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特表2023-529577リソグラフィ装置用基板ホルダ及び基板ホルダの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-11
(54)【発明の名称】リソグラフィ装置用基板ホルダ及び基板ホルダの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20230704BHJP
   C23C 16/27 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
G03F7/20 521
G03F7/20 501
C23C16/27
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571839
(86)(22)【出願日】2021-05-25
(85)【翻訳文提出日】2023-01-18
(86)【国際出願番号】 EP2021063942
(87)【国際公開番号】W WO2021249768
(87)【国際公開日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】63/036,028
(32)【優先日】2020-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(71)【出願人】
【識別番号】503195263
【氏名又は名称】エーエスエムエル ホールディング エヌ.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】デ グロート,アントニウス,フランシスカス,ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】アクバス,メフメト,アリ
(72)【発明者】
【氏名】チフチェ サンディッチ,アイセグル
(72)【発明者】
【氏名】デング,ジェリー,ジアングオ
(72)【発明者】
【氏名】ネクリュドヴァ,マリヤ
(72)【発明者】
【氏名】メイヤー,ライアン
(72)【発明者】
【氏名】グプタ,ソニア
(72)【発明者】
【氏名】ステネケン,ライアン,チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デ ウィンケル,ジミー,マテウス,ウィルヘルムス
(72)【発明者】
【氏名】オレクソビッチ,クリストファー エム.
(72)【発明者】
【氏名】ペリー,マイケル
【テーマコード(参考)】
2H197
4K030
【Fターム(参考)】
2H197CD02
2H197CD50
2H197HA03
4K030AA09
4K030BA28
4K030DA03
4K030FA01
4K030GA02
4K030JA05
4K030JA09
4K030JA16
(57)【要約】
本明細書に記載されているのは、リソグラフィ装置用基板ホルダであって、基板ホルダから突起する複数のバールを含み、各バールが基板と係合するように構成された先端部表面を有する基板ホルダの製造方法である。方法は、プラズマ促進化学気相成長法を介して、複数のバールのうちの1つ又は複数のバールの先端部表面で耐摩耗性材料からなるコーティングを施すことを含む。コーティングを施すことは、プラズマを発生させるために、RF電極の無線周波数(RF)電力を100~1000Wの範囲で調節すること、及びチャンバ内で、複数のバールのうちの1つ又は複数のバールを、20~300seemの間のガス流量で前駆体ガスであって、Flexaneである前駆体ガスに曝露することを含む。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィ装置用基板ホルダであって、前記基板ホルダから突起する複数のバールを含み、各バールが基板と係合するように構成された先端部表面を有する前記基板ホルダの製造方法であって、
プラズマ促進化学気相成長法を介して、前記複数のバールのうちの1つ又は複数のバールの前記先端部表面で耐摩耗性材料からなるコーティングを施すことであって、
プラズマを発生させるために、RF電極の無線周波数(RF)電力を100~1000Wの範囲で調節すること、及び
チャンバ内で、前記複数のバールのうちの1つ又は複数のバールを、20~300sccmの間のガス流量で前駆体ガスであって、ヘキサンである前記前駆体ガスに曝露することを含む前記コーティングを施すこと
を含む方法。
【請求項2】
前記コーティングを施すことが、
1x10-3~5x10-2mbarの範囲である、前記基板ホルダが置かれている前記チャンバの真空レベル、又は
5~100rpmの範囲である、前記基板ホルダが置かれているテーブルのターンテーブル速度、
のうちの少なくとも1つを含む、1つ又は複数のプロセスパラメータを調節することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記耐摩耗性材料を用いた前記コーティングにより、前記複数のバールのうちの1つ又は複数のバールの前記先端部表面が、次の特性、すなわち、
0.05~0.5の範囲である、結果として生じる前記コーティングの摩擦係数、
ハイスポットが10nm未満であり、前記基板ホルダの前記複数のバール全体の厚さの均一性が、直径300nm以下にわたるコーティング厚さの10%の範囲内である、結果として生じる前記コーティングの表面、又は
0.1~1.5nmの範囲であるウェーハロードグリッドであって、基準に対する前記基板の相対的な位置決め誤差である前記ウェーハロードグリッド、
のうちの少なくとも1つをさらに有するようになる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記耐摩耗性材料がダイヤモンド様炭素(DLC)であり、及び/又は前記DLCが、(i)B、N、Si、O、F、SドープDLC、及び/又は(ii)Ti、Ta、Cr、W、Fe、Cu、Nb、Zr、Mo、Co、Ni、Ru、Al、Au又はAgがドープされた金属ドープDLCを含む、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記耐摩耗性材料からなる前記コーティングにより、前記1つ又は複数のバールの前記先端面が、20GPa~27GPaの範囲の硬度の特性、及び希薄NaCl溶液においておよそ+2.5Vでポテンシオスタット定電位電解法によって測定される腐食速度であって、0.1nm/hr~2nm/hrの範囲の前記腐食速度の特性を有するようになり、及び/又は
前記硬度がナノ押し込み法によって測定され、前記測定が、ナノ-DMAトランスデューサを使用するダイヤモンド・ベルコヴィッチチップを使用して行われ、押し込み深さが前記コーティング厚さの10%未満で保たれる、請求項1~4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記コーティングを施す前に、アルゴン(Ar)ガスを用いて前記複数のバールを洗浄することであって、前記Arガスを使用して、およそ1000WのRF電力でプラズマを生成すること、及び前記Arガスの流量を100秒間に75sccmの間に調節することを含む、洗浄することと、
前記Arの流量を徐々に減少させ、同時に前記ヘキサンの流量を増加させることと、
前記コーティングを施すために前記RF電力を100W~1000Wの間に徐々にチューニングすることと、
をさらに含む、請求項1~5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記チャンバが、
前記チャンバの内部の直径、
前記チャンバの上部とターンテーブルとの間の距離、及び/又は
基板若しくはターンテーブルと、ガスディストリビューションラインとの間の距離によって特徴付けされるジオメトリを有する請求項1~6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
リソグラフィ装置用基板ホルダであって、前記基板ホルダから突起する複数のバールを含み、各バールが基板と係合するように構成された先端部表面を有する前記基板ホルダの製造方法であって、
プラズマ促進化学気相成長法を介して、前記複数のバールのうちの1つ又は複数のバールの前記先端部表面で耐摩耗性材料からなるコーティングを施すことであって、
プラズマを発生させるために、RF電極の無線周波数(RF)電力を50~750Wの範囲で調節すること、及び
チャンバ内で、前記複数のバールのうちの1つ又は複数のバールを、10~100sccmの間のガス流量で前駆体ガスであって、アセチレンである前記前駆体ガスに曝露すること、を含む前記コーティングを施すことを含む方法。
【請求項9】
前記コーティングを施すことが、
1x10-3~5x10-2mbarの範囲である、前記基板ホルダが置かれている前記チャンバの真空レベル、又は
5~100rpmの範囲である、前記基板ホルダが置かれているテーブルのターンテーブル速度、
のうちの少なくとも1つを含む、1つ又は複数のプロセスパラメータを調節することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記耐摩耗性材料を用いた前記コーティングにより、前記複数のバールのうちの1つ又は複数のバールの前記先端部表面が、次の特性、すなわち、
0.05~0.5の範囲である、結果として生じる前記コーティングの摩擦係数、
ナノ隆起が10nm未満であり、前記基板ホルダの前記複数のバール全体の厚さの均一性が、直径300nm以下にわたるコーティング厚さの10%の範囲内である、結果として生じる前記コーティングの表面、又は
0.1~1.5nmの範囲であるウェーハロードグリッドであって、基準に対する前記基板の相対的な位置決め誤差である前記ウェーハロードグリッド、
のうちの少なくとも1つをさらに有するようになる、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記耐摩耗性材料がダイヤモンド様炭素(DLC)であり、及び/又は前記DLCが、(i)B、N、Si、O、F、SドープDLC、及び/又は(ii)Ti、Ta、Cr、W、Fe、Cu、Nb、Zr、Mo、Co、Ni、Ru、Al、Au又はAgがドープされた金属ドープDLCを含む、請求項8~10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記耐摩耗性材料からなる前記コーティングにより、前記1つ又は複数のバールの前記先端面が、25GPa~35GPaの範囲の硬度の特性、及び作用電極と対電極との間の電位差およそ+2.5Vで3極電気化学セルにおいて定電位電解法によって測定され、希薄NaCl溶液において参照電極に対して適用される腐食速度であって、0.1nm/hr~2nm/hrの範囲の前記腐食速度の特性を有するようになり、及び/又は
前記硬度がナノ押し込み法によって測定され、前記測定が、ナノ-DMAトランスデューサを使用するダイヤモンド・ベルコヴィッチチップを使用して行われ、押し込み深さが前記コーティング厚さの10%未満で保たれる、請求項8~11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記コーティングを施す前に、アルゴン(Ar)ガスを用いて前記複数のバールを洗浄することであって、前記Arガスを使用して、およそ1000WのRF電力でプラズマを生成すること、及び前記Arガスの流量を100秒間に75sccmの間に調節することを含む洗浄することと、
前記Arの流量を徐々に減少させ、同時に前記ヘキサンの流量を増加させることと、
前記コーティングを施すために前記RF電力を100W~1000Wの間に徐々にチューニングすることと、
をさらに含む、請求項8~12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記チャンバが、
前記チャンバの内部の直径、
前記チャンバの上部とターンテーブルとの間の距離、及び/又は
基板若しくはターンテーブルと、ガスディストリビューションラインとの間の距離によって特徴付けされるジオメトリを有する請求項8~13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
リソグラフィ装置用の、基板を支持するように構成された基板ホルダであって、
本体表面を有する本体と、
前記本体表面から突起する複数のバールであって、
それぞれが前記基板と係合するように構成された先端部表面を有するバールであり、
前記バールの前記先端部表面が支持平面に実質的に一致するとともに、前記基板を支持するために構成された前記バールと、
20~27GPaの範囲、又は25~35GPaの範囲の硬度、及び0.1~2nm/hrの範囲の腐食速度であって、作用電極と対電極との間の電位差およそ+2.5Vで3極電気化学セルにおいて定電位電解法によって測定され、希薄NaCl溶液において参照電極に対して適用される前記腐食速度を有する耐摩耗性材料で被覆されている前記複数のバールのうちの1つ又は複数のバールの前記先端部表面と、を含む基板ホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、2020年6月8日に申請された米国仮特許出願第63/036,028号の優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本開示は、リソグラフィ装置用基板ホルダ及び基板ホルダの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] リソグラフィ装置は、基板上に所望のパターンを施すように構築された機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造において使用可能である。リソグラフィ装置は、例えば、パターニングデバイス(例えば、マスク)のパターン(「設計レイアウト」又は「設計」と呼ばれる場合も多い)を、基板(例えば、ウェーハ)に設けられた放射感応性材料(レジスト)層上に投影する場合がある。
【0004】
[0004] 半導体製造プロセスが進歩し続けるにつれて、回路素子の寸法は縮小され続けてきたが、その一方で、デバイス当たりの、トランジスタなどの機能素子の量は、いわゆる「ムーアの法則」と呼ばれる傾向に従って、数十年にわたり着実に増えてきている。ムーアの法則に遅れをとらないように、半導体産業界は、ますます小型化されたフィーチャの創出が可能な技術を追求している。基板にパターンを投影するために、リソグラフィ装置は電磁放射を使用する場合がある。この放射の波長により、基板上にパターニングされるフィーチャの最小サイズが決まる。現在使用されている典型的な波長は、365nm(i線)、248nm(KrF)、193nm(ArF)及び13.5nm(EUV)である。
【0005】
[0005] リソグラフィ装置において、露光される基板(製品基板と呼ばれる場合がある)は、基板ホルダ(時としてウェーハテーブルと呼ばれる)上に保持される。基板ホルダは、投影システムに対して移動可能とすることができる。基板ホルダは通常、剛性材料からなり、支持される製品基板と平面で同様の寸法を有する固体を含む。固体の基板に面する表面には、複数の突起部(バールと呼ばれる)が設けられている。バールの先端面は、平面に一致し、基板を支持する。バールはいくつかの利点を提供する。すなわち、基板ホルダ上又は基板上の汚染物質粒子はバールの間に落下する可能性が高く、したがって、基板の変形を生じることがなく、バールの端部が平面に一致するようにバールを機械加工する方が、固体の表面を平坦にするよりも容易であるし、バールの特性を、例えば、基板のクランプを制御するように調節することができる。
【0006】
[0006] しかしながら、基板ホルダのバールは、使用中に、例えば、基板のロード及びアンロードの繰り返しが原因で、摩耗する。バールの摩耗が不均一であると、露光中の基板の非平坦性につながり、これにより、プロセスウィンドウが縮小し、極端な場合には、結像エラー及び/又はオーバーレイエラーにつながる可能性がある。製造仕様が非常に精密であるため、基板ホルダは製造に費用がかかり、したがって、基板ホルダの使用寿命を延ばすことが望ましい。
【発明の概要】
【0007】
[0007] 一実施形態では、リソグラフィ装置用基板ホルダの製造方法が提供されている。基板ホルダは、基板ホルダから突起する複数のバールを含み、各バールは基板と係合するように構成された先端部表面を有する。方法は、プラズマ促進化学気相成長法を介して、複数のバールのうちの1つ又は複数のバールの先端部表面で耐摩耗性材料からなるコーティングを施すことを含む。コーティングを施すことは、プラズマを発生させるために、RF電極の無線周波数(RF)電力を100~1000Wの範囲で調節すること、及びチャンバ内で、複数のバールのうちの1つ又は複数のバールを、20~300sccmの間のガス流量で前駆体ガスであって、ヘキサンである前駆体ガスに曝露することを含む。
【0008】
[0008] さらに、一実施形態では、リソグラフィ装置用基板ホルダの製造方法が提供されている。基板ホルダは、基板ホルダから突起する複数のバールを含み、各バールは基板と係合するように構成された先端部表面を有する。方法は、プラズマ促進化学気相成長法を介して、複数のバールのうちの1つ又は複数のバールの先端部表面で耐摩耗性材料からなるコーティングを施すことを含む。コーティングを施すことは、プラズマを発生させるために、RF電極の無線周波数(RF)電力を50~750Wの範囲で調節すること、及びチャンバ内で、複数のバールのうちの1つ又は複数のバールを、10~100sccmの間のガス流量で前駆体ガスであって、アセチレンである前駆体ガスに曝露することを含む。
【0009】
[0009] さらに、一実施形態では、リソグラフィ装置用の、基板を支持するように構成された基板ホルダが提供されている。基板ホルダは、本体表面を有する本体と、本体表面から突起する複数のバールと、を含む。各バールは、先端部表面を有し、この先端部表面は、基板と係合するように構成されている。バールの先端部表面は、支持平面に実質的に一致するとともに、基板を支持するために構成され、複数のバールのうちの1つ又は複数のバールの先端部表面は、20~27GPaの範囲又は25~35GPaの範囲の硬度、及び0.1~2nm/hrの範囲の腐食速度を有する耐摩耗性材料でコーティングされる。腐食速度は、作用電極と対電極との間の電位差がおよそ+2.5Vで3極電気化学セルにおいて定電位電解法によって測定され、希薄NaCl溶液において参照電極に対して適用される。
【0010】
[0010] ここで、添付の図面を参照しながら、実施形態を単に例として説明することにする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】[0011]一実施形態による、リソグラフィシステムの様々なサブシステムのブロック図である。
図2A】[0012]一実施形態による、静電気クランプ(ESC:electro static clamp)を介して、基板ホルダ(ウェーハテーブル(WT:wafer table)とも呼ばれる)上にロードしている基板又はウェーハを図示しており、基板はロードされていない位置のeピン上に支持されている。
図2B】[0013]一実施形態による、基板ホルダ上にロードされた位置にある基板を図示している。
図2C】[0014]一実施形態による、基板を基板ホルダにロードするシーケンスを図示している。
図2D】[0014]一実施形態による、基板を基板ホルダにロードするシーケンスを図示している。
図2E】[0014]一実施形態による、基板を基板ホルダにロードするシーケンスを図示している。
図2F】[0014]一実施形態による、基板を基板ホルダにロードするシーケンスを図示している。
図3A】[0015]一実施形態による、基板ホルダにロードされた基板を図示しており、基板ホルダの表面は、基板がその上に載る、ある程度のラフネスを有するバールを含む。
図3B】[0016]一実施形態による、図3Aの基板ホルダのバールの一例である。
図4】[0017]一実施形態による、基板ホルダを製造するための方法のフローチャートである。
図5】[0018]一実施形態による、プラズマ促進化学気相成長法機構の一例を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0019] ここで、図面を参照しながら、実施形態を詳細に説明することにするが、それらは、当業者が実施形態を実践できるようにするための説明例として提供されている。とりわけ、下記の図及び例は、範囲を単一の実施形態に限定するのではなく、他の実施形態が、説明されている要素又は図示されている要素の一部又は全部の置き換えとして可能であることを意図するものである。便宜上、同じ部分又は同様の部分を参照するために、図面全体にわたって同じ参考番号が使用される。これらの実施形態の特定の要素が既知の構成要素を使用して部分的又は全体的に実装される可能性がある場合、このような既知の構成要素のうちの、実施形態の理解のために必要な部分のみが説明され、このような既知の構成要素の他の部分の詳細な説明は、実施形態の説明を不明瞭にしないように省略される。本明細書では、そうではないことが本明細書に明記されていない限り、単数形の構成要素を示す一実施形態は、限定的に解釈されないものとし、むしろ、範囲は、複数の同じ構成要素を含む他の実施形態を包含することを意図しており、その逆もまた同様である。それに加え、特にそのことが明記されていない限り、本出願人らは、本明細書又は特許請求の範囲における何れの用語も、一般的でない意味又は特別な意味を有すると見なされることを意図していない。さらに、範囲は、例示として本明細書で参照される構成要素の現在及び将来の既知の均等物を包含する。
【0013】
[0020] 本開示は、特定用途に対する例示的な実施形態に関するフィーチャについて本明細書で説明しているが、本発明はそれらに限定されないことを理解されたい。本明細書で提供されている教示を利用できる当業者であれば、本発明の範囲内の追加の修正、用途、及び実施形態、並びに本発明が非常に有用となる追加の分野を認識することであろう。
【0014】
[0021] 本開示において、「マスク」、又は「パターニングデバイス」という用語は、本文で用いる場合、基板のターゲット部分に生成されるパターンに対応して、入来する放射ビームにパターニングされた断面を与えるために使用可能な汎用パターニングデバイスを指すものとして広義に解釈することができ、「ライトバルブ(light valve)」という用語もまた、この文脈において使用可能である。従来のマスク(透過型又は反射型マスク、バイナリマスク、位相シフトマスク、ハイブリッドマスク、等々)以外に、このようなパターニングデバイスの他の例には、次のものが含まれる。すなわち、
-プログラマブルミラーアレイ。このようなデバイスの一例は、粘弾性制御層及び反射面を有する行列アドレス可能面である。このような装置の背景にある基本原理は、(例えば、)反射面のアドレスされたエリアは、回折された放射として入射放射を反射する一方で、アドレスされていないエリアは、回折されていない放射として入射放射を反射するということである。適切なフィルタを使用すると、上記回折されていない放射を反射されたビームからフィルタリングして、回折された放射だけを後に残すことができ、このやり方で、ビームは、行列アドレス可能面のアドレスパターンに従ってパターニングされるようになる。必要な行列アドレス指定は、適切な電子手段を使用して実行することができる。このようなミラーアレイに関するより多くの情報は、例えば、米国特許第5,296,891号及び第5,523,193号から収集することができ、それらは参照により本明細書に組み込まれる。
-プログラマブルLCDアレイ。このような構造の一例が、米国特許第5,229,872号に与えられており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0015】
[0022] 簡単な導入として、図1は、例示的なリソグラフィ投影装置10Aを図示している。主要な構成要素は、深紫外のエキシマレーザ源、又は極端紫外線(EUV:extreme ultra violet)放射源を含む他のタイプの放射源とすることができる放射源12A(上述のように、リソグラフィ投影装置それ自体が放射源を有する必要はない)と、部分コヒーレンス(シグマと表示される)を定め、放射源12Aからの放射を成形する光学系14A、16Aa及び16Abを含み得る照明光学系と、パターニングデバイス18Aと、パターニングデバイスのパターンの像を基板面22A上に投影する透過光学系16Acと、である。投影光学系の瞳面にある調節可能フィルタ又はアパーチャ20Aは、基板面22Aに当たるビーム角度の範囲を制限し得る。とり得る最大の角度が投影光学系の開口数NA=sin(Θmax)を定める。
【0016】
[0023] リソグラフィ投影装置においては、放射源は照明(すなわち光)を提供し、投影光学系が、パターニングデバイスを介して照明を基板上へと方向付けるとともに成形する。ここで「投影光学系」という用語は、放射ビームの波面を変え得るあらゆる光学構成要素を含むように広く定義される。例えば、投影光学系は、構成要素14A、16Aa、16Ab及び16Acのうちの少なくともいくつかを含むことができる。空間像(AI:aerial image)とは、基板レベルでの放射強度分布である。基板上のレジスト層は露光され、空間像がレジスト層に潜像的「レジスト像」(RI:resist image)として転写される。レジスト像(RI)は、レジスト層におけるレジストの溶解度の空間的な分布として定義することができる。レジストモデルを使用して空間像からのレジスト像を計算することができる。その一例は、共通して割り当てられた米国特許出願第12/315,849号に見出すことができ、参照によりその開示全体が本明細書に組み込まれる。レジストモデルは、レジスト層の特性(例えば、露光、PEB及び現像中に起こる化学プロセスの効果)にのみ関連付けられている。リソグラフィ投影装置の光学的な特性(例えば、放射源の特性、パターニングデバイス、及び投影光学系の特性)は、空間像を決定付ける。リソグラフィ投影装置において使用されるパターニングデバイスは変更することができるので、パターニングデバイスの光学的な特性は、少なくとも放射源及び投影光学系を含むリソグラフィ投影装置の残りの光学的な特性から分けることが望ましい。
【0017】
[0024] 本文書においては、「放射」及び「ビーム」という用語は、紫外放射(例えば、365nm、248nm、193nm、157nm又は126nmの波長を有する)及びEUV(極端紫外線放射、例えば、5~20nmの範囲の波長を有する)を含むすべてのタイプの電磁放射を包含するように使用されている。
【0018】
[0025] さらに、リソグラフィ投影装置は、1つ又は複数の基板ホルダ、例えば、2つの基板ホルダ(及び/又は、1つ又は複数のパターニングデバイステーブル、例えば、2つのパターニングデバイステーブル)を有するタイプのものとすることができる。このような「マルチステージ」デバイスにおいては、追加のテーブルを並行して使用することができ、又は、1つ又は複数の他のテーブルが露光に使用されている間に、1つ又は複数のテーブルで準備ステップを行うことができる。ツインステージのリソグラフィ投影装置は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,969,441号に記載されている。
【0019】
[0026] リソグラフィ装置(例えば、図1)では、露光される基板(製品基板と呼ばれる場合がある)は、基板ホルダ(時としてウェーハテーブル又は基板ホルダと呼ばれる)に保持されている。基板ホルダWTは、露光中、基板を正確に位置決めするように設計されている。基板テーブル(例えば、図2A及び図3AにおけるWT)は、投影装置に対して移動可能とすることができる。基板ホルダは通常、剛性材料からなり、支持される製品基板と同様のXY面内寸法を有する固体を含む。固体の基板に面する側の表面には、複数の突起部又は突出体(バールと呼ばれる)が設けられている。バールの先端面(図3Bを参照)は、平坦面に一致し、基板を支持する。バールはいくつかの利点を提供する。すなわち、基板ホルダ上又は基板上の汚染物質粒子はバールの間に落下する可能性が高く、したがって、基板の変形を生じることがなく、バールの端部が平面に一致するようにバールを機械加工する方が、固体の表面を平坦にするよりも容易であるし、バールの特性を、例えば、基板のクランプを制御するように調節することができる。一実施形態では、バールは、基板ホルダWTと基板Wとの間の接触エリアを縮小し、摩擦及び粘着を低減させる。
【0020】
[0027] しかしながら、基板ホルダのバールは、使用中に、例えば、基板のロード及びアンロードの繰り返しによって、摩耗する。バールの摩耗が不均一であると、露光中の基板の非平坦性(例えば、表面プロファイルがz方向に仕様から外れている)につながり、これにより、プロセスウィンドウが縮小し、極端な場合には、結像エラー及び/又はオーバーレイエラーにつながる可能性がある。製造仕様が非常に精密であるため、基板ホルダは製造に費用がかかり、したがって、基板ホルダの使用寿命を延ばすことが望ましい。
【0021】
[0028] 基板ホルダによっては、典型的にはSiC又はSiSiCであるダイヤモンド様炭素(DLC)コーティングが本体に塗布されている場合がある。しかしながら、DLCコーティングされたバールの摩耗、酸化、及び不安定な摩擦は、基板ホルダの劣化に重大な問題を引き起こすと考えられている。
【0022】
[0029] したがって、基板ホルダ又は少なくとも基板ホルダのバールは、ダイヤモンド又は他の超硬材料などのコーティングによって被覆することが望ましい。しかしながら、例えば、ダイヤモンド成長のために利用可能なCVDの製造技術には、堆積温度を高くする(400~1200℃)ことが必要であることにより、熱応力が強くなり、その結果、基板ホルダの反りにつながる可能性がある。これにより、ひいては、時間のかかる製造ステップを追加して、基板ホルダを平坦性仕様にまでもっていくことが必要になる。
【0023】
[0030] 図2A及び図2Bは、ウェーハ・ハンドラWHを用いた基板ホルダWTへの基板Wのロード及びアンロードを図示している。基板ホルダWTは従来、基板Wを支持する複数のバールを有している。例えば、10,000個を超えるバールが、基板ホルダWTの上に設けられており、これらのバールは基板Wと接触している。露光準備において基板Wを基板ホルダWTに最初にロードするとき、基板Wは、3つ以上の突出ピン(eピン)(例えば、2つのピンがPI1及びPI2として記号が付されている)によって支持され、それらのピンが基板Wを保持している。基板がeピンに位置決めされると、ウェーハ・ハンドラWHは再トラッキングする。ステップアンドスキャン中、基板Wを基板ホルダWTで保持及び支持するために、基板Wはバールにクランプされる(例えば、図2A及び図3Aを参照)。クランプ機構は、例えば、DUVにおける真空力、又はEUVにおける静電力を含むことができる。
【0024】
[0031] 基板Wがeピンによって保持されている間、基板自体の重量、並びに、処理層及び裏側コーティングの応力により、基板Wが歪み、例えば、凸状又は凹状になる。基板Wを基板ホルダWTにロードするために、eピンが引っ込んで、基板Wが基板ホルダWTのバールによって支持されるようにする。基板Wが基板ホルダWTのバール上へと下がっていくにつれて、基板Wは何箇所か、例えば、縁部付近が、他の箇所、例えば、中心付近よりも先に接触することになる。バール(図2C図2Fを参照)と、基板Wの下側表面との間に少しでも摩擦があれば、基板Wが平坦な無応力状態に完全に弛緩することを妨げる場合がある。これは、基板Wの露光中のフォーカスエラー及びオーバーレイエラーにつながる可能性がある。
【0025】
[0032] ウェーハ上で厚い層を成長させると、ウェーハに湾曲が生じ、例えば、ウェーハは、最大で400μmまで屈曲する。これらのずれは、ミスアライメント及びパターンの歪みに起因するウェーハでのオーバーレイの欠陥につながる。湾曲したウェーハが基板ホルダWTにロードされ、クランプされると、面内応力を発生させる。図2C図2Fは、基板Wのローディングシーケンスの例、及びバールと基板Wとの間の摩擦を図示している。ウェーハのローディングのシーケンスは、eピンから基板ホルダWTまでか、又は静電気クランプ(ESC:electro static clamp)までである。例えば、eピン上のウェーハWは、基板テーブルWTに向かって下方へ移動し(図2Cを参照)、湾曲したウェーハW’は、縁部で基板ホルダWTに触れ(図2Dを参照)、ウェーハWは基板ホルダWTにクランプされ(図2Eを参照)、応力がウェーハの中にロックされる(図2F)。この場合、ウェーハ形状、摩擦係数及び垂直力の組み合わせによって、基準グリッドに対するWLG問題、例えば、位置決め誤差が引き起こされる。
【0026】
[0033] 基板ホルダWTは、一般に、シリコンマトリックス中にSiC結晶粒子を有する材料であるシリコンカーバイド(SiC)又はSiSiCなどのセラミック材料で作られている。このようなセラミック材料は、従来の製造方法を使用して、容易に所望の形状に機械加工することができる。基板Wを基板ホルダWTからロード及びアンロードすると、セラミック材料は急速に磨耗する可能性がある。セラミック材料の摩擦係数が同程度に高いこともまた、基板ホルダWTにロードするときに、基板Wが平坦な無応力状態に弛緩することを妨げる場合がある。
【0027】
[0034] 図3A及び図3Bを参照すると、一実施形態では、基板ホルダWTの1つ又は複数のバール310は、耐摩耗性材料(例えば、ダイヤモンド様炭素(DLC))からなるコーティング311で被覆されたバール本体312を含む。コーティング311は、耐磨耗性を有し、基板ホルダと基板Wとの間の摩擦を低減する。一例では、DLCは、基板ホルダWTのバールの上に直接堆積させる場合がある。一例では、DLCは、基板ホルダWT全体の上に直接堆積させることができる。DLCの堆積は、300℃未満の温度で可能である。300℃を超える温度は、基板ホルダの損傷の危険にさらされる。
【0028】
[0035] 一実施形態では、コーティング311は、耐摩耗性材料(例えば、DLC)からなる第1のコーティング及び第2のコーティングを含む場合がある。第1のコーティング及び第2のコーティングは、コーティング311のフィーチャに類似したフィーチャを含む場合がある。第1のコーティングを基板ホルダ上に直接堆積し得ることで、基板ホルダが、第1のコーティングによって被覆されるようになっている。第2のコーティングを第1のコーティングの上に堆積させる場合がある。第2のコーティングは、本明細書に記載の第1のコーティングとは異なる組成及び/又は異なる特性を含む場合がある。
【0029】
[0036] 本発明者らは、既存のコーティング技術を使用すると、このようなDLCコートされた基板ホルダの性能が、基板の性能面の仕様(例えば、平坦性、フォーカス及びオーバーレイ)を満たさないことを認識している(基板ホルダが次第に摩耗及び腐食することが、基板におけるフォーカス及びオーバーレイ問題の根本的原因である)。基板ホルダWT上(基板と接触するように配置されたエリア)に堆積されたDLCは、所望されるよりも約10倍速く摩耗し、所望される動作周期よりもはるかに早期に基板ホルダを再研磨し、再調節する必要がある。一実施形態では、基板ホルダWTの性能は、ウェーハロードグリッド(WLG:wafer load grid)及び平坦性などのパラメータを用いて測定される。
【0030】
[0037] 基板ホルダWTの劣化は、耐用年数の制限につながり、したがって、基板ホルダWTの早期の取り替え、又は表面の再調節が必要になる場合がある。基板ホルダは磨耗して、バール上部、例えば、花模様が平坦化し、平滑化する場合がある。この劣化の原因は、化学的摩耗、機械的摩耗、又はその組み合わせの可能性がある。DLCコーティングを用いた現在の基板ホルダWT設計は、著しいWLGのドリフト及び平坦性の劣化を示す。例えば、WLGのドリフトレートは、100万回の基板通過当たり20nmであり、摩耗による平坦性の劣化は、100万回当たり10nmである。一実施形態では、「磨耗」とは、すべての磨耗の組み合わせを指す。
【0031】
[0038] 一実施形態では、コーティング311は、高いコーティング硬度及び腐食不活性度により実現される機械的摩耗及び化学的摩耗の低減によって、基板ホルダの性能を向上させるように構成されている。DLCコーティングプロセスの改良又はDLCコーティングの改良により、本開示に説明するように、WLGのドリフトを現在値、例えば、100万回の基板通過当たり20nmから、100万回の基板通過当たり15nm未満に低減させる。本明細書に記載のDLCコーティングは、例えば、機械的摩耗が原因の平坦性劣化もまた改善することができる。例えば、平坦性劣化は、100万回の基板通過当たり10nmから100万回の基板通過当たり7nm未満に低減させることもまた可能である。
【0032】
[0039] 一実施形態によれば、多数回にわたる基板のチャック固定及びチャック解除によるDLCコーティングの摩耗が不均一であることに起因して、平坦性劣化が生じる。プロセスの仕組みにより、基板ホルダWTの周辺の側方変位が高くなり、これにより、縁部の摩耗が激しくなる。このようにコーティングの摩耗が不均一であることが、基板ホルダの劣化及び平坦性の原因であり、プロセス歩留まりを低下させ、基板ホルダを早期に取り替える必要が生じ、マシンダウンタイムが生じる。そのため、高い硬度及び耐摩耗性を有するコーティング組成物を生成するようにコーティングプロセスを個別に調整して、縁部の磨耗を最小化し、基板ホルダWTの耐用年数を最大化しなければならない。
【0033】
[0040] 一実施形態によれば、WLGを最小化するために低い摩擦係数が望まれる。最も入手し易い市販のコーティング類(例えば、DLCコーティング)は、WTバール上での使用の初期段階の間には、仕様を満たしている場合がある。しかしながら、基板通過の回数が増えると、バールの上面のラフネスがなくなることで、例えば、ファンデルワールス力(Van der Waals force)及び毛細管力を介して、基板を基板WTに付着させる。この基板のバールの上面への化学的付着により、摩擦係数及びWLGが増加する。WLGの増加は、そのままオーバーレイ問題に直結し、プロセス歩留まりを低下させ、現場での基板ホルダWTの早期交換を余儀なくさせる。
【0034】
[0041] 本開示は、基板ホルダを被覆するためのコーティング組成物の改良及び方法について記載している。例えば、コーティングは、平行板プラズマ促進化学気相成長法(PE-CVD:plasma-enhanced chemical vapor deposition)反応器を使用して実行することができる。PE-CVDの既存の設定は、およそ1500WのRF電極のRF電力、及び300sccm以上のヘキサンガスの流量である。しかしながら、このようなプロセスを使用すると、既存のa-c:H DLCコーティングの硬度はおよそ21GPa以下であり、腐食速度は2.7nm/h以上である。本実施形態によれば、コーティング硬度が23GPa以上に向上し、1.1nm/h以下の腐食速度が得られる。
【0035】
[0042] 一実施形態では、図4を参照しながら、基板をコーティングするための製造プロセスをさらに以下で詳述する。一連の実験を通して、原料ガスとしてヘキサンを使用する場合、RF電力が減少すると、所与のガス流量についてフィルムの耐食性が増加することが発見されている。それに加え、RF電力のこの減少がガス流量の減少と結び付くと、結果として生じるフィルムは、高い硬度値とともに優れた耐食性を有することになる。本明細書で論じているように、基板ホルダWTは、基板ホルダから突起する複数のバール(例えば、図3Bを参照)を含み、各バールは、基板と係合するように構成された先端部表面を有する。
【0036】
[0043] 一実施形態では、動作P401は、プラズマ促進化学気相成長法を介して、複数のバールのうちの1つ又は複数のバールの先端部表面で耐摩耗性材料からなるコーティングを施すことを含む。一実施形態では、動作P401は、いくつかのサブ動作、例えば、P403及びP405を含む。
【0037】
[0044] 一実施形態では、動作P403は、プラズマを発生させるために、RF電極の無線周波数(RF)電力を100~1000Wの範囲で調節することを含む。一実施形態では、動作P403は、チャンバ内で、複数のバールのうちの1つ又は複数のバールを20~300sccm(例えば、20~200sccm)の間のガス流量で前駆体ガスであって、ヘキサンである前駆体ガスに曝露することを含む。一実施形態では、チャンバは、チャンバ内部の異なる構成要素間の距離に関して記載されるジオメトリを有する。例えば、チャンバの内部の距離又は直径(例えば、図5のD1を参照)、チャンバの上部とターンテーブルTTとの間の距離(例えば、図5のD2を参照)、基板ホルダとガスディストリビューションラインとの間の距離(図5のD3を参照)、又は他の適切なジオメトリ測定値である。一例では、図5では、距離D1は、およそ23インチとすることができ、距離D2は、およそ6インチとすることができ、距離D3は、およそ5.25インチとすることができる。チャンバのジオメトリは例として提示されており、他のジオメトリのチャンバを使用し得ることが理解できる。
【0038】
[0045] 一実施形態では、コーティングを施す動作P401は、1x10-3~5x10-2mbarの範囲である、基板ホルダが置かれているチャンバの真空レベル、又は、5~100rpmの範囲である、基板ホルダが置かれているテーブルのターンテーブル速度、のうちの少なくとも1つを含む1つ又は複数のプロセスパラメータを調節することをさらに含む。
【0039】
[0046] 一実施形態では、耐摩耗性材料を用いたコーティングにより、複数のバールのうちの1つ又は複数のバールの先端部表面は、次のうちの少なくとも1つの特性をさらに有するようになる。すなわち、結果として生じるコーティングの摩擦係数が、0.05~0.5の範囲であるか、結果として生じるコーティングの表面は、ハイスポットが10nm未満であり、基板ホルダの複数のバール全体の厚さの均一性が、直径300mm以下にわたるコーティング厚さの10%の範囲内であるか、又はウェーハロードグリッドが0.1~1.5nmの範囲である。なお、このウェーハロードグリッドは、基準に対する基板の相対的な位置決め誤差である。
【0040】
[0047] 一実施形態では、耐摩耗性材料は、ダイヤモンド様炭素(DLC)のうちの1つである。一実施形態では、DLCは、(i)B、N、Si、O、F、SドープDLC、及び/又は(ii)Ti、Ta、Cr、W、Fe、Cu、Nb、Zr、Mo、Co、Ni、Ru、Al、Au又はAgがドープされた金属ドープDLCを含む。一実施形態では、DLC材料の組み合わせを使用して、耐摩耗性材料を形成することができる。
【0041】
[0048] 一実施形態では、耐摩耗性材料からなるコーティングにより、1つ又は複数のバールの先端面は、20GPa~27GPaの範囲の硬度の特性、及び0.1nm/hr~1.5nm/hrの範囲の腐食速度の特性を有するようになる。なお、この腐食速度は、作用電極と対電極との間の電位差およそ+2.5Vで3極電気化学セルにおいて定電位電解法によって測定され、希薄NaCl溶液において参照電極に対して適用されることにより特徴付けされたものである。ヘキサンを使用するコーティングは、50~65%のsp及び25~35%の水素を含むことができる。
【0042】
[0049] 一実施形態では、硬度はナノ押し込み法によって測定され、この測定法では、測定は、ナノ-DMAトランスデューサを使用するダイヤモンド・ベルコヴィッチチップ(Berkovich tip)を使用して行われ、押し込み深さがコーティング厚さの10%未満で保たれる。一実施形態では、コーティングの厚さは200nm~3ミクロンの間である。
【0043】
[0050] 一実施形態では、方法400は、動作P410をさらに含み、この動作は、コーティングを施す前に、アルゴン(Ar)ガスを用いて複数のバールを洗浄することを含む。一実施形態では、洗浄するステップは、Arガスを使用して、およそ1000WのRF電力でプラズマを生成し、Arガスの流量を100秒間に75sccmの間に調節することを含む。一実施形態では、方法400は、Arの流量を徐々に減少させ、同時にヘキサンの流量を増加させることと、コーティングを施すためにRF電力を100~1000Wの間に徐々にチューニングすることと、をさらに含む。
【0044】
[0051] 一実施形態では、以下で論じるように、方法400は、異なる前駆体ガス(例えば、アセチレンガス)及びプロセスの設定に対して実行することができる。例えば、方法400は、以下のように修正することができる。動作P401は、プラズマ促進化学気相成長法を介して、複数のバールのうちの1つ又は複数のバールの先端部表面で耐摩耗性材料からなるコーティングを施すことを含む。コーティングを施すことは、プラズマを発生させるために、RF電極の無線周波数(RF)電力を50~750Wの範囲で調節すること(例えば、動作P403における修正)、及びチャンバ内で、複数のバールのうちの1つ又は複数のバールを、10~100sccmの間のガス流量で前駆体ガスであって、アセチレンである前駆体ガスに曝露すること(例えば、動作P405における修正)を含む。一実施形態では、アセチレンを使用してコーティングすると、コーティングは、比較的硬度が(ヘキサンよりも)高くなり、例えば、25~35GPaよりも大きな硬度、及び0.1~2nm/hrの間の耐食性を実現することができる。アセチレンを使用するコーティングは、60~80%のsp及び20~30%の水素を含むことができる。
【0045】
[0052] 一実施形態では、コーティングを施すことは、1x10-3~5x10-2mbarの範囲である、基板ホルダが置かれているチャンバの真空レベル、又は、5~100rpmの範囲である、基板ホルダが置かれているテーブルのターンテーブル速度、のうちの少なくとも1つを含む1つ又は複数のプロセスパラメータを調節することをさらに含むことができる。一実施形態では、耐摩耗性材料を用いたコーティングにより、複数のバールのうちの1つ又は複数のバールの先端部表面は、次のうちの少なくとも1つの特性、をさらに有するようになる。すなわち、結果として生じるコーティングの摩擦係数が、0.05~0.5の範囲であるか、結果として生じるコーティングの表面は、ハイスポットが10nm未満であり、基板ホルダの複数のバール全体の厚さの均一性が、直径300mm以下にわたるコーティング厚さの10%の範囲内であるか、又はウェーハロードグリッドが0.1~1.5nmの範囲である。なお、このウェーハロードグリッドは、基準に対する基板の相対的な位置決め誤差である。
【0046】
[0053] 一実施形態では、方法400は、前述の前駆体ガスとしてヘキサンを使用する第1のコーティング、及び前述の前駆体ガスとしてアセチレンを使用する第2のコーティングが、複数のバールのうちの1つ又は複数のバールの先端部表面で施されるように、修正することができる。例えば、図3Bを参照すると、第1のコーティングは、ヘキサンを使用するコーティングを含むことができ、第2のコーティングは、アセチレンを使用するコーティングを含むことができる。前駆体ガスとしてヘキサンを使用するコーティングは、複数のバールのうちの1つ又は複数のバールの先端部表面で施すことができ、前駆体ガスとしてヘキサンを使用する第2のコーティングは、第1のコーティングの上に施すことができる。一例では、方法400は、プラズマ促進化学気相成長法を介して、複数のバールのうちの1つ又は複数のバールの先端部表面で耐摩耗性材料からなる第1のコーティングを施すことを含むことができる。第1のコーティングを施すことは、プラズマを発生させるために、RF電極の無線周波数(RF)電力を100~1000Wの範囲で調節すること、及びチャンバ内で、複数のバールのうちの1つ又は複数のバールを、20~300sccmの間のガス流量で前駆体ガスであって、ヘキサンである前駆体ガスに曝露することを含むことができる。第1の層は、前述したヘキサンを使用するコーティングのフィーチャに類似したフィーチャを含むことができる。方法400は、プラズマ促進化学気相成長法を介して、複数のバールのうちの1つ又は複数のバールの先端部表面で耐摩耗性材料からなる第2のコーティングを(例えば、第1のコーティングに)施すことをさらに含むことができる。第2のコーティングを施すことは、プラズマを発生させるために、RF電極の無線周波数(RF)電力を50~750Wの範囲で調節すること、及びチャンバ内で、複数のバールのうちの1つ又は複数のバールを、10~100sccmの間のガス流量で前駆体ガスであって、アセチレンである前駆体ガスに曝露することを含むことができる。第2のコーティングは、前述したアセチレンを使用するコーティングのフィーチャに類似したフィーチャを含むことができる。
【0047】
[0054] 一実施形態では、方法400は、シクロヘキサン、nヘキサン、又は炭素リッチガスと水素リッチガスとの混合物から選択された前躯体ガスを供給するように修正することができる。例えば、炭素リッチガスと水素リッチガスとの混合物は、アセチレンとメタンとの混合物、アセチレンとヘキサンとの混合物、アセチレンとシクロヘキサンとの混合物、又はアセチレンと水素との混合物のうちの少なくとも1つを含む。前駆体ガスによっては、硬度が21GPaを超え、耐食性が0.1~2nm/hrの間であるコーティングを有するバールを実現し得るように、PE-CVDのプロセスパラメータを調節することができる。
【0048】
[0055] 一実施形態では、耐摩耗性材料からなるコーティングは、ダイヤモンド、WC、CrN及びTiNを含むが、これらに限定されない。前述のコーティングは、Cr、CrN及び既知のDLCコーティングに対する良好な付着性を有する他のコーティングなど薄い付着層を堆積させることによって、Si、CVD-Si SiC、SiSiC、CVD-SiC、ゼロデュア、ULE、融解石英、BK-7及びコーニングXGガラス(Corning XG glass)基板を含むが、これらに限定されない様々なタイプのセラミック基板又はガラス基板に堆積させることができる。
【0049】
[0056] 図5は、プラズマ促進化学気相成長プロセスを実行して、基板ホルダにコーティングを施すために使用される反応器500の一例を図示している。PE-CVDプロセスには、所望のコーティングの特性を実現するように多数のパラメータを厳密に制御することが必要である。例えば、制御パラメータには、圧力p、ガス流量、放電励起周波数f、電力Pが含まれるが、これらに限定されない。堆積中、バルクプラズマのパラメータは、概して、化学的に活性な分子断片-フリーラジカル、並びに、電子及びイオンなどのエネルギー種が生成され、プラズマに露光される基板表面に向かって電位下で加速される速度を制御する。比較的単純なガス混合物の場合でさえ、いくつかのプラズマ反応が起こっており、いくつかのコーティングの新たな種が生成される。しかしながら、反応速度の大部分は容易に利用可能ではなく、プロセスの理論的なシミュレーションは非能率的で、不正確なものになっている。この理由で、所望の材料特性が得られるプロセスレシピを決定するために、プロセス最適化のための実験的なアプローチが用いられる。
【0050】
[0057] 図5では、PE-CVD反応器500はチャンバCBRを含み、チャンバ内では、PE-CVDが基板ホルダWT上で実行される。基板ホルダWTは、ターンテーブルTT上に置かれている。ターンテーブルTTの速度は、基板ホルダWTのコーティングプロセスの間、制御される。チャンバCBRは、発生させたプラズマもまたその中に含んでいる。一実施形態では、プラズマは、RF電極に対する無線周波数(RF)電力を制御することによって発生させる。例えば、RF電力は100~1000W、又は50~750Wの間とすることができる。
【0051】
[0058] チャンバCBRは、ガスディストリビューションラインGDを含み、前駆体ガスがそこを通って、チャンバCBRに供給される。一実施形態では、ガスは、ヘキサン、アセチレン、又は本明細書で論じた他のガスである。一例では、ヘキサンのガス流量は20~300sccmの間に制御され、一方、RF電力は100~1000Wの間に制御されている。別の例では、アセチレンのガス流量は10~100sccmの間に制御され、RF電力は50~750Wの間とすることができる。
【0052】
[0059] 一実施形態では、反応器500を真空システムVSに接続して、チャンバCBRの真空レベルを制御することができる。一実施形態では、反応器500はガスインレットに接続され、このガスインレットを通して、アルゴン(Ar)及び酸素(O)などのガスをチャンバCBRに供給することができる。一実施形態では、基板ホルダWT上にコーティングを施す前に基板ホルダWTを洗浄するためにガスを供給することができる。
【0053】
[0060] 一実施形態では、PE-CVD反応器500は、基板ホルダWT上のCVD成長を調べるのに使用可能な光変調分光法(OMS:optical modulation spectroscopy)を含む。一実施形態では、反応器500が水冷されて、ターンテーブルTTの温度を制御する。
【0054】
[0061] 一実施形態では、チャンバは、チャンバ内部の異なる構成要素に関係して記載されるジオメトリを有する。例えば、ジオメトリは、チャンバの内部の距離D1若しくは直径D1、チャンバの上部とターンテーブルTTとの間の距離D2、基板若しくはターンテーブルと、ガスディストリビューションラインとの間の距離D3(図5のD3を参照)、又は他の適切なジオメトリ測定値により特徴付けすることができる。一例では、図5では、距離D1は、およそ23インチとすることができ、距離D2は、およそ6インチとすることができ、距離D3は、およそ5.25インチとすることができる。チャンバのジオメトリは例として提示されており、他のジオメトリのチャンバを使用し得ることが理解できる。
【0055】
[0062] PE-CVDプロセスで使用されるプロセスパラメータの補足例1、2及び3、並びに結果として生じるコーティングについて以下で説明する。
【0056】
[0063] 例1では、Si及びSiSiC基板(例えば、バール)は、原料ガスとしてヘキサンを使用して、およそ650nmのDLCフィルムで被覆される。このコーティング作業は、流量150sccmのヘキサン及び750WのRF電力を使用して実行された。結果として生じるコーティングは、均一で、稠密であった。これらのコーティングの硬度は、ダイヤモンド・ベルコヴィッチチップに装備されたハイジドロン・ナノインデンタ(hysitron nano-indenter)を最大接触深さ<50nmで使用して、23±1.5GPaの間で測定された。さらに、これらのコーティングの腐食特性は、作用電極と対電極との間の電位差+2.5Vで3極電気化学セルにおいて定電位電解法を使用して測定され、希薄NaCl溶液において参照電極に対して適用されることにより特徴付けされたものである。計算された腐食速度は、1.1nm/hrであることが判明した。これらの値は、およそ1500W及び300sccmの工場設定電力及びガス流量パラメータをそれぞれ使用して堆積された標準的なDLCコーティングと比較すると、およそ15%及び250%の硬度及び耐食性の増加をそれぞれ示している。
【0057】
[0064] 例2では、Si及びSiSiC基板(例えば、バール)は、原料ガスとしてアセチレンを使用して、およそ650nmのDLCフィルムで被覆される。このコーティング作業は、流量50sccmのアセチレン及び300WのRF電力を使用して実行された。結果として生じるコーティングは、均一で、稠密であった。これらのコーティングの硬度は、ダイヤモンド・ベルコヴィッチチップに装備されたハイジドロン・ナノインデンタを最大接触深さ<50nmで使用して、28±1.5GPaの間で測定された。さらに、これらのコーティングの腐食特性は、作用電極と対電極との間の電位差+2.5Vで3極電気化学セルにおいて定電位電解法を使用して測定され、希薄NaCl溶液において参照電極に対して適用されることにより特徴付けされたものである。計算された腐食速度は、1.6nm/hrであることが判明した。これらの値は、およそ1500W及び300sccmの工場設定電力及びガス流量パラメータをそれぞれ使用して堆積された標準的なDLCフィルムと比較すると、およそ40%及び250%の硬度及び耐食性の増加をそれぞれ示している。
【0058】
[0065] 例3では、Si及びSiSiC基板(例えば、バール)は、原料ガスとしてアセチレンを使用して、およそ650nmのDLCフィルムで被覆される。このコーティング作業は、流量30sccmのアセチレン及び150WのRF電力を使用して実行された。結果として生じるコーティングは、均一で、稠密であった。これらのコーティングの硬度は、ダイヤモンド・ベルコヴィッチチップに装備されたハイジドロン・ナノインデンタを最大接触深さ<50nmで使用して、31±1.5GPaの間で測定された。さらに、これらのコーティングの腐食特性は、作用電極と対電極との間の電位差+2.5Vで3極電気化学セルにおいて定電位電解法を使用して測定され、希薄NaCl溶液において参照電極に対して適用されることにより特徴付けされたものである。計算された腐食速度は、1.6nm/hrであることが判明した。これらの値は、およそ1500W及び300sccmの工場設定電力及びガス流量パラメータをそれぞれ使用して堆積された標準的なDLCフィルムと比較すると、およそ40%及び250%の硬度及び耐食性の増加をそれぞれ示している。
【0059】
[0066] 一実施形態では、図4の方法に従って製造された基板ホルダ(例えば、図3A及び図3Bを参照)が提供される。リソグラフィ装置で使用され、また、基板を支持するように構成された基板ホルダである基板ホルダが、本体表面を有する本体(例えば、SiSiC)と、本体表面から突起する複数のバールと、を含む。一実施形態では、各バールは、基板と係合するように構成された先端部表面を有し、バールの先端部表面は、支持平面に実質的に一致するとともに、基板を支持するために構成され、複数のバールのうちの1つ又は複数のバールの先端部表面は、20~27GPaの範囲、又は25~35GPaの範囲の硬度、及び0.1~2nm/hrの範囲の腐食速度を有する耐摩耗性材料で被覆されている。なお、この腐食速度は、作用電極と対電極測定との間の電位差+2.5Vで3極電気化学セルにおいて定電位電解法によって測定され、希薄NaCl溶液において参照電極に対して適用される。一実施形態では、先端部表面の硬度は20~27GPaの範囲であり、腐食速度は0.1~2nm/hrの範囲である。
【0060】
[0067] 前述したように、先端部表面の硬度は25~35GPaの範囲であり、腐食速度は0.1~1.5nm/hrの範囲である。前述したように、硬度は、例えば、ナノ押し込み法によって測定される。測定は、ナノ-DMAトランスデューサを使用するダイヤモンド・ベルコヴィッチチップを使用して行われ、押し込み深さがコーティング厚さの10%未満で保たれる。一実施形態では、コーティングの厚さは200nm~3ミクロンの間である。一実施形態では、耐摩耗性材料は、ダイヤモンド様炭素(DLC)のうちの1つである。一実施形態では、DLCは、(i)B、N、Si、O、F、SドープDLC、及び/又は(ii)Ti、Ta、Cr、W、Fe、Cu、Nb、Zr、Mo、Co、Ni、Ru、Al、Au又はAgがドープされた金属ドープDLCを含む。
【0061】
[0068] 一実施形態では、先端部表面は、次のうちの少なくとも1つの特性をさらに有する。すなわち、結果として生じるコーティングの摩擦係数が、0.05~0.5の範囲であるか、結果として生じるコーティングの表面は、ナノ隆起が10nm未満であり、基板ホルダの複数のバール全体の厚さの均一性が、直径300nm以下にわたるコーティング厚さの10%の範囲内であるか、又はウェーハロードグリッドが0.1~1.5nmの範囲である。なお、このウェーハロードグリッドは、基準に対する基板の相対的な位置決め誤差である。
【0062】
[0069] 本明細書に開示されている概念は、シリコンウェーハなどの基板上で結像するために使用し得るが、開示されている概念は、任意のタイプのリソグラフィ結像システム、例えば、シリコンウェーハ以外の基板上で結像するために使用されるシステムとともに使用し得ることを理解されたい。
【0063】
[0070] 実施形態は、以下の条項を使用して、さらに説明することができる。
1.リソグラフィ装置用基板ホルダであって、基板ホルダから突起する複数のバールを含み、各バールが基板と係合するように構成された先端部表面を有する基板ホルダの製造方法であって、
プラズマ促進化学気相成長法を介して、複数のバールのうちの1つ又は複数のバールの先端部表面で耐摩耗性材料からなるコーティングを施すことであって、
プラズマを発生させるために、RF電極の無線周波数(RF)電力を100~1000Wの範囲で調節すること、及び
チャンバ内で、複数のバールのうちの1つ又は複数のバールを、20~300sccmの間のガス流量で前駆体ガスであって、ヘキサンである前駆体ガスに曝露することを含むコーティングを施すことを含む方法。
2.コーティングを施すことが、
1x10-3~5x10-2mbarの範囲である、基板ホルダが置かれているチャンバの真空レベル、又は
5~100rpmの範囲である、基板ホルダが置かれているテーブルのターンテーブル速度、
のうちの少なくとも1つを含む、1つ又は複数のプロセスパラメータを調節することをさらに含む、条項1に記載の方法。
3.耐摩耗性材料を用いたコーティングにより、複数のバールのうちの1つ又は複数のバールの先端部表面が、次の特性、すなわち、
0.05~0.5の範囲である、結果として生じるコーティングの摩擦係数、
ハイスポットが10nm未満であり、基板ホルダの複数のバール全体の厚さの均一性が、直径300nm以下にわたるコーティング厚さの10%の範囲内である、結果として生じるコーティングの表面、又は
0.1~1.5nmの範囲であるウェーハロードグリッドであって、基準に対する基板の相対的な位置決め誤差であるウェーハロードグリッド、
のうちの少なくとも1つをさらに有するようになる、条項1又は2に記載の方法。
4.耐摩耗性材料がダイヤモンド様炭素(DLC)である、条項1~3の何れか一項に記載の方法。
5.DLCが、(i)B、N、Si、O、F、SドープDLC、及び/又は(ii)Ti、Ta、Cr、W、Fe、Cu、Nb、Zr、Mo、Co、Ni、Ru、Al、Au又はAgがドープされた金属ドープDLCを含む、条項4に記載の方法。
6.耐摩耗性材料からなるコーティングにより、1つ又は複数のバールの先端面が、20GPa~27GPaの範囲の硬度の特性、及び希薄NaCl溶液においておよそ+2.5Vでポテンシオスタット定電位電解法によって測定される腐食速度であって、0.1nm/hr~2nm/hrの範囲の腐食速度の特性を有するようになる、条項1~5の何れか一項に記載の方法。
7.硬度がナノ押し込み法によって測定され、測定が、ナノ-DMAトランスデューサを使用するダイヤモンド・ベルコヴィッチチップを使用して行われ、押し込み深さがコーティング厚さの10%未満で保たれる、条項1~6の何れか一項に記載の方法。
8.コーティングの厚さが200nm~3ミクロンの間である、条項1~7の何れか一項に記載の方法。
9.コーティングを施す前に、アルゴン(Ar)ガスを用いて複数のバールを洗浄することをさらに含む、条項1~8の何れか一項に記載の方法。
10.洗浄することが、
Arガスを使用して、およそ1000WのRF電力でプラズマを生成し、
Arガスの流量を100秒間に75sccmの間に調節することをさらに含む、条項9に記載の方法。
11.Arの流量を徐々に減少させ、同時にヘキサンの流量を増加させること、及び
コーティングを施すためにRF電力を100W~1000Wの間に徐々にチューニングすることをさらに含む、条項10に記載の方法。
12.チャンバが、
チャンバの内部の直径、
チャンバの上部とターンテーブルとの間の距離、及び/又は
基板若しくはターンテーブルと、ガスディストリビューションラインとの間の距離によって特徴付けされるジオメトリを有する条項1~11の何れか一項に記載の方法。
13.リソグラフィ装置用基板ホルダであって、基板ホルダから突起する複数のバールを含み、各バールが基板と係合するように構成された先端部表面を有する基板ホルダの製造方法であって、
プラズマ促進化学気相成長法を介して、複数のバールのうちの1つ又は複数のバールの先端部表面で耐摩耗性材料からなるコーティングを施すことであって、
プラズマを発生させるために、RF電極の無線周波数(RF)電力を50~750Wの範囲で調節すること、及び
チャンバ内で、複数のバールのうちの1つ又は複数のバールを、10~100sccmの間のガス流量で前駆体ガスであって、アセチレンである前駆体ガスに曝露することを含むコーティングを施すことを含む方法。
14.コーティングを施すことが、
1x10-3~5x10-2mbarの範囲である、基板ホルダが置かれているチャンバの真空レベル、又は
5~100rpmの範囲である、基板ホルダが置かれているテーブルのターンテーブル速度、のうちの少なくとも1つを含む、1つ又は複数のプロセスパラメータを調節することをさらに含む、条項13に記載の方法。
15.耐摩耗性材料を用いたコーティングにより、複数のバールのうちの1つ又は複数のバールの先端部表面が、次の特性、すなわち、
0.05~0.5の範囲である、結果として生じるコーティングの摩擦係数、
ナノ隆起が10nm未満であり、基板ホルダの複数のバール全体の厚さの均一性が、直径300nm以下にわたるコーティング厚さの10%の範囲内である、結果として生じるコーティングの表面、又は
0.1~1.5nmの範囲であるウェーハロードグリッドであって、基準に対する基板の相対的な位置決め誤差であるウェーハロードグリッド、のうちの少なくとも1つをさらに有するようになる、条項13又は14に記載の方法。
16.耐摩耗性材料がダイヤモンド様炭素(DLC)である、条項13~15の何れか一項に記載の方法。
17.DLCが、(i)B、N、Si、O、F、SドープDLC、及び/又は(ii)Ti、Ta、Cr、W、Fe、Cu、Nb、Zr、Mo、Co、Ni、Ru、Al、Au又はAgがドープされた金属ドープDLCを含む、条項16に記載の方法。
18.耐摩耗性材料からなるコーティングにより、1つ又は複数のバールの先端面が、25GPa~35GPaの範囲の硬度の特性、及び作用電極と対電極との間の電位差およそ+2.5Vで3極電気化学セルにおいて定電位電解法によって測定され、希薄NaCl溶液において参照電極に対して適用される腐食速度であって、0.1nm/hr~2nm/hrの範囲の腐食速度の特性を有するようになる、条項13~17の何れか一項に記載の方法。
19.硬度がナノ押し込み法によって測定され、測定が、ナノ-DMAトランスデューサを使用するダイヤモンド・ベルコヴィッチチップを使用して行われ、押し込み深さがコーティング厚さの10%未満で保たれる、条項13~18の何れか一項に記載の方法。
20.コーティングの厚さが200nm~3ミクロンの間である、条項13~19の何れか一項に記載の方法。
21.コーティングを施す前に、アルゴン(Ar)ガスを用いて複数のバールを洗浄することをさらに含む、条項13~20の何れか一項に記載の方法。
22.洗浄することが、
Arガスを使用して、およそ1000WのRF電力でプラズマを生成し、
Arガスの流量を100秒間に75sccmの間に調節することをさらに含む、条項21に記載の方法。
23.Arの流量を徐々に減少させ、同時にヘキサンの流量を増加させること、及び
コーティングを施すためにRF電力を100W~1000Wの間に徐々にチューニングすることをさらに含む、条項22に記載の方法。
24.チャンバが、
チャンバの内部の直径、
チャンバの上部とターンテーブルとの間の距離、及び/又は
基板若しくはターンテーブルと、ガスディストリビューションラインとの間の距離によって特徴付けされるジオメトリを有する条項13~23の何れか一項に記載の方法。
25.リソグラフィ装置用の、基板を支持するように構成された基板ホルダであって、
本体表面を有する本体と、
本体表面から突起する複数のバールであって、
基板と係合するように構成された先端部表面をそれぞれが有するバールであり、
先端部表面が支持平面に実質的に一致するとともに、基板を支持するために構成されたバールと、
20~27GPaの範囲、又は25~35GPaの範囲の硬度、及び作用電極と対電極との間の電位差およそ+2.5Vで3極電気化学セルにおいて定電位電解法によって測定され、希薄NaCl溶液において参照電極に対して適用される腐食速度であって、0.1~2nm/hrの範囲の腐食速度を有する耐摩耗性材料で被覆されている複数のバールのうちの1つ又は複数のバールの先端部表面と、
を含む基板ホルダ。
26.先端部表面の硬度が20~27GPaの範囲であり、腐食速度が0.1~2nm/hrの範囲である、条項25の何れかに記載の基板ホルダ。
27.先端部表面の硬度が25~35GPaの範囲であり、腐食速度が0.1~1.5nm/hrの範囲である、条項26の何れかに記載の基板ホルダ。
28.先端部表面が、次の特性、すなわち、
0.05~0.5の範囲である、結果として生じるコーティングの摩擦係数、
ナノ隆起が10nm未満であり、基板ホルダの複数のバール全体の厚さの均一性が、直径300nm以下にわたるコーティング厚さの10%の範囲内である、結果として生じるコーティングの表面、又は
0.1~1.5の範囲であるウェーハロードグリッドであって、基準に対する基板の相対的な位置決め誤差であるウェーハロードグリッド、のうちの少なくとも1つをさらに有する、条項25~27の何れか一項に記載の基板ホルダ。
29.硬度がナノ押し込み法によって測定され、測定が、ナノ-DMAトランスデューサを使用するダイヤモンド・ベルコヴィッチチップを使用して行われ、押し込み深さがコーティング厚さの10%未満で保たれる、条項25~28の何れか一項に記載の基板ホルダ。
30.コーティングの厚さが200nm~3ミクロンの間である、条項25~29の何れか一項に記載の方法。
31.耐摩耗性材料がダイヤモンド様炭素(DLC)のうちの1つである、条項25~30の何れか一項に記載の基板ホルダ。
32.DLCが、(i)B、N、Si、O、F、SドープDLC、及び/又は(ii)Ti、Ta、Cr、W、Fe、Cu、Nb、Zr、Mo、Co、Ni、Ru、Al、Au、又はAgがドープされた金属ドープDLCを含む、条項31に記載の基板ホルダ。
33.リソグラフィ装置用基板ホルダであって、基板ホルダから突起する複数のバールを含み、各バールが基板と係合するように構成された先端部表面を有する基板ホルダの製造方法であって、
プラズマ促進化学気相成長法を介して、複数のバールのうちの1つ又は複数のバールの先端部表面で耐摩耗性材料からなる第1のコーティングを施すことであって、
プラズマを発生させるために、RF電極の無線周波数(RF)電力を100~1000Wの範囲で調節すること、及び
チャンバ内で、複数のバールのうちの1つ又は複数のバールを、20~300sccmの間のガス流量で前駆体ガスであって、ヘキサンである前駆体ガスに曝露すること
を含む第1のコーティングを施すことと、
プラズマ促進化学気相成長法を介して、複数のバールのうちの1つ又は複数のバールの先端部表面で耐摩耗性材料からなる第2のコーティングを施すことであって、
プラズマを発生させるために、RF電極の無線周波数(RF)電力を50~750Wの範囲で調節すること、及び
チャンバ内で、複数のバールのうちの1つ又は複数のバールを、10~100sccmの間のガス流量で前駆体ガスであって、アセチレンである前駆体ガスに曝露すること
を含む第2のコーティングを施すことと、を含む方法。
【0064】
[0071] 上記の説明は限定的ではなく、例示的であることを意図している。したがって、以下に述べる特許請求の範囲から逸脱することなく、記載されたような修正を行い得ることが当業者には明白である。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図4
図5
【国際調査報告】