昭和37(オ)955審決取消請求
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裁判所 |
最高裁判所第三小法廷
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裁判年月日 |
昭和39年6月16日 |
事件種別 |
民事 |
法令 |
商標権
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キーワード |
審決3回 商標権2回
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主文 |
本件上告を棄却する。上告費用は上告人の負担とする。 |
判示事項 |
旧商標法(大正一〇年法律第九九号)第二条第一項第九号にいわゆる指定商品の類似性の判定。 |
事件の概要 |
登録出願にかかる商標の指定商品が旧商標法施行規則(大正一〇年農商務省令第三六号)所定の類別のうち引用商標の指定商品を特に除外したものであり、また両商品は互いに品質、形状、用途を異にするものであつても、それに同一または類似の商標を使用すれば同一営業主の製造または販売にかかる商品と誤認混同されるおそれがある場合には、これらの商品は、旧商標法(大正一〇年法律第九九号)第二条第一項第九号にいう類似の商品にあたると解するのが相当である。 |
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判決文
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告人の上告理由第一点について。
論旨は、本願商標の指定商品は引用商標の指定商品を特に除外し、また両者は品
質、形状、用途を異にしているにもかかわらず、原判決が引用商標と類似する本願
商標をその指定商品に使用するにおいては商品の出所を誤認混同せしめる虞れがあ
るとなし、そのことから、本願商標の指定商品を引用商標のそれに類似すると認め
たのは、商標法(大正一〇年法律九九号、以下同じ。)二条一項九号の規定を不当
に解釈し、商品の類否判定に関する法則の適用を誤り、審理不尽、理由不備の違法
をおかしたものである、という。
商標権者は指定商品のみにつきその商標を専用し得る権利を有するに過ぎないこ
と、正に、所論のとおりである。しかし、商標法二条一項九号は、商標の不登録事
由を単に他人の登録商品と「同一ノ商品」に使用するものに限定することなく、一
般公衆が不測の損害を蒙ることを防止し且つ不正競争を抑圧する目的で、「類似ノ
商品」に使用するものにまで拡大しているので、登録商標権者に対する保護の範囲
は、当該指定商品のみならず、これと類似の商品にも及ぶもの、といわなければな
らない。そこで、商標の本質は、商品の出所の同一性を表彰することにもあるもの、
と解するのが相当である。しかして、商標の本質が右のごときものである以上、商
標の類否決定の一要素としての指定商品の類否を判定するにあたっては、所論のご
とく商品の品質、形状、用途が同一であるかどうかを基準とするだけではなく、さ
らに、その用途において密接な関連を有するかどうかとか、同一の店舗で販売され
るのが通常であるかどうかというような取引の実情をも考慮すべきことは、むしろ、
当然であり、また、所論のごとく法二条一項九号は私益的規定であるのに対し同一
一号は公益的規定であるとはいえ、両者は排他的関係にあるものと解すべきではな
く(昭和三五年一二月二〇日第三小法廷判決、民集一四巻一四号三一〇三頁参照)、
一一号の「商品ノ誤認又ハ混同ヲ生セシムルノ虞アルモノ」に該当する商標は、そ
れが他人の登録商標と同一または類似である場合には、その指定商品と「同一又ハ
類似ノ商品ニ使用スルモノ」と認め、九号の規定を適用してその登録を拒否するこ
とも違法ではない、といわなければならない。
いま本件についてこれをみるのに、上告人の登録出願にかかる商標は、「PEA
COCK」なる文字より成り、法施行規則一五条第五一類文房具中万年筆、鉛筆、
「クレオン」、鉛筆削、「ペン」先、「ペン」軸、「シヤープペンシル」「チョー
ク」、「インキ」、印刷「インキ」消、消「ゴム」、「ゴム」印、筆洗、文箱、筆
立、紙挾、状差、「シース」、紙押「ピン」、「ホッチキス」、「バインダー」、
文鎮をその指定商品とし、引用商標は、孔雀の図形と「諸星墨汁」なる文字より成
り、第五一類文房具中墨汁をその指定商品とするものであるが、本願商標と引用商
標とが商標自体において類似することは上告人の争わないところであること、記録
上明らかであり、また、本願商標の指定商品と引用商標の指定商品とが必らずしも
常にその製造発売元を異にするものでないことは、みやすいところである。
従って、本願商標の指定商品には、引用商標の指定商品たる墨汁が特に除外され
ており、また、引用商標の指定商品とは品質、形状、用途の点において異なるもの
があるとしても、右のごとき事実関係の下において、原判決が両者はともに第五一
類文房具に属するものであって、書写およびこれと密接に結合された用途に使用さ
れるものであり、且つ、同一の店舗において公衆に販売されるのを常態とするもの
であるから、本願商標をその指定商品に使用して売り出せば一般世人に引用商標の
商品と同一営業主の製造または販売にかかるものと誤認混同される虞れがあるとし
て、本願商標は法二条一項九号に該当すると判断したのは、正当であって、所論の
違法はない。
されば、論旨は、理由なきに帰し、採用できない。
第二点について。
論旨は、原審決の棄却理由に理由不備の違法がある、という。
しかし、原審決の所論棄却理由たる「本願の指定商品は、昭和三四年一一月一六
日を以て上記の通り訂正した(指定商品から墨汁を除外したことを指す。)が、な
お引用登録商標の指定商品と相類似するものが包含されているものと認められる。」
というのは、表現方法としては完全であるとはいえないが、原審決理由全体の趣旨
からみれば、本願商標の指定商品全部についての棄却理由を示しているものと認め
ることができないわけではない。
従って、これと同趣旨に出た原審の判断は、正当である。
それ故、論旨は、理由がない。
よって、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 柏 原 語 六
裁判官 石 坂 修 一
裁判官 横 田 正 俊
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