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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150936
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】飲食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20220929BHJP
   A21D 2/18 20060101ALI20220929BHJP
   A21D 2/36 20060101ALI20220929BHJP
   A21D 13/80 20170101ALI20220929BHJP
   A21D 13/00 20170101ALI20220929BHJP
   A23L 7/109 20160101ALI20220929BHJP
   A23L 23/00 20160101ALN20220929BHJP
【FI】
A23L7/10 Z
A21D2/18
A21D2/36
A21D13/80
A21D13/00
A23L7/109 A
A23L23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021053755
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000226998
【氏名又は名称】株式会社日清製粉グループ本社
(71)【出願人】
【識別番号】301049777
【氏名又は名称】日清製粉株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】398012306
【氏名又は名称】株式会社日清製粉ウェルナ
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡 千尋
(72)【発明者】
【氏名】野崎 聡美
(72)【発明者】
【氏名】菊池 洋介
(72)【発明者】
【氏名】野間 聡
(72)【発明者】
【氏名】貴島 聡
(72)【発明者】
【氏名】津田 恭征
(72)【発明者】
【氏名】田中 智久
(72)【発明者】
【氏名】増田 久美子
(72)【発明者】
【氏名】朝比奈 健太
(72)【発明者】
【氏名】勝野 真美
(72)【発明者】
【氏名】中井 朋恵
(72)【発明者】
【氏名】小澤 佳祐
【テーマコード(参考)】
4B023
4B032
4B036
4B046
【Fターム(参考)】
4B023LC02
4B023LG06
4B023LK07
4B032DB02
4B032DB10
4B032DG03
4B032DK12
4B032DL06
4B036LC01
4B036LF01
4B036LH10
4B036LH24
4B036LP01
4B046LC17
4B046LG13
4B046LG26
4B046LG29
(57)【要約】      (修正有)
【課題】えぐみが少なく、且つ穀物特有の良好な風味を強調できる飲食品及び製造方法を提供する。
【解決手段】飲食品は、イネ科穀物外皮と、パラチノース加熱処理物とを含有する。乾燥質量換算で、前記穀物外皮を1.5~65質量%、及び前記パラチノース加熱処理物を0.02~12質量%含有することも好適である。また、飲食品の製造方法は、イネ科穀物外皮及びパラチノース加熱処理物を原料として用いる。原料として小麦粉を更に混合して得られた組成物を加熱処理して、ベーカリー食品、麺類、及びレトルト食品のうち一種以上の加工食品を前記飲食品として得ることも好適である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イネ科穀物外皮と、パラチノース加熱処理物とを含有する、飲食品。
【請求項2】
前記穀物外皮が小麦ふすまである、請求項1に記載の飲食品。
【請求項3】
前記穀物外皮が熱処理されている、請求項1または2に記載の飲食品。
【請求項4】
前記飲食物の乾燥質量に対して、前記穀物外皮を乾燥質量換算で1.5~65質量%含み、且つ前記パラチノース加熱処理物を乾燥質量換算で0.02~12質量%含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の飲食品。
【請求項5】
イネ科穀物外皮及びパラチノース加熱処理物を原料として用いる、飲食品の製造方法。
【請求項6】
前記穀物外皮として小麦ふすまを用いる、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
熱処理された前記穀物外皮を用いる、請求項5または6に記載の製造方法。
【請求項8】
乾燥質量換算で、前記穀物外皮を1.5~65質量%含み、且つ前記パラチノース加熱処理物を0.02~12質量%含むように用いる、請求項5~7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記穀物外皮に対する前記パラチノース加熱処理物の質量比が、乾燥質量換算で、0.0005~0.5である、請求項5~8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
原料として小麦粉を更に混合して得られた混合物を加熱処理して、
ベーカリー食品、麺類、及びレトルト食品のうち一種以上の加工食品を前記飲食品として得る、請求項5~9のいずれか一項に記載の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康意識の高まりから、食物繊維、ビタミン、ミネラルなどの栄養素や、機能性成分に富み、良好な風味を有する小麦ふすまなどの穀物外皮を用いて、パンや焼き菓子、麺類等の加工飲食品が製造されている。このような穀物外皮は、穀物らしい良好な風味を喫食者に知覚させることができるが、外皮独特のえぐみ等が発現しうるので、えぐみを低減させる技術が望まれている。
【0003】
特許文献1には、パラチノースを加熱することにより得られるパラチノース加熱分解物を有効成分とする消臭剤が開示されている。この消臭剤は、飲食品に含有できることも同文献に開示されている。
【0004】
特許文献2には、パラチノースを140℃から200℃に加熱することにより得られる加熱物を有効成分とする呈味改質剤が開示されている。この呈味改質剤は、飲食品に含有できることも同文献に開示されている。
【0005】
特許文献3には、フィチン酸を含有する食品に、糖類処理物、植物処理物、及びシクロデキストリンを含有させる異味マスキング方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-521号公報
【特許文献2】特開2004-2241号公報
【特許文献3】特開2019-135959公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1~3の技術はいずれも、穀物特有の風味の良さを強調することと、えぐみの低減とを両立できる飲食品を得ることに関して、さらなる改善の余地があった。
【0008】
したがって、本発明の課題は、えぐみが少なく、且つ穀物特有の良好な風味を強調できる飲食品及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、イネ科穀物外皮と、パラチノース加熱処理物とを含有する、飲食品を提供するものである。
【0010】
また本発明は、イネ科穀物外皮及び前記パラチノース加熱処理物を原料として用いる、飲食品の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、えぐみが少なく、且つ穀物特有の良好な風味を強調できる飲食品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明を、その好ましい実施形態に基づいて説明する。以下の説明では、「X~Y[Z]」(X及びYは任意の数字、[Z]は任意の単位)と記載した場合、特に断らない限り「X[Z]以上Y[Z]以下」を意味する。
【0013】
本発明の飲食品は、イネ科穀物の外皮を含む。イネ科穀物としては、例えば、小麦類、大麦類、オーツ麦類(カラス麦類)及びライ麦類等の麦類、米類、トウモロコシ類、モロコシ類、ヒエ類、アワ類並びにキビ類等が挙げられる。一般的に、上述したイネ科穀物は頴果(穀粒)を有し、頴果は、胚乳部、外皮部(外皮及び種皮)並びに胚芽(胚部)に大別される。このような穀粒を粉砕し、胚乳部及び胚芽を除去して得られた外皮部由来の画分が、本発明のイネ科穀物外皮となる。
【0014】
上述したイネ科穀物のうち、飲食品の加工時における取り扱いの容易性、穀物らしい良好な風味の発現、及び健康増進の観点から、麦類が好ましく、小麦類がより好ましく、小麦が更に好ましい。
【0015】
イネ科穀物の好適な形態である小麦を例にとり説明すると、小麦穀粒を粉砕し、胚乳部及び胚芽を除去して得られた外皮部由来の画分が、イネ科穀物外皮の好適な形態である小麦ふすまとなる。小麦ふすまは、飲食品の加工時における取り扱いの容易性、穀物らしい良好な風味の発現、及び健康増進の観点から有用なものである。また、後述する小麦ふすま以外の穀粉と混合したときに、これによって得られる飲食品の風味及び食感が更に良好なものとなる。
【0016】
本明細書における小麦ふすまは、外皮部由来の画分をそのまま用いたもの、並びに、該画分に対して更に粉砕、分級、熱処理等を施した小麦ふすま加工品の双方を包含する。
【0017】
イネ科穀物外皮は、乾熱処理及び湿熱処理などの熱処理が施されたものであることが好ましく、湿熱処理されたものであることがより好ましい。このような熱処理が施されていることによって、飲食品を製造する際の加工性が更に改善される。これに加えて、得られる飲食品に穀物らしい良好な風味が際立ち、且つ食感が一層良好なものとなる。
【0018】
飲食品中のイネ科穀物外皮の乾燥質量換算での含有量は、飲食物の乾燥質量に対する割合として、好ましくは1.5~65質量%、より好ましくは5~65質量%、更に好ましくは8~63質量%である。イネ科穀物外皮がこのような含有量となっていることによって、ふすまに由来する食物繊維や、マグネシウム及び鉄分などのミネラルを効率的に摂取できる飲食品を得ることができる。
本明細書における乾燥質量は、日本食品標準成分表2015年版(七訂)分析マニュアルに基づく質量であり、同マニュアルに記載の方法で測定された水分量を測定対象物の全質量から差し引いた質量を指す。
【0019】
本発明の飲食品は、パラチノースの加熱処理物を含む。パラチノース加熱処理物は、還元性二糖類であるパラチノースを、水とともに好ましくは140℃以上200℃以下で加熱処理して得られたものである。つまり、パラチノース加熱処理物は、既に加熱処理された結果物が飲食品の原料として用いられる。したがって、飲食品の製造過程で未加熱のパラチノースを原料として用い、その後、該製造過程で加熱処理されたものは、本発明のパラチノース加熱処理物から除外される。上述のパラチノース加熱処理物は、市販品(例えば、ロッテ社製や、三菱商事フードテック社製)を用いることもできる。
【0020】
飲食品中のパラチノース加熱処理物乾燥質量換算での含有量は、飲食物の乾燥質量に対する割合として、好ましくは0.02~12質量%、より好ましくは0.03~11.5質量%である。パラチノース加熱処理物がこのような含有量となっていることによって、
穀物外皮独特のえぐみを低減し、さらに穀物特有の風味が強調された飲食品を得ることができる。また、飲食品として後述するベーカリー食品を製造した場合には、喫食時における柔軟性が向上したものとなる。
【0021】
以下に、本発明の好適な態様として、イネ科穀物として小麦を用い、且つイネ科穀物外皮として小麦ふすまを用いた場合を例にとり詳細に説明する。以下の説明では、特に断りのない限り、小麦ふすま中の成分の含有量は、非乾燥状態、すなわち3~15質量%の水分量が小麦ふすまに含まれている状態での量を意味する。この水分量は、上記マニュアルに基づいて測定できる。
【0022】
小麦は、その穀粒を視認したときに観察される色に応じて、赤小麦と白小麦との二つの種類に大別される。赤小麦は、外皮部に赤色色素を含有する小麦であり、小麦穀粒を視認したときに、赤色、赤褐色又は褐色として観察される。一方、白小麦は、外皮部に赤色色素を含有しない小麦であり、小麦穀粒を視認したときに、白色又は淡黄色として観察される。本発明における小麦ふすまは、赤小麦由来であってもよく、白小麦由来であってもよく、これらの混合物であってもよい。
これらのうち、小麦ふすまの原料として白小麦を用いることが好ましい。白小麦を用いることによって、飲食品の加工適性を高めることができ、また、得られる加工品は、小麦外皮である小麦ふすまに由来する苦みやえぐみ等の不快な味が低減されて風味が良好になり、食感も滑らかなものとなることに加えて、外観にも優れる。
【0023】
本発明に用いられる白小麦の具体例としては、普通小麦では、オーストラリア・スタンダード・ホワイト(ASW、オーストラリア産)、プライムハード(PH、オーストラリア産)、ソフトホワイト(SW、アメリカ合衆国産)、ウエスタンホワイト(WW、アメリカ合衆国産)、デュラム小麦(世界各国で生産)等が挙げられる。これらの白小麦は、例えば遺伝学的特徴で適宜選別することができる。
【0024】
小麦ふすまを用いて飲食品を製造したときに、得られる飲食品に滑らかで良好な食感を発現させる観点から、小麦ふすまは、その平均粒径が好ましくは10~750μm、より好ましくは20~500μm、更に好ましくは25~250μm、一層好ましくは25~100μmである。本発明における平均粒径は、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置(例えば、日機装株式会社製、「マイクロトラック粒径分布測定装置9200FRA」)を用いて乾式で測定したときの累積体積50容量%における体積累積粒径D50を指す。
【0025】
以下に、飲食品の製造方法の一実施形態を説明する。本製造方法は、イネ科穀物外皮及びパラチノース加熱処理物を原料として用いて飲食品を得るものであり、典型的には、イネ科穀物外皮及びパラチノース加熱処理物を混合した混合物を得る工程を備える。以下の説明では、飲食品の好適な製造方法として、イネ科穀物として小麦を用い、且つイネ科穀物外皮として小麦ふすまを用いた場合を例にとり説明する。
【0026】
まず、原料となる小麦の穀粒を粉砕し、胚乳及び胚芽を分離して、穀物外皮である小麦ふすまを得る。粉砕に用いられる小麦の穀粒は、穀粒に加水して調質してもよく、又は加水調質せずに粉砕してもよい。穀粒粉砕物から小麦ふすま画分を採取する方法は特に制限されず、例えば篩分け等の公知の分級方法により、穀粒粉砕物を、小麦ふすま画分とそれ以外の成分とに分離し、小麦ふすま画分を採取する方法を利用できる。
【0027】
穀粒の粉砕は、本技術分野で通常用いられる粉砕方法を用いることができ、例えば、ロール式粉砕、衝撃式粉砕、気流式粉砕等の方法を用いることができる。穀粒の粉砕は、1回のみ行ってもよく、同一の又は異なる粉砕方法で複数回行ってもよい。例えば、ロール式粉砕と衝撃式粉砕とを組み合わせてこの順で実施してもよく、ロール式粉砕を多段階で
複数回行っても良い。また、衝撃式粉砕に用いる粉砕機としては、衝撃板と回転ローター間で機械的衝撃により粉砕を行うものであれば特に限定されない。穀粒の粉砕効率とふすまの分離効率とを両立して高める観点から、ロール式粉砕を採用することが好ましい。
【0028】
このようにして得られた小麦ふすま画分は、これをそのまま、熱処理しないで小麦ふすまとして飲食品の原料に用いてもよく、あるいは熱処理を行った後で得られた処理物を小麦ふすまとして飲食品の原料としてもよい。
【0029】
上述の方法で得られた小麦ふすまは、熱処理されることが好ましい。熱処理工程を経ることによって、アミラーゼやプロテアーゼなどの各種酵素の活性を低減、あるいは失活させることができるため、飲食品の加工性及び食感を更に向上できる点で特に有利である。
【0030】
熱処理として乾熱処理を行う場合、小麦ふすまの品温が好ましくは80~200℃、更に好ましくは90~150℃となるようにして、好ましくは1~120分間、更に好ましくは3~50分間処理を行う。乾熱処理においては、例えば特開2004-9022号公報に記載されている熱処理撹拌装置と同様の構成を有する装置に小麦ふすまを導入して、前記温度及び時間になるように行うことができる。この熱処理撹拌装置は、被処理物を収容する円筒状容器と、該容器の内部に備えられた中空構造の回転シャフトと、該シャフトに連通して形成された中空のパイプスクリューと、回転シャフト及びパイプスクリュー内に蒸気を供給する蒸気供給源とを備え、回転シャフト及びパイプスクリュー内に蒸気を供給して生じた伝熱を、回転シャフト及びパイプスクリューを介して被処理物に伝播させて、乾熱処理できるように構成されている。
【0031】
熱処理として湿熱処理を行う場合、水蒸気を導入する密閉系容器内において、小麦ふすまの品温が、好ましくは80~110℃、更に好ましくは85~95℃となるようにして、好ましくは1~60秒間、更に好ましくは3~30秒間滞留させることにより行う。湿熱処理においては、例えば特許第2784505号公報に記載の粉粒体加熱装置に、被処理物である小麦ふすまと、飽和水蒸気とを導入して前記温度及び時間になるように行うことができる。この粉粒体加熱装置は、飽和水蒸気の吹込口を有し、被処理物を収容する円筒形圧力容器と、該容器の一端に配された投入口から投入された粉粒体を撹拌しながら、該容器の他端に配された排出口に向けて移送するように、円筒内径に近い寸法の複数の棒状羽根を回転軸上に有する撹拌手段とを備えている。特に、湿熱処理を行うことによって、加工性が更に改善され、また、得られる飲食品の風味及び食感がより一層良好なものとなる。
【0032】
微粒の小麦ふすまを効率よく得る観点から、小麦ふすまを更に微粉砕して、微粉砕物を得てもよく、前記熱処理が行われた小麦ふすまを微粉砕して、微粉砕物を得てもよい。この微粉砕工程は、例えば衝撃式微粉砕に供して行うことができる。微粉砕処理は、小麦ふすまの全質量に対する平均粒径200μm未満の画分の割合が50~100質量%程度となるように行ってもよく、70~100質量%となるように行ってもよい。
【0033】
上述の工程を経て、飲食品の製造原料として好適な小麦ふすまを得ることができる。詳細には、小麦の穀粒を粉砕して小麦ふすま画分を得て、該画分を熱処理することによって、飲食品の原料に好適な諸物性を有する小麦ふすまを得ることができる。これに加えて、小麦ふすまを微粉砕したり、あるいは更に分級したりすることも好適である。このように得られた小麦ふすまは、典型的には粉状物である。
【0034】
これとは別に、原料としてパラチノース加熱処理物を用意する。パラチノース加熱処理物は、例えば未加熱のパラチノースと水とを、好ましくは4:1~5:1の質量割合で混合した分散液を常圧下で、140~200℃、20~60分間加熱することによって得る
ことができる。これに代えて、市販品を用いてもよい。原料として用いられるパラチノース加熱処理物は、典型的には粉状物である。
【0035】
続いて、小麦ふすま及びパラチノース加熱処理物を原料として用いて、飲食品を製造する。必要に応じて、小麦ふすま及びパラチノース加熱処理物以外の穀粉や他の原材料を更に用いてもよい。穀粉及び他の原材料についての詳細は後述する。
【0036】
小麦ふすま及びパラチノース加熱処理物、並びに必要に応じて含まれる他の原材料は、例えばこれらを混合し、必要に応じて加熱などの処理を行って、飲食品を製造することができる。各原料の混合順序は特に制限されず、同時に混合してもよく、任意の順序で添加して混合してもよい。混合方法は、混合対象の原材料が均一に混合できるような方法であれば特に限定されず、本技術分野において通常用いられる公知の混合装置を用いることができる。このようにして、小麦ふすま及びパラチノース加熱処理物、並びに必要に応じて穀粉や他の原材料を含んで混合された飲食用の混合物を得る。
【0037】
小麦ふすま及びパラチノース加熱処理物を含む飲食用混合物は、これをそのまま飲食品とすることができる。
これに代えて、穀物由来の良好な風味を際立たせる観点から、前記混合物に小麦ふすま以外の穀粉を更に混合することも好ましい。特に、原料として用いられる穀物外皮と同属の穀物由来の穀粉を用いることによって、外皮特有の香ばしさと、穀粉の胚乳や胚芽特有の香りや風味とが相まって、穀物特有の良好な風味を更に増大できる点でより好ましい。具体的には、小麦はイネ科コムギ属であるところ、小麦ふすまに加えて、小麦粉などの小麦由来の穀粉を用いることによって、小麦ふすまに由来する小麦特有の香ばしさと相まって、小麦粉に由来する小麦胚乳特有の甘い香りや良好な風味を増大できる点で更に好ましい。全混合物中の穀粉の混合量は、乾燥質量換算で、好ましくは5~98質量%、より好ましくは7~80質量%、更に好ましくは10~70質量%である。
【0038】
また目的とする飲食物に応じて、小麦ふすま及びパラチノース加熱処理物を含む混合物は、小麦ふすま以外の穀粉に加えて、他の原料を更に含むことができる。
他の原料としては、例えばグルテン等のタンパク質、未加工澱粉及び加工澱粉(アセチル化澱粉、エーテル化澱粉、酢酸澱粉、架橋澱粉、酸化澱粉等)等の澱粉類、砂糖及びオリゴ糖等の糖類、ショートニング、バター及びマーガリン等の油脂、イースト、酵母及び乳酸菌等の発酵用菌種、食塩、脱脂粉乳、増粘剤、乳化剤、pH調整剤、かん水、香辛料並びに膨張剤等の一種以上が挙げられる。このように得られた混合物は、いわゆる小麦ふすま及びパラチノース加熱処理物を含むミックスであり、好ましくは粉体の原料として用いられる。このミックスは、目的とする飲食品に応じて、各原料の含有量を適宜調整することができる。
【0039】
全混合物中の小麦ふすまの混合量は、乾燥質量換算で、好ましくは1.5~65質量%、より好ましくは5~65質量%、更に好ましくは8~63質量%である。イネ科穀物外皮をこのような量で混合することによって、食物繊維やマグネシウム及び鉄分などのミネラルを効率的に摂取できる飲食品を得ることができる。
【0040】
全混合物中のパラチノース加熱処理物の混合量は、乾燥質量換算で、好ましくは0.02~12質量%、より好ましくは0.03~11.5質量%である。パラチノース加熱処理物をこのような量で混合することによって、穀物外皮独特のえぐみを低減し、且つ穀物特有の風味を強調することができる。また、ベーカリー食品においては、上記2つの効果に加え、さらに柔軟性の向上が可能となる。
【0041】
また、穀物外皮である小麦ふすまの乾燥質量換算での含有量A2に対するパラチノース
加熱処理物の乾燥質量換算での含有量A1の質量比(A1/A2)は、好ましくは0.0005~0.5、より好ましくは0.001~0.5、更に好ましくは0.001~0.4である。このような混合割合で両者を混合することによって、穀物由来の良好な風味や食感を損なわずに、穀物由来のえぐみ等の苦さや雑味等の不快な風味を低減することができるとともに、パラチノース加熱処理物に由来する不快な風味が発現しにくいので、得られる飲食品は穀物由来の良好な風味や食感が効果的に発現したものとなる。
【0042】
小麦ふすま及びパラチノース加熱処理物を含む混合物は、これを更に加熱処理して、飲食品としての加工食品を製造することもできる。詳細には、小麦ふすま及びパラチノース加熱処理物と、好ましくは小麦粉などの穀粉、水、牛乳、豆乳、全卵、卵白、卵黄、生クリーム、かん水等のうち一種以上の調製用液体とを同時に又は任意の順序で加えて混合し、混合物としての粘土状生地(いわゆるドウ)又はペースト状生地(いわゆるバッター)を得る。その後、目的とする加工食品の形態となるように生地を成形して、必要に応じて該生地を乾燥、冷却又は発酵し、その後、焼成、蒸し調理、揚げ調理、茹で調理などの加熱処理を行って、加工食品を製造する。得られた加工食品は、常温で保存してもよく、冷蔵又は冷凍保存してもよく、あるいはそのまま喫食してもよい。
【0043】
加工食品を製造するにあたり、小麦ふすま含有ミックスを用いる場合、調製用液体のミックスへの添加量は、調製用液体として水を用いた場合において、調製する生地がドウの場合は、ミックス100質量部に対して25~200質量部程度が好ましく、調製する生地がバッターの場合は、ミックス100質量部に対して50~500質量部程度が好ましい。
【0044】
飲食品のうち、食品の形態としては、固形、半固形又は液状である。食品としては、具体的には、ベーカリー食品、麺類、ゼリー状食品や各種スナック類、チョコレート、ガム、飴、タブレット、カプセル、他の食材若しくは料理とともに喫食されるソース類、それ自体の喫食が目的とされるスープ類、乳製品、冷凍食品、インスタント食品、レトルト食品、サプリメントなどの各種加工食品、並びに調味料及びそれらの材料等が挙げられる。
【0045】
ベーカリー食品は、イネ科穀物外皮及びパラチノース加熱処理物を含み、且つ小麦粉などの穀粉を原料として含み、これに必要に応じてイーストや膨張剤(ベーキングパウダー等)、水、卵、乳等の調製用液体、食塩、砂糖、油脂等の副材料を加えて得られた発酵又は非発酵生地を、焼成、蒸し調理、揚げ調理、茹で調理などの加熱処理を行って得られる食品をいう。
ベーカリー食品の例としては、食パン、調理パン、蒸しパン等のパン類;スポンジケーキ、パンケーキ、ホットケーキ等のケーキ類;ワッフル、シュー、ビスケット、クッキー等の焼き菓子;ドーナツ等の揚げ菓子等が挙げられる。イネ科穀物外皮及びパラチノース加熱処理物を含むベーカリー食品は、外観に優れ、苦みやえぐみが少なく良好な風味を有し、且つ柔らかく良好な食感を有するとともに、健康増進が期待できるものとなる。
【0046】
飲食品の一形態である加工食品としてベーカリー食品を製造する場合には、小麦ふすまの乾燥質量換算での混合量は、目的とする加工食品の乾燥質量に対して、一層好ましくは5~65質量%、より一層好ましくは8~63質量%となるようにする。これに加えて、パラチノース加熱処理物の乾燥質量換算での混合量は、目的とする加工食品の乾燥質量に対して、一層好ましくは0.03~11.5質量%となるようにする。小麦ふすま及びパラチノース加熱処理物をそれぞれ上述の量で混合することによって、穀物外皮由来のえぐみが低減され、小麦などの穀物本来の甘い香りや香ばしさを良好に発現させることができ、柔軟性が高いベーカリー食品を得ることができる。
【0047】
麺類は、イネ科穀物外皮及びパラチノース加熱処理物を含み、且つ小麦粉などの穀粉類
を原料として含み、これらに水等の調製用液体を加え混練して得られた生地を成形して得られた生麺、またはその乾燥物(乾麺)、さらにこれらを加熱調理(例えば茹で調理)して得られる食品を指す。生地の成形の方法は、圧延、複合や切出し等の工程を含むロール製麺、押出、あるいはそれらの組み合わせなどを採用することができる。
麺類の具体例として、そば、中華麺、つけめん、焼きそば、素麺、冷麦、うどん、パスタ、麺皮等が挙げられる。
イネ科穀物外皮及びパラチノース加熱処理物を含む麺類は、苦みやえぐみが少なく良好な風味を有し、健康増進が期待できるものとなる。
【0048】
飲食品の一形態である加工食品として麺類を製造する場合には、小麦ふすまの乾燥質量換算での混合量は、目的とする加工食品の乾燥質量に対して、一層好ましくは5~65質量%、より一層好ましくは8~63質量%となるようにする。これに加えて、パラチノース加熱処理物の乾燥質量換算での混合量は、目的とする加工食品の乾燥質量に対して、一層好ましくは0.03~11.5質量%となるようにする。小麦ふすま及びパラチノース加熱処理物をそれぞれ上述の量で混合することによって、穀物外皮由来のえぐみが低減され、小麦などの穀物本来の甘い香りを良好に発現させた麺類を得ることができる。
【0049】
レトルト食品は、容器に密封包装された食用混合物をレトルト処理(加圧加熱殺菌処理)して得られる食品である。容器内に包装される食用混合物は、例えばソース類やスープ類などが挙げられる。レトルト処理は、本技術分野で用いられる通常の加熱条件を採用することができる。
【0050】
食用混合物を密封包装するために用いられる容器は、密封可能な形態であれば特に制限はなく、プラスチック、ガラス、金属若しくはこれらの組み合わせからなる袋体又は成形体等を用いることができ、より具体的には、プラスチック容器、瓶、缶、パウチ容器等が挙げられる。
【0051】
小麦ふすま等の穀物外皮を含むレトルト食品は、開放条件で加熱処理されるベーカリー食品や麺類と比較して、穀物外皮に由来するえぐみ等の不快な味やにおいが内部にこもりやすく、穀物外皮由来の不快な風味の発現に起因する食品の品質への影響が出やすい。この点に関して、本発明によれば、パラチノース加熱処理物をレトルト食品に含有させることによって、得られるレトルト食品は、穀物外皮由来のえぐみ等の不快な風味が効果的に低減され、他の原料由来の良好な風味が効果的に発現するとともに、健康増進が期待できるものとなる。
【0052】
飲食品の一形態である加工食品としてレトルト食品を製造する場合には、小麦ふすまの乾燥質量換算での混合量は、目的とする加工食品の乾燥質量に対して、一層好ましくは5~65質量%、より一層好ましくは8~63質量%となるようにする。これに加えて、パラチノース加熱処理物の乾燥質量換算での混合量は、目的とする加工食品の乾燥質量に対して、一層好ましくは0.03~11.5質量%となるようにする。小麦ふすま及びパラチノース加熱処理物をそれぞれ上述の量で混合することによって、穀物外皮由来のえぐみが包装容器内部に意図せずこもった場合でも、喫食者のえぐみの知覚が顕著に低減され、他の原料由来の良好な風味に優れたレトルト食品を得ることができる。
【0053】
また、小麦ふすま及びパラチノース加熱処理物を含む混合物は、飲食品としての加工飲料を製造することもできる。詳細には、小麦ふすま及びパラチノース加熱処理物を含む飲用混合物と、水、牛乳、豆乳、果汁、野菜汁、茶、コーヒー等の飲料液体とを同時に又は任意の順序で加えて分散又は溶解させて、加工飲料とすることができる。得られた加工飲料は、常温で保存してもよく、冷蔵又は冷凍保存してもよく、加熱処理してもよく、あるいはそのまま喫食してもよい。
【0054】
上述した具体的な飲食品の形態として、加工飲料の形態としては、茶飲料、コーヒー飲料、乳飲料、果汁飲料、炭酸飲料、アルコール飲料、清涼飲料等が挙げられる。
【0055】
以上のとおり、小麦ふすま等のイネ科穀粉外皮及びパラチノース加熱処理物を含む飲食品は、穀粉外皮に由来するえぐみ等の不快な味や風味を低減しつつ、穀物由来の甘い香りや香ばしさ等の良好な風味を強調することができる。また、小麦ふすま等のイネ科穀粉外皮及びパラチノース加熱処理物に加えて、小麦粉などの穀粉を更に含有させることによって、穀物由来の甘い香りや香ばしさ等の良好な風味を更に強調できるとともに、良好な食感及び風味を有する飲食品、好ましくは加工食品を得ることができる。またイネ科穀粉外皮として、小麦ふすまを用いた場合の好適な態様によれば、加工適性、外観、風味及び食感が向上するとともに、食物繊維やマグネシウム及び鉄分などのミネラルの摂取による健康増進効果を効率よく発揮させることができる。
【実施例0056】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。以下の表中、特に断りのない限り、「乾燥質量当たり」とは、目的とする飲食物の乾燥質量に対する、使用した原料の乾燥質量換算での質量割合を意味する。
【0057】
〔実施例1及び比較例1~4:パラチノース加熱処理物の有無〕
実施例1及び比較例1~4では、パラチノース加熱処理物の有無による食品への風味及び食感の影響を評価した。
【0058】
イネ科穀物外皮は、以下の方法で得た。
イネ科穀物として、白小麦であるASWを用い、これを精選してロール式粉砕機にて粉砕し、その粉砕物を目開き200μmの篩で分級して、篩上残存物として小麦ふすま画分を採取した。次いで、採取した小麦ふすま画分を、ターボミル(東京製粉機製作所製)を用いて衝撃的粉砕を行ったあと、この粉砕物に対して、特許第2784505号明細書に記載される粉粒体加熱装置を用いて飽和水蒸気を導入しながら、品温90℃で5秒間の条件で湿熱処理を行った。続いて、湿熱処理後の粉砕物を、衝撃式微粉砕機(ACMパルベライザー、ホソカワミクロン社製)を用いて微粉砕し、その後、目開き150μmの篩を用いて分級し、篩を通過する粒径150μm未満の分級物を分取して、イネ科穀物外皮としての粉末状の小麦ふすまを得た(平均粒径約90μm、水分量10質量%)。以下、この方法で得られたイネ科穀物外皮を「湿熱処理白小麦ふすま」ともいう。
【0059】
また、パンケーキの乾燥質量に対して、以下の風味変化化合物を、該化合物の乾燥質量換算での含有量が0.27質量%となるように添加した。
・実施例1:パラチノース加熱処理物(パラチノース加熱物、ロッテ株式会社)
・比較例1:非含有
・比較例2:パラチノース(未加熱物)(パラチノース、三井製糖株式会社)
・比較例3:シクロデキストリン(TB-50、日本食品化工株式会社)
・比較例4:アドバンテーム(スイートアップV-30、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)
【0060】
次いで、以下の手順(1)~(3)を行って、飲食物(加工食品)としてのパンケーキを製造した。
(1)以下の原料が混合された粉体原料を茶こしなどでふるった。
(2)ボウルに、以下の原料が混合された液体原料と、前記粉体原料とを、60秒間で120回手混ぜにより混合し、10分間常温常圧下で静置して、ペースト状の生地を得た。
(3)生地を180℃の銅板上に薄く流し入れ、該生地の各面を3分ずつ焼成して、パンケーキを得た。
【0061】
粉体原料、液体原料は以下の質量部(非乾燥質量)となるように使用した。風味変化化合物の混合割合は、上述のとおりとした。
<粉体原料>
湿熱処理白小麦ふすま 12.5
小麦粉(薄力粉) 26.87
砂糖 9
食塩 0.15
膨張剤 0.58
pH調整剤 0.9
<液体原料>
卵 12.5
牛乳 37.5
【0062】
〔喫食時の評価〕
実施例1、及び比較例1~4のパンケーキを10名の専門パネラーに喫食させて、えぐみ、風味(香ばしさや甘い香り)、及び食感(柔軟性)について、比較例1のものを対照例(各評価3点)として、以下の基準で評価を行った。点数の算術平均値が高いほど、優れた効果を有することを示す。点数の算術平均値を以下の表1に示す。
【0063】
<えぐみの評価基準>
5点:対照例よりも穀物外皮由来のえぐみが弱く、とても良好である。
4点:対照例よりも穀物外皮由来のえぐみがやや弱く、良好である。
3点:対照例と同等であり、問題のないえぐみである。
2点:対照例よりも穀物外皮由来のえぐみがやや強く、不良である。
1点:対照例よりも穀物外皮由来のえぐみが強く、とても不良である。
【0064】
<風味の評価基準>
5点:対照例よりも穀物(小麦)らしい良好な風味が強く、とても良好である。
4点:対照例よりも穀物(小麦)らしい良好な風味がやや強く、良好である。
3点:対照例と同等であり、問題のない風味である。
2点:対照例よりも穀物(小麦)らしい風味がやや弱く、風味が不良である。
1点:対照例よりも穀物(小麦)らしい風味が弱く、風味がとても不良である。
【0065】
<柔軟性の評価基準>
5点:対照例よりも柔軟性が感じられ、食感がとても良好である。
4点:対照例よりも柔軟性が感じられ、食感が良好である。
3点:対照例と同等であり、問題のない食感である。
2点:対照例よりもやや硬く、食感が不良である。
1点:対照例よりも硬く、食感がとても不良である。
【0066】
【表1】
【0067】
〔実施例2~5及び比較例5:ベーカリー食品(1)〕
湿熱処理白小麦ふすまに代えて、イネ科穀物外皮として、以下のものを用いた。
イネ科穀物として赤小麦である1CWを用い、これを精選してロール式粉砕機にて粉砕し、その粉砕物を目開き200μmの篩で分級して、篩上残存物として小麦ふすま画分を採取した。これを特開2004-9022号公報に記載の熱処理撹拌装置と同様の構成の装置を用いて、品温が120℃となるように25分間加熱して、乾熱処理を行い、粉末状の小麦ふすまを得た(平均粒径250μm、水分量10質量%)。以下、この方法で得られたイネ科穀物外皮を「乾熱処理赤小麦ふすま」ともいう。
【0068】
そして、乾熱処理赤小麦ふすまとパラチノース加熱処理物とを以下の表2に示す割合となるように調製以外は、実施例1と同様の方法にて、目的とするパンケーキを得た。粉体原料、液体原料は以下の質量部(非乾燥質量)となるように使用した。これに加えて、パンケーキの乾燥質量に対するパラチノース加熱処理物の乾燥質量換算での質量割合が表2に示される値となるようにパラチノース加熱処理物を配合した。なお本実施例では小麦ふすまの配合量を一定にしているので、パラチノース加熱処理物の含有割合の増加に伴って、小麦ふすまの含有割合は相対的に減少する。
<粉体原料>
乾熱処理赤小麦ふすま 12.5
小麦粉(薄力粉) 26.87
砂糖 9
食塩 0.15
膨張剤 0.58
pH調整剤 0.9
<液体原料>
卵 12.5
牛乳 37.5
【0069】
実施例2~5のパンケーキにおいて、えぐみ、風味(小麦由来の香ばしさや甘い香り)、及び食感(柔軟性)の評価を、パラチノース加熱処理物を非含有とした比較例5のものを対照例(各評価3点)として、上述した〔喫食時の評価〕と同様の方法で評価した。結果を以下の表2に示す。
【0070】
【表2】
【0071】
〔実施例6~10:ベーカリー食品(2)〕
乾熱処理赤小麦ふすまに代えて、湿熱処理白小麦ふすまを用い、且つ湿熱処理白小麦ふすまとパラチノース加熱処理物とを以下の表3に示す割合となるように調製した以外は、実施例1と同様の方法にて、目的とするパンケーキを得た。粉体原料、液体原料は実施例2と同様の質量比となるように使用した。
実施例6~10のパンケーキにおいて、えぐみ、風味(小麦由来の香ばしさや甘い香り)、及び食感(柔軟性)の評価を、パラチノース加熱処理物を非含有とした比較例1のものを対照例(各評価3点)として、上述した〔喫食時の評価〕と同様の方法で評価した。結果を以下の表3に示す。表3には、比較例1の結果を再掲する。
【0072】
【表3】
【0073】
〔実施例11~13及び比較例6:ベーカリー食品(3)〕
以下の手順(1)~(5)を行って、飲食物(加工食品)としての食パンを製造した。
(1)以下の割合で原料を配合し、ミキサーで、100rpmで4分、200rpmで8分、280rpmで1分、の順に混合して、食用混合物としての粘土状生地を得た。
(2)得られた生地を、1気圧、27℃、湿度75%RHにて1時間発酵させた。
(3)発酵後の生地を所定の容量に分割し、27℃で25分静置した。
(4)前記(3)の生地を所定の形状に成形し、1気圧、38℃、湿度85%RHにて
50分間発酵させた。
(5)前記(4)の生地を、217℃で31分間焼成した。
【0074】
原料は以下の質量部(非乾燥質量)となるように使用した。これに加えて、食パンの乾燥質量に対するパラチノース加熱処理物の乾燥質量換算での質量割合が表4に示される値となるようにパラチノース加熱処理物を配合した。なお本実施例では小麦ふすまの配合量を一定にしているので、パラチノース加熱処理物の含有割合の増加に伴って、小麦ふすまの含有割合は相対的に減少する。
<原料>
湿熱処理白小麦ふすま 20
小麦粉(強力粉) 80
グルテン 3
パン用品質改良剤 0.1
イースト 3
塩 2
砂糖 8
脱脂粉乳 2
油脂 10
水 74
【0075】
実施例11~13の食パンにおいて、えぐみ及び風味(小麦由来の香ばしさや甘い香り)の評価を、パラチノース加熱処理物を非含有とした比較例6のものを対照例(各評価3点)として、上述した〔喫食時の評価〕と同様の方法で評価した。結果を以下の表4に示す。
【0076】
【表4】
【0077】
〔実施例14~15及び比較例7:麺類(1)〕
以下の手順(1)~(3)を行って、飲食物(加工食品)としての中華麺を製造した。
(1)以下の割合で原料を配合し、製麺ミキサーで、90rpmで5分、60rpmで5分、の順に混捏して、麺生地を得た。
(2)前記(1)の生地を常法に従って複合及び圧延して厚さ約1.5mmの麺帯としたあと、20角の切り刃で1.5mmの厚みに切断して、生麺を得た。
(3)前記(2)の生麺を、約100℃の熱湯で90秒間茹で調理した。
【0078】
原料は以下の質量部(非乾燥質量)となるように使用した。これに加えて、中華麺の乾燥質量に対するパラチノース加熱処理物の乾燥質量換算での質量割合が表5に示される値
となるようにパラチノース加熱処理物を配合した。なお本実施例では小麦ふすまの配合量を一定にしているので、パラチノース加熱処理物の含有割合の増加に伴って、小麦ふすまの含有割合は相対的に減少する。
<原料>
湿熱処理白小麦ふすま 40
小麦粉(準強力粉) 52
グルテン 8
粉末かんすい 1.5
食塩 1
水 48
【0079】
実施例14~15の中華麺において、えぐみ及び風味(小麦由来の香ばしさや甘い香り)の評価を、パラチノース加熱処理物を非含有とした比較例7のものを対照例(各評価3点)として、上述した〔喫食時の評価〕と同様の方法で評価した。結果を以下の表5に示す。
【0080】
【表5】
【0081】
〔実施例16~20及び比較例8:麺類(2)〕
以下の手順(1)~(4)を行って、飲食物(加工食品)としてのそばを製造した。
(1)以下の割合で原料を配合し、ミキサーを用いて、32rpmで5分間混錬し、食用混合物としての粘土状生地を得た。
(2)得られた生地を、麺用ロールを用いて、厚さ3.0mmの麺帯を作成し、複合を2回行った後、圧延比70%となるように、ロールギャップを3.0mm、2.1mm、1.5mm、1.0mm,0.7mmの順に変更して5段階で圧延した。
(3)前記(2)の生地を20角の切り刃で1.3mmの厚みに切断して、生麺を得た。
(4)前記(3)の生麺を、約100℃の熱湯で5分間茹で調理した。
【0082】
原料は以下の質量部(非乾燥質量)となるように使用した。これに加えて、そばの乾燥質量に対するパラチノース加熱処理物の乾燥質量換算での質量割合が表6に示される値となるようにパラチノース加熱処理物を配合した。なお本実施例では小麦ふすまの配合量を一定にしているので、パラチノース加熱処理物の含有割合の増加に伴って、小麦ふすまの含有割合は相対的に減少する。
<原料>
湿熱処理白小麦ふすま 25
小麦粉(強力粉) 40
そば粉 30
グルテン 5
5質量%食塩水 33
【0083】
実施例16~20のそばにおいて、えぐみ及び風味(小麦由来の香ばしさや甘い香り)の評価を、パラチノース加熱処理物を非含有とした比較例8を対照例(各評価3点)として、上述した〔喫食時の評価〕と同様の方法で評価した。結果を以下の表6に示す。
【0084】
【表6】
【0085】
〔実施例21~24及び比較例9:麺類(3)〕
国際公開2018/021448号公報の製造例1に記載の方法に準拠して、以下の手順(1)~(3)を行って、飲食物(加工食品)としてのパスタを製造した。
(1)以下の割合で配合した原料を、ミキサーを用いて、80rpmで5分間混錬し、食用組成物としての粘土状生地を得た。
(2)得られた生地を、-600mmHgの減圧条件下、120kgf/cm2の圧力
条件で押出成形して、太さ1.8mmの生麺を得た。
(3)前記(2)の生麺を、約100℃の熱湯で5分間茹で調理し、その後水冷した。
【0086】
原料は以下の質量部(非乾燥質量)となるように使用した。これに加えて、パスタの乾燥質量に対するパラチノース加熱処理物の乾燥質量換算での質量割合が表7に示される値となるようにパラチノース加熱処理物を配合した。なお本実施例では小麦ふすまの配合量を一定にしているので、パラチノース加熱処理物の含有割合の増加に伴って、小麦ふすまの含有割合は相対的に減少する。
<原料>
湿熱処理白小麦ふすま 70
小麦粉(デュラムセモリナ) 125
酢酸タピオカ澱粉 20
グルテン 8
水 73.6
【0087】
実施例21~24のパスタにおいて、えぐみ及び風味(小麦由来の香ばしさや甘い香り)の評価を、パラチノース加熱処理物を非含有とした比較例9を対照例(各評価3点)として、上述した〔喫食時の評価〕と同様の方法で評価した。結果を以下の表7に示す。
【0088】
【表7】
【0089】
〔実施例25~31及び比較例10:レトルト食品〕
以下の手順(1)~(7)を行って、飲食物(加工食品)としてのレトルト食品(スープ)を製造した。
(1)湿熱処理白小麦ふすまを予め2倍量の水に分散し、この分散液にパラチノース加熱処理物を添加し、第1分散液とした。
(2)前記(1)とは別に、フィチン酸を予め2倍量の水に溶解し、第2溶液とした。
(3)第1分散液とトマトペーストとを鍋に入れ、混合した。
(4)次いで、第2溶液及び残りの原料を鍋に入れて混合し、食用組成物としての食用液体を得た。
(5)前記(4)の食用液体を品温80℃に加熱した。
(6)前記(5)の食用液体をパウチ容器に充填した。
(7)前記(6)のパウチ充填された食用液体に対し、レトルト処理(123℃、22分)を行った。
【0090】
原料は以下の質量部(非乾燥質量)となるように使用した。これに加えて、スープの乾燥質量に対するパラチノース加熱処理物の乾燥質量換算での質量割合が表8に示される値となるようにパラチノース加熱処理物を配合した。なお本実施例では小麦ふすまの配合量を一定にしているので、パラチノース加熱処理物の含有割合の増加に伴って、小麦ふすまの含有割合は相対的に減少する。
<原料>
湿熱処理白小麦ふすま 8.5
トマトペースト 7
調味料及び香辛料 2.1(総量として)
牛乳 10
水 72.4
【0091】
実施例25~31のスープにおいて、えぐみの評価を、パラチノース加熱処理物を非含有とした比較例10を対照例(各評価3点)として、上述した〔喫食時の評価〕と同様の方法で評価した。結果を以下の表8に示す。
【0092】
【表8】
【0093】
表1~表8に示すように、イネ科穀物外皮としての小麦ふすまと、パラチノース加熱処理物とを含む飲食物は、いずれもえぐみが低減されていることが判る。特に、小麦粉が含まれるベーカリー食品や麺類等の加工食品は、ふすま由来のえぐみが低減されながらも、小麦由来の香ばしさや甘い香りが阻害されることなく十分に強調され、喫食者の食欲をそそる食品となっていることが判る。また、小麦ふすまを含むレトルト食品は、食品内部でのえぐみのこもりが知覚されづらく、えぐみが低減され、品質が高いことも判る。