昭和52(行コ)59行政訴訟 商標権
判決文PDF
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裁判所 |
東京高等裁判所
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裁判年月日 |
昭和53年5月2日 |
事件種別 |
民事 |
法令 |
商標権
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キーワード |
無効審判1回 無効1回
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主文 |
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事件の概要 |
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判決文
主 文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事 実
第一、当事者の求めた裁判
控訴代理人は「一、原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第
一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は主文同旨
の判決を求めた。
第二、当事者の主張
当事者の事実上および法律上の主張は、つぎのとおり補充するほか、原判決事実
欄に記載のとおりであるから引用する。
七丁目表五行目「性質のものに過ぎないから、」から六行末までをつぎのように
改める。
「性質のものに過ぎず、不可争力、不可変更力、公定力および執行力等、行政処
分に付与される効力は一切有しないし、これがされないからといつても、登録異議
の申立をふまえてなされる審査官の査定の結果如何は、出願書類を閲覧するか、ま
たは特許庁発行の公報により、何人もこれを知ることができるから、何らの弊害も
生じない。」
理 由
一、当裁判所も、原判決と同様に、本件処分は違法であつて取消すべきものと考え
る。その理由は、つぎのとおり訂正補説するほか、原判決理由と同一であるから引
用する。
八丁裏一一行目「早計というべきであつて、」から九丁裏一〇行目末までを、つ
ぎのとおり改める。
「早計であろう。商標法第一七条、特許法第五五条から第六一条までによると、
商標登録異議の申立にはその理由と証拠の提示を要すること、理由と証拠について
の補正が認められていること、申立期間および補正の期間に制限があること、商標
登録出願人に答弁書提出の機会が与えられていること、異議申立の審査には証拠調
の規定、申立費用負担の規定が準用されていること、申立に対しては文書による理
由を附した決定をしなければならないこと(要しない場合でも少なくとも拒絶査定
謄本の送付を要する)、決定の謄本は異議申立人に送付しなければならないことな
ど、商標登録異議申立には当事者間の対立的構造をふまえた詳細な手続規定が設け
られている。そうした手続構造からみると、異議申立制度は、さきに触れた情報提
供のためにのみ設けられたものではなく、それにあわせて、出願にかかる商標が登
録されることにより影響を受ける者があえて無効審判を請求する時機まで待つこと
なく、審査手続の一環として、自己の利益を擁護するため登録を阻止する一手段と
して利用することができるためにも設けられたものと解するのが相当である。して
みれば、登録異議申立の制度は、国民に異議申立権という一種の公法上の権利を認
め、その申立について判断を受けられるという利益を認めたものであり、これを一
身専属的な権利であるとみるべき根拠は見出し難い。そうすると、異議申立権はこ
れを独立して譲渡等特定承継の対象とするほどの必要があるかどうかは別として、
少くとも相続、合併のような包括承継については、その性質からして、承継の対象
となると考えるのが相当である。原告が本件商標登録出願について登録異議の申立
をしていた株式会社主婦の店ダイエーを昭和四五年三月一八日に吸収合併したこと
は、前述のとおり当事者間に争いがないから、原告はこれによつて異議申立人とし
ての地位を承継したものというべく、これに基づく本件受継申立を受理しない旨の
控訴人の処分は違法であるといわなければならない。」
二、よつて、本件処分の取消を求める被控訴人の本訴請求は理由があり、これを認
容した原判決は相当であつて、本件控訴は失当であるから、行政事件訴訟法第七
条、民事訴訟法第三八四条により棄却することとし、控訴費用の負担につき同法第
九五条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 古関敏正 舟本信光 石井彦壽)
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