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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162955
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】硬化体、その製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   C04B 14/26 20060101AFI20221018BHJP
   C04B 14/48 20060101ALI20221018BHJP
   C04B 14/34 20060101ALI20221018BHJP
   C04B 14/28 20060101ALI20221018BHJP
   C04B 18/16 20060101ALI20221018BHJP
   C04B 22/10 20060101ALI20221018BHJP
   C04B 20/02 20060101ALI20221018BHJP
   B28B 11/24 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
C04B14/26
C04B14/48 Z
C04B14/34
C04B14/28
C04B18/16
C04B22/10
C04B20/02 Z
B28B11/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163258
(22)【出願日】2021-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2021067988
(32)【優先日】2021-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構ムーンショット型研究開発事業/地域環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現/C4S研究開発プロジェクト事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(71)【出願人】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501241645
【氏名又は名称】学校法人 工学院大学
(71)【出願人】
【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】丸山 一平
(72)【発明者】
【氏名】野口 貴文
(72)【発明者】
【氏名】小鷹 渉
(72)【発明者】
【氏名】北垣 亮馬
(72)【発明者】
【氏名】兼松 学
(72)【発明者】
【氏名】平尾 宙
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 彦次
(72)【発明者】
【氏名】田村 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】藤本 郷史
(72)【発明者】
【氏名】辻埜 真人
【テーマコード(参考)】
4G055
4G112
【Fターム(参考)】
4G055AA01
4G055BA06
4G055BA32
4G112MB06
(57)【要約】
【課題】過去にカルシネーションによってセメント製造時に大気中に排出され分散した状態にあるCOを可能な限り回収し、回収したCOを用いることによる硬化体、特に建設材料硬化体の提供。
【解決手段】(I’)少なくとも水を含む液にCa源及び/又はMg源を含有する粒子を添加する工程;(II)工程(I)で得られた液に、COを溶解させる工程;を有することにより、Ca(HCO及び/又はMg(HCOを含む液を得、(III)骨材を所定の形状とする工程;(IV)工程(III)で得られた所定の形状内に、前記Ca(HCO及び/又はMg(HCOを含む液を添加する工程;及び(V)工程(IV)で得られた所定の形状内の環境を変化させる工程;を有することにより、骨材;及び前記骨材間に存在する炭酸塩;を有して形成される硬化体を得る、硬化体の製造方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨材;及び
前記骨材間に存在する物質;
を有して形成される硬化体であって、
前記物質は、該物質100重量%中、炭酸塩を50重量%以上含有する
硬化体。
【請求項2】
前記硬化体は、その圧縮強度が4MPa以上である
請求項1に記載の硬化体。
【請求項3】
前記物質は、該物質100重量%中、炭酸カルシウム及び/又は炭酸マグネシウムを50重量%以上含有する
請求項1又は2に記載の硬化体。
【請求項4】
前記物質は、炭酸カルシウム又は炭酸マグネシウム以外の塩を含有し、
該塩は、アニオンとしてCO 2-を含有する
請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化体。
【請求項5】
前記塩が、カルシウムアルミネートヘミカーボネート水和物、カルシウムアルミネートモノカーボネート水和物、炭酸バリウム、炭酸リチウム、炭酸鉄(II)、炭酸銀、炭酸カルシウム水和物、Cu(CO)(OH)、MnCO、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウムモノハイドロカルサイト(CaCO・HO)、カルシウムカーボネートヘクサハイドレート(CaCO・6HO)及びこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である
請求項4に記載の硬化体。
【請求項6】
前記骨材が、無機粒子、無機繊維、有機粒子、金属粒子、及び金属繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種である
請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化体。
【請求項7】
前記骨材が、建設廃材由来である
請求項1~6のいずれか一項に記載の硬化体。
【請求項8】
(I)少なくとも水を含む液に、廃材由来の粒子であってCa源及び/又はMg源を含有する粒子を添加する工程;及び
(II)工程(I)で得られた液に、COを溶解させる工程;
を有することにより、Ca(HCO及び/又はMg(HCOを含む液を得る
Ca(HCO及び/又はMg(HCOを含む液の製造方法。
【請求項9】
(III)骨材を所定の形状とする工程;
(IV)工程(III)で得られた所定の形状に、Ca(HCO及び/又はMg(HCOを含む液を添加する工程;及び
(V)工程(IV)で得られた所定の形状内の環境を変化させる工程;
を有することにより硬化体を得る、硬化体の製造方法であって、
該硬化体は、
前記骨材;及び
前記骨材間に存在する物質;
を有して形成され、
前記物質が炭酸塩を含有する
方法。
【請求項10】
(I’)少なくとも水を含む液にCa源及び/又はMg源を含有する粒子を添加する工程;
(II)工程(I’)で得られた液に、COを溶解させる工程;
を有することにより、Ca(HCO及び/又はMg(HCOを含む液を得、
(III)骨材を所定の形状とする工程;
(IV)工程(III)で得られた所定の形状内に、前記Ca(HCO及び/又はMg(HCOを含む液を添加する工程;及び
(V)工程(IV)で得られた所定の形状内の環境を変化させる工程;
を有することにより硬化体を得る、硬化体の製造方法であって、
該硬化体は、
前記骨材;及び
前記骨材間に存在する物質;
を有して形成され、
前記物質が炭酸塩を含有する
方法。
【請求項11】
(III)工程前に、(VI)骨材の表面を炭酸化する工程をさらに有する
請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記物質100重量%中、炭酸カルシウム及び/又は炭酸マグネシウムを50重量%以上含有する
請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記硬化体は、その圧縮強度が4MPa以上である
請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記COが、大気由来又は排気ガス由来である
請求項8及び請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記骨材が、建設廃材由来である
請求項9~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記環境の変化が、i)温度変化、ii)pH変化、及びiii)相変化からなる群から選ばれる少なくとも1種である
請求項9~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記環境の変化が、i)温度の変化であり、工程(IV)後の所定の形状内の温度が、工程(IV)前の所定の形状内の温度よりも15℃以上高い
請求項9~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記環境の変化が、ii)pHの変化であり、前記Ca(HCO及び/又はMg(HCOの溶液を添加するとpHが上昇する物質を、工程(IV)の添加前に、所定の形状内に導入し、工程(IV)の添加後にpHを上昇させる
請求項9~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記環境の変化が、iii)相変化であり、(IVa)前記工程(III)で得られた所定の形状を前記Ca(HCO及び/又はMg(HCOを含む液に浸漬することにより前記工程(IV)を行い、(Va)該液に含まれる水分を乾燥させることにより前記工程(V)を行う
請求項9~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記工程(IVa)及び前記工程(Va)の組合せをさらに1回以上行う
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
(I”)少なくとも水を含む液にCa源及び/又はMg源を含有する粒子を添加させる手段;
(II”)手段(I”)で得られた液に、COを溶解させて、Ca(HCO及び/又はMg(HCOを含む液を得る手段;
(III”)骨材を所定の形状とする手段;
(IV”)手段(III”)で得られた所定の形状内に、前記Ca(HCO及び/又はMg(HCOを含む液を添加させる手段;及び
(V”)手段(IV”)で得られた所定の形状内の環境を変化させる手段,
を有し、硬化体を得る硬化体の製造装置であって、
該硬化体は、
前記骨材;及び
前記骨材間に存在する物質;
を有して形成され、
前記物質が炭酸塩を含有する
装置。
【請求項22】
骨材;及び
前記骨材間に存在する炭酸塩;
を有して形成される硬化体であって、
前記炭酸塩は、前記骨材間の空隙の体積の1%以上を占める
硬化体。
【請求項23】
骨材に炭酸塩又は炭酸水素塩が溶解した液を添加することにより、前記骨材間に前記炭酸塩又は炭酸水素塩を含有させる工程を備え、
前記炭酸塩は、前記骨材間の空隙の体積の1%以上を占める
硬化体の製造方法。
【請求項24】
骨材;及び
前記骨材間に存在する炭酸カルシウム;
を有して形成される硬化体であって、
前記骨材間に存在する炭酸カルシウムの多形のうち、アラゴナイトが最も多い
硬化体。
【請求項25】
骨材に炭酸塩又は炭酸水素塩が溶解した液を添加することにより、前記骨材間に前記炭酸塩を含有させる工程を備え、
前記骨材間に存在する炭酸カルシウムの多形のうち、アラゴナイトが最も多い
硬化体の製造方法。
【請求項26】
前記液を添加した前記骨材を加熱する工程を備える
請求項25に記載の硬化体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨材、及び該骨材間に存在する物質;を有して形成される硬化体、及び該硬化体の製造方法に関する。また、本発明は、該硬化体の製造方法に用いることができる、廃材を利用したCa(HCO及び/又はMg(HCOを含む液の製造方法に関する。さらに、本発明は、硬化体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建設分野で利用されている無機材料硬化体の多くは、Ca、Si、Alを用いた硬化体であることが多い。この中でセメント系材料は、Caを主たる元素とし、水和反応によって摩擦機構を形成させ硬化体となる。
【0003】
汎用的なポルトランドセメントは、1t製造するのに800kgのCOが排出されるが、このうち5~6割が焼成時のカルシネーションによって排出されるCOであり、焼成に必要な熱源エネルギーの生産とは別に、必ず発生してしまうCOである。
【0004】
セメントを用いて製造された一般的なコンクリートのリサイクルにおいても、若干の炭酸化(COの吸着・固定化)が進む傾向はあるが、これは人為的に制御されたものではなく、設計的に制御できるものではない。また、近年行われているCOを吸収させて製造するコンクリート(Carbonation curingと呼ばれることが多い)(例えば非特許文献1~3など)においては、高濃度COガスを用いている。大気中に低濃度で分散したCOの有効利用方法、及びCO排出の少ない硬化体の製造方法は、現在、建設分野における大きな課題となっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】D. Zhang et al.,J. CO2 Utilization Vol. 21 (2017) p. 119-131。
【非特許文献2】鯉渕 清、盛岡 実、坂井 悦郎、大門 正機、炭酸化養生による低熱セメントモルタルの強度発現性、コンクリート工学論文集、1999、10巻、2号、p. 65-71(公開日 2012/11/13)。
【非特許文献3】渡邉 賢三、横関 康祐、坂井 悦郎、大門 正機、各種混和材を含んだモルタルの炭酸化養生による高耐久化、コンクリート工学年次論文集、13477560、日本コンクリート工学協会、2003年、25巻、1号、653-658頁、https://ci.nii. ac. jp/naid/110009694315/。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、カルシネーションによってセメント製造時に大気中に排出され分散した状態にあるCO又はその他の産業排気ガスとしてのCOを可能な限り回収し、回収したCOを用いて、硬化体、特に建設材料用硬化体を提供することにある。
【0007】
また、本発明の目的は、上記目的以外に、又は、上記目的に加えて、該硬化体の製造方法を提供することにある。
【0008】
さらに、本発明の目的は、上記目的以外に、又は、上記目的に加えて、前記硬化体の製造方法に用いることができる、廃材を利用したCa(HCO及び/又はMg(HCOを含む液の製造方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の目的は、上記目的以外に、又は、上記目的に加えて、硬化体の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、次の発明を見出した。
【0011】
<1>骨材;及び前記骨材間に存在する物質;を有して形成される硬化体であって、前記物質は、該物質100重量%中、炭酸カルシウム及び/又は炭酸マグネシウムを50重量%以上、好ましくは65重量%以上、より好ましくは80重量%以上、最も好ましくは95重量%以上含有する、上記硬化体。なお、前記物質が炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムを含有するとき、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムを各々含有する場合、及び炭酸カルシウム・マグネシウム(CaMg(CO)として含有する場合の双方が含まれる。
【0012】
<2>上記<1>において、硬化体は、その圧縮強度が4MPa以上、好ましくは8MPa以上、より好ましくは12MPa以上、最も好ましくは18MPa以上であるのがよい。なお、硬化体の圧縮強度は、80MPa以下であるのがよい。
【0013】
<3>上記<1>又は<2>において、炭酸カルシウム及び/又は炭酸マグネシウムは、硬化体の製造後28日以内で、平均粒径が5μm以下、好ましくは3μm以下であるのがよい。
【0014】
<4>上記<1>~<3>のいずれかにおいて、前記物質は、炭酸カルシウム又は炭酸マグネシウム以外の塩を含有するのがよい。
【0015】
<5>上記<1>~<4>のいずれかにおいて、前記物質は、炭酸カルシウム又は炭酸マグネシウム以外の塩を含有し、前記塩は、アニオンとしてCO 2-を含む塩を含有するのがよい。
【0016】
<6>上記<5>において、前記塩が、カルシウムアルミネートヘミカーボネート水和物、カルシウムアルミネートモノカーボネート水和物、炭酸バリウム、炭酸リチウム、炭酸鉄(II)、炭酸銀、炭酸カルシウム水和物、Cu(CO)(OH)、MnCO、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウムモノハイドロカルサイト(CaCO・HO)、カルシウムカーボネートヘクサハイドレート(CaCO・6HO)及びこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのがよい。
【0017】
<7>上記<1>~<6>のいずれかにおいて、前記物質が、アニオンとしてCO 2-を含む塩(該塩には炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムが含まれる)のみから本質的になるのがよい。
【0018】
<8>上記<1>~<6>のいずれかにおいて、前記物質が、アニオンとしてCO 2-を含む塩(該塩には炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムが含まれる)のみからなるのがよい。
【0019】
<9>上記<1>~<8>のいずれかにおいて、骨材が、無機粒子(岩石骨材を含む)、無機繊維、有機繊維、有機粒子、金属粒子、及び金属繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのがよい。骨材は、好ましくは、表層に炭酸化物を有するか、及び/又は表層にOH基を有してもよい。
【0020】
<10>上記<1>~<9>のいずれかにおいて、骨材が、建設廃材由来であるのがよい。
【0021】
<11>(I)少なくとも水を含む液に、廃材由来の粒子であってCa源及び/又はMg源を含有する粒子を添加する工程;及び(II)工程(I)で得られた液に、COを溶解させる工程;を有することにより、Ca(HCO及び/又はMg(HCOを含む液を得る、Ca(HCO及び/又はMg(HCOを含む液の製造方法。
【0022】
<12>(III)骨材を所定の形状とする工程;(IV)工程(III)で得られた所定の形状内に、Ca(HCO及び/又はMg(HCOを含む液を添加する工程;及び(V)工程(IV)で得られた所定の形状内の環境を変化させる工程;を有することにより硬化体を得る、硬化体の製造方法であって、該硬化体は、前記骨材;及び前記骨材間に存在する物質;を有して形成され、前記物質が炭酸カルシウム及び/又は炭酸マグネシウムを含有する、上記方法。
【0023】
<13>(I’)少なくとも水を含む液にCa源及び/又はMg源を含有する粒子を添加する工程;(II)工程(I’)で得られた液に、COを溶解させる工程;を有することにより、Ca(HCO及び/又はMg(HCOを含む液を得、(III)骨材を所定の形状とする工程;(IV)工程(III)で得られた所定の形状内に、前記Ca(HCO及び/又はMg(HCOを含む液を添加する工程;及び(V)工程(IV)で得られた所定の形状内の環境を変化させる工程;を有することにより、硬化体を得る、硬化体の製造方法であって、該硬化体は、前記骨材;及び前記骨材間に存在する物質、を有して形成され、前記物質が炭酸カルシウム及び/又は炭酸マグネシウムを含有する、上記方法。
【0024】
<14>上記<12>又は<13>において、(III)工程前に、(VI)骨材の表面を炭酸化する工程をさらに有するのがよい。
【0025】
<15>上記<12>~<14>のいずれかにおいて、前記物質10.0重量%中、炭酸カルシウム及び/又は炭酸マグネシウムが50重量%以上、好ましくは65重量%以上、より好ましくは80重量%以上、最も好ましくは95重量%以上含有するのがよい。
【0026】
<16>上記<12>~<15>のいずれかにおいて、前記硬化体は、その圧縮強度が4MPa以上、好ましくは8MPa以上、より好ましくは12MPa以上、最も好ましくは18MPa以上であるのがよい。なお、硬化体の圧縮強度は、80MPa以下であるのがよい。
【0027】
<17>上記<12>~<16>のいずれかにおいて、炭酸カルシウム及び/又は炭酸マグネシウムは、硬化体の製造後28日以内で、平均粒径が5μm以下、好ましくは3μm以下であるのがよい。
【0028】
<18>上記<11>及び<13>~<17>のいずれかにおいて、前記COが、大気由来又は排気ガス由来であるのがよい。
【0029】
<19>上記<12>~<18>のいずれかにおいて、前記骨材が、建設廃材由来であるのがよい。
【0030】
<20>上記<12>~<19>のいずれかにおいて、前記環境の変化が、i)温度変化、ii)pH変化、及びiii)相変化からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのがよい。
【0031】
<21>上記<12>~<20>のいずれかにおいて、前記環境の変化が、i)温度変化であり、工程(IV)後の所定の形状内の温度が、工程(IV)前の所定の形状内の温度よりも15℃以上、好ましくは30~85℃、より好ましくは45~80℃、最も好ましくは60~80℃、高いのがよい。
【0032】
<22>上記<12>~<21>のいずれかにおいて、前記環境の変化が、ii)pHの変化であり、前記Ca(HCO及び/又はMg(HCOの溶液を添加するとpHが上昇する物質を、工程(IV)の添加前に、所定の形状内に導入し、工程(IV)の添加後にpHを上昇させるのがよい。
【0033】
<23>上記<12>~<22>のいずれかにおいて、前記環境の変化が、iii)相変化であり、(IVa)前記工程(III)で得られた所定の形状を前記Ca(HCO及び/又はMg(HCOを含む液に浸漬することにより前記工程(IV)を行い、(Va)該液に含まれる水分を乾燥させることにより前記工程(V)を行うのがよい。
【0034】
<24>上記<23>において、工程(IVa)及び工程(Va)の組合せをさらに1回以上行うのがよい。
【0035】
<25>(I”)少なくとも水を含む液にCa源及び/又はMg源を含有する粒子を添加させる手段;(II”)手段(I”)で得られた液に、COを溶解させて、Ca(HCO及び/又はMg(HCOを含む液を得る手段;(III”)骨材を所定の形状とする手段;(IV”)手段(III”)で得られた所定の形状内に、前記Ca(HCO及び/又はMg(HCOを含む液を添加させる手段,及び(V”)手段(IV”)で得られた所定の形状内の環境を変化させる手段;を有し、硬化体を得る硬化体の製造装置であって、該硬化体は、前記骨材;及び前記骨材間に存在する物質;を有して形成され、前記物質が炭酸カルシウム及び/又は炭酸マグネシウムを含有する、上記装置。
【発明の効果】
【0036】
本発明により、カルシネーションによってセメント製造時に大気中に排出され分散した状態にあるCO又はその他の産業排気ガスとしてのCOを可能な限り回収し、回収したCOを用いて、硬化体、特に建設材料硬化体を提供することができる。
【0037】
また、本発明により、上記効果以外に、又は、上記効果に加えて、該硬化体の製造方法を提供することができる。
【0038】
さらに、本発明により、上記効果以外に、又は、上記効果に加えて、前記硬化体の製造方法に用いることができる、廃材を利用したCa(HCO及び/又はMg(HCOを含む液の製造方法を提供することができる。
【0039】
また、本発明により、上記効果以外に、又は、上記効果に加えて、硬化体の製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の硬化体の製造装置の一例を概略的に示す図である。
図2】実施例1-1で得られた硬化体C1-1の粒子C1-1’についてのX線粉末回折試験結果を示す図である。
図3】実施例1-1で得られた硬化体C1-1の走査型電子顕微鏡(SEM)像を示す図である。
図4】実施例2で得られた硬化体C2の粒子C2’についてのX線粉末回折試験結果を示す図である。
図5】実施例3-1~3-3で得られた硬化体及び該硬化体の調製前の成形体の圧縮強度を示す図である。なお、「事前炭酸化処理なし」及び「事前炭酸化処理あり」は、用いた骨材について、表面を炭酸化した(「事前炭酸化処理あり」)か、否(「事前炭酸化処理なし」)かを示す。また、横軸の「4MPa」、「6MPa」及び「10MPa」は、成形体を成形する際の加圧の程度を示す。
図6】粉体A1と硬化体C1-1のアモルファス相と結晶相の組成を示す図である。
図7】硬化体のSEM画像を示す図である。
図8】硬化体C1-1のケイ素、カルシウム、炭素のSEM-EDSマッピングを示す図である。
図9】硬化体C1-1の偏光顕微鏡写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本願に記載する発明を詳細に説明する。
【0042】
本開示では、コンクリートなどに水和物として保持されているカルシウムを、炭酸化によって二酸化炭素を固定化するための潜在的な資源として利用する技術について説明する。この資源は、日本で最大20億トン、世界で550億トンもの二酸化炭素を固定化する能力がある。これは、大気中の二酸化炭素の総量約28兆トンの2.0%に相当する。日本で蓄積されたコンクリートの量は、セメントの生産量と解体量から約1兆トンと推定されている。日本で解体により発生するコンクリート塊は年間4000万~1億トンであり、180万~480万トンの潜在的な二酸化炭素固定能力が路盤材や埋め戻し材などとして利用されていないことになる。したがって、本開示では、コンクリート塊などの骨材と炭酸カルシウムなどのバインダーを含む炭酸カルシウムコンクリート(CCC)などの新しい硬化体を提案する。
【0043】
本願は、骨材;及び前記骨材間に存在する物質;を有して形成される硬化体であって、前記物質は、該物質100重量%中、炭酸カルシウム及び/又は炭酸マグネシウムを50重量%以上、好ましくは65重量%以上、より好ましくは80重量%以上、最も好ましくは95重量%以上含有する、上記硬化体を提供する。
【0044】
また、本願は、該硬化体の製造方法を提供する。
【0045】
さらに、本願は、該硬化体の製造方法に用いることができる、廃材を利用したCa(HCO及び/又はMg(HCOを含む液の製造方法を提供する。
【0046】
また、本願は、該硬化体の製造装置を提供する。
【0047】
以降、硬化体について説明し、その後、製造方法、製造装置について説明する。
【0048】
<硬化体>
本発明の硬化体は、骨材;及び前記骨材間に存在する物質;を有して形成される。
【0049】
<<骨材>>
本発明の硬化体における骨材とは、従来、コンクリートやアスファルト混合物を製造する際に用いられる材料のことをいい、例えば、川や海などからとってきた砂利、砂;岩石等を粉砕したもの;産業廃棄物から出てくる高炉スラグ、フライアッシュ、その他、溶融スラグ等を粉砕したもの;ガラス化した材料を粉砕したもの;無機系建設廃材を粉砕したもの;などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0050】
骨材は、無機粒子(岩石骨材を含む)、無機繊維、有機繊維、有機粒子、金属粒子、及び金属繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのがよい。例えば、繊維として、コンクリート用の鋼製の繊維、炭素繊維、ガラス繊維、玄武岩繊維(バサルトファイバー、玄武岩を溶融してガラス化して繊維を作るもの)、プラスチック製の繊維などのコンクリート用材料として市販されているものを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0051】
骨材は、好ましくは、表層に炭酸化物を有するか、及び/又は表層にOH基を有してもよい。
【0052】
また、骨材は、建設廃材由来であるのがよい。
【0053】
<<骨材間に存在する物質>>
本発明の硬化体は、上記骨材以外に、骨材間に存在する物質を有して形成され、該物質100重量%中、炭酸カルシウム及び/又は炭酸マグネシウムを50重量%以上、好ましくは65重量%以上、より好ましくは80重量%以上、最も好ましくは95重量%以上含有する。
【0054】
ここで、物質が炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムの双方を含有するとき、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムを各々含有する場合、及び炭酸カルシウム・マグネシウム(CaMg(CO)として含有する場合の双方が含まれる。
【0055】
骨材間に存在する物質に含まれる炭酸カルシウム及び/又は炭酸マグネシウムは、硬化体の製造後28日以内で、平均粒径が5μm以下、好ましくは3μm以下であるのがよい。
【0056】
なお、平均粒径は、走査型電子顕微鏡像から得ることができる。具体的には、次のようにして得ることができる。走査電子顕微鏡で画像を取得し、2次元画像上に示された対象となる粒子の輪郭を抽出したのちに、球状であれば円形、円柱状であれば長方形に近似した上で、形状と寸法を抜き出す。円形の場合は、その直径を計測する。円筒状の場合には、長方形の半径方向及び長さ方向の寸法を出し、円筒状体積から等価な体積を有する球体を仮定して等価な直径を算出する。
【0057】
骨材間に存在する物質は、炭酸カルシウム又は炭酸マグネシウム以外の塩を含有してもよい。例えば、後述する硬化体の製造方法において、「水」として「海水」を用いた場合、該「海水」由来の塩を有してもよい。また、「水」として炭酸カルシウム又は炭酸マグネシウム以外の塩を有するものを用いた場合、該塩を有してもよい。
【0058】
骨材間に存在する物質は、炭酸カルシウム又は炭酸マグネシウム以外の塩を含有し、該塩は、アニオンとしてCO 2-を含む塩を含有するのがよい。アニオンとしてCO 2-を含む塩として、カルシウムアルミネートヘミカーボネート水和物、カルシウムアルミネートモノカーボネート水和物、炭酸バリウム、炭酸リチウム、炭酸鉄(II)、炭酸銀、炭酸カルシウム水和物、Cu(CO)(OH)、MnCO、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウムモノハイドロカルサイト(CaCO・HO)、カルシウムカーボネートヘクサハイドレート(CaCO・6HO)及びこれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0059】
骨材間に存在する物質は、アニオンとしてCO 2-を含む塩(該塩には炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムが含まれる)のみから本質的になるか、又はアニオンとしてCO 2-を含む塩(該塩には炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムが含まれる)のみからなるのがよい。
【0060】
ここで、「本質的になる」とは、アニオンとしてCO 2-を含む塩(該塩には炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムが含まれる)以外の塩を含んでもよいが、本発明の硬化体の特性を減じない程度の量で含んでいることをいう。
【0061】
なお、骨材間に存在する物質は、後述するように、大気中のCO由来であるか、種々の産業排気ガス中のCO由来であるのがよい。特に、カルシネーションによってセメント製造時に大気中に排出され分散した状態にあるCOなどを含めて種々の産業排気ガス中のCO由来とすることにより、大気中のCOの固定化に寄与することができる。
【0062】
本発明の硬化体における骨材及び骨材間に存在する物質は、走査電子顕微鏡、偏光顕微鏡、X線CT撮影、エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX又はEDS)などを用いて、密度差、電子密度差、光学的特徴の差異によって同定することができる。
【0063】
本発明の硬化体は、上記骨材;及び骨材間に存在する物質;以外に、空隙を有してもよい。
【0064】
本発明の硬化体は、その圧縮強度が4MPa以上、好ましくは8MPa以上、より好ましくは12MPa以上、最も好ましくは18MPa以上であるのがよい。なお、硬化体の圧縮強度は、80MPa以下であるのがよい。
【0065】
ここで、硬化体の圧縮強度は、従来公知の万能試験機(引張・圧縮試験機)により測定することができる。例えば、硬化体(試験体)を圧縮し、荷重を測定して、最大値を記録し、その荷重を断面積で除して応力(圧縮強度(MPa))として算出することができる。
【0066】
本発明の硬化体は、コンクリートの代替品として用いることができ、その応用は、例えば建設材料用、具体的には建築用柱、梁、スラブなどの部材;レンガ、ブロックなどの固化体;建造物の基礎;杭などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0067】
<硬化体の製造方法>
本発明の硬化体は、例えば次のような方法により製造することができる。
【0068】
すなわち、
(III)骨材を所定の形状とする工程;
(IV)工程(III)で得られた所定の形状内に、Ca(HCO及び/又はMg(HCOを含む液を添加する工程;及び
(V)工程(IV)で得られた所定の形状内の環境を変化させる工程;
を有することにより、上記硬化体を得ることができる。
なお、上記において、「骨材」、「硬化体」は上述と同じ定義を有する。
【0069】
また、本発明の硬化体は、例えば次のような方法により製造することができる。
【0070】
すなわち、
(I’)少なくとも水を含む液に、Ca源及び/又はMg源を含有する粒子を添加する工程;
(II)工程(I’)で得られた液に、COを溶解させる工程;
を有することにより、Ca(HCO及び/又はMg(HCOを含む液を得、
(III)骨材を所定の形状とする工程;
(IV)工程(III)で得られた所定の形状内に、前記Ca(HCO及び/又はMg(HCOを含む液を添加する工程;及び
(V)工程(IV)で得られた所定の形状内の環境を変化させる工程;
を有することにより、上記硬化体を得ることができる。
なお、上記において、「骨材」、「硬化体」は上述と同じ定義を有する。
【0071】
以下、各工程について説明する。
【0072】
<<工程(I’)>>
工程(I’)は、少なくとも水を含む液に、Ca源及び/又はMg源を含有する粒子を添加する工程である。
【0073】
少なくとも水を含む液は、工程(II)後に得られるCa(HCO及び/又はMg(HCOを含む液の溶媒となる。少なくとも水を含む液として、水のみからなる場合、水とアンモニアなどとの混合溶媒、海水、雨水などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0074】
Ca源及び/又はMg源を含有する粒子は、Ca源のみ、Mg源のみ、Ca源とMg源との双方を含有すれば、特に限定されない。Ca源又はMg源以外を有してもよい。なお、Ca源又はMg源以外を有する場合、それらの成分は、後述の硬化体に含有され得る。
【0075】
Ca源及び/又はMg源を含有する粒子の粒径は、工程(II)後に、Ca(HCO及び/又はMg(HCOを含む液が得られれば、特に限定されない。
【0076】
Ca源及び/又はMg源を含有する粒子は、建設廃材由来、岩石由来、他の工業副産物(高炉スラグなど)由来とすることができる。
【0077】
<<工程(II)>>
工程(II)は、工程(I’)で得られた液に、COを溶解させる工程である。
【0078】
COを溶解させることができれば、従来公知の手法を用いることができる。例えば、該手法として、バブリング、細孔式、加圧溶解式、超音波式、旋回液流式、気液混合せん断式などの機械を用いる手法があるが、これらに限定されない。
【0079】
ここで用いるCOは、大気中のCO由来であるか、種々の産業排気ガス中のCO由来であるのがよい。特に、カルシネーションによってセメント製造時に大気中に排出され分散した状態にあるCOなどを含めて種々の産業排気ガス中のCO由来とすることにより、大気中のCOの固定化に寄与することができる。
【0080】
工程(II)後、Ca(HCO及び/又はMg(HCOを含む液を得ることができる。
【0081】
ここで、Ca(HCO及び/又はMg(HCOを含む液は、Ca(HCO及び/又はMg(HCOが溶解している液であれば、特に限定されない。例えば、Ca(HCO及び/又はMg(HCOの溶液、その他の物質が懸濁又は分散している液、例えばスラリであってもよい。なお、その他の物質として、Ca(HCO及び/又はMg(HCOを含む、上述のアニオンとしてCO 2-を含む塩を含んでおり、それらが懸濁又は分散していてもよい。
【0082】
<<工程(VI)>>
工程(I’)又は工程(II)とは別に、工程(III)の前に、(VI)骨材の表面を炭酸化する工程、及び/又は骨材の表面にOH基を導入する工程をさらに有するのがよい。特に、(VI)骨材の表面を炭酸化する工程をさらに有するのがよい。工程(VI)は、骨材の表面を炭酸化するか、及び/又は、表面にOH基を導入する、従来の方法を用いることができ、特に限定されない。例えば、炭酸化させる工程として、骨材を二酸化炭素濃度5%の環境下に1ヶ月以上静置することを挙げることができるが、この条件に限定されず、またその他の従来公知の方法を用いることができる。
【0083】
<<工程(III)>>
工程(III)は、骨材を所定の形状とする工程である。
【0084】
ここで、骨材は、上述と同じ定義を有する。なお、工程(VI)を有する場合には、工程(VI)後に得られた、表面が炭酸化された骨材、及び/又は、表面にOH基が導入された骨材を用いることができる。
【0085】
また、所定の形状は、硬化体の所望の形状に合わせるか、及び/又は、工程(VI)又は工程(V)において、作業を簡便にする形状にするのがよい。
【0086】
該所定の形状は、用いる骨材に依存するが、骨材をある形状の型枠に充填させることにより得てもよい。また、用いる骨材に依存するが、骨材をある形状の型枠に充填させた後、例えば圧を付加して骨材のみで所定の自立形状とするようにしてもよい。
【0087】
<<工程(IV)>>
工程(IV)は、工程(III)で得られた所定の形状内に、前記Ca(HCO及び/又はMg(HCOを含む液を添加する工程である。
【0088】
添加する工程は、添加する液の状態、所定の形状などに依存するが、例えば、骨材をある形状の型枠に充填させて所定の形状を得ている場合には、該型枠にポンプ、水頭差などによる重力などを用いて、Ca(HCO及び/又はMg(HCOを含む液を添加するのがよい。また、例えば、骨材のみで所定の自立形状を形成する場合、該所定の自立形状をCa(HCO及び/又はMg(HCOを含む液に浸漬することにより、工程(III)で得られた所定の形状内にCa(HCO及び/又はMg(HCOを含む液を添加することとしてもよい。
【0089】
<<工程(V)>>
工程(V)は、所定の形状内の環境を変化させる工程である。
【0090】
環境の変化は、硬化体を形成するのであれば、特に限定されないが、i)温度変化、ii)pH変化、及びiii)相変化からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのがよい。
【0091】
環境の変化として、i)温度の変化を用いる場合、用いる液、用いる骨材などに依存するが、工程(IV)後の型枠内の温度を、工程(IV)前の型枠内の温度よりも15℃以上、好ましくは30~85℃、より好ましくは45~80℃、最も好ましくは60~80℃、高くするのがよい。
【0092】
環境の変化として、ii)pHの変化を用いる場合、Ca(HCO及び/又はMg(HCOを含む液を添加するとpHが上昇する物質を、工程(IV)の添加前に、型枠内に導入し、工程(IV)の添加後にpHを上昇させるのがよい。pHが上昇する物質として、CaO、Ca(OH)、MgOなどの強アルカリとなる物質を挙げることができるが、これらに限定されない。なお、用いる骨材に依存するが、骨材には、pHが上昇する物質、例えば、上述のCaO、Ca(OH)、MgOなどの強アルカリとなる物質が表面に存在し得る。したがって、用いる骨材に依存するが、工程(IV)によるCa(HCO及び/又はMg(HCOを含む液の添加により、ii)pH変化が生じる工程(V)が行われる場合がある。
【0093】
環境の変化として、iii)相変化を用いる場合、工程(IV)により添加したCa(HCO及び/又はMg(HCOを含む液の水分を蒸発させることにより行うのがよい。なお、蒸発させる工程は、型枠外から加熱する工程、型枠内を風乾させる工程などがあるが、これらに限定されない。また、例えば、(IVa)前記工程(III)で得られた所定の形状、例えば所定の自立形状を前記Ca(HCO及び/又はMg(HCOを含む液に浸漬することにより前記工程(IV)を行い、(Va)該液に含まれる水分を乾燥させることによりiii)相変化が生じる前記工程(V)を行うのがよい。該工程(IVa)及び該工程(Va)の組合せを1回行うだけでなく、さらに1回以上、例えば2回、3回などと行ってもよい。
【0094】
上記工程(I’)~工程(V)により、本発明の硬化体を得ることができる。なお、硬化体中の「骨材間に存在する物質」は、上述と同じ定義を有する。
【0095】
なお、本発明の硬化体は、上述したように、例えば、
(III)骨材を所定の形状とする工程;
(IV)工程(III)で得られた所定の形状内に、Ca(HCO及び/又はMg(HCOを含む液を添加する工程;及び
(V)工程(IV)で得られた所定の形状内の環境を変化させる工程;
を有することにより、得ることができる。
ここで、工程(III)及び(IV)は、上述と同じ定義を有する。
【0096】
<Ca(HCO及び/又はMg(HCOを含む液の製造方法>
本願は、上述の硬化体の製造方法に用いることができる、廃材を利用したCa(HCO及び/又はMg(HCOを含む液の製造方法を提供する。
【0097】
該方法は、
(I)少なくとも水を含む液に、廃材由来の粒子であってCa源及び/又はMg源を含有する粒子を添加する工程;及び
(II)工程(I)で得られた液に、COを溶解させる工程;
を有することにより、Ca(HCO及び/又はMg(HCOを含む液を得る。
ここで、工程(I)は、廃材由来の粒子を用いる以外、上述の工程(I’)と同じ定義を有する。ここで、廃材は、建設廃材であるのがよい。
また、工程(II)は、上述の工程(II)と同じ定義を有する。
【0098】
<硬化体の製造装置>
本願は、上述の硬化体の製造方法を具現化した、硬化体の製造方法を提供する。
【0099】
該装置は、
(I”)少なくとも水を含む液にCa源及び/又はMg源を含有する粒子を添加させる手段;
(II”)手段(I”)で得られた液に、COを溶解させて、Ca(HCO及び/又はMg(HCOを含む液を得る手段;
(III”)骨材を所定の形状とする手段;
(IV”)手段(III”)で得られた所定の形状内に、前記Ca(HCO及び/又はMg(HCOを含む液を添加させる手段;及び
(V”)手段(IV”)で得られた所定の形状内の環境を変化させる手段,
を有することにより、
前記骨材;及び前記骨材間に存在する物質;を有して形成される硬化体であって前記物質が炭酸カルシウム及び/又は炭酸マグネシウムを含有する、硬化体を得ることができる。
手段(I”)~(V”)は、上記工程(I’)~(V)を具現化したものであり、各手段に記載した要素、例えば「少なくとも水を含む液」、「Ca源及び/又はMg源を含有する粒子」、「骨材」、「所定の形状」、「環境の変化」などは、上述と同じ定義を有する。
【0100】
本発明の硬化体の製造装置について、図1にその概略を示す。なお、図1に示す装置は、本発明の硬化体の製造装置の一例であって、本発明の硬化体の製造装置は、図1に示す装置に限定されるものではない。
【0101】
図1の製造装置1は、
手段(I”)で用いられる、少なくとも水を含む液2を入れる容器3、
手段(II”)で、COを溶解させるための、大気4を少なくとも水を含む液2に吹き込む管5、及び図示されていないが該管5を支える支柱、大気4を少なくとも水を含む液1に吹き込むポンプ(図示されていない)、
手段(III”)で用いられる型枠6、
手段(IV”)で用いられる、手段(III”)で得られた型枠内に、前記Ca(HCO及び/又はMg(HCOを含む液を添加させる手段;及び
(V”)型枠内の環境に液を添加させるポンプ7並びに管8-1及び8-2、
手段(V”)で用いられる、型枠内の環境を変化させる手段であるヒータ9、
を備える。
また、型枠6から得られる液(主に水)を容器3に導く管10を備える。
さらに、図示しないが、少なくとも水を含む液2にCa源及び/又はMg源を含有する粒子11を添加させる手段を備える。なお、添加させる手段として、従来公知の手段を用いることができる。
【0102】
上記工程(I’)~(V)で説明したとおり、手段(I”)において、容器3に、図示していない手段により、Ca源及び/又はMg源を含有する粒子11を添加する。また、容器3に、少なくとも水を含む液2を、図1に図示していない手段により添加する。上記で得られた液2に、大気4を吹き込むポンプ(図示されていない)により、COを溶解させて、Ca(HCO及び/又はMg(HCOを含む液を得る。それとは別に、型枠6内に骨材12を図示していない手段により充填させる。なお、型枠6の底部には骨材12が漏れ出ないように例えばフィルタ13などを設けるのがよい。充填により得られた型枠6内に、Ca(HCO及び/又はMg(HCOを含む液を管8-1、ポンプ7、管8-2、及びフィルタ13を介して添加させる。添加後、ヒータ9により型枠内の加熱することにより、硬化体が形成される。なお、加熱により生じた水蒸気等は、管10を介して、容器3に導かれる。
【0103】
図1の概略図により、本発明の硬化体の製造装置を説明したが、上述したとおり、本発明の硬化体の製造装置は、図1の装置に限定されるものではない。
【0104】
以下、実施例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【実施例0105】
(実施例1-1)
<骨材>
硬化体を作製する骨材として、建設廃材を模した、普通ポルトランドセメントペーストを用いた。普通ポルトランドセメントを水セメント比0.4で練り混ぜ、40mm×40mm×160mmの型枠に打込み、材齢1日後に脱型した。その後、水中養生を20℃で2日、60℃で7日実施した。これは、短期間で十分水和した状態を製造する目的で実施した。その後、メノウ乳鉢において、粒径が10μm~500μmとなるように粉砕し、その後、中性化促進槽で炭酸化させた。炭酸化条件は20℃、60%RH、二酸化炭素濃度5%であり、この環境に試料を1ヶ月以上静置し、骨材としての粉体A1を得た。
【0106】
その後、φ10×20mmのステンレス製カラムの中に金属製のフィルタを入出口に用い、その間に骨材としての粉体A1を詰めた。骨材総量は2.24gであった。
【0107】
骨材としての粉体A1の平均粒径をレーザ回折式粒度分布測定装置(Microtrack社製MT-3000II)を用い、溶媒:イオン交換水を用い、屈折率1.81として測定を行った。その結果、170μmであることがわかった。
【0108】
<重炭酸カルシウム溶液の調製>
上述の炭酸化した硬化セメントペースト粉体A1をイオン交換水に浸し、溶液温度を4℃に制御しながら、COガスを吹き込みして撹拌し、重炭酸カルシウム溶液B1を製造し実験に供した。重炭酸カルシウムの存在は、溶液を蒸発させて得られた残分、容器に残った固形分をX線粉末回折によって炭酸カルシウムであることを確認することによって確認した。また、該炭酸カルシウムの量から、カルシウム濃度を求めた結果、CaCO換算で1.07g/Lであることがわかった。
【0109】
<硬化体の調製>
この溶液B1をポンプ(最大吐出量19L/min、最大揚程3.4m)を用いて、カラムに流した。溶液供給中は、カラムの外側からシリコンラバーヒーターにより、カラムの外面を70℃に制御した。24時間経過後、182gの溶液が通過後、溶液供給を停止し、カラムを取り出し硬化体C1-1の製造を確認した。
【0110】
<硬化体の圧縮強度>
得られた硬化体C1-1について、変位制御式万能試験機(オートグラフ250kN(株式会社島津製作所))を用いて載荷試験を行ったところ、8.2MPaの圧縮強度を有することがわかった。
【0111】
<硬化体の熱重量試験及びX線回折試験〉
また、載荷試験後で生じた硬化体C1-1の破片を粉砕し、直径l0μm以下程度の粒子C1-1’にした。得られた粒子C1-1’を、X線回折装置(RIGAKU Mini Flex diffractometer)を用いてX線粉末回折試験を行った。測定条件として、X線源:Cu-Kα、600W;ステップ:0.02°;反射法;2θ:5~70°;で行った。その結果を図2に示す。図2から、普通ポルトランドセメントの成分由来のピークの他に、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムのピークを確認した。具体的には、図2から、カルサイト(Calcite)、バテライト(Vaterite)、アラゴナイト(Aragonite)、ドロマイト(Dolomite)、及びマグネサイト(Magnesite)のピークが確認できた。
【0112】
また、得られた粒子C1-1’について、熱重量分析装置(NETZSCH社製、STA449F5 Jupiter)を用いて熱重量試験を行ったところ、硬化体C1-1が炭酸カルシウムを有することを確認した。
【0113】
X線粉末回折試験及び熱重量試験の結果から、硬化体C1は、骨材の他に、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムを有することが確認でき、該炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムが、骨材間に存在することにより硬化体を形成していることがわかった。
【0114】
さらに、骨材として利用した粉体A1、硬化体C1-1の粒子C1-1’の両者において、熱重量分析及びX線回折分析の結果から、炭酸カルシウム量、炭酸マグネシウム量が、1000℃における質量に対して増大していることを確認した。具体的には、次の1)~6)で確認した。
【0115】
すなわち、1)カラムにつめた骨材の総重量を測定a、2)硬化後にできた硬化体の総重量を測定b、3)bとaとの差(b-a)によって、骨材間に存在する物質の総量を決定、4)内部標準物質を入れた骨材用粉体についてX線回折/Rietveld解析を行い、アモルファス量と各相組成を決定、5)内部標準物質を入れた硬化後試験体についてX線回折/リートベルト(Rietveld)解析を行いアモルファス量と結晶相の組成を決定。6)この値を総量1として規格化し、3)にある増分を考慮して、1+(b-a)/a倍し、4)の値と5)の値を比較することにより、骨材間に存在する物質について確認し、その中での炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムの占める割合、96重量%を確認した。
【0116】
<硬化体に含まれる炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムの平均粒径>
硬化体C1に含まれる炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムの平均粒径は、上述したとおり、走査型電子顕微鏡像から観測、算出し、4μmであることがわかった。
【0117】
<走査型電子顕微鏡(SEM)像>
得られた硬化体C1-1について、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その結果を図3に示す。図3から、硬化体C1-1は、骨材間が骨材に存在する物質により埋められていることが確認できる。
【0118】
(実施例1-2)~(実施例1-5)
実施例1-1の<硬化体の調製>において、カラム外面の温度70℃の代わりに50℃(実施例1-2)、60℃(実施例1-3)、70℃(実施例1-4)、100℃(実施例1-5)とした以外、実施例1-1と同様の方法により、硬化体C1-2(実施例1-2)、硬化体C1-3(実施例1-3)、硬化体C1-4(実施例1-4)、硬化体C1-5(実施例1-5)を得た。
【0119】
硬化体C1-2~C1-5について、実施例1-1と同様に圧縮強度を求めたところ、硬化体C1-2:3.2MPa、硬化体C1-3:8.8MPa、硬化体C1-4:9.5MPa、硬化体C1-5:5.5MPaであることを確認した。
【0120】
なお、硬化体C1-2~C1-5について、X線回折試験の結果、熱重量分析試験の結果、SEM像などは、実施例1-1と同様であった。
【0121】
(比較例1)
実施例1-1の<硬化体の調製>において、カラム外面の温度70℃の代わりに、400℃とした以外、実施例1-1と同様の方法としたところ、硬化体を得ることはできなかった。
【0122】
このことから、実施例1-1、実施例1-2~実施例1-5及び比較例1で用いた系において、カラム外面の温度は、硬化体の形成に重要な因子であることがわかった。
【0123】
(実施例2)
<骨材>
硬化体を作製する骨材として、建設廃材を模した、普通ポルトランドセメントペーストを用いた。普通ポルトランドセメントを水セメント比0.4で練り混ぜ、40mm×40mm×160mmの型枠に打込み、材齢1日後に脱型した。その後、水中養生を20℃で2日、60℃で7日実施した。これは、短期間で十分水和した状態を製造する目的で実施した。その後、メノウ乳鉢において、粒径がl0μm~500μmとなるように粉砕し、骨材としての粉体A2を得た。
【0124】
粉体A2は、熱重量測定によって400℃近辺において質量低下が確認され、水酸化カルシウムを有していることが確認されている。水酸化カルシウムの飽和状態のpHは12.6であるため、溶液がこの粉体に接すると高いpHになる。
【0125】
φ10×20mmのステンレス製カラムの中に金属製のフィルタを入出口に用い、その間に骨材としての粉体A2を詰めた。骨材総量は2.24gであった。
【0126】
<重炭酸カルシウム溶液の調製>
実施例1と同様の方法により、重炭酸カルシウム溶液B1を調製した。
【0127】
<硬化体の調製>
この溶液B1をポンプ(最大吐出量19L/min、最大揚程3.4m)を用いて、カラムに流した。溶液供給中は、カラムの外側からシリコンラバーヒーターにより、カラムの外面を70℃に制御した。24時間経過後、365gの溶液が通過後、溶液供給を停止し、カラムを取り出し硬化体C2の製造を確認した。
【0128】
<硬化体の圧縮強度>
得られた硬化体C2について、実施例1と同様に、載荷試験を行ったところ、2.5MPaの圧縮強度を有することがわかった。
【0129】
<硬化体の熱重量試験及びX線回折試験>
また、載荷試験後で生じた硬化体C2の破片を粉砕し、直径l0μm以下程度の粒子C2’にし、実施例1と同様に、X線粉末回折試験を行った。その結果を図4に示す。図4から、普通ポルトランドセメントの成分由来のピークの他に、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムのピークを確認した。具体的には、図4から、カルサイト(Calcite)、パテライト(Vaterite)、ドロマイト(Dolomite)、及びマグネサイト(Magnesite)のピークが確認できた。
【0130】
また、得られた粒子C2’について、実施例1と同様に、熱重量試験を行ったところ、炭酸カルシウムを有することを確認した。
【0131】
X線粉末回折試験及び熱重量試験の結果から、硬化体C2は、骨材の他に、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムを有することが確認でき、該炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムが、骨材間に存在することにより硬化体を形成していることがわかった。
【0132】
また、実施例1-1と同様に、骨材間に存在する物質について確認し、その中での炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムの占める割合を確認した結果、95重量%以上であることがわかった。
【0133】
(実施例3-1)
<骨材>
硬化体を作製する骨材として、建設廃材を模した、モルタルを用いた。具体的には、材齢28日まで水中養生した普通ポルトランドセメント及び砂岩による砕砂を用いたモルタルを用いた。該モルタルを破砕し、5mmふるいを全量通過する粒度までにした後、45℃、80%RH、CO濃度80%の条件で1週間炭酸化処理した(事前炭酸化処理あり)。その後、所定粒度(最大粒径が0.6mm)のふるいで分級し、ふるいを通過した粉末試料A3-Cを使用した。
【0134】
この粉末試料A3-Cに10wt%の水を添加し、成形圧力4MPaで加圧し、成形体(φ10×20mm)A3-C-1’を作製した。
【0135】
<重炭酸カルシウム溶液の調製>
実施例1と同様の方法により、重炭酸カルシウム溶液B1を調製した。
【0136】
<硬化体の調製>
成形体A3-C-1’を重炭酸カルシウム溶液B1に2時間浸漬した後、24時間、乾燥し、硬化体C3-1-1を得た。また、硬化体C3-1-1を、さらに重炭酸カルシウム溶液B1に2時間浸漬した後、24時間、乾燥し、硬化体C3-1-2を得た。さらに、硬化体C3-1-2を、さらに重炭酸カルシウム溶液B1に2時間浸漬した後、24時間、乾燥し、硬化体C3-1-3を得た。
【0137】
<硬化体の圧縮強度>
得られた硬化体C3-1-1(成形圧力:4MPa、浸漬と乾燥:1回)、C3-1-2(成形圧力:4MPa、浸漬と乾燥:2回)、C3-1-3(成形圧力:4MPa、浸漬と乾燥:3回)及び成形体A3-C-1’について、実施例1と同様に、載荷試験を行った。その結果を図5に示す。
【0138】
(実施例3-2)
実施例3-1における成形体(φ10×20mm)A3-C-1’の成形において、成形圧力4MPaの代わりに6MPaを用いた以外、実施例3-1と同様に、成形体A3-C-2’を得た。実施例3-1における<硬化体の調製>において、成形体A3-C-1’の代わりに成形体A3-C-2’を用いた以外、実施例3-1と同様の方法により、硬化体C3-2-1(成形圧力:6MPa、浸漬と乾燥:1回)、C3-2-2(成形圧力:6MPa、浸漬と乾燥:2回)、C3-2-3(成形圧力:6MPa、浸漬と乾燥:2回)を得た。
【0139】
硬化体C3-2-1、C3-2-2、C3-2-3及び成形体A3-C-2’について、実施例1と同様に、載荷試験を行った。その結果を図5に示す。
【0140】
(実施例3-3)
実施例3-1における成形体(φ10×20mm)A3-C-1’の成形において、成形圧力4MPaの代わりに10MPaを用いた以外、実施例3-1と同様に、成形体A3-C-3’を得た。実施例3-1における<硬化体の調製>において、成形体A3-C-1’の代わりに成形体A3-C-3’を用いた以外、実施例3-1と同様の方法により、硬化体C3-3-1(成形圧力:10MPa、浸漬と乾燥:1回)、C3-3-2(成形圧力:10MPa、浸漬と乾燥:2回)、C3-3-3(成形圧力:10MPa、浸漬と乾燥:3回)を得た。
【0141】
硬化体C3-3-1、C3-3-2、C3-3-3及び成形体A3-C-3’について、実施例1と同様に、載荷試験を行った。その結果を図5に示す。
【0142】
(実施例3-4~実施例3-6)
<骨材>
硬化体を作製する骨材として、建設廃材を模した、モルタルを用いた。具体的には、材齢28日まで水中養生した普通ポルトランドセメント及び砂岩による砕砂を用いたモルタルを用いた。該モルタルを破砕し、5mmふるいを全量通過する粒度までにし、その後、所定粒度(最大粒径が0.6mm)のふるいで分級し、ふるいを通過した粉末試料A3-NC(事前炭酸化処理なし)を使用した。
【0143】
この粉末試料A3-NCに10wt%の水を添加し、成形圧力4MPa、6MPa、10MPaで加圧し、それぞれ、成形体(φ10×20mm)A3-NC-1’(成形圧力:4MPa)、A3-NC-2’(成形圧力:6MPa)、A3-NC-3’(成形圧力:10MPa)、を作製した。
【0144】
<硬化体の調製>
実施例3-1~実施例3-3と同様に、重炭酸カルシウム溶液B1に2時間浸漬、その後の24時間乾燥の組合せを1回、2回、又は3回とし、硬化体C3-4-1(成形圧力:4MPa、浸漬と乾燥:1回)、硬化体C3-4-2(成形圧力:4MPa、浸漬と乾燥:2回)、硬化体C3-4-3(成形圧力:4MPa、浸漬と乾燥:3回)、硬化体C3-5-1(成形圧力:6MPa、浸漬と乾燥:1回)、硬化体C3-5-2(成形圧力:6MPa、浸漬と乾燥:2回)、硬化体C3-5-3(成形圧力:6MPa、浸漬と乾燥:3回)、硬化体C3-6-1(成形圧力:10MPa、浸漬と乾燥:1回)、硬化体C3-6-2(成形圧力:10MPa、浸漬と乾燥:2回)、硬化体C3-6-3(成形圧力:10MPa、浸漬と乾燥:3回)を得た。これらの硬化体、並びに成形体A3-NC-1’、A3-NC-2’及びA3-NC-3’について、実施例1と同様に、載荷試験を行った。その結果を図5に示す。
【0145】
図5から、次のことがわかる。
【0146】
成形体に関しては、成形体の成形圧力が高い、すなわち充填率が高いほど、成形直後の圧縮強度が高いことがわかる。また、事前炭酸化処理なしの粉末A3-NCを用いた試験体の方が、成形直後の圧縮強度が高いことが明らかとなった。さらに、図5には図示しないが、粉末の粒度によって成形体の充填率はほとんど変化が認められなかったものの、細粒の粉末を用いることで、粗粒の場合よりも圧縮強度が高くなることがわかった。
【0147】
硬化体に関しては、浸漬と乾燥の回数を増やすほど、圧縮強度が高くなることがわかった。また、事前炭酸化処理なしの粉末A3-NCを用いて得られた硬化体の方が、事前炭酸化処理ありの粉末A3-Cを用いて得られた硬化体と比較して、圧縮強度が高くなることがわかった。
【0148】
(実施例4-1)
<重炭酸カルシウム溶液B2-1~B2-3、B3-1~3-2、B4-1~4-2の調製>
以下の重炭酸カルシウム溶液B2-1~B2-3、B3-1~B3-2、B4-1~B4-2を調製した。すなわち、実施例1の<重炭酸カルシウム溶液の調製>で用いた「イオン交換水」の代わりに、i)イオン交換水にNaClを溶解し、NaCl濃度を6wt%、3wt%及び1wt%とした溶液、ii)イオン交換水にMgSOを溶解し、MgSO濃度を1wt%及び0.5wt%とした溶液、iii)イオン交換水にNaSOを溶解し、NaSO濃度を1wt%及び0.17wt%とした溶液、を用いて、それぞれ重炭酸カルシウム溶液B2-1~B2-3(それぞれ、NaCl濃度が6wt%、3wt%及び1wt%である溶液を用いたもの)、B3-1~B3-2(MgSO濃度が1wt%及び0.5wt%である溶液を用いたもの)、B4-1~B4-2(NaSO濃度が1wt%及び0.17wt%である溶液を用いたもの)を調製した。
【0149】
重炭酸カルシウム溶液B1中のカルシウム濃度が、CaCO換算で1.07g/Lであったのに対して、溶液B2-1(NaCl濃度:6wt%を用いて得られたもの)は、カルシウム濃度が、CaCO換算で1.73g/Lであった。同様に、溶液B2-2(NaCl濃度:3wt%を用いて得られたもの)は、カルシウム濃度がCaCO換算で1.66g/L、溶液B2-3(NaCl濃度:1wt%を用いて得られたもの)は、カルシウム濃度がCaCO換算で1.38g/Lであった。
【0150】
また、溶液B3-1(MgSO濃度:1wt%を用いて得られたもの)は、カルシウム濃度がCaCO換算で1.60g/L、溶液B3-2(MgSO濃度:0.5wt%を用いて得られたもの)は、カルシウム濃度がCaCO換算で1.42g/Lであった。
【0151】
さらに、溶液B4-1(NaSO濃度:1wt%を用いて得られたもの)は、カルシウム濃度がCaCO換算で1.70g/L、溶液B4-2(NaSO濃度:0.17wt%を用いて得られたもの)は、カルシウム濃度がCaCO換算で1.27g/Lであった。
【0152】
重炭酸カルシウム溶液B2-1~B2-3、B3-1~B3-2、B4-1~B4-2はいずれも、重炭酸カルシウム溶液B1よりも、カルシウム濃度が高いことがわかった。
【0153】
(実施例4ー2)
<重炭酸カルシウム溶液B5-1~B5-3の調製>
実施例1-1の<重炭酸カルシウム溶液の調製>で用いた「イオン交換水」の代わりに、人工海水を用いて、重炭酸カルシウム溶液B5-l~B5-4を調製した。すなわち、人工海水として、a)塩化カルシウム無水和物0.194wt%、b)塩化ナトリウム4.68wt%、c)塩化カリウム0.132wt%、d)硫酸ナトリウム無水和物0.34wt%、e)塩化マグネシウム六水和物0.46wt%を含有するものを調製した。
【0154】
実施例1の<重炭酸カルシウム溶液の調製>で用いた「イオン交換水」の代わりに、上記人工海水とイオン交換水との混合液(人工海水5.8wt%、2.9wt%、1.0wt%)を用いて、重炭酸カルシウム溶液B5-1(人工海水5.8wt%を用いて得られたもの)、B5-2(人工海水2.9wt%を用いて得られたもの)、B5-3(人工海水1.0wt%を用いて得られたもの)を得た。
【0155】
実施例4-1と同様に、カルシウム濃度をCaCO換算で測定したところ、重炭酸カルシウム溶液B5-1(人工海水5.8wt%を用いて得られたもの)が3.15g/L、B5-2(人工海水2.9wt%を用いて得られたもの)が2.20g/L、B5-3(人工海水1.0wt%を用いて得られたもの)が1.55g/Lであった。
【0156】
重炭酸カルシウム溶液B5-1~B5-3はいずれも、重炭酸カルシウム溶液B1よりも、カルシウム濃度が高いことがわかった。
【0157】
(実施例5)
実施例1-1において、骨材としての粉体A1の代わりに、市販の3号珪石(粒度範囲2.36~0.3mm)を用いた以外、実施例1-1と同様な方法により、硬化体C5を得た。珪砂の密度は2.60g/cmであり、蛍光X線分析によりSiOが96%含まれていることを確認した。
【0158】
市販の3号珪石を用いても硬化体が得られることが確認できた。珪砂をカラムに詰めたときの実績率は0.58であり、空隙率は0.42であった。硬化体C5を熱重量分析し、COの分解による質量減と考えられる部分から炭酸カルシウムの質量を計算すると、硬化体C5の総重量に対する重量比で8%が炭酸カルシウムとして含まれることが分かった。硬化体C5に含まれる炭酸カルシウムの主要な結晶相は密度が最も高いアラゴナイト(2.9g/cm)であるので、これを前提として炭酸カルシウムの体積比を計算すると、0.047体積%であった。すなわち、骨材内の0.42の空隙のうち、0.047が炭酸カルシウムで占められて硬化体C5が形成されたことが分かった。
【0159】
本開示の硬化体は、骨材;及び前記骨材間に存在する炭酸塩;を有して形成される硬化体であって、前記炭酸塩は、前記骨材間の空隙の体積の1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、又は10%以上を占める。
【0160】
本開示の硬化体の製造方法は、骨材に炭酸塩が溶解した液を添加することにより、前記骨材間に前記炭酸塩を含有させる。前記炭酸塩は、前記骨材間の空隙の体積の1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、又は10%以上を占める。
【0161】
(実施例6)
実施例1-1において得られた硬化体C1-1について、より詳細に分析した。実施例1-1において説明したように、粉体A1と硬化体C1-1の熱重量分析、及び内部標準物質を入れたX線回折/Rietveld解析の結果から、アモルファス相と結晶相の組成を定量化した。図6は、粉体A1と硬化体C1-1のアモルファス相と結晶相の組成を示す。粉体A1から硬化体C1-1への変化に伴って、アラゴナイトの量は劇的に増加し、カルサイトの量は若干増加し、バテライトの量は減少した。量の増加分は、アラゴナイトが最も大きい。すなわち、骨材間に存在する炭酸カルシウムの多形のうち、アラゴナイトの量が最も多い。50℃以上の温度では、カルサイトとバテライトは不安定であり、アラゴナイトは安定であることから、硬化体C1-1を製造する過程で加熱したことにより、アラゴナイトが優先的に析出したと考えられる。なお、実施例2の硬化体C2では、図4に示すように、アラゴナイトよりもカルサイトの方が量が多い。実施例2では、炭酸化していない粉体A2を骨材として用いており、内部に水酸化カルシウムが残存しているため、水が接したときにpHが高い状態となる。このような条件では、カルサイトの方が優先的に析出すると考えられる。十分な量の水があり、炭酸カルシウムと固体が平衡状態にあり、温度が高いときには、アラゴナイトの方が優先的に析出すると考えられる。
【0162】
図7は、硬化体のSEM画像を示す。図7(a)は、より解像度の低いSEM画像を示し、図7(b)は、より解像度の高いSEM画像を示す。図7(a)に示すように、骨材である粉体A1の間にある孔や空間は、主にアラゴナイトの針状結晶で満たされていた。図7(b)に示すように、この針状結晶の直径は1~3μmであり、長さは10μm未満である。
【0163】
図8は、硬化体C1-1のケイ素、カルシウム、炭素のSEM-EDSマッピングを示す。元の粉体A1にはケイ素が含まれているため、ケイ素のEDSの画像は粉体A1の位置を反映している。これに対し、炭素は、主にケイ素の雲の間に分布していた。これは、結晶又は非晶質の炭酸カルシウムが、粉体A1の間の空間に沈殿したことを示している。
【0164】
図9は、硬化体C1-1の偏光顕微鏡写真を示す。図9(a)は、オープンニコル像を示し、図9(b)は、クロスニコル像を示す。図9(b)に、炭酸カルシウムの結晶(主にアラゴナイトとカルサイト)が析出した部分と、粉体A1の粒子を示す。粉体A1の間の空間が主にアラゴナイトとカルサイトで満たされていることが示された。
【0165】
硬化体C1-1の空隙を含む見かけ密度は、~1.48g/cmであった。この固体が炭酸カルシウム(アラゴナイト、カルサイト、バテライトの密度は、それぞれ、2.91、2.71、2.54g/cm)と、C-S-H(密度は2.60g/cm)で構成されていると仮定すると、硬化体C1-1の空隙率は~46%と推定される。なお、天然に存在する炭酸カルシウムコンクリーションの空隙率は約25%であるので、本開示の硬化体の製造方法によっても、空隙率が25%以下の硬化体を製造することができると考えられる。
【0166】
本開示の硬化体は、骨材;及び前記骨材間に存在する炭酸塩;を有して形成される硬化体であって、空隙率が50%以下、46%以下、40%以下、35%以下、30%以下、又は25%以下である。
【0167】
本開示の硬化体の製造方法は、骨材間に炭酸塩を含有させ、空隙率を50%以下、46%以下、40%以下、35%以下、30%以下、又は25%以下にする。
【符号の説明】
【0168】
1 製造装置、2 液、3 容器、4 大気、5 管、6 型枠、7 ポンプ、8 管、9 ヒータ、10 管、11 粒子、12 骨材、13 フィルタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9