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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150938
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】乾燥麺類の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20220929BHJP
【FI】
A23L7/109 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021053759
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】398012306
【氏名又は名称】株式会社日清製粉ウェルナ
(71)【出願人】
【識別番号】301049777
【氏名又は名称】日清製粉株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000226998
【氏名又は名称】株式会社日清製粉グループ本社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朝比奈 健太
(72)【発明者】
【氏名】藤井 知之
(72)【発明者】
【氏名】大谷 彩夏
(72)【発明者】
【氏名】宮田 敦行
【テーマコード(参考)】
4B046
【Fターム(参考)】
4B046LA01
4B046LB03
4B046LC01
4B046LC06
4B046LC14
4B046LG21
4B046LG29
4B046LG32
4B046LP34
(57)【要約】
【課題】栄養豊富な小麦ふすまを含有し、食感が良好で、且つ十分な強度を有し破損しにくい乾燥麺類を提供すること。
【解決手段】本発明の乾燥麺類の製造方法は、原料粉を用いて生地を調製する工程と、該生地を所定形状に成形する工程と、成形した該生地を乾燥させる乾燥工程とを有する。前記原料粉は、小麦ふすまを10~40質量%、蕎麦粉を15~60質量%、グルテンを3~15質量%、小麦粉を10質量%以上含有する。前記小麦ふすまは、白小麦由来のものが好ましく、また、熱処理されたものが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料粉を用いて生地を調製する工程と、該生地を所定形状に成形する工程と、成形した該生地を乾燥させる乾燥工程とを有する、乾燥麺類の製造方法であって、
前記原料粉は、小麦ふすまを10~40質量%、蕎麦粉を15~60質量%、グルテンを3~15質量%、小麦粉を10質量%以上含有する、乾燥麺類の製造方法。
【請求項2】
前記小麦ふすまは白小麦由来である、請求項1に記載の乾燥麺類の製造方法。
【請求項3】
前記小麦ふすまは熱処理されたものである、請求項1又は2に記載の乾燥麺類の製造方法。
【請求項4】
前記熱処理は、処理対象の小麦ふすまに湿熱処理を施して品温を80℃以上にする処理であるか、又は処理対象の小麦ふすまに乾熱処理を施して品温を110℃以上にする処理である、請求項3に記載の乾燥麺類の製造方法。
【請求項5】
前記小麦ふすまの平均粒径は60~750μmである、請求項1~4の何れか1項に記載の乾燥麺類の製造方法。
【請求項6】
前記乾燥工程は、前記生地を雰囲気温度50℃以下の環境に置く工程を含む、請求項1~5の何れか1項に記載の乾燥麺類の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小麦ふすまを含む乾燥麺類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康意識の高まりから、食物繊維、ビタミン、ミネラルなどの栄養素に富む小麦ふすまの需要が増してきている。しかし小麦ふすまは、組織が硬く粉砕され難いため、粒子が比較的大きなものとなりやすく、また特有の穀物臭を有するため、これを含む食品は、ザクザクとした脆い食感を呈する、飲み込む際にイガイガ感を知覚させ得る、苦味やエグミがある、不快臭が強い等の問題がある。
【0003】
特許文献1には、平均粒度及び粒径が特定範囲にある小麦ふすまを特定量含有するふすま入り蕎麦が記載されている。特許文献1に記載の蕎麦は、食物繊維を多量に含みながらも、小麦ふすまを含有しない従来の蕎麦に比べて、外観及び風味の点で遜色がないとされている。特許文献2には、小麦ふすまを直径が特定範囲以下になるように微粉砕したものを特定量含有する蕎麦様食品が記載されている。特許文献1及び2には、小麦ふすまを含有する麺類の製造方法が記載されているが、両文献に具体的に記載されている製造方法は生麺の製造方法であり、生地の乾燥工程を含む乾燥麺類の製造方法については具体的に記載されていない。
【0004】
また従来、麺類の食味、製造時の作業性等を向上させる等の目的で、グルテンが使用されている。特許文献3には、不快なグルテン臭を低減するために、製麺原料に用いるグルテンとして、凍結乾燥処理をして得たものを用いることが記載されており、実施例3では、蕎麦粉を80質量%含有する製麺原料を用いて生地を調製し、該生地を成形した後、常法により乾燥させて、乾日本蕎麦を得ている。特許文献4には、蕎麦粉を60~90質量%及びグルテンを含有する原料粉を用いて生地を調製し、所定形状に成形した該生地を乾燥させて干し蕎麦とすることが記載されている。特許文献3及び4には、小麦ふすまを必須成分とする乾燥麺類は記載されておらず、自ずと、斯かる乾燥麺類に特有の課題の解決手段としてグルテンを用いることは記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-132号公報
【特許文献2】特開昭62-87061号公報
【特許文献3】特開昭59-109145号公報
【特許文献4】特開2019-134696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
乾燥麺類に小麦ふすまを含有させると、乾燥麺類の強度が低下して破損しやすいものとなる。そのような強度が低下した乾燥麺類は、例えば、流通過程において通常想定される程度の衝撃を受けただけでも割れやひびなどが発生するおそれがあり、商品価値が低下しやすいという問題がある。特許文献1及び2に記載の如き、小麦ふすまを用いた麺類に関する従来技術は、小麦ふすまの使用に起因する食味食感の低下を課題とするものがほとんどであり、このような乾燥麺類に特有の強度低下の課題を解決し得る技術は未だ提供されていない。
【0007】
本発明の課題は、栄養豊富な小麦ふすまを含有し、食感が良好で、且つ十分な強度を有し破損しにくい乾燥麺類を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、原料粉を用いて生地を調製する工程と、該生地を所定形状に成形する工程と、成形した該生地を乾燥させる乾燥工程とを有する、乾燥麺類の製造方法であって、前記原料粉は、小麦ふすまを10~40質量%、蕎麦粉を15~60質量%、グルテンを3~15質量%、小麦粉を10質量%以上含有する、乾燥麺類の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、栄養豊富な小麦ふすまを含有し、食感が良好で、且つ十分な強度を有し破損しにくい乾燥麺類が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の乾燥麺類の製造方法は、原料粉を用いて生地を調製する工程(生地調製工程)と、調製した生地を所定形状に成形する工程(成形工程)と、成形した生地を乾燥させる工程(乾燥工程)とを有する。本発明で用いる原料粉は、常温常圧で粉体である。
【0011】
本発明の製造方法によって製造される乾燥麺類は、生地の乾燥工程を経ずに製造される生麺類に比べて、含水率が低いものである。生麺類の含水率は、例えば生蕎麦の場合、典型的には28~40質量%程度である。これに対し、本発明の製造方法によって製造される乾燥麺類の含水率は、好ましくは14質量%以下、より好ましくは11~13質量%である。前記含水率は、例えば絶乾法(測定対象を品温130℃に加熱し、加熱前後での重量変化を測定する方法)に従って、麺類の全体部分の含水率を測定した値である。
【0012】
本発明は原料粉として、小麦ふすま、蕎麦粉、グルテン及び小麦粉をそれぞれ特定量含有するものを使用する点で特徴付けられる。本発明はこの特徴により、小麦ふすまのメリット(麺類の栄養強化)を活かしつつ、小麦ふすまのデメリット(麺類の食感低下、乾燥麺類の強度低下)を解消することができる。
【0013】
小麦ふすまとしては、一般的な小麦粉の製造過程で生じる、小麦粒から胚乳を除去した残部、あるいはこの残部から更に胚芽を除去したもの等を用いることができる。本発明では、小麦ふすまの製造方法、組成、小麦ふすまの供給源である小麦の種類等は特に制限されない。小麦ふすまの製造方法は、典型的には、精選された小麦穀粒を、必要に応じ加水・調質した後、粉砕し、その粉砕物をシフター、ピュリファイヤー等で仕分けて、胚乳部及び胚芽を除去する工程を含む。小麦穀粒の粉砕方法は特に制限されず、例えば、ロール式粉砕法、衝撃式粉砕法が挙げられ、複数の粉砕方法を組み合わせてもよい。衝撃式粉砕法に用いる粉砕機としては、衝撃板と回転ロータ間で機械的衝撃により粉砕を行うものであれば特に限定されるものではなく、例えばターボミル、ブレードミル等が挙げられ、特にターボミルが好ましい。
【0014】
一般的に、小麦は、小麦穀粒を視認したときに観察される色に応じて、赤小麦と白小麦との二つの種類に大別される。赤小麦は、外皮部に赤色色素を含有する小麦であり、小麦穀粒を視認したときに、赤色、赤褐色又は褐色として観察される。一方、白小麦は、外皮部に赤色色素を略含有しない小麦であり、小麦穀粒を視認したときに、白色又は淡黄色として観察される。本発明者の知見によれば、乾燥麺類の原料粉に含有される小麦ふすまとして白小麦由来の小麦ふすまを用いると、他の小麦ふすまを用いた場合に比べて、乾燥麺類の強度及び麺類の食感が一層向上し得る。したがって、原料粉に含有させる小麦ふすまとしては、白小麦由来の小麦ふすまが好ましく、特に、白小麦由来の小麦ふすまであって湿熱処理されたものが好ましい。
【0015】
白小麦には、例えば、オーストラリア・スタンダード・ホワイト(ASW、オーストラリア産)、プライムハード(PH、オーストラリア産)、ソフトホワイト(SW、アメリカ合衆国産)、ウエスタン・ホワイト(WW、アメリカ合衆国産)があり、これらは普通小麦である。普通小麦ではない白小麦として、デュラム小麦(世界各国で生産)がある。これらの白小麦は、例えば遺伝学的特徴で適宜選別することができる。本発明で用いる白小麦由来の小麦ふすまは、普通小麦由来でもよく、デュラム小麦由来でもよい。また普通小麦は、小麦穀粒の硬さに応じて、硬質小麦と、軟質小麦と、硬質と軟質との中間の硬さを有する中間質小麦との三つの種類に大別されるが、本発明で用いる白小麦由来の小麦ふすまは、何れの普通小麦由来であってもよい。例えば、PHは白小麦且つ硬質小麦、ASWは白小麦且つ中間質小麦、WWは白小麦且つ軟質小麦である。
【0016】
小麦ふすまは、熱処理されたものであることが好ましい。原料粉に含有される小麦ふすまとして熱処理されたものを用いると、熱処理されていない小麦ふすまを用いた場合に比べて、乾燥麺類の強度及び麺類の食感が一層向上し得る。
なお、小麦ふすまが熱処理されたものであるか否かは、例えば、判定対象の小麦ふすまの酵素活性又はグルテンバイタリティを測定することによって判定できる。具体的には、酵素活性を例にとると、熱処理された小麦ふすまの酵素活性は、未加熱の小麦ふすまのそれに比べて、酵素活性が少ないか又は検出限界未満であるので、酵素活性の多少によって両者の区別が可能である。
【0017】
本発明では、小麦ふすまに施す熱処理は湿熱処理でもよく、乾熱処理でもよい。
湿熱処理は、処理対象(小麦ふすま)中の水分を維持するか、又は水分を外部から供給して、処理対象を加熱する処理である。湿熱処理においては、水、飽和水蒸気、過熱水蒸気等の水分を供給して用いることができる。湿熱処理における加熱方法は特に制限されず、例えば、密閉環境下で処理対象に水分を添加した後、熱風などの熱媒体を処理対象に直接接触させる方法、高温蒸気を処理対象に接触させて凝結潜熱により加熱する方法、処理対象を高湿度雰囲気下にて加熱する方法が挙げられる。
乾熱処理は、処理対象(小麦ふすま)を水分無添加の条件で加熱する処理であり、処理対象中の水分を積極的に蒸発させながら行う加熱処理である。乾熱処理は、例えば、オーブンでの加熱、焙焼窯での加熱、恒温槽を用いる加熱、熱風を吹き付ける加熱、高温低湿度環境での放置などによって実施することができる。なお、加水等を行った小麦ふすまに温風を当てて乾燥させる処理は、水分の蒸発潜熱のため、処理対象への熱の付与が十分に行われないので、当該処理は乾熱処理には含まれない。
【0018】
小麦ふすまに施す熱処理の具体例として、1)処理対象の小麦ふすまに湿熱処理を施して品温を80℃以上にする処理(以下、「湿熱処理A」とも言う。)、2)処理対象の小麦ふすまに乾熱処理を施して品温を110℃以上にする処理(以下、「乾熱処理A」とも言う。)が挙げられる。
【0019】
湿熱処理Aにおいて、処理対象の小麦ふすまの品温は、好ましくは80~110℃、より好ましくは80~98℃であり、処理時間(斯かる品温が維持される時間)は、好ましくは1~60秒、より好ましくは3~60秒である。
湿熱処理Aは、例えば、特許第2784505号公報に記載の粉粒体加熱装置に、被処理物である小麦ふすまと飽和水蒸気とを導入して、前記品温及び処理時間になるように行うことができる。この粉粒体加熱装置は、飽和水蒸気の吹込口を有し、被処理物を収容する円筒形圧力容器と、該容器の一端に配された投入口から投入された粉粒体を撹拌しながら、該容器の他端に配された排出口に向けて移送するように、円筒内径に近い寸法の複数の棒状羽根を回転軸上に有する撹拌手段とを備えている。
【0020】
乾熱処理Aにおいて、処理対象の小麦ふすまの品温は、好ましくは110~180℃、より好ましくは115~150℃であり、処理時間(斯かる品温が維持される時間)は、好ましくは3~120分、より好ましくは10~90分である。
乾熱処理Aは、例えば、特開2004-9022号公報に記載されている熱処理撹拌装置と同様の構成を有する装置に小麦ふすまを導入して、前記品温及び処理時間になるように行うことができる。この熱処理撹拌装置は、被処理物を収容する円筒状容器と、該容器の内部に備えられた中空構造の回転シャフトと、該シャフトに連通して形成された中空のパイプスクリューと、回転シャフト及びパイプスクリュー内に蒸気を供給する蒸気供給源とを備え、回転シャフト及びパイプスクリュー内に蒸気を供給して生じた伝熱を、回転シャフト及びパイプスクリューを介して被処理物に伝播させて、乾熱処理できるように構成されている。
【0021】
小麦ふすまの平均粒径は特に制限されないが、麺類の食感を一層向上させる観点から、好ましくは60~750μm、より好ましくは60~500μm、更に好ましくは60~280μm、なお好ましくは60~140μmである。ここでいう「平均粒径」とは、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置(例えば、日機装株式会社製、「マイクロトラック粒径分布測定装置9200FRA」)を用いて乾式で測定したときの累積体積50容量%における体積累積粒径D50を指す。
【0022】
原料粉における小麦ふすまの含有量は、原料粉の全質量に対して10~40質量%であり、好ましくは15~30質量%、より好ましくは20~25質量%である。原料粉における小麦ふすまの含有量が10質量%未満では、小麦ふすまのメリットを十分に活かすことができず、該含有量が40質量%を超えると、小麦ふすまの影響が強くなりすぎて小麦ふすまのデメリットを解消することが困難になるおそれがある。
【0023】
蕎麦粉は、蕎麦の実を粉砕して得られるものである。本発明で原料粉に蕎麦粉を使用する主な理由の1つは、製造目的物である麺類に蕎麦特有の風味を付与することである。本発明の製造方法によって製造される麺類は、蕎麦又は蕎麦様麺類と言うことができる。蕎麦粉としては、通常食用に供されている蕎麦粉を特に制限無く用いることができる。
【0024】
原料粉における蕎麦粉の含有量は、原料粉の全質量に対して15~60質量%であり、好ましくは25~50質量%、より好ましくは30~40質量%である。原料粉における蕎麦粉の含有量が15質量%未満では、蕎麦粉を使用する意義(蕎麦特有の風味の付与効果等)に乏しく、該含有量が60質量%を超えると、生地のつながりが悪くなって生地の成形が困難になるおそれがある。
【0025】
本発明においてグルテンは、小麦ふすまのデメリット(麺類の食感低下、乾燥麺類の強度低下)を解消するための重要な要素の1つである。グルテンとしては、通常食用に供されているものを特に制限なく用いることができる。グルテンの具体例として、活性グルテンが挙げられる。活性グルテンは、バイタルグルテンなどとも呼ばれるもので、多数の市場流通品が存在し、本発明ではそれら流通品を特に制限なく用いることができる。好ましい活性グルテンの流通品の一例として、グリコ栄養食品株式会社製の商品名「A-グルG」が挙げられる。活性グルテンは、小麦蛋白質の濃縮物であり、主にグルテニンとグリアジンとから構成され、基本的には、小麦粉と水とを混捏してグルテンが発達した生地を形成した後、該生地の澱粉等の水溶性成分を除去することにより小麦蛋白質の含有量を高めたものである。
【0026】
原料粉におけるグルテンの含有量は、原料粉の全質量に対して3~15質量%であり、好ましくは4~12質量%、より好ましくは5~10質量%である。原料粉におけるグルテンの含有量が3質量%未満では、グルテンを使用する意義(乾燥麺類の強度向上効果等)に乏しく、該含有量が15質量%を超えると、食味食感が低下するおそれがある。
【0027】
小麦粉としては、麺類の製造に従来使用されているものを特に制限なく用いることができ、例えば、薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉、全粒粉、デュラム粉が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。特に麺類の食味食感の向上等の観点から、小麦粉としては、中力粉、準強力粉及び強力粉から選択される1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。
【0028】
原料粉における小麦粉の含有量は、原料粉の全質量に対して10質量%以上であり、好ましくは15~40質量%、より好ましくは20~35質量%である。原料粉における小麦粉の含有量が10質量%未満では、小麦粉を使用する意義(麺類の食味食感の向上効果等)に乏しく、該含有量が50質量%を超えると、蕎麦の風味が低下する等、食味食感が低下するおそれがある。
【0029】
前記生地調製工程では、原料粉を構成する前記原材料(小麦ふすま、蕎麦粉、グルテン、小麦粉)以外の他の原材料を麺生地の調製に用いることができる。例えば原料粉は、前記の小麦ふすま、蕎麦粉及び小麦粉以外の他の穀粉(例えば、米粉、大麦粉、モチ大麦粉、大豆粉、コーンフラワー、オーツ麦粉、ライ麦粉等)及び澱粉から選択される1種以上を含有してもよい。前記澱粉としては、例えば、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、米澱粉等の未加工澱粉;該未加工澱粉に油脂加工、α化、エーテル化、エステル化、架橋、酸化等の処理の1つ以上を施した加工澱粉が挙げられる。穀粉及び澱粉以外の前記他の原材料としては、麺類の製造に使用可能なものを特に制限なく用いることができ、例えば、大豆蛋白質、卵黄粉、卵白粉、全卵粉、脱脂粉乳等の蛋白質素材;動植物油脂、粉末油脂等の油脂類;かんすい、焼成カルシウム、膨張剤、乳化剤、食塩、糖類、甘味料、香辛料、調味料、ビタミン類、ミネラル類、色素、香料、アルコール、保存剤、酵素剤、食物繊維、デキストリン(難消化性含む)、増粘剤、保水剤、pH調整剤、酸化還元剤等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの原材料のうち、常温常圧で粉体のものが原料粉を構成し得る。
【0030】
前記生地調製工程において、原料粉その他の原材料を用いた生地の調製は常法に従って行うことができる。典型的には、原料粉を含む原材料に液体を添加し、ミキサー等を用いて混捏することで生地を調製する。原材料に添加する液体は、通常は水であるが特に制限されず、例えば、水に塩などの調味料を溶解又は分散させた調味液、卵液等を用いることができる。原料粉を含む原材料に添加する液体の量は、製造する麺の種類等に応じて適宜調整すればよい。
【0031】
前記成形工程では、前記生地調製工程で得られた生地を所定形状、典型的には一方向に長い形状、いわゆる麺線に成形する。生地の成形方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。本発明で採用可能な成形方法の一例として、圧延製麺、ロール製麺等の各種製麺法により、生地に圧力をかけて伸ばして麺帯を得、該麺帯を切り出して麺線を得る方法が挙げられる。本発明で採用可能な製麺方法の他の一例として、生地に圧力をかけて押出製麺する方法が挙げられる。押出製麺は、パスタ製造用の一軸押出製麺機や二軸押出製麺機等を用いて常法に従って行うことができ、その際、押出製麺機の麺線の押出部に所望の形状の孔を有するダイスを設置して押出し成形することで、その孔に対応した形状の麺線が得られる。麺線の横断面の形状は特に限定されず、円形、方形、楕円形、三角形などの何れの形状であってもよい。
【0032】
前記乾燥工程では、前記成形工程で所定形状に成形された生地、典型的には生麺線を乾燥させる。生地の乾燥方法は特に制限されず、典型的には、自然乾燥、温湿度管理乾燥・熱風乾燥等の、油調せずに乾燥させる非油調乾燥法であるが、油調して乾燥させる油調乾燥法を利用することもできる。非油調乾燥法の場合、強熱風を避け、比較的穏和な温度の下に調湿乾燥することが望ましく、これを実現するために、前記乾燥工程は、温度・湿度を制御可能な恒温恒湿槽等の閉鎖可能な空間に生地を置く工程を含むことが好ましい。
また、最終的な乾燥麺類の含水率を前述したように15質量%以下とする場合、前記乾燥工程は、生地を雰囲気温度50℃以下の環境(例えば恒温恒湿槽)に置く工程を含むことが好ましい。生地を置く環境の雰囲気温度は、好ましくは5~50℃であり、また、生地を置く環境の相対湿度は、好ましくは20~90%程度である。前記乾燥工程の実施中、雰囲気温度及び相対湿度を適宜変化させてもよい。
【実施例0033】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0034】
〔実施例1~8、比較例1~7:乾燥蕎麦の製造〕
表1、表2に示す原材料を混合して原料粉を得、該原料粉を用いて生地を調製し、該生地を麺線に成形して生麺線を得、該生麺線を乾燥させて乾燥麺類である乾燥蕎麦を製造した。より具体的には、原料粉100質量部に練り水としての食塩水(食塩濃度5質量%)を35質量部添加し、縦型ミキサーで5分間混捏して生地を得(生地調製工程)、該生地を常法に従って圧延して厚さ1.4mmの麺帯にし、該麺帯を20角切刃(幅1.5mm)で切り出して生麺線を得た(成形工程)。そして、生麺線を恒温恒湿槽(エスペック株式会社製「PR-4KP」)に入れ、雰囲気温度20℃、相対湿度80%の環境に1時間静置し(第1乾燥工程)、次いで、雰囲気温度32℃、相対湿度70%の環境に8時間静置した(第2乾燥工程)。こうして目的の乾燥蕎麦を製造した。
【0035】
原料粉に用いた小麦ふすまの詳細は下記のとおりである。
・ふすまA:下記方法により製造した乾熱処理赤小麦ふすま
・ふすまB:下記方法により製造した湿熱処理白小麦ふすま
・小麦粉:強力粉、日清製粉株式会社製、商品名「オーション」
・グルテン:グリコ栄養食品株式会社製、商品名「A-グルG」
【0036】
(乾熱処理赤小麦ふすまの製造方法)
原料小麦として、赤小麦であるウエスタン・レッド・スプリング1(1CW、カナダ産)を用い、原料小麦から採取した小麦ふすまに前記乾熱処理Aを施した。具体的には、まず、原料小麦を精選してロール式粉砕機にて粉砕し、その粉砕物を目開き200μmの篩で分級して、篩上残存物として小麦ふすまを採取した。次に、採取した小麦ふすまを、特開2004-9022号公報に記載の熱処理撹拌装置と同様の構成の装置を用いて、該小麦ふすまの品温120℃が25分間維持される条件で加熱することで乾熱処理を行い、目的とする乾熱処理赤小麦ふすま(平均粒径250μm)を得た。
【0037】
(湿熱処理白小麦ふすまの製造方法)
原料小麦として、白小麦であるASW又はWWを用い、原料小麦から採取した小麦ふすまに前記湿熱処理Aを施した。具体的には、まず、原料小麦を精選してロール式粉砕機にて粉砕し、その粉砕物を目開き200μmの篩で分級して、篩上残存物として小麦ふすまを採取した。次に、採取した小麦ふすまを、ターボミル(東京製粉機製作所製)を用いて衝撃的粉砕法により粉砕した後、その粉砕物に対して、特許第2784505号明細書に記載される粉粒体加熱装置を用いて飽和水蒸気を導入しながら、品温90℃で5秒間の条件で湿熱処理を行った。次に、湿熱処理された粉砕物を、衝撃式微粉砕機(ACMパルベライザー、ホソカワミクロン社製)を用いて微粉砕し、その微粉砕物を目開き150μmの篩を用いて分級し、該篩を通過する粒径150μm未満の画分を分取して、目的とする湿熱処理白小麦ふすま(平均粒径約90μm)を得た。
【0038】
〔評価試験1:乾燥麺類の強度〕
各実施例及び比較例の乾燥蕎麦の強度を評価した。具体的には、評価対象の乾燥蕎麦について、JIS Z 0200:2013 包装貨物-性能試験方法の振動試験レベル2、落下試験レベルIIIに準じて試験を実施した後、該乾燥蕎麦の状態を目視で観察し、下記評価基準で評価した。結果を表1、表2に示す。前記試験は、包装貨物が流通過程において受ける振動、衝撃及び圧縮に対する包装の保護が適正であるかどうかを評価するためのもので、乾燥麺類の評価に用いることで、乾燥麺類の強度(流通過程における破損のしにくさ)を評価することができる。
【0039】
<強度の評価基準>
3点:丈夫で、ひび割れ、破片の発生が殆ど起こらない。
2点;強度はやや落ちるが、やや丈夫で、ひび割れ、破片の発生が問題ない程度である。
1点:脆く、ひび割れ、破片の発生が問題となる。
【0040】
〔評価試験2:茹で麺の食感〕
各実施例及び比較例の乾燥蕎麦を沸騰水で5~6分茹で、水洗して冷却を行い、茹で麺である茹で蕎麦を製造した。この茹で蕎麦を、訓練された10名の専門パネラーにつけつゆで食してもらい、その際の茹で蕎麦の食感(硬さ、歯切れ)を下記評価基準に従って点数をつけてもらった。結果を10名の評価点の算術平均値として表1、表2に示す。
【0041】
<食感(硬さ)の評価基準>
5点:非常に良好な硬さである。
4点:良好な硬さである。
3点:やや良好な硬さである。
2点:脆い。
1点:非常に脆い。
<食感(歯切れ)の評価基準>
5点:歯切れが非常に良好である。
4点:歯切れが良好である。
3点:歯切れがやや良好である。
2点:歯切れが劣る。
1点:歯切れが非常に劣る。
【0042】
【表1】
【0043】
表1に示す各実施例及び比較例どうしは、原料粉における小麦ふすまの含有量が同じであるところ、各実施例は、原料粉にグルテンが3質量%以上含有されているため、これを満たさない比較例1、2に比べて、強度に優れ、食感が良好であった。一方、比較例3は、原料粉におけるグルテンの含有量が各実施例に比べて多く、それに起因して食感(歯切れ)に劣る結果となった。
【0044】
【表2】
【0045】
表2において、比較例6、7は、何れも原料粉にグルテンが実施例5と同程度含有されているにもかかわらず、比較例6は原料粉における蕎麦粉の含有量が多いため、比較例7は原料粉における小麦ふすまの含有量が多いため、それぞれ、強度、食感が低評価となった。