(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-09
(45)【発行日】2025-05-19
(54)【発明の名称】ポジ型感光性樹脂組成物、ドライフィルム、パターン塗膜及び電子部品
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20250512BHJP
G03F 7/039 20060101ALI20250512BHJP
G03F 7/40 20060101ALI20250512BHJP
C08G 73/22 20060101ALI20250512BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20250512BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20250512BHJP
【FI】
G03F7/004 503B
G03F7/004 512
G03F7/039 601
G03F7/40 501
C08G73/22
C08G73/10
G03F7/20 501
(21)【出願番号】P 2020082245
(22)【出願日】2020-05-07
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119079
【氏名又は名称】伊藤 佐保子
(72)【発明者】
【氏名】秋元 真歩
(72)【発明者】
【氏名】國土 萌衣
(72)【発明者】
【氏名】緒方 寿幸
(72)【発明者】
【氏名】石川 信広
(72)【発明者】
【氏名】有光 晃二
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-194631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
G03F 7/039
G03F 7/40
C08G 73/22
C08G 73/10
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)塩基の作用で脱離する保護基で保護されているフェノール性水酸基を有するポリイミドと
(B)共役酸の酸解離定数pKaが13.0以上である塩基性化合物を共有結合によって潜在化してなる光塩基発生剤と
を含
み、
前記塩基性化合物が1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン又は1,1,3,3-テトラメチルグアニジンである、ポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項2】
(B)が、一般式(1):
【化1】
(ここで、Zは
1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンに由来するアミノ基又は
1,1,3,3-テトラメチルグアニジンに由来するイミノ基を表す。)で示される光塩基発生剤である、
請求項1記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
(A)が、一般式(3):
【化2】
・・・一般式(3)
(ここで、
X
2は、(4+p)価の有機基であり、
Y
2は、(2+q)価の有機基であり、
R
3は、水素原子又は塩基の作用で脱離する保護基であり、複数のR
3が存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよく、
R
4は、水素原子又は塩基の作用で脱離する保護基であり、複数のR
4が存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよく、
pは0~4の整数であり、
qは0~4の整数であるが、pとqが同時に0であることはなく、
OR
3が結合している炭素原子は、芳香環の環構成原子であり、
OR
4が結合している炭素原子は、芳香環の環構成原子であり、
R
3及びR
4のすべてが水素原子であることはないこととする。)
で示される繰り返し単位を含む、請求項1
又は2記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項4】
R
3の塩基の作用で脱離する保護基がシアン化アルキル基又はアルキルアズレン基であり、R
4の塩基の作用で脱離する保護基がジアルコキシニトロベンジルオキシカルボニル基又はフルオレニルメチルオキシカルボニル基である、請求項
3記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項記載のポジ型感光性樹脂組成物をフィルムに塗布、乾燥して得られる樹脂層を有する、ドライフィルム。
【請求項6】
請求項1~
4のいずれか一項記載のポジ型感光性樹脂組成物又は請求項
5記載のドライフィルムの樹脂層を露光、加熱、現像し、場合により硬化させて得られる、パターン塗膜。
【請求項7】
請求項
6に記載のパターン塗膜を有する、電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポジ型感光性樹脂組成物、ドライフィルム、パターン塗膜及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機械的強度、電気絶縁性に優れた耐熱性樹脂として、ポリイミド樹脂やポリベンゾオキサゾール樹脂が注目されており、半導体やプリント配線板といった電子部品などの絶縁材料として広く適用されている。
【0003】
ポリイミドのパターン形成方法としては、従来、感光基を有するポリイミド前駆体を用いてネガ型のポリイミドのパターンを形成する方法が知られているが、最近では、ポジ型パターン膜の可能な感光性樹脂組成物が提案されている。これらのポジ型感光性樹脂組成物としては、キノンジアジド化合物等の光酸発生剤が利用されているが、光酸発生剤を含むと回路が腐食しやすいという問題がある。これに対し、光塩基発生剤を用いる試みもなされており、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂、共有結合型の光塩基発生剤及び前記水酸基のエステル化剤を含む組成物(特許文献1)、フェノール性水酸基が9-フレオレニルメチルオキシカルボニル基で保護されたポリイミド樹脂と光塩基発生剤を含む組成物(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-45735号公報
【文献】特開2019-194631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の光塩基発生剤は、発生する塩基の塩基度が低く(酸解離定数pKaが小さく)、十分な解像性が得られないことがあり、光塩基発生剤を含むポジ型感光性樹脂組成物には、現像コントラストの一層の向上が求められている。また、保存により現像コントラストの低下がみられることもあり、安定性も同時に優れていることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は上記に鑑み鋭意検討した結果、ポリマー中のカルボキシル基やフェノール性水酸基を保護し、特定の共有結合型の光塩基発生剤と組み合わせることで、ポジ型感光性樹脂組成物に良好な現像コントラストを安定的にもたらすことができることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
本発明の組成物は、ポリアミック酸のカルボキシル基、ポリイミドのフェノール性水酸基、ポリベンゾオキサゾール前駆体のフェノール性水酸基が、塩基の作用により脱離する保護基で保護されているため、未露光部では、アルカリ溶解性が阻害され、一方、露光部は、特定の共有結合型の光塩基発生剤から発生する塩基により、容易に保護基が脱離し、アルカリ溶解性が発現する。このような未露光部と露光部のアルカリ溶解性の顕著な差異により、現像コントラストの向上が達成される。また、特定の共有結合型の光塩基発生剤を使用することにより、保存中に現像コントラストが低下してしまうことが抑制されることも本発明者らにより見出された。
【0008】
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1](A)塩基の作用で脱離する保護基で保護されているカルボキシル基を有するポリアミック酸、塩基の作用で脱離する保護基で保護されているフェノール性水酸基を有するポリイミド又は塩基の作用で脱離する保護基で保護されているフェノール性水酸基を有するポリベンゾオキサゾール前駆体と
(B)酸解離定数pKaが10.8以上である塩基性化合物を共有結合によって潜在化してなる光塩基発生剤と
を含む、ポジ型感光性樹脂組成物。
[2](B)が、一般式(1):
【化1】
(ここで、Zはアミノ基又はイミノ基を表す。)で示される光塩基発生剤である、
[1]のポジ型感光性樹脂組成物。
[3]一般式(1)において、Zが一般式(z1):
【化2】
(ここで、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子又は有機基であり、R
1とR
2とは、それらが結合している窒素原子と一緒になって環状構造を形成していてもよく、環状構造は、前記窒素原子以外のヘテロ原子を含んでいてもよいが、R
1とR
2は同時に水素原子ではないこととする。)で示される基又は一般式(z2):
【化3】
(ここで、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、-NR
5R
6又は-C(=O)NR
7R
8であり、R
5、R
6、R
7及びR
8は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基又はアリール基である。)で示される基である、[2]のポジ型感光性樹脂組成物。
[4](A)が、一般式(2)、(3)又は(4):
【化4】
(ここで、
X
1は、4価の有機基であり、
Y
1は、2価の有機基であり、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子又は塩基の作用で脱離する保護基であるが、R
1とR
2は同時に水素原子ではなく、
X
2は、(4+p)価の有機基であり、
Y
2は、(2+q)価の有機基であり、
R
3は、水素原子又は塩基の作用で脱離する保護基であり、複数のR
3が存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよく、
R
4は、水素原子又は塩基の作用で脱離する保護基であり、複数のR
4が存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよく、
pは0~4の整数であり、
qは0~4の整数であるが、pとqが同時に0であることはなく、
OR
3が結合している炭素原子は、芳香環の環構成原子であり、
OR
4が結合している炭素原子は、芳香環の環構成原子であり、
R
3及びR
4のすべてが水素原子であることはなく、
X
3は、2価の有機基であり、
Y
3は、(2+s)価の有機基であり、
R
5は、水素原子又は塩基の作用で脱離する保護基であり、同一であっても異なっていてもよく
sは2~8の整数であり、
OR
5が結合している炭素原子は、芳香環の環構成原子であり、
R
5のすべてが水素原子であることはないこととする。)で示される繰り返し単位を含む、[1]~[3]のいずれかのポジ型感光性樹脂組成物。
[5]R
3の塩基の作用で脱離する保護基がシアン化アルキル基又はアルキルアズレン基であり、R
4の塩基の作用で脱離する保護基がジアルコキシニトロベンジルオキシカルボニル基又はフルオレニルメチルオキシカルボニル基であり、R
5の塩基の作用で脱離する保護基がジアルコキシニトロベンジルオキシカルボニル基又はフルオレニルメチルオキシカルボニル基である、[4]のポジ型感光性樹脂組成物。
[6][1]~[5]のいずれかのポジ型感光性樹脂組成物をフィルムに塗布、乾燥して得られる樹脂層を有する、ドライフィルム。
[7][1]~[5]のいずれかのポジ型感光性樹脂組成物又は[6]のドライフィルムの樹脂層を露光、加熱、現像し、場合により硬化させて得られる、パターン塗膜。
[8][7]のパターン塗膜を有する、電子部品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、良好な現像コントラストを安定的にもたらすポジ型感光性樹脂組成物、この組成物から得られる樹脂層を有するドライフィルム、この組成物又はドライフィルムの樹脂層の硬化物、この硬化物を有する半導体素子、プリント配線板及び電子部品を提供することができる。
【0010】
本発明の樹脂組成物は、(A)塩基の作用で脱離する保護基で保護されているカルボキシル基を有するポリアミック酸、塩基の作用で脱離する保護基で保護されているフェノール性水酸基を有するポリイミド又は塩基の作用で脱離する保護基で保護されているフェノール性水酸基を有するポリベンゾオキサゾール前駆体と
(B)酸解離定数pKaが10.8以上である塩基性化合物を共有結合によって潜在化してなる光塩基発生剤を含む。
ここで、塩基性化合物が共有結合によって潜在化してなる光塩基発生剤とは、発生する塩基が共有結合を用いて潜在化されていて、光や電磁波等の活性エネルギー線の照射により塩基を発生する塩基発生剤であり、共有結合型の光塩基発生剤である。
【0011】
<(A)のポリマー>
(A)のポリマーは、塩基の作用で脱離する保護基で保護されているカルボキシル基を有するポリアミック酸、塩基の作用で脱離する保護基で保護されているフェノール性水酸基を有するポリイミド又は塩基の作用で脱離する保護基で保護されているフェノール性水酸基を有するポリベンゾオキサゾール前駆体である。(A)成分は、単独でも、2種以上の任意の比率の組み合わせであってもよい。
【0012】
塩基の作用で脱離する保護基で保護されているカルボキシル基を有するポリアミック酸としては、一般式(2):
【化5】
(ここで、
X
1は、4価の有機基であり、
Y
1は、2価の有機基であり、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子又は塩基の作用で脱離する保護基であるが、R
1とR
2は同時に水素原子ではない)で示される繰り返し単位を有するポリマーがあげられる。
【0013】
X1は、4価の有機基であり、有機基の炭素原子数は好ましくは4~40であり、より好ましくは6~34である。有機基は芳香環を有することが好ましい。
【0014】
芳香環を有する有機基は、ベンゼン骨格、ビフェニル骨格、ビスフェノール骨格等のベンゼン環を含む基が挙げられ、例えば、以下が挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
【0016】
Y1は、2価の有機基であり、有機基の炭素原子数は好ましくは4~40であり、より好ましくは6~34である。有機基は芳香環を有することが好ましい。
【0017】
芳香環を有する有機基は、ベンゼン骨格、ビフェニル骨格、ビスフェノール骨格等のベンゼン環を含む基が挙げられ、例えば、以下が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
芳香環を有する基としては、例えば、以下が挙げられるが、これらに限定されない。
【化7】
(ここで、Aは単結合、-CH
2-、-O-、-CO-、-S-、-SO
2-、-NHCO-、-C(CF
3)
2-又は-C(CH
3)
2-である。)
【0019】
R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子又は塩基の作用で脱離する保護基であるが、R1とR2は同時に水素原子ではない。好ましくは、R1及びR2は、両方とも、塩基の作用で脱離する保護基であり、より好ましくは同一である。
【0020】
一般式(2)における塩基の作用で脱離する保護基は、カルボン酸基を保護する基であり、例えば、シアン化アルキル基、アルキルアズレン基が挙げられ、好ましくはシアン化アルキル基である。これらの基におけるアルキル基は、炭素原子数1~6のアルキル基が挙げられる。塩基の作用で脱離する保護基の具体例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない。
【化8】
【0021】
一般式(2)のポリマーは、例えば、酸二無水物とジアミンを溶液中で混合してポリアミック酸を合成し、ポリアミック酸のカルボキシル基に塩基の作用で脱離する保護基を導入することにより調製することができる。
【0022】
酸二無水物としては、一般式(5):
【化9】
(ここで、X
1は、一般式(2)と同義である。)で示される化合物が挙げられる。
【0023】
酸二無水物としては、例えば、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族テトラカルボン酸二無水物;ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',6,6'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3-ビス〔(3,4-ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、1,4-ビス〔(3,4-ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、2,2-ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、2,2-ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、4,4'-ビス〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、4,4'-ビス〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、2,2-ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ぺリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、ピリジンテトラカルボン酸二無水物、スルホニルジフタル酸無水物、m-ターフェニル-3,3',4,4'-テトラカルボン酸二無水物、p-ターフェニル-3,3',4,4'-テトラカルボン酸二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0024】
中でも好ましくは、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',6,6'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物が挙げられる。
【0025】
酸二無水物としてフッ素が導入された酸二無水物や、脂環骨格を有する酸二無水物を用いると、良好な透明性を保ちつつ、溶解性、熱膨張率等の物性を調整することが可能である。
【0026】
一般式(2)のポリマーの調製に用いることができるジアミンは、一般式(6):
【化10】
(ここで、Y
1は一般式(2)と同義である。)で示される化合物が挙げられる。
【0027】
Y1が2価の芳香族基であるジアミンとしては、パラフェニレンジアミン、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメトキシ-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジクロロ-4,4'-ジアミノビフェニル、9,10-ビス(4-アミノフェニル)アントラセン、4,4'-ジアミノベンゾフェノン、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、3,3'-ジアミノジフェニルスルホン、4,4'-ジアミノジフェニルスルフォキシド、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'-ビス(3-アミノフェノキシビフェニル、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(3-アミノ-4-メチルフェニル)プロパン、メタフェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼンを挙げることができる。
【0028】
Y1が2価の脂肪族基であるジアミンとしては、1,1-メタキシリレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4-ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ-4,7-メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6.2.1.02,7]-ウンデシレンジメチルジアミン、4,4'-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、イソホロンジアミンを挙げられる。
【0029】
【0030】
(ここで、R28及びR29は、それぞれ独立して、2価の炭化水素基であり、
R30及びR31は、それぞれ独立して、1価の炭化水素基であり、
rは、1以上の整数であり、好ましくは1~10の整数である。)で示される化合物も使用することができる。
【0031】
R28及びR29としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等の炭素数1~7のアルキレン基、フェニレン基等の炭素数6~18のアリーレン基などが挙げられる。
R30及びR31としては、メチル基、エチル基等の炭素数1~7のアルキル基、フェニル基等の炭素数6~12のアリール基などが挙げられる。
【0032】
ポリアミック酸のカルボキシル基に、塩基の作用で脱離する保護基を導入するには、ポリアミック酸とR1X又はR2X(ここで、Xはハロゲン原子であり、好ましくは塩素原子である。)を反応させることにより行うことができるが、これらに限定されない。
【0033】
塩基の作用で脱離する保護基で保護されているフェノール性水酸基を有するポリイミドとしては、一般式(3):
【化12】
(ここで、
X
2は、(4+p)価の有機基であり、
Y
2は、(2+q)価の有機基であり、
R
3は、水素原子又は塩基の作用で脱離する保護基であり、複数のR
3が存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよく、
R
4は、水素原子又は塩基の作用で脱離する保護基であり、複数のR
4が存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよく、
pは0~4の整数であり、
qは0~4の整数であるが、pとqが同時に0であることはなく、
OR
3が結合している炭素原子は、芳香環の環構成原子であり、
OR
4が結合している炭素原子は、芳香環の環構成原子であり、
R
3及びR
4のすべてが水素原子であることはない。)で示される繰り返し単位を有するポリマーがあげられる。
【0034】
X2は、(4+p)価の有機基であり、有機基の炭素原子数は好ましくは4~40であり、より好ましくは6~34である。有機基は芳香環を有することが好ましい。
【0035】
芳香環を有する有機基は、ベンゼン骨格、ビフェニル骨格、ビスフェノール骨格等のベンゼン環を含む基が挙げられ、例えば、以下の基及びこれらにp個の(OR3)が結合した基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
【0037】
Y2は、(2+q)価の有機基であり、有機基の炭素原子数は好ましくは4~40であり、より好ましくは6~34である。有機基は芳香環を有することが好ましい。
【0038】
芳香環を有する有機基は、ベンゼン骨格、ビフェニル骨格、ビスフェノール骨格等のベンゼン環を含む基が挙げられ、例えば、以下の基及びこれらにq個の(OR4)が結合した基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
芳香環を有する基としては、例えば、以下が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
【化14】
(ここで、Aは単結合、-CH
2-、-O-、-CO-、-S-、-SO
2-、-NHCO-、-C(CF
3)
2-又は-C(CH
3)
2-である。)
【0041】
R3は、水素原子又は塩基の作用で脱離する保護基であり、複数のR4が存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよく、好ましくは同一である。
R4は、水素原子又は塩基の作用で脱離する保護基であり、複数のR4が存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよく、好ましくは同一である。
pは0~4の整数であり、qは0~4の整数であるが、pとqが同時に0であることはない。好ましくは(p+q)は1~3の整数であり、より好ましくは(p+q)は2であり、特にpは2であり、qは0であるか、pは0であり、qは2であることが好ましい。
【0042】
一般式(3)において、
OR3が結合している炭素原子は、芳香環の環構成原子であり、
OR4が結合している炭素原子は、芳香環の環構成原子であり、
R3及びR4のすべてが水素原子であることはなく、R3及びR4のすべてが塩基の作用で脱離する保護基であることが好ましい。
【0043】
一般式(3)における塩基の作用で脱離する保護基は、フェノール性水酸基の保護基であり、例えば、モノ又はジアルコキシニトロベンジルオキシカルボニル基、フルオレニルメチルオキシカルボニル基が挙げられ、好ましくはフルオレニルメチルオキシカルボニル基である。塩基の作用で脱離する保護基の具体例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない。
【化15】
【0044】
一般式(3)のポリマーは、例えば、q個のフェノール性水酸基を有する酸二無水物と、p個のフェノール性水酸基を有するジアミンを混合してポリアミック酸を合成し、これを閉環してポリイミドとしたのち、ポリイミド中のフェノール性水酸基に、塩基の作用で脱離する保護基を導入することで調製することができる。
【0045】
p個のフェノール性水酸基を有する酸二無水物としては、上記一般式(2)との関係で挙げられた酸二無水物及びそれらの酸二無水物の芳香環にp個の水酸基が結合した化合物が挙げられる。
【0046】
q個のフェノール性水酸基を有するジアミンとしては、上記一般式(2)との関係で挙げられたジアミン及びそれらのジアミンの芳香環にq個の水酸基が結合した化合物が挙げられる。例えば、フェノール性水酸基を有するジアミンとしては、2,4-ジアミノフェノール、3,5-ジアミノフェノール、2,5-ジアミノフェノール、1,4-ジアミノ-2,5-ジヒドロキシベンゼン、4,6-ジアミノレゾルシノール、2,5-ジアミノハイドロキノン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-アミノ-3,5-ジヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-ヒドロキシ-4-アミノフェニル)プロパン、ビス(4-アミノ-3,5-ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3,5-ジヒドロキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノ-3,5-ジヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-ヒドロキシ-4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3'-ジアミノ-4,4'-ジヒドロキシビフェニル、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジヒドロキシビフェニル、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジヒドロキシ-5,5'-ジメチルビフェニル、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジヒドロキシ-5,5'-ジメトキシビフェニル、1,4-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、ビス[4-(3-アミノ-4-ヒドロキシフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノ-4-ヒドロキシフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノ-4-ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-アミノ-4-カルボキシ-5-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-アミノ-3-カルボキシ-5-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3-カルボキシ-5-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(4-アミノ-3-カルボキシ-5-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノ-3-カルボキシ-5-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン及び下記構造のジアミン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
【0048】
ポリイミドのフェノール性水酸基に、塩基の作用で脱離する保護基を導入するには、ポリイミドとR3X又はR4X(ここで、Xはハロゲン原子であり、好ましくは塩素原子である。)を反応させることにより行うことができるが、これに限定されない。
【0049】
塩基の作用で脱離する保護基で保護されているフェノール性水酸基を有するポリベンゾオキサゾール前駆体としては、一般式(4):
【化17】
(ここで、
X
3は、2価の有機基であり、
Y
3は、(2+s)価の有機基であり、
R
5は、水素原子又は塩基の作用で脱離する保護基であり、同一であっても異なっていてもよく
sは2~8の整数であり、
OR
5が結合している炭素原子は、芳香環の環構成原子であり、
R
5のすべてが水素原子であることはないこととする。)
で示される繰り返し単位を有するポリマーがあげられる。
【0050】
X3は、2価の有機基であり、脂肪族基でも芳香族基でもよいが、芳香族基であることが好ましく、芳香環上で一般式(4)中のカルボニルと結合していることがより好ましい。芳香族基の炭素原子数は好ましくは6~30であり、より好ましくは6~24である。
【0051】
芳香族基としては、例えば、以下が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
【化18】
(ここで、Aは単結合、-CH
2-、-O-、-CO-、-S-、-SO
2-、-NHCO-、-C(CF
3)
2-又は-C(CH
3)
2-である。)
【0053】
Y3は、(2+s)価の有機基であり、脂肪族基でも芳香族基でもよいが、芳香族基であることが好ましい。芳香族基の炭素原子数は好ましくは6~30であり、より好ましくは、6~24である。2つの(OR5)と2つのアミノ基がオルト位に芳香環上に位置することがより好ましい。
【0054】
芳香族基としては、例えば、以下の基(結合手のうち2つには(OR5)が結合しているものとする)又はこれらに(s-2)個の(OR5)が結合した基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
【0056】
R5は、水素原子又は塩基の作用で脱離する保護基であり、同一であっても異なっていてもよいが、好ましくは同一である。
sは、好ましくは2である。
一般式(4)において、OR5が結合している炭素原子は、芳香環の環構成原子である。
R5のすべてが水素原子であることはなく、すべてが塩基の作用で脱離する保護基であることが好ましい。
【0057】
一般式(4)における塩基の作用で脱離する保護基は、フェノール性水酸基を保護する基であり、例えば、モノ又はジアルコキシニトロベンジルオキシカルボニル基、フルオレニルメチルオキシカルボニル基が挙げられ、好ましくはフルオレニルメチルオキシカルボニル基である。塩基の作用で脱離する保護基の具体例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない。
【化20】
【0058】
一般式(4)のポリマーは、例えば、ジヒドロキシジアミンとジカルボン酸ジクロリド等のジカルボン酸ジハライドを反応させて、反応物中のフェノール性水酸基に塩基の作用で脱離する保護基を導入することにより調製することができる。
【0059】
ジヒドロキシジアミンとしては、例えば、3,3'-ジアミノ-4,4'-ジヒドロキシビフェニル、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジヒドロキシビフェニル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン等が挙げられるが、これらに限定されない。中でも、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンが好ましい。
【0060】
ジカルボン酸ジハライドにおけるジカルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、5-tert-ブチルイソフタル酸、5-ブロモイソフタル酸、5-フルオロイソフタル酸、5-クロロイソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4'-ジカルボキシビフェニル、4,4'-ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4'-ジカルボキシテトラフェニルシラン、ビス(4-カルボキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(p-カルボキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン等の芳香環を有するジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、1,2-シクロブタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸等の脂肪族系ジカルボン酸が挙げられるが、これらに限定されない。中でも、4,4'-ジカルボキシジフェニルエーテルが好ましい。
【0061】
反応物のフェノール性水酸基に、塩基の作用で脱離する保護基を導入するには、ポリイミドとR3X又はR4X(ここで、Xはハロゲン原子であり、好ましくは塩素原子である。)を反応させることにより行うことができるが、これらに限定されない。
【0062】
(A)のポリマーの重量平均分子量は、1000~100万とすることができ、5000~10万が好ましく、1万~5万がより好ましい。重量平均分子量は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0063】
<(B)の特定の共有結合型の光塩基発生剤>
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(B)酸解離定数pKaが10.8以上である塩基性化合物を共有結合によって潜在化してなる光塩基発生剤を含む。特定の共有結合型の光塩基発生剤を含有することによって、イオン結合型の光塩基発生剤を含有する場合と比べて未露光部の溶解阻害効果が良好なものとなり、現像コントラストを向上させることができる。また、特定の共有結合型の光塩基発生剤を使用することにより、保存中に現像コントラストが低下してしまうことを抑制することもできる。
【0064】
共有結合型の光塩基発生剤が発生する塩基は、酸解離定数pKaが10.8以上であることが好ましく、より好ましくは13.0以上である。酸解離定数pKaは25℃、水溶液中での測定値である。
【0065】
発生する塩基としては、例えば、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(TMG)、ジブチルアミン(DBA)、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)、2-メチル-2-イミダゾリン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
【0067】
好ましくは、TMG、TBDである。
【0068】
光塩基発生剤としては、一般式(1):
【化22】
(ここで、Zはアミノ基又はイミノ基を表す。)で示される光塩基発生剤が好ましい。アミノ基又はイミノ基は、上記で例示した塩基の残基を含む。
【0069】
Zは、一般式(z1):
【化23】
(ここで、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子又は有機基であり、R
1とR
2とは、それらが結合している窒素原子と一緒になって環状構造を形成していてもよく、環状構造は、前記窒素原子以外のヘテロ原子を含んでいてもよいが、R
1とR
2は同時に水素原子ではないこととする。)で示される基であることができる。
【0070】
R1及びR2は、発生する塩基の塩基性の観点から、ともにアルキル基であるか、それらが結合している窒素原子とともに環状構造を形成しており、R1とR2とは環状構造中、アルキレン鎖を形成していることが好ましい。アルキル基又はアルキレン鎖を構成する炭素原子数は好ましくは1~20であり、より好ましくは1~8である。
【0071】
Zは、一般式(z2):
【化24】
(ここで、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、-NR
5R
6又は-C(=O)NR
7R
8であり、R
5、R
6、R
7及びR
8は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基又はアリール基である。)で示される基であることができる。アルキル基としては、炭素原子数が1~20であるアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素原子数が1~8であるアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基等である。アリール基としては、炭素原子数が6~20のアリールであり、例えばフェニル基等である。R
3、R
4としては、アミノ基、モノ又はジアルキルアミノ基、フェニルアミノ基、アミド基等が挙げられる。
【0072】
好ましくは、以下の光塩基発剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【化25】
【0073】
<配合量>
本発明のポジ型樹脂組成物は、(A)のポリマー100質量部に対し、(B)の共有結合型の光塩基発生剤が10~40質量部であることが好ましい。この範囲であれば、現像コントラストを十分に向上させることができる。
【0074】
<溶媒>
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は溶媒を含むことができる、溶媒は、(A)のポリマー及び(B)の共有結合型の光塩基剤を溶解可能な溶媒であれば、特に限定されない。
【0075】
溶媒としては、例えば、N,N'-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチル-2-ピロリドン、N,N'-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、α-アセチル-γ-ブチロラクトン、テトラメチル尿素、テトラヒドロフラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリノン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、ピリジン、γ-ブチロラクトン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。これらは単独でも、2種以上の任意の比率の組み合わせてもよい。溶媒の量は、特に限定されず、例えば、塗布膜厚、粘度等に応じて調整することができる。溶媒は、例えば(A)のポリマー100質量部に対し、50~9000質量部とすることができる。
【0076】
<その他の成分>
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、増感剤を含むことができる。増感剤を配合することによって、更に光感度を向上させることができる。増感剤は、特に限定されず、例えば、ミヒラーズケトン、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,5-ビス(4'-ジエチルアミノベンザル)シクロペンタン、2,6-ビス(4'-ジエチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6-ビス(4'-ジメチルアミノベンザル)-4-メチルシクロヘキサノン、2,6-ビス(4'-ジエチルアミノベンザル)-4-メチルシクロヘキサノン、4,4'-ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p-ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p-ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2-(p-ジメチルアミノフェニルビフェニレン)-ベンゾチアゾール、2-(p-ジメチルアミノフェニルビニレン)ベンゾチアゾール、2-(p-ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3-ビス(4'-ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3-ビス(4'-ジエチルアミノベンザル)アセトン、3,3'-カルボニル-ビス(7-ジエチルアミノクマリン)、3-アセチル-7-ジメチルアミノクマリン、3-エトキシカルボニル-7-ジメチルアミノクマリン、3-ベンジロキシカルボニル-7-ジメチルアミノクマリン、3-メトキシカルボニル-7-ジエチルアミノクマリン、3-エトキシカルボニル-7-ジエチルアミノクマリン、N-フェニル-N'-エチルエタノールアミン、N-フェニルジエタノールアミン、N-p-トリルジエタノールアミン、N-フェニルエタノールアミン、4-モルホリノベンゾフェノン、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、2-メルカプトベンズイミダゾール、1-フェニル-5-メルカプトテトラゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ナフト(1,2-d)チアゾール、2-(p-ジメチルアミノベンゾイル)スチレン等が挙げられ、感度の点で、4-(1-メチルエチル)-9H-チオキサンテン-9-オンなどのチオキサントン類が好ましい。これらは単独でも、2種以上の任意の比率での組み合わせでもよい。増感剤は、例えば(A)のポリマー100質量部に対し、0.1~10質量部で用いることができる。
【0077】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、塩基増殖剤を含むことができる。厚膜方向で均一な光塩基発生剤の分解のため、塩基増殖剤を併用が好ましい。塩基増殖剤は、特に限定されず、例えば、特開2012-237776号公報、特開2006-282657号公報などに開示された塩基増殖剤を使用することができる。
【0078】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、カップリング剤を含むことができる。カップリング剤を配合することによって、基材との接着性が向上する。カップリング剤は、特に限定されず、例えば、シランカップリング剤等が挙げられ、アルコキシ基を有するシランカップリング剤、メルカプト基を有するシランカップリング剤、エポキシ基を有するシランカップリング剤、エチレン性不飽和基を有するシランカップリング剤、アリールアミノ基を有するシランカップリング剤などが挙げられる。カップリング剤の市販としては、例えば、信越シリコーン社製のKBMシリーズやKBEシリーズ等が挙げられる。カップリング剤は、例えば(A)のポリマー100質量部に対し、0.5~10質量部で用いることができる。
【0079】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、メラミン系化合物を含むことができる。メラミン系化合物を配合することによって、耐薬品性が向上する。メラミン系化合物は、特に限定されず、例えば、三和ケミカル社製のMWシリーズ等が挙げられる。
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、メチロール基を有する架橋剤を含むことができる。メチロール基を有する架橋剤を配合することで解像度や機械特性が向上する。例えば旭有機材社製のTM-BIP-Aや本州化学社製TML-BPAF-MF等が挙げられる。
【0080】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、フィラーを含むことができる。フィラーは、特に限定されず、無機フィラー、有機フィラーのいずれでもよい。フィラーとしては、例えば、シリカ、硫酸バリウム等の粉体、ガラス繊維等の繊維状物質等が挙げられる。
【0081】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、着色剤を含むことができる。着色剤は、特に限定されず、赤、青、緑、黄、白、黒、茶、橙、紫等の公知慣用の着色剤を用いることができる。
【0082】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、共有結合型ではない光塩基発生剤を含有することができるが、効率的な現像コントラスト向上の点から含有量は抑制することが好ましく、より好ましくは含有しない。
【0083】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、光酸発生剤を含有してもよいが、回路の腐食を抑制する観点から、含有量は抑制することが好ましく、より好ましくは含有しない。
【0084】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、その他様々な有機又は無機の低分子又は高分子化合物を含有してもよい。例えば、染料、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、微粒子等を用いることができる。微粒子としては、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の有機微粒子、コロイダルシリカ、カーボン、層状ケイ酸塩等の無機微粒子等が挙げられ、それらは多孔質や中空構造であってもよい。多孔質形状や中空構造を得るための具体的材料としては各種顔料、フィラー、および繊維等が挙げられる。
【0085】
<ドライフィルム>
本発明のドライフィルムは、キャリアフィルム(支持体)上に、本発明のポジ型感光性樹脂組成物を塗布、乾燥させることにより得られる樹脂層を有する。樹脂層の形成は、本発明の感光性樹脂組成物を溶媒で希釈して適切な粘度に調整した上で、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等でキャリアフィルム(支持フィルム)上に均一な厚さに塗布し、その後、塗布された感光性樹脂組成物を、通常、50~130℃の温度で1~30分間乾燥することで行うことができる。塗布膜厚について、特に限定されないが、一般に、乾燥後の膜厚で、10~150μmとすることができ、好ましくは20~60μmである。
【0086】
キャリアフィルム(支持体)としては、プラスチックフィルムを用いることができ、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等が挙げられる。キャリアフィルムの厚さについて、特に限定されないが、一般に、10~150μmとすることができる。
【0087】
キャリアフィルム(支持体)上に本発明のポジ型感光性樹脂組成物からなる樹脂層を形成した後、膜の表面に塵が付着することを防ぐ等の目的で、さらに膜の表面に、剥離可能な保護フィルム(カバーフィルム)を積層することが好ましい。剥離可能な保護フィルム(カバーフィルム)としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができる。保護フィルム(カバーフィルム)としては、保護フィルム(カバーフィルム)を剥離するときに、樹脂層とキャリアフィルム(支持フィルム)との接着力よりも小さいものであればよい。
【0088】
<パターン塗膜>
本発明のパターン塗膜は、例えば、以下のようにして調製することができる。
【0089】
[ステップ1]
本発明のポジ型感光性樹脂組成物を基材上に塗布し、乾燥することにより塗膜を得る。塗布方法は、特に限定されず、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷機等で塗布する方法、スプレーコーターで噴霧塗布する方法、インクジェット法等を用いることができる。塗膜の乾燥方法は、特に限定されず、風乾、オーブン又はホットプレートによる加熱乾燥、真空乾燥等の方法を用いることができる。具体的には、自然乾燥、送風乾燥、20~80℃で1分~1時間の条件での加熱乾燥が挙げられる。ホットプレート上で1~20分乾燥が好ましい。また、真空乾燥も可能であり、この場合は、室温で1分~1時間の条件で行うことができる。
【0090】
基材は、特に限定されず、シリコンウエハ、配線基板、各種樹脂、金属、半導体装置のパッシベーション保護膜などに広く適用できる。
【0091】
[ステップ2]
ステップ1で形成した塗膜を、パターンを有するフォトマスクを介して、あるいは直接露光する。露光に用いる活性エネルギー線としては、光塩基発生剤を活性化させ塩基を発生させることができる波長のものを用いることができ、最大波長が350~410nmの範囲にあるものが好ましい。露光装置は、特に限定されず、コンタクトアライナー、ミラープロジェクション、ステッパー、レーザーダイレクト等を用いることができる。
【0092】
[ステップ3]
ステップ2で露光した塗膜を加熱し、塗膜中の保護基を脱保護する。加熱時間及び加熱温度は、(A)のポリマー、(B)の共有結合型の光塩基発生剤の種類、量及び塗布膜厚によって適宜調整することができるが、10μm程度の塗布膜厚の場合、120~300℃で30~60分程度である。
【0093】
[ステップ4]
ステップ3で加熱した塗膜を現像液で処理する。(A)のポリマーが塩基の作用で脱離する保護基で保護されているフェノール性水酸基を有するポリイミドの場合は、これにより、基材上にパターン塗膜を形成することができる。
【0094】
現像方法は、特に限定されず、例えば、回転スプレー法、パドル法、超音波処理を伴う浸せき法等を用いることができる。現像液は、特に限定されず、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の四級アンモニウム塩類等の水溶液を用いることができる。また、必要に応じて、これらにメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加してもよい。その後、必要に応じて塗膜をリンス液により洗浄してパターン膜を得る。リンス液としては、蒸留水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等を用いることができ、これらは単独でも、2種以上の任意の組み合わせでもよい。
【0095】
[ステップ5]
(A)のポリマーが、塩基の作用で脱離する保護基で保護されているカルボキシル基を有するポリアミック酸又は塩基の作用で脱離する保護基で保護されているフェノール性水酸基を有するポリベンゾオキサゾール前駆体の場合、ステップ4で得られた現像後の膜を、加熱して、ポリイミド又はポリベンゾオキサゾールの硬化物であるパターン塗膜を形成することができる。加熱温度は、例えば、150~350℃とすることができ、好ましくは180~300℃であり、加熱時間は、例えば、5~120分程度とすることができる。加熱方法は、特に限定されず、例えば、ホットプレート、オーブン、温度プログラムを設定できる昇温式オーブン等が挙げられる。加熱は、不活性雰囲気下でも、大気下で行ってもよく、不活性ガスとしては、窒素、アルゴン等が挙げられる。
【0096】
<用途>
本発明のポジ型感光性樹脂組成物の用途は特に限定されず、例えば、塗料、印刷インキ、接着剤等が挙げられる。本発明の感光性樹脂組成物は、表示装置、半導体素子、電子部品、光学部品、建築材料等の形成材料として好適に用いることができる。
【0097】
表示装置の形成材料としては、カラーフィルター、フレキシブルディスプレイ用フィルム、レジスト材料、配向膜等における、層形成材料および画像形成材料が挙げられる。
半導体素子の形成材料としては、レジスト材料、バッファーコート膜、ウエハレベルパッケージ(WLP)の再配線層用絶縁膜等における、層形成材料が挙げられる。
電子部品の形成材料としては、プリント配線板、層間絶縁膜、配線被覆膜等における、封止材料および層形成材料が挙げられる。
光学部品の形成材料としては、ホログラム、光導波路、光回路、光回路部品、反射防止膜等における、光学材料および層形成材料が挙げられる。
建築材料としては、塗料、コーティング剤等に用いることができる。
【0098】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、パターン形成材料としての使用が好ましく、特に半導体装置、表示体装置および発光装置の表面保護膜、バッファーコート膜、層間絶縁膜、再配線用絶縁膜、フリップチップ装置用保護膜、バンプ構造を有する装置の保護膜、多層回路の層間絶縁膜、受動部品用絶縁材料、ソルダーレジストおよびカバーレイ膜等のプリント配線板の保護膜、液晶配向膜等として好適に用いることができる。
【実施例】
【0099】
本発明を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。以下において「部」及び「%」は、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0100】
実施例における測定及び評価は、以下のようにして行った。
<重量平均分子量>
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンで換算した数値である。
[測定条件]
GPC測定 GL7700(GLScience社)
使用カラム:東ソーTSKgel(登録商標)α-2500(φ7.8mm×30cm)α-4000(φ7.8mm×30cm)
カラム温度:40℃
溶離液条件:100mmol/L H3PO4 , 10mmol/L LiBr, in NMP
溶離液流量:0.5mL/min
校正用標準試薬:ポリスチレン標準(Showdex社)
試料濃度:0.1 %溶離液
検出器:UV(波長260nm及び300nm),室温
【0101】
<現像コントラスト値>
実施例・比較例の感光性樹脂組成物をシリコンウエハ上にスピンコートし、60℃/3分プリベークを行った。得られた乾燥膜に1000mJ/cm
2の光照射(365nm波長LED光源)を行い、膜上に露光部と未露光部を作製した後、表1に記載の条件で露光後加熱を行った。10%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で現像を行い、以下の式より現像コントラスト値を算出した。
【数1】
現像コントラスト値が5以上を〇、2以上5未満を△、2未満を×とした。
【0102】
<現像コントラストの保存安定性>
実施例・比較例の感光性組成物を0℃で一週間放置し、放置前後の現像コントラスト評価を行った。放置前後で現像コントラスト値が変わらなかったものを〇、現像コントラスト値が1~2変化したものを△、現像コントラスト値が2以上変化したものを×とした。-は、放置前の現像コントラスト値が2未満であり、放置後の測定を行っていないものを示す。
【0103】
<解像度>
実施例・比較例の感光性樹脂組成物をシリコンウエハ上にスピンコートし、60℃/3分プリベークを行った。得られた乾燥膜に、が1μm/1μmから20μm/20μmまでライン・スペースともに1μm刻みのL/S(ライン/スペース)が描かれたマスクを介して1000mJ/cm2の光照射(365nm波長LED光源)を行い、膜上に露光部と未露光部を作製した後、表1に記載の条件で露光後加熱を行った。10%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で現像を行い、パターンを得た。
形成できたパターンの最小線幅を解像度とし、解像度10μm未満を〇、10μm以上20μm以下を△、20μm以上を×とした。
【0104】
<薬品耐性>
実施例・比較例の感光性樹脂組成物をシリコンウエハ上に乾燥後の膜厚約3μmになるようにスピンコートし、100℃のホットプレート上で5分乾燥させたのち、180℃で1時間加熱して硬化膜を得た。得られた膜を2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に1分浸し、硬化膜の初期膜厚から減少率が5%未満であったものを〇、減少率5%以上20%未満のものを△、減少率が20%以上のものを×とした。
【0105】
実施例で使用した各成分は、以下のとおりである。
<フェノール性水酸基を有するポリイミド(R-1)の合成>
ナスフラスコ中で、ジアミンである7.0g(28mmol)の2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(AHPP)、酸二無水物である9.5g(28mmol)の3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(別名:4,4’-[p-スルホニルビス(フェニレンスルファニル)]ジフタル酸無水物(DSDA)]及び乾燥N-メチル-2-ピロリドン45mlを加えて撹拌し、室温(23℃)で24時間反応させた。フラスコ中に乾燥N-メチル-2-ピロリドン55ml及びトルエン50mlを追加し、温度を180℃にして9時間反応させた。
反応液を室温まで冷却後、メタノール中に滴下することでポリマーを沈殿させ、これをろ過、乾燥して、目的とする、下記の繰り返し単位を有する、フェノール性水酸基を有するポリイミド(R-1)15gを得た。繰り返し単位は以下のとおりである。
重量平均分子量をGPCで測定したところ、ポリスチレン換算で1.2×10
4であった。
【化26】
【0106】
<フェノール性水酸基が保護基で保護されたポリイミド(A-1)の合成>
ナスフラスコ中で、フェノール性水酸基を有するポリイミド(R-1)を1.0gとクロロギ酸9-フルオレニルメチル3.4g(13mmol)および乾燥THF50mlとピリジン1.3g(16mmol)を加えて撹拌し、室温で12時間反応させた。
反応液を室温まで冷却後、メタノール中に滴下することでポリマーを沈殿させ、これをろ過、乾燥して目的とする、下記の繰り返し単位を有する、フェノール性水酸基が保護基で保護されたポリイミド(A-1)1.4gを得た。
【化27】
【0107】
<フェノール性水酸基が保護基で保護されたポリベンゾオキサゾール前駆体(A-2)の合成>
攪拌機、温度計を備えたフラスコ中で、ジアミンである10.0g(27.3mmol)のビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)を乾燥N-メチル-2-ピロリドン150ml中で攪拌溶解した。その後、フラスコを氷浴に浸し、フラスコ内を5℃に保ちながら、8.78g(29.8mmol)の4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸クロリド酸(DEDC)を加えて氷浴で30分撹拌し、室温で18時間反応させた。攪拌した溶液をイオン交換水に投入し析出物を回収した。その後、得られた個体をアセトンに溶解し、再びイオン交換水に投入した。析出物を回収、乾燥してポリベンゾオキサゾール前駆体(ポリヒドロキシアミド)16gを得た。
重量平均分子量をGPCで測定したところ、ポリスチレン換算で2.9×104であった。
【0108】
ナスフラスコ中で、ポリベンゾオキサゾール前駆体(ポリヒドロキシアミド)を1.0gとクロロギ酸9-フルオレニルメチル3.4g(13mmol)及び乾燥THF50mlとピリジン1.3g(16mmol)を加えて撹拌し、室温で12時間反応させた。
反応液をイオン交換水中に滴下することでポリマーを沈殿させ、これをろ過、乾燥して目的とする下記の繰り返し単位を有する、フェノール性水酸基が保護基で保護されたポリベンゾオキサゾール前駆体(A-2)1.4gを得た。
【化28】
【0109】
<カルボキシル基が保護基で保護されたポリアミック酸(A-3)の合成>
ナスフラスコ中で、ジアミンである7.0g(22mmol)の2,2‘-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、酸無水物である8.1g(18mmol)の4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)及び乾燥N-メチル-2-ピロリドン81mlを加えて撹拌し、室温で24時間反応させた。反応液をイオン交換水中に滴下することでポリマーを沈殿させ、これをろ過、乾燥してカルボキシル基を有するポリアミック酸13gを得た。
重量平均分子量をGPCで測定したところ、ポリスチレン換算で1.3×104であった。
【0110】
ナスフラスコ中で、カルボキシル基を有するポリアミック酸樹脂1.0gを乾燥N-メチル-2-ピロリドン10ml中に溶解させオキサルクロライド0.42g(3.3mmol)を滴下し、3時間反応させた。反応液に2-シアノエタノール0.23g(3.3mmol)を滴下し氷浴に浸した。トリエチルアミン0.30g(3.0mmol)を滴下した後、室温で16時間反応させた。
反応液をイオン交換水中に滴下することでポリマーを沈殿させ、これをろ過、乾燥して目的とする下記の繰り返し単位を有するカルボキシル基が保護基で保護されたポリアミック酸樹脂(A-3)1.1gを得た。
【化29】
【0111】
<共有結合型の光塩基発生剤(B-1)の合成>
トランス-2-ヒドロキシけい皮酸1.8g、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン1.26g、縮合剤の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)2.1gを、溶媒のテトラヒドロフロン(THF)中に溶解させ、室温で15時間、反応させた。反応終了後、クロロホルムで希釈し、有機層を希塩酸、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒除去し、クロロホルムで再結晶することにより、以下の化学構造を有する化合物を白色結晶として得た。得られた化合物を光塩基発生剤(B-1)として使用した。
【化30】
【0112】
<共有結合型の光塩基発生剤(B-2)の合成>
トランス-2-ヒドロキシけい皮酸1.8g、2-メチル-2-イミダゾリン1.26g、EDC2.1gを、溶媒のTHF中に溶解させ、室温で15時間、反応させた。反応終了後、クロロホルムで希釈し、有機層を希塩酸、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒除去し、クロロホルムで再結晶することにより、以下の化学構造を有する化合物を白色結晶として得た。得られた化合物を光塩基発生剤(B-2)として使用した。
【化31】
【0113】
<共有結合型の光塩基発生剤(B’-1)の合成>
トランス-2-ヒドロキシけい皮酸1.8g、シクロヘキシルアミン0.99g、EDC2.1gを、溶媒のTHF中に溶解させ、室温で15時間、反応させた。反応終了後、クロロホルムで希釈し、有機層を希塩酸、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒除去し、クロロホルムで再結晶することにより、以下の化学構造を有する化合物を白色結晶として得た。得られた化合物を光塩基発生剤(B’-1)として使用した。
【化32】
【0114】
<イオン結合型の光塩基発生剤(B’-2)>
光塩基発生剤(B’-2)としてグアニジウム2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオン酸塩(富士フイルム和光純薬社製)を使用した。
【0115】
<実施例>
表1に記載の配合比で樹脂(A-1)~(A-3)、(R-1)、光塩基発生剤(B-1)~(B-2)、(B’-1)~(B’-2)及び溶媒(N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc))を配合して、実施例1~5及び比較例1~3の感光性樹脂組成物を得た。各感光性組成物について、各種測定を行った。結果を表1に示す。
【0116】
【0117】
実施例の感光性樹脂組成物は、現像コントラストが大きく解像度に優れ、良好な現像コントラストの保存安定性を示すとともに、良好な薬品耐性を示した。