(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】結合組織体形成用構造体および結合組織体の形成方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/02 20060101AFI20250121BHJP
【FI】
A61F2/02
(21)【出願番号】P 2021061894
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2024-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 圭太
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 將行
(72)【発明者】
【氏名】中井 祐賀子
(72)【発明者】
【氏名】一井 里枝香
(72)【発明者】
【氏名】西邑 隆徳
(72)【発明者】
【氏名】市居 修
【審査官】二階堂 恭弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-030598(JP,A)
【文献】特開2018-033694(JP,A)
【文献】特開2014-030596(JP,A)
【文献】特開2006-314601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の板部材と、
前記複数の板部材の側縁部に設けられ、前記複数の板部材を対向離間させた状態で保持する複数の離間部材と、
を備える結合組織体形成用構造体であって、
各板部材は、対向する2つの
短辺である第1辺と、対向する2つの
長辺である第2辺とで区画形成される
長方形、または当該長方形の角部が面取りされた形状の平面形状を有し、
前記複数の離間部材は、前記複数の板部材の側縁部のうち、向かい合って位置する2つの板部材の少なくとも2つの第1辺側の側縁部に設けられ
、かつ前記長方形の2本の対角線上、及び前記2つの第2辺の少なくとも一方と前記2本の対角線とで囲まれた領域に位置せず、
前記複数の離間部材の間に開口部が形成され、
前記開口部のうち、前記2つの第2辺側の側縁部のうちの少なくとも一方の第2辺側の側縁部の中央領域にわたって連続して延在する開口部が、最長であることを特徴とする結合組織体形成用構造体。
【請求項2】
前記板部材は、前記第1辺側の側縁部と、前記第2辺側の側縁部とを連結する角部が面取りされている、
請求項1に記載の結合組織体形成用構造体。
【請求項3】
前記離間部材は、前記板部材の前記2つの第2辺側の側縁部のうちの少なくとも一方の第2辺側の側縁部にさらに設けられ、かつ、前記少なくとも一方の第2辺側の側縁部に設けられる前記離間部材は、前記中央領域を挟んで位置する両側方領域に設けられる、請求項
1または2に記載の結合組織体形成用構造体。
【請求項4】
前記離間部材は、前記板部材の前記2つの第2辺側の側縁部にさらに設けられ、かつ、前記2つの第2辺側の側縁部に設けられる前記離間部材は、いずれも前記中央領域を挟んで位置する両側方領域に設けられる、請求項
1または2に記載の結合組織体形成用構造体。
【請求項5】
前記離間部材は、対向離間させた状態で保持する前記2つの板部材のうちの少なくとも一方の板部材に一体形成されている、請求項
1~4のいずれか1項に記載の結合組織体形成用構造体。
【請求項6】
前記離間部材は、対向離間させた状態で保持する前記2つの板部材とは別体で形成されている、請求項
1~4のいずれか1項に記載の結合組織体形成用構造体。
【請求項7】
請求項
1~6のいずれか1項に記載の結合組織体形成用構造体を、ヒト以外の生体内に挿入して埋植する工程(S-1)と、
前記生体内に埋植した前記結合組織体形成用構造体の前記2つの板部材の対向表面の間に結合組織体を形成する工程(S-2)と、
前記結合組織体を形成した前記結合組織体形成用構造体を前記生体内から取り出す工程(S-3)と
を有することを特徴とする結合組織体の形成方法。
【請求項8】
前記工程(S-1)の前に、前記結合組織体形成用構造体を挿入可能な挿入部を前記ヒト以外の生体に設ける工程(S-A)をさらに有し、
前記工程(S-1)では、前記結合組織体形成用構造体を前記挿入部から挿入して埋植する、
請求項7に記載の結合組織体の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、結合組織体形成用構造体および結合組織体の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、病気や事故で失われた細胞、組織、器官などの機能を、人工素材や細胞により回復させる再生医療の研究が盛んに行われている。
【0003】
例えば、生体内の深い位置に異物が侵入した場合、異物の周りには、線維芽細胞が徐々に集まり、主に線維芽細胞およびコラーゲンなどから構成される結合組織体が形成される。このような反応を利用し、生体内に異物を埋植して結合組織体を形成する技術が研究されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、生体組織材料の存在する環境に設置して基材表面に膜状の結合組織体を形成可能な、主として円筒状の膜状結合組織体形成用基材が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、生体組織材料の存在する環境に配置して基材表面に膜状の結合組織体を形成可能な、シート状や筒状の膜状結合組織体形成用基材が記載されている。特許文献2記載のシート状結合組織体形成用基材においては、複数枚のシート状基材が「結合部」と呼ばれる離間部材を介して設けられ、互いに間隔をあけて対向し、かつ互いに分離可能な構造となっている。
【0006】
特許文献1および2では、異物として結合組織体形成用基材をヒトなどの生体内に埋植または培養装置内に設置して、結合組織体形成用基材の内部に結合組織体を形成させた後、結合組織体形成用基材を生体または培養装置から取り出して、結合組織体を得ることが記載されている。いずれの結合組織体形成用基材においても、膜状の結合組織体が、対向離間させた状態で平行に配置した複数の板の対向面間に形成されるように構成されている。尚、以下で結合組織体形成用基材を、単に「基材」と、あるいは「結合組織体形成用構造体」という場合がある。
【0007】
結合組織体をヒトの体内で形成するいわゆる自家移植や同種移植を行う場合、切開して結合組織体形成用基材をヒトの体内に挿入する処置を行い、挿入後に切開部分を縫合する処置、結合組織体の形成後に再び切開して結合組織体形成用基材を体内から取り出す処置、切開部分を再び縫合する処置を行う必要があり、多数回の処置によるヒトへの負担が大きい。また、結合組織体形成用基材をヒトの体内に埋植するので、結合組織体形成用基材のサイズを大きくしたり、あるいは、結合組織体の形成量を増やしたりするのは、ヒトの体の大きさから自ずと限界があり、結合組織体形成用基材の1回の埋植で結合組織体を大量に形成させることは難しい。
【0008】
また、結合組織体を大量に形成させるための有用な手段として、大型の結合組織体形成用基材を用い、面積の広いシート状の結合組織体を作製することが検討されている。特許文献1のような円筒状の結合組織体形成用基材であると、大型動物を用いた場合であっても、埋植中の円筒状の結合組織体形成用基材と生体との間に隙間が生じてしまい、生体と容易に密着できず、面積の広いシート状の結合組織体を作製することが困難であることがある。また、円筒状の結合組織体形成用基材で形成される結合組織体は円筒状であるため、円筒状の結合組織体の内面と外面とで面積に差がついてしまうことなどから、円筒状の結合組織体を長手方向に切断して得られるシート状の結合組織体の表面および裏面で物性が異なること、シート状の結合組織体が特定の方向にカールしやすくなることがある。特に、シート状の結合組織体が大面積であると、表裏面の物性の違いが顕著になり、シート状の結合組織体の品質がばらつきやすい。また、円筒状の結合組織体形成用基材が大型になると、生体を大きく円筒状に切開する必要があるため、切開処置が容易ではなく、生体への負担は大きくなる。
【0009】
更に、ヒト以外の動物、特に大型動物では、動作・運動時の行動を制御することが難しい。例えば、ウシやウマ、ブタ、ヤギなどの動物は歩行時に発生する力が大きいので、埋植中の結合組織体形成用基材の一部が大型動物の皮膚を突き破って外に出ることがあり、外に出た結合組織体形成用基材の一部が牧場の柵に引っかかったまま歩行すると皮膚が裂けたり、裂けた傷口から基材に形成した結合組織体や動物が細菌に感染したりすることがある。また、埋植した基材自体が変形してしまう場合もある。特許文献2に記載されたようなシート状基材では、こうした変形によって板間隔が保持できなくなり、目的とする水準のシートが得られなくなる場合がある。一方で離間部材を不用意に増設すると、強度は高まるものの、結合組織体形成用基材の開口部が狭くなってしまう。開口部が狭いと、基材に組織が入り難くなり、組織形成の効率が低下する。また、離間部材の位置が不適切だと、結合組織体を連続した大面積のシートとして作製することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2017-113051号公報
【文献】特開2014-030598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本開示の目的は、結合組織体形成用構造体を構成する離間部材を、複数の板部材の間において適正な位置に配設することによって、構造体が十分な強度を確保しつつ、複数の板部材に設けられる複数の離間部材の間に形成される少なくとも一つの開口部を、比較的長く延在させて形成することができるので、生体内に埋植して使用した際に、構造体に外力が作用した場合であっても構造体が変形しがたくなり、しかも、前記開口部を通じて結合組織が構造体内に侵入しやすくなって、結合組織体の形成効率が高くなるため、比較的大面積のシート状の結合組織体を安定して形成することができる、結合組織体形成用構造体および結合組織体の形成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[1] 複数の板部材と、前記複数の板部材の側縁部に設けられ、前記複数の板部材を対向離間させた状態で保持する複数の離間部材と、を備える結合組織体形成用構造体であって、各板部材は、対向する2つの第1辺と、対向する2つの第2辺とで区画形成される略矩形の平面形状を有し、前記複数の離間部材は、前記複数の板部材の側縁部のうち、向かい合って位置する2つの板部材の少なくとも2つの第1辺側の側縁部に設けられ、前記複数の離間部材の間に開口部が形成され、前記開口部のうち、前記2つの第2辺側の側縁部のうちの少なくとも一方の第2辺側の側縁部の中央領域にわたって連続して延在する開口部が、最長であることを特徴とする結合組織体形成用構造体。
[2] 前記板部材は、前記第1辺が短辺であり、前記第2辺が長辺である、略長方形の平面形状を有する、上記[1]に記載の結合組織体形成用構造体。
[3] 前記離間部材は、前記板部材の側縁部のうち、2本の対角線上に位置する側縁部には存在しない、上記[1]または[2]に記載の結合組織体形成用構造体。
[4] 前記板部材は、前記第1辺側の側縁部と、前記第2辺側の側縁部とを連結する角部が面取りされている、上記[1]、[2]または[3]に記載の結合組織体形成用構造体。
[5] 前記離間部材は、前記板部材の前記2つの第2辺側の側縁部のうちの少なくとも一方の第2辺側の側縁部にさらに設けられ、かつ、前記少なくとも一方の第2辺側の側縁部に設けられる前記離間部材は、前記中央領域を挟んで位置する両側方領域に設けられる、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の結合組織体形成用構造体。
[6] 前記離間部材は、前記板部材の前記2つの第2辺側の側縁部にさらに設けられ、かつ、前記2つの第2辺側の側縁部に設けられる前記離間部材は、いずれも前記中央領域を挟んで位置する両側方領域に設けられる、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の結合組織体形成用構造体。
[7] 前記離間部材は、対向離間させた状態で保持する前記2つの板部材のうちの少なくとも一方の板部材に一体形成されている、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の結合組織体形成用構造体。
[8] 前記離間部材は、対向離間させた状態で保持する前記2つの板部材とは別体で形成されている、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の結合組織体形成用構造体。
[9] 上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の結合組織体形成用構造体を、ヒト以外の生体内に挿入して埋植する工程(S-1)と、前記生体内に埋植した前記結合組織体形成用構造体の前記2つの板部材の対向表面の間に結合組織体を形成する工程(S-2)と、前記結合組織体を形成した前記結合組織体形成用構造体を前記生体内から取り出す工程(S-3)とを有することを特徴とする結合組織体の形成方法。
[10] 前記工程(S-1)の前に、前記結合組織体形成用構造体を挿入可能な挿入部を前記ヒト以外の生体に設ける工程(S-A)をさらに有し、
前記工程(S-1)では、前記結合組織体形成用構造体を前記挿入部から挿入して埋植する、上記[9]に記載の結合組織体の形成方法。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、生体内に埋植して使用した際に、構造体に外力が作用した場合であっても構造体が変形しがたくなり、しかも、結合組織が構造体内に侵入しやすくなって、結合組織体の形成効率が高くなるため、比較的大面積のシート状の結合組織体を安定して形成することができる、結合組織体形成用構造体および結合組織体の形成方法の提供が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態の結合組織体形成用構造体の一例を示す斜視図である。
【
図3】
図3(a)は、
図1の矢視B方向からの透視図であり、
図3(b)は、
図3(a)に示す板部材10における離間部材20の位置について説明する図である。
【
図4】
図4は、離間部材20の位置と、得られるシート状結合組織体の面積との関係を説明するための図であって、
図4(a)が、離間部材20が2本の対角線15、15上に位置しない場合、
図4(b)は離間部材20が2本の対角線15、15上に位置する場合を、それぞれ示す。
【
図5】
図5(a)~5(e)は、板部材の、2つの第1辺側の側縁部にそれぞれ離間部材を配設したときの種々の実施形態を示す概念図である。
【
図6】
図6(a)~6(e)は、板部材の、2つの第1辺側と1つの第2辺側の側縁部にそれぞれ離間部材を配設したときの種々の実施形態を示す概念図である。
【
図7】
図7は、板部材の、2つの第1辺側と2つの第2辺側にそれぞれ離間部材を配設したときの種々の実施形態を示す概念図である。
【
図8】
図8(a)および8(b)は、板部材10および離間部材20の変形例を示す図である。
【
図9】
図9は、離間部材20の他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に従う実施形態に基づき詳細に説明する。
【0016】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、結合組織体形成用構造体を構成する離間部材の配置構成等の適正化を図ることによって、結合組織体形成用構造体をヒト以外の生体内に埋植して使用される際に、構造体に外力が作用した場合であっても構造体が変形しがたくなり、しかも、結合組織が構造体内に侵入しやすくなって、結合組織体の形成効率が高くなるため、比較的大面積のシート状の結合組織体を安定して形成することができることを見出し、かかる知見に基づき本開示を完成させるに至った。
【0017】
[結合組織体形成用構造体]
本発明に従う実施形態の結合組織体形成用構造体は、複数の板部材と、前記複数の板部材の側縁部に設けられ、前記複数の板部材を対向離間させた状態で保持する複数の離間部材と、を備える結合組織体形成用構造体であって、各板部材は、対向する2つの第1辺と、対向する2つの第2辺とで区画形成される略矩形の平面形状を有し、前記複数の離間部材は、前記複数の板部材の側縁部のうち、向かい合って位置する2つの板部材の少なくとも2つの第1辺側の側縁部に設けられ、前記複数の離間部材の間に開口部が形成され、前記開口部のうち、前記2つの第2辺側の側縁部のうちの少なくとも一方の第2辺側の側縁部の中央領域にわたって連続して延在する開口部が、最長であることを特徴とする。
【0018】
図1は、実施形態の結合組織体形成用構造体の一例を示す斜視図であり、
図2は、
図1の矢視A方向からの側面図である。
【0019】
図1および
図2に示すように、結合組織体形成用構造体1は、複数の板部材、
図1では3つの板部材10、および複数の離間部材、
図1では6つの離間部材20を備える。離間部材20は、複数の板部材10の側縁部11に設けられ、複数の板部材10を対向離間させた状態で保持する。
【0020】
埋植時には、これらの複数の板部材10の、向かい合って位置する2つの板部材10、10の対向表面の間に、結合組織体が形成される。以下で、向かい合って位置する2つの板部材10の対向表面で区画され、結合組織体が形成される空間を、「区画空間」と呼ぶことがある。区画空間30は、板部材10の板面方向に沿って延びる空間である。
【0021】
図3(a)は、
図1の矢視B方向からの透視図であり、
図3(b)は、
図3(a)に示す板部材10における離間部材20の位置について説明する図である。尚、
図3(a)および3(b)では、離間部材20を説明の便宜上、黒く塗りつぶして示している。各板部材10は、
図3(a)に示すように、対向する2つの第1辺13a、13aと、対向する2つの第2辺13b、13bとで区画形成される略矩形の平面形状を有する。
図1~
図3に示すように、複数の離間部材20は、前記複数の板部材10の側縁部11のうち、向かい合って位置する2つの板部材10、10の少なくとも2つの第1辺側の側縁部、
図1では2つの第1辺13a、13a側の側縁部11a、11aと、1つの第2辺13b側の側縁部11bに設けられ、複数の離間部材20、20の間に開口部40が形成される。
【0022】
開口部40は、複数の板部材10、10の間に形成された区画空間30と、結合組織体形成用構造体1の外部とを連通する。開口部40は、板部材10の板面方向Lに対して垂直に開口する。ここで、開口部40のうち、2つの第2辺13b、13b側の側縁部11b、11bのうちの少なくとも一方の第2辺側の側縁部、
図1では一方の第2辺13b側の側縁部11bの中央領域11b1にわたって連続して延在する開口部40bが、最長である。
【0023】
後述のように、結合組織体形成用構造体1をヒト以外の生体(以下、単に「生体」ともいう。)内に埋植すると、結合組織は、開口部40を介して、結合組織体形成用構造体1の外部から区画空間30に入り込み、シート状の結合組織体が区画空間30内に形成される。結合組織体は、例えば、線維芽細胞およびコラーゲンなどの細胞外マトリックスで構成される。
図1~3に示す実施形態では、結合組織は主として開口部40bを介して区画空間30に入り込み、形成された結合組織体は、
図3(a)中に破線で示した長方形のシートとして採取される。採取された結合組織体のシートは、心膜、硬膜、皮膚、弁膜、角膜、血管、消化管、気管など、ヒトおよび伴侶動物、家畜動物、展示希少動物などへの移植に用いられる。
【0024】
本実施形態においては、基材となる結合組織体形成用構造体1の第2辺13b側の側縁部11bの中央領域11b1に、最も長い開口部40bが少なくとも一つ、連続して延在している。そのため、結合組織体形成用構造体1を生体内に埋植した場合、結合組織は広い開口部40bを介して区画空間30に入り込みやすい。その結果、シート状の結合組織体が、区画空間30内に効率よく形成される。
【0025】
また、本実施形態においては複数の離間部材20が、2つの板部材10、10の少なくとも2つの第1辺13a、13a側の側縁部11a、11aに設けられる。そのため、結合組織体形成用構造体1は、高い強度を発現すると共に、幅広い開口部40bを有する。その結果、本実施形態の結合組織体形成用構造体1は埋植中に変形するリスクが低く、また、結合組織体を効率よく形成することが可能となる。
【0026】
尚、本開示において「第1辺側」とは、板部材10の2本の対角線15、15よりも第1辺寄りの側を指す。より厳密には、
図3(b)に示すように、2つの第1辺13a、13aまたはそれらの延長線と、2つの第2辺13b、13bまたはそれらの延長線とで形成される長方形の、2本の対角線15、15よりも第1辺13a寄りの側を指す。また、「側縁部」とは、板部材10の外周からその少し内側までの、幅が第1辺13aの長さの概ね10%以下程度、特に5%以下程度の領域を指す。また、「側縁部の中央領域」とは、第2辺13b側の側縁部11bにおける、第2辺13bの長さを基準として中央部70%程度の、好ましくは80%程度の、特に好ましくは90%程度の領域を指す。さらに、「側縁部」とは、第2辺13b側の側縁部11bにおける、中央領域以外の領域を指す。
【0027】
(結合組織体形成用構造体の好ましい実施形態)
図3に示すように、本実施形態において板部材10は、前記第1辺13aが短辺、前記第2辺13bが長辺の、略長方形の平面形状を有することが好ましい。こうした構成の結果、離間部材20の数が同一であっても、開口部40bを広くとることができ、区画空間30への結合組織の入り込みが容易となる。尚、
図3に示した実施形態は、板部材10の側縁部11に6つの円柱状の離間部材20を有しているが、本発明は、こうした実施形態に限定されるものではなく、離間部材の数や形状に特に制限はない。
【0028】
しかしながら、本発明の結合組織体形成用構造体においては、
図3(b)に示すように、離間部材20は、板部材10の側縁部11のうち、2本の対角線15、15上に位置する側縁部には存在しないことが好ましい。こうした構成により、
図3において点線の長方形で示したような、面積の広いシート状の結合組織体を採取することが可能となる。
図4(a)および
図4(b)には、離間部材20の位置と、得られるシート状結合組織体の面積との関係を示す。
図4(a)では、離間部材20が2本の対角線15、15上に位置しない場合の結合組織体形成用構造体を示し、また、
図4(b)では、離間部材20が2本の対角線15、15上に位置する場合の結合組織体形成用構造体を示す。
図4(a)および
図4(b)の比較から、
図4(a)に示す構造体は、
図4(b)に示す構造体に比べて、より面積の大きなシート状の結合組織体を得ることができる点で好ましい。尚、
図4(b)に示される実施形態において、板部材10の面積および離間部材20の断面積の合計は、
図3に示す実施形態における値と同一である。そして、
図4(b)に示す構造体は、一方の長さが第1辺13aと略同一の長方形状シートが採取できるにも拘らず、採取できる長方形状シートの面積は、
図3に示す実施形態における値と比べても狭くなっているのがわかる。
【0029】
(板部材の形状)
図3では板部材10の平面形状が、4つの角を丸く面取りした矩形として示されているが、本実施形態における板部材10の平面形状は略矩形でありさえすればどのような形状であってもよい。例えば、4角がいずれも90°の長方形状とすることもできる。しかしながら本実施形態において、板部材10は、第1辺13a側の側縁部11aと、第2辺13b側の側縁部11bとを連結する角部が、面取りされていることが好ましい。板部材10の角部、特に4角が面取りされていれば、埋植中の結合組織体形成用構造体1が生体を突き破るリスクや、皮および皮下組織に与える損傷を抑制することができる。また、結合組織体形成用構造体1の埋植や取り出しも容易になる。また、板部材10の表面は、形成後の結合組織体を採取し易くする観点から、平滑であることが好ましい。但し、目的に応じて、板部材10の表面にスリットやエンボスを付すことも可能である。
【0030】
尚、「面取り」とは狭義には、部材の稜角を削る等して面を作ることを指すが、広義には、角を削って丸みをつけることをも意味する。本開示においては「面取り」をこれら両方の意味を包含する用語として扱う。すなわち、本実施形態の結合組織体形成用構造体1の板部材10は、角を直線的に削り、傾斜をつけるような形で面取りされていてもよく、また、
図3(a)に示すような丸みを帯びた形で面取りされていてもよい。第1辺13a側の全体が丸みを帯びた、略長円形状の板部材10とすることもできる。板部材10はまた、非対称な形状であってもよい。
【0031】
(離間部材)
上記したように、本発明の結合組織体形成用構造体において、離間部材20の数や形状に特に制限はなく、様々な実施形態とすることができる。
図5~
図7は、そうした実施形態の幾つかを示す概念図である。尚、
図5~
図7では、板部材10は
図3と同様に描かれているが、離間部材20は、説明の便宜上、黒く塗りつぶして示している。
図5(a)~
図5(e)は、板部材10の、2つの第1辺13a、13a側の側縁部11a、11aにそれぞれ離間部材20を配設したものである。
図5(a)~
図5(e)に示す実施形態の構造体は、区画空間30への結合組織の入り込みを容易とし、シート状の結合組織体を効率よく形成する上で有利である。
【0032】
図6(a)~
図6(e)に示す各実施形態では、離間部材20が、板部材10の2つの第2辺13b、13b側の側縁部11b、11bのうちの一方の第2辺13b側の側縁部11bにさらに設けられている。これらのうち、
図6(b)~
図6(e)に示す各実施形態ではさらに、第2辺13b側の側縁部11bに位置する離間部材20は、中央領域11b1を挟んで位置する両側方領域11b2に設けられる。本発明においては、複数の離間部材20は少なくとも2つの第1辺13a側の側縁部11aに設けられてさえいればよいので、
図6(a)~
図6(e)に示す構成とすることもできる。こうした構成であれば、開口部40bを広く取ることができ、また、結合組織体形成用構造体1が埋植中に変形するリスクを低減することができる。
【0033】
本発明の結合組織体形成用構造体においてはまた、開口部40bが、最長であり、かつ少なくとも一方の第2辺13b側の側縁部11bの中央領域11b1にわたって連続して延在してさえすればよいので、例えば
図7(a)~
図7(e)に示すような実施形態とすることもできる。
図7に示す各実施形態では、離間部材20は、板部材10の2つの第2辺13b、13b側の側縁部11b、11bにさらに設けられ、かつ、2つの第2辺13b側の側縁部11bに設けられる離間部材20は、いずれも中央領域11b1を挟んで位置する両側方領域11b2に設けられる。
図7(a)~
図7(e)に示す実施形態であれば、結合組織体形成用構造体1が埋植中に変形するリスクを、大きく低減することができる。
【0034】
本実施形態の結合組織体形成用構造体1においては、離間部材20は、1つの区画空間30につき、複数個、すなわち2つ以上設けられていればよい。しかしながら本実施形態においては、離間部材20は、1つの区画空間30につき3つ以上、特に5つ以上設けられていることが、構造体の強度を確保する点でより好ましい。それら複数の離間部材20はまた、最も長い開口部40bを狭めない限りにおいて、結合組織体形成用構造体1の側縁部11に分散して設けられていることが好ましい。より多くの離間部材20が分散して設けられていれば、結合組織体形成用構造体1はさらに変形し難いものとなる。また、1つ1つの離間部材20の断面積を小さくすることができるので、より大面積の結合組織体を形成することが可能となる。例えば
図6(a)~
図6(e)に示す各実施形態では、5~6つの離間部材20が設けられているにも拘らず、板部材10の面から採取し得る長方形の内、最大に近いサイズのシートを得ることが可能である。
【0035】
離間部材20の形状にも、特に制限はない。本実施形態の結合組織体形成用構造体1においては、離間部材20の形状は円柱状に限定されず、例えば
図6(b)および
図6(c)等に示すような長円形断面や楕円断面を有する柱状等であってもよい。特に
図6(e)等に示すような湾曲した長円形状の離間部材20は、配置個数を増しても大面積の結合組織体を形成することができ、しかも断面積の割に板部材10を保持する強度が高いので、好ましい。こうした構成であれば、埋植中に結合組織体形成用構造体1が変形するリスクを軽減することができる。また、複数の断面形状の離間部材20、例えば円柱形状の離間部材20と長円断面形状の離間部材20とが、一つの結合組織体形成用構造体1中に混在していてもよい。
【0036】
(結合組織体形成用構造体の構成)
本発明の結合組織体形成用構造体においては、板部材10は複数枚、すなわち2つ以上備えられていればよく、その枚数に特に制限はない。
図1および2では、3つの板部材10を有する結合組織体形成用構造体1が示されているが、本発明はこうした実施形態に限定されない。但し、枚数を増すと、採取可能な結合組織体シートの枚数が増す一方で、埋植対象となる生体への負担も増すので、板部材10の枚数は2~5枚、特に3~4枚程度とするのが好ましい。
【0037】
また、
図1および2では、3つの板部材10の形状およびサイズが同一となっているが、本実施形態においては各板部材10の形状および/またはサイズが異なっていてもよい。離間部材20の形状、サイズ、および位置も、各区画空間30毎に異なっていてもよい。しかしながら、本実施形態の結合組織体形成用構造体1においては、各板部材10が同一の形状およびサイズを有し、離間部材20の位置も区画空間30毎に同一であることが好ましい。特に、
図1に示すように中央の板部材10を離間部材20が貫通したような構成であれば、結合組織体シートの切り出し位置を各区画空間30で揃えることができる利点がある。但し、板部材10の内の1つのみが、他と異なっていてもよい。例えば末端板部材10外表面の長辺13b部に刻印等の目印を付し、結合組織体が侵入し易い側を明示しておけば、操作者が生体内に埋植する方向を決定する際に参考とすることができる。同様の目的から、板部材10を非対称形状としてもよい。
図8(a)および8(b)は、そうした非対称形状の板部材10およびそこに設けられた離間部材20の一実施形態を示す概念図である。
図8(b)に示す実施形態によれば、開口部40bを広く取りながら、変形しにくい構成とすることができる。類似の構成として、離間部材20を
図9に示すような形状および配置とすることも考えられる。
【0038】
本実施形態の結合組織体形成用構造体1において、離間部材20は、対向離間させた状態で保持する2つの板部材10のうちの少なくとも一方の板部材10に、一体形成されていてもよい。一体形成された結合組織体形成用構造体は、一般に優れた強度を有するため、例えば埋植中の破損や変形のリスクが低減される利点がある。
【0039】
本実施形態の結合組織体形成用構造体1においてはまた、離間部材20は、対向離間させた状態で保持する2つの板部材10とは別体で形成されていてもよい。例えば別々に形成した板部材10と離間部材20とが、ネジ止めや接着、溶接等で接合されていてもよい。こうした構成の結合組織体形成用構造体1、特に板部材10と離間部材20とがネジ止めた結合組織体形成用構造体1では、生体から取り出し後に、形成された結合組織体を採取するのが容易となる利点がある。
【0040】
本実施形態の結合組織体形成用構造体1はまた、1枚の板部材10と一体形成した離間部材20に、別体で形成された他の板部材10を接合した構成であってもよい。例えば
図1に示す結合組織体形成用構造体1において、中央の板部材10の両面に離間部材20を一体形成し、その両側に末端となる2つの板部材10を接合することもできる。
【0041】
板部材10および離間部材20を構成する材料は、特に限定されるものではないが、生体内への埋植時に大きな変形を抑制できる程度の強度(硬度)、化学的安定性、オートクレーブなどによる滅菌処理に対する耐性を有し、形成する結合組織体や生体に悪影響を及ぼす物質を放出しない、もしくは当該物質を多量に放出しないことが好ましい。このような観点から、複数の板部材10および離間部材20を構成する材料は、アクリル樹脂やシリコーン樹脂のような樹脂材料、ステンレス、チタン、コバルト、クロム、ニッケルチタン合金のような耐錆性の高い金属材料であることが好ましい。また、複数の板部材10および離間部材20は、表面が上記の樹脂材料や金属材料で覆われているものでもよい。上記の樹脂材料は、上記の金属材料に比べて、生体内における結合組織体の形成速度が速い。
【0042】
また、複数の板部材10において、対向する2つの内表面のうちの一方には、結合組織体の形成を促進する結合組織体形成促進物質が設けられることが好ましい。結合組織体形成促進物質は、例えば、血液、脂肪、コラーゲン、ゼラチン、およびこれらに増殖因子などを含ませたものなどが挙げられる。対向する2つの内表面のうちの一方のみに結合組織体形成促進物質が設けられると、結合組織体形成用構造体1から取り出されたシート状の結合組織体における表面および裏面の判別が容易になるため、結合組織体の梱包などの製品管理が向上する。
【0043】
(結合組織体の形成)
このように、実施形態の結合組織体形成用構造体1は、従来の結合組織体形成用基材と異なり、離間部材の配置構成や形状およびサイズに着目している。結合組織体の生産性向上の観点から、結合組織体形成用構造体1は、ヒト以外の生体に使用され、かつ、皮下組織に埋植される。実施形態の結合組織体形成用構造は、広い開口部40bを有するので、毎食後に生体内の結合組織が侵入し易い。また、離間部材20の位置が適切であるため、大面積のシート状の結合組織体を効率よく作製することができる。しかも埋植中に変形するリスクが低いので、生体内で安定して結合組織体を形成できる。特に板部材10の角部が面取りされている結合組織体形成用構造体1であれば、埋植対象の生態を損傷するリスクも低い。
【0044】
結合組織体形成用構造体1は、ヒト以外の生体内に埋植して使用される。ヒト以外の生体としては、例えば、イヌ、ウシ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ウサギ等の哺乳類動物、鳥類、魚類、その他の動物などが挙げられる。その中でも、人よりも埋植面積が大きくとれ、1回の埋植で結合組織体を大量に生産でき、家畜として多く飼育されているウシ、ウマ、ブタ、ヤギが好ましい。
【0045】
結合組織体形成用構造体1を生体内に埋植する場所は、四肢部、肩部、背部、腹部などの皮下組織である。皮下組織の外側にある表皮および真皮(以下、皮ともいう)の一部を生体から剥した後、皮下組織に結合組織体形成用構造体1を差し込むように挿入し、続いて、部分的に剥した皮を生体に縫合することによって、皮下組織内に結合組織体形成用構造体1を埋植する。シート状の結合組織体形成用構造体1は、差し込み時に、皮下組織を切り開きながら挿入できる。例えば、生体を切開して形成される挿入部から、結合組織体形成用構造体1を生体内に挿入する。シート状の結合組織体形成用構造体1を挿入する挿入部は線状であるため、容易な切開処置で挿入部を形成できる。
【0046】
[結合組織体の形成方法]
次に、実施形態の結合組織体の形成方法について説明する。実施形態の結合組織体の形成方法は、上記の結合組織体形成用構造体1を、ヒト以外の生体内に挿入して埋植する工程(S-1)と、前記生体内に埋植した前記結合組織体形成用構造体の前記2つの板部材の対向表面の間に結合組織体を形成する工程(S-2)と、前記結合組織体を形成した前記結合組織体形成用構造体を前記生体内から取り出す工程(S-3)とを有する。
【0047】
工程(S-1)では、ヒト以外の生体内の所定部位に結合組織体形成用構造体1を差し込むように挿入して、生体内に結合組織体形成用構造体1を埋植する。結合組織体形成用構造体1は、四肢部、肩部、背部、腹部などの皮下組織に埋植される。一例として、皮下組織を外側から覆う表皮および真皮などの皮の一部を生体から剥し、皮下組織に結合組織体形成用構造体1を差し込むように挿入し、部分的に剥した皮を生体に縫合することによって、皮下組織内に結合組織体形成用構造体1を埋植する。結合組織体形成用構造体1を差し込むとき、結合組織体形成用構造体1は皮下組織を切り開きながら挿入できる。
【0048】
工程(S-1)の後に行われる工程(S-2)では、結合組織体形成用構造体1を生体内に所定の時間埋植し、結合組織体形成用構造体1の2つの板部材10の対向表面の間にシート状の結合組織体を形成する。結合組織体形成用構造体1の埋植中に、生体内の結合組織が結合組織体形成用構造体1の開口部40から区画空間30に進入し、区画空間30の結合組織が成長することにより、結合組織体が区画空間30に形成される。結合組織体は、線維芽細胞およびコラーゲンなどの細胞外マトリックスで構成される。
【0049】
工程(S-2)の後に行われる工程(S-3)では、区画空間30に形成された結合組織体を含有する結合組織体形成用構造体1を生体内から取り出す。区画空間30に形成された結合組織体が結合組織体形成用構造体1の周囲に存在する生体組織と結合している場合には、周囲の生体組織と結合組織体形成用構造体1とを切断して、結合組織体形成用構造体1を生体内から取り出す。
【0050】
また、実施形態の結合組織体の形成方法は、工程(S-1)の前に、上記の結合組織体形成用構造体1を挿入可能な挿入部をヒト以外の生体に設ける工程(S-A)をさらに有し、工程(S-1)では、結合組織体形成用構造体1を挿入部から挿入して埋植することが好ましい。工程(S-A)で設けられる挿入部は、従来の円筒状の結合組織体形成用基材に比べて、生体を小さく切開することによって容易に形成できる。また、生体を繰り返し切開せずに、シート状の結合組織体形成用構造体1は挿入部を多少切り開きながら挿入できる。そのため、動物への負担が抑制され、作業が容易になる。
【0051】
また、実施形態の結合組織体の形成方法は、工程(S-3)の後に、生体内から取り出した結合組織体形成用構造体1の区画空間30から、結合組織体を分離する工程(S-B)をさらに有してもよい。工程(S-3)の後に行われる工程(S-B)では、生体内から取り出した結合組織体形成用構造体1の区画空間30から結合組織体を分離して、シート状の結合組織体を得る。結合組織が結合組織体形成用構造体1の外表面に形成されている場合には、結合組織体形成用構造体1の外表面から結合組織を除去した後に、区画空間30から結合組織体を分離する。複数の板部材10の間隔や板部材10の内表面10aの形状などを適宜調整することで、所望の形状を有する結合組織体が得られる。
【0052】
また、得られた結合組織体をヒトなどの異種移植に用いる場合には、移植後の拒絶反応を防ぐため、脱細胞処理、脱水処理、固定処理などの免疫原除去処理を結合組織体に行うことが好ましい。脱細胞処理としては、超音波処理、界面活性剤処理、コラゲナーゼなどの酵素処理などによって、細胞外マトリックスを溶出させて洗浄する方法などがある。脱水処理としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの水溶性有機溶媒で洗浄する方法などがある。固定処理としては、グルタアルデヒド、ホルムアルデヒドなどのアルデヒド化合物で処理する方法などがある。
【0053】
以上、実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本開示の範囲内で種々に改変することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 結合組織体形成用構造体
10 板部材
11 側縁部
11a 第1辺側の側縁部
11b 第2辺側の側縁部
11b1 第2辺側の側縁部の中央領域
11b2 第2辺側の側縁部の側方領域
13a 第1辺
13b 第2辺
15 対角線
20 離間部材
30 区画空間
40 開口部
40b 最長の開口部
L 板部材の板面方向