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特表2023-539612放射劣化からの光学部品の光学材料の保護
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-15
(54)【発明の名称】放射劣化からの光学部品の光学材料の保護
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20230908BHJP
   G02B 1/00 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G02B1/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513527
(86)(22)【出願日】2021-08-24
(85)【翻訳文提出日】2023-03-22
(86)【国際出願番号】 US2021047423
(87)【国際公開番号】W WO2022046823
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】63/070,842
(32)【優先日】2020-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/393,968
(32)【優先日】2021-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(71)【出願人】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブタエワ エフゲーニヤ
(72)【発明者】
【氏名】デルガド ギルダルド
(72)【発明者】
【氏名】チェン グレース エイチ
(72)【発明者】
【氏名】サヴィー ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ダースティン マシュー
(72)【発明者】
【氏名】チュアン グオロン ベラ
(72)【発明者】
【氏名】ロペス ロペス ガリー ブイ
(72)【発明者】
【氏名】ランゲ フェリックス
(72)【発明者】
【氏名】ウォルター ラリッサ
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197BA21
2H197BA23
2H197CA05
2H197CA06
2H197CA10
2H197FA03
2H197GA01
(57)【要約】
光学系は、フッ素(F)を含む光学材料を含むバルク材料を含む。バルク材料が極端紫外(EUV)、真空紫外(VUV)、深紫外(DUV)および/またはUV放射下にあるとき、バルク材料は大気圧から真空の範囲の圧力の環境に曝露される。環境は、少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気を含む。少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気は極性分子を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学システムであって、
フッ素(F)含有光学材料を含むバルク材料であって、前記バルク材料が極端紫外(EUV)、真空紫外(VUV)、深紫外(DUV)および/またはUV放射下にあるときに大気圧から真空の範囲の圧力の環境に曝露され、前記環境が少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気を含み、前記少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気は、極性分子を含む光学システム。
【請求項2】
前記F含有光学材料は、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化カルシウム(CaF)、ランタントリフルオリド(LaF)、フッ化ストロンチウム(SrF)、フッ化バリウム(BaF)、フッ化リチウム(LiF)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項1に記載の光学システム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気は、水(HO)を含む請求項1に記載の光学システム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気は、HOの双極子モーメントと同等の双極子モーメントを有する極性分子を含む請求項1に記載の光学システム。
【請求項5】
前記極性分子は、重水(DO)、メタノール(CHOH)、エチレングリコール((CHOH))、エタノール(CHCHOH)、アンモニア(NH)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項4に記載の光学システム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気の濃度は、前記環境の体積で20ppm(ppm)未満である請求項1に記載の光学システム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気は、パージガスを使用して前記バルク材料に導入される請求項1に記載の光学システム。
【請求項8】
前記パージガスは、窒素(N)、ヘリウム(He)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、クリプトン(Kr)、アルゴン(Ar)、キセノン(Xe)、水素(H)、圧縮乾燥空気、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項7に記載の光学システム。
【請求項9】
前記EUV、VUV、DUVおよび/またはUV放射の強度は、5mW/cm~20W/cmの範囲である請求項1に記載の光学システム。
【請求項10】
光学システムであって、
フッ素(F)含有光学材料を含むバルク材料であって、前記バルク材料が極端紫外(EUV)、真空紫外(VUV)、深紫外(DUV)および/またはUV放射下にあるときに大気圧から真空の範囲の圧力の環境に曝露され、前記環境が少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気を含み、極性分子を含む少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気と、
前記バルク材料上に配置されたコーティング層と、
を備える光学システム。
【請求項11】
前記F含有光学材料は、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化カルシウム(CaF)、ランタントリフルオリド(LaF)、フッ化ストロンチウム(SrF)、フッ化バリウム(BaF)、フッ化リチウム(LiF)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項10に記載の光学システム。
【請求項12】
前記少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気は、水(HO)である請求項10に記載の光学システム。
【請求項13】
前記少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気は、HOの双極子モーメントと同等の双極子モーメントを有する極性分子を含む請求項10に記載の光学システム。
【請求項14】
前記極性分子は、重水(DO)、メタノール(CHOH)、エチレングリコール((CHOH))、エタノール(CHCHOH)、アンモニア(NH)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項13に記載の光学システム。
【請求項15】
前記少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気の濃度は、前記環境の体積で20ppm(ppm)未満である請求項10に記載の光学システム。
【請求項16】
前記コーティング層はコーティング材料を含み、前記コーティング材料は少なくとも20%の反射率を有する請求項10に記載の光学システム。
【請求項17】
前記コーティング材料は、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、ルテニウム(Ru)、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化カルシウム(CaF)、ランタントリフルオリド(LaF)、フッ化ストロンチウム(SrF)、フッ化バリウム(BaF)、フッ化リチウム(LiF)からなる群から選択され、それらの組み合わせである請求項16に記載の光学システム。
【請求項18】
前記EUV、VUV、DUVおよび/またはUV放射の強度は、5mW/cm~20W/cmの範囲である請求項10に記載の光学システム。
【請求項19】
光学材料であって、
フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化カルシウム(CaF)、ランタントリフルオリド(LaF)、フッ化ストロンチウム(Srlri)、フッ化バリウム(BaF)、フッ化リチウム(LiF)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるフッ素(F)含有光学材料を含むバルク材料と、
前記バルク材料上に配置されたコーティング材料を含むコーティング層であって、前記コーティング材料が少なくとも20%の反射率を有する、コーティング層と、
を備える光学材料。
【請求項20】
前記コーティング材料は、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、ルテニウム(Ru)、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化カルシウム(CaF)、ランタントリフルオリド(LaF)、フッ化ストロンチウム(SrF)、フッ化バリウム(BaF)、フッ化リチウム(LiF)からなる群から選択され、それらの組み合わせである請求項19に記載の光学材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学部品の光学材料の放射線劣化からの保護、例えば、光学部品のフッ素(F)含有光学材料の放射線下での劣化からの保護に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の参照
本出願は、米国仮特許仮出願63/070,842号(2020年8月27日)に対する優先権を主張し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
F含有光学材料は、通常、真空紫外線(VUV)から近赤外(NIR)光学用途及び/又はシステムに及ぶ広帯域光学用途及び/又はシステムに使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0158914号
【特許文献2】米国特許出願公開第2012/0250144号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
F含有光学材料の性能は、放射線劣化の結果として極端紫外(EUV)、VUV、深紫外(DUV)および/またはUVスペクトル範囲において急速に劣化し得、光学用途および/またはシステムの光学性能および寿命の低下につながる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態によれば、光学システムが開示される。光学システムは、フッ素(F)含有光学材料を含むバルク材料を含んでもよい。バルク材料は、バルク材料が極端紫外線(EUV)、真空紫外線(VUV)、深紫外線(DUV)、および/またはUV放射下にあるとき、大気圧から真空の範囲の圧力の環境に暴露されてもよい。環境は、少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気を含んでもよい。少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気は、極性分子を含んでもよい。
【0007】
別の実施形態によれば、光学システムが開示される。光学システムは、フッ素(F)含有光学材料を含むバルク材料を含んでもよい。バルク材料は、バルク材料が極端紫外(EUV)、真空紫外(VUV)、深紫外(DUV)および/またはUV放射下にあるとき、大気圧から真空の範囲の圧力の環境に曝露され得る。環境は、少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気を含んでもよい。少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気は、極性分子を含んでもよい。光学システムはさらに、バルク材料上に配置されるコーティング層を含んでもよい。
【0008】
さらに別の実施形態では、光学材料が開示される。光学材料はバルク材料を含み、バルク材料は、フッ素(F)含有光学材料を含む。F含有光学材料は、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化カルシウム(CaF)、ランタントリフルオリド(LaF)、フッ化ストロンチウム(SrF)、フッ化バリウム(BaF)、フッ化リチウム(LiF)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。光学材料はさらに、バルク材料上に配置されるコーティング材料を含むコーティング層を含んでもよく、コーティング材料は、少なくとも20%の反射率を有してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示による例示的な光学システムの第1の実施形態の概略図を示す。
図2】MgFの反射スペクトルおよびMgFがVUV放射下にあるときのスペクトル変化を示す。
図3】本開示による例示的な光学システムの第2の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施形態を本明細書に記載する。しかしながら、開示された実施形態は単なる例であり、他の実施形態は様々な代替形態をとることができることを理解されたい。図面は必ずしも縮尺通りではない。いくつかの特徴は、特定の構成要素の詳細を示すために誇張または最小化され得る。したがって、本明細書に開示される特定の構造的および機能的詳細は、限定するものとして解釈されるべきではなく、単に、実施形態を様々に使用するように当業者に教示するための代表的な基礎として解釈されるべきである。当業者であれば理解するように、図のいずれか1つを参照して図示および説明される種々の特徴は、明示的に図示または説明されない実施形態を生成するように、1つ以上の他の図に図示される特徴と組み合わせることができる。例示された特徴の組み合わせは、典型的な用途のための代表的な実施形態を提供する。しかしながら、本開示の教示と整合する特徴の種々の組み合わせおよび修正が、特定の用途または実装のために所望され得る。
【0011】
光学部品は、バルク材料のみを含んでもよい。光学部品は、光学表面を有する基板と、光学表面上に形成されたフィルム層とを含んでもよく、光学部品を光学劣化から保護するためにフィルム層上に保護層が堆積されてもよい。代替として、光学構成要素は、バルク材料を含んでもよく、保護層が、光学構成要素を光学劣化から保護するようにバルク材料上に堆積されてもよい。光学的劣化は、極端紫外線(EUV)、VUV、深紫外線(DUV)および/またはUV放射によって引き起こされ得る。VUV放射は、一般に、100~190nmの範囲の波長を有するUV光を指す。DUV放射は、一般に、190~280nmの範囲の波長を有するUV光を指す。EUV放射は、一般に、10~100nmの範囲の波長を有する光を指す。フィルム層またはバルク材料のいずれかは、フッ素(F)を含有する光学材料(F含有光学材料とも呼ばれる)を含んでもよい。残念ながら、F含有光学材料は、湿度、酸化、汚染、放射線、および他の環境条件によって劣化し得る。具体的には、光学部品がEUV、VUV、DUV及び/又はUV放射に対して動作環境(例えば、残留ガスを含む真空または不純物を含む不活性雰囲気)下で動作するとき、F含有光学材料はEUV、VUV、DUV及び/又はUV放射の劣化を受けやすく、その結果、光学部品の光学性能が劣化し、光学部品の寿命が短くなる。
【0012】
EUV、VUV、DUVおよび/またはUV放射への露光時に、F含有光学材料中のフッ素(F)原子は、F含有光学材料中のそれらの元の位置から移動し得る。これらのF原子のいくつかは、F含有光学材料を離れ得る。F原子の移動および/または消失は、F含有光学材料に、フルオリアン空孔または格子間Fなどの欠陥を作り出す。欠陥は、表面欠陥またはバルク欠陥であり得る。表面欠陥またはバルク欠陥のいずれかは、光学構成要素の光学性能に悪影響を及ぼし得る。例えば、F原子の移動および/または損失は、F含有光学材料の表面または表面下の酸化を誘発し得、また、フィルム層が光学構成要素上に堆積されるときにフィルム層の酸化を引き起こし得る。このような酸化は、光学部品の光学性能の経時的な劣化につながり得る。密度関数理論(DFT)に基づく計算はまた、酸素がフルオリアン空孔を占有することがエネルギー的に好都合であり、これが光学部品の光学性能の劣化につながり得ることを示唆する。
【0013】
EUV、VUV、DUV及び/又はUV光学用途及び/又はシステムに適用されるものを含む光学部品は、10年以上などの長い耐久寿命を有すると予想される。しかしながら、様々な有害な光学劣化のために、劣化した光学部品の交換がしばしば必要とされる。そのような交換は高価であり得る。光学部品への放射劣化を軽減するために、光学研磨技術が、光学部品の粗い又は劣化した光学表面を改善又は平滑化するために採用されてきた。光学研磨技術の使用は、非常に正確な光学表面を生成することができるが、これらの光学公表技術の欠点のいくつかは、それらが研磨された表面上に汚染物質および残留物を導入し得、長い処理時間を必要とすることである。さらに、光学研磨技法は、光学表面の機械的特性に影響を及ぼし、光学構成要素の光学性能の変動につながり得る。したがって、光学部品をより効率的に保護する必要がある。
【0014】
本開示の態様は、放射劣化、特にEUV、VUV、DUV及び/又はUV放射劣化からの光学部品の光学材料の保護に関する。一実施形態では、本開示は、F含有光学材料を有するバルク材料を含む光学システムを対象とし、バルク材料がEUV、VUV、DUVおよび/またはUV放射下にあるとき、バルク材料を大気圧から真空の範囲の圧力の環境に曝露して、EUV、VUV、DUVおよび/またはUV放射からバルク材料を保護する。環境は、少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気を含んでもよい。別の実施形態では、本開示は、バルク材料と、バルク材料上に形成されるコーティング層とを含む光学システムを対象とし、バルク材料は、F含有光学材料を含み、バルク材料がEUV、VUV、DUV、および/またはUV放射下にあるときにEUV、VUV、DUV、および/またはUV放射からバルク材料を保護するように、大気圧から真空の範囲の圧力の環境に暴露される。DUVおよび/またはUV放射。環境は、少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気を含んでもよい。さらに別の実施形態では、本開示は、バルク材料と、バルク材料上に形成されるコーティング層とを含む光学材料であって、バルク材料がF含有光学材料を含み、バルク材料がEUV、VUV、DUV、および/またはUV放射下にあるときにEUV、VUV、DUV、および/またはUV放射からバルク材料を保護するように、大気圧から真空の範囲の圧力の環境に暴露される、光学材料を対象とする。環境は、少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気を含んでもよい。
【0015】
図1は、本開示による例示的な光学システム10の第1の実施形態の概略図を示す。光学システム10は、光学材料を含んでもよい。光学材料は、光学システム10を光学劣化から保護するバルク材料12であってもよい。光学的劣化は、EUV、VUV、DUVおよび/またはUV放射によって引き起こされ得る。EUV、VUV、DUVおよび/またはUV放射の強度は、5mW/cm~20W/cmの範囲であり得る。バルク材料12は、F含有光学材料であってもよい。F含有光学材料は、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化カルシウム(CaF)、ランタントリフルオリド(LaF)、フッ化ストロンチウム(SrF)、フッ化バリウム(BaF)、フッ化リチウム(LiF)、またはこれらの組み合わせであってもよいが、これらに限定されない。光学システム10は、光学窓、ビームスプリッタ、ミラー、電荷結合素子(CCD)、検出器、又は時間遅延積分(TDI)CCDとすることができるが、これらに限定されない。EUV、VUV、DUV、及び/又はUV放射に曝されると、バルク材料12は、バルク材料12内のF原子の移動及び/又は損失、及び/又は表面再構成を含む放射劣化を受けることがある。そのような放射線誘起劣化は、結果として、光学システム10の光学性能に悪影響を及ぼし得る。
【0016】
光学システム10のバルク材料12を放射線劣化、特にEUV、VUV、DUVおよび/またはUV放射線劣化から保護するために、光学システム10または光学システム10のバルク材料12は、光学放射線に曝されるときに、大気圧から真空(例えば、準大気圧)の範囲の圧力の環境に暴露されてもよい。環境は、少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気を含んでもよい。少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気は、バルク材料12の表面上で凝縮されてもよい。少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気は、極性分子を含んでもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気は、水(HO)を含んでもよい。いくつかの他の実施形態では、少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気は、HOの双極子モーメントと同等の双極子モーメントを有する他の極性分子を含んでもよい。本明細書に記載されるように、分子の双極子モーメントは、分子内の化学結合の分子極性の測定である。HOの双極子モーメントは約1.85デバイ(D)である。極性分子の双極子モーメントは、1.3~2.5Dの範囲であり得る。他の極性分子は、重水(DO)、メタノール(CHOH)、エチレングリコール((CHOH))、エタノール(CHCHOH)、アンモニア(NH)、またはそれらの組み合わせであってもよい。光学システム10または光学システム10のバルク材料12に露出する少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気の濃度は、環境の体積で20ppm(ppm)未満であり得る。少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気の濃度は、少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気の存在が光学システム10に向ける光学放射を妨害せず(例えば、光学放射強度を減衰させ)、同時に、依然として光学システム10を光学放射から保護し得るように、あるレベルで制御されてもよい。
【0017】
放射線劣化、特にEUV、VUV、DUVおよび/またはUV放射線劣化から光学システム10のバルク材料12を保護するために、環境中の極性分子は、バルク材料12の表面上に結合を形成するなど、バルク材料12と物理的または化学的に相互作用し得る。極性分子は、バルク材料12中のダングリングボンド(すなわち、破壊された結合)をクエンチすることができる。ダングリングボンドは、既存であってもよく、表面研磨によって生成されてもよい。バルク材料12と物理的または化学的に相互作用することによって、バルク材料12の表面エネルギーを低下させ、バルク材料12をより安定にすることができる。さらに、極性分子によって囲まれているため、バルク材料12が表面変化、例えば表面再構成または相転移を受けることはエネルギー的に好ましくない。
【0018】
光学システム10のバルク材料12を環境に暴露するために、パージガスが使用されてもよい。パージガスは、少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気と混合されてもよい。バルク材料12を汚染から守るために、少なくとも1つの種類類のガスまたは蒸気ならびにパージガスは、バルク材料12に導入される前に精製されてもよい。パージガスは、窒素(N)、ヘリウム(He)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、クリプトン(Kr)、アルゴン(Ar)、キセノン(Xe)、水素(H)、圧縮乾燥空気、またはそれらの組み合わせであってもよいが、それらに限定されない。パージガスによって導入される少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気の量は、少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気の存在が光学システム10に向けられる光学放射を妨害せず(例えば、放射強度を減衰させ)、同時に、依然として光学システム10を光学放射から保護し得るように、あるレベルで制御されてもよい。
【0019】
図2は、MgFがVUV放射下にあるときのMgFの反射率スペクトルおよびスペクトル変化を示す。特に、プロットIは、MgFがVUV放射線下にないときのスペクトル変化を表し、プロットII、IIIおよびIVは、MgFがVUV放射線下にあるときのスペクトル変化を表す。図2は、100~250nmの波長範囲における反射率スペクトルを示す。VUV放射の強度は100mW/cmである。VUV照射の持続時間は1週間である。MgFは、VUV放射線に曝されるとき、大気圧から真空(例えば、大気圧未満の圧力)の範囲の圧力の環境に曝され得る。環境はHOを含んでもよい。環境中のHOの濃度は変化し得る。精製Arガスを用いて、MgFにHOを導入する。
【0020】
光学材料への放射は、光学材料に表面欠陥を生じさせ得る。そのような表面欠陥は、光学材料の反射率値の低下または増加をもたらし得る。図2を参照すると、プロットIは、VUV放射がMgFに向けられない(例えば、光放射の前)シナリオを表す。プロットIVは、VUV放射線がMgFに向けられる一方で、MgFが比較的低いHO濃度(例えば、環境の0.1体積ppm)を有する環境に曝露されるシナリオを表す。プロットIIおよびIIIは、VUV放射線がMgFに向けられる一方で、MgFが比較的高いHO濃度を有する環境(例えば、環境の10体積ppmおよび1体積ppm)にそれぞれ曝露されるシナリオを表す。プロットIVによって示されるように、MgFの反射率値は、1週間のVUV放射にわたって減少するように見える。しかし、1週間のVUV照射後、プロットIIおよびIIIのMgFのスペクトル変化の量は、プロットIのそれ(すなわち、VUV放射線がMgFに向けられない場合である)と比較して無視できる。
【0021】
図2を引き続き参照すると、プロットIIおよびIIIは、MgFが比較的高いHO濃度を有する環境(例えば、環境の体積で1~10ppmの範囲)に曝露される場合、HOの存在は、MgFに向けられる光学放射線を妨害せず(例えば、放射線強度を減衰させ)、同時に、これを示し得るように見える。それでもなお、MgFは放射線誘発分解から保護され得る。プロットII~IIIとは対照的に、プロットIVについてのMgFの反射率値は、有意に低いようである。これは、MgFがVUV放射線下にあるときにMgFを特定量のHOに曝露すると、MgFをVUV放射線から保護し得ることを示唆すると思われる。しかしながら、MgFに導入されるHOの量が比較的少ない場合、例えば環境の0.1体積ppmである場合、MgFを少量のHOに曝露することは、MgFをVUV放射線から効果的に保護しないことがある。
【0022】
図3は、本開示による例示的な光学システム30の第2の実施形態の概略図を示す。光学システム30は、光学材料を含んでもよい。光学材料は、光学システム30を光学劣化から保護するバルク材料32であってもよい。光学的劣化は、EUV、VUV、DUVおよび/またはUV放射によって引き起こされ得る。EUV、VUV、DUVおよび/またはUV放射の強度は、5mW/cm~20W/cmの範囲であり得る。バルク材料32は、F含有光学材料であってもよい。F含有光学材料としては、MgF、CaF、LaF、SrF、BaF、LiF、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。光学システムは、光学窓、ビームスプリッタ、ミラー、電荷結合素子(CCD)、検出器、または時間遅延積分(TDI)CCDであってもよいが、これらに限定されない。EUV、VUV、DUV及び/又はUV放射への露光時に、光学システム30のバルク材料32は、バルク材料32中のF原子の移動及び/又は損失を含む放射劣化を受けることがある。そのような放射劣化は、結果として、光学システム30の光学性能に悪影響を及ぼし得る。
【0023】
図3を参照すると、バルク材料32は、第1の面34と、第1の面34の反対側の第2の面36とを含むことができる。光学システム30は、バルク材料32の第2の面36上に形成されたコーティング層38を含むことができる。コーティング層38はまた、バルク材料32の第1の面34上に形成され得ることが企図される。コーティング層38は、コーティング材料を含んでもよい。コーティング材料は、少なくとも20%の反射率を有し得る。コーティング材料は、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、ルテニウム(Ru)、MgF、CaF、LaF、SrF、BaF、LiF、またはそれらの組み合わせであってもよいが、それらに限定されない。被覆層38は、単層であってもよく、多層であってもよい。バルク材料32上にコーティング層38を形成することによって、バルク材料32は、VUV放射反射器などの放射反射器として作用することができる。
【0024】
光学システム30のバルク材料32を放射劣化、特にEUV、VUV、DUVおよび/またはUV放射劣化から保護するために、光学システム30または光学システム30のバルク材料32は、光学放射に曝されるときに、大気から真空の範囲の圧力(例えば、準大気圧)の環境に暴露されてもよい。環境は、少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気を含んでもよい。少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気は、バルク材料32の表面上、例えば、バルク材料32の第1の側面34上に凝縮されてもよい。少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気は、極性分子を含んでもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気は、水(HO)を含んでもよい。いくつかの他の実施形態では、少なくとも1つの種類類のガスまたは蒸気は、HOの双極子モーメントと同等の双極子モーメントを有する他の極性分子を含んでもよい。本明細書に記載されるように、分子の双極子モーメントは、分子内の化学結合の分子極性の測定である。HOの双極子モーメントは約1.85デバイ(D)である。極性分子の双極子モーメントは、1.3~2.5Dの範囲であり得る。他の極性分子は、重水(DO)、メタノール(CHOH)、エチレングリコール((CHOH))、エタノール(CHCHOH)、アンモニア(NH)、またはそれらの組み合わせであってもよい。光学システム30または光学システム30のバルク材料32に露出する少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気の濃度は、環境の体積で20ppm(ppm)未満であり得る。少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気の濃度は、少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気の存在が光学システム30に向ける光学放射を妨害せず(例えば、放射強度を減衰させ)、同時に光学システム30を光学放射から依然として保護し得るように、あるレベルで制御されてもよい。
【0025】
放射線劣化、特にEUV、VUV、DUVおよび/またはUV放射線劣化から光学システム30のバルク材料32を保護するために、環境中の極性分子は、バルク材料32の表面上の原子への結合を形成するなど、バルク材料32と物理的または化学的に相互作用し得る。極性分子は、バルク材料32中のダングリングボンド(すなわち、破壊された結合)をクエンチすることができる。ダングリングボンドは、既存であってもよく、表面研磨によって生成されてもよい。バルク材料32と物理的または化学的に相互作用することによって、バルク材料32の表面エネルギーを低下させ、バルク材料32をより安定にすることができる。さらに、極性分子によって囲まれているため、バルク材料32が表面変化、例えば表面再構成または相転移を受けることはエネルギー的に好ましくない。
【0026】
光学システム30のバルク材料32を環境に暴露するために、パージガスが使用されてもよい。パージガスは、少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気と混合されてもよい。バルク材料32を汚染から守るために、パージガスとしての少なくとも1つの種類類のガスまたは蒸気は、バルク材料32に導入される前に精製されてもよい。パージガスは、窒素(N)、ヘリウム(He)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、クリプトン(Kr)、アルゴン(Ar)、キセノン(Xe)、水素(H)、圧縮乾燥空気、またはそれらの組み合わせであってもよいが、それらに限定されない。パージガスによって導入される少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気の量は、少なくとも1つの種類のガスまたは蒸気の存在が、光学システム30に指向する光学放射線に干渉せず(例えば、放射線強度を減衰させ)、同時に、依然として光学システム30を光学放射線から保護し得るように、あるレベルで制御されてもよい。
【0027】
例示的な実施形態が上で説明されているが、これらの実施形態が特許請求の範囲によって包含されるすべての可能な形態を説明することは意図されていない。本明細書で使用される用語は、限定ではなく説明の用語であり、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、種々の変更を行うことができることを理解されたい。前述のように、種々の実施形態の特徴は、明示的に説明または図示されなくてもよい、本発明のさらなる実施形態を形成するように組み合わせることができる。さまざまな実施形態は、1つまたは複数の所望の特性に関して、他の実施形態または先行技術の実装形態よりも利点を提供する、または好ましいものとして説明してきたが、当業者は、1つまたは複数の特徴または特性が、特定の用途および実装形態に依存する所望の全体的なシステム属性を達成するために損なわれ得ることを認識するであろう。これらの属性は、コスト、強度、耐久性、ライフサイクルコスト、市場性、外観、包装、サイズ、保守性、重量、製造性、組み立ての容易さなどを含み得るが、これらに限定されない。したがって、任意の実施形態が、1つまたは複数の特性に関して他の実施形態または先行技術の実装形態よりも望ましくないものとして説明される限りにおいて、これらの実施形態は、本開示の範囲外ではなく、特定の用途に望ましくあり得る。
図1
図2
図3
【国際調査報告】