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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150941
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】粉末調味料混合物
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20220929BHJP
   A23L 27/60 20160101ALN20220929BHJP
   A23L 7/157 20160101ALN20220929BHJP
   A23L 5/10 20160101ALN20220929BHJP
   A23L 23/10 20160101ALN20220929BHJP
   A23L 7/109 20160101ALN20220929BHJP
【FI】
A23L27/00 A
A23L27/60 A
A23L7/157
A23L5/10 E
A23L23/10
A23L7/109 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021053767
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】398012306
【氏名又は名称】株式会社日清製粉ウェルナ
(71)【出願人】
【識別番号】301049777
【氏名又は名称】日清製粉株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000226998
【氏名又は名称】株式会社日清製粉グループ本社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 真人
(72)【発明者】
【氏名】平井 捺津美
(72)【発明者】
【氏名】近藤 真人
(72)【発明者】
【氏名】木本 匡昭
(72)【発明者】
【氏名】菊池 洋介
【テーマコード(参考)】
4B025
4B035
4B036
4B046
4B047
【Fターム(参考)】
4B025LB05
4B025LB06
4B025LB07
4B025LG04
4B025LG09
4B025LG18
4B025LG26
4B025LG33
4B025LK03
4B025LP01
4B035LC05
4B035LE01
4B035LE17
4B035LG01
4B035LG14
4B035LG36
4B035LK01
4B035LK02
4B035LK03
4B035LK15
4B035LP07
4B036LC04
4B036LE01
4B036LF03
4B036LF16
4B036LH04
4B036LH10
4B036LH13
4B036LH24
4B036LH29
4B036LH32
4B036LH44
4B036LK01
4B046LA06
4B046LB04
4B046LC17
4B046LC20
4B046LE15
4B046LG02
4B046LG11
4B046LG13
4B046LG29
4B046LG33
4B046LG51
4B046LG60
4B046LP80
4B047LB02
4B047LB09
4B047LE06
4B047LF01
4B047LF04
4B047LG03
4B047LG15
4B047LG23
4B047LG38
4B047LG39
4B047LG41
4B047LG43
4B047LG44
4B047LG45
4B047LG46
4B047LG62
4B047LG66
4B047LG70
4B047LP02
4B047LP05
(57)【要約】
【課題】粉末調味料を2種類以上含有しながらも、凝集し難く、使い勝手の良い粉末調味料混合物を提供すること。
【解決手段】本発明の粉末調味料混合物は、粉末調味料を2種類以上含有し、更に、白小麦由来の熱処理小麦ふすまを1~20質量%含有する。前記熱処理は、好ましくは湿熱処理である。前記白小麦は、好ましくはオーストラリア・スタンダード・ホワイトである。前記白小麦由来の熱処理小麦ふすまの平均粒径は、好ましくは30~200μmである。前記粉末調味料として食塩を例示できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末調味料を2種類以上含有する粉末調味料混合物であって、更に、白小麦由来の熱処理小麦ふすまを1~20質量%含有する、粉末調味料混合物。
【請求項2】
前記熱処理は湿熱処理である、請求項1に記載の粉末調味料混合物。
【請求項3】
前記白小麦はオーストラリア・スタンダード・ホワイトである、請求項1又は2に記載の粉末調味料混合物。
【請求項4】
前記白小麦由来の熱処理小麦ふすまの平均粒径は30~200μmである、請求項1~3の何れか1項に記載の粉末調味料混合物。
【請求項5】
前記粉末調味料として食塩を含有する、請求項1~4の何れか1項に記載の粉末調味料混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末調味料を2種類以上含有する粉末調味料混合物に関する。
【背景技術】
【0002】
食塩、各種スパイス等の粉末調味料は、保存中に空気中の水分を吸収して凝集することがある。凝集した粉末調味料は、各種食品に振りかける、他の粉末調味料と混ぜる、液体に溶解又は分散させる、といった操作が困難となり、また、粉末調味料の種類によっては風味が損なわれることもあり、商品価値が大幅に低下する。このような粉末調味料の凝集に起因する課題を解決し得る技術として、特許文献1には、吸湿しやすい食塩又はガーリックやオニオン等の吸水性スパイスを含む粉末調味料に、水不溶性食物ファイバーの微細粒子を1~15質量%含有させた固結防止性食品が記載されており、該水溶性食物ファイバーの一例として小麦ファイバーが記載されている。なお、特許文献1で使用されている「固結」という用語は、基本的に本明細書でいう「凝集」と同じ意味である。
【0003】
特許文献2には、塩、油脂、料理用香味料を含む錠剤状の調味料に、1~25質量%の穀物ふすまを含有させることが記載されている。キューブ状等の所定形状の錠剤状の調味料を使用する際には通常、これを手指で潰して粉末状にしてから使用するところ、従来品は、後硬化と呼ばれる現象により、硬度が製造後から経時的に向上し、使用時に手指で潰すことが困難になるという課題がある。特許文献2に記載の技術は、斯かる課題を解決するためのものであり、粉末調味料の凝集防止を課題とするものではない。
【0004】
特許文献3には、畜肉製品や魚肉すり身製品などの肉製品の臭みを低減するために、肉製品に小麦ふすまの熱処理物を練りこむなどして、肉製品の内部に小麦ふすまの熱処理物を含有させることが記載されている。また特許文献3には、小麦ふすまの供給源としてオーストラリア・スタンダード・ホワイト等の軟質小麦が好ましいこと、小麦ふすまの熱処理方法として湿熱処理が利用できることが記載されている。特許文献3には、粉末調味料の凝集の課題は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-84048号公報
【特許文献2】特表2018-536409号公報
【特許文献3】特開2018-50568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
粉末調味料を2種類以上含有する粉末調味料混合物は、それ単体で食品に必要な調味を施すことが可能であり、個々独立に存在する複数種の粉末調味料を併用する場合に比べて、風味付け、味付けを簡単に行うことができる。一方で粉末調味料混合物は、比較的少量の使用で特徴的な風味を食材等に付与可能にする等の目的で、食塩等の比較的吸湿性の高い粉末調味料の含有比率を高めに設計することが多く、その結果として、従来の粉末調味料混合物は、凝集が起こりやすく、その製造時又は使用時に支障をきたすことがある。例えば、粉末調味料混合物を食品全体に均一に付着させることを意図して、これを食品に振りかけてかき混ぜても、意図したようにならず、粉末調味料の食品への付着にばらつきが生じる、局所的に粉末調味料の凝集物が存在する等の不都合が生じ、期待したような食品の風味や食味が得られないことがある。また、粉末調味料混合物を水等の液体に分散又は溶解させて調味液を調製する場合に、液体と混合された粉末調味料混合物が吸液し膨潤して、高粘度の流動物又は固形物となってしまい、当初予定していた調味液を用いた作業、例えば、食材に調味液を塗る、食材を調味液に浸漬させる等といった作業が不可能となることがある。
【0007】
粉末調味料の凝集防止方法としては従来、第三リン酸カルシウム、微粒二酸化ケイ素、セルロース粉末のような植物性繊維等を粉末調味料に配合することが行われている。しかし、第三リン酸カルシウム及び微粒二酸化ケイ素は、食品衛生法により使用量が制限されており、消費者にとって安心なイメージのある原材料とは言い難い。また、セルロース粉末は、原材料が食材としてイメージし難い木材であるため、これが配合された粉末調味料は消費者から敬遠されるおそれがある。
【0008】
本発明者は、粉末調味料混合物の凝集防止剤として、小麦ふすまの可能性を検討した。小麦ふすまは、食経験が豊富な小麦由来の成分であり、食物繊維、ビタミン、ミネラルなどの栄養素に富む食材として消費者に安心感を与えることができる。しかし、小麦ふすまは、組織が硬く粉砕され難いため、粒子が比較的大きなものとなりやすく、また特有の穀物臭を有するため、これを含む食品は、ざらついた食感を呈する、エグミがある、不快臭が強い等の問題がある。このような小麦ふすまに特有の問題を解決し、粉末調味料混合物の凝集防止剤として使用し得る技術は未だ提供されていない。
【0009】
本発明の課題は、粉末調味料を2種類以上含有しながらも、凝集し難く、使い勝手の良い粉末調味料混合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、粉末調味料を2種類以上含有する粉末調味料混合物であって、更に、白小麦由来の熱処理小麦ふすまを1~20質量%含有する、粉末調味料混合物である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、粉末調味料を2種類以上含有しながらも、凝集し難く、使い勝手の良い粉末調味料混合物が提供される。本発明の粉末調味料混合物は、白小麦由来の熱処理小麦ふすまの作用により、各種食品の全体に均一に付着させることができ、また、水等の液体への溶解性・分散性に優れ、液体調味料として使用することもでき、しかも、小麦ふすまに特有のエグミが低減されており、調味料本来の風味、食味、食感を活かすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の粉末調味料混合物は、粉末調味料を2種類以上含有する。粉末調味料としては、常温常圧で粉末状の調味料を特に制限なく用いることができ、また、粉末調味料の組み合わせも特に制限されず、用途や提供する風味等に応じて、2種類又は3種類以上の粉末調味料を適宜組み合わせることができる。本発明の粉末調味料混合物により提供され得る風味は、食品の調味に使用することができるあらゆる風味を含み得、特に制限されない。本発明によって提供され得る風味の具体例として、コンソメ風味、ホワイトソース風味、トマトソース風味、カレー風味、和風醤油風味、バーベキュー風味を例示できる。
【0013】
粉末調味料の具体例として、食塩;砂糖、ブドウ糖、果糖、デキストリン等の糖類;醤油、味噌、みりん、酢等の発酵調味料粉末;アミノ酸系うまみ調味料;核酸系うまみ調味料;粉末だし;こしょう、しょうが、にんにく、クミン、ナツメグ、カレー粉等の粉末香辛料;肉エキス、魚介類エキス、野菜エキス等の粉末エキス;粉末油脂;小麦粉、そば粉、米粉、コーンフラワー、大麦粉、ライ麦粉、はとむぎ粉、ひえ粉、あわ粉等の穀粉;タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉等の澱粉(生澱粉);該生澱粉にα化、エーテル化、エステル化、アセチル化、架橋処理、酸化処理等の処理の1種以上を施した加工澱粉が挙げられる。
【0014】
本発明の粉末調味料混合物における小麦粉(強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム小麦粉、小麦全粒粉等)の含有量は、該混合物の全質量に対して、好ましくは20質量%以下である。粉末調味料混合物における小麦粉の含有量が過多となると、該混合物の吸水性が高まり、該混合物が適用された食品の水分を過剰に吸収して、該食品の食感をネチャついた好ましくないものとすることがあるためである。
【0015】
本発明の粉末調味料混合物の好ましい一実施形態として、粉末調味料として食塩を含有するものが挙げられる。食塩は比較的汎用性の高い粉末調味料であり、様々な食品の風味付け、味付けに使用できる一方、吸湿性が高く凝集しやすいため、粉末調味料混合物の構成成分として使用すると、食品への均一付着、液体への均一分散又は溶解等の点で問題が生じることが懸念される。しかしながら、本発明では、後述する白小麦由来の熱処理小麦ふすまを併用することで斯かる懸念を払拭しているので、粉末調味料として食塩を安心して使用できる。
本発明の粉末調味料混合物における食塩の含有量は特に制限されず、該混合物の用途等に応じて適宜調整できるが、該混合物の全質量に対して、好ましくは10~80質量%、より好ましくは12.5~50質量%である。食塩の含有量が少なすぎるこれを使用する意義に乏しく、多すぎると、相対的に他の粉末調味料の含有量が過少となって所望の風味食味が得られにくくなる、凝集が起こりやすくなる等の不都合が生じるおそれがある。
【0016】
本発明の粉末調味料混合物は、2種類以上の粉末調味料に加えて更に、白小麦由来の熱処理小麦ふすまを含有する点で特徴づけられる。これにより、本発明の粉末調味料混合物は、粉末調味料を2種類以上含有しながらも、凝集し難く、該混合物単体で食品に必要な調味を簡単に施すことができ、使い勝手の良いものとなる。凝集し難い本発明の粉末調味料混合物は、供給者の立場から見ると、製造、包装等が容易であり、消費者の立場から見ると、食品への振りかけ操作、食品との混合操作等が容易で、一般に好ましいとされる食品全体への均一付着、液体への均一分散又は溶解が可能である。また小麦ふすまは、身近な穀物由来の食材であることから、第三リン酸カルシウム等の従来使用されている凝集防止剤に比べて、消費者が安心なイメージを抱きやすく、しかも安価である。一方、小麦ふすまには特有の不快な穀物臭やエグミがあるため、これを含有する粉末調味料混合物は、調味料本来の風味等が低下することが懸念されるが、本発明では、使用する小麦ふすまを、「熱処理されたもの」且つ「白小麦由来のもの」に限定することで、斯かる懸念は払拭されている。
【0017】
本発明の粉末調味料混合物における白小麦由来の熱処理小麦ふすまの含有量は、該混合物の全質量に対して、1~20質量%であり、好ましくは1~10質量%、より好ましくは3~10質量%である。白小麦由来の熱処理小麦ふすまの含有量が1質量%未満では、これを使用する意義に乏しく、本発明の所定の効果が奏されないおそれがあり、該含有量が20質量%を超えると、相対的に粉末調味料の含有量が過少となって、粉末調味料混合物の本来の目的である食品の風味付け、味付けが困難になるおそれがある。
【0018】
本明細書において「小麦」とは、イネ科コムギ属の植物の頴果を指す。一般的に、小麦の頴果(小麦穀粒)は、胚乳部、外皮部(外皮及び種皮)並びに胚芽(胚部)に大別されるところ、小麦穀粒を粉砕し、胚乳部及び胚芽を除去して得られた外皮部由来の画分が、小麦ふすまとなる。
【0019】
前述したとおり、本発明で用いる小麦ふすまは熱処理されている。前記熱処理は、未処理の小麦ふすまの品温を常温以上にし得る処理であればよく特に制限されない。小麦ふすまに施される熱処理の具体例として、湿熱処理及び乾熱処理が挙げられる。
湿熱処理は、処理対象(小麦ふすま)中の水分を維持するか、又は水分を外部から供給して、処理対象を加熱する処理である。湿熱処理においては、水、飽和水蒸気、過熱水蒸気等の水分を供給して用いることができる。湿熱処理における加熱方法は特に制限されず、例えば、密閉環境下で処理対象に水分を添加した後、熱風などの熱媒体を処理対象に直接接触させる方法、高温蒸気を処理対象に接触させて凝結潜熱により加熱する方法、処理対象を高湿度雰囲気下にて加熱する方法が挙げられる。
乾熱処理は、処理対象(小麦ふすま)を水分無添加の条件で加熱する処理であり、処理対象中の水分を積極的に蒸発させながら行う熱処理である。乾熱処理は、例えば、オーブンでの加熱、焙焼窯での加熱、恒温槽を用いる加熱、熱風を吹き付ける加熱、高温低湿度環境での放置などによって実施することができる。なお、加水等を行った小麦ふすまに温風を当てて乾燥させる処理は、水分の蒸発潜熱のため、処理対象への熱の付与が十分に行われないので、当該処理は乾熱処理には含まれない。
【0020】
小麦ふすまに施す熱処理の具体例として、1)処理対象の小麦ふすまに湿熱処理を施して品温を80℃以上にする処理(以下、「湿熱処理A」とも言う。)、2)処理対象の小麦ふすまに乾熱処理を施して品温を110℃以上にする処理(以下、「乾熱処理A」とも言う。)が挙げられる。
【0021】
湿熱処理Aは、処理対象の小麦ふすまを密閉空間に収容するとともに、該密閉空間に飽和水蒸気を導入し、該小麦ふすまの品温が、好ましくは80~98℃、より好ましくは85~98℃の状態を、好ましくは1~60秒間、より好ましくは3~60秒間維持する処理である。
湿熱処理Aは、例えば、特許第2784505号公報に記載の粉体加熱装置に、被処理物である小麦ふすまと飽和水蒸気とを導入して、前記品温及び処理時間になるように行うことができる。この粉体加熱装置は、飽和水蒸気の吹込口を有し、被処理物を収容する円筒形圧力容器と、該容器の一端に配された投入口から投入された粉体を撹拌しながら、該容器の他端に配された排出口に向けて移送するように、円筒内径に近い寸法の複数の棒状羽根を回転軸上に有する撹拌手段とを備えている。
【0022】
乾熱処理Aにおいて、処理対象の小麦ふすまの品温は、好ましくは110~180℃、より好ましくは115~150℃であり、処理時間(斯かる品温が維持される時間)は、好ましくは3~120分間、より好ましくは5~90分間である。
乾熱処理Aは、例えば、特開2004-9022号公報に記載されている熱処理撹拌装置と同様の構成を有する装置に小麦ふすまを導入して、前記品温及び処理時間になるように行うことができる。この熱処理撹拌装置は、被処理物を収容する円筒状容器と、該容器の内部に備えられた中空構造の回転シャフトと、該シャフトに連通して形成された中空のパイプスクリューと、回転シャフト及びパイプスクリュー内に蒸気を供給する蒸気供給源とを備え、回転シャフト及びパイプスクリュー内に蒸気を供給して生じた伝熱を、回転シャフト及びパイプスクリューを介して被処理物に伝播させて、乾熱処理できるように構成されている。
【0023】
本発明において、小麦ふすまに施される熱処理として特に好ましいものは湿熱処理である。すなわち本発明で用いる小麦ふすまの少なくとも一部は、湿熱処理小麦ふすまが好ましい。後述する実施例で示すように、湿熱処理小麦ふすまの方が、乾熱処理小麦ふすまに比べて、小麦ふすまに特有のエグミが低減され得る。
【0024】
なお、小麦ふすまが熱処理されたものであるか否かは、例えば、判定対象の小麦ふすまの酵素活性又はグルテンバイタリティを測定することによって判定できる。具体的には、酵素活性を例にとると、熱処理された小麦ふすまの酵素活性は、未加熱の小麦ふすまのそれに比べて、酵素活性が少ないか又は検出限界未満であるので、酵素活性の多少によって両者の区別が可能である。
【0025】
前述したとおり、本発明で用いる小麦ふすまは白小麦由来である。一般的に、小麦は、小麦穀粒を視認したときに観察される色に応じて、赤小麦と白小麦との二つの種類に大別される。赤小麦は、外皮部に赤色色素を含有する小麦であり、小麦穀粒を視認したときに、赤色、赤褐色又は褐色として観察される。一方、白小麦は、外皮部に赤色色素を略含有しない小麦であり、小麦穀粒を視認したときに、白色又は淡黄色として観察される。白小麦には、例えば、オーストラリア・スタンダード・ホワイト(ASW、オーストラリア産)、プライムハード(PH、オーストラリア産)、ソフトホワイト(SW、アメリカ合衆国産)、ウエスタン・ホワイト(WW、アメリカ合衆国産)があり、これらは普通小麦である。普通小麦ではない白小麦として、デュラム小麦(世界各国で生産)がある。これらの白小麦は、例えば遺伝学的特徴で適宜選別することができる。
本発明で用いる白小麦由来の小麦ふすまは、普通小麦由来でもよく、デュラム小麦由来でもよい。また普通小麦は、小麦穀粒の硬さに応じて、硬質小麦と、軟質小麦と、硬質と軟質との中間の硬さを有する中間質小麦との三つの種類に大別されるが、本発明で用いる白小麦由来の小麦ふすまは、何れの普通小麦由来であってもよい。例えば、PHは白小麦且つ硬質小麦、ASWは白小麦且つ中間質小麦、WWは白小麦且つ軟質小麦である。
【0026】
本発明で用いる白小麦由来の小麦ふすまは、例えば、次のようにして製造することができる。すなわち、精選された白小麦の小麦穀粒を、必要に応じ加水・調質した後、粉砕し、その粉砕物をシフター、ピュリファイヤー等で仕分けて、胚乳部及び胚芽を除去することによって、白小麦由来の小麦ふすまを製造することができる。小麦穀粒の粉砕方法は特に制限されず、例えば、ロール式粉砕、衝撃式粉砕が挙げられ、複数の粉砕方法を組み合わせてもよい。衝撃式粉砕に用いる粉砕機としては、衝撃板と回転ロータ間で機械的衝撃により粉砕を行うものであれば特に限定されるものではなく、例えばターボミル、ブレードミル等が挙げられ、特にターボミルが好ましい。小麦穀粒の粉砕方法の好ましい一例として、ロール式粉砕、衝撃式粉砕の順で実施する方法を例示できる。この場合、ロール式粉砕の回数は1回でも複数回でもよい。
【0027】
白小麦の中でも特に好ましいものはASWである。すなわち本発明で用いる小麦ふすまは、ASW由来の湿熱処理小麦ふすまが特に好ましい。ASWは、主に麺類(特にうどん)に用いられる小麦であり、粉末調味料の凝集防止剤としての使用実績は皆無に等しい。また、ASW由来の成分で主に用いられているのは胚乳部画分(小麦粉)であり、ふすま画分はほとんど用いられていない。従来麺類用途で用いられているASWのふすま画分を粉末調味料混合物に用いることで、小麦ふすまに特有のエグミを低減しつつ、該混合物の凝集を防止し得ることは、本分野の技術常識から想起し難いものであると言える。
【0028】
白小麦由来の熱処理小麦ふすまの平均粒径は特に制限されないが、粉末調味料混合物の凝集を一層確実に防止して、該混合物の生産性を高めるとともに、各種食品への均一付着性、液体への均一分散・溶解性を高めてより使い勝手の良いものとする観点から、好ましくは30~200μm、より好ましくは40~150μm、更に好ましくは50~120μmである。ここでいう「平均粒径」とは、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置(例えば、日機装株式会社製、「マイクロトラック粒径分布測定装置9200FRA」)を用いて乾式で測定したときの累積体積50容量%における体積累積粒径D50を指す。
【0029】
本発明の粉末調味料混合物は、種々の食品の風味付け、味付けに使用できる。本明細書において「食品」には、「料理」(調理済み食品)及び料理の製造に使用される「食材」が包含される。本発明が適用可能な食品の具体例として、飯類、麺類、パン類、穀類、肉類、魚介類、キノコ類、野菜類等の食材;焼き物、煮物、炒め物、揚げ物、蒸し物、サラダ、和え物等の料理が挙げられる。
【0030】
本発明の粉末調味料混合物は、プレミックス(Prepared Mix)、シーズニングなどの名称で流通しているものと同様の用途に使用できる。具体的には例えば、パエリヤ、ジャンバラヤ、チャーハン等の米食品調味用プレミックス;酢豚、八宝菜、カレー、フライドチキン、ベークドポテト、マリネ、サラダ、浅漬け等の、各種食材(畜肉類、魚介類、野菜類等)を用いた総菜の調味用プレミックス;パスタソース用プレミックス;パスタ用シーズニング;コーンスープ、クリームスープ、中華スープ等のスープ用プレミックスが挙げられる。本発明の粉末調味料混合物は、粉末パスタソース、粉末ドレッシング、粉末シーズニングミックス、粉末照り焼きソース等の用途に好適である。前記粉末シーズニングミックスは、ポテトやスナック等と和えて使用するものである。
【0031】
本発明の粉末調味料混合物は、常温常圧下で粉体であり、そのまま食品に振りかける等して食品に直接付着させてもよく、あるいは水等の液体と混合して調味液を調製し、該調味液を食品に塗る、該調味液に食品を浸漬させる等してもよい。本発明の粉末調味料混合物は、容器に充填されていてもよく、斯かる容器として、内容物を外部に振り出すための振出し孔を有する振出し容器が挙げられる。本発明の粉末調味料混合物は凝集し難いため、このような振出し容器に収容して長期間保管しても、使用時には振出し容器の振出し孔から内容物である該混合物が適量振り出され得る。
【0032】
本発明の粉末調味料混合物は、調理前の食材の下ごしらえ、調理前の食材又は調理済み食品の調味、調理済み食品へのトッピングや風味づけ等に用いることができる。本発明の粉末調味料混合物の特長の1つである、食品への均一付着のしやすさを活かす観点から、該混合物は調理の終盤以降に用いるとより効果的である。具体的には例えば、食品の調理工程で添加すべき成分の最後に本発明の粉末調味料混合物を添加する、調理済み食品を喫食する直前に本発明の粉末調味料混合物を添加する等が挙げられる。本発明の粉末調味料混合物の使用方法の好ましい一例として、加熱調理済み食品を製造する場合に、加熱調理済み食品の中間品の加熱工程において、中間品に本発明の粉末調味料混合物を添加した後、中間品を短時間(例えば3分以内)で加熱して、目的の加熱調理済み食品を得る方法が挙げられる。本発明の粉末調味料混合物の使用方法の好ましい他の一例として、加熱調理済み食品に本発明の粉末調味料混合物を添加して混合し、それ以降は該食品を加熱しない方法が挙げられる。
【実施例0033】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0034】
〔実施例A1~A11、比較例A1~A8:粉末ナポリタンソースの製造〕
各種小麦を精選して、ロール式粉砕機にて粉砕した後、その粉砕物から採取した小麦ふすまを、ターボミルを用いて衝撃式粉砕法により粉砕した(ふすま調製工程)。こうして得られた小麦ふすまを表1、表2に示す方法で熱処理した(熱処理工程)。次に、熱処理した小麦ふすまを衝撃式粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製、ACMパルベライザー)を用いて粉砕し、その粉砕物を目開き150μmの篩を用いて分級し、篩を通過する粒径150μm未満の微ふすま画分を分取した。実施例A7については、目開き212μmの篩を用いて分級し、篩を通過する粒径212μm未満の微ふすま画分を分取した。この微ふすま画分を、粉末調味料混合物に配合する熱処理小麦ふすまとして用い、表1、表2の「粉末調味料混合物」の欄に記載の各成分を混合して、目的とする粉末調味料混合物の一種である粉末ナポリタンソースを製造した。比較例A1で用いた「非熱処理小麦ふすま」は、比較例A2、A3で用いた熱処理小麦ふすまの熱処理前のものと同じである。
【0035】
粉末調味料混合物の製造に使用した原材料の詳細は下記のとおりである。
・1CW:ウエスタン・レッド・スプリング1、カナダ産、赤小麦
・国内産赤小麦:きたほなみ
・WW:ウエスタン・ホワイト、アメリカ合衆国産、白小麦
・PH:プライムハード、オーストラリア産、白小麦
・ASW:オーストラリア・スタンダード・ホワイト、オーストラリア産、白小麦
【0036】
各表の「熱処理方法」の欄に記載の各処理の詳細は下記のとおりである。
・「湿熱処理」:特許第2784505号公報に記載の粉体加熱装置と同様の構成の装置を用い、前記湿熱処理Aを実施した。より具体的には、前記装置が備える円筒状容器内(密閉空間)に処理対象の小麦ふすまを収容するとともに、該容器内に飽和水蒸気を導入し、該小麦ふすまの品温が90℃の状態を5秒間維持する条件で湿熱処理を行った。
・「乾熱処理」:特開2004-9022号公報に記載の熱処理撹拌装置と同様の構成の装置を用い、前記乾熱処理Aを実施した。より具体的には、前記装置が備える円筒状容器内(密閉空間)に処理対象の小麦ふすまを収容し、該小麦ふすまの品温が120℃の状態を25分間維持する条件で乾熱処理を行った。
【0037】
〔評価試験1:ナポリタンスパゲティの製造及び評価〕
スパゲティ(日清フーズ株式会社製、商品名「マ・マースパゲティ」、麺の太さ1.8mm)を推奨時間どおりに茹で、湯切りしてから深皿に200gを取り分けた。この茹でたスパゲティの上から評価対象の粉末ナポリタンソース(粉末調味料混合物)を25g振りかけ、箸で全体をよくかき混ぜて、ナポリタンスパゲティを製造した。製造直後のナポリタンスパゲティを10名の専門パネラーに食してもらい、食品(茹でたスパゲティ)への付着性、風味(エグミ)を下記評価基準に従って評価してもらった。その結果を表1、表2に示す。表1、表2の「ナポリタンスパゲティ評価」の欄の数値は、10名の専門パネラーの評価点の算術平均値である。
【0038】
<食品への付着性の評価基準>
5点:粉末調味料が食品全体に均一に付着し、風味にムラがなく良好。
4点:粉末調味料が食品のほぼ全体に均一に付着し、風味にほとんどムラがなく良好。
3点:粉末調味料が食品のほぼ全体に均一に付着しているが、やや風味が弱い。
2点:食品に部分的に粉末調味料の付着のバラつきが見られ、風味が不均一。
1点:食品において局所的に粉末調味料が固まっており、風味が不良。
<風味(エグミ)の評価基準>
5点:小麦ふすまのエグミを全く感じない。
4点:小麦ふすまのエグミをほとんど感じない。
3点:小麦ふすまのエグミを少し感じるが、問題なく食することができる。
2点:小麦ふすまのエグミを明らかに感じる。
1点:小麦ふすまのエグミを強く感じ、食品の風味を大きく損なう。
【0039】
【表1】
【0040】
表1に示すとおり、実施例の粉末調味料混合物は、白小麦(WW、PH又はASW)由来の熱処理小麦ふすまを含有するため、これを含有しない比較例の粉末調味料混合物に比べて、食品への付着性及び食品の風味の双方に優れていた。また、小麦ふすまの熱処理方法としては、乾熱処理よりも湿熱処理の方が好ましいことがわかる。また、白小麦の中でも特にASWが好ましいことがわかる。
【0041】
【表2】
表2に示すとおり、実施例の粉末調味料混合物は、白小麦由来の熱処理小麦ふすまの含有量が1~20質量%の範囲にあるため、該含有量がこの範囲から外れる比較例の粉末調味料混合物に比べて、食品への付着性及び食品の風味の双方に優れていた。
【0042】
〔実施例B1~B5、比較例B1~B4:粉末ドレッシングの製造〕
各種小麦を精選して、ロール式粉砕機にて粉砕した後、その粉砕物から採取した小麦ふすまを、ターボミルを用いて衝撃式粉砕法により粉砕した(ふすま調製工程)。こうして得られた小麦ふすまを表3に示す方法で熱処理した(熱処理工程)。次に、熱処理した小麦ふすまを衝撃式粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製、ACMパルベライザー)を用いて粉砕し、その粉砕物を目開き150μmの篩を用いて分級し、篩を通過する粒径150μm未満の微ふすま画分を分取した。この微ふすま画分を粉末調味料混合物に配合する熱処理小麦ふすまとして用い、表3の「粉末調味料混合物」の欄に記載の各成分を混合して、目的とする粉末調味料混合物の一種である粉末ドレッシングを製造した。
【0043】
〔評価試験2:サラダの製造及び評価〕
水洗いしたレタスの葉を2枚(60g)用意し、これを手指でちぎって3~5cm四方の細片とし、皿に取り分けた。この細片状のレタスの葉の上から評価対象の粉末ドレッシング(粉末調味料混合物)を2.5g振りかけ、トングで全体をよくかき混ぜて、サラダを製造した。製造直後のサラダを10名の専門パネラーに食してもらい、食品(レタスの葉)への付着性、風味(エグミ)を前記評価基準に従って評価してもらった。その結果を表3に示す。表3の「サラダ評価」の欄の数値は、10名の専門パネラーの評価点の算術平均値である。
【0044】
【表3】
【0045】
〔実施例C1~C5、比較例C1~C4:マリネ用プレミックスの製造〕
各種小麦を精選して、ロール式粉砕機にて粉砕した後、その粉砕物から採取した小麦ふすまを、ターボミルを用いて衝撃式粉砕法により粉砕した(ふすま調製工程)。こうして得られた小麦ふすまを表4に示す方法で熱処理した(熱処理工程)。次に、熱処理した小麦ふすまを衝撃式粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製、ACMパルベライザー)を用いて粉砕し、その粉砕物を目開き150μmの篩を用いて分級し、篩を通過する粒径150μm未満の微ふすま画分を分取した。この微ふすま画分を粉末調味料混合物に配合する熱処理小麦ふすまとして用い、表4の「粉末調味料混合物」の欄に記載の各成分を混合して、目的とする粉末調味料混合物の一種であるマリネ用プレミックスを製造した。
【0046】
〔評価試験3:調味液の調製、鶏天ぷらの製造及び評価〕
ステンレスボウル内に評価対象のマリネ用プレミックス(粉末調味料混合物)を5g入れ、更に50mlの冷水を添加し、ホイッパーでかき混ぜて該プレミックスを該冷水に溶かし、調味液を調製した。この調味液の調製作業を2名の専門パネラーに行ってもらい、その際のプレミックスの液体(冷水)への分散性を下記評価基準に従って評価してもらった。また、生の鶏むね肉を肉片1個当たり25gとなるように切り分け、ポリ袋に肉片を250g分入れ、更に、該ポリ袋に評価対象のマリネ用プレミックス(粉末調味料混合物)を55g入れて、該ポリ袋の全体を30秒間手でもんだ後、該ポリ袋ごと冷蔵庫に1時間静置した。市販の天ぷら粉(日清フーズ株式会社製)を1.5倍重量の冷水で溶いて天ぷらバッターを調製し、前記冷蔵庫から取り出した肉片を該バッターに浸漬してよく絡め、170℃に熱した大豆白絞め油で4分間油ちょうして鶏天ぷらを製造した。製造直後の鶏天ぷらを10名の専門パネラーに食してもらい、風味(エグミ)を前記評価基準に従って評価してもらった。以上の結果を表4に示す。表4の「鶏天ぷら評価」の欄の数値は、10名の専門パネラーの評価点の算術平均値である。
【0047】
<液体への分散性の評価基準>
5点:粉末調味料が速やかに分散し、調味料成分が簡単に溶解した。
4点:液体の添加当初は粉末調味料の結晶がボウルの底に残ったが、かき混ぜることで溶解した。
3点:一旦ダマが発生したものの、時間をかけてかき混ぜることで溶解した。
2点:粉末調味料混合物が吸水してドロ状になり、後の作業性がやや悪くなった。
1点:粉末調味料混合物が吸水し膨潤して固形状になり、食品(肉片)を浸漬させることが困難であった。
【0048】
【表4】