昭和29(あ)2229商標法違反
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裁判所 |
最高裁判所第三小法廷
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裁判年月日 |
昭和31年7月3日 |
事件種別 |
民事 |
法令 |
商標権
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キーワード |
侵害3回 商標権3回
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主文 |
本件上告を棄却する。 |
判示事項 |
商標法第三四条にいう「類似ノ商標」と認められる一事例 |
事件の概要 |
「Coca Cola」なる文字で示した商標と「Cola Cola」なる文字の部分を要部とし、これと図形、記号との結合、着色による商標とは、称呼上および外観上類似し、両商標は商標法第三四条にいう「類似ノ商標」というべきである。 |
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判決文
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人徳永平次の上告趣意第一点について。
所論は、単なる法令違反の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
原判決は、Aカンパニーの商標「コカコーラ」がわが国で登録されていたこと、同
商標とB飲料株式会社製造の飲料「コラコーラ」に使用した商標とがある程度似て
いることを被告人において意識していたことを証拠によつて認定した上、被告人に
は商標権の侵害につき犯意があつたものと判示したのであつて、その判断は相当と
認められる。所論は、原判決が被告人の過失に基く違反を処罰したものと主張する
のであつて、原判示に副わない非難であるから理由がない。
同第二点について。
所論も刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そして原判決に所論のような違法の
ないことも次に弁護人今長高雄の上告趣意第一点について説明するとおりである。
弁護人今長高雄の上告趣意第一点について。
所論は、原判示には矛盾があると共に大審院並びに高等裁判所の判例と相反する
判断をした違法があると主張する。しかし、原判決は、商標の類似とは二個の商標
が取引上一般人の眼から見て混同誤認を生じ易き程度に相似することであると説明
した上、商標の混同誤認は商標の外観(色彩を含め)称呼又は観念の上から商品需
要者に与える印象等により惹起されるものであるところ、本件の両商標は称呼上彼
此相紛わしく類似するばかりでなく、外観上も相互に酷似するので、商標法上類似
商標と言わなければならないと述べ、両商標の称呼又は外観は取引上の一般需要者
に混同誤認を生じ易からしめるものであると説示しているのであつて、その判示に
は所論のような矛盾はなく、又引用の判例と相反する判断をしたところもないので
所論は理由がない。
同第二点について。
所論は、被告人に商標権侵害の犯意があつたものとした原判示は、事実誤認であ
るというのであるが、その理由のないことは、弁護人徳永平次の上告趣意第一点に
ついて判示したとおりである。
同第三点について。
所論は、原審に提出した控訴趣意書を援用して事実誤認を主張するものであつて、
上告適法の理由とならない。
弁護人水野東太郎、同岡安秀の上告趣意第一点について。
所論は、原判決が被告人使用の商標から要部を抽出できると判断したこと、又仮
りに要部が抽出できるとしてもその理由を説明しなかつたことは大審院判例と異な
る判断をしたものであると主張する。しかし、第一審判決挙示の証拠を参酌して原
判決の認定した事実をみれば、B飲料株式会社製造の清涼飲料水に使用した商標か
らは特別の理由を示すまでもなく自然に「コラコーラ」の称呼がでゝくるのであつ
て、これと異なる称呼のでゝくることは考えられない。そして、Aカンパニーの登
録商標は「Coca Cola」とローマ字で示された文字商標であるから、その
称呼は「コカコーラ」であり、両者は商品取引の実状から考えて称呼上彼此相紛わ
しく類似するものと言うべく、その称呼のでゝくる字態についても両者は外観上類
似するものと認められる。されば、両商標は商標法上の類似商標と言うべきであり、
原判決の判示するところも右と同趣旨と解しえられるのであるから、かかる事案に
ついては所論のように要部の抽出につき特別の理由を説示する必要はない。それ故
原判決の判示は相当である。論旨引用の判例は、いずれも本件と事案が異なる案件
に関するものであるので適切でなく、原判決は判例と相反する判断をしたものでは
ない。
同第二点乃至第六点について。
所論は、原判決が本件両商標の類似を判示したことにつき、商標法の解釈を誤つ
たほか審理不尽、理由不備、事実誤認の違法があると主張するものであつて、いず
れも刑訴四〇五条の上告理由に当らない(論旨中には判例を挙げているが、原判決
の判例違反を主張する趣旨とは解せられない)。そして、原判決の判示が相当であ
ることは前論旨につき説明したとおりであるから、原判決には所論の違法はない。
同第七点について。
所論は、原判決が本件両商品を清涼飲料水であるというだけで相類似する商品と
認めたことは、審理不尽、理由不備の違法があると判例を挙げて非難する。しかし、
本件の具体的な両商品につき、原判決が右両商品はいずれも商標法施行規則一五条
所掲の類別第四〇類中の清涼飲料水であるから相類似する商品であると判示したこ
とは相当であつて、所論の判例と相反する判断をしたものでもなく、又所論の違法
も認められない。
同第八点について。
所論は、結局被告人に商標権の侵害につき犯意がなかつたとの事実誤認の主張に
帰し、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
弁護人江口繁の上告趣意書は、期間経過後に提出されたものであるから、これに
ついては判断しない。
また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
昭和三一年七月三日
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 島 保
裁判官 河 村 又 介
裁判官 小 林 俊 三
裁判官 本 村 善 太 郎
裁判官 垂 水 克 己
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