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平成22(ネ)10006民事訴訟 特許権

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裁判所 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
裁判年月日 平成27年11月26日
事件種別 民事
当事者 控訴人
被控訴人オリンパスメディカルシステ 補助参加人オリンパス株式会社古城春実
法令 特許権
民法96条4回
特許法100条1項1回
キーワード 無効12回
特許権8回
侵害5回
審決4回
差止4回
無効審判2回
実施1回
損害賠償1回
主文 1 本件訴訟は,平成22年7月14日の和解成立により終了した。
2 控訴人の平成27年5月25日付け「和解期日指定申立書」による口頭弁論期日指定の申立て以後の訴訟費用は,控訴人の負担とする。
事件の概要 1 民法96条に基づく本件和解の取消しについて ⑴ 控訴人は,被控訴人が,原審において,実際には被告製品の構成を示すもの ではない証拠を,被告製品の構成を示すものと偽って提出したことによって,原審 の受訴裁判所を構成する裁判官が錯誤に陥ったことにより,原判決において被告製 品の充足性を否定する旨の判断をし,控訴人も錯誤に陥り,被控訴人らに有利な本 件和解に合意した,当審の受命裁判官も錯誤に陥り,それも,本件和解の内容に影 響を与えた旨主張しているものと解される。 ⑵ この点に関し,原審以来本件で対象となった被告製品は,「内視鏡ビデオス コープシステム『EVIS LUCERA SPECTRUM』にビデオスコープ『EVIS LUCERA OLYMPUS GIF TYPE FQ260Z』を装着してなる蛍光内視鏡観察システム」である。そして,被控 訴人が原審において被告製品の構成を示す証拠として提出した甲第4号証の1・2 は,いずれも取引先等に配布しているものと推認できるパンフレットであり,「EVIS LUCERA 上部消化管汎用ビデオスコープ OLYMPUS GIF TYPE FQ260Z」という,被告製 品の名称が明記されている。これら甲第4号証の1・2が,被告製品の構成と称し て,実際にはそれと異なる構成を示しているという事情は,うかがわれない。

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判決文

平成27年11月26日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成22年(ネ)第10006号 特許権侵害差止反訴請求控訴事件
(原審・東京地方裁判所平成21年(ワ)第18950号)
口頭弁論終結日 平成27年10月15日
判 決
控 訴 人 X
同補佐人弁理士 中 川 邦 雄
被 控 訴 人 オリンパスメディカルシステ
ムズ株式会社
被控訴人補助参加人 オ リ ン パ ス 株 式 会 社
上記両名訴訟代理人弁護士
古 城 春 実
堀 籠 佳 典
主 文
1 本件訴訟は,平成22年7月14日の和解成立により終了した。
2 控訴人の平成27年5月25日付け「和解期日指定申立書」に
よる口頭弁論期日指定の申立て以後の訴訟費用は,控訴人の負担
とする。
事実及び理由
第1 事案の概要
1 本件に関する事実経過(記録上明らかな事実)
(略称は,特に断らない限り,原判決に従う。)
⑴ 原審の経過
ア 被控訴人は,平成20年9月22日,名称を「蛍光電子内視鏡システム」と
する発明(本件発明)につき特許権(本件特許権)を有する控訴人は本件特許権に
基づき,被控訴人が原判決別紙反訴被告製品目録記載の製品(被告製品)を製造,
販売することを差し止める権利を有しないことを確認する旨の本訴(平成20年(ワ)
第26633号特許権侵害差止請求権不存在確認事件)を提起した。
控訴人は,平成21年6月8日,被告製品が本件特許権を侵害するとして,特許
法100条1項,2項に基づき,被告製品の製造,販売等の差止め及び廃棄を求め
るとともに,不法行為(特許権侵害)による損害賠償請求権に基づき,損害金合計
7億8120万円の一部請求として1億円及びこれに対する反訴状送達の日の翌日
(平成21年6月11日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損
害金の支払を求める旨の反訴(平成21年(ワ)第18950号特許権侵害差止請
求反訴事件)を提起した。
被控訴人は,同年9月30日,前記反訴提起を受けて,前記本訴を取り下げ,控
訴人は,同日の第7回弁論準備手続期日において,上記取下げに同意した。
なお,控訴人は,当初,代理人を選任することなく,自ら訴訟を追行していたが,
その後,訴訟代理人として弓削田博弁護士(以下「弓削田弁護士」という。)を選任
した。弓削田弁護士は,前記反訴を提起し,その後,同年6月10日の第5回弁論
準備手続期日から同年9月30日の原審の口頭弁論終結(第2回口頭弁論期日)ま
で全ての期日に,控訴人と共に出頭した。この間,控訴人は,訴訟代理人弓削田弁
護士により,同年7月17日付け(本訴)被告第8準備書面,同年9月9日付け本
訴被告(反訴原告)第9準備書面及び同月18日付け本訴被告(反訴原告)第10
準備書面を提出した。これらのうち,同月9日付け本訴被告(反訴原告)第9準備
書面には,それまでに控訴人が主張してきた充足論のまとめが記載されている。
イ 原判決は,平成21年12月16日,被告製品は本件発明の技術的範囲に属
するものと認めることはできないから,控訴人の請求は,その余の点について検討
するまでもなく,いずれも理由がないとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。
控訴人は,同月25日,原判決を不服として,本件控訴を提起した。
⑵ 当審の経過
ア 控訴人は,平成22年2月11日,訴訟代理人として,弓削田弁護士,河野
登夫弁理士,河野英仁弁理士及び安田恵弁理士を選任した。
当審は,同月17日,本件を弁論準備手続に付し,受命裁判官に行わせる決定を
した。
同年4月7日の第1回弁論準備手続期日において,平成21年12月23日付け
控訴状,控訴状訂正書,控訴理由書,平成22年4月1日付け控訴人第1準備書面
及び答弁書が陳述され,控訴人提出の書証である乙第55号証から乙第58号証が
取り調べられた。控訴人及び被控訴人は,他に主張立証はない旨を述べた。
同年5月10日に第2回弁論準備手続期日が行われ,同日,当審は,和解を勧告
するとともに,受命裁判官に行わせる決定をした。同年6月9日,同月30日及び
同年7月14日に,和解期日が行われた。
当審におけるこれら2回の弁論準備手続期日及び3回の和解期日のいずれにも,
少なくとも控訴人本人と弓削田弁護士及び河野登夫弁護士が出頭していた。
イ 平成22年7月14日の和解期日において,控訴人,被控訴人及び利害関係
人である被控訴人補助参加人(以下「被控訴人ら」という。)との間で,和解(以
下「本件和解」という。)が成立した。その調書には,別紙のとおりの和解条項(以
下「本件和解条項」という。)が記載されている。
⑶ 関連事件の経過等
ア 控訴人は,平成19年3月23日付けで,特許庁に対し,被告製品を含む被
控訴人の製品が本件発明の技術範囲に属するとの判定を請求し(甲15),判定2
007-600027号事件として係属した。
特許庁は,平成20年2月18日,前記の被告製品を含む被控訴人の製品が本件
発明の技術的範囲に属するとの判定をした(乙3)。
イ 被控訴人は,平成20年10月22日付けで,特許庁に対し,本件特許につ
いて特許無効審判を請求し(甲5),無効2008-800215号事件として係
属した。
特許庁は,平成21年6月19日,上記特許を無効にすべき旨の審決をした(甲
26)。
控訴人は,上記審決の取消しを求めて審決取消訴訟を提起し,平成21年(行ケ)
第10200号事件として係属した。
本件和解条項7⑴のとおり,被控訴人と控訴人は,被控訴人において,前記特許
無効審判請求を取り下げ,控訴人は,同取下げを承諾すること,その後,控訴人に
おいて,前記審決取消訴訟を取り下げ,被控訴人は,同取下げに同意することが合
意され,履行された。
ウ 控訴人は,平成26年12月25日付けで,本件和解の無効確認等を求める
訴えを東京地方裁判所に提起し,平成26年(ワ)第34337号和解無効確認請
求事件として係属したが,後にこれを取り下げた上,平成27年5月25日,本件
期日指定を申し立てた。
2 当事者の主張
〔控訴人の主張〕
⑴ 民法96条に基づく本件和解の取消しについて
控訴人は,「被控訴人の対象製品,AFI」が本件発明の技術的範囲に属するも
のと認めることはできないという判断をした原判決を受け,控訴審において本件和
解に係る合意をしたものである。
しかしながら,本件和解後,被控訴人が原審において「対象製品」の構成を示す
ものとして提出した証拠は,実際に販売されている「対象製品」の構成とは異なる
ものであることが,判明した。
原審において,実際に販売されている「対象製品」の構成を示す証拠が提出され,
受訴裁判所を構成する裁判官が錯誤に陥っていなければ,原判決は控訴人の請求を
認容したはずである。控訴人としても,本来は●●●●●●●●●●●●●●●●
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●●●●●●●●●●●●●について合意することはなかった。また,当審の受命
裁判官が被控訴人の提出した前記証拠によって錯誤に陥っていれば,本件和解の内
容に大きな影響を与えることは,いうまでもない。
したがって,本件和解は,被控訴人による証拠を偽装した詐欺行為によって,原
審の受訴裁判所を構成する裁判官及び当審の受命裁判官並びに控訴人が錯誤に陥っ
た結果,成立したものということができるから,民法96条に基づいて取り消すこ
とができる。
⑵ 本件和解条項4⑵後段の債務の不履行について
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〔被控訴人らの主張〕
⑴ 民法96条に基づく本件和解の取消しについて
ア 控訴人主張に係る「対象製品」が被告製品を意味するのであれば,「対象製
品」が本件発明の実施品であるか否かは,本件訴訟の争点であり,控訴人は,本件
和解により,上記争点について裁判所による判断の確定を待たずに紛争を終結させ
る合意をしたのであるから,上記争点についての錯誤は裁判上の和解である本件和
解を無効とする根拠にはならず,控訴人の主張は,それ自体,失当である。
仮に,控訴人主張に係る「対象製品」が被告製品以外の製品を意味するのであれ
ば,被控訴人は,本件訴訟において,そのような「対象製品」についての主張立証
活動は行っておらず,したがって,証拠を偽装した詐欺行為をしたという事実も存
在しないから,控訴人の主張には理由がない。
イ 原審の受訴裁判所を構成する裁判官は本件和解の当事者ではないから,原審
の受訴裁判所を構成する裁判官が錯誤に陥っていたという控訴人主張に係る事実は,
本件和解の無効原因,取消原因になり得ない。
ウ 本件和解は,当審において,控訴人が選任した訴訟代理人弁護士及び弁理士
らが出頭した期日を4回経た後,5回目の期日において成立したものであり,この
経緯に照らせば,控訴人及びその訴訟代理人らのいずれにおいても,本件和解の前
提となる事実について錯誤が存在しなかったことは,明らかである。
⑵ 本件和解条項4⑵後段の債務の不履行について
控訴人が主張する本件和解成立後の事情は,本件和解を無効とする根拠になり得
ず,控訴人の主張はそれ自体失当である上に,●●●●●●●●●●●●●●●●
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第2 当裁判所の判断
1 民法96条に基づく本件和解の取消しについて
⑴ 控訴人は,被控訴人が,原審において,実際には被告製品の構成を示すもの
ではない証拠を,被告製品の構成を示すものと偽って提出したことによって,原審
の受訴裁判所を構成する裁判官が錯誤に陥ったことにより,原判決において被告製
品の充足性を否定する旨の判断をし,控訴人も錯誤に陥り,被控訴人らに有利な本
件和解に合意した,当審の受命裁判官も錯誤に陥り,それも,本件和解の内容に影
響を与えた旨主張しているものと解される。
⑵ この点に関し,原審以来本件で対象となった被告製品は,「内視鏡ビデオス
コープシステム『EVIS LUCERA SPECTRUM』にビデオスコープ『EVIS LUCERA OLYMPUS
GIF TYPE FQ260Z』を装着してなる蛍光内視鏡観察システム」である。そして,被控
訴人が原審において被告製品の構成を示す証拠として提出した甲第4号証の1・2
は,いずれも取引先等に配布しているものと推認できるパンフレットであり,
「EVIS
LUCERA 上部消化管汎用ビデオスコープ OLYMPUS GIF TYPE FQ260Z」という,被告製
品の名称が明記されている。これら甲第4号証の1・2が,被告製品の構成と称し
て,実際にはそれと異なる構成を示しているという事情は,うかがわれない。
⑶ また,原審の裁判官及び当審の受命裁判官は,いずれも本件和解の当事者で
はなく,これらの裁判官が錯誤に陥ったか否かは,そもそも本件和解の取消原因に
当たらないし,無効原因にも当たらない。
なお,原審において,被告製品については,その一部の構成に関し,控訴人と被
控訴人との間で争いがあったところ,控訴人の主張する被告製品の構成は,特許庁
における判定(判定2007-600027)の手続において認定された被告製品
の構成と同一のものであり,特許庁は,被告製品が本件発明の技術的範囲に属する
旨の判定をした(乙3)。原判決は,控訴人が提出した乙第1号証及び乙第2号証
を摘示し,被控訴人は訴訟係属前に被告製品の構成が控訴人の主張するとおりであ
ることを自認していたことなどから,被告製品は控訴人の主張する構成(前記判定
の手続で認定されたものと同一の構成)を有するものであることを前提として,被
告製品が本件発明の技術的範囲に属しない旨の判断をしたものである。以上によれ
ば,原審の裁判官及び当審の受命裁判官のいずれも,控訴人主張に係る被控訴人に
よる証拠偽装の詐欺行為によって判断を誤ったものと認めるに足りない。
⑷ さらに,前記第1の1のとおり,控訴人は,原審において,訴訟代理人とし
て弓削田弁護士を選任し,弓削田弁護士は,前記反訴を提起し,その後,平成21
年6月10日の第5回弁論準備手続期日から同年9月30日の原審の口頭弁論終結
(第2回口頭弁論期日)まで全ての期日に控訴人本人と共に出頭し,充足論に関す
る控訴人の主張のまとめが記載されている準備書面を含む3通の準備書面を提出し
ている。加えて,控訴人は,当審においては,弓削田弁護士に加えて3名の弁理士
を訴訟代理人として選任した。これらの訴訟代理人らは,被告製品の充足性につい
て詳細に主張した控訴理由書及びそれを補充する平成22年4月1日付け控訴人第
1準備書面を提出しており,弓削田弁護士及び河野登夫弁理士は,2回にわたる弁
論準備手続期日及び本件和解成立日を含む3回にわたる和解期日の全てに控訴人本
人と共に出頭した。
以上によれば,控訴人は,弁護士ないし弁理士である訴訟代理人の助力も受けな
がら,被告製品の構成も含め被告製品の充足性について十分に検討して主張し,ま
た,本件和解に臨んだものと認められ,この点に鑑みれば,被告製品の構成及び本
件和解の内容に関し,錯誤があったとは考え難い。
⑸ 以上によれば,控訴人の前記主張は,採用できない。
2 本件和解条項4⑵後段の債務の不履行について
被控訴人らは,本件和解に基づき,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
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という控訴人主張に係る事実は,認めるに足りない上,仮にそのような事実があっ
たとしても,上記不作為債務の不履行は,本件和解後の事情であるから,本件和解
の無効原因とはなり得ず,したがって,控訴人の主張は,それ自体失当である。
3 結論
以上によれば,本件和解につき,無効原因及び取消原因の存在を認めるに足りず,
したがって,本件訴訟は,本件和解により終了したものであるから,その旨を宣言
し,控訴人の平成27年5月25日付け「和解期日指定申立書」による口頭弁論期
日指定の申立て以後の訴訟費用は,控訴人の負担とすることとして,主文のとおり
判決する。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 髙 部 眞 規 子
裁判官 田 中 芳 樹
裁判官 鈴 木 わ か な
(別紙)
和 解 条 項
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以 上

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