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昭和46(ワ)163民事訴訟 実用新案権

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裁判所 秋田地方裁判所
裁判年月日 昭和47年2月7日
事件種別 民事
法令 実用新案権
キーワード 実用新案権22回
実施16回
侵害6回
許諾2回
差止1回
主文
事件の概要

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判決文

       主   文
被告は、別紙物件目録記載の物件を製造販売してはならない。
被告は、その営業所および工場に存する前項の物件(完成品)並びに同物件の製造
に必要な金型を廃棄せよ。
被告は、原告に対し、二五四万一、三六三円およびこれに対する昭和四六年五月二
八日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
訴訟費用は被告の負担とする。
この判決は仮に執行することができる。
       事   実
第一 当事者の求める裁判
一 原告
主文同旨。
二 被告
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、原告の負担とする。
第二 当事者双方の主張
一 請求原因
1 原告は、訴外Aと左記の実用新案権を共同考案して共有登録し、右実用新案権
の実施品である蹄鉄を製造して、日本国内はもちろん、アメリカ、カナダにも多量
に輸出している蹄鉄製造販売業者である。
考案の名称 蹄鉄
登録 昭和四一年五月二七日
登録番号 第八〇三一九九号
2 本件登録実用新案の技術範囲は、「両端末の下面を内方に向つて削切して傾斜
面を形成した蹄鉄」である。
3 本件登録実用新案の構造上並びに作用上の特徴は、次のとおりである。
 馬は両脚を大きく開き交互に地面をけつて疾走するものであるが、その際に前後
または左右の各脚の蹄鉄の隅角が互に接触し、釘着したものが弛んで剥脱すること
があり、また、一方の脚の脛を他方の脚の蹄鉄下面の隅角で擦過して負傷すること
が往々にしてあり、これがため不測の事故をひき起す危険があるので、本件考案の
蹄鉄は両端末の下面が内方に向つて傾斜面となつているため、蹄鉄が接触しても傾
斜面で滑つてこれを剥脱することがない。また、隅角がないので、脛に擦過傷を負
わせることなく、安心して全力疾走させることができるなどの効果がある。
4 被告は、別紙物件目録記載の図面および説明書に示すとおりの構造を有する蹄
鉄(以下本件蹄鉄という)を昭和四二年四月頃から製造販売しているが、その構造
並びに作用効果上の特徴は本件登録実用新案の技術範囲と全く一致する。
5 被告は、本件蹄鉄を、カーボーイ型、カーボーイ細型、溝型と称して昭和四二
年八月から昭和四三年三月三一日までは四万四、〇〇〇ポンド、同年四月一日から
昭和四四年三月三一日までは三三万四、二五〇ポンド、同年四月一日から昭和四五
年三月三一日までは五四万九、五〇〇ポンド、同年四月一日から昭和四六年三月三
一日までは七四万八、〇〇〇ポンド、同年四月一日から同年六月二六日までは一〇
万一、〇〇〇ポンド合計一七七万六、七五〇ポンドを製造し、これを訴外有限会社
日本マルテイプロダクツ商会に販売していたもので、その総売上げ高は一億一六五
万四、五五〇円となる。
6 被告は、本件蹄鉄が本件実用新案権に係る製品であることを熟知していたの
に、原告に無断でこれを製造し、右実用新案権を侵害して右売上げによる利益を得
ているものである。
 そこで、原告は被告に対し、実用新案法二九条二項により、本件実用新案権の実
施に対し通常受くべき実施料相当額を右侵害によつて生じた損害の賠償として請求
するものであるが、本件実用新案権の実施に対し通常受けるべき実施料相当額は、
右売上げ高の約五パーセントに当る五〇八万二、七二七円であり、原告は本件実用
新案権を訴外Aと共有しているので、結局、右金額の二分の一である二五四万一、
三六三円が右侵害によつて生じた損害となる。
7 よつて、原告は、被告に対し、請求の趣旨のとおり、本件蹄鉄の製造販売を差
止め、その金型等の廃棄並びに二五四万一、三六三円およびこれに対する本件訴状
送達の翌日である昭和四六年五月二八日から完済に至るまで年五分の割合による遅
延損害金の支払を求める。
二 請求原因に対する答弁
1 第1項中、原告が本件登録実用新案権を訴外Aと共有していること、右実用新
案権の実施品である蹄鉄を製造していることは認めるが、その余は否認。
2 第2、3項は認める。
3 第4項中、被告が本件蹄鉄を販売していることは否認、その余は認める。
4 第5項中、被告の製造数量を争い、その余は否認。
5 第6項は否認。
三 抗弁
 被告は、本件実用新案権の共有権者である訴外Aの依頼により、同人の機関とし
て、製品の材料、数量、マーク等一切についていちいち具体的指示を受け、また、
製品の出来上りおよび技術面につき厳密な指導監督を受けて製造し、その製品も一
切同人に納入しているので、被告の製造行為は、右訴外人の本件共有実用新案権の
正当な実施の範囲に属し、原告の権利の侵害に当らない。
四 抗弁に対する答弁
否認。
第三 証拠(省略)
       理   由
一 原告が、本件登録実用新案権を訴外Aと共有し、その実施品である蹄鉄を製造
していること、被告が、構造および作用効果上の特徴が右実用新案権の技術範囲に
全く一致する本件蹄鉄を製造していることについては、当事者間に争いがない。
二 被告は、本件蹄鉄をAの機関として、同人の指揮監督のもとで製造しているに
すぎず、その製造行為は同人の実用新案権の正当な実施の範囲に属する旨主張する
ので、この点につき検討する。
 成立に争いのない甲第四号証、第五号証の一の一ないし四、同号証の二の一ない
し九、同号証の三の一ないし一一、同号証の四の一ないし一〇、同号証の五の一な
いし一三、乙第一六号証、証人Aの証言により真正に成立したものと認める乙第二
ないし第一五号証、証人Aの証言、原告および被告代表者Bの各本人尋問の結果に
よれば、次の事実が認められる。すなわち、被告は、馬具等を中心とする機械工具
の製造販売を業とする会社であるが、昭和四二年初め頃、Aから本件実用新案権に
係る本件蹄鉄の製造の依頼を受け、以後、本件蹄鉄を製造し、Aの指示に従つて、
専ら同人の経営する有限会社日本マルテイプロダクツ商会に納入しており、他に右
製品を販売したことは全くない。また、右製造に当つては、A自身が蹄鉄の金型の
原型を作出し、蹄鉄の釘穴、溝等の構造に関する詳細な技術指導、材料の品質、製
造機械の性能等に関する具体的な指示をし、製品につき綿密な検査もしており、製
造量および製品の単価も終局的には同人が決定し、被告はその範囲内において製造
しているにすぎない。そして、製品の包装には、Aの指示により「マルテイプロダ
クツ」の商標が記され、被告の製造であることも示すようなものは、製品およびそ
の包装にも全く記されていない。他方、被告は、Aまたは前記日本マルテイプロダ
クツ商会との間に何らの資本的つながりもなく、本件蹄鉄製造のための金型を所有
し、その他の機械設備は、従来被告が所有していたもののほか、大部分を被告自身
の負担において新たに購入して備え付けたものであり、また、材料も被告自身の負
担で調達しており、これらについてAから何らの資金的援助も受けていない。した
がつて、被告は、前記のとおりAから指定される単価の範囲内において製造工程の
合理化等により利潤を上げることが可能な一方、材料費等のコスト上昇や不良製品
による損失は被告の危険負担に帰せられている。そして、被告の本件蹄鉄製造によ
る利益は、帳薄上「売上」として処理されている。以上の事実が認められ、右認定
を覆すに足りる証拠はない。
 右認定事実によれば、被告とAとの関係は、請負契約的要素を含むいわゆる製作
物供給契約ということができ、被告の本件蹄鉄製造は、Aのかなり綿密な指示のも
とに行なわれてはいるが、被告が製造のための機械設備等を所有し、自己の計算に
おいて材料を調達し、利潤を上げている以上、単にAのために、その機関として、
工賃を得て製造しているにすぎないものとは認め難く、被告が、自己のため独立の
事業として製造しているものであると認められる。したがつて、被告は、Aから本
件実用新案権の通常実施権の許諾を受けて、自己のため独立の事業としてその実施
をしているものといわなければならず、右実施権の許諾につき、本件実用新案権の
共有者である原告の同意があることについては、被告の主張立証がないので、被告
の本件蹄鉄製造は、原告の実用新案権を侵害するものといわなければならない。ま
た、前記証人Aの証言および被告代表者本人尋問の結果によれば、被告代表者B
は、Aとの間の前記契約を締結する当時、同人から原告が本件実用新案権を共有し
ている事実を知らされていたことが明らかであるから、特段の事情の認められない
本件においては右侵害について故意があるものというべきである。
三 そして前掲甲第五号証の各証、成立に争いのない甲第六号証および証人Cの証
言によれば、本件実用新案権の実施料は昭和四二年八月から昭和四六年六月二六日
までの被告の本件蹄鉄の総売上げ高、売上げ利益率および取引上通常採用されてい
る実用新案権の製品販売価額に対する実施料率等を総合考慮し、右総売上げ高の五
パーセントを下回わることはなく、したがつて、昭和四二年八月から昭和四六年六
月二六日までの右実施料相当額は、少なくとも五〇八万二、七二七円を下ることは
ないと認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。そうとすれば、本件実用新案
権は原告とAとが共有しているのであるから、右金額の二分の一である二五四万
一、三六三円が、原告の通常受けるべき実施料相当額である。
四 そうすると、原告の本訴請求はいずれも理由があるので認容することとし、訴
訟費用の負担につき民訴法八九条を、仮執行宣言につき同法一九六条を各適用し
て、主文のとおり判決する。
(裁判官 篠原昭雄 石井健吾 多田元)
(別紙)
<11701-001>

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