昭和33(オ)567商標登録無効審判抗告審判審決取消請求
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裁判所 |
最高裁判所第三小法廷
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裁判年月日 |
昭和35年12月20日 |
事件種別 |
民事 |
法令 |
商標権
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キーワード |
審決12回 無効2回 無効審判1回
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主文 |
本件上告を棄却する。上告費用は上告人の負担とする。 |
判示事項 |
一 商標登録無効審判抗告審判の審決後の事実を右審決に対する訴訟の裁判で判断の資料とすることの当否
二 商標法による審決に対する訴訟で審判に際して主張されなかつた新たな事実の主張の当否
三 旧商標法第二条第一項第九号と第一一号との関係 |
事件の概要 |
一 商標無効審判抗告審判の審決後の事実であつても、商標の無効かどうかの判断の資料になり得るものは、審決に対する訴訟の裁判で判断の資料にならないものではない。
二 商標法による審決に対する訴訟で、当事者は、審判における争点について、審判に際し主張しなかつた新たな事実を主張することができる。
三 旧商標法(大正10年法律第九九号)第二条第一項の第九号と第一一号とは排他的に解しなければならないことはない。 |
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判決文
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人弁護士兼子一、同釘沢一郎の上告理由第一点について。
論旨は、原判決は行政処分の違法判断基準時に関する当裁判所の先例に違反する
旨を主張するのであるが、本件無効審判における争点は、上告人の商標が旧商標法
(以下法と略称する)二条に違反して登録されたかどうかであり(法一六条一項一
号)、抗告審判の審決に対する本訴の争点も実質的には右とかわりはなく、されば
原判決も「被告の商標の登録は商標法第二条第一項第九号の規定に違反してなされ
たもの……」と判示しているのである。所論違法判断の基準時は、本訴においては
問題とする余地がなく、原判決の当否とは関係がないものといわなければならない。
次に論旨は、原判決は審決の後に生じた事実に基いて審決の当否を判断した違法
があるというのである。もとより、抗告審判の審決に対する訴では、直接には、審
決の当否が争われるのであるが、実質上は、前述のように、商標が法二条に違反し
て登録されたかどうかが争われるのであつて、審決後の事実であつても、右違反の
有無判断の資料となり得るものは、これを判断の資料として採用できないものでは
ない。所論甲第一九号証、第二〇号証等が審決後の事実に関するものであることは
論旨のとおりであるが、これらの証拠によつて審決後において原判示のような混同
誤認のおそれがあると認められる以上、特段の事情のない限り、上告人の本件商標
出願登録当時においても、上告人出願商標が法二条一項九号に該当していたものと
推定すべく、原判決がこれらの証拠に基いて事実を認定し審決を違法としたからと
いつて違法ということはできない。
論旨はさらに、審決に対する訴訟では、審判の段階で主張されなかつた事実を主
張することがゆるされないにかかわらず、原判決は、本訴で当事者が新しく主張し
た事実に基いて判決をした違法があるというのである。しかし、本件審判における
争点は、上告人の商標が法二条一項九号、一一号に該当するかどうかであり、右の
争点に関する限り、訴訟の段階でも、攻撃、防禦の方法として、新な事実上の主張
がゆるされないものではない。原審が事実審であり、「私的独占禁止及び公正取引
の確保に関する法律」八一条のような規定がない以上、審決に対する訴であるから
といつて、所論のように解することはできない。所論は立法論としては格別、現行
法の解釈としては、結局、独自の見解というよりほかはなく、とることができない。
同第二点について。
論旨は、原判決が上告人の商標は取引上商品の混同誤認を生ずるおそれがあると
し、法二条一項九号に該当するとしたのは、右九号の適用を不当に拡大した違法が
あるというのである。
法二条一項九号が私益的規定であり同項一一号が公益的規定と解すべきことは所
論のとおりであるが、両者を所論のように排他的に解しなければならない理由はな
く、むしろ、九号に該当する場合には、一一号にも該当することが多いものと解し
て少しも支障はないのである。右九号に該当するか否かは、所論のように、外形の
みによつて判断すべきではなく、原判決が上告人の商標は被上告人の商標と誤認混
同を生ずるおそれがあるとし、法二条一項九号に該当するとしたのは違法ではない
(論旨援用の昭和一七年一〇月一三日大審院判決は論旨にそう判決ではない)。論
旨は理由がない。その他の論旨は、原判決の経験則違背を主張するのであるが、上
述の上告人の法律解釈を前提としているのであつて採用できない。
同第三点について。
論旨は、被上告人商標の指定商品と上告人商標の指定商品とは一部だけ牴触して
いるに過ぎないのにかかわらず、上告人の商標について何等留保することなく全部
無効としたのは違法であるというのである。
しかし、本件二商標のそれぞれの指定商品について牴触するものがあることにつ
いては争いがなく、しかも、本件審判においては、指定商品全部について類似性の
有無は争われておらず、原審でもこの点について争われていないのであるから、原
判決がこの点について判断を示さなかつたのは当然である。原判決は、本件審決が
上告人の商標が法二条一項九号に該当しないとしたのを違法として取り消したに過
ぎないのである(従つて判決の拘束力は指定商品中類似性のないものがあるかどう
かについては及ばないものと解してよいのである)。論旨は理由がない。
同第四点について。
論旨は、原判決の認定は経験則に反するというのであるが、原判決が上告人の商
標と被上告人の商標とは外形において類似していないが、観念、称呼において類似
するとしたのは、その挙示の証拠及びその説明によつて首肯できないことはない。
論旨は理由がない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 高 橋 潔
裁判官 島 保
裁判官 河 村 又 介
裁判官 石 坂 修 一
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