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平成29(ワ)22417損害賠償請求事件

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裁判所 請求棄却 東京地方裁判所
裁判年月日 平成30年8月29日
事件種別 民事
対象物 人脈関係登録システム,人脈関係登録方法と装置,人脈関係登録プログラムと当該プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体
法令 特許権
特許法36条6項2号3回
特許法29条1項3号2回
キーワード 無効12回
進歩性7回
特許権6回
新規性6回
無効審判5回
分割4回
優先権2回
損害賠償2回
実施1回
侵害1回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 1 本件は,名称を「人脈関係登録システム,人脈関係登録方法と装置,人脈関係 登録プログラムと当該プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体」とす15 る特許権(特許第3987097号。以下「本件特許権」といい,この特許を「本件 特許」という。)を有する原告が,訴訟承継前被告株式会社DMM.com及び同株式 会社DMM.comラボ(以下「承継前被告ら」という。)の提供していた別紙被告サ ービス目録記載のソーシャルネットワークサービス(以下「被告サービス」という。) において使用されているサーバ(以下「被告サーバ」という。)について,本件特許に20 係る発明の技術的範囲に属すると主張して,承継前被告らに対し,不法行為による損 害賠償請求権に基づき,逸失利益1500万円及びこれに対する不法行為後の日であ る平成29年7月25日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまでの民法所定年5分 の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案であり,被告が,平成30年3月1 日に会社分割により承継前被告らの権利義務を承継した。25 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨によ り容易に認められる事実。なお,枝番の記載は特記しない限り省略する。) ⑴ 当事者

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判決文

平成30年8月29日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

平成29年(ワ)第22417号 損害賠償請求事件

口頭弁論終結日 平成30年6月13日

判 決

当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

被告は,原告に対し,1500万円及びこれに対する平成29年7月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要

1 本件は,名称を「人脈関係登録システム,人脈関係登録方法と装置,人脈関係登録プログラムと当該プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体」とする特許権(特許第3987097号。以下「本件特許権」といい,この特許を「本件特許」という。)を有する原告が,訴訟承継前被告株式会社DMM.com及び同株式会社DMM.comラボ(以下「承継前被告ら」という。)の提供していた別紙被告サービス目録記載のソーシャルネットワークサービス(以下「被告サービス」という。)において使用されているサーバ(以下「被告サーバ」という。)について,本件特許に係る発明の技術的範囲に属すると主張して,承継前被告らに対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,逸失利益1500万円及びこれに対する不法行為後の日である平成29年7月25日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案であり,被告が,平成30年3月1日に会社分割により承継前被告らの権利義務を承継した。2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。なお,枝番の記載は特記しない限り省略する。)

⑴ 当事者原告は,情報処理サービス業等を目的とする株式会社である(甲1)。承継前被告らは,いずれもインターネットを利用した各種情報提供サービス業等を

5 目的とする株式会社である。被告は,平成30年3月1日,会社分割により,承継前被告らから本件請求に係る権利義務を承継した(乙6)。

⑵ 本件特許権原告は,本件特許権(以下,本件特許の特許請求の範囲請求項1に係る発明を「本件発明1」,請求項3に係る発明を「本件発明2」,両発明を併せて「本件各発明」という。また,本件特許に係る明細書及び図面を「本件明細書」という。)の特許権者である。本件特許権の出願日等は次のとおりである。出願日 平成18年12月28日分割の表示 特願2006-143238の分割原出願日 平成13年10月9日優先権主張番号 特願2000-316496優先日 平成12年10月17日優先権主張国 日本国登録日 平成19年7月20日登録番号 特許第3987097号発明の名称 人脈関係登録システム,人脈関係登録方法と装置,人脈関係登録プログラムと当該プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体

⑶ 本件各発明の特許請求の範囲本件各発明の特許請求の範囲は,別紙特許公報の該当箇所に記載のとおりである(甲5)。

⑷ 本件各発明の構成要件の分説ア 本件発明1は,次のとおり,構成要件に分説される(以下,頭書の記号に従って,「構成要件1A」などという。。)1A 登録者の端末と通信ネットワークを介して接続したサーバであって,

5 1B 人間関係を結ぶことを希望している旨の第一のメッセージと人間関係を結ぶことに合意する旨の第二のメッセージとを交換した登録者同士の個人情報を記憶している記憶手段と,1C 第一の登録者が第二の登録者と人間関係を結ぶことを希望している旨の

第一のメッセージを第一の登録者の端末(以下,

「第一の端末」という)から受信して第二の登録者の端末(以下,「第二の端末」という)に送信すると共に,第二の登録者が第一の登録者と人間関係を結ぶことに合意する旨の第二のメッセージを第二の端末から受信して第一の端末に送信する手段と,1D 上記第二のメッセージを送信したとき,上記第一の登録者の個人情報と第二の登録者の個人情報とを関連付けて上記記憶手段に記憶する手段と,1E 上記第二の登録者の個人情報を含む検索キーワードを上記第一の端末から受信する手段と,1F 上記受信した第二の登録者の個人情報と関連付けて記憶されている第二の登録者と人間関係を結んでいる登録者(以下,「第三の登録者」という)の個人情報を上記記憶手段から検索する手段と,1G 上記検索された第三の登録者の個人情報を第一の端末に送信する手段と,1H 上記第一の登録者が上記第三の登録者と人間関係を結ぶことを希望している旨の第一のメッセージを上記第一の端末から受信して上記第三の登録者の端末(以下,「第三の端末」という)に送信すると共に,第三の登録者が

第一の登録者と人間関係を結ぶことに合意する旨の第二のメッセージを第

三の端末から受信して第一の端末に送信したとき,上記記憶手段に記憶されている上記第一の登録者の個人情報と上記第三の登録者の個人情報とを関連付ける手段と,1I を有してなることを特徴とする人脈関係登録サーバ。イ 本件発明2は,次のとおり,構成要件に分説される(以下,頭書の記号に従って,「構成要件2A」などという。。)

5 2A 登録者の端末と通信ネットワークを介して接続し,2B 登録者ごとに,当該登録者の識別情報と,当該登録者と人間関係を結んでいる他の登録者の識別情報とを関連付けて記憶している記憶手段と,を備えたサーバであって,2C 第一の登録者が第二の登録者と人間関係を結ぶことを希望している旨の第一のメッセージを第一の登録者の端末(以下,「第一の端末」という)から受信して第二の登録者の端末(以下,「第二の端末」という)に送信すると共に,

第二の登録者が第一の登録者と人間関係を結ぶことに合意する旨の第二のメ

ッセージを第二の端末から受信して第一の端末に送信する手段と,2D 上記第二のメッセージを送信したとき,上記第一の登録者の識別情報と第二の登録者の識別情報とを関連付けて上記記憶手段に記憶する手段と,2E 上記第二の登録者の識別情報を含む検索キーワードを上記第一の端末から受信し,この第二の登録者の識別情報と関連付けて記憶されている第二の登録者と人間関係を結んでいる登録者(以下,「第三の登録者」という)の識別情報を上記記憶手段から検索し,検索した第三の登録者の識別情報を第一の端末に送信する検索手段と,2F 上記第一の登録者が上記第三の登録者と人間関係を結ぶことを希望している旨の第一のメッセージを上記第一の端末から受信して上記第三の登録者の端末(以下,「第三の端末」という)に送信すると共に,第三の登録者が第一の登録者と人間関係を結ぶことに合意する旨の第二のメッセージを第三の端末から受信して第一の端末に送信したとき,上記記憶手段に記憶されている上記第一の登録者の識別情報と上記第三の登録者の識別情報とを関連付ける手段と,2G を有してなることを特徴とする人脈関係登録サーバ。

⑸ 承継前被告らの行為等ア 承継前被告らは,業として,別紙被告サーバ説明書(以下「被告サーバ説明書」

5 といい,被告サーバ説明書における各画面を「画面01」ないし「画面31」という。)記載の被告サーバを用いて,被告サービスを会員に対して提供した。イ 被告サーバは,構成要件1A,1Eないし1G,1I,2A,2B,2Gを充足する。3 争点

⑴ 被告サーバは,文言上,本件各発明の技術的範囲に属するか(争点1)ア 被告サーバは構成要件1Bを充足するか(争点1-1)イ 被告サーバは構成要件1C及び2Cを充足するか(争点1-2)ウ 被告サーバは構成要件1D及び2Dを充足するか(争点1-3)エ 被告サーバは構成要件1H及び2Fを充足するか(争点1-4)

⑵ 被告サーバは,本件各発明と均等なものとして,その技術的範囲に属するか(争点2)ア 端末間で「メッセージ」が交換されないとしても,本件各発明と均等なものとなるか(争点2-1)イ 「送信したとき」に関連付けて記憶されないとしても,本件各発明と均等なものとなるか(争点2-2)

⑶ 本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか(争点3)ア 本件発明1は新規性又は進歩性を欠くものであるか(争点3-1)イ 本件発明2は新規性又は進歩性を欠くものであるか(争点3-2)ウ 本件特許は特許法36条6項2号に違反しているか(争点3-3)

⑷ 損害の発生の有無及びその額(争点4)

第3 争点に対する当事者の主張

1 争点1(被告サーバは,文言上,本件各発明の技術的範囲に属するか)につい

て

⑴ 争点1-1(被告サーバは構成要件1Bを充足するか)について

【

(原告の主張)

】

5 被告サーバ説明書のとおり,アカウント1号のパソコン等において画面09の「友

達申請」を「送信する」ボタンをクリックすることで,アカウント1号のパソコン等から,被告サーバを経由して,アカウント2号のパソコン等へ,「友達希望メッセージ」が送信される。また,アカウント2号のパソコン等において画面15の「友達になる」ボタンをクリックすることで,友達申請が許可された旨の電子メールが被告サーバからアカウント1号のパソコン等に対して送信される(甲16)。当該電子メールのタイトルには「DMM GAMES 友達申請が許可されました」とあり,本文に「アカウント1号さんと友達になりました。」との記載などがあり,これが「承認メッセージ」に相当する。この「友達希望メッセージ」は,友達という人間関係を結ぶことを希望している旨のメッセージであるから,本件発明1の「第一のメッセージ」に該当し,同様に「承認メッセージ」は友達という人間関係を結ぶことに合意する旨のメッセージであり,「第二のメッセージ」に該当する。したがって,被告サーバは構成要件1Bを充足する。なお,本件各発明における「メッセージ」は,何らかの「データ」そのものではなく,当該データ等によって伝達される「情報内容」のことを指すから,「データ」とそれによって表現される情報内容である「メッセージ」とは異なる概念である。【

(被告の主張)

】アカウント1号のパソコン等から,「友達申請」が送信されると,画面09ないし画面14の遷移を経て,画面15が表示される。画面15で「友達になる」ボタンがクリックされると,アカウント2号のパソコン等から被告サーバへ「友達になる」ボタンのクリックに伴って送信されるデータが到達し,その結果,画面16へ遷移する。すなわち,アカウント2号のパソコン等から被告サーバへ「友達になる」ボタンのクリックに伴って送信されるデータが到達すると,被告サーバ内でアカウント1号及びアカウント2号が関連付けられ,記憶されることによって,画面16ないし画面20へと遷移可能となる。したがって,被告サービスでは,アカウント1号とアカウント2号との間で何らの「メッセージ」も交換しないので,被告サーバは,「第一のメッセ

5 ージ」及び「第二のメッセージ」を充足しない。

原告は,甲16の電子メールが「承認メッセージ」に該当すると主張するが,同メールは,既に友達申請が許可されたという結果を告知するものであるから,「承認メッセージ」には該当しないし,アカウント1号が登録したメールアドレスに対応するメールサーバに宛てて送信されるにすぎないから,アカウント1号のパソコン等には送信されない。また,被告サーバでアカウント1号及びアカウント2号が関連付けられ記憶されるのは,アカウント2号のパソコン等から被告サーバへ「友達になる」ボタンのクリックに伴って送信されるデータが到達したときである。すなわち,アカウント2号のパソコン等から被告サーバへ「友達になる」ボタンのクリックに伴って送信されるデータは,被告サーバ止まりであって,被告サーバからさらにアカウント1号のパソコン等へ送信されることはない。したがって,被告サービスにおいて,アカウント1号及びアカウント2号が関連付けられるに当たり,アカウント1号のパソコン等及びアカウント2号のパソコン等は,何らのデータも交換しないから,被告サーバは,「人間関係を結ぶことを希望している旨の(メッセージ)…と人間関係を結ぶことに合意する旨の(メッセージ)…とを交換した」を充足しない。

⑵ 争点1-2(被告サーバは構成要件1C及び2Cを充足するか)について

【

(原告の主張)

】争点1-1で主張したのと同様に,被告サービスでは,アカウント1号がアカウント2号と友達になることを希望する場合,アカウント1号からアカウント2号に友達希望メッセージを送信する。また,アカウント1号から友達希望メッセージを受け取ったアカウント2号は,これに合意する旨の承認メッセージをアカウント1号に送信する。これらの友達希望メッセージ及び承認メッセージは,被告サーバを経由してやり取りされるものである。したがって,被告サーバは,構成要件1Cを充足する。このことは,構成要件2Cについても同様である。【

(被告の主張)

】

5 争点1-1で主張したのと同様に,被告サーバは,アカウント1号のパソコン等か

らメッセージを受信してアカウント2号のパソコン等に送信しないので,「第一のメッセージを第一の登録者の端末(…)から受信して第二の登録者の端末(…)に送信する」を充足しない。また,被告サービスにおいて,アカウント2号のパソコン等から被告サーバへ「友達になる」ボタンのクリックに伴って送信されるデータは,被告サーバ止まりであるので,被告サーバは,何らかのメッセージやデータをアカウント2号のパソコン等から受信してアカウント1号のパソコン等に送信することはない。したがって,被告サーバは,「第二のメッセージを第二の端末から受信して第一の端末に送信する」を充足しない。このことは,構成要件2Cについても同様である。

⑶ 争点1-3(被告サーバは構成要件1D及び2Dを充足するか)について

【

(原告の主張)

】争点1-1で主張したのと同様に,被告サービスでは,アカウント2号からアカウント1号に承認メッセージが送信されると,アカウント1号とアカウント2号が友達になり,以後,両者の会員情報は友達になった会員同士として,関連付けて被告サーバに記憶される。したがって,被告サーバは構成要件1Dを充足する。被告は,「送信したとき」とは,「関連付け」を行うための条件ないし「関連付け」との先後関係(「送信」を先に実行し,その後に「関連付け」を実行すること)を規定するものと主張するが,「とき」とは辞書において「おり。ころ。」及び「ある幅をもって考えられた時間」などとされているように,条件,あるいは,厳密な先後関係や時間的な同一性が要求されるものではない。構成要件1Dにおける「送信したとき」の「とき」も「ある幅をもって考えられた時間」という意味である。したがって,「送信したとき」が「送信したという条件で」という意味であるとする被告主張は誤りである。このことは,構成要件2Dについても同様である。

5 【

(被告の主張)

】構成要件1Dにおける「送信したとき」とは,その文言どおり,「関連付け」を行うための条件ないし「関連付け」との先後関係(「送信」を先に実行し,その後に「関連付け」を実行すること)を規定するものと解釈される。しかるに,被告サーバでは,アカウント2号のパソコン等から被告サーバへ「友達になる」ボタンのクリックに伴って送信されるデータが被告サーバに到達したときに,そのことのみを条件にして,「上記第一の登録者の個人情報と第二の登録者の個人情報とを関連付けて上記記憶手段に記憶する」のである。この「関連付け」の前に,被告サーバからアカウント1号のパソコン等やメールサーバに対して何らかのメッセージが送信されることはない。このことは,構成要件2Dについても同様である。

⑷ 争点1-4(被告サーバは構成要件1H及び2Fを充足するか)について

【

(原告の主張)

】争点1-2及び1-3で主張したのと同様に,アカウント1号がアカウント3号に友達希望メッセージを被告サーバを経由して送信し,アカウント3号がアカウント1号に承認メッセージを被告サーバを経由して送信すると,以後,アカウント1号とアカウント3号の会員情報は友達として関連付けられて記憶される。したがって,被告サーバは,構成要件1Hを充足する。このことは,構成要件2Fについても同様である。【

(被告の主張)

】争点1-2及び1-3で主張したのと同様に,被告サーバは構成要件1Hを充足しない。このことは,構成要件2Fについても同様である。

2 争点2(被告サーバは,本件各発明と均等なものとして,その技術的範囲に属

するか)について

⑴ 争点2-1(端末間で「メッセージ」が交換されないとしても,本件各発明と

均等なものとなるか)について

5 【

(原告の主張)

】仮に,

(被告の主張)

を前提として,「メッセージ」がサーバ止まりであることと,登録者の端末(パソコン等)の間で直接的にやり取りされることとが形式的に区別され,そのことにより端末間で「メッセージ」が交換されることの要件を文言上満たさないとしても,以下のとおり,被告サーバは本件各発明と均等なものとしてその技術的範囲に属するというべきである。ア 第1要件(非本質的部分)について本件明細書記載の背景技術や目的からすると,本件各発明の本質的部分は,より広範で深い人間関係を結ぶために,人間関係を結んでいる登録者同士の個人情報や識別情報を関連付けて記憶して,人間関係を結んでいる登録者(例えば第二の登録者)の個人情報や識別情報を含む検索キーワードを用いて,当該登録者と人間関係を結んでいる(つまり,第二の登録者という共通の友達をもつ)登録者の検索を容易にすることで,より広範で深い人間関係を結ぶことを可能にした点にある。他方,本件各発明における友達申請メッセージ(第一のメッセージ)や承認メッセージ(第二のメッセージ)等は,人間関係を結ぶための「合意の手段」としての意味を有するにすぎず,より広範で深い人間関係を結ぶために共通の人間関係を結んでいる登録者の検索を容易にするという本件各発明の本質とは全く無関係の事柄であり,非本質的部分である。被告は,人間関係を結ぶことの合意がメールの交換によって行われることが本件各発明の本質的部分である旨主張するが,人間関係を結ぶことの合意にメールを使用することは全て例示であるから,本件各発明の本質的部分ではない。イ 第2要件(置換可能性)について仮に,メッセージがサーバ止まりであってパソコン等の間で直接にやり取りされることがないとしても,最終的に「人間関係を結ぶことを希望する」あるいは「人間関係を結ぶことを承諾する」という情報内容が交換されることに変わりはないから,共通の人間関係を結んでいる登録者の検索を容易にするという本件各発明の作用効果

5 と同一の作用効果を奏する。

ウ 第3要件(置換容易性)についてメッセージがパソコン等の間で直接にやり取りされるか,サーバ間でのみやり取りされ画面表示等の手段によってその意味内容が使用者に伝達されるかは,当業者において適宜選択・決定し得る設計事項にすぎないから,当業者は容易に想到することができた。エ 第4要件(容易推考性)について本件特許の原出願日前である平成11年5月14日に公表された国際公開第99/23591号(乙2)に記載された発明(以下「引用発明」という。)と本件各発明とは,その目的と作用効果及び構成要件において全く異なるものであり,メールがサーバ止まりであるか否かの相違にかかわらず,引用文献を根拠として本件各発明の進歩性が否定されることはない。オ 第5要件(特段の事情)について原告は,構成要件1Hは,友達の友達と友達になることで人間関係を拡大していくという本件発明1の目的を達成することを構成上の特徴としていると主張しているのであって,データが端末まで届くのか,サーバ止まりであるかに関しては全く言及も示唆もしていない。したがって,原告が相違点に係る本件発明1の構成を意識的に除外したという被告主張は失当である。このことは,本件発明2についても同様である。【

(被告の主張)

】ア 第1要件(非本質的部分)について本件各発明は,特定の既登録者相互間の合意によって人間関係を結ぶことを目的としており,直接面識がない場合にあっても登録者同士において合意を形成することができる方法として,メール(花メール)の交換によることのみが開示されているのであるから,「人間関係を結ぶことを希望している旨の第一のメッセージと人間関係を結ぶことに合意する旨の第二のメッセージとを交換した」こそが本件各発明の本質的

5 部分であるから,第1要件を満たさない。

イ 第2要件(置換可能性)について本件各発明に対し,原告が主張する置換を行うことは,登録者同士でメッセージを交換するものではなくなり,その結果,メールの交換によって特定の既登録者相互間の合意を形成し相互に人間関係を結ぶという本件各発明の作用効果を発揮できなくなるから,第2要件を満たさない。ウ 第3要件(置換容易性)について本件各発明の構成は,他に例のない珍しい構成であって,容易想到ではないから,

第3要件を満たさない。

エ 第4要件(容易推考性)について本件各発明の構成が容易想到であるとしたら,本件各発明は少なくとも引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるから,少なくとも進歩性がなく,無効にされるべきものである。オ 第5要件(特段の事情)について原告は,構成要件1Hが本件発明1の構成上の特徴であると主張し,構成要件1Hを追加する補正をしたので,特許庁審査官がこれを受け入れた結果,特許査定を受けた。構成要件1Hには,原告が主張する相違点が含まれるところ,上記の特許査定の経緯からみて,原告は,相違点に係る構成を意識的に除外したといえる。また,このことは,本件発明2についても同様である。したがって,第5要件を満たさない。

⑵ 争点2-2 「送信したとき」

( に関連付けて記憶されないとしても,本件各発明と均等なものとなるか)について【

(原告の主張)

】仮に,友達となることに同意する会員の端末から承認メッセージを受信したときと,友達となることを希望していた会員の端末へ承認メッセージを送信したときとが形式的に区別され,そのことにより「送信したとき」の要件を文言上満たさないとしても,以下のとおり,被告サーバは本件各発明と均等なものとしてその技術的範囲に属

5 するというべきである。

ア 第1要件(非本質的部分)について本件明細書記載の背景技術や目的からすると,本件各発明の本質的部分は,より広範で深い人間関係を結ぶために共通の人間関係を結んでいる登録者の検索を容易にする点にある。他方,本件各発明における承認メッセージは,人間関係を結ぶための「合意の手段」としての意味を有するにすぎず,サーバが承認メッセージを「受信」したときに個人情報や識別情報を関連付けて記憶するのかなどの,個人情報や識別情報をいつ関連付けるかという「処理のタイミング」は,共通の人間関係を結んでいる登録者の検索を容易にするという本件各発明の本質とは全く無関係の事柄であって,非本質的部分である。イ 第2要件(置換可能性)についてサーバが承認メッセージを「受信したとき」に関連付けて記憶するのかなどの処理のタイミングの問題は,何ら本件各発明の本質に関係する事柄ではなく,サーバが承認メッセージを「受信したとき」に関連付けを行っても,共通の人間関係を結んでいる登録者の検索を容易にするという本件各発明の作用効果と同一の作用効果を奏する。ウ 第3要件(置換容易性)について当事者間で友達関係を結ぶという合意がなされた後,どのタイミングで記憶領域内のデータを関連付けるかという処理のタイミングは,当業者において適宜選択・決定し得る設計事項にすぎないから,当業者は容易に想到することができた。エ 第5要件(特段の事情)について本件特許の審査過程で原告が主張したのは,先行文献には登録者同士の相互の合意により人間関係を結ぶという技術思想は開示も示唆もされていないということであり,「送信したとき」の解釈には全く関係がないから,被告サーバの構成を意識的に除外したということはない。【

(被告の主張)

】

5 ア 第1要件(非本質的部分)について

本件各発明の人脈登録サーバは,より広範で深い人間関係を結ぶことを積極的にサポートするために,登録者同士でメッセージを交換したことを条件として,登録者同士の個人情報を関連付けるという手段を採用している。これは,人間関係を結ぶことを合意する旨のメッセージが人間関係を結ぶことを希望する側に届かなかった場合には,人間関係は構築されないということを意味している。つまり,本件各発明においては,人間関係の構築に先立ってメッセージを交換することを重視している。また,このことは,本件明細書の「花メール」の概念とも合致している。「特定の登録者のことを尊敬しているとか,称賛しているというように相手を認めて人間関係を結びたいという内容のメール」 相手に届かなければ全く意味がない。は, したがって,登録者同士におけるメッセージ交換を条件として,登録者同士の個人情報を関連付けるという手段を採用したことが,本件各発明の技術思想であり,本質的部分である。他方,被告サービスでは,友達申請が承認されたことを申請者に対して通知することに全く重きをおいておらず,メールが届かない場合であっても確実に友達関係が構築されることに重きをおいているのであるから,被告サーバと本件各発明とでは,本質的部分において相違がある。原告は,共通の人間関係を結んでいる登録者の検索を容易にすることが本件各発明の本質的部分であると主張するが,このことは,本件特許の優先日である平成12年10月17日以前である平成11年3月9日に公開された特開平11-66082号公報(乙5)によって既に公知になっており,本件各発明の本質的部分にはなりえない。イ 第2要件(置換可能性)について本件各発明に対し,原告が主張する置換を行うことは,メールの交換によって特定の既登録者相互間の合意を形成し相互に人間関係を結ぶという本件各発明の作用効果が変更されることを意味するのであるから,第2要件を満たさない。ウ 第3要件(置換容易性)について

5 原告が主張する相違部分は,そもそも技術思想レベルに関わる相違部分なので,容

易に置換することはできず,第3要件を満たさない。エ 第5要件(特段の事情)について本件特許の審査過程からみて,原告は,構成要件1Dについて,「第一のメッセージと第二のメッセージを交換した登録者同士,つまり,人間関係を結ぶことを合意した登録者同士の個人情報を関連付けて記憶しておくこと」以外の構成を意識的に除外したといえる。また,このことは,本件発明2についても同様である。したがって,第5要件を満たさない。

3 争点3(本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか)

について

⑴ 争点3-1(本件発明1は新規性又は進歩性を欠くものであるか)について

【

(被告の主張)

】本件発明1は,引用発明であるか,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。すなわち,本件発明1と引用発明とは,①本件発明1が「第二の登録者が第一の登録者と人間関係を結ぶことに合意する旨の第二のメッセージを第二の端末から受信して第一の端末に送信する」(構成要件1C)のに対し,引用発明では,第二のメッセージを第一の端末に送信しない点,②本件発明1が「上記第二のメッセージを送信したとき,上記第一の登録者の個人情報と第二の登録者の個人情報とを関連付けて上記記憶手段に記憶する」(構成要件1D)のに対し,引用発明では,上記第二のメッセージを受信したとき,上記第一の登録者の個人情報と第二の登録者の個人情報とを関連付けて上記記憶手段に記憶する点,③「第三の登録者が第一の登録者と人間関係を結ぶことに合意する旨の第二のメッセージを第三の端末から受信して第一の端末に送信(する)(構成要件1H)のに対し,引用発明では,第二のメッセージを第一の端」末に送信しない点が相違し,その余の点は一致する。これらの相違点については,原告が,本件発明1と被告サーバに上記と同様の相違点があるにもかかわらず,被告サ

5 ーバが本件発明1を文言上侵害していると主張しているのであるから,

(原告の主張)

を前提にすると上記相違点①ないし③は相違点ではないか,少なくとも容易想到である。したがって,本件発明1は,

(原告の主張)

を前提にすると,新規性及び進歩性を欠くから,本件特許は特許法29条1項3号及び同条2項に違反してされたものであり,同法123条1項2号に該当するから,特許無効審判により無効とされるべきものである。【

(原告の主張)

】引用発明は,自分のアドレス帳を拡充していく発明であり,そのために他のユーザを一方的に自己のアドレス帳に追加していくものであるから,本件発明1のように,登録者同士の合意に基づいて人間関係を結んでいくというものではない。したがって,引用発明と本件発明1とは技術的思想が根本的に異なるから,引用発明に基づいて本件発明1を容易に想到することはできない。また,引用発明と本件発明1とでは,被告が挙げる相違点以外にも,①(ユーザの合意によって)人間関係を結ぶという構成の開示の有無,②人間関係を結ぶことを希望する旨の第一のメッセージ及びこれに合意する旨の第二のメッセージという構成の開示の有無において相違するところ,これらの相違点は,被告が提出するいずれの公知文献にも開示はないから,被告主張の無効理由には理由がない。

⑵ 争点3-2(本件発明2は新規性又は進歩性を欠くものであるか)について

【

(被告の主張)

】争点3-1で主張したのと同様に,本件発明2は,引用発明であるか,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。したがって,本件発明2は,

(原告の主張)

を前提にすると,新規性及び進歩性を欠くから,本件特許は特許法29条1項3号及び同条2項に違反してされたものであり,同法123条1項2号に該当するから,特許無効審判により無効とされるべきものである。【

(原告の主張)

】

5 争点3-1で主張したのと同様に,引用発明と本件発明2とは技術的思想が根本的

に異なるから,引用発明に基づいて本件発明2を容易に想到することができたということはできず,相違点の把握も誤っている。

⑶ 争点3-3(本件特許は特許法36条6項2号に違反しているか)について

【

(被告の主張)

】本件発明1は,構成要件1Eにおいては「検索キーワード」が受信されるとされ,構成要件1Fにおいては,「第二の登録者の個人情報」が受信されるとされているところ,両者の関係が不明確であるから,本件発明1の特許請求の範囲の記載は不明確である。このことは,本件発明2についても同様である。したがって,本件特許は特許法36条6項2号に違反してされたものであり,同法123条1項4号に該当するから,特許無効審判により無効とされるべきものである。【

(原告の主張)

】構成要件1Eの「個人情報を含む検索キーワード」との記載から明らかなように,個人情報は検索キーワードの一部である。そして,構成要件1Fは,検索キーワードのうちの個人情報部分だけが登録者の関連付けのために記憶されるのである。すなわち,受信した検索キーワードのうち,個人情報ではない部分を登録者と共に記憶することは特許請求の範囲として求めず,受信した個人情報のみを登録者間の人間関係を表すために記憶することを意味しているので,特許請求の範囲の記載として何ら不明確ではない。このことは,本件発明2についても同様である。

4 争点4(損害の発生の有無及びその額)について

【

(原告の主張)

】承継前被告らは,遅くとも平成24年4月頃から平成28年2月までの間,業として,被告サーバを用いて被告サービスを会員に対して提供した。これにより,原告は本来得ることのできた売上げを得られなかったものであるところ,その額は,承継前被告らを含むDMM.comグループの平成23年3月から平成28年2月までの売

5 上げが合計4170億円であることからすれば,その約0.0036%である150

0万円を下らない。【

(被告の主張)

】否認する。

第4 当裁判所の判断

1 本件各発明の意義について

⑴ 本件明細書の発明の詳細な説明の記載本件明細書の発明の詳細な説明は,別紙特許公報(甲5)の該当欄記載のとおりであるが,概要,次のとおりである。ア 技術分野「【0001】本発明は,より広範で深い人間関係を結ぶための,人脈関係登録システム,人脈関係登録方法とサーバ,人脈関係登録プログラムと当該プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体に関するものである。」イ 背景技術「【0002】従来,職業等に関する様々な特定分野の専門家を知り,専門的知識や情報を得ようとする場合に,効率的に知ることのできるシステム・方法はなかった。また,より広範で深い人間関係を結ぶためには,一人一人の努力に頼るほかはなく,これを積極的にサポートするシステムは存在しなかった。」ウ 発明が解決しようとする課題「【0003】本発明は,より広範で深い人間関係を結ぶことを積極的にサポートする人脈関係登録システム,人脈関係登録方法とサーバ,人脈関係登録プログラムと当該プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体を提供することを目的とする。本発明はまた,職業等に関する様々な特定分野の専門家を知り,専門的知識や情報

5 を得ようとする場合に,人脈関係情報を作成し簡単かつ効率的に知ることのできるような人脈関係登録システム,人脈関係登録方法とサーバ,人脈関係登録プログラムと当該プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体を提供することを目的とする。」エ 課題を解決するための手段「【0004】上記目的を達成するために,本発明による人脈関係登録システムは,入力部を有する第1の情報処理装置と,前記入力部から入力された複数の個人名を登録しその各個人情報を記憶する第2の情報処理装置とを具備し,前記入力部から新規登録者を入力し登録する際に既登録者の確認に基づいて登録が行われるとともに,その新規登録者が前記既登録者と関連付けられて前記第2の情報処理装置に人脈関係情報の基礎データとして記憶されることを特徴とする。【0005】この人脈関係登録システムによれば,新規に登録する者は,既登録者の確認が必要なため無制限に登録が行われずに人脈関係の信頼性を維持できるとともに,その既登録者と関連付けられて記憶され,登録者同士の関係が他の登録者に分かり易くなる人脈関係情報を作成することができる。各情報処理装置として,パーソナルコンピュータ(パソコン装置),サーバコンピュータ(サーバ)を使用することにより,多数の登録者による人脈関係情報を簡単に作成することができる。」「【0010】また,特定の既登録者相互間の合意によって人間関係が結ばれたとき,合意した当人同士の関係の程度を表す関係度数と,合意した当人と連鎖する既登録者との関係の程度を表す関係度数とを記憶することが好ましい。この関係度数を高めるように登録者相互が積極的に人間関係を結ぶことを促すことができるため,より広範でより深い人間関係を結ぶことに貢献し,個々人の社会的影響力の増大および社会的貢献度の増大に寄与することができる。

5 【0011】また,関係度数により,登録者同士の関係の程度を知ることができる。これにより,登録者同士の関係の程度を客観的に知ることができる。また,特定の既登録者相互間の合意は,メールの交換によって行われるようにするとよい。例えば,通信ネットワークを通じて花メールを交換することによって相互に人間関係を結ぶことができるようにしておけば,直接面識がなくても,当人同士で人間関係を結ぶことができ,関係度数を高めることもできる。」「【0015】この場合,前記新規登録者の登録の際に,更にその新規登録者の確認に基づいて登録を行うことが好ましい。また,その新規登録者の職業や専門分野に関する情報を記憶することが好ましく,また,特定の既登録者相互間の合意によって人間関係が結ばれたとき,合意した当人同士の関係の程度を表す関係度数と,合意した当人と連鎖する既登録者との関係の程度を表す関係度数とを記憶することが好ましい。そして,特定の既登録者相互間の合意は,メールの交換によって行われるようにすることが好ましい。」オ 発明の効果「【0020】本発明によれば,職業等に関する様々な特定分野の専門家を知り,専門的知識や情報を得ようとする場合に,人脈関係情報を作成し簡単かつ効率的に知ることができる。また本発明によれば,登録者相互間の合意によって人間関係が結ばれたときにはじめて登録者相互間の関係度数を獲得することができるため,より広範で深い人間関係を結ぶことを積極的にサポートすることができる。さらに本発明によれば,登録者を検索した場合に,検索した登録者と検索された登録者の相互の関係の程度を表す関係度数も提示することで,検索した登録者は,検索された登録者の中から自分と関係の程度の高い登録者を選択することができる。」カ 発明を実施するための最良の形態

5 「【0033】上記のようにしてサーバ1に登録されたあと,登録者は,別の登録者との間で人間関係を結び,人間関係の程度を表す関係度数を獲得することができる。人間関係を結ぶためには,特定の登録者に例えば花メールを送る。花メールとは,特定の登録者のことを尊敬しているとか,賞賛しているというように相手を認めて人間関係を結びたいという内容のメールで,これを例えばサーバ1経由の電子メールで送信する。花メールを受けた相手方が,花メールの送信者を同様に認めて人間関係を結ぶことに合意すれば,ここにおいて初めて人間関係が結ばれ,関係度数を獲得することができる。あとで詳細に説明するように,人間関係を結んだもの同士の関係度数がもっとも大きく,連鎖する人間関係が間接的になるにしたがって関係度数は小さくなる。この関係度数により登録者同士間の関係の程度を客観的に知ることができる。」「【0035】サーバ1では,上述のような登録者同士を関連付けて登録した登録情報を基礎データとし,登録者同士で例えば花メールを交換し,人間関係を結ぶことに合意することにより,図2のような人脈関係図を人脈関係情報として作成し,パソコン装置3に送信し,表示させることができる。図2に示す11~20の各符号は,登録者を表し,実線で結ばれている登録者同士が,例えば花メールの交換によって人間関係を結ぶことに合意することにより,互いに関連付けられている。このような人脈関係図により,登録者同士の関係を知ることができる。なお,図2において実線で結ばれている登録者同士の相互間の関係度数を併せてその人脈関係図に表示してもよい。」「【0047】以上説明したように,関係度数の大小により,登録者同士間の関係の程度を客観的に知ることができる。…」

⑵ 本件各発明の意義上記⑴の本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件特許の特許請求の範囲請求項1及び3の記載によれば,本件各発明は,より広範で深い人間関係を結ぶための,

5 人脈関係登録システム,人脈関係登録方法とサーバ,人脈関係登録プログラムと当該プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体に関するものであり,より広範で深い人間関係を結ぶことを積極的にサポートするために,上記人脈関係登録システム等を提供することを目的とするものであって,登録者相互間の合意によって人間関係が結ばれたとき,記録手段を備えたサーバに,人間関係を結んだ登録者の個人情報又は識別情報を関連付けて記憶することで,個人情報又は識別情報を含む検索キーワードによって第二の登録者と人間関係を結んでいる第三の登録者の個人情報又は識別情報を検索することができるようにするという発明である,と認められる。

2 被告サーバの構成について証拠(甲16,乙4,7)及び弁論の全趣旨によれば,被告サーバにおいて,人間関係を記憶する手順は,次のとおりであり,これを図示すると,別紙「被告サーバの動作フロー」のとおりである(同別紙では,アカウント1号を甲,アカウント2号を乙と表記している。 と認められる。) すなわち,他のユーザと人間関係を結ぶ申請をすることを意味する「友達申請」(以下,単に「友達申請」という。)をするユーザを「アカウント1号」,友達申請をされるユーザを「アカウント2号」として説明すると,①アカウント1号が「友達申請をする」と示されたボタンをクリックする(画面08),②被告サーバがアカウント1号に確認画面を送信する,③アカウント1号が「送信する」と示されたボタンをクリックする(画面09) ④被告サーバが記憶手段に友達申,請に係るデータを登録する,⑤被告サーバが記憶手段にアカウント1号及びアカウント2号の人間関係が結ばれた旨の友達リストの仮登録をする,⑥被告サーバがアカウント2号に友達申請がされたことを通知する(画面12),⑦被告サーバがアカウント1号に友達申請の完了画面を送信する(画面11),⑧アカウント2号が被告サーバにアカウント1号のプロフィールを要求する(画面13,14) ⑨被告サーバが記,憶手段からアカウント1号のプロフィールを取得する,⑩被告サーバがアカウント2号にアカウント1号のプロフィールを送信する,⑪アカウント2号が「友達になる」と示されたボタンをクリックする(画面15),⑫被告サーバが記憶手段の友達リス

5 トを更新して本登録をし,友達として関連付けることが完了する,⑬被告サーバがアカウント1号に友達申請が承認されたことを示すメール(甲16)を送信する,というものである。そうすると,被告サービスにおいては,被告サーバの記憶手段にアカウント1号とアカウント2号の人間関係が結ばれたとして関連付けられた後に,アカウント1号に対して友達申請が承認されたことを示すメールが送信されるという処理がされるのであり,アカウント1号とアカウント2号が友達として記憶された後に,仮にアカウント1号に対し友達申請が承認された旨が通知されなかったとしても,被告サーバにおいては,アカウント1号とアカウント2号が友達であると記憶されているといえる。

3 争点1(被告サーバは,文言上,本件各発明の技術的範囲に属するか)について事案に鑑み,まず,争点1-3(被告サーバは構成要件1D及び2Dを充足するか)について判断する。⑴ 構成要件1Dは,「上記第二のメッセージを送信したとき,上記第一の登録者の個人情報と第二の登録者の個人情報とを関連付けて上記記憶手段に記憶する手段と,」というものであり,本件発明1においては,サーバが,第二の登録者と人間関係を結ぶことを希望する旨の第一の登録者からのメッセージである「第一のメッセージ」を受信して同メッセージを第二の登録者の端末に送信し,第二の登録者からこれに合意する旨のメッセージである「第二のメッセージ」を受信して,同メッセージを第一の登録者に送信したことを条件として,又は送信した後で,第一の登録者の個人情報と第二の登録者の個人情報とを関連付けて記憶手段に記憶するものとして規定しているということができる。そして,構成要件1Dの「個人情報」 「識別情報」が に置き換えられているほかは,構成要件1Dと文言を共通にする構成要件2Dについても,サーバが第二のメッセージを送信したことを条件として,又は送信した後で,第一の登録者の識別情報と第二の登録者の識別情報とを関連付けて記憶手段に記憶するものとして規定していると

5 認められる。⑵ この点,原告は,構成要件1D及び2Dにおける「送信したとき」の「とき」は「ある幅をもって考えられた時間」という意味であるとして,構成要件1D又は2Dは,第一の登録者の個人情報又は識別情報を第二の登録者の個人情報又は識別情報とが関連付けられた後に第二のメッセージが送信される場合をも含む旨を主張するが,「送信したとき」とは,送信したことを条件とする旨表す表現であると解釈するのが一般的かつ自然な解釈であるというべきであり,また,これが時を表す表現であると解釈したとしても,送信という動作が完了していることを表す表現が用いられていることからすると,送信することが関連付けることに先行すると解釈するのが一般的かつ自然であって,本件明細書その他にも異なる解釈を導く説明は見当たらない。したがって,構成要件1D及び2Dの記載は,送信の実行が先行し,その後に関連付ける旨の実行がされることを規定していると解され,原告の上記主張を採用することはできない。

⑶ そこで,被告サービスについてみると,前記2において認定したとおり,被告サービスにおいては,被告サーバの記憶手段に第一の登録者に相当するアカウント1号と第二の登録者に相当するアカウント2号が友達として登録されて関連付けることが終了した後に,アカウント1号に対して友達申請が承認されたことを示すメールが送信されるという処理がされるのであるから,被告サーバは,「第二のメッセージを送信したとき」に,「上記第一の登録者の個人情報と第二の登録者の個人情報とを関連付けて上記記憶手段に記憶する手段」又は「上記第一の登録者の識別情報と第二の登録者の識別情報とを関連付けて上記記憶手段に記憶する手段」を有しているということはできない。したがって,その余の点について判断するまでもなく,被告サーバは,構成要件1D及び2Dを充足しない。よって,被告サーバは,文言上,本件各発明の技術的範囲に属すると認めることはできない。

4 争点2(被告サーバは,本件各発明と均等なものとして,その技術的範囲に属

5 するか)について事案に鑑み,まず,争点2-2(「送信したとき」に関連付けて記憶されないとしても,本件各発明と均等なものとなるか)について判断する。⑴ 均等の要件について特許請求の範囲に記載された構成に,相手方が製造等をする製品又は用いる方法(以下「対象製品等」という。)と異なる部分が存する場合であっても,①同部分が特許発明の本質的部分ではなく(第1要件),②同部分を対象製品等におけるものと置き換えても,特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものであって(第2要件),③上記のように置き換えることに,当業者が,対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり(第3要件),④対象製品等が,特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者が当該出願時に容易に推考できたものではなく(第4要件) かつ,, ⑤対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないとき(第5要件)は,同対象製品等は,特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,特許発明の技術的範囲に属するものと解される(最高裁平成6年(オ)

第1083号同10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁,最高裁

平成28年(受)第1242号同29年3月24日第二小法廷判決・民集71巻3号359頁参照)。⑵ 第1要件(非本質的部分)についてア 特許法が保護しようとする発明の実質的価値は,従来技術では達成し得なかった技術的課題の解決を実現するための,従来技術に見られない特有の技術的思想に基づく解決手段を,具体的な構成をもって社会に開示した点にあるから,特許発明における本質的部分とは,当該特許発明に係る特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると解すべきである。そして,上記本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて,特許発明の課題及び解決手段とその作用効果を把握した上で,特許発明に係る特許請

5 求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が何であるかを確定することによって認定されるべきである(知財高裁平成27年(ネ)第10014号同28年3月25日特別部判決・判時2306号87頁参照。。)イ これを本件についてみると,前記1⑵で説示したとおり,本件各発明は,より広範で深い人間関係を結ぶための,人脈関係登録システム,人脈関係登録方法とサーバ,人脈関係登録プログラムと当該プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体に関するものであり,より広範で深い人間関係を結ぶことを積極的にサポートするために,上記人脈関係登録システム等を提供することを目的とするものであって,登録者相互間の合意によって人間関係が結ばれたとき,記録手段を備えたサーバに,人間関係を結んだ登録者の個人情報又は識別情報を関連付けて記憶することで,個人情報又は識別情報を含む検索キーワードによって第二の登録者と人間関係を結んでいる第三の登録者の個人情報又は識別情報を検索することができるようにするという発明である。そして,登録者相互間の合意は,メールの交換によって行われるものされている(段落【0011】【0015】。そうすると,本件各発明の構成要件1, )D及び2Dの「第二のメッセージを送信したとき,…関連付けて上記記憶手段に記憶する」という構成は,登録者相互間の合意(メッセージの交換)によって人間関係が結ばれたとき,記録手段を備えたサーバに,人間関係を結んだ登録者の個人情報又は識別情報を関連付けて記憶するという課題解決手段を具体的な構成として特定したものであって,この構成が従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であり,本件各発明における本質的部分というべきである。これに対し,原告は,より広範で深い人間関係を結ぶために共通の人間関係を結んでいる登録者の検索を容易にするということが本件各発明の本質であり,本件各発明における友達申請メッセージ(第一のメッセージ)や承認メッセージ(第二のメッセージ)のやり取りに係る構成は,人間関係を結ぶための「合意の手段」としての意味を有するにすぎず,本件各発明において非本質的な部分である旨主張する。しかしながら,本件各発明の構成要件1D及び2Dの「第二のメッセージを送信し

5 たとき,…関連付けて上記記憶手段に記憶する」という構成が,本件各発明の課題解決手段を具体的な構成として特定したものであることは前記のとおりであるから,個人情報又は識別情報を関連付けて記憶する過程のみを切り離して,それらの処理のタイミングを規定したものにすぎないということはできず,本件各発明の非本質的部分であるということはできない。また,本件各発明は,個人情報又は識別情報を含む検索キーワードによって第二の登録者と人間関係を結んでいる第三の登録者の個人情報又は識別情報を検索することを内容とするものである(構成要件1Eないし1G,2E)が,それを超えて,共通の人間関係を結んでいる登録者の検索を容易にするということが,本件各発明の課題又は目的とされて本件各発明の構成として具体的に反映されているとはいえず,原告の主張を裏付けるに足る本件明細書の記載その他の証拠はない。したがって,原告の主張は採用することができない。ウ そうすると,本件各発明の構成要件1D及び2Dの「第二のメッセージを送信したとき,…関連付けて上記記憶手段に記憶する」という構成は,本件各発明における本質的部分であると解されるところ,前記説示のとおり,被告サーバは,メッセージを交換する前に,登録者相互間の関連付けが終了するのであって,上記構成を有していないから,その相違部分が本件各発明の本質的部分ではないとはいえず,均等の

第1要件(非本質的部分)を充足しない。

⑶ したがって,被告サーバは,均等の第1要件(非本質的部分)を充足しないから,本件各発明と均等なものとして,その技術的範囲に属するものであるということはできない。

5 結論以上によれば,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第29部

裁判長裁判官

山 田 真 紀

裁判官

伊 藤 清 隆

裁判官

西 山 芳 樹

(別紙)

当事者目録原 告 株 式 会 社 メ キ キ

5 同訴訟代理人弁護士 篠 原 一 廣同 森 龍 之 介同補佐人弁理士 粕 川 敏 夫株式会社DMM.com及び株式会社DMM.comラボ訴訟承継人被 告 合同会社DMM GAMES同代表者代表社員 株式会社DMM GAMESホールディングズ同訴訟代理人弁護士 溝 田 宗 司同 関 裕 治 朗

(別紙)

被告サービス目録「DMM.com(及び連携するDMM GAMES) の名称をもって提供される会」員向けソーシャルネットワークサービス以 上

(別紙)

特許公報(甲5)添付略

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