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特許7626366密集度推定装置、密集度推定方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】密集度推定装置、密集度推定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A01K 29/00 20060101AFI20250128BHJP
   G01N 33/00 20060101ALI20250128BHJP
   G06T 7/60 20170101ALI20250128BHJP
【FI】
A01K29/00 A
G01N33/00 C
G06T7/60 150Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020210043
(22)【出願日】2020-12-18
(65)【公開番号】P2022096833
(43)【公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100196380
【弁理士】
【氏名又は名称】森 匡輝
(72)【発明者】
【氏名】木下 拓矢
(72)【発明者】
【氏名】河上 眞一
(72)【発明者】
【氏名】吉村 幸則
(72)【発明者】
【氏名】山本 透
(72)【発明者】
【氏名】川津 洋一
(72)【発明者】
【氏名】北山 英博
(72)【発明者】
【氏名】田中 基雅
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/146416(WO,A1)
【文献】特開2020-080791(JP,A)
【文献】特開2009-181307(JP,A)
【文献】特開2019-220091(JP,A)
【文献】特開2013-210843(JP,A)
【文献】国際公開第2017/187719(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0150405(US,A1)
【文献】特開2018-156354(JP,A)
【文献】特開2019-010010(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0071069(US,A1)
【文献】海部健三 外9名,超音波テレメトリーを用いた,人工池における石の間隙がニホンウナギの隠れ場所として果たす機能の把握,応用生態工学,第22巻第1号,2019年07月28日,p.83-92,https://www.jstage.jst.go.jp/article/ece/22/1/22_83/_pdf/-char/ja
【文献】村田 一星 外3名,機械学習を用いた密度マップ推定による大規模魚群中の個体検出,2018年度情報処理学会関西支部支部大会講演論文集,2018年09月21日,p.1-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 29/00
G01N 33/00
G06T 7/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飼育舎内で飼育される動物の画像である舎内画像から推定用画像を生成する画像データ処理部と、
前記推定用画像に基づいて、前記動物の密集度を推定する密集度推定部と、を備え、
前記画像データ処理部は、
前記舎内画像に基づいて二値化された前記推定用画像を生成して、前記推定用画像から前記動物が撮影されている画素を検出し、
前記密集度推定部は、
前記画像データ処理部で検出された画素の座標情報に基づいて、前記推定用画像の各画素についてカーネル密度推定を行うことにより、各画素の前記動物の密集度を算出し、
各画素の前記動物の密集度を平均して、前記推定用画像における前記動物の密集度を評価するための特徴量を算出することにより、前記動物の密集度を推定する、
ことを特徴とする密集度推定装置。
【請求項2】
前記動物の密集度の推定結果を記憶する記憶部と、
前記推定結果を表示する表示部と、を備え、
前記密集度推定部は
記特徴量に基づく前記推定結果を前記記憶部に記憶させるとともに、前記表示部に表示させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の密集度推定装置。
【請求項3】
前記カーネル密度推定のカーネル関数は正規分布である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の密集度推定装置。
【請求項4】
前記舎内画像を撮影するカメラと、
前記カメラを制御するカメラ制御部と、を備え、
前記カメラ制御部は、所定の時間間隔で前記舎内画像を撮影する、
ことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の密集度推定装置。
【請求項5】
飼育舎内で飼育される動物の画像である舎内画像に基づいて二値化された推定用画像を生成し、
前記推定用画像から前記動物が撮影されている画素を検出し、
検出された画素の座標情報に基づいて、前記推定用画像の各画素についてカーネル密度推定を行うことにより、各画素の前記動物の密集度を算出し、
各画素の前記動物の密集度を平均して、前記推定用画像における前記動物の密集度を評価するための特徴量を算出することにより、前記動物の密集度を推定する、
ことを特徴とする密集度推定方法。
【請求項6】
コンピュータを、
飼育舎内で飼育される動物の画像である舎内画像に基づいて二値化された推定用画像を生成し、前記推定用画像から前記動物が撮影されている画素を検出する画像データ処理部、
前記画像データ処理部で検出された画素の座標情報に基づいて、前記推定用画像の各画素についてカーネル密度推定を行うことにより、各画素の前記動物の密集度を算出し、各画素の前記動物の密集度を平均して、前記推定用画像における前記動物の密集度を評価するための特徴量を算出することにより、前記動物の密集度を推定する密集度推定部、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密集度推定装置、密集度推定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鶏等の家畜を効率的に成長させるための飼育環境の制御方法が開発されている。例えば、特許文献1には、鶏を育成するための鶏舎内の温度の制御方法として、鶏舎外部の気温を計測する外気温度計、鶏舎内部の気温を計測する舎内温度計等の測定値に基づいて、鶏舎の換気、熱交換器の動作等を制御する鶏舎の換気システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-10010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の制御方法では、鶏の育成環境を制御するため、温度計等で気温を計測することとしている。また、二酸化炭素を計測して、換気制御を行い、より適切な育成環境を実現することとしている。
【0005】
しかしながら、鶏等の家畜を飼育舎内で飼育する場合、気温、床(地面)の温度等が快適な状態である場所に動物が密集するために、二酸化炭素濃度が高くなる等、かえって育成環境が悪化する場合がある。このように、飼育舎内の動物の密集度は、動物の育成環境、ひいては動物の成長度合いに影響を与えるが、温度計、二酸化炭素濃度測定装置等による測定では、即時に正確な動物の密集度を推定することは難しい。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、飼育舎内の画像に基づいて動物の密集度を推定することにより、即時に正確な動物の密集度を推定できる密集度推定装置、密集度推定方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の観点に係る密集度推定装置は、
飼育舎内で飼育される動物の画像である舎内画像から推定用画像を生成する画像データ処理部と、
前記推定用画像に基づいて、前記動物の密集度を推定する密集度推定部と、を備え、
前記密集度推定部は、前記推定用画像に基づいて、カーネル密度推定を行うことにより、前記動物の密集度を推定する。
【0008】
また、前記動物の密集度の推定結果を記憶する記憶部と、
前記推定結果を表示する表示部と、を備え、
前記密集度推定部は、
前記カーネル密度推定を行うことにより算出された密集度から、密集度を評価するための特徴量を算出し、
前記特徴量に基づく前記推定結果を前記記憶部に記憶させるとともに、前記表示部に表示させる、
こととしてもよい。
【0009】
また、前記画像データ処理部は、
前記舎内画像に基づいて二値化された前記推定用画像を生成して、前記推定用画像から前記動物が撮影されている画素を検出し、
前記密集度推定部は、検出された画素の座標情報に基づいて、前記カーネル密度推定を行う、
こととしてもよい。
【0010】
また、前記カーネル密度推定のカーネル関数は正規分布である、
こととしてもよい。
【0011】
また、前記舎内画像を撮影するカメラと、
前記カメラを制御するカメラ制御部と、を備え、
前記カメラ制御部は、所定の時間間隔で前記舎内画像を撮影する、
こととしてもよい。
【0012】
また、前記密集度推定部は、
前記推定用画像から算出された各画素の密集度の平均値を、推定時刻の前記特徴量として算出する、
こととしてもよい。
【0013】
また、本発明の第2の観点に係る密集度推定方法では、
飼育舎内で飼育される動物の画像である舎内画像から推定用画像を生成し、
前記推定用画像に基づいて、カーネル密度推定を行うことにより、前記動物の密集度を推定する。
【0014】
また、本発明の第3の観点に係るプログラムは、
コンピュータを、
飼育舎内で飼育される動物の画像である舎内画像から推定用画像を生成する画像データ処理部、
前記推定用画像に基づいて、カーネル密度推定を行うことにより、前記動物の密集度を推定する密集度推定部、
として機能させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の密集度推定装置、密集度推定方法及びプログラムによれば、飼育舎内の画像に基づくカーネル密度推定によって動物の密集度を推定するので、即時に正確な動物の密集度を推定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係る密集度推定装置の構成を示すブロック図である。
図2】実施の形態に係る密集度推定の流れを示すフローチャートである。
図3】密集度推定に係る画像の例を示す図であり、(A)は舎内画像I、(B)はグレースケール画像I、(C)は推定用画像Iである。
図4】密集度算出方法を示す概念図であり、(A)は推定用画像Iの例、(B)は記憶部に記憶される座標情報φの例、(C)は各画素における密集度Sの例である。
図5】冬季における所定時刻の舎内画像Iの例である。
図6】(A)は、舎内画像Iの各画素に対応する密集度Sの分布図の例であり、(B)は、(A)の各密集度の頻度を表すヒストグラムである。
図7図5の舎内画像Iから推定された密集度を表す特徴量Fの時間変化を示すグラフである。
図8図7の密集度の低い時刻のデータを示す図であり、(A)は舎内画像I、(B)は推定用画像I、(C)は各座標の密集度S、(D)は密集度のヒストグラムである。
図9図7の密集度の高い時刻のデータを示す図であり、(A)は舎内画像I、(B)は推定用画像I、(C)は各座標の密集度S、(D)は密集度のヒストグラムである。
図10】夏季における密集度を表す特徴量Fの時間変化の例を示すグラフである。
図11図10の密集度の高い時刻のデータを示す図であり、(A)は舎内画像I、(B)は推定用画像I、(C)は各座標の密集度S、(D)は密集度のヒストグラムである。
図12図10の密集度の低い時刻のデータを示す図であり、(A)は舎内画像I、(B)は推定用画像I、(C)は各座標の密集度S、(D)は密集度のヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る密集度推定装置1について説明する。本実施の形態では、飼育舎で飼育される鶏の密集度を推定する密集度推定装置1を例として説明する。
【0018】
密集度推定装置1は、図1のブロック図に示すように、カメラ10、制御ユニット20を備える。
【0019】
カメラ10は、飼育舎内において、鶏の密集度を推定する対象領域を撮影するカメラである。カメラ10は、撮影した対象領域の舎内画像Iのデータを制御ユニット20へ送信する。カメラ10の種類、解像度等の特性は特に限定されないが、対象領域の動物が個別に認識できる程度の解像度を有することが好ましい。
【0020】
制御ユニット20は、例えばコンピュータ装置であり、図1に示すように、制御部21、記憶部22、表示部23、入力部24を備える。
【0021】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、水晶発振器等から構成されており、カメラ10の動作を制御する。また、制御部21は、カメラ10で撮影された舎内画像Iに基づいて動物の密集度を推定する。制御部21は、制御部21のROM、記憶部22等に記憶されている各種動作プログラム及びデータをRAMに読み込んでCPUを動作させることにより、図1に示される制御部21の各機能を実現させる。これにより、制御部21は、カメラ制御部211、推定部212として動作する。
【0022】
カメラ制御部211は、制御ユニット20に接続されているカメラ10を制御して、対象領域を撮影し、舎内画像Iを取得する。
【0023】
推定部212は、画像データ処理部212-1、密集度推定部212-2を備える。画像データ処理部212-1は、取得された舎内画像Iに基づいて画像処理を行い、対象領域における鶏の密集度を算出するための推定用画像Iを生成する。推定用画像Iは、密集度の算出に用いる基礎データを抽出するための画像である。本実施の形態に係る推定用画像Iは、舎内画像Iに基づいて生成された二値画像である。また、画像データ処理部212-1は、推定用画像Iから、鶏が存在する位置の画素の座標データを抽出し、密集度の算出に用いる基礎データとして用いる。
【0024】
密集度推定部212-2は、画像データ処理部212-1で生成された推定用画像Iに基づいてカーネル密度推定を行うとともに、特徴量Fを抽出して密集度を推定する。詳細な推定手順については後述する。
【0025】
記憶部22は、ハードディスク、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリであり、舎内画像Iから鶏の密集度を推定するアルゴリズム、推定された密集度に関する情報等を記憶する。
【0026】
表示部23は、コンピュータ装置である制御ユニット20に備えられた表示用デバイスであり、例えば液晶モニタである。表示部23は、カメラ10で撮影された舎内画像I、推定部212で推定された密集度に関する情報等を表示する。
【0027】
入力部24は、カメラ10の画角、密集度を算出する時間間隔等の撮影に関するパラメータ、密集度推定の開始、終了指示等を入力するための入力デバイスである。入力部24は、制御ユニット20に備えられたキーボード、タッチパネル、マウス等である。
【0028】
また、制御ユニット20は、通信インタフェース(通信I/F)を介して、カメラ10と通信を行う。具体的には、カメラ制御部211は、カメラ10へ制御情報を送信し、撮影された舎内画像Iの画像データを取得する。また、制御部21は、推定された鶏の密集度、密集度の推定時刻等の情報を記憶部22に記憶させる。
【0029】
以下、図2のフローチャートを参照しつつ本実施の形態に係る密集度推定方法について具体的に説明する。
【0030】
入力部24への推定開始の入力等により密集度推定が開始されると、制御ユニット20のカメラ制御部211は、予め定められた推定時刻にカメラ10を制御して、飼育舎内の対象領域の撮影を行い、舎内画像Iを取得する(ステップS11)。図3(A)は、撮影された舎内画像Iの一例である。
【0031】
本実施の形態では、1台のカメラ10を用いて、飼育舎内の所定の領域を撮影することとしているが、これに限られず、複数のカメラ10を用いて各カメラ10に対応する対象領域の舎内画像Iを取得することとしてもよい。これにより、飼育舎内のより広い範囲の動物の密集度を推定することができる。また、同じ対象領域を複数のカメラ10で異なる方向から撮影することとしてもよく、これにより、誤差の少ない推定を行うことが可能となる。
【0032】
カメラ制御部211は、カメラ10で撮影された舎内画像Iのデータを記憶部22に記憶させるとともに、画像データ処理部212-1へ送信する(ステップS12)。舎内画像Iは、カラー画像であってもグレースケール画像であってもよい。本実施の形態に係る舎内画像Iは、カラー画像である。
【0033】
画像データ処理部212-1は、ステップS12で受信したデータに基づいて、舎内画像Iをグレースケール化して、グレースケール画像I図3(B))を生成する(ステップS13)。グレースケール化の方法は特に限定されず、RGBを平均化する方法、ガンマ補正を用いる方法等、公知の方法を用いることができる。
【0034】
画像データ処理部212-1は、ステップS13で生成されたグレースケール画像Iを二値化して、推定用画像Iを生成する(ステップS14)。二値化処理の閾値は、処理対象の画像のうち、鶏である領域の輝度と背景である飼育舎内の床面等の輝度との間の値に予め設定されている。これにより、図3(C)の例に示すように、鶏の部分が白、鶏以外の背景部分が黒である二値画像の推定用画像Iが生成される。すなわち、二値化処理によって、鶏が撮影されている画素が、白画素として検出される。
【0035】
画像データ処理部212-1は、推定用画像Iのうち、白色の画素の座標情報φ=[φ1,φ2]=[x,y]を記憶部22に記憶させる(ステップS15)。
【0036】
続いて、密集度推定部212-2は、記憶部22に記憶されている白色の画素の座標情報φに基づいて、密集度Sを算出する(ステップS16)。また、密集度推定部212-2は、算出された密集度Sから特徴量Fを算出し、鶏の密集度の推定結果として、表示、保存する(ステップS17)。具体的には、密集度推定部212-2は、カーネル密度推定を用いて密集度Sを算出する。本実施の形態では、以下の式に示すように、正規分布のカーネル関数を用いてカーネル密度推定を行い、密集度S(φ(k),φ)を算出する。
【0037】
【数1】
ただし、Nは記憶部に格納された白画素のデータ数、φ(k)は座標情報のi番目の要素、hは座標情報のi番目の要素のバンド幅である。
【0038】
図4(A)~(C)は、3×3画素の画像について密集度Sを算出する場合の例である。図4(A)は、白画素と黒画素との分布を示す図であり、図4(B)は、記憶部22に記憶された座標情報φを示す図である。なお、本例では説明のため、各画素に丸印、星印等の記号を付している。この例における上式の各パラメータは、以下の通りである。
k=1,2,・・・,9
N=4(白画素のデータ数)
φ(k):k番目の画素の座標情報
φ:記憶部22に格納された全ての白画素の座標情報
φ(k):k番目の画素のx座標
φ(k):k番目の画素のy座標
:x軸に関するバンド幅
:y軸に関するバンド幅
【0039】
図4(C)は、図4(A)について算出した各画素の密集度Sを示す図である。図4(C)に示すように、φ(5)(図中に星印で示す画素)が白画素全体の中央に位置しているので、φ(5)の密集度S(φ(5),φ)が高くなっていることがわかる。
【0040】
ここで、バンド幅hは、任意の方法によって設定可能なパラメータであり、例えば標準偏差を用いる方法等、公知の方法によって決定することができる。本実施の形態では、算出された密集度Sの分布に基づいてユーザによってバンド幅hが設定されることとし、対象領域における動物の疎密が判断し易いように適宜選択されることとする。より具体的には、ユーザは、算出される密集度Sの分布を確認しつつ、x軸に対してのバンド幅h(=h)、y軸に対してのバンド幅h(=h)をそれぞれ設定することとしている。
【0041】
図5は、冬季におけるある一日の1時から14時までの所定時刻の舎内画像Iの例である。また、図6(A)は、本実施の形態に係る密集度推定方法によって算出された、ある時刻の舎内画像Iの各画素に対応する密集度Sの分布図である。また、図6(B)は、各密集度の頻度を表すヒストグラムである。
【0042】
本実施の形態では、密集度推定部212-2は、各画素の密集度Sの平均値を算出し、算出された平均値を、その時刻の鶏の密集度を表す特徴量Fとしている。
【0043】
また、本実施の形態では、特徴量Fの算出に係る演算処理を簡単にするため、舎内画像Iの全体の画素に対応する密集度Sから、半数の画素に対応する密集度Sを抜き出して平均値を算出することとしている。これにより、より少ない演算負荷で特徴量Fを算出することができる。本実施の形態では、特徴量Fとして密集度Sの平均値を用いることとしたがこれに限られず、中央値、標準偏差、これらと平均値との組み合わせ等を用いることとしてもよい。
【0044】
図7は、図5の舎内画像Iから推定された鶏の密集度を表す特徴量Fの時間変化を示すグラフである。図5の舎内画像I図7のグラフとの比較から本実施の形態に係る密集度推定方法によって、適切に飼育舎内の鶏の密集度を推定できていることがわかる。
【0045】
より詳細な推定データを図8(A)~(D)及び図9(A)~(D)に示す。図8(A)~(D)は、密集度の低い時刻(2時)の舎内画像I図8(A))、二値画像である推定用画像I図8(B))、各座標の密集度S(図8(C))、密集度Sのヒストグラム(図8(D))である。また、図9(A)~(D)は、密集度の高い時刻(11時)の舎内画像I図9(A))、推定用画像I図9(B))、各座標の密集度S(図9(C))、密集度Sのヒストグラム(図9(D))である。
【0046】
これら図8(A)~(D)、図9(A)~(D)から、鶏の密集度の低い時刻、すなわち鶏がまばらで見える地面が多い時刻と、鶏の密集度の高い時刻、すなわち鶏が対象領域内に密集しており見える地面が少ない時刻とが適切に推定できていることがわかる。
【0047】
上記図7図8(A)~(D)、図9(A)~(D)は、冬季(12月)のある1日のデータの例である。他方、夏季(7月)のある1日のデータの例を図10~12に示す。図10は、密集度を表す特徴量Fの変化を示すグラフである。図11(A)~(D)は、密集度の高い時刻(3時)の舎内画像I図11(A))、推定用画像I図11(B))、各座標の密集度S(図11(C))、密集度Sのヒストグラム(図11(D))である。また、図12(A)~(D)は、密集度の低い時刻(12時)の舎内画像I図12(A))、推定用画像I図12(B))、各座標の密集度S(図12(C))、密集度Sのヒストグラム(図12(D))である。これら図10~12からも、本実施の形態に係る密集度推定方法によって、鶏の密集度の低い時刻と、鶏の密集度の高い時刻とが適切に推定できていることがわかる。
【0048】
図2のフローチャートに戻り、制御部21は、密集度推定部212-2で算出された密集度S、推定結果としての特徴量F等のデータを記憶部22に記憶させるとともに、表示部23に表示させる(ステップS18)。
【0049】
制御部21は、入力部24への推定終了の入力、予め設定された推定期間の終了等により密集度推定が終了するまで、上述の密集度推定を繰り返す(ステップS19のNO)。制御部21は、入力部24への推定終了の入力、予め設定された推定期間の終了等の終了条件を満たせば(ステップS19のYES)、処理を終了する。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態に係る密集度推定装置1では、飼育舎内の動物を撮影した舎内画像Iに基づくカーネル密度推定によって、動物の密集度を推定するので、即時に動物の密集度を推定することができる。また、舎内画像Iに基づいて密集度を推定するので、飼育舎内に温度計、二酸化炭素濃度測定器等の測定器を配置して動物の密集度を推定する方法と比較して、より正確に動物の密集度を推定することが可能である。
【0051】
本実施の形態では、飼育舎内を撮影した舎内画像Iを用いて直接密集度を推定することとしたが、これに限られない。例えば、舎内画像Iの歪み補正、トリミング等の処理を行った後に、密集度を推定することとしてもよい。これにより、より正確な密集度推定を行うことが可能となる。この場合、図2のフローチャートのステップS12とS13との間に画像補正処理を挿入し、補正後の画像を用いてグレースケール化以降の処理を行うこととすればよい。
【0052】
また、本実施の形態では、飼育舎である鶏舎で飼育される鶏の密集度を推定することとしたが、これに限られず、豚、うさぎ、あひる等、他の動物の密集度を推定することとしてもよい。この場合、飼育舎の地面等の背景と動物との画像データにおける輝度の差が大きくなるように、飼育舎内を塗装するなど背景色を調整することが好ましい。
【0053】
本実施の形態に係るカメラ10と制御ユニット20とは、直接接続されていることとしたが、これに限られない。例えば、カメラ10と制御ユニット20とがネットワークを介して接続されることとしてもよい。これにより、遠隔の場所で飼育舎内の動物の密集度を推定できるので、複数の飼育舎がある場合、大規模な飼育舎の場合等であっても、一カ所に情報を集約して容易に動物の育成環境を評価することができる。
【0054】
また、本実施の形態では、密集度推定装置1は、カメラ10を備え、カメラ10で撮影された舎内画像Iに基づいて、即時に密集度を推定することとしたが、これに限られない。例えば、記憶部22に記憶されている過去の舎内画像Iに基づいて密集度を推定することとしてもよい。これにより、サーバに蓄積された舎内画像Iから必要なデータを読み出して、動物の密集度を推定し、動物の育成環境と成長度合いとの関係の評価等に活用することができる。
【0055】
また、上記実施の形態に係る動物の密集度推定方法は、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、上記実施の形態に係る密集度推定を実行するためのコンピュータプログラムを、USBメモリ、DVD-ROM等のコンピュータが読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、当該コンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることにより、コンピュータ装置を上記の密集度推定を実行する密集度推定装置1の制御ユニット20として機能させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、飼育舎内で飼育される動物の密集度を推定して育成環境を評価する育成環境評価システムに好適である。特に、多数の動物が飼育される、鶏舎内における鶏の密集度推定を行う育成環境評価システムに好適である。
【符号の説明】
【0057】
1 密集度推定装置、10 カメラ、20 制御ユニット、21 制御部、211 カメラ制御部、212 推定部、212-1 画像データ処理部、212-2 密集度推定部、22 記憶部、23 表示部、24 入力部
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