(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-11
(45)【発行日】2025-03-19
(54)【発明の名称】大口径半導体基板に適用可能な半導体基板の製造装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/324 20060101AFI20250312BHJP
C30B 29/36 20060101ALI20250312BHJP
C30B 23/06 20060101ALI20250312BHJP
【FI】
H01L21/324 G
H01L21/324 K
H01L21/324 S
C30B29/36 A
C30B23/06
(21)【出願番号】P 2021511519
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2020013203
(87)【国際公開番号】W WO2020203517
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-01-06
(31)【優先権主張番号】P 2019069279
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503092180
【氏名又は名称】学校法人関西学院
(73)【特許権者】
【識別番号】000241485
【氏名又は名称】豊田通商株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】金子 忠昭
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-510951(JP,A)
【文献】特開2017-066019(JP,A)
【文献】国際公開第2016/117251(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/188381(WO,A1)
【文献】特開2019-019042(JP,A)
【文献】特開2011-243640(JP,A)
【文献】特開2012-028446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/324
C30B 29/36
C30B 23/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インゴットからスライスされたSiC半導体基板を収容する、SiC製の本体容器と、
前記本体容器を収容する高融点容器と、
前記本体容器及び前記高融点容器を収容する加熱室を有する加熱炉と、を備え、
前記本体容器は、互いに嵌合可能な上容器及び下容器を備える嵌合容器であって、かつ、その少なくとも一部が前記SiC半導体基板と原子を輸送し合う送受体であり、
前記高融点容器は、互いに嵌合可能な上容器及び下容器を備える嵌合容器であり、
前記加熱炉は、前記加熱室内に配置すべき前記SiC半導体基板の主面に対して交差する方向に加熱源を有し、
前記加熱源は、前記高融点容器に対向する位置に配置される第1加熱源と、第1加熱源と対向する位置に第2加熱源と、を有し、かつ、前記加熱室内に配置すべき前記SiC半導体基板の略垂直方向に温度勾配を形成して
前記SiC半導体基板と前記送受体との間の原子輸送を駆動することで、前記SiC半導体基板の成長、又はエッチングを行うよう加熱可能であり、
前記第1加熱源及び第2加熱源の加熱部分の面積は、対向する前記高融点容器の一面の面積以上であり、かつ第1加熱源及び第2加熱源における加熱部分の面積は略同一であり、
SiC半導体基板の製造装置。
【請求項2】
前記加熱源は、前記SiC半導体基板の主面を均一に加熱する均熱範囲を有する、請求項1に記載のSiC半導体基板の製造装置。
【請求項3】
前記加熱源は、発熱する加熱部分を有し、
前記加熱部分は、前記SiC半導体基板の主面と略平行に配置されている、請求項1又は2に記載のSiC半導体基板の製造装置。
【請求項4】
前記加熱室内の天面側に前記第1加熱源を有し、前記加熱室内の底面側に第2加熱源を有する、請求項1~3の何れかに記載のSiC半導体基板の製造装置。
【請求項5】
直径、又は長径が6インチ以上のSiC半導体基板の加熱に用いられる、請求項1~4の何れか一項に記載のSiC半導体基板の製造装置。
【請求項6】
さらに、前記本体容器を収容する、SiC半導体基板を構成する原子種の気相種の蒸気圧環境が形成される気相種蒸気圧空間を備える、請求項1~
5の何れか一項に記載のSiC半導体基板の製造装置。
【請求項7】
前記本体容器の内部は、前記気相種蒸気圧空間を介して排気される、請求項
6に記載のSiC半導体基板の製造装置。
【請求項8】
前記高融点容器が、内部にSiC半導体基板を構成する原子種を含む気相種の蒸気圧を供給可能な蒸気供給源を有している、請求項1~
7の何れかに記載のSiC半導体基板の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大口径の半導体基板に適用可能な半導体基板の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板の加熱に用いられる加熱炉として、半導体基板の周囲を囲むように、側壁にヒータが配設されているものが一般的であった。
【0003】
例えば、特許文献1には、SiC基板の周囲を囲むように配置されている複数の加熱ヒータと、それぞれの前記加熱ヒータを支持するヒータ支持部を備え、それぞれの前記加熱ヒータは、位置が対応する前記ヒータ支持部と共に一体的に取り外し可能である、SiC半導体ウエハ熱処理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の半導体基板の製造装置は、基板の直径、又は長径が比較的小さい場合には、基板の表面を均一に加熱することが可能である。
【0006】
ところで、半導体基板は、コスト、及び製造効率の観点から、直径、又は長径が大きい半導体基板を熱処理していくことが求められている。
【0007】
しかし、半導体基板の直径、又は長径が大きい場合には、従来の装置では基板の中心部分が十分に加熱されず、一度に熱処理ができないという問題があった。
【0008】
本発明は、表面を均一に加熱することが可能な半導体基板の製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明は、
半導体基板を収容する本体容器と、
前記本体容器を収容する加熱室を有する加熱炉とを備え、
前記加熱炉は、前記加熱室内に配置すべき前記半導体基板の主面に対して交差する方向に加熱源を有する、半導体基板の製造装置である。
このように、前記加熱室内に配置すべき前記半導体基板の主面に対して交差する方向に加熱源を有することで、半導体基板の主面全体を均一に加熱することができる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記加熱源は、前記半導体基板の主面を均一に加熱する均熱範囲を有する。
このような構成とすることで、半導体基板の主面全体をより均一に加熱することができる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記加熱源は、発熱する加熱部分を有し、
前記加熱部分の面積は、前記半導体基板の面積以上である。
このような構成とすることで、半導体基板の主面全体をより均一に加熱することができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記加熱源は、発熱する加熱部分を有し、
前記加熱部分は、前記半導体基板の主面と略平行に配置されている。
このような形態とすることで、半導体基板の主面全体をより均一に加熱することができる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記加熱源は、前記主面に対向する位置に配置されている。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記加熱源は、前記主面に対向する位置に配置される第1加熱源と、
前記第1加熱源と対向する位置に第2加熱源と、を有し、
前記第1加熱源と第2加熱源に挟まれた位置に、前記本体容器を備える。
このような形態とすることで、半導体基板の主面をより均一に加熱することができる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記加熱室内の天面側に前記第1加熱源を有し、前記加熱室内の底面側に第2加熱源を有する。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記加熱炉が、前記加熱室内に配置すべき前記半導体基板に略垂直方向に温度勾配を形成するよう加熱可能である。
このような形態とすることで、温度勾配を駆動力とした半導体基板の成長、又はエッチングが可能である。
【0017】
本発明の好ましい形態では、半導体基板の製造装置は、直径、又は長径が6インチ以上の半導体基板の加熱に用いられる。
本発明の半導体基板の製造装置は、直径、又は長径が大きい半導体基板の加熱に適している。
【0018】
本発明の好ましい形態では、前記本体容器の少なくとも一部が、半導体基板と原子を輸送し合う送受体である。
このような構成とすることで、本体容器内に別途、成長原料を収容しなくとも、半導体基板の成長、又はエッチングが進行する。
【0019】
本発明の好ましい形態では、前記本体容器が、前記半導体基板を構成する原子種を含む材料からなる。
また、本発明の好ましい形態では、前記本体容器が、前記半導体基板を構成する原子種をすべて含む材料からなる。
【0020】
本発明の好ましい形態では、さらに、前記本体容器を収容する、半導体基板を構成する原子種の気相種の蒸気圧環境が形成される気相種蒸気圧空間を備える。
このような構成とすることで、本体容器内の環境を維持しながら加熱を行うことができる。
【0021】
本発明の好ましい形態では、前記本体容器の内部は、前記気相種蒸気圧空間を介して排気される。
このような構成とすることで、本体容器内の半導体基板を構成する原子種を含む気相種が排気されることを抑制することができる。
【0022】
本発明の好ましい形態では、前記気相種蒸気圧空間を有する高融点容器であって、前記本体容器を収容する高融点容器を備える。
【0023】
本発明の好ましい形態では、前記高融点容器が、内部に半導体基板を構成する原子種を含む気相種の蒸気圧を供給可能な蒸気供給源を有している。
【0024】
このような構成とすることで、本体容器内の気相種の蒸気圧と、本体容器外の気相種の蒸気圧とのバランスを取ることができ、本体容器内の環境を維持することができる。
【発明の効果】
【0025】
開示した技術によれば、直径、又は長径が大きい半導体基板の主面に対して、均一な加熱が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施例1に係る半導体基板の製造装置を示す図面である。
【
図2】実施例1に係る半導体基板の製造装置を示す図面である。
【
図3】実施例1に係る製造装置を上側から見た場合における、第1加熱源、並びに、半導体基板の主面、本体容器の表面、及び高融点容器の表面を囲む領域のみを表わした概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る半導体基板の製造装置(以下、単に製造装置という)を詳細に説明する。本発明の技術的範囲は、添付図面に示した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、適宜変更が可能である。
【0028】
図1に、実施例1に係る製造装置100を示す。
製造装置100は、半導体基板10を収容する本体容器20、本体容器20を収容する高融点容器30、及び加熱炉40を備える。
【0029】
半導体基板10は、主面11を備える。なお、本明細書中において主面とは、半導体基板の成長、又はエッチングが行われる面をいう。
主面としては、(0001)面や(000-1)面から0.4~8°のオフ角を設けた表面を例示できる。
【0030】
半導体基板10としては、昇華法等で作製した半導体インゴットから円盤状にスライスした半導体ウエハや、単結晶半導体を薄板状に加工した半導体基板を例示することができる。
半導体基板として、好ましくは気相法による成長が可能な半導体基板を用いる。具体的には、SiC基板が例示できる。
【0031】
本体容器20は、互いに嵌合可能な上容器22及び下容器23を備える、嵌合容器である。上容器22と下容器23の嵌合部には、微小な間隙24が形成されており、この間隙24から本体容器20内の排気(真空引き)が可能となるよう構成されている(
図2参照)。
【0032】
本体容器20は、半導体基板を構成する原子種を含む材料からなる。例えば、半導体基板10がSiC基板である場合、本体容器20の材料として、多結晶SiCを含む材料が例示できる。
本明細書中において「半導体基板を構成する原子種」とは、半導体基板を構成する主骨格となる原子種を意味し、ドーパント等の不純物は含まれない。なお、「半導体基板を構成する原子種を含む材料」には、ドーパント等の不純物を含んでも構わない。
【0033】
本発明において、本体容器は、半導体基板を構成する原子種を全て含む材料からなることが好ましく、半導体基板を構成する原子種のみからなる材料からなることがより好ましい。
【0034】
このような材料で構成された本体容器20を加熱することで、半導体基板10を構成する原子種を含む雰囲気を形成させることができる。この場合、本体容器20の一部が、半導体基板10と原子を輸送し合う送受体21となる。なお、送受体とは、半導体基板を構成する原子種を含む材料であって、加熱することで、半導体基板に原子を送る、又は原子を受け取る材料の総称を意味する。
実施例1において、送受体21は主面11と対向する位置に存する本体容器20の一部である。
【0035】
高融点容器30は、高融点材料を含んで構成される。高融点材料としては、汎用耐熱部材であるC、高融点金属であるW,Re,Os,Ta,Mo、炭化物であるTa9C8,HfC,TaC,NbC,ZrC,Ta2C,TiC,WC,MoC、窒化物であるHfN,TaN,BN,Ta2N,ZrN,TiN、ホウ化物であるHfB2,TaB2,ZrB2,NB2,TiB2,多結晶SiC等を例示することができる。
【0036】
本実施形態に係る本加熱室41内の半導体材料を構成する原子種を含む雰囲気は、高融点容器30内に半導体基板10を構成する原子種を含む気相種の蒸気圧を供給可能な蒸気供給源34を有している(
図2参照)。蒸気供給源34は、加熱処理時に上述した気相種の蒸気圧を高融点容器30内に発生させる構成(気相種蒸気圧空間)であれば良い。例えば、半導体基板10がSiC基板である場合、固体のSi(単結晶Si片やSi粉末等のSiペレット)やSi化合物を例示することができる。
【0037】
この高融点容器30は、本体容器20と同様に、互いに嵌合可能な上容器31と下容器32とを備える嵌合容器であり、本体容器20を収容可能に構成されている。上容器31と下容器32の嵌合部には、微小な間隙33が形成されており、この間隙33から、高融点容器30内の排気(真空引き)が可能なよう構成されている。
【0038】
本実施形態において、本体容器20は半導体基板を構成する原子種を含む気相種の蒸気圧環境が形成される気相種蒸気圧空間を有する高融点容器30内に配置されることとなる。
本体容器20は、前記気相種蒸気圧空間を介して排気されることで、本体容器20内から半導体基板を構成する原子種を含む気相種が排気されることを抑制することができる。また前記気相種蒸気圧空間を介して排気される空間を有する、本体容器20内で、半導体基板10が加熱されることで、本体容器20内の気相種の蒸気圧と、本体容器20外(高融点容器30内)の気相種の蒸気圧とのバランスが取れ、本体容器20内の環境を維持することができる。
【0039】
加熱炉40は、被処理物(半導体基板10等)を800℃以上2500℃以下の温度に加熱することが可能な本加熱室41と、被処理物を500℃以上の温度に予備加熱可能な予備加熱室42を備える。また、被処理物を予備加熱室42から本加熱室41に移動可能な移動手段43(移動台)を備える。
【0040】
予備加熱室42は、本加熱室41と接続されており、移動手段43により高融点容器30を移動可能に構成されている。なお、本実施形態の予備加熱室42には、本加熱室41の加熱源44の余熱により昇温可能なよう構成されている。例えば、本加熱室41を2000℃まで昇温した場合には、予備加熱室42は1000℃程度まで昇温され、被処理物(半導体基板10や本体容器20、高融点容器30等)の脱ガス処理を行うことができる。
【0041】
移動手段43は、高融点容器30を載置して、本加熱室41と予備加熱室42を移動可能に構成されている。この移動手段43による本加熱室41と予備加熱室42間の搬送は、最短1分程で完了するため、1~1000℃/minでの昇温・降温を実現することができる。
このように急速昇温及び急速降温が行えるため、従来の装置では困難であった、昇温中及び降温中の低温成長履歴を持たない表面形状を観察することが可能である。
また、
図1においては、本加熱室41の左方に予備加熱室42を配置しているが、これに限られず、何れの方向に配置しても良い。
【0042】
本加熱室41には、本加熱室41内の排気を行う真空形成用バルブ45と、本加熱室41内に不活性ガスを導入する不活性ガス注入用バルブ46と、本加熱室内の真空度を測定する真空計47と、が接続されている。
【0043】
真空形成用バルブ45は、本加熱室41内を排気して真空引きする真空引ポンプと接続されている(図示せず)。この真空形成用バルブ45及び真空引きポンプにより、本加熱室41内の真空度を、例えば10Pa以下、より好ましくは1Pa以下、さらに好ましくは10-3Pa以下に調整することができる。真空引きポンプとしては、ターボ分子ポンプを例示することができる。
【0044】
不活性ガス注入用バルブ46は、不活性ガス供給源と接続されている(図示せず)。この不活性ガス注入用バルブ46及び不活性ガス供給源により、本加熱室41内に不活性ガスを10-5~10000Paの範囲で導入することができる。この不活性ガスとしては、ArやHe、N2等を選択することができる。
また、不活性ガス注入用バルブ46は、本体容器20内にドーパントガスを供給可能なドーパントガス供給手段である。すなわち、不活性ガスにドーパントガス(例えば、N2等)を選択することにより、成長層12にドーパントをドープしてドーピング濃度を高めることができる。
【0045】
加熱炉40は、本加熱室41内を加熱する加熱源44を備える。
加熱源44として、本加熱室41内の天面40aに第1加熱源44aを備え、本加熱室内の底面40bに第2加熱源44bを備える。
言い換えれば、主面11に対向する位置に第1加熱源44aを備え、第1加熱源44aに対向する位置であって、かつ本体容器20を収容する高融点容器30を挟む位置に第2加熱源44bを備える。
【0046】
なお、「第1加熱源」、及び「第2加熱源」とは、加熱源の異同を明確にするために便宜上名称を使い分けているに過ぎない。
【0047】
第1加熱源44a及び第2加熱源44bは、それぞれ発熱する加熱部分pを有する。
【0048】
図3は、製造装置100を上方向から見た場合の、第1加熱源44a、並びに、半導体基板10の主面、第1加熱源44aと対向する本体容器20の表面、及び第1加熱源44aと対向する高融点容器30の表面のみを表わした概略図である。第1加熱源44aの加熱部分pの面積Rは、主面11の面積、前記本体容器20の表面の面積、及び前記高融点容器30の面積以上である。図示しないが、第2加熱源44bの加熱部分pの面積Rは、第1加熱源44aの加熱部分pの面積Rと略同一である。
【0049】
このような第1加熱源44aは、半導体基板10の主面11、第1加熱源44aと対向する本体容器20の表面、及び第1加熱源44aと対向する高融点容器30の表面を均一に加熱する均熱範囲を有する。
なお、本明細書中における均熱範囲とは、任意の領域を略同一に加熱可能な範囲を意味し、加熱処理後の任意の領域の状態が一様であれば、前記領域内の各点において多少の温度差があっても許容される。
許容される温度差としては、例えば、-10~+10℃であって、好ましくは-8~+8℃、より好ましくは-6~+6℃、さらに好ましくは-4~+4℃、特に好ましくは-2~+2℃、最も好ましくは-1~+1℃である。
【0050】
また、加熱炉40は、主面11に対して略垂直方向に温度勾配を形成するよう加熱可能である。
主面11に対して略垂直方向に温度勾配を形成することで、温度勾配を駆動力として、半導体基板10と送受体21とが原子を輸送し合い、半導体基板10の成長、又はエッチングが引き起こされる。
【0051】
温度勾配を形成する手段としては、例えば、第1加熱源44a及び第2加熱源44bの発熱量に差異を設ける手段、及び多層熱反射金属板等の熱反射部材を、上述した方向に温度勾配を形成するよう加熱炉40内に配設する手段等が挙げられる。
本実施形態においては、移動手段43(移動台)と高融点容器30の接触部から、微小な熱を逃がしている。すなわち、第1加熱源44a及び第2加熱源44bに同一の強さの電流を流した場合であっても、高融点容器30の上部から下部に向かって温度が低くなる温度勾配が形成される。
【0052】
加熱源44は、直径、又は長径が6インチ以上であることが好ましく、8インチ以上であることがより好ましい。
また、加熱源44は直径6インチ以上の半導体基板の主面の面積よりも広い面積を有していることが好ましく、直径8インチ以上の主面の面積よりも広い面積を有していることがより好ましい。
【0053】
このように、構成された実施例1の製造装置100は、主面11の全体に渡って均一に加熱を行うことができる。
したがって、本発明の製造装置は、好ましくは直径、又は長径が6インチ以上の半導体基板を加熱するために用いられ、より好ましくは直径、又は長径が8インチ以上の半導体基板を加熱するために用いられる。
【0054】
実施例1にかかる製造装置100について上述したが、本発明の製造装置は、これに限定されない。
【0055】
加熱源は、加熱室内に配置すべき半導体基板の主面に対して、交差する方向に備えられていればよく、略垂直方向に備えられることが好ましい。
また加熱源の加熱部分は、前記半導体基板の主面に略平行であることが好ましい。
また、加熱源として、前記半導体基板の主面に対向する位置に第1加熱源が備えられることがより好ましく、第1加熱源に対向する位置であって、本体容器を挟む位置に第2加熱源を備えることがさらに好ましい。
加熱源は、天面側に第1加熱源を備え、底面側に第2加熱源を備えることが好ましい。
【0056】
加熱源の加熱部分の面積は、好ましくは半導体基板の主面の面積以上であり、より好ましくは前記加熱源と対向する本体容器の表面の面積以上であり、さらに好ましくは前記加熱源に対向する高融点容器の表面の面積以上である。
第1加熱源及び第2加熱源を含む形態においては、第1加熱源及び第2加熱源における加熱部分の面積が略同一であることが好ましい。
【0057】
第1加熱源は、複数のそれぞれ独立した加熱源を備える第1加熱源群としてもよい。この場合、それぞれの加熱源が、半導体基板の主面に対して略平行であって、前記主面と対向する同一平面上に位置するよう設けられる。
第1加熱源群における前述した加熱部分の面積は、第1加熱源群を構成する各第1加熱源の加熱部分の面積を足した総面積である。
第2加熱源も同様に第2加熱源群としてもよい。
【0058】
また、加熱源が、半導体基板の主面を均一に加熱する均熱範囲を有することが好ましく、前記加熱源と対向する本体容器の表面を均一に加熱する均熱範囲を有することがより好ましく、前記加熱源と対向する高融点容器の表面を均一に加熱する均熱範囲を有することがさらに好ましい。
【0059】
加熱源が上述した均熱範囲を有するか否かは、例えば、製造装置で加熱処理した半導体基板の面方向におけるエッチング量、又は成長量を観察することで推定することができる。
【0060】
実施例1において、本体容器20が、半導体基板10を構成する原子種を含む材料で構成された形態について例示したが、本発明はこれに限定されず、本体容器内に、半導体基板と原子を輸送し合う送受体が存在していればよい。
例えば、本体容器が、半導体基板と原子を輸送し合う送受体となる材料を保持する保持部を備える形態であってもよい。
【0061】
また、本発明の製造装置は、半導体基板を準閉鎖空間に配置する構成とすることが好ましい。
なお、本明細書における準閉鎖空間とは、容器内の真空引きは可能であるが、容器内に発生した上記の少なくとも一部を閉じ込め可能な空間のことをいう。
準閉鎖空間とすることで、半導体基板、及び本体容器の意図しない反応を抑制することができる。
【符号の説明】
【0062】
10 半導体基板
11 主面
20 本体容器
21 送受体
22 上容器
23 下容器
24 間隙
30 高融点容器
31 上容器
32 下容器
33 間隙
34 蒸気供給源
40 加熱炉
40a 天面
40b 底面
40c 側壁面
41 本加熱室
42 予備加熱室
43 移動手段
44a 第1加熱源
44b 第2加熱源
45 真空形成用バルブ
46 不活性ガス注入用バルブ
47 真空計
100 半導体基板の製造装置
p 加熱部分
R 加熱部分の面積