を得る工程
工程Y4’:上記式(16)で表される化合物から上記式(9)で表される化合物を得る工程。
【0163】
上記第二の実施形態-1の製造方法は、更に下記工程Y0’を含んでいることが好ましい。
工程Y0’:上記式(X1)で表される化合物と上記式(X2)で表される化合物とを反応させる前に、更に、上記式(X2)で表される化合物を精製する工程
【0164】
以下においては、まず式(X1)、式(X2)、式(11A)、式(11B)、式(12)~式(16)で表される各化合物について説明した後、各工程Y0’~Y4’の手順について説明する。
(式(X1)、式(X2)、式(11A)、式(11B)、式(12)~式(16)で表される化合物)
【0165】
【化41】
【0166】
【化42】
【0167】
式(X1)中、X1~X4は、各々、ハロゲン原子、又は-CO-O-R101を表す。R101は、脂肪族炭化水素基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。但し、X1とX4のうち、一方は、ハロゲン原子を表し、他方は、-CO-O-R101を表す。また、X2とX3のうち、一方は、ハロゲン原子を表し、他方は、-CO-O-R101を表す。
更に、原料の製造の容易性の観点から、式(X1)で表される化合物のX2とX4が-CO-O-R101を表し、X1とX3がハロゲン原子を表すことが好ましい。
【0168】
式(X1)中に存在する2個のR101は、いずれも脂肪族炭化水素基を表すか、又はいずれもアリール基若しくはヘテロアリール基を表すことが好ましく、いずれも脂肪族炭化水素基を表すことがより好ましい。
式(X1)中のR101で表される脂肪族炭化水素基、アリール基、及びヘテロアリール基としては、式(1)中のR11~R14で表される、脂肪族炭化水素基、アリール基、又はヘテロアリール基と同義であり、好適形態も同じである。
81~R86は、各々、式(8)中のR81~R86と同義であり、好適態様も同じである。
【0169】
式(X2)中、R101は、脂肪族炭化水素基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。式(X2)中のR101で表される脂肪族炭化水素基、アリール基、及びヘテロアリール基としては、上述した式(1)中のR11~R14で表される脂肪族炭化水素基、アリール基、又はヘテロアリール基と同義であり、好適形態も同じである。
式(X2)中のR101は、アリール基又はヘテロアリール基を表すことがより好ましい。
式(X2)で表される化合物としては、ギ酸アリール又はギ酸ヘテロアリールが好ましく、電子求引性基で置換されたギ酸アリールがより好ましい。
【0170】
式(11A)中、X5~X8は、各々独立に、-CO-O-R101を表す。但し、X5中のR101と、X8中のR101とは異なる。すなわち、X5中のR101とX8中のR101のうちの一方は、脂肪族炭化水素基を表し、他方は、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。また、X6中のR101とX7中のR101とは異なる。すなわち、X6中のR101とX7中のR101のうちの一方は、脂肪族炭化水素基を表し、他方は、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
5~X8中のR101で表される脂肪族炭化水素基、アリール基、及びヘテロアリール基としては、上述した式(1)中のR11~R14で表される脂肪族炭化水素基、アリール基、又はヘテロアリール基と同義であり、好適形態も同じである。
81~R86は、各々、式(8)中のR81~R86と同義であり、好適態様も同じである。
式(11A)中、なかでも、X6及びX8中のR101が脂肪族炭化水素基を表し、X5及びX7中のR101がアリール基又はヘテロアリール基を表すことが好ましい。
81~R86は、各々、式(8)中のR81~R86と同義であり、好適態様も同じである。
【0171】
式(11B)中、X9及びX10のうち一方は、水素原子を表し、他方は、-CO-O-R101を表す。R101は、式(X1)中のR101と同義であり、好適形態も同じである。X6及びX7は、各々、式(11A)中のX6及びX7と同義であり、好適形態も同じである。
81~R86は、各々、式(8)中のR81~R86と同義であり、好適態様も同じである。
式(11B)としては、X9が水素原子を表し、X10が-CO-O-R101を表すことが好ましい。また、X10中のR101とX6中のR101は、いずれも脂肪族炭化水素基を表すか、又はいずれもアリール基若しくはヘテロアリール基を表すことが好ましく、いずれも脂肪族炭化水素基を表すことがより好ましい。
【0172】
式(12)は、上述した式(3)と同義であり、好適態様も同じである。なお、式(12)中、R31は、置換基を表す。P31は、保護基を表す。
【0173】
式(13)中、X11及びX12は、一方は、-CO-O-R101を表し、他方は、-CO-N(R31)(P31)を表す。R101は、式(X1)中のR101と同義であり、好適形態も同じである。R31及びP31は、各々、式(12)中のR31及びP31と同義である。X6及びX7は、各々、式(11A)中のX6及びX7と同義であり、好適態様も同じである。R81~R86は、各々、式(8)中のR81~R86と同義であり、好適態様も同じである。
式(13)としては、X11が-CO-N(R31)(P31)を表し、X12が-CO-O-R101を表すことが好ましい。
【0174】
式(14)は、上述した式(5)と同義であり、好適態様も同じである。なお、式(13)中、R51は、置換基を表す。
【0175】
式(15)中、X11及びX12は、各々、式(13)中のX11及びX12と同義である。R51は、式(14)中のR51と同義である。R81~R86は、各々、式(8)中のR81~R86と同義であり、好適態様も同じである。
【0176】
式(16)中、X13及びX14は、一方は、-CO-O-R101を表し、他方は、-CO-N(R31)(H)を表す。R51は、式(14)中のR51と同義である。R101は、式(X1)中のR101と同義であり、好適形態も同じである。R81~R86は、各々、式(8)中のR81~R86と同義であり、好適態様も同じである。
式(16)としては、X13が-CO-N(R31)(H)を表し、X14が-CO-O-R101を表すことが好ましい。
【0177】
(工程Y1’)
工程Y1’は、式(X1)で表される化合物と式(X2)で表される化合物とを反応させて、式(11A)で表される化合物及び式(11B)で表される化合物を含む組成物を得た後、上記組成物に対してカラム精製することなく、上記組成物と、式(12)で表される第一のアミン化合物とを反応させて、式(13)で表される化合物を得る工程である。なお、上記式(11A)で表される化合物は、上述した式(8)で表される化合物に該当する。
【0178】
工程Y1’において、式(11B)で表される化合物は、式(X1)で表される化合物と式(X2)で表される化合物とを反応させて、式(11A)で表される化合物を得る合成反応における副生成物である。式(11B)で表される化合物が副生成物として生成するのは、式(X2)で表される化合物(式(X2)で表される化合物としては、例えば、ギ酸2,4,6-トリクロロフェニル等)中に不純物として含まれ得るギ酸が原因であると推測される。工程Y1’において、式(X1)で表される化合物と式(X2)で表される化合物とを反応させる前に、上記式(X2)で表される化合物を精製する工程(工程Y0’)を実施することで、式(11B)で表される化合物の副生成を抑制できる。
工程Y0’の精製方法としては特に制限されないが、洗浄、抽出、乾燥、ろ過、濃縮、再結晶、再沈殿、晶析、遠心分離、カラム精製、吸着、及び/又は昇華精製を含む分離精製手段が挙げられ、なかでも再結晶、再沈殿、晶析が好ましく、再結晶が特に好ましい。
【0179】
式(X1)で表される化合物と式(X2)で表される化合物との反応は、特に制限されず、遷移金属触媒の存在下でのクロスカップリング方法が適用できる。
【0180】
カップリング反応における式(X1)で表される化合物と式(X2)で表される化合物の使用量は、特に制限されず、式(X1)で表される化合物のハロゲン原子1モル当量に対して、式(X2)で表される化合物は、1.0~15.0モル当量であることが好ましく、1.0~10.0モル当量であることがより好ましく、1.0~5.0モル当量であることが更に好ましい。
【0181】
遷移金属触媒としては、特に制限されないが、例えば、パラジウム触媒(パラジウム(0)触媒、又はパラジウム(II)触媒)、ニッケル触媒(ニッケル(0)触媒)、鉄触媒(鉄(III)触媒)、コバルト触媒(コバルト(II)触媒)、及びイリジウム触媒(イリジウム(0)触媒)が挙げられる。なかでも、パラジウム触媒、又はニッケル触媒が好ましく、パラジウム触媒がより好ましい。
パラジウム触媒としては、特に制限されないが、例えば、酢酸パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム錯体、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、及びジクロロビス[ジ-tert-ブチル(4-ジメチルアミノフェニル)ホスフィン]パラジウム(II)が挙げられる。
【0182】
カップリング反応に用いる遷移金属触媒の使用量は、触媒として作用する量であれば特に制限されないが、式(X1)で表される化合物のハロゲン原子1モル当量に対して、0.001~1.0モル当量が好ましく、0.01~0.5モル当量がより好ましい。
【0183】
カップリング反応は、配位子を添加して行ってもよい。配位子としては特に制限されず、例えば、ACCOUNTS OF CHEMICAL RESEARCH 2008, 41, 1461-1473、Angew. Chem. Int. Ed. 2008, 47, 6338 - 6361Angew. Chem. Int. Ed. 2008, 47, 6338 - 6361、有機合成化学協会誌 2001, 59, 607-616、Aldrichimica Acta 2006,39, 17. (b) Schlummer, B.; Scholz, U. Adv. Synth. Catal. 2004, 346, 1599.等に記載の配位子を用いることができる。
カップリング反応は、塩基の存在下で行ってもよい。
塩基としては、有機塩基及び無機塩基が挙げられ、有機塩基が好ましい。有機塩基としては、三級アミン(例えば、トリメチルアミン、ジメチルイソプロピルアミン、N,N,N’,N’-Tetramethyldiaminomethane、N,N,N’,N’-Tetramethylethylenediamine、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、及び1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等)、及びピリジン類(例えば、ピリジン、2,6-ルチジン、キノリン、及びイソキノリン等)等が挙げられる。無機塩基としては、水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、及び酢酸塩が挙げられる。より具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、及び酢酸ナトリウムが挙げられる。
【0184】
塩基は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
塩基の使用量は、特に制限されないが、式(X2)で表される化合物1モル当量に対して、1.0~15モル当量が好ましく、1.0~10モル当量がより好ましく、1.1~2.0モル当量が更に好ましい。
【0185】
カップリング反応は、溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
溶媒は特に制限されず、遷移金属触媒反応に用いられる溶媒を使用することができ、例えば、炭化水素溶媒、エーテル溶媒、アミド溶媒、エステル溶媒、ニトリル溶媒、ケトン溶媒、及びスルホキシド溶媒等が挙げられる。
炭化水素溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、ジエチルベンゼン、フルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,1,2-トリクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、メシチレン、アミルベンゼン、デカリン、1-メチルナフタレン、1-エチルナフタレン、1-クロロナフタレン、1-フルオロナフタレン、1,6-ジメチルナフタレン、ニトロベンゼン、及びベンゾニトリル及びテトラリン等が挙げられる。
エーテル溶媒としては、アニソール、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン及びテトラヒドロフラン等が挙げられる。
アミド溶媒としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン及びN,N-ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
エステル溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、及び酢酸イソブチル等が挙げられる。
ニトリル溶媒としては、アセトニトリル、プロピロニトリル、及びベンゾニトリル等が挙げられる。
ケトン溶媒としては、アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、及びアセトフェノン等が挙げられる。
スルホキシド溶媒としては、ジメチルスルホキシド、及びスルホラン等が挙げられる。
【0186】
カップリング反応は、不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、及びアルゴンが挙げられる。
カップリング反応の反応温度は、特に制限されず、0~200℃が好ましく、50~150℃がより好ましい。
カップリング反応の反応時間は、使用する溶媒、及び反応温度を含む反応条件によって異なるが、通常1~24時間であり、3~20時間が好ましい。
【0187】
工程Y1’では、式(X1)で表される化合物と式(X2)で表される化合物とのカップリング反応により得られた組成物に対してカラム精製することなく、上記組成物と式(12)で表される第一のアミン化合物とを反応させる工程を実施する。目的物である式(9)の純度がより向上する点で、上記組成物は、式(11A)で表される化合物を少なくとも含み、且つ、式(11B)で表される化合物の含有量が、組成物の全固形分に対して、3.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましい。工程Y0’を実施すれば、工程工程Y1’において組成物中、式(11B)で表される化合物の含有量が、組成物の全固形分に対して、3.0質量%以下に調整され得る。
式(11B)で表される化合物の含有量の下限値としては、組成物の全固形分に対して、0質量%以上の場合が多く、0.01質量%以上の場合が多い。
なお、「固形分」とは、組成物中の溶媒を除いた成分を意図する。組成物中の溶媒以外の成分の性状が液体状であっても、固形分とみなす。
【0188】
なお、上記組成物に対しては、必要に応じて、カップリング反応の終了後にカラム精製以外の分離精製手段(洗浄、抽出、乾燥、ろ過、濃縮、再結晶、再沈殿、晶析、吸着、及び遠心分離等)により精製を実施してもよい。
【0189】
上記組成物と式(12)で表される第一のアミン化合物とを反応させる工程としては、具体的には、上記組成物に式(12)で表される第一のアミン化合物を加えて加熱することにより、式(13)で表される化合物を得る工程であることが好ましい。
具体的な手順は、上述した第二の実施形態の製造方法の工程Y1と同様であり、好適態様も同じである。
【0190】
(工程Y2’)
程Y2’は、上述した第二の実施形態の製造方法の工程Y2と同様であり、好適態様も同じである。
【0191】
(工程Y3’)
程Y3’は、上述した第二の実施形態の製造方法の工程Y3と同様であり、好適態様も同じである。
【0192】
(工程Y4’)
程Y4’は、上述した第二の実施形態の製造方法の工程Y4と同様であり、好適態様も同じである。
【0193】
[組成物]
本発明は、組成物にも関する。
本発明の組成物は、上述した式(9)で表される化合物を合成するために使用される組成物であって、
上述した式(8)で表される化合物を少なくとも含み、
上記組成物中、下記式(17)で表される化合物及び下記式(18)で表される化合物の合計含有量が、組成物の全固形分に対して、3.0質量%以下である。
なお、「固形分」とは、組成物中の溶媒を除いた成分を意図する。組成物中の溶媒以外の成分の性状が液体状であっても、固形分とみなす。
【0194】
【化43】
【0195】
式(17)及び式(18)中、R11~R14は、各々独立に、脂肪族炭化水素基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。但し、R12とR13のうち、一方は、脂肪族炭化水素基を表し、他方は、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
81~R86は、各々、式(8)中のR81~R86と同義であり、好適態様も同じである。
【0196】
上記組成物は、上述した第一の実施形態-1の製造方法において工程X’の式(X1)で表される化合物と式(X2)で表される化合物の反応により得られる組成物、及び、上述した第二の実施形態-1の製造方法において工程Y1’の式(X1)で表される化合物と式(X2)で表される化合物の反応により得られる組成物と同じである。つまり、上記式(8)で表される化合物は、上述した式(11A)で表される化合物に該当する。また、上記式(17)及び上記式(18)で表される化合物は、上述した式(11B)で表される化合物に包含される化合物であり、上記式(17)で表される化合物は、式(11B)で表される化合物においてX9が水素原子を表し、X10が-CO-O-R101を表す形態に該当し、上記式(18)で表される化合物は、式(11B)で表される化合物においてX9が-CO-O-R101を表し、X10が水素原子を表す形態に該当する。
【0197】
式(8)で表される化合物の好適態様は、式(11A)で表される化合物の好適形態と同様である。また、式(17)で表される化合物の好適態様は、式(11B)で表される化合物の好適形態と同様である。
【0198】
また、式(18)中、R11とR13は、いずれも脂肪族炭化水素基を表すか、又はいずれもアリール基若しくはヘテロアリール基を表すことが好ましく、いずれも脂肪族炭化水素基を表すことがより好ましい。
【0199】
また、上記組成物中、式(17)で表される化合物及び式(18)で表される化合物の合計含有量の下限値としては、組成物の全固形分に対して、0質量%以上の場合が多く、0.01質量%以上の場合が多い。
上記組成物中、式(8)で表される化合物の含有量は、組成物全体に対して、94.0質量%以上が好ましく、97.0質量%超がより好ましく、98.0質量%以上が更に好ましい。なお、上記組成物中、式(8)で表される化合物の含有量の上限値としては、特に制限されないが、100質量%以下であり、99.99質量%以下が好ましい。
【0200】
[化合物]
本発明は、新規な化合物にも関する。
本発明の化合物は、上述した式(4)で表される化合物、上述した式(6)で表される化合物、及び上述した式(7)で表される化合物、並びに、以下に示す、式(11A’)で表される化合物及び式(11A’’)で表される化合物であり、いずれの化合物についても、上述した式(2)で表される化合物を得るための中間体化合物として使用できる。
【0201】
〔式(11A’)で表される化合物〕
以下において、式(11A’)で表される化合物について説明する。式(11A’)で表される化合物は、上述した式(11A)で表される化合物に包含される化合物である。すなわち、上述した式(11A)で表される化合物において、R81~R86のうち、少なくとも一つが置換基を表す形態に該当する。なかでも、R81及びR82のうち、少なくとも一方が置換基を表すことが好ましく、R81及びR82の両方が置換基を表すことがより好ましい。
式(11A’)で表される化合物の好適態様は、上述した式(11A)で表される化合物の好適態様と同じである。
【0202】
【化44】
【0203】
以下において、式(11A’)で表される化合物の一例を示すが、式(11A’)で表される化合物はこれに制限されない。
なお、下記表中の(8)-1~(8)-43は、以下に示す各基本骨格中に示されるX5、X6、X7、X8、R81、及びR82の各組み合わせを表す。下記表中、「Me」はメチル基を表し、「Et」はエチル基を表す。
また、下記表中において「ester」及び「CO2」とは、オキシカルボニル基を意図する。即ち、「2,4,6-trichlorophenylester」とは、「2,4,6-trichlorophenyloxycarbonyl」を意図し、「CO2Me」とは、「methoxycarbonyl」を意図する。
【0204】
【化45】
【0205】
【化46】
【0206】
〔式(11A’’)で表される化合物〕
以下において、式(11A’’)で表される化合物について説明する。式(11A’’)で表される化合物は、上述した式(11A)で表される化合物に包含される化合物である。
【0207】
【化47】
【0208】
式(11A’’)中、X5~X8は、各々独立に、-CO-O-R101を表す。R101は、各々独立に、脂肪族炭化水素基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
但し、X5中のR101と、X8中のR101とは異なり、一方は、脂肪族炭化水素基を表し、他方は、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。また、X6中のR101とX7中のR101とは異なり、一方は、脂肪族炭化水素基を表し、他方は、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。また、R101の脂肪族炭化水素基が炭素数1の脂肪族炭化水素基の場合、R101のアリール基は無置換又は2つ以下の置換基で置換されたアリール基を示す。
83~R86は、各々独立に、水素原子又は置換基を示す。
【0209】
101の脂肪族炭化水素基が炭素数2以上である場合、R101の脂肪族炭化水素基が炭素数1である場合と比較して、化合物の溶解性がより優れるため、反応溶媒量を削減できる等の合成上の利点があること、及び収率がより優れる場合があることを確認している。
【0210】
式(11A’’)で表される化合物の好適態様は、上述した式(11A)で表される化合物の好適態様と同じである。
【0211】
以下において、式(11A’’)で表される化合物の一例を示すが、式(11A’’)で表される化合物はこれに制限されない。
なお、下記表中の(9)-1~(9)-38は、以下に示す各基本骨格中に示されるX5、X6、X7、及びX8の各組み合わせを表す。下記表中、「Me」はメチル基を表し、「Et」はエチル基を表す。
また、下記表中において「ester」及び「CO2」とは、オキシカルボニル基を意図する。即ち、「2,4,6-trichlorophenylester」とは、「2,4,6-trichlorophenyloxycarbonyl」を意図し、「CO2Me」とは、「methoxycarbonyl」を意図する。
【0212】
【化48】
【0213】
【化49】
【0214】
[用途]
本発明の製造方法により得られる環状イミド化合物は、後述するように、有機薄膜トランジスタ等の電子デバイスが有する有機半導体膜を形成するための材料として用いられる。
このようなデバイスとしては、電流量又は電圧量を制御する有機薄膜トランジスタ、光エネルギーを電力に変換する有機光電変換素子(例えば、光センサ用途の固体撮像素子、及びエネルギー変換用途の太陽電池)、熱エネルギーを電力に変換する有機熱電変換素子、有機エレクトロルミネッセンス素子、(ガス)センサ、有機整流素子、有機インバータ、並びに情報記録素子が挙げられる。
【0215】
[有機薄膜トランジスタ用組成物]
次に、有機薄膜トランジスタ用組成物について、説明する。
有機薄膜トランジスタ用組成物(本明細書において単に「有機半導体組成物」とも記載する)は、本発明の製造方法により得られる環状イミド化合物(以下、「特定環状イミド化合物」ともいう)を含み、有機薄膜トランジスタの有機半導体膜の形成に用いられる。
有機半導体組成物が含む特定環状イミド化合物は、上述の通りであり、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
有機半導体組成物中の特定環状イミド化合物の含有量は、後述する溶媒を除いた固形分中の含有量で表すことができ、有機半導体組成物中の固形分の総質量に対する特定環状イミド化合物の含有量が、例えば、後述する有機半導体膜の総質量に対する特定環状イミド化合物の含有量の好適な範囲に含まれることが好ましい。
【0216】
〔バインダーポリマー〕
有機半導体組成物は、バインダーポリマーを含んでいてもよい。膜質の高い有機半導体膜が得られる点で、有機半導体組成物はバインダーポリマーを含むことが好ましい。
バインダーポリマーの種類は、特に制限されず、公知のバインダーポリマーを用いることができる。バインダーポリマーとしては、例えば、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリシロキサン、ポリスルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、セルロース、ポリエチレン、及びポリプロピレンを含む絶縁性ポリマー、並びにこれらの共重合体が挙げられる。
これら以外にも、例えば、エチレン-プロピレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、水素化されたニトリルゴム、フッ素ゴム、パーフルオロエラストマー、テトラフルオロエチレンプロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、スチレン-ブタジエンゴム、ポリクロロプレン、ポリネオプレン、ブチルゴム、メチルフェニルシリコーン樹脂、メチルフェニルビニルシリコーン樹脂、メチルビニルシリコーン樹脂、フルオロシリコーン樹脂、アクリルゴム、エチレンアクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、クロロポリエチレン、エピクロロヒドリン共重合体、ポリイソプレン-天然ゴム共重合体、ポリイソプレンゴム、スチレン-イソプレンブロック共重合体、ポリエステルウレタン共重合体、ポリエーテルウレタン共重合体、ポリエーテルエステル熱可塑性エラストマー及びポリブタジエンゴムを含むゴム、並びに熱可塑性エラストマー重合体が挙げられる。
更には、例えば、ポリビニルカルバゾール、及びポリシランを含む光伝導性ポリマー、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、及びポリパラフェニレンビニレンを含む導電性ポリマー、並びにChemistry of Materials,2014,26,647.に記載の半導体ポリマーが挙げられる。
【0217】
バインダーポリマーは、電荷移動度を考慮すると、極性基を含まない構造を有することが好ましい。ここで、極性基とは、炭素原子及び水素原子以外のヘテロ原子を有する官能基をいう。極性基を含まない構造を有するため、バインダーポリマーとしては、ポリスチレン、又はポリ(α-メチルスチレン)が好ましい。また、半導体ポリマーも好ましい。
【0218】
バインダーポリマーのガラス転移温度は、特に制限されず、用途に応じて適宜設定される。例えば、有機半導体膜に強固な機械的強度を付与する場合、ガラス転移温度を高くすることが好ましい。一方、有機半導体膜にフレキシビリティーを付与する場合、ガラス転移温度を低くすることが好ましい。
【0219】
バインダーポリマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
有機半導体組成物中のバインダーポリマーの含有量は、特に制限されないが、有機薄膜トランジスタの有機半導体膜のキャリア移動度及び耐久性が更に向上する点で、有機半導体組成物中の固形分の総質量に対するバインダーポリマーの含有量が、後述する有機半導体膜の総質量に対するバインダーポリマーの含有量の好適な範囲に含まれることが好ましい。
バインダーポリマーの重量平均分子量は、特に制限されないが、1,000~1,000万が好ましく、3,000~500万がより好ましく、5,000~300万が更に好ましい。バインダーポリマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めることができる。
【0220】
有機半導体組成物において、特定環状イミド化合物は、バインダーポリマーと均一に混合していてもよく、特定環状イミド化合物の一部又は全部がバインダーポリマーと相分離していてもよい。塗布容易性又は塗布均一性の点で、少なくとも塗布時に、特定環状イミド化合物とバインダーポリマーとが均一に混合していることが好ましい。
【0221】
〔溶媒〕
有機半導体組成物は、溶媒を含んでいてもよく、その塗布性を向上させる点から溶媒を含むことが好ましい。このような溶媒としては、上述の化合物を溶解又は分散させるものであれば特に制限されず、無機溶媒又は有機溶媒が挙げられ、有機溶媒が好ましい。溶媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0222】
有機溶媒としては、特に制限されないが、ヘキサン、オクタン、デカン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、アミルベンゼン、デカリン、1-メチルナフタレン、1-エチルナフタレン、1,6-ジメチルナフタレン、及びテトラリンを含む炭化水素溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、プロピオフェノン、及びブチロフェノンを含むケトン溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、トリフルオロメチルトルエン、1,2,4-トリクロロベンゼン、クロロトルエン、1-クロロナフタレン、及び1-フルオロナフタレンを含むハロゲン化炭化水素溶媒、ピリジン、ピコリン、キノリン、チオフェン、3-ブチルチオフェン、及びチエノ[2,3-b]チオフェンを含む複素環溶媒、2-クロロチオフェン、3-クロロチオフェン、2,5-ジクロロチオフェン、3,4-ジクロロチオフェン、2-ブロモチオフェン、3-ブロモチオフェン、2,3-ジブロモチオフェン、2,4-ジブロモチオフェン、2,5-ジブロモチオフェン、3,4-ジブロモチオフェン、及び3,4-ジクロロ-1,2,5-チアジアゾールを含むハロゲン化複素環溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸-2-エチルヘキシル、γ-ブチロラクトン、及び酢酸フェニルを含むエステル溶媒、メタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、及びエチレングリコールを含むアルコール溶媒、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、アニソール、エトキシベンゼン、ジメトキシベンゼン、プロポキシベンゼン、イソプロポキシベンゼン、ブトキシベンゼン、2-メチルアニソール、3-メチルアニソール、4-メチルアニソール、4-エチルアニソール、ジメチルアニソール(2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-、3,5-及び3,6-のいずれか)、及び1,4-ベンゾジオキサンを含むエーテル溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1-メチル-2-ピロリドン、1-メチル-2-イミダゾリジノン、及び1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンを含むアミド又はイミド溶媒、ジメチルスルホキシドを含むスルホキシド溶媒、リン酸トリメチルを含むリン酸エステル溶媒、アセトニトリル、及びベンゾニトリルを含むニトリル溶媒、並びにニトロメタン、及びニトロベンゼンを含むニトロ溶媒が挙げられる。
【0223】
なかでも、炭化水素溶媒、ケトン溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、複素環溶媒、ハロゲン化複素環溶媒、又はエーテル溶媒が好ましく、トルエン、キシレン、メシチレン、アミルベンゼン、テトラリン、アセトフェノン、プロピオフェノン、ブチロフェノン、ジクロロベンゼン、アニソール、エトキシベンゼン、プロポキシベンゼン、イソプロポキシベンゼン、ブトキシベンゼン、ジメトキシベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジエチルベンゼン、2-メチルアニソール、3-メチルアニソール、4-メチルアニソール、1-フルオロナフタレン、1-クロロナフタレン、3-クロロチオフェン、又は2,5-ジブロモチオフェンがより好ましく、トルエン、キシレン、テトラリン、アセトフェノン、プロピオフェノン、ブチロフェノン、アニソール、エトキシベンゼン、プロポキシベンゼン、ブトキシベンゼン、2-メチルアニソール、3-メチルアニソール、4-メチルアニソール、1-フルオロナフタレン、1-クロロナフタレン、3-クロロチオフェン、又は2,5-ジブロモチオフェンが更に好ましい。
【0224】
有機半導体組成物に含まれる溶媒としては、膜質の点、及び上述の化合物の結晶を大きくできる点で、沸点が100℃以上の溶媒が好ましい。
沸点が100℃以上の溶媒としては、トルエン、キシレン、ジエチルベンゼン、メシチレン、テトラリン、アセトフェノン、プロピオフェノン、ブチロフェノン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、アニソール、ジメトキシベンゼン、エトキシベンゼン、プロポキシベンゼン、イソプロポキシベンゼン、ブトキシベンゼン、2-メチルアニソール、3-メチルアニソール、1-メチルナフタレン、1-フルオロナフタレン、1-クロロナフタレン及び4-メチルアニソールが挙げられる。なかでも、トルエン、キシレン、ジエチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、テトラリン、アセトフェノン、プロピオフェノン、ブチロフェノン、アニソール、ジメトキシベンゼン、エトキシベンゼン、プロポキシベンゼン、ブトキシベンゼン、2-メチルアニソール、3-メチルアニソール、1-メチルナフタレン、1-フルオロナフタレン、1-クロロナフタレン、又は4-メチルアニソールがより好ましい。
また、環境負荷や人への毒性の点で、沸点が100℃以上の溶媒としては、非ハロゲン溶媒(分子中にハロゲン原子を有しない溶媒)が好ましい。
【0225】
有機半導体組成物が溶媒を含む場合、溶媒の含有量は、有機半導体組成物の全質量に対して、90~99.99質量%が好ましく、95~99.98質量%がより好ましく、96~99.98質量%が更に好ましい。
【0226】
〔その他の成分〕
有機半導体組成物は、特定環状イミド化合物、バインダーポリマー、及び溶媒以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、各種の添加剤が挙げられる。
添加剤としては、有機半導体組成物に通常用いられる添加剤を使用でき、より具体的には、界面活性剤、酸化防止剤、結晶化制御剤、及び結晶配向制御剤が挙げられる。界面活性剤及び酸化防止剤としては、特開2015-195362号公報の段落0136及び0137が援用でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
有機半導体組成物の、添加剤の含有量は、特に制限されず、膜形成性に優れ、キャリア移動度及び耐熱性がより向上する点で、有機半導体組成物中の固形分の総質量に対する添加剤の含有量が、後述する有機半導体膜の総質量に対する添加剤の含有量の好適な範囲に含まれることが好ましい。
【0227】
有機半導体組成物の粘度は、印刷適性の点で、10mPa・s以上が好ましい。
【0228】
〔調製方法〕
有機半導体組成物の調製方法は、特に制限されず、通常の調製方法を採用できる。例えば、有機溶媒に所定量の各成分を添加して、適宜攪拌することにより、有機半導体組成物を調製できる。
必要により、各成分の攪拌中又は攪拌後に加熱することもできる。加熱温度は、特に制限されず、例えば、40~150℃の範囲内で決定される。溶媒を用いる場合は、上記の範囲内であって溶媒の沸点未満の温度に決定される。
【0229】
[有機薄膜トランジスタ]
次に、特定環状イミド化合物を用いた上述の有機半導体デバイスのなかでも好ましい形態である、有機薄膜トランジスタ(以下「有機TFT」とも記載する)について、説明する。
有機TFTは、後述する有機半導体膜を備える。これにより、有機TFTは、高いキャリア移動度を示し、しかも大気下においても経時による低下を効果的に抑えられ、安定駆動する。大気下での周辺温度及び湿度は、有機TFTの使用環境での温度及び湿度であれば特に制限されず、例えば温度としては室温(20℃)、湿度としては10~90RH%が挙げられる。
有機TFTは、有機電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)として用いられることが好ましく、ゲート-チャンネル間が絶縁されている絶縁ゲート型FETとして用いられることがより好ましい。
有機TFTの厚みは、特に制限されないが、より薄いトランジスタとする場合には、例えば、有機TFT全体の厚みを0.1~0.5μmとすることが好ましい。
【0230】
有機TFTは、特定環状イミド化合物を含む有機半導体膜(有機半導体層又は半導体活性層ともいう)を有し、更に、ソース電極と、ドレイン電極と、ゲート電極と、ゲート絶縁膜とを有することができる。
有機TFTは、基板上に、ゲート電極と、有機半導体膜と、ゲート電極及び有機半導体膜の間に設けられたゲート絶縁膜と、有機半導体膜に接して設けられ、有機半導体膜を介して連結されたソース電極及びドレイン電極とを有することが好ましい。この有機TFTにおいては、有機半導体膜とゲート絶縁膜が隣接して設けられる。
有機TFTは、上記各層を備えていればその構造については特に制限されない。例えば、ボトムゲート-ボトムコンタクト型、トップゲート-ボトムコンタクト型、ボトムゲート-トップコンタクト型、及びトップゲート-トップコンタクト型のいずれの構造を有してもよい。有機TFTとしては、ゲート電極が基板及び有機半導体膜の間に設けられているボトムゲート型(ボトムゲート-ボトムコンタクト型又はボトムゲート-トップコンタクト型)が好ましい。
以下、有機TFTの一例について、図面を参照して説明する。
【0231】
〔ボトムゲート-ボトムコンタクト型有機TFT〕
図1は、有機TFTの一例であるボトムゲート-ボトムコンタクト型の有機TFT10の構造を示す断面模式図である。
有機TFT10は、図1に示すように、基板(基材)1と、ゲート電極2と、ゲート絶縁膜3と、ソース電極4A及びドレイン電極4Bと、有機半導体膜5と、封止層6とを、この順に備える。
以下、基板(基材)、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極、有機半導体膜、及び封止層、並びにそれぞれの作製方法について説明する。
【0232】
<基板>
基板は、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、及び他の層を支持する役割を果たす。
基板の種類は、特に制限されず、例えば、プラスチック基板、シリコン基板、ガラス基板、及びセラミック基板が挙げられる。なかでも、各デバイスへの適用性及びコストの観点から、ガラス基板又はプラスチック基板が好ましい。
基板の厚みは、特に制限されない。基板の厚みの上限は、10mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましく、1.5mm以下が更に好ましい。基板の厚みの下限は、0.01mm以上が好ましく、0.05mm以上がより好ましい。
【0233】
<ゲート電極>
ゲート電極は、有機TFTのゲート電極として用いられている通常の電極を特に制限されることなく適用できる。
ゲート電極を形成する材料(電極材料)としては、特に制限されず、例えば、金、銀、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、コバルト、チタン、白金、マグネシウム、カルシウム、バリウム、及びナトリウムを含む金属、InO、SnO、及びインジウム錫酸化物(ITO)を含む導電性の酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、及びポリジアセチレンを含む導電性高分子、シリコン、ゲルマニウム、及びガリウム砒素を含む半導体、並びにフラーレン、カーボンナノチューブ、及びグラファイトを含む炭素材料が挙げられる。なかでも、上記金属が好ましく、銀、又はアルミニウムがより好ましい。
ゲート電極の厚みは、特に制限されないが、20~200nmが好ましい。
ゲート電極は、上記基板として機能するものでもよく、この場合、上記基板はなくてもよい。
【0234】
ゲート電極を形成する方法は、特に制限されないが、例えば、基板上に、上述の電極材料を真空蒸着(以下単に「蒸着」ともいう)又はスパッタする方法、及び上述の電極材料を含む電極形成用組成物を塗布又は印刷する方法等が挙げられる。また、ゲート電極をパターニングする場合、パターニング方法としては、例えば、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、及び凸版印刷(フレキソ印刷)を含む印刷法、フォトリソグラフィー法、並びにマスク蒸着法が挙げられる。
【0235】
<ゲート絶縁膜>
ゲート絶縁膜は、絶縁性を有する層であれば特に制限されず、単層であってもよいし、多層であってもよい。
ゲート絶縁膜を形成する材料としては、特に制限されず、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルフェノール、メラミン樹脂、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリスルフォン、ポリベンゾキサゾール、ポリシルセスキオキサン、エポキシ樹脂、及びフェノール樹脂を含むポリマー、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、及び酸化チタンを含む無機酸化物、並びに窒化ケイ素を含む窒化物が挙げられる。なかでも、有機半導体膜との相性の点では上記ポリマーが好ましく、膜の均一性の点では上記無機酸化物が好ましく、二酸化ケイ素がより好ましい。
これらの材料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
ゲート絶縁膜の膜厚は、特に制限されないが、100~1000nmが好ましい。
ゲート絶縁膜を形成する方法は、特に制限されないが、例えば、ゲート電極が形成された基板上に、上記材料を含むゲート絶縁膜形成用組成物を塗布する方法、及び上記材料を蒸着又はスパッタする方法が挙げられる。
【0236】
<ソース電極及びドレイン電極>
有機TFTにおいて、ソース電極は、配線を通じて外部から電流が流入する電極である。また、ドレイン電極は、配線を通じて外部に電流を送り出す電極である。
ソース電極及びドレイン電極を形成する材料は、上述したゲート電極を形成する電極材料と同じものを用いることができる。なかでも、金属が好ましく、金、又は銀がより好ましい。
ソース電極及びドレイン電極の厚みは、特に制限されないが、それぞれ、1nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。また、ソース電極及びドレイン電極の厚みの上限は、500nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましい。
ソース電極とドレイン電極との間の間隔(ゲート長L)は、適宜に決定できるが、200μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。また、ゲート幅Wは、適宜に決定できるが、5000μm以下が好ましく、1000μm以下がより好ましい。ゲート幅Wとゲート長Lとの比は、特に制限されないが、例えば、比W/Lが10以上が好ましく、20以上がより好ましい。
ソース電極及びドレイン電極を形成する方法は、特に制限されないが、例えば、ゲート電極とゲート絶縁膜とが形成された基板上に、電極材料を真空蒸着又はスパッタする方法、及び電極形成用組成物を塗布又は印刷する方法が挙げられる。ソース電極及びドレイン電極をパターニングする場合のパターニング方法は、上述したゲート電極のパターニング方法と同じである。
【0237】
<有機半導体膜>
有機TFTにおける有機半導体膜として、特定環状イミド化合物を含む有機半導体膜を用いる。有機半導体膜に含まれる特定環状イミド化合物は、1種でもよく、2種以上でもよい。
有機半導体膜が特定環状イミド化合物を含むと、有機半導体膜のキャリア移動度を向上でき、しかも大気下において使用又は保存(放置)してもその高いキャリア移動度を維持できる。その理由は定かではないが、特定環状イミド化合物の最低空軌道の軌道エネルギーが低いためと考えられる。
【0238】
有機半導体膜中の、特定環状イミド化合物の含有量は、特に制限されず適宜に設定できる。例えば、有機半導体膜の総質量に対する特定環状イミド化合物の含有量は、10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。その上限は特に制限されず、有機半導体膜の総質量に対する特定環状イミド化合物の含有量が100質量%であってもよい。有機半導体膜がバインダーポリマー又はその他の成分を含む場合、有機半導体膜の総質量に対する特定環状イミド化合物の含有量の上限は、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。
【0239】
有機半導体膜は、特定環状イミド化合物に加えて、上述したバインダーポリマーを含んでいてもよい。バインダーポリマーは、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
有機半導体膜において、特定環状イミド化合物及びバインダーポリマーの状態は特に制限されないが、キャリア移動度の点で、膜厚方向に沿って、特定環状イミド化合物とバインダーポリマーとが互いに相分離していることが好ましい。
【0240】
有機半導体膜中のバインダーポリマーの含有量は、特に制限されず適宜に設定できる。有機半導体膜がバインダーポリマーを含む場合、有機半導体膜の総質量に対するバインダーポリマーの含有量は、90質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。その下限は特に制限されず、有機半導体膜の総質量に対するバインダーポリマーの含有量は、0質量%以上とすることができ、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。
【0241】
有機半導体膜は、特定環状イミド化合物に加えて、上述した添加剤を含んでいてもよい。添加剤は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
有機半導体膜が添加剤を含む場合、有機半導体膜の総質量に対する添加剤の含有量は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましい。
【0242】
有機半導体膜の膜厚は、適用される有機TFTに応じて適宜決定されるが、10~500nmが好ましく、20~200nmがより好ましい。
【0243】
この有機半導体膜は、上述した有機半導体組成物を塗布することにより形成できる。有機半導体膜の形成方法の詳細については、後述する。
【0244】
なお、特定環状イミド化合物を含む有機半導体膜の用途は、有機TFT用の有機半導体膜に制限されず、上述した各有機半導体デバイスが備える有機半導体膜として使用できる。
【0245】
<封止層>
上記の有機半導体膜を備える有機TFTは大気下においても安定駆動するため、有機TFT全体を封止し、大気(酸素ガス)及び水分のいずれかを遮断しなくてもよいが、より長期間の安定駆動を目的として、有機TFT全体を金属製の封止缶で封止してもよく、封止剤を用いて封止層を形成してもよい。
封止層には、有機TFTに通常用いられる封止剤(封止層形成用組成物)を用いることができる。封止剤としては、例えば、ガラス及び窒化ケイ素を含む無機材料、パリレンを含む高分子材料、並びに低分子材料が挙げられる。
封止層は、上記封止剤を用いて、塗布乾燥等の通常の方法により、形成できる。
封止層の厚みは、特に制限されないが、0.2~10μmが好ましい。
【0246】
〔ボトムゲート-トップコンタクト型有機TFT〕
図2は、有機TFTの一例であるボトムゲート-トップコンタクト型の有機TFT20の構造を示す断面模式図である。
有機TFT20は、図2に示すように、基板1と、ゲート電極2と、ゲート絶縁膜3と、有機半導体膜5と、ソース電極4A及びドレイン電極4Bと、封止層6とを、この順に備える。
有機TFT20は、層構成(積層態様)が異なること以外は、有機TFT10と同じである。したがって、基板、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極、有機半導体膜、及び封止層については、上述の、ボトムゲート-ボトムコンタクト型有機TFTにおけるものと同じであるので、その説明を省略する。
【0247】
〔有機TFTの製造方法〕
有機TFTの製造方法は、有機半導体組成物を基板上に塗布して、有機半導体膜を形成する工程を有する方法であれば、特に制限されない。
【0248】
ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極、及び封止層はいずれも、上述した方法で作製又は成膜できる。
【0249】
以下、有機半導体膜を形成する工程について、説明する。
この工程においては、上述した、有機半導体組成物を用いる。
本発明において、「有機半導体組成物を基板上に塗布する」とは、有機半導体組成物を基板に直接塗布する態様のみならず、基板上に設けられた別の層を介して基板の上方に有機半導体組成物を塗布する態様も含むものとする。有機半導体組成物が塗布される別の層(有機半導体膜に接する、有機半導体膜の土台となる層)は、有機TFTの構造により必然的に定まる。例えば、有機TFTがボトムゲート型である場合、有機半導体組成物は少なくともゲート絶縁膜の表面に塗布される。
【0250】
有機半導体膜を形成する際に、基板を加熱又は冷却してもよい。基板の温度を変化させることで、膜質又は膜中における特定環状イミド化合物のパッキングを制御できる。
基板の温度としては、特に制限されない。例えば、基板の温度を0~200℃の範囲内に設定することが好ましく、15~100℃の範囲内に設定することがより好ましく、20~95℃の範囲内に設定することが更に好ましい。
【0251】
有機半導体膜を形成する方法は、特定環状イミド化合物を含む有機半導体膜を形成できる限り、特に制限されず、真空プロセス及び溶液プロセスが挙げられ、なかでも、溶液プロセスが好ましい。
【0252】
真空プロセスとしては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、及び分子ビームエピタキシー(Molecular Beam Epitaxy;MBE)法を含む物理気相成長法、並びにプラズマ重合を含む化学気相蒸着(Chemical Vapor Deposition;CVD)法が挙げられる。なかでも、真空蒸着法が好ましい。
【0253】
溶液プロセスとしては、上述した有機半導体組成物を用いることが好ましい。
特定環状イミド化合物は、上記のように大気下においても安定である。したがって、溶液プロセスは大気下において行うことができ、また、有機半導体組成物を大面積で塗布できる。
溶液プロセスにおける有機半導体組成物の塗布方法としては、通常の方法を用いることができる。例えば、ドロップキャスト法、キャスト法、ディップコート法、ダイコーター法、ロールコーター法、バーコーター法、及びスピンコート法を含む塗布法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソグラフィー印刷法、オフセット印刷法、及びマイクロコンタクト印刷法を含む各種印刷法、並びにLangmuir-Blodgett(LB)法が挙げられる。なかでも、ドロップキャスト法、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法、グラビア印刷法、フレキソグラフィー印刷法、オフセット印刷法、又はマイクロコンタクト印刷法が好ましい。
後述する溶液プロセスの好ましい態様における有機半導体組成物の塗布方法は、インクジェット法、グラビア印刷法、フレキソグラフィー印刷法、オフセット印刷法、又はマイクロコンタクト印刷法が好ましく、フレキソグラフィー印刷法、マイクロコンタクト印刷法、又はインクジェット法がより好ましい。
【0254】
溶液プロセスにおいては、基板上に塗布した有機半導体組成物を乾燥することが好ましく、乾燥を徐々に行うことがより好ましい。基板上に塗布した有機半導体組成物を乾燥することにより、特定環状イミド化合物の結晶を析出させて、有機半導体膜を形成できる。
有機半導体組成物の乾燥方法としては、膜質の点で、自然乾燥、又は加熱した基板上での加熱乾燥の後、減圧乾燥することが好ましい。自然乾燥又は加熱乾燥時の基板の温度は、20~100℃が好ましく、50~80℃がより好ましい。自然乾燥又は加熱乾燥の時間は0.5~20時間が好ましく、1~10時間がより好ましい。
減圧乾燥時の基板の温度は、20~100℃が好ましく、40~80℃がより好ましい。減圧乾燥の時間は1~20時間が好ましく、2~10時間がより好ましい。減圧乾燥時の圧力は、10-6~10Paが好ましく、10-5~10-3Paがより好ましい。
このようにして乾燥した有機半導体組成物を、必要により、所定形状又はパターン形状に整形してもよい。
【0255】
<溶液プロセスの態様>
以下に、溶液プロセスの好ましい態様について図面を参照して説明するが、溶液プロセスは以下の態様に制限されない。
【0256】
溶液プロセスの一態様として、有機半導体組成物(以下「塗布液」とも記載する)を、基板及び基板上に配置した部材(以下単に「部材」とも記載する)に接するように、基板の表面の一部に滴下(塗布)し、次いで、滴下した塗布液を乾燥させる方法が挙げられる。本態様に用いられる基板及び部材については後述する。
本態様において、部材は、基板と接触した状態を維持しているか、或いは、基板に固着されておらず、且つ、基板との距離を一定に保った状態を維持している。
基板及び部材が上記状態を維持している限り、塗布液を滴下又は乾燥させる際に、基板と部材との相対的な位置関係を固定してもよいし、変化させてもよい。生産効率の点では、部材を基板に対して動かして基板と部材との相対的な位置関係を変化させることが好ましい。また、得られる有機半導体膜の膜質及び結晶サイズの点では、部材を基板に対して静止させて基板と部材との相対的な位置関係を固定することが好ましい。
【0257】
本態様における塗布液の滴下方法は特に制限されない。基板上での塗布液の膜の厚みが薄くなりやすく、塗布液の膜の端部から乾燥が進みやすい点で、塗布液を滴下するにあたり、塗布液を一滴滴下するか、或いは、二滴以上滴下する場合は一滴ずつ滴下することが好ましい。塗布液を滴下する場合、塗布液一滴の容量は、0.01~0.2mLが好ましく、0.02~0.1mLがより好ましい。
塗布液を基板と部材の両方に接するように基板の面内の一部に滴下することにより、塗布液の膜の端部における厚みを薄くできる。
塗布液の基板に対する接触角(25℃)は、特に制限されないが、0~90°が好ましく、10~20°がより好ましい。塗布液の基板に対する接触角は、塗布液(固形分の濃度:0.1質量%、溶媒:アニソール)を滴下して1秒間経過後、液滴と基板との角度を測定することにより、得られる。具体的には、液量を1.0μL以上に設定し、テフロン(登録商標)針を使用する液滴法により、静的接触角を測定する。このようにして、同様に処理して得た異なる基板について、複数回(通常5回)測定を行い、その平均値を算出し、その値を接触角とする。
塗布液は、部材に対してメニスカスを形成していることが好ましく、膜質の点で、部材に対して凹状のメニスカスを形成していることがより好ましい。
【0258】
以下、本態様における基板と部材との距離を一定に保った状態で塗布液を塗布する方法について、図3を参照しながら説明する。図3は、有機TFTの有機半導体膜を形成する方法の一例を示す概略図である。
この方法においては、まず、基板42及び部材43を所定の位置に配置する。具体的には、塗布液41を基板上に滴下する前に、基板42及び部材43のそれぞれを図3(A)に示す位置に配置する。このとき、基板42と、基板42に接していない部材43との距離を一定に保つ。基板42と部材43との間の距離は、塗布液の塗布量及び粘度等により異なるため一概に決定できないが、適宜設定できる。
次いで、図3(B)に示すように、基板42と部材43の両方に接するように、基板42の表面の一部(基板42と部材43との対向部近傍)に塗布液41を滴下する。
その後、基板42と部材43との相対的な位置関係を固定した状態で、塗布液41を乾燥させる(図3(C))。乾燥方法は特に制限されないが、上記の有機半導体組成物の乾燥方法が好ましい。これにより、基板42上において膜厚が薄い両端部(端縁)から内部に向かって塗布液41が乾燥し、特定環状イミド化合物が結晶化する。これにより、特定環状イミド化合物を、サイズの大きな結晶として、所定の位置に配置できる。
塗布液41を乾燥させた後、例えば、部材43を基板42の主面に対して垂直に引き上げることにより、部材43を基板42から引き離す。これにより、形成された結晶に部材43の痕跡を残すことなく、膜質のよい有機半導体膜を形成できる。
このようにして、特定環状イミド化合物の結晶からなる有機半導体膜を形成できる。
【0259】
以下、本態様における基板と部材を接触させた状態で塗布液を塗布する方法について、図4を参照しながら説明する。図4は、有機TFTの有機半導体膜を形成する方法の他の例を説明するための概略図である。
この方法においては、まず、基板42と部材43とを接触状態に配置する。具体的には、塗布液41を基板42上に滴下する前に、基板42及び部材43のそれぞれを図4(A)に示す位置に配置する。
次いで、図4(B1)及び図4(B2)に示すように、基板42と部材43の両方に接するように、基板42の表面の一部(基板42と部材43との接触部の近傍)に塗布液41を滴下する。このとき、図4(B2)に示すように、塗布液41は基板42と部材43との接触部を囲繞していることが好ましい。なお、図4(B1)は塗布液を塗布した基板の正面図であり、図4(B2)は塗布液を塗布した基板の平面図である。図4(B1)及び図4(B2)に、3次元座標(X,Y,Z)を記入した。
その後、基板42と部材43との相対的な位置関係を固定した状態で、塗布液41を、好ましくは上記のようにして、乾燥させる(図4(C))。乾燥方法は特に制限されないが、上記の有機半導体組成物の乾燥方法が好ましい。これにより、基板42上において膜厚が薄い端縁から内部に向かって塗布液41が乾燥し、特定環状イミド化合物が結晶化する。これにより、特定環状イミド化合物を、サイズの大きな結晶として、所定の位置に配置できる。
塗布液41を乾燥させた後、例えば、部材43を基板42の主面に対して垂直に引き上げることにより、部材43を基板42から引き離す。これにより、図4(D)に示すように、特定環状イミド化合物の結晶に部材43の痕跡を残すことなく、膜質のよい、特定環状イミド化合物の結晶からなる有機半導体膜5を形成できる。
基板42と部材43を接触させた状態で塗布液を塗布する方法は、膜質の点、及び部材43を保持する機構が不要で、しかも基板42に対する部材43の距離(接触状態)を維持できる点で、基板42と部材43との距離を一定に保った状態で塗布液を塗布する方法に対して、好ましい。
【0260】
以下、本態様における基板と部材を接触させた状態で塗布液を塗布する別の方法について、図5を参照しながら説明する。図5は、有機TFTの有機半導体膜を形成する方法の他の例を説明するための概略図である。
この方法は、基板42と部材43との距離を一定に保ちながら部材43を基板42に対して動かすことにより、特定環状イミド化合物の結晶化を促進する点で、図4に示す方法とは異なる。
この方法においては、まず、基板42と部材43とを接触状態に配置する。具体的には、塗布液41を基板42上に滴下する前に、基板42及び部材43のそれぞれを図5(A)に示す位置に配置する。
次いで、図5(B)に示すように、基板42と部材43の両方に接するように、基板42の表面の一部(基板42と部材43との接触部の近傍)に塗布液41を滴下する。このとき、塗布液41は、図4(B2)に示すように、基板42と部材43との接触部を囲繞していることが好ましい。
その後、基板42と部材43との距離を一定に保ちながら、部材43を基板42に対して動かして、塗布液41を乾燥させる。例えば、部材43を、図5(C)中の矢印方向(X軸負方向)に基板42に対して移動させる。部材43の移動方向と逆側の端部(X軸正方向)から移動方向(X軸負方向)に向かって、塗布液41の乾燥は進行し、特定環状イミド化合物が結晶化する。これにより、特定環状イミド化合物を、サイズの大きな結晶として、所定の位置に配置できる。
塗布液41を乾燥させた後、例えば、部材43を基板42の主面に対して垂直に引き上げることにより、部材43を基板42から引き離す。これにより、特定環状イミド化合物の結晶に部材43の痕跡を残すことなく、膜質のよい、特定環状イミド化合物からなる有機半導体膜を形成できる。
【0261】
本態様に用いられる基板42は、有機TFTの基板に相当し、ゲート絶縁膜が形成された基板が好ましい。
【0262】
本態様に用いられる部材43としては、特に制限されないが、部材43の材質としては、無機材料(より好ましくはガラス、石英、又はシリコン)、又はプラスチック(より好ましくはテフロン(登録商標)、ポリエチレン、又はポリプロピレン)が好ましく、ガラスが更に好ましい。
本態様に用いられる部材43の形状は、基板42に対向する滑らかな面を有する限り特に制限されないが、直方体が好ましい。
【0263】
図6は、本態様に用いられる基板42及び部材43の一例を示す概略図である。図6において、部材43の形状は直方体であり、d及びwは、部材43の基板42に対向する面における一辺及び他辺の長さをそれぞれ表し、hは、部材43の高さを表す。
本態様に用いられる部材43のサイズは、特に制限されない。部材43が図6に示す直方体である場合、部材43の基板42に対向する面における一辺及び他辺の長さ(図6におけるd及びW)の下限値は、基板42の主面(塗布液が塗布される面)の一辺の長さに対して、0.1%以上が好ましく、1%以上がより好ましく、10%以上が更に好ましく、20%以上が特に好ましい。また、上記一辺及び他辺の長さの上限値は、基板42の主面の一辺の長さに対して、80%以下が好ましく、70%以下がより好ましく、50%以下が更に好ましい。部材43の高さ(図6におけるh)は、1~50mmが好ましく、5~20mmがより好ましい。更に、部材43の長さdに対する高さhの比h/dは、0.01~10が好ましく、部材43の配置安定性の点で、0.1~5がより好ましい。また、部材43の長さdに対する長さwの比w/dは、1~1000が好ましく、特定環状イミド化合物を広範囲で結晶化できる点で、5~100がより好ましい。
【0264】
このようにして、特定環状イミド化合物の結晶を析出させて、有機半導体膜を形成できる。特定環状イミド化合物の結晶が析出したか否かは、偏光顕微鏡(商品名:Eclipse LV100N POL(透過・反射照明タイプ)、ニコン社製、接眼レンズ:倍率10倍、対物レンズ:倍率5~20倍)を用いて、有機半導体膜を観察することにより、確認できる。
【0265】
〔有機TFTの用途〕
上述の有機TFTは、その用途については特に制限されず、例えば、電子ペーパー、ディスプレイデバイス、センサ、及び電子タグに使用できる。
【実施例
【0266】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により制限的に解釈されるべきものではない。
【0267】
[実施例1:化合物(1-1)の合成]
【0268】
【化50】
【0269】
〔化合物(1-3)の精製〕
化合物(1-3)をヘキサン-酢酸エチルから再結晶することにより精製した。
【0270】
〔化合物(1-4)を含む組成物(原料組成物)の合成〕
耐圧バルーンを備えたガラス製反応容器に、化合物(1-2)20g(37.9mmol)、トルエン200mL、酢酸パラジウム0.851g(3.79mmol)、Xantphos4.39g(7.58mmol)、及び化合物(1-3)51.0g(227mmol)をとり、反応容器内を窒素置換した。トリエチルアミン37.0mL(265mmol)をシリンジで滴下後、75℃から85℃で7時間攪拌した。室温まで放冷後、析出した固体を濾過した。得られた固体をメタノールに分散させ、室温で30分攪拌後、濾取した。濾過物をクロロホルムに溶解させ、シリカゲルを添加し、濾過した。濾液を減圧下濃縮し、o―ジクロロベンゼンから再結晶することにより、化合物(1-4)を含む組成物23.2g(28.4mmol、収率69.6%)を得た。得られた組成物中の化合物(1-4)の含有量は、組成物の全固形分に対して、98.6質量%であり、化合物(1-4’)の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.1質量%以下であった。
なお、後段の表1に示す実施例1欄の「原料組成物」とは、ここで得られた化合物(1-4)を含む組成物を意味する。
【0271】
〔化合物(1-1)の合成〕
ガラス製反応容器に、化合物(1-4)を含む組成物1.00g(1.22mmol)、о-ジクロロベンゼン40mL、フェネチルアミン593mg(4.89mmol)を取り、150℃で2時間攪拌した。室温まで放冷後、メタノールを加え固体を濾取した。得られた固体を真空乾燥後、昇華精製することにより、化合物(1-1)を466mg(0.776mmоl、収率63.6%)得た。
【0272】
[実施例2:化合物(1-1)の合成]
〔化合物(1-4)を含む組成物(原料組成物)の製造〕
化合物(1-3)を再結晶にて精製しなかったこと以外は実施例1と同様の方法で化合物(1-4)を含む組成物を得た。得られた組成物中の化合物(1-4)の含有量は組成物の全固形分に対して、94.9質量%であり、化合物(1-4’)の含有量は、組成物の全固形分に対して、3.0質量%であった。
なお、後段の表1に示す実施例2欄の「原料組成物」とは、ここで得られた化合物(1-4)を含む組成物を意味する。
【0273】
〔化合物(1-1)の合成〕
実施例1と同様の方法で化合物(1-1)を451mg(0.751mmоl、収率61.5%)得た。
【0274】
[実施例3:化合物(3-1)の合成]
【0275】
【化51】
【0276】
〔化合物(3-1)の合成〕
フェネチルアミンをn-オクチルアミン631mg(4.89mmol)にかえたこと以外は、実施例1と同様にて行い、化合物(3-1)を452mg(0.733mmol、収率60.1%)得た。
【0277】
[実施例4:化合物(4-1)の製造]
【0278】
【化52】
【0279】
フェネチルアミンを3-フェニルプロピルアミン661mg(4.89mmol)にかえたこと以外は、実施例1と同様にて行い、化合物(4-1)を480mg(0.764mmol、収率62.6%)得た。
【0280】
[実施例5:化合物(1-1)の合成]
【0281】
【化53】
【0282】
〔化合物(1-1)の製造〕
化合物(1-4)を含む組成物を、下記化合物(5-2)を含む組成物745mg(1.22mmol)にかえたこと以外は実施例1と同様にして行い、化合物(1-1)を447mg(0.745mmol、収率61.1%)得た。
なお、化合物(5-2)を含む組成物中、化合物(5-2)の含有量は、化合物(5-2)を含む組成物の全固形分に対して、98.1質量%であり、化合物(5-2’)の含有量は、化合物(5-2)を含む組成物の全固形分に対して、0.1質量%以下であった。
なお、後段の表1に示す実施例5欄の「原料組成物」とは、上記化合物(5-2)を含む組成物を意味する。
【0283】
[実施例6:化合物(1-1)の合成]
【0284】
【化54】
【0285】
〔化合物(1-1)の合成〕
化合物(1-4)を含む組成物を、化合物(6-2)を含む組成物829mg(1.22mmol)にかえたこと以外は実施例1と同様にして行い、化合物(1-1)を462mg(0.770mmol、収率63.1%)得た。
なお、化合物(6-2)を含む組成物中、化合物(6-2)の含有量は、化合物(6-2)を含む組成物の全固形分に対して、98.2質量%であり、化合物(6-2’)の含有量は、化合物(6-2)を含む組成物の全固形分に対して、0.1質量%以下であった。
なお、後段の表1に示す実施例6欄の「原料組成物」とは、上記化合物(6-2)を含む組成物を意味する。
【0286】
[実施例7:化合物(1-1)の合成]
〔化合物(1-3)の精製〕
化合物(1-3)を冷ヘキサンにて洗浄した。
【0287】
〔化合物(1-4)を含む組成物(原料組成物)の合成〕
上記化合物(1-3)を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で化合物(1-4)を含む組成物を得た。得られた組成物中の化合物(1-4)の含有量は、組成物の全固形分に対して、97.8質量%であり、化合物(1-4’)の含有量は、組成物の全固形分に対して、1.0質量%であった。
なお、後段の表1に示す実施例7欄の「原料組成物」とは、ここで得られた化合物(1-4)を含む組成物を意味する。
【0288】
〔化合物(1-1)の合成〕
実施例1と同様の方法で化合物(1-1)を445mg(0.741mmоl、収率60.7%)得た。
【0289】
[比較例1:化合物(1-1)の合成]
【0290】
【化55】
【0291】
〔化合物(C1-1)の合成〕
ガラス製反応容器に化合物(1-4)410mg(0.502mmol)、パラトルエンスルホン酸・一水和物477mg(2.51mmol)、及びo-ジクロロベンゼン40mLをとり、120℃で12時間攪拌した。反応溶液を減圧濃縮後、固形物をヘキサンに分散させて濾取した。得られた固体を酢酸エチルに分散させた後に濾取し、酢酸エチルで洗浄することにより、化合物(C1-1)を95mg(0.240mmol、収率47.8%)得た。
【0292】
〔化合物(1-1)の合成〕
ガラス製反応容器に化合物(C1-1)500mg(1.27mmol)、2-フェニルエチルアミン615mg(5.07mmol)、及びo-ジクロロベンゼン20mLをとり、150℃で3時間攪拌した。水冷後、メタノール40mLを加え、濾取した。得られた固体を減圧乾燥後、昇華精製することにより、化合物(1-1)を375mg(0.624mmol、収率49.1%)得た。
化合物(1-4)から最終目的物である化合物(1-1)を得るまでの収率は、23.5%であった。
【0293】
[比較例2:化合物(1-1)の製造]
【0294】
【化56】
【0295】
昇華精製しなかったこと以外は比較例1と同様にして、化合物(1-1)を611mg(1.02mmol、収率80.1%)得た。
化合物(1-4)から最終目的物である化合物(1-1)を得るまでの収率は、38.3%であった。
【0296】
[評価]
〔液体クロマトグラフィーによる純度分析〕
実施例及び比較例の各製造方法により最終的に得られた環状イミド化合物について、下記条件にて液体クロマトグラフィーの分析を行い、下記基準で評価した。
カラム: 東ソー TSKgel Silica-150(粒子径:5μm、内径:4.6mm、長さ:25cm)
溶離液: クロロホルム/ヘキサフルオロイソプロパノール=9/1
流量: 0.8mL/min
注入量: 10μL
カラム温度: 25℃
検出波長: 254nm
サンプル:50w/v ppm (溶媒:クロロホルム/ヘキサフルオロイソプロパノール=4/1)
【0297】
- 評価基準 -
A:目的物の面積比が99%以上
B:目的物の面積比が97.5%以上、99%未満
C:目的物の面積比が95%以上、97.5%未満
D:目的物の面積比が95%未満
【0298】
〔有機薄膜トランジスタの作製及び評価〕
<有機薄膜トランジスタの作製>
FET特性測定用基板として、n型シリコン基板(厚さ:0.4mm、ゲート電極2を備えた基板1に相当する。)1の表面に、SiOの熱酸化膜(厚さ:200nm)を有する基板(サイズ:25mm×25mm)を準備した。この基板の熱酸化膜(ゲート絶縁膜3)の表面を、紫外線(UV)-オゾン洗浄した後、β-フェネチルトリメトキシシランで処理した。
縦10mm×横2mm×高さ5mmのサイズを有するガラス製の部材を準備した。図4に示す部材43としてこの部材を、図4(A)に示すように、上記基板1のβ-フェネチルトリメトキシシラン処理面の中央部に、この処理面に接触させた状態で、配置した。
次いで、100℃に加熱した基板1(図4において符号42で示す。)に、各実施例及び各比較例の製造方法により得られた化合物の1-メチルナフタレン溶液(0.03質量%)1滴(約0.05mL)を、ピペットを用いて、図4(A)に示されるように、基板42と部材43との接触部の近傍に、基材42及び部材43に接するように、部材43の側部から滴下した。塗布液は、図4(B1)及び図4(B2)に示されるように、上記接触部を囲繞し、部材43との界面において凹状のメニスカスを形成していた。塗布液41の基板42に対する接触角(25℃)は10°であった。
図4(C)に示すように、基板42と部材43とを接触させた状態を維持しながら、また、基板42と部材43との位置関係を静止させた状態で、塗布液41を150℃で乾燥させた。その後60℃で8時間、10-3Paの圧力下で減圧乾燥させることで、有機半導体膜の結晶膜を作製した。次いで、部材43を、基板42に対して垂直に引き上げて、基板42から引き離した。これにより、図4(D)に示す輪環状の、均一な上記膜厚(膜厚:10~50nm)を有する有機半導体膜5を形成した。
得られた有機半導体膜5を偏光顕微鏡Eclipse LV100N POL(透過・反射照明タイプ)、ニコン社製、接眼レンズ:倍率10倍、対物レンズ:倍率5~20倍)による観察によって確認したところ、上記化合物の結晶が析出していた。
こうして得られた有機半導体膜5上に所定の開口を有するマスクを配置して、金を蒸着することにより、ソース電極4A及びドレイン電極4B(ともに厚さ:40nm、ゲート幅W=2mm、ゲート長L=50μm、比W/L=40)をそれぞれ形成した。このようにして、FET特性測定用の有機薄膜トランジスタを作製した。
なお、後述する評価のため、各実施例及び各比較例の製造方法により得られた化合物を用いて、各々10個ずつ有機薄膜トランジスタを作製した。
【0299】
<有機薄膜トランジスタの評価>
1.キャリア移動度μの測定方法
作製した各有機薄膜トランジスタについて、セミオートプローバー(ベクターセミコン社製、AX-2000)を接続した半導体パラメーターアナライザー(Agilent社製、4156C)を用いて、1気圧の常圧大気下(温度:室温)でキャリア移動度を測定した。なお、具体的には下記のとおりである。
【0300】
各有機薄膜トランジスタのソース電極-ドレイン電極間に-80Vの電圧を印加し、ゲート電圧を+20V~-100Vの範囲で変化させ、ドレイン電流Iを表す下記式を用いてキャリア移動度μ(cm/Vs)を算出した。
=(w/2L)μC(V-Vth
式中、Lはゲート長、wはゲート幅、μはキャリア移動度、Cはゲート絶縁膜の単位面積当たりの容量、Vはゲート電圧、Vthは閾値電圧を表す。
【0301】
2.相対移動度の評価
各実施例及び各比較例毎に10個ずつ作製した有機薄膜トランジスタについて各々キャリア移動度を算出し、その平均移動度を求めた。次いで、実施例1の平均移動度を基準として、下記式により相対移動度を算出し、下記基準で評価した。
相対移動度は高いほど好ましく、本試験において、ランクC以上であることが好ましく、ランクB以上であることがより好ましく、ランクAであることが更に好ましい。
相対移動度 = (各実施例又は各比較例の平均移動度)/(実施例1の平均移動度)
- 評価基準 -
A:相対移動度が1.0以上
B:相対移動度が0.6以上、1.0未満
C:相対移動度が0.2以上0.6未満
D:相対移動度が0.2未満
【0302】
3.ばらつきの評価
各実施例及び各比較例毎に10個ずつ作製した有機薄膜トランジスタについて、各々、下記式より移動度比を算出し、下記基準で評価した。
移動度比 = (10個の有機薄膜トランジスタ中の最高移動度)/(10個の有機薄膜トランジスタ中の最低移動度)
- 評価基準 -
A:移動度比が1.5未満
B:移動度比が1.5以上1.8未満
C:移動度比が1.8以上2.1未満
D:移動度比が2.1以上
【0303】
結果を表1に示す。
表1中、「原料組成物」とは、上述した製造方法において式(9)で表される化合物を得るために用いられる、式(8)で表される化合物と式(17)で表される化合物とを含む組成物を意図する(なお、上記組成物中には式(18)で表される化合物は含まれていなかった)。具体的には、実施例1を例に挙げると、〔化合物(1-4)の組成物(原料組成物)合成〕により得られる「化合物(1-4)を含む組成物」が、ここでいう「原料組成物」に該当する。なお、実施例1の原料組成物において、化合物(1-4)が、式(8)で表される化合物に該当し、化合物(1-4’)が、式(17)で表される化合物に該当する。
また、「原料組成物」欄中の「式(8)で表される化合物の含有量」とは、原料組成物中に含まれる式(8)で表される化合物の、原料組成物の全固形分に対する含有量(質量%)を意図する。
また、「原料組成物」欄中の「式(17)で表される化合物の含有量」とは、原料組成物中に含まれる式(17)で表される化合物の、原料組成物の全固形分に対する含有量(質量%)を意図する。
【0304】
なお、実施例1~7の合成方法は、上述した第一の実施形態-1の合成方法に該当する。
【0305】
【表5】
【0306】
表1の結果から、実施例の製造方法により得られる環状イミド化合物は、収率及び純度に優れていることが明らかである。
また、実施例1~7の結果から、原料組成物中、不純物である式(17)で表される化合物の含有量が所定値以下である場合(実施例2以外が該当する。)、目的物である環状イミド化合物がより高純度となることが明らかである。
また、実施例1、実施例5、及び実施例6の対比から、原料成分である式(8)で表される化合物が、式(10)で表される化合物である場合(好ましくは(10’)で表される化合物である場合)、目的物である環状イミド化合物がより高収率となることが明らかである。
【0307】
[実施例8:化合物(8-1)の製造]
【0308】
【化57】
【0309】
〔化合物(8-3)の合成〕
実施例1と同様の方法で精製した化合物(1-4)を含む組成物を用いた。なお、上記化合物(1-4)を含む組成物中の化合物(1-4)の含有量は、組成物の全固形分に対して、98.6質量%であり、化合物(1-4’)の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.1質量%以下であった。
【0310】
次いで、ガラス製反応容器に、化合物(1-4)を含む組成物1.60g(1.96mmol)、化合物(8-2)1.65g(6.85mmol)、及びo-ジクロロベンゼン32mLをとり、180℃で1時間攪拌した。減圧下、溶媒を留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することにより、化合物(8-3)を580mg(0.674mmol、収率34.4%)得た。
化合物(8-3):1H NMR (400MHz,TCE-d2, 100℃): δ 2.87-3.08 (brm, 2H, Ph-CH 2 -CH2), 3.62-3.75 (brm, 2H, Ph-CH2-21CH 2 -), 3.82 (s, 3H, CH 3 -O-Ph), 3.89 (s, 3H, CH 3 -O-C=O (ester of the Cl3Ph side)), 3.93-4.08 (brm, 3H, CH 3 -O-C=O (ester of the PMB group side)), 4.08-5.55 (brm, 2H, Ph-CH 2 -N), 6.82-7.43 (brm, 9H, ArH), 7.46(s, 2H, ArH of Cl3Ph), 7.65-8.73 (brm, 1H, ArH),8.84-9.23 (m, 5H, ArH).
なお、TCEとは、1,1,2,2-tetrachloroethaneを示す。
【0311】
〔化合物(8-4)の合成〕
ガラス製反応容器に化合物(8-3)300mg(0.348mmol)、n-ペンチルアミン60.8mg(0.697mmol)、及びo-ジクロロベンゼン3mLをとり、110℃で1時間反応させた。減圧下、溶媒を留去し、アセトニトリルに分散させ、濾取、減圧下乾燥することにより、化合物(8-4)を221mg(0.307mmol、収率88.3%)得た。
化合物(8-4): 1H NMR (400MHz, TCE- d2, 100℃): δ 0.94 (t, J = 6.8 MHz, 3H, CH2-CH 3 ), 1.37-1.45 (m, 4H, N-CH2-CH2-(CH 2 )2-CH3), 1.78 (q, J = 6.8 Hz, 2H, N-CH2-CH 2 -C3H7), 2.89-3.10 (brm, 2H, Ph-CH 2 -CH2), 3.63-3.75 (brm, 2H, Ph-CH2-CH 2 -), 3.82 (s, 3H, CH 3 -O-Ph), 3.97-4.01 (brm, 3H, CH 3 -O-C=O), 4.19 (t, J = 7.2 Hz, 2H, N-CH 2 -C4H9), 4.30-5.55 (brm, 2H, Ph-CH 2 -N), 6.84-7.41 (brm, 10H, ArH), 8.68-9.57 (m, 5H, ArH).
【0312】
〔化合物(8-1)の合成〕
ガラス製反応容器に化合物(8-4)164mg(0.228mmol)、о-ジクロロベンゼン8.6mL、及びメタンスルホン酸54.8mg(0.570mmol)をとり、150℃で3時間攪拌した。水冷後、濾過し、減圧下乾燥した。得られた固体を昇華精製することにより、化合物(8-1)を35mg(0.0618mmol、収率27.1%)得た。
化合物(8-1):1H NMR (400MHz, TCE-d2, 100℃): δ 0.94 (t, J = 7.0Hz, 3H, -CH2-CH 3 ), 1.44-1.40 (m, 4H, N-CH2-CH2-(CH 2 )2-CH3), 1.79 (q, 2H, J = 7.2 Hz, N-CH2-CH 2 -C3H7), 3.07 (t, J= 7.8Hz, 2H, Ph-CH 2 -), 4.20 (t, J = 7.4Hz, 2H, N-CH 2 -C4H9), 4.45 (t, J = 7.8Hz, 2H, Ph-CH2-CH 2 -), 7.34-7.18 (m, 5H, ArH of phenyl), 8.84 (d, J = 7.6Hz, 2H, ArH), 9.27 (d, J= 8.0Hz, 2H, ArH), 9.64 (s, 2H, ArH) .
【0313】
[実施例9]
【化58】
【0314】
〔化合物(9-2)の合成〕
化合物(8-2)を化合物(9-1)に、ペンチルアミンをフェネチルアミンに変えたこと以外は、実施例8と同様にして化合物(8-1)を得た。
【0315】
[実施例10]
【化59】
【0316】
〔化合物(10-1)の製造〕
ペンチルアミンをオクチルアミンに変えたこと以外は、実施例8と同様にして化合物(10-1)を得た。
【0317】
化合物(10-2):1H NMR (400MHz, TCE-d2, 100℃): δ 0.83 (t, J = 6.6 MHz, 3H, CH2-CH 3 ), 1.19-1.38 (m, 10H, CH2-(CH 2 )5-CH3), 1.69 (q, J = 6.4 Hz, 2H, N-CH2-CH 2 -C6H13), 2.85-3.14 (m, 2H, Ph-CH 2 -CH2), 3.53-3.74 (m, 2H, Ph-CH2-CH 2 -), 3.79-3.83 (m, 3H, CH 3 -O-Ph), 3.92-4.02 (m, 3H, CH 3 -O-C=O), 4.13 (t,J= 7.2 Hz,2H, N-CH 2 -C7H15), 4.31-5.24 (m, 2H, Ph-CH 2 -N), 6.87-7.41 (m, 9H, ArH), 7.53-8.20 (m, 1H, ArH), 8.64-9.47 (m, 5H, ArH).
【0318】
化合物(10-1):1H NMR (400MHz, TCE-d2, 100℃): δ 0.88 (t, J = 7.0Hz, 3H, CH2-CH 3 ), 1.50-1.30 (m, 10H, N-CH2-CH2-(CH 2 )5-CH3), 1.78 (q, J = 7.2 Hz, 2H, N-CH2-CH 2 -C6H13), 3.07 (t, J = 7.8Hz, 2H, Ph-CH 2 -), 4.19 (t, J = 7.4Hz, 2H, N-CH 2 -C7H15), 4.44 (t, J = 7.8Hz, 2H, Ph-CH2-CH 2 -), 7.18-7.34 (m, 5H, ArH of phenyl), 8.85 (d, J = 7.6Hz, 2H, ArH), 9.28 (d, J = 8.0Hz, 2H, ArH), 9.64 (s, 2H, ArH).
【0319】
[評価]
実施例8~10の製造方法により得られた化合物を使用して、実施例1と同様の方法により、〔液体クロマトグラフィーによる純度分析〕及び〔有機薄膜トランジスタの作製及び評価〕を実施した。結果を表2に示す。
【0320】
表2中、「原料組成物」とは、上述した製造方法において式(9)で表される化合物を得るために用いられる、式(8)で表される化合物と式(17)で表される化合物とを含む組成物を意図する(なお、上記組成物中には式(18)で表される化合物は含まれていなかった)。具体的には、実施例8~10中の「化合物(1-4)を含む組成物」が、ここでいう「原料組成物」に該当する。なお、実施例8~10の原料組成物において、化合物(1-4)が、式(8)で表される化合物に該当し、化合物(1-4’)が、式(17)で表される化合物に該当する。
また、「原料組成物」欄中の「式(8)で表される化合物の含有量」とは、原料組成物中に含まれる式(8)で表される化合物の、原料組成物の全固形分に対する含有量(質量%)を意図する。
また、「原料組成物」欄中の「式(17)で表される化合物の含有量」とは、原料組成物中に含まれる式(17)で表される化合物の、原料組成物の全固形分に対する含有量(質量%)を意図する。
「収率」欄の数値は、化合物(1-4)から最終目的物である化合物(例えば、実施例8の場合においては化合物(8-1))を得るまでの収率を意図する。
【0321】
なお、実施例8~10の製造方法は、上述した第二の実施形態の製造方法に該当する。
【0322】
【表6】
【0323】
さらに、本発明の製造方法を用いると、下記誘導体を合成できる。
[実施例11]
【0324】
【化60】
【0325】
〔化合物(11-2)の合成〕
ガラス製反応容器に、実施例1で調製した化合物(1-4)を含む組成物1g(1.14mmоl)、酢酸パラジウム25.5mg(0.114mmоl)、トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)205mg(0.567mmоl)、N-ブロモスクシンイミド609mg(3.42mmоl)、1,1,2-トリクロロエタン33mL、及びN,N-ジメチルホルムアミド5mLを取り、窒素雰囲気下60℃で2時間反応させた。室温に放冷し、80mLのメタノールにあけ、析出した固体を濾取した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、化合物(11-2)を0.887g(0.910mmоl、収率79.8%)得た。
化合物(11-2):1H NMR(CDCl3)δ 3.95(6H,s)、7.48(4H,s)、9.18(2H,s)、9.27(2H,s)。
【0326】
〔化合物(11-3)の合成〕
ガラス製反応容器に、化合物(11-2)224mg(0.229mmоl)、シアン化銅370g(4.13mmоl)、及びN,N-ジメチルホルムアミド9.2mLをとり、窒素雰囲気下100℃で1時間反応させた。室温まで放冷後、メタノール200mLに添加し、析出した固体を濾取した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、化合物(11-3)を168mg(0.194mmоl、収率84.7%)得た。
【0327】
化合物(11-3):1H NMR(CDCl3) δ 3.99(6H,s)、7.51(4H,s)、9.16(2H,s)、9.45(2H,s)。
【0328】
〔化合物(11-1)の製造〕
ガラス製反応容器に、化合物(11-3)140mg(0.161mmоl)、オクチルアミン45.8mg(0.354mmоl)、о-ジクロロベンゼン5.6mLをとり、窒素雰囲気下150℃で6時間反応させた。放冷後、濾取した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、化合物(11-1)を60.3mg(0.0905mmоl、収率56.2%)得た。
化合物(11-1):1H NMR(TCE-d2, 100℃)δ 0.90 (t, J = 7.0 Hz, 6H), 1.25-1.48 (m, 20H), 1.78 (m, 4H), 4.23 (t, J = 7.8 Hz, 4H), 9.12 (s, 2H), 9.37 (s, 2H)。
【0329】
[実施例12]
【0330】
【化61】
【0331】
〔化合物(12-3)の合成〕
ガラス製反応容器に、化合物(11-2)0.900g(0.923mmоl)、化合物(12-2)0.863g(2.31mmоl)、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム(0)0.0472g(0.0923mmоl)、ヨウ化銅(I)0.0352g(0.185mmоl)、及びテトラヒドロフラン46mLをとり、窒素雰囲気下 60℃で1時間反応させた。室温まで放冷後、メタノール100mLを加え、析出した固体を濾取した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、化合物(12-3)を0.853g(0.868mmоl、収率94.0%)得た。
化合物(12-3):1H NMR(CDCl3)δ 3.89(6H,s)、7.44(4H,s)、7.57(2H,d,J = 4Hz)、7.99(2H,d,J = 4Hz)、8.77(2H,s)、9.07(2H,s)。
【0332】
〔化合物(12-1)の合成〕
ガラス製反応容器に、化合物(12-3)0.620g(0.630mmоl)、フェネチルアミン0.384g(3.15mmоl)、及びо-ジクロロベンゼン31mLをとり、80℃で2時間反応させた。室温まで放冷後、氷冷したメタノール100mLに添加し、氷冷下20分攪拌した。析出した固体を濾取し、減圧下乾燥することにより、化合物(12-1)を0.452g(0.590mmоl、収率93.7%)得た。
化合物(12-1):1H NMR(CDCl3) δ3.02-3.06(4H, m)、4.40-4.44(4H, m)、7.23-7.34(10H, m)、7.67(2H, d, J = 4Hz)、8.04(2H, d, J = 4Hz)、8.92(2H, s)、9.27(2H, s)。
【0333】
[実施例13]
【0334】
【化62】
【0335】
〔化合物(13-3)の合成〕
ガラス製反応容器に、化合物(11-2)50mg(0.0513mmоl)、化合物(13-2)23.4mg(0.128mmоl)、ヨウ化銅(I)0.977mg(0.00513mmоl)、トリエチルアミン26.0mg(0.257mmоl)、及びテトラヒドロフラン2.5mLをとり、窒素雰囲気下60℃で1時間反応させた。室温まで放冷後、メタノール5mLにあけ、析出した固体を濾取した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、化合物(13-3)を35mg(0.0306mmоl、収率59.7%)得た。
化合物(13-3):1H NMR(CDCl3) δ 1.22-1.26(42H,m)、3.96(6H,s)、7.47(4H,s)、9.03(2H,s)、9.12(2H,s)。
【0336】
〔化合物(13-1)の合成〕
ガラス製反応容器に、化合物(13-3)35mg(0.0306mmоl)、化合物(13-4)15.3mg(0.0918mmоl)、及びо-ジクロロベンゼン1.7mLをとり、窒素雰囲気下100℃で1時間反応させた。室温まで放冷後、メタノール17mLにあけ、析出した固体を濾取した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、化合物(13-1)を15.0mg(0.0143mmоl、収率46.6%)得た。
化合物(13-1):1H NMR(CDCl3) δ 1.22-1.35(42H,m)、3.77(6H, s)、3.87(6H, s)、5.40(4H,s)、6.42(2H, d, J = 10Hz)、6.48 (2H, s)、7.15(2H, d, J = 10Hz)、8.98(2H,s)、9.69(2H,s)。
【0337】
上記化合物(11-1)、化合物(12-1)、及び化合物(13-1)のうち、化合物(11-1)について、実施例1と同様にトランジスタ特性を評価した結果、化合物(1-1)と同等の特性が得られることを確認した。
【0338】
[実施例14~19]
式(2)で表される化合物は、下記化合物からも実施例1と同様にして合成することができた。実施例14~19においては、原料の溶解性が向上しており、反応溶媒量を削減できる等の合成上の利点があることがわかった。なお、以下に示す合成方法においては、出発物質である化合物が異なる以外は実施例1の合成方法と同様であり、結果のみ示す。
また、実施例14~19、及び実施例1、5、6の結果の対比から、式(8)で表される化合物(又は式(11A)で表される化合物)において脂肪族炭化水素基の炭素数が2以上である場合、収率がより優れることが明らかである。
【0339】
〔実施例14〕
<化合物(1-1)の合成>
【0340】
【化63】
【0341】
化合物(1-1):収量470mg(0.782mmоl、収率64.1%)
【0342】
〔実施例15〕
<化合物(1-1)の合成>
【0343】
【化64】
【0344】
化合物(1-1)を471mg(0.784mmоl、収率64.3%)
【0345】
〔実施例16〕
<化合物(1-1)の合成>
【0346】
【化65】
【0347】
化合物(1-1):収量469mg(0.779mmоl、収率63.9%)
【0348】
〔実施例17〕
<化合物(1-1)の合成>
【0349】
【化66】
【0350】
化合物(1-1):収量470mg(0.781mmоl、収率64.0%)
【0351】
〔実施例18〕
<化合物(1-1)の合成>
【0352】
【化67】
【0353】
化合物(1-1):収量468mg(0.778mmоl、収率63.8%)
【0354】
〔実施例19〕
<化合物(1-1)の合成>
【0355】
【化68】
【0356】
化合物(1-1):収量465mg(0.775mmоl、収率63.5%)
【0357】
[実施例20]
式(2)で表される化合物は、下記化合物からも実施例8と同様にして合成することができた。なお、以下に示す合成方法においては、出発物質である化合物が異なる以外は実施例8の合成方法と同様であり、結果のみ示す。
また、実施例20と実施例8の結果の対比から、式(8)で表される化合物(又は式(11A)で表される化合物)において脂肪族炭化水素基の炭素数が2以上である場合、収率がより優れることが明らかである。
【0358】
【化69】
【0359】
化合物(8-1):収量36.1mg(0.0637mmоl、化合物(14-1)からの収率8.50%)
【符号の説明】
【0360】
1 基板
2 ゲート電極
3 ゲート絶縁膜
4A ソース電極
4B ドレイン電極
5 有機半導体膜(有機半導体層)
6 封止層
10、20 有機薄膜トランジスタ(有機TFT)
41 塗布液
42 基板
43 部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6