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特開2022-150937サンドイッチの製造方法、及びサンドイッチ用パンの製造方法
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  • 特開-サンドイッチの製造方法、及びサンドイッチ用パンの製造方法 図1
  • 特開-サンドイッチの製造方法、及びサンドイッチ用パンの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150937
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】サンドイッチの製造方法、及びサンドイッチ用パンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A21D 2/38 20060101AFI20220929BHJP
   A21D 13/00 20170101ALI20220929BHJP
【FI】
A21D2/38
A21D13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021053756
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】301049777
【氏名又は名称】日清製粉株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000226998
【氏名又は名称】株式会社日清製粉グループ本社
(71)【出願人】
【識別番号】398012306
【氏名又は名称】株式会社日清製粉ウェルナ
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚本 一民
(72)【発明者】
【氏名】貴島 聡
(72)【発明者】
【氏名】菊池 洋介
(72)【発明者】
【氏名】福澤 聡真
【テーマコード(参考)】
4B032
【Fターム(参考)】
4B032DB01
4B032DG02
4B032DG03
4B032DP67
(57)【要約】      (修正有)
【課題】具材を挟んだ状態で流通した場合でも、食感の劣化や小麦ふすまのえぐみが生じにくいサンドイッチの製造方法、およびサンドイッチ用パンの製造方法を提供する。
【解決手段】サンドイッチの製造方法は、2枚のパンの間に具材を配する工程を有し、前記各パンとして、穀粉類100質量部中、白小麦のふすまを10~40質量部含み、前記ふすまとして熱処理されたものを用いる。平均粒径が200μm以下の前記ふすまを用いることも好適である。前記白小麦として、オーストラリア・スタンダード・ホワイト及びプライムハードのうち一種以上を用いることも好適である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚のパンの間に具材を配する工程を有し、
前記各パンは、穀粉類100質量部中、白小麦のふすまを10~40質量部含み、
前記ふすまとして熱処理されたものを用いる、サンドイッチの製造方法。
【請求項2】
平均粒径が200μm以下の前記ふすまを用いる、請求項1の製造方法。
【請求項3】
前記白小麦として、オーストラリア・スタンダード・ホワイト及びプライムハードのうち一種以上を用いる、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
湿熱処理された前記ふすまを用いる、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
厚みが0.5~5.5cmである前記パンを用いる、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
2枚のパンの間に具材を配する前記工程に先立ち、
スライサーを用いて、前記厚みを有する前記パンを得る工程を有する、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
2枚のパンの間に具材を配した後、
前記パンどうしを前記具材が配されていない領域で圧着させる工程を更に有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
2枚のパンの間に具材を配したサンドイッチを包装袋に収容する工程を更に備え、
前記サンドイッチは、包装袋に収容された状態で流通されるものである、請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
穀粉類100質量部中、白小麦のふすまを10~40質量部含む生地を焼成する工程を有し、
前記ふすまとして熱処理されたものを用いる、サンドイッチ用パンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンドイッチの製造方法、及びサンドイッチ用パンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康意識の高まりから、食物繊維、ビタミン、ミネラルなどの栄養素や、機能性成分に富み、良好な風味を有する小麦ふすまなどの穀物外皮を用いて、パンや焼き菓子等のベーカリー食品、麺類等の加工飲食品が製造されている。このような穀物外皮は、穀物らしい良好な風味を喫食者に知覚させることができるが、外皮独特のえぐみ等の不快な苦味が発現しうる。特に、パンに他の具材を挟んだ状態で保管流通されるサンドイッチは、具材中の水分等によってその食感や風味が変化する可能性があるので、他のベーカリー食品とは異なる特性が望まれる。
【0003】
本出願人は先に、二次加工性に優れ、二次加工品における外観、風味および食感の良好な小麦ふすまを効率良く製造する方法を提案した(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献2には、風味、食感、外観などに優れた美味なパンを製造することを目的として、赤小麦由来の小麦粉100質量部に対して、白小麦由来の小麦ふすまを4質量部以上25質量部以下の比率で混合したパン用小麦粉組成物が開示されている。
【0005】
特許文献3には、ふすま臭を低減することを目的として、小麦としてウエスタンホワイトを用い、該小麦から小麦粉を得るための製粉工程で分離されるふすまの画分のうち、中間粒度画分のふすまを採取して焙煎した後、粒度分布における中位径が100μm以下になるように粉砕する微粉砕ふすまの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-243984号公報
【特許文献2】特開2009-254240号公報
【特許文献3】特開2017-12099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的にサンドイッチは包装状態で保管流通されるところ、サンドイッチに用いられる小麦ふすま等の原料の香りや、具材由来の水分がサンドイッチ内にこもってしまうことに起因して、サンドイッチに用いられるパンは風味や食感に影響を及ぼしやすい。
【0008】
特許文献1の製造方法は、二次加工品における外観、風味および食感の良好な小麦ふすまを効率良く製造可能であるが、これをサンドイッチの原料として採用した場合の特性について何ら検討されていない。また、特許文献2及び3の技術は、得られる小麦ふすまの二次加工性や得られる二次加工物の食感も満足できるものではなく、またこれをサンドイッチの原料とした場合の特性についても何ら検討されていない。
【0009】
したがって、本発明の課題は、具材を挟んだ状態でも、小麦ふすまのえぐみが生じにくく且つ食感の劣化が生じにくいサンドイッチ及びサンドイッチ用パンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、2枚のパンの間に具材を配する工程を有し、
前記各パンは、穀粉類100質量部中、白小麦のふすまを10~40質量部含み、
前記ふすまとして熱処理されたものを用いる、サンドイッチの製造方法を提供するものである。
【0011】
また本発明は、穀粉類100質量部中、白小麦のふすまを10~40質量部含む生地を焼成する工程を有し、
前記ふすまとして熱処理されたものを用いる、サンドイッチ用パンの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、具材を挟んだ状態でも、小麦ふすまのえぐみが生じにくく且つ食感の劣化が生じにくいサンドイッチが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1(a)は、本発明の方法によって得られるサンドイッチの一実施形態での模式的な平面図であり、図1(b)は図1(a)のI-I線での模式的な断面図である。
図2図2(a)は、本発明の方法によって得られるサンドイッチの別の実施形態での模式的な平面図であり、図2(b)は図2(a)のII-II線での模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明を、その好ましい実施形態に基づいて説明する。以下の説明では、「X~Y」(X及びYは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「X以上Y以下」を意味し、「X~Y[Z]」(X及びYは任意の数字、[Z]は任意の単位)と記載した場合、特に断らない限り「X[Z]以上Y[Z]以下」を意味する。
【0015】
本発明は、サンドイッチを製造する方法、及びサンドイッチに好適に用いられるパン(食パン)の製造方法に関する。本明細書におけるサンドイッチとは、独立分離した2枚のパンの間に具材を配したものを指し、例えばホットドッグ等といった独立分離されていない1つのパンに切り込みを入れて該切り込みに具材を収容したものは本発明から除外される。
【0016】
また本明細書におけるサンドイッチは、例えば図1(a)及び(b)に示されるように、サンドイッチ10を構成する各パン20,20の周縁部40が開放されてサンドイッチの側部から具材30が視認できる態様であってもよい。
これに代えて、図2(a)及び(b)に示されるように、各パン20,20どうしが周縁部40の位置で圧着される等して、サンドイッチの側部から具材30が視認できない態様であってもよい。説明の便宜上、図1(a)及び図2(a)に示すサンドイッチは正方形状の平面視形状で図示されているが、この形態に限られず、真円形や楕円形等の円形状、あるいは三角形、矩形、五角形等の幾何学形状であってもよい。
【0017】
以下に、サンドイッチの製造方法の一実施形態を説明する。本製造方法は、少なくとも2枚のパンの間に具材を配する工程を経てサンドイッチを得るものである。また2枚のパンの間に具材を配する工程に先立ち、小麦ふすまと穀粉類とを含む生地を焼成して、サンドイッチ用パンを得る工程を備えることも好ましい。つまり、サンドイッチの製造方法の一工程として、サンドイッチ用パンの製造方法が組み込まれることが好ましい。
【0018】
以下の説明では、説明の便宜上、2枚のパンのみを用い、2枚のパンの間に具材を配す
る態様を例にとり説明するが、2枚のパンの間に具材を配する工程を有していれば、3枚以上のパンを用いたり、2種以上の具材を用いたりして、本発明のサンドイッチとすることは妨げられない。例えば、第1のパン、第2のパン及び第3のパンを用い、第1のパンと第2のパンとの間に第1の具材を配するとともに、第2のパンと第3のパンとの間に第1の具材と同一の又は異なる具材を更に配する等の態様も本発明に包含される。また以下の説明は、3枚以上のパンを用いたり、2種以上の具材を用いたりした場合であっても、適宜適用可能である。
【0019】
まず、2枚のパンの間に具材を配する工程に先立ち、サンドイッチ用パンの製造工程を以下に説明する。サンドイッチ用パンの製造工程の好適な一実施形態として、白小麦ふすまを得る工程、及び白小麦ふすまと穀粉類とを混合した生地を焼成してパンを得る工程を有し、好ましくは該パンを切断する工程を更に有する。
【0020】
まず、原料となる小麦の穀粒を粉砕し、胚乳及び胚芽を分離して、穀物外皮である小麦ふすまを得る。粉砕に用いられる小麦の穀粒は、穀粒に加水して調質してもよく、又は加水調質せずに粉砕してもよい。穀粒粉砕物から小麦ふすま画分を採取する方法は特に制限されず、例えば篩分け等の公知の分級方法により、穀粒粉砕物を、小麦ふすま画分とそれ以外の成分とに分離し、小麦ふすま画分を採取する方法を利用できる。
【0021】
穀粒の粉砕は、本技術分野で通常用いられる粉砕方法を用いることができ、例えば、ロール式粉砕、衝撃式粉砕、気流式粉砕等の方法を用いることができる。穀粒の粉砕は、1回のみ行ってもよく、同一の又は異なる粉砕方法で複数回行ってもよい。例えば、ロール式粉砕と衝撃式粉砕とを組み合わせてこの順で実施してもよく、ロール式粉砕を多段階で複数回行っても良い。また、衝撃式粉砕に用いる粉砕機としては、衝撃板と回転ローター間で機械的衝撃により粉砕を行うものであれば特に限定されない。穀粒の粉砕効率とふすまの分離効率とを両立して高める観点から、ロール式粉砕を採用することが好ましい。
【0022】
本発明は、サンドイッチ用パンの製造方法として、イネ科コムギ属の一種である小麦を原料として得られる小麦ふすまを原料として用いる。一般的に、小麦頴果(小麦の穀粒)は、胚乳部、外皮部(外皮及び種皮)並びに胚芽(胚部)に大別されるところ、小麦穀粒を粉砕し、胚乳部及び胚芽を除去して得られた外皮部由来の画分が、小麦ふすまとなる。
【0023】
小麦は、その穀粒を視認したときに観察される色に応じて、赤小麦と白小麦との二つの種類に大別される。赤小麦は、外皮部に赤色色素を含有する小麦であり、小麦穀粒を視認したときに、赤色、赤褐色又は褐色として観察される。一方、白小麦は、外皮部に赤色色素を略含有しない小麦であり、小麦穀粒を視認したときに、白色又は淡黄色として観察される。これらのうち、小麦ふすまの原料として白小麦を用いることが好ましい。白小麦を用いることによって、パンの加工適性を高めることができ、また、得られるパンは、サンドイッチの状態で保管流通した場合でも、小麦外皮である小麦ふすまに由来する苦みやえぐみ等の不快な味が低減されて風味が良好になり、食感も滑らかなものとなることに加えて、外観にも優れる。
【0024】
本発明に用いられる白小麦の具体例としては、普通小麦では、オーストラリア・スタンダード・ホワイト(ASW、オーストラリア産)、プライムハード(PH、オーストラリア産)、ソフトホワイト(SW、アメリカ合衆国産)、ウエスタンホワイト(WW、アメリカ合衆国産)、デュラム小麦(世界各国で生産)等が挙げられる。これらの白小麦は、例えば遺伝学的特徴で適宜選別することができる。
【0025】
また普通小麦は、小麦穀粒の硬さに応じて、硬質小麦と、軟質小麦と、硬質と軟質との中間の硬さを有する中間質小麦との三つの種類に大別される。これらの種類のうち、得ら
れる小麦ふすま含有パンの風味及び食感を更に向上させる観点から、白小麦のうち、硬質小麦又は中間質小麦に分類される白小麦を用いることが好ましく、中間質小麦に分類される白小麦を用いることがより好ましい。
上述した白小麦且つ普通小麦を例にとると、硬質小麦としてはPH等が挙げられ、中間質小麦としてはオーストラリア・スタンダード・ホワイト等が挙げられ、軟質小麦の具体例としてはウエスタンホワイト等が挙げられる。つまり、中間質小麦に分類される白小麦として、ASW等が好ましく用いられる。
【0026】
すなわち、サンドイッチの製造に用いられる小麦ふすまのうち、白小麦由来の小麦ふすま(白小麦ふすま)を用いることが好ましく、ASW及びPHのうち少なくとも一種を用いることがより好ましく、ASWを用いることが更に好ましい。このような白小麦ふすまをサンドイッチ用パンの原料として用いることによって、加工時における取り扱いの容易性、穀物らしい良好な風味の発現、及び健康増進の観点から有用なものである。また、具材を挟んだサンドイッチの状態で保管流通させた場合であっても、小麦ふすま由来のえぐみが生じにくく、且つパンを含むサンドイッチの食感が良好なものとなる。
【0027】
このようにして得られた白小麦ふすま画分は、これをそのまま小麦ふすまとしてパンの原料に用いてもよく、あるいは後述する各工程のうち少なくとも一つを更に行った後で得られた処理物をパンの原料としてもよい。すなわち、白小麦ふすまは、白小麦の外皮部由来の画分をそのまま用いたもの、並びに、該画分に対して更に粉砕、分級、熱処理等を施した小麦ふすま加工品の双方を包含する。いずれの形態であっても、小麦ふすま及びこれを用いたパン、ひいてはサンドイッチの高い品質を得る観点から、白小麦ふすまの水分量は3~15質量%であることが好ましい。
【0028】
白小麦ふすまは、乾熱処理及び湿熱処理などの熱処理が施されたものを用いることが好ましく、湿熱処理されたものを用いるであることがより好ましい。このような熱処理が施されていることによって、サンドイッチ用パン及びサンドイッチを製造する際の加工性が更に改善される。これに加えて、得られるパン及びこれを用いたサンドイッチに穀物らしい良好な風味が際立ち、且つ具材を挟んだ状態で保管流通しても食感が一層良好なものとなる。
【0029】
また、熱処理工程を経ることによって、白小麦ふすまを細かく粉砕することができるので、白粒径の小さい小麦ふすまを生産性高く得る点で有利である。また、熱処理工程を経ることによって、アミラーゼやプロテアーゼなどの各種酵素の活性を低減、あるいは失活させることができるため、パンの加工性及び食感を更に向上できる点で特に有利である。
白小麦ふすまに熱処理が施されているか否かの判断は、例えば酵素活性の測定やグルテンバイタリティの測定することによって行うことができる。具体的には、酵素活性を例にとると、熱処理された白小麦ふすまは未加熱の白小麦ふすまよりも酵素活性が少ないか、又は検出限界未満であるので、この点で区別可能である。
【0030】
熱処理として乾熱処理を行う場合、白小麦ふすまの品温が好ましくは80~200℃、更に好ましくは90~150℃となるようにして、好ましくは1~120分間、更に好ましくは3~50分間処理を行う方法を例示できる。乾熱処理においては、例えば特開2004-9022号公報に記載されている熱処理撹拌装置と同様の構成を有する装置に小麦ふすまを導入して、前記温度及び時間になるように行うことができる。この熱処理撹拌装置は、被処理物を収容する円筒状容器と、該容器の内部に備えられた中空構造の回転シャフトと、該シャフトに連通して形成された中空のパイプスクリューと、回転シャフト及びパイプスクリュー内に蒸気を供給する蒸気供給源とを備え、回転シャフト及びパイプスクリュー内に蒸気を供給して生じた伝熱を、回転シャフト及びパイプスクリューを介して被処理物に伝播させて、乾熱処理できるように構成されている。
【0031】
熱処理として湿熱処理を行う場合、水蒸気を導入する密閉系容器内において、白小麦ふすまの品温が、好ましくは80~110℃、更に好ましくは85~95℃となるようにして、好ましくは1~60秒間、更に好ましくは3~30秒間滞留させることにより行う方法を例示できる。湿熱処理においては、例えば特許第2784505号公報に記載の粉粒体加熱装置に、被処理物である小麦ふすまと、飽和水蒸気とを導入して前記温度及び時間になるように行うことができる。この粉粒体加熱装置は、飽和水蒸気の吹込口を有し、被処理物を収容する円筒形圧力容器と、該容器の一端に配された投入口から投入された粉粒体を撹拌しながら、該容器の他端に配された排出口に向けて移送するように、円筒内径に近い寸法の複数の棒状羽根を回転軸上に有する撹拌手段とを備えている。特に、湿熱処理を行うことによって、加工性が更に改善され、また、得られるパン、及びこれを用いたサンドイッチの風味及び食感がより一層良好なものとなる。
【0032】
白小麦ふすまを用いてサンドイッチ用のパンを製造したときに、得られるパン、ひいては該パンを用いたサンドイッチに滑らかで良好な食感を発現させる観点から、小麦ふすまは、その平均粒径が好ましくは10~200μm、より好ましくは20~150μm、更に好ましくは30~120μm、一層好ましくは50~100μmである。本発明における平均粒径は、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置(例えば、日機装株式会社製、「マイクロトラック粒径分布測定装置9200FRA」)を用いて乾式で測定したときの累積体積50容量%における体積累積粒径D50を指す。
【0033】
また粒度分布をシャープにして、パンのスライス時におけるざらつきや欠けを低減して、滑らかな食感を有するパンを効率的に得る観点から、白小麦ふすまは、好ましくは平均粒径200μm以下、より好ましくは平均粒径150μm以下、更に好ましくは120μm以下、一層好ましくは100μ以下のものを用いることが好ましい。このような平均粒径を有する白小麦ふすまは、例えば篩や空気分級機等の分級によって容易に得ることができる。
【0034】
篩を用いて小麦ふすまの分級を行う場合、篩の目開きとして、好ましくは150~200μm、より好ましくは150~180μm、更に好ましくは150μmを用いて、篩を通過した画分を採取する。
また小麦ふすまの分級を空気分級機を用いて行う場合、粒径150~200μmを境界とした画分を精度よく分離可能な分級機を用いて、好ましくは平均粒径200μm以下、より好ましくは平均粒径150μm以下の画分を採取する。省スペース化の観点から、空気分級機内蔵の衝撃式粉砕機を用いて粉砕及び分級を行うことが好ましい。空気分級機内蔵の衝撃式微粉砕機としては、例えばホソカワミクロン社製のACMパルベライザー(商品名)を挙げることができる。
【0035】
えぐみが少なく且つ食感が良好なパンを製造可能な小麦ふすまを効率よく得る観点から、熱処理が行われた白小麦ふすまを微粉砕して、微粉砕物を得ることが好ましい。この微粉砕工程は、衝撃式微粉砕に供して行うことも好ましい。微粉砕処理は、白小麦ふすまの全質量に対する平均粒径200μm未満の画分の割合が50~100質量%程度となるように行うことが好ましく、70~100質量%となるように行うことが更に好ましい。
【0036】
上述の工程を経て、サンドイッチ用パンの製造原料として好適な小麦ふすまを得ることができる。詳細には、白小麦の穀粒を粉砕して小麦ふすま画分を得て、該画分を熱処理し、熱処理した画分を更に微粉砕することによって、サンドイッチ用パンの原料に好適な諸物性を有する白小麦ふすまを得ることができる。このように得られた白小麦ふすまは、典型的には粉状物である。
【0037】
次いで、原料である白小麦ふすまと、白小麦ふすま以外の穀粉類とを混合して、パン用の生地を得る。混合方法は、混合対象の原材料が均一に混合できるような方法であれば特に限定されず、本技術分野において通常用いられる公知の混合装置を用いることができる。
【0038】
生地中の白小麦ふすまの含有量は、該ふすまを含む穀粉類の総量100質量部に対して、好ましくは10~40質量部、より好ましくは10~30質量部、更に好ましくは10~25質量部である。白小麦ふすまをこのような量で混合することによって、一般の小麦ふすまよりもパンのスライス性に優れ、パンのスライス面が均一となりやすい。これに加えて、しっとりとした質感を有し、柔軟性が高く、歯切れが良く且つ口溶けが良いパン及びサンドイッチを得ることができる。
【0039】
白小麦ふすま以外の穀粉類としては、穀粉及び澱粉のうち少なくとも一種を用いることができる。
穀粉としては、上述の各種小麦やデュラム小麦などの小麦類、米類、大麦類、トウモロコシ類、モロコシ類、ヒエ類、アワ類、キビ類、オーツ麦類(カラス麦類)及びライ麦類等の各種穀類の粉末が挙げられ、好ましくは上述の各種小麦やデュラム小麦などの小麦類の粉末、すなわち小麦粉である。特に、穀粉として小麦粉などの小麦由来の穀粉を用いることによって、パンをサンドイッチに用いた場合でも、小麦ふすまに由来するえぐみを低減しながらも、小麦特有の香ばしさを発現させつつ、小麦特有の甘い香りや良好な風味を増大でき、またパンの食感を良好に維持できる点で更に好ましい。
澱粉としては、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、米澱粉などの未加工澱粉、及び前記の各未加工澱粉に、エーテル化、エステル化、アセチル化、架橋処理、酸化処理等の処理を施したもの等の各種加工澱粉等が挙げられる。
これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
また目的とするサンドイッチの種類や形態に応じて、白小麦ふすま及び白小麦ふすま以外の穀粉類に加えて、これら以外の他の原料を更に含むことができる。
他の原料としては、例えば水や牛乳、豆乳等の調製用液体、グルテン等のタンパク質、砂糖及びオリゴ糖等の糖類、ショートニング、バター及びマーガリン等の油脂、イースト、酵母及び乳酸菌等の発酵用菌種、食塩、脱脂粉乳、増粘剤、乳化剤、pH調整剤、香辛料並びに膨張剤等の一種以上が挙げられる。これらの原料は、目的とするサンドイッチに応じて、各原料の含有量を適宜調整することができる。
【0041】
調製用液体の添加量は、調製用液体として水を用いた場合において、調製する生地がドウの場合は、調製用液体以外の原料100質量部に対して35~100質量部程度が好ましい。
【0042】
このように得られた生地は、そのまま焼成に供してもよく、あるいは従来の製パン方法に準じて発酵を行った後に焼成に供してもよい。
具体的には、白小麦ふすま及び穀粉類、並びに好ましくは調製用液体を含む各種原料を混捏し、パン生地を形成する。その後、一次発酵を行って、分割し、必要に応じて発酵生地を丸めたり、ベンチタイムをとったりする。その後、所定の形状に成形した後、ホイロ発酵(二次発酵)を行う。原料の混捏にあたり、各原料は一括添加してもよく、順次添加してもよい。
【0043】
一次発酵前の生地の温度、一次発酵及びホイロ発酵それぞれの温度及び時間は、製造するパン類の種類等に応じて適宜調整され得るが、一次発酵前の生地の温度は18~30℃が好ましく、その後の一次発酵は、25~30℃で10~120分間行うことが好ましく
、ホイロ発酵は、30~40℃で30~90分間行うことが好ましい。また、ホイロ発酵は、相対湿度70~90%で行うことが好ましい。
【0044】
上述の方法で得られた非発酵生地又は発酵生地は、これを焼成することで、サンドイッチ用のパンを得ることができる。このパンは、典型的には食パンである。この食パンは、サンドイッチの構成材料として用いた場合でも、小麦ふすまに由来するえぐみを低減でき、小麦特有の香ばしさを発現させつつ、小麦特有の甘い香りや良好な風味を喫食者に知覚させることができる。またサンドイッチを保管流通させた場合であっても、パンの食感や風味が長時間劣化しづらいものとなる。また、生地と、該生地の焼成によって得られるパンとは、焼成の前後で、白小麦ふすまと穀粉類との含有量に実質的に変化はない。
【0045】
生地の焼成温度は、パンの種類や大きさに応じて適宜選択できるが、好ましくは160~240℃、より好ましくは200~230℃である。また焼成時間は、上記の温度条件において、好ましくは5~60分間、より好ましくは25~50分間である。
【0046】
得られたサンドイッチ用パンは、これを所定の厚みとなるように切断加工して、パン片を得る工程を経て、以後の工程に供されることが好ましい。詳細には、パンの厚みを、無荷重下において、好ましくは0.5~5.5cm、より好ましくは0.6~3.0cm、更に好ましくは0.8~2.0cm、一層好ましくは0.8~1.5cmとするように切断してパン片を得る。また前記工程は、スライサーを用いて上述の厚みとなるように切断加工することが、サンドイッチの生産効率の観点から好ましい。つまり、本製造方法は、焼成によって得られた食パンを上述の厚みとなるように切断してパン片を得ることが好ましい。また、上述の厚みを有するパンを均一に且つ簡便に得る観点から、サンドイッチ用パンは、例えばハンバーガー等に典型的に用いられる丸パンを切断加工したもの(いわゆるバンズ)でないことも好ましい。
【0047】
サンドイッチの製造は、生産効率の向上の観点から、高速かつ多量に連続的な切断処理を行うことを目的として、スライサー等の工業的な食品切断装置がパンの薄切に用いられる。この場合、小麦ふすまを含むパンは、小麦ふすまを非含有としたパンと比較して繊維質が多くなるので、パンの切断面に凹凸や欠けが生じたりして、切断面が滑らかに形成しづらい。その結果、寸法や品質の均一性の点から、スライスされたパンを廃棄せざるを得ない場合があったり、あるいは該パンをサンドイッチに用いた場合でも、パンがざらついた食感となったり、また風味が悪化したりし得る。
この点に関して、白小麦ふすまは、他の小麦ふすまと比較して、健康増進に寄与する繊維質を十分に含みながらも、その繊維質が比較的柔らかい。したがって、白小麦ふすまを上述の含有量で用いることによって、切断加工を高速かつ多量に行った場合でも、パンの切断面が滑らかとなりやすいので、ふすま特有の香ばしい風味を有する品質の高いパン、及びこれを用いたサンドイッチを生産性高く得ることができる。この有利な効果は、白小麦ふすまとして、上述の好適な平均粒径を有するものを用いたり、ASW由来のふすまを用いたりすることによって、より顕著となる。
【0048】
続いて、所定の厚みとなるように切断加工された2枚のパン(すなわちパン片)を用い、該パンの間に具材を配する。パンの間に具材を配する方法は制限されず、本技術分野で一般的に採用される方法を採用することができる。得られるサンドイッチの見栄えを良好にする観点から、用いる2枚のパンは、その厚みがともに上述の範囲にあることが好ましく、また各パンの厚みの差が0.5cm以内であることも好ましい。3枚以上のパン片を用いる場合も同様に、各パンの厚みがいずれも上述の範囲にあることが好ましく、また各パンの厚みの差が0.5cm以内であることも好ましい。
【0049】
サンドイッチを構成する具材は、本技術分野で用いられる材料を特に制限なく用いるこ
とができる。
具材としては、例えば、鶏、豚、牛等の畜肉類の塊肉;ソーセージ、ハム、ベーコン等の畜肉加工物;キャベツ、レタス、キュウリ、トマト等の未加熱又は加熱済みの野菜類;ニンジン、ジャガイモ等の根菜類;みかん、いちご、桃、梨、メロン、いちじく、パイナップル等の果実類;鶏卵等の卵類;カスタードクリーム、ホイップクリーム、生クリーム等のクリーム類;バター、ジャム、マーガリン等のスプレッド類等が挙げられる。これらに加えて、ソース類、ケチャップ、マヨネーズ、塩、醤油、油脂などの各種調味料、胡椒などの香辛料が更に含まれていてもよい。上述の具材は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。またこれらの具材は、2枚のパンの間に積層されて配されていてもよく、混合状態で配されていてもよい。
【0050】
このようにして得られた2枚のパンの間に具材を配した積層体は、これをこのまま目的とするサンドイッチとすることができる。この場合、得られるサンドイッチの側部は、図1(b)に示されるように、サンドイッチ10を構成する各パン20,20の周縁部40が開放されており、サンドイッチの側部から具材30が視認できる態様となっている。本実施形態における具材の配置面積は、用いるパンの平面積と同じであってもよく、パンの平面積よりも多いか又は少なくてもよい。
【0051】
これに代えて、2枚のパンの間に具材を配した積層体に対して、具材が配されていない位置でパンどうしを圧着させる工程を更に行って、目的とするサンドイッチを得ることも好ましい。すなわち、具材の配置領域はパンどうしが圧着されていないことも好ましい。これによって、サンドイッチの保管流通時あるいは喫食時に、サンドイッチ側部からの具材の意図しない飛散や流出を抑制することができ、見栄えや取り扱い性が向上したものとなる。このような効果をより顕著なものとする観点から、平面視において具材の配置領域の外周縁よりも外方の位置で、且つパンの外周縁部全域でパンどうしを圧着させることが好ましい。すなわち、本形態は、好ましくは具材を2枚のパンで密閉収容した形態である。
【0052】
パンどうしを圧着させる方法としては、各パンの所定の位置に、該パンの厚み方向に圧力を付与する方法が挙げられ、例えば公知のプレス機や型抜き機を用いることができる。パンどうしを圧着させる方法の具体例としては、具材の配置領域の周縁よりも外方の位置あるパンの外周縁部の一部又は全域を圧着させる方法や、具材の配置領域の外周縁よりも外方の位置でパンどうしを圧着しつつ型抜きする方法が挙げられる。
【0053】
また、具材が意図せず挟まれることなく、パンどうしの圧着を行って加工性を高め、見栄えや取り扱い性が更に良好なサンドイッチを得る観点から、平面視における具材の配置面積は、用いるパンの平面積よりも少ないことが好ましい。また平面視において、具材はパンの中央域に配され、且つパンの周縁部に配されないようにすることも好ましい。このような方法としては、例えば、パンの平面視形状における図心と、パンの平面視形状を所定の割合で縮小した相似形の平面視における図心とを一致させた状態において、その相似形の平面視形状で表される領域内に具材を配する方法が挙げられる。
【0054】
パンの周縁部どうしを圧着させる工程を経て得られるサンドイッチは、その側部が、図2(a)及び(b)に示されるように、各パン20,20の周縁部40どうしが圧着されて、サンドイッチ10の側部から具材30が視認できない態様となっている。図2(b)に示す実施形態では、説明の便宜上、圧着後の各パン20,20の境界は明瞭に描かれているが、付与される圧力に応じて、パンどうしの境界は不明瞭となっていてもよい。
【0055】
上述した非圧着又は圧着のいずれの実施形態であっても、サンドイッチの最大の厚みは、無荷重下において、好ましくは0.5~5.5cm、より好ましくは0.6~3.0c
m、更に好ましくは0.6~2.8cmとする。このような厚みであることによって、サンドイッチの食べやすさが向上する。このような厚みは、パンの厚みや具材の量を適宜調整することによって達成できる。また得られたサンドイッチは、必要に応じて、具材を挟んだ状態で厚み方向に沿って切断されて、更に小分けされてもよい。
【0056】
最後に、上述の各方法で得られたサンドイッチは、これを包装袋に収容する工程を更に有することが好ましい。この工程を経ることによって、サンドイッチが保管流通に適したものとなる。包装袋としては、例えばプラスチックフィルム、ガラス、金属若しくはこれらの組み合わせからなる袋体又は成形体等の密閉可能な材料を用いることができる。
【0057】
また包装されたサンドイッチ、具体的には包装袋に密閉状態で収容されたサンドイッチは、サンドイッチにおけるパンの間に具材を配した状態を維持したままで保管、流通及び保存されるものであることが好ましい。保管、流通及び保存は、常温で行われてもよく、冷蔵で行われてもよいが、具材の品質を長期間維持する観点から、サンドイッチは、冷蔵条件で保管、流通及び保存されることが好ましい。
【0058】
小麦ふすまを含むパンや、該パンを用いたサンドイッチは、その包装状態において、開放条件で流通等されるパン等のベーカリー食品と比較して、小麦ふすまに由来するえぐみ等の不快な味や香りが内部にこもりやすく、不快な風味の発現に起因する品質の影響が出やすい。特に、サンドイッチは、水分が多い生野菜(未加熱の野菜)などの具材が配されるので、具材由来の多量の水分の存在に起因して、小麦ふすまに由来する不快な風味がパンに発生しやすくなってしまう。このことは冷蔵条件で流通した場合に顕著となり得る。
この点に関して、本発明によれば、白小麦ふすまを所定の含有量で用いたパンを用いることによって、得られるサンドイッチは、生野菜などの水分の多い具材を用いた場合でも、具材由来の良好な風味が効果的に発現するとともに、小麦ふすま由来のえぐみ等の不快な風味が効果的に低減され、且つ健康増進が期待できるものとなる。また、サンドイッチの鮮度や食感等の品質が良好に維持されたまま、保管、流通及び保存することができる。
【0059】
以上の製造方法によれば、小麦ふすまに由来するえぐみ等の不快な味や風味を低減しつつ、穀物由来の甘い香りや香ばしさ等の良好な風味が発現し、且つ食感の劣化が生じにくいサンドイッチ用パン及びこれを用いたサンドイッチを得ることができる。これらの有利な効果は、サンドイッチ用パンあるいはサンドイッチを包装袋に収容したり、冷蔵条件で保管流通したり、あるいは生野菜などの水分の多い具材を用いたりした場合に顕著に奏される。
またサンドイッチの製造にあたり、用いるパンを切断加工した場合であっても、パンの切断面が滑らかとなり加工生産性が高く、また、パンの食感、ひいては該パンを用いたサンドイッチの食感が良好となる。また小麦ふすまを用いたパン及びサンドイッチは、外観、風味及び食感が向上するとともに、食物繊維の摂取による健康増進効果を効率よく発揮させることができる。
【0060】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、3枚以上のパンを用いてサンドイッチを製造する場合、すべてのパンの外周縁部が圧着されていてもよく、すべてのパンが圧着されていなくてもよく、あるいは2枚のパンどうしが圧着されたものと、圧着されていないものとが1つのサンドイッチ内に含まれていてもよい。また3枚以上のパンを用いてサンドイッチを製造する場合、2枚のパンの間に配される具材は、それぞれ同一のものであってもよく、異なるものであってもよく、あるいは同一のものと異なるものとが1つのサンドイッチ内に含まれていてもよい。
【実施例0061】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0062】
〔実施例1~3及び比較例1~3〕
小麦ふすまの原料となる小麦として、以下に示す白小麦又は赤小麦を用いた。この小麦籟果を精選してロール式粉砕機にて粉砕し、その粉砕物を目開き200μmの篩で分級して、篩上残存物として小麦ふすま画分を採取した。次いで、採取した小麦ふすま画分を、ターボミル(東京製粉機製作所製)を用いて衝撃的粉砕を行ったあと、この粉砕物に対して、特許第2784505号明細書に記載される粉粒体加熱装置を用いて飽和水蒸気を導入しながら、品温90℃で5秒間の条件で湿熱処理を行った。続いて、湿熱処理後の粉砕物を、衝撃式微粉砕機(ACMパルベライザー、ホソカワミクロン社製)を用いて微粉砕し、その後、目開き150μmの篩を用いて分級し、篩を通過する粒径150μm未満の分級物を分取して、粉末状の小麦ふすまを得た(平均粒径約90μm、水分量13.5質量%)。以下、この方法で得られた小麦ふすまを「湿熱処理小麦ふすま」ともいう。
【0063】
各実施例及び比較例で用いた原料小麦は、以下のとおりとした。
・実施例1:ASW(白小麦且つ中間質小麦)
・実施例2:PH(白小麦且つ硬質小麦)
・実施例3:WW(白小麦且つ軟質小麦)
・比較例1:1CW(No.1カナダ・ウエスタン・レッド・スプリング;赤小麦且つ硬質小麦)
・比較例2:DNS(ダーク・ノーザン・スプリング;赤小麦且つ硬質小麦)
・比較例3:国産小麦(きたほなみ;赤小麦且つ中間質小麦)
【0064】
次いで、各実施例及び比較例の湿熱処理小麦ふすまと、以下に示す原材料とを以下に示す割合で混合して生地を調製し、以下に示すパン製造工程を経て、サンドイッチの製造に供される食パンを製造した。
【0065】
<パンの原材料>(以下に示す原材料の単位は「質量部」である。)
・小麦粉(強力粉) :80
・湿熱処理小麦ふすま:20
・グルテン :7
・小麦胚芽 :0.5
・発酵種 :5
・生地改良剤 :0.8
・生イースト :3.5
・食塩 :2
・上白糖 :8
・脱脂粉乳 :2
・ショートニング :8
・水 :78
(グルテン:H-10 小川製粉製、小麦胚芽:ハイギーSP フレッシュフードサービス製、発酵種:クレーム・ド・ルヴァン オリエンタル酵母工業製、生地改良剤:ユーロベイクシリウス オリエンタル酵母工業製)
【0066】
<パン製造工程>
各原材料をミキシング装置(関東混合機株式会社製、縦型ミキサーHPi-20M)に一括投入して、品温25℃、低速7分、中低速10分、中高速2分の順序で混合して、生地(ドウ)を調製した。この生地を27℃、75%RHの条件下で80分静置して一次発酵させた。発酵した生地を260gごとに分割して、ベンチタイムを20分として静置し
た。これらの生地をロール状に成形したものをワンローフ用食パン型に6個(型比容積:3.8)入れて、38℃、85%RHの条件下で50分静置してホイロを行った。最後に、ホイロ後の生地を220℃、40分間焼成し、実施例及び比較例の小麦ふすまを含むサンドイッチ用食パン(プルマン型3斤食パン)を得た。
【0067】
次いで、得られた食パンをパンスライサー(ハクラ精機株式会社製、AT700Z。カッター片刃:直径203mm)を用い、10枚切りとなるように切断加工して、平面寸法9.0mm×10.5mm、厚さ10.8mmの食パン片を得た。この食パン片を2枚使用し、2枚のパンの間に1枚のハム(一枚当たりの厚み2mm)と、生野菜として1枚のスライストマト(一枚当たりの厚み8mm)、及び2枚のレタス(一枚当たりの厚み約5mm)とを積層状態で配して、図1(a)及び(b)に示すように、パンの外周縁全域が圧着されていないサンドイッチを得た(以下、これを非密閉型サンドイッチともいう。)。このサンドイッチの最大厚みは、3.66cmであった。
【0068】
またこれとは別に、上記の寸法を有する2枚の食パン片に、卵フィリング(茹で調理した卵を裏ごしして、裏ごしした卵に、マヨネーズ等の各種調味料及び増粘剤等を混合した流動性を有する混合物)を挟み、その後、圧着用治具を使用しパンに対して厚み方向に圧力を付与してパンどうしを圧着させて、図2(a)及び(b)に示すように、パンの外周縁全域が圧着され、具材が2枚のパンの間に密閉収容されたサンドイッチを得た(以下、これを密閉型サンドイッチともいう。)。このサンドイッチの最大厚みは、2.5cmであった。
【0069】
〔実施例4~6及び比較例4~6〕
実施例1~3及び比較例1~3と同様の方法で、上述の白小麦又は赤小麦の小麦ふすま画分を採取し、ターボミルを用いて衝撃的粉砕を行ったあと、この粉砕物に対して、特開2004-9022号公報に記載の熱処理攪拌装置と同様の構成の装置を用いて、被乾熱物の品温が120℃となるように25分間加熱して、乾熱処理を行った。続いて、乾熱処理後の粉砕物を、上述の衝撃式微粉砕機を用いて微粉砕し、その後、目開き150μmの篩を用いて分級し、篩を通過する粒径150μm未満の分級物を分取して、粉末状の小麦ふすまを得た(平均粒径約90μm、水分量13.5質量%)。以下、この方法で得られた小麦ふすまを「乾熱処理小麦ふすま」ともいう。
【0070】
この乾熱処理小麦ふすまを、湿熱処理小麦ふすまに代えて用いた以外は、実施例1~3及び比較例1~3と同様の方法で、サンドイッチ用食パン、並びに図1及び図2に示す形態を有する非密閉型及び密閉型のサンドイッチをそれぞれ得た。
【0071】
〔比較例7~8〕
上述の各実施例と同様の方法で、上述のASW(白小麦)又は1CW(赤小麦)のふすま画分を採取し、ターボミルを用いて衝撃的粉砕を行った。次いで、熱処理を行わずに、上述の衝撃式微粉砕機を用いて微粉砕し、その後、目開き150μmの篩を用いて分級し、篩を通過する粒径150μm未満の分級物を分取して、粉末状の小麦ふすまを得た(平均粒径約90μm、水分量13.5質量%)。以下、この方法で得られた小麦ふすまを「未加熱処理小麦ふすま」ともいう。
【0072】
この未加熱処理小麦ふすまを、湿熱処理小麦ふすまに代えて用いた以外は、実施例1及び比較例1と同様の方法で、サンドイッチ用食パン、並びに図1及び図2に示す形態を有する非密閉型及び密閉型のサンドイッチをそれぞれ得た。
【0073】
〔実施例7、及び比較例9~11〕
ASWの湿熱処理小麦ふすま(実施例7)、1CWの未加熱処理小麦ふすま(比較例9
)、1CWの乾熱処理小麦ふすま(比較例10)、及び1CWの湿熱処理小麦ふすま(比較例11)を用い、以下に示す原材料を以下に示す割合で混合して生地を調製し、実施例1と同様のパン製造工程を経て、サンドイッチの製造に供される食パンを製造した。そして、得られたサンドイッチ用食パンを用いて、実施例1と同様に、図1及び図2に示す形態を有する非密閉型及び密閉型のサンドイッチをそれぞれ製造した。
【0074】
<パンの原材料>(以下に示す原材料の単位は「質量部」である。)
・小麦粉(強力粉) :60
・小麦ふすま: :40
・グルテン :14
・小麦胚芽 :0.5
・発酵種 :5
・生地改良剤 :0.8
・生イースト :3.5
・食塩 :2
・上白糖 :8
・脱脂粉乳 :2
・ショートニング :8
・水 :88
(グルテン:H-10 小川製粉製、小麦胚芽:ハイギーSP フレッシュフードサービス製、発酵種:クレーム・ド・ルヴァン オリエンタル酵母工業製、生地改良剤:ユーロベイクシリウス オリエンタル酵母工業製)
【0075】
〔経時耐性の評価(1):冷蔵条件〕
各実施例及び比較例の非密閉型のサンドイッチを樹脂フィルム製の包装袋に密閉状態で収容し、具材を挟んだ状態で且つ包装状態でサンドイッチを4℃で24時間保管した。その後、包装袋を開封し、袋内のサンドイッチを10名の専門パネラーに喫食してもらった。表1では比較例1のものを対照例(評価点:3点)とし、表2では比較例11のものを対照例(評価点:3点)として、サンドイッチの食感及びえぐみを以下の評価基準(1)で評価してもらった。点数の算術平均値を以下の表1及び表2に示す。点数の算術平均値が大きいほど、サンドイッチの食感に優れ、且つふすま由来のえぐみが少ないものである。
【0076】
<評価基準(1)>
5点:低温の保存でも、ふすま由来のえぐみや不快な風味が対照例よりも非常に弱く、食感に優れ、非常に食べやすい。
4点:低温の保存でも、ふすま由来のえぐみや不快な風味が対照例よりも弱く、食感が良好で食べやすい。
3点:ふすま由来のえぐみや不快な風味、並びに食感は対照例と同等である。
2点:ふすま由来のえぐみや不快な風味が対照例よりも強く、また食感にやや劣り、食べにくい。
1点:ふすま由来のえぐみや不快な風味が対照例よりも非常に強く、また食感に劣り、非常に食べにくい。
【0077】
〔経時耐性の評価(2):常温条件〕
各実施例及び比較例の密閉型のサンドイッチを樹脂フィルム製の包装袋に密閉状態で収容し、具材を挟んだ状態で且つ包装状態でサンドイッチを20℃で24時間保管した。その後、包装袋を開封し、袋内のサンドイッチを10名の専門パネラーに喫食してもらった。表1では比較例1のものを対照例(評価点:3点)とし、表2では比較例11のものを対照例(評価点:3点)として、サンドイッチの食感及びえぐみを、上述の評価基準(1
)で評価してもらった。点数の算術平均値を以下の表1及び表2に示す。点数の算術平均値が大きいほど、サンドイッチの食感に優れ、且つふすま由来のえぐみが少ないものである。
【0078】
〔生産性の評価(1):製造時の脆さの評価〕
各実施例及び比較例の密閉型のサンドイッチを、10名の専門パネラーに各5セット製造してもらい、圧着時におけるパンの脆さや圧着後の製品の脆さを、以下に示す評価基準(2)で評価してもらった。点数の算術平均値を以下の表1及び表2に示す。点数の算術平均値が大きいほど、パンや製品の脆さが感じられず、加工生産性に優れるものである。
【0079】
<評価基準(2)>
5点:圧着時にパンや製品が崩れずに成形でき、サンドイッチの加工生産性にとても優れる。
4点:圧着時にパンや製品がほとんど崩れずに成形でき、サンドイッチの加工生産性が良好である。
3点:圧着時にパンや製品の一部に脆さが見られたが、問題のない加工生産性である。
2点:圧着時にパンや製品の脆さが感じられ、サンドイッチの加工生産性が不良である。
1点:圧着時にパンや製品の脆さが顕著に感じられ、サンドイッチの加工生産性が非常に悪い。
【0080】
〔生産性の評価(2):切断面の滑らかさの評価〕
各実施例及び比較例で製造したサンドイッチ用食パンを上述のパンスライサーを用い、8枚切り(厚さ13.5mm)に切断した食パン片を得た。この食パン片の切断面の状態を10名の専門パネラーにより目視で確認してもらい、以下に示す評価基準(3)で評価してもらった。点数の算術平均値を以下の表1及び表2に示す。点数の算術平均値が大きいほど、パンの切断面が滑らかで、加工生産性に優れるものである。
【0081】
<評価基準(3)>
5点:パンの切断面全体が非常に滑らかに見え、見栄えに優れる。
4点:パンの切断面全体が概ね滑らかに見える。
3点:パンの切断面の一部に凹凸がみられるが、問題の無い滑らかさである。
2点:パンの切断面に凹凸やふすま由来の繊維片がみられ、切断面がやや粗い。
1点:パンの切断面に凹凸やふすま由来の繊維片が多く観察され、切断面が非常に粗い。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
表1及び表2に示すように、比較例のものと比較して、熱処理された白小麦ふすまを用いたサンドイッチは、水分が多い具材を挟んだ状態で保管流通した場合でも、小麦ふすまのえぐみが生じにくく且つ良好な食感が維持されていることが判る。特に、白小麦ふすまとして、白小麦且つ中間質の小麦であるASWの湿熱処理ふすまを用いることによって、サンドイッチとしたときのえぐみの低減及び優れた食感の発現に加えて、サンドイッチ製造時のパンの脆さや切断面の滑らかさも兼ね備えることができ、加工生産性が向上することも判る。
図1
図2