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平成27(行ケ)10051審決取消請求事件

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裁判所 審決取消 知的財産高等裁判所
裁判年月日 平成28年2月18日
事件種別 民事
当事者 被告千葉県コンクリート製品協同組合
原告訴訟引受人X1
対象物 構造物の目地の構造
法令 特許権
特許法29条2項1回
特許法123条1項1回
キーワード 審決67回
無効10回
実施5回
特許権5回
無効審判3回
優先権2回
刊行物1回
分割1回
主文 1 特許庁が無効2013-800063号事件について平成27年2月4日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事件の概要 1 特許庁における手続の経緯等(証拠等を摘示しない事実は,当事者間に争い がない。) (1) 脱退原告亡X2(以下,単に「脱退原告」という。)は,平成18年8月 23日,発明の名称を「構造物の目地の構造」とする発明について,特許出 願(特願2006-226761号,優先権主張日平成17年9月26日及 び平成18年3月29日。以下「本件出願」という。)をし,平成19年1 月12日,特許第3900500号として特許権の設定登録(請求項の数5) を受けた(以下,この特許を「本件特許」,この特許権を「本件特許権」と いう。甲11,26)。 (2) 被告は,平成25年4月16日,本件特許の特許請求の範囲の請求項1及 び2に記載された発明についての特許を無効にすることについて特許無効 審判を請求した(甲13)。 特許庁は,上記請求を無効2013-800063号事件として審理を行 い,平成26年5月22日付けで審決の予告をした(甲19)。 これに対し脱退原告は,同年7月31日付けで本件特許の特許請求の範囲,

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判決文

平成28年2月18日判決言渡
平成27年(行ケ)第10051号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成28年2月5日
判 決

原告訴訟引受人 X1
訴訟代理人弁護士 田 中 淳
訴訟代理人弁理士 木 村 満
同 榊 原 靖
同 毛 受 隆 典
同 竹 中 一 宣

脱 退 原 告 亡X2訴訟承継人
X1

被 告 千葉県コンクリート製品協同組合

訴訟代理人弁護士 飯 田 秀 郷
同 大 友 良 浩
同 奥 津 啓 太
訴訟復代理人弁理士 日 髙 一 樹
同 関 口 か お る
主 文
1 特許庁が無効2013-800063号事件について平成27年2
月4日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
主文第1項と同旨
第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等(証拠等を摘示しない事実は,当事者間に争い
がない。)
(1) 脱退原告亡X2(以下,単に「脱退原告」という。)は,平成18年8月
23日,発明の名称を「構造物の目地の構造」とする発明について,特許出
願(特願2006-226761号,優先権主張日平成17年9月26日及
び平成18年3月29日。以下「本件出願」という。)をし,平成19年1
月12日,特許第3900500号として特許権の設定登録(請求項の数5)
を受けた(以下,この特許を「本件特許」,この特許権を「本件特許権」と
いう。甲11,26)。
(2) 被告は,平成25年4月16日,本件特許の特許請求の範囲の請求項1及
び2に記載された発明についての特許を無効にすることについて特許無効
審判を請求した(甲13)。
特許庁は,上記請求を無効2013-800063号事件として審理を行
い,平成26年5月22日付けで審決の予告をした(甲19)。
これに対し脱退原告は,同年7月31日付けで本件特許の特許請求の範囲,
明細書及び図面について訂正請求をし,同年10月2日付け手続補正書によ
り上記訂正請求を補正した(以下,この補正後の訂正請求を「本件訂正」と
いい,また,本件訂正後の特許請求の範囲,明細書及び図面を併せて「本件
訂正明細書」という。甲20,23の1,2)。
その後,特許庁は,平成27年2月4日,「請求のとおり訂正を認める。
特許第3900500号の請求項に記載された発明についての特許を無効と
する。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同月1

3日,脱退原告に送達された。
(3) 脱退原告は,平成27年3月11日,本件審決の取消しを求める本件訴訟
を提起した。
脱退原告は,本件訴訟の提起後,X1(原告訴訟引受人)に対し,本件特
許権を譲渡し,その旨の本件特許権の移転登録(受付日平成27年6月1日)
が経由されたことから,当裁判所は,脱退原告の申立てにより,同年7月2
1日,本件訴訟をX1に引き受けさせる旨の訴訟引受けの決定をした。
その後,脱退原告は,同年9月13日に死亡し,脱退原告の相続人である
妻A及び長男X1間において,同年12月7日,X1が本件訴訟の脱退原告
の地位を相続する旨の遺産分割協議が成立したため,X1は,脱退原告の地
位を承継した。
脱退原告(訴訟承継人X1)は,平成28年2月5日の本件第1回口頭弁
論期日において,被告の承諾を得て,本件訴訟から脱退した。
2 特許請求の範囲の記載
(1) 本件訂正前
本件訂正前(本件特許の設定登録時)の特許請求の範囲は請求項1ないし
5からなり,そのうち,請求項1及び2の記載は,次のとおりである(甲1
1)。
「【請求項1】
ブロックに設けた下向き傾斜面と,この下向き傾斜面に連設して設けた上
向き傾斜面で構成した略V字形の防草傾斜面と,この略V字形の防草傾斜面
に充填された舗装又は他の構造物の逆略V字形の防草傾斜面とで構成される
構造物の目地であって,
このブロックの下向き傾斜面と,側面鉛直面との連結箇所を湾曲連結部と
し,
この湾曲連結部は,前記ブロックの略V字形の防草傾斜面に,舗装面を舗

装,又は他の構造物を設置した際に,この舗装又は他の構造物の下側に位置
する構成とした構造物の目地の構造。
【請求項2】
ブロックに設けた下向き傾斜面と,この下向き傾斜面に連設して設けた上
向き傾斜面で構成した略V字形の防草傾斜面と,この略V字形の防草傾斜面
に充填された舗装又は他の構造物の逆略V字形の防草傾斜面とで構成される
構造物の目地であって,
このブロックの下向き傾斜面と,側面鉛直面との連結箇所を湾曲連結部と
するとともに,この下向き傾斜面と,上向き傾斜面との連結箇所を連結凹部
とし,
この湾曲連結部と連結凹部は,前記ブロックの略V字形の防草傾斜面に,
舗装面を舗装,又は他の構造物を設置した際に,この舗装又は他の構造物の
下側に位置する構成とした構造物の目地の構造。」
(2) 本件訂正後
本件訂正後の特許請求の範囲は請求項1ないし5からなり,そのうち,請
求項1及び2の記載は,次のとおりである(以下,本件訂正後の請求項1及
び2に係る発明をそれぞれ「本件訂正発明1」,「本件訂正発明2」という。
下線部は本件訂正による訂正箇所である。甲20,23の1,2)。
「【請求項1】
ブロックに設けた下向き傾斜面と,この下向き傾斜面に連設して設けた上
向き傾斜面で構成した略V字形の防草傾斜面と,この略V字形の防草傾斜面
に充填された舗装又は他の構造物の逆略V字形の防草傾斜面とで構成される
構造物の目地であって,
このブロックの下向き傾斜面と,側面鉛直面との連結箇所を湾曲連結部
(9),(29),(49),(69),(89),(109),(129),
(149),(169)又は(189)とし,

この湾曲連結部(9),(29),(49),(69),(89),(1
09),(129),(149),(169)又は(189)は,前記ブロ
ックの略V字形の防草傾斜面に,舗装面を舗装,又は他の構造物を設置した
際に,この舗装又は他の構造物の下側に位置する構成とし,
この舗装又は他の構造物の下側に位置する湾曲連結部(9),(29),
(49),(69),(89),(109),(129),(149),(1
69)又は(189)は,前記下向き傾斜面と,前記側面鉛直面との連設箇
所に形成した構造物の目地の構造。
【請求項2】
ブロックに設けた下向き傾斜面と,この下向き傾斜面に連設して設けた上
向き傾斜面で構成した略V字形の防草傾斜面と,この略V字形の防草傾斜面
に充填された舗装又は他の構造物の逆略V字形の防草傾斜面とで構成される
構造物の目地であって,
このブロックの下向き傾斜面と,側面鉛直面との連結箇所を湾曲連結部
(9),(29),(49),(69),(89),(109),(129),
(149),(169)又は(189)とするとともに,この下向き傾斜面
と,上向き傾斜面との連結箇所を連結凹部とし,
この湾曲連結部(9),(29),(49),(69),(89),(1
09),(129),(149),(169)又は(189)と連結凹部は,
前記ブロックの略V字形の防草傾斜面に,舗装面を舗装,又は他の構造物を
設置した際に,この舗装又は他の構造物の下側に位置する構成とし,
この舗装又は他の構造物の下側に位置する湾曲連結部(9),(29),
(49),(69),(89),(109),(129),(149),(1
69)又は(189)は,前記下向き傾斜面と,前記側面鉛直面との連設箇
所に形成した構造物の目地の構造。」
3 本件審決の理由の要旨

(1) 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。要するに,
本件訂正発明1及び2は,本件特許の優先権主張日前に頒布された刊行物で
ある甲1に記載された発明に甲2,3,7及び8に記載された周知技術及び
技術常識を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたもの
であるから,本件訂正発明1及び2に係る本件特許は,特許法29条2項の
規定に違反してされたものであり,同法123条1項2号に該当し,無効と
すべきものであるというものである。
甲1ないし3,7及び8は,以下のとおりである。
甲1 特開平8-113906号公報
甲2 特開2004-169544号公報
甲3 実願昭60-42636号(実開昭61-159406号公報)のマ
イクロフィルム
甲7 実願昭63-18709号(実開平1-124806号公報)のマイ
クロフィルム
甲8 特開平10-82012号公報
(2) 本件審決が認定した甲1に記載された発明(以下「甲1発明」という。),
本件訂正発明1と甲1発明の一致点及び相違点は,以下のとおりである。
ア 甲1発明
「コンクリートブロックの左側面に切り欠き棚が設けられており,当該
切り欠き棚の上面はコンクリートブロックの内部方向に向かって下り勾配
の傾斜面として形成され,この切り欠き棚の左側及び右側に連接するコン
クリートブロックの左側面は鉛直方向に対して右側に傾いた傾斜面として
形成されており,当該切り欠き棚の上面及びこれに連接するコンクリート
ブロックの傾斜面の左側及び右側の連接部分が車道を形成するアスファル
トまたはコンクリートにより被覆されているコンクリートブロックと車道
の目地の構造」

イ 本件訂正発明1と甲1発明の一致点
「ブロックに設けた下向き傾斜面と,この下向き傾斜面に連設して設け
た上向き傾斜面で構成した連接傾斜面と,この連接傾斜面に充填された舗
装とで構成される構造物の目地であって,
このブロックの下向き傾斜面と,ブロックの側面との連結箇所を連結部
として,
この連結部は,前記ブロックの連接傾斜面に舗装面を舗装した際に,
この舗装の下側に位置する構成とし,
この舗装の下側に位置する連結部は,前記下向き傾斜面と,前記ブロッ
クの側面との連設箇所に形成した構造物の目地の構造。」である点。
ウ 本件訂正発明1と甲1発明の相違点
(ア) 相違点(ア)
「ブロックに設けた下向き傾斜面と,この下向き傾斜面に連設して設
けた上向き傾斜面で構成した」「連接傾斜面」を,本件訂正発明1では
「略V字形」であり機能的に「防草傾斜面」であるとしているのに対し
て,甲1発明では,このような特定をしていない点。
(イ) 相違点(イ)
「ブロックの下向き傾斜面と,ブロックの側面との連結箇所を連結部
として,この連結部は,前記ブロックの連接傾斜面に舗装面を舗装した
際に,この舗装の下側に位置する構成とし,この舗装の下側に位置する
連結部は,前記下向き傾斜面と,前記ブロックの側面との連設箇所に形
成」される「連結部」を,本件訂正発明1では「湾曲連結部(9),(2
9),(49),(69),(89),(109),(129),(1
49),(169)又は(189)」としているのに対して,甲1発明
では「湾曲」した連結部としてはいない点。
(ウ) 相違点(ウ)

ブロックの下向き傾斜面に連結する側面が,本件訂正発明1では鉛直
面であるのに対して,甲1発明ではそうではない点。
第3 当事者の主張
1 原告訴訟引受人の主張
(1) 取消事由1(甲1発明の認定の誤り等)
ア 甲1発明の認定の誤り
本件審決は,甲1の図3(別紙甲1図面参照)に,「コンクリートブロ
ックの左下方にも右上方の切り欠き棚(9)と同様に切り欠き棚が形成さ
れており,その上面はコックリートブロックの内方向に下り勾配」(判決
注・本件審決記載の「コックリートブロック」は「コンクリートブロック」
の誤記と認める。以下,当該箇所は「コンクリートブロック」と表記する。)
の構成を有するコンクリートブロックと車道の目地の構造が図示されてい
ると認定し,その上で,甲1には,「コンクリートブロックの左側面に切
り欠き棚が設けられており,当該切り欠き棚の上面はコンクリートブロッ
クの内部方向に向かって下り勾配の傾斜面として形成され,この切り欠き
棚の左側及び右側に連接するコンクリートブロックの左側面は鉛直方向に
対して右側に傾いた傾斜面として形成されており,当該切り欠き棚の上面
及びこれに連接するコンクリートブロックの傾斜面の左側及び右側の連接
部分が車道を形成するアスファルトまたはコンクリートにより被覆されて
いるコンクリートブロックと車道の目地の構造」(甲1発明)が記載され
ていると認定した。
しかしながら,甲1の図3におけるコンクリートブロックの左下方の構
造は,右上方の切り欠き棚(9)と同様の構造の切り欠き棚とはいえない
し,左下方の構造の上面は,略水平方向に図示されているにすぎず,「コ
ンクリートブロックの内方向に下り勾配」の構成のものではない。
すなわち,甲1の図3におけるコンクリートブロックの右上方の切り欠

き棚(9)は,コンクリートブロックの内側に向けて下方に傾斜している
ため,切り欠き棚(9)に集められた雨水が排水孔(6)に向けて流され,
コンクリートブロックの外に排出されるので,アスファルト又はコンクリ
ートとコンクリートブロックとの隙間から雨水が入り込むことで雑草が生
えたり,クラッシャラン(4),アスファルト又はコンクリートが沈下し
たりすることを阻止する役割を果たしている(段落【0002】,【00
03】,【0011】)。
一方,図3におけるコンクリートブロックの左下方の構造は,コンクリ
ートブロック左側面から左側に突出している形状を有しているが,当該構
造の上面で受けた雨水を排出するための排水孔(6)が近傍に設けられて
いないことから,雨水を外部に排出する役割を果たしておらず,アスファ
ルト又はコンクリートとコンクリートブロックとの隙間から雨水が入り込
むことを防止することはできず,雨水の蓄積による雑草の成長を防止して
いないことは明らかであるから,右上方の切り欠き棚(9)と同様の構造
の切り欠き棚とはいえない。
また,甲1には,図3における左下方の構造の技術的な意味についての
明示的な記載はなく,左下方の構造がコンクリートブロック(2)本体よ
りも突出していることが,いかなる技術的な役割を果たしているのか不明
であるし,そもそも,図3における左下方の構造は,手書きで略水平方向
に描かれたものであって,若干,コンクリートブロック(2)の内側に向
かって下方に傾斜しているようにも見受けられるものの,その傾斜はごく
わずかなものであり,甲1に係る特許出願の出願人が何らかの意図を持っ
て描いたものとは認め難いから,左下方の構造の上面が「コンクリートブ
ロックの内方向に下り勾配」の構成であるとはいえない。
そうすると,甲1に記載されたコンクリートブロックと車道の目地の構
造は,「コンクリートブロックの左側面に切り欠き棚が設けられており,

当該切り欠き棚の上面はコンクリートブロックの内部方向に向かって下り
勾配の傾斜面として形成され」た構成を有するものといえないから,本件
審決における甲1発明の認定は誤りである。
イ 一致点の認定の誤り及び相違点の看過
本件審決は,甲1発明のコンクリートブロックに設けた「切り欠き棚」
は,その上面がコンクリートブロックの内部方向に向かって下り勾配の傾
斜面として形成されていることから,本件訂正発明1の「ブロックに設け
た下向き傾斜面」に相当し,甲1発明の「切り欠き棚」及びその右側に連
接する鉛直方向に対して右側に傾いた「コンクリートブロックの左側面」
とからなる構成と本件訂正発明1の「ブロックに設けた下向き傾斜面と,
この下向き傾斜面に連設して設けた上向き傾斜面で構成した略V字形の防
草傾斜面」は,「ブロックに設けた下向き傾斜面と,この下向き傾斜面に
連設して設けた上向き傾斜面で構成した連接傾斜面」である点で共通する
と認定し,その上で,前記第2の3(2)イのとおり,本件訂正発明1と甲1
発明の一致点を認定した。
しかしながら,前記アのとおり,甲1の図3におけるコンクリートブロ
ックの左下方の構造の上面は,略水平方向に図示されているにすぎず,
「コ
ンクリートブロックの内方向に下り勾配」の構成のものではないから,本
件訂正発明1の「下向き傾斜面」に相当するものではない。
したがって,本件審決が認定した一致点のうち,「下向き傾斜面」に関
する部分は誤りであり,当該部分は,「下向き傾斜面」ではなく,「上面」
と認定すべきであったものである。
そうすると,本件審決には,一致点の認定を誤った上,「上向き傾斜面
と共にブロックの連接傾斜面を構成する面が,本件訂正発明1では「下向
き傾斜面」であるのに対し,甲1発明ではそうではない点」を本件訂正発
明1と甲1発明の相違点として認定すべきであったのに,この相違点を看

過した誤りがある。
ウ 小括
以上のとおり,本件審決には,甲1発明の認定の誤り,本件訂正発明1
と甲1発明の一致点の認定の誤り及び相違点を看過した誤りがある。また,
本件審決には,本件訂正発明2と甲1発明との間についても,本件訂正発
明1の場合と同様の一致点の認定の誤り及び相違点を看過した誤りがあ
る。
したがって,本件審決は取り消されるべきものである。
(2) 取消事由2(相違点の判断の誤り)
ア 相違点(ア)の判断の誤り
本件審決は,相違点(ア)に関し,①甲1発明においても,ブロックに「下
向き傾斜面」が設けられていることは明らかであり,この下向き傾斜面に
連接して設けた上向き傾斜面で構成した連接傾斜面の構成を有するから,
甲1発明は,本件訂正発明1と同じく,実質的に「略V字形」の斜面を有
している,②本件訂正発明1は,「下向き傾斜面と,この下向き傾斜面に
連設して設けた上向き傾斜面」で構成した「連設傾斜面」を「防草傾斜面」
であると機能的に特定しているところ,甲1発明と本件訂正発明1の両者
に共通する「ブロックに設けた下向き傾斜面と,この下向き傾斜面に連設
して設けた上向き傾斜面で構成した連接傾斜面」においても植物の屈光性
及び屈地性という周知な学術知識に基づいて植物の屈光性及び屈地性が阻
害されて植物の成長が阻害されることは明らかであるから,甲1発明の「連
設傾斜面」においても,本件訂正発明1でいう「防草」という機能を備え
ているとして,甲1発明における「連接傾斜面」は,実質的に本件訂正発
明1の「略V字形の防草傾斜面」の構成に相当するから,相違点(ア)は実
質的な相違点ではない旨判断した。
しかしながら,本件審決の判断は,以下のとおり誤りである。

(ア) 「略V字形」の構成について
本件審決は,甲1の図3におけるコンクリートブロックの左下方の構
造が実質的に「略V字形」の斜面を有していることを認定できる積極的
な理由を示していない。
しかるところ,甲1の図3における左下方の構造は,略水平方向に形
成された上面と,上面と連結されたブロックの左側面とのなす角がだい
たい90°程度となるよう構成されているから,このような角度を有す
る構造の形状をアルファベットで素直に表現するならば「略L字形」と
いうべきである。
したがって,甲1の図3におけるコンクリートブロックの左下方の構
造が実質的に本件訂正発明1の「略V字形」の斜面を有しているとの本
件審決の認定は誤りである。
(イ) 「防草傾斜面」の構成について
本件訂正明細書(甲23の2)の記載事項(段落【0012】,【0
027】,【0049】)を参酌すると,本件訂正発明1の「防草傾斜
面」は,単に防草が可能な傾斜面という程度の意味ではなく,雑草の自
然の摂理を利用して,雑草の芽の屈光性及び/又は雑草の根の屈地性を
阻害し,防草効果を奏する程度に傾いている傾斜面を意味するものと解
される。
しかるところ,甲1の図3における左下方の構造は,単にコンクリー
トブロック(2)の左側壁より突出している構造にすぎず,当該構造の
上面についても,左側壁に向けてごくわずかに傾斜するよう描かれてい
るにすぎないから,特段の技術的意義を有しない。このことは,甲1の
図3における右上方の切り欠き棚(9)の棚面については,水がクラッ
シャラン(4)に進入せずに,排水孔(6)に向けて流れるように意図
的に傾斜させられていると考えられるのに対し(例えば,段落【001

1】,【0014】,【0023】),図3における左下方の構造につ
いては,その技術的意義について何ら記載されていないばかりか,その
近傍に排水孔(6)が設けられておらず,排水を意図していないことか
らも明らかである。
また,仮に甲1の図3における左下方の構造が防草効果を奏するとし
ても,当該構造によりコンクリートブロック(2)とアスファルト又は
コンクリート(3)との間の間隙の一部が略水平方向に形成されている
ため,雑草の芽が間隙から上方に向けて直線的に成長したり,雑草の根
が直接下方に成長したりすることがないという程度の意味合いのものに
すぎない。このことは,甲1には,雑草の芽の屈光性及び/又は雑草の
根の屈地性について言及した記載がないのに対し,一方で,「コンクリ
ートブロック(2)またはコンクリート壁(11)の切り欠き棚(9)
または突出棚(10)は,クラッシャラン(4)からの雑草が生えるの
を防止し」,(段落【0011】),「コンクリートブロック(2)ま
たはコンクリート壁(11)が,アスファルトまたはコンクリート(3)
に接する部分に内方向に下り勾配の棚を付けたことにより,アスファル
トまたはコンクリートが棚面を覆うので,クラッシャラン(4)からの
直接の雑草が生えることを防止する。」(段落【0022】)との記載
があることから明らかである。
さらに,甲2の「根は,少なくとも略水平に伸びることは可能である」
(段落【0006】),「根と芽の水平方向への伸びは,突条30と溝
条31により阻止される」(段落【0168】)等の記載からすれば,
わずかな傾斜面では根と芽の成長を防止することができないのであるか
ら,甲1の図3における左下方の構造に示される程度の傾斜面では,雑
草の根や芽が容易に成長してしまい,雑草の屈光性及び屈地性を阻害す
ることができない。

このように,本件訂正発明1の「防草傾斜面」は,雑草の芽の屈光性
及び/又は雑草の根の屈地性を阻害する程度に水平面に対して傾斜して
いる下方傾斜面を有することにより,雑草の芽の屈光性及び/又は雑草
の根の屈地性を利用して防草効果を奏するのに対し,甲1の図3におけ
る左下方の構造は,単に直接の雑草が生えることを防止する程度の効果
を奏するにすぎないから,本件訂正発明1の「防草傾斜面」と甲1の図
3における左下方の構造の上面とは,防草効果を奏する点で共通してい
るといえるとしても,防草の機序,防草効果の程度が明らかに異なるも
のである。
したがって,甲1の図3におけるコンクリートブロックの左下方の構
造(「連接傾斜面」)が実質的に本件訂正発明1の「防草傾斜面」であ
るとの本件審決の認定は誤りである。
(ウ) むすび
以上によれば,甲1の図3におけるコンクリートブロックの左下方の
構造(「連接傾斜面」)は,実質的に本件訂正発明1の「ブロックに設
けた下向き傾斜面と,この下向き傾斜面に連設して設けた上向き傾斜面
で構成した略V字形の防草傾斜面」の構成に相当するものではないから,
相違点(ア)は,本件訂正発明1と甲1発明の実質的な相違点ではないと
した本件審決の判断は誤りである。
イ 相違点(イ)の判断の誤り
本件審決は,相違点(イ)に関し,①本件訂正発明1のブロックの連接傾
斜面に舗装面を舗装した際に,この舗装の下側に位置する「湾曲連結部」
は,コンクリートブロックの連結部が曲面として構成されることによって,
ブロックの欠損を回避し,舗装面の亀裂防止に有効であるとの作用効果を
もたらすものであると認められる,②他方,甲2の図45(別紙甲2図面
参照)には,コンクリートブロックに設けた防草突部82,83が舗装材

により地中に埋設され,その突部の形状は,略V字形の防草傾斜面の傾斜
面80と突部の先端を構成する鉛直面の連結部分が曲面化されている構成
が開示されているとともに,コンクリートブロックの角部を曲面化するこ
とは当業者の常識に属する従来周知の技術である(甲2,3,7,8),
③そして,舗装の下側に位置するブロックの連結箇所を,曲面化して「湾
曲連結部」とすれば,一般的に,連結箇所による舗装への応力の集中が緩
和されて,ブロックの欠損を回避し,舗装面の亀裂防止に有効であること
は,当業者にとっては,力学における技術常識から,自明なことであると
して,甲1発明において,ブロックの下向き傾斜面と,ブロックの側面と
の連結箇所を連結部とし,ブロックの連接傾斜面に舗装面を舗装して,こ
の連結部を舗装の下側に位置させるに当たり,その連結箇所を曲面化して
「湾曲連結部」(相違点(イ)に係る本件訂正発明1の構成)とすることは,
当業者であれば,甲1発明に甲2記載の技術的事項及び周知技術並びに技
術常識を適用することにより容易に想到することができたものである旨判
断した。
しかしながら,本件審決の判断は,以下のとおり誤りである。
(ア) 甲2記載の技術的事項の認定の誤り
本件審決は,甲2には,コンクリートブロックに設けた防草突部82,
83が舗装材により地中に埋設され,その突部の形状は,略V字形の防
草傾斜面の傾斜面80と突部の先端を構成する鉛直面の連結部分が曲面
化されている構成が開示されている旨認定した。
しかしながら,甲2には,防草突部82,83の端部が曲面化されて
いることの技術的意義は何ら開示されていない。むしろ,甲2には,防
草突部82,83が全体として特有の構成を有しているため,雑草の根
が隙間43の上方から進入した場合,上面80において根の屈地性によ
り根の成長が抑制されること,雑草の芽が隙間43の下方から進入した

場合,下面81において芽の屈光性により芽の成長が抑制されることが
開示されている。
したがって,甲2の防草突部82,83が全体として特有の構成を有
していることにより,従来技術と異なる顕著な防草効果を奏することを
考慮せずに,防草突部82,83の端部が曲面化されている点のみをあ
えて抽出することはできないというべきであるから,本件審決の上記認
定は誤りである。
(イ) 周知技術の認定の誤り
本件審決は,甲2,3,7及び8から,「コンクリートブロックの角
部を曲面化すること」は当業者の常識に属する従来周知の技術である旨
認定した。
しかしながら,甲2には,舗装材4に埋設された防草板40,41,
44,45の端部が曲面化された境界ブロック10(段落【0165】
ないし【0169】,図24,25),舗装材4に埋設された防草突部
82,83の端部が曲面化された境界ブロック10(段落【0254】,
【0255】,図44,45)が開示されているが,これらの防草板及
び防草突部は,長手方向に突出した形状であり,その端部はコンクリー
トブロックの角部ではない。
また,甲3,7及び8には,それぞれ角部が曲面化された道路用の縁
石が開示されているが,これらの角部は,道路の舗装面から露出した部
分であり,本件訂正発明1のように,湾曲連結部が舗装面の下側に位置
するものでない。
そうすると,甲2に記載された技術的事項と,甲3,7及び8に記載
された技術的事項とは,全く異なる技術であるから,甲2,3,7及び
8から,「コンクリートブロックの角部を曲面化すること」が周知技術
であると認定することはできない。せいぜい,甲3,7及び8から,道

路用の縁石において舗装の外部に露出した角部を湾曲することが周知で
あると認定できるにすぎない。
したがって,本件審決の周知技術の認定には誤りがある。
(ウ) 相違点(イ)の容易想到性の判断の誤り
a 甲1発明において,相違点(イ)に係る本件訂正発明1の構成を採用
する動機付けはなく,当業者は,上記構成を容易に想到することがで
きたものとはいえない。
かえって,甲1の図3における左下方の構造を甲2の防草突部82,
83(図45)で置き換えた場合,防草突部82,83の上面80が
外方に向かって上向きに傾斜しているため,アスファルト又はコンク
リート(3)の上面から防草突部82,83の上面80の一部が露出
し,防草突部82,83の欠損を招くおそれがある。コンクリートブ
ロックの破損を防止することは,当業者にとって自明な課題であるが,
甲1の図3における左下方の構造を甲2の防草突部82,83で置き
換えた場合,当該自明な課題に反する手段をあえて採用することにな
るから,甲1の図3における左下方の構造を甲2の防草突部82,8
3で置き換えることには,阻害要因がある。
b 前記(イ)のとおり,本件審決における周知技術の認定に誤りがあり,
また,仮に甲1発明に甲3,7及び8から認められる周知技術を適用
しても,甲1記載のコンクリートブロック(2)のうちアスファルト
又はコンクリート(3)から露出した角部を湾曲化した構成となるに
すぎないから,相違点(イ)に係る本件訂正発明1の構成とはならない。
c 甲1ないし3,7,8には,舗装の下に埋設されたブロックの角部
により発生する舗装の亀裂を防止するという課題の開示はないし,ま
た,仮に当業者が上記課題を認識していたとしても,上記課題を解決
する手段として,コンクリートブロックの角部を湾曲化することが技

術常識であったことの証拠はないから,当業者は,本件審決にいう「力
学における技術常識」を参酌しても,舗装の亀裂を防止するという課
題を解決するために,甲1の図3における左下方の構造の角部を湾曲
化する構成を採用することを容易に想到することができたものとはい
えない。
d 以上によれば,甲1発明において,当業者が,甲1発明に甲2記載
の技術的事項及び周知技術並びに技術常識を適用することにより,相
違点(イ)に係る本件訂正発明1の構成を採用することを容易に想到す
ることができたものとはいえないから,本件審決における相違点(イ)
の判断には誤りがある。
ウ 小括
以上のとおり,本件審決には,本件訂正発明1と甲1発明の相違点(ア)
及び(イ)の判断に誤りがあり,その結果,本件訂正発明1は,甲1に記載
された発明(甲1発明)に甲2,3,7及び8に記載された周知技術及び
技術常識を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたも
のであるとした判断の誤りがある。また,本件審決には,本件訂正発明2
についても,本件訂正発明1と同様に,当業者が容易に発明をすることが
できたものであるとした判断の誤りがある。
したがって,本件審決は取り消されるべきものである。
2 被告の主張
(1) 取消事由1(甲1発明の認定の誤り等)に対し
ア 甲1発明の認定の誤りに対し
原告訴訟引受人は,甲1の図3におけるコンクリートブロックの左下方
の構造は,右上方の切り欠き棚(9)と同様の構造の切り欠き棚とはいえ
ないし,左下方の構造の上面は,略水平方向に図示されているにすぎず,
「コンクリートブロックの内方向に下り勾配」の構成のものではないから,

「コンクリートブロックの左側面に切り欠き棚が設けられており,当該切
り欠き棚の上面はコンクリートブロックの内部方向に向かって下り勾配の
傾斜面として形成され」た構成を有するものといえないとして,本件審決
における甲1発明の認定は誤りである旨主張する。
しかしながら,本件審決は,甲1の図3におけるコンクリートブロック
の左下方の構造が右上方の「切り欠き棚(9)」そのものであると認定し
たわけではない。
そして,甲1の図3では,左下方の切り欠き棚の上面は明らかにコンク
リートブロックの内方向に下り勾配となっており,その傾斜は右上方の切
り欠き棚の上面のコンクリートブロックの内方向への下り勾配と同様であ
り,略水平方向ではないから,「当該切り欠き棚の上面はコンクリートブ
ロックの内部方向に向かって下り勾配の傾斜面として形成され」た構成を
有するとした本件審決の認定に誤りはない。
また,甲1の図3の左下方側の切り欠き棚の前面にも,右上方側の切り
欠き棚(9)と同様にコンクリート(3)の下にクラッシャラン(4)が
敷設されているところ,甲1には,左下方側の切り欠き棚の上面がコンク
リートブロックの内方向に下り勾配となっていることから,「コンクリー
トブロック(2)またはコンクリート壁(11)が,アスファルトまたは
コンクリート(3)に接する部分に内方向に下り勾配の棚を付けたことに
より,アスファルトまたはコンクリートが棚面を覆うので,クラッシャラ
ン(4)からの直接の雑草が生えることを防止する」(段落【0022】)
との作用効果を奏することが記載されている。植物の屈光性及び屈地性に
よる性質は学術上周知であるから,上記段落【0022】記載の作用効果
は,切り欠き棚の上面(棚面)がコンクリートブロックの内方向に下り勾
配とする構造による雑草の根の屈地性及び雑草の芽の屈光性を阻害する防
草効果にほかならず,右上方側の切り欠き棚及び左下方側の切り欠き棚の

いずれもが奏するものである。
したがって,本件審決における甲1発明の認定に誤りはないから,原告
訴訟引受人の上記主張は理由がない。
イ 一致点の認定の誤り及び相違点の看過に対し
前記アのとおり,甲1の図3におけるコンクリートブロックの左下方の
構造(切り欠き棚)の上面は,「コンクリートブロックの内方向に下り勾
配」の構成のものであるから,本件訂正発明1の「下向き傾斜面」に相当
するとした本件審決の認定に誤りはない。
したがって,本件審決における一致点の認定の誤り及び相違点の看過を
いう原告訴訟引受人の主張は,その前提を欠くものであり,理由がない。
ウ 小括
以上のとおり,本件審決における甲1発明の認定,本件訂正発明1と甲
1発明の一致点の認定に誤りはなく,相違点の看過も認められないから,
原告訴訟引受人主張の取消事由1は理由がない。
(2) 取消事由2(相違点の判断の誤り)に対し
ア 相違点(ア)の判断の誤りに対し
(ア) 「略V字形」の構成について
原告訴訟引受人は,甲1の図3におけるコンクリートブロックの左下
方の構造の上面は,「略L字形」であるから,左下方の構造が実質的に
本件訂正発明1の「略V字形」の斜面を有しているとの本件審決の認定
は誤りである旨主張する。
しかしながら,前記(1)アのとおり,甲1の図3の左下方の切り欠き棚
の上面は,コンクリートブロックの内方向に下り勾配の傾斜面となって
いるから,これと連接して設けられた右側に傾いた上向き傾斜面とで形
成される「連接傾斜面」は,「略V字形」の形状に形成されており,「略
L字形」の形状ではない。

したがって,本件審決の上記認定に誤りはなく,原告訴訟引受人の上
記主張は理由がない。
(イ) 「防草傾斜面」の構成について
原告訴訟引受人は,本件訂正発明1の「防草傾斜面」と甲1の図3に
おける左下の構造の上面とは,防草効果を奏する点で共通しているとい
えるとしても,防草の機序,防草効果の程度が明らかに異なるから,図
3におけるコンクリートブロックの左下方の構造(「連接傾斜面」)が
実質的に本件訂正発明1の「防草傾斜面」であるとの本件審決の認定は
誤りである旨主張する。
しかしながら,前記(1)アのとおり,甲1の図3の左下方の切り欠き棚
の上面(棚面)は,コンクリートブロックの内方向に下り勾配の傾斜面
の構造となっていることは明らかであり,上記構造による雑草の根の屈
地性及び雑草の芽の屈光性を阻害する防草効果を奏するから,本件訂正
発明1の「防草傾斜面」に相当するものといえる。
また,本件訂正明細書には,本件訂正発明1の「防草傾斜面」に関し,
その開く向きや傾斜面の角度に応じて,植物の屈光性及び屈地性の阻害
に起因して,どの程度に植物の茎や葉あるいは根の成長が阻害されて植
物の成長が阻止されるのかについて,一切開示されていないから,本件
訂正発明1の「防草傾斜面」と甲1の図3における左下の構造の上面と
は,防草の機序,防草効果の程度が明らかに異なるとの原告訴訟引受人
の主張は,明細書の記載に基づかないものである。
したがって,本件審決の上記認定に誤りはなく,原告訴訟引受人の上
記主張は理由がない。
イ 相違点(イ)の判断の誤りに対し
(ア) 甲2記載の技術的事項及び周知技術について
甲2記載の防草突部82,83を含む防草板40は,境界ブロックと

「一体に成形されている」(段落【0155】)のであるから,防草突
部82,83も境界ブロックの一部であることに変わりはなく,甲2に
は,境界ブロックの「角部」を曲面化することが開示されているものと
いえる。
また,コンクリートブロックの欠損を防止し,取扱い・管理の容易化
を図るために角部を曲面化すること自体は,周知技術である(例えば,
甲2,3,7,8)。
したがって,本件審決における甲2記載の技術的事項及び周知技術の
認定に誤りはない。
(イ) 相違点(イ)の容易想到性について
a 甲1と甲2は,いずれもコンクリートブロックとコンクリートやア
スファルトとの境界部分の防草を図る技術である点で技術分野が共通
しており,雑草の根の屈地性及び芽の屈光性を阻害して植物の成長を
阻止するという防草効果のメカニズムも共通していることからする
と,当業者は,甲1発明に甲2に開示された境界ブロックの「角部」
を曲面化する技術(前記(ア))を適用し,相違点(イ)に係る本件訂正
発明1の構成とすることを容易に想到することができたものといえ
る。
この点に関し,原告訴訟引受人は,甲1の図3における左下方の構
造を甲2の防草突部82,83で置き換えることには,阻害要因があ
る旨主張する。
しかしながら,本件訂正発明1と甲1発明の相違点(イ)は,ブロッ
クの下向き傾斜面とブロックの側面との「連結部」が湾曲されている
か否かであり,相違点(イ)の容易想到性については,甲1の連結部を
角部から湾曲連結部へとすることが容易想到であるか否かを検討すれ
ば足りるものであり,甲2の防草突部82,83の形状そのものを甲

1の連結部へ置換可能であるか否かを検討する必要はないから,原告
訴訟引受人の上記主張は失当である。
b また,コンクリートブロックの欠損を防止し,取扱い・管理の容易
化を図るために角部を曲面化することは,周知技術であり(前記(ア)),
これを地中にあるブロックに適用することに格別の困難はないことか
らすると,当業者は,甲1発明に上記周知技術を適用して相違点(イ)
に係る本件訂正発明1の構成とすることを容易に想到することができ
たものといえる。
c 以上によれば,本件審決における相違点(イ)の判断に誤りはない。
ウ 小括
以上のとおり,本件審決における相違点(ア)及び(イ)の判断に誤りはな
いから,原告訴訟引受人主張の取消事由2は理由がない。
第4 当裁判所の判断
1 取消事由1(甲1発明の認定の誤り等)について
(1) 本件訂正明細書の記載事項等について
ア 本件訂正発明1及び2の特許請求の範囲(請求項1及び2)の記載は,
前記第2の2(2)のとおりである。
イ 本件訂正明細書の「発明の詳細な説明」には,次のような記載がある(甲
23の2。下記記載中に引用する図面については別紙明細書図面を参照)。
(ア) 【技術分野】
【0001】
本発明は防草等を意図した各種の構造物(構築物,舗装面,護岸舗装
面,法面舗装面又は護岸ブロック,法面ブロック等の各種のブロック「コ
ンクリート二次製品」と道路舗装構造と舗装面等,又は前記これら同士
等)の目地の構造に関する。
【背景技術】

【0002】
従来,例えば,道路における車道と歩道,又は車道と中央分離帯等に
おいて,その境界を仕切るコンクリート製の境界ブロック,例えば,縁
石(一方の構造物とする)が設置されている。このような道路の施工は,
養生,乾燥されたコンクリート製の境界ブロックの側面(壁面)に,現
場打ち(打設)のコンクリートやアスファルトコンクリート等の流動体
の舗装構造物(他方の構造物とする)を打設した後に乾燥硬化させて車
道等を形成することから,経年により上記のコンクリートやアスファル
トコンクリート等の舗装構造物が乾燥収縮及び/又は接着剤の経年変化
等によって,このコンクリート製の境界ブロックと舗装構造物との境目
に隙間が発生する。即ち,境界ブロックの壁面と舗装構造物との間に縦
方向(鉛直方向)の段差隙間(段差目地)が発生する。
【0003】
また同じような状況は,コンクリートの建物,駆体等(ブロックの一
種とみなす)と,隣接する打設コンクリート路面,同床面等の舗装構造
物(他方の構造物とする)においても,同様に縦方向の目地(面一目地)
が発生する。
【0004】
さらに同じ状況は,側溝,水路,フェンスブロック(ガードウォール)
等のコンクリート構造物(ブロック)と,隣接する打設コンクリート路
面,同床面等(他方の構造物とする)においても同様な状況となり,縦
方向に目地(段差目地)が発生する。
【0005】
この目地が垂直方向(鉛直方向)に発生した場合には,この垂直目地
(鉛直目地)内に在留及び/又は飛来する種子,又はこの目地内に雨水
等で流れ込む種子がある状況では,光及び/又は水分が確保されること

で,発芽し,光合成を基にしてすくすくと生育し,この目地外に成長す
ることが判明している。このように雑草の繁殖を許すことは,草刈を要
することによる各種の問題の発生と,雑草の影響による見通し悪化等の
交通事故の発生の要因となることが懸念されている。従って,主として
平坦地に設置されるブロックを対象とする雑草の繁殖を防止する(防草)
対策が重要である。
【0006】
そして,また河川,土手,溜池等の法面に設置される傾斜地に対する
ブロック同士においても,前述のような目地の状況は発生する。殊に,
このコンクリート同士をモルタル等の流動体で連繋する場合,下地とし
てモルタル及び/又はグリ石等を施工後に設置する場合等においては,
前述のような状況になり易く,この種の防草対策が重要になる。そして,
この法面における草刈,その後の処理の危険性と,作業の困難性は極め
て大変である故,一層の配慮が要求される。
【0007】
このような構造物の目地の構造として,従来,次のような文献(1)
~(4)の発明が知られている。以下,その概要を説明する。
【0008】
文献(1)として,特開平8-113906号の「コンクリートブロ
ックとコンクリート壁およびコンクリート壁の製造のための部材」があ
る。この発明は,コンクリートブロックの略垂直な前面及び背面の下部
に切り欠き棚を形成し,この切り欠き棚で防草を図る構成である。
【0009】
また文献(2)として,特開平10-82012号の「雑草防止型歩
車道境界ブロック」がある。この発明は,歩車道境界ブロックの歩道側
の側面上端角部に切り込みを設け,歩道のアスファルト舗装との接合部

の隙間の発生を回避し,この接合部からの雑草の発生を防止することを
意図する。
【0010】
さらに文献(3)として,特開2004-169544の「防草等を
意図した構造物の構造と構造物と構造物の防草等の工法」がある。この
発明は,構造物等に形成された目地が存在しても,防草用凹部の形状が,
雑草の根の屈地性及び/又は雑草の芽の屈光性を阻害する機能があり,
この機能を利用した画期的な防草等を意図した構造物の構造,構造物と
構造物の防草等の工法を提供する。
(イ) 【発明が解決しようとする課題】
【0012】
文献(1)の発明は,単純な切欠き棚による防草では,雑草の屈光性
及び/又は屈地性を阻害するまでの角度はなく,望むような防草効果は
期待できない。そして,この発明は,傾斜面の横の目地となる部分に隙
間ができると,防草効果を図るためには,傾斜面に対し物理的に遮断す
る手段が必要となり,その手段が,明細書の[0022]に記載されてい
る。棚面をコンクリートで覆う手段として転圧をすることから,経年的
に,この棚面と,コンクリート面との間には隙間が形成されるので,防
草効果が期待できない。
【0013】
また文献(2)の発明は,単純な接合部の隙間の発生の回避による防
草では,雑草の屈光性及び/又は屈地性を阻害するまでには到らず,望
むような防草効果は期待できない。また雑草は,僅かな隙間でも発芽及
び/又は成長することから,これによる防草効果も単に願望の域に留ま
るものと思料される。
【0014】

文献(3)の発明は,防草用凹部の形状が,雑草の根の屈地性及び/
又は雑草の芽の屈光性を阻害する機能があり,この機能を利用した画期
的な防草効果が図れることは確かであり,有益な発明である。しかし,
この発明は,鉛直面と防草用凹部とが,湾曲連結部及び/又は連結凹部
を備えない構造であるので,欠損の虞があること,又は成形時の型抜き
に手間と熟練とを有すること等の改良点がある。そして,また,この防
草用凹部に,コンクリート舗装の流動はよいが,アスファルト舗装を図
る際に,転圧を要すること,又は押込み手段・施工を要すること等の問
題的を,一部に含んでいる。
【0015】
上記に鑑み本発明は,[1] 目地の境界部に,湾曲連結部及び/又
は連結凹部を備えた構造とすることで,ブロック及び/又は舗装面の欠
損と,舗装面の亀裂とを回避すること,[2] 目地の境界部に,湾曲
連結部及び/又は連結凹部を備えた構造を採用して,雑草の屈光性及び
/又は屈地性を阻害し,防草効果が図れる目地の構造を提供すること,
[3] またブロック成形の容易化,簡略化等を介して経済性の向上と,
工期の短縮化等の如く,現実に即した防草効果が発揮できる目地用のブ
ロックを提供すること,[4] またブロックに,湾曲連結部及び/又
は連結凹部を備えた構造を採用して,このブロックの運搬時,取扱い時
の容易化,簡略化等を図ること,[5] 前記の如し,ブロックに設け
た下向き傾斜面と,この下向き傾斜面に連設して設けた上向き傾斜面で
構成した略V字形の防草傾斜面と,この略V字形の防草傾斜面に充填さ
れる逆略V字形の防草傾斜面とで構成される構造物の目地であり,この
下向き傾斜面及び/又は上向き傾斜面に経年で隙間が生じても,自然の
摂理で防草を図ること,等を意図する。
(ウ) 【課題を解決するための手段】

【0016】
請求項1・2の発明は,前述の[1]~[5]の目的を達成すること
を意図する。
【0017】
請求項1は,ブロックに設けた下向き傾斜面と,この下向き傾斜面に
連設して設けた上向き傾斜面で構成した略V字形の防草傾斜面と,この
略V字形の防草傾斜面に充填された舗装又は他の構造物の逆略V字形の
防草傾斜面とで構成される構造物の目地であって,
このブロックの下向き傾斜面と,側面鉛直面との連結箇所を湾曲連結
部(9),(29),(49),(69),(89),(109),(1
29),(149),(169)又は(189)とし,
この湾曲連結部(9),(29),(49),(69),(89),
(109),(129),(149),(169)又は(189)は,
前記ブロックの略V字形の防草傾斜面に,舗装面を舗装,又は他の構造
物を設置した際に,この舗装又は他の構造物の下側に位置する構成とし,
この舗装又は他の構造物の下側に位置する湾曲連結部(9) (29)
, ,
(49),(69),(89),(109),(129),(149),
(169)又は(189)は,前記下向き傾斜面と,前記側面鉛直面と
の連設箇所に形成した構造物の目地の構造である。
【0018】
請求項2は,ブロックに設けた下向き傾斜面と,この下向き傾斜面に
連設して設けた上向き傾斜面で構成した略V字形の防草傾斜面と,この
略V字形の防草傾斜面に充填された舗装又は他の構造物の逆略V字形の
防草傾斜面とで構成される構造物の目地であって,
このブロックの下向き傾斜面と,側面鉛直面との連結箇所を湾曲連結
部(9),(29),(49),(69),(89),(109),(1

29),(149),(169)又は(189)とするとともに,この
下向き傾斜面と,上向き傾斜面との連結箇所を連結凹部とし,
この湾曲連結部(9),(29),(49),(69),(89),
(109),(129),(149),(169)又は(189)と連
結凹部は,前記ブロックの略V字形の防草傾斜面に,舗装面を舗装,又
は他の構造物を設置した際に,この舗装又は他の構造物の下側に位置す
る構成とし,
この舗装又は他の構造物の下側に位置する湾曲連結部(9) (29)
, ,
(49),(69),(89),(109),(129),(149),
(169)又は(189)は,前記下向き傾斜面と,前記側面鉛直面と
の連設箇所に形成した構造物の目地の構造である。
(エ) 【発明の効果】
【0026】
従って,請求項1・2は,下記の[1]~[5]の特徴を有する。
【0027】
[1] 目地の境界部に,湾曲連結部及び/又は連結凹部を備えた構
造とすることで,ブロック及び/又は舗装面の欠損と,舗装面の亀裂と
の回避が図れること,[2] 目地の境界部に,湾曲連結部及び/又は
連結凹部を備えた構造を採用して,雑草の屈光性及び/又は屈地性を阻
害し,防草効果が図れる目地の構造を提供できること,[3] またブ
ロック成形の容易化,簡略化等を介して経済性の向上と,工期の短縮化
等の如く,現実に即した防草効果が発揮できる目地用のブロックを提供
できること,[4] またブロックに,湾曲連結部及び/又は連結凹部
を備えた構造を採用して,このブロックの運搬時,取扱い時の容易化,
簡略化等が図れること,[5] 前記の如し,ブロックに設けた下向き
傾斜面と,この下向き傾斜面に連設して設けた上向き傾斜面で構成した

略V字形の防草傾斜面と,この略V字形の防草傾斜面に充填される逆略
V字形の防草傾斜面とで構成される構造物の目地であり,この下向き傾
斜面及び/又は上向き傾斜面に経年で隙間が生じても,自然の摂理で防
草が図れること,等である。
(オ) 【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
先ず,図1-1に示した第一実施例を説明すると,境界ブロック等の
ブロック1(コンクリート二次製品の一例である)とコンクリート及び
/又はアスファルトコンクリート等の舗装面2との関係による目地の一
例を示した断面図において,1は工場において成形,養生,硬化された
プレキャストコンクリート製,アスファルトコンクリート製,或いは樹
脂入りコンクリート製等による境界ブロック等のブロックで,このブロ
ック1(一方の構造物となる)の上縁片側1aと舗装面2(他方の構造
物)で形成される目地3には,所定角度の下向き傾斜面5と,この下向
き傾斜面5に連設して上向き傾斜面4で略V字形の防草傾斜面13を形
成する。そして,この下向き傾斜面5と上縁片側1aの鉛直面6との連
結箇所を湾曲連結部9とする。この略V字形の防草傾斜面13は,充填
された舗装(他方の構造物)で形成される逆略V字形の防草傾斜面15
で隠蔽される。
【0047】
また下向き傾斜面5と上向き傾斜面4との連結箇所を連結凹部10
(湾曲連結凹部か,又は鋭角連結凹部とする)とする。さらにブロック
1の表面1cと上向き傾斜面4との連結箇所を湾曲表面連結部12とす
る。尚,連結凹部10を湾曲連結凹部とすれば,欠損に有効であり,又
は連結凹部10を鋭角連結凹部とすれば,防草効果が期待できる。また
前記湾曲表面連結部12は,アスファルト等の流動体の充填材に有効で

ある(他の各実施例も同じ)。さらにこの湾曲表面連結部12を鋭角表
面連結部(図示せず)とし,コンクリートの充填材に対応することが望
ましい(他の各実施例も同じ)。
【0048】
従って,このブロック1の略V字形の防草傾斜面13は,全ての連結
部(湾曲連結部9,連結凹部10,又は湾曲表面連結部12)を曲面形
状とすることで,当該ブロック1の欠損を回避できること,取扱い・管
理の容易化が図れること,又は舗装面2の亀裂防止に有効であること等
の特徴がある。
【0049】
また前述した鉛直面6は,この鉛直面6の上端に形成された湾曲連結
部9を介して下向き傾斜面5に連設され,この下向き傾斜面5は連結凹
部10を介して上向き傾斜面4に連設され,さらにこの上向き傾斜面4
の上端に形成された湾曲表面連結部12を経由してブロック1の表面1
cに至る構成である。尚,この鉛直面6は,略鉛直面を含む構造である
(以下,同じであり省略する)。そして,この所定角度の下向き傾斜面
5を利用して雑草の根の屈地性及び/又は雑草の芽の屈光性を阻害でき
る下向きの経年による間隙14(下向き経年隙間)が,略V字形の防草
傾斜面13と逆略V字形の防草傾斜面15との間に形成されても防草効
果が図れる。この下向き経年隙間14は,ブロック1と舗装面2との伸
縮差に起因するものであり,通常は二~三年を経過することで発生する。
しかし,本発明では,前述の如く,下向き傾斜面5を有する限り防草効
果が図れる構造である。
【0050】
またこのブロック1の下縁片側1bの下縁1b-1には,舗装面2と
で形成される目地3には,鉛直面6の下縁片側1bを欠截して設けた略

倒L字形となる所定角度の下向き傾斜面5に連設して鉛直面6a又は傾
斜面(図示せず。以下同じ)を設ける。この例においても,湾曲連結部
9と,連結凹部10が形成される。そして,この例における構成及び/
又は効果は,前記上縁片側1aに準ずる。
【0051】
そして,図1-1-3は,下向き経年隙間14の理解を容易にするた
めに,幾分,誇張して示した断面図である。
ウ 前記ア及びイの記載を総合すれば,本件訂正明細書(甲23の2)には,
本件訂正発明1及び2に関し,次の点が開示されていることが認められ
る。
(ア) 従来から,道路における車道と歩道,又は車道と中央分離帯等の境
界を仕切るコンクリート製の境界ブロック(例えば,縁石)とコンクリ
ートやアスファルトコンクリート等の舗装構造物との境目に,舗装構造
物の乾燥収縮,接着剤の経年変化等によって縦方向(鉛直方向)の隙間
(目地)が発生し,この目地内に種子が在留し,飛来し又は雨水等で流
れ込むと,光及び水分が確保されることで,発芽し,光合成により目地
外に成長して雑草が繁殖し,草刈を要することによる各種の問題が発生
し,雑草の影響による見通し悪化等の交通事故の発生の要因となってい
たため,主として平坦地に設置されるブロックを対象とする雑草の繁殖
を防止する(防草)対策が重要とされていた(段落【0002】,【0
005】)。
このような防草を図ることを目的とした従来の技術としては,コンク
リートブロックの略垂直な前面及び背面の下部に切り欠き棚を形成し,
この切り欠き棚で防草を図る構成(特開平8-113906号公報。甲
1)が知られているが,単純な切り欠き棚による防草では,雑草の屈光
性及び屈地性を阻害するまでの角度がなく,望むような防草効果は期待

できず,また,棚面をコンクリートで覆う手段として転圧をすることか
ら,経年的に棚面とコンクリート面との間に隙間が形成され,防草効果
が期待できないという問題があった(段落【0008】 【0012】 。
, )
同様に,歩車道境界ブロックの歩道側の側面上端角部に切り込みを設け,
歩道のアスファルト舗装との接合部の隙間の発生を回避することで,接
合部からの雑草の発生の防止を図る構成(特開平10-82012号公
報。甲8)も,雑草の屈光性及び屈地性を阻害するまでの角度がなく,
望むような防草効果は期待できない(段落【0009】 【0013】 。
, )
また,防草用凹部の形状が,雑草の根の屈地性及び芽の屈光性を阻害
する機能を利用して防草等を意図した構造物の構造(特開2004-1
69544号公報。甲2)も知られているが,鉛直面と防草用凹部とが,
湾曲連結部又は連結凹部を備えない構造であるので,欠損のおそれがあ
り,成形時の型抜きに手間と熟練とを要すること,防草用凹部にアスフ
ァルト舗装を図る際に,転圧を要すること,押込み手段・施工を要する
ことなどの問題があった(段落【0010】,【0014】)。
(イ) 「本発明」(請求項1及び2)は,[1]目地の境界部に,湾曲連
結部及び/又は連結凹部を備えた構造とすることで,ブロック及び/又
は舗装面の欠損と,舗装面の亀裂とを回避すること,[2] 目地の境界
部に,湾曲連結部及び/又は連結凹部を備えた構造を採用して,雑草の
屈光性及び/又は屈地性を阻害し,防草効果が図れる目地の構造を提供
すること,[3]ブロック成形の容易化,簡略化等を介して経済性の向
上と,工期の短縮化等の如く,現実に即した防草効果が発揮できる目地
用のブロックを提供すること,[4]ブロックに,湾曲連結部及び/又
は連結凹部を備えた構造を採用して,このブロックの運搬時,取扱い時
の容易化,簡略化等を図ること,[5] ブロックに設けた下向き傾斜面
と,この下向き傾斜面に連設して設けた上向き傾斜面で構成した略V字

形の防草傾斜面と,この略V字形の防草傾斜面に充填される逆略V字形
の防草傾斜面とで構成される構造物の目地であり,この下向き傾斜面及
び/又は上向き傾斜面に経年で隙間が生じても,自然の摂理で防草を図
ること等の目的を達成することを課題とし,その課題を解決するための
手段として,本件訂正発明1及び2の構成を採用した(段落【0015
】,【0016】)。[5]に関しては,図1-1-3(別紙明細書図
面参照)に示すように,略V字形の防草傾斜面13と逆略V字形の防草
傾斜面15との間に下向きの経年による間隙14(下向き経年隙間1
4)が形成されても,所定角度の下向き傾斜面5を利用して雑草の根の
屈地性及び/又は雑草の芽の屈光性を阻害できるので,防草効果が図れ
る(段落【0049】)。
(2) 甲1の記載事項について
甲1には,次のような記載がある(下記記載中に引用する図面については
別紙甲1図面を参照)。
ア 【特許請求の範囲】
【請求項1】背面の上縁部に切り欠き棚(9)または突出棚(10)を設
け,それらの棚(9)または(10)の棚面を前面方向に下り勾配とした
コンクリートブロック(2)またはコンクリート壁(11)。
【請求項2】背面の上縁に切り欠き棚(9)または突出棚(10)を設け,
それらの切り欠き棚(9)または突出棚(10)の棚面を,コンクリート
ブロック(2)またはコンクリート壁(11)の内部方向に下り勾配とし,
棚面の奥側と,コンクリートブロック(2)またはコンクリート壁(11)
の前面とに開口(7),(8)を有する排水孔(6)を設けたコンクリー
トブロック(2)またはコンクリート壁(11)。
イ 【0001】
【産業上の利用分野】この発明は,コンクリートブロックおよびコンクリ

ート壁およびそれらの製造のための部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来のコンクリートブロック(1)またはコンクリート壁
(12)の,アスファルトまたはコンクリート(3)が接する面に水切り
または排水孔が設けられていない。
ウ 【0003】
【発明が解決しようとする課題】アスファルトまたはコンクリート(3)
が収縮し,コンクリートブロック(1)またはコンクリート壁(12)と
の接する面に,隙間ができ,その隙間から,雨水が入り込むため,雑草が
生える。雑草が生えることにより,より多くの雨水が入り込むため,クラ
ッシャラン(4)が沈下し,それに伴いアスファルトまたはコンクリート
(3)も沈下またはひび割れが生じ,多量に雑草が生え,危険を伴う問題
点がある。
【0004】図2に示すように,従来のコンクリートブロック(1)の場
合,天場(5)にアスファルトまたはコンクリート(3)が被さっている
ため水が入り込みにくいが,天場(5)に土が溜まる。また,アスファル
トまたはコンクリート(3)が,薄いためアスファルトまたはコンクリー
ト(3)が削れ,車道の残骸になり,車や二輪車のスリップ事故が発生す
る問題点がある。
【0005】この発明は,アスファルトまたはコンクリート(3)に接す
るコンクリートブロック(2)またはコンクリート壁(11)の面に雨水
が流れるのを防止し,従って,雑草が生えにくく,クラッシャラン(4)
やアスファルトまたはコンクリート(3)も沈下したりひび割れしたりす
ることがない,コンクリートブロック(2)またはコンクリート壁(11)
および,コンクリート壁(11)の製造のための部材(14)を提供する
ことを目的とする。

エ 【0006】
【課題を解決するための手段】コンクリートブロックまたはコンクリート
壁の背面の上縁部に,切り欠き棚(9)または突出棚(10)を設け,そ
れらの棚(9)または(10)の棚面を前面方向に下り勾配とする。
【0007】コンクリートブロック(2)またはコンクリート壁(11)
の背面の上縁に,切り欠き棚(9)または突出棚(10)を設け,それら
の切り欠き棚(9)または突出棚(10)の棚面を,コンクリートブロッ
ク(2)またはコンクリート壁(11)の内部方向の下り勾配とし,棚面
の奥側と,コンクリートブロック(2)またはコンクリート壁(11)の
前面とに開口(7),(8)を有する排水孔(6)を設ける。
【0008】コンクリートブロック(2)またはコンクリート壁(11)
の前面の下縁部に,上面で背面方向に下り勾配を設けた突出棚(10)を
設ける。
【0009】コンクリート壁(11)の切り欠き棚(9)を形成するため
の部材として,上方が開口し,背面板(15)が前面板(17)よりも高
く,かつ,多数の釘穴(16)を有し,前面板(17)は完成後のコンク
リート壁(11)の切り欠き棚(九)の垂直壁と同一またはそれ以上の高
さとし,底板は完成後のコンクリート壁(11)の切り欠き棚(9)の棚
面とほぼ同一とした角形容器を用いる。
【0010】コンクリート壁(11)の切り欠き棚(9)および排水孔(6)
を形成するため,コンクリートを流し込む際に,上方が開口し,背面板(1
5)が前面板(17)よりも高く,かつ,多数の釘穴(16)を有し,前
面板(17)は完成後のコンクリート壁(11)の切り欠き棚(9)の垂
直壁と同一またはそれ以上の高さとし,底板は完成後のコンクリート壁(1
1)の切り欠き棚(9)の棚面とほぼ同一とした角形容器と,その容器の
前面板(17)の下端または底板の前方端に複数の開口を設け,それら開

口にコンクリート壁11の厚みと同一かまたは長い排水パイプ(13)の
一端を着脱自在に取り付けた部材(14)を用いる。
オ 【0011】
【作用】コンクリートブロック(2)またはコンクリート壁(11)の切
り欠き棚(9)または突出棚(10)は,クラッシャラン(4)からの雑
草が生えるのを防止し,かつ,排水孔(6)は,雨水を前面に流し,雨水
がコンクリートブロック(2)またはコンクリート壁(11)の背面を伝
わって流下するのを防止し,クラッシャラン(4)への直接の雨水の進入
を防ぐため,クラッシャラン(4)の沈下,かつ,アスファルト又はコン
クリート(3)の沈下,ひび割れを防止する。
【0012】コンクリート壁(12)の切り欠き棚(9)を形成するため
の部材(14)の,容器部分はコンクリート打ち込みのときにコンクリー
トの流入を防ぎ,容器部分の容積の切り欠き棚(9)を形成する。
【0013】上記容器の前面板(17)の下端または底板の前方端の複数
の開口に一端を着脱自在に取り付けたコンクリート壁(11)の厚みより
も長い排水パイプ(13)は,完成したコンクリート壁(11)の切り欠
き棚(9)の雨水をコンクリート壁(11)の前面に流す排水孔(6)を
形成する。
カ 【0014】
【実施例】コンクリートブロック(2)またはコンクリート壁(11)の,
アスファルトまたはコンクリート(3)が接する背面の上縁部に,切り欠
き棚(9)または突出棚(10)を設ける。その際,棚面にコンクリート
ブロック(2)またはコンクリート壁(11)の内部方向に下り勾配を付
ける。
【0015】コンクリートブロック(2)またはコンクリート壁(11)
の背面の上縁部に,切り欠き棚(9)または突出棚(10)を設け,その

棚の奥すなわち棚の垂直面の下端とコンクリートブロック(2)またはコ
ンクリート壁(11)の前面とに開口7,8を有する排水孔(6)を設け
る。その際,排水孔(6)はコンクリートブロック(2)またはコンクリ
ート壁(11)の前面方向に下り勾配とする。
【0017】図5は,ブロック(2)の背面,すなち,アスファルトまたは
コンクリート(3)に接する部分に,突出する棚10を設けたものである。
ブロック(2)は,角型,L字型,またはU字型のいずれのブロックであっ
てもよい。
【0018】図6に示すように,L字型ブロックにおいては,L字の垂直部
の背面の上縁部に切り欠き棚(9)を設け,その棚の垂直面の下端開口(7)
とブロック前面に開口(8)を有する排水孔(6)を設ける。L字の水平部
の前面の上縁部に切り欠き棚(9)を設けるのが好ましい。それら切り欠き
棚(9)の代わりに,突出棚(10)を設けてもよい。
【0019】図7は,図8で示すように,アスファルトまたはコンクリート
(3)が接するコンクリート壁(11)の背面の上縁部に切り欠き棚(9)
を設け,切り欠き棚(9)の垂直面の下端と,コンクリート壁(11)の前
面側に開口を設けるための部材(14)である。
【0020】その部材(14)は,図7で示すように,上方が開口する角形
容器の背面板(15)を前面板(17)よりも高くし,背面板(15)に,
部材(14)をコンクリート型枠(18)に取り付けるための釘穴(17)
を多数設ける。前面板(17)の高さは,コンクリート壁(11)の切り欠
き棚(9)の切り欠き棚(9)の垂直壁の高さと同一またはそれ以上の高さ
とする。部材(14)の底板は,切り欠き棚(9)の棚面とほぼ同一とし,
切り欠き棚(9)の棚面の下り勾配と一致させる。部材(14)の前面板下
端または底板の前方端に多数の開口を設け,コンクリート壁(11)の前面
に開口する排水孔(6)を設けるための排水パイプ(13)を設ける。その

際に長さの異なる排水孔(6)に適合できるように,排水パイプ(13)は,
スライド式の伸縮可能なものとするのが好ましい。
【0021】この部材(14)を使用するためには,コンクリート壁(11)
を施工する際のコンクリート型枠(18)に背面板(15)を当接させ,
その釘穴(16)に釘(19)等を打ち込んで部材(14)を固定し,コ
ンクリート型枠(18)内にコンクリートを流し込む際に,コンクリート
が部材(14)の角形容器内に流入しないようにし,かつ,コンクリート
が前面板(17)と底面に接するようにし,排水パイプ(13)の先端開
口をコンクリート枠の面と同一にするか,または,コンクリート型枠(1
8)に孔を開けて突出させ,開口がコンクリートで埋まらないようにする。
コンクリートが固化した後に排水パイプ(13)をコンクリートに埋もれ
たままとして部材(14)の角形容器を外し,取り除くと,コンクリート
壁(11)の上縁部に切り欠き棚(9)が形成される。排水パイプ(13)
の先端開口がコンクリート壁(11)の面より突出している場合には,そ
の突出部を切り取り除去するのが好ましい。
キ 【0022】
【発明の効果】本発明は,以上説明したように構造されているので,以下
に記載されているような効果を有する。コンクリートブロック(2)また
はコンクリート壁(11)が,アスファルトまたはコンクリート(3)に
接する部分に内方向に下り勾配の棚を付けたことにより,アスファルトま
たはコンクリートが棚面を覆うので,クラッシャラン(4)からの直接の
雑草が生えることを防止する。
【0023】そして,棚を設け,排水孔(6)を設けることにより,水は
ブロックの背面を伝わらず,ブロックの前方へ流出するので,背面側のア
スファルトまたはコンクリート(3),または,クラッシャラン(4)の
沈下またはひび割れを防げる。そのため,歩車道の通行が安全であり,事

故等の防止ができる。アスファルトまたはコンクリート(3)の残骸が車
道に散らばらないため,車や二輪車の事故が防げる。
【0024】部材(14)は,コンクリート壁(11)に切り欠き棚(9)
及び排水孔(6)を設けるのを容易にする。部材(14)の排水パイプ(1
3)を,スライド式とすることにより,コンクリート壁の厚みに対応する
ことができる。
ク 【図面の簡単な説明】
【図1】従来のコンクリートブロックの敷設説明図である。
【図2】従来のコンクリートブロックの敷設説明図である。
【図3】この発明に係るコンクリートブロックの敷設説明図である。
【図5】この発明に係るコンクリートブロックの敷設説明図である。
【図6】この発明に係るL字型コンクリートブロックの敷設説明図である。
【図7】この発明に係るコンクリート壁の切り欠き棚または、排水孔を設
けるための部材の斜断面図である。
【図8】この発明に係るコンクリート壁の施工断面図である。
【図9】この発明に係るコンクリート壁の敷設断面図である。
【図10】従来のコンクリート壁の敷設断面図である。
(3) 甲1発明の認定の誤りの有無について
原告訴訟引受人は,甲1の図3におけるコンクリートブロックの左下方の
構造は,右上方の切り欠き棚(9)と同様の構造の切り欠き棚とはいえない
し,左下方の構造の上面は,略水平方向に図示されているにすぎず,「コン
クリートブロックの内方向に下り勾配」の構成のものではないから,甲1に
記載されたコンクリートブロックと車道の目地の構造は,「コンクリートブ
ロックの左側面に切り欠き棚が設けられており,当該切り欠き棚の上面はコ
ンクリートブロックの内部方向に向かって下り勾配の傾斜面として形成さ
れ」た構成を有するものではなく,本件審決がした甲1発明の認定に誤りが

ある旨主張する。
しかしながら,甲1の図3(別紙甲1図面参照)には,コンクリートブロ
ックの左側面の一部を切り欠いた構成が記載されており,その切り欠いた構
成の上面はコンクリートブロックの内方向に向かって下側に傾斜しているこ
とを読み取ることができる。
加えて,①甲1の請求項1及び2の文言,②甲1の図6(別紙甲1図面参
照)には,L字形のコンクリートブロックの背面の上縁部及び前面の上縁部
にそれぞれ切り欠き棚(9)を設けた構成が図示されているが(段落【00
18】),背面の上縁部の切り欠き棚(9)にはその上面(棚面)に開口(7)
を有する排水孔(6)が設けられているのに対し,前面の上縁部の切り欠き
棚(9)にはそのような排水孔(6)が設けられていることの記載がないこ
とに照らすと,甲1においては,切り欠き棚(9)と排水孔(6)とは別の
部材として区別し,排水孔(6)を伴わない構成のものも,切り欠き棚(9)
に含まれることの開示があるものといえるから,甲1の図3におけるコンク
リートブロックの左側面の一部を切り欠いた構成は,右上方の切り欠き棚
(9)と同様の構造の切り欠き棚と認めて差し支えないものといえる。
なお,甲1には,図3におけるコンクリートブロックの左側面の一部を切
り欠いた構成としたことについて言及した記載はなく,その構成の技術的意
義についての明示的な記載もないが,そのことは,図3から,コンクリート
ブロックの左側面に上面(棚面)が内方向に向かって下側に傾斜した切り欠
き棚が記載されていることを読み取ることができることを否定する根拠とな
るものではない。
以上によれば,甲1に記載されたコンクリートブロックと車道の目地の構
造は,「コンクリートブロックの左側面に切り欠き棚が設けられており,当
該切り欠き棚の上面はコンクリートブロックの内部方向に向かって下り勾配
の傾斜面として形成され」た構成を有するものと認められるから,本件審決

における甲1発明の認定に誤りはなく,原告訴訟引受人の上記主張は,理由
がない。
(4) 一致点の認定の誤り及び相違点の看過の有無について
原告訴訟引受人は,甲1の図3におけるコンクリートブロックの左下方の
構造の上面は,略水平方向に図示されているにすぎず,「コンクリートブロ
ックの内方向に下り勾配」の構成のものではなく,本件訂正発明1の「下向
き傾斜面」に相当するものではないから,本件審決が認定した一致点のうち,
「下向き傾斜面」に関する部分は誤りであり,また,本件審決には,「上向
き傾斜面と共にブロックの連接傾斜面を構成する面が,本件訂正発明1では
「下向き傾斜面」であるのに対し,甲1発明ではそうではない点」を本件訂
正発明1と甲1発明の相違点として認定すべきであったのに,この相違点を
看過した誤りがある旨主張する。
しかしながら,前記(3)のとおり,甲1の図3におけるコンクリートブロッ
クの左側面の切り欠き棚(原告訴訟引受人主張の「左下方の構造」)の上面
は,「コンクリートブロックの内方向に下り勾配」の構成のものであるから,
本件訂正発明1の「下向き傾斜面」に相当するとした本件審決の認定に誤り
はない。
したがって,原告訴訟引受人の上記主張は,その前提を欠くものであり,
理由がない。
(5) 小括
以上のとおり,本件審決における甲1発明の認定,本件訂正発明1と甲1
発明の一致点の認定に誤りはなく,相違点の看過も認められないから,原告
訴訟引受人主張の取消事由1は理由がない。
2 取消事由2(相違点の判断の誤り)について
(1) 相違点(ア)の判断の誤りについて
原告訴訟引受人は,本件審決は,相違点(ア)に関し,甲1発明における「連

接傾斜面」は,実質的に本件訂正発明1の「略V字形の防草傾斜面」の構成
に相当するから,相違点(ア)は実質的な相違点ではない旨判断したのは誤り
である旨主張するので,以下において判断する。
ア 本件訂正発明1の「略V字形の防草傾斜面」の意義について
(ア) 本件訂正発明1の特許請求の範囲(本件訂正後の請求項1)には,
「略V字形の防草傾斜面」は,「ブロックに設けた下向き傾斜面と,こ
の下向き傾斜面に連設して設けた上向き傾斜面」で構成されるとの記載
があるが,「略V字形の防草傾斜面」にいう「略V字形」について定義
した記載はなく,「下向き傾斜面」及び「上向き傾斜面」の水平面に対
するそれぞれの角度や,「下向き傾斜面」及び「上向き傾斜面」とで形
成される連接傾斜面の角度について特定した記載もない。
また,本件訂正後の請求項1には,「この略V字形の防草傾斜面に充
填された舗装又は他の構造物の逆略V字形の防草傾斜面とで構成される
構造物の目地」との記載があるが,「略V字形の防草傾斜面」にいう「防
草傾斜面」について定義した記載はなく,「防草」の具体的な機能を特
定した記載はない。
(イ) 次に,本件訂正明細書には,本件訂正発明1の「略V字形の防草傾
斜面」にいう「略V字形」に関し,「下向き傾斜面」及び「上向き傾斜
面」の水平面に対するそれぞれの角度や,「下向き傾斜面」及び「上向
き傾斜面」とで形成される連接傾斜面の角度について特定した記載はな
い。
一方で,本件訂正明細書には,本件訂正発明1及び2は,「ブロック
に設けた下向き傾斜面と,この下向き傾斜面に連設して設けた上向き傾
斜面で構成した略V字形の防草傾斜面と,この略V字形の防草傾斜面に
充填される逆略V字形の防草傾斜面とで構成される構造物の目地であ
り,この下向き傾斜面及び/又は上向き傾斜面に経年で隙間が生じても,

自然の摂理で防草を図ること」を課題とし,その効果を奏すること(段
落【0015】,【0026】,【0027】),略V字形の防草傾斜
面13と逆略V字形の防草傾斜面15との間に下向きの経年による間隙
14(図1-1-3の下向き経年隙間14)が形成されても,所定角度
の下向き傾斜面5を利用して雑草の根の屈地性及び/又は雑草の芽の屈
光性を阻害できるので,防草効果が図れること(段落【0049】)が
記載されている。上記記載によれば,本件訂正明細書には,本件訂正発
明1は,ブロックと舗装構造物との境目に,経年による隙間の発生が避
けられないことを想定して,隙間が発生しても,「略V字形の防草傾斜
面」を構成する所定角度の下向き傾斜面5を利用して,雑草の根の屈地
性及び芽の屈光性を阻害することによって,「防草効果」が図れること
が開示されていることが認められる。
もっとも,本件訂正明細書には,雑草の根の屈地性及び芽の屈光性の
阻害の意味について述べた記載はないが,屈地性とは,発芽した植物を
水平に保っておくと,根の先端は下方に,茎の上部は上方に向かって屈
曲する性質をいい,屈光性とは,茎・葉が光に向かって屈曲する性質を
いい,この屈地性及び屈光性により,植物の茎・葉は上方へ成長するが,
下方へ成長せず,根は下方へ成長するが,上方へ成長しない性質を有す
ることは,一般に知られていたこと(甲9,10,14,弁論の全趣旨)
に照らすと,本件訂正明細書記載の屈地性及び屈光性の阻害による「防
草効果」とは,所定角度の下向き傾斜面を利用して,茎・葉や根を本来
の成長方向とは逆方向(茎・葉については「下方向」,根については「上
方向」)へ誘導することにより,その成長を阻止することを意味するも
のと理解することができる。
(ウ) 以上の本件訂正発明1の特許請求の範囲(本件訂正後の請求項1)
の記載及び本件訂正明細書の記載によれば,本件訂正発明1の「略V字

形の防草傾斜面」とは,「略V字形」の連接傾斜面を構成する「下向き
傾斜面」を利用して,植物の屈地性及び屈光性の特性を阻害することに
より雑草の成長を阻止する「防草機能」を有する「傾斜面」を意味する
ものと解される。
イ 甲1発明の「連接傾斜面」について
甲1発明は,甲1の図3のコンクリートブロックの左側面に示すように,
「ブロックに設けた下向き傾斜面と,この下向き傾斜面に連設して設けた
上向き傾斜面で構成した連接傾斜面」を有することは,前記1(3)認定のと
おりである。
前記1(2)の甲1の記載事項によれば,甲1には,①従来のコンクリート
ブロック(1)又はコンクリート壁(12)とアスファルト又はコンクリ
ート(3)が接する面に,水切り又は排水孔が設けられていないため,ア
スファルト又はコンクリート(3)の収縮により,上記接する面に隙間が
でき,その隙間から,雨水が入り込み,雑草が生え,更に雑草が生えるこ
とにより,より多くの雨水が入り込むため,クラッシャラン(4)が沈下
し,それに伴いアスファルト又はコンクリート(3)も沈下又はひび割れ
が生じ,多量に雑草が生え,危険を伴うといった問題点があること(段落
【0003】),②「この発明は,アスファルトまたはコンクリート(3)
に接するコンクリートブロック(2)またはコンクリート壁(11)の面
に雨水が流れるのを防止し,従って,雑草が生えにくく,クラッシャラン
(4)やアスファルトまたはコンクリート(3)も沈下したりひび割れし
たりすることがない,コンクリートブロック(2)またはコンクリート壁
(11)および,コンクリート壁(11)の製造のための部材(14)を
提供することを目的とする」こと(段落【0005】),③「発明の効果」
として,「コンクリートブロック(2)またはコンクリート壁(11)が,
アスファルトまたはコンクリート(3)に接する部分に内方向に下り勾配

の棚を付けたことにより,アスファルトまたはコンクリートが棚面を覆う
ので,クラッシャラン(4)からの直接の雑草が生えることを防止する」
こと(段落【0022】),「そして,棚を設け,排水孔(6)を設ける
ことにより,水はブロックの背面を伝わらず,ブロックの前方へ流出する
ので,背面側のアスファルトまたはコンクリート(3),または,クラッ
シャラン(4)の沈下またはひび割れを防げる」こと(段落【0023】)
が記載されていることが認められる。上記記載によれば,甲1記載のコン
クリートブロック又はコンクリート壁は,コンクリートブロック又はコン
クリート壁がアスファルト又はコンクリートに接する部分に内方向に下り
勾配の棚を付ける構成とし,アスファルト又はコンクリートが棚面を覆う
ことにより,クラッシャランからの直接の雑草が生えることを防止し,さ
らに,その棚に排水孔を設けることにより,水はブロックの背面を伝わら
ず,ブロックの前方へ流出するので,クラッシャランに水が入り込むこと
がなく,背面側のアスファルト若しくはコンクリート又はクラッシャラン
の沈下又はひび割れを防げる効果を奏することを理解することができる。
このように甲1には,コンクリートブロック又はコンクリート壁がアス
ファルト又はコンクリートに接する部分に内方向に下り勾配の棚を付ける
構成とし,アスファルト又はコンクリートが棚面を覆い,さらには,その
棚に排水孔を設けることにより,クラッシャランからの直接の雑草が生え
ることやクラッシャランの沈下を防止する発明を開示するものであり,そ
の技術的意義は,コンクリートブロック又はコンクリート壁とアスファル
ト又はコンクリートとの接合面に隙間を発生させないようにし,さらには,
排水孔を設けることで,クラッシャランに水が流れ込まないようにするこ
とにより,クラッシャランからの直接の雑草が生えることやクラッシャラ
ンの沈下を防止することにあるものと理解することができる。
他方で,前記1(3)のとおり,甲1には,図3におけるコンクリートブロ

ックの左側面の切り欠き棚について言及した記載はなく,その構成の技術
的意義についての明示的な記載もない。
また,甲1の記載事項(図面を含む。)を全体としてみても,コンクリ
ートブロック又はコンクリート壁がアスファルト又はコンクリートに接す
る部分に内方向に下り勾配の棚を付ける構成は,このような棚を設けても
コンクリートブロック又はコンクリート壁とアスファルト又はコンクリー
トとの接合面に隙間が発生することを想定して,所定角度の下向き傾斜面
を利用して,植物の屈地性及び屈光性の特性を阻害することにより雑草の
成長を阻止するものであることについての記載や示唆はない。
さらに,本件訂正明細書には,甲1を従来技術として挙げて,単純な切
り欠き棚による防草では,雑草の屈光性及び屈地性を阻害するまでの角度
がなく,望むような防草効果は期待できない旨の記載(段落【0008】,
【0012】)がある。
以上を総合すると,植物の屈地性及び屈光性により,植物の茎・葉は上
方へ成長するが,下方へ成長せず,根は下方へ成長するが,上方へ成長し
ない性質を有することは,一般に知られていたことを勘案しても,甲1か
ら,甲1の図3におけるコンクリートブロックの左側面の切り欠き棚の上
面(棚面)が,植物の屈地性及び屈光性の特性を阻害することにより雑草
の成長を阻止する「防草機能」を有することが開示されているとまで認め
ることはできない。
したがって,本件審決認定の甲1発明の「連接傾斜面」は,本件訂正発
明1の「略V字形の防草傾斜面」にいう「防草傾斜面」に相当するものと
は認められないから,甲1発明の「連接傾斜面」は,実質的に本件訂正発
明1の「略V字形の防草傾斜面」の構成に相当するとして,相違点(ア)は
実質的な相違点であるとは認められないとした本件審決の判断は誤りであ
る。

ウ 被告の主張について
被告は,①植物の屈光性及び屈地性による性質は学術上周知であるから,
甲1の段落【0022】記載の作用効果は,切り欠き棚の上面(棚面)が
コンクリートブロックの内方向に下り勾配とする構造による雑草の根の屈
地性及び雑草の芽の屈光性を阻害する防草効果にほかならず,甲1の図3
の左下方の切り欠き棚の上面(棚面)は,コンクリートブロックの内方向
に下り勾配の傾斜面の構造となっているから,上記構造による雑草の根の
屈地性及び雑草の芽の屈光性を阻害する防草効果を奏する,②本件訂正明
細書には,本件訂正発明1の「防草傾斜面」に関し,その開く向きや傾斜
面の角度に応じて,植物の屈光性及び屈地性の阻害に起因して,どの程度
に植物の茎や葉あるいは根の成長が阻害されて植物の成長が阻止されるの
かについて,一切開示されていないから,上記下り勾配の傾斜面の構造を
有する図3の左下方の切り欠き棚の上面(棚面)は,本件訂正発明1の「防
草傾斜面」に該当するなどと主張する。
しかしながら,前記イ認定のとおり,甲1の段落【0022】の記載は,
コンクリートブロック又はコンクリート壁がアスファルト又はコンクリー
トに接する部分に内方向に下り勾配の棚を付ける構成とし,アスファルト
又はコンクリートが棚面を覆うことにより,コンクリートブロック又はコ
ンクリート壁とアスファルト又はコンクリートとの接合面に隙間を発生さ
せないようにすることで,クラッシャランからの直接の雑草が生えること
を防止する効果を奏することを開示したものであって,このような棚を設
けてもコンクリートブロック又はコンクリート壁とアスファルト又はコン
クリートとの接合面に隙間が発生することを想定して,所定角度の下向き
傾斜面を利用して,植物の屈地性及び屈光性の特性を阻害することにより
雑草の成長を阻止することができることを開示したものとはいえない。
また,本件訂正発明1の特許請求の範囲(本件訂正後の請求項1)の記

載及び本件訂正明細書に,本件訂正発明1の「防草傾斜面」の開く向きや
傾斜面の角度に応じて,植物の屈光性及び屈地性の阻害に起因して,どの
程度に植物の茎や葉あるいは根の成長が阻害されて植物の成長が阻止され
るのかについての具体的な開示がないからといって,当然には,甲1の図
3におけるコンクリートブロックの左側面の切り欠き棚の上面(棚面)が,
植物の屈地性及び屈光性の特性を阻害することにより雑草の成長を阻止す
る「防草機能」を有することが開示されているという論理的帰結になるも
のではない。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。
(2) まとめ
以上のとおり,本件審決には,本件訂正発明1と甲1発明の相違点(ア)は
実質的な相違点であるとはいえないとした判断の誤りがあり,その結果,相
違点(ア)に係る本件訂正発明1の構成の容易想到性についての判断がされて
いない。また,本件訂正後の請求項1(本件訂正発明1)を引用する本件訂
正発明2(本件訂正後の請求項2)についても,同様の判断の誤りがある。
この判断の誤りは,本件審決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。
したがって,相違点(イ)について判断するまでもなく,原告訴訟引受人主
張の取消事由2は理由がある。
3 結論
以上のとおり,原告訴訟引受人主張の取消事由1は理由がないが,取消事由
2は理由があるから,本件審決は取消しを免れない。
よって,原告訴訟引受人の請求を認容することとし,主文のとおり判決する。
なお,付言するに,本件審決は,審決の主文に相当する「結論」において,
「請求のとおり訂正を認める。特許第3900500号の請求項に記載された
発明についての特許を無効とする。 と記載したが
」 (別紙審決書(写し)参照),
無効審判請求は,請求項ごとに請求することができること(特許法123条1

項柱書後段),本件の無効審判請求は,本件特許の請求項1ないし5のうち,
請求項1及び2に係る発明についての特許のみを無効にすることを請求するも
のであることに鑑みると,請求項の番号を特定しない本件審決の上記「結論」
の記載は不適切であるといわざるを得ない。

知的財産高等裁判所第3部

裁判長裁判官 大 鷹 一 郎


裁判官 田 中 正 哉


裁判官 神 谷 厚 毅


(別紙)
明 細 書 図 面


【図1-1-2】


(別紙)
甲 1 図 面


(別紙)
甲 2 図 面


【図45】

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