(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-26
(45)【発行日】2025-03-06
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収システム
(51)【国際特許分類】
C01B 32/50 20170101AFI20250227BHJP
C25B 3/03 20210101ALI20250227BHJP
C25B 3/26 20210101ALI20250227BHJP
C25B 1/23 20210101ALI20250227BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20250227BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20250227BHJP
C25B 15/02 20210101ALI20250227BHJP
B01D 53/26 20060101ALI20250227BHJP
【FI】
C01B32/50
C25B3/03
C25B3/26
C25B1/23
C25B1/04
C25B9/00 G
C25B9/00 Z
C25B15/02
B01D53/26 231
(21)【出願番号】P 2023536785
(86)(22)【出願日】2022-07-20
(86)【国際出願番号】 JP2022028267
(87)【国際公開番号】W WO2023003029
(87)【国際公開日】2023-01-26
【審査請求日】2023-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2021120439
(32)【優先日】2021-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「ムーンショット型研究開発事業/地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000003285
【氏名又は名称】千代田化工建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 純
(72)【発明者】
【氏名】武田 大
(72)【発明者】
【氏名】橋本 伸也
(72)【発明者】
【氏名】大場 一哲
(72)【発明者】
【氏名】中西 周次
(72)【発明者】
【氏名】神谷 和秀
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-533470(JP,A)
【文献】特開2015-199042(JP,A)
【文献】特開2018-131647(JP,A)
【文献】特開2018-150596(JP,A)
【文献】特開2021-046575(JP,A)
【文献】国際公開第2012/164912(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/089221(WO,A1)
【文献】特開2018-001131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/26
C01B 32/00-32/991
C25B 1/00-9/77
13/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素回収システムであって、
二酸化炭素を含むガスが供給され、二酸化炭素を電解還元することによって、炭化水素、一酸化炭素、及び水素の少なくとも1つを含む生成ガスと未反応の二酸化炭素とを少なくとも含む混合ガスを生成する電解還元装置と、
前記混合ガスから二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離装置とを有し、
前記二酸化炭素分離装置は、カソードである第1ガス拡散電極と、アノードである第2ガス拡散電極と、前記第1ガス拡散電極及び前記第2ガス拡散電極の間に形成され、酸化還元に伴ってプロトンを吸脱着する化合物を含む電解液が供給される液室と、前記第1ガス拡散電極によって前記液室に対して区画され、前記混合ガスが供給される第1室と、前記第2ガス拡散電極によって前記液室に対して区画され、前記混合ガスから分離された二酸化炭素が流れる第2室とを有し、
前記電解還元装置は、前記二酸化炭素分離装置において前記混合ガスから分離された二酸化炭素を原料の一部として使用する二酸化炭素回収システム。
【請求項2】
前記二酸化炭素分離装置において二酸化炭素が分離された前記生成ガスから水を分離する少なくとも1つの水分除去装置と、
前記水分除去装置において水が分離された前記生成ガスを冷却することによって前記生成ガスから炭化水素を分離する生成ガス分離装置とを有する請求項1に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項3】
前記生成ガス分離装置において炭化水素が分離された前記生成ガスであるオフガスの少なくとも一部を燃焼させる燃焼炉を有し、
前記水分除去装置は、水を吸着して水が分離された前記生成ガスを放出する吸着工程と、前記燃焼炉で発生した熱を受けて前記吸着工程において吸着した水を放出する脱離工程とを実行する請求項2に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項4】
前記水分除去装置の前記脱離工程において放出される水を含むガスから液化した水を分離する第1気液分離装置と、
前記第1気液分離装置において水が分離されたガスを前記水分除去装置に戻す循環通路とを有し、
前記循環通路は前記燃焼炉と熱交換可能に配置されている請求項3に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項5】
前記循環通路に、前記水分除去装置において水が分離された前記生成ガスの一部を供給する請求項4に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項6】
前記燃焼炉において発生した、二酸化炭素及び水を含む排気を前記電解還元に供給する排ガス通路を有する請求項3に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項7】
前記水分除去装置は、並列に2つ設けられ、一方の前記水分除去装置が前記吸着工程を実行しているときに他方の前記水分除去装置が前記脱離工程を実行する請求項3に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項8】
前記二酸化炭素分離装置は、
前記二酸化炭素分離装置の前記第2室の入口及び出口に接続された二酸化炭素循環通路と、
前記二酸化炭素循環通路と前記電解還元装置のカソード室の入口とを接続する二酸化炭素戻し通路と、
前記二酸化炭素分離装置の前記第1室の入口と前記電解還元装置の前記カソード室の出口とを接続する混合ガス入口通路と、
前記二酸化炭素分離装置の前記第1室の出口に接続された生成ガス出口通路と、
前記液室の入口に電解液供給通路を介して接続されると共に、前記液室の出口に第1電解液戻し通路を介して接続された電解液タンクとを有する請求項1~7のいずれか1つの項に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項9】
前記二酸化炭素循環通路に設けられた第2気液分離装置と、
前記第2気液分離装置において分離された液体を前記電解液タンクに
戻す第2電解液戻し通路と、
前記二酸化炭素戻し通路に設けられた第1圧力制御弁と、
前記混合ガス入口通路又は前記生成ガス出口通路に設けられた第2圧力制御弁と、
前記電解液供給通路又は前記第1電解液戻し通路に設けられた第3圧力制御弁と、
前記第1室の圧力を第1圧力として検出する第1圧力センサと、
前記第2室の圧力を第2圧力として検出する第2圧力センサと、
前記液室の圧力を第3圧力として検出する第3圧力センサと、
前記第1圧力が前記第3圧力以上になり、かつ前記第3圧力が前記第2圧力以上になるように、前記第1圧力制御弁、前記第2圧力制御弁、及び前記第3圧力制御弁を制御する制御装置とを有する請求項8に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項10】
前記生成ガス出口通路において前記第1圧力制御弁よりも下流側に設けられた第4圧力制御弁と、
前記電解液タンクの頂部と前記生成ガス出口通路における前記第4圧力制御弁よりも上流側の部分とを接続するガス戻し通路と、
前記電解液タンクの圧力を第4圧力として検出する第4圧力センサとを有し、
前記制御装置は、前記第1圧力が前記第3圧力以上になり、かつ前記第3圧力が前記第4圧力以上になり、かつ前記第4圧力が前記第2圧力以上になるように、前記第1圧力制御弁、前記第2圧力制御弁、前記第3圧力制御弁、及び前記第4圧力制御弁を制御する請求項9に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項11】
前記炭化水素がメタン及びエチレンの少なくとも1つを含む請求項1に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項12】
酸化還元に伴ってプロトンを吸脱着する前記化合物が、pH7における標準水素電極電位基準での酸化還元電位が-1.0V~1.0Vの有機化合物である請求項1に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項13】
酸化還元に伴ってプロトンを吸脱着する前記化合物が、キノン系化合物である請求項1に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項14】
二酸化炭素回収システムであって、
二酸化炭素を含むガスが供給され、二酸化炭素を電解還元することによって、炭化水素、一酸化炭素、及び水素の少なくとも1つを含む生成ガスと未反応の二酸化炭素とを少なくとも含む混合ガスを生成する電解還元装置と、
前記混合ガスから二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離装置とを有し、
前記二酸化炭素分離装置は、
酸化還元に伴ってプロトンを吸脱着する化合物を含む電解液と前記混合ガスとを接触させ、前記電解液に前記混合ガス中の二酸化炭素を吸収させる二酸化炭素ガス吸収部と、
電解質膜と、前記電解質膜の両面に設けられ、電源に接続されたカソード及びアノードとを含む膜電極複合体によってカソード室及びアノード室に区画された電気化学セルと、
前記電解液を前記二酸化炭素ガス吸収部から前記アノード室に流す第1通路と、
前記電解液を前記アノード室から前記カソード室に流す第2通路と、
前記電解液を前記カソード室から前記二酸化炭素ガス吸収部に流す第3通路と、
前記第2通路に設けられ、前記電解液中と二酸化炭素ガスとを分離する気液分離装置とを有し、
前記電解還元装置は、前記二酸化炭素分離装置において前記混合ガスから分離された二酸化炭素を原料の一部として使用する二酸化炭素回収システム。
【請求項15】
前記二酸化炭素ガス吸収部は、上下に延び、底部に前記電解液を貯留するハウジングと、前記ハウジングの下部に設けられ、前記混合ガスが供給されるガス入口と、前記ハウジングの上端に設けられ、前記混合ガスが排出されるガス出口と、前記ハウジングの上部に設けられ、前記電解液を噴射するノズルと、前記ハウジングの前記底部に貯留された前記電解液を前記ノズルに供給する第4通路と、前記ハウジングにおいて前記ガス入口と前記ノズルとの間に設けられ、前記ノズルから供給された前記電解液を一時的に貯留するトレイと、前記トレイに設けられた電解液出口とを有し、
前記電解液出口は前記第1通路に接続され、
前記第3通路は前記第4通路に接続され、
前記第3通路には第1流量制御弁が設けられ、
前記第4通路における前記第3通路よりも前記ハウジングの前記底部側には第2流量制御弁が設けられ、
前記電源、前記第1流量制御弁、及び前記第2流量制御弁は制御装置によって制御され、
前記ハウジングの前記底部に貯留された前記電解液のpHをpH1、前記第4通路における前記第3通路よりも前記ノズル側の部分を流れる前記電解液のpHをpH2、前記第3通路を流れる前記電解液のpHをpH3、前記第1通路を流れる前記電解液のpHをpH4とすると、
前記制御装置は、pH3≧pH2≧pH1≧pH4≧5.5を満たすように、前記電源、前記第1流量制御弁、及び前記第2流量制御弁を制御する請求項14に記載の二酸化炭素回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、二酸化炭素(CO2)の電解還元反応によって、エチレン(C2H4)、メタン(CH4)、メタノール(CH3OH)、及びエタノール(C2H5OH)等の炭素数が1以上の炭化水素を生成する二酸化炭素電解装置を開示している。二酸化炭素電解装置は、ガス中から二酸化炭素を分離し、回収する二酸化炭素回収システムに適用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二酸化炭素電解装置では、カソードにおいて二酸化炭素が還元され、エチレン等の炭化水素が生成される。カソードにおいて生成された炭化水素は、未反応の二酸化炭素と共に二酸化炭素電解装置から排出されるため、後の工程で二酸化炭素を分離する必要がある。分離方法の1つとして深冷分離法がある。しかし、既存のエチレンプラントと同様な数十気圧程度の圧力において二酸化炭素を冷却すると、気体から固体に変化するため、液体に比べて取り扱いが難しく、回収や再利用の効率が低下するという問題がある。また、二酸化炭素を液体として回収するためには、二酸化炭素を高圧にする必要があり、エネルギー効率が悪いという問題がある。他の分離方法として、アミンに二酸化炭素を吸収させる方法がある。しかし、この方法では、アミンから二酸化炭素を回収する際にアミンを加熱する必要があり、エネルギー効率が悪いという問題がある。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑み、二酸化炭素回収システムにおいて、エネルギー効率を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、二酸化炭素回収システム(1)であって、二酸化炭素を含むガスが供給され、二酸化炭素を電解還元することによって、炭化水素、一酸化炭素、及び水素の少なくとも1つを含む生成ガスと未反応の二酸化炭素とを少なくとも含む混合ガスを生成する電解還元装置(2)と、前記混合ガスから二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離装置(3)とを有し、前記二酸化炭素分離装置は、カソードである第1ガス拡散電極(51)と、アノードである第2ガス拡散電極(52)と、前記第1ガス拡散電極及び前記第2ガス拡散電極の間に形成され、酸化還元に伴ってプロトンを吸脱着する化合物を含む電解液が供給される液室(53)と、前記第1ガス拡散電極によって前記液室に対して区画され、前記混合ガスが供給される第1室(54)と、前記第2ガス拡散電極によって前記液室に対して区画され、前記混合ガスから分離された二酸化炭素が流れる第2室(55)とを有し、前記電解還元装置は、前記二酸化炭素分離装置において前記混合ガスから分離された二酸化炭素を原料の一部として使用する。
【0007】
この態様によれば、二酸化炭素はガス状態で混合ガスから分離されるため、二酸化炭素の回収及び再利用に適している。また、電気化学を利用した二酸化炭素分離装置は、アミンを利用した分離方法に比べて少ないエネルギーで二酸化炭素を混合ガスから分離することができる。これにより、二酸化炭素回収システムにおいて、エネルギー効率を向上させることができる。
【0008】
上記の態様において、前記二酸化炭素分離装置において二酸化炭素が分離された前記生成ガスから水を分離する少なくとも1つの水分除去装置(4)と、前記水分除去装置において水が分離された前記生成ガスを冷却することによって前記生成ガスから炭化水素を分離する生成ガス分離装置(5)とを有してもよい。
【0009】
この態様によれば、生成ガスから水及び炭化水素を効率良く分離することができる。また、電解還元装置又は二酸化炭素分離装置において生成ガスに水が混入した場合にも、後の水分除去装置において水が分離される。
【0010】
上記の態様において、前記生成ガス分離装置において炭化水素が分離された前記生成ガスであるオフガスの少なくとも一部を燃焼させる燃焼炉(6)を有し、前記水分除去装置は、水を吸着して水が分離された前記生成ガスを放出する吸着工程と、前記燃焼炉で発生した熱を受けて前記吸着工程において吸着した水を放出する脱離工程とを実行してもよい。
【0011】
この態様によれば、生成ガスに含まれる水素及び一酸化炭素等の可燃性ガスの燃焼熱を利用して水分除去装置の脱離工程を行うことができ、エネルギー効率が向上する。
【0012】
上記の態様において、前記水分除去装置の前記脱離工程において放出される水を含むガスから液化した水を分離する第1気液分離装置(133)と、前記第1気液分離装置において水が分離されたガスを前記水分除去装置に戻す循環通路(116)とを有し、前記循環通路は前記燃焼炉と熱交換可能に配置されてもよい。
【0013】
この態様によれば、燃焼炉で発生した熱を利用して水分除去装置の脱離工程を行うことができる。
【0014】
上記の態様において、前記循環通路に、前記水分除去装置において水が分離された前記生成ガスの一部を供給してもよい。
【0015】
この態様によれば、生成ガスの一部を使用して、燃焼炉の熱を水分除去装置に供給することができる。
【0016】
上記の態様において、前記燃焼炉において発生した、二酸化炭素及び水を含む排気を前記電解還元に供給する排ガス通路(151)を有してもよい。
【0017】
この態様によれば、燃焼炉で発生した二酸化炭素及び水を、炭化水素や一酸化炭素等を生成するための原料の一部として使用することができる。
【0018】
上記の態様において、前記水分除去装置(4A、4B)は、並列に2つ設けられ、一方の前記水分除去装置が前記吸着工程を実行しているときに他方の前記水分除去装置が前記脱離工程を実行してもよい。
【0019】
この態様によれば、電解還元装置の連続運転が可能になる。
【0020】
上記の態様において、前記二酸化炭素分離装置は、前記二酸化炭素分離装置の前記第2室の入口及び出口に接続された二酸化炭素循環通路(71)と、前記二酸化炭素循環通路と前記電解還元装置のカソード室の入口とを接続する二酸化炭素戻し通路(75)と、前記二酸化炭素分離装置の前記第1室の入口と前記電解還元装置の前記カソード室の出口とを接続する混合ガス入口通路(62)と、前記二酸化炭素分離装置の前記第1室の出口に接続された生成ガス出口通路(64、66)と、前記液室の入口に電解液供給通路(81)を介して接続されると共に、前記液室の出口に第1電解液戻し通路(87)を介して接続された電解液タンク(82)とを有してもよい。
【0021】
この態様によれば、二酸化炭素循環通路において二酸化炭素の圧力を上昇させた後に、二酸化炭素戻し通路を介して電解還元装置に二酸化炭素を供給することができる。
【0022】
上記の態様において、前記二酸化炭素循環通路に設けられた第2気液分離装置(72)と、前記第2気液分離装置において分離された液体を前記電解液タンクに戻す第2電解液戻し通路(95)と、前記二酸化炭素戻し通路に設けられた第1圧力制御弁(76)と、前記混合ガス入口通路又は前記生成ガス出口通路に設けられた第2圧力制御弁(68)と、前記電解液供給通路又は前記第1電解液戻し通路に設けられた第3圧力制御弁(流量制御弁)(84)と、前記第1室の圧力を第1圧力として検出する第1圧力センサ(PS1)と、前記第2室の圧力を第2圧力として検出する第2圧力センサ(PS2)と、前記液室の圧力を第3圧力として検出する第3圧力センサ(PS3)と、前記第1圧力が前記第3圧力以上になり、かつ前記第3圧力が前記第2圧力以上になるように、前記第1圧力制御弁、前記第2圧力制御弁、及び前記第3圧力制御弁を制御する制御装置(7)とを有してもよい。
【0023】
この態様によれば、電解液が生成ガスに混入し難くすることができる。また、二酸化炭素循環通路に漏出した電解液を電解液タンクに戻すことができる。
【0024】
上記の態様において、前記生成ガス出口通路において前記第1圧力制御弁よりも下流側に設けられた第4圧力制御弁(69)と、前記電解液タンクの頂部と前記生成ガス出口通路における前記第4圧力制御弁よりも上流側の部分とを接続するガス戻し通路(97)と、前記電解液タンクの圧力を第4圧力として検出する第4圧力センサ(PS4)とを有し、前記制御装置は、前記第1圧力が前記第3圧力以上になり、かつ前記第3圧力が前記第4圧力以上になり、かつ前記第4圧力が前記第2圧力以上になるように、前記第1圧力制御弁、前記第2圧力制御弁、前記第3圧力制御弁、及び前記第4圧力制御弁を制御してもよい。
【0025】
この態様によれば、電解液タンクの頂部に滞留したガスをガス戻し通路を介して生成ガス出口通路にもどすことができる。
【0026】
上記の態様において、前記炭化水素がメタン及びエチレンの少なくとも1つを含んでもよい。
【0027】
この態様によれば、二酸化炭素からメタン、エチレン、一酸化炭素の少なくとも1つを製造することができる。
【0028】
上記の態様において、酸化還元に伴ってプロトンを吸脱着する前記化合物が、pH7における標準水素電極電位基準での酸化還元電位が-1.0V~1.0Vの有機化合物であってもよい。酸化還元に伴ってプロトンを吸脱着する前記化合物が、キノン系化合物であってもよい。
【0029】
これらの態様によれば、二酸化炭素を効率良く分離することができる。
【0030】
本発明の他の態様は、二酸化炭素回収システム(1)であって、二酸化炭素を含むガスが供給され、二酸化炭素を電解還元することによって、炭化水素、一酸化炭素、及び水素の少なくとも1つを含む生成ガスと未反応の二酸化炭素とを少なくとも含む混合ガスを生成する電解還元装置(2)と、前記混合ガスから二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離装置(400)とを有し、前記二酸化炭素分離装置は、酸化還元に伴ってプロトンを吸脱着する化合物を含む電解液と前記混合ガスとを接触させ、前記電解液に前記混合ガス中の二酸化炭素を吸収させる二酸化炭素ガス吸収部(401)と、電解質膜(416A)と、前記電解質膜の両面に設けられ、電源(419)に接続されたカソード(416B)及びアノード(416C)とを含む膜電極複合体(416)によってカソード室(417)及びアノード室(418)に区画された電気化学セル(402)と、前記電解液を前記二酸化炭素ガス吸収部から前記アノード室に流す第1通路(403)と、前記電解液を前記アノード室から前記カソード室に流す第2通路(404)と、前記電解液を前記カソード室から前記二酸化炭素ガス吸収部に流す第3通路(405)と、前記第2通路に設けられ、前記電解液中と二酸化炭素ガスとを分離する気液分離装置(406)とを有し、前記電解還元装置は、前記二酸化炭素分離装置において前記混合ガスから分離された二酸化炭素を原料の一部として使用する。
【0031】
この態様によれば、二酸化炭素はガス状態で混合ガスから分離されるため、二酸化炭素の回収及び再利用に適している。また、電気化学を利用した二酸化炭素分離装置は、アミンを利用した分離方法に比べて少ないエネルギーで二酸化炭素を混合ガスから分離することができる。これにより、二酸化炭素回収システムにおいて、エネルギー効率を向上させることができる。
【0032】
上記の態様において、前記二酸化炭素ガス吸収部は、上下に延び、底部に前記電解液を貯留するハウジング(431))と、前記ハウジングの下部に設けられ、前記混合ガスが供給されるガス入口(411)と、前記ハウジングの上端に設けられ、前記混合ガスが排出されるガス出口(412)と、前記ハウジングの上部に設けられ、前記電解液を噴射するノズル(432)と、前記ハウジングの前記底部に貯留された前記電解液を前記ノズルに供給する第4通路(433)と、前記ハウジングにおいて前記ガス入口と前記ノズルとの間に設けられ、前記ノズルから供給された前記電解液を一時的に貯留するトレイ(434)と、前記トレイに設けられた電解液出口(414)とを有し、前記電解液出口は前記第1通路に接続され、前記第3通路は前記第4通路に接続され、前記第3通路には第1流量制御弁(436A)が設けられ、前記第4通路における前記第3通路よりも前記ハウジングの前記底部側には第2流量制御弁(436B)が設けられ、前記電源、前記第1流量制御弁、及び前記第2流量制御弁は制御装置(7)によって制御され、前記ハウジングの前記底部に貯留された前記電解液のpHをpH1、前記第4通路における前記第3通路よりも前記ノズル側の部分を流れる前記電解液のpHをpH2、前記第3通路を流れる前記電解液のpHをpH3、前記第1通路を流れる前記電解液のpHをpH4とすると、前記制御装置は、pH3≧pH2≧pH1≧pH4≧5.5を満たすように、前記電源、前記第1流量制御弁、及び前記第2流量制御弁を制御してもよい。
【0033】
この態様によれば、電解液への二酸化炭素ガスの吸収と、電解液からの二酸化炭素ガスの放出とを効率良く行うことができる。
【発明の効果】
【0034】
以上の態様によれば、二酸化炭素回収システムにおいて、エネルギー効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】第1実施形態に係る二酸化炭素回収システムを示す説明図
【
図2】第1実施形態に係る電解還元装置を示す説明図
【
図3】第1実施形態に係る二酸化炭素分離装置を示す説明図
【
図4】二酸化炭素分離装置における二酸化炭素の分離メカニズムを示す説明図
【
図5】第2実施形態に係る二酸化炭素回収システムを示す説明図
【
図6】第3実施形態に係る二酸化炭素分離装置を示す説明図
【
図7】第4実施形態に係る二酸化炭素分離装置を示す概略説明図
【
図8】第4実施形態に係る二酸化炭素分離装置を示す詳細説明図
【
図10】実施例2に係る各成分の回収率を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係る二酸化炭素回収システムの実施形態について説明する。
図1に示すように、実施形態に係る二酸化炭素回収システム1は電解還元装置2と、二酸化炭素分離装置3とを主要な構成として有する。また、二酸化炭素回収システム1は、水分除去装置4と、生成ガス分離装置5と、燃焼炉6とを更に有する。また、二酸化炭素回収システム1は、各装置及び後述する流量制御弁等を制御する制御装置7を有する。制御装置7は、プロセッサ、メモリ、プログラムを記憶する記憶装置を有し、プログラムを実行することによって各装置等を制御する。
【0037】
電解還元装置2は、二酸化炭素を含むガスを供給し、二酸化炭素を電解還元することによって、炭化水素、一酸化炭素、及び水素の少なくとも1つを含む生成ガスと未反応の二酸化炭素とを少なくとも含む混合ガスを生成する。混合ガスは、電解還元装置2のカソード16側から排出される。電解還元装置2のカソードでは、以下の化学式(1)~(4)で表されるように、電極に付加された触媒種や運転条件によって、二酸化炭素が還元されて、エチレンを主生成物として含み、一酸化炭素、メタン、水素等の副生成物を含む生成物が得られる。
2CO2+12H++12e-→C2H4+4H2O ...(1)
CO2+8H++8e-→CH4+2H2O ...(2)
CO2+2H++2e-→CO+H2O ...(3)
2H++2e-→H2 ...(4)
電解還元装置2のアノードでは、以下の化学式(5)で表されるように、水が酸化されて酸素が生成される。
2H2O→O2+4H++4e- ...(5)
電解還元装置2は、ガス拡散電極であるカソードによって区画されたカソードガス室及びカソード液室と、セパレータによってカソード液室に対して区画され、アノードが配置されたアノード液室とを有する3室型の電解還元装置や、電解質膜をカソードとアノードとで挟んだ膜電極複合体(MEA)を使用した電解還元装置等であるとよい。
【0038】
図2に電解還元装置2の一例を示す。電解還元装置2は、膜電極複合体10によって互いに区画されたカソード室11及びアノード室12を有する電解セル14を有する。膜電極複合体10は、電解質膜15と、電解質膜15の一方の面に設けられたカソード16と、電解質膜15の他方の面に設けられたアノード17とを有する。カソード室11には、気体の二酸化炭素が供給される。アノード室12には、アノード液が供給される。カソード16及びアノード17は直流電源19に接続されている。
【0039】
アノード液は、電解質が溶解した水溶液である。電解質は、カリウム、ナトリウム、リチウム、又はこれらの化合物の少なくとも1つを含む。電解質は、例えば、LiOH、NaOH、KOH、Li2CO3、Na2CO3、K2CO3、LiHCO3、NaHCO3、及びKHCO3からなる群から選択される少なくとも1つを含むとよい。
【0040】
電解質膜15は、プロトンを透過するプロトン伝導体によって形成されている。電解質膜15は、例えば固体高分子電解質膜であり、スルホン酸基を有するフッ素樹脂系の陽イオン交換樹脂膜であるとよい。
【0041】
カソード16は、ガス拡散電極である。カソード16は、二酸化炭素を含む気体を透過する。カソード16は、例えばカーボンペーパーやカーボンフェルト、カーボンクロス等の多孔質の導電性基材の表面に、ポリテトラフルオロエチレン等の撥水性被膜を形成したものであってよい。導電性基材は、直流電源19の負極に接続され、電子の供給を受ける。カソード16には触媒が担持されている。触媒は、公知の二酸化炭素還元触媒であってよく、例えば銅等の第11族元素、亜鉛等の第12族元素、ガリウム等の第13族元素、ゲルマニウム等の第14族元素、又はこれらの金属化合物の少なくとも1種を含む。金属化合物は、酸化物、硫化物、リン化物の少なくとも1つを含む。触媒は、二酸化炭素を還元してエチレンを生成するために適したものが好ましく、例えば銅又は銅化合物に第11族元素、第12族元素、第13族元素、及び第14族元素の金属、及びそれらの金属化合物を組み合せた材料を用いることが好ましい。
【0042】
アノード17は、例えば、チタニウム、ニッケル、モリブデン、白金、金、銀、銅、鉄、鉛等の金属材料又はこれらの金属合金材料、カーボン等の炭素系材料又は導電性セラミックで構成されている。アノード17の形状は、複数の開口を備えた平板、メッシュ、及び多孔体であってよい。アノード17には、白金やイリジウム等の酸素発生触媒が担持されている。
【0043】
直流電源19は、火力発電や原子力発電、太陽光発電、風力発電、水力発電等によって得られた電力を、必要に応じて直流に変換し、カソード16及びアノード17に供給する。二酸化炭素排出量の削減の観点から、自然エネルギー(再生可能エネルギー)を利用した太陽光発電や風力発電、水力発電等によって得られた電力を直流電源19として使用することが好ましい。直流電源19は、アノード17に対してカソード16が負電位になるように電圧を印加する。直流電源19は、参照電極を使用してカソード16の電位を取得し、カソード16の電位が所定の範囲内となるように印加する電圧を制御するとよい。
【0044】
カソード室11は、入口24及び出口25を有する。
図1及び
図2に示すように、カソード室11の入口24は、第1供給通路26を介して二酸化炭素供給源27に接続されている。二酸化炭素供給源27は、二酸化炭素ガスを供給可能な設備であれば特に限定されることは無く、好ましくは貯蔵するタンク等であるとよい。カソード室11の出口25は、ガス循環通路28を介して第1供給通路26に接続されている。二酸化炭素供給源27と第1供給通路26との間には、流量制御弁29が設けられている。流量制御弁29は、二酸化炭素供給源27から第1供給通路26に供給される二酸化炭素ガスの流量を制御する。
【0045】
アノード室12は、入口31及び出口32を有する。アノード室12の入口31は、第2供給通路33を介して水供給源34に接続されている。水供給源34は、液体の水を第2供給通路33に供給する。アノード室12の出口32は、アノード液循環通路35を介して第2供給通路33に接続されている。水供給源34と第2供給通路33との間には、流量制御弁36が設けられている。流量制御弁36は、水供給源34から第2供給通路33に供給される液体の水の流量を制御する。第2供給通路33には、内部を流れる水の流量を計測する流量センサS12が設けられている。
【0046】
ガス循環通路28には内部を循環するガスの一部を排出するガス循環流量調節装置38が設けられている。ガス循環流量調節装置38の排出口は、カソード出口通路39に接続されている。ガス循環流量調節装置38は、カソード出口通路39にガスを排出することによって、ガス循環通路28及びカソード室11を循環するガスの流量及び圧力を調節する。
【0047】
アノード液循環通路35には、気液分離装置41が設けられている。気液分離装置41は、アノード液から気体を分離し、気体をアノード出口通路42に送出する。また、アノード液循環通路35には、アノード液の電解質濃度を所定の範囲に調節するための電解質濃度制御装置43が設けられているとよい。電解質濃度制御装置43は、アノード液の電解質濃度を検出するセンサと、所定の濃度の新しいアノード液を供給する電解質液供給機と、循環するアノード液の一部を排出する排水装置とを含むとよい。
【0048】
カソード室11の二酸化炭素はカソード16の内部に拡散し、還元される(化学式(1)参照)。これにより、エチレンを主生成物として含み、メタン、水素、一酸化炭素、ギ酸等の副生成物を含む生成ガスが得られる。生成ガスは、カソード室11内の未反応の二酸化炭素と混合し、混合ガスとなる。混合ガスは、水及びプロパン及びブタン等の炭化水素を含んでよい。混合ガスの主成分は、エチレン及び二酸化炭素である。
【0049】
二酸化炭素の還元反応によって生成した生成物と未反応の二酸化炭素とを含む生成ガスは、ガス循環通路28を循環し、ガス循環流量調節装置38からカソード出口通路39に送出される。
【0050】
アノード17では、アノード液中の水及び水酸化物イオンが酸化し、気体の酸素が発生する(化学式(5)参照)。気体の酸素は、アノード液循環通路35の気液分離装置41によってアノード液から分離され、アノード出口通路42に送出される。
【0051】
電解還元装置2では、カソード16におけるエチレンの生成に対するファラデー効率が30%以上、好ましくは50%以上となるようにカソード16に担持された触媒及びカソード16の電位が設定されているとよい。ここで、ファラデー効率は、電解セル14に流れた全電流に対し、各生成物の生成に寄与した電流の比率と定義する。電解還元装置2では、カソード16におけるエチレンの生成に対する選択率が30%以上となるようにカソード16に担持された触媒が選択されているとよい
【0052】
アノード出口通路42を流れるガスは、主に酸素である。なお、アノード出口通路42を流れるガスに、二酸化炭素が混入する場合もある。
【0053】
電解還元装置2のカソード出口通路39から排出される混合ガスは二酸化炭素分離装置3に供給される。二酸化炭素分離装置3は、混合ガスから二酸化炭素を分離する。
図3に示すように、二酸化炭素分離装置3は、カソードである第1ガス拡散電極51と、アノードである第2ガス拡散電極52と、第1ガス拡散電極51及び第2ガス拡散電極52の間に形成され、酸化還元に伴ってプロトンを吸脱着する化合物を含む電解液が供給される液室53と、第1ガス拡散電極51によって液室53に対して区画され、生成ガスが供給される第1室54と、第2ガス拡散電極52によって液室53に対して区画され、生成ガスから分離された二酸化炭素が流れる第2室55とを有する。本実施形態では、二酸化炭素分離装置3は、第2ガス拡散電極52、液室53、第1ガス拡散電極51の順に配置された第1ユニットと、第1ガス拡散電極51、液室53、第2ガス拡散電極52の順に配置された第2ユニットとが互いに間隔をおいて交互に複数積層されたスタック59を有する。互いに隣り合う2つの第1ガス拡散電極51の間には第1室54が形成され、互いに隣り合う2つの第2ガス拡散電極52の間には第2室55が形成されている。
【0054】
第1ガス拡散電極51及び第2ガス拡散電極52のそれぞれは、多孔質導電体を有する。多孔質導電体は、反応面積を増大させるために比表面積が大きいことが好ましい。好ましくは、多孔質導電体の比表面積はBET吸着測定において1m2/g以上、より好ましくは100m2/g以上、更に好ましくは500m2/g以上である。多孔質導電体の表面抵抗は低いほど好ましく、1kΩ/□以下、より好ましくは200Ω/□以下である。多孔質導電体は、例えば、カーボンシート、カーボンクロス、カーボンペーパーであるとよい。
【0055】
第1ガス拡散電極51及び第2ガス拡散電極52は、溶液抵抗による電圧降下(IRドロップ)をできる限り小さくするため、互いに接触しない程度の距離で可能な限り近接させることが好ましい。第1ガス拡散電極51及び第2ガス拡散電極52の間に、セパレータが挿入されてもよい。セパレータは、絶縁性を有し、かつ電解液を透過させる。セパレータは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンに代表されるポリオレフィン多孔質膜、ポリエステル、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミドの多孔質膜及び不織布等から選択されるとよい。
【0056】
複数の第1ガス拡散電極51は直流電源61の負極に接続され、複数の第2ガス拡散電極52は直流電源61の正極に接続されている。
【0057】
電解還元装置2のカソード出口通路39は、混合ガス入口通路62を介して各第1室54の入口に接続されている。混合ガス入口通路62の下流部は、各第1室54に対応して分岐している。混合ガス入口通路62の上流部には、生成ガスを各第1室54に向けて送出するブロア63が設けられている。
【0058】
各第1室54の出口のそれぞれは、複数の第1生成ガス出口通路64を介して第1ベッセル65に接続されている。第1ベッセル65は、第2生成ガス出口通路66に接続されている。各第1室54から排出された生成ガスは、複数の第1生成ガス出口通路64のいずれか1つ、第1ベッセル65、第2生成ガス出口通路66を通過して二酸化炭素分離装置3から排出される。第2生成ガス出口通路66には、第1ベッセル65側から順に圧力制御弁68、圧力制御弁69が設けられている。各第1室54の出口のそれぞれは、各第1室54の入口のそれぞれより上方に配置されているとよい。
【0059】
各第2室55の入口と出口とは、二酸化炭素循環通路71によって接続されている。各第2室55の出口のそれぞれは、各第2室55の入口のそれぞれよりも下方に配置されているとよい。二酸化炭素循環通路71には、第2室55の出口側から入口側にかけて、第2ベッセル72、ブロア73、第3ベッセル74が順に設けられている。各第2室55及び二酸化炭素循環通路71には、主として二酸化炭素ガスが流れている。
【0060】
第2ベッセル72は、気液分離装置として機能する。第2ベッセル72の底部は各第2室55の出口のそれぞれよりも下方に配置され、二酸化炭素循環通路71は各第2室55の出口のそれぞれから第2ベッセル72に向けて下っているとよい。これにより、各液室53から各第2室55に電解質液が漏出した場合、漏出した液体は第2ベッセル72の底部に滞留する。
【0061】
第2ベッセル72内の気体成分は、第2ベッセル72の頂部からブロア73に流れる。ブロア73は、二酸化炭素循環通路71内のガスを第3ベッセル74側に向けて送出する。二酸化炭素循環通路71には、循環する二酸化炭素ガスを電解還元装置2のカソード室11の入口に戻すための二酸化炭素戻し通路75が接続されている。二酸化炭素戻し通路75は、第3ベッセル74と第1供給通路26とに接続されているとよい。二酸化炭素戻し通路75には、圧力制御弁76が設けられている。
【0062】
各液室53の入口のそれぞれは、電解液供給通路81を介して電解液タンク82に接続されている。電解液供給通路81は、各液室53に対応して分岐している。電解液供給通路81には、電解液タンク82側から順に、ポンプ83、流量制御弁(圧力制御弁)84、及び温度調節器85が設けられている。ポンプ83は、電解液を電解液タンク82から各液室53に送出する。温度調節器85は、電解液の温度を調節する。温度調節器85は、電解液を例えば常温から80℃以下に調節する。各液室53の出口のそれぞれは、第1電解液戻し通路87を介して電解液タンク82に接続されている。これにより、電解液は、電解液タンク82、電解液供給通路81、各液室53、及び第1電解液戻し通路87を循環する。
【0063】
電解液供給通路81におけるポンプ83と流量制御弁84との間の部分は、循環通路88を介して電解液タンク82に接続されている。循環通路88には、循環通路88を通過する電解液の組成及び濃度の少なくとも一方を含む情報を検出する電解液センサCS1が設けられている。電解液センサCS1は、例えば吸光光度計や導電率センサであってよい。吸光光度計は、紫外可視分光光度計であるとよい。
【0064】
電解液タンク82は、電解液補給通路91を介して高濃度電解液タンク92に接続されている。高濃度電解液タンク92には、高濃度電解液が貯留されている。高濃度電解液は、電解液タンク82に貯留されている電解液よりも電解質及び後述する酸化還元に伴ってプロトンを吸脱着する化合物の濃度が高い。電解液補給通路91には、高濃度電解液を高濃度電解液タンク92から電解液タンク82に向けて送出するポンプ93が設けられている。
【0065】
第2ベッセル72の底部は、第2電解液戻し通路95を介して電解液タンク82に接続されている。第2電解液戻し通路95には、第2ベッセル72から電解液タンク82に向けて電解液を送出するポンプ96が設けられている。これにより、二酸化炭素ガスから分離され、第2ベッセル72の底部に溜まった電解液は、第2電解液戻し通路95を介して電解液タンク82に戻される。
【0066】
電解液タンク82の頂部は、ガス戻し通路97を介して第2生成ガス出口通路66における圧力制御弁68と圧力制御弁69との間の部分に接続されている。ガス戻し通路97には温度調節器98が設けられている。電解液タンク82の気相の圧力は、圧力制御弁69によって制御され、電解液タンク82内のガスは第2生成ガス出口通路66に流れる。
【0067】
第1ベッセル65及び第3ベッセル74には、それぞれの気相部分の内圧を測定する圧力センサPS1、PS2が設けられている。また、電解液供給通路81の流量制御弁84と液室53側の端部との間の部分には、内圧を測定する圧力センサPS3が設けられている。また、電解液タンク82には、気相部分の内圧を測定する圧力センサPS4が設けられている。混合ガス入口通路62のブロア63より第1室54側の部分には、流量センサFS1が設けられている。二酸化炭素循環通路71のブロア73と第3ベッセル74との間の部分には、流量センサFS2が設けられている。電解液供給通路81のポンプ83と流量制御弁84との間の部分には、流量センサFS3が設けられている。電解液タンク82には、内部の電荷液の温度を測定する温度センサTS1が設けられている。各圧力センサPS1~PS4、各流量センサFS1~FS3、及び温度センサTS1は、制御装置7と接続されている。他の実施形態では、圧力センサPS1は混合ガス入口通路62のブロア63と第1室54との間の部分に設けられてもよい。また、圧力センサPS3は、第1電解液戻し通路87に設けられてもよい。
【0068】
電解液は、溶質と、溶質が溶解される溶媒とから構成される。溶質は、溶媒に溶解した際に炭酸を生じるか、電離により炭酸水素イオン、炭酸イオンを生じる。溶質は、例えばアルカリ金属の炭酸水素塩、炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸水素塩、炭酸塩からなる群から選択される少なくとも1つを含むとよい。溶質は、具体的には、NaHCO3、KHCO3、LiHCO3、Na2CO3、K2CO3、Li2CO3であるとよい。溶媒は、水であるとよい。
【0069】
電解液には、酸化還元に伴ってプロトンを吸脱着する化合物が溶解していると良い。化合物は、pH7における標準水素電極電位基準での酸化還元電位が-1.0V~1.0Vの有機化合物が良い。化合物は、例えば、キノン系化合物、インドフェノール系化合物、インディゴ系化合物等であり、キノン系化合物が好ましい。化合物は、例えば、クロラミン-T、o-トリジン、2,5-ジヒドロキシ-1,4-ベンゾキノン、p-アミノジメチルアニリン、o-キノン、1,2-ジフェノール、p-アミノフェノール、1,4-ベンゾキノン、2,6,2′-トリクロロインドフェノール、インドフェノール、フェノールブルー、2,6-ジクロロフェノールインドフェノール(DCPIP)、2,6-ジブロモ-2′-メトキシインドフェノ-ル、1,2-ナフトキノン、1-ナフトール-2-スルホン酸インドフェノール、トルイレンブルー、デヒドロアスコルビン酸/アスコルビン酸、N-メチルフェナジニウムメトサルフェート(PMS)、チオニン、フェナジンエトスルフェート、1,4-ナフトキノン、トルイジンブルー、チオインジゴジスルホン酸塩、メチレンブルー、2-メチル-1,4-ナフトキノン(ビタミンK3)、インディゴテトラスルホン酸塩、メチルカプリブルー、インジゴトリスルホン酸塩、インディゴジスルホン酸塩、2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、2-アミノ-N-メチルフェナジンメトサルフェート、インディゴモノスルホン酸塩、ブリリアントアリザリンブルー、2-メチル-3-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、9-メチル-イソアロキサジン、アントラキノン-2,6-ジスルフェート、ニュートラルブルー、リボフラビン、アントラキノン-1-スルフェート、フェノサフラニン、サフラニンT、リポ酸、アクリジン、ニュートラルレッド、シスチン/システイン、ベンジルビオロゲン、1-アミノアクリジン、メチルビオロゲン、2-アミノアクリジン、2,8-ジアミノアクリジン、5-アミノアクリジンの群から選択される少なくとも1つを含むと良い。
【0070】
キノン系化合物は、ヒドロキシ基を含むヒドロキノン系化合物と、ヒドロキノン系化合物の酸化により得られ、かつカルボニル基を含むベンゾキノン系化合物とを含む。電解液に含まれるキノン系化合物は、酸素と比べて相対的に高い電子求引性の官能基を備えている。これにより、電解液中に供される原料ガスが二酸化炭素のみならず酸素を含む場合において、キノン系化合物の相対的に大きな電子求引性の官能基の存在により、第1ガス拡散電極51側の電極反応に伴い生じる電子を、酸素よりもキノン系化合物が受けやすい。すなわち、酸素よりもキノン系化合物が還元しやすくなり、カルボニル基を含むベンゾキノン系化合物がヒドロキシ基を含むヒドロキノン系化合物に還元される一方、酸素は還元されにくい。これにより、還元反応後のヒドロキノン系化合物がすぐさま酸素により酸化されることが回避される。即ち、電子求引基を備えたヒドロキノン系化合物は酸素による酸化に対して耐性がある。
【0071】
キノン系化合物の官能基は、一例として、スルホン酸塩であるとよい。スルホン酸塩は、スルホ基(-SO3)とアルカリ金属元素とを有し、例えばスルホン酸ナトリウム又はスルホン酸カリウムであるとよい。また、電子求引性を高める観点から1以上であればよい。また、官能基の数は1つ以上あればよく、電子求引性を高める観点から2つ以上4つ以下であることが好ましい。
【0072】
キノン系化合物は、還元反応後において、上記官能基に加えてヒドロキシ基を含むヒドロキノン系化合物である。ヒドロキシ基の数は、芳香族性の確保の観点から、2つ以上4つ以下であるとよい。ヒドロキノン系化合物は、例えば、4,5-ジヒドロキシ-1,3-ベンゼンジスルホン酸二ナトリウム(タイロン)、又はヒドロキノンスルホン酸カリウムであるとよい。
【0073】
また、キノン系化合物は、酸化反応後において、上記官能基に加えてカルボニル基を含むベンゾキノン系化合物である。ベンゾキノン系化合物は、第2ガス拡散電極52での酸化反応により、ヒドロキシ基がカルボニル基に置換された化合物になる。以下に、ベンゾキノン系化合物の化学式(6)を示す。ここでR
1~R
4は、H(水素)や官能基等である。
【化1】
また、ベンゾキノン系化合物の具体例として、4,5-ジヒドロキシ-1,3-ベンゼンジスルホン酸の化学式(7)を示す。
【化2】
【0074】
次に、
図4を参照して二酸化炭素分離装置3の動作について説明する。各液室53のカソードとしての第1ガス拡散電極51では、以下の化学式(8)のように、電解液中のベンゾキノン系化合物(Q)が還元してヒドロキノン系化合物(QH
2)になる。
Q+2H
++2e
-→QH
2 ...(8)
【0075】
このとき、第1ガス拡散電極51の近傍においてプロトン(H+)がヒドロキノン系化合物に吸蔵されるため、第1ガス拡散電極51の近傍の電解質のpHが還元反応前と比べて相対的に高くなる。pHが相対的に高くなると、二酸化炭素は、その性質により、電解液の溶媒としての水に溶け易くなる。これにより、各第1室54の生成ガス中の二酸化炭素が第1ガス拡散電極51を介して各液室53内の電解液に溶解する。そして、以下の化学式(9)~(11)の反応により、電解液中において二酸化炭素は炭酸水素イオンになる。化学式(9)~(11)は平衡反応である。
CO2+H2O⇔H2CO3 ...(9)
H2CO3⇔H++HCO3
- ...(10)
HCO3
-⇔H++CO3
2- ...(11)
【0076】
各液室53のアノードとしての第2ガス拡散電極52では、以下の化学式(12)のように、電解液中のヒドロキノン系化合物(QH2)が酸化してベンゾキノン系化合物(Q)になる。
QH2→Q+2H++2e- ...(12)
【0077】
このとき、第2ガス拡散電極52の近傍においてヒドロキノン系化合物由来のプロトン(H+)が放出されるため、第2ガス拡散電極52の近傍の電解質のpHが酸化反応前と比べて相対的に低くなる。pHが相対的に低くなると、化学式(9)~(11)において、炭酸水素イオン、炭酸の平衡状態が炭酸側に偏る。これにより、二酸化炭素が生成される。これにより、電解液中の二酸化炭素が、各第2ガス拡散電極52を介して各第2室55に放出される。このようにして、各第1室54内の混合ガス中の二酸化炭素ガスが、各第2室55にガス状態で分離される。このとき、混合ガス中の炭化水素、酸素、水素等は電解液に溶解せず、第1室54に維持される。これにより、二酸化炭素分離装置3は、混合ガスから二酸化炭素を分離することができる。
【0078】
キノン系化合物の酸化還元反応により、第1ガス拡散電極51側のpHが相対的に高くなり、第2ガス拡散電極52側のpHが相対的に低くなる。これにより、電解液においてpH勾配が形成され、炭酸水素イオン、炭酸、炭酸イオンを第2ガス拡散電極52側に移動させることができる。これにより、第2室55に分離することができる二酸化炭素のガス流量を増加させることができる。
【0079】
二酸化炭素が分離された混合ガス(生成ガス)は、各第1室54から第1ベッセル65を介して第2生成ガス出口通路66に流れる。第2室55に分離された二酸化炭素ガスは、二酸化炭素循環通路71及び各第2室55を循環する。このとき、第2ベッセル72において電解液が二酸化炭素ガスから分離され、第2電解液戻し通路95を介して電解液タンク82に戻される。二酸化炭素循環通路71を流れる二酸化炭素ガスは、圧力制御弁76が開かれることによって、二酸化炭素戻し通路75及び第1供給通路26を介して電解還元装置2に戻される。電解還元装置2は、二酸化炭素分離装置3において生成ガスから分離された二酸化炭素を原料の一部として使用する。
【0080】
制御装置7は、圧力センサPS1、PS2、PS3、及びPS4からの信号に基づいて、第1室54の圧力PL1、第2室55の圧力PL2、液室53の圧力PL3、及び電解液タンク82の圧力PL4を検出する。制御装置7は、圧力センサPS1が検出する第1ベッセル65の圧力を第1室54の圧力PL1、圧力センサPS2が検出する第3ベッセル74の圧力を第2室55の圧力PL2、圧力センサPS3が検出する電解液供給通路81の圧力を液室53の圧力PL3に設定するとよい。制御装置7は、各第1室54の圧力PL1が各液室53の圧力PL3以上になり、かつ各液室53の圧力PL3が各第2室55の圧力PL2以上になるように、圧力制御弁68、76、及び流量制御弁84を制御する(PL1≧PL3≧PL2)。また、制御装置7は、各第1室54の圧力PL1が各液室53の圧力PL3以上になり、かつ各液室53の圧力PL3が電解液タンク82の圧力PL4以上になり、かつ電解液タンク82の圧力PL4が各第2室55の圧力PL2以上になるように、圧力制御弁68、69、76、及び流量制御弁84を制御するとよい(PL1≧PL3≧PL4≧PL2)。各第1室54の圧力PL1が各液室53の圧力PL3以上になることによって、液室53の電解液が第1ガス拡散電極51を通過して第1室54に漏出することが抑制される。また、各液室53の圧力PL3が電解液タンク82の圧力PL4以上になる事によって、仮に液室53へ第1室54からガスが混入した場合でも、電解液タンク82においてガスと電解液の分離が促される。また、各液室53の圧力PL3が各第2室55の圧力PL2以上になることによって、電解液中の二酸化炭素が第2ガス拡散電極52を通過して第2室55に放出され易くなる。各第2室55に漏出した電解液は、第2ベッセル72によって分離され、電解液タンク82に戻される。
【0081】
制御装置7は、電解液センサCS1からの信号に基づいて電解液中のキノン系化合物の濃度を取得し、キノン系化合物の濃度が所定の判定値以下であるときにポンプ93を駆動して高濃度電解液タンク92から高濃度電解液を電解液タンク82に供給する。高濃度電解液は、各液室53に供給される電解液よりもキノン系化合物及び電解質の濃度が高い。これにより、電解液中のキノン系化合物の濃度が上昇し、電荷液中のキノン系化合物の濃度が所定の範囲に維持される。
【0082】
図1に示すように、二酸化炭素分離装置3において二酸化炭素が分離された生成ガス(以下、第1処理ガスという)は、第2生成ガス出口通路66から通路101を介して水分除去装置4に送られる。通路101には、第1処理ガスを水分除去装置4に向けて圧送する圧縮機102が設けられている。水分除去装置4は、第1処理ガスから水を分離する。
【0083】
本実施形態では、水分除去装置4は、互いに並列に設けられた第1水分除去装置4A及び第2水分除去装置4Bを有する。第1及び第2水分除去装置4A、4Bは、水分吸着剤が充填された吸着塔であってよい。水分吸着剤は、加熱処理を受けることによって、水分を放出(脱離)する。水分吸着剤は、結晶性ゼオライト(モレキュラーシーブ)等の乾燥剤であるとよい。
【0084】
第1水分除去装置4Aの入口は、通路103を介して通路101に接続されている。第1水分除去装置4Aの出口には通路104が接続されている。第2水分除去装置4Bの入口は、通路105を介して通路101に接続されている。第2水分除去装置4Bの出口には通路106が接続されている。通路104及び通路106は、通路107を介して生成ガス分離装置5の入口に接続されている。通路103~106のそれぞれにはオンオフ弁111~114が設けられている。
【0085】
また、第1及び第2水分除去装置4A、4Bは、パージガス循環通路116に接続されている。パージガス循環通路116は、通路103におけるオンオフ弁111と第1水分除去装置4Aとの間の部分から延びる通路121と、通路105におけるオンオフ弁113と第2水分除去装置4Bとの間の部分から延びる通路122と、通路121及び通路122に接続した循環通路123と、循環通路123と通路104における第1水分除去装置4Aとオンオフ弁112との間の部分とを接続する通路124と、循環通路123と通路106における第2水分除去装置4Bとオンオフ弁114との間の部分とを接続する通路125とを有する。
【0086】
通路121、122、124、125には、それぞれオンオフ弁126、127、128、129が設けられている。循環通路123には、通路121側から順に、第1熱交換器131、冷却器132、気液分離装置133、ブロア134、流量制御弁135、第1熱交換器131、燃焼炉6が設けられている。循環通路123の流量制御弁135と第1熱交換器131との間の部分は、通路138を介して通路107に接続されている。通路107には流量制御弁139が設けられている。循環通路123のブロア134と流量制御弁135との間の部分は、戻し通路141を介して通路101に接続されている。
【0087】
燃焼炉6の燃焼室は、通路142を介して電解還元装置2のアノード出口通路42に接続されている。通路142には第2熱交換器143が設けられている。通路142の電解還元装置2と第2熱交換器143との間の部分には、生成ガス分離装置5において分離された水素及び一酸化炭素が流れる通路144が接続されている。また、通路142の電解還元装置2と第2熱交換器143との間の部分には、流量制御弁146を介して酸素供給源147が接続されている。通路144には、流量制御弁148を介して燃料供給源149が接続されている。燃料供給源149は、天然ガスや水素等のガス燃料を供給するタンクやパイプラインであってよい。燃料供給源149から供給されるガス燃料は、通路144を流れる水素及び一酸化炭素と混合される。酸素と、水素及び一酸化炭素を含む燃料とは、通路142において混合され、第2熱交換器143において加熱された後に燃焼炉6に供給される。
【0088】
燃焼炉6は、酸素燃焼炉であるとよい。燃焼炉6の燃焼室において、通路142から供給される酸素と、水素及び一酸化炭素を含む燃料とが燃焼する。燃焼によって生じた排ガスは、主に二酸化炭素と水とを含む。排ガスは、燃焼炉6から排ガス通路151を介して第1供給通路26に供給される。排ガス通路151には、排ガスを第1供給通路26に送るブロア150が設けられているとよい。これにより、排ガスに含まれる二酸化炭素が、電解還元装置2において原料の一部として再利用される。排ガス通路151は第2熱交換器143を通過している。これにより、排ガスと通路142を流れる燃料及び酸素を含むガスとが第2熱交換器143において熱交換し、通路142を流れるガスが昇温する。
【0089】
第1及び第2水分除去装置4A、4Bは、生成ガスから水を吸着する吸着工程と、燃焼炉6で発生した熱を受けて吸着工程において吸着した水を放出する脱離工程とを実行する。第1及び第2水分除去装置4A、4Bの一方が吸着工程を実行しているとき、第1及び第2水分除去装置4A、4Bの他方が脱離工程を実行する。第1及び第2水分除去装置4A、4Bは、所定の時間間隔で吸着工程及び脱離工程を切り替えるとよい。
【0090】
オンオフ弁111、112、127、129が開かれ、かつオンオフ弁113、114、126、128が閉じられることによって、第1水分除去装置4Aが吸着工程を実行し、第2水分除去装置4Bが脱離工程を実行する。これにより、通路101を流れる第1処理ガスは、第1水分除去装置4Aを通過し、水分が除去される。第1水分除去装置4A又は第2水分除去装置4Bによって水分が除去された第1処理ガスを第2処理ガスという。第2処理ガスの大部分は、通路107を介して生成ガス分離装置5に送られる。このとき、流量制御弁139が開くことによって、第2処理ガスの一部が通路138を通過して循環通路123に供給される。第2処理ガスの一部は、パージガスとしてパージガス循環通路116を循環する。
【0091】
循環通路123を流れるパージガスは、燃焼炉6において加熱される。このとき、パージガスは、燃料、酸素、及び排ガスと混合せずに熱交換する。燃焼炉6において加熱されたパージガスは、通路125を介して第2水分除去装置4Bに供給される。これにより、第2水分除去装置4Bの水分吸着剤がパージガスによって加熱され、水分が水分吸着剤から脱離する。これにより、第2水分除去装置4Bの水分吸着剤が再生される。
【0092】
水分吸着剤から脱離した水分はパージガスと共に、第1熱交換器131及び冷却器132を通過し、冷却される。水分を含むパージガスは、第1熱交換器131において流量制御弁135を通過した後のパージガスと熱交換して冷却される。また、水分を含むパージガスは、冷却器132において更に冷却され、水分が液化する。
【0093】
冷却器132を通過した水分を含むパージガスは気液分離装置133において液体の水が分離される。気液分離装置133において分離された液体の水は、通路152を介して第2供給通路33に供給され、電解還元装置2のアノード室12に送られる。
【0094】
オンオフ弁113、114、126、128が開かれ、かつオンオフ弁111、112、127、129が閉じられることによって、第2水分除去装置4Bが吸着工程を実行し、第1水分除去装置4Aが脱離工程を実行する。これにより、通路101を流れる第1処理ガスは、第2水分除去装置4Bにおいて水分が除去され、その後生成ガス分離装置5に送られる。また、加熱されたパージガスが第1水分除去装置4Aに供給され、第1水分除去装置4Aの水分吸着剤が再生される。
【0095】
生成ガス分離装置5は、第2処理ガスから炭化水素を分離する。生成ガス分離装置5は、深冷分離装置であるとよい。本実施形態では、生成ガス分離装置5は、第2処理ガスから、メタンとエチレンとを互いに独立して分離する。第2処理ガスからメタン及びエチレンが分離されたオフガスは主に一酸化炭素と水素とを含む。オフガスは、通路144及び通路142を介して燃焼炉6に送られ、燃料として使用される。なお、一酸化炭素が目的物質の場合は、水素と一酸化炭素とを回収することも可能である。
【0096】
第1供給通路26の電解還元装置2側の端部には、電解還元装置2のカソード室11に供給されるガスの流量を測定する流量センサFS4が設けられている。カソード出口通路39には、内部を通過する生成ガスの流量を測定する流量センサFS5と、生成ガスの組成を検出するガス組成センサCS2とが設けられている。二酸化炭素戻し通路75には、内部を通過する二酸化炭素ガスの流量を測定する流量センサFS6が設けられている。通路138の流量制御弁139と通路107との間の部分には内部を通過する第2処理ガスの流量を測定する流量センサFS7が設けられている。循環通路123のブロア134と流量制御弁135との間の部分には、内部を通過するパージガスの流量を測定する流量センサFS8が設けられている。通路144の燃料供給源149と生成ガス分離装置5との間の部分には、内部を通過するオフガスの流量を測定する流量センサFS9が設けられている。循環通路123の燃焼炉6と通路124及び通路125との間の部分には、内部を通過するパージガスの温度を測定する温度センサTS2が設けられている。通路142の第2熱交換器143側の端部には、燃焼炉6に供給される燃料及び酸素を含むガス中の酸素濃度を測定する酸素濃度センサOS1が設けられている。
【0097】
制御装置7は、流量センサFS5及びガス組成センサCS2からの信号に基づいてカソード出口通路39を流れる生成ガスの流量及び組成を取得し、生成ガスの流量及び組成に基づいて直流電源19が供給する電流を制御するとよい。制御装置7は、生成ガスの流量が少ないほど、或いはエチレンの濃度が低いほど、直流電源19が供給する電流を増加させるとよい。
【0098】
制御装置7は、流量センサFS6からの信号に基づいて二酸化炭素戻し通路75を流れる二酸化炭素の流量を取得し、二酸化炭素戻し通路75を流れる二酸化炭素の流量に基づいて流量制御弁29の開度を制御するとよい。制御装置7は、二酸化炭素戻し通路75を流れる二酸化炭素の流量が少ないほど、流量制御弁29の開度を増加させるとよい。
【0099】
制御装置7は、流量センサFS8からの信号に基づいて循環通路123を流れるパージガスの流量を取得し、循環通路123を流れるパージガスの流量に基づいて流量制御弁139の開度を制御するとよい。制御装置7は、循環通路123を流れるパージガスの流量が少ないほど、流量制御弁139の開度を増加させるとよい。
【0100】
制御装置7は、温度センサTS2からの信号に基づいて第1又は第2水分除去装置4A、4Bに供給されるパージガスの温度を取得し、パージガスの温度に基づいて流量制御弁146、148の開度を制御するとよい。制御装置7は、パージガスの温度が所定の下限値以下である場合に、流量制御弁146、148の開度を増加させるとよい。
【0101】
制御装置7は、酸素濃度センサOS1からの信号に基づいて通路142を流れるガスの酸素濃度を取得し、酸素濃度に基づいて流量制御弁146の開度を制御するとよい。制御装置7は、通路142を流れるガスの酸素濃度が所定の下限値以下である場合に、流量制御弁146の開度を増加させるとよい。
【0102】
制御装置7は、流量センサFS9からの信号に基づいて通路144を流れるオフガスの流量を取得し、オフガスの流量に基づいて流量制御弁148の開度を制御するとよい。制御装置7は、オフガスの流量が少ないほど、流量制御弁148の開度を増加させるとよい。
【0103】
以下に、二酸化炭素回収システム1の効果について説明する。電解還元装置2から排出される生成ガス中の二酸化炭素が二酸化炭素分離装置3によってガス状態で生成ガスから分離されるため、二酸化炭素の回収及び再利用が容易である。電気化学を利用した二酸化炭素分離装置3は、アミンを利用した分離方法に比べて少ないエネルギーで二酸化炭素を炭化水素から分離することができる。これにより、二酸化炭素回収システム1において、エネルギー効率を向上させることができる。
【0104】
水分除去装置4の水分吸着剤は、生成ガスから分離された一酸化炭素及び水素を含むオフガスと電解還元装置2のアノード17で発生した酸素との燃焼熱を利用して再生される。これにより、二酸化炭素回収システム1のエネルギー効率を向上させることができる。また、オフガスの燃焼によって生じた二酸化炭素及び水が電解還元装置2の原料として再利用されるため、二酸化炭素の外部環境への排出量を低減することができる。
【0105】
水分除去装置4は、並列に設けられた第1及び第2水分除去装置4A、4Bを有する。そのため、第1及び第2水分除去装置4A、4Bの一方が吸着工程を実行し、他方が脱離工程を実行することができる。これにより、電解還元装置2の連続運転が可能になる。
【0106】
二酸化炭素分離装置3は、第1ガス拡散電極51、液室53、第2ガス拡散電極52の順で配置された第1ユニットと、第2ガス拡散電極52、液室53、第1ガス拡散電極51の順で配置された第2ユニットとを間隔をおいて交互に複数配置したスタック59を有する。これにより、二酸化炭素分離装置3をコンパクトに形成することができる。各液室53は電解液タンク82と接続し、電解液が循環する。そのため、電解液の補充及び交換が容易であり、電解液の品質を維持することができる。これにより、二酸化炭素の分離能力が一定に維持される。
【0107】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る二酸化炭素回収システム200について説明する。
図5に示すように、第2実施形態に係る二酸化炭素回収システム200は、第1実施形態に係る二酸化炭素回収システム1と比較して、通路142に二酸化炭素分離装置201を有する点が異なる。第2実施形態に係る二酸化炭素回収システム200の他の構成は、第1実施形態に係る二酸化炭素回収システム1と同様である。
【0108】
二酸化炭素分離装置201は、
図3に示される二酸化炭素分離装置3と同一の構成を有する。二酸化炭素分離装置201は、電解還元装置2のアノード出口通路42から排出されるガスから二酸化炭素を分離する。電解還元装置2のアノード出口通路42から排出されるガスは、主な成分として酸素を含み、微小量の二酸化炭素を含んでもよい。電解還元装置2のアノード出口通路42から排出されるガスは、二酸化炭素分離装置201の混合ガス入口通路62を介して各第1室54に供給され、二酸化炭素が分離される。二酸化炭素分離装置201の各第1室54から排出されるガスを第3処理ガスという。
図5に示すように、第3処理ガスの主な成分は酸素である。第3処理ガスは、通路142によって第2熱交換器143を通過して燃焼炉6に供給される。
【0109】
二酸化炭素分離装置201の二酸化炭素戻し通路75は、二酸化炭素戻し通路202によって第1供給通路26に接続されている。これにより、電解還元装置2のアノード出口通路42から排出されるガスから分離された二酸化炭素は、二酸化炭素戻し通路202及び第1供給通路26を介して電解還元装置2に戻され、原料の一部として使用される。
【0110】
通路142の電解還元装置2と二酸化炭素分離装置201との間の部分には、内部を流れるガスの流量を測定する流量センサFS10と、内部を流れるガスの組成を検出するガス組成センサCS3とが設けられている。二酸化炭素戻し通路202には、内部を流れる二酸化炭素ガスの流量を測定する流量センサFS11が設けられている。
【0111】
制御装置7は、流量センサFS10及びガス組成センサCS3からの信号に基づいて通路142を流れるガスの流量及び組成を取得し、ガスの流量及び組成に基づいて直流電源19が供給する電流を制御するとよい。制御装置7は、ガスの流量が少ないほど、或いは酸素の濃度が低いほど、直流電源19が供給する電流を増加させるとよい。
【0112】
制御装置7は、流量センサFS11からの信号に基づいて二酸化炭素戻し通路202を流れる二酸化炭素の流量を取得し、二酸化炭素戻し通路202を流れる二酸化炭素の流量に基づいて流量制御弁29の開度を制御するとよい。制御装置7は、二酸化炭素戻し通路202を流れる二酸化炭素の流量が少ないほど、流量制御弁29の開度を増加させるとよい。
【0113】
第2実施形態に係る二酸化炭素回収システム200によれば、電解還元装置2の膜電極複合体10を通過してカソード室11からアノード室12に二酸化炭素が漏出したとしても、漏出した二酸化炭素を二酸化炭素分離装置201において回収し、電解還元装置2の原料として再利用することができる。
【0114】
(第3実施形態)
第3実施形態では、第1実施形態及び第2実施形態の二酸化炭素分離装置3が二酸化炭素分離装置300に置換されている。二酸化炭素分離装置300は、二酸化炭素分離装置3と比較して一部の構成が変更されている。二酸化炭素分離装置300において、二酸化炭素分離装置3と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0115】
図6に示すように、二酸化炭素分離装置300では、各第1室54の入口が出口に対して上方に配置されている。第1ベッセル65は、気液分離装置として機能する。第1ベッセル65の底部は各第1室54の出口のそれぞれよりも下方に配置され、各第1生成ガス出口通路64は各第1室54の出口のそれぞれから第1ベッセル65に向けて下っているとよい。これにより、各液室53から各第1室54に電解質液が漏出した場合、漏出した液体は第1ベッセル65の底部に滞留する。
【0116】
第1ベッセル65内の気体成分は、第1ベッセル65の上部から第2生成ガス出口通路66に流れる。第1ベッセル65の底部は、第2電解液戻し通路95を介して電解液タンク82に接続されている。第2電解液戻し通路95には、第1ベッセル65から電解液タンク82に向けて電解液を送出するポンプ96が設けられている。これにより、生成ガスから分離され、第1ベッセル65の底部に溜まった電解液は、第2電解液戻し通路95を介して電解液タンク82に戻される。
【0117】
制御装置7は、各第2室55の圧力PL2が各液室53の圧力PL3以上になり、かつ各液室53の圧力PL3が各第1室54の圧力PL1以上になるように、圧力制御弁68、V5、V6を制御する(PL2≧PL3≧PL1)。各第2室55の圧力PL2が各液室53の圧力PL3以上になることによって、液室53の電解液が第2ガス拡散電極52を通過して第2室55に漏出することが抑制される。各第1室54に漏出した電解液は、第1ベッセル65によって分離され、電解液タンク82に戻される。また、制御装置7は、各第2室55の圧力PL2が各液室53の圧力PL3以上になり、かつ各液室53の圧力PL3が電解液タンク82の圧力PL4以上になり、かつ電解液タンク82の圧力PL4が各第1室54の圧力PL1以上になるように、圧力制御弁68、69、76、及び流量制御弁84を制御してもよい(PL2≧PL3≧PL4≧PL1)。
【0118】
(第4実施形態)
第4実施形態では、第1実施形態及び第2実施形態の二酸化炭素分離装置3が二酸化炭素分離装置400に置換されている。
図7に示すように、二酸化炭素分離装置400は、二酸化炭素ガス吸収部401と、電気化学セル402と、第1通路403と、第2通路404と、第3通路405と、気液分離装置406とを有する。
【0119】
二酸化炭素ガス吸収部401は、酸化還元に伴ってプロトンを吸脱着する化合物を含む電解液と混合ガスとを接触させ、電解液に混合ガス中の二酸化炭素を吸収させる。電解液は、第1実施形態の二酸化炭素分離装置3を流れる電解液と同様であってよい。電解液は、例えば、ヒドロキノンスルホン酸カリウムであるとよい。二酸化炭素ガス吸収部401は、例えば、向流接触、並流接触、又はバブリングによって混合ガスと電解液とを接触させるとよい。二酸化炭素ガス吸収部401は、混合ガスに向けて電解液をスプレーしてもよく、中空糸膜を使用して混合ガスと電解液とを接触させてもよい。
【0120】
二酸化炭素ガス吸収部401は、混合ガスが供給されるガス入口411と、混合ガスを排出するガス出口412と、電解液の供給を受ける電解液入口413と、電解液を排出する電解液出口414とを有する。
【0121】
電気化学セル402は、膜電極複合体416によってカソード室417及びアノード室418に区画されている。膜電極複合体416は、電解質膜416Aと、電解質膜416Aの両面に設けられ、電源419に接続されたカソード416B及びアノード416Cとを含む。カソード416Bはカソード室417に配置され、アノード416Cはアノード室418に配置されている。カソード416Bは電源419の負極に接続され、アノード416Cは電源419の正極に接続されている。電解質膜416A、カソード416B、及びアノード416Cは、第1実施形態の電解質膜15、カソード16、及びアノード17と同様の構成であってよい。また、カソード416B、及びアノード416Cは、第1実施形態の第1ガス拡散電極51及び第2ガス拡散電極52と同様の構成であってもよい。
【0122】
第1通路403は、二酸化炭素ガス吸収部401の電解液出口414と電気化学セル402のアノード室418とを接続している。第1通路403は、電解液を二酸化炭素ガス吸収部401からアノード室418に流す。第1通路403には、電解液を輸送するためのポンプが設けられるとよい。
【0123】
第2通路404は、アノード室418とカソード室417とを接続し、電解液をアノード室418からカソード室417に流す。第2通路404には気液分離装置406が設けられている。気液分離装置406は、電解液と電解液中のガス成分と分離する。
【0124】
第3通路405は、電気化学セル402のカソード室417と二酸化炭素ガス吸収部401の電解液入口413とを接続している。第3通路405は、電解液をカソード室417から二酸化炭素ガス吸収部401に流す。第3通路405には、電解液を輸送するためのポンプが設けられるとよい。
【0125】
二酸化炭素分離装置400では、電解液は、二酸化炭素ガス吸収部401、第1通路403、アノード室418、第2通路404及び気液分離装置406、カソード室417、第3通路405の順番で循環する。電解液はカソード室417において還元され、pHが上昇する。
【0126】
二酸化炭素ガス吸収部401では、pHが比較的高い電解液と混合ガスとが接触することによって、混合ガス中の二酸化炭素ガスが電解液中に溶解する。このときの化学反応は、上記の化学式(9)~(11)と同様である。電解液中において、二酸化炭素は炭酸水素イオンの形態をとる。これにより、混合ガスから二酸化炭素ガスが除去される。二酸化炭素ガスが除去された混合ガスは、ガス出口412から排出され、通路101を介して水分除去装置4に送られる。
【0127】
二酸化炭素が溶解した電解液は第1通路403を介してアノード室418に送られる。アノード室418では、電解液が酸化され、電解液のpHが低下する。アノード室418から第2通路404に流れる電解液のpHは、カソード室417から第3通路405に流れる電解液のpHよりも低くなる。電解液のpHが低下すると、電解液中の炭酸水素イオンはプロトンを受け取り、二酸化炭素に変化する。このときの化学反応は、上記の化学式(9)~(11)と同様である。これにより、二酸化炭素は気体になって、電解液から脱離する。
【0128】
アノード室418において電解液から分離した二酸化炭素ガスと電解液とは、第2通路404を介して気液分離装置406に送られる。気液分離装置406では、二酸化炭素ガスと、電解液とが分離される。電解液は気液分離装置406から第2通路404を介してカソード室417に流れる。二酸化炭素ガスは、気液分離装置406から二酸化炭素戻し通路75を介して電解還元装置2に流れる。カソード室417において、電解液は還元されpHが上昇し、再び二酸化炭素ガスを吸収可能な状態になる。
【0129】
以上の二酸化炭素分離装置400によれば、第1実施形態に係る二酸化炭素分離装置3と比較して、カソード416B及びアノード416C間の電位差を小さくすることができ、エネルギー効率を向上させることができる。
【0130】
図8に、上述した二酸化炭素分離装置400のより詳細な構成を示す。二酸化炭素ガス吸収部401は、上下に延びたハウジング431を有する。ハウジング431の底部には、電解液が貯留される。混合ガスが供給されるガス入口411は、ハウジング431の下部に設けられている。混合ガスが排出されるガス出口412は、ハウジング431の上端に設けられている。また、二酸化炭素ガス吸収部401は、ハウジング431の上部に設けられ、電解液を噴射するノズル432と、ハウジング431の底部に貯留された電解液をノズル432に供給する第4通路433と、ハウジング431においてガス入口411とノズル432との間に設けられ、ノズル432から噴射された電解液を一時的に貯留するトレイ434とを有する。トレイ434は、複数設けられてもよい。電解液出口414は、トレイ434に設けられているとよい。
【0131】
第3通路405は、第4通路433に接続されている。第4通路433における第3通路405との接続部が電解液入口413になる。第3通路405には第1流量制御弁436Aが設けられている。第4通路433における第3通路405よりもハウジング431の底部側には第2流量制御弁436Bが設けられている。第4通路433における第3通路405とノズル432との間には、第1ポンプ438Aが設けられている。第1ポンプ438Aによってハウジング431の底部に貯留された電解液が第4通路433を介してノズル432に供給され、電解液がノズル432から噴射される。ノズル432から噴射された電解液は、ハウジング431の内部を流下し、トレイ434を通過してハウジング431の底部に貯留される。
【0132】
ハウジング431の底部には、水を供給するための給水弁439が設けられているとよい。水が給水弁439を介してハウジング431の底部に供給されることによって電解液が希釈される。ガス出口412には、ミストエリミネータ441が設けられている。ミストエリミネータ441は、排出される混合ガス中に浮遊する電解液のミストを捕集する。
【0133】
電気化学セル402は、複数の膜電極複合体416によって、複数のカソード室417と、複数のアノード室418とに区画されている。複数の膜電極複合体416は、互いに間隔をおいて平行に配置されている。隣り合う膜電極複合体416は、それぞれのカソード416Bどうし、又はそれぞれのアノード416Cどうしが互いに対向している。これにより、電気化学セル402内において、複数のアノード室418と複数のカソード室417とが互いに交互に配置されている。
【0134】
第1通路403のアノード室418側の端部は、分岐して複数のアノード室418のそれぞれに接続している。第2通路404のアノード室418側の端部は、分岐して複数のアノード室418のそれぞれに接続している。第2通路404のカソード室417側の端部は、分岐して複数のカソード室417のそれぞれに接続している。第3通路405のカソード室417側の端部は、分岐して複数のカソード室417のそれぞれに接続している。
【0135】
第3通路405には、電気化学セル402側から順に、第1タンク405A及び第2ポンプ438Bが設けられている。第1流量制御弁436Aは、第2ポンプ438Bと電解液入口413との間に設けられている。第1タンク405Aは、各カソード室417から排出された電解液を一時的に貯留する。
【0136】
第1通路403には、電解液出口414側から順に、第2タンク403A、第3ポンプ438C、第3流量制御弁436Cが設けられている。第2タンク403Aは、電解液出口414から排出された電解液を一時的に貯留する。また、ミストエリミネータ441において捕集された電解液は第2タンク403Aに流れる。
【0137】
第2通路404には、アノード室418側から順に、気液分離装置406、第4ポンプ438D、第4流量制御弁436Dが設けられている。気液分離装置406のガス出口412は第5流量制御弁436Eを介して二酸化炭素戻し通路75に接続されている。
【0138】
第3通路405における第1流量制御弁436Aと第4通路433との間の部分には、その内部を流れる電解液の流量を測定する流量計FS21が設けられている。第4通路433における第1ポンプ438Aとノズル432との間の部分には、その内部を流れる電解液の流量を測定する流量計FS22が設けられている。第1通路403における第3流量制御弁436Cとアノード室418との間の部分には、その内部を流れる電解液の流量を測定する流量計FS23が設けられている。第2通路404における第4流量制御弁436Dとカソード室417との間の部分には、その内部を流れる電解液の流量を測定する流量計FS24が設けられている。
【0139】
ハウジング431には、ハウジング431の底部に貯留された電解液のpHを測定するpHセンサpHS1が設けられている。第4通路433における第1ポンプ438Aとノズル432との間の部分には、その内部を流れる電解液のpHを測定するpHセンサpHS2が設けられている。第3通路405には、第3通路405を流れる電解液のpHを測定するpHセンサpHS3が設けられている。pHセンサpHS3は、例えば第1タンク405Aに設けられているとよい。第1通路403には、第1通路403を流れる電解液のpHを測定するpHセンサpHS4が設けられている。pHセンサpHS4は、例えば第2タンク403Aに設けられているとよい。
【0140】
ハウジング431には、その底部に貯留された電解液の液位を測定する液位計LS1が設けられている。第1タンク405Aには、その内部に貯留された電解液の液位を測定する液位計LS2が設けられている。第2タンク403Aには、その内部に貯留された電解液の液位を測定する液位計LS3が設けられている。気液分離装置406には、その内部に貯留された電解液の液位を測定する液位計LS4が設けられている。また、気液分離装置406には、その内部の気相部分の圧力を測定する圧力センサPS11が設けられている。
【0141】
制御装置7は、電源419、第1~第4ポンプ438A~438D、第1~第5流量制御弁436A~436E、給水弁439、第1~第4流量計446A~446D、第1~第4pHセンサ447A~447D、第1~第4液位計448A~448D、及び圧力センサPS11と接続されている。制御装置7は、電源419、第1~第4ポンプ438A~438D、第1~第5流量制御弁436A~436Eを制御する。
【0142】
ハウジング431の底部に貯留された電解液のpH、すなわちpHセンサpHS1が検出するpHをpH1とする。第4通路433における第3通路405よりもノズル432側の部分を流れる電解液のpH、すなわちpHセンサpHS2が検出するpHをpH2とする。第3通路405を流れる電解液のpH、すなわちpHセンサpHS3が検出するpHをpH3とする。第1通路403を流れる電解液のpH、すなわちpHセンサpHS4が検出するpHをpH4とする。
【0143】
制御装置7は、pH3≧pH2≧pH1≧pH4≧5.5を満たすように、電源419、第1流量制御弁436A、及び第2流量制御弁436Bを制御する。
【0144】
制御装置7は、圧力センサPS11が取得した気液分離装置406内の気相部分の圧力に基づいて第5流量制御弁436Eを制御する。
【実施例】
【0145】
(実施例1)
第1実施形態に係る二酸化炭素分離装置3を以下のように作成し、その効果を確認した。二酸化炭素分離装置は、第1ガス拡散電極(負極)及び第2ガス拡散電極(正極)によって区画された、第1室(カソード室)、第2室(アノード室)、及び液室を有する3室型電解セルとした。液室は第1ガス拡散電極及び第2ガス拡散電極の間に形成されている。第1室及び第2室は、それぞれを通過するガスが第1ガス拡散電極及び第2ガス拡散電極と効率的に接触するように大きさが設定されている。また、液室は、液間抵抗が小さくなるように、薄く形成されている。第1ガス拡散電極及び第2ガス拡散電極は、カーボンペーパー(気孔率70%、厚さ0.4mm)の表面にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が30wt%分散した溶液を塗布し、窒素雰囲気電気炉中で350℃の温度において20分間焼成することによって形成した。
【0146】
電解液は以下のように調整した。最初に、0.7Mの4,5-ジヒドロキシ-1,3-ベンゼンジスルホン酸二ナトリウムと1Mの炭酸水素カリウムとを含む水溶液を調製した。この水溶液30mLを負極及び正極にカーボンペーパーを用いた一室型電解セルに加え、加湿した炭酸ガスを100mL/minの流量で吹き込みながら、定電流電解を行った。この間、電解セルの出口から排出されるガスに含まれる水素量をガスクロマトグラフィによってモニタリングし、水素生成量が電流量換算で4,5-ジヒドロキシ-1,3-ベンゼンジスルホン酸の半分が酸化される量に達した時点で電解を終了した。
【0147】
第1ガス拡散電極及び第2ガス拡散電極に直流電圧を印加し、液室に電解液20mLを5mL/minで循環させた。第1室には、加湿した2.01vol%CO
2、1.00vol%C
2H
4、0.10vol%CH
4、0.10vol%CO、及びバランスガスとしてのN
2を含む生成ガスを100mL/minで流通させ、第2室にはN
2ガスを100mL/minで流通させた。そして、第2室の出口ガスの組成をガスクロマトグラフィによって分析した。その結果を
図9に示す。
図9から、電流効率で約80%のCO
2が回収され、C
2H
4及びCH
4、及びCOは検出下限下であった。この結果から、第1室の生成ガスからCO2が第2室に移動し、生成ガスから分離されることが確認された。また、C
2H
4、CH
4、COは、第2室に移動しないことが確認された。
【0148】
(実施例2)
実施例1と同様の二酸化炭素分離装置及び電解液を使用した。第1ガス拡散電極及び第2ガス拡散電極に直流電圧を印加し、液室に電解液20mLを5mL/minで循環させた。第1室には、加湿した0.201vol%CO
2、1.00vol%C
2H
4、0.10vol%O
2、及びバランスガスとしてのN
2を含む生成ガスを100mL/minで流通させ、第2室にはN
2ガスを100mL/minで流通させた。そして、第2室の出口ガスの組成をガスクロマトグラフィによって分析した。その結果を
図10に示す。
図10から、電流効率で約60%のCO
2が回収され、C
2H
4及びCO
2は検出下限下であった。この結果から、第1室の生成ガスからCO2が第2室に移動し、生成ガスから分離されることが確認された。また、C
2H
4及びCO
2は、第2室に移動しないことが確認された。
【0149】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。
【符号の説明】
【0150】
1 :二酸化炭素回収システム
2 :電解還元装置
3、400 :二酸化炭素分離装置
4 :水分除去装置
4A :第1水分除去装置
4B :第2水分除去装置
5 :生成ガス分離装置
6 :燃焼炉
7 :制御装置
51 :第1ガス拡散電極
52 :第2ガス拡散電極
53 :液室
54 :第1室
55 :第2室
62 :生成ガス入口通路
64 :第1生成ガス出口通路
65 :第1ベッセル
66 :第2生成ガス出口通路
68 :圧力制御弁
69 :圧力制御弁
71 :二酸化炭素循環通路
72 :第2ベッセル(気液分離装置)
74 :第3ベッセル
75 :二酸化炭素戻し通路
76 :圧力制御弁
81 :電解液供給通路
82 :電解液タンク
84 :圧力制御弁
87 :第1電解液戻し通路
95 :第2電解液戻し通路
116 :パージガス循環通路
133 :気液分離装置
401 :二酸化炭素ガス吸収部
402 :電気化学セル
403 :第1通路
404 :第2通路
405 :第3通路
406 :気液分離装置
411 :ガス入口
412 :ガス出口
413 :電解液入口
414 :電解液出口
416 :膜電極複合体
416A :電解質膜
416B :カソード
416C :アノード
417 :カソード室
418 :アノード室
419 :電源
431 :ハウジング
432 :ノズル
433 :第4通路
434 :トレイ
436A :第1流量制御弁
436B :第2流量制御弁
PS1 :圧力センサ
PS2 :圧力センサ
PS3 :圧力センサ
PS4 :圧力センサ