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平成27(ワ)2617競争行為差止等請求事件

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裁判所 請求棄却 東京地方裁判所
裁判年月日 平成28年11月11日
事件種別 民事
当事者 被告有限会社プロスタイル 乙
原告
法令 その他
民法709条3回
キーワード 差止10回
損害賠償4回
侵害1回
主文 1 被告会社は,ウェブサイトを利用しての婦人用中古衣類の売買を目的とする事業のうち,別紙事業目録記載の事業を営んではならない。
2 原告の被告会社に対するその余の請求及び被告乙に対する請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は,原告と被告会社との間では,これを2分し,その1を原告の負担とし,その余は被告会社の負担とし,原告と被告乙との間では原告の負担とする。
事件の概要 1 本件は,原告が,ウェブサイトを利用した婦人用中古衣類の売買を目的とす る事業につき,被告会社から当該事業の譲渡を受けたのに,被告会社は不正の 競争の目的をもって同一の事業を行い,もって原告に損害を与えたなどと主張 して,①被告会社に対し,会社法21条3項に基づき,上記事業の差止めを求 め,②被告会社及びその代表者である被告乙に対し,被告会社については民法 709条に基づき,被告乙については会社法429条及び民法709条に基づ き,損害賠償として801万0972円及びこれに対する不法行為の後の日で ある被告会社については平成27年2月26日,被告乙については同月22日 (いずれも訴状送達の日の翌日)から各支払済みまで商事法定利率年6分の割 合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

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判決文

平成28年11月11日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成27年(ワ)第2617号 競業行為差止等請求事件
口頭弁論終結日 平成28年9月16日
判 決
原 告 甲
同訴訟代理人弁護士 柿 沼 太 一
同 杉 浦 健 二
被 告 有限会社プロスタイル
(以下「被告会社」という。)
被 告 乙
(以下「被告乙」という。)
上記両名訴訟代理人弁護士 藤 井 愛 彦
主 文
1 被告会社は,ウェブサイトを利用しての婦人用中古衣類の売買を目的と
する事業のうち,別紙事業目録記載の事業を営んではならない。
2 原告の被告会社に対するその余の請求及び被告乙に対する請求をいずれ
も棄却する。
3 訴訟費用は,原告と被告会社との間では,これを2分し,その1を原告
の負担とし,その余は被告会社の負担とし,原告と被告乙との間では原告
の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
1 被告会社は,ウェブサイトを利用しての婦人用中古衣類の売買を目的とする
事業を営んではならない。
2 被告らは,原告に対し,連帯して801万0972円及びこれに対する被告
会社については平成27年2月26日から,被告乙については同月22日から

各支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
3 仮執行宣言
第2 事案の概要
1 本件は,原告が,ウェブサイトを利用した婦人用中古衣類の売買を目的とす
る事業につき,被告会社から当該事業の譲渡を受けたのに,被告会社は不正の
競争の目的をもって同一の事業を行い,もって原告に損害を与えたなどと主張
して,①被告会社に対し,会社法21条3項に基づき,上記事業の差止めを求
め,②被告会社及びその代表者である被告乙に対し,被告会社については民法
709条に基づき,被告乙については会社法429条及び民法709条に基づ
き,損害賠償として801万0972円及びこれに対する不法行為の後の日で
ある被告会社については平成27年2月26日,被告乙については同月22日
(いずれも訴状送達の日の翌日)から各支払済みまで商事法定利率年6分の割
合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
2 前提事実(当事者間に争いのない事実又は文中掲記した証拠及び弁論の全趣
旨により容易に認定できる事実)
(1) 当事者
ア 原告は,現在「FairyAngel」との営業表示を用いて婦人用
中古衣類の売買を目的とする事業を営んでいる者である。
イ 被告会社は,衣類品及びそれに付帯する雑貨類の製造,販売,店舗運
営等を主たる目的とする有限会社である。
被告乙は,被告会社の代表取締役である。
(2) 原告及び被告会社の取り扱う婦人用衣類の分野
原告及び被告会社が取り扱う婦人用衣類は,「ゴシック・ロリータファッ
ション」(以下単に「ロリータファッション」という。)及び「ガーリーフ
ァッション」といわれる分野である。
「ロリータファッション」とは,フリルやリボンを多用したり,パニエで

スカートを膨らませたりするファッションの総称である。
他方,「ガーリーファッション」とは,一般の若い女性向けの服との印象
を有するファッションの総称であり,衣料品の形状,外観等において,一応
ロリータファッションとは区別されている。(弁論の全趣旨)
(3) 譲渡対象とされたインターネット上のサイト
被告会社は,平成26年5月当時,婦人用中古衣類の買取り及び販売サイ
トである「FairyAngel」(http://(URLは省略)〔日本語表
記のもの〕及びhttp://(URLは省略)〔英語表記のもの〕。以下,併せ
て「本件サイト」という。)を運営していた。
本件サイトでは,ロリータファッションの中古衣類の売買を主としつつ,
ガーリーファッションの中古衣類の売買も行っていた。(甲28,29)
(4) 原被告間の本件サイトの譲渡契約
被告会社は,平成26年5月29日,原告との間で,原告に本件サイトに
関する譲渡を行う旨の契約(以下「本件譲渡契約」という。なお,何が譲渡
の対象であったかについては,後記のとおり当事者間に争いがある。)を締
結した。
本件譲渡契約に係る「資産等の譲渡に関する契約書」と題する書面(甲4。
以下「本件譲渡契約書」という。)には,譲渡対象として,本件サイトを構
成する電子ファイル,ドメイン名,在庫商品,買取マニュアル及び査定マニ
ュアルが記載されていたほか,被告会社が原告に対して各種契約の契約上の
地位を承継させることが記載され,さらに,古物商営業に関わる業務・管理
方法,査定の手順,買取商品の管理及び保存方法,顧客管理に関する方法そ
の他のノウハウ等を引継ぎの対象とすることが記載されており,本件譲渡契
約の代金は723万6000円と定められていた。
原告は,被告会社に対し,本件譲渡契約に基づいて上記代金を支払い,同
年7月7日から本件サイトによる事業を開始した。(弁論の全趣旨)

(5) 被告サイト
被告会社は,本件譲渡契約後,新たに婦人用中古衣類の買取り及び販売サ
イトである「Girly cute」(http://(URLは省略)。以下
「被告サイト」という。)を運営している。
3 争点
(1) 被告会社に対する競業行為差止請求につき
ア 本件譲渡契約は「事業」の譲渡契約か
イ 被告会社は本件譲渡契約の対象とされた事業と「同一の事業」を行っ
ているか
ウ 被告会社は「不正の競争の目的」を有しているか
エ 競業避止義務を負わないとの黙示の合意があったか
(2) 被告らに対する損害賠償請求につき
ア 被告らの責任の有無
イ 損害発生の有無及びその額
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点(1)ア(本件譲渡契約は「事業」の譲渡契約か)について
〔原告の主張〕
本件譲渡契約における譲渡対象は,権利関係,動産関係,契約関係及びノウ
ハウ関係であり,それらが一体となって「ウェブサイトを利用した婦人用中古
衣類の売買」という一定の事業目的のために組織化され,有機的一体として機
能する財産であるから,会社法21条3項にいう「事業」と評価されるべきも
のである。
〔被告会社の主張〕
本件譲渡契約は,本件サイトという資産の売買にすぎず,「事業」を譲渡す
るものではない。そもそも事業譲渡を行う場合,その契約書に「事業」を譲渡
する旨が明示されるのが通常であるが,本件譲渡契約書には「事業」を譲渡す

る旨の記載はなく,かえってその表題部には「資産等の譲渡に関する契約書」
と記載されている。
2 争点(1)イ(被告会社は本件譲渡契約の対象とされた事業と「同一の事業」
を行っているか)について
〔原告の主張〕
本件譲渡契約の対象とされた本件サイトの事業にはロリータファッション及
びガーリーファッションの中古衣類の売買が含まれるところ,被告サイトにお
ける被告会社の事業もロリータファッション及びガーリーファッションの中古
衣類の売買を含むものである。また,被告会社は,オークションサイトである
「ヤフーオークション」においても,ロリータファッションの中古衣類の販売
を行っている。
このように,被告会社は,本件譲渡契約による事業譲渡の後も,同契約の対
象とされた事業と「同一の事業」を行っている。
この点に関して被告会社は,①本件譲渡契約の対象はロリータファッション
に限定されており,ガーリーファッションは含まれていない,②被告サイトに
おける被告会社の事業はガーリーファッションに限定されており,ロリータフ
ァッションは含まれていない旨主張するが,いずれも事実に反する。
〔被告会社の主張〕
本件譲渡契約の対象はロリータファッションのみを取り扱うサイトであり,
他方で,被告サイトは専らガーリーファッションを取り扱うサイトであって,
両者の事業は同一ではない。なお,ヤフーオークションについては,販売促進
のために被告サイト上の商品を掲載しているにすぎない。
したがって,仮に本件譲渡契約が「事業」の譲渡契約に当たるとしても,被
告会社が本件譲渡契約の対象とされた事業と「同一の事業」を行っていること
にはならない。
3 争点(1)ウ(被告会社は「不正の競争の目的」を有しているか)について

〔原告の主張〕
被告会社は,被告サイトのドメイン名を本件譲渡契約締結の直前に取得した
上で,本件サイトと取扱商品等をほぼ同一とする被告サイトを開設し,その直
後からツイッター,ブログ等で宣伝を開始し,本件サイトと同一の事業を開始
したものであり,これにより,本件サイトと被告サイトとを誤認混同する顧客
が現れたり,本件サイトでの売上高が大きく落ち込んだりした。
したがって,被告会社は原告の事業上の顧客を奪おうとするなど,事業譲渡
の趣旨に反する目的で同一の事業をしていることが明らかであって,被告会社
には「不正の競争の目的」がある。
〔被告会社の主張〕
被告サイトの立上げの目的は,あくまでもガーリーファッションの売買サイ
トを運営するためであり,原告の顧客を奪うためではなかった。また,被告サ
イトでは一部でロリータファッションを取り扱っているものの,取扱いブラン
ド数及び取扱商品はいずれもわずかな割合でしかない。
このように,被告会社に「不正の競争の目的」などなかったことは明らかで
ある。
4 争点(1)エ(競業避止義務を負わないとの黙示の合意があったか)について
〔被告会社の主張〕
被告会社は,本件譲渡契約に当たり,ロリータファッションを取り扱うサイ
トに関する物品は引き渡すものの,ガーリーファッションを含むその他の物品
は譲渡対象ではないので引き渡さない旨を説明し,了承を得ていた。
したがって,原告は,被告サイトの立上げを黙認していたのであるから,被
告会社が競業避止義務を負わないとの黙示の合意があったというべきである。
〔原告の主張〕
否認する。被告会社の主張する説明や了承がされたという事実は存在せず,
当然,原告が被告サイトの立上げを黙認していたという事実もない。

5 争点(2)ア(被告らの責任の有無)について
〔原告の主張〕
被告会社の行為は会社法21条3項に違反する行為であるから,これにより
原告が被った損害につき,被告会社は民法709条に基づいて賠償する責任を
負う。
また,被告乙は,被告会社の代表者として競業行為を行っていたのであるか
ら,取締役としての任務懈怠について悪意があることは明らかであり,会社法
429条に基づく損害賠償責任を負う。さらに,被告乙は,違法な競業行為に
よって故意過失に基づき原告の営業権を侵害したことは明らかであり,民法7
09条に基づく損害賠償責任を負う。
〔被告会社の主張〕
否認ないし争う。
6 争点(2)イ(損害発生の有無及びその額)について
〔原告の主張〕
被告会社から示された資料によれば,平成25年3月から平成26年2月ま
での本件サイトの売上げに係る粗利は,月平均86万2605円であった。し
かるに,本件譲渡契約後の本件サイトの売上げは被告会社の競業行為により低
迷し,同年7月から12月までの粗利は月平均19万5024円にまで落ち込
んだ。
したがって,被告会社が被告サイトを運営したことにより原告が被った損害
は,少なくとも,上記の粗利減少額(月額66万7581円)の12か月分で
ある801万0972円を下回ることはない。
〔被告会社の主張〕
被告会社は,本件譲渡契約に当たり,過去の売上げと同様の売上げが必ず得
られる確約などしていないし,原告自身,その経営手腕によって売上げが左右
される可能性を十分承知の上で同契約を締結したものである。そして,原告は

サイト上での商品の陳列等に工夫をしているとはいい難いのであって,売上げ
が上がらない原因は原告にある。
したがって,本件サイトの売上げの減少と被告らの行為との間に因果関係は
ない。
第4 当裁判所の判断
1 争点(1)ア(本件譲渡契約は「事業」の譲渡契約か)について
(1) 会社法21条3項にいう「事業」とは,一定の営業目的のため組織化され,
有機的一体として機能する財産であり,得意先関係等の経済的価値のある事
実関係を含むものと解するのが相当である(最高裁昭和36年(オ)第13
78号同40年9月22日大法廷判決・民集19巻6号1600頁参照)。
(2) 当事者間に争いのない事実並びに証拠(甲4,23,乙21,被告乙本人)
及び弁論の全趣旨によれば,本件譲渡契約書(甲4)には,①譲渡対象とし
て,本件サイトを構成する電子ファイル,ドメイン名,在庫商品,買取マニ
ュアル及び査定マニュアルが記載されていたほか(2条),②被告会社が原
告に対して,本件サイトに係るサーバーの利用に関する一切の契約,ドメイ
ン名の登録・管理等に必要となる一切の契約,その他原告が指定する契約の
契約上の地位を承継することが記載され(3条),さらに,③古物商営業に
関わる業務・管理方法,査定の手順,買取商品の管理及び保存方法,顧客管
理に関する方法,買取商品の受取りから査定・振込・価格設定・在庫管理の
ための一連の平均的な手順,販売価格設定の方法,仕入先の情報,海外通販
の方法といった各種ノウハウを引継ぎの対象とすることが記載されていたも
のである(7条)こと,そして,現に,本件譲渡契約締結後,被告会社から
原告に対して,本件サイトを構成する電子ファイル及びドメイン名だけでな
く,在庫商品が譲渡されているほか(当事者間に争いがない。),本件譲渡
契約書に記載された各種ノウハウ等もマニュアルの形で送付され(甲23の
2,3),1か月間の研修期間が設けられた上(乙21),従前取引した顧

客のメールアドレスまで譲渡されている(被告乙本人〔本人調書44頁。以
下,同様に本人調書の該当頁を併記〕)ことが認められる。
(3) 以上の事実によれば,本件譲渡契約書において被告会社から原告に譲渡さ
れるものとされ,現に譲渡されたものは,単なる本件サイトを構成する電子
ファイル及びドメイン名にとどまらず,在庫商品,マニュアル,契約上の地
位,各種ノウハウから顧客の連絡先まで幅広い範囲に及んでいるのであるか
ら,これらは,それぞれが別個に単体としてのみ利用されるべきものではな
く,むしろ,その性質上,本件サイトを用いた婦人用中古衣類の売買という
一定の営業目的のため組織化され,有機的一体として機能する財産であった
というべきである。
したがって,本件譲渡契約は,会社法21条3項にいう「事業」を譲渡す
るものであったと認めるのが相当である。
(4) 被告会社の主張に対する判断
この点に関して被告会社は,本件譲渡契約書には「事業」を譲渡する旨の
記載はなく,かえって表題部に「資産等の譲渡に関する契約」と記載されて
いるから,本件譲渡契約は本件サイトという資産の売買にすぎず,「事業」
を譲渡するものではないなどと主張する。
しかし,被告会社の主張にいう「本件サイトという資産の売買」が具体的
に何を指すのかは必ずしも明確ではない上,仮にこれを本件サイトを構成す
る電子ファイル及びドメイン名の譲渡のみを意味するものであるとしても,
上記(2)のとおり,本件譲渡契約書において譲渡の対象とされ,現に譲渡さ
れたものは,在庫商品から契約上の地位,各種ノウハウ,顧客連絡先まで幅
広い範囲に及んでいたものであって,被告会社の上記主張と相容れない。
むしろ,証拠(甲9,19,被告乙本人)によれば,被告会社は,本件譲
渡契約に先立ち,インターネット事業の売却・取得の仲介をするウェブサイ
ト「サイトM&A」において,本件サイトに関する売却情報を掲載している

ところ,そこでは本件サイトの売却希望価格及びアクセス数のみならず,月
間売上げ,売上原価,販促費等,人件費,サーバー費,その他費用及び営業
利益などといった,事業の承継に必要と思われる各種の数値を開示している
ばかりか(甲19),被告会社は,本件譲渡契約に際し,上記の売上げ等の
数値を月ごと及び細目ごとに詳細に記載した売上実績表(甲9)を作成し,
これを原告に開示していること(被告乙本人〔8頁〕)が認められる。これ
らの被告会社の行為自体,単に本件サイトを構成する電子ファイル等の譲渡
にとどまるのではなく,本件サイトを用いた事業そのものを譲渡したとの原
告主張に沿うものである。
加えて,被告会社の代表者である被告乙も,本人尋問において,本件譲渡
契約により「売上げとか利益を生み出す『事業』を売却した」との認識だっ
たのではないかと問われ,これを認めている(被告 乙本人〔18,19
頁〕)。
そして,「資産等の譲渡に関する契約」という本件譲渡契約書の表題部の
記載についてみても,「資産等」の譲渡との記載が直ちに「事業」の譲渡を
排斥するものでないことは,上記(2)に摘示した同契約書本文の記載からも,
また表題部における「等」という表現からも明らかというべきである。
以上の点に加え,本件譲渡契約で定められた代金額が723万6000円
にも及ぶことを併せて考慮すると,被告会社の上記主張はおよそ採用するこ
とができない。
(5) したがって,争点(1)アにおける原告の主張は,理由がある。
2 争点(1)イ(被告会社は本件譲渡契約の対象とされた事業と「同一の事業」
を行っているか)について
原告の主張は,概要,①本件譲渡契約の対象は,ロリータファッション及び
ガーリーファッションの双方を含む,②被告サイトにおける被告会社の事業は,
ロリータファッション及びガーリーファッションの双方を含む,③被告会社は

ヤフーオークションにおいてもロリータファッションの中古衣類の販売を行っ
ている,というものである。
これに対し,被告会社の主張は,概要,①本件譲渡契約の対象はロリータフ
ァッションに限定されており,ガーリーファッションは含まれていない,②被
告サイトにおける被告会社の事業はガーリーファッションに限定されており,
ロリータファッションは含まれていない,③ヤフーオークションについては,
販売促進のために被告サイト上の商品を掲載しているにすぎない,というもの
である。
そこで,以下,順に検討する。
(1) 本件譲渡契約の対象(上記①)
ア 上記のとおり,被告会社は,本件譲渡契約の対象はロリータファッシ
ョンに限定されており,ガーリーファッションは含まれていないと主張
する。
そして,具体的には,本件譲渡契約締結前の平成26年5月12日,
被告乙が原告に対し,「譲渡の対象はロリータファッションだけであり,
ガーリーファッションのブランドである『アクシーズファム』,『シャ
ーリーテンプル』及び『エミリーテンプルキュート』等は引渡資産に含
まれない」旨を説明し,原告の了承を得たなどと主張する(被告乙本人
〔14,15,24,30頁〕も同旨)。
イ しかし,被告会社の主張するような上記やり取りがあったことを端的
に裏付ける客観的証拠は存在しない。
そもそも,本件譲渡契約当時,本件サイトではロリータファッション
の中古衣類の売買を主としつつ,ガーリーファッションの中古衣類の売
買も行っていたものであるところ(前記第2,2(3)),証拠(甲4)に
よれば,本件譲渡契約書には,譲渡の対象となる事業につき,ロリータ
ファッションに限定するとか,ガーリーファッションを除外するなどと

いった記載は何ら存在しないことが認められる。
この点に関して被告乙は,本件譲渡契約書には上記のような明示的な
限定はないが,「譲渡日時点での中古在庫商品」という記載がある旨供
述する(被告乙本人〔19頁〕)。しかし,上記記載がなにゆえガーリ
ーファッションを除外した根拠となるのか,被告乙の供述の趣旨は必ず
しも明らかではないし,むしろ,「譲渡日時点での中古在庫商品」はガ
ーリーファッションの在庫も当然に含んでいるというのであって(同
〔19頁〕),被告乙の上記供述は当を得たものではない。
また,被告乙は,本件譲渡契約書の原案を作成したのは,被告会社で
はなく「サイトM&A」である旨供述する(被告乙本人〔19,20
頁〕)。
しかし,証拠(乙15,被告乙本人)及び弁論の全趣旨によれば,被告
会社は,「サイトM&A」の作成した契約書原案(乙15)をそのまま
採用せず,取引の実情に合わせて規定を適宜追加していたこと(被告乙
本人〔37頁〕)が認められるところ,仮に譲渡対象からガーリーファ
ッションを除外しようとする意思があったのであれば,被告会社におい
てその旨の規定を容易に追加することができたはずである(被告乙も,
この点を問われた際,「在庫という大きなひとくくりになっています」
などという極めて曖昧な供述に終始している。同〔37,38頁〕)。
ウ また,前記1(4)で認定したとおり,被告会社は本件譲渡契約に際して
売上実績表(甲9)を作成し,これを原告に開示しているが,証拠(甲
9,被告乙本人)によれば,この売上実績表においても,記載された売
上げ等の数値がロリータファッションに限定したものであるとか,ガー
リーファッションを除外したものであるなどといった記載は何ら存在し
ないし(被告乙本人〔8頁〕),被告乙も,上記の売上実績表はガーリ
ーファッションの売上げ等も含まれていることを認めた上,この点を原

告には説明していないし,ブランドごとの売上げがいくらかなどといっ
た説明もしていないことを自認している(被告乙本人〔13,14
頁〕)。
エ さらに,原告は,被告会社から本件譲渡契約締結に先立ち「買取ブラ
ンド一覧」などと記載された書面(甲20)を交付され,また同契約締
結後には在庫リスト(甲30)を交付されたと主張するところ,これら
の各書面には,ロリータファッションのブランド名だけでなく,複数の
ガーリーファッションのブランド名も記載されている(被告乙は,これ
ら各書面は交付しておらず,本件サイトないしその管理サイトから原告
自身が取得したものではないかなどと供述するが,その記載内容の正確
性自体を争うものではない。被告乙本人〔3ないし5頁〕)。
オ そして,本件サイトの記載をみても,本件サイトのうち英語表記のも
の(甲2)には,トップページに「Girlie Fashion(ガーリーファッショ
ン)」という記載が残されている。被告乙も,この記載については気付
いていたものの,そのままの形で原告に譲渡したと供述しているところ
である(被告乙本人〔25頁〕)。
カ 他方で,この点に関する被告乙の供述については,不自然な点がまま
見受けられるのであり,にわかに採用することは困難である。
すなわち,被告乙によれば,本件の譲渡時に本件サイトで取り扱って
いたブランド数は20個程度であったところ(被告乙本人〔31頁〕),
このうち譲渡対象から除外する旨説明したブランド数は,「アクシーズ
ファム」,「シャーリーテンプル」及び「エミリーテンプルキュート」
を含めて全部で5個もあったとする(同〔30頁〕)。しかるに,被告
乙によれば,譲渡対象から除外されるブランドの売上比率等について,
原告からは何の質問もなかったというのである(同〔35頁〕)。のみ
ならず,被告乙によれば,除外した5個のブランドのうち「シャーリー

テンプル」及び「エミリーテンプルキュート」の在庫は実際には原告に
譲渡しており,なおかつ,これらは本件譲渡契約の譲渡対象ではないに
もかかわらず「善意でお渡しした」というのである(同〔31,36
頁〕)。被告乙のこれら一連の供述自体,不自然であるとの印象を払拭
することができない。
キ なお,この点に関して被告会社は,①「サイトM&A」に掲載した
「案件概要」(甲3)には「ロリータファッションの古着ECサイト」,
「ゴシックロリータファッションの販売」などとのみ記載されており,
ガーリーファッションについての記載はない,②本件サイトから,ガー
リーファッションのブランドである「アクシーズファム」の記載を消し
た上で原告に譲渡したところ,原告から異議が出なかった,などとも主
張する。
しかし,上記①については,本件サイトで主として取り扱っていたの
はロリータファッションであるから,「ロリータファッションの古着E
Cサイト」などといった記載も特段不自然なものではないし,むしろ,
上記「案件概要」には本件サイトにおける事業の一部のみを切り離して
譲渡するなどといった記載は見当たらないのであって,このことはかえ
って被告会社の主張にそぐわない(なお,被告乙は,この点について問
われるも,「このようなもので購入する人が出てくるのかというのがま
ず懐疑的」などとして,供述を回避するような態度に終始している。被
告乙本人〔33頁〕)。
また,上記②についても,原告によれば,当時原告はロリータファッ
ション及びガーリーファッションについての詳細な知識がなく(原告本
人〔7,8頁〕),異議を述べなかったのも単に気付かなかったためと
いうのであって(同〔18頁〕),原告から異議が出なかったことをも
って,直ちに譲渡対象から「アクシーズファム」その他のガーリーファ

ッションを除外する旨合意していたものと認定することはできない。
かえって,被告乙自身も,結局は,原告に渡した在庫商品のうち1割
はガーリーファッションであったことを自認している(被告乙本人〔2
6頁〕)。また,被告会社自身も,結局は,原告に渡したブランド一覧
(甲23の3)の中にガーリーブランド(エミリーテンプルキュート)
が含まれていることを自認している(平成28年6月7日付け被告ら準
備書面8)。
ク 以上によれば,本件譲渡契約当時,本件サイトがロリータファッショ
ン及びガーリーファッション双方の売買を行うものであった以上,同契
約においてもその双方が譲渡対象に含まれていたものと認めるのが相当
である。
したがって,本件譲渡契約の対象からガーリーファッションが除外され
ていたとの被告会社の主張は,採用することができない。
(2) 被告サイトにおける被告会社の事業(上記②)
ア 証拠(甲5,6,7,10,15,16,24〔枝番省略〕)及び弁
論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(ア) 被告会社は,本件譲渡契約締結(平成26年5月29日)の直前で
ある同月14日,被告サイトのドメインを取得し(甲6),その後に被
告サイトを開設しているところ(弁論の全趣旨),被告サイトには,H
TMLファイルのタグに「ロリータからガーリーファッション古着中古
買取なら通販サイトのガーリーキュート」との記載がされ,また「ゴス
ロリ」及び「ロリータ」というバナーが設置されていた(甲5の1。な
お,現在はいずれも削除している。甲16参照)。そして,ロリータフ
ァッションの各ブランドのコーナーが独立して設置され(甲5の1〔1
枚目〕),被告サイトに係るブログでもロリータファッションのブラン
ドについての記事が掲載されていた(甲7)。本訴提起後の平成28年

1月の時点でも,被告サイトには,タグに「ロリータ・ガーリーファッ
ション古着中古買取なら通販サイトのガーリーキュート」との記載がさ
れていたところである(甲24参照)。
(イ) また,被告サイトに係るツイッターには,「ナチュラル・ガーリー
系からロリータブランドまで」の記載があるほか(甲7),ヤフーオー
クションのサイト上にある被告サイトへのリンクバナーにも「ガーリー
とロリータのスタイルショップ」との記載がある(甲15の1)。
そして,原告代理人が数え上げたところによると,本訴提起前の平成
27年1月12日時点において,被告サイトにおける取扱商品1328
点中,約80%に相当する1073点もの商品がロリータファッション
であった(甲10)。
イ 以上によれば,被告サイトにおける被告会社の事業は,ガーリーファッ
ションだけでなく,ロリータファッションをも含むものであったと認める
のが相当である。
ウ 被告らの主張に対する判断
この点に関して被告会社は,被告サイトは専らガーリーファッションを
取り扱うサイトであると主張する。
しかし,被告会社の主張によっても,本訴提起後の平成27年5月1
9日時点において,被告サイトにおいて取り扱ったブランド83個のう
ち9個,取扱商品1883点のうち97点がなおロリータファッション
であるというのであって,一部ではあるもののロリータファッションを
扱っていることを自認している(なお,被告会社は,上記数値について
書証等の裏付けを提出していない。)ばかりか,被告乙自身も,被告サ
イトにおけるロリータファッションの売買はかつて1割程度もあり(被
告乙本人〔2頁〕),仮に被告サイトにロリータファッションの買取り
の話があったら,拒むこともなく取引をしようと思っており(同〔40

頁〕),被告サイトでは初めからロリータファッションを扱うつもりで
あり(同〔41頁〕),検索サイトの検索に引っかかるように,被告サ
イトのタグに「ロリータ」と記載した(同〔42頁〕)などと供述して
いるのであって,最終的には,「原告に譲渡したのはロリータファッシ
ョンであり,被告サイトで行っているのはガーリーファッションである」
という主張とは結果的には異なっていることまで認めている(同〔43
頁〕)。
したがって,被告会社の上記主張は採用することができない。
(3) ヤフーオークションにおける販売(上記③)
ア ヤフーオークションのサイトにおける出品者「d_9v9_b」は被告会社で
あるところ(当事者間に争いがない),証拠(甲15の1,2,甲25)
によれば,被告会社はヤフーオークションにおいてロリータファッション
の中古衣類を販売していることが認められる。
イ この点に関して被告会社は,販売促進のために被告サイト上の商品をヤ
フーオークションのサイトに掲載しているにすぎないと主張する。
しかし,被告サイトにおいてロリータファッションも取り扱っているの
は上記(2)の認定どおりであるし,被告会社自身,ヤフーオークションに
おいてロリータファッションの中古衣類を販売している事実自体を積極
的に否認するものではない。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。
(4) 小括
以上によれば,①本件譲渡契約の対象事業は,ロリータファッション及び
ガーリーファッションの中古衣類の売買を含むこと,②被告サイトにおける
被告会社の事業も,ロリータファッション及びガーリーファッションの中古
衣類の売買を含むこと,③加えて,被告会社は,ヤフーオークションにおい
ても,ロリータファッションの中古衣類の販売を行っていることが認められ

る。
したがって,被告会社は,本件譲渡契約による事業譲渡の後も,同契約の
対象とされた事業と「同一の事業」を行っているものというべきである。
3 争点(1)ウ(被告会社は「不正の競争の目的」を有しているか)について
(1) 会社法21条3項にいう「不正の競争の目的」とは,譲渡会社が譲受人の
事実上の顧客を奪おうとするなど,事業譲渡の趣旨に反する目的で同一の事
業をするような場合を指すものと解するのが相当である(大審院大正7年
(オ)第875号同年11月6日判決・法律新聞1502号22頁参照)。
(2) 当事者間に争いのない事実及び証拠(甲3,7,8,12,21,27,
被告乙本人)によれば,次の事実が認められ,同認定を覆すに足りる証拠は
ない。
ア 被告会社は,本件譲渡契約に先立って「サイトM&A」に掲載した「案
件概要」(甲3)の中で,本件サイトの売却理由欄に「もともとこの分野
に興味関心が薄いため」と記載していたにもかかわらず,本件譲渡契約の
締結(平成26年5月29日)直前の同月14日,被告サイトのドメイン
を取得し,その後に被告サイトを開設し,本件譲渡契約の締結直後の同年
6月23日,被告サイトのツイッターを開始して,被告サイトの宣伝行為
を始め(甲7),同月26日には被告サイトのブログを開始している(甲
8)。
イ 他方で,被告会社は,本件譲渡契約の締結より前の同年3月2日から同
月14日にかけて,当時管理していた本件サイトのツイッターにおいて,
複数のブランド名を挙げて買取りを募集していたが(甲12),このうち
の一部は原告に譲渡していない(当事者間に争いがない)。
ウ そして,被告会社は,被告サイトにおいてロリータファッション及びガ
ーリーファッションの中古衣類の売買を開始しているが,このことは原告
には一切伝えていない(被告乙本人〔39,40頁〕)。

エ 加えて,本件譲渡契約では,原告に対して十分な理由も開示されないま
ま,平成26年6月30日までの約1か月間が引継期間とされ(本件譲渡
契約書7条(3)),原告は当該期間中には本件サイトによる事業を行うこ
とができないものとされていたところ,被告会社は,その間の同月21日,
本件サイトのメールマガジンに登録していた顧客に対し,「平素よりフェ
アリーエンジェル〔判決注:本件サイト〕でお買い物をして頂き誠にあり
がとうございました。この度運営方針変更に伴い,有)プロスタイル〔判
決注:被告会社〕は可愛いお洋服リサイクルショップ【Girly Cute(ガー
リーキュート)】http://(URLは省略)〔判決注:被告サイト〕をO
PENし可愛いお洋服をご提供してまいります。」とのメールを送付して
いる(甲27)。上記メールは,被告乙が自認するだけでも100名程度
に送付している(被告乙本人〔44,45頁〕)。また,上記メールを受
領した顧客の1人は,被告サイトが本件サイトの「姉妹ショップ」である
と誤認した(甲21)。
(3) 以上の事実によれば,被告会社は,あたかも本件サイトの譲渡後は同様の
サイトを開設・運営しないかのように装いながら,本件サイトに係る事業の
譲受けを募集し,原告がこれに応じて本件譲渡契約の締結を進めると,本件
サイトと同一の事業を営む目的で被告サイトのドメインを取得し,原告に何
ら伝えることのないままこれを開設・運営するとともに,本件サイトの従来
の顧客に対しては,運営主体の変更ではなく単なる「運営方針」の変更によ
り被告サイトを開設した旨のメールを多数送付し,現に被告サイトが本件サ
イトの「姉妹ショップ」であるとの誤認を生じさせているものであって,こ
れらの各事実に照らせば,被告会社には,原告の事実上の顧客を奪おうとす
るなど,事業譲渡の趣旨に反する目的で同一の事業をしたものであることが
明らかというべきである。
したがって,被告会社には,会社法21条3項にいう「不正の競争の目的」

があったものと認められる。
(4) 被告会社の主張に対する判断
この点に関して被告会社は,被告サイトの開設・運営は原告の事実上の顧
客を奪おうとしたものではなく,ロリータファッションに特化した本件サイ
トから,よりマーケットが大きいガーリーファッションのサイト(被告サイ
ト)に軸足を移そうとしたものにすぎないなどと主張する。
しかし,上記主張を裏付けるに足りる客観的証拠は見当たらない。のみな
らず,上記2(1)及び(2)でも認定したとおり,本件サイトではガーリーファ
ッションも取り扱っており,また被告サイトでもロリータファッションを取
り扱っていたものであり,被告乙自身,被告サイトでは初めからロリータフ
ァッションを扱うつもりであったことを認めている(被告乙本人〔41頁〕)
のであるから,そもそも上記主張はその前提を欠くものである。
以上のとおり,被告会社の上記主張は採用することができない。
4 争点(1)エ(競業避止義務を負わないとの黙示の合意があったか)について
被告会社は,本件譲渡契約に当たり,ロリータファッションを取り扱うサイ
トに関する物品は引き渡すものの,ガーリーファッションを含むその他の物品
は譲渡対象ではないので引き渡さない旨を説明し,原告の了承を得ていたので
あるから,原告と被告会社との間では被告会社が競業避止義務を負わないとの
黙示の合意があったなどと主張する。
しかし,本件全証拠を精査しても,上記合意の成立を認めるに足りる証拠は
ない。かえって,前記2(1)で説示したところに照らせば,被告会社の主張す
るような説明は原告に対して一切されていないと認めるのが相当である。
したがって,被告会社の上記主張は,理由がない。
5 差止めの対象について
(1) 以上によれば,被告会社は,原告に事業を譲渡したにもかかわらず,不正
の競争の目的をもって同一の事業を行ったものである。

したがって,原告は,被告会社に対し,会社法21条3項に基づき,その
行為の差止めを求めることができるというべきである。
(2) もっとも,原告は,差止めの対象につき,ウェブサイトを利用しての婦人
用中古衣類の売買を目的とする事業一般の差止めを求めているものと解され
る(請求の趣旨第1項)。
しかし,会社法21条3項による差止めの対象は,あくまでも譲渡した事
業と「同一の事業」に限られるところ,原告は,ロリータファッション及び
ガーリーファッションの婦人用中古衣類の売買を行うという点で被告会社が
本件譲渡契約の対象事業と「同一の事業」を行っているとしか主張していな
い。そして,証拠(甲20,原告本人〔10,26頁〕,被告乙本人〔3,
4頁〕)によれば,本件譲渡契約当時,本件サイトで取り扱っていたブラン
ドは「FairyAngel買取ブランド一覧」と題する書面(甲20)記
載のとおりであったと認められるから(原告が同書面を入手した経緯につい
ては争いがあるが,被告乙の供述によっても,同書面は本件サイトのページ
をコピーしたものというのであり,本件サイトでは同書面に記載されたブラ
ンドを取り扱っていたことになる。),結局,本件譲渡契約によって被告会
社から原告に対して譲渡された本件サイトが対象とする事業の範囲は,ロリ
ータファッション及びガーリーファッションに属する婦人用中古衣類の売買
であって,かつ上記書面記載のブランド名,すなわち別紙ブランド一覧記載
のブランド名の婦人用中古衣類の売買であったと認められる。
したがって,差止めの対象についても,上記範囲に限られると認めるのが
相当である。
6 争点(2)イ(損害発生の有無及びその額)について
事案に鑑み,争点(2)イについて判断する。
原告は,本件譲渡契約締結の前後で本件サイトの売上げが減少しており,そ
の粗利減少額の12か月分が被告会社による被告サイトの運営と相当因果関係

を有するなどと主張する。
しかし,証拠(乙3)によれば,本件サイト及び被告サイト以外にも,ロリ
ータファッション及びガーリーファッションに係る婦人用中古衣類の売買を目
的とするウェブサイトは多数存在することが認められるところ,被告ら代理人
の計算によれば,ロリータファッションの中古市場の市場規模は約26.8億
円もあり,これに対して本件サイトの営業利益は年間約750万円にすぎない
というのである。
また,ウェブサイトを用いた売買を目的とする事業においては,その売上げ
は,単なる競業他社の存在だけでなく,経営手腕その他の事情によって左右さ
れる部分も少なくないのであって,現に,被告会社が「サイトM&A」に掲載
した「案件概要」(甲3)にも,欄外に「買収後の収益・アクセス数・会員数
の減少等の様々なリスクも十分に考慮した上で」との注意書きが付されている。
そして,原告は,被告会社が従前の顧客に対する営業活動を行っていたこと
を指摘しているが(上記3(2)参照),これにより,現にどの程度の数の顧客
が本件サイトを利用しなくなったのか,そもそも上記営業活動により本件サイ
トを利用しなくなった顧客が存在するのかなどについて,原告は何ら主張立証
していない。
そうすると,本件サイトの粗利減少額が被告サイトの運営と相当因果関係を
有するものということはできないし,これを割合的に算定することもまた困難
であるといわざるを得ない。
したがって,本件サイトの粗利減少額を原告の損害と認めることはできず,
他に損害が発生したことの主張立証もないから,その余の点について判断する
までもなく,損害の発生及びその額に関する原告の上記主張は理由がない。
7 結論
よって,原告の請求は,被告会社に対し,会社法21条3項に基づき,主文
掲記の範囲で事業の差止めを求める限度で理由があるから,これを認容するこ

ととし,被告会社に対するその余の請求及び被告乙に対する請求はいずれも理
由がないからこれを棄却することとし,仮執行宣言を付するのは相当ではない
のでこれを付さないこととし,主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第40部


裁判長裁判官

東 海 林 保


裁判官

瀬 孝


裁判官勝又来未子は,研修のため署名押印することができない。

裁判長裁判官

東 海 林 保


(別紙)
事 業 目 録

ゴシック・ロリータファッション及びガーリーファッションに属する婦人用衣類
であって,別紙ブランド一覧記載のブランド名の中古衣類の売買を目的とする事業


(別紙「ブランド一覧」は省略)

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