昭和61(オ)30模造品製造差止等請求事件
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裁判所 |
最高裁判所第三小法廷
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裁判年月日 |
昭和63年7月19日 |
事件種別 |
民事 |
原審 |
昭和56(ネ)5 (昭和59年3月16日) |
法令 |
実用新案権
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キーワード |
損害賠償7回 差止5回 実施3回 許諾1回 実用新案権1回
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主文 |
一昭和六一年(オ)第三〇号事件につき、昭和五九年三月一六日言渡しの原判決中上告人有限会社A1交易敗訴部分、及び昭和六一年(オ)第三一号事件につき、昭和六〇年九月三〇日言渡しの原追加判決をいずれも破棄する。二前項の部分につき、本件を仙台高等裁判所に差し戻す。三昭和六一年(オ)第三〇号事件につき、上告人A2の上告を棄却する。四前項の部分に関する上告費用は、上告人A2の負担とする。 |
判示事項 |
一 氏名、商号、商標等自己の商品たることを示す表示が不正競争防止法一条一項一号の周知性を具備すべき時点
二 出願公開後に実用新案登録請求の範囲が補正により減縮された場合における実用新案法一三条の三第一項所定の補償金支払請求と第三者が右補正後の実用新案登録請求の範囲の内容を知ることの要否 |
事件の概要 |
一 氏名、商号、商標等自己の商品たることを示す表示が不正競争防止法一条一項一号の周知性を具備すべき時点は、同号に該当する商品主体混同行為の差止請求の関係では差止請求訴訟の事実審の口頭弁論終結時、右行為による損害賠償請求の関係では損害賠償請求の対象である行為のされた時である。
二 第三者が出願公開のされた実用新案登録出願に係る考案の内容を知つた後に実用新案登録請求の範囲が補正された場合において、その補正が実用新案登録請求の範囲を減縮するものであつて、第三者の実施に係る物品が補正の前後を通じて考案の技術的範囲に属するときは、実用新案登録出願人が第三者に対して実用新案法一三条の三第一項所定の補償金の支払を請求するためには、第三者が実用新案登録出願人による再度の警告等により補正後の実用新案登録請求の範囲の内容を知ることを要しない。 |
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判決文
主 文
一 昭和六一年(オ)第三〇号事件につき、昭和五九年三月一六日言渡
しの原判決中上告人有限会社A1交易敗訴部分、及び昭和六一年(オ)第三一号事
件につき、昭和六〇年九月三〇日言渡しの原追加判決をいずれも破棄する。
二 前項の部分につき、本件を仙台高等裁判所に差し戻す。
三 昭和六一年(オ)第三〇号事件につき、上告人A2の上告を棄却す
る。
四 前項の部分に関する上告費用は、上告人A2の負担とする。
理 由
第一 昭和六一年(オ)第三〇号事件
一 上告代理人松井宣、同小川修、同沼波義郎、同半澤力の上告理由一について
上告人らの第一次請求たる不正競争防止法に基づく請求は、上告人A2の設立し
た上告人有限会社A1交易(以下「上告会社」という。)が昭和五三年六月以降「
アースベルト」なる商標(以下「原告商標」という。)を使用して製造販売してい
る原判決添付の別紙第一目録記載の自動車接地具(以下「原告製品」という。)は、
爆発的売行きを示し、昭和五四年三月までに約一五万本販売され、更にその製造販
売数は増加の一途をたどつており、新聞、雑誌、ラジオ、テレビ等による広告宣伝
とあいまつて、原告製品の形態自体及び原告商標は、昭和五四年三月には、上告会
社の商品たることを示す表示として仙台市を中心に全国的に知られるようになり、
同法一条一項一号にいう「本法施行ノ地域内ニ於テ広ク認識セラルル」(以下「周
知」又は「周知性」という。)商品表示となつていたところ、被上告人B1商工株
式会社(以下「被上告人B1商工」という。)は、昭和五三年八月ころに原告製品
の独占的販売権を得たい旨上告会社に申し入れたものの、四六〇〇本程度を仕入れ
たのみで、その後の継続的取引を断られたことから、昭和五四年三月ころ、被上告
人株式会社B2(旧商号・株式会社B3工業製作所)に依頼して原判決添付の別紙
第二目録ないし第五目録記載の自動車接地具(以下「被告製品」と総称する。)を
製造し、これに「エンドレスアースベルト」なる商標(以下「被告商標」という。)
を使用してその販売を開始したが、被告製品の形態は原告製品の形態と酷似してお
り、また、被告製品に使用されている被告商標は原告製品に使用されている原告商
標と類似しているため、被告製品の販売自体並びに被告商標の使用及びこれを使用
した被告製品の販売(同法一条一項一号にいう、商品表示「ヲ使用シ又ハ之ヲ使用
シタル商品ヲ販売」することを、以下「使用等」という。)は、被告製品を原告製
品と誤認混同させるものであると主張して、被上告人らに対し、被告製品の製造販
売及び「アースベルト」なる名称の使用等の差止め、並びに被上告人らが昭和五四
年四月から昭和五六年一月までの間被告商標を使用して被告製品を一九万八六一〇
本製造販売したことによつて被つた損害八〇〇〇万円の賠償及び新聞紙上への謝罪
広告の掲載を請求する、というものである。
原判決は、(1) 上告人A2は、昭和五三年二月ころ原告製品を考案して、同年
四月末ころ製品化し、同年六月一日上告会社を設立し、これを通じて原告製品の販
売を開始した、(2) 上告会社は、全国に販売されている自動車専門雑誌二誌に広
告を掲載して通信販売の方法をとる一方、地元の新聞やラジオにより広告宣伝をし、
同年八月ころ、訴外株式会社D商会と取引を開始し、同社に卸売りされた原告製品
は主に東北六県のE関係のガソリンスタンドで小売りされ、また、上告会社は、同
年一二月ころ東京の株式会社F自動車用品製作所外一社とも取引を開始し、更に右
D商会を介して他の数社とも取引を行うようになつた、(3) 原告製品は、主とし
てガソリンスタンド、カー用品店、スーパー等で小売りされ、昭和五四年三月ころ
には東京都内のガソリンスタンドでも販売されており、昭和五三年六月から同五四
年三月までの販売数は、通信販売や展示即売会等での販売数を加えて約一五万本で
ある、(4) 被上告人B1商工は、昭和五三年九月ころ上告会社から原告製品を仕
入れたことがあつたが、その後上告会社に販売を断られたため、昭和五四年三月末
ころ被告製品のうちの第二目録記載の自動車接地具の製造販売を始め、その後、同
じく第三目録ないし第五目録記載の自動車接地具も製造販売している、との事実を
確定したうえ、不正競争防止法一条一項一号の趣旨に鑑みれば、自己の商品表示が
同号にいう周知の商品表示に当たると主張する甲が、これと同一又は類似(以下単
に「類似」という。)の商品表示の使用等をする乙に対してその使用等の差止め及
び右使用等による損害賠償(謝罪広告の掲載を含む。以下同じ。)を請求するには、
甲の商品表示は、遅くとも乙の商品の販売開始より前に周知性を備えていることを
要し、本件においては、被告製品の販売が開始された昭和五四年三月末ころまでに
原告製品の形態自体及び原告商標が原告製品の商品表示として周知性を備えている
ことを要するところ、原告製品の形態自体及び原告商標は右時期には未だ周知性を
備えていたとは認められないとして、上告人らの右各請求をすべて棄却すべきもの
とした。
しかしながら、右周知性を備えるべき時期についての原審の判断は、是認するこ
とができない。
自己の商品表示が不正競争防止法一条一項一号にいう周知の商品表示に当たると
主張する甲が、これと類似の商品表示の使用等をする乙に対してその差止め等を請
求するには、甲の商品表示は、不正競争行為と目される乙の行為が甲の請求との関
係で問題になる時点、すなわち、差止請求については現在(事実審の口頭弁論終結
時)、損害賠償の請求については乙が損害賠償請求の対象とされている類似の商品
表示の使用等をした各時点において、周知性を備えていることを要し、かつ、これ
をもつて足りるというべきである。けだし、同号の規定自体、原判決説示のように
周知性具備の時期を限定しているわけではなく、周知の商品表示として保護するに
足る事実状態が形成された以上、その時点から右周知の商品表示と類似の商品表示
の使用等によつて商品主体の混同を生じさせる行為を防止することが、周知の商品
表示の主体に対する不正競争行為を禁止し、公正な競業秩序を維持するという同号
の趣旨に合致するものであり、このように解しても、右周知の商品表示が周知性を
備える前から善意にこれと類似の商品表示の使用等をしている者は、継続して当該
表示の使用等をすることが許されるのであつて(同法二条一項四号。いわゆる「旧
来表示の善意使用」の抗弁)、その保護に十分であり、更には、損害賠償の請求に
ついては行為者の故意又は過失を要件としているのであつて(同法一条ノ二)、不
当な結果にはならないからである。
そして、甲の商品表示を使用した商品の販売、宣伝活動等、甲の商品表示が周知
性を備えるに至つたことを基礎づける事実は、甲において具体的に主張立証すべき
ものであるところ、記録によれば、本件において、上告人らは、被上告人らが被告
製品の製造販売を始めた昭和五四年三月末までの時点だけでなく、それ以降の時点
において上告会社が株式会社D商会、株式会社F自動車用品製作所等に販売した原
告製品の数量をも具体的に主張し、これを裏づける証拠も提出していることが明ら
かである。
したがつて、原告製品の形態自体及び原告商標は、原判示の昭和五四年三月末こ
ろの時点では周知性を備えるに至つていなかつたとしても、審理の結果次第では前
記のような被上告人らの行為が問題になるその後の時点においては周知性を備える
に至つていると認められる可能性があるから、右に説示したところと異なる見解に
立つて同法に基づく上告会社の各請求を棄却すべきものとした原判決には、同法の
解釈適用を誤つた違法があつて、この違法が判決の結論に影響を及ぼすことは明ら
かであり、ひいて審理不尽、理由不備の違法があるといわなければならない。これ
と同旨の上告会社の論旨は、理由がある。
しかし、上告人A2は、その主張自体から、自ら原告商標を使用して原告製品を
販売する等の営業をしている者でないことが明らかであり、被上告人らの被告製品
の製造販売及び被告商標の使用等により営業上の利益、信用を害されることはない
というべきであるから、同法に基づく上告人A2の各請求を棄却すべきものとした
原審の判断は結論において是認することができ、同上告人の論旨は採用することが
できない。
しかして、上告会社の本訴請求に係る各損害賠償請求、昭和六一年(オ)第三一
号事件の考案の実用新案登録出願についての出願公開に基づく補償金支払請求は、
第一次請求ないし第三次請求として順次予備的に併合されており、これらをすべて
棄却した原判決、原追加判決に対し上告があつたところ、第一次請求たる不正競争
防止法に基づく損害賠償請求について右のとおり破棄理由があるのであるから、第
二次請求、第三次請求についても原判決、原追加判決を破棄すべきものである。し
たがつて、以下、昭和六一年(オ)第三一号事件も含め、上告人A2の関係におい
てのみ判断を加えることとする。
二 その余の上告理由について
所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当とし
て是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することがで
きない。
第二 昭和六一年(オ)第三一号事件
上告代理人松井宣、同小川修、同沼波義郎、同半澤力の上告理由について
上告人A2の第三次請求のうちの実用新案法一三条の三に基づく補償金支払請求
は、上告人A2は、原告製品に係る考案(以下「本件考案」という。)について実
用新案権(昭和五三年五月二三日実用新案登録出願、昭和五四年一二月一日出願公
開、昭和五六年六月一九日出願公告)を有するところ、被上告人らは、昭和五四年
三月末ころから本件考案の技術的範囲に属する被告製品を製造販売しており、同年
一二月一日に出願公開があつた後も昭和五六年一月まで、出願公開がされた実用新
案登録出願に係る考案であることを知つて、被告製品を製造販売したから、同条所
定の補償金の支払を請求する、というものである。
原追加判決は、本件考案の出願公開時の実用新案登録請求の範囲(以下「登録請
求の範囲」という。)は、原追加判決添付の別紙(一)記載のとおりであるが、審査
官から昭和五五年五月一四日付拒絶理由の通知を受けたため、上告人A2は、同年
七月一七日付で登録請求の範囲を同別紙(二)記載のとおり補正した、との事実を確
定したうえ、補償金請求権発生要件の関係においては、出願公開の後に補正がされ
たときは、右補正の時点で新たに出願がされたものと解するのを相当とするとし、
本件においては、右昭和五五年七月一七日付の補正後に、上告人A2が被上告人ら
に対し同条所定の警告をし、あるいは被上告人らが同条にいう悪意の状態にあつた
ことを認めるに足りる証拠はないとして、上告人A2の同条に基づく補償金支払請
求を棄却した。
しかしながら、原審の右判断は、是認することができない。
実用新案登録出願人が出願公開後に第三者に対して実用新案登録出願に係る考案
の内容を記載した書面を提示して警告をするなどして、第三者が右出願公開がされ
た実用新案登録出願に係る考案の内容を知つた後に、補正によつて登録請求の範囲
が補正された場合において、その補正が元の登録請求の範囲を拡張、変更するもの
であつて、第三者の実施している物品が、補正前の登録請求の範囲の記載によれば
考案の技術的範囲に属しなかつたのに、補正後の登録請求の範囲の記載によれば考
案の技術的範囲に属することとなつたときは、出願人が第三者に対して実用新案法
一三条の三に基づく補償金支払請求をするためには、右補正後に改めて出願人が第
三者に対して同条所定の警告をするなどして、第三者が補正後の登録請求の範囲の
内容を知ることを要するが、その補正が、願書に最初に添附した明細書又は図面に
記載した事項の範囲内において補正前の登録請求の範囲を減縮するものであつて、
第三者の実施している物品が補正の前後を通じて考案の技術的範囲に属するときは、
右補正の後に再度の警告等により第三者が補正後の登録請求の範囲の内容を知るこ
とを要しないと解するのが相当である。第三者に対して突然の補償金請求という不
意打ちを与えることを防止するために右警告ないし悪意を要件とした同条の立法趣
旨に照らせば、前者の場合のみ、改めて警告ないし悪意を要求すれば足りるのであ
つて、後者の場合には改めて警告ないし悪意を要求しなくても、第三者に対して不
意打ちを与えることにはならないからである。
本件についてこれをみると、出願公開時における本件考案の登録請求の範囲は、
原追加判決挙示の甲第四四号証(本件考案の公開実用新案公報)によると、原追加
判決添付の別紙(一)のままではなく、出願公開前の昭和五四年六月二九日付補正に
より補正されており、これと昭和五五年七月一七日付補正後の登録請求の範囲とを
対比すれば、実質的な相違点は、自動車に帯電した静電気をアースするために自動
車後部のフレームに取付金具によつて吊り下げられる導電性ゴム製の帯体に反射板
を取り付けた構成からなる自動車接地具に係る本件考案において、前者では、右帯
体への反射板の取付方法に特段の限定がなかつたが、後者では、右反射板が「取付
位置調節、相対移動可能に」取り付けられていることを要件として付加したもので
あることにあり、換言すれば、右昭和五五年七月一七日付補正は、願書に最初に添
附した明細書又は図面(原追加判決挙示の甲第一号証の三)に記載した事項の範囲
内において、反射板が「取付位置調節、相対移動可能」であるものも、そうでない
ものも含む考案から、「取付位置調節、相対移動可能」であるものに限定したもの
として、登録請求の範囲の減縮に当たると解される。そうであれば、反射板が帯体
に「取付位置調節、相対移動可能に」取り付けられている被告製品は、補正の前後
を通じて本件考案の技術的範囲に属することになるから(被告製品が、登録された
本件考案の技術的範囲に属することは、原判決の判示するところであつて、右判断
は是認することができる。)、前記説示は照らし、出願人が同条所定の補償金の支
払を請求するには、右補正の後に改めて被上告人らに対して警告をするなどして被
上告人らにおいて補正後の登録請求の範囲の内容を知ることは要しないということ
になる。
なお、右警告ないし悪意の要件については、実用新案登録出願は、一年六か月経
過後に例外を除き自動的に出願公開がされるものであるところ(同法一三条の二)、
本件記録によれば、被上告人らは、昭和五四年五月七日に本件訴状とともに甲第一
号証の一ないし五(本件考案の実用新案登録願、出願審査請求書、明細書、委任状、
出願番号通知)の写しの送達を受けることにより、本件考案が出願されたこと及び
その内容、出願番号等を知り、その後も、本件考案に類似する考案の出願の有無・
内容等を調査し(乙第一号証ないし第三号証、第四号証の一・二、第五号証の一な
いし七、第六号証)、本件考案の審査の過程を見守つていたこと(乙第七号証の一
ないし七)が窺われ、更には、第一審の昭和五五年二月二〇日の口頭弁論期日にお
ける上告人A2の本人尋問において、被上告人らの訴訟代理人の質問に対して、上
告人A2が本件考案はこの間公開されたばかりである旨答えており、これらのこと
に照らせば、出願公開の直後に、あるいは遅くとも右口頭弁論期日において、本件
考案が出願公開された事実を被上告人らが知つたとの疑いが濃厚である。
したがつて、出願公開に基づく上告人A2の補償金支払請求を棄却した原追加判
決は、その要件を定めた実用新案法一三条の三の解釈適用を誤つた違法があつて、
この違法が判決の結論に影響を及ぼすことは明らかであり、ひいて審理不尽、理由
不備の違法があるものといわなければならない。これと同旨に帰するものと解され
る上告人A2の論旨は、理由がある(なお、上告会社は、その主張によつても、本
件考案について独占的実施許諾を受けて昭和五三年六月から原告製品の製造販売を
しているというだけであつて、本件考案の出願人でないことが明らかであるから、
他に特段の事情のない限り、同条所定の補償金支払請求を認める余地はない。)。
第三 結論
以上のとおりであるから、昭和六一年(オ)第三〇号事件につき、昭和五九年三
月一六日言渡しの原判決中上告会社敗訴部分を破棄し、特に、上告会社の不正競争
防止法に基づく差止め及び損害賠償の各請求につき、前記第一の一に説示した各時
点において原告製品の形態自体及び原告商標が周知性を備えるに至つていたかどう
か(原告製品の形態については、右判断の前提として右形態が商品表示としての性
質を備えるに至つていたかどうかを含む。)等について、更に審理を尽くさせるた
め原審に差し戻し、上告人A2についてはその上告を棄却することとし、昭和六一
年(オ)第三一号事件につき、昭和六〇年九月三〇日言渡しの原追加判決を破棄し、
特に、上告人A2の関係で、明細書の登録請求の範囲の補正と実用新案法一三条の
三所定の警告ないし悪意との関係について前記第二に説示した見解のもとに、本件
考案の出願公開後における悪意の存否につき更に審理を尽くさせるため、原審に差
し戻すこととする。
よつて、民訴法四〇七条一項、三九六条、三八四条、九五条、八九条の規定に従
い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 伊 藤 正 己
裁判官 安 岡 滿 彦
裁判官 坂 上 壽 夫
裁判官 貞 家 克 己
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