【実施例】
【0055】
本実施例では、モーレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica) ATCC 39073株(以下、「野生株」または「WT」という場合がある。)のpyrF破壊株である、ウラシル要求性変異株(以下、単に「pyrF破壊株」または「dpyrF株」という場合がある。)に、ATCC 39073株由来のpyrF、pIKM1由来のカナマイシン耐性遺伝子(以下、単に「kan
r」という場合がある。)およびkan
rを発現するためのATCC 39073株由来のグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター(G3PDプロモーター)を導入して、ウラシル要求性の除去およびカナマイシン耐性の付与を行い、カナマイシン耐性を持つ遺伝子組換えモーレラ属細菌(kan
r導入株)を作製した。
【0056】
1.pyrF破壊株(dpyrF株)の作製
モーレラ・サーモアセティカ ATCC 39073株のpyrFを破壊し、ウラシル要求性変異株を作製した。
【0057】
(1)遺伝子破壊ベクターpK18−dpyrFの構築
以下の手順でモーレラ・サーモアセティカ ATCC 39073株のオロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子pyrFを破壊するためのベクターを構築した。
【0058】
[遺伝子破壊ベクターpK18−dpyrFの構築]
モーレラ・サーモアセティカ ATCC 39073株を完全合成培地(改変ATCC 1754 PETC Medium、表22Aを参照)に植菌し、55℃で嫌気的に培養した。
培養後、NucleoSpin Tissue(MACHEREY−NAGEL社製)を用いてトータルDNAを抽出した。
【0059】
まず、表1に示したプライマーpyrF−up−F1(配列番号6:5'-tgacgttctagaccctacctctccaagattacc-3')とpyrF−up−R1(配列番号7:5'-tgacgtactagtggcaagcaggccagaag-3')との組合せ、およびpyrF−dn−F1(配列番号8:5'-tgacgtactagtaacttcggcctgctttcatgc-3')とpyrF−dn−R1(配列番号9:5'-tgacctgatatctgtccaagcttatgcaccttcc-3')との組合せを用いて、表2に示す反応液の組成で、表3に示す条件でPCRを行い、pyrFの上流領域および下流領域のそれぞれ約1000bpを増幅した。表2において、プライマーFとプライマーRとの組合せは、上記組合せである。また、テンプレートDNAは、モーレラ・サーモアセティカ ATCC 39073株のトータルDNAである。なお、KOD−Plus−Neo(PCR酵素)、10×PCR バッファー for KOD−Plus−Neo、2mM dNTPsおよび25mM MgSO
4は、KOD−Plus−Neo(東洋紡社製)に含まれるものを用いた。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
プライマーpyrF−up−F1(配列番号6)およびpyrF−up−R1(配列番号7)は、pyrFの上流の隣接領域を増幅し、pyrF−dn−F1(配列番号8)およびpyrF−dn−R1(配列番号9)は、pyrFの下流の隣接領域を増幅する。
【0064】
得られたPCR産物を、制限酵素SpeIで処理した後に、MagExtracter Kit(東洋紡)を用いて精製を行い、pyrF上流領域のPCR産物を5μL、下流領域のPCR産物を5μL、Ligation high Ver.2(東洋紡)を10μL混合し、16℃で30分間インキュベートし、ライゲーション産物をテンプレートDNAとして、プライマーpyrF−up−F1(配列番号6)およびpyrF−up−R1(配列番号7)を用いて、表4に示す反応液組成で、表5に示す条件でPCRを行った。なお、KOD−Plus−Neo(PCR酵素)、10×PCR バッファー for KOD−Plus−Neo、2mM dNTPsおよび25mM MgSO
4は、KOD−Plus−Neo(東洋紡社製)に含まれるものを用いた。
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】
得られたPCR産物をMagExtractor Kit(東洋紡製)を用いてゲル抽出を行った後、2μLのSmaI処理をしたプラスミドpK18mobを、8μLのゲル抽出したPCR産物、10μLのLigation high Ver.2(東洋紡製)と混合し、16℃で1時間インキュベートし、Escherichia coli HST08 Premiumコンピテントセル(タカラバイオ製)にライゲーション溶液10μLを添加して軽く撹拌した後、氷中に10分静置し、42℃で1分間ヒートショックを与えた後、すぐに氷中に静置した。
【0068】
SOC培地を1mL加え、37℃で1時間インキュベート後、LB寒天培地(カナマイシン、X−gal、IPTG含有)に塗沫し、37℃で一晩培養後、生えてきたコロニーを取得した。
【0069】
[遺伝子破壊ベクターの確認]
上記「遺伝子破壊ベクターpk18−dpyrFの構築」で生育が見られたコロニーを、カナマイシンを添加したLB培地に移植した後、コロニーダイレクトPCRを行い、インサートの確認を行った。プライマーは表1に示すpyrF−up−Fl(配列番号6)、pyrF−dn−R1(配列番号9)を用いた。コロニーダイレクトPCRの反応液組成を表6に、反応条件を表7に示す。コロニーを反応液に入れてPCRを行った。なお、SapphireAmp Fast PCR Master Mix (2×Premix)および滅菌蒸留水は、SapphireAmp
(R) PCR Master Mix(タカラバイオ社製)に含まれるものを用いた。
【0070】
【表6】
【0071】
【表7】
【0072】
得られたPCR産物について、電気泳動によりバンドを確認した。
バンドが確認できた株を、カナマイシンを添加したLB液体培地で一晩培養し、プラスミド抽出を行った。
【0073】
吸光度による濃度測定および電気泳動による確認後、シーケンスによる塩基配列の解読を行って目的の遺伝子破壊ベクターpk18−dpyrFが構築できていることを確認した。
【0074】
(2)pyrF破壊株(dpyrF株)の作製
上記(1)で構築した遺伝子破壊ベクターpK18−dpyrFを、以下の手順で、モーレラ・サーモアセティカ ATCC 39073株に導入し、ダブルクロスオーバーの相同性組換えによってpyrFが破壊された株(dpyrF株)を選抜した。
【0075】
[ATCC 39073株への遺伝子破壊ベクターの導入]
272mMスクロース、16mM HEPESの組成で、水酸化カリウムを用いてpH7に合わせたHS緩衝液を調製し、20分間N
2ガスで溶存酸素を置換した。
【0076】
80%の水素、20%の二酸化炭素の混合ガスを基質とし、改変型ATCC 1754 PETC培地、またはグリシンを終濃度5g/Lになるように添加した改変型ATCC 1754 PETC培地で、モーレラ・サーモアセティカ ATCC 39073株を培養した。
【0077】
菌体濃度がOD
600で約0.3になるまで培養し、培養液約100mL分を集菌した後、HS緩衝液で菌体を2回洗浄した。
【0078】
洗浄した菌体を適当な量のHS緩衝液(約3mL)に懸濁し、懸濁液380μLとプラスミド20μLとを混合した。
【0079】
Gene Pulser Xcell
TMエレクトロポレーションシステム(バイオ・ラッド ラボラトリーズ)および電極間距離(ギャップ)0.2cmのエレクトロポレーションキュベット(バイオ・ラッド ラボラトリーズ)を用いて、1.5kV、500Ω、50μFでエレクトロポレーションを行った。エレクトロポレーション後の懸濁液を、ピルビン酸40mMの終濃度で添加した5mLの培地に植菌し、55℃で2日間培養後に、ウラシル10μg/mL、5−フルオロオロチン酸(5−FOA)0.2%の終濃度で添加した寒天培地に植菌し、ロールチューブを作製した。
【0080】
[ダイレクトPCRによるpyrF破壊株(dpyrF株)の確認]
上記寒天培地に形成された20個のコロニーを、5mLのウラシル10μg/mL、5−FOA 0.2%の終濃度で添加した液体培地に植菌し、培養3日目に培地が濁っていることが確認できた6株を選択し、培養液1mLを集菌した。
【0081】
アクロモペプチダーゼ(20mg/mL)+リゾチーム(20mg/mL)の入ったTE緩衝液 20μLで懸濁し、37℃で5分間インキュベートし、DMSOを20μL添加して懸濁し、PCRの鋳型とした。
【0082】
下記表に示すプライマーのうち、pyrF−up−F2(配列番号10:5'-tgtcctcaacaccctcacc-3')とpyrF−dn−R2(配列番号11:5'-tcttcccaggtcctgtagg-3')、pyrF−up−F3(配列番号12:5'-tgtcctcaacaccctcacc-3')とpyrF−dn−R3(配列番号13:5'-tcttcccaggtcctgtagg-3')、またはpyrF−F(配列番号14:5'-acctgaagttccacgacatcc-3')とpyrF−R(配列番号15:5'-ggtcacgatgacgaactc-3')との組合せを用い、各々の組合せについて、表9に示す反応液組成で、表10に示す反応条件でコロニーダイレクトPCRを行い、電気泳動によりバンドを確認した。表9において、プライマーFとプライマーRとの組合せは、上記組合せである。また、コロニーを反応液に入れてPCRを行った。なお、KOD FX(PCR酵素)、2× PCR バッファー for KOD FXおよび2mM dNTPsは、KOD FX(東洋紡社製)に含まれるものを用いた。
【0083】
【表8】
【0084】
【表9】
【0085】
【表10】
【0086】
ロールチューブ法によるコロニー形成を試みた結果、多数のコロニーを得た。そこで、コロニーを20株選択し、液体培地(10μg/mL ウラシル、0.2% 5−FOA)にて培養した。菌体の生育が確認できた培養液から菌体を集菌し、ダイレクトPCRによる確認を行った。
【0087】
培養3日目に増殖が確認できた6株について、プライマーpyrF−up−F2(配列番号10)とpyrF−dn−R2(配列番号11)との組合せ、またはpyrF−up−F3(配列番号12)とpyr−dn−R3(配列番号13)との組合せを用いて、pyrFの外側からPCRを行ったところ、6株中1株において、野生株よりも短いバンドが確認できた。
【0088】
さらに、プライマーpyr−F(配列番号14)とpyrF−R(配列番号15)との組合せを用いて、pyrFの内側をPCRしたところ、前述の株においてはバンドが確認できなかった。
【0089】
これらの結果から、野生株よりも短いバンドを確認できた株がpyrF破壊株(dpyrF株)である可能性があると判断し、ゲノムDNA抽出を行った後に、もう一度PCRを行った。その結果、ダイレクトPCRの際と同様のバンドパターンが得られた。
【0090】
さらに、pyrFが破壊された部分には、制限酵素SpeIサイトが1カ所付与されることから(プライマーpyrF−up−R1、pyrF−dn−F1参照)、上記のPCR産物についてSpeIで消化したところ、SpeIサイトで切断が起こり、バンドが2本になることを確認した。
【0091】
次に、pyrF破壊候補株についてウラシル要求性試験を行った。酵母エキスを除いた改変型ATCC 1754 PETC培地に、pyrF破壊株を植菌し、10μg/mLの終濃度でウラシルを添加した場合と添加しなかった場合とで増殖の確認を行った。
【0092】
その結果、ウラシルを添加したサンプルでは、培養2日目には菌体の増殖が確認できたが、ウラシルを添加しなかったサンプルにおいては、増殖が確認できなかった。これらの結果から、pyrFの破壊が確認できた。
【0093】
このpyrF破壊株(MTA−D−pF株)は、受託番号「NITE P−1057」として、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)に寄託されている。
【0094】
2.カナマイシン耐性遺伝子導入用相補ベクターpK18−kanrの構築
(1)pK18−ldhの作製
(1−1)pK18−epyrFの作製
モーレラ・サーモアセティカ ATCC 39073株を完全合成培地(改変ATCC 1754 PETC Medium、表22Aを参照)に植菌し、55℃で嫌気的に培養した。
培養後、NucleoSpin Tissue(MACHEREY−NAGEL社製)を用いてトータルDNAを抽出した。
【0095】
pyrF−up−F1(配列番号6)とpyrF−dn−R1(配列番号9)との組み合わせを用いて、以下の条件でPCRを行い、pyrF遺伝子翻訳領域とその5’側の約1000bp、3’側の約1000bpを含む約2.7kbの遺伝子断片を増幅した。なお、KOD FX(PCR酵素)、2× PCR バッファー for KOD FXおよび2mM dNTPsは、KOD FX(東洋紡社製)に含まれるものを用いた。
【0096】
【表11】
【0097】
【表12】
【0098】
得られたPCR産物についてMagExtractor Kit(東洋紡製)を用いてゲル抽出を行った。
2μLのSmaI処理をしたプラスミドpK18mobを、8μLのゲル抽出したPCR産物、10μLのLigation high Ver.2(東洋紡製)と混合し、16°Cで1時間インキュベートした。
Escherichia coli HST08 Premiumコンピテントセル(タカラバイオ製)にライゲーション溶液10μLを添加して軽く攪拌した。
氷中に10分静置した。
42℃で1分間ヒートショックを与えた後、すぐに氷中に静置した。
SOC培地を1 ml加え、37℃で1時間インキュベート後、LB寒天培地(カナマイシン、X−gal、IPTG含有)に塗沫した。
37℃で一晩培養後、生えてきたコロニーを取得した。
【0099】
[pyrF相補ベクターの確認]
上記(1)で生育が見られたコロニーをカナマイシン添加LB寒天培地に移植した後、コロニーダイレクトPCRを行い、インサートの確認を行った。プライマーはpyrF−up−F1(配列番号6)、pyrF−dn−R1(配列番号9)を用いた。コロニーダイレクトPCRの条件を以下に示す。なお、KOD FX(PCR酵素)、2× PCR バッファー for KOD FXおよび2mM dNTPsは、KOD FX(東洋紡社製)に含まれるものを用いた。
【0100】
【表13】
【0101】
【表14】
【0102】
電気泳動によりバンドを確認した。
バンドが確認できた株について、カナマイシンを添加したLB液体培地で一晩培養し、プラスミド抽出を行った。
吸光度による濃度測定、およびEcoRIまたはPstI処理サンプルの電気泳動を行った。
さらに、シーケンスによる塩基配列の解読を行って目的のpyrF遺伝子相補ベクターpK18−epyrFが構築できていることを確認した。
【0103】
(1−2)pK18−ldhの作製
T. pseudethanolicus 39E株の乳酸脱水素酵素遺伝子(T−ldh)を取得し、上記(2)で構築したpyrF遺伝子相補ベクターpK18−epyrFのpyrF遺伝子領域へ挿入し、T−ldh遺伝子導入用相補ベクターpK18−ldhを構築することを目的とした。
【0104】
T. pseudethanolicus 39E株のTotal DNA、およびプライマーpyrF−1765−F(配列番号16:5'-tcggcctgctttcatgcttg-3')とpyrF−1764−R(配列番号17:5'-agttattatttcaccatctctatttc-3')とを用いて、pyrF相補ベクターpK18−epyrFを鋳型として、pyrF領域を含むベクター領域をPCR増幅した。PCRの条件は以下の通りである。なお、KOD FX(PCR酵素)、2× PCR バッファー for KOD FXおよび2mM dNTPsは、KOD FX(東洋紡社製)に含まれるものを用いた。
【0105】
【表15】
【0106】
【表16】
【0107】
プライマーG3PD−F11(配列番号18:5'-ggtgaaataataactggacggttgccaagtacc-3')とG3PD−SD−R12(配列番号19:5'-tatgtactcctccttatatttattgtaacg-3')とを用いて、ATCC 39073株由来のグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子のSD配列を含むプロモーター領域(G3PDプロモーター領域)を増幅した。PCRの条件は以下の通りである。なお、KOD−Plus−Neo(PCR酵素)、10×PCR バッファー for KOD−Plus−Neo、2mM dNTPsおよび25mM MgSO
4は、KOD−Plus−Neo(東洋紡社製)に含まれるものを用いた。
【0108】
【表17】
【0109】
【表18】
【0110】
T. pseudethanolicus 39E株のTotal DNA、およびプライマーldh−F−1(配列番号20:5'-aaggaggagtacataatgaacaaaatatctataataggttc-3')とldh−R−1(配列番号21:5'-atgaaagcaggccgattatatatcaagctcttgtattacac-3')との組合せを用いて、T. pseudethanolicus 39E株の乳酸脱水素酵素遺伝子(T−ldh)を増幅した。PCRの条件は以下の通りである。PCR反応終了後、各PCR産物をゲル抽出した。なお、KOD−Plus−Neo(PCR酵素)、10×PCR バッファー for KOD−Plus−Neo、2mM dNTPsおよび25mM MgSO
4は、KOD−Plus−Neo(東洋紡社製)に含まれるものを用いた。
【0111】
【表19】
【0112】
【表20】
【0113】
下記表に記載の反応溶液でIn−Fusion PCRを行った。反応条件は、37℃30分→50℃15分とした。なお、5× In−Fusion Reaction バッファーおよびIn−Fusion Enzymeは、In−Fusion
(R) Advantage PCR Cloning Kit(タカラバイオ社製)に含まれるものを用いた。
【0114】
【表21】
【0115】
In−Fusionサンプルに滅菌水を50μl加えて希釈した。
希釈したサンプル10μlを形質転換に用いた。
ダイレクトPCRによりコロニーを選択した。
【0116】
In−Fusion PCRおよび形質転換の結果、複数のコロニーを得た。
ldh−F−1およびldh−R−1をプライマーとしたコロニーダイレクトPCRの結果、全ての株において目的のバンドが確認できた。それらの株の中から3株ずつを培養し、プラスミドを抽出した。制限酵素(EcoRI、EcoRV、またはPstI)処理、および電気泳動による確認の結果、全ての株においてT−ldhの挿入が確認できた。
【0117】
完全合成培地の組成を表22Aに示す。炭素源としてフルクトースを添加する場合には終濃度5g/Lで、ウラシルを添加する場合には終濃度0.01g/Lで、それぞれ添加した(特に断りがある場合を除く)。また、ロールチューブ法に用いる場合には、Agar高温用20g/Lを添加した。
【0118】
【表22】
【0119】
(2)相補ベクターpK18−kanrの作製
(2−1)pK18−ldhを鋳型として、プライマーpyrF−ldh−inv−F(配列番号24)とpyrF−ldh−inv−R(配列番号25)との組合せを用いて、pyrF領域を含む領域をPCR増幅し、線状ベクターを得た。PCRの条件は以下の通りである。なお、KOD FX(PCR酵素)、2× PCR バッファー for KOD FXおよび2mM dNTPsは、KOD FX(東洋紡社製)に含まれるものを用いた。
【0120】
【表23】
【0121】
【表24】
【0122】
【表25】
【0123】
(2−2)pIKM1を鋳型として、プライマーkanR−in−F2(配列番号22)と、kanR−in−R(配列番号23)との組合せを用いてPCRを行い、カナマイシン耐性遺伝子を増幅した。PCRの条件は以下の通りである。なお、KOD FX(PCR酵素)、2× PCR バッファー for KOD FXおよび2mM dNTPsは、KOD FX(東洋紡社製)に含まれるものを用いた。
【0124】
【表26】
【0125】
【表27】
【0126】
(3)In−FusionAdvantage PCR Cloning Kit(タカラバイオ)を用いて、上記(1)で得た線状ベクターに、カナマイシン耐性遺伝子のIn−Fusionクローニングを行った。すなわち、キット付属のプロトコールに従い、下記表に記載の反応溶液でIn−Fusion PCRを行った。反応条件は、37℃30分→50℃15分とした。なお、5× In−Fusion Reaction バッファーおよびIn−Fusion Enzymeは、In−Fusion
(R) Advantage PCR Cloning Kit(タカラバイオ社製)に含まれるものを用いた。
【0127】
【表28】
【0128】
In−Fusionサンプルに滅菌水を50μl加えて希釈した。この希釈液を大腸菌に形質転換し、20μg/mLカナマイシンを含む2×YT固体培地にプレーティングした。
16時間培養後、出現したコロニーを2×YT液体培地に植菌した。
16時間培養後、Quantum Prep Plasmid Miniprep Kit(バイオラッド)を用いてプラスミド抽出を行った。
抽出したプラスミドが目的のプラスミドであるか否かを、制限酵素処理およびPCR(カナマイシン耐性遺伝子(kan
r)の増幅)により確認した。PCR反応液は表26に記載の組成とし、PCR条件は表27に記載の条件とした。
結果を
図1のアガロースゲル電気泳動に示す。
【0129】
制限酵素処理の結果では、2.7kbp、1.9kbpおよび1.1kbpに、制限酵素(HincII+NcoI)消化産物のバンドが確認された(レーン1〜5)。これは、予想通りである。
また、PCRの結果では、レーン9を除き、kan
rの増幅産物のバンドが確認された(レーン6〜10)。これは、予想通りである。
なお、レーン1と6、2と7、3と8、4と9、および5と10は、それぞれ、同一のプラスミドである。
【0130】
4.カナマイシン耐性遺伝子導入用相補ベクターによるpyrF破壊株の形質転換
宿主としては、M. thermoacetica ATCC 39073のpyrF破壊株として、先に独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託したdpyrF株(MTA−D−pF株,受託番号NITE P−1057)を用いた。ここでは、上記3で構築したカナマイシン耐性遺伝子導入用相補ベクターをdpyrF株の細胞内にエレクトロポレーション法によって導入し、ダブルクロスオーバーの相同組換えによって、dpyrF株の染色体にカナマイシン耐性遺伝子を組み込むことを目的とした。
【0131】
(1)dpyrF株の培養
dpyrF株は完全合成培地(表22A)+終濃度0.01g/Lのウラシルに植菌し、H
2+CO
2を炭素源として55℃で培養した。OD
600=0.1前後まで培養した。
【0132】
(2)エレクトロポレーションによるカナマイシン耐性遺伝子(kan
r)の導入
培養液を遠心分離(5800×g、10min)し、菌体を集菌した。
上清を捨て、272mMスクロースバッファー10mLに再懸濁し、遠心分離(5800×g、10min)により集菌した。この操作を2回繰り返した。
洗浄終了後、272mMスクロースバッファー5mLに菌体を再懸濁し、そこから400μLをキュベットに分注した。さらにkan
r導入用ベクターを加えた。
1.5kV、500Ω、50μFでパルスを与えた。
パルスを与えた懸濁液を、2分間氷上の静置した後、5mlの完全合成培地+終濃度0.01g/Lのウラシル+終濃度5g/Lのフルクトースの入ったバイアルに植菌した。
55℃で48時間キュアリングを行った。
キュアリング後、ロールチューブにより、kan
r導入候補株の単離を行った。その結果、kan
r導入候補株を1株得た。
【0133】
(3)kan
r導入の確認
kan
r導入候補株を液体培養し、十分に増殖したところで、培養液を1mL採取した。
培養液を遠心分離(15000rpm、2min)し、上清を捨てた。
残った菌体ペレットから、NucleoSpin Tissue(タカラバイオ)を用いて、ゲノムを抽出した。抽出方法は添付のマニュアルに従った。
また、野生株である、M. thermoacetica ATCC 39073株からも同様にしてゲノムを抽出した。
【0134】
以下の試験を行った。kan
r導入候補株については2連で試験を行い、それぞれ、組換株1、組換株2と称する。
(試験1)野生株およびkan
r導入候補株(組換株1、組換株2)のゲノムDNAを、それぞれ鋳型として、プライマーpyrF−upup−F(配列番号26)とkanR−into−R(配列番号27)との組合せを用いて、以下の条件によりPCR増幅を行い、pyrF上流領域からカナマイシン耐性遺伝子部分を増幅した。kan
r導入株では約3.8kbpのPCR産物が得られるが、野生株ではPCR増幅されない。PCR反応液の組成を表30に、PCR反応条件を表31に示す。なお、KOD FX(PCR酵素)、2× PCR バッファー for KOD FXおよび2mM dNTPsは、KOD FX(東洋紡社製)に含まれるものを用いた。
【0135】
PCR増幅産物のアガロースゲル電気泳動像を
図2(A)に示す(レーン1〜3、レーン1:野生株、レーン2:組換株1、レーン3:組換株2)。
kan
r導入候補株(レーン2,3)では、約3.8kbpのPCR増幅産物のバンドが確認された。一方、野生株(レーン1)ではPCR増幅産物のバンドは確認されなかった。
【0136】
【表29】
【0137】
【表30】
【0138】
【表31】
【0139】
(試験2)抽出したゲノムがモーレラ・サーモアセティカ ATCC 39073株に由来するゲノムであるか否かを確認するため、野生株およびkan
r導入候補株のゲノムDNAを鋳型として、プライマーM2281−FとM2281−Rとの組合せを用いて、Moth_2281遺伝子をPCR増幅した。ATCC 39073株に由来するゲノムであれば、約2.3kbpのPCR増幅産物が得られる。PCR反応液の組成を表32に、PCR反応条件を表33に示す。なお、KOD FX(PCR酵素)、2× PCR バッファー for KOD FXおよび2mM dNTPsは、KOD FX(東洋紡社製)に含まれるものを用いた。
【0140】
PCR増幅産物のアガロースゲル電気泳動像を
図2(A)に示す(レーン4〜6、レーン4:野生株、レーン5:組換株1、レーン6:組換株2)。
野生株(レーン4)およびkan
r導入候補株(レーン5、6)のすべてで、約2.3kbpのPCR増幅産物のバンドが確認された。
【0141】
【表32】
【0142】
【表33】
【0143】
(試験3)野生株およびkan
r導入候補株(組換株1、組換株2)のゲノムDNAを、それぞれ鋳型として、プライマーpyrF−upup−F(配列番号26)とpyrF−dndn−R(配列番号28)との組合せを用いて、カナマイシン耐性遺伝子部分を含むpyrF周辺領域をPCR増幅した。野生株では約4.7kbpの、kan
r導入株では約5.5kbpのPCR産物が得られる。PCR反応液の組成を表34に、PCR反応条件を表35に示す。なお、KOD FX(PCR酵素)、2× PCR バッファー for KOD FXおよび2mM dNTPsは、KOD FX(東洋紡社製)に含まれるものを用いた。
【0144】
PCR増幅産物のアガロースゲル電気泳動像を
図2(B)に示す(レーン1〜3、レーン1:野生株、レーン2:組換株1、レーン3:組換株2)。
野生株(レーン1)では約4.7kbpの、kan
r導入候補株(レーン2、3)では約5.5kbpのPCR産物が得られた。
【0145】
【表34】
【0146】
【表35】
【0147】
(試験4)上記(試験3)で得られたPCR増幅産物をKpnIで制限酵素消化し、消化断片のサイズをアガロースゲル電気泳動により確認した。野生株では、541bp、895bp、956bpおよび2298bpの制限酵素消化断片が得られ、kan
r導入株では、541bp、895bp、956bpおよび3097bpの制限酵素消化断片が得られる。
【0148】
アガロースゲル電気泳動像を
図2(B)に示す(レーン4〜6、レーン4:野生株、レーン5:組換株1、レーン6:組換株2)。
野生株(レーン4)では、541bp、895bp、956bpおよび2298bpの制限酵素消化断片が得られ、kan
r導入候補株(レーン5、6)では、541bp、895bp、956bpおよび3097bpの制限酵素消化断片が得られた。
【0149】
以上の結果から、kan
r導入候補株として単離された1株(組換株1、組換株2の2連)は、カナマイシン耐性遺伝子が導入されたkan
r導入株であることが確認された。得られたkan
r導入株を、MTA−kanr株と命名し、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)に寄託した。
【0150】
5.カナマイシン耐性の確認
得られたkan
r導入株(MTA−kanr株)のカナマイシン耐性が表現形質として発現しているか否かを確認するため、以下の試験を行った。
(1)材料
野生株1株(ATCC 39073株)および得られたkan
r導入株1株(組換株1、組換株2の2連)を用いた。
(2)方法
(前培養)
野生株および組換株(組換株1、組換株2の2連)を、それぞれ、完全合成培地(表22A)にフルクトースを終濃度5g/Lで添加した液体培地で、OD
600=0.5〜0.8になるまで、55℃で嫌気培養した。
(試験1)
培養した菌体を、それぞれ、完全合成培地(表22A)にフルクトースを終濃度5g/Lで、カナマイシンを終濃度200μg/mLまたは300μg/mLで、それぞれ添加した液体培地に植菌し、OD
600を20時間ごとに計測しながら、55℃で嫌気培養した。
(試験2)
培養した菌体を、完全合成(表22A)にAgar高温用20g/Lおよびカナマイシン200μg/mL(終濃度)で添加した寒天培地を用いて嫌気性ロールチューブ法により、55℃で培養した。
【0151】
(3)結果
(試験1)
培養時間(hour)に対してOD
600測定値をプロットしたグラフを
図3(A)(カナマイシン濃度:200μg/mL)および
図3(B)(カナマイシン濃度:300μg/mL)に示す。
カナマイシン濃度200μg/mLおよび300μg/mLのいずれにおいても、野生株は増殖が確認されなかったが、kan
r導入株(組換株1、組換株2の2連)は増殖が確認された。
(試験2)
野生株ではコロニーの形成が確認できなかったが、kan
r導入株(組換株1、組換株2の2連)ではコロニーの形成が確認できた。
【0152】
(4)まとめ
kan
r導入株(MTA−kanr株)はカナマイシン耐性を表現形質として発現していることが確認できた。
【0153】
(配列番号の説明)
配列番号1:カナマイシン耐性遺伝子産物のアミノ酸配列
配列番号2:カナマイシン耐性遺伝子のDNA塩基配列
配列番号3:G3PDプロモーター領域のDNA塩基配列
配列番号4:pyrF遺伝子産物のアミノ酸配列
配列番号5:pyrF遺伝子のDNA塩基配列
配列番号6:プライマー pyrF−up−F1
配列番号7:プライマー pyrF−up−R1
配列番号8:プライマー pyrF−dn−F1
配列番号9:プライマー pyrF−dn−R1
配列番号10:プライマー pyrF−up−F2
配列番号11:プライマー pyrF−dn−R2
配列番号12:プライマー pyrF−up−F3
配列番号13:プライマー pyrF−dn−R3
配列番号14:プライマー pyrF−F
配列番号15:プライマー pyrF−R
配列番号16:プライマー pyrF−1765−F
配列番号17:プライマー pyrF−1764−R
配列番号18:プライマー G3PD−F11
配列番号19:プライマー G3PD−SD−R12
配列番号20:プライマー ldh−F−1
配列番号21:プライマー ldh−R−1
配列番号22:プライマー kanR−in−F2
配列番号23:プライマー kanR−in−R
配列番号24:プライマー pyrF−ldh−inv−F
配列番号25:プライマー pyrF−ldh−inv−R
配列番号26:プライマー pyrF−upup−F
配列番号27:プライマー kanR−into−R
配列番号28:プライマー pyrF−dndn−R
配列番号29:プライマー M2281−F
配列番号30:プライマー M2281−R