特許第5963538号(P5963538)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963538
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】モーレラ属細菌の遺伝子組換え法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20160721BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C12N1/21
【請求項の数】30
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2012-119501(P2012-119501)
(22)【出願日】2012年5月25日
(65)【公開番号】特開2013-252057(P2013-252057A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2015年4月1日
(31)【優先権主張番号】特願2012-39002(P2012-39002)
(32)【優先日】2012年2月24日
(33)【優先権主張国】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成24年3月25日京都女子大学において開催された公益社団法人日本農芸化学会2012年度大会で発表。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公益社団法人日本農芸化学会2012年度大会講演要旨集(平成24年3月5日)http://jsbba.bioweb.ne.jp/jsbba2012/download_pdf.php?p_code=4B03a12に発表。
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-1057
(73)【特許権者】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】三井造船株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100080159
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔
(74)【代理人】
【識別番号】100090217
【弁理士】
【氏名又は名称】三和 晴子
(72)【発明者】
【氏名】酒井 伸介
(72)【発明者】
【氏名】高岡 一栄
(72)【発明者】
【氏名】中島田 豊
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】矢野 伸一
(72)【発明者】
【氏名】村上 克治
(72)【発明者】
【氏名】喜多 晃久
【審査官】 白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−017131(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/034822(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/033324(WO,A1)
【文献】 特表2009−536019(JP,A)
【文献】 特開2001−204468(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/019717(WO,A1)
【文献】 合成ガス資化性好熱性細菌Moorella thermoaceticaにおける遺伝子組換え技術の開発,日本生物工学会大会講演要旨集(第63回),2011年,p.149, 2Fa02
【文献】 FEMS Microbiology Letters,1997年,vol.148,pp.163-167
【文献】 APPLIED AND ENVIRONMENTAL MICROBIOLOGY,2004年,vol.70 no.2,pp.883-890
【文献】 好熱性嫌気性細菌Moorella sp. HUC22-1に対する遺伝子導入系の開発,日本生物工学会大会講演要旨集(平成20年度),2008年,p.143, 2Ep12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CA/MEDLINE/BIOSIS(STN)
PubMed
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(pyrF)を標的遺伝子とし、カナマイシン耐性遺伝子を相同組換えによって宿主モーレラ属細菌のゲノムに組み込む工程を備える、モーレラ(Moorella)属細菌の遺伝子組換え方法であって、
前記相同組換えが、前記宿主モーレラ属細菌のオロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(pyrF)の上流領域の塩基配列および下流領域の塩基配列と、前記カナマイシン耐性遺伝子の塩基配列と、前記宿主モーレラ属細菌またはその同一種のモーレラ属細菌に由来するグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(G3PD)プロモーター領域の塩基配列とを含み、前記G3PDプロモーター領域が、前記カナマイシン耐性遺伝子の上流に、前記カナマイシン耐性遺伝子を発現するように連結され、かつ、前記G3PDプロモーター領域および前記カナマイシン耐性遺伝子が前記上流領域、前記下流領域または前記上流領域と前記下流領域との間に配置された相同組換用ベクターを用いて行われる、モーレラ属細菌の遺伝子組換え方法。
【請求項2】
前記相同組換用ベクターが、前記宿主モーレラ属細菌またはその同一種のモーレラ属細菌のオロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(pyrF)の塩基配列をさらに含み、
前記pyrFが前記上流領域と前記下流領域との間に配置され、かつ、
前記pyrFがその本来の発現プロモーターによって発現されるように連結された相同組換えベクターを用いて行われる、請求項に記載のモーレラ属細菌の遺伝子組換え方法。
【請求項3】
前記相同組換用ベクターが、外来遺伝子の塩基配列をさらに含み、
前記外来遺伝子が前記G3PDプロモーターによって発現される、請求項またはに記載のモーレラ属細菌の遺伝子組換え方法。
【請求項4】
前記相同組換用ベクターが、外来遺伝子の塩基配列と、宿主モーレラ属細菌またはその同一種のモーレラ属細菌に由来する発現プロモーター領域の塩基配列とをさらに含み、
前記外来遺伝子が前記発現プロモーター領域に含まれる発現プロモーターによって発現される、請求項またはに記載のモーレラ属細菌の遺伝子組換え方法。
【請求項5】
前記発現プロモーターが、COデヒドロゲナーゼプロモーター、プロリルtRNAシンターゼプロモーターおよびグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼプロモーターからなる群から選択されるいずれか一つである、請求項に記載のモーレラ属細菌の遺伝子組換え方法。
【請求項6】
前記外来遺伝子が、エタノール合成系に関与する遺伝子またはピルビン酸合成系に関与する遺伝子である、請求項のいずれか1項に記載のモーレラ属細菌の遺伝子組換え方法。
【請求項7】
前記カナマイシン耐性遺伝子が、配列番号1で表されるアミノ酸配列をコードするカナマイシン耐性遺伝子である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のモーレラ属細菌の遺伝子組換え方法。
【請求項8】
前記カナマイシン耐性遺伝子が、配列番号2で表されるDNA塩基配列からなるカナマイシン耐性遺伝子である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のモーレラ属細菌の遺伝子組換え方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のモーレラ属細菌の遺伝子組換え方法によって得られる遺伝子組換えモーレラ属細菌。
【請求項10】
オロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(pyrF)の上流領域、下流領域または上流領域と下流領域との間に、カナマイシン耐性遺伝子が配置され、前記カナマイシン耐性遺伝子の上流に、宿主モーレラ属細菌またはその同一種のモーレラ属細菌に由来するグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(G3PD)プロモーターが配置され、前記カナマイシン耐性遺伝子が前記G3PDプロモーターによって発現される、遺伝子組換えモーレラ属細菌。
【請求項11】
さらに、前記G3PDプロモーターの下流、かつ、前記カナマイシン耐性遺伝子の上流または下流に、外来遺伝子が位置し、前記G3PDプロモーターによって前記外来遺伝子が発現される、請求項10に記載の遺伝子組換えモーレラ属細菌。
【請求項12】
さらに、前記G3PDプロモーターと前記カナマイシン耐性遺伝子との間を除く、前記pyrFの上流または下流に、宿主モーレラ属細菌と同一種のモーレラ属細菌に由来する発現プロモーターと、外来遺伝子とが位置し、前記発現プロモーターによって前記外来遺伝子が発現される、請求項10に記載の遺伝子組換えモーレラ属細菌。
【請求項13】
前記発現プロモーターが、COデヒドロゲナーゼプロモーター、プロリルtRNAシンターゼプロモーターおよびグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼプロモーターからなる群から選択されるいずれか一つである、請求項12に記載の遺伝子組換えモーレラ属細菌。
【請求項14】
前記外来遺伝子が、エタノール合成系に関与する遺伝子またはピルビン酸合成系に関与する遺伝子である、請求項11〜13のいずれか1項に記載の遺伝子組換えモーレラ属細菌。
【請求項15】
前記カナマイシン耐性遺伝子が、配列番号1で表されるアミノ酸配列をコードするカナマイシン耐性遺伝子である、請求項10〜14のいずれか1項に記載の遺伝子組換えモーレラ属細菌。
【請求項16】
オロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(pyrF)を標的遺伝子とし、カナマイシン耐性遺伝子を相同組換えによって宿主モーレラ属細菌のゲノムに組み込むための相同組換用ベクターであって、
前記宿主モーレラ属細菌のオロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(pyrF)の上流領域の塩基配列および下流領域の塩基配列と、前記カナマイシン耐性遺伝子の塩基配列と、前記宿主モーレラ属細菌またはその同一種のモーレラ属細菌に由来するグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(G3PD)プロモーター領域の塩基配列とを含み、前記G3PDプロモーター領域が、前記カナマイシン耐性遺伝子の上流に、前記カナマイシン耐性遺伝子を発現するように連結され、かつ、前記G3PDプロモーター領域および前記カナマイシン耐性遺伝子が前記pyrFの上流領域、下流領域または上流領域と下流領域との間に配置された、相同組換用ベクター。
【請求項17】
前記相同組換用ベクターが、外来遺伝子をさらに含み、かつ前記外来遺伝子が前記G3PDプロモーターによって発現される、請求項16に記載の相同組換用ベクター。
【請求項18】
前記相同組換用ベクターが、外来遺伝子と、宿主モーレラ属細菌と同一種のモーレラ属細菌に由来する発現プロモーターとをさらに含み、
前記外来遺伝子が前記発現プロモーターによって発現される、請求項16に記載の相同組換用ベクター。
【請求項19】
前記発現プロモーターが、COデヒドロゲナーゼプロモーター、プロリルtRNAシンターゼプロモーターおよびグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼプロモーターからなる群から選択されるいずれか一つである、請求項18に記載の相同組換用ベクター。
【請求項20】
前記外来遺伝子が、エタノール合成系に関与する遺伝子またはピルビン酸合成系に関与する遺伝子である、請求項1719のいずれか1項に記載の相同組換用ベクター。
【請求項21】
前記カナマイシン耐性遺伝子が、配列番号1で表されるアミノ酸配列をコードするカナマイシン耐性遺伝子である、請求項1720のいずれか1項に記載の相同組換用ベクター。
【請求項22】
前記カナマイシン耐性遺伝子が、配列番号2で表されるDNA塩基配列からなるカナマイシン耐性遺伝子である、請求項17〜21のいずれか1項に記載の相同組換用ベクター。
【請求項23】
宿主モーレラ属細菌と同一株またはその野生株のモーレラ属細菌および大腸菌のいずれでも増殖可能なシャトルベクターである、請求項16〜22のいずれか1項に記載の相同組換用ベクター。
【請求項24】
オロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(pyrF)を標的遺伝子とし、カナマイシン耐性遺伝子を相同組換えによって宿主モーレラ属細菌のゲノムに組み込むための相同組換用ベクターの作製方法であって、
前記宿主モーレラ属細菌のオロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(pyrF)の上流領域の塩基配列および下流領域の塩基配列と前記カナマイシン耐性遺伝子の塩基配列と、前記宿主モーレラ属細菌またはその同一種のモーレラ属細菌に由来するグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(G3PD)プロモーター領域の塩基配列とを含み、前記G3PDプロモーター領域が、前記カナマイシン耐性遺伝子の上流に、前記カナマイシン耐性遺伝子発現るように連結され、かつ、前記G3PDプロモーター領域および前記カナマイシン耐性遺伝子が前記pyrFの上流領域、下流領域または上流領域と下流領域との間に配置され相同組換え領域を、骨格となるプラスミドベクターに組み込む工程を備える、相同組換用ベクターの作製方法。
【請求項25】
前記相同組換え領域が、外来遺伝子をさらに含み、かつ、前記外来遺伝子が前記G3PDプロモーターによって発現されるように配置され、請求項24に記載の相同組換用ベクターの作製方法。
【請求項26】
前記相同組換え領域が、外来遺伝子と、宿主モーレラ属細菌と同一種のモーレラ属細菌に由来する発現プロモーターとをさらに含み、
前記外来遺伝子が前記発現プロモーターによって発現されるように配置され、かつ、前記外来遺伝子および前記発現プロモーターが前記pyrFの上流領域または下流領域に配置され、請求項24に記載の相同組換用ベクターの作製方法。
【請求項27】
前記発現プロモーターが、COデヒドロゲナーゼプロモーター、プロリルtRNAシンターゼプロモーターおよびグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼプロモーターからなる群から選択されるいずれか一つである、請求項26に記載の相同組換用ベクターの作製方法。
【請求項28】
前記外来遺伝子が、エタノール合成系に関与する遺伝子またはピルビン酸合成系に関与する遺伝子である、請求項25〜27のいずれか1項に記載の相同組換用ベクターの作製方法。
【請求項29】
前記カナマイシン耐性遺伝子が、配列番号1で表されるアミノ酸配列をコードするカナマイシン耐性遺伝子である、請求項24〜28のいずれか1項に記載の相同組換用ベクターの作製方法。
【請求項30】
前記プラスミドベクターが宿主モーレラ属細菌と同一株またはその野生株のモーレラ属細菌および大腸菌のいずれでも増殖可能なシャトルベクターである、請求項24〜29のいずれか1項に記載の相同組換用ベクターの作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモーレラ(Moorella)属細菌の遺伝子組換え法に関する。より詳細には、本発明は、抗生物質耐性遺伝子をマーカー遺伝子として用いるモーレラ属細菌の遺伝子組換え方法、その方法によって得られる遺伝子組換えモーレラ属細菌ならびに宿主モーレラ属細菌株で発現する抗生物質耐性遺伝子を導入した相同組換用ベクターおよびその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モーレラ(Moorella)属細菌は、合成ガス(H+CO+CO)からの物質生産における宿主として有望である。
【0003】
モーレラ属細菌の遺伝子組換え方法としては、オロト酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(pyrE)をマーカー遺伝子として用いる方法がある(特許文献1)。
【0004】
オロト酸ホスホリボシルトランスフェラーゼは、オロト酸とホスホリボシルピロリン酸からオロチジル酸を合成する酵素であり、オロチジル酸デカルボキシラーゼと共に、ウリジル酸(ウリジン−リン酸、UMP)合成酵素の部分反応を構成する。チミン、シトシンおよびウラシル等のピリミジン塩基は、ウリジル酸を中心に相互変換されるため、pyrEを破壊した菌株は、ウラシル要求性変異株となる。このウラシル要求性変異株に、pyrEおよび外来遺伝子を相同組換えによって導入すると、外来遺伝子を持つ遺伝子組換え株を得ることができ、pyrEの有無、すなわちウラシル要求性によって、外来遺伝子が導入された遺伝子組換え株をスクリーニングすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−17131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、pyrEをマーカー遺伝子として用いるモーレラ属細菌の遺伝子組換え法では、宿主としてpyrE破壊株を用いる必要があるため、より簡便に遺伝子組換えを行いたいという要望に応えることができなかった。
【0007】
一方、遺伝子組換え株のスクリーニングにおいて、抗生物質耐性遺伝子がマーカー遺伝子として繁用されているが、モーレラ属細菌では、従来、抗生物質耐性遺伝子をマーカー遺伝子として用いる遺伝子組換え方法は存在していなかった。
【0008】
そこで、本発明は、抗生物質耐性遺伝子をマーカー遺伝子として用いるモーレラ(Moorella)属細菌の遺伝子組換え方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねたところ、モーレラ属細菌株のゲノムの、オロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(pyrF)領域に、抗生物質耐性遺伝子およびそれを発現する宿主モーレラ属細菌と同一種のモーレラ属細菌に由来するG3PD(グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ)プロモーターを、相同組換えによって導入すると、抗生物質耐性株を得ることができることを知得し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の(1)〜(30)を提供する。
【0010】
(1オロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(pyrF)を標的遺伝子とし、カナマイシン耐性遺伝子を相同組換えによって宿主モーレラ属細菌のゲノムに組み込む工程を備える、モーレラ(Moorella)属細菌の遺伝子組換え方法であって、
前記相同組換えが、前記宿主モーレラ属細菌のオロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(pyrF)の上流領域の塩基配列および下流領域の塩基配列と、前記カナマイシン耐性遺伝子の塩基配列と、前記宿主モーレラ属細菌またはその同一種のモーレラ属細菌に由来するグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(G3PD)プロモーター領域の塩基配列とを含み、前記G3PDプロモーター領域が、前記カナマイシン耐性遺伝子の上流に、前記カナマイシン耐性遺伝子を発現するように連結され、かつ、前記G3PDプロモーター領域および前記カナマイシン耐性遺伝子が前記上流領域、前記下流領域または前記上流領域と前記下流領域との間に配置された相同組換用ベクターを用いて行われる、モーレラ属細菌の遺伝子組換え方法。
)前記相同組換用ベクターが、前記宿主モーレラ属細菌またはその同一種のモーレラ属細菌のオロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(pyrF)の塩基配列をさらに含み、
前記pyrFが前記上流領域と前記下流領域との間に配置され、かつ、
前記pyrFがその本来の発現プロモーターによって発現されるように連結された相同組換えベクターを用いて行われる、上記()に記載のモーレラ属細菌の遺伝子組換え方法。
)前記相同組換用ベクターが、外来遺伝子の塩基配列をさらに含み、
前記外来遺伝子が前記G3PDプロモーターによって発現される、上記()または()に記載のモーレラ属細菌の遺伝子組換え方法。
)前記相同組換用ベクターが、外来遺伝子の塩基配列と、宿主モーレラ属細菌またはその同一種のモーレラ属細菌に由来する発現プロモーター領域の塩基配列とをさらに含み、
前記外来遺伝子が前記発現プロモーター領域に含まれる発現プロモーターによって発現される、上記()または()に記載のモーレラ属細菌の遺伝子組換え方法。
)前記発現プロモーターが、COデヒドロゲナーゼプロモーター、プロリルtRNAシンターゼプロモーターおよびグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼプロモーターからなる群から選択されるいずれか一つである、上記()に記載のモーレラ属細菌の遺伝子組換え方法。
)前記外来遺伝子が、エタノール合成系に関与する遺伝子またはピルビン酸合成系に関与する遺伝子である、上記()〜()のいずれか1つに記載のモーレラ属細菌の遺伝子組換え方法。
)前記カナマイシン耐性遺伝子が、配列番号1で表されるアミノ酸配列をコードするカナマイシン耐性遺伝子である、上記(1)〜()のいずれか1つに記載のモーレラ属細菌の遺伝子組換え方法。
(8)前記カナマイシン耐性遺伝子が、配列番号2で表されるDNA塩基配列からなるカナマイシン耐性遺伝子である、上記(1)〜(7)のいずれか1つに記載のモーレラ属細菌の遺伝子組換え方法。
(9)上記(1)〜(8)のいずれか1つに記載のモーレラ属細菌の遺伝子組換え方法によって得られる遺伝子組換えモーレラ属細菌。
(10)オロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(pyrF)の上流領域、下流領域または上流領域と下流領域との間に、カナマイシン耐性遺伝子が配置され、前記カナマイシン耐性遺伝子の上流に、宿主モーレラ属細菌またはその同一種のモーレラ属細菌に由来するグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(G3PD)プロモーターが配置され、前記カナマイシン耐性遺伝子が前記G3PDプロモーターによって発現される、遺伝子組換えモーレラ属細菌。
(11)さらに、前記G3PDプロモーターの下流、かつ、前記カナマイシン耐性遺伝子の上流または下流に、外来遺伝子が位置し、前記G3PDプロモーターによって前記外来遺伝子が発現される、上記(10)に記載の遺伝子組換えモーレラ属細菌。
(12)さらに、前記G3PDプロモーターと前記カナマイシン耐性遺伝子との間を除く、前記pyrFの上流または下流に、宿主モーレラ属細菌と同一種のモーレラ属細菌に由来する発現プロモーターと、外来遺伝子とが位置し、前記発現プロモーターによって前記外来遺伝子が発現される、上記(10)に記載の遺伝子組換えモーレラ属細菌。
(13)前記発現プロモーターが、COデヒドロゲナーゼプロモーター、プロリルtRNAシンターゼプロモーターおよびグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼプロモーターからなる群から選択されるいずれか一つである、上記(12)に記載の遺伝子組換えモーレラ属細菌。
(14)前記外来遺伝子が、エタノール合成系に関与する遺伝子またはピルビン酸合成系に関与する遺伝子である、上記(11)〜(13)のいずれか1つに記載の遺伝子組換えモーレラ属細菌。
(15)前記カナマイシン耐性遺伝子が、配列番号1で表されるアミノ酸配列をコードするカナマイシン耐性遺伝子である、上記(10)〜(14)のいずれか1つに記載の遺伝子組換えモーレラ属細菌。
16オロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(pyrF)を標的遺伝子とし、カナマイシン耐性遺伝子を相同組換えによって宿主モーレラ属細菌のゲノムに組み込むための相同組換用ベクターであって、
前記宿主モーレラ属細菌のオロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(pyrF)の上流領域の塩基配列および下流領域の塩基配列と、前記カナマイシン耐性遺伝子の塩基配列と、前記宿主モーレラ属細菌またはその同一種のモーレラ属細菌に由来するグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(G3PD)プロモーター領域の塩基配列とを含み、前記G3PDプロモーター領域が、前記カナマイシン耐性遺伝子の上流に、前記カナマイシン耐性遺伝子を発現するように連結され、かつ、前記G3PDプロモーター領域および前記カナマイシン耐性遺伝子が前記pyrFの上流領域、下流領域または上流領域と下流領域との間に配置された、相同組換用ベクター。
17)前記相同組換用ベクターが、外来遺伝子をさらに含み、かつ前記外来遺伝子が前記G3PDプロモーターによって発現される、上記(16)に記載の相同組換用ベクター。
18)前記相同組換用ベクターが、外来遺伝子と、宿主モーレラ属細菌と同一種のモーレラ属細菌に由来する発現プロモーターとをさらに含み、
前記外来遺伝子が前記発現プロモーターによって発現される、上記(16)に記載の相同組換用ベクター。
19)前記発現プロモーターが、COデヒドロゲナーゼプロモーター、プロリルtRNAシンターゼプロモーターおよびグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼプロモーターからなる群から選択されるいずれか一つである、上記(18)に記載の相同組換用ベクター。
20)前記外来遺伝子が、エタノール合成系に関与する遺伝子またはピルビン酸合成系に関与する遺伝子である、上記(17)〜(19)のいずれか1つに記載の相同組換用ベクター。
21)前記カナマイシン耐性遺伝子が、配列番号1で表されるアミノ酸配列をコードするカナマイシン耐性遺伝子である、上記(17)〜(20)のいずれか1つに記載の相同組換用ベクター。
22)前記カナマイシン耐性遺伝子が、配列番号2で表されるDNA塩基配列からなるカナマイシン耐性遺伝子である、上記(17)〜(21)のいずれか1つに記載の相同組換用ベクター。
(23)宿主モーレラ属細菌と同一株またはその野生株のモーレラ属細菌および大腸菌のいずれでも増殖可能なシャトルベクターである、上記(16)〜(22)のいずれか1つに記載のベクター。
(24)オロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(pyrF)を標的遺伝子とし、カナマイシン耐性遺伝子を相同組換えによって宿主モーレラ属細菌のゲノムに組み込むための相同組換用ベクターの作製方法であって、
前記宿主モーレラ属細菌のオロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(pyrF)の上流領域の塩基配列および下流領域の塩基配列と前記カナマイシン耐性遺伝子の塩基配列と、前記宿主モーレラ属細菌またはその同一種のモーレラ属細菌に由来するグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(G3PD)プロモーター領域の塩基配列とを含み、前記G3PDプロモーター領域が、前記カナマイシン耐性遺伝子の上流に、前記カナマイシン耐性遺伝子発現るように連結され、かつ、前記G3PDプロモーター領域および前記カナマイシン耐性遺伝子が前記pyrFの上流領域、下流領域または上流領域と下流領域との間に配置され相同組換え領域を、骨格となるプラスミドベクターに組み込む工程を備える、相同組換用ベクターの作製方法。
(25)前記相同組換え領域が、外来遺伝子をさらに含み、かつ、前記外来遺伝子が前記G3PDプロモーターによって発現されるように配置され、上記(24)に記載の相同組換用ベクターの作製方法。
(26)前記相同組換え領域が、外来遺伝子と、宿主モーレラ属細菌と同一種のモーレラ属細菌に由来する発現プロモーターとをさらに含み、
前記外来遺伝子が前記発現プロモーターによって発現されるように配置され、かつ、前記外来遺伝子および前記発現プロモーターが前記pyrFの上流領域または下流領域に配置され、上記(24)に記載の相同組換用ベクターの作製方法。
(27)前記発現プロモーターが、COデヒドロゲナーゼプロモーター、プロリルtRNAシンターゼプロモーターおよびグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼプロモーターからなる群から選択されるいずれか一つである、上記(26)に記載の相同組換用ベクターの作製方法。
(28)前記外来遺伝子が、エタノール合成系に関与する遺伝子またはピルビン酸合成系に関与する遺伝子である、上記(25)〜(27)のいずれか1つに記載の相同組換用ベクターの作製方法。
(29)前記カナマイシン耐性遺伝子が、配列番号1で表されるアミノ酸配列をコードするカナマイシン耐性遺伝子である、上記(24)〜(28)のいずれか1つに記載の相同組換用ベクターの作製方法。
(30)前記プラスミドベクターが宿主モーレラ属細菌と同一株またはその野生株のモーレラ属細菌および大腸菌のいずれでも増殖可能なシャトルベクターである、上記(24)〜(29)のいずれか1つに記載の相同組換用ベクターの作製方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、抗生物質耐性遺伝子をマーカー遺伝子として用いるモーレラ(Moorella)属細菌の遺伝子組換え方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、大腸菌から抽出したプラスミドの制限酵素(HincIIおよびNcoI)消化物およびkan遺伝子領域のPCR増幅産物をアガロースゲルで電気泳動して得られた電気泳動像である(レーン1〜5:制限酵素消化物、レーン6〜10:PCR増幅産物、M:10kbp DNA Ladder Marker)。
図2図2(A)は、野生株(レーン1,4)およびkan導入候補株(レーン2,5:組換株1/レーン3,6:組換株2)の、pyrF上流領域からkan部分までのPCR増幅産物(レーン1〜3)、およびMoth_2281遺伝子のPCR増幅産物(レーン4〜6)をアガロースゲルで電気泳動して得られた電気泳動像である(レーンM:10kbp DNA Ladder Marker)。図2(B)は、野生株(レーン1,4)およびkan導入候補株(レーン2,5:組換株1/レーン3,6:組換株2)の、pyrF上流領域からpyrF下流領域までの部分のPCR増幅産物(レーン1〜3)、およびそのPCR産物の制限酵素(KpnI)消化物(レーン4〜6)をアガロースゲルで電気泳動して得られた電気泳動像である(レーンM:10kbp DNA Ladder Marker)。
図3図3は、野生株(■)およびkan導入株(●:組換株1,▲:組換株2)の、カナマイシン存在下での菌体濁度の経時的変化を表すグラフである。(A):カナマイシン濃度200μg/mL、(B):カナマイシン濃度300μg/mL。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、宿主モーレラ属細菌株を、前記宿主モーレラ属細菌株で発現する抗生物質耐性遺伝子を含む相同組換用ベクターを用いて形質転換する工程を含むモーレラ(Moorella)属細菌の遺伝子組換え方法(以下「本発明の遺伝子組換え方法」という場合がある。)を提供する。
【0014】
また、本発明は、上記モーレラ属細菌の遺伝子組換え方法によって得られる遺伝子組換えモーレラ属細菌(以下「本発明の遺伝子組換えモーレラ属細菌」という場合がある。)を提供する。
【0015】
さらに、本発明は、上記モーレラ属細菌の遺伝子組換え方法に用いることができる、宿主モーレラ属細菌株で発現する抗生物質耐性遺伝子を含む相同組換用ベクター(以下「本発明の遺伝子組換え用ベクター」という場合がある。)を提供する。
【0016】
本発明の遺伝子組換え方法は、所望により、オロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(pyrF)破壊と組み合わせ、抗生物質耐性およびウラシル要求性をマーカーとして用いることができるモーレラ属細菌の遺伝子組換え方法を提供することもできる。
【0017】
本発明の遺伝子組換え方法は、所望により、オロト酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(pyrE)破壊と組み合わせ、抗生物質耐性およびウラシル要求性をマーカーとして用いることができるモーレラ属細菌の遺伝子組換え方法を提供することもできる。
【0018】
[モーレラ属細菌]
遺伝子組換えを行うモーレラ属細菌(本発明において「宿主モーレラ属細菌」ともいう。)は、モーレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica)、モーレラ・サーモオートトロフィカ(M. thermoautotrophica)、モーレラ・グリセリニ(M. glycerini)もしくはモーレラ・ムルデリ(M. mulderi)に分類される細菌または細菌分類学的にモーレラ属に分類される細菌であれば特に限定されない。
【0019】
好ましいモーレラ属細菌としては、モーレラ・サーモアセティカ ATCC 39073株およびその遺伝子組換え株、モーレラ sp.(クロストリジウム sp.) HUC 22−1株(独立行政法人産業技術総合研究所特許微生物寄託センター FERMP−18852)およびその遺伝子組換え株等が挙げられる。ここで、ATCCはアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)を表す。
【0020】
モーレラ・サーモアセティカ ATCC 39073株の遺伝子組換え株としては、ATCC 39073株の、オロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(pyrF)破壊変異株であるNITE P−1057株、NITE P−1057株のオロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(pyrF)および乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子導入変異株(T−ldh導入株)であるNITE−P1154株等が挙げられる。
【0021】
モーレラ sp. HUC 22−1株の遺伝子組換え株としては、HUC 22−1株の、オロト酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(pyrE)破壊変異株である、NITE P−606株等が挙げられる。
【0022】
ここで、細菌分類学的にモーレラ(Moorella)属に分類される細菌とは、IJSEM(International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology)誌にモーレラ(Moorella)属として発表された細菌またはバージェイズ・マニュアル(De Vos, Paul、外7名編、"Bergey's Manual of Systematic Bacteriology"、第2版、第3巻、米国、シュプリンガー、2009年)に従って分類した場合にモーレラ属に分類することが適当であると認められる細菌をいう。
【0023】
本発明においては、宿主モーレラ属細菌株に遺伝子組換えを行った結果作製されるモーレラ属細菌は、形態、資化性、醗酵性その他の表現形質が種の定義に合致しない場合であっても、宿主モーレラ属細菌と同種とみなす。
【0024】
(モーレラ属細菌種)
本発明において、モーレラ属細菌の種レベルの分類群に着目する場合、モーレラ属細菌種、宿主モーレラ属細菌種という場合がある。
【0025】
(モーレラ属細菌株)
本発明において、モーレラ属細菌の株レベルの分類群に着目する場合、モーレラ属細菌株、宿主モーレラ属細菌株という場合がある。
【0026】
[抗生物質耐性遺伝子]
宿主モーレラ属細菌のゲノムに導入される抗生物質耐性遺伝子は、特に限定されないが、カナマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、エリスロマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子およびピューロマイシン耐性遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つが好ましい。
【0027】
上記構成物質耐性遺伝子としては、具体的には、例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列をコードするカナマイシン耐性遺伝子が好ましく、配列番号2で表されるDNA塩基配列からなるカナマイシン耐性遺伝子がより好ましい。
【0028】
なお、本発明において、遺伝コードは標準コードと一部異なり、翻訳開始コドンとして、ATG(AUG)の他、TTG(UUG)、CTG(CUG)、GTG(GUG)、ATT(AUU)、ATC(AUC)、ATA(AUA)も使用され得る。翻訳開始コドンとして使用されるときはメチオニン(Met,M)をコードするが、翻訳開始コドン以外として使用されるときは、標準コードと同じく、TTG(UUG)およびCTG(CUG)はロイシン(Leu,L)を、ATT(AUU)、ATC(AUC)およびATA(AUA)はイソロイシン(Ile,I)を、GTG(GUG)はバリン(Val,V)を、それぞれコードする。
【0029】
また、本発明においては、上記抗生物質耐性遺伝子は、その上流に導入されるグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター(G3PDプロモーター)により発現される。
【0030】
[グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター(G3PDプロモーター)]
グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(リン酸化)(GAPDH,EC 1.1.1.12)は、解糖系/糖新生に関与する酵素であり、D−グリセルアルデヒド−3−リン酸と1,3−ビスホスホグリセリン酸との相互変換を触媒し(下記反応式)、常時発現している。
【0031】
【化1】
【0032】
宿主モーレラ属細菌のゲノムに導入されるグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター(G3PDプロモーター)は、宿主モーレラ属細菌種に由来するもの、すなわち、宿主モーレラ属細菌と同一種のモーレラ属細菌に由来するもの、であれば特に限定されないが、宿主モーレラ属細菌株もしくはその野生株(宿主モーレラ属細菌株が野生株でない場合に限る。)に由来するもの、または宿主モーレラ属細菌株もしくはその野生株(宿主モーレラ属細菌株が野生株でない場合に限る。)のG3PDプロモーターのDNA塩基配列と同一であるもの、が好ましい。
【0033】
上記G3PDプロモーターのDNA塩基配列は、配列番号3のDNA塩基配列に含まれるものが好ましい。
【0034】
上記G3PDプロモーターは、その周辺の領域とともに宿主モーレラ属細菌のゲノムに組み込まれてもよく、G3PDプロモーターを含む領域が上記抗生物質耐性遺伝子の上流に直接連結されて宿主モーレラ属細菌のオロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(pyrF)の上流領域または下流領域に組み込まれることが好ましい。
【0035】
上記G3PDプロモーターを含む領域は、上記G3PDプロモーターが上記LDH遺伝子を発現しうるものであれば、G3PDプロモーター部分以外のDNA塩基配列は特に限定されないが、上記G3PDプロモーターを含む領域のDNA塩基配列としては、そのG3PDプロモーターが由来する菌株のG3PDプロモーターおよびその周辺領域のDNA塩基配列と同一であることが好ましく、配列番号3のDNA塩基配列からなるものがより好ましい。
【0036】
[オロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(pyrF)]
オロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子はオロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ(OMPデカルボキシラーゼ,EC 4.1.1.23)をコードする遺伝子である。
【0037】
OMPデカルボキシラーゼは、ピリミジンの生合成に関与する酵素であり、オロチジンモノリン酸(OMP)を脱炭酸してウリジンモノリン酸(UMP)に変換する反応を触媒する(下記化学式)。この酵素はウリジン三リン酸およびシチジン三リン酸のde novoの生合成に不可欠である。したがって、pyrFが破壊された菌株は、ウラシル要求性変異株となる。
【0038】
【化2】
【0039】
上記オロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(pyrF)は、本発明の遺伝子組換えモーレラ属細菌において正常に機能するタンパク質を発現するものであれば、特に限定されず、宿主モーレラ属細菌株に由来するものであってもよいし、外来性のpyrFであってもよい。
【0040】
外来性のpyrFとしては、宿主モーレラ属細菌種と同一種の細菌に由来するものが好ましく、宿主モーレラ属細菌株と同一株またはその野生株(宿主モーレラ属細菌株が野生株でない場合に限る。)に由来するものがより好ましい。
【0041】
上記pyrFとしては、配列番号4のアミノ酸配列からなるオロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼをコードするものが好ましく、そのDNA塩基配列が配列番号5のDNA塩基配列からなるものがより好ましい。
【0042】
本発明の遺伝子組換え方法によれば、モーレラ属細菌のゲノムにおいて、pyrFの上流領域、下流領域または上流領域と下流領域とのあいだに、G3PDプロモーター領域および抗生物質耐性遺伝子が導入されるが、遺伝子組換体にウラシル要求性を付与しない場合には、pyrF、G3PDプロモーターおよび抗生物質耐性遺伝子の配置は、G3PDプロモーターおよび抗生物質耐性遺伝子がpyrFの上流領域または下流領域に導入された配置であって、pyrFおよび抗生物質耐性遺伝子が正常に発現する配置であれば特に限定されない。
【0043】
また、本発明の遺伝子組換え方法においては、抗生物質耐性遺伝子を宿主モーレラ属細菌のゲノムに組み込むのと同時に、pyrFを破壊することもできる。具体的には、例えば、相同組換用ベクターに含まれるpyrFの塩基配列を欠損または改変し、宿主モーレラ属細菌で正常なオロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼを発現できなくすることによって、宿主モーレラ属細菌のpyrFを破壊することができる。
【0044】
[相同組換用ベクター]
本発明の遺伝子組換え方法で用いる相同組換用ベクターは、骨格となるプラスミドベクターと相同組換え領域とを有する。
【0045】
〈相同組換え領域〉
上記相同組換え領域は、オロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(pyrF)、その上流領域および下流領域、抗生物質耐性遺伝子ならびにグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター(G3PDプロモーター)を含み、上記G3PDプロモーターを含む領域が上記抗生物質耐性遺伝子の上流に上記抗生物質耐性遺伝子を発現するように連結され、上記G3PDプロモーターおよび上記抗生物質耐性遺伝子が、上記pyrFの上流領域、下流領域または上流領域と下流領域との間に配置されたものが好ましく、上流領域または下流領域に配置されたものがより好ましい。
【0046】
pyrF、G3PDプロモーターおよび抗生物質耐性遺伝子は、上記したとおりである。
【0047】
上記相同組換え領域は、さらに、外来遺伝子を、所望により、その外来遺伝子を発現するための宿主モーレラ属細菌種に由来する発現プロモーターとともに、含んでもよい。
【0048】
上記外来遺伝子は、特に限定されないが、エタノール合成系に関与する遺伝子またはピルビン酸合成に関与する遺伝子が好ましい。
上記エタノール合成系に関与する遺伝子は、特に限定されないが、具体的には、例えば、ピルビン酸の脱炭酸を触媒するピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子が挙げられる。
上記ピルビン酸合成系に関与する遺伝子は、特に限定されないが、具体的には、例えば、ピルビン酸と乳酸との相互変換を触媒する乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子が挙げられる。
【0049】
上記発現プロモーターは、宿主モーレラ属細菌種と同一のモーレラ属細菌種に由来し、上記外来遺伝子を発現するものであれば特に限定されないが、COデヒドロゲナーゼプロモーター、プロリルtRNAシンターゼプロモーターおよびグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼプロモーターからなる群から選択されるいずれか一つが好ましい。これらが発現する遺伝子は常時発現している遺伝子であるので、高い発現効率を得ることができるからである。
【0050】
〈骨格となるプラスミドベクター〉
上記骨格となるプラスミドベクターは特に限定されないが、宿主モーレラ属細菌株および他の細菌の両方で増殖することができるシャトルベクターが好ましい。前記他の細菌としては、例えば、大腸菌を挙げることができる。
【0051】
上記骨格となるプラスミドベクターとしては、具体的には、例えば、pK18、pK19、pK18mob、pK19mob、pUC18、pUC19、pBR322、pBluescript II系プラスミド等が挙げられる。
【0052】
[形質転換]
上記相同組換用ベクターを上記pyrF破壊株に形質転換をする方法は特に限定されず、相同組換用ベクターの骨格となるプラスミドベクターに合わせて適宜選択することが好ましい。本発明の遺伝子組換え方法においては、エレクトロポレーションが好ましい方法の一つである。
【0053】
[遺伝子組換えモーレラ属細菌]
本発明の遺伝子組換えモーレラ属細菌は、本発明の遺伝子組換え方法によって作製される遺伝子組換えモーレラ属細菌であれば特に限定されない。
【0054】
上記方法によって形質転換をして製造されたモーレラ属細菌としては、好ましくは、受領番号「NITE AP−1354」として、独立行政法人製品技術評価基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)に寄託申請されている「MTA−kanr株」が挙げられる。
【実施例】
【0055】
本実施例では、モーレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica) ATCC 39073株(以下、「野生株」または「WT」という場合がある。)のpyrF破壊株である、ウラシル要求性変異株(以下、単に「pyrF破壊株」または「dpyrF株」という場合がある。)に、ATCC 39073株由来のpyrF、pIKM1由来のカナマイシン耐性遺伝子(以下、単に「kan」という場合がある。)およびkanを発現するためのATCC 39073株由来のグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター(G3PDプロモーター)を導入して、ウラシル要求性の除去およびカナマイシン耐性の付与を行い、カナマイシン耐性を持つ遺伝子組換えモーレラ属細菌(kan導入株)を作製した。
【0056】
1.pyrF破壊株(dpyrF株)の作製
モーレラ・サーモアセティカ ATCC 39073株のpyrFを破壊し、ウラシル要求性変異株を作製した。
【0057】
(1)遺伝子破壊ベクターpK18−dpyrFの構築
以下の手順でモーレラ・サーモアセティカ ATCC 39073株のオロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子pyrFを破壊するためのベクターを構築した。
【0058】
[遺伝子破壊ベクターpK18−dpyrFの構築]
モーレラ・サーモアセティカ ATCC 39073株を完全合成培地(改変ATCC 1754 PETC Medium、表22Aを参照)に植菌し、55℃で嫌気的に培養した。
培養後、NucleoSpin Tissue(MACHEREY−NAGEL社製)を用いてトータルDNAを抽出した。
【0059】
まず、表1に示したプライマーpyrF−up−F1(配列番号6:5'-tgacgttctagaccctacctctccaagattacc-3')とpyrF−up−R1(配列番号7:5'-tgacgtactagtggcaagcaggccagaag-3')との組合せ、およびpyrF−dn−F1(配列番号8:5'-tgacgtactagtaacttcggcctgctttcatgc-3')とpyrF−dn−R1(配列番号9:5'-tgacctgatatctgtccaagcttatgcaccttcc-3')との組合せを用いて、表2に示す反応液の組成で、表3に示す条件でPCRを行い、pyrFの上流領域および下流領域のそれぞれ約1000bpを増幅した。表2において、プライマーFとプライマーRとの組合せは、上記組合せである。また、テンプレートDNAは、モーレラ・サーモアセティカ ATCC 39073株のトータルDNAである。なお、KOD−Plus−Neo(PCR酵素)、10×PCR バッファー for KOD−Plus−Neo、2mM dNTPsおよび25mM MgSOは、KOD−Plus−Neo(東洋紡社製)に含まれるものを用いた。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
プライマーpyrF−up−F1(配列番号6)およびpyrF−up−R1(配列番号7)は、pyrFの上流の隣接領域を増幅し、pyrF−dn−F1(配列番号8)およびpyrF−dn−R1(配列番号9)は、pyrFの下流の隣接領域を増幅する。
【0064】
得られたPCR産物を、制限酵素SpeIで処理した後に、MagExtracter Kit(東洋紡)を用いて精製を行い、pyrF上流領域のPCR産物を5μL、下流領域のPCR産物を5μL、Ligation high Ver.2(東洋紡)を10μL混合し、16℃で30分間インキュベートし、ライゲーション産物をテンプレートDNAとして、プライマーpyrF−up−F1(配列番号6)およびpyrF−up−R1(配列番号7)を用いて、表4に示す反応液組成で、表5に示す条件でPCRを行った。なお、KOD−Plus−Neo(PCR酵素)、10×PCR バッファー for KOD−Plus−Neo、2mM dNTPsおよび25mM MgSOは、KOD−Plus−Neo(東洋紡社製)に含まれるものを用いた。
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】
得られたPCR産物をMagExtractor Kit(東洋紡製)を用いてゲル抽出を行った後、2μLのSmaI処理をしたプラスミドpK18mobを、8μLのゲル抽出したPCR産物、10μLのLigation high Ver.2(東洋紡製)と混合し、16℃で1時間インキュベートし、Escherichia coli HST08 Premiumコンピテントセル(タカラバイオ製)にライゲーション溶液10μLを添加して軽く撹拌した後、氷中に10分静置し、42℃で1分間ヒートショックを与えた後、すぐに氷中に静置した。
【0068】
SOC培地を1mL加え、37℃で1時間インキュベート後、LB寒天培地(カナマイシン、X−gal、IPTG含有)に塗沫し、37℃で一晩培養後、生えてきたコロニーを取得した。
【0069】
[遺伝子破壊ベクターの確認]
上記「遺伝子破壊ベクターpk18−dpyrFの構築」で生育が見られたコロニーを、カナマイシンを添加したLB培地に移植した後、コロニーダイレクトPCRを行い、インサートの確認を行った。プライマーは表1に示すpyrF−up−Fl(配列番号6)、pyrF−dn−R1(配列番号9)を用いた。コロニーダイレクトPCRの反応液組成を表6に、反応条件を表7に示す。コロニーを反応液に入れてPCRを行った。なお、SapphireAmp Fast PCR Master Mix (2×Premix)および滅菌蒸留水は、SapphireAmp(R) PCR Master Mix(タカラバイオ社製)に含まれるものを用いた。
【0070】
【表6】
【0071】
【表7】
【0072】
得られたPCR産物について、電気泳動によりバンドを確認した。
バンドが確認できた株を、カナマイシンを添加したLB液体培地で一晩培養し、プラスミド抽出を行った。
【0073】
吸光度による濃度測定および電気泳動による確認後、シーケンスによる塩基配列の解読を行って目的の遺伝子破壊ベクターpk18−dpyrFが構築できていることを確認した。
【0074】
(2)pyrF破壊株(dpyrF株)の作製
上記(1)で構築した遺伝子破壊ベクターpK18−dpyrFを、以下の手順で、モーレラ・サーモアセティカ ATCC 39073株に導入し、ダブルクロスオーバーの相同性組換えによってpyrFが破壊された株(dpyrF株)を選抜した。
【0075】
[ATCC 39073株への遺伝子破壊ベクターの導入]
272mMスクロース、16mM HEPESの組成で、水酸化カリウムを用いてpH7に合わせたHS緩衝液を調製し、20分間Nガスで溶存酸素を置換した。
【0076】
80%の水素、20%の二酸化炭素の混合ガスを基質とし、改変型ATCC 1754 PETC培地、またはグリシンを終濃度5g/Lになるように添加した改変型ATCC 1754 PETC培地で、モーレラ・サーモアセティカ ATCC 39073株を培養した。
【0077】
菌体濃度がOD600で約0.3になるまで培養し、培養液約100mL分を集菌した後、HS緩衝液で菌体を2回洗浄した。
【0078】
洗浄した菌体を適当な量のHS緩衝液(約3mL)に懸濁し、懸濁液380μLとプラスミド20μLとを混合した。
【0079】
Gene Pulser XcellTMエレクトロポレーションシステム(バイオ・ラッド ラボラトリーズ)および電極間距離(ギャップ)0.2cmのエレクトロポレーションキュベット(バイオ・ラッド ラボラトリーズ)を用いて、1.5kV、500Ω、50μFでエレクトロポレーションを行った。エレクトロポレーション後の懸濁液を、ピルビン酸40mMの終濃度で添加した5mLの培地に植菌し、55℃で2日間培養後に、ウラシル10μg/mL、5−フルオロオロチン酸(5−FOA)0.2%の終濃度で添加した寒天培地に植菌し、ロールチューブを作製した。
【0080】
[ダイレクトPCRによるpyrF破壊株(dpyrF株)の確認]
上記寒天培地に形成された20個のコロニーを、5mLのウラシル10μg/mL、5−FOA 0.2%の終濃度で添加した液体培地に植菌し、培養3日目に培地が濁っていることが確認できた6株を選択し、培養液1mLを集菌した。
【0081】
アクロモペプチダーゼ(20mg/mL)+リゾチーム(20mg/mL)の入ったTE緩衝液 20μLで懸濁し、37℃で5分間インキュベートし、DMSOを20μL添加して懸濁し、PCRの鋳型とした。
【0082】
下記表に示すプライマーのうち、pyrF−up−F2(配列番号10:5'-tgtcctcaacaccctcacc-3')とpyrF−dn−R2(配列番号11:5'-tcttcccaggtcctgtagg-3')、pyrF−up−F3(配列番号12:5'-tgtcctcaacaccctcacc-3')とpyrF−dn−R3(配列番号13:5'-tcttcccaggtcctgtagg-3')、またはpyrF−F(配列番号14:5'-acctgaagttccacgacatcc-3')とpyrF−R(配列番号15:5'-ggtcacgatgacgaactc-3')との組合せを用い、各々の組合せについて、表9に示す反応液組成で、表10に示す反応条件でコロニーダイレクトPCRを行い、電気泳動によりバンドを確認した。表9において、プライマーFとプライマーRとの組合せは、上記組合せである。また、コロニーを反応液に入れてPCRを行った。なお、KOD FX(PCR酵素)、2× PCR バッファー for KOD FXおよび2mM dNTPsは、KOD FX(東洋紡社製)に含まれるものを用いた。
【0083】
【表8】
【0084】
【表9】
【0085】
【表10】
【0086】
ロールチューブ法によるコロニー形成を試みた結果、多数のコロニーを得た。そこで、コロニーを20株選択し、液体培地(10μg/mL ウラシル、0.2% 5−FOA)にて培養した。菌体の生育が確認できた培養液から菌体を集菌し、ダイレクトPCRによる確認を行った。
【0087】
培養3日目に増殖が確認できた6株について、プライマーpyrF−up−F2(配列番号10)とpyrF−dn−R2(配列番号11)との組合せ、またはpyrF−up−F3(配列番号12)とpyr−dn−R3(配列番号13)との組合せを用いて、pyrFの外側からPCRを行ったところ、6株中1株において、野生株よりも短いバンドが確認できた。
【0088】
さらに、プライマーpyr−F(配列番号14)とpyrF−R(配列番号15)との組合せを用いて、pyrFの内側をPCRしたところ、前述の株においてはバンドが確認できなかった。
【0089】
これらの結果から、野生株よりも短いバンドを確認できた株がpyrF破壊株(dpyrF株)である可能性があると判断し、ゲノムDNA抽出を行った後に、もう一度PCRを行った。その結果、ダイレクトPCRの際と同様のバンドパターンが得られた。
【0090】
さらに、pyrFが破壊された部分には、制限酵素SpeIサイトが1カ所付与されることから(プライマーpyrF−up−R1、pyrF−dn−F1参照)、上記のPCR産物についてSpeIで消化したところ、SpeIサイトで切断が起こり、バンドが2本になることを確認した。
【0091】
次に、pyrF破壊候補株についてウラシル要求性試験を行った。酵母エキスを除いた改変型ATCC 1754 PETC培地に、pyrF破壊株を植菌し、10μg/mLの終濃度でウラシルを添加した場合と添加しなかった場合とで増殖の確認を行った。
【0092】
その結果、ウラシルを添加したサンプルでは、培養2日目には菌体の増殖が確認できたが、ウラシルを添加しなかったサンプルにおいては、増殖が確認できなかった。これらの結果から、pyrFの破壊が確認できた。
【0093】
このpyrF破壊株(MTA−D−pF株)は、受託番号「NITE P−1057」として、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)に寄託されている。
【0094】
2.カナマイシン耐性遺伝子導入用相補ベクターpK18−kanrの構築
(1)pK18−ldhの作製
(1−1)pK18−epyrFの作製
モーレラ・サーモアセティカ ATCC 39073株を完全合成培地(改変ATCC 1754 PETC Medium、表22Aを参照)に植菌し、55℃で嫌気的に培養した。
培養後、NucleoSpin Tissue(MACHEREY−NAGEL社製)を用いてトータルDNAを抽出した。
【0095】
pyrF−up−F1(配列番号6)とpyrF−dn−R1(配列番号9)との組み合わせを用いて、以下の条件でPCRを行い、pyrF遺伝子翻訳領域とその5’側の約1000bp、3’側の約1000bpを含む約2.7kbの遺伝子断片を増幅した。なお、KOD FX(PCR酵素)、2× PCR バッファー for KOD FXおよび2mM dNTPsは、KOD FX(東洋紡社製)に含まれるものを用いた。
【0096】
【表11】
【0097】
【表12】
【0098】
得られたPCR産物についてMagExtractor Kit(東洋紡製)を用いてゲル抽出を行った。
2μLのSmaI処理をしたプラスミドpK18mobを、8μLのゲル抽出したPCR産物、10μLのLigation high Ver.2(東洋紡製)と混合し、16°Cで1時間インキュベートした。
Escherichia coli HST08 Premiumコンピテントセル(タカラバイオ製)にライゲーション溶液10μLを添加して軽く攪拌した。
氷中に10分静置した。
42℃で1分間ヒートショックを与えた後、すぐに氷中に静置した。
SOC培地を1 ml加え、37℃で1時間インキュベート後、LB寒天培地(カナマイシン、X−gal、IPTG含有)に塗沫した。
37℃で一晩培養後、生えてきたコロニーを取得した。
【0099】
[pyrF相補ベクターの確認]
上記(1)で生育が見られたコロニーをカナマイシン添加LB寒天培地に移植した後、コロニーダイレクトPCRを行い、インサートの確認を行った。プライマーはpyrF−up−F1(配列番号6)、pyrF−dn−R1(配列番号9)を用いた。コロニーダイレクトPCRの条件を以下に示す。なお、KOD FX(PCR酵素)、2× PCR バッファー for KOD FXおよび2mM dNTPsは、KOD FX(東洋紡社製)に含まれるものを用いた。
【0100】
【表13】
【0101】
【表14】
【0102】
電気泳動によりバンドを確認した。
バンドが確認できた株について、カナマイシンを添加したLB液体培地で一晩培養し、プラスミド抽出を行った。
吸光度による濃度測定、およびEcoRIまたはPstI処理サンプルの電気泳動を行った。
さらに、シーケンスによる塩基配列の解読を行って目的のpyrF遺伝子相補ベクターpK18−epyrFが構築できていることを確認した。
【0103】
(1−2)pK18−ldhの作製
T. pseudethanolicus 39E株の乳酸脱水素酵素遺伝子(T−ldh)を取得し、上記(2)で構築したpyrF遺伝子相補ベクターpK18−epyrFのpyrF遺伝子領域へ挿入し、T−ldh遺伝子導入用相補ベクターpK18−ldhを構築することを目的とした。
【0104】
T. pseudethanolicus 39E株のTotal DNA、およびプライマーpyrF−1765−F(配列番号16:5'-tcggcctgctttcatgcttg-3')とpyrF−1764−R(配列番号17:5'-agttattatttcaccatctctatttc-3')とを用いて、pyrF相補ベクターpK18−epyrFを鋳型として、pyrF領域を含むベクター領域をPCR増幅した。PCRの条件は以下の通りである。なお、KOD FX(PCR酵素)、2× PCR バッファー for KOD FXおよび2mM dNTPsは、KOD FX(東洋紡社製)に含まれるものを用いた。
【0105】
【表15】
【0106】
【表16】
【0107】
プライマーG3PD−F11(配列番号18:5'-ggtgaaataataactggacggttgccaagtacc-3')とG3PD−SD−R12(配列番号19:5'-tatgtactcctccttatatttattgtaacg-3')とを用いて、ATCC 39073株由来のグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子のSD配列を含むプロモーター領域(G3PDプロモーター領域)を増幅した。PCRの条件は以下の通りである。なお、KOD−Plus−Neo(PCR酵素)、10×PCR バッファー for KOD−Plus−Neo、2mM dNTPsおよび25mM MgSOは、KOD−Plus−Neo(東洋紡社製)に含まれるものを用いた。
【0108】
【表17】
【0109】
【表18】
【0110】
T. pseudethanolicus 39E株のTotal DNA、およびプライマーldh−F−1(配列番号20:5'-aaggaggagtacataatgaacaaaatatctataataggttc-3')とldh−R−1(配列番号21:5'-atgaaagcaggccgattatatatcaagctcttgtattacac-3')との組合せを用いて、T. pseudethanolicus 39E株の乳酸脱水素酵素遺伝子(T−ldh)を増幅した。PCRの条件は以下の通りである。PCR反応終了後、各PCR産物をゲル抽出した。なお、KOD−Plus−Neo(PCR酵素)、10×PCR バッファー for KOD−Plus−Neo、2mM dNTPsおよび25mM MgSOは、KOD−Plus−Neo(東洋紡社製)に含まれるものを用いた。
【0111】
【表19】
【0112】
【表20】
【0113】
下記表に記載の反応溶液でIn−Fusion PCRを行った。反応条件は、37℃30分→50℃15分とした。なお、5× In−Fusion Reaction バッファーおよびIn−Fusion Enzymeは、In−Fusion(R) Advantage PCR Cloning Kit(タカラバイオ社製)に含まれるものを用いた。
【0114】
【表21】
【0115】
In−Fusionサンプルに滅菌水を50μl加えて希釈した。
希釈したサンプル10μlを形質転換に用いた。
ダイレクトPCRによりコロニーを選択した。
【0116】
In−Fusion PCRおよび形質転換の結果、複数のコロニーを得た。
ldh−F−1およびldh−R−1をプライマーとしたコロニーダイレクトPCRの結果、全ての株において目的のバンドが確認できた。それらの株の中から3株ずつを培養し、プラスミドを抽出した。制限酵素(EcoRI、EcoRV、またはPstI)処理、および電気泳動による確認の結果、全ての株においてT−ldhの挿入が確認できた。
【0117】
完全合成培地の組成を表22Aに示す。炭素源としてフルクトースを添加する場合には終濃度5g/Lで、ウラシルを添加する場合には終濃度0.01g/Lで、それぞれ添加した(特に断りがある場合を除く)。また、ロールチューブ法に用いる場合には、Agar高温用20g/Lを添加した。
【0118】
【表22】
【0119】
(2)相補ベクターpK18−kanrの作製
(2−1)pK18−ldhを鋳型として、プライマーpyrF−ldh−inv−F(配列番号24)とpyrF−ldh−inv−R(配列番号25)との組合せを用いて、pyrF領域を含む領域をPCR増幅し、線状ベクターを得た。PCRの条件は以下の通りである。なお、KOD FX(PCR酵素)、2× PCR バッファー for KOD FXおよび2mM dNTPsは、KOD FX(東洋紡社製)に含まれるものを用いた。
【0120】
【表23】
【0121】
【表24】
【0122】
【表25】
【0123】
(2−2)pIKM1を鋳型として、プライマーkanR−in−F2(配列番号22)と、kanR−in−R(配列番号23)との組合せを用いてPCRを行い、カナマイシン耐性遺伝子を増幅した。PCRの条件は以下の通りである。なお、KOD FX(PCR酵素)、2× PCR バッファー for KOD FXおよび2mM dNTPsは、KOD FX(東洋紡社製)に含まれるものを用いた。
【0124】
【表26】
【0125】
【表27】
【0126】
(3)In−FusionAdvantage PCR Cloning Kit(タカラバイオ)を用いて、上記(1)で得た線状ベクターに、カナマイシン耐性遺伝子のIn−Fusionクローニングを行った。すなわち、キット付属のプロトコールに従い、下記表に記載の反応溶液でIn−Fusion PCRを行った。反応条件は、37℃30分→50℃15分とした。なお、5× In−Fusion Reaction バッファーおよびIn−Fusion Enzymeは、In−Fusion(R) Advantage PCR Cloning Kit(タカラバイオ社製)に含まれるものを用いた。
【0127】
【表28】
【0128】
In−Fusionサンプルに滅菌水を50μl加えて希釈した。この希釈液を大腸菌に形質転換し、20μg/mLカナマイシンを含む2×YT固体培地にプレーティングした。
16時間培養後、出現したコロニーを2×YT液体培地に植菌した。
16時間培養後、Quantum Prep Plasmid Miniprep Kit(バイオラッド)を用いてプラスミド抽出を行った。
抽出したプラスミドが目的のプラスミドであるか否かを、制限酵素処理およびPCR(カナマイシン耐性遺伝子(kan)の増幅)により確認した。PCR反応液は表26に記載の組成とし、PCR条件は表27に記載の条件とした。
結果を図1のアガロースゲル電気泳動に示す。
【0129】
制限酵素処理の結果では、2.7kbp、1.9kbpおよび1.1kbpに、制限酵素(HincII+NcoI)消化産物のバンドが確認された(レーン1〜5)。これは、予想通りである。
また、PCRの結果では、レーン9を除き、kanの増幅産物のバンドが確認された(レーン6〜10)。これは、予想通りである。
なお、レーン1と6、2と7、3と8、4と9、および5と10は、それぞれ、同一のプラスミドである。
【0130】
4.カナマイシン耐性遺伝子導入用相補ベクターによるpyrF破壊株の形質転換
宿主としては、M. thermoacetica ATCC 39073のpyrF破壊株として、先に独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託したdpyrF株(MTA−D−pF株,受託番号NITE P−1057)を用いた。ここでは、上記3で構築したカナマイシン耐性遺伝子導入用相補ベクターをdpyrF株の細胞内にエレクトロポレーション法によって導入し、ダブルクロスオーバーの相同組換えによって、dpyrF株の染色体にカナマイシン耐性遺伝子を組み込むことを目的とした。
【0131】
(1)dpyrF株の培養
dpyrF株は完全合成培地(表22A)+終濃度0.01g/Lのウラシルに植菌し、H+COを炭素源として55℃で培養した。OD600=0.1前後まで培養した。
【0132】
(2)エレクトロポレーションによるカナマイシン耐性遺伝子(kan)の導入
培養液を遠心分離(5800×g、10min)し、菌体を集菌した。
上清を捨て、272mMスクロースバッファー10mLに再懸濁し、遠心分離(5800×g、10min)により集菌した。この操作を2回繰り返した。
洗浄終了後、272mMスクロースバッファー5mLに菌体を再懸濁し、そこから400μLをキュベットに分注した。さらにkan導入用ベクターを加えた。
1.5kV、500Ω、50μFでパルスを与えた。
パルスを与えた懸濁液を、2分間氷上の静置した後、5mlの完全合成培地+終濃度0.01g/Lのウラシル+終濃度5g/Lのフルクトースの入ったバイアルに植菌した。
55℃で48時間キュアリングを行った。
キュアリング後、ロールチューブにより、kan導入候補株の単離を行った。その結果、kan導入候補株を1株得た。
【0133】
(3)kan導入の確認
kan導入候補株を液体培養し、十分に増殖したところで、培養液を1mL採取した。
培養液を遠心分離(15000rpm、2min)し、上清を捨てた。
残った菌体ペレットから、NucleoSpin Tissue(タカラバイオ)を用いて、ゲノムを抽出した。抽出方法は添付のマニュアルに従った。
また、野生株である、M. thermoacetica ATCC 39073株からも同様にしてゲノムを抽出した。
【0134】
以下の試験を行った。kan導入候補株については2連で試験を行い、それぞれ、組換株1、組換株2と称する。
(試験1)野生株およびkan導入候補株(組換株1、組換株2)のゲノムDNAを、それぞれ鋳型として、プライマーpyrF−upup−F(配列番号26)とkanR−into−R(配列番号27)との組合せを用いて、以下の条件によりPCR増幅を行い、pyrF上流領域からカナマイシン耐性遺伝子部分を増幅した。kan導入株では約3.8kbpのPCR産物が得られるが、野生株ではPCR増幅されない。PCR反応液の組成を表30に、PCR反応条件を表31に示す。なお、KOD FX(PCR酵素)、2× PCR バッファー for KOD FXおよび2mM dNTPsは、KOD FX(東洋紡社製)に含まれるものを用いた。
【0135】
PCR増幅産物のアガロースゲル電気泳動像を図2(A)に示す(レーン1〜3、レーン1:野生株、レーン2:組換株1、レーン3:組換株2)。
kan導入候補株(レーン2,3)では、約3.8kbpのPCR増幅産物のバンドが確認された。一方、野生株(レーン1)ではPCR増幅産物のバンドは確認されなかった。
【0136】
【表29】
【0137】
【表30】
【0138】
【表31】
【0139】
(試験2)抽出したゲノムがモーレラ・サーモアセティカ ATCC 39073株に由来するゲノムであるか否かを確認するため、野生株およびkan導入候補株のゲノムDNAを鋳型として、プライマーM2281−FとM2281−Rとの組合せを用いて、Moth_2281遺伝子をPCR増幅した。ATCC 39073株に由来するゲノムであれば、約2.3kbpのPCR増幅産物が得られる。PCR反応液の組成を表32に、PCR反応条件を表33に示す。なお、KOD FX(PCR酵素)、2× PCR バッファー for KOD FXおよび2mM dNTPsは、KOD FX(東洋紡社製)に含まれるものを用いた。
【0140】
PCR増幅産物のアガロースゲル電気泳動像を図2(A)に示す(レーン4〜6、レーン4:野生株、レーン5:組換株1、レーン6:組換株2)。
野生株(レーン4)およびkan導入候補株(レーン5、6)のすべてで、約2.3kbpのPCR増幅産物のバンドが確認された。
【0141】
【表32】
【0142】
【表33】
【0143】
(試験3)野生株およびkan導入候補株(組換株1、組換株2)のゲノムDNAを、それぞれ鋳型として、プライマーpyrF−upup−F(配列番号26)とpyrF−dndn−R(配列番号28)との組合せを用いて、カナマイシン耐性遺伝子部分を含むpyrF周辺領域をPCR増幅した。野生株では約4.7kbpの、kan導入株では約5.5kbpのPCR産物が得られる。PCR反応液の組成を表34に、PCR反応条件を表35に示す。なお、KOD FX(PCR酵素)、2× PCR バッファー for KOD FXおよび2mM dNTPsは、KOD FX(東洋紡社製)に含まれるものを用いた。
【0144】
PCR増幅産物のアガロースゲル電気泳動像を図2(B)に示す(レーン1〜3、レーン1:野生株、レーン2:組換株1、レーン3:組換株2)。
野生株(レーン1)では約4.7kbpの、kan導入候補株(レーン2、3)では約5.5kbpのPCR産物が得られた。
【0145】
【表34】
【0146】
【表35】
【0147】
(試験4)上記(試験3)で得られたPCR増幅産物をKpnIで制限酵素消化し、消化断片のサイズをアガロースゲル電気泳動により確認した。野生株では、541bp、895bp、956bpおよび2298bpの制限酵素消化断片が得られ、kan導入株では、541bp、895bp、956bpおよび3097bpの制限酵素消化断片が得られる。
【0148】
アガロースゲル電気泳動像を図2(B)に示す(レーン4〜6、レーン4:野生株、レーン5:組換株1、レーン6:組換株2)。
野生株(レーン4)では、541bp、895bp、956bpおよび2298bpの制限酵素消化断片が得られ、kan導入候補株(レーン5、6)では、541bp、895bp、956bpおよび3097bpの制限酵素消化断片が得られた。
【0149】
以上の結果から、kan導入候補株として単離された1株(組換株1、組換株2の2連)は、カナマイシン耐性遺伝子が導入されたkan導入株であることが確認された。得られたkan導入株を、MTA−kanr株と命名し、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)に寄託した。
【0150】
5.カナマイシン耐性の確認
得られたkan導入株(MTA−kanr株)のカナマイシン耐性が表現形質として発現しているか否かを確認するため、以下の試験を行った。
(1)材料
野生株1株(ATCC 39073株)および得られたkan導入株1株(組換株1、組換株2の2連)を用いた。
(2)方法
(前培養)
野生株および組換株(組換株1、組換株2の2連)を、それぞれ、完全合成培地(表22A)にフルクトースを終濃度5g/Lで添加した液体培地で、OD600=0.5〜0.8になるまで、55℃で嫌気培養した。
(試験1)
培養した菌体を、それぞれ、完全合成培地(表22A)にフルクトースを終濃度5g/Lで、カナマイシンを終濃度200μg/mLまたは300μg/mLで、それぞれ添加した液体培地に植菌し、OD600を20時間ごとに計測しながら、55℃で嫌気培養した。
(試験2)
培養した菌体を、完全合成(表22A)にAgar高温用20g/Lおよびカナマイシン200μg/mL(終濃度)で添加した寒天培地を用いて嫌気性ロールチューブ法により、55℃で培養した。
【0151】
(3)結果
(試験1)
培養時間(hour)に対してOD600測定値をプロットしたグラフを図3(A)(カナマイシン濃度:200μg/mL)および図3(B)(カナマイシン濃度:300μg/mL)に示す。
カナマイシン濃度200μg/mLおよび300μg/mLのいずれにおいても、野生株は増殖が確認されなかったが、kan導入株(組換株1、組換株2の2連)は増殖が確認された。
(試験2)
野生株ではコロニーの形成が確認できなかったが、kan導入株(組換株1、組換株2の2連)ではコロニーの形成が確認できた。
【0152】
(4)まとめ
kan導入株(MTA−kanr株)はカナマイシン耐性を表現形質として発現していることが確認できた。
【0153】
(配列番号の説明)
配列番号1:カナマイシン耐性遺伝子産物のアミノ酸配列
配列番号2:カナマイシン耐性遺伝子のDNA塩基配列
配列番号3:G3PDプロモーター領域のDNA塩基配列
配列番号4:pyrF遺伝子産物のアミノ酸配列
配列番号5:pyrF遺伝子のDNA塩基配列
配列番号6:プライマー pyrF−up−F1
配列番号7:プライマー pyrF−up−R1
配列番号8:プライマー pyrF−dn−F1
配列番号9:プライマー pyrF−dn−R1
配列番号10:プライマー pyrF−up−F2
配列番号11:プライマー pyrF−dn−R2
配列番号12:プライマー pyrF−up−F3
配列番号13:プライマー pyrF−dn−R3
配列番号14:プライマー pyrF−F
配列番号15:プライマー pyrF−R
配列番号16:プライマー pyrF−1765−F
配列番号17:プライマー pyrF−1764−R
配列番号18:プライマー G3PD−F11
配列番号19:プライマー G3PD−SD−R12
配列番号20:プライマー ldh−F−1
配列番号21:プライマー ldh−R−1
配列番号22:プライマー kanR−in−F2
配列番号23:プライマー kanR−in−R
配列番号24:プライマー pyrF−ldh−inv−F
配列番号25:プライマー pyrF−ldh−inv−R
配列番号26:プライマー pyrF−upup−F
配列番号27:プライマー kanR−into−R
配列番号28:プライマー pyrF−dndn−R
配列番号29:プライマー M2281−F
配列番号30:プライマー M2281−R
【受託番号】
【0154】
識別の表示:MTA−D−pF
受託番号:NITE P−1057
寄託日:2011年 2月15日
受託機関:独立行政法人製品技術評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)

識別の表示:MTA−kanr
受領番号:NITE AP−1354
受領日:2012年 5月2日
受託機関:独立行政法人製品技術評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)
図1
図2
図3
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]