平成27(ネ)10120損害賠償等請求控訴事件
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裁判所 |
控訴棄却 知的財産高等裁判所 大阪地方裁判所
|
裁判年月日 |
平成28年6月15日 |
事件種別 |
民事 |
当事者 |
控訴人TOWA株式会社森本純 被控訴人アサヒ・エンジニアリング株式会社磯田直也
|
法令 |
特許権
特許法102条2項1回
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キーワード |
実施5回 特許権4回 侵害1回 損害賠償1回
|
主文 |
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。 |
事件の概要 |
1 事案の要旨
(1) 本件請求の要旨
本件は,控訴人が,被控訴人に対し,被控訴人が製造,販売等をする被控訴人製
品が,控訴人の有する①本件特許権1(特許第2932136号「電子部品の樹脂
封止成形方法及び装置」,平成25年7月22日存続期間満了)及び本件特許権2
(特許第2932137号「電子部品の樹脂封止成形方法及び装置」,平成25年
7月22日存続期間満了)を侵害するとして,不法行為に基づいて,平成23年2
月28日から平成25年7月22日までの間に控訴人に生じた損害金22億260
0万円(特許法102条2項適用)の一部である1億円の支払と,②本件特許権1
及び本件特許権2の実施料相当額の不当利得の返還請求権に基づいて,平成16年
2月28日から平成23年2月27日までの間に被控訴人に生じた利得金10億7
800万円の一部である4200万円の返還と,③上記①②の合計である1億42
00万円に対する,不法行為後の日で,本件訴状送達により催告のされた日の翌日
である平成26年3月8日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損
害金の支払をそれぞれ求める事案である。 |
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判決文
平成28年6月15日判決言渡
平成27年(ネ)第10120号 損害賠償等請求控訴事件
(原審 大阪地方裁判所平成26年(ワ)第1860号)
口頭弁論終結日 平成28年4月13日
判 決
控訴人(一審原告) T O W A 株 式 会 社
訴訟代理人弁護士 小 松 陽 一 郎
森 本 純
中 原 明 子
訴訟復代理人弁護士 原 悠 介
被控訴人(一審被告) アサヒ・エンジニアリング株式会社
訴訟代理人弁護士 深 井 俊 至
磯 田 直 也
主 文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事 実 及び 理 由
用語の略称及び略称の意味は,本判決で付するもののほか,原判決に従い,原判決で付され
た略称に「原告」とあるのを「控訴人」に,
「被告」とあるのを「被控訴人」と,適宜読み替え
る。
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は,控訴人に対し,1億4200万円及びこれに対する平成26年
3月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。
4 仮執行宣言。
第2 事案の概要
1 事案の要旨
(1) 本件請求の要旨
本件は,控訴人が,被控訴人に対し,被控訴人が製造,販売等をする被控訴人製
品が,控訴人の有する①本件特許権1(特許第2932136号「電子部品の樹脂
封止成形方法及び装置」,平成25年7月22日存続期間満了)及び本件特許権2
(特許第2932137号「電子部品の樹脂封止成形方法及び装置」,平成25年
7月22日存続期間満了)を侵害するとして,不法行為に基づいて,平成23年2
月28日から平成25年7月22日までの間に控訴人に生じた損害金22億260
0万円(特許法102条2項適用)の一部である1億円の支払と,②本件特許権1
及び本件特許権2の実施料相当額の不当利得の返還請求権に基づいて,平成16年
2月28日から平成23年2月27日までの間に被控訴人に生じた利得金10億7
800万円の一部である4200万円の返還と,③上記①②の合計である1億42
00万円に対する,不法行為後の日で,本件訴状送達により催告のされた日の翌日
である平成26年3月8日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損
害金の支払をそれぞれ求める事案である。
本件の請求原因事実に係る特許請求の範囲(分説後)は,次のとおりである。
① 本件発明1(本件特許1の請求項3)
【A-1】固定型と可動型とを対向配置した金型と,該金型に配設した樹脂材料供
給用のポットと, 該ポットに嵌装した樹脂加圧用のプランジャと,上記金型の型
面に配設したキャビティと,該キャビティと上記ポットとの間に配設した樹脂通
路とを有するモールディングユニットと,
【A-2】上記モールディングユニットに電子部品を装着した樹脂封止前リードフ
レーム及び樹脂タブレットを供給する手段と,
【A-3】樹脂封止された電子部品を上記モールディングユニットから外部へ取り
出す手段とを備えた電子部品の樹脂封止成形装置であって,
【B】既に備えられた上記モールディングユニットに対して他のモールディングユ
ニットを着脱自在の状態で装設可能とし,これによって該モールディングユニッ
トの数を増減調整自在に構成したことを特徴とする
【C】電子部品の樹脂封止成形装置。
② 本件発明2(本件特許2の請求項3)
【D-1】固定型と可動型とを対向配置した金型と,該金型に配設した樹脂材料供
給用のポットと,該ポットに嵌装した樹脂加圧用のプランジャと,上記金型の型
面に配設したキャビティと,該キャビティと上記ポットとの間に配設した樹脂通
路とを有するモールディングユニットと,
【D-2】上記モールディングユニットに電子部品を装着した樹脂封止前リードフ
レーム及び樹脂タブレットを供給する手段と,
【D-3】樹脂封止された電子部品を上記モールディングユニットから外部へ取り
出す手段とを備えた電子部品の樹脂封止成形装置であって,
【E】既に備えられた上記モールディングユニットに対して相互に異なる種類の他
の電子部品の樹脂封止成形用モールディングユニットを着脱自在の状態で装設可
能とし,これによって,相互に異なる少なくとも二種類以上の電子部品の樹脂封
止成形用モールディングユニットを構成したことを特徴とする
【F】電子部品の樹脂封止成形装置。
(2) 原審の判断
原判決は,被控訴人製品のうち,主として審理の対象とされたハ―3号製品(ハ
号製品のうち,6枚取りとなっているもの)は,構成要件B,E(特に「着脱自在
の状態で装設可能」の点)を充足せず,他の被控訴人製品もハ―3号製品と異なる
構造ではないと認められるから,結局,被控訴人製品は,すべて構成要件B,Eを
充足しないとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。
2 前提となる事実
本件の前提となる事実は,原判決の「事実及び理由」欄の第2(事案の概要等)
の「2 前提事実等」に記載のとおりである。
3 争点
本件の争点は,原判決の「事実及び理由」欄の第2(事案の概要等)の「3 争
点」に記載のとおりである。
第3 当事者の主張
当事者の主張は,下記のとおり,当審において追加提出されたハ―3号製品説明
書(乙14)に基づく当事者の補充主張を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」
欄の第3(争点に関する当事者の主張)に記載のとおりである。
(当事者の補充主張)
1 控訴人
(1) ガイドレールその他搬送レール機構について
長尺製品を用いると価格や輸送コストも高く製作に時間がかかることなどから,
当業界においても短尺機械を連結することが基本となっており,被控訴人も,自社
で用いられている工作機械の加工範囲が幅●●●cm までであることを認めている。
そうであれば,●●●●●●についても幅●●●cm 以下の長さのものしか製作する
ことができず,被控訴人製品の●●●●●●は,●●●●●●●●●●●●●され
ているはずであり,モールディングユニットの増減設に当たって,その取外し又は
取付けに何らの支障が生じるものではない。その余の●●●●●●●に係る部品も
同じである。
(2) 電源配線について
長尺の配線では交換の必要が生じた場合に装置停止時間が長期化することなどか
ら,当業界においては,短尺の配線を接続させて用いることが一般的となっている。
そして,被控訴人製品の●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●(乙14の写
真4,5)。そうであれば,被控訴人製品は,当初からモールディングユニットの増
減設を予定しているといえる。
(3) 圧縮エアチューブについて
当業界において,●●●●●●●●を継ぎ足すことは一般的な配管方法であると
ころ,被控訴人製品の●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●そうすると,被
控訴人製品は,モールディングユニットの増減設に伴い,●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●させることが予定されているといえる。
(4) 信号線について
被控訴人製品においては,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●モールディングユニットの増減時にこれらの配線を取り外したり,変更し
たりするのは極めて容易に行うことができる。そうすると,被控訴人製品は,モー
ルディングユニットの増減設が容易な構造となっている。
2 被控訴人
(1) ガイドレールその他搬送機構について
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●ことは認める。しかしながら,その部
分は,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●
(2) 電源配線について
●●●●●●●●●●●●●ことは認める。しかしながら,●●●の束の幅(直
径方向)より●●●にある程度の余裕がなければ,●●●に●●●を挿入してユニ
ット間に渡していくという作業が困難になる。●●●●●●●●●●●●●からと
いって,●●●●●●●●●●●●●●●●●●が設けられているとはいえない。
(3) 圧縮エアチューブ
●●●●●●●●●●●●●●●●ことは認める。しかしながら,既にある装置
に●●●●があるからといって,他の箇所にも新たな●●●●を追加する構成であ
るとはいえない。
(4) 信号線について
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●こ
とは認め,その余は争う。
第4 当裁判所の判断
1 争点(1)(被控訴人製品の構成)について
争いのない事実,証拠(甲29,乙3,14)及び弁論の全趣旨によれば,①ハ
-3号製品の構成は,次のとおり補正するほかは,原判決別紙ハ-3号製品説明書
記載のとおりであること,②ハ-3号製品において,●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●,③
ハ-3号製品以外の被控訴人製品も,ハ-3号製品と同様の構成を含むもの(2枚
取りの被控訴人製品については,少なくとも,●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●と推認される。)と認められる。
(原判決別紙ハ-3号製品説明書の補正)
① 原判決47頁7行目の「配置」及び同17行目の「一体構造の」をいずれも
削る。
② 原判決49頁2行目の「当業者にとっての」から同11行目末尾までを削り,
同22行目の「全ユニット」を「ユニット間」に改める。
③ 原判決50頁1行目から2行目にかけての「全ユニット」を「ユニット間」
に改める。
2 争点(2)イ(被控訴人製品が本件発明1の構成要件B及び本件発明2の構成要
件Eを充足するか)について
(1) 本件明細書の記載
原判決22頁1行目から同26頁4行目までに記載のとおりである。ただし,本
件明細書1(甲2)の【図4】
(最小構成単位の樹脂封止成形装置に,他のモールデ
ィングユニットを複数単位追加して組み合わせた状態を示す概略平面図)及び【図
7】
(樹脂封止成形装置と他のモールディングユニットとの連結部及び各モールディ
ングユニット間の連結部を示す概略平面図)を加える。
2:リードフレーム整列ユニット
3:樹脂タブレット供給ユニット 4:樹脂タブレット搬出ユニット
5:モールディングユニット 6:ローダーユニット 7:アンローダーユニット
8:クリーナーユニット 9:樹脂封止済リードフレーム搬送ユニット
10:ディゲーティングユニット 11:ピックアップユニット
12:リードフレーム収容ユニット 13:コントローラーユニット
38:係合手段 39:ボトムベース
(2) 控訴人製品について
控訴人が本件発明1の実施品と主張する控訴人製品「オートモールディングシス
(
テムY1E2060」)については,原判決28頁4行目から同31頁7行目までに記載
のとおりである。ただし,原判決28頁13行目から同14行目にかけての「トル
クで締め付ける」の前に「十分な」を,同29頁8行目の「ゴムバンドのはめ込み」
の前に「ダクトの隙間への」を,同30頁5行目の「トルクで締め付けられている」
の前に「十分な」をそれぞれ加える。
(3) 特許請求の範囲の解釈について
ア 「着脱自在の状態で装設可能」の技術的意義
上記(1)の本件明細書の記載によれば,本件発明は,①従来の樹脂封止成形装置に
おいては,少量生産又は大量生産への対応を金型を選択することによって行われて
いたが,②大量生産用の大型金型については,加工精度を均一にすることの困難等
に伴う問題点があり,③異なる成形品を同時に成形することへの対応は,金型の交
換,金型のレイアウトの変更,複数金型の同時装着によって行われていたが,交換
作業や金型の設計製作が面倒であるなどの問題点があったことから,④最少構成単
位の樹脂封止成形装置に,同じ又は他の製品用のモールディングユニットを適宜追
加し,又は追加したモールディングユニットを適宜取り外す構成を採用することに
より,必要な生産量や製品種類に簡易に対応し得るようにしたものであると認めら
れる。
そして,本件発明1の構成要件Bは,
「既に備えられた上記モールディングユニッ
トに対して他のモールディングユニットを着脱自在の状態で装設可能とし」と規定
し,この「既に備えられた上記モールディングユニット」が,樹脂封止前リードフ
レーム及び樹脂タブレット供給手段(構成要件A-2)と樹脂封止電子部品取出手
段(構成要件A-3)を備えた樹脂封止成形装置の一部を構成していることは明ら
かであるから,「他のモールディングユニット」の装設は,このような樹脂封止成
形装置の一部である状態のモールディングユニットに対して着脱するものであって
も,その着脱が「自在」にされ得るものであると認められる。
このような,モールディングユニットの追加又は取外しによる生産の効率化とい
う本件発明の目的や,既設のモールディングユニットに対しても着脱を自在にする
という構成要件の内容に照らすと,本件発明1の構成要件Bの「着脱自在の状態で
装設可能」とは,①単に,複数のプレス設置ユニットを有するモジュール形式の半
導体樹脂封止装置というだけの場合と,②各モジュールが他のモジュールとの間で
物理的には着脱が可能であるもののその着脱が想定されていない構造である場合の,
いずれをも含むものではなく,③プレス設置ユニットを有するモジュールがその着
脱に適した構造を有している場合をいうものと解するのが相当である。
以上は,本件発明2の構成要件Eの「着脱自在の状態で装設可能」についても,
同様であると解される。
したがって,控訴人の主張の趣旨が,「着脱自在の状態で装設可能」とは,モー
ルディングユニットの着脱が金型の交換又は装置全体を交換することに比して容易
であれば足りるというものとすれば,上記のところからみて,その主張を採用する
ことはできない。
イ 着脱自在のための技術的手段
被控訴人は,「着脱自在」といえるためには,それぞれのモールディングユニッ
トが,その各接続部においては実施例に記載されたような係合手段を用いるのと同
様の容易さで着脱でき,かつ,着脱のために容易に移動することができ,また,そ
の容易さの程度は,生産現場における装置の使用者にとっても容易なものといえな
ければならないと主張する。
しかしながら,本件明細書(甲2,4)には,「着脱自在」の態様を具体的に限定
する記載はなく,実施例として,ベース部に設けられた凸部と凹部から構成される
係合手段を用いて位置決めをすること(本件明細書1【0015】【0035】【図
7】,本件明細書2【0014】【0034】【図7】)と,最少構成単位の組合
せからなる環状に構成された樹脂成形装置に,この各装置を移動することなく追加
のモールディングユニットを脇から順次継ぎ足していき,最少構成単位の構成部材
を兼用するという装置の配置方法(本件明細書1【0031】~【0034】,本
件明細書2【0030】~【0033】)が例示されているだけと認められる。
したがって,着脱自在のための技術的手段が,特定の技術的手段に限定されてい
るとはいえない。そして,このように解しても,一般に,機械分野においては,部
品同士又はユニット同士を着脱自在とする構成について従来から様々な手段が知ら
れているから,当業者であれば,技術常識として従来から知られている手段を採用
することで,モールディングユニットと他のモールディングユニットとを着脱自在
に装設できるものと認められる。また,本件発明は,モールディングユニットの増
減設を行った場合に,追加されたモールディングユニットが装置として一体となっ
て樹脂封止成形を行うことを当然の前提としているから,着脱の内容としては,追
加されたモールディングユニットと既存のモールディングユニットとのフレームを
物理的に連結又は分離することのみならず,両モールディングユニットにおいて,
搬送レール機構,電気設備,配管等の接続,調整作業が必要となる場合を含むこと
は自明であり,そうであれば,それらの増減設作業のために相応の時間と労力を要
することは想定されていると解される。さらに,このことに加えて,本件明細書に
は,「着脱自在」に関して,「簡易に増減調整することができる」「簡易迅速に即
応できる」(本件明細書1【0014】【0042】,本件明細書2【0013】
【0043】)との記載があるのみであるから,モールディングユニットの増減設
は生産現場で行うものではあるが(当事者間に争いがない。),それが,装置のユ
ーザー側によって行われるものであるか,装置のメーカー側によって行われるもの
であるかを問わないと解される。したがって,上記各記載から,モールディングユ
ニットの増減設が装置のユーザー側のみで行われ,常に使用者にとって容易なもの
である必要はないと認められる。
そうすると,被控訴人の上記主張は,採用することはできない。
ウ 小括
以上のとおりであるから,構成要件B,Eの「着脱自在の状態で装設可能」に該
当するかどうかは,実施例の態様に拘束されることなく,技術常識に従い,モール
ディングユニットが着脱に適した構造となっているか否かによって決せられるもの
といえる。
以下,この前提に従って,ハ-3号製品のプレス設置ユニットが,構成要件B,
Eを充足するか否かを検討する。
(4) 構成要件の充足について
ア 認定事実
ハ-3号製品の構成は,前記1に認定のとおりであり,●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
は明らかである(これらは,●●●●●●●●●●●●と併せて,全体として,本
件発明の「最少構成単位の組合せ」を構成するものと解される。)。
したがって,●●●●●●●●●●●が着脱に適した構造であるか否かが問題と
なるところ,争いのない事実,証拠(乙3,14〔同各号証の内容を信用できない
とする根拠は,本件証拠上見当たらない。〕)及び弁論の全趣旨に基づいて,ハ-
3号製品の更なる詳細な構成を検討してみると,次のとおりである。
① ユニットの移動
ハ-3号製品は,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●
② 保持機構
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●
③ 搬送レール機構
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④ 電気配線
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⑤ 圧縮エアチューブ
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⑥ 油圧ホース
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⑦ バキュームダクトホース
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●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
⑧ 信号線
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●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●
イ 検討
上記認定によると,ハ-3号製品において,●●●●●●●●●●●を取り外す
こと又はプレス設置ユニットを追加することは,技術的に不可能ではなく,また,
その取外し又は追加の費用は,経済的に過分とまではいえないと推認される。しか
しながら,前記(1)に判断したとおり,「着脱自在の状態で装設可能」とは,モール
ディングユニットが着脱に適した構造となっている場合をいうものであるところ,
仮に,ハ-3号製品においてモールディングユニットを着脱するとした場合,●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●さらに,各種
部材,配線,配管を人が装置の中に入って取外し,調整,取替え等をしなければな
らないのであり,ハ-3号製品が,いったん設置された後にモールディングユニッ
トを増減設することを想定している構造とはいい得ない。実際にも,被控訴人が,
装置設置後にモールディングユニットの増設を行ったことを認めるに足りる証拠は
ない。ハ-3号製品において,プレス設置ユニットの増減設が技術的に不可能では
なく,また,過分な費用を要さないとしても,それは,プレス設置ユニットがユニ
ットとして構成されて製造されていること自体により生じる効果であって,特定の
着脱に適した構成により生じる効果ではない。したがって,控訴人が主張するとこ
ろの,ハ-3号製品におけるモールディングユニットの増設時間と控訴人製品にお
けるそれとの差があまりないとの点も,本件の結論を直ちに左右するものではない。
そうすると,ハ-3号製品は,モールディングユニットが着脱に適した構造とな
っているとはいえず,構成要件B,Eの「着脱自在の状態で装設可能」の要件を充
足しないと認められる。
そして,前記1のとおり,ハ-3号製品以外の被控訴人製品も,ハ-3号製品と
同様の構成を含むものであるから,同様に,本件発明の構成要件B,Eの「着脱自
在の状態で装設可能」の要件を充足しないと認められる。
したがって,被控訴人製品は,本件発明の技術的範囲に属しない。
(5) 控訴人の主張に対して
ア 中継継手に関して
控訴人は,●●●●を設置しこれに追加の部材を接続すれば,ハ-3号製品にモ
ールディングユニットを増設することは容易であると主張する。
しかしながら,●●●●のような着脱に適した部材を新たに設ければ,その装置
が着脱に適した構造になることは当然であるところ,ハ-3号製品は,●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
を除いてそのような●●●●を有しているとは認められないし,そのような●●●
●を設置し得るからといって,その設置前から着脱に適した構造を有するといえる
わけではない。ハ-3号製品は,●●●●●●●などに見られるように,主として,
供給部からのユニットへの直結という当業者であればまず選択する最も簡単な接続
形態を有しているにすぎないのである。このような,●●●●●●●●●●ことに
なる構造は,着脱に適した構造とはいい得ない。
控訴人の上記主張は,採用することができない。
イ 広報資料に関して
控訴人は,被控訴人が,広報資料等にて被控訴人製品が増減設可能な構成である
と宣伝していたと主張するが,その主張を採用することができないのは,原判決3
3頁3行目から同16行目までに記載のとおりである。ただし,同12行目から同
13行目にかけての「それが電子部品の樹脂封止成形を行う生産現場でなされるも
のであるのか,」を「それが既設の樹脂封止成形装置に対してされるものであるの
か,」に改める。
ウ コンピュータプログラムに関して
控訴人は,被控訴人製品を●●●●●●●●●は,モールディングユニットの増
減設に容易に対応できるような汎用性のあるものと主張する。
しかしながら,モールディングユニットの増減設に対して,特定のモールディン
グユニットの数に応じた専用●●●●●●●●●●●●●によって対応するか,汎
用●●●●●をそのモールディングユニットの数に応じた設定に変更することによ
って対応するかは,本件発明においては,当業者において適宜になすべきことであ
って,そのいずれであるかは本件の結論を全く左右しない。
したがって,控訴人の主張は,被控訴人製品に関する●●●●●の内容にかかわ
らず,失当というべきである。
エ 被控訴人製品の構成に関して(当審主張)
(ア) ガイドレールその他の搬送レール機構について
控訴人は,被控訴人において●●●㎝までの部材しか加工できないのであれば,
●●●●●●●●●●●●●●●●●の部品は●●●●されていると主張する。
しかしながら,最大●●●cm までの部材しか加工できないのであれば,●●●cm
を超える部材が存しないことを推認できるだけであって,そのことから,直ちに,
●●●●●●●●●●●●●●●●●の部品がモールディングユニットの着脱に適
した長さに●●●●されることを推認することはできない。そうすると,上記主張
は,採用することができない。
(イ) 電源配線について
控訴人は,被控訴人の●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●が設けられている旨を主張する。
しかしながら,例えば,ハ-3号製品であれば,2枚,4枚,6枚,8枚取りま
での選択ができ(争いのない事実),しかも,被控訴人製品においては,●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●を持って製作されているは
ずである。
控訴人の上記主張は,被控訴人製品がモールディングユニットの着脱に適した構
造であるか否かとは直接には関連しない事項を主張するものであって,失当である。
(ウ) 圧縮エアチューブについて
控訴人は,被控訴人製品は,モールディングユニットの増減設に伴い,●●●●
を新たに設けることで●●●●●●●●の長さを調節させることが予定されている
と主張するが,その主張が採用できないことは,上記アにて判断したとおりである。
(エ) 信号線について
控訴人は,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●以上,被控訴人製
品は,モールディングユニットの増減設が容易な構造となっていると主張するが,
その主張が採用できないことは,上記アにて判断したとおりである(なお,●●●
●●●●●●●●●●ような構成でも,モールディングユニットの増減設が容易な
ことは明らかである。。
)
(6) まとめ
以上の次第であるから,被控訴人製品は,本件発明に技術的範囲に属さない。
したがって,その余の点の判断するまでもなく,控訴人の請求は,いずれも理由
がない。
第5 結論
よって,控訴人の請求をいずれも棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由
がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官
清 水 節
裁判官
中 村 恭
裁判官
森 岡 礼 子
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