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平成16(受)997特許権侵害差止請求事件

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裁判所 最高裁判所第二小法廷
裁判年月日 平成17年6月17日
事件種別 民事
原審 平成15(ネ)1223 (平成16年2月27日)
法令 特許権
特許法100条1項2回
特許法68条1回
キーワード 特許権19回
実施15回
差止8回
侵害4回
主文 本件上告を棄却する。上告費用は上告人の負担とする。
判示事項 専用実施権を設定した特許権者がその特許権に基づく差止請求をすることの可否
事件の概要 特許権者は,その特許権について専用実施権を設定したときであっても,当該特許権に基づく差止請求権を行使することができる

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判決文

         主    文
          本件上告を棄却する。
          上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人中野憲一ほかの上告受理申立て理由第5について
 1 本件は,発明の名称を「生体高分子−リガンド分子の安定複合体構造の探索
方法」とする特許権(以下「本件特許権」という。)を有する被上告人が,本件特
許権の侵害を理由として,上告人に対し,原判決別紙ロ号物件目録記載の物件の販
売の差止めを求める事案である。被上告人は,本件特許権について,専用実施権者
を株式会社D研究所,範囲を全部とする専用実施権を設定している。
 2 【要旨】特許権者は,その特許権について専用実施権を設定したときであっ
ても,当該特許権に基づく差止請求権を行使することができると解するのが相当で
ある。その理由は,次のとおりである。
 特許権者は,特許権の侵害の停止又は予防のため差止請求権を有する(特許法1
00条1項)。そして,専用実施権を設定した特許権者は,専用実施権者が特許発
明の実施をする権利を専有する範囲については,業としてその特許発明の実施をす
る権利を失うこととされている(特許法68条ただし書)ところ,この場合に特許
権者は差止請求権をも失うかが問題となる。特許法100条1項の文言上,専用実
施権を設定した特許権者による差止請求権の行使が制限されると解すべき根拠はな
い。また,実質的にみても,専用実施権の設定契約において専用実施権者の売上げ
に基づいて実施料の額を定めるものとされているような場合には,特許権者には,
実施料収入の確保という観点から,特許権の侵害を除去すべき現実的な利益がある
ことは明らかである上,一般に,特許権の侵害を放置していると,専用実施権が何
らかの理由により消滅し,特許権者が自ら特許発明を実施しようとする際に不利益
を被る可能性があること等を考えると,特許権者にも差止請求権の行使を認める必
要があると解される。これらのことを考えると,特許権者は,専用実施権を設定し
たときであっても,差止請求権を失わないものと解すべきである。
 3 以上によれば,被上告人が本件特許権に基づく差止請求権を行使することが
できるとした原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は,採用する
ことができない。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 今井 功 裁判官 福田 博 裁判官 滝井繁男 裁判官 津野
 修 裁判官 中川了滋)

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