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平成26(ワ)24183損害賠償請求事件

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裁判所 請求棄却 東京地方裁判所
裁判年月日 平成28年1月28日
事件種別 民事
当事者 被告エリクソン・ジャパン株式会社岡田淳
原告アダプティックスインコーポレイテッド隈部泰正
対象物 グループベースのサブキャリア割当による多重キャリア通信
法令 特許権
特許法102条3項2回
特許法101条5号2回
キーワード 分割14回
実施11回
特許権8回
侵害7回
優先権4回
無効4回
損害賠償2回
無効審判2回
間接侵害2回
訂正審判1回
刊行物1回
進歩性1回
審決1回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。
事件の概要 本件は,発明の名称を「グループベースのサブキャリア割当による多重キャ リア通信」とする特許権を有する原告が,被告による別紙物件目録記載の基地 局装置(以下「被告製品」という。)の輸入,販売等は原告の特許権を侵害し, 又は侵害するものとみなされると主張して,被告に対し,不法行為に基づき, 民法709条及び特許法102条3項に基づく損害賠償金の一部として1億円 及びこれに対する不法行為後である平成26年9月26日(訴状送達の日の 翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を 求める事案である。

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判決文

平成28年1月28日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成26年(ワ)第24183号 損害賠償請求事件
口頭弁論の終結の日 平成27年12月4日
判 決
原 告 アダプティックス インコーポレイテッド
同訴訟代理人弁護士 飯 田 秀 郷
隈 部 泰 正
森 山 航 洋
清 水 紘 武
同訴訟代理人弁理士 黒 田 博 道
北 口 智 英
被 告 エリクソン・ジャパン株式会社
同訴訟代理人弁護士 佐 々 木 奏
岡 田 淳
飯 塚 卓 也
同訴訟代理人弁理士 大 塚 康 徳
高 柳 司 郎
同 補 佐人 弁 理 士 大 塚 康 弘
江 嶋 清 仁
坂 本 隆 志
前 田 浩 次
吉 田 晴 人
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
被告は,原告に対し,1億円及びこれに対する平成26年9月26日から
支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は,発明の名称を「グループベースのサブキャリア割当による多重キャ
リア通信」とする特許権を有する原告が,被告による別紙物件目録記載の基地
局装置(以下「被告製品」という。)の輸入,販売等は原告の特許権を侵害し,
又は侵害するものとみなされると主張して,被告に対し,不法行為に基づき,
民法709条及び特許法102条3項に基づく損害賠償金の一部として1億円
及 び こ れ に 対 す る 不 法 行 為 後 で あ る 平成26年9月26日(訴状送達の日の
翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅 延 損 害 金 の 支 払 を
求める事案である。
1 前提事実(証拠等を掲げた事実以外は,当事者間に争いがない。)
(1) 本件特許権
原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,これに係る特許を「本
件特許」という。また,本件特許出願の願書に添付された明細書(後記 (2)
記載のとおり訂正されたもの。)を「本件明細書」という。)を有している
(甲1,2の1・2)。
特許番号 第4031707号
発明の名称 グループベースのサブキャリア割当による多重キャリア通信
出 願 日 平成13年12月13日
優 先 日 平成12年12月15日(優先権主張番号 09/73
8,086,優先権主張国 米国)
平成13年4月17日(優先権主張番号 09/837,
337,優先権主張国 米国)
登 録 日 平成19年10月26日
(2) 特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の請求項4及び9の記載は,次のとおりである
(以下,請求項4の発明を「本件発明4」,請求項9の発明を「本件発明
9」といい,これらを併せて「本件発明」という。)。なお,原告は,本件
発明につき特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正審判を請求し,平成24
年10月9日に訂正を認める旨の審決がされた。以下の各請求項の記載内容
はその訂正後のものである(訂正部分に下線を付した。)(甲1,2の
2)。
ア 請求項4
直交周波数分割多重アクセス(OFDMA)を採用しているシステムの
ためのサブキャリア選択の方法において,
複数のサブキャリアを,複数のサブキャリアから成る複数のクラスタで
構成された複数のグループに分割する段階と,
前記複数のグループの中の1つ又は複数のグループの加入者による選択
の表示を受信する段階と,
前記加入者からサブキャリアのクラスタの1つ又は複数のグループに関
するフィードバック情報を受信する段階であって,前記フィードバック情
報は,ソース符号化技法を使って圧縮され,エラー修正でエンコードされ
る,前記段階と,
前記加入者が選択した1つ又は複数のクラスタのグループの中の少なく
とも1つのクラスタを前記加入者との通信に使用するために割り当てる段
階と,
から成ることを特徴とする方法。
イ 請求項9
複数のサブキャリアから成る複数のクラスタで構成された複数のグルー
プの中の1つ又は複数のグループの加入者による選択の表示と,サブキャ
リアのクラスタから成る前記1つ又は複数のグループに関する前記加入者
からのフィードバック情報と,を受信する,クラスタ割当制御装置であっ
て,前記フィードバック情報は,ソース符号化技法を使って圧縮され,エ
ラー修正でエンコードされており,前記クラスタ割当制御装置は,更に,
前記加入者が選択した1つ又は複数のクラスタのグループの中の少なくと
も1つのクラスタを前記加入者との通信に使用するために割り当てる,前
記クラスタ割当制御装置と,
前記クラスタ割当制御装置に接続されて,前記加入者によって使用され
る前記1つ又は複数のクラスタのグループにおける前記少なくとも1つの
クラスタを表示するような通知を前記加入者へ送信する,直交周波数分割
多重(OFDMA)トランシーバと,
を備えることを特徴とする装置。
(3) 本件発明の構成要件
本件発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した構
成要件をそれぞれの符号に従い「構成要件4A」のようにいう。)。
ア 本件発明4
4A 直交周波数分割多重アクセス(OFDMA)を採用しているシステ
ムのためのサブキャリア選択の方法において,
4B 複数のサブキャリアを,複数のサブキャリアから成る複数のクラス
タで構成された複数のグループに分割する段階と,
4C 前記複数のグループの中の1つ又は複数のグループの加入者による
選択の表示を受信する段階と,
4D 前記加入者からサブキャリアのクラスタの1つ又は複数のグループ
に関するフィードバック情報を受信する段階であって,
4E 前記フィードバック情報は,ソース符号化技法を使って圧縮され,
エラー修正でエンコードされる,前記段階と,
4F 前記加入者が選択した1つ又は複数のクラスタのグループの中の少
なくとも1つのクラスタを前記加入者との通信に使用するために割り
当てる段階と,から成ることを特徴とする方法。
イ 本件発明9
9A 複数のサブキャリアから成る複数のクラスタで構成された複数のグ
ループの中の1つ又は複数のグループの加入者による選択の表示と,
9B サブキャリアのクラスタから成る前記1つ又は複数のグループに関
する前記加入者からのフィードバック情報と,を受信する,
9C クラスタ割当制御装置であって,
9D 前記フィードバック情報は,ソース符号化技法を使って圧縮され,
エラー修正でエンコードされており,
9E 前記クラスタ割当制御装置は,更に,前記加入者が選択した1つ又
は複数のクラスタのグループの中の少なくとも1つのクラスタを前記
加入者との通信に使用するために割り当てる,前記クラスタ割当制御
装置と,
9F 前記クラスタ割当制御装置に接続されて,前記加入者によって使用
される前記1つ又は複数のクラスタのグループにおける前記少なくと
も1つのクラスタを表示するような通知を前記加入者へ送信する,
9G 直交周波数分割多重(OFDMA)トランシーバと,を備えること
を特徴とする装置。
(4) 被告の行為
被告は,業として,被告製品を販売している。
被告製品が用いられる通信システム方法は,構成要件4A,4Bを充足す
る。
第3世代移動通信システムの標準化組織の一つが3GPPであるところ,
3GPPにおける第3世代(3G)移動通信システムの長期的高度化システ
ムであるLTE(Long Term Evolution)通信規格にお
いて,非周期的なCQIレポートはいくつかのモードによって行われるが,
本件においては,高次階層設定サブバンドフィードバックモード(モード3.
0又はモード3.1)が問題となっている。被告製品においては,当該モー
ドが採用されている。
2 争点
原告は,被告製品が用いられる通信システム方法の構成(以下「本件通信シ
ステム方法」という。)及び被告製品の構成(以下「本件 基地局装置」とい
う。)は,LTE通信規格に準拠していることなどから,別紙「原告の主張す
る本件通信システム方法の特徴」及び別紙「原告の主張する本件基地局装置の
特徴」各記載のとおりであるとし(以下,上記各別紙記載の各構成を「特徴4
a」などという。),本件通信システム方法は本件発明4の技術的範囲に属す
るから,被告製品は特許法101条5号により本件発明4に係る特許権を侵害
するものとみなされ,また本件基地局装置は本件発明9の技術的範囲に属する
から,被告製品は本件発明9に係る特許権を直接侵害すると主張している。こ
れに対し,被告は,本件通信システム方法及び本件基地局装置は,別紙「被告
の主張する本件通信システム方法の特徴」及び別紙「被告の主張する本件基地
局装置の特徴」各記載のとおりであるとし(以下,上記各別紙記載の各構成を
「特徴4a´」などという。),これらの構成は本件発明の各構成要件を充足
しないことが明らかであるなどと主張する。したがって,本件の争点は,以下
のとおりである。
(1) 本件通信システム方法及び本件基地局装置は本件発明の技術的範囲に属
するか
(2) 間接侵害の成否
(3) 本件発明に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認め
られるか
(4) 原告の損害額
3 争点に関する当事者の主張
(1) 争点(1)(本件通信システム方法及び本件基地局装置は本件発明の技術的
範囲に属するか)について
(原告の主張)
ア 構成要件4C,4D,9A,9B,9C,9F充足性について
特徴4c(その1),9a(その1)のとおり,非周期的CQIレポー
トの高次階層設定サブバンドフィードバックモードでは,ワイドバンドC
QI及び全部のサブバンドについての各サブバンドのCQIとワイドバン
ドCQIとの差分を示すサブバンド差分CQI値が基地局に送信されるが,
これは,ユーザ端末が,基地局に対して,全部のサブバンドを選択したこ
とを表示することに相当する(以下,この立場を「解釈1」という。)。
情報処理技術分野における用語法において,「全部の選択」等の用語の用
い方はごく一般的なものであるし,基準に従った選択が常に起こることは,
システムが正常に機能していることを示すに過ぎず,全部選択が行われて
いることにより,他の選択肢(UE選択サブバンドフィードバックによる
一部選択など)を排除していることを否定することはできない。本件明細
書の段落【0028】,【0040】,【0069】には,全部のクラス
タが選択されることを包含する内容の記載があり,実質的にも,全部のサ
ブバンドを選択してフィードバックした方がかえってフィードバック情報
量を削減できるといえる。
上記と別の立場として,特徴4c(その2),9a(その2)のとおり,
各サブバンドのCQIがワイドバンドCQI以上であることを示すサブバ
ンド差分CQI値「0,1,2」が基地局に通知されることは,ユーザ端
末が,基地局に対して,これらの値を有するサブバンドを積極的に自己に
割り当てて欲しいと請求することであり,これらのサブバンドの選択の表
示に相当し,一方,サブバンド差分CQI値が「3」(ワイドバンドCQ
I未満)と通知されることは,割当てに適さないという非選択の表示に相
当する(以下,この立場を「解釈2」という。)。基地局が,サブバンド
差分CQI値「3」のサブバンドに属するリソース・ブロックを割り当て
ることがあるとしても,それはユーザ端末にとっては望んだ状況ではなく,
ユーザ端末が好適サブバンドを選択した後の統合最適化オペレーションを
遂行する基地局の行為であるから,ユーザ端末の「選択」が否定されるこ
とはないというべきである。また,選択の表示に加えて非選択の表示が付
加されたり,選択の好ましさの度合いが付加されたとしても,加入者によ
る選択の表示がなされていることに変わりはない。
被告は,本件発明にいう選択の表示は加入者が選択したクラスタグルー
プのID(識別情報)を意味すると主張するが,構成要件4C,9Aにお
ける選択の表示がグループ識別情報であると限定解釈される理由はなく,
加入者により選択されたクラスタグループを特定する情報であれば選択の
表示に相当する。
よって,本件通信システム方法及び本件基地局装置は,解釈1又は2の
いずれによっても,構成要件4C,4D,9A,9B,9C,9Fを充足
する。
イ 構成要件4E,9D充足性について
構成要件4E,9Dの「ソース符号化技法を使って圧縮」は,可逆圧縮
であるのか不可逆圧縮であるのか何らの限定をしていないのであるから,
可逆圧縮であると限定解釈する被告の主張は誤りである上,高次階層設定
サブバンドフィードバックモードで報告されるべきものはサブバンドCQ
Iであり,特徴4e,9dの各サブバンドのCQIとワイドバンドCQI
の差分に基づくサブバンド差分CQI値からサブバンドCQIを得ること
ができることからすれば,サブバンド差分CQI値はソース符号化技法に
基づく圧縮データであるといえ,構成要件4E,9Dの「ソース符号化技
法を使って圧縮」を充足する。よって,本件通信システム方法及び本件基
地局装置は,構成要件4E,9Dを充足する。
ウ 構成要件4F,9E充足性について
被告製品の計測結果によれば,本件通信システム方法及び本件基地局装
置において,基地局は,ユーザ端末に対して,前記ア記載のとおりユーザ
端末によって選択されたサブバンドに属する12個のサブキャリアで構成
されるリソース・ブロックを少なくとも1つ割り当てる。
解釈2につき,本件発明は,基地局が,多数の加入者に対する通信を最
も効率的に行うように調整して最適化する過程で,総合的な判断によって,
加入者が選択したグループ以外のグループに属するクラスタを付加的に割
り当てることを許容している。構成要件4F,9Eは,「前記加入者が選
択した1つ又は複数のクラスタのグループの中の少なくとも1つのクラス
タ『のみ』を・・・割り当てる」と規定しているわけではなく,また,本
件明細書には,加入者に対するサブキャリアの割当ては基地局が総合的判
断のもとで最終決定をすることが記載されている。したがって,被告製品
がサブバンド差分CQI値「3」のサブバンドに属するリソース・ブロッ
クを,サブバンド差分CQI値「0,1,2」のサブバンドに属するリソ
ース・ブロックと共に割り当てることがあるとしても,構成要件4F,9
Eを充足する。
よって,本件通信システム方法及び本件基地局装置において,基地局は,
ユーザ端末に対して,選択されたサブバンドに属し,クラスタに相当する
リソース・ブロックを1つ又は複数割り当てるから,本件通信システム方
法及び本件基地局装置は,構成要件4F,9Eを充足する。
エ 構成要件9G充足性について
ダウンリンクにおいてOFDMAで送信する送受信機能を有する無線装
置は,構成要件9GにおけるOFDMAトランシーバに相当するから,本
件基地局装置は構成要件9Gを充足する。
オ よって,本件通信システム方法及び本件基地局装置は,本件発明の全て
の構成要件を充足する。
(被告の主張)
ア 構成要件4C,4D,9A,9B,9C,9F充足性について
原告は解釈1及び2という2通りの特定を選択的に主張するが,被告製
品が用いられる通信システム方法は,事実としては1種類しか存在しない
のであるから,特定の方法としては1種類で足りるはずである。本件発明
は,加入者が使用に望ましいと考えるクラスタグループの候補を選択し,
候補クラスタグループの情報を加入者から基地局へフィードバックするこ
とで,基地局によるクラスタの選択・割当ての負担を軽減させるものであ
るから,構成要件4C,9Aの「加入者による選択」とは,加入者が特定
のクラスタグループを割当て候補として選び出すものでなければならない。
本件明細書においても,常に帯域を形成する全部のクラスタグループに関
する情報が基地局に返送されるという実施形態については何ら記載されて
いない。しかるに,非周期的高次階層設定サブバンドフィードバックモー
ドは,「N個のサブバンド」についてのサブバンド差分CQI値を,常に,
その数値の如何に関わりなく全て報告するものであるから,加入者が使用
に望ましいと考えるものが選び出されているとはいえない。
また,本件発明の技術思想からすれば,本件発明にいう選択の表示とは,
加入者が選択したクラスタグループのID(識別情報)を意味するところ,
非周期的高次階層設定サブバンドフィードバックモードでは,ユーザ端末
はサブバンドの識別情報を送信しない。
さらに,構成要件4D,9Bの「フィードバック情報」は,構成要件4
C,9Aで選択されたグループに関するフィードバック情報と解されると
ころ,加入者による選択が存在しない以上,「フィードバック情報」を受
信する段階も存在しない。
原告の主張する解釈1を前提とすると,本件発明が「選択」というステ
ップを設けた意味がなくなるし,基地局は単にそのデータ内容の順序によ
りクラスタグループを認識できるため,「加入者による選択の表示」を受
信するステップを設けた意味もなくなる。また,全サブバンドのサブバン
ド差分CQI値を受信すること自体が「選択の表示」を受信することに該
当するとすれば,これと「フィードバック情報」を受信することは同義で
あるから,構成要件4D,9Bという独自の構成要件を設けた意味もなく
なる。
よって,本件通信システム方法及び本件基地局装置は,構成要件4C,
4D,9A,9B及びこれらの構成要件を前提とする構成要件9C,9F
を充足しない。
イ 構成要件4E,9D充足性について
構成要件4E,9Dの「ソース符号化技法を使って圧縮」とは,元の情
報源に伸張して復号化できる形式により符号化する技法を意味するものと
解されるところ,特徴4e´,9d´では,サブバンド差分CQI値は元
となる生のサブバンドCQIの情報を復元不可能な形で捨象し,差分のみ
に対応した4つの値が付されたものであり,元の情報に伸張して復号化す
ることはできないから,「ソース符号化技法を使って圧縮」しているとは
言えない。よって,本件通信システム方法及び本件基地局装置は,構成要
件4E,9Dを充足しない。
ウ 構成要件4F,9E充足性について
前記アと同様に,特徴4f´,9e´は,構成要件4F,9Eの「前記
加入者が選択」を充足しない。
また,本件発明は,加入者が選択した候補クラスタグループのクラスタ
の中から,基地局がクラスタを選択して割り当てるという点に特徴があり,
これによって,基地局による選択・割当ての負担を軽減し,最適なクラス
タ割当てを実現するというものであることからすれば,構成要件4F,9
Eの「前記加入者が選択した1つ又は複数のクラスタグループの中の少な
くとも1つのクラスタを・・・割り当てる」との規定は,基地局において,
加入者が選択した候補クラスタグループの中のクラスタを割り当てなけれ
ばならないと解される。
仮に,解釈1として原告が主張するように構成要件4F,9Eが全クラ
スタグループの中からいずれかのクラスタを割り当てればよいという当た
り前の意味しかないのであれば,どのような構成を取っても必然的に充足
することとなり,独自の構成要件としての意義が完全に失われる。
また,仮に,解釈2として原告が主張するようにサブバンド差分CQI
値「0,1,2」のサブバンドがユーザ端末によって「選択」されたサブ
バンドであると解するとしても,LTE通信規格には,基地局がサブバン
ド差分CQI値「0,1,2」のサブバンドを構成するリソース・ブロッ
クを割り当てるという記載はない上,原告も自認するとおり,LTE通信
規格に準拠した基地局と端末との間の通信において,非周期的高次階層設
定サブバンドフィードバックモードのときに,基地局の判断によってサブ
バンド差分CQI値「3」のサブバンドを割り当てることもあり得るから,
ユーザ端末が選択していないサブバンド内のリソース・ブロックが割り当
てられているといえる。よって,本件通信システム方法及び本件基地局装
置は,構成要件4F,9Eを充足しない。
エ 構成要件9G充足性について
構成要件9Gの「直交周波数分割多重(OFDMA)トランシーバ」は
送受信においてともにOFDMAを用いている送受信機を意味するもので
あるところ,特徴9g´は,アップリンクにおいてSC-FDMAを用い
ているので,構成要件9Gを充足しない。
(2) 争点(2)(間接侵害の成否)について
(原告の主張)
被告製品は,本件発明4の使用に用いるものであり,本件発明4による課
題の解決に不可欠なものである。被告は,このことを知りながら,業として,
その譲渡若しくは輸入又は譲渡等の申出をしているから,特許法101条5
号により本件特許権を侵害するものとみなされる。
(被告の主張)
争う。
(3) 争点(3)(本件発明に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきも
のと認められるか)について
(被告の主張)
本件発明は,本件特許出願の優先日前に公開された刊行物(乙4(米国特
許第5933421号公報),乙5,9(OFDMA Evaluatio
n Report))に記載された発明に周知技術(乙6ないし8)を組み
合わせることにより当業者が容易に発明をすることができたものであるから,
本件発明は進歩性を欠く。
(原告の主張)
否認ないし争う。乙4は,本件発明の各構成要件に対応する構成をいずれ
も開示しておらず,乙5は,構成要件4A,9C,9Gを除く本件発明の各
構成要件に対応する構成をいずれも開示していないことなどからすれば,当
業者であっても,乙4,5から本件発明の構成に容易に想到することができ
るとはいえない。
(4) 争点(4)(原告の損害額)について
(原告の主張)
被告製品の販売台数は3万5000台を下ることはないから,原告の損
害額は,特許法102条3項に基づき算定される実施料相当額19億円を
下ることはない。原告は,本訴において,上記原告が受けた損害のうち明
示的一部請求として1億円の損害の賠償を請求する。
(被告の主張)
否認ないし争う。
第3 当裁判所の判断
1 争点(1)(本件通信システム方法及び本件基地局装置は本件発明の技術的範
囲に属するか)について
(1) 原告は,構成要件4C,4F,9A,9E充足性につき,解釈1及び2
を主張して,いずれの解釈によっても構成要件4C,4F,9A,9Eを充
足すると主張する。しかしながら,当裁判所は,各構成要件に係る特許請求
の範囲の記載及び本件明細書の記載に照らして,原告の主張する解釈1を採
用すると,少なくとも構成要件4C,9Aを充足せず,原告の主張する解釈
2を採用すると,少なくとも構成要件4F,9Eを充足しないから,いずれ
の解釈によっても,本件通信システム方法及び本件基地局装置は本件発明の
技術的範囲に属するとは認められないと判断する。その理由は,以下のとお
りである。
(2) 本件明細書には以下の記載がある(甲2の2)。
【発明が解決しようとする課題】として
ア 「OFDMAに関してサブキャリア割当を行うという1つのアプローチ
は,統合最適化オペレーションであるが,これは,全セル内の全加入者の
行動とチャネルに関する知識が必要なばかりでなく,現在の加入者がネッ
トワークを抜けたり新しい加入者がネットワークに加わったりした場合,
その度毎に周波数の再調整が必要になる。これは,主に,加入者情報を更
新するための帯域幅コストと統合最適化のための計算費用のせいで,実際
の無線システムでは非実用的である場合が多い。」(段落【0006】)
【課題を解決するための手段】として
イ 「システムのためにサブキャリアを選択する方法及び装置について説明
する。或る実施形態では,直交周波数分割多重アクセス(OFDMA)を
採用しているシステムのためのサブキャリア選択の方法は,複数のサブキ
ャリアを,少なくとも1つのサブキャリアのクラスタから成る複数のグル
ープに分割する段階と,加入者による,前記複数のグループの中の1つ又
は複数のグループの選択の表示を受信する段階と,加入者が選択した1つ
又は複数のクラスタのグループの中の少なくとも1つのクラスタを,加入
者との通信に使用するために割り当てる段階と,で構成されてい る。」
(段落【0007】)
【発明を実施するための最良の形態】として
ウ 「ダウンリンクチャネルに関しては,各加入者は最初に全てのサブキャ
リアについてチャネルと干渉の情報を測定し,性能の良い(中略)複数の
サブキャリアを選択して,それら候補サブキャリアに関する情報を基地局
にフィードバックする。」(段落【0010】)
エ 「加入者からこの情報を受信すると,基地局は,基地局で入手可能な追
加情報(中略)を利用して,候補の中からサブキャリアを更に選択する。
(段落【0011】)
オ 「各加入者は,継続的にパイロット記号の受信をモニターし,セル間干
渉及びセル内トラフィックを含め,各クラスタのSINR及び/又は他の
パラメータを測定する(中略)。この情報に基づいて,各加入者は,相対
的に性能が良好な(中略)1つ又は複数のクラスタを選択して,これらの
候補クラスタに関する情報を所定のアップリンクアクセスチャネルを通し
て基地局にフィードバックする(中略)。(中略)各加入者は,他よりも
相対的に性能が良好なクラスタを選択する。この選択により,各加入者は
測定されたパラメータに基づいて使用が望ましいと思われるクラスタを選
択することになる。(段落【0026】)
カ 「各加入者から基地局への情報のフィードバックは,各クラスタのSI
NR値を含んでおり,加入者が使用を望む符号化/変調速度も示している。
フィードバック内の情報の順序を基地局が知っている限り,フィードバッ
ク内のどのSINR値がどのクラスタに対応しているかを示すためにクラ
スタインデクスが必要になることはない。」(段落【0028】)
キ 「加入者からフィードバックを受信すると,基地局は,次に,候補の中
から加入者用に1つ又は複数のクラスタを選択する(中略)。」(段落
【0029】)
ク 「或る実施形態では,加入者は,常にできるだけ多くのクラスタに関す
る情報を送ろうと務め,そこから基地局が選択する。」(段落【004
0】)
ケ 「加入者の目的は,加入者が使用したいと思うクラスタについて基地局
に表示を提供することである。理想的には,加入者による選択の結果は,
チャネルゲインが高く,他のセルからの干渉が低く,利用可能性が高いク
ラスタということになる。加入者は,その結果を含んでいるフィードバッ
ク情報を提供し,所望のクラスタを,順番に又はここに記載していない方
法でリスト表示する。(段落【0046】)
コ 「この情報に基づいて,加入者は,所定の性能基準に基づき使用を希望
するクラスタを選択する。クラスタの順位リストを使って,加入者は,加
入者が知っている符号化及び変調速度と共に所望のクラスタを要求して,
所望のデータ速度を実現する。」(段落【0052】)
サ 「基地局からパイロット信号を受信した後,加入者は1つ又は複数のク
ラスタグループに関するチャネル情報を同時に又は順次返送する。或る実
施形態では,グループの幾つかに関する情報しか基地局には返送されな
い。」(段落【0069】)
(3) まず,原告の主張する解釈1を採用した場合に,構成要件4C,9Aを
充足するかについて検討する。
ア 構成要件4Cは「前記複数のグループの中の1つ又は複数のグループの
加入者による選択の表示を受信する段階と,」というものであり,構成要
件9Aは「複数のサブキャリアから成る複数のクラスタで構成された複数
のグループの中の1つ又は複数のグループの加入者による選択の表示と,」
というものである。
原告は,基地局がユーザ端末に対して高次階層設定サブバンドフィード
バックモードを選択して非周期的CQI報告をさせることを指示すると,
この指示が,全部のサブバンドについてサブバンドCQIを報告すること
を指示するものであるから,ユーザ端末はこれに基づいて,全部のサブバ
ンドを選択してサブバンドCQIを報告しなければならないが,これはユ
ーザ端末が全部のサブバンドを選択したことに相当する旨主張する。
イ しかしながら,かかる非周期的CQI報告の態様(乙1)を前提とする
と,ユーザ端末は,基地局の指示に基づいて常に全部のサブバンドについ
ての情報を報告するのであるから,ユーザ端末が何らかの「選択」(えら
ぶこと。適当なものをえらびだすこと。良いものをとり,悪いものをすて
ること。[広辞苑第6版・乙3])をしているということはできない。本
件明細書においても,加入者が望ましい候補を選び出し望ましくない候補
を外すことを「選択」と表現していることは,段落【0010】,【00
26】,【0046】,【0052】等に記載されている実施形態等から
明らかである。この点,原告は,情報処理技術分野における用語法などか
らすれば,「選択」には全てを選択することが含まれると主張するが,本
件特許の関連技術分野全てにおいて「選択」との文言が上記のように用い
られることが通常であることを認めるに足りる証拠はないし,本件明細書
においても「選択」との文言の意義につき特段の説明はないから(甲2の
2),原告の上記解釈は採用できず,常に全部のサブバンドを選ぶという
態様は,「選択」の語義に含まれないというべきである。また,原告の主
張する解釈1を採用すると,構成要件4F,9Eにおける「前記加入者が
選択した・・・クラスタのグループの中の・・・クラスタを・・・割り当
てる」との文言の意義が失われることからすれば,このような解釈は本件
発明の構成要件が予定しないところであると言わざるを得ない。
ウ 原告は,本件明細書の段落【0028】,【0040】,【0069】
には,全部のクラスタが選択されることを包含する内容の記載があり,実
質的にも,全部のサブバンドを選択してフィードバックした方がかえって
フィードバック情報量を削減できるといえると主張する。
しかしながら,前記のとおり本件明細書においても加入者が望ましい候
補を選び出すことを「選択」と表現していると認められる上,原告の主張
する段落【0028】,段落【0040】,段落【0069】の各記載に
よっても,常に全部のクラスタについての情報を「選択」するという実施
形態は明示されていない。なお,段落【0028】には,「フィードバッ
ク内の情報の順序を基地局が知っている限り,フィードバック内のどのS
INR値がどのクラスタに対応しているかを示すためにクラスタインデク
スが必要になることはない。」としか記載されていないから,この実施形
態が全部のクラスタについての情報をフィードバックする実施形態を含む
としても,このようなフィードバックの形態と「選択」との関係が不明で
あり,少なくとも,常に全部のクラスタについての情報を報告する態様が
「選択」の一形態として含まれることの記載はない。また,全部のサブバ
ンドを選択してフィードバックした方がかえってフィードバック情報量を
削減できる場合があるとしても,本件明細書にはそのような実施形態は明
示されていない。原告の主張は,採用することができない。
エ したがって,原告の主張する解釈1を採用すると,少なくとも構成要件
4C,9Aを充足しない。
(4) 次に,原告の主張する解釈2を採用した場合に,構成要件4F,9Eを
充足するかについて判断する。
ア 構成要件4Fは「前記加入者が選択した1つ又は複数のクラスタのグル
ープの中の少なくとも1つのクラスタを前記加入者との通信に使用するた
めに割り当てる段階と,から成ることを特徴とする方法。」というもので
あり,構成要件9Eは「前記クラスタ割当制御装置は,更に,前記加入者
が選択した1つ又は複数のクラスタのグループの中の少なくとも1つのク
ラスタを前記加入者との通信に使用するために割り当てる,前記クラスタ
割当制御装置と,」というものである。
原告は,非周期的CQIレポートの高次階層設定サブバンドフィードバ
ックモードでは,ユーザ端末は,ワイドバンドCQIを一種のいき値とし
て,サブバンドCQIがワイドバンドCQI以上であるサブバンドを,サ
ブバンド差分CQI値「0,1,2」を付して順位付けしてこれを選択し,
非選択のサブバンドにサブバンド差分CQI値「3」を付して全部のサブ
バンドの差分CQI値を送信することにより,個別のサブバンドを特定す
る表示を省略して情報量を低減化しているところ,基地局はユーザ端末に
対してサブバンド差分CQI値「0,1,2」のサブバンドを構成する少
なくとも1つのリソース・ブロックを割り当てているし,また,多数の加
入者に対する通信を最も効率的に行うように調整して最適化する過程で,
基地局の総合的な判断によって,加入者が非選択としたサブバンド(本件
発明におけるクラスタグループ)に属するリソース・ブロック(本件発明
におけるクラスタ)の割当てを行うことは,本件発明によっても許容され
ているから,サブバンド差分CQI値が「3」のサブバンドに属するリソ
ース・ブロックも割当ての対象になっているとしても,「前記加入者が選
択した1つ又は複数のクラスタグループの中の少なくとも1つのクラスタ
を・・・割り当てる」ことに相当する旨主張する。
イ しかしながら,「前記加入者が選択した・・・クラスタのグループの中
の・・・クラスタを・・・割り当てる」との文言,及び本件明細書の段落
【0006】,【0007】,【0011】,【0029】,【0040】
等の記載内容からすれば,本件発明は,基地局が全セル内の全加入者の行
動とチャネルに関する知識を必要とする統合最適化オペレーションは非実
用的である場合が多いため,加入者が選択した候補クラスタグループのク
ラスタの中から基地局がクラスタを選択して割り当てることによって,基
地局による選択・割当ての負担を軽減し,基地局が受信する情報量を少な
くして負荷を分散させ,最適なクラスタ割当てを実現することをその特徴
の一つとするものであると解される。そうであるから,同構成要件の文言
のうち「少なくとも1つの」との限定は,その位置及び前記本件発明の特
徴に照らして,「1つ以上の」と同義と解釈すべきであって,構成要件4
F,9Eの「前記加入者が選択した1つ又は複数のクラスタグループの中
の少なくとも1つのクラスタを・・・割り当てる」との文言は,基地局に
おいて,加入者が選択した候補クラスタグループの中のクラスタのみを割
り当てることを意味すると解すべきである。すなわち,加入者が選択して
いないクラスタグループ内のクラスタを基地局が割り当てることは,基地
局の負担を増大させると共に,加入者がクラスタグループを選択すること
の意味を失わせるものであり,基地局による選択・割当ての負担を軽減し
負荷を分散させるという本件発明の特徴に反するものであるから,かかる
文言の範囲に含まれないと解すべきである。
この点,原告は,構成要件4F,9Eにおいて,「前記加入者が選択し
た1つ又は複数のクラスタのグループの中の少なくとも1つのクラスタ
『のみ』を・・・割り当てる」との記載になっていないことや,本件明細
書において,加入者に対するサブキャリアの割当ては基地局が総合的判断
のもとで最終決定をすることが記載されていることを主張するが,これら
の記載内容は前記認定と矛盾するものではないから,前記認定に係る構成
要件4F,9Eの解釈を左右しない。
ウ これを本件通信システム方法及び本件基地局装置についてみるに,そも
そも,LTE通信規格には,基地局がユーザ端末に対してサブバンド差分
CQI値「0,1,2」のサブバンドを構成する少なくとも1つのリソー
ス・ブロックを割り当てるという記載はないし(弁論の全趣旨),被告製
品の計測結果(甲13)はある特定の時点・基地局における割当て結果の
例を示したものに過ぎないから,基地局がユーザ端末に対して常にサブバ
ンド差分CQI値「0,1,2」のサブバンドを構成する少なくとも1つ
のリソース・ブロックを割り当てると認めるに足りるものではない。そう
すると,原告の主張する解釈2を前提としても,原告が主張するように基
地局がユーザ端末に対して常にサブバンド差分CQI値「0,1,2」の
サブバンドを構成する少なくとも1つのリソース・ブロックを割り当てる
ことを認めるに足りる証拠はないから,本件通信システム方法及び本件基
地局装置が構成要件4F,9Eを充足するとは認めるに足りない。
仮にこの点を措くとしても,原告の主張する解釈2のとおり,ユーザ端
末がサブバンド差分CQI値「0,1,2」を「選択」し,「3」を非選
択としたと解するのであれば,基地局が,ユーザ端末に対してサブバンド
差分CQI値が「3」のサブバンドに属するリソース・ブロックを割り当
てることは,前記イ記載の本件発明の特徴に反するものである。しかるに,
原告は,基地局が,ユーザ端末に対してサブバンド差分CQI値が「3」
のサブバンドに属するリソース・ブロックを割り当てることがあることに
ついて積極的に争っておらず,かえって,被告製品とユーザ端末との間の
通信において,非周期的高次階層設定サブバンドフィードバックモードの
ときに,サブバンド差分CQI値が「3」のサブバンドが割当ての対象に
なっていることを示す測定結果がある(乙10)。そうであるから,この
点からも,本件通信システム方法及び本件基地局装置が構成要件4F,9
Eを充足するとは認められない。
エ したがって,原告の主張する解釈2を採用すると,少なくとも構成要件
4F,9Eを充足しない。
2 結論
以上のとおり,本件通信システム方法及び本件基地局装置は本件発明の技術
的範囲に属するとは認められないから,原告の請求は,その余の点について判
断するまでもなく,いずれも理由がない。よって,原告の請求を棄却すること
として,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖 中 康 人
裁判官 廣 瀬 達 人
裁判官 宇 野 遥 子
(別紙)
物 件 目 録
次の型式名を含むRBSシリーズ,RRUSシリーズ,AIRシリーズの基地局施

1 RBS6101
2 RBS6102
3 RBS6201
4 RBS6202
5 RBS6601
6 RBS6301
7 RBS6302
8 mRBS
9 pRBS(別称 RBS6401)
10 mRRUS
11 RRUS11
12 RRUS12
13 AIR
以上
(別紙)
原告の主張する本件通信システム方法の特徴
4a ダウンリンクにおいて直交周波数分割多重アクセス(OFDMA)を採用して
いるLTE規格通信システムのダウンリンクにおけるサブキャリア選択の方
法である。
4b システム帯域にある複数のサブキャリアを,12個のサブキャリアからな
るリソース・ブロックの複数個で構成されるN個のサブバンドに分割する段
階を有する。
4c(その1) 基地局は,非周期的なCQIレポートである高次階層設定サ
ブバンドフィードバックモード(モード3-0又はモード3-1)において,
各サブバンドの品質に関する情報として,ユーザ端末から,ワイドバンドC
QI及び前記N個全てのサブバンドについて,各サブバンドのCQIとワイ
ドバンドCQIとの差分に対応づけられたN個の差分CQIによる選択の表
示を受信する段階を有する。
4c(その2) 基地局は,非周期的なCQIレポートである高次階層設定サ
ブバンドフィードバックモード(モード3-0又はモード3-1)において,
各サブバンドの品質に関する情報として,ユーザ端末から,ワイドバンドC
QI及び前記N個全てのサブバンドについて,各サブバンドのCQIとワイ
ドバンドCQIとの差分に対応づけられたN個の差分CQIを受信するとこ
ろ,通信に適するサブバンドには差分CQIとして0,1及び2の3種類の
インデクスを付した選択の表示を受信する段階を有する。
4d 基地局は,非周期的なCQIレポートである高次階層設定サブバンドフ
ィードバックモード(モード3-0又はモード3-1)において,ワイドバ
ンドCQI及びN個のサブバンドの全てについて,サブバンド毎の差分CQ
Iとして,0,1,2又は3のインデクスのいずれかを付されたサブバンド
に関するフィードバック情報を受信する段階を有する。
4e サブバンドCQIは,ワイドバンドCQIとの関係で差分的に符号化され,
畳み込み符号によって誤り訂正符号化される段階を有する。
4f 基地局は,ユーザ端末が選択した複数のサブバンドを構成する1つ又は複
数のリソース・ブロックを,ユーザ端末との通信に使用するために割り当て
る段階を有する,ことを特徴とする方法。
以上
(別紙)
原告の主張する本件基地局装置の特徴
9a(その1) 非周期的なCQIレポートである高次階層設定サブバンドフ
ィードバックモード(モード3-0又はモード3-1)において,全N個
の各サブバンドの品質に関する情報として,ユーザ端末から,ワイドバン
ドCQI及び前記N個全てのサブバンドについて,各サブバンドのCQI
とワイドバンドCQIとの差分に対応づけられたN個の差分CQIによる
選択の表示を受信するリソース・ブロック割り当て制御装置を備える。
9a(その2) 基地局は,非周期的なCQIレポートである高次階層設定サ
ブバンドフィードバックモード(モード3-0又はモード3-1)におい
て,各サブバンドの品質に関する情報として,ユーザ端末から,ワイドバ
ンドCQI及び前記N個全てのサブバンドについて,各サブバンドのCQ
IとワイドバンドCQIとの差分に対応づけられたN個の差分CQIを受
信するところ,通信に適するサブバンドには差分CQIとして0,1及び
2の3種類のインデクスを付した選択の表示を受信するリソース・ブロッ
ク割り当て制御装置を備える。
9b 非周期的なCQIレポートである高次階層設定サブバンドフィードバッ
クモード(モード3-0又はモード3-1)において,ワイドバンドCQ
I及びN個のサブバンドの全てについて,サブバンド毎の差分CQIとし
て,0,1,2又は3のインデクスのいずれかを付されたサブバンドに関
するフィードバック情報を受信するリソース・ブロック割り当て制御装置
を備える。
9c 基地局はリソース・ブロックの割当制御機能を有する装置を備える。
9d サブバンドCQIは,ワイドバンドCQIとの関係で差分的に符号化さ
れ,畳み込み符号によって誤り訂正符号化されている。
9e 基地局は,ユーザ端末が選択した1つ又は複数のサブバンドを構成する
1つ又は複数のリソース・ブロックを,ユーザ端末との通信に使用するた
めに割り当てるリソース・ブロックの割当制御機能を有する装置を備える。
9f ユーザ端末との通信に使用するために割り当てるリソース・ブロックの
割当制御機能を有する装置に接続され,基地局がユーザ端末に割り当てた
1つ又は複数のサブバンドを構成する1つ又は複数のリソース・ブロック
を,下り制御情報(DCI)としてユーザ端末に伝送する。
9g ダウンリンクにおいて直交周波数多重アクセス(OFDMA)を利用す
る無線送受信装置と,
を有する基地局装置。
以上
(別紙)
被告の主張する本件通信システム方法の特徴
4a´ ダウンリンクにおいて直交周波数分割多重アクセス(OFDMA)を,ア
ップリンクにおいてSC-FDMAを用いるLTE規格通信システムのダウ
ンリンクにおけるリソース・ブロックの選択の方法であって,
4b´ システム帯域にある複数のサブキャリアは,12個のサブキャリアからな
るリソース・ブロックの複数個で構成されるN個のサブバンドに分割されて
おり,
4c´ 基地局は,非周期的なCQIレポートである高次階層設定サブバンドフィ
ードバックモード(モード3.0又はモード3.1)において,各サブバン
ドの品質に関する情報として,ユーザ端末から,前記N個全てのサブバンド
について,各サブバンドCQIとワイドバンドCQI(N個全てのサブバン
ドを使用すると仮定した場合に計算されたCQI)の差分に対応づけられた
0,1,2,3の4種類のサブバンド差分CQI値を受信し,
4d´ 基地局は,非周期的なCQIレポートである高次階層設定サブバンドフィ
ードバックモード(モード3.0又はモード3.1)において,各サブバン
ドの品質に関する情報として,ユーザ端末から,前記N個全てのサブバンド
について,各サブバンドCQIとワイドバンドCQI(N個全てのサブバン
ドを使用すると仮定した場合に計算されたCQI)の差分に対応づけられた
0,1,2,3の4種類のサブバンド差分CQI値を受信し,
4e´ 前記サブバンド差分CQI値は,ユーザ端末において,前記サブバンドC
QIと前記ワイドバンドCQIとの差分を,元のサブバンドCQIへ復号す
ることが不可能な方法で4種類の数値に対応づけられた上で畳み込み符号に
よって誤り訂正符号化されており,
4f´ 基地局は,ユーザ端末から送信された前記サブバンド差分CQI値やワ
イドバンドCQI等を参照しながらも,0,1,2のサブバンド差分CQI
値が通知されたサブバンドに限定されずに,リソース・ブロックを選択して
ユーザ端末との通信に使用するために割り当てる,
ことを特徴とする方法。
以上
(別紙)
被告の主張する本件基地局装置の特徴
9a´ 非周期的なCQIレポートである高次階層設定サブバンドフィードバック
モード(モード3.0又はモード3.1)において,各サブバンドの品質に
関する情報として,12個のサブキャリアからなる複数のリソース・ブロッ
クで構成されるN個全てのサブバンドについて,各サブバンドのサブバンド
CQIとワイドバンドCQI(N個全てのサブバンドを使用すると仮定した
場合に計算されたCQI)の差分に対応づけられた0,1,2,3の4種類
のサブバンド差分CQI値の通知を受けることにより,N個全てのサブバン
ドについてのサブバンドCQIの情報を受信する機能を有する,
9b´ 非周期的なCQIレポートである高次階層設定サブバンドフィードバック
モード(モード3.0又はモード3.1)において,各サブバンドの品質に
関する情報として,12個のサブキャリアからなる複数のリソース・ブロッ
クで構成されるN個全てのサブバンドについて,各サブバンドのサブバンド
CQIとワイドバンドCQI(N個全てのサブバンドを使用すると仮定した
場合に計算されたCQI)の差分に対応づけられた0,1,2,3の4種類
のサブバンド差分CQI値の通知を受けることにより,N個全てのサブバン
ドについてのサブバンドCQIの情報を受信する機能を有する,
9c´ リソース・ブロックの割当制御機構であって,
9d´ 前記通知されるサブバンドCQIは,元のサブバンドCQIへ復号するこ
とが不可能な方法で前記4種類のサブバンド差分CQI値に対応づけられた
上で,畳み込み符号によって誤り訂正符号化されている,
9e´ ユーザ端末から送信された前記サブバンド差分CQI値やワイドバンドC
QI等を参照しながらも,0,1,2のサブバンド差分CQI値が通知され
たサブバンドに限定されることなく,リソース・ブロックを選択してユーザ
端末との通信に使用するために割り当てるリソース・ブロック割当制御機構
と,
9f´ 前記リソース・ブロック割当制御装置に接続されて,基地局がユーザ端末
に割り当てた1つ又は複数のリソース・ブロックの識別情報を,下り制御情
報(DCI)としてユーザ端末に伝送する,
9g´ ダウンリンクにおいて直交周波数分割多重アクセス(OFDMA)を,
アップリンクにおいてSC-FDMAを利用する無線送受信装置と,
を有する基地局装置。
以上

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