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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】α化穀粉類の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20241001BHJP
   A23L 7/109 20160101ALI20241001BHJP
   A23L 7/13 20160101ALI20241001BHJP
   A21D 6/00 20060101ALI20241001BHJP
   A21D 13/02 20060101ALI20241001BHJP
   A23L 35/00 20160101ALI20241001BHJP
   C08B 30/14 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
A23L7/10 Z
A23L7/109 Z
A23L7/13
A21D6/00
A21D13/02
A23L35/00
A23L7/109 D
C08B30/14
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021553637
(86)(22)【出願日】2020-10-28
(86)【国際出願番号】 JP2020040336
(87)【国際公開番号】W WO2021085445
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-03-29
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2019/042684
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226998
【氏名又は名称】株式会社日清製粉グループ本社
(73)【特許権者】
【識別番号】301049777
【氏名又は名称】日清製粉株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】398012306
【氏名又は名称】株式会社日清製粉ウェルナ
(73)【特許権者】
【識別番号】312015185
【氏名又は名称】日清製粉プレミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高松 研一郎
(72)【発明者】
【氏名】向後 佑佳子
(72)【発明者】
【氏名】長井 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】重松 亨
(72)【発明者】
【氏名】柳下 隆弘
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-000045(JP,A)
【文献】特開2020-130027(JP,A)
【文献】国際公開第2016/121570(WO,A1)
【文献】特開2001-120195(JP,A)
【文献】特開2004-073140(JP,A)
【文献】特開2005-034104(JP,A)
【文献】特開2003-230351(JP,A)
【文献】特開平10-001501(JP,A)
【文献】特開2005-253306(JP,A)
【文献】特開2004-350559(JP,A)
【文献】特開2009-143977(JP,A)
【文献】特開平10-008026(JP,A)
【文献】特開2019-024336(JP,A)
【文献】特開2005-323535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A21D
C08B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粉類100質量部及び水500質量部以上を含むスラリー(ただし、澱粉スラリーに油脂を配合してなる油脂含有澱粉スラリーを除く。)を、該スラリーの品温が90℃以上となる条件で加熱し、該穀粉類に含まれる澱粉をα化するα化工程と、
前記α化工程を経た前記スラリーを乾燥して固形物を得る工程とを有し、
前記穀粉類として、小麦粉及び小麦全粒粉からなる群から選択される1種以上を用い、
前記α化工程において、前記スラリーの加熱中に該スラリーを攪拌する、α化穀粉類の製造方法。
【請求項2】
前記α化工程において、前記スラリーをその品温が100℃以上となる条件で加熱する、請求項1に記載のα化穀粉類の製造方法。
【請求項3】
前記α化工程において、前記スラリーをその品温が110~140℃となる条件で加熱する、請求項1又は2に記載のα化穀粉類の製造方法。
【請求項4】
前記α化工程において、前記スラリーの加熱中に該スラリーに含まれる溶媒の量が変化しないようにする、請求項1~の何れか1項に記載のα化穀粉類の製造方法。
【請求項5】
前記α化工程において、前記スラリーを加圧雰囲気で加熱する、請求項に記載のα化穀粉類の製造方法。
【請求項6】
製造されたα化穀粉類のα化度が90%以上である、請求項1~の何れか1項に記載のα化穀粉類の製造方法。
【請求項7】
請求項1~の何れか1項に記載の製造方法で製造されたα化穀粉類を用いる、加工食品の製造方法。
【請求項8】
前記加工食品がベーカリー食品、麺類又は油ちょう食品である、請求項に記載の加工食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品用途に好適なα化穀粉類に関する。
【背景技術】
【0002】
α化澱粉は、原料澱粉を水分存在下で加熱してα化(糊化)させたものである。α化により、澱粉粒内部の分子配列が崩壊し、澱粉粒の膨潤、複屈折性の喪失、天然の微結晶の融解、澱粉の可溶化など、性状の不可逆変化として現れる。このため、α化澱粉は原料澱粉とは異なる特有の性状を示し、食品用途や工業用途など幅広く用いられている。α化澱粉の製造方法としては従来、澱粉のスラリーをスプレードライヤー、ドラムドライヤーなどを用いて乾燥する方法が知られている。また、澱粉に加水してエクストルーダーで混錬しつつ加熱する方法、澱粉が収容された容器内に過熱蒸気を通して加熱・加湿する方法なども知られている。
【0003】
特許文献1には、所望の膨潤性及び保水性を有する改質澱粉の製造方法として、原料澱粉に加水して水分量を26~59質量%に調湿した後、該原料澱粉の粒子に水蒸気及び/又は熱水を接触させて水分量を上昇させる方法が記載されている。特許文献2には、多孔質化した構造を有し、香気成分吸着剤などに利用可能な穀粉類α化物の製造方法として、穀粉類100質量部に対し水200~5000質量部を添加して加熱糊化させた後、アルコールを添加して凍結乾燥する方法が記載されている。特許文献2記載の方法では、加熱糊化する際の加熱温度に関し、糊化温度以上に保つとされており、実施例では穀粉類を沸騰湯浴上でα化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-205776号公報
【文献】特開平3-43052号公報
【発明の概要】
【0005】
澱粉を主成分とする食品においては、澱粉の老化が問題となる。例えばベーカリー食品においては、その貯蔵・保管中に、含有されている澱粉の老化が進行し、それに伴って、製造直後はふんわりした食感であったものが、硬くパサパサとした食感となったり、口溶けが悪化したりするという問題がある。澱粉の老化は、α化澱粉がその抱き込んでいた水分を放出してベータ結晶へと変化する現象である。食品の食味食感を高いレベルで改善するとともに、老化などの経時的劣化を抑制し得る技術が要望されている。
【0006】
本発明の課題は、食品の食味食感を向上させるとともに、食品に老化耐性を付与し得るα化澱粉類を提供することである。
【0007】
本発明は、穀粉類100質量部及び水500質量部以上を含むスラリーを、該スラリーの品温が90℃以上となる条件で加熱し、該穀粉類に含まれる澱粉をα化するα化工程と、前記α化工程を経た前記スラリーを乾燥して固形物を得る工程とを有し、前記α化工程において、前記スラリーの加熱中に該スラリーを攪拌する、α化穀粉類の製造方法である。
【0008】
また本発明は、前記の本発明のα化澱粉類の製造方法で製造されたα化穀粉類を用いる、加工食品の製造方法である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のα化穀粉類の製造方法は、穀粉類を含む水性のスラリーを加熱して該穀粉類に含まれる澱粉をα化(糊化)するα化工程と、該スラリーを乾燥して固形物を得る乾燥工程とを有する。以下、各工程について説明する。
【0010】
[α化工程]
本発明で用いる穀粉類としては、穀粉及び澱粉並びに穀物全粒粉が挙げられ、α化穀粉類が配合される食品の用途等に応じて、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせ用いることができる。穀粉、澱粉及び穀物全粒粉の供給源となる穀物は、粳種でもよく、糯種でもよい。
【0011】
穀粉類として使用可能な穀粉としては、澱粉質を含んでいる穀粉であればよく、例えば、小麦粉、米粉、そば粉、ライ麦粉、大豆粉等が挙げられる。小麦粉としては、例えば、薄力粉、中力粉、強力粉、デュラム小麦粉、デュラムセモリナが挙げられる。穀粉としては、典型的には、小麦粉が用いられる。
【0012】
穀粉類として使用可能な澱粉としては、例えば、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、米澱粉、タピオカ澱粉等の未加工澱粉、及びこれら未加工澱粉に油脂加工、エーテル化、エステル化、アセチル化、架橋処理、酸化処理等の処理の1つ以上を施した加工澱粉等が挙げられる。なお、ここでいう「澱粉」(α化工程の原材料として用いる澱粉)は、小麦等の植物から単離された「純粋な澱粉」を意味し、穀粉中に含まれる澱粉とは区別される。
【0013】
穀粉類として使用可能な穀物全粒粉は、穀物頴果(穀物粒)を構成する主要3成分の全て、すなわち胚乳部、外皮部及び胚部の全てを含有するものである。穀物全粒粉の供給源となる穀物は、食用に供することができれば特に制限されず、例えば、小麦、大麦、えん麦、ライ麦、米等が挙げられる。本発明では、1種類の穀物全粒粉を用いてもよく、複数種の穀物全粒粉を組み合わせ用いてもよい。なお、本明細書では、「穀物全粒粉」という称呼における「穀物」という語を、その供給源となった穀物の名称に代えて用いる場合がある。例えば、小麦の頴果由来の穀物全粒粉は「小麦全粒粉」、大麦の頴果由来の穀物全粒粉は「大麦全粒粉」である。穀物全粒粉としては、典型的には、小麦全粒粉が用いられる。
【0014】
本発明のα化澱粉類の製造方法は、穀粉類に含まれる澱粉のα化処理法として、穀粉類100質量部及び水500質量部以上を含むスラリーを、該スラリーの品温が90℃以上となる条件で加熱する方法を採用した点で特徴付けられる。従来行われている典型的なα化処理では、加水量は、対穀粉類100質量部で500質量部よりもはるかに少量で、100質量部以下とする場合が多く、加熱温度は、被加熱物の品温が90℃未満となるようにする場合が多い。本発明で採用した従来に無い高加水且つ高温の条件で穀粉類をα化処理することで、α化処理によって生じる澱粉の構造変化が、従来のα化処理によるものとは異なるものとなり、従来法では得られない高品質のα化穀粉類が得られる。なお、穀粉類には通常、一定量の水分が内在しているので、スラリー中に存在する水分の総質量は、穀粉類100質量部に対して、加水分の500質量部以上と、該穀粉類100質量部に内在する分(通常15質量部以下程度)との合計となる。
【0015】
また穀物全粒粉は、栄養成分が豊富、食物繊維含有量が多いといった利点を有する一方で、独特の臭み(フスマ臭)やエグミがあるため、食材として積極的に使用し難いという問題がある。しかし、本発明で採用した前記の高加水且つ高温の条件で穀物全粒粉をα化処理することで、その独特の臭みやエグミが低減され、穀物全粒粉が本来有する栄養価などの利点はそのままに、嗜好性を改善することができる。
【0016】
α化工程におけるスラリーの品温すなわち加熱温度は、少なくとも90℃以上であり、好ましくは100℃以上、より好ましくは105℃以上、更に好ましくは110~140℃、なお好ましくは115~135℃、よりなお好ましくは120~130℃である。一般に、スラリーの加熱温度が高いほど、澱粉の改質が進行し、本発明の所定の効果が奏されやすくなるが、加熱温度が高すぎると、スラリーを収容する容器内の圧力の管理や必要な蒸気等の熱量が増加するため、生産コストの上昇や生産性の低下に繋がるおそれがある。また、140℃を超える温度で小麦粉を処理すると、小麦粉内在のタンパク質やアミノ酸等がメイラード反応を生じ、変色するおそれがあるので、α化工程におけるスラリーの品温の上限は140℃程度とすることが好ましい。スラリーの品温が100℃超となる条件で加熱することは、例えばスラリーを加圧雰囲気で加熱することで実施できる。
【0017】
また、α化工程において、スラリーの品温90℃以上(好ましくは100℃以上)を維持する時間すなわち加熱時間は、好ましくは1分以上、より好ましくは3分以上である。一方、α化工程における加熱時間の上限は特に制限されないが、生産効率の観点から、好ましくは180分以下、より好ましくは120分以下である。
【0018】
穀粉類として穀物全粒粉を用いる場合は、α化工程におけるスラリーの加熱温度は、前述のとおり少なくとも90℃以上であればよく、好ましくは95℃以上であり、より好ましくは100℃以上の前記範囲である。加熱時間についても前記範囲でよい。α化工程において穀粉全粒粉を斯かる条件で加熱することで、澱粉の改質効果が得られるほか、穀物全粒粉に含まれる外皮部(フスマ)に起因するフスマ臭やエグミを軽減することができる。
【0019】
α化工程における被加熱物であるスラリーは、穀粉類100質量部に対して500質量部以上の水を加えることで調製することができる。加水量は、穀粉類100質量部に対して、好ましくは600~2500質量部、より好ましくは700~2000質量部、更に好ましくは800~1500質量部である。加水量が対穀粉類100質量部で500質量部未満では、本発明の所定の効果が十分に奏されない。逆に加水量が多すぎると、次工程のスラリーの乾燥工程で固形物を得るために多くの時間及びエネルギーが必要となり、生産コストの上昇、生産効率の低下を招くおそれがある。
【0020】
スラリーは、典型的には、穀粉類(穀粉、澱粉、穀物全粒粉)及び溶媒としての水のみを含有するが、必要に応じ、これら以外の成分、例えば、穀粉類を所望の性質に改質し得る穀粉類改質剤を含有してもよい。穀粉類改質剤としては例えば、科学的処理を行う製剤やアミラーゼ、また穀粉に含まれるタンパクを分解するプロテアーゼなどの酵素等が挙げられる。穀粉類改質剤を含有するスラリーにおいては、酵素反応などの、穀粉類改質剤が関わる反応が生じるところ、この反応は、該スラリーをα化工程に供する前に終了していてもよく、あるいはα化工程の実施中に生じていてもよい。
【0021】
また、穀粉類としては、前処理が施されたものを用いることもできる。つまり、前処理が施された穀粉類に加水してスラリーを調製してもよい。穀粉類の前処理は、例えば、穀粉類に各種の薬剤(酵素、酸又はアルカリ剤、乳化剤、触媒等)を添加することで実施できる。
【0022】
α化工程において、スラリーの加熱方法(穀粉類のα化処理の方法)は、前記の高加水且つ高温の条件に対応できる方法であればよく、特に制限されない。典型的なスラリーの加熱方法は、容器に穀粉類を含むスラリーを収容し、該容器を加熱する方法である。スラリーの加熱は、バッチ式で行ってもよく、連続式で行ってもよい。スラリーを加熱する際にこれを収容する容器としては、バッチ式を採用する場合には圧力釜、連続式を採用する場合にはスタティックミキサーなどのラインミキサーをそれぞれ例示できる。加熱方法も特に制限されず、例えば、電気式、ガス式、蒸気式が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることできる。蒸気式の加熱方法としては、例えば、被処理物(穀粉類)が収容された容器内に飽和蒸気又は過熱蒸気を直接導入する方法が挙げられる。
【0023】
α化工程においては、スラリーの加熱中に該スラリーを攪拌することを要する。スラリーを攪拌せず、静置した状態で加熱すると、該スラリーに含有されている穀粉類がダマになってしまい、α化(糊化)が不十分・不均一となる場合がある。加熱中にスラリーを攪拌することで、このような不都合が防止され、澱粉のα化が促進される。スラリーの攪拌方法は、含有されている穀粉類がスラリー全体に分散され得る方法であればよく特に制限されない。典型的には、容器と該容器の内容物を攪拌する攪拌機とを備えた、公知の攪拌機付き容器を用い、常法に従って実施することができる。例えば、スラリーの加熱をバッチ式で行う場合は、攪拌羽根を有する装置を例示でき、連続式で行う場合は、スタティックミキサーを例示できる。また、スラリーの攪拌手段としては、公知の超音波振動発生手段を用いることもできる。この場合、超音波振動発生手段から発生した超音波の振動により、スラリー中に細かい気泡を発生させてスラリーを攪拌する。
【0024】
α化工程において、スラリーの加熱中すなわち穀粉類のα化処理中は、該スラリーに含まれる溶媒(水)の量が変化しないことが好ましい。スラリーの加熱中に溶媒量が大きく減少する(蒸発する)と、α化の促進が抑制されるおそれがあるためである。好ましくは、穀粉類100質量部に対して水500質量部以上を含む状態で、α化処理を完了する。
【0025】
スラリーの加熱中にスラリーに含まれる溶媒の量を変化させないようにする方法の一例として、スラリーを加圧雰囲気で加熱する方法が挙げられる。すなわち、1気圧超の雰囲気圧力下においてスラリーを加熱する。この場合、スラリーを収容する容器は、耐圧性を有するものが好ましい。加圧雰囲気の圧力は、スラリーに含まれる溶媒の量や加熱温度(スラリーの品温)に応じて適宜調整すればよく、特に制限されない。加熱に伴うスラリーの上限温度は圧力に依存するため、求める加熱温度に対応した圧力に設定することが好ましい。
【0026】
[乾燥工程]
乾燥工程では、前述のα化工程を経たスラリーを乾燥して固形物を得る。この固形物は、本製造方法の製造目的物であるα化穀粉類である。スラリーの乾燥方法は特に制限されず、公知の乾燥方法を利用することができ、例えば、凍結乾燥、スプレードライヤーなどを用いた噴霧乾燥、ドラムドライヤーを用いた加熱乾燥などが挙げられる。スラリーの乾燥の程度は特に制限されないが、典型的には、スラリーを乾燥して得られる固形物の含水量が、一般の穀粉類(α化工程で原材料として用いた穀粉類)の含水量と同程度になるまで乾燥する。一般の穀粉類は通常15質量%程度である。
【0027】
乾燥工程を経て得られた固形物すなわちα化穀粉類は、必要に応じ、粉砕して粉末にしてもよい。固形物の粉砕は、家庭用粉砕機であればコービーミルやジューサー等、産業用粉砕機であればハンマーミル、ピンミルやジェットミル等を用いて常法に従って行うことができ、所望の粒度になるまで固形物を粉砕すればよい。
【0028】
本発明の製造方法によって製造されたα化穀粉類のα化度(糊化度)は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上であり得る。このような高α化度のα化穀粉類を食品に配合することで、その食品の食味食感が大幅に向上し、更には食品に老化耐性が付与される。本明細書において、α化度とは、BAP法(β-アミラーゼ・プルラナーゼ法)で測定されたα化度をいう。BAP法によるα化度の測定は、既報(家政学雑誌32(9),653-659,1981)に準じて、以下のとおりに実施することができる。
【0029】
〔β-アミラーゼ・プルラナーゼ法によるα化度の測定法〕
(A)試薬
使用する試薬は、以下のとおりである。
1)0.8M酢酸-酢酸Na緩衝液
2)10N水酸化ナトリウム溶液
3)2N酢酸溶液
4)酵素溶液:β-アミラーゼ(ナガセケムテックス(株),#1500S)0.017g及びプルラナーゼ(林原生物化学研究所、No.31001)0.17gを前記0.8M酢酸-酢酸Na緩衝液に溶かして100mLとしたもの。
5)失活酵素溶液:前記酵素溶液を10分間煮沸させて調製したもの。
6)ソモギー試薬及びネルソン試薬(還元糖量の測定用試薬)
【0030】
(B)測定方法
B-1)サンプル穀粉(α化穀粉類)をホモジナイザーで粉砕し、100メッシュ以下とする。この粉砕したサンプル穀粉0.08~0.10gをガラスホモジナイザーに取る。
B-2)ガラスホモジナイザーの内容物に脱塩水8.0mLを加え、該ガラスホモジナイザーを10~20回上下させて該内容物の分散を行い、分散液を得る。
B-3)2本の25mL容目盛り付き試験管に前記B-2)の分散液を2mLずつとり、その2本のうちの1本は、0.8M酢酸-酢酸Na緩衝液で定容し、試験区とする。
B-4)前記2本のうちの他の1本に、10N水酸化ナトリウム溶液0.2mLを添加し、50℃で3~5分間反応させ、前記B-2)の分散液を完全に糊化させる。その後、該他の1本に2N酢酸溶液1.0mLを添加し、pHを6.0付近に調整した後、0.8M酢酸-酢酸Na緩衝液で定容し、糊化区とする。
B-5)前記B-3)及びB-4)で調製した試験区及び糊化区の試験液をそれぞれ0.4mLとり、それぞれに酵素溶液0.1mLを加えて、40℃で30分間酵素反応させ、反応済液を得る。同時に、ブランクとして、酵素溶液の代わりに失活酵素溶液0.1mLを加えたものも調製する。酵素反応は途中で反応液を時々攪拌させながら行う。
B-6)前記反応済液及びブランクそれぞれの0.5mLにソモギー試薬0.5mLを添加し、沸騰浴中で15分間煮沸する。煮沸後、流水中で5分間冷却した後、ネルソン試薬1.0mLを添加・攪拌し、15分間放置する。
B-7)その後、前記反応済液及びブランクそれぞれに脱塩水8.00mLを加えて攪拌し、500nmの吸光度を測定する。
【0031】
(C)α化度の算出
下式によりα化度を算出する。
α化度(%)={(試験液の分解率)/(完全糊化試験液の分解率)}×100
={(A-a)/(A’-a’)}×100
前記式中、A、A’、a、及びa’は下記のとおりである。
A =試験区の吸光度
A’=糊化区の吸光度
a =試験区のブランクの吸光度
a’=糊化区のブランクの吸光度
【0032】
本発明の製造方法によって製造されたα化穀粉類(以下、単に「α化穀粉類」ともいう。)は、公知のα化穀粉やα化澱粉の代わりに使用することができ、典型的には、食品工業分野で使用されるが、食品工業分野以外の分野で使用することもできる。食品工業分野でのα化穀粉類の使用例として、1)熱調理を省く用途(例えばインスタントスープ)の増粘や保型、2)ケーキミックスの生地の改質や冷凍食品の組織の安定化、3)穀粉類としてコーンスターチを用いて製造されたα化穀粉類の場合、スープやらくがん粉の代用、4)穀粉類としてワキシーコーンスターチを用いて製造されたα化穀粉類の場合、豆菓子の衣が挙げられる。また、食品工業分野以外の分野でのα化穀粉類の使用例として、穀粉類として馬鈴薯澱粉を用いて製造されたα化穀粉類の場合、飼料の粘結;鋳物砂型、線香、研磨砥石等の粘結;家庭用洗濯ノリ;紙力増強剤が挙げられる。
【0033】
α化穀粉類は、加工食品の製造に用いることができる。ここでいう加工食品は、穀粉類を原材料として用いて製造されるものであり、例えば、ベーカリー食品;うどん、そうめん、ひやむぎ、中華麺、パスタ、即席麺(ノンフライ含む)等の麺類;天ぷら、から揚げ、竜田揚げ、フリッター等の揚げ物類、その他の油ちょう食品(油ちょう工程を経て製造される食品);インスタントスープなどの粉末食品が挙げられる。前記麺類には、餃子の皮、焼売の皮、春巻きの皮等の麺皮類が包含される。加工食品は冷凍食品であってもよい。α化穀粉類をこれらの加工食品の製造に用いることで、これらの食品の食味食感を向上させるとともに老化耐性を付与し、即席麺においては更に湯戻り性の向上効果などが奏され得る。加工食品の製造は、当該加工食品の種類に応じて常法に従って行うことができる。
【0034】
α化穀粉類は、ベーカリー食品の製造に好適である。α化澱粉類をベーカリー食品に配合することで、ベーカリー食品にふんわりとした柔らかさ、しっとり感、もっちり感が付与されるとともに、老化耐性が付与され、食味食感の経時的劣化が抑制される。ベーカリー食品は、穀粉類(穀粉、澱粉、穀物全粒粉等)を必須成分とし、これに必要に応じてイーストや膨張剤(ベーキングパウダー等)、水、食塩、砂糖などの任意成分を加えて得られた発酵又は非発酵生地を、焼成して得られる食品である。ベーカリー食品の具体例として、例えば、パン類;ピザ類;ケーキ類;ワッフル、シュー、ビスケット、焼き饅頭等の和洋焼き菓子;ドーナツ等の揚げ菓子等が挙げられる。パン類としては、食パン(例えばロールパン、白パン、黒パン、フランスパン、乾パン、コッペパン、クロワッサン等)、調理パン、菓子パン等が挙げられる。ケーキ類としては、スポンジケーキ、バターケーキ、ロールケーキ、ホットケーキ、ブッセ、バームクーヘン、パウンドケーキ、チーズケーキ、スナックケーキ、マフィン、バー、クッキー、パンケーキ等が挙げられる。
【実施例
【0035】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
〔実施例1~10、比較例1~5〕
穀粉類として小麦粉を用い、小麦粉に所定量の水を加えて水性のスラリーを調製した。このスラリーを、攪拌機(回転可能に設置されたパドル)付き圧力容器の該圧力容器に入れ、該攪拌機で攪拌しつつ、下記表1に示す加熱方法及び加熱温度で加熱して、穀粉類(小麦粉)に含まれる澱粉をα化(糊化)した(α化工程)。α化工程における加熱時間(下記表1に示す加熱温度を保持した時間)は1分間、3分間又は30分間とした。次に、α化工程を経たスラリー(糊化液)を市販の凍結乾燥機(商品名「ジェネシスSQ」、SPインダストリーズ社製)を用いて凍結乾燥し、固形物を得た。次に、得られた固形物を市販のコーヒーミルを用いて粉砕し、目的のα化小麦粉(α化穀粉類)を得た(実施例1~10、比較例1及び3)。
また、小麦粉100質量部に30質量部の水を添加し、エクストルーダーにて所定の加熱温度で所定時間加熱した以外は、前記の手順と同様にしてα化小麦粉を得た(比較例2)。
また、α化工程においてスラリーの加熱中に該スラリーを攪拌せずにα化小麦粉を製造した。具体的には、小麦粉に所定量の水を加えて水性のスラリーを調製し、このスラリーをレトルトパウチ袋に充填、密閉し、オートクレーブを用いて、120℃達温3分で加熱処理した。それ以降は前記の手順と同様にしてα化小麦粉を得た(比較例4及び5)。この方法で行った際、オートクレーブによる加熱後すなわちα化工程を経たスラリーは、離水が生じ、不均一な粘度(部分的にダマ状)となっており、均一に糊化がなされていなかった。また、スラリーがダマ状になっていたことから、凍結乾燥から粉末化するまでの効率も悪かった。
【0037】
【表1】
【0038】
〔実施例11~16、比較例6~8〕
穀粉類として小麦全粒粉、コーンスターチ又は小麦澱粉を用い、下記表2に示す条件でα化工程を実施した以外は、前記の実施例又は比較例と同様にしてα化小麦全粒粉、α化コーンスターチ又はα化小麦澱粉を得た。
【0039】
【表2】
【0040】
〔製造例A1~A22:パンケーキの製造〕
下記表3に示す配合の焼き菓子用ミックスを用いて、ベーカリー食品の一種であるパンケーキを製造した。具体的には、ミックス100質量部、砂糖25質量部、ベーキングパウダー5質量部、サラダ油10質量部、全卵30質量部、牛乳50質量部及び適量の水を容器に入れ、120回/分の回転数で手動にて混合攪拌をし、品温25℃でのB型粘度計による粘度が5~10Pa・sの範囲にあるパンケーキ生地を調製した。水の配合量は、パンケーキ生地の粘度が斯かる範囲になる範囲に調整した。調製したパンケーキ生地について10分間の寝かし時間を取った後、グリドルのプレート上に該生地を55g流し込み、該プレートの温度180℃で該生地の片面を3分間焼成した後、該生地を上下反転させて反対側の面を2分間焼成し、粗熱をとった後、パンケーキを製造した。
【0041】
こうして製造したパンケーキの一部を、常温環境下で30分間放冷した後に、10名の専門パネラーに食してもらい、その際の食感(製造直後の食感)を下記評価基準(5点満点)により評価してもらった。
また、製造したパンケーキの他の一部を、庫内温度4℃の冷蔵庫に3日間収容して保管し、チルド保存パンケーキを得た。このチルド保存パンケーキを、常温環境下で20分間放置した後、適当な大きさにカットし、10名の専門パネラーに食してもらい、その際の食感(冷蔵保管後の食感)を下記評価基準(5点満点)により評価してもらった。
また、製造したパンケーキの更に他の一部を、庫内温度-18℃の冷凍庫に2カ月間収容して保管し、冷凍パンケーキを得た。この冷凍パンケーキを、常温環境下で20分間放置した後、適当な大きさにカットし、10名の専門パネラーに食してもらい、その際の食感(冷凍保管後の食感)を下記評価基準(5点満点)により評価してもらった。
以上の結果(10名の専門パネラーの平均点)を下記表3に示す。
【0042】
<パンケーキの食感の評価基準>
5点:内相はふんわりとして柔らかく、しっとりとした食感を有し、歯切れ、口溶けともに良好。
4点:内相はふんわりとして柔らかい食感を有し、歯切れ、口溶けはやや良好。
3点:内相はややふんわりとし、また、ややヒキがあるため、澱粉の老化感を感じ、歯切れ、口溶けにやや物足りなさがあるものの、問題ないレベル。
2点:内相はふんわり感が弱く、且つヒキとパサつきがあり澱粉の老化感が強いため、歯切れ、口溶けが悪い。
1点:内部の食感が硬く、且つ強いヒキと強いパサつきがあり澱粉の老化感が非常に強いため、歯切れ、口溶けが非常に悪い。
【0043】
【表3】
【0044】
〔製造例B1~B8:パンの製造〕
下記表4に示す配合のパン用ミックスを用い、且つ市販のホームベーカリー(商品名「SD-BM103」、パナソニック社製)を用いて、ベーカリー食品の一種であるパンを製造した。具体的には、ミックス100質量部、バター4質量部、砂糖6.8質量部、スキムミルク2.4質量部、食塩2質量部、ドライイースト1.1質量部をホームベーカリーに入れ、該ホームベーカリーが備える「標準コース」を選択してパンを製造した。
【0045】
こうして製造したパンの一部を、常温環境下で30分間放冷した後に、10名の専門パネラーに食してもらい、その際の触感、食感及び風味(製造直後の触感、食感及び風味)を下記評価基準(5点満点又は3点満点)により評価してもらった。結果(10名の専門パネラーの平均点)を下記表4に示す。
【0046】
<パンの触感の評価基準>
5点:内相はふんわりとして柔らかく、しっとりとしている。
4点:内相はふんわりとして柔らかく、ややしっとりしている。
3点:内相はややふんわりで、しっとりとしている。
2点:内相はふんわり感が弱く、パサつく。
1点:内部の触感が硬く、乾燥している。
<パンの食感の評価基準>
3点:しっとりとして、もっちりしている。
2点:ややもっちりしている。
1点:歯切れがよくて、サクイ。
<パンの風味の評価基準>
5点:香ばしい穀物の香りを強く感じ、甘みを感じる。
4点:香ばしい穀物の香りがし、甘みを感じ、エグミがない。
3点:フスマ臭を感じ、エグミも感じるが、問題ないレベル。
2点:フスマ臭がやや強く、エグミを感じる。
1点:フスマ臭が強く、エグミが強い。
【0047】
【表4】
【0048】
〔製造例C1~C5:即席麺の製造〕
下記表5に示す配合の原料粉を用いて、麺類の一種であるノンフライ即席中華麺を製造した。原料粉において、小麦粉として中力粉(日清製粉株式社製「特雀」)を用い、澱粉として酸化タピオカ澱粉(松谷化学工業株式会社製「MKK100」)を用いた。具体的な手順としては、先ず、原料粉100質量部に、食塩1質量部及びかんすい(オリエンタル酵母工業株式会社製「赤かんすい」)0.4質量部を溶解した水を適量添加し、製麺用ミキサーで常法により10分間混捏して麺生地を調製した。次に、麺生地を製麺ロールにより圧延して厚さ1.2mmの麺帯とし、更に、切刃(#18番角)により麺線に切り出した。次に、麺線を温度100℃の蒸気で2分30秒間蒸熱処理した後、90℃の熱風で20分間乾燥して、ノンフライ即席中華麺を製造した。
【0049】
こうして製造した即席麺70gを容器に収納し、該容器に沸騰水を450ml加えて、該容器に蓋をして4分間静置した後、容器内の湯を除いて10名の専門パネラーに食してもらい、湯戻しの際の復元性、食感(粘弾性)を下記評価基準により評価してもらった。結果(10名の専門パネラーの平均点)を下記表5に示す。
【0050】
<即席麺の復元性の評価基準>
5点:十分可食状態であり、良好。
4点:ほぼ可食状態であり、やや良好。
3点:大部分は可食状態であるが、一部に芯が残る。
2点:麺線表面は可食状態であるが、麺線の中心部には芯が残り、やや不良。
1点:麺線表面及び中心部が硬く、不良。
<即席麺の食感の評価基準>
5点:粘りと弾力のバランスが非常によく、極めて良好。
4点:粘りと弾力のバランスが良く、良好。
3点:粘りと弾力のバランスがやや良く、やや良好。
2点:粘りと弾力のバランスがやや悪く、やや不良。
1点:粘りと弾力のバランスが悪く、不良。
【0051】
【表5】
【0052】
〔製造例D1~D7:冷蔵茹でうどんの製造〕
下記表6に示す配合の原料粉を用いて、麺類(調理済み冷蔵麺類)の一種である冷蔵茹でうどんを製造した。原料粉において、小麦粉として中力粉(日清製粉株式社製「薫風」)を用い、澱粉としてアセチル化タピオカ澱粉(松谷化学工業株式会社製「あじさい」)を用い、小麦蛋白としてグリコ栄養食品株式会社製「A グルG」を用いた。具体的な手順としては、先ず、原料粉100質量部に、食塩3質量部を溶解した水を適量添加し、-90kPaの減圧下で混捏し麺生地を調製した。次に、麺生地を圧延し、切刃(#10番角)により厚み3mmの麺線に切り出した。次に、麺線を沸騰したお湯で茹でた後、水洗冷却し、冷却した麺線100質量部に、ほぐれ剤(不二製油株式会社製「ソヤアップM3000」)3質量部をスプレーにより均一に付着させて茹でうどんを得た。この茹でうどんを庫内温度5℃の冷蔵庫に24時間保管して、冷蔵茹でうどんを製造した。
【0053】
こうして製造した冷蔵茹でうどんを10名の専門パネラーに冷蔵状態のまま食してもらい、食感(粘弾性)を下記評価基準(5点満点)により評価してもらった。結果(10名の専門パネラーの平均点)を下記表6に示す。
【0054】
<冷蔵茹でうどんの食感の評価基準>
5点:粘りと弾力のバランスが非常によく、極めて良好。
4点:粘りと弾力のバランスが良く、良好。
3点:粘りと弾力のバランスがやや良く、やや良好。
2点:粘りと弾力のバランスがやや悪く、やや不良。
1点:粘りと弾力のバランスが悪く、不良。
【0055】
【表6】
【0056】
〔製造例E1~E5:冷蔵焼き餃子の製造〕
下記表7に示す配合の原料粉を用いて、麺類(麺皮類)の一種である餃子皮を製造し、更に、製造した餃子皮を用いて調理済み冷蔵餃子の一種である冷蔵焼き餃子を製造した。具体的な手順としては、先ず、原料粉100質量部に、食塩1質量部及び水を適量添加して10分間混捏した後、30分間熟成させて生地を調製した。次に、生地を常法により圧延し最終麺帯厚を1mmとした後、直径85mmの型で切り抜き、生餃子皮を製造した。次に、生餃子皮に餃子の具を12g包餡して生餃子を製造し、この生餃子を焼成調理した後、庫内温度4℃の冷蔵庫に3日間保管して、冷蔵焼き餃子を製造した。
【0057】
こうして製造した冷蔵焼き餃子を耐熱性容器に5個入れて電子レンジにて加熱(500W/1分30秒)した後に、10名の専門パネラーに食してもらい、食感を下記評価基準(5点満点)により評価してもらった。結果(10名の専門パネラーの平均点)を下記表7に示す。
【0058】
<焼き餃子の食感の評価基準>
5点:口溶けが非常によく、硬さが全く無く、良好。
4点:口溶けがよく、硬さが無く、やや良好。
3点:口溶け、硬さともに普通。
2点:口溶けが悪く、硬さがあり、やや不良。
1点:口溶けが非常に悪く、硬い食感であり、不良。
【0059】
【表7】
【0060】
〔製造例F1~F5:えび天ぷらの製造〕
下記表に示す配合の天ぷら衣用ミックスを用いて、油ちょう食品の一種であるえび天ぷらを製造した。天ぷら衣用ミックスにおいて、小麦粉として薄力粉(日清製粉株式社製「フラワー」)を用い、澱粉として小麦澱粉(グリコ栄養食品株式会社製「食品用加工澱粉 銀鱗」)を用いた。具体的な手順としては、先ず、天ぷら衣用ミックス100質量部に水を適量添加して衣液を調製した。次に、衣液に具材としての尾付きえび(20g/頭)を入れてよく絡めた後、衣液が付着したえびを、170℃に熱したサラダ油の入った油槽で2分30秒間油ちょうし、えび天ぷらを製造した。
【0061】
こうして製造したえび天ぷらを、油槽から取り出して油切りした後に室温(約25℃)にて60分間放置した後、10名の専門パネラーに食してもらい、食感を下記評価基準(5点満点)により評価してもらった。結果(10名の専門パネラーの平均点)を下記表8に示す。
【0062】
<えび天ぷらの食感の評価基準>
5点:衣がサクサクとして歯脆さに富み、極めて良好。
4点:衣がサクサクとしており、良好。
3点:衣がややサクサク感に欠けるが、やや良好。
2点:衣がやや硬いかベタついており、サクサク感に乏しい。
1点:衣がやや硬すぎるかベタつきが強く、サクサク感がなく、不良。
【0063】
【表8】
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によれば、食品の食味食感を向上させるとともに、食品に老化耐性を付与し得るα化澱粉類が提供される。
また、穀粉類として穀物全粒粉を用いた場合には、穀物全粒粉に特有の臭みやエグミが低減され、且つ食品の食味食感を向上させるとともに、食品に老化耐性を付与し得るα化澱粉類(α化全粒粉)が提供される。
本発明によって製造されたα化澱粉類をベーカリー食品に配合した場合には、ベーカリー食品にふんわりとした柔らかさ、しっとり感、もっちり感が付与されるとともに、老化耐性が付与され、食味食感の経時的劣化が抑制される。本発明によって製造されたα化澱粉類を麺類又は油ちょう食品に配合した場合にも同様の効果が奏され、即席麺に配合した場合には更に、湯戻しの際の復元性が向上し得る。